以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
まず、図1を参照して、一実施形態に係る給電装置の構成を説明する。給電装置は、電磁波を用いて無線で電力を供給する無線給電装置1である。この電磁波は、電力供給のための無線信号(以下、送電信号とも称する)である。無線給電装置1は、送電信号が到達可能な給電エリア内に存在する受電器2に対して、送電信号を送信する。送電信号は、受電器2に対して放射される電磁波のビームとして形成される。以下では、送電信号を形成する電磁波のビームを、給電ビームとも称する。なお、無線給電装置1は、複数の受電器2に対して送電信号を送信し得る。
受電器2は送電信号を受信するための回路等を備えている。無線給電装置1によって送信された送電信号が受電器2によって受信されることにより、受電器2に電力が供給される。
送電信号は、特定の周波数の電磁波である。そのため、同一または近傍の周波数を使用する別の無線システムが周辺に存在する場合、送電信号が、無線システムにおいて伝送(すなわち送信および受信)される無線信号に干渉する可能性がある。このような干渉を回避するために、無線給電装置1は、周辺に別の無線システムが存在しないことが確認できる屋内環境に設置され、運用されることが好ましい。
しかし、無線給電装置1を実環境へ実装する場合、複数の無線給電装置1が近傍に設置されることが考えられる。そのような場合、個々の無線給電装置1から放射される送電信号(給電ビーム)が意図しない形で合成され、別の無線システムに干渉する可能性がある。つまり、無線給電装置1は無線システムに干渉を与える与干渉装置となり得、無線システムは無線給電装置1による干渉を受ける被干渉システムとなり得る。
そのため、本実施形態の無線給電装置1は、送信しようとする送電信号に関する給電情報を別の無線給電装置1に送信するか、あるいは別の無線給電装置1から得られる給電情報を用いて送電信号を制御する。これにより、複数の無線給電装置1が送信する送電信号が、別の無線システム3に対して意図しない干渉を与えることを回避または低減できる。
図1に示すように、無線給電装置1は、送電制御部101、情報送信部102、情報受信部103、および1つ以上のアンテナ104を備える。無線給電装置1はビーコン受信部105をさらに備えていてもよい。これら各部は、例えば回路として実現される。送電制御部101、情報送信部102、情報受信部103、およびビーコン受信部105は、1つのチップに設けられていてもよいし、別々のチップに設けられていてもよい。
送電制御部101は、受電器2への電力供給のための送電信号501を制御する。送電制御部101はアンテナ104を介して、送電信号501を送信する。送電信号501は、受電器2に対して形成された給電ビームである。送電信号501は、受電器2に対する指向性が高い1つのビームとして形成されてもよいし、幅広い(すなわち指向性が低い)ビームとして形成されてもよい。あるいは、送電信号501は、2つ以上に枝分かれしたビームとして形成されてもよい。送電制御部101は、例えば幅広い給電ビームや2つ以上に枝分かれした給電ビームによって、複数の受電器2に対して給電し得る。
なお、受電器2が存在する位置または方向は、あるいはその両方は、無線給電装置1において既知である場合と未知である場合とが想定される。受電器2の位置および方向の少なくとも一方が既知である場合、送電制御部101は、その位置(あるいは方向)に対して送電信号501を送信する。すなわち、送電制御部101は、その位置(あるいは方向)に対して、送電信号501を形成する給電ビームを放射する。
これに対して、受電器2の位置と方向がいずれも未知である場合、受電器2に設けられるビーコン送信部201はビーコン信号を送信する。無線給電装置1のビーコン受信部105は、このビーコン信号を受信する。送電制御部101は、ビーコン信号の受信結果を解析して、受電器2と無線給電装置1との間の伝搬環境を推定する。送電制御部101は、例えばビーコン信号の到来方向を推定する。そして、送電制御部101は、推定結果に基づいて送電信号(給電ビーム)501を形成する。
情報送信部102および情報受信部103は、アンテナ104を介して、別の無線給電装置1との無線通信を行う。情報送信部102および情報受信部103は、別の無線給電装置1との間の接続を事前に確立していてもよいし、通信が必要になったことに応じて接続を確立するようにしてもよい。この無線通信には、Bluetooth(登録商標)、無線ローカルエリアネットワーク(LAN)、特定小電力無線等が用いられ得る。なお、送電制御部101による送電信号501の送信に用いられるアンテナ104と、情報送信部102および情報受信部103による通信に用いられるアンテナ104とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。さらに、情報送信部102および情報受信部103は、別の無線給電装置1との有線通信(例えば有線LANによる通信)を行ってもよい。以下では、2つの無線給電装置1が無線通信を行う場合について例示する。
情報送信部102は送電信号501に関する第1給電情報を、アンテナ104を介して別の無線給電装置1に送信する。情報送信部102は第1給電情報を、定期的に送信してもよいし、特定のトリガ(例えば別の無線給電装置1による要求)に応じて送信してもよい。第1給電情報は、送電信号501を送信する時間、送電信号501を送信する方向、送電信号501の電力レベル(すなわち電力値)、等を含む。その別の無線給電装置1は第1給電情報を受信し、受信した第1給電情報を用いて送電信号を制御し得る。
情報受信部103は、別の無線給電装置1が送信する送電信号に関する第2給電情報を、アンテナ104を介して、その別の無線給電装置1から受信する。
送電制御部101は、受信された第2給電情報を用いて、送電信号501に関するパラメータを決定する。送電制御部101は、第2給電情報を用いて、これまで用いられていたパラメータを変更してもよいし、あるいはパラメータを変更しないことを決定してもよい。送電制御部101は第2給電情報を用いて、例えば、送電信号501を送信する第1時間、送電信号501を送信する第1方向、および送電信号501の第1電力レベルの少なくとも1つを決定する。そして、送電制御部101は、決定した第1時間、第1方向、および第1電力レベルの少なくとも1つに基づいて、送電信号501を送信する。つまり、送電制御部101は、決定した第1時間、第1方向、および第1電力レベルの少なくとも1つに基づいて、送電信号501である給電ビームを形成する。
図2は、給電情報が用いられない場合に、複数の無線給電装置1A,1Bによって送信される送電信号の例を示す。第1無線給電装置1Aは第1送電信号511を送信することにより、受電器2Aに給電する。つまり、第1無線給電装置1Aは、受電器2Aに対して、第1送電信号511を形成する給電ビームを放射する。
また、第2無線給電装置1Bは第2送電信号512を送信することにより、受電器2Bに給電する。つまり、第2無線給電装置1Bは、受電器2Bに対して、第2送電信号512を形成する給電ビームを放射する。
無線給電装置1Aと無線給電装置1Bとがそれぞれ独立して動作する場合、第1送電信号511と第2送電信号512とは類似する方向に送信されることがある。さらに、この方向の延長上には、別の無線システム3が存在する可能性がある。
無線システム3は、例えば、無線信号を送信および受信し得る複数の無線装置31,32,33で構成される。無線システム3は、送電信号511,512の周波数帯や、その近傍の周波数帯で、無線信号を伝送する種々のシステムである。無線システム3は、無線LAN、電子料金収受システム(Electronic Toll Collection System:ETC)、放送、気象レーダー、アマチュア無線、衛星通信、ロボット(例えばドローン)、携帯電話等のシステムであり得る。
無線給電装置1Aおよび無線給電装置1Bによって送信される送電信号511,512は、各々の電力レベルが小さかったとしても、その放射される方向が類似することによって大きな電力レベルの干渉波を形成し、無線システム3に対して大きな干渉を与えることがある。無線システム3では、この干渉により、無線信号を正常に伝送できなくなる可能性がある。
本実施形態では、各無線給電装置1A,1Bが、図1を参照して前述した無線給電装置1と同様の構成を有する。すなわち、無線給電装置1A,1Bは通信機能を備え、周囲の無線給電装置に対して給電情報を送信する。そして、無線給電装置1A,1Bは、受信した給電情報を用いて送電信号511,512を制御する。これにより、無線給電装置1A,1Bは、別の無線システム3に対する意図しない干渉を回避または低減できる。
図3は、第1無線給電装置1Aが送信した給電情報を用いて、第2無線給電装置1Bが第2送電信号512の放射方向を制御する例を示す。
第1無線給電装置1Aの情報送信部102は、第1送電信号511を送信する方向(すなわち放射方向)を示す方向情報を含む給電情報を、第2無線給電装置1Bに送信する。情報送信部102は給電情報を、例えば第2無線給電装置1Bが給電(すなわち第2送電信号512の送信)を開始する前に、第2無線給電装置1Bに送信する。
方向情報は、例えば北を基準とする1度から360度までの方位角を示してもよいし、ラジアン単位の方位角を示してもよい。方向情報は、例えば水平方向を基準とする−90度から90度までの俯角をさらに示してもよい。
あるいは、方向情報は、第1無線給電装置1Aの位置(例えば座標情報)と、受電器2Aの位置とを示していてもよい。第2無線給電装置1Bは、第1無線給電装置1Aの位置と受電器2Aの位置とに基づいて、第1無線給電装置1Aによる第1送電信号511の放射方向を推定できる。
第2無線給電装置1Bの情報受信部103は、第1無線給電装置1Aから給電情報を受信する。第2無線給電装置1Bの送電制御部101は、受信した給電情報に含まれる方向情報を用いて、第1送電信号511の放射方向とは異なるように、第2送電信号512の放射方向を決定する。そして、送電制御部101は、決定した放射方向に、第2送電信号512を送信する。
第1無線給電装置1Aと第2無線給電装置1Bとが、異なる放射方向の送電信号511と送電信号512とをそれぞれ送信することにより、同じ放射方向の送電信号511と送電信号513とが送信される場合と比較して、別の無線システム3に対する意図しない干渉を低減できるか、あるいは回避できる。
なお、送電信号511,512によって、できるだけ大きなエネルギーを受電器2A,2Bに供給するという観点では、受電器2Bの位置によっては、第1送電信号511と第2送電信号512が同一の放射方向であることが最適な場合もある。このような場合、第2無線給電装置1Bの送電制御部101は、第1送電信号511の放射方向と完全に一致しないように、第1送電信号511の放射方向からわずかにずれた(例えば数度ずれた)、第2送電信号512の放射方向を決定する。あるいは、送電制御部101は、第1送電信号511の放射方向とは異なるように、第2送電信号512の放射方向を決定すると共に、第2送電信号512(すなわち第2送電信号512を形成する給電ビーム)の指向性を低くすることによって、第2送電信号512がカバーする範囲を広げてもよい。これにより、第2送電信号512の放射方向が、受電器2Bに向かう方向からずれている場合であっても、第2無線給電装置1Bは受電器2Bへの給電を行うことができる。
なお、第2無線給電装置1Bの情報送信部102は、第2送電信号512を送信する方向を示す方向情報を含む給電情報を、別の無線給電装置1にさらに送信してもよい。その別の無線給電装置1は、同様にして、給電情報を用いて送電信号を制御し得る。
図4は、第1無線給電装置1Aが送信した給電情報を用いて、第2無線給電装置1Bが第2送電信号512の送信時間(送信タイミング)を制御する例を示す。
第1無線給電装置1Aの情報送信部102は、第1送電信号511を送信する時間に関する時間情報を含む給電情報を、第2無線給電装置1Bに送信する。情報送信部102は給電情報を、例えば第2無線給電装置1Bが給電(すなわち第2送電信号512の送信)を開始する前に、第2無線給電装置1Bに送信する。時間情報は、例えば、給電開始時刻、給電終了時刻、給電継続時間、給電頻度、および停波時間の少なくとも1つを示す。
第2無線給電装置1Bの情報受信部103は、第1無線給電装置1Aから給電情報を受信する。第2無線給電装置1Bの送電制御部101は、受信した給電情報に含まれる時間情報を用いて、第1送電信号511が送信される時間と重複しないように、あるいは第1送電信号511が送信される時間との重複が少なくなるように、第2送電信号512の送信時間を決定する。つまり、送電制御部101は、第2送電信号512の送信時間の少なくとも一部が、第1送電信号511が送信される時間と重複しないように、第2送電信号512の送信時間を決定する。そして、送電制御部101は、決定した送信時間に、第2送電信号512を送信する。
図4に示す例では、第1無線給電装置1Aは、時刻T420に第1送電信号511の送信(すなわち給電)を開始し、時刻T421に第1送電信号511の送信を終了する。その後、第1無線給電装置1Aは、時刻T424に第1送電信号511の送信を開始し、時刻T425に第1送電信号511の送信を終了する。さらに、第1無線給電装置1Aは、時刻T428に第1送電信号511の送信を開始する。したがって、時刻T420、時刻T424、および時刻T428は、第1無線給電装置1Aの給電開始時刻である。また、時刻T421および時刻T425とは、第1無線給電装置1Aの給電終了時刻である。
なお、給電開始時刻T420,T424から給電終了時刻T421,T425までの、第1送電信号511が送信される期間を、給電期間と称する。各給電期間の長さを、給電継続時間と称する。
また、給電終了時刻T421,T425から給電開始時刻T424,T428までの、第1送電信号511が送信されない期間を、停波期間と称する。各停波期間の長さを、停波時間と称する。
以下では、第1無線給電装置1Aから受信した時間情報を含む給電情報を用いて、第2無線給電装置1Bが第2送電信号512の送信時間を制御する幾つかの例を説明する。
(1)第1無線給電装置1Aから第2無線給電装置1Bに、給電開始時刻T420,T424を示す時間情報が送信される場合
第2無線給電装置1Bの送電制御部101は、時間情報に示される給電開始時刻T420,T424とは異なる給電開始時刻T422,T426を決定する。そして、送電制御部101は、給電開始時刻T422,T426に、第2送電信号512の送信を開始する。これにより、第2無線給電装置1Bによる給電期間が、第1無線給電装置1Aによる給電期間と一致することを回避できる。あるいは、短時間だけ一致したとしても、長時間にわたって給電期間が重複することを回避できる。したがって、送電信号511,512が重複して送信されることによる無線システム3への干渉のリスクを低下させることができる。
(2)第1無線給電装置1Aから第2無線給電装置1Bに、給電終了時刻T421,T425を示す時間情報が送信される場合
第2無線給電装置1Bの送電制御部101は、時間情報に示される給電終了時刻T421,T425より後の給電開始時刻T422,T426を決定する。そして、送電制御部101は、給電開始時刻T422,T426に、第2送電信号512の送信を開始する。これにより、第2無線給電装置1Bによる給電期間が長時間にわたって、第1無線給電装置1Aの給電期間と重複することを回避できる。したがって、送電信号511,512が重複して送信されることによる無線システム3への干渉のリスクを低下させることができる。
(3)第1無線給電装置1Aから第2無線給電装置1Bに、給電期間T420−T421,T424−T425を示す時間情報が送信される場合
第1無線給電装置1Aの情報送信部102は、給電開始時刻T420、および給電開始時刻T420から給電終了時刻T421までの時間(すなわち給電継続時間)の組と、給電開始時刻T424、および給電開始時刻T424から給電終了時刻T425までの時間の組とを示す時間情報を、第2無線給電装置1Bに送信する。あるいは、情報送信部102は、給電開始時刻T420および給電終了時刻T421の組と、給電開始時刻T424および給電終了時刻T425の組とを示す時間情報を、第2無線給電装置1Bに送信してもよい。
第2無線給電装置1Bの送電制御部101は、このような時間情報を用いて、第1無線給電装置1Aによる給電期間T420−T421,T424−T425を、正確に取得できる。送電制御部101は、これら給電期間T420−T421,T424−T425と重複しないように、給電期間T422−T423,T426−T427を決定する。これにより、第2無線給電装置1Bによる給電期間T422−T423,T426−T427が、第1無線給電装置1Aの給電期間T420−T421,T424−T425と重複することを回避できる。したがって、送電信号511,512が重複して送信されることによる無線システム3への干渉のリスクを低下させることができる。
(4)第1無線給電装置1Aから第2無線給電装置1Bに、停波期間を示す時間情報が送信される場合
前述したように、停波期間は送電信号が送信されない期間である。第1無線給電装置1Aの情報送信部102は、給電終了時刻T421、および給電終了時刻T421から次の給電開始時刻T424までの時間(すなわち停波時間)の組と、給電終了時刻T425、および給電終了時刻T425から次の給電開始時刻T428までの時間の組とを示す時間情報を、第2無線給電装置1Bに送信する。あるいは、情報送信部102は、給電終了時刻T421および次の給電開始時刻T424の組と、給電終了時刻T425および次の給電開始時刻T428の組とを示す時間情報を、第2無線給電装置1Bに送信してもよい。
第2無線給電装置1Bの送電制御部101は、このような時間情報を用いて、第1無線給電装置1Aによる停波期間T421−T424,T425−T428を、正確に取得できる。送電制御部101は、これら停波期間T421−T424,T425−T428内に含まれるように、給電期間T422−T423,T426−T427を決定する。これにより、第2無線給電装置1Bによる給電期間T422−T423,T426−T427が、第1無線給電装置1Aの給電期間T420−T421,T424−T425と重複することを回避できる。したがって、送電信号511,512が重複して送信されることによる無線システム3への干渉のリスクを低下させることができる。
(5)第1無線給電装置1Aから第2無線給電装置1Bに、給電頻度を示す時間情報が送信される場合
第1無線給電装置1Aの給電頻度は、送電信号511,512が制御されるある期間全体に対する、第1無線給電装置1Aによる給電期間T420−T421,T424−T425の比率により表される。
第2無線給電装置1Bの送電制御部101は、時間情報に示される第1無線給電装置1Aの給電頻度に基づいて、第2送電信号512の給電頻度を決定する。具体的には、送電制御部101は、第1無線給電装置1Aの給電頻度が閾値を超えている場合、第2送電信号512の給電頻度を、第1の値に決定する。一方、送電制御部101は、第1無線給電装置1Aの給電頻度が閾値以下である場合、第2送電信号512の給電頻度を、第1の値よりも高い第2の値に決定する。つまり、送電制御部101は、第1無線給電装置1Aの給電頻度が高いほど、第2送電信号512の給電頻度を低くし、第1無線給電装置1Aの給電頻度が低いほど、第2送電信号512の給電頻度を高くする。
これにより、第1無線給電装置1Aの給電頻度が高い場合、すなわち第1無線給電装置1Aによる給電期間が長い場合、第2送電信号512の給電頻度を低くすることで、無線システム3への干渉のリスクを下げることができる。また、第1無線給電装置1Aの給電頻度が低い場合、すなわち第1無線給電装置1Aによる給電期間が短い場合、第2送電信号512の給電頻度を高くしても、無線システム3への干渉のリスクは低い。したがって、送電信号511,512が重複して送信されることによる無線システム3への干渉のリスクを低下させることができる。
なお、第2無線給電装置1Bの情報送信部102は、第2送電信号512を送信する時間を示す時間情報を含む給電情報を、別の無線給電装置1にさらに送信してもよい。
図5は、第1無線給電装置1Aが送信した給電情報を用いて、第2無線給電装置1Bが送電信号の電力レベルを制御する例を示す。
第1無線給電装置1Aの情報送信部102は、第1送電信号511の電力レベルを示す電力情報を含む給電情報を、第2無線給電装置1Bに送信する。情報送信部102は給電情報を、例えば第2無線給電装置1Bが給電(すなわち第2送電信号512の送信)を開始する前に、第2無線給電装置1Bに送信する。電力レベルは、第1送電信号511の空中線電力、EIRP、および指向性利得のいずれかの値で表されてもよいし、これらの値の組み合わせであってもよい。電力レベルは、第1送電信号511を形成する給電ビーム内の方向に応じて異なる値であることが一般的である。したがって、電力情報は、給電ビーム内の特定の角度毎の電力レベルを含んでいてもよい。あるいは、電力情報は、給電ビーム内の方向に応じた電力レベルの最大値、平均値、中央値等の統計的な値であってもよい。
第2無線給電装置1Bの情報受信部103は、第1無線給電装置1Aから給電情報を受信する。第2無線給電装置1Bの送電制御部101は、受信した給電情報に含まれる電力情報を用いて、第2送電信号512の電力レベルを決定する。そして、送電制御部101は、決定した電力レベルで第2送電信号512を送信する。
より詳しくは、送電制御部101は、第1無線給電装置1Aによって送信される第1送電信号511の電力レベルが閾値を超えている場合、第2送電信号512の電力レベルを小さくする。また、第1無線給電装置1Aによって送信される第1送電信号511の電力レベルが閾値以下である場合、送電制御部101は、第2送電信号512の電力レベルを、受電器2Bへの給電に適した値(あるいは予め決められた値)にする。
これにより、第2無線給電装置1Bは、第1無線給電装置1Aによる第1送電信号511の電力レベルが大きい場合に、無線システム3に与え得るトータルの干渉量が小さくなるように、第2送電信号512の電力レベルを小さくできる。
なお、給電情報は、前述した方向情報、時間情報、および電力情報の任意の組み合わせを含んでいてもよい。第1無線給電装置1Aの情報送信部102は、例えば方向情報と電力情報とを含む給電情報を第2無線給電装置1Bに送信する。この場合、第2無線給電装置1Bの送電制御部101は、第1無線給電装置1Aによる第1送電信号511(給電ビーム)が最大電力となる方向(すなわち主ビーム方向)に対して、第2送電信号512の主ビーム方向をずらして送信する。これにより、第1送電信号511と第2送電信号512とが、無線システム3に対して意図しない干渉を発生させるリスクを低減できる。
さらに、給電情報は、第1無線給電装置1Aが設置された場所を示す場所情報を含んでいてもよい。場所情報は、第1無線給電装置1Aの絶対座標、相対座標、建物番号、部屋番号等を示す。
第1無線給電装置1Aの情報送信部102は、例えば場所情報と電力情報とを含む給電情報を第2無線給電装置1Bに送信する。この場合、第2無線給電装置1Bの送電制御部101は、第1無線給電装置1Aの設置場所と第2無線給電装置1Bの設置場所とを比較して、第1送電信号511と第2送電信号512とが、無線システム3に対して意図しない干渉を発生させるリスクが高いか否かを判定する。
具体的には、第2無線給電装置1Bの送電制御部101は、第1無線給電装置1Aと第2無線給電装置1Bとの間の距離が閾値以下である場合(例えば数メートルである場合)、あるいは第1無線給電装置1Aと第2無線給電装置1Bとが同一の建物内、または同一の部屋内に設置されている場合、無線システム3に対する意図しない干渉のリスクが高いと判断する。そして、送電制御部101は電力情報を用いて第2送電信号512の電力レベルを決定して、第2送電信号512を送信する。これにより、無線システム3に対する意図しない干渉のリスクを低減できる。
一方、送電制御部101は、第1無線給電装置1Aと第2無線給電装置1Bとの間の距離が閾値を超えている場合(例えば数十メートルである場合)、あるいは第1無線給電装置1Aと第2無線給電装置1Bとが異なる建物、または異なる部屋に設置されている場合、無線システム3に対する意図しない干渉のリスクが低いと判断する。第1無線給電装置1Aと第2無線給電装置1Bとが異なる建物、または異なる部屋にある場合には、壁等の障害物によって、第1送電信号511と第2送電信号512とが影響し合う可能性が低くなる。このような場合、送電制御部101は電力情報を用いることなく第2送電信号512の電力レベル(例えば受電器2Bへの給電に適した値や予め決められた値)を決定して、第2送電信号512を送信する。つまり、第2無線給電装置1Bは、無線システム3に対する意図しない干渉を低減するための制御を行わない。
なお、第2無線給電装置1Bの情報送信部102は、第2送電信号512を送信する電力レベルを示す電力情報を含む給電情報を、別の無線給電装置1にさらに送信してもよい。
図6は、第1無線給電装置1Aにおいて実行される給電情報送信処理の手順の例を示すフローチャートである。
まず、第1無線給電装置1Aの情報送信部102は、給電情報を送信すべきタイミングであるか否かを判定する(ステップS11)。給電情報を送信すべきタイミングではない場合(ステップS11のNO)、情報送信部102はステップS11に戻り、給電情報を送信すべきタイミングであるか否かを再度、判定する。
給電情報を送信すべきタイミングである場合(ステップS11のYES)、情報送信部102は給電情報を生成する(ステップS12)。給電情報は、第1無線給電装置1Aが受電器2Aへの電力供給のために第1送電信号511を送信する時間、送信する方向、送電信号の電力レベルの少なくとも1つを示す。給電情報は、第1無線給電装置1Aが設置されている場所を示す場所情報をさらに含んでいてもよい。情報送信部102は、生成した給電情報を第2無線給電装置1Bに送信する(ステップS13)。
以上の給電情報送信処理により、第1無線給電装置1Aは、第1無線給電装置1Aが送信する第1送電信号511に関する給電情報を、第2無線給電装置1Bに送信できる。
図7は、第2無線給電装置1Bにおいて実行される送電制御処理の手順の例を示すフローチャートである。
まず、第2無線給電装置1Bの情報受信部103は、第1無線給電装置1Aから給電情報を受信したか否かを判定する(ステップS21)。第1無線給電装置1Aから給電情報を受信していない場合(ステップS21のNO)、情報受信部103はステップS21に戻り、第1無線給電装置1Aから給電情報を受信したか否かを再度、判定する。
第1無線給電装置1Aから給電情報を受信した場合(ステップS21のYES)、送電制御部101は、給電情報が場所情報を含んでいるか否かを判定する(ステップS22)。前述したように、場所情報は第1無線給電装置1Aが設置されている場所を示す。
給電情報が場所情報を含んでいる場合(ステップS22のYES)、送電制御部101は場所情報を用いて、互いの送電信号が影響し合う範囲に第1無線給電装置1Aがあるか否かを判定する(ステップS23)。より具体的には、場所情報が、第1無線給電装置1Aが設置されている位置を特定できる情報(例えば緯度および経度を示す絶対座標、相対座標)を含む場合、送電制御部101は、第2無線給電装置1Bから第1無線給電装置1Aまでの距離が閾値未満であるか否かを判定する。また、場所情報が、第1無線給電装置1Aが設置されている建物や部屋を特定できる情報(例えば建物番号、部屋番号)を含む場合、送電制御部101は、第1無線給電装置1Aが第2無線給電装置1Bとは異なる建物(あるいは部屋)に設置されているか否かを判定する。
給電情報が場所情報を含んでいない場合(ステップS22のNO)、または互いの送電信号が影響し合う範囲に第1無線給電装置1Aがある場合(ステップS23のYES)、送電制御部101は給電情報を用いて、第2送電信号512に関するパラメータを決定する(ステップS24)。第2送電信号512に関するパラメータは、例えば、第2送電信号512を送信する方向、第2送電信号512を送信する時間、および第2送電信号512の電力レベルをそれぞれ示すパラメータを含む。送電制御部101は給電情報を用いて、これら方向、時間、および電力レベルの各パラメータを全て決定してもよいし、この内の幾つかのパラメータを決定してもよい。なお、この内の幾つかのパラメータを決定する場合、送電制御部101は、残りのパラメータについては予め決められた値を用いてもよい。例えば、給電情報を用いて第2送電信号512の方向を示すパラメータを決定する場合、送電制御部101は、第2送電信号512の時間と電力レベルについて、予め決められたパラメータを用いることを決定する。
そして、送電制御部101は、決定したパラメータを用いて第2送電信号512を送信する(ステップS25)。送電制御部101は、例えば、決定した方向、時間、および電力レベルで第2送電信号512を送信する。
また、互いの送電信号が影響し合う範囲に第1無線給電装置1Aがない場合(ステップS23のNO)、送電制御部101は給電情報を用いずに、第2送電信号512に関するパラメータを決定する(ステップS26)。送電制御部101は給電情報を用いずに、第2送電信号512の方向、時間、および電力レベルの各パラメータを全て決定してもよいし、この内の幾つかのパラメータを決定してもよい。なお、この内の幾つかのパラメータを決定する場合、送電制御部101は、残りのパラメータについては予め決められた値を用いてもよい。給電情報を用いずに、例えば第2送電信号512の方向を示すパラメータを決定する場合、送電制御部101は、第2送電信号512の時間と電力レベルについて、予め決められたパラメータを用いることを決定する。あるいは、送電制御部101は、ステップS23で第2送電信号512の方向、時間、および電力レベルを示すパラメータを決定する代わりに、第2送電信号512の方向、時間、および電力レベルについて予め決められたパラメータを用いることを決定してもよい。
そして、送電制御部101は、決定したパラメータを用いて、第2送電信号512を送信する(ステップS27)。
以上の送電制御処理により、第2無線給電装置1Bは、第2送電信号512が無線システム3で伝送される無線信号に干渉する可能性がある場合、第2送電信号512に関するパラメータを制御する。これにより、無線システム3に対する意図しない干渉を低減しながら、受電器2Bに電力を供給できる。
以上説明した構成により、第1無線給電装置1Aは第1送電信号511に関する給電情報を、第2無線給電装置1Bに送信する。給電情報は、第1送電信号511を送信する時間、方向、電力レベルの少なくとも1つを示す。第2無線給電装置1Bは、この給電情報を用いて、第2送電信号512を送信する時間、方向、および電力レベルの少なくとも1つを決定する。そして、第2無線給電装置1Bは、決定した時間、方向、および電力レベルの少なくとも1つに基づいて、第2送電信号512を送信する。これにより、第1送電信号511と第2送電信号512とによって発生する、無線システム3に対する意図しない干渉を回避または低減できる。
なお、第1無線給電装置1Aは、1対1の通信によって第2無線給電装置1Bに給電情報を送信してもよいし、1対Nのブロードキャスト通信によって、第2無線給電装置1Bを含む複数の無線給電装置に給電情報を送信してもよい。また、第1無線給電装置1Aが給電情報の送信のみを行い、第2無線給電装置1Bが給電情報の受信のみを行う構成であってもよい。具体的には、例えば、情報送信部102を備え、情報受信部103を備えていない第1無線給電装置1Aが、情報受信部103を備え、情報送信部102を備えていない第2無線給電装置1Bに、給電情報を送信する構成であってもよい。
(第2実施形態)
第1実施形態では、無線給電装置は送電信号を、別の無線給電装置が送信する送電信号に関する給電情報を用いて制御する。これに対して第2実施形態では、無線給電装置は送電信号を、別の無線給電装置が受信した無線信号に関する無線システム情報を用いて制御する。無線信号は、これら無線給電装置が属していない無線システムで伝送される信号である。
第2実施形態に係る無線給電装置の構成は第1実施形態の無線給電装置1と同様であり、第2実施形態と第1実施形態とでは、給電情報を用いるのではなく、無線システム3で伝送される無線信号を受信し、その無線信号の解析結果を示す無線システム情報を用いて、送電信号を制御する点が異なる。以下、第1実施形態と異なる点について主に説明する。
図8は、第2実施形態に係る無線給電装置7の構成例を示すブロック図である。無線給電装置7は、送電制御部701、情報送信部702、情報受信部703、被干渉信号受信部704、被干渉信号解析部705、および1つ以上のアンテナ706を備える。無線給電装置7はビーコン受信部707をさらに備えていてもよい。ビーコン受信部707の動作は、第1実施形態のビーコン受信部105と同様である。これら各部は、例えば回路として実現される。送電制御部701、情報送信部702、情報受信部703、被干渉信号受信部704、被干渉信号解析部705、およびビーコン受信部707は、1つのチップに設けられていてもよいし、別々のチップに設けられていてもよい。
送電制御部701は、受電器2への電力供給のための送電信号801を制御する。送電制御部701はアンテナ706を介して、送電信号801を送信する。送電信号801は、受電器2に対して形成された給電ビームである。給電ビームの詳細については第1実施形態で説明した通りである。
被干渉信号受信部704はアンテナ706を介して、別の無線システムにおいて伝送される無線信号を受信(すなわち検知)する。無線給電装置7は、この無線システムを構成する無線装置ではない。つまり、無線給電装置7は、この無線システムに属していない。
前述したように、無線システムは、送電信号801の周波数帯や、その近傍の周波数帯で、無線信号を伝送する種々のシステムである。無線システムは、無線LAN、ETC、放送、気象レーダー、アマチュア無線、衛星通信、ロボット、携帯電話等のシステムであり得る。したがって、被干渉信号受信部704は、送電信号801が干渉し得る無線信号(すなわち被干渉信号)を受信する。被干渉信号受信部704は、アレーアンテナを用いて無線信号を受信してもよい。
被干渉信号解析部705は、被干渉信号受信部704によって受信された無線信号を解析する。被干渉信号解析部705は、無線信号を解析して、例えば、その無線信号が伝送される無線システムの信号電力、信号形式、周波数、および種別、並びに無線システム内の無線装置の位置および方向、等を取得する。
被干渉信号解析部705は無線システムの信号電力として、受信された無線信号の受信信号レベルを、あるいは受信信号レベルを平滑化した値のような統計値を、取得する。
被干渉信号解析部705は、無線システムの信号形式として、無線システムで用いられている変調方式、符号化方式等を取得する。被干渉信号解析部705は、受信された無線信号に対して復調処理を行うことにより、無線システムの信号形式を取得できる。ある復調処理を無線信号に対して行ったことによって、例えば、特定の形状(例えば矩形)の波形が得られた場合、または信号点(すなわち0または1のデータ)を含む波形が得られた場合、被干渉信号解析部705は、その復調処理に用いた変調方式を、無線システムの信号形式として取得できる。あるいは、復調処理を行って得られたデータに対して、ある誤り検出・訂正符号を用いて、そのデータの検証(あるいは訂正)が成功した場合、被干渉信号解析部705は、その誤り検出・訂正符号を、無線システムの信号形式として取得できる。誤り検出・訂正符号は、例えば巡回冗長検査(CRC)符号、畳み込み符号、リードソロモン符号、低密度パリティチェック(LDPC)符号等である。
被干渉信号解析部705は、受信された無線信号に対してフーリエ変換のような周波数解析処理を行うことにより、無線システムの周波数を取得する。より詳しくは、被干渉信号解析部705は、無線システムの周波数に関する情報として、受信した無線信号の周波数スペクトル形状、帯域幅、中心周波数等を取得する。さらに、被干渉信号解析部705は、取得した無線システムの信号形式や周波数に基づいて、無線システムの種別を推定し得る。種別は、例えば無線システムを識別可能な名称や番号(ID)で表される。
被干渉信号解析部705は、受信された無線信号の受信信号レベルに基づいて空間減衰量を推定することにより、無線システム内の無線装置の位置(例えば無線装置までの距離)を取得する。また、無線信号がアレーアンテナを用いて受信された場合、被干渉信号解析部705は、無線信号の到来方向を推定することにより、無線システム内の無線装置の方向を取得する。
被干渉信号解析部705は、このような解析結果を用いて、受信した無線信号が伝送される無線システムに関する無線システム情報を生成する。
情報送信部702および情報受信部703は、アンテナ706を介して、別の無線給電装置7との無線通信を行う。なお、送電制御部701による送電信号801の送信に用いられるアンテナ706と、情報送信部702および情報受信部703による通信に用いられるアンテナ706とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。さらに、情報送信部702および情報受信部703は、別の無線給電装置7との有線通信を行ってもよい。以下では、2つの無線給電装置7が無線通信を行う場合について例示する。
情報送信部702は無線システム情報を、アンテナ706を介して別の無線給電装置7に送信する。その別の無線給電装置7は無線システム情報を受信し、受信した無線システム情報を用いて送電信号を制御し得る。無線システム情報は、無線システムの信号電力、信号形式、周波数、種別、および無線システム内の無線装置の位置(あるいは方向)の内の少なくとも1つを含む。
情報受信部703は、別の無線給電装置7からアンテナ706を介して、無線システム情報を受信する。
送電制御部701は、受信された無線システム情報を用いて、送電信号801に関するパラメータを決定する。送電制御部701は、無線システム情報を用いて、これまで用いられていたパラメータを変更してもよいし、あるいはパラメータを変更しないことを決定してもよい。送電制御部701は無線システム情報を用いて、例えば、送電信号801を送信する第1時間、送電信号801を送信する第1方向、送電信号801の第1電力レベル、および送電信号801の第1周波数帯の少なくとも1つを決定する。そして、送電制御部701は、決定された第1時間、第1方向、第1電力レベル、および第1周波数帯の少なくとも1つに基づいて、送電信号801を送信する。つまり、送電制御部701は、決定された第1時間、第1方向、第1電力レベル、および第1周波数帯の少なくとも1つに基づいて、送電信号801である給電ビームを形成する。
以下では、無線システム情報に含まれる情報の種類に応じて、送電信号801を制御する幾つかの例を説明する。
(無線システム情報が位置情報を含む場合)
図9は、第1無線給電装置7Aが送信した無線システム情報を用いて、第2無線給電装置7Bが送電信号の放射方向を制御する例を示す。各無線給電装置7A,7Bは、図8を参照して前述した無線給電装置7と同様の構成を有する。
第1無線給電装置7Aは第1送電信号811を送信することにより、受電器2Aに給電する。つまり、第1無線給電装置7Aは、受電器2Aに対して、第1送電信号811を形成する給電ビームを放射する。
また、第2無線給電装置7Bは第2送電信号812を送信することにより、受電器2Bに給電する。つまり、第2無線給電装置7Bは、受電器2Bに対して、第2送電信号812を形成する給電ビームを放射する。
また、第1無線給電装置7Aは、別の無線システム3に関する無線システム情報を、第2無線給電装置7Bに送信する。無線システム3は、例えば、無線信号を送信および受信し得る複数の無線装置31,32,33で構成される。第2無線給電装置7Bは、受信した無線システム情報を用いて、第2送電信号812を制御する。
より具体的には、第1無線給電装置7Aの情報送信部702は、例えば、無線システム3内の無線装置31の位置情報を含む無線システム情報を、第2無線給電装置7Bに送信する。情報送信部702は無線システム情報を、例えば第2無線給電装置7Bが給電(すなわち第2送電信号812の送信)を開始する前に、第2無線給電装置7Bに送信する。位置情報は、無線装置31の位置(例えば座標)と、無線装置31への方向(例えば方位角、俯角)の少なくとも一方を示す。
第2無線給電装置7Bの情報受信部703は、第1無線給電装置7Aから無線システム情報を受信する。第2無線給電装置7Bの送電制御部701は、受信した無線システム情報に含まれる位置情報を用いて、第2無線給電装置7Bから無線装置31への方向とは異なるように、第2送電信号812の放射方向を決定する。そして、送電制御部701は、決定した放射方向に、第2送電信号812を送信する。第2無線給電装置1Bが、無線装置31への方向とは異なる方向に第2送電信号812を送信することにより、無線装置31への方向の送電信号813が送信される場合と比較して、無線システム3に対して与える意図しない干渉を低減できるか、あるいは回避できる。
なお、第2無線給電装置7Bの給電対象である受電器2Bが、無線装置31と同じ方向に位置している場合、第2送電信号812によって、できるだけ大きなエネルギーを受電器2Bに供給するという観点では、無線装置31に向かう方向に第2送電信号812を送信することが望ましい。このような場合、第2無線給電装置7Bの送電制御部701は、無線装置31に向かう方向と完全に一致しないように、その方向からわずかにずれた(例えば数度ずれた)、第2送電信号812の放射方向を決定する。あるいは、送電制御部701は、無線装置31に向かう方向とは異なるように、第2送電信号812の放射方向を決定すると共に、第2送電信号812(すなわち第2送電信号812を形成する給電ビーム)の指向性を低くすることによって、第2送電信号812がカバーする範囲を広げてもよい。これにより、第2送電信号812の放射方向が、受電器2Bに向かう方向からずれている場合であっても、第2無線給電装置7Bは受電器2Bへの給電を行うことができる。
なお、第2無線給電装置7Bの被干渉信号受信部704、被干渉信号解析部705、および情報送信部702が、第1無線給電装置7Aや別の無線給電装置7に、無線システム情報を送信してもよい。この無線システム情報を受信した無線給電装置7は、同様にして、送電信号を制御し得る。
(無線システム情報が信号電力の情報を含む場合)
前述したように、第1無線給電装置7Aの被干渉信号解析部705は無線システム3の信号電力として、被干渉信号受信部704によって受信された無線信号の受信信号レベルを、あるいは受信信号レベルを平滑化した値のような統計値を、取得する。第1無線給電装置7Aの情報送信部702は、信号電力の情報を含む無線システム情報を第2無線給電装置7Bに送信する。
第2無線給電装置7Bの送電制御部701は、第1無線給電装置7Aから無線システム情報を受信する。第2無線給電装置7Bの送電制御部701は、受信した無線システム情報に含まれる信号電力の情報を用いて、第2送電信号812を送信する時間と電力の少なくとも一方を決定する。
具体的には、送電制御部701は、第2送電信号812に対して、無線システム3との干渉を回避するための制御を行うか否かを判定する。例えば、送電制御部701は、受信信号レベルが閾値未満である場合、第2送電信号812に対して、無線システム3との干渉を回避するための制御を行わないと判断する。これは、無線システム3内の無線装置31が十分に遠方に位置していて、干渉するリスクが低いと推定されるためである。
一方、送電制御部701は、受信信号レベルが閾値以上である場合、第2送電信号812に対して、無線システム3との干渉を回避するための制御を行うと判断する。これは、無線システム3内の無線装置31が近傍に位置していて、干渉するリスクが高いと推定されるためである。この場合、送電制御部701は、第2送電信号812の電力レベルを小さくする。あるいは、送電制御部701は、第2送電信号812の指向性を低くして、幅広い給電ビームにする。これにより、第2送電信号812のエネルギー密度を低下させる。
あるいは、送電制御部701は、無線システム3に関する信号電力の情報が受信されなくなるまで、または受信した信号電力の情報によって示される受信信号レベルが閾値以下になるまで、第2送電信号812の送信を延期してもよい。これにより、無線システム3への干渉の発生を回避する。受信信号レベルに基づく判定のための閾値は、事前に想定される無線システム3において許容できる干渉レベルに基づいて決定されてもよいし、無線給電装置7A,7Bが設置された環境に応じて決定されてもよい。例えば、無線給電装置7A,7Bが使用する周波数帯の近傍の周波数帯を使用する、広く普及した無線システムの運用が想定される場合、その無線システム3で規定されている許容干渉レベルが、閾値として用いられる。あるいは、その許容干渉レベルを用いて算出される電力レベルを閾値として用いてもよい。例えば、第1無線給電装置7A(すなわち無線システム3による無線信号を受信する無線給電装置)が、電磁波の透過減衰量が大きい材質の壁を有する建物内に設置されている場合、その壁によって想定される減衰量だけ、閾値を小さくしてもよい。電磁波の透過減衰量が大きい材質の壁は、例えば鉄筋コンクリート壁である。壁以外の伝搬環境を考慮してもよいし、マージンを付加してもよい。
(無線システム情報が信号形式、周波数、または種別の情報を含む場合)
前述したように、被干渉信号解析部705は、受信された無線信号に対して復調処理を行うことにより、無線システム3で用いられている変調方式、符号化方式等の信号形式を取得する。被干渉信号解析部705は、受信された無線信号に対してフーリエ変換のような周波数解析処理を行うことにより、無線システム3の周波数(例えば、周波数スペクトル形状、帯域幅、中心周波数等)を取得する。さらに、被干渉信号解析部705は、取得した無線システム3の信号形式や周波数に基づいて、無線システムの種別を推定し得る。
第1無線給電装置7Aの情報送信部702は、例えば、無線システム3の信号形式と周波数の少なくとも一方を含む無線システム情報を、第2無線給電装置7Bに送信する。
第2無線給電装置7Bの情報受信部703は、第1無線給電装置7Aから無線システム情報を受信する。第2無線給電装置7Bの送電制御部701は、受信した無線システム情報に含まれる信号形式と周波数の少なくとも一方に基づいて、無線システム3の種別を推定する。具体的には、送電制御部701は、無線システム3が、例えば、免許が不要な移動局を含む無線LANのシステムであるか、あるいは免許が与えられた固定局を含む放送システムであるか、等を推定し得る。
そして、送電制御部701は、推定した無線システム3の種別に応じて、その無線システム3への干渉を回避または低減するように、第2送電信号812を送信する時間、方向、電力レベル、および周波数の少なくとも1つを決定する。具体的には、送電制御部701は、無線システム3の種別毎に干渉許容レベルが規定されているので、その許容レベルを満たすように、第2送電信号812の電力レベルを決定する。あるいは、送電制御部701は、無線システム3の種別で規定された周波数と重ならないように、第2送電信号812の周波数を決定する。送電制御部701は、決定した電力レベルや周波数で、第2送電信号812を送信する。
なお、無線システム3の種別の推定は、第2無線給電装置7Bではなく、第1無線給電装置7Aで行ってもよい。この場合、第1無線給電装置7Aの情報送信部702は、推定した無線システム3の種別の情報を含む無線システム情報を、第2無線給電装置7Bに送信する。そして、第2無線給電装置7Bの送電制御部701は、この無線システム情報に含まれる無線システム3の種別の情報を用いて、無線システム3への干渉を回避または低減するように、第2送電信号812を制御する。
図10は、第1無線給電装置7Aにおいて実行される無線システム情報送信処理の手順の例を示すフローチャートである。
まず、第1無線給電装置7Aの被干渉信号受信部704は、無線信号を検知すべきタイミングであるか否かを判定する(ステップS31)。無線信号を検知すべきタイミングではない場合(ステップS31のNO)、被干渉信号受信部704はステップS31に戻り、無線信号を検知すべきタイミングであるか否かを再度、判定する。
無線信号を検知すべきタイミングである場合(ステップS31のYES)、被干渉信号解析部705は、被干渉信号受信部704が無線信号を受信したか否かを判定する(ステップS32)。無線信号は、第1無線給電装置7Aと、無線システム情報を送信すべき第2無線給電装置7Bとが属していない無線システム3において、伝送される信号である。無線信号は、第1無線給電装置7Aおよび第2無線給電装置7Bによって送信される送電信号811,812が干渉する被干渉信号であり得る。
無線信号を受信した場合(ステップS32のYES)、被干渉信号解析部705は、その無線信号を解析して、無線システム情報を生成する(ステップS33)。無線システム情報は、例えば、無線信号の受信信号レベル、無線システム3の種別、並びに無線信号を送信した無線装置31,32,33の位置および方向の少なくとも1つを示す。情報送信部702は、生成された給電情報を第2無線給電装置7Bに送信する(ステップS34)。
一方、無線信号を受信していない場合(ステップS32のNO)、被干渉信号解析部705は無線システム情報送信処理を終了する。あるいは、情報送信部702は、無線信号を受信していないことを示す無線システム情報を、第2無線給電装置7Bに送信してもよい。
以上の無線システム情報送信処理により、第1無線給電装置7Aは、無線信号が伝送される無線システム3に関する無線システム情報を、第2無線給電装置7Bに送信できる。
図11は、第2無線給電装置7Bにおいて実行される送電制御処理の手順の例を示すフローチャートである。
まず、第2無線給電装置7Bの情報受信部703は、第1無線給電装置7Aから無線システム情報を受信したか否かを判定する(ステップS41)。第1無線給電装置1Aから無線システム情報を受信していない場合(ステップS41のNO)、情報受信部703はステップS41に戻り、第1無線給電装置7Aから無線システム情報を受信したか否かを再度、判定する。
第1無線給電装置7Aから無線システム情報を受信した場合(ステップS41のYES)、送電制御部701は無線システム情報を用いて、第1無線給電装置7Aで受信された無線信号の受信信号レベルが閾値を超えているか否かを判定する(ステップS42)。無線信号の受信信号レベルが閾値を超えている場合(ステップS42のYES)、送電制御部701は無線システム情報を用いて、第2送電信号812に関するパラメータを決定する(ステップS43)。第2送電信号812に関するパラメータは、例えば、第2送電信号812を送信する方向、第2送電信号812を送信する時間、第2送電信号812の電力レベル、および第2送電信号812の周波数をそれぞれ示すパラメータを含み得る。送電制御部701は無線システム情報を用いて、これら方向、時間、電力レベル、および周波数の各パラメータを全て決定してもよいし、この内の幾つかのパラメータを決定してもよい。なお、この内の幾つかのパラメータを決定する場合、送電制御部701は、残りのパラメータについては予め決められた値を用いてもよい。例えば、無線システム情報を用いて第2送電信号812の方向を示すパラメータを決定する場合、送電制御部701は、送電信号の時間、電力レベル、および周波数について、予め決められたパラメータを用いることを決定する。
より詳しくは、送電制御部701は、無線システム3内の無線装置31,32,33が存在する位置と方向の少なくとも一方に基づいて、送電信号の方向、時間、電力レベル、および周波数の少なくとも1つを決定する。また、送電制御部701は、無線システム3の種別に基づいて、送電信号の方向、時間、電力レベル、および周波数の少なくとも1つを決定してもよい。あるいは、送電制御部701は、無線信号の受信信号レベルに基づいて、送電信号の方向、時間、電力レベル、および周波数の少なくとも1つを決定してもよい。さらに、送電制御部101は、無線装置31,32,33が存在する位置と方向の少なくとも一方と、無線システム3の種別と、無線信号の受信信号レベルの任意の組み合わせに基づいて、送電信号の方向、時間、電力レベル、および周波数の少なくとも1つを決定してもよい。
そして、送電制御部701は、決定したパラメータを用いて送電信号を送信する(ステップS44)。送電制御部701は、例えば、決定した方向、時間、電力レベル、および周波数で送電信号を送信する。
また、無線信号の受信信号レベルが閾値以下である場合(ステップS42のNO)、送電制御部701は無線システム情報を用いずに、送電信号に関するパラメータを決定する(ステップS45)。送電制御部701は無線システム情報を用いずに、送電信号の方向、時間、電力レベル、および周波数の各パラメータを全て決定してもよいし、この内の幾つかのパラメータを決定してもよい。なお、この内の幾つかのパラメータを決定する場合、送電制御部701は、残りのパラメータについては予め決められた値を用いてもよい。無線システム情報を用いずに、例えば送電信号の方向を示すパラメータを決定する場合、送電制御部701は、送電信号の時間、電力レベル、および周波数について、予め決められたパラメータを用いることを決定する。あるいは、送電制御部701は、ステップS45で送電信号の方向、時間、電力レベル、および周波数を示すパラメータを決定する代わりに、送電信号の方向、時間、電力レベル、および周波数について予め決められたパラメータを用いることを決定してもよい。
そして、送電制御部701は、決定したパラメータを用いて、送電信号を送信する(ステップS46)。
以上の送電制御処理により、第2無線給電装置7Bは、第2送電信号812が無線システム3で伝送される無線信号に干渉する可能性がある場合、第2送電信号812に関するパラメータを制御する。これにより、無線システム3に対する意図しない干渉を低減しながら、受電器2Bに電力を供給できる。
以上説明した構成により、第1無線給電装置7Aは別の無線システム3に関する無線システム情報を、第2無線給電装置7Bに送信する。無線システム情報は、無線システム3の信号電力、信号形式、周波数、種別、および無線システム3内の無線装置31の位置(あるいは方向)の内の少なくとも1つを含む。第2無線給電装置7Bは、この無線システム情報を用いて、第2送電信号812を送信する時間、方向、電力レベル、および周波数の少なくとも1つを制御する。そして、第2無線給電装置7Bは、決定した時間、方向、電力レベル、および周波数の少なくとも1つに基づいて、第2送電信号812を送信する。これにより、第2送電信号812によって発生する、無線システム3に対する意図しない干渉を回避または低減できる。
なお、第1無線給電装置7Aは、1対1の通信によって第2無線給電装置7Bに無線システム情報を送信してもよいし、1対Nのブロードキャスト通信によって、第2無線給電装置7Bを含む複数の無線給電装置に無線システム情報を送信してもよい。
また、第1無線給電装置7Aが無線システム情報の送信のみを行い、第2無線給電装置7Bが無線システム情報の受信のみを行う構成であってもよい。より具体的には、例えば、情報送信部702を備え、情報受信部703を備えていない第1無線給電装置7Aが、情報受信部703を備え、情報送信部702を備えていない第2無線給電装置7Bに、無線システム情報を送信する構成であってもよい。
さらに、無線給電装置7A,7Bは、第1実施形態の無線給電装置1の構成をさらに備えていてもよい。この場合、例えば、第1無線給電装置7Aは給電情報と無線システム情報とを組み合わせて、第2無線給電装置7Bに送信する。第2無線給電装置7Bは、受信した給電情報と無線システム情報とを用いて、第2送電信号812の送信時間、送信方向、電力レベル、周波数等を制御し得る。
以上説明したように、第1および第2実施形態によれば、別の無線システム3への干渉を低減できる。無線給電装置1の情報受信部103は、別の第2無線給電装置1から、第2無線給電装置1が電力供給のために送信する第2送電信号に関する給電情報を受信する。送電制御部101は、この給電情報を用いて、第1送電信号を送信する第1時間、第1送電信号を送信する第1方向、および第1送電信号の第1電力レベルの少なくとも1つを決定し、決定した第1時間、第1方向、および第1電力レベルの少なくとも1つに基づいて、第1送電信号を送信する。これにより、受電器2に対する給電を行いながら、無線システム3に対する意図しない干渉を回避または低減できる。
また、第1無線給電装置7Aの情報受信部703は、この無線給電装置7Aと、別の第2無線給電装置7Bが属していない無線システム3であって、第2無線給電装置7Bが受信した無線信号が伝送される無線システム3に関する無線システム情報を、第2無線給電装置7Bから受信する。送電制御部701は、この無線システム情報を用いて、第1送電信号を送信する第1時間、第1送電信号を送信する第1方向、第1送電信号の第1電力レベル、および第1送電信号の第1周波数帯の少なくとも1つを決定し、決定した第1時間、第1方向、第1電力レベル、および第1周波数帯の少なくとも1つに基づいて、第1送電信号を送信する。これにより、受電器2に対する給電を行いながら、無線システム3に対する意図しない干渉を回避または低減できる。
第1および第2実施形態に記載された様々な機能の各々は、回路(処理回路)によって実現されてもよい。処理回路の例には、中央処理装置(CPU)のような、プログラムされたプロセッサが含まれる。このプロセッサは、メモリに格納されたコンピュータプログラム(命令群)を実行することによって、記載された機能それぞれを実行する。このプロセッサは、電気回路を含むマイクロプロセッサであってもよい。処理回路の例には、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロコントローラ、コントローラ、他の電気回路部品も含まれる。これら実施形態に記載されたCPU以外の他のコンポーネントの各々もまた処理回路によって実現されてもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。