JP2021116238A - 新規化合物、およびその利用 - Google Patents

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久志 土居
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恭良 渡辺
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Abstract

【課題】生体内のTRPA1を可視化する化合物の提供。【解決手段】下記式(1)または式(2)で示される化合物、又はその塩。(式中、R1及びR2は、放射性同位体を有する置換基。)【選択図】なし

Description

本発明は、新規化合物、およびその利用に関する。
生体を非侵襲にてイメージングする方法としては、X線CT(Computed Tomography)、MRI(Magnetic Resonance Imaging)およびPET(Positron Emission Tomography)が一般的である。解像度が良好である、使用できる薬剤が多様である、機能診断が可能であるという点から、それらの中でも、特にPETに注目が集まっている。
PETは、陽電子が電子と衝突することによって放射されるγ線を用いて断層画像を撮影する技術である。具体的に、ポジトロン(陽電子)を放出する放射性核種で標識した分子(いわゆる、PET分子プローブ)を生体内に投与し、その放射性核種の崩壊時に放出される陽電子が近傍の電子と衝突すると、511KeVのエネルギーを持つ2本のγ線が180度方向に放出される。このγ線を検出することによって、PET分子プローブの生体内における存在位置と、その物質量とを定量的に調べることができる。現在、PETは、病気の診断や創薬研究の促進に向けた分子イメージング技術として広く利用されている。
疼痛の治療現場においては、緩和ケアが主流であり、根治療法は存在しない。除痛効果の評価については、主観的指標はあるものの、より正確な客観的指標およびサロゲートマーカーは存在せず、除痛効果の評価は、問診、視診および触診などの定性的手法に限られている。除痛効果を客観的に評価する一つの手段として、画像診断があげられ、近年、画像診断のなかでも、特にPETを除痛効果の評価に用いようとする試みがなされている。その理由は、PETの解像度が良好であり、PETに使用できる薬剤が多様であり、かつ、PETによって機能診断が可能であるからである。除痛効果の評価にPETを利用することができれば、根治療法のない疼痛の診断および/または治療にかかわる医療技術を大幅に向上させることが可能となる。
TRPA1(Transient Receptor Potential Ankyrin 1)は、TRPチャネルの一種であり、侵害受容体として知られている。その機能の1つとして、痛み受容体としての機能が挙げられる。そのため、TRPA1に特異的に結合する化合物の開発は、鎮痛剤の開発につながると期待され、製薬企業によりTRPA1に特異的に結合する化合物の開発が進められている。例えば、非特許文献1にはTRPA1のアゴニストである化合物、また、非特許文献2にはTRPA1のアンタゴニストである化合物が示されている。
また、生体内のTRPA1を可視化することができれば、疼痛のメカニズムの解明、および、疼痛の診断方法の構築に役立つと考えられる。例えば、神経組織のTRPA1を可視化できれば、疼痛の医学的定量診断法の開発(痛みの指標化)、および、患者の層別化が可能になり、治療薬の開発の一助になると考えられる。それ故に、生体内のTRPA1を可視化する技術の開発が求められている。
Junichiro Takaya,et.al., J.Am.Chem.Soc., 2015, 137, 15859-15864. Lisa Rooney, et.al., J.Med.Chem., 2014, 57, 5129-5140.
しかしながら、生体内のTRPA1を可視化する技術は、未だ確立されていない。
本発明の一態様は、生体内のTRPA1を可視化する技術を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、TRPA1に特異的に結合する化合物を放射性同位体で標識し、当該化合物を生体に投与することによって、生体内のTRPA1の可視化が可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の構成を含む。
<1>下記式(1)または式(2)で表される化合物、またはその塩:
Figure 2021116238
(式(1)中、Rは、放射性同位体を有する置換基である。)
Figure 2021116238
(式(2)中、Rは、放射性同位体を有する置換基である。)。
<2>RおよびRは、各々、独立して、ハロゲンの放射性同位体、放射性同位体を有するアルキル基、放射性同位体で置換されたアルキル基、放射性同位体を有するアルコキシ基、および、放射性同位体で置換されたアルコキシ基からなる群から選択される置換基である、<1>に記載の化合物、またはその塩。
<3><1>または<2>に記載の化合物またはその塩を有効成分として含んでいる、バイオイメージング剤。
<4>TRPA1をイメージングするためのものである、<3>に記載のバイオイメージング剤。
<5>PETイメージング、またはTRPA1の発現量に影響を及ぼす病態の評価に使用されるものである、<3>または<4>に記載のバイオイメージング剤。
<6>下記式(1)または一般式(2)で表される化合物、またはその塩を備えている、バイオイメージングキット:
Figure 2021116238
(式(1)中、Rは、放射性同位体を有する置換基である。)
Figure 2021116238
(式(2)中、Rは、放射性同位体を有する置換基である。)。
本発明の一態様によれば、生体内のTRPA1を可視化する技術を提供することができる。
実施例における、11C核を有する式(1)で表される化合物の分取HPLCチャートを表した図である。 実施例における、11C核を有する式(1)で表される化合物の分析HPLCチャートを表した図である。 実施例における、TRPA1に対するアゴニスト活性の評価試験の結果を示すグラフである。 実施例における、11C核を有する式(2)で表される化合物の分取HPLCチャートを表した図である。 実施例における、11C核を有する式(2)で表される化合物の分析HPLCチャートを表した図である。 実施例における、PETイメージング(ラットの全身)の像である。 実施例における、PETイメージング(ラットの頭部)の像である。 実施例における、PETイメージング(ラットの全身)の像である。 実施例における、PETイメージング(ラットの頭部)の像である。
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されない。本発明は、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態及び実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態及び実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。本明細書中、数値範囲に関して「A〜B」と記載した場合、当該記載は「A以上B以下」を意図する。
〔1.化合物、またはその塩〕
本実施の形態の化合物、またはその塩は、下記式(1)または式(2)で示される化合物またはその塩である:
Figure 2021116238
(式(1)中、Rは、放射性同位体を有する置換基である。);
Figure 2021116238
(式(2)中、Rは、放射性同位体を有する置換基である。)。
上記式(1)および式(2)中、RおよびRは、各々、独立して、ハロゲンの放射性同位体、放射性同位体を有するアルキル基、放射性同位体で置換されたアルキル基、放射性同位体を有するアルコキシ基、および、放射性同位体で置換されたアルコキシ基からなる群から選択される置換基であることが好ましい。当該構成であれば、式(1)または式(2)で示される化合物またはその塩を、容易に合成することができる。
およびRがハロゲンの放射性同位体である場合、当該ハロゲンとしては、特に限定されず、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アスタチン、または、テネシンであり得る。化合物またはその塩の合成を容易なものとし、適度な長さの半減期を有する化合物またはその塩を実現し、かつ、患者の被爆を低減させるという観点から、上記ハロゲンの中では、フッ素が好ましい。
およびRが、放射性同位体を有するアルキル基、または、放射性同位体で置換されたアルキル基である場合、当該アルキル基としては、特に限定されないが、化合物またはその塩の合成を容易なものとし、かつ、化合物またはその塩とTRPA1との親和性を増加させるという観点から、炭素数が20以下であるものが好ましく、炭素数が10以下であるものがより好ましく、炭素数5以下であるものがより好ましく、炭素数3以下であるものがより好ましい。当該アルキル基は、直鎖状、分岐状、または、環状のものであり得る。
およびRが放射性同位体を有するアルキル基、または、放射性同位体で置換されたアルキル基である場合、当該放射性同位体は、任意の原子(例えば、炭素、または、ハロゲン)の放射性同位体であり得る。放射性同位体が炭素の放射性同位体である場合、RおよびRは、放射性同位体を有するアルキル基であり得る。一方、放射性同位体がハロゲンの放射性同位体である場合、RおよびRは、放射性同位体で置換されたアルキル基であり得る。
上述したアルキル基に関して、放射性同位体がフッ素の放射性同位体である場合、RおよびRは、各々、独立して、フルオロメチル基、フルオロエチル基、フルオロプロピル基、または、フルオロブチル基であってもよい。放射性同位体が炭素の放射性同位体である場合、RおよびRは、各々、独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、または、ブチル基であってもよい。放射性同位体の詳細については、後述する。
およびRが放射性同位体を有するアルコキシ基、または、放射性同位体で置換されたアルコキシ基である場合、当該アルコキシ基としては、特に限定されないが、化合物またはその塩の合成を容易なものとし、かつ、化合物またはその塩とTRPA1との親和性を増加させるという観点から、炭素数が20以下であるものが好ましく、炭素数が10以下であるものがより好ましく、炭素数5以下であるものがより好ましく、炭素数3以下であるものがより好ましい。当該アルコキシ基は、直鎖状、分岐状、または、環状のものであり得る。
およびRが放射性同位体を有するアルコキシ基、または、放射性同位体で置換されたアルコキシ基である場合、当該放射性同位体は、任意の原子(例えば、炭素、または、ハロゲン)の放射性同位体であり得る。放射性同位体が炭素の放射性同位体である場合、RおよびRは、放射性同位体を有するアルコキシ基であり得る。一方、放射性同位体がハロゲンの放射性同位体である場合、RおよびRは、放射性同位体で置換されたアルコキシ基であり得る。
上述したアルコキシ基に関して、放射性同位体がフッ素の放射性同位体である場合、RおよびRは、各々、独立して、フルオロメトキシ基、フルオロエトキシ基、フルオロプロポキシ基、または、フルオロイソブロポキシ基であってもよい。放射性同位体が炭素の放射性同位体である場合、RおよびRは、各々、独立して、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、または、イソブロポキシ基であってもよい。放射性同位体の詳細については、後述する。
上述したように、上記Rおよび/または上記Rは、任意の原子の放射性同位体を有し得る。放射性同位体は特に限定されないが、適度な半減期を有する放射性同位体が好ましい。このような放射性同位体としては、例えば、炭素の放射性同位体、および、フッ素の放射性同位体が挙げられ、なかでも11C、および、18Fが好ましい。
11C(半減期:20.4分)は、半減期が短いので、患者に投与された場合の被爆を最小限とすることができる。18F(半減期:109.8分)は、半減期が11Cと比較して長いので、患者の被爆は若干上昇するが、18Fを有する化合物を合成してから使用するまでの、時間的な余裕を得ることができる。本実施形態に係る化合物が、必ずしも使用される場での用事調製が可能であるとは限らないため、18Fを有する化合物は、合成専用施設等にて合成した後、当該化合物を使用する場に取り寄せて使用することが可能となる点で、優れている。
式(1)で示される化合物またはその塩に関して、Rが結合している芳香環内の炭素原子の位置は、特に限定されない。五員環(具体的には、窒素原子および硫黄原子を含む五員環)が結合している芳香環内の炭素の位置を基準として、Rが結合している芳香環内の炭素原子は、オルト位の炭素原子であってもよく、メタ位の炭素原子であってもよく、パラ位の炭素原子であってもよい。化合物またはその塩の合成を容易なものとするという観点から、Rが結合している芳香環内の炭素原子は、パラ位の炭素原子であることが好ましい。
本実施の形態の化合物の塩は、如何なる形態の塩であってもよい。本明細書において、「塩」とは、被験体に投与することが生理学的に許容され得る塩を意図する。塩の例としては、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩など)、アンモニウム塩、有機塩基塩(トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩など)、有機酸塩(酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、蟻酸塩、トルエンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩など)、無機酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、燐酸塩など)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記式(1)および式(2)で表される化合物およびその塩は、公知の方法(例えば、「J. Nucl. Med., 1995, 36, 1275−1281」、「J. Pharmacol. Sci., 2003, 91, 105−112」、「Chem. Rec., 2014, 14, 516−541」、「J. Org. Chem., 2015, 80, 6250−6258」、「J. Med. Chem., 2012, 55, 2342−2352」、「ACS Chem. Neurosci, 2018, 9, 578−586」、「Org. Lett., 2014, 16, 3224−3227」、または「Org. Lett., 2015, 17, 5780−5783」に記載の方法)にしたがって製造することができる。より具体的には、後述の実施例に記載の方法にしたがって合成することができる。上記式(1)および式(2)で表される化合物およびその塩は、市販の化合物に対して、放射性同位体を有する置換基(具体的には、RまたはR)を導入することによって製造することもできる。市販の化合物に対してRを導入する方法、および、市販の化合物に対してRを導入する方法としては、基本的に同じ方法を採用することが可能であって、例えば実施例に記載の方法を採用することが可能である。
〔2.バイオイメージング剤〕
本実施の形態のバイオイメージング剤は、上述した式(1)または式(2)で表される化合物またはその塩を有効成分として含んでいる。当該バイオイメージング剤は、上述した式(1)または式(2)で表される化合物またはその塩のうち、何れか一つを含んでいてもよいし、複数を含んでいてもよい。式(1)または式(2)で表される化合物またはその塩については既に説明したので、ここでは、その説明を省略する。
本明細書中において、「バイオイメージング剤」とは、生体内に投与された後、特定の波長の光(例えば、近赤外領域の光)によって蛍光を発し、当該蛍光の分布および/または強度などに基づいて、目的とする細胞および/または組織などのイメージを取得するための、組成物を意図する。
上記バイオイメージング剤が投与される生体としては、特に限定されず、例えば、非ヒト哺乳類、および、ヒトなどが挙げられる。非ヒト哺乳動物の例としては、霊長類(サル、類人猿など)、偶蹄類(ウシ、イノシシ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、奇蹄類(ウマなど)、齧歯類(マウス、ラット、ハムスター、リスなど)、ウサギ目(ウサギなど)、食肉類(イヌ、ネコ、フェレットなど)などが挙げられる。上述の非ヒト哺乳動物は、家畜またはコンパニオンアニマルであってもよく、野生動物であってもよい。
イメージが取得される組織としては、特に限定されず、例えば、脳(例えば、脳の特定の領域)、肺、体表面(例えば、皮膚)、リンパ節、脳血管、腫瘍新生血管、および、生体組織などが挙げられる。
イメージが取得される細胞としては、特に限定されず、例えば、軟骨細胞、骨芽細胞、線維芽細胞、表皮細胞、上皮細胞、脂肪細胞、肝細胞、膵細胞、および、筋細胞などが挙げられる。
本バイオイメージング剤は、生体内の臓器のイメージングすることに優れており、例えば、脳(例えば、脳の特定の領域)、肺、および、体表面(例えば、皮膚)のイメージングに優れている。
具体的に、本実施の形態のバイオイメージング剤が、上述した式(1)で表される化合物またはその塩を有効成分として含んでいる場合、当該バイオイメージング剤は、脳(例えば、脳の特定の領域)、および、肺のイメージングに優れている。それ故に、当該バイオイメージング剤は、脳または肺のイメージング(換言すれば、脳または肺に存在するTRPA1のイメージング)に用いられることが好ましい。
一方、本実施の形態のバイオイメージング剤が、上述した式(2)で表される化合物またはその塩を有効成分として含んでいる場合、当該バイオイメージング剤は、脳(例えば、脳の特定の領域)、および、体表面(例えば、皮膚)のイメージングに優れている。それ故に、当該バイオイメージング剤は、脳または体表面のイメージング(換言すれば、脳または体表面に存在するTRPA1のイメージング)に用いられることが好ましい。
後述する実施例に示すように、式(1)で表される化合物またはその塩は、式(2)で表される化合物またはその塩よりも、脳内の部位に応じた集積度合いの差が大きい。それ故に、脳内の特定領域を脳内の他の領域と区別しながらイメージングするという観点からは、式(1)で表される化合物またはその塩の方が好ましい。
本実施の形態のバイオイメージング剤は、TRPA1をイメージングする目的、より具体的に、TRPA1を定量的にイメージングする目的で使用され得る。したがって、本実施形態に係るバイオイメージング剤であれば、後述の病態の重篤度を定量的に診断することができる。
TRPA1は、末梢神経細胞をはじめ、肺、内耳、腸管、皮膚角化細胞、血管内皮細胞、膵臓β細胞、脳アストロサイトに発現していることが知られている。すなわち、本実施の形態のバイオイメージング剤は、TRPA1の発現量に影響を及ぼす(換言すれば、TRPA1の発現量と相関を有する)病態の評価に使用され得る。
例えば、疼痛、癌、変形性関節炎、帯状疱疹後神経痛、肺疾患(例えば、結核、咳発作、および、気管支喘息)、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、糖尿病性神経障害、抗がん剤誘発末梢神経障害、膵臓や脳神経系の異常に関してそれらの診断評価が可能となる。しかしながら、これらの病態に限定されることはなく、TRPA1に関連したあらゆる生命機能の診断評価に適用可能である。なお、上記癌は、あらゆる固形癌および血液癌を包含する。当該癌としては、特に激しい痛みを伴う例として、骨肉腫および骨転移した癌などの、骨に発生する癌などが挙げられる。
上記病態を評価する方法としては、PETが好適だが、これに限定されず、例えば、SPECT(Single photon emission computed tomography)などでもよい。また、用いられる化合物またはその塩が、13C−標識体である場合は、LC−MS(Liquid chromatography-mass spectrometry)による代謝物質量分析が、用いられる化合物またはその塩が、14C−標識体である場合は、AMS(Accelerator mass spectrometry)による代謝物質量分析が、病態を評価する方法として使用可能である。
本実施の形態のバイオイメージング剤は、PETイメージングに使用され得る。バイオイメージング剤がPETにおいて使用される場合、被検者に対するイメージング剤の投与量が微量でよいため、TRPA1の活性化または阻害による薬理作用(除痛、熱傷感覚の惹起など)が被検者に表れず、安全である。また、本実施の形態に係るイメージング剤であれば、放射性同位体による被爆を最小限とすることができる。
上記バイオイメージング剤は、上述した有効成分とは異なる成分を含んでいてもよい。
有効成分とは異なる成分として、緩衝剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、等張化剤、高分子量重合体、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、担体、希釈剤、溶媒、可溶化剤、安定剤、充填剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁剤、等張化剤、無痛化剤および界面活性剤などを挙げることができる。
上記緩衝剤の例としては、リン酸、リン酸塩、ホウ酸、ホウ酸塩、クエン酸、クエン酸塩、酢酸、酢酸塩、炭酸、炭酸塩、酒石酸、酒石酸塩、ε―アミノカプロン酸、およびトロメタモールなどが挙げられる。上記リン酸塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムなどが挙げられる。上記ホウ酸塩としては、ホウ砂、ホウ酸ナトリウム、およびホウ酸カリウムなどが挙げられる。上記クエン酸塩としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、およびクエン酸三ナトリウムなどが挙げられる。上記酢酸塩としては、酢酸ナトリウム、および酢酸カリウムなどが挙げられる。上記炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、および炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。上記酒石酸塩としては、酒石酸ナトリウム、および酒石酸カリウムなどが挙げられる。
上記pH調整剤の例としては、塩酸、リン酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウムなどが挙げられる。
上記等張化剤の例としては、イオン性等張化剤(塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、および、塩化マグネシウムなど)、および、非イオン性等張化剤(グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、および、マンニトールなど)が挙げられる。
上記防腐剤の例としては、ベンザルコニウム塩化物、ベンザルコニウム臭化物、ベンゼトニウム塩化物、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、および、クロロブタノールなどが挙げられる。
上記抗酸化剤の例としては、アスコルビン酸、トコフェノール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、および、亜硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
上記賦形剤の例としては、例えば、乳糖、白糖、D−マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、デンプンおよび結晶セルロースを挙げることが、これらに限定されない。
上記滑沢剤の例としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ワックス、タルクおよびコロイドシリカを挙げることが、これらに限定されない。
上記結合剤の例としては、例えば、α化デンプン、メチルセルロース、結晶セルロース、白糖、D−マンニトール、トレハロース、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンを挙げることが、これらに限定されない。
上記崩壊剤の例としては、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウムおよびカルボキシメチルスターチナトリウムを挙げることが、これらに限定されない。
上記溶剤の例としては、例えば、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油およびトリカプリリンを挙げることが、これらに限定されない。
上記溶解補助剤の例としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、トレハロース、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムを挙げることが、これらに限定されない。
上記懸濁剤の例としては、例えば、界面活性剤(例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン)および親水性高分子(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース)を挙げることが、これらに限定されない。
上記等張化剤の例としては、例えば、塩化ナトリウム、グリセリンおよびD−マンニトールを挙げることが、これらに限定されない。
上記高分子量重合体の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、および、アテロコラーゲンなどが挙げられる。
上記バイオイメージング剤に含まれる有効成分の量は、特に限定されず、例えば、イメージング剤に対して、0.001重量%〜100重量%であってもよく、0.01重量%〜100重量%であってもよく、0.1重量%〜100重量%であってもよく、0.1重量%〜95重量%であってもよく、0.1重量%〜90重量%であってもよく、0.1重量%〜80重量%であってもよく、0.1重量%〜70重量%であってもよく、0.1重量%〜60重量%であってもよく、0.1重量%〜50重量%であってもよく、0.1重量%〜40重量%であってもよく、0.1重量%〜30重量%であってもよく、0.1重量%〜20重量%であってもよく、0.1重量%〜10重量%であってもよい。
上記バイオイメージング剤に含まれる有効成分とは異なる成分の量は、特に限定されず、例えば、イメージング剤に対して、0重量%〜99.999重量%であってもよく、0重量%〜99.99重量%であってもよく、0重量%〜99.9重量%であってもよく、5重量%〜99.9重量%であってもよく、10重量%〜99.9重量%であってもよく、20重量%〜99.9重量%であってもよく、30重量%〜99.9重量%であってもよく、40重量%〜99.9重量%であってもよく、50重量%〜99.9重量%であってもよく、60重量%〜99.9重量%であってもよく、70重量%〜99.9重量%であってもよく、80重量%〜99.9重量%であってもよく、90重量%〜99.9重量%であってもよい。
上記バイオイメージング剤の投与方法は、特に限定されない。具体的に、投与方法としては、注射投与(例えば、経静脈投与、および、経動脈投与)、経口投与、鼻腔投与、口腔粘膜投与、および、経皮投与などが例示できる。それ故に、本実施の形態のバイオイメージング剤は、注射剤、内服薬、経鼻薬、または、外用薬であり得る。上記バイオイメージング剤は、溶液または懸濁液のいずれかの液状製剤として調製されていてもよいし、液体(例えば、緩衝液)に溶解もしくは懸濁するために適切な固形製剤として調製されていてもよい。
生体内に導入されたバイオイメージング剤を検出するために、生体に対して照射される光の波長は、特に限定されないが、吸光度が高くなる観点から、近赤外領域の光であることが好ましく、700nm〜2000nmの近赤外光であることが好ましく、800nm〜1500nmの近赤外光であることがより好ましく、900nm〜1500nmの近赤外光であることがより好ましく、1000nm〜1500nmの近赤外光であることがより好ましい。
〔3.バイオイメージングキット〕
本実施の形態のバイオイメージングキットは、上記式(1)および式(2)で表される化合物、またはその塩を備えている。なお、上記〔1.化合物、またはその塩〕および〔2.バイオイメージング剤〕で説明した構成については、ここでは、その説明を省略する。
本実施の形態のバイオイメージングキットでは、上記式(1)のR、および、上記式(2)のRは、各々、独立して、ハロゲンの放射性同位体、放射性同位体を有するアルキル基、放射性同位体で置換されたアルキル基、放射性同位体を有するアルコキシ基、および、放射性同位体で置換されたアルコキシ基からなる群から選択される置換基であることが好ましい。
本実施の形態のバイオイメージングキットは、TRPA1をイメージングするためのキットであり得る。また、本実施の形態のバイオイメージングキットは、脳(例えば、脳の特定の領域)、肺、および/または、体表面(例えば、皮膚)をイメージングするためのキットであり得る。
本実施の形態のバイオイメージングキットは、上記式(1)および式(2)で表される化合物またはその塩以外の構成を備えていてもよい。当該構成としては、例えば、緩衝剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、等張化剤、高分子量重合体、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、担体、希釈剤、溶媒、可溶化剤、安定剤、充填剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁剤、等張化剤、無痛化剤および界面活性剤などを挙げることができる。当該構成によれば、上述したバイオイメージング剤を、容易に調製することができる。
また、上記構成として、注射器を挙げることができる。この場合、本実施の形態のバイオイメージングキットを用いて、バイオイメージング剤を、容易に被検者へ投与することができる。
〔4.その他〕
本発明の一実施形態は以下のように構成することも可能である。
<1>式(1)または式(2)で表される化合物、またはその塩を有効成分として含んでいるバイオイメージング剤を被検体(例えば、哺乳類、非ヒト哺乳類、霊長類、偶蹄類、奇蹄類、齧歯類、ウサギ目、または、食肉類)に投与する工程を有する、バイオイメージング方法。
<2>上記化合物のRおよびRは、各々独立して、ハロゲンの放射性同位体、放射性同位体を有するアルキル基、放射性同位体で置換されたアルキル基、放射性同位体を有するアルコキシ基、および、放射性同位体で置換されたアルコキシ基からなる群から選択される置換基である、<1>に記載のバイオイメージング方法。
<3>TRPA1をイメージングするための、<1>または<2>に記載のバイオイメージング方法。
本発明の一実施形態は、以下のように記載することも可能である。
<4>バイオイメージング剤の製造のための式(1)または式(2)で表される化合物、またはその塩の使用。
<5>上記化合物のRおよびRは、各々独立して、ハロゲンの放射性同位体、放射性同位体を有するアルキル基、放射性同位体で置換されたアルキル基、放射性同位体を有するアルコキシ基、および、放射性同位体で置換されたアルコキシ基からなる群から選択される置換基である、<4>に記載の使用。
<6>上記バイオイメージング剤は、TRPA1をイメージングするためのものである、<4>または<5>に記載の方法。
[1:式(1)で表される化合物の前駆体(フェノール前駆体)]
式(1)で表される化合物の前駆体(フェノール前駆体)の合成方法の概略を以下に示す。また、各合成ステップの詳細についても、後述する。
Figure 2021116238
1.化合物1−2aの合成
4−アミノ(2−アミノ−チアゾール−4−イル)−フェノール(960.5mg、5.0mmol)を含むDMF溶液(25.0mL)に、イミダゾール(679.5mg、10.0mmol)を加え、氷浴下で、TBSCl(983.8mg、6.5mmol)を含むDMF溶液(25.0mL)を滴下し、その後、当該混合物を室温で3日間攪拌した。反応が終わった当該混合物に水を加え、当該混合物を酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、当該有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、以下に示すように白色個体の化合物1−2a(1.4g、4.4mmol、78%)を得た。
Figure 2021116238
NMRを用いて行った化合物1−2aの同定結果を以下に示す。
H NMR(400MHz、CDCl
δ=7.64(dt,J=9.1Hz,2.5Hz,2H)、6.84(dt,J=9.1Hz,2.7Hz,2H)、6.59(s,1H)、4.92(s,2H)、0.99(s,9H)、0.20(s,6H)。
2.化合物1−3aの合成
化合物1−2a(154.0mg、0.5mmol)に、HCTU(O−(6−Chloro−1H−benzotriazol−1−yl)−N,N,N',N'−tetramethyluronium hexafluorophosphate)(290.7mg,0.7mmol)、DIPEA(125.0μL、0.7mmol)、および3−メトキシプロピオン酸(66.0μL,0.7mmol)を加えた後、当該混合物をジクロロメタン(4.0mL)に溶解させ、室温で18時間攪拌した。反応が終わった混合物に水を加え、当該混合物を酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、および飽和食塩水で洗浄した後、当該有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、以下に示すように白色個体の化合物1−3a(188.9mg、0.5mmol、96%)を得た。
Figure 2021116238
NMRを用いて行った化合物1−3aの同定結果を以下に示す。
H NMR(400MHz、CDCl)δ=9.78(s,1H)、7.70(dt,J=9.2Hz、2.4Hz,2H)、6.99(s,1H)、6.87(dt,J=8.9Hz、2.3Hz,2H)、3.74(t,J=5.4Hz,2H)、3.48(s,3H)、2.74(t,J=5.6Hz,2H)、0.99(s,9H)、0.21(s,6H)。
3.化合物1−4aの合成
アルゴン雰囲気下、BHcomplex(0.9M THF溶液、0.8mL)に、氷浴下で化合物1−3a(193.7mg、0.5mmol)を含むTHF溶液(5.0mL)を加え、当該混合物を75℃で20時間攪拌した。放冷後、反応が終わった混合物に水を加え、当該混合物を酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、当該有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、以下に示すように白色個体の化合物1−4a(126.2mg、0.3mmol、68%)を得た。
Figure 2021116238
化合物1−4aのNMRによる同定結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.66(dt,J=9.2Hz,2.6Hz,2H)、6.83(dt,J=8.9Hz,2.3Hz,2H)、6.55(s,1H)、5.67(s,1H)、3.53(t,J=5.8Hz,2H)、3.41(q,J=5.5Hz,2H)、3.36(s,3H)、1.94(quin,J=6.2Hz,2H)、0.98(s,9H)、0.19(s,6H)。
4.化合物1−5aの合成
化合物1−4a(126.2mg、0.3mmol)を含む酢酸エチル溶液(1.0mL)に、トリエチルアミン(62.0μL、0.4mmol)を加え、更に、氷浴下でクロロアセチルクロリド(35.0μL、0.4mmol)を加えた。その後、当該混合物を室温で16時間攪拌した。反応が終わった混合物に水を加え、当該混合物を酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、当該有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、以下に示すように白色個体の化合物1−5a(120.0mg、0.3mmol、79%)を得た。
Figure 2021116238
化合物1−5aのNMRによる同定結果を以下に示す。
H NMR(400MHz、CDCl)δ=7.75(d,J=8.8Hz,2H)、7.10(s,1H)、6.88(dt,J=9.0Hz,2.4Hz,2H)、4.54(s,2H)、4.39(s,2H)、3.44(t,J=5.4Hz,2H)、3.36(s,3H)、2.20(s,2H)、1.00(s,9H)、0.22(s,6H)。
5.化合物1−6aの合成
化合物1−5a(201.6mg、0.4mmol)を含むTHF/HO溶液(2:1、3.0mL)に、酢酸(52.0μL、0.9mmol)を加え、更に、氷浴下で1M TBAF THF溶液(0.5mL、0.5mmol)を加えた。その後、当該混合物を同温で3時間攪拌した。反応が終わった混合物に水を加え、当該混合物を酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、当該有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、更に、精製物をクロロホルムで洗浄し、以下に示すように白色個体の化合物1−6a(85.6mg、0.3mmol、57%)を得た。
Figure 2021116238
化合物1−6aのNMRによる同定結果を以下に示す。
H NMR(400MHz、CDCl)δ=7.77(d,J=8.6Hz,2H)、7.09(s,1H)、6.88(dt,J=9.4Hz,2.6Hz,2H)、4.87(s,1H)、4.54(s,2H)、4.39(s,2H)、3.44(t,J=5.6Hz,2H)、3.36(s,3H)、2.19(s,2H)。
[2:式(1)で表される化合物]
式(1)で表される化合物の合成方法の概略を以下に示す。また、各合成ステップの詳細についても、後述する。
Figure 2021116238
化合物1−2bは市販品を用いた(商品名 2−アミノ−4−(4−フルオロフェニル)−1,3−チアゾール、富士フィルム和光純薬株式会社製)。
1.化合物1−2c、および、化合物1−2dの合成
4−アミノ(2−アミノ−チアゾール−4−イル)−フェノール(480.7mg、2.5mmol)とKCO(521.1mg、3.8mmol)との混合物にDMF(10.0mL)を加え、更に、2−フルオロエチルトシラート(512.0μL、3.0mmol)を加えた。その後、当該混合物を50℃で24時間攪拌した。当該混合物を放冷した後、当該混合物に水を加え、当該混合物を酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を1M NaOH水溶液、および飽和食塩水で洗浄した後、当該有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、更に、精製物を酢酸エチルで洗浄し、以下に示す白色粉末の化合物1−2c(280.6mg、1.2mmol、47%)を得た。
また、4−アミノ(2−アミノ−チアゾール−4−イル)−フェノールと3−フルオロプロピルトシラートとを用いて同様の操作を行うことで、以下に示すように黄色粉末の化合物1−2d(103.7mg、0.4mmol、41%)を得た。
Figure 2021116238
化合物1−2c、および、化合物1−2dのNMRによる同定結果を以下に示す。
化合物1−2c
Figure 2021116238
H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.73(dt,J=8.8Hz,2.5Hz,2H)、6.94(dt,J=9.2Hz,2.7Hz,2H)、6.61(s,1H)、4.91(s,2H)、4.83(t,J=4.4Hz,1H)、4.71(t,J=4.2Hz,1H)、4.28(t,J=4.2Hz,1H)、4.21(t,J=4.4Hz,1H)。
化合物1−2d
Figure 2021116238
H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.71(dt,J=12.0Hz,2.8Hz,2H)、6.91(dt,J=9.2Hz,2.8Hz,2H)、6.59(s,1H)、4.99(s,2H)、4.66(dt,J=47.2Hz、5.6Hz,2H)、4.12(t,J=6.0Hz,2H)、2.18(dquin、J=26.8Hz,6.0Hz,2H)。
2.化合物1−3b〜6b、化合物1−3c〜6c、化合物1−3d〜6dの合成
化合物1−3b〜6b、化合物1−3c〜6c、および、化合物1−3d〜6dの合成については、化合物1−3a〜6aと同様の方法で合成した。合成方法の詳細については省略し、以下では、各物質のNMRによる同定結果を示す。
化合物1−3b(白色結晶、97% yield)
Figure 2021116238
H NMR(400MHz,CDCl)δ=9.84(s,1H)、7.83−7.79(m,2H)、7.09(tt,J=9.0Hz,2.0Hz,2H)、7.06(s,1H)、3.75(t,J=5.6Hz,2H)、3.49(s,3H)、2.74(t,J=5.6Hz,2H)。
化合物1−3c(白色粉末)
Figure 2021116238
H NMR(400MHz,CDCl)δ=10.11(s,1H)、7.77(dt,J=8.8Hz,2.5Hz,2H)、7.01(s,1H)、6.96(dt,J=8.8Hz,2.5Hz,2H)、4.83(t,J=4.2Hz,1H)、4.72(t,J=4.0Hz,1H)、4.28(t,J=4.4Hz,1H)、4.21(t,J=4.2Hz,1H)、3.70(t,J=5.8Hz,2H)、3.44(s,3H)、2.66(t,J=5.8Hz,2H)。
化合物1−3d(黄色固体、57% yield)
Figure 2021116238
H NMR(400MHz,CDCl)δ=9.80(s,1H)、7.77(d,J=8.8Hz,2H)、7.00(s,1H)、6.94(d,J=8.8Hz,2H)、4.73(t,J=5.8Hz,1H)、4.61(t,J=5.8Hz,1H)、4.14(t,J=6.2Hz,2H)、3.74(t,J=5.6Hz,2H)、3.49(s,3H)、2.74(t,J=5.4Hz,2H)、2.23(quin,J=6.2Hz,1H)、2.16(quin,J=5.9Hz,1H)。
化合物1−4b
化合物1−4bと不純物との単離が不可であったため、化合物1−4bと不純物との混合物を、化合物1−4bとして次の反応に用いた。
化合物1−4c(30% yield(2steps))
Figure 2021116238
H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.73(dt,J=9.2Hz,2.4Hz,2H)、6.93(dt,J=9.4Hz,2.6Hz,2H)、6.56(s,1H)、5.58(s,1H)、4.82(t,J=4.4Hz,1H)、4.70(t,J=4.2Hz,1H)、4.27(t,J=4.0Hz,1H)、4.20(t,J=4.2Hz,1H)、3.53(t,J=5.8Hz,2H)、3.39(q,J=7.9Hz,2H)、3.35(s,3H)、1.93(quin,J=6.1Hz,2H)。
化合物1−4d(54% yield)
Figure 2021116238
H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.72(dt,J=9.4Hz,2.6Hz,2H)、6.90(dt,J=9.4Hz,2.6Hz,2H)、6.50(s,1H)、5.68(s,1H)、4.71(t,J=6.0Hz,1H)、4.60(t,J=6.0Hz,1H)、4.11(t,J=6.2Hz,2H)、3.51(t,J=5.8Hz,2H)、3.40(q,J=6.1Hz,2H)、3.35(s,3H)、2.21(quin,J=6.0Hz,1H)、2.14(quin,J=6.1Hz,1H)、1.92(quin,J=6.0Hz,2H)。
化合物1−6b(白色個体、35% yield(2steps))
Figure 2021116238
H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.87−7.83(m,2H)、7.17(s,1H)、7.10(t,J=9.0Hz,2H)、4.54(s,2H)、4.39(s,2H)、3.44(t,J=5.8Hz,2H)、3.37(s,3H)、2.19(s,2H)。
化合物1−6c(白色個体、94% yield)
Figure 2021116238
H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.82(d,J=8.8Hz,2H)、7.10(s,1H)、6.97(d,J=8.8Hz,2H)、4.83(t,J=4.2Hz,1H)、4.73(t,J=4.4Hz,1H)、4.50(s,2H)、4.40(s,2H)、4.30(d,J=4.4Hz,1H)、4.23(t,J=4.2Hz,1H)、3.44(t,J=5.8Hz,2H)、3.36(s,3H)、2.20(s,2H)。
化合物1−6d(白色固体、37% yield)
Figure 2021116238
H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.80(d,J=8.8Hz,2H)、7.10(s,1H)、6.95(dt,J=9.4Hz,2.6Hz,2H)、4.73(t,J=5.8Hz,1H)、4.61(t,J=6.0Hz,1H)、4.54(s,2H)、4.40(s,2H)、4.14(t,J=6.2Hz,2H)、3.44(t,J=5.8Hz,2H)、3.36(s,3H)、2.23(quin,J=6.1Hz,2H)、2.16(quin,J=6.0Hz,2H)。
[3:11C核を有する、式(1)で表される化合物]
11C核は、住友重機械工業社製サイクロトロンCYPRIS HM−12S を使用し、14N(p,α)11Cの核反応(電流値5μA、照射時間52分)によって製造した。[11C]ヨウ化メチルは、専用の標識用合成装置(住友重機械工業株式会社製)を用いて、11COガスを出発物質として第一反応容器で11CO11CHOH→11CHIの順に変換して合成した。
合成した11CHIは、200℃に加熱したAgOTfに通すことによって、11CHOTfに変換した。第二反応容器にあらかじめフェノール前駆体(1.36mg、4.0μmol)と、1M NaOH(5.0μL、5.0μmol)と、acetone(400μL)とを用意しておき、そこへ合成した11CHOTfを移送した。続いて、第二反応容器内の温度を室温にして、1分間、第二反応容器内の混合物を反応させた。
反応後、HPLCで上記混合物を精製した。図1に、11C核を有する式(1)で表される化合物の分取HPLCチャートを示す。HPLCによる分取条件は、カラム:COSMOSIL 5−C18 AR−II 10×20mm、10×250mm、展開溶媒:CHCN:HO=55:45、流速:6.0mL/min、保持時間:16.1min、検出:UV 254nm、RIであった。また、11C核を有する式(1)で表される化合物の分析HPLCチャートを図2に示す。HPLCによる分析条件は、カラム:COSMOSIL 5−C18 MS−II 4.6×150mm、展開溶媒:CHCN:HO=60:40、流速:1.0mL/min、保持時間:6.5min、検出:UV254nm、RIであった。
分取した溶液をエバポレーターで濃縮した後、生体へ投与するための溶液に溶解し、当該溶液をメンブレンフィルターに通し、11C核を有する式(1)で表される化合物(2250MBq、54GBq/μmol)をバイアルに回収した。
[4:式(2)で表される化合物の前駆体(フェノール前駆体)、および、式(2)で表される化合物]
式(2)で表される化合物の前駆体(フェノール前駆体)、および、式(2)で表される化合物は、基本的に、J. Med. Chem., 2014, 57, 5129−5140に記載の方法にしたがって合成した。具体的に、以下に示す方法にしたがて、式(2)で表される化合物の前駆体(フェノール前駆体)、および、式(2)で表される化合物を合成した。以下、具体的な方法について説明する。
Figure 2021116238
化合物1(620mg、4.52mmol)を含むジクロロメタン溶液(5mL)に、氷浴下にて、NBS(800mg、4.52mmol)を含むジクロロメタン溶液(10mL)を加えた。その後、当該混合物を室温で20時間撹拌した。反応が終わった混合物を濃縮し、当該混合物を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、当該有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、以下に示すように化合物2(900mg、4.17mmol、92%)を得た。
Figure 2021116238
化合物2(900mg、4.17mmol)を含むジクロロメタン溶液(20mL)を−78℃に冷却し、当該ジクロロメタン溶液に、亜硝酸t−ブチル(595μL、5.00mmol)、および、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(772μL、6.26mmol)を加えた。その後、当該混合物を、−78℃で3時間、次いで、室温で15時間、撹拌した。当該混合物に、更に18−crown−6(55mg、0.21mmol)、および、酢酸カリウム(818mg、8.34mmol)加え、当該混合物を室温で5時間撹拌した。反応が終わった混合物をセライトでろ過した後、ろ液を濃縮した。溶媒を留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、以下に示すように化合物3(427mg、1.55mmol、37%)を得た。
Figure 2021116238
化合物3(427mg、1.55mmol)を含むクロロホルム溶液(10mL)に、p−トルエンスルホン酸(30mg、0.115mmol)、および、3,4−dihidoro−2H−pyran(280μL、3.1mmol)を加えた。その後、当該混合物を室温で21時間撹拌した。反応が終わった混合物を濃縮し、当該混合物を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、当該有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、以下に示すように化合物4(568mg、1.83mmol)を得た。
Figure 2021116238
化合物4(1.79g、5.75mmol)を含む1,4−dioxane/HO溶液(5:1、12mL)に、2−(Trifluoromethyl)benzeneboronicacid(1.15g、6.05 mmol)、炭酸セシウム(1.87g、5.75mmol)、および、Pd(PPh(332mg、0.29mmol)を加えた。その後、当該混合物を、マイクロウェーブ合成装置を用いて、3時間、130℃にて加熱した。反応が終わった混合物に水を加え、当該混合物を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、当該有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、以下に示すように黄色粉体として化合物5(1.75g、4.65mmol、20%)を得た。
Figure 2021116238
化合物5(482mg、1.28mmol)を含むメタノール溶液(10mL)に、6M 塩酸(3mL、18mmol)を加えた。その後、当該混合物を室温で20時間撹拌した。反応が終わった混合物を濃縮し、当該混合物を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を炭酸水素ナトリウム溶液、および、飽和食塩水で洗浄した後、当該有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、以下に示すように化合物8(344mg、1.18mmol、92%)を得た。
Figure 2021116238
化合物5(867mg、2.30mmol)を含むNMP溶液(4mL)に、1−Dodecanethiol(807μL、3.45mmol)、および、水酸化ナトリウム(276mg、6.90mmol)を加えた。その後、当該混合物を130℃で21時間撹拌した。反応が終わった混合物を酢酸エチルで抽出た。得られた有機層をクエン酸水溶液、および、飽和食塩水で洗浄した後、当該有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、以下に示すように化合物6(825mg、2.28mmol、99%)を得た。
Figure 2021116238
化合物6(248mg、0.684 mmol)を含むメタノール溶液(10mL)に、6M 塩酸(3mL、18mmol)を加えた。その後、当該混合物を室温で16時間撹拌した。反応が終わった混合物を濃縮し、当該混合物を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を炭酸水素ナトリウム溶液、および、飽和食塩水で洗浄した後、当該有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、以下に示すように化合物7(187mg、0.673 mmol、98%)を得た。
Figure 2021116238
[5:11C核を有する、式(2)で表される化合物]
11C核は、住友重機械工業社製サイクロトロンCYPRIS HM−12Sを使用し、14N(p,α)11Cの核反応(電流値50μA、照射時間54分)によって製造した。[11C]ヨウ化メチルは、専用の標識用合成装置(住友重機械工業株式会社製)を用いて、11COガスを出発物質として第一反応容器で11CO11CHOH→11CHIの順に変換して合成した。
第二反応容器にあらかじめフェノール前駆体(1.14mg、4.0μmol)と、1M NaOH(4.1μL、4.1μmol)と、DMF(450μL)とを用意しておき、第一反応器で合成された11CHIを蒸留して、第二反応容器へ移送した。続いて、第二反応容器内の温度を90℃にして、4分間、第二反応容器内の混合物を反応させた。
反応後、第二反応容器を室温にまで冷却し、HPLCで上記混合物を精製した。図4に、11C核を有する式(2)で表される化合物の分取HPLCチャートを示す。HPLCによる分取条件は、カラム:COSMOSIL 5−C18 MS−II 10×20mm、10×250mm、展開溶媒:CH3CN:H2O=50:50、流速:6.0mL/min、保持時間:11.3min、検出:UV254nm、RIであった。また、図5に、11C核を有する式(2)で表される化合物の分析HPLCチャートを示す。HPLCによる分析条件は、カラム:COSMOSIL 5−C18 AR−II 4.6×150mm、展開溶媒:CHCN:HO=55:45、流速:1.0mL/min、保持時間:5.2min、検出:UV 254nm、RIであった。
分取した溶液をエバポレーターで濃縮した後、生体へ投与するための溶液に溶解し、当該溶液をメンブレンフィルターに通し、11C核を有する式(2)で表される化合物(4430MBq、82.6GBq/μmol)をバイアルに回収した。
[6:PET撮像]
11C核を有する式(1)で表される化合物のPET撮像には、8〜9週齢、体重約290gのSprague Dawleyラットを用いた。一方、11C核を有する式(2)で表される化合物のPET撮像には、8〜9週齢、体重約300gのSprague Dawleyラットを用いた。
スキャン開始の30分前に、1.5%イソフルラン麻酔下(1.5% isoflurane,nitrous oxide/oxygen(7:3))でラットの尾静脈にルートを留置し、当該ラットを、小動物用のPET scanner(microPET Focus-220; Siemens)ベッド上に伏臥位にて静置した。ラットの体温は、ラットの直腸に挿入した温度プローブと、当該温度プローブに連結したヒートパッドとによって、約37度に維持した。
スキャン開始と同時に、尾静脈ルートから、11C核を有する式(1)で表される化合物(約100MBq/0.2mL)、または、11C核を有する式(2)で表される化合物(約100MBq/0.2mL)をボーラス投与し、60分間のエミッションデータを3次元リストモードで収集した。頭部スキャンにおいては、6×10s、6×30s、11×60s、15×180sのダイナミクサイノグラムに分割して、エミッションデータを収集した。全身スキャンにおいては、1パス180sの連続ベッド移動方式で、撮像を行った。
standard 2-dimensional filtered backprojection (FBP)アルゴリズムにしたがって、収集したエミッションデータを用いて画像を再構築し、当該画像を、PMOD(version 3.7)を用いて解析した。
〔試験1.TRPA1に対するアゴニスト活性の評価試験〕
合成した化合物のTRPA1に対するアゴニスト活性を調べるために、マウス由来 TRPA1チャネル(mTRPA1)を一過的に発現したHEK293細胞(ヒト胎児腎由来細胞)を用いたカルシウムアッセイを行った。
まず、HEK293細胞にmTRPA1をコードする遺伝子をリポフェクション法で導入し、細胞膜にmTRPA1を発現させた。具体的には、mTRPA1をコードする遺伝子が挿入されたプラスミドDNA(pCI−neo(promega社))を、リポフェクション剤を用いてHEK293細胞へ導入した後、当該HEK293細胞を37℃で24〜48時間培養した。
次いで、mTRPA1を発現しているHEK293細胞における、カルシウムイオンの濃度変化の測定を行った。具体的には、トリプシンを用いてHEK293細胞を培養用プレートから剥がし、当該HEK293細胞をカバーガラス上に撒き直した後、再び37℃で3時間培養した。培地にカルシウム指示薬(Fura−2 AM)を加え、HEK293細胞を30分間37℃で培養し、当該細胞にカルシウム指示薬を取り込ませた。細胞外溶液としては、Ca2+含有溶液を用意した。Ca2+含有溶液の具体的な組成は、2mM CaCl、132mM NaCl、4mM KCl、1mM MgCl、5mM グルコース、5mM HEPES(pH7.4)であった。
カルシウム指示薬を取り込ませたHEK293細胞をCa2+含有溶液に入れた後、カルシウム指示薬の蛍光強度(510nm)を、ARGUS CA−20(Hamamatsu Photonics社)を用いて経時的に測定した。具体的には、以下の操作1〜3を行った:
操作1:試験開始時(0分)に、Ca2+含有溶液に、カルシウム指示薬を取り込ませたHEK293細胞を入れた;
操作2:2分後、Ca2+含有溶液に、試験対象の化合物(RLC−TA1002、RLC−TA1003、または、RLC−TA1004)を添加した;
操作3:10分後に、蛍光強度の測定を終了した。
Ca2+含有溶液中の化合物の量は、0.01μM、0.1μM、1.0μM、10.0μM、または、100.0μMとした。また、Ca2+含有溶液中に、化合物に代えて0.1%のDMSOを含むものを用意し、これをコントロールとした。解析においては、個々の細胞において、測定開始2分後から10分後における最大応答値から、測定開始0から1分後までの平均値を差し引いた値を、応答変化値(ΔRatio)として計算した。20個以上の細胞より応答変化値を計算し、これらの応答変化値の平均値を、試験結果として用いた。
図3に、試験結果(濃度−応答曲線)を示す。mTRPA1に対するアゴニスト活性(EC50)は、化合物1−6b(RLC−TA1002)、化合物1−6c(RLC−TA1003)、化合物1−6d(RLC−TA1004)の各々について、141nM、335nM、475nMであった。したがって、本発明の化合物(特に、式(1)で表される化合物、またはその塩)はTRPA1に対するアゴニスト活性を持つことが分かった。
〔試験2.11C核を有する式(1)で表される化合物を用いたPETイメージング〕
11C核を有する式(1)で表される化合物(化合物の具体的な構造は、図6参照)をラットに投与し、当該ラットのPETイメージングのデータを取得した。
図6に、11C核を有する式(1)で表される化合物を用いたPETイメージングの結果である、ラットの全身のスキャン画像を示す。なお、当該PETイメージングの詳細な条件は、投与時比放射能:18.5GBq/μmol、投与放射能:87.9MBq、投与化合物量:4.8nmol、使用動物:雄SDラット、9週齢、286.1g、であった。
図6より、式(1)で表される化合物およびその塩に関して、ラットの肺への特徴的な集積が観察された。これにより、肺内で発現しているTRPA1がイメージングされたことが明らかになった。なお、肺内で発現しているTRPA1は、酸素センサーとして機能していると考え得る。
図7に、同じラットの頭部のスキャン画像を示す。なお、当該PETイメージングの詳細な条件は、投与時比放射能:44.0GBq/μmol、投与放射能:94.8MBq、投与化合物量:2.4nmol、使用動物:雄SDラット、9週齢、312.1g、であった。
図7より、式(1)で表される化合物およびその塩に関して、ラットの脳への特徴的な集積と、脳内の部位によって集積の度合いに差があることと、が観測された。これにより、脳内で発現しているTRPA1がイメージングされたことが明らかになった。また、式(1)で表される化合物およびその塩は、脳内の特定領域を脳内の他の領域と区別しながらイメージングする際に特に有用であることが明らかになった。
〔試験3.11C核を有する式(2)で表される化合物を用いたPETイメージング〕
11C核を有する式(2)で表される化合物(化合物の具体的な構造は、図8参照)をラットに投与し、当該ラットのPETイメージングのデータを取得した。
図8に、11C核を有する式(2)で表される化合物を用いたPETイメージングの結果である、ラット全身のスキャン画像を示す。なお、当該PETイメージングの詳細な条件は、投与時比放射能:66.5GBq/μmol、投与放射能:96.7MBq、投与化合物量:1.5nmol、使用動物:雄SDラット、9週齢、294.3g、であった。
図8より、式(2)で表される化合物およびその塩に関して、ラットの体表面への特徴的な集積が観測された。これにより、体表面で発現しているTRPA1がイメージングされたことが明らかになった。
図9に、同じラットの頭部のスキャン画像を示す。なお、当該PETイメージングの詳細な条件は、投与時比放射能:67.9GBq/μmol、投与放射能:97.2MBq、投与化合物量:1.4nmol、使用動物:雄SDラット、9週齢、293.6g、であった。
図9より、式(2)で表される化合物およびその塩に関して、ラットの脳への特徴的な集積が観測された。これにより、脳内で発現しているTRPA1がイメージングされたことが明らかになった。また、式(2)で表される化合物およびその塩は、短時間で脳内にインプットされた後、速やかに脳から排出されることが明らかになった。
本発明は、TRPA1に特異的なバイオイメージング剤として好適に利用することができる。

Claims (6)

  1. 下記式(1)または式(2)で表される化合物、またはその塩。
    Figure 2021116238

    (式(1)中、Rは、放射性同位体を有する置換基である。)
    Figure 2021116238

    (式(2)中、Rは、放射性同位体を有する置換基である。)
  2. およびRは、各々、独立して、ハロゲンの放射性同位体、放射性同位体を有するアルキル基、放射性同位体で置換されたアルキル基、放射性同位体を有するアルコキシ基、および、放射性同位体で置換されたアルコキシ基からなる群から選択される置換基である、請求項1に記載の化合物、またはその塩。
  3. 請求項1または2に記載の化合物またはその塩を有効成分として含んでいる、バイオイメージング剤。
  4. TRPA1をイメージングするためのものである、請求項3に記載のバイオイメージング剤。
  5. PETイメージング、または、TRPA1の発現量に影響を及ぼす病態の評価に使用されるものである、請求項3または4に記載のバイオイメージング剤。
  6. 下記式(1)または一般式(2)で表される化合物、またはその塩を備えている、バイオイメージングキット。
    Figure 2021116238

    (式(1)中、Rは、放射性同位体を有する置換基である。)
    Figure 2021116238

    (式(2)中、Rは、放射性同位体を有する置換基である。)
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