JP2021054938A - 水性ポリウレタン樹脂分散体及びその使用 - Google Patents

水性ポリウレタン樹脂分散体及びその使用 Download PDF

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健太 三吉
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Abstract

【課題】 塗膜化時に高い平滑性を与える水性ポリウレタン樹脂分散体を提供することである。【解決手段】 (a)ポリイソシアネート由来の構造と、(b1)ポリエーテルポリオール由来の構造と、(b2)ポリカーボネートポリオール由来の構造と、(c)酸性基含有ポリオール由来の構造とを有するポリウレタン樹脂が水系媒体に分散された分散体であって、(a)ポリイソシアネート由来の構造が、環構造を有する炭素数8〜14のポリイソシアネート由来の構造である、水性ポリウレタン樹脂分散体を提供する。【選択図】 なし

Description

本発明は、水系媒体中にポリウレタン樹脂を分散させた水性ポリウレタン樹脂分散体に関し、より詳しくは、基材に塗布した際、高い平滑性を有する塗膜を与える水性ポリウレタン樹脂に関する。また、本発明は、前記水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法、並びに前記水性ポリウレタン樹脂分散体を含有するコーティング用組成物、塗料用組成物、インク用組成物、及び前記ポリウレタン樹脂分散体を含む組成物を乾燥させて得られるポリウレタン樹脂フィルムに関する。
水性ポリウレタン樹脂分散体は、従来の溶剤系ウレタンと比較して揮発性有機物を減少できる環境対応材料であることから、溶剤系ポリウレタンからの置き換えが進んでいる材料である。
水性ポリウレタン樹脂分散体は、基材への密着性、耐摩耗性、耐衝撃性、耐溶剤性等に優れていることから、塗料、インク、接着剤、各種コーティング剤として、紙、プラスチックス、フィルム、金属、ゴム、エラストマー、繊維製品等に幅広く使用される。
コーティング剤用途では、多くの場合、基材の表皮に塗布されて使用される。
ポリオールとして、脂環式構造を有するポリカーボネートポリオールと、ポリエーテルポリオールとを併用することにより、乾燥性が高く、高硬度な塗膜が得られることが報告されている(特許文献1)。
また、脂環式構造を有するポリカーボネートポリオールと、ポリエーテルポリオールと、イソシアネートを反応させて得られるホットメルト接着剤は、高い初期密着性と耐久性を有することが見出されている(特許文献2)。
国際公開第2011/021500号 特開2016−000785号公報
しかしながら、ポリカーボネートポリオールとポリエーテルポリオールとを併用した水性ポリウレタン樹脂分散体について、塗膜化時に高い平滑性を与える水性ポリウレタン樹脂分散体は提案されていなかった。本発明の課題は、塗膜化時に高い平滑性を与える水性ポリウレタン樹脂分散体を提供することである。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、(a)ポリイソシアネート由来の構造と、(b1)ポリエーテルポリオール由来の構造と、(b2)ポリカーボネートポリオール由来の構造と、(c)酸性基含有ポリオール由来の構造とを有するポリウレタン樹脂が水系媒体に分散された分散体であって、
(a)ポリイソシアネート由来の構造が、環構造を有する炭素数8〜14のポリイソシアネート由来の構造である、水性ポリウレタン樹脂分散体により、上記課題が解決することを見出したものである。
本発明は、以下に関する。
[1](a)ポリイソシアネート由来の構造と、(b1)ポリエーテルポリオール由来の構造と、(b2)ポリカーボネートポリオール由来の構造と、(c)酸性基含有ポリオール由来の構造とを有するポリウレタン樹脂が水系媒体に分散された分散体であって、
(a)ポリイソシアネート由来の構造が、環構造を有する炭素数8〜14のポリイソシアネート由来の構造である、水性ポリウレタン樹脂分散体。
[2](a)環構造を有する炭素数8〜14のポリイソシアネート由来の構造が、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート及びテトラメチルシクロヘキシルジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[1]の水性ポリウレタン樹脂分散体。
[3](b2)ポリカーボネートポリオール由来の構造が、脂環式構造及び2個以上の1級水酸基を有するポリオールモノマーから得られるポリカーボネートポリオール由来の構造又は2個以上の1級水酸基を有する脂肪族ポリオールモノマーと脂環式構造及び2個以上の1級水酸基を有するポリオールモノマーとから得られるポリカーボネートポリオール由来の構造を含む、[1]〜[2]の水性ポリウレタン樹脂分散体。
[4]ポリウレタン樹脂固形分に対する(b2)ポリカーボートポリオール由来の構造の脂環式構造含有率が、1〜20質量%である、[3]の水性ポリウレタン樹脂分散体。
[5]有機溶媒を更に含み、有機溶媒が非ピロリドン溶媒である、[1]〜[4]のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
[6]平滑な基材に硬化後の膜厚が100μmになるように塗布し、乾燥させた後、硬化させた塗膜をJIS K 7311に準拠した方法で5号ダンベル状試験片を用いて測定した引張伸びが600〜2000%である、[1]〜[5]のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
[7][1]〜[6]のいずれかの水性ポリウレタン樹脂分散体を含有する、塗料組成物。
[8][1]〜[6]のいずれかの水性ポリウレタン樹脂分散体を含有する、コーティング剤組成物。
[9][1]〜[6]のいずれかの水性ポリウレタン樹脂分散体を含有する、インク組成物。
[10][1]〜[6]のいずれかの水性ポリウレタン樹脂分散体を含有する、接着剤組成物。
[11][1]〜[6]のいずれかの水性ポリウレタン樹脂分散体を含む組成物を乾燥及び硬化させて得られるポリウレタン樹脂フィルム。
本発明により、塗膜化時に高い平滑性を発現する水性ポリウレタン樹脂分散体が提供される。
以下、本発明の実施態様を詳細に説明する。なお、本発明のような高分子化合物は、複数種類の原料化合物の反応により多数の構造を有する生成物が得られるものである。そのため、高分子化合物は、包含される多数の構造を一般式で記載することができてもその構造により一義的に示されない。また、その物性について、機器分析等により直接的に測定し、特定することや既存の化合物と区別することは困難である。よって、本発明においては「水性ポリウレタン樹脂分散体」をはじめとした高分子化合物を、必要に応じ製造方法により特定することがある。
<水性ポリウレタン樹脂分散体>
水性ポリウレタン樹脂分散体は、水系媒体にポリウレタン樹脂が分散された、ポリウレタン樹脂の水性分散体である。「ポリウレタン樹脂エマルジョン」は、「水分散型ポリウレタン樹脂」又は「水性ポリウレタン樹脂分散体」ともいわれる。
水性ポリウレタン樹脂分散体は、(a)ポリイソシアネート由来の構造と、(b1)ポリエーテルポリオール由来の構造と、(b2)ポリカーボネートポリオール由来の構造と、(c)酸性基含有ポリオール由来の構造とを有し、
前記(a)ポリイソシアネート由来の構造が、環構造を有する炭素原子数8〜14のポリイソシアネート由来の構造を含む。
すなわち、ポリウレタン樹脂が、(a)ポリイソシアネート由来の構造と、(b1)ポリエーテルポリオール由来の構造と、(b2)ポリカーボネートポリオール由来の構造と、(c)酸性基含有ポリオール由来の構造とを有し、
前記樹脂が水系媒体に分散され、
前記(a)ポリイソシアネート由来の構造が、環構造を有する炭素原子数8〜14のポリイソシアネート由来の構造を含む。
水性ポリウレタン樹脂分散体は、任意の構造として、(d)鎖延長剤由来と、(e)末端停止剤由来の構造を含むことができ、更に(c’)中和剤の部分が対イオンとして存在していてもよい。任意の構造は、複数種を併用してもよい。
前記「ポリイソシアネート由来の構造」とは、ポリイソシアネートの分子構造のうち、ウレタン化反応に関与する結合基以外の部分構造のことを示す。他の構造についても同様である。
(a)ポリイソシアネート由来の構造とは、(a)ポリイソシアネートの分子構造のうち、ポリウレタン化反応に関与する基以外の部分構造を意味する。(a)ポリイソシアネート由来の構造は、(a)ポリイソシアネートによって、ポリウレタンに導入される。(b1)、(b2)、(c)についても同様である。また、(d)鎖延長剤由来の構造とは、(d)鎖延長剤の分子構造のうち、鎖延長化反応に関与する基以外の部分構造を意味する。(d)鎖延長剤由来の構造は、(d)鎖延長剤によってポリウレタンに導入される。また、(e)末端停止剤由来の構造とは、(e)末端停止剤の分子構造のうち、ウレタン化反応及び/又は鎖延長反応を停止する反応に関与する基以外の部分構造を意味する。(e)末端停止剤由来の構造は、(e)末端停止剤によってポリウレタンに導入される。
<(a)ポリイソシアネート>
(a)ポリイソシアネートは、環構造を有し、炭素数が8〜14である。例えば、芳香環構造を有する炭素原子数8〜14のポリイソシアネートや、脂環式構造を有する炭素原子数8〜14のポリイソシアネートが挙げられる。ポリイソシアネートの中でも、塗膜の平滑性及び引張伸びの観点から、炭素数が10〜14のポリイソシアネートであることが好ましい。また、ポリイソシアネートの中でも、ジイソシアネートが好ましい。
芳香環構造を有する炭素原子8〜14のポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。
脂環式構造を有する炭素原子8〜14のポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、水素添加トリレンジイソシアネート(H6TDI)、テトラメチルシクロヘキシルジイソシアネート(H6TMXDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレートが挙げられる
塗膜の平滑性の観点から、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)及びテトラメチルシクロヘキシルジイソシアネート(H6TMXDI)からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネートイを含むことが好ましく、塗膜の平滑性及び引張伸びの観点から、水素添加キシリレンジイソシアネート(H6XDI)及びテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネートを含むことがより好ましい。
ポリイソシアネートは、複数種を併用してもよい。
<(b1)ポリエーテルポリオール>
ポリエーテルポリオールは、分子中にエーテル結合を有するポリオールであれば特に限定されず、1分子中のエーテル結合の平均数未満の数のカーボネート結合及び/又はエステル結合を含有していてもよい。ポリエーテルポリオールは、例えば、環状エーテルの開環重合やエポキシ化合物の開環重合により得られる、アルキレン基がエーテル結合したものであることが好ましい。ポリエーテルポリオールの主鎖の炭素数は特に限定されないが、入手容易性の観点から主鎖の炭素数は、好ましくは2〜4である。更に、ポリウレタンの吸水による耐水性低下を抑制する観点から主鎖の炭素数は、より好ましくは3〜4であり、特に好ましくは4である。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、アルキル側鎖を有するポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリピロピレングリコール、及びこれら2種以上の共重合体等が挙げられる。
(b1)ポリエーテルポリオールは、耐水性に優れ、高い平滑性を有する塗膜を得られる観点から、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを含むことが好ましく、(b1)ポリエーテルポリオール中のポリテトラメチレンエーテルグリコールの割合が、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であること((b1)ポリエーテルポリオールとしてポリテトラメチレンエーテルグリコール以外のポリエーテルポリオールを含まない)が特に好ましい。
<(b2)ポリカーボネートポリオール>
ポリカーボネートポリオールは、分子中にカーボネート結合を有するポリオールであれば特に限定されない。そのようなポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ジオール等のポリオールモノマーがカーボネート結合したものであることが好ましい。また、ポリカーボネートポリオールは、ポリカーボネートポリオール1分子中のカーボネート結合の平均数以下の数のエーテル結合やエステル結合を含有していてもよい。
ポリカーボネートポリオールは、1種以上のポリオールモノマーと、炭酸エステルやホスゲンとを反応させることにより得られる。安全性や試薬の取扱等の観点から製造が容易であること及び末端塩素化物の副生成がないことから、1種以上のポリオールモノマーと、炭酸エステルとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール化合物が好ましい。
ポリカーボネートポリオールは、その分子中に、1分子中の平均のカーボネート結合の数と同じ又はそれ以下の数のエーテル結合やエステル結合を含有していてもよい。
ポリカーボネートポリオールの原料としては、例えば、脂肪族ポリオールモノマー、脂環式構造を有するポリオールモノマー、芳香族ポリオールモノマー、ポリエステルポリオールモノマー、ポリエーテルポリオールモノマー等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールの原料として、脂環式構造を有するポリオールモノマーを用いることが好ましく、脂環式構造及び2個以上の1級水酸基を有するポリオールモノマーを用いることがさらに好ましい。また、ポリカーボネートポリオールの原料として、複数種の前記ポリオールモノマーを併用してもよく、例えば、脂肪族ポリオールモノマーと脂環式構造を有するポリオールモノマーとを併用することが好ましく、脂肪族ポリオールモノマーとポリエーテルポリオールモノマーとを併用してもよい。
脂肪族ポリオールモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオールなどの直鎖状脂肪族ジオール;2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオールなどの分岐鎖状脂肪族ジオール;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3官能以上の多価アルコール等が挙げられる。
なお、脂肪族ポリオールモノマーは、複数種を併用してもよい。
脂環式構造を有するポリオールモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、炭素数5〜12の脂環式基を有するポリオールなどが挙げられる。具体的には、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘプタンジオール、2,5‐ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジオキサン、2,7−ノルボルナンジオール、テトラヒドロフランジメタノール、1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、イソソルビド等が挙げられる。
脂環式構造を有するポリオールモノマーの中でも、脂環式構造及び2個以上の1級水酸基を有するポリオールモノマーが好ましく、1,4−シクロヘキサンジメタノールがより好ましい。
なお、脂環式構造を有するポリオールモノマーは、複数種を併用してもよい。
芳香族ポリオールモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、1,4−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,2−ベンゼンジメタノール、4,4’−ナフタレンジメタノール、3,4’−ナフタレンジメタノールなどが挙げられる。
ポリエステルポリオールモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、6−ヒドロキシカプロン酸とヘキサンジオールとのポリエステルポリオールなどのヒドロキシカルボン酸とジオールとのポリエステルポリオール、アジピン酸とヘキサンジオールとのポリエステルポリオールなどのジカルボン酸とジオールとのポリエステルポリオール等が挙げられる。
なお、芳香族ポリオールモノマーは、複数種を併用してもよい。
ポリエーテルポリオールモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールやポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール等が挙げられる。
なお、ポリエーテルポリオールモノマーは、複数種を併用してもよい。
炭酸エステルとしては、特に制限されないが、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの脂肪族炭酸エステル、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネートなどの芳香族炭酸エステル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状炭酸エステルが挙げられる。その他に、ポリカーボネートポリオールを生成することができるホスゲンなども使用できる。中でも、ポリカーボネートポリオールの製造のしやすさから、脂肪族炭酸エステル、環状炭酸エステルが好ましく、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネートが特に好ましい。
ポリオールモノマー及び炭酸エステルからポリカーボネートポリオールを製造する方法としては、例えば、反応器中に炭酸エステルと、この炭酸エステルのモル数に対して過剰のモル数のポリオールモノマーとを加え、常圧下、温度160〜200℃で12時間反応させた後、更に6.7kPa以下の圧力において200〜220℃で数時間反応させる方法が挙げられる。上記反応においては副生するアルコールを系外に抜き出しながら反応させることが好ましい。その際、炭酸エステルが副生するアルコールと共沸することにより系外へ抜け出る場合には、過剰量の炭酸エステルを加えてもよい。また、上記反応において、チタニウムテトラブトキシドなどの触媒を使用してもよい。
水性ポリウレタン樹脂分散体を塗膜とした際の平滑性及び強靭性の観点から、(b2)ポリカーボネートポリオール由来の構造は、
(i)脂環式構造及び2個以上の1級水酸基を有するポリオールモノマーから得られるポリカーボネートポリオール由来の構造、又は
(ii)2個以上の1級水酸基を有する脂肪族ポリオールモノマーと脂環式構造及び2個以上の1級水酸基を有するポリオールモノマーとから得られるポリカーボネートポリオール由来の構造
を含むことが好ましい。
脂環式構造及び1級水酸基を2個以上有するポリオールモノマーから得られるポリカーボネートポリオール由来の構造を有するポリカーボネートポリオールは、ポリオールモノマーとして、脂環式構造及び1級水酸基を2個以上有するポリオールモノマーから得られる。中でも、1,4−シクロヘキサンジメタノールから得られるポリカーボネートポリオールが好ましい。
(b2)ポリカーボネートポリオール由来の構造中の脂環式構造及び2個以上の1級水酸基を有するポリオールモノマーから得られるポリカーボネートポリオール由来の構造の割合は、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%であり、特に好ましくは100質量%である。
2個以上の1級水酸基を有する脂肪族ポリオールモノマーと脂環式構造及び2個以上の1級水酸基を有するポリオールモノマーとから得られるポリカーボネートポリオール由来の構造を有するポリカーボネートポリオールは、ポリオールとして、2個以上の1級水酸基を有する脂肪族ポリオールモノマーと、脂環式構造及び2個以上の1級水酸基を有するポリオールモノマーとから得られる。中でも1,6−ヘキサンジオールと、1,4−シクロヘキサンジメタノールとから得られるポリカーボネートポリオールが好ましく、1,6−ヘキサンジオールと、1,4−シクロヘキサンジメタノールとから得られるポリカーボネートポリオールであって、1,6−ヘキサンジオールと、1,4−シクロヘキサンジメタノールとのモル比が、1:3、1:1又は3:1であるポリカーボネートポリオールがより好ましい。
(b2)ポリカーボネートポリオール由来の構造中の2個以上の1級水酸基を有する脂肪族ポリオールモノマーと脂環式構造及び2個以上の1級水酸基を有するポリオールモノマーから得られるポリカーボネートポリオール由来の構造の割合は、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%であり、特に好ましくは100質量%である。
ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、好ましくは100〜4,000であり、より好ましくは300〜3,000であり、特に好ましくは500〜2,500である。この範囲とすることで、塗膜とした際に優れた平滑性及び強靭性を有する水性ポリウレタン樹脂分散体を得ることができる。
<(c)酸性基含有ポリオール>
(c)酸性基含有ポリオールは、分子内に酸性基を少なくとも1個有するポリオールである。酸性基は、特に制限されないが、カルボキシ基、スルホニル基、リン酸基、フェノール性水酸基等が挙げられる。酸性基含有ポリオールの種類は、特に制限されないが、具体的には、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸等のジメチロールアルカン酸、N,N−ビスヒドロキシエチルグリシン、N,N−ビスヒドロキシエチルアラニン、3,4−ジヒドロキシブタンスルホン酸、3,6−ジヒドロキシ−2−トルエンスルホン酸等が挙げられる。この中でも入手容易性の観点から、2個のメチロール基を含む炭素原子数4〜12のアルカン酸(ジメチロールアルカン酸)が好ましく、中でも、2,2−ジメチロールプロピオン酸が好ましい。
(c)酸性基含有ポリオールは、複数種を併用してもよい。
<(c’)中和剤>
(c’)中和剤は、(c)酸性基含有ポリオールの酸性基を中和することができるものであれば特に限定されず、酸性基の種類等に応じて適宜選択できる。(c’)中和剤としては、具体的には、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、2−(ジメチルアミノ)−2−メチル−1−プロパノール(DMAP)等の有機アミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ塩類;アンモニア等が挙げられる。(c’)中和剤は、有機アミン類であることが好ましく、3級アミンであることがより好ましく、トリエチルアミンであることが特に好ましい。
(c’)中和剤は、複数種を併用してもよい。
<(d)鎖延長剤>
(d)鎖延長剤としては、特に制限されないが、イソシアナト基と反応する基を2つ以上有する化合物が挙げられ、例えば、エチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−ヘキサメチレンジアミン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、キシリレンジアミン、ピペラジン、アジポイルヒドラジド、ヒドラジン、2,5−ジメチルピペラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール化合物;ポリエチレングリコールに代表されるポリアルキレングリコール類;水が挙げられ、中でもポリアミン化合物が好ましく、ジアミン化合物がより好ましく、1級ジアミン化合物が特に好ましい。
(d)鎖延長剤は、複数種を併用してもよい。
<(e)末端停止剤>
(e)末端停止剤は、ポリウレタン樹脂末端のウレタン化反応及び/又は鎖延長反応を停止できる成分である。(e)末端停止剤としては、イソシアナト基と反応する基を1つ有する化合物が挙げられる。イソシアナト基と反応する基としては、水酸基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基等を合計1つ持つ化合物が挙げられ、具体例としては、例えばn−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等のモノアミン;エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の1価アルコール等が挙げられる。
(e)末端停止剤は、複数種を併用してもよい。
<ポリウレタン樹脂の特性>
水性ポリウレタン樹脂分散体中のポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、通常25,000〜10,000,000程度である。好ましくは、50,000〜5,000,000であり、より好ましくは、100,000〜1,000,000である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したものであり、予め作成した標準ポリスチレンの検量線から求めた換算値を使用することができる。重量平均分子量を25,000以上とすることで、水性ポリウレタン樹脂分散体の乾燥により、良好なフィルムを得ることができる傾向がある。重量平均分子量を1,000,000以下とすることで、水性ポリウレタン樹脂分散体の乾燥性をより高くすることができる傾向がある。
<ポリウレタン樹脂の組成>
水性ポリウレタン樹脂分散体中のポリウレタン樹脂固形分に対するポリイソシアネートに由来する環構造の含有率は好ましくは5〜15質量%であり、より好ましくは6〜14質量%であり、特に好ましくは7〜13質量%である。この範囲とすることで、塗膜とした際に優れた平滑性及び引張伸びを有する水性ポリウレタン樹脂分散体を得ることができる。
(b1)ポリエーテルポリオールと、(b2)ポリカーボネートポリオールの質量比(b1)/(b2)は、好ましくは99/1〜50/50であり、より好ましくは95/5〜55/45であり、特に好ましくは90/10〜60/40である。この範囲とすることで、塗膜とした際に優れた平滑性及び引張伸びを有する水性ポリウレタン樹脂分散体を得ることができる。
水性ポリウレタン樹脂分散体中のポリウレタン樹脂固形分に対するポリカーボートポリオール由来の脂環式構造の含有率は、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは1〜15質量%であり、特に好ましくは1〜10質量%である。
この範囲とすることで、塗膜とした際に優れた平滑性及び引張伸びを有する水性ポリウレタン樹脂分散体を得ることができる。
水性ポリウレタン樹脂分散体中のポリウレタン樹脂固形分に対するウレタン結合及びウレア結合の合計の含有率は、好ましくは7〜18質量%であり、より好ましくは8〜15質量%である。
前記ウレタン結合とウレア結合の合計の含有割合を7質量%以上とすることで、塗膜を乾燥後の塗膜表面のベタツキを低減できる場合がある。また、前記ウレタン結合とウレア結合の合計の含有割合を18質量%以下とすることで、水性ポリウレタン樹脂分散体から形成される塗膜と基材の密着性が高くなる場合がある。
ウレタン結合及びウレア結合の合計の含有率は、(a)ポリイソシアネート、(b)ポリオール、(c)酸性基含有ポリオール化合物及び(B)鎖延長剤のそれぞれの分子量、1分子中における水酸基、イソシアナト基、アミノ基の数及び水性ポリウレタン樹脂分散体における固形分基準での各原料の使用割合によって制御することができる
本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体から形成される塗膜と基材の密着性の観点から、前記水性ポリウレタン樹脂分散体中のカーボネート結合の含有割合は、好ましくは固形分基準で0.1質量%以上、30質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上、15質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以上、10質量%以下である。
水性ポリウレタン樹脂分散体中のポリウレタン樹脂固形分に対する水性ポリウレタン樹脂分散体の酸価は、特に制限されないが、好ましくは10〜40mgKOH/gであり、より好ましくは15〜32mgKOH/gであり、特に好ましくは15〜25mgKOH/gである。前記水性ポリウレタン樹脂分散体の酸価が固形分基準で10〜40mgKOH/gの範囲とすることで、貯蔵安定性が上がる傾向がある。酸価は、JIS K 1557の指示薬滴定法に準拠して測定することができる。測定においては、酸性基を中和するために使用した中和剤を取り除いて測定することとする。例えば、有機アミン類を中和剤として用いた場合には、水性ポリウレタン樹脂分散体をガラス板上に塗布し、温度60℃、20mmHgの減圧下で24時間乾燥して得られた塗膜をN−メチルピロリドン(NMP)に溶解させて、JIS K 1557の指示薬滴定法に準拠して酸価を測定することができる。
水性ポリウレタン樹脂分散体中のポリウレタン樹脂固形分に対する水性ポリウレタン樹脂分散体中の脂環構造及び芳香環構造を合計の含有率は、好ましくは1〜40質量%であり、より好ましくは3〜30質量%であり、特に好ましくは5〜25質量%である。前記水性ポリウレタン樹脂分散体中の脂環構造の含有割合を上記範囲とすることで、得られる塗膜の平滑性を上げ、且つ、塗膜と基材の密着性を向上させることができる。
<水系媒体>
水性ポリウレタン樹脂分散体において、ポリウレタン樹脂を分散させる媒体としては、水が挙げられる。水としては、例えば、上水、イオン交換水、蒸留水、超純水等が挙げられるが、入手が容易であることや、粒子が不安定になる原因となる塩の影響が少ないこと等の観点から、イオン交換水であることが好ましい。
また、水系媒体は、有機溶媒(分散時に添加する有機溶媒、ポリウレタン樹脂の合成時に使用する有機溶媒)を含んでいてもよい。有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、β−アルコキシプロピオンアミド(KJケミカルズ製KJCMPA(R)−100、KJCMBPA(R)−100)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、酢酸エチル、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等が挙げられるが、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン溶媒を含まない非ピロリドン溶媒が好ましく、ジプロピレングリコールジメチルエーテルがより好ましい。なお、非ピロリドン溶媒とは、前記ピロリドン溶媒を含まない溶媒を示す。
有機溶媒を用いることで、水性ポリウレタン樹脂分散体を塗膜とする際に造膜助剤として機能し、平滑性及び引張伸びに優れる塗膜を得ることができる。非ピロリドン溶媒は、ピロリドン系溶剤と比較して、造膜性に劣るが、本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体は、非ピロリドン溶媒を用いても平滑性及び引張伸びに優れた塗膜を得ることができる。更に、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドンを含まないため、環境への負荷を低減することができる。
<水性ポリウレタン樹脂分散体の組成>
水性ポリウレタン樹脂分散体のポリウレタン樹脂の含有率は、好ましくは5〜60質量%であり、より好ましくは15〜50質量%である。
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体には、必要に応じて、増粘剤、光増感剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤等の添加剤を添加することもできる。前記添加剤は、2種以上を併用してもよい。また、前記添加剤は、一般に用いられるものを使用することができる。
<ポリウレタン樹脂の特性>
水性ポリウレタン樹脂分散体は、平滑な基材に硬化後の膜厚が100μmになるように塗布し、乾燥させた後、硬化させた塗膜をJIS K 7311に準拠した方法で5号ダンベル状試験片を用いて測定した引張伸びが600〜2000%であり、好ましくは750〜1800%であり、より好ましくは900〜1600%である。
引張伸びをこの範囲とすることで、基材への追従性及び密着性に優れ、より平滑性に優れた塗膜を得ることができる。
<水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法>
ポリウレタン樹脂分散体の製造方法は、ポリウレタン樹脂が水系媒体に分散されている、ポリウレタン樹脂分散体が得られる方法であれば特に限定されない。ポリウレタン樹脂分散体の製造方法としては、全ての原料を一度に反応させるワンショット法や、イソシアネート末端のポリウレタンプレポリマーを製造した後に鎖延長剤を反応させるプレポリマー法等が挙げられる。以下、プレポリマー法によるポリウレタン樹脂エマルジョンの製造方法の一例について説明する。
プレポリマー法によるポリウレタン樹脂分散体の製造方法は、例えば、
(a)ポリイソシアネートと、(b1)ポリエーテルポリオールと、(b2)ポリカーボネートポリオールと、(c)酸性基含有ポリオールとを反応させて(A)ポリウレタンプレポリマーを得る工程(α)、
ポリウレタンプレポリマーを水系媒体中に分散させる工程(β)、
ポリウレタンプレポリマーの酸性基を(c’)中和剤を用いて中和する工程(γ)、
ポリウレタンプレポリマーと、(d)鎖延長剤とを反応させる工程(δ)
を含む。ここで、工程(α)は、更に、得られた(A)ポリウレタンプレポリマーに、(e)末端停止剤を添加する工程を含んでもよい。
<工程(α)>
工程(α)において、(a)ポリイソシアネートと、(b1)ポリエーテルポリオールと、(b2)ポリカーボネートポリオールと、(c)酸性基含有ポリオールとを反応させて(A)ポリウレタンプレポリマーを得る場合には、(a)、(b1)、(b2)及び(c)を順不同でと反応させてもよく、同時に反応させてもよい。
工程(α)は、不活性ガス雰囲気下で行ってもよいし、大気雰囲気下で行ってもよい。
工程(α)において、(a)ポリイソシアネートと、(b1)ポリエーテルポリオールと、(b2)ポリカーボネートポリオールと、(c)酸性基含有ポリオールとを反応させる際の反応温度としては、特に制限はされないが、40〜150℃が好ましく、60〜120℃が特に好ましい。反応温度を40℃以上とすることで、原料が十分に溶解し又は原料が十分な流動性を得て、ポリウレタンプレポリマーの粘度を低くして充分な撹拌を行うことができ、反応温度を150℃以下とすることで、副反応が起こる等の不具合を起こさずに、反応を進行させることができる。
工程(α)において、反応性を向上させるために、触媒を用いることもできる。前記触媒としては、特に制限はされないが、例えば、スズ系触媒(トリメチルスズラウリレート、ジブチルスズジラウリレートなど)や鉛系触媒(オクチル酸鉛等)、チタン系触媒(チタンテトラブトキシドなど)などの金属塩、有機金属誘導体、アミン系触媒(トリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミンなど)、ジアザビシクロウンデセン系触媒が挙げられる。中でも、反応性の観点から、ジブチルスズジラウリレート、チタンテトラブトキシドが好ましい。
工程(α)において、(a)ポリイソシアネートと、(b1)ポリエーテルポリオールと、(b2)ポリカーボネートポリオールと、(c)酸性基含有ポリオールとの反応は、無溶媒でも有機溶媒を加えて行ってもよい。無溶媒で反応を行う場合には、(a)ポリイソシアネートと、(b1)ポリエーテルポリオールと、(b2)ポリカーボネートポリオールと、(c)酸性基含有ポリオールとの混合物が、攪拌性の観点から、液状であることが好ましい。有機溶媒を加えて反応させる場合、使用する有機溶媒としては、ポリウレタン樹脂エマルジョンの水系媒体において前記した有機溶媒が挙げられる。アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチルは、ポリウレタンプレポリマーを水に分散し、鎖延長反応を行った後に加熱又は減圧により除去できるので好適に使用される。また、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、β−アルコキシプロピオンアミド、ジプロピレングリコールジメチルエーテルは、得られたポリウレタン樹脂エマルジョンから塗膜を作製する際に造膜助剤として働くため好ましく、ジプロピレングリコールジメチルエーテルが特に好ましい。
工程(α)において、(e)末端停止剤の割合は、所望するポリウレタンプレポリマーの分子量等に応じて適宜決定することができる。
また、(b1)ポリエーテルポリオールと、(b2)ポリカーボネートポリオールと、(c)酸性基含有ポリオールとの合計の水酸基当量数は、120〜1,000であることが好ましい。水酸基当量数が、この範囲であれば、乾燥性、増粘性が上がりやすく、得られたポリウレタン樹脂を含む水性樹脂分散体の製造が容易であり、硬度の点で優れた塗膜が得られやすい。得られる水性ポリウレタン樹脂分散体の貯蔵安定性、乾燥性と塗布して得られる塗膜の硬度の観点から、水酸基当量数は、好ましくは200〜1,000、より好ましくは400〜800、特に好ましくは600〜700である。
水酸基当量数は、以下の式(1)及び(2)で算出することができる。
各ポリオールの水酸基当量数=各ポリオールの分子量/各ポリオールの水酸基の数(フェノール性水酸基は除く)・・・(1)
ポリオールの総水酸基当量数=M/ポリオールの合計モル数・・・(2)
ポリウレタン樹脂の場合、式(2)において、Mは、[〔ポリカーボネートポリオール化合物の水酸基当量数×ポリカーボネートポリオール化合物のモル数〕+〔酸性基含有ポリオールの水酸基当量数×酸性基含有ポリオールのモル数〕+〔ポリエーテルポリオール化合物の水酸基当量数×ポリエーテルポリオール化合物のモル数〕]を示す。
工程(α)において、有機溶媒の使用量は、(a)ポリイソシアネートと、(b1)ポリエーテルポリオールと、(b2)ポリカーボネートポリオールと、(c)酸性基含有ポリオールとの全量に対して質量基準で、好ましくは0.1〜2.0倍であり、より好ましくは0.15〜0.8倍である。
ポリウレタンプレポリマーの酸価(AV)は、好ましくは4〜40mgKOH/gであり、より好ましくは6〜32mgKOH/gであり、特に好ましくは8〜29mgKOH/gである。ポリウレタンプレポリマーの酸価を4mgKOH/g以上とすることで、水系媒体への分散性、貯蔵安定性を良くすることができる傾向がある。また、ポリウレタンプレポリマーの酸価を40mgKOH/g以下とすることで、得られるポリウレタン樹脂の塗膜の耐水性を高め、得られるフィルムの柔軟性を高くすることができる傾向がある。また、塗膜作製時の乾燥性を上げることができる傾向がある。
なお、「ポリウレタンプレポリマーの酸価」とは、ポリウレタンプレポリマーを製造するにあたって用いられる溶媒及び前記ポリウレタンプレポリマーを水系媒体中に分散させるための中和剤を除いた、いわゆる固形分中の酸価を示す。具体的には、ポリウレタンプレポリマーの酸価は、下記式(3)によって導き出すことができる。
〔ポリウレタンプレポリマーの酸価〕=〔((c)酸性基含有ポリオールのミリモル数)×((c)酸性基含有ポリオール1分子中の酸性基の数)〕×56.11/〔(a)ポリイソシアネート、(b1)ポリエーテルポリオール、(b2)ポリカーボネートポリオール及び(c)酸性基含有ポリオールの合計の質量〕・・・(3)
<工程(β)>
工程(β)において、水系媒体中にポリウレタンプレポリマーを分散させる方法としては、特に制限されないが、例えば、ホモミキサーやホモジナイザーなどによって攪拌されている水系媒体中に、ポリウレタンプレポリマーを添加する方法、ホモミキサーやホモジナイザー等によって攪拌されているポリウレタンプレポリマーに水系媒体を添加する方法などを適宜採用できる。
<工程(γ)>
工程(γ)において、(c’)中和剤の使用量は、好ましくは、(c)酸性基含有ポリオールの合計モル数の0.5〜1.7倍であり、より好ましくは0.6〜1.3であり、特に好ましくは0.7〜1.2である。この範囲内とすることで、分散性が良好となる。なお、ポリウレタン樹脂の酸性基のモル数は、基本的にはポリウレタン樹脂を得る際に用いた酸性基含有ポリオールのモル数に、酸性基含有ポリオール1分中の酸性基の数を掛けた数字である。また、中和剤のモル数は、ポリウレタン樹脂エマルジョンに添加した中和剤のモル数である。
<工程(δ)>
工程(δ)において、ポリウレタンプレポリマーと(d)鎖延長剤との反応は、冷却下でゆっくりと行ってもよく、必要に応じて60℃以下の加熱条件下で反応を促進して行ってもよい。冷却下における反応時間は、例えば、0.5〜24時間とすることができ、60℃以下の加熱条件下における反応時間は、例えば、0.1〜6時間とすることができる。なお、鎖延長は水によっても行うことができるため、工程(β)における水系媒体が水である場合、分散媒としての水が(d)鎖延長剤を兼ねることになる。
工程(δ)において、(d)鎖延長剤の使用量は、得られるポリウレタンプレポリマー中の鎖延長起点となるイソシアナト基に対して、好ましくは当量以下であり、より好ましくは0.7〜0.99当量である。イソシアナト基の当量以下の量で鎖延長剤を添加することで、鎖延長されたウレタンポリマーの分子量を低下させず、得られたポリウレタン樹脂エマルジョンを含むエマルジョン組成物を塗布して得た塗膜の強度を高くすることができる傾向がある。
以下、工程の好ましい態様を説明する。
工程(β)と工程(γ)は、いずれを先に行ってもよい。すなわち、工程(α)で得られたポリウレタンプレポリマーを水系媒体に分散させた後に中和剤を加えてもよく、工程(α)で得られたポリウレタンプレポリマーに中和剤を加えた後に水系媒体に分散させても良い。中和剤を水系媒体に分散させた分散媒を予め用意し、当該分散媒に工程(α)で得られたポリウレタンプレポリマーを水系媒体に入れることで、工程(β)と工程(γ)を同時に行うこともできる。
工程(β)と、工程(γ)とは、どちらを先に行ってもよいし、同時に行うこともできる。また、工程(β)と、工程(δ)は、同時に行ってもよい。即ち、鎖延長剤は、ポリウレタンプレポリマーの水系媒体への分散後に添加してもよく、分散中に添加してもよい。更に、工程(γ)と、工程(δ)は、同時に行ってもよい。分散安定性が向上する点からは、工程(β)を行った後に、工程(δ)を行うことが好ましい。また、工程(β)と、工程(γ)と、工程(δ)は、同時に行ってもよい。
ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造方法は、工程(α);次いで、工程(β)及び(γ);次いで、工程(δ)により、ポリウレタン樹脂エマルジョンを得る製造方法であることが好ましい。
<塗料組成物、コーティング剤組成物、インク組成物及び接着剤組成物>
本発明は、上記水性ポリウレタン樹脂分散体を含有する塗料組成物、コーティング剤組成物、インク組成物及び接着剤組成物にも関する。
塗料組成物、コーティング剤組成物、インク組成物及び接着剤組成物には、上記水性ポリウレタン樹脂分散体以外にも、他の樹脂を添加することもできる。他の樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。他の樹脂は、1種以上の親水性基を有することが好ましい。親水性基としては、水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、ポリエチレングリコール基等が挙げられる。
他の樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
塗料組成物、コーティング剤組成物、インク組成物及び接着剤組成物は、硬化剤を含むことができ、これにより、塗料組成物又はコーティング剤組成物を用いて得られる塗膜又は複層塗膜、コーティング膜や印刷物の耐水性等を向上させることができる。
硬化剤としては、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート、ブロック化ポリイソシアネート、メラミン樹脂、カルボジイミド等を用いることできる。硬化剤は、複数種を併用してもよい。
塗料組成物、コーティング剤組成物、インク組成物及び接着剤組成物には、着色顔料や体質顔料、光輝性顔料を添加することができる。
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料等が挙げられる。これらは複数種を併用してもよい。特に、着色顔料として、酸化チタン及び/又はカーボンブラックを使用することが好ましい。
体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイトが挙げられる。これらは、複数種を併用してもよい。特に、体質顔料として、硫酸バリウム及び/又はタルクを使用することが好ましく、硫酸バリウムを使用することがより好ましい。
光輝性顔料は、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母を使用することができる。
塗塗料組成物、コーティング剤組成物、インク組成物及び接着剤組成物には、必要に応じて、増粘剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤等の通常の添加剤を含有することができる。これらは、複数種を併用してもよい。
塗料組成物、コーティング剤組成物、インク組成物及び接着剤組成物の製造方法は、特に制限されないが、公知の製造方法を用いることができる。一般的には、塗料組成物及びコーティング剤組成物は、上記水性ポリウレタン樹脂分散体と上述した各種添加剤を混合し、更に水系媒体を添加し、適用方法に応じた粘度に調整することにより製造される。
塗料組成物の被塗装材質、コーティング剤組成物の被コーティング材質又はインク組成物の被適用材質としては、金属、プラスチック、無機物、木材等が挙げられ、電着塗装板にも好適に挙げることができる。
電着塗装板とは、被塗物を水溶性塗料中に浸積してその被塗物を陰極(または陽極)として、そして塗料を被塗物の反対電極として直流電圧を印加し、被塗物に塗膜を形成させた積層板である。電着塗装は、複雑な形状を有する被塗物であっても細部にまで塗装を施すことができ、自動的かつ連続的に塗装することができるので、自動車車体などの大型で複雑な形状を有し、高い防錆性が要求される被塗物の下塗り塗装方法として好ましい。また、他の塗装方法と比較して、塗料の使用効率が極めて高いことから経済的であり、工業的な塗装方法として好ましい。例えば、カチオン電着塗装は、陽イオン性を有するカチオン電着塗料中に被塗物を陰極として浸漬し、電圧を印加することにより行われる。
塗料組成物の塗装方法又はコーティング剤組成物のコーティング方法としては、例えば、ベル塗装、スプレー塗装、ロール塗装、シャワー塗装、浸漬塗装が挙げられる。インク組成物の適用方法としては、例えば、インクジェット印刷方法、フレキソ印刷方法、グラビア印刷方法、反転オフセット印刷方法、枚葉スクリーン印刷方法、ロータリースクリーン印刷方法が挙げられる。
塗料組成物、コーティング剤組成物及びインク組成物を被適用材質に適用した後、加熱硬化させて塗膜、コーティングを得ることが好ましい。
前記加熱方法としては、自己の反応熱による加熱方法と、塗料組成物、コーティング剤組成物及びインク組成物と被適用材質とを積極加熱する加熱方法等が挙げられる。積極加熱は、塗料組成物、コーティング剤組成物及びインク組成物と被適用材質を熱風オーブンや電気炉、赤外線誘導加熱炉に入れて加熱する方法が挙げられる。
前記加熱温度は、40〜200℃であることが好ましく、より好ましくは60〜160℃である。このような温度で加熱することにより、より効率的に乾燥を行うことができる。前記加熱時間は、好ましくは0.0001〜20時間であり、より好ましくは0.1〜10時間である。このような加熱時間とすることにより、より硬度の高いポリウレタン樹脂フィルムを得ることができる。ポリウレタン樹脂フィルムを得るための乾燥条件は、例えば、120℃で3〜10秒での加熱が挙げられる。
特に本発明では、80〜90℃程度の比較的低温で基材への密着性の高い塗膜を形成することができる。
硬化後の塗膜の厚さは、特に制限されないが、好ましくは1〜100μmであり、より好ましくは、3〜50μmである。
<ポリウレタン樹脂フィルム>
本発明は、更に、上記水性ポリウレタン樹脂分散体から得られるポリウレタン樹脂フィルムにも関する。
水性ポリウレタン樹脂分散体を用いて、ポリウレタン樹脂フィルムを得ることもできる。水性ポリウレタン樹脂分散体を離形性基材に適用し、加熱等の手段により乾燥、硬化させ、続いてポリウレタン樹脂の硬化物を離形性基材から剥離させることで、ポリウレタン樹脂フィルムが得られる。
前記加熱方法としては、自己の反応熱による加熱方法と、前記反応熱と型の積極加熱とを併用する加熱方法等が挙げられる。型の積極加熱は、型ごと熱風オーブンや電気炉、赤外線誘導加熱炉に入れて加熱する方法が挙げられる。
前記加熱温度は、好ましくは40〜200℃であり、より好ましくは60〜160℃である。このような温度で加熱することにより、より効率的に乾燥を行うことができる。前記加熱時間は、好ましくは0.0001〜20時間であり、より好ましくは1〜10時間である。このような加熱時間とすることにより、より硬度の高いポリウレタン樹脂フィルムを得ることができる。ポリウレタン樹脂フィルムを得るための乾燥条件は、例えば、120℃で3〜10秒での加熱が挙げられる。
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
(水酸基価)
JIS K 1557のB法に準拠して測定した。
(ポリカーボネートポリオール(PCD)由来の脂環式構造含量)
水性ポリウレタン樹脂分散体の各原料の仕込み割合から算出したポリカーボネートポリオール由来の脂環式構造の質量分率を表記した。質量分率は水性ポリウレタン樹脂分散体の固形分を基準とする。水性ポリウレタン樹脂分散体0.3gを厚さ0.2mmでガラス基板上に塗布し、140℃で4時間加熱乾燥した後に残った質量を測定し、これを乾燥前の質量で割ったものを固形分濃度とした。水性ポリウレタン樹脂分散体の全質量と固形分濃度の積を固形分質量として、前記質量分率を算出した。
(ポリウレタン樹脂フィルムの引張伸び)
膜厚100μmになるようにPETフィルム上に水性ポリウレタン樹脂分散体を塗布し、一晩常温乾燥して造膜後に、60℃で2時間の焼付け、さらに及び120℃で2時間の焼付けを行った。その後、一晩養生したフィルムをダンベル型5号型に打ち抜き、JIS K 7311に準拠する方法で測定を行った。なお、測定条件は、測定温度23℃、湿度50%、引張速度100mm/分であった。
(平滑性)
水性ポリウレタン樹脂分散体に顔料(トーヨーカラー製、EMF BLUE 2R)を0.5質量%添加して作成した塗料を厚さ200μmでポリエチレンテレフタラート基材上に塗布し、90℃5分間の乾燥を行った。塗布部分に色むらがなく平滑である場合は「〇」、色むらがある場合は「×」として評価した。
[実施例1]
攪拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリテトラメチレングリコール(製品名(PTMG2000)(三菱化学社製)、数平均分子量1951;水酸基価57.5mgKOH/g、241g)と、ポリカーボネートジオール(製品名ETERNACOLL UM−90(1/3)(登録商標;宇部興産製);数平均分子量899;水酸基価124.8mgKOH/g、60.8g)と、2,2−ジメチロールプロピオン酸(20.4g)と、IPDI(環構造を有する炭素数12のポリイソシアネート)(112g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(87.0g)中、ジブチルスズジラウリレート(0.3g)存在下、窒素雰囲気下で、80〜90℃で4時間加熱した。ウレタン化反応終了時のNCO基含量は、2.45質量%であった。反応混合物を80℃にした後、トリエチルアミン(16.2g)を加え、30分攪拌した。反応混合物のうち、503gを抜き出し、強攪拌しながら水(862g)に入れた後、鎖延長剤として、35質量%の2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール水溶液(38.4g)を加え、水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。
[実施例2]
攪拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリテトラメチレングリコール(製品名(PTMG2000)(三菱化学社製)、数平均分子量1951;水酸基価57.5mgKOH/g、201g)と、ポリカーボネートジオール(製品名ETERNACOLL UM−90(1/3)(登録商標;宇部興産製);数平均分子量899;水酸基価124.8mgKOH/g、91.3g)と、2,2−ジメチロールプロピオン酸(19.8g)と、IPDI(環構造を有する炭素数12のポリイソシアネート)(116g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(86.3g)中、ジブチルスズジラウリレート(0.3g)存在下、窒素雰囲気下で、80〜90℃で4時間加熱した。ウレタン化反応終了時のNCO基含量は、2.58質量%であった。反応混合物を80℃にした後、トリエチルアミン(15.7g)を加え、30分攪拌した。反応混合物のうち、498gを抜き出し、強攪拌しながら水(849g)に入れた後、鎖延長剤として、35質量%の2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール水溶液(38.6g)を加え、水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。
[実施例3]
攪拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリテトラメチレングリコール(製品名(PTMG2000)(三菱化学社製)、数平均分子量1951;水酸基価57.5mgKOH/g、185g)と、ポリカーボネートジオール(製品名ETERNACOLL UM−90(1/3)(登録商標;宇部興産製);数平均分子量899;水酸基価124.8mgKOH/g、46.2g)と、2,2−ジメチロールプロピオン酸(14.6g)と、水素添加XDI(環構造を有する炭素数10のポリイソシアネート)(71.3g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(100g)中、ジブチルスズジラウリレート(0.3g)存在下、窒素雰囲気下で、80〜90℃で3時間加熱した。ウレタン化反応終了時のNCO基含量は、2.12質量%であった。反応混合物を80℃にした。反応混合物のうち、391gを抜き出し、強攪拌しながらジメチルアミノエタノール(10.0g)と水(862g)の混合溶液に入れた後、鎖延長剤として、35質量%の2−メチル−1,5−ジアミノペンタン水溶液(30.0g)を加え、水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。
[実施例4]
攪拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリテトラメチレングリコール(製品名(PTMG2000)(三菱化学社製)、数平均分子量1951;水酸基価57.5mgKOH/g、152g)と、ポリカーボネートジオール(製品名ETERNACOLL UM−90(1/3)(登録商標;宇部興産製);数平均分子量899;水酸基価124.8mgKOH/g、67.6g)と、2,2−ジメチロールプロピオン酸(17.0g)と、TMXDI(環構造を有する炭素数14のポリイソシアネート)(93.9g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(101g)中、ジブチルスズジラウリレート(0.3g)存在下、窒素雰囲気下で、80〜90℃で5時間加熱した。ウレタン化反応終了時のNCO基含量は、1.91質量%であった。反応混合物を80℃にした。反応混合物のうち、409gを抜き出し、強攪拌しながらジメチルアミノエタノール(11.5g)と水(806g)の混合溶液に入れた後、鎖延長剤として、35質量%の2−メチル−1,5−ジアミノペンタン水溶液(27.5g)を加え、水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。
[実施例5]
攪拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリテトラメチレングリコール(製品名(PTMG2000)(三菱化学社製)、数平均分子量1951;水酸基価57.5mgKOH/g、179g)と、ポリカーボネートジオール(製品名ETERNACOLL UM−90(3/1)(登録商標;宇部興産製);数平均分子量869;水酸基価129.1mgKOH/g、76.6g)と、2,2−ジメチロールプロピオン酸(19.4g)と、TMXDI(環構造を有する炭素数14のポリイソシアネート)(110g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(111g)中、ジブチルスズジラウリレート(0.3g)存在下、窒素雰囲気下で、80〜90℃で5時間加熱した。ウレタン化反応終了時のNCO基含量は、1.91質量%であった。反応混合物を80℃にした。反応混合物のうち、451gを抜き出し、強攪拌しながらジメチルアミノエタノール(13.1g)と水(916g)の混合溶液に入れた後、鎖延長剤として、35質量%の2−メチル−1,5−ジアミノペンタン水溶液(33.5g)を加え、水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。
[比較例1]
攪拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリテトラメチレングリコール(製品名(PTMG2000)(三菱化学社製)、数平均分子量2030;水酸基価55.3mgKOH/g、18.7g)と、ポリカーボネートジオール(製品名ETERNACOLL UC−100(登録商標;宇部興産製);数平均分子量1030;水酸基価109mgKOH/g、160g)と、2,2−ジメチロールプロピオン酸(22.1g)と、水素添加MDI(環構造を有する炭素数15のポリイソシアネート)(147g)とを、N−メチルピロリドン(146g)中、ジブチルスズジラウリレート(0.2g)存在下、窒素雰囲気下で、80〜90℃で6時間加熱した。ウレタン化反応終了時のNCO基含量は、3.71質量%であった。反応混合物を80℃にした後、トリエチルアミン(16.7g)を加え、30分攪拌した。反応混合物のうち、330gを抜き出し、強攪拌しながら水(622g)に入れた後、鎖延長剤として、35質量%の2−メチル−1,5−ジアミノペンタン水溶液(46.7g)を加え、水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。
[比較例2]
攪拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリテトラメチレングリコール(製品名(PTMG2000)(三菱化学社製)、数平均分子量1961;水酸基価57.2mgKOH/g、85.1g)と、ポリカーボネートジオール(製品名ETERNACOLL UH−200(登録商標;宇部興産製);数平均分子量2011;水酸基価55.8mgKOH/g、125g)と、2,2−ジメチロールプロピオン酸(14.8g)と、水素添加MDI(環構造を有する炭素数15のポリイソシアネート)(95.9g)とを、N−エチルピロリドン(109g)中、ジブチルスズジラウリレート(0.3g)存在下、窒素雰囲気下で、80〜90℃で5時間加熱した。ウレタン化反応終了時のNCO基含量は、2.75質量%であった。反応混合物を80℃にした後、トリエチルアミン(11.0g)を加え、30分攪拌した。反応混合物のうち、415gを抜き出し、強攪拌しながら水(436g)に入れた後、鎖延長剤として、35質量%の2−メチル−1,5−ジアミノペンタン水溶液(42.8g)を加え、水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。
Figure 2021054938
なお、表1中の略号は、以下の通りである。
<(a)ポリイソシアネート>
IPDI:イソホロンジイソシアネート(エボニック製)
H6XDI:水素添加キシリレンジイソシアネート(三井化学製)
TMXDI:テトラメチルキシリレンジイソシアネート(オルネクス製)
H12−MDI:水素添加MDI(エボニック製)
<(b1)ポリエーテルポリオール>
PTMG2000:ポリテトラメチレングリコール(三菱化学製)
<(b2)ポリカーボネートポリオール>
UM−90(1/3):1,4−シクロヘキサンジメタノールと1,6−ヘキサンジオールとの混合物(モル比で1:3)を原料として得られるポリカーボネートポリオール(宇部興産製)
UM−90(3/1):1,4−シクロヘキサンジメタノールと1,6−ヘキサンジオールとの混合物(モル比で3:1)を原料として得られるポリカーボネートポリオール(宇部興産製)
UC−100:1,4−シクロヘキサンジメタノールを原料として得られるポリカーボネートポリオール(宇部興産製)
UH−200:1,6−ヘキサンジオールを原料として得られるポリカーボネートポリオール(宇部興産製)
<(c)酸性基含有ポリオール>
DMPA:2,2−ジメチロールプロピオン酸(パーストープ製)
<鎖延長剤(B)>
AEEA:2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール(日本乳化剤製)
MPMD:2−メチル−1,5−ジアミノペンタン(東京化成試薬)
実施例1〜5と、比較例1及び2との比較より、本願発明の水性ポリウレタン樹脂分散体は塗膜とした際に平滑性に優れていることが分かる。また、実施例1及び2と、実施例3〜5との比較より、ポリイソシアネートとして水素添加キシリレンジイソシアネート又はテトラメチルキシリレンジイソシアネートを用いた場合は引張伸びに優れていることが分かる。
本発明は、新規な水性ポリウレタン樹脂分散体及びそれを用いたコーティング剤組成物に関する。水性ポリウレタン樹脂分散体は、各種コーティング剤の主成分などとして有用である。

Claims (11)

  1. (a)ポリイソシアネート由来の構造と、(b1)ポリエーテルポリオール由来の構造と、(b2)ポリカーボネートポリオール由来の構造と、(c)酸性基含有ポリオール由来の構造とを有するポリウレタン樹脂が水系媒体に分散された分散体であって、
    (a)ポリイソシアネート由来の構造が、環構造を有する炭素数8〜14のポリイソシアネート由来の構造である、水性ポリウレタン樹脂分散体。
  2. (a)環構造を有する炭素数8〜14のポリイソシアネート由来の構造が、イソホロンジイソシアネート由来の構造、キシリレンジイソシアネート由来の構造、水素添加キシリレンジイソシアネート由来の構造、テトラメチルキシリレンジイソシアネート由来の構造及びテトラメチルシクロヘキシルジイソシアネート由来の構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
  3. (b2)ポリカーボネートポリオール由来の構造が、脂環式構造及び2個以上の1級水酸基を有するポリオールモノマーから得られるポリカーボネートポリオール由来の構造又は2個以上の1級水酸基を有する脂肪族ポリオールモノマーと脂環式構造及び2個以上の1級水酸基を有するポリオールモノマーとから得られるポリカーボネートポリオール由来の構造を含む、請求項1又は2に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
  4. ポリウレタン樹脂固形分に対する(b2)ポリカーボートポリオール由来の脂環式構造の含有率が、1〜20質量%である、請求項3に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
  5. 有機溶媒を更に含み、有機溶媒が非ピロリドン溶媒である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
  6. 平滑な基材に硬化後の膜厚が100μmになるように塗布し、乾燥させた後、硬化させた塗膜をJIS K 7311に準拠した方法で5号ダンベル状試験片を用いて測定した引張伸びが600〜2000%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体を含有する、塗料組成物。
  8. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体を含有する、コーティング剤組成物。
  9. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体を含有する、インク組成物。
  10. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体を含有する、接着剤組成物。
  11. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体を含む組成物を硬化させてなるポリウレタン樹脂フィルム。
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