JP2021050281A - 塗膜、粉体塗料、塗工物及び塗装方法 - Google Patents

塗膜、粉体塗料、塗工物及び塗装方法 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた撥水性、付着防止性を有し、良好な耐久性を有する塗膜、このような塗膜の形成が可能な粉体塗料、このような塗膜が表面の少なくとも一部に形成されている塗工物及び塗装方法を提供すること。【解決手段】架橋型フッ素樹脂を主成分として含むマトリックス樹脂の架橋物の表面に、前記マトリックス樹脂の架橋温度よりも融点が高い熱可塑性フッ素樹脂により形成された平均粒子径が0.5〜50μmの微粒子に由来する微細な凹凸が形成され、前記架橋物と前記微粒子とが連結されている塗膜。【選択図】なし

Description

本発明は、塗膜、粉体塗料、塗工物及び塗装方法に関し、特に、フッ素樹脂を用いた塗膜、粉体塗料、塗工物及び塗装方法に関するものである。
従来、各種基材の表面に耐候性、耐衝撃性、耐水性、非粘着性、摺動性、撥水性、耐薬品性等の特性を付与するために、基材表面にフッ素樹脂を含む表面層を形成したり、基材表面に微細な凹凸形状を付与したり、両者を組み合わせた表面構造としたりすること等が行われている(特許文献1〜3)。
例えば、特許文献1には、特定の含フッ素系の共重合体(A)及び(B)を含む粉体塗料用組成物、該粉体塗料組成物からなる粉体を含む粉体塗料、該粉体塗料から形成された塗膜を有する塗装物品が開示されている。このような構成により、撥水性・撥油性に優れ、表面が擦られたり、水と接触する環境下に設けられたりした場合でも、優れた撥水性・撥油性を維持でき、かつ、カビ、藻等の生物が付着しにくい優れた耐生物付着性をも有する塗膜を形成できる粉体塗料用組成物等を提供できるとされている。
特許文献2には、一方の面に、少なくとも1種以上の凸形状を有する凹凸形状層を有し、前記凹凸形状層が、ポリオレフィン系樹脂架橋体を含有し、前記凸形状を有する面上に疎水性酸化物微粒子およびフッ素系共重合体樹脂を含有する撥液層を備えた、撥液性樹脂シートが開示されている。このような構成により、シート表面に油系の液体および界面活性剤系の液体に対する付着防止性が顕著に改善されること等が記載されている。
特許文献3には、成膜温度がポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」と称する。)樹脂の融点よりも低いマトリックス樹脂と、平均粒径が2〜40μmの粒子状のポリテトラフルオロエチレン樹脂とを主成分として含み、かつ前記粒子状のポリテトラフルオロエチレン樹脂の含有量を前記マトリックス樹脂に対し5〜100重量部とし、なおかつカーボンブラックとグラファイトから成る群より選ばれた少なくとも1種の着色顔料を配合して構成されることを特徴とする材料表面の摺動性改善用塗料が開示されている。このような構成により、所望の摺動性の改善効果を安定かつ持続して発現させることが可能な塗装物を実現させることが可能であるとされている。
特許第6540712号公報 国際公開第2016/047548号 特開2002−173646号公報
特許文献1に記載の発明では、前記粉体塗料用組成物は前記共重合体(A)及び(B)を溶融混錬した混練物を粉砕したものである。塗膜は、このような粉体塗料用組成物の粉砕物からなる粉体塗料を溶融し、冷却させて得られるものである。このような塗膜の表面は、前記共重合体(A)及び(B)又はその反応生成物による撥水性等はある程度期待できるが、改善の余地がある。
特許文献2に記載の発明では、表面の凹凸形状層及び撥液層による撥液性等はある程度期待できると考えられるが、表面の凹凸形状は、もっぱら凹凸形状層によるもので、撥液層には着目されていない。また、撥液層は、フッ素樹脂重合体及び疎水性酸化物微粒子を含有しているが、疎水性酸化物微粒子はシリカ、アルミナ、チタニアが例示されているだけである。したがって、撥水性や耐久性等に改善の余地がある。
特許文献3に記載の発明では、マトリックス樹脂として記載されている樹脂は、ポリエステル樹脂、PVdF/アクリル樹脂等であり、このような樹脂では、粒子状のPTFE樹脂の脱落が生じやすく耐久性に欠けることが懸念される。また、撥水性も十分ではない。
本発明の目的は、優れた撥水性、付着防止性を有し、良好な耐久性を有する塗膜、このような塗膜の形成が可能な粉体塗料、このような塗膜が表面の少なくとも一部に形成されている塗工物及び塗装方法を提供することである。
本発明者は、前述の課題解決のために鋭意検討を行った。その結果、マトリックス樹脂として架橋型フッ素樹脂を主成分として含むものを採用し、マトリックス樹脂の架橋物の表面に、所定の熱可塑性フッ素樹脂の微粒子に由来する微細な凹凸を形成させ、架橋物と微粒子とを連結させるようにすることで、前述の課題が解決可能であることを見出した。
本発明の第一は、架橋型フッ素樹脂を主成分として含むマトリックス樹脂の架橋物の表面に、前記マトリックス樹脂の架橋温度よりも融点が高い熱可塑性フッ素樹脂により形成された平均粒子径が0.5〜50μmの微粒子に由来する微細な凹凸が形成され、前記架橋物と前記微粒子とが連結されている塗膜に関する。
本発明の実施形態では、塗膜表面の水の接触角が120°以上であってよい。
本発明の実施形態では、塗膜表面の表面粗さRaが、0.1〜2.5μmであってよい。
本発明の実施形態では、前記熱可塑性フッ素樹脂が未溶融のポリテトラフルオロエチレンであってよい。
本発明の実施形態では、前記架橋型フッ素樹脂が、フルオロオレフィン単位とビニルエーテル単位を含む共重合体であってよい。
本発明の第二は、架橋型フッ素樹脂を主成分として含むマトリックス樹脂の粉体1を85〜99重量%、熱可塑性フッ素樹脂の粉体2を1〜15重量%含み、前記熱可塑性フッ素樹脂が、前記マトリックス樹脂の架橋温度よりも高い融点を有し、前記マトリックス樹脂と連結可能な部位を有し、前記粉体2は、平均粒子径が0.5〜50μmの微粒子である、粉体塗料に関する。
本発明の実施形態では、前記熱可塑性フッ素樹脂が未溶融のポリテトラフルオロエチレンであってよい。
本発明の実施形態では、前記架橋型フッ素樹脂が、フルオロオレフィン単位とビニルエーテル単位を含む共重合体であってよい。
本発明の実施形態では、前記粉体1に、架橋成分が含まれていてもよい。
本発明の第三は、前記塗膜で表面の少なくとも一部が被覆されている塗工物に関する。
本発明の第四は、前記粉体塗料を帯電させ、基材の表面に付着させる工程を含む、塗装方法に関する。
本発明の実施形態では、基材表面に前記粉体塗料を付着させた後、加熱処理を行う工程を含んでもよい。
本発明によれば、優れた撥水性、付着防止性を有し、良好な耐久性を有する塗膜、このような塗膜の形成が可能な粉体塗料、このような塗膜が表面の少なくとも一部に形成されている塗工物及び塗装方法を提供することができる。
実施例2の塗膜表面及びコンターマシンによる切断面の走査型電子顕微鏡の撮像を示した図である。 比較例4の塗膜表面及びコンターマシンによる切断面の走査型電子顕微鏡の撮像を示した図である。 (a)実施例2の塗膜表面の走査型電子顕微鏡による撮像を示した図である。(b)比較例2の塗膜表面の走査型電子顕微鏡による撮像を示した図である。
本発明の実施形態に係る塗膜は、架橋型フッ素樹脂を主成分として含むマトリックス樹脂の架橋物の表面に、微細な凹凸が形成されたものである。この微細な凹凸は、前記マトリックス樹脂の架橋温度よりも融点が高い熱可塑性フッ素樹脂により形成された平均粒子径が0.5〜50μmの微粒子に由来する。また、前記架橋物と前記微粒子とが連結されている。「連結されている」とは、化学的及び/又は物理的に連結されていることを意味する。「微粒子に由来する」とは、微粒子が架橋物の表面から凸状に突出したもののほか、微粒子が架橋物の表面から突出しないものの、微粒子の表面を被覆しつつ、架橋物の表面に架橋物の凹凸が形成されているものを含む。
このように、架橋型フッ素樹脂を主成分として含むマトリックス樹脂の架橋物の表面に所定の熱可塑性フッ素樹脂の微粒子に由来する微細な凹凸が形成されていることで、フッ素樹脂に由来する非粘着性等の特性と、フッ素樹脂の粒子に由来する微細な凹凸に基づく撥水性との相乗効果により、優れた撥水性、付着防止性が発揮されると考えられる。微細な凹凸に基づく撥水性は、所謂ロータス効果によるものと考えられる。また、マトリックス樹脂が架橋型フッ素樹脂を主成分として含むため、その架橋物とフッ素樹脂の微粒子とが良好に連結することができると考えられる。そのため、この微粒子の脱落が効果的に抑制されるため、撥水性、付着防止性等の機能を持続して発揮することができ、良好な耐久性が付与される。
塗膜の撥水性は、例えば水の接触角により評価することができる。この水の接触角としては、120°以上であることが好ましく、140°以上であることがより好ましく、150°以上であることがさらに好ましい。一般に水の接触角が150°以上の場合、超撥水性であるとされる。水の接触角は、例えば、後述する方法で測定することができる。
塗膜の表面粗さRaは、一層優れた撥水性を付与する観点から、0.1〜2.5μmであるのが好ましい。
塗膜の厚みは、用途等に応じて適宜選択することができる。
前記塗膜は、例えば、以下の実施形態に係る粉体塗料を用いて形成することができる。
前記粉体塗料は、架橋型フッ素樹脂を主成分として含むマトリックス樹脂の粉体1を85〜99重量%、熱可塑性フッ素樹脂の粉体2を1〜15重量%含む。塗膜におけるマトリックス樹脂と所定の微粒子の比率も同様になる。前記熱可塑性フッ素樹脂は、前記マトリックス樹脂の架橋温度よりも高い融点を有し、前記架橋型フッ素樹脂と連結可能な部位を有する。前記粉体2は、平均粒子径が0.5〜50μmの微粒子である。
このように、粉体2がマトリックス樹脂の架橋温度よりも高い融点を有する熱可塑性フッ素樹脂の微粒子であることで、マトリックス樹脂の架橋物を形成する際に、微粒子の形状を維持することができる。そのため、マトリックス樹脂の架橋物の表面に微粒子に基づく微細な凹凸を形成することができる。また、このような粉体塗料により形成された塗膜は、前述のように、優れた撥水性、付着防止性が発揮され、良好な耐久性が付与され得る。
前記粉体1は、塗膜を形成することになる主要な成分であり、マトリックス樹脂を含む。即ち、粉体1は、マトリックス樹脂並びに必要に応じて用いられる後述する架橋成分及び添加剤を含み得る。マトリックス樹脂は、架橋型フッ素樹脂を主成分として含む。主成分とは、マトリックス樹脂として含まれる成分のうち、最も含有比率の高いものを意味する。マトリックス樹脂は、架橋型フッ素樹脂を主成分として含むものであれば特に限定はないが、耐久性、撥水性等の観点からは、架橋型フッ素樹脂であるのが好ましい。マトリックス樹脂に含まれてもよい他の樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
前記架橋型フッ素樹脂は、架橋性基を有する含フッ素重合体である。架橋性基同士が直接あるいは架橋剤を介して結合することで、含フッ素重合体同士が架橋され架橋物が得られる。このような架橋型フッ素樹脂としては、例えば、フルオロオレフィンに基づく単位と架橋性基を有する単量体に基づく単位とを有する含フッ素共重合体が挙げられる。このような含フッ素共重合体のうち、含フッ素非ブロック共重合体であるのが好ましい。このような含フッ素非ブロック共重合体としては、例えば、特許文献1に記載のもの等が挙げられる。特許文献1の記載を参照しつつ説明すると以下のとおりである。
前記含フッ素非ブロック共重合体は、フルオロオレフィンに基づく単位(a1)と、架橋性基を有する単量体に基づく単位(a2)とを有する。含フッ素非ブロック重合体は、必要に応じて、フルオロオレフィンおよび架橋性基を有する単量体以外の単量体に基づく単位(以下、単位(a3)という。)を有していてもよい。含フッ素非ブロック共重合体は、例えば、含フッ素交互共重合体、含フッ素ランダム共重合体等が挙げられる。
前記単位(a1)を形成するフルオロオレフィンは、オレフィン(一般式Cn2n)の水素原子の1個以上がフッ素原子で置換された化合物である。フルオロオレフィンの炭素数は、2〜8が好ましく、2〜4がより好ましく、2が特に好ましい。フルオロオレフィンにおけるフッ素原子と水素原子の合計数に対するフッ素原子の数の割合は、25%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、100%であってもよい。フルオロオレフィンにおいては、フッ素原子で置換されていない水素原子の1個以上が塩素原子で置換されていてもよい。
フルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」ともいう。)、クロロトリフルオロエチレン(以下、「CTFE」ともいう。)、ヘキサフルオロプロピレン、ビニリデンフルオリドおよびビニルフルオリドからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、TFE、CTFEが特に好ましい。フルオロオレフィンは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。フルオロオレフィン単位としては、フルオロオレフィンの重合により直接形成される単位が好ましい。
前記単位(a2)を形成する架橋性基を有する単量体(以下、単量体(m2)という。)としては、架橋性基として水酸基、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、アルコキシシリル基の少なくとも1種を有する単量体が挙げられる。単量体(m2)は、架橋性に優れる点から、水酸基を有する単量体、カルボキシ基を有する単量体が好ましく、水酸基を有する単量体がより好ましい。また、水酸基およびカルボキシ基のうち少なくとも1種の架橋性基を有すると、後述する架橋成分としてイソシアネート系架橋剤を含む場合に、架橋速度に優れる。単量体(m2)は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
水酸基を有する単量体としては、フッ素系単量体でも、非フッ素系単量体でもよく、非フッ素系単量体が好ましい。非フッ素系単量体としては、例えば、アリルアルコール、ヒドロキシアルキルビニルエーテル(例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル等。)、ヒドロキシアルキルアリルエーテル(例えば、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル等。)、ヒドロキシアルカン酸ビニル(例えば、ヒドロキシプロピオン酸ビニル等。)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等。)等が挙げられる。水酸基を有する単量体は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
水酸基を有する単位は、重合体の反応性基変換で水酸基を導入した単位であってもよい。例えば、単位(a1)と、水酸基以外の架橋性基を有する単量体に基づく単位(a2)と、必要に応じて単位(a3)とを有する重合体に、前記架橋性基と反応する第2の架橋性基と水酸基とを有する化合物を反応させることにより、水酸基を有する単位としてもよい。
カルボキシ基を有する単量体としては、フッ素系単量体でも、非フッ素系単量体でもよく、非フッ素系単量体が好ましい。該単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、10−ウンデシレン酸(ウンデセン酸)、9−オクタデセン酸(オレイン酸)、フマール酸、マレイン酸等の単量体が挙げられる。カルボキシ基を有する単量体は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
カルボキシ基を有する単位は、例えば、水酸基を有する単位を有する重合体の該水酸基を、下記の方法でカルボキシ基に変換して、形成してもよい。
(a)有機溶媒中、水酸基を有する重合体の水酸基に、酸無水物を反応させてエステル結合およびカルボキシ基を形成させる方法。
(b)水酸基を有する重合体と酸無水物とを混練し、前記水酸基に酸無水物を反応させてエステル結合およびカルボキシ基を形成させる方法。
前記方法で導入したカルボキシ基は、酸無水物に由来する。なお、カルボキシ基を前記方法で形成させた後に、重合体に水酸基の一部が残存していてもよい。
酸無水物としては、二塩基性酸無水物が挙げられる。二塩基性酸無水物としては、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、無水1,2−シクロヘキサンジカルボン酸(ヘキサヒドロ無水フタル酸)、無水cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水1,8−ナフタル酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
単位(a3)を形成する単量体(以下、単量体(m3)という。)としては、フッ素系単量体でも、非フッ素系単量体でもよく、非フッ素系単量体が好ましい。単量体(m3)としては、ビニル単量体、すなわち、炭素−炭素二重結合を有する化合物が好ましい。ビニル単量体は、フルオロオレフィンとの交互共重合性に優れ、重合収率が高くできる。また、未反応で残存した場合でも、塗膜への影響が少なく、かつ、製造工程で容易に除去できる。ビニル単量体としては、例えば、ビニルエーテル化合物、アリルエーテル化合物、カルボン酸ビニル、カルボン酸アリル、オレフィン化合物等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、例えば、シクロアルキルビニルエーテル(シクロヘキシルビニルエーテル(以下、「CHVE」ともいう。)等)、アルキルビニルエーテル(例えば、ノニルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル等)が挙げられる。
アリルエーテル化合物としては、例えば、アルキルアリルエーテル(エチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等)が挙げられる。
カルボン酸ビニルとしては、例えば、カルボン酸(酢酸、酪酸、ピバリン酸、安息香酸、プロピオン酸等)のビニルエステルが挙げられる。また、分枝鎖状のアルキル基を有するカルボン酸のビニルエステルとして、市販されているベオバ−9、ベオバ−10(いずれもシェル化学(株)製、商品名)等を用いてもよい。
カルボン酸アリルとしては、例えば、カルボン酸(酢酸、酪酸、ピバリン酸、安息香酸、プロピオン酸等)のアリルエステルが挙げられる。
オレフィン化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン等が挙げられる。
単量体(m3)としては、含フッ素非ブロック共重合体のガラス転移温度を30℃以上に設計でき、塗膜のブロッキングを抑えることができる点からは、シクロアルキルビニルエーテル等が好ましく、CHVEが特に好ましい。
単量体(m3)としては、塗膜の柔軟性に優れる点からは、炭素数3以上の直鎖状または分岐状のアルキル基を有するものが好ましい。
単量体(m3)は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
前記架橋型フッ素樹脂は、フルオロオレフィン単位とビニルエーテル単位とを含む共重合体であるのが好ましい。例えば、前記単位(a1)と前記単位(a2)との含フッ素非ブロック共重合体、又は、前記単位(a1)と前記単位(a2)と前記単位(a3)との含フッ素非ブロック共重合体等が挙げられる。このうち、単位(a2)は、水酸基を有するビニルエーテル単位であるのが好ましい。また、単位(a2)が水酸基を有するビニルエーテル単位である場合、単位(a3)は、アルキルビニルエーテル単位及び/又はカルボキシ基を有する単量体に基づく単位であるのが好ましい。また、共重合体の構造は、単位(a1)と、単位(a2)又は単位(a3)とが交互に結合した交互重合体であるのが好ましい。例えば、・・・−a1−a2−a1−a2−a1−・・・、a1−a2−a1−a3−a1・・・、等が挙げられる。
フルオロオレフィン単位の割合は、前記含フッ素非ブロック共重合体中の全単位(100モル%)のうち、30〜70モル%が好ましく、40〜60モル%がより好ましい。単位(a2)の割合は、前記含フッ素非ブロック共重合体中の全単位(100モル%)のうち、0.5〜20モル%が好ましく、1〜15モル%がより好ましい。単位(a3)の割合は、前記含フッ素非ブロック共重合体中の全単位(100モル%)のうち、20〜60モル%が好ましく、30〜50モル%がより好ましい。前記含フッ素非ブロック共重合体における各単位の含有量は、プロトンNMR法やカーボンNMR法等により求めることができる。
前記含フッ素非ブロック共重合体の数平均分子量は、3000〜50000が好ましく、5000〜30000がより好ましい。尚、本明細書において、数平均分子量および後述の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法によってポリスチレン換算で求めた値である。また、架橋密度は求められる塗膜の特性に応じて調整することが好ましい。
前記含フッ素非ブロック共重合体が水酸基を有する場合、その水酸基価は、5〜100mgKOH/gが好ましく、10〜80mgKOH/gがより好ましい。なお、本明細書において水酸基価の測定は、JIS K 1557−1:2007(ISO14900:2001)、もしくは、JIS K 0070:1992に準じて行う。
前記含フッ素非ブロック共重合体の融点は、200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましい。尚、融点は、示差走査熱量計を用いて求めた値である。
粉体1には、耐久性の向上の観点から、架橋成分が含まれていてもよい。架橋型フッ素樹脂の高分子量化によりマトリックス樹脂の強度がより向上し、熱可塑性フッ素樹脂の微粒子との接合強度をより向上させることができる。
このような架橋成分としては、架橋型フッ素樹脂が有する架橋性基と反応し、架橋型フッ素樹脂を架橋したり高分子量化したりするものであれば特に限定はないが、架橋型フッ素樹脂が有する架橋性基に反応し得る架橋性基を2個以上有するのが好ましい。このような架橋成分としては、公知の化合物を用いることができる。例えば、ブロック化イソシアネート系架橋剤、アミン系架橋剤(ヒドロキシメチル基やアルコキシメチル基が結合したアミノ基を有する、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、スルホアミド樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂等)、β-ドロキシアルキルアミド系架橋剤、エポキシ系架橋剤(トリグリシジルイソシアヌレート等)が挙げられる。
このうち、架橋成分としては、イソシアネート系架橋剤がより好ましい。また、常温での反応を防止して、粉体塗料が加熱溶融された際に反応性を有するようにするため、イソシアネート基がブロック化されたブロック化イソシアネート系架橋剤がさらに好ましい。ブロック化イソシアネート系架橋剤としては、室温で固体のものが好ましい。ブロック化イソシアネート系架橋剤としては、脂肪族、芳香族または芳香脂肪族のジイソシアネートと、活性水素を有する低分子化合物とを反応させて得たポリイソシアネートを、ブロック剤と反応させ、マスキングすることによって製造したものが好ましい。
ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
活性水素を有する低分子化合物としては、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソシアヌレート、ウレチジオン、水酸基を有する低分子量ポリエステル、ポリカプロラクトン等が挙げられる。
ブロック剤としては、アルコール類(メタノール、エタノール、ベンジルアルコール等)、フェノール類(フェノール、クレゾーン等)、ラクタム類(カプロラクタム、ブチロラクタム等)、オキシム類(シクロヘキサノン、オキシム、メチルエチルケトオキシム等)が挙げられる。
粉体1には、架橋型フッ素樹脂の架橋反応を促進するため、必要に応じて架橋触媒が含まれていてもよい。架橋触媒は、架橋剤の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば、ブロック化イソシアネート系架橋剤を用いる場合は、架橋触媒として、オクチル酸スズ、トリブチルスズラウレート、ジブチルスズジラウレート等のスズ触媒が好ましい。架橋触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
粉体1には、必要に応じて、紫外線吸収剤、顔料等の各種添加剤の1種以上を他の成分として含んでよい。紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤、無機系紫外線吸収剤のいずれの紫外線吸収剤も用いることができる。各種添加剤としては、たとえば、光安定剤(ヒンダードアミン光安定剤等)、つや消し剤(超微粉合成シリカ等)、界面活性剤(ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、またはアニオン界面活性剤)、レベリング剤、表面調整剤(塗膜の表面平滑性を向上させる。)、脱ガス剤(粉体に巻き込まれる空気、架橋剤からの気体、水分等が塗膜内部に留まらないよう、塗膜外へ出す作用がある。なお、通常は、固体だが、溶融すると非常に低粘度になる。)、充填剤、熱安定剤、増粘剤、分散剤、帯電防止剤、防錆剤、シランカップリング剤、防汚剤、低汚染化処理剤、顔料等が挙げられる。顔料としては、例えば、光輝顔料、防錆顔料、着色顔料、体質顔料等が挙げられる。顔料は、後述する粉体2の微粒子の粒子径より小さい粒子径のものを用いるのが好ましい。
架橋型フッ素樹脂や、架橋型フッ素樹脂と架橋成分との混合物は、市販のものを用いることができる。例えば、AGC株式会社製のルミフロン(登録商標) フレーク LF710等が挙げられる。
粉体1は、粉体塗料全体中、85〜99重量%含まれるが、撥水性、耐久性の観点からは、85〜95重量%が好ましい。ここで、架橋成分及び/又は他の添加剤が含まれる場合は、粉体1の含有量は、マトリックス樹脂と架橋成分及び/又は他の添加剤との合計量を意味する。マトリックス樹脂と架橋成分との混合割合は、マトリックス樹脂及び架橋成分の種類に応じて適宜決定することができる。例えば、マトリックス樹脂が架橋型フッ素樹脂である場合は、架橋型フッ素樹脂100重量部に対して、30〜80重量部が好ましい。
前記粉体2は、粉体1に含まれるマトリックス樹脂の架橋物の表面に微細な凹凸を形成するための成分であり、熱可塑性フッ素樹脂を含む。この熱可塑性フッ素樹脂は、マトリックス樹脂の架橋温度よりも高い融点を有し、前記架橋型フッ素樹脂と連結可能な部位を有する。また、粉体2は、平均粒子径が0.5〜50μmの微粒子である。このような平均一次粒子径を有することで、所謂ロータス効果に基づく撥水性が得られる。連結可能な部位とは、化学的及び/又は物理的に連結することが可能な部位であればよい。
このような熱可塑性フッ素樹脂は、例えば、PTFE(融点:約327℃)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE、融点:220℃)、ポリビニルフルオライド(PVF、融点:約203℃)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP、融点:260〜290℃)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA、融点:310℃)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE、融点:270℃)等が挙げられる。
このような熱可塑性フッ素樹脂のうち、塗膜表面のロータス効果を発揮する粒子形状を維持するために、融点の観点からPTFEが好ましく、塗膜の付着防止性、耐久性の観点から未溶融のPTFEがより好ましい。未溶融のPTFEは、剪断力を受けると容易に粒子が繊維化(フィブリル化)し、繊維状組織が形成される特性を有する。繊維状組織が形成されると、例えば、一次粒子が凝集して二次粒子が形成された場合の粒子間の結合力強く、応力が負荷された場合の二次粒子の強度が強くなると考えられる。また、例えば、粉体塗料を加熱して粉体1に含まれるv型フッ素樹脂の粉体を溶融させる場合、微粒子のままで存在する未溶融のPTFEの繊維状組織が形成された部分に溶融した架橋型フッ素樹脂が入り込み、繊維状組織とマトリックス樹脂が絡み合い、マトリックス樹脂に含まれる架橋型フッ素樹脂を架橋させるとマトリックス樹脂と未溶融のPTFEの微粒子とが物理的に良好に連結され、微粒子の脱落がより効果的に抑制され、塗膜の耐久性がより向上すると考えられる。一方、過剰にフィブリル化すると、粒子が凝集し、粉体塗料として用いることが困難になるため、過剰にフィブリル化が生じないようにする必要がある。未溶融のPTFEのフィブリル化は、例えば、粉体1と粉体2を混合する際の撹拌処理により生じ得るため、PTFEの微粒子に剪断力が極力負荷されないようにする必要がある。さらに、未溶融のPTFEの微粒子は、マトリックス樹脂の架橋温度より高い融点を有することから、溶融することなくマトリックス樹脂の架橋物と連結されると、結晶化度が非常に高く、かつ、未溶融のPTFEは、フッ素原子が主鎖を覆っている伸び切り鎖構造からなる構造を有し、分子間の滑り性が高く、未溶融PTFEの微粒子を含む塗膜は優れた非粘着性、低摩擦性を示し得る。
溶融した後のPTFEは、フィブリル化しないため、繊維状組織による物理的な連結の効果が得られにくい。そのため、二次粒子が形成された場合に粒子が破損し易いうえ、マトリックス樹脂との物理的な連結による効果が得られにくい。その結果、未溶融のPTFEに比べて塗膜の耐久性が低くなると考えられる。
本発明による塗膜の架橋温度としては、塗料のマトリックス樹脂が溶融し、架橋成分であるブロック化イソシアネートのブロック成分が解離する温度より高いことが好ましく、例えば180℃〜200℃が好ましい。
粉体2は、平均粒子径(D50)が0.5〜50μmの微粒子である。撥水性の観点からは、1〜20μmが好ましく、3〜7μmがより好ましい。平均粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。
粉体2は、粉体塗料全体中、1〜15重量%含まれるが、撥水性、耐久性の観点からは、5〜15重量%が好ましい。
粉体塗料は、粉体1と粉体2とを混合することで得ることができる。粉体1と粉体2とを均一に混合することができれば混合方法に特に限定はないが、粉体2として、未溶融のPTFEの微粒子を用いる場合は、未溶融のPTFEの過度のフィブリル化を抑制しつつ、均一に撹拌処理するのが好ましい。
前記塗膜は、前記粉体塗料を帯電させ、基材の表面に付着させる工程を含む塗装方法、により形成することができる。このように、帯電した粉体塗料を用いた粉体塗装により塗膜を形成可能なため、揮発性有機溶媒(VOC)の問題を生じさせることがない。また、基材の形状を問わず、各種の立体形状や狭隘部への塗膜の形成が可能になる。例えば、配管の内壁面や網の表面に塗膜の形成が可能である。特に、静電粉体塗装の場合は、基材にアースを接続することが可能であれば、製品の工場内での製造時に限らず、既存の製品の設置場所において塗装を行うことも可能である。
粉体塗料の塗布方法は、従来公知の方法を採用することができる。例えば、静電ガンを用いて、帯電させた粉体塗料を加圧空気等により噴霧する方法が挙げられる。帯電方法も特に限定はなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば、コロナ放電等が挙げられる。
前記基材の材質は、特に限定はなく、例えば、金属、セラミックス、ガラス、樹脂、コンクリート等が挙げられる。静電粉体塗装を行う場合は、金属である。摩擦静電塗装を行う場合は、金属以外の材質の基材であってもよい。金属としては、例えば、鉄、鋼、アルミニウム、ステンレス、金、銀、銅等が挙げられるが、これらに限定されない。基材の形状は、特に限定はない。尚、基材の表面は、塗膜と基材との固着強度を確保、向上する観点から、必要に応じて、予め研磨処理や、洗浄処理、プライマー処理を行ってもよい。
前述の粉体塗料の構成に応じて、基材表面に前記粉体塗料を付着させた後、加熱処理を行う工程を含んでもよい。加熱処理は、例えば、粉体塗料の粉体1に含まれる架橋型フッ素樹脂の架橋反応を加熱により行う場合に好適である。加熱温度は、粉体1のマトリックス樹脂の架橋反応温度以上で、粉体2を構成する熱可塑性フッ素樹脂の融点よりも低い温度であるのが好ましい。このような温度で加熱処理を行うと、粉体1のマトリックス樹脂の架橋物が形成されるとともに、粉体2の微粒子が溶融することがないため、マトリクス樹脂の架橋物の表面に、微粒子に基づく微細な凹凸が形成される。また、加熱により粉体1に含まれる架橋型フッ素樹脂の粉体が溶融し、粉体2に含まれる熱可塑性フッ素樹脂の微粒子の周囲が架橋型フッ素樹脂により適度に囲まれた状態になり、その状態で架橋型フッ素樹脂が架橋するため、微粒子がマトリックス樹脂とより強固に連結される。熱可塑性フッ素樹脂の微粒子が未溶融のPTFEである場合は、溶融した架橋型フッ素樹脂がフィブリルからなる繊維状組織に浸透した状態で架橋するため、マトリックス樹脂と未溶融PTFEの微粒子との連結がより一層強固になる。加熱方法は、基材に応じて適宜選択することができる。例えば、製品の工場内での製造時であれば、例えば、所定の温度に設定した炉内において所定時間加熱処理する方法が挙げられる。既存の製品の設置場所において加熱処理を行う場合は、例えば持ち運び可能な赤外線ランプ等を用いて、塗布範囲の全体を一度に所定時間加熱処理する方法、塗布範囲の一部を順番に所定時間加熱処理して塗布範囲全体を加熱処理する方法等が挙げられる。
前記粉体塗料及び前記塗装方法を採用することで、優れた撥水性、付着防止性を有し、良好な耐久性を有する塗膜が、基材の表面形状にかかわらず、その表面に形成された基材を得ることができる。したがって、このような塗膜は、水分を含むものが接する基材の表面に好適に適用可能である。例えば、(i)水性塗料、パルプ、スラリー、汚泥、雨水、アルコール、木質バイオマス原料などの含水物質等の配送ラインである配管の内表面への付着防止、(ii)鉄道車両、自動車、航空機及び建築用外装部材等の氷雪の付着防止、(iii)建築用部材であるコンクリート、セメント等の型枠部材等への付着防止、(iv)
鋼用部材等への石炭、石灰等の付着防止等に好適である。
前述の塗膜が、表面の少なくとも一部に形成されている基材、即ち、塗工物としては、例えば、前述のように、(i)各種の含水物質等の配送ラインの配管、(ii)鉄道車両、自動車、航空機、及び、コンクリート、セメント、金属等の建築用外装部材、(iii)コンクリート、セメント等の型枠部材、(iv)製鋼用部材等、の所望の表面に塗膜が形成されているものが挙げられる。
以下、本発明に係る実施形態を実施例に基づき説明する。
(実施例1〜5、比較例1〜6)
<粉体塗料の調製>
表1に示す組成になるように各粉体をドライブレンドした後、粉体への剪断力の負荷を抑制しながら撹拌処理を行って、各粉体が均一に混合した粉体塗料を調製した。
<基材の前処理>
基材としてステンレス鋼(SUS304)製の平板(サイズ:100mm×100mm×1.0mm)を用い、その表面を研磨紙によるデバリング処理により表面粗さRaが0.1μmになるように調整した後、アセトンにより洗浄した。基材表面の算術平均粗さRaは、表面粗さ測定機((株)東京精密製、サーフコム 1500DX3)により測定した。
<粉体塗装>
調製した粉体塗料を用い、静電粉体塗装装置(旭サナック株式会社製、Ec’Corona−X−AXR100ST、撹拌タイプ)により帯電させた粉体塗料を基材表面に付着させた。静電粉体塗装装置の条件は、高電圧80kV、定電流30μA、吐出量60%、搬送風量60L/minとした。粉体塗料を付着させた基材を、熱風循環式乾燥炉を用いて、180℃で20分間、加熱処理を行った。冷却して、表面に塗膜が形成された基材、即ち、塗工物を得た。得られた塗工物を用いて後述の評価を行った。
(評価)
(1)表面粗さRaの測定
表面粗さ測定器(株式会社東京精密製、SURFCOM 1500DX3)を用いて、縦倍率:2000倍、横倍率:6.3倍の条件で測定した。
(2)水接触角の測定
接触角径(株式会社エキシマ製、SImage mini 7、測定限界:140°)を用いて、θ/2法にて算出した。接触角が120°以上であれば、撥水性が優れていると判断できる。測定限界を超えるものは140°以上とした。
(3)滑落角の測定
実施例及び比較例で得られた塗工物を、マイクロ・アジャスタブル・アングルプレート(株式会社ニューストロング製)に、塗膜が形成された面を鉛直方向上側に面するようにして水平に取り付けた後、評価用液体(擬似雪、水性塗料、パルプ水分散スラリー)を、ピペットを用いて滴下し、塗工物を水平状態から漸次傾けていき、評価用液体の液滴が滑りはじめる角度を測定した。測定は、5回行い、その平均値を滑落角とした。評価用液体として、以下のものを用いた。
(a)擬似雪
中空ガラスビーズ(比重:1)と水との混合物(重量比:ビーズ/水=40/60)(中島章、「擬似雪の出典:固体表面の濡れ制御」、P171、2007年10月刊、内田老鶴圃、参照。)
(b)水性塗料
日本ペイント株式会社製、nax E3 WB(ナックスイーキューブ ダブリュービー)、アクリル樹脂ベースの塗料
(c)パルプ水分散体
スギノマシン株式会社製、BiNFis FMa10010、紙パルプ由来のナノファイバー水系スラリー(固形分濃度 1重量%)
(4)耐スクラッチ性
実施例及び比較例で得られた塗膜の上面に、紙ワイパー(キムワイプ S−200、日本製紙クレシア株式会社製)を設置し、さらに紙ワイパー上に100gの錘を載せ、荷重をかけながら100mmの距離を速度50mm/secで3回動かしてスクラッチ痕を形成させた。このスクラッチ試験前後の水滴接触角を測定し、耐久性を比較、評価した。
(5)塗膜表面観察
実施例2及び比較例4の塗膜が形成された基材をサンプルとして用い、塗膜表面及びコンターマシンによる切断面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、S−3400N)にて観察した。
前述の(1)〜(4)の評価結果を表1に、(5)の撮像を図1〜3に示す。図1が実施例2、図2が比較例4の塗膜表面及びコンターマシンによる切断面の撮像である。図3(a)が実施例2、図3(b)が比較例4の塗膜表面の撮像である。また、表1に示した、実施例1〜5、比較例1〜6で用いた成分は下記のとおりである。
(1)粉体1
・マトリックス:AGC株式会社製、ルミフロン(登録商標)フレーク LF710、フルオロエチレン/ビニルエーテル交互重合体、ガラス転移温度:約51℃、OH価:46mgKOH/g、平均粒子径:50μm。
・架橋成分:εカプロラクタムによりブロック化したイソシアネート系架橋剤(架橋開始温度:180℃)。実施例1〜5、及び比較例1〜3、比較例5〜6については、粉体1のマトリックス樹脂100重量部対し、当該架橋剤を35重量部添加した。
(2)粉体2
(a)
スリーエムジャパン株式会社製、ダイニオン TF9207Z、PTFEの微粒子、平均粒子径:4μm、未溶融品。
(b)
スリーエムジャパン株式会社製、ダイニオン TF9705、PTFEの微粒子、平均粒子径:8μm、未溶融品。
(c)
株式会社喜多村製、KT−600M、PTFEの微粒子、平均粒子径:14μm、溶融済み品。
(d)
株式会社アドマテックス製、SO−06、球状シリカ、平均粒子径:2μm。
Figure 2021050281
表1より、所定の粉体により得られた粉体塗料を用いることにより、塗膜表面にPTFEの微粒子に由来する微細な凹凸が形成されており、優れた撥水性、付着防止性を有し、かつ、良好な耐久性(耐スクラッチ)を有することが分かる。特に、比較例1〜6では、いずれもスクラッチ後の水接触角がスクラッチ前と比べて小さくなっている。これは所定の微粒子とマトリックス樹脂との連結がなく、所定の微粒子がスクラッチによる剪断力で塗膜表面から離脱して、微細凹凸構造が失われたことにより、塗膜表面の撥水性が低下したものと考えられる。図1、2より、所定の熱可塑性フッ素樹脂の微粒子を含む塗膜(図1)と、その微粒子を含まない塗膜(図2)とで、表面形態が異なり、前者には塗膜表面には凹凸構造が形成されており、後者に比べて粗さが大きいことが分かる。図3(a)に示す実施例2では、未溶融PTFEの微粒子がマトリックス樹脂の架橋物に埋没しているのに対して、図3(b)に示す比較例4では、溶融済みPTFEの微粒子は実施例2のようにはマトリックス樹脂の架橋物に埋没せず、表面が大きく露出していることが分かる。即ち、実施例2では、フィブリル化したPTFEとマトリックス樹脂が絡み合い、その状態で架橋することで、未溶融PTFEの微粒子を被覆するようにマトリックス樹脂の架橋物が形成され、その微粒子がマトリックス樹脂の架橋物に良好に固定されていると考えられる。一方、比較例4では、溶融済みPTFEの微粒子はフィブリル化していないため、マトリックス樹脂と絡み合いが生じず、かつ、マトリックス樹脂の架橋性フッ素樹脂が非粘着性を有することから、その微粒子を被覆することなく架橋物が形成され、その微粒子がマトリックス樹脂の架橋物に十分に固定されていないと考えられる。特に、マトリックス樹脂の架橋型フッ素樹脂は非粘着性を有し、図3(b)に示すような状態では両者の接合力は非常に低いと考えられる。その結果、表面にスクラッチを受けると容易に溶融済みPTFEの微粒子が塗膜の表面から離脱し、撥水性が低下すると考えられる。

Claims (12)

  1. 架橋型フッ素樹脂を主成分として含むマトリックス樹脂の架橋物の表面に、前記マトリックス樹脂の架橋温度よりも融点が高い熱可塑性フッ素樹脂により形成された平均粒子径が0.5〜50μmの微粒子に由来する微細な凹凸が形成され、前記架橋物と前記微粒子とが連結されている塗膜。
  2. 塗膜表面の水の接触角が120°以上である請求項1に記載の塗膜。
  3. 塗膜表面の表面粗さRaが、0.1〜2.5μmである請求項1又は2に記載の塗膜。
  4. 前記熱可塑性フッ素樹脂が未溶融のポリテトラフルオロエチレンである請求項1〜3の何れか一項に記載の塗膜。
  5. 前記架橋型フッ素樹脂が、フルオロオレフィン単位とビニルエーテル単位を含む共重合体である請求項1〜4の何れか一項に記載の塗膜。
  6. 架橋型フッ素樹脂を主成分として含むマトリックス樹脂の粉体1を85〜99重量%、熱可塑性フッ素樹脂の粉体2を1〜15重量%含み、
    前記熱可塑性フッ素樹脂が、前記マトリックス樹脂の架橋温度よりも高い融点を有し、前記マトリックス樹脂と連結可能な部位を有し、
    前記粉体2は、平均粒子径が0.5〜50μmの微粒子である、粉体塗料。
  7. 前記熱可塑性フッ素樹脂が未溶融のポリテトラフルオロエチレンである請求項6に記載の粉体塗料。
  8. 前記架橋型フッ素樹脂が、フルオロオレフィン単位とビニルエーテル単位を含む共重合体である請求項6又は7に記載の粉体塗料。
  9. 前記粉体1に、架橋成分が含まれる請求項6〜8の何れか一項に記載の粉体塗料。
  10. 請求項1〜5の何れか一項に記載の塗膜で表面の少なくとも一部が被覆されている塗工物。
  11. 請求項6〜9の何れか一項に記載の粉体塗料を帯電させ、基材の表面に付着させる工程を含む、塗装方法。
  12. 基材表面に前記粉体塗料を付着させた後、加熱処理を行う工程を含む請求項11に記載の塗装方法。
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