JP2021038327A - 樹脂組成物及びそれを用いた多層構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】ガスバリア性及び外観に優れる多層構造体が得られるとともに、回収再使用がしやすく、回収再使用の際に長期間の連続溶融成形を行うことができる樹脂組成物を提供する。【解決手段】エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)及び片末端酸変性ポリプロピレン(B)を含有する樹脂組成物であって、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)のエチレン単位含有量が15〜60モル%、けん化度が85モル%以上であり、片末端酸変性ポリプロピレン(B)の数平均分子量が1500〜50000であり、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)に対する片末端酸変性ポリプロピレン(B)の質量比[(B)/(A)]が0.5/99.5〜30/70である樹脂組成物とする。【選択図】なし

Description

本発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体を含有する樹脂組成物及びそれを用いた多層構造体、また、該多層構造体の回収方法及び該多層構造体の回収物を含む回収組成物に関する。
従来、ポリオレフィンに代表される熱可塑性樹脂からなる層と、バリア性に優れるエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略称することがある)からなる層とを含む多層構造体は、そのバリア性を活かして食品包装容器や燃料容器等の各種用途に用いられている。このような多層構造体はフィルム、シート、カップ、トレイ、ボトル、タンク等の各種成形品として用いられる。このとき、上記各種成形品を得る際に発生する端部や不良品等を回収し、溶融成形して熱可塑性樹脂層とEVOH層を含む多層構造体の少なくとも1層として再使用する場合がある。このような回収技術は、廃棄物削減や経済性の点で有用であり、広く採用されている。
しかしながら、熱可塑性樹脂層とEVOH層を含む多層構造体の回収物を再使用する際には、溶融成形時の熱劣化によりゲル化を起こしたり、劣化物が押出機内のスクリュー等に付着したりして、長期間の連続溶融成形を行うことが困難な場合があった。さらに、このような劣化物が成形品中に混入すると、得られる成形品においてフィッシュアイが発生するという問題があった。また、熱可塑性樹脂とEVOHとの相溶性が悪いため、成形品の外観に濁りやムラが生じたり、機械物性が低下したりする問題があった。また、回収された樹脂が成形品の最外層に再使用される場合には、溶融成形時にダイに目ヤニと称される相分離異物が付着したり、成形品の表面にストリーク(縞模様)が発生したりする場合もあった。
このようなゲル化や相溶性を改善させる方法として、回収物に対して樹脂組成物等からなる回収助剤を添加する方法が知られている。特許文献1には、EVOHを含む粉砕物に、オレフィン−カルボン酸ビニルエステル共重合体及び/又はそのケン化物、脂肪酸金属塩、及び/又は金属化合物を含有する樹脂組成物を添加する方法が記載されている。また、特許文献2には、EVOHを含む粉砕物に配合する樹脂組成物として、酸グラフト変性ポリオレフィン系樹脂、脂肪酸金属塩及び/又は金属化合物を含有する樹脂組成物が記載されている。
特開2002−234971号公報 特開2002−121342号公報
しかしながら、回収物に回収助剤を添加するためには、工程数を増やし、設備を追加する必要があるためコスト高となる場合があり、その改善が求められていた。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、ガスバリア性及び外観に優れる多層構造体が得られるとともに、回収再使用がしやすく、回収再使用の際に長期間の連続溶融成形を行うことができる樹脂組成物を提供する。
上記課題は、
[1]エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)及び片末端酸変性ポリプロピレン(B)を含有する樹脂組成物であって、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)のエチレン単位含有量が15〜60モル%、けん化度が85モル%以上であり、片末端酸変性ポリプロピレン(B)の数平均分子量が1500〜50000であり、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)に対する片末端酸変性ポリプロピレン(B)の質量比[(B)/(A)]が0.5/99.5〜30/70である樹脂組成物;
[2]全樹脂成分に対するエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)及び片末端酸変性ポリプロピレン(B)の合計含有量が80質量%以上である、[1]の樹脂組成物;
[3]片末端酸変性ポリプロピレン(B)の酸価が4〜80mgKOH/gである、[1]又は[2]の樹脂組成物;
[4]片末端酸変性ポリプロピレン(B)の酸価(X)及び数平均分子量(Mn)が下記式(I)を満たす、[1]〜[3]のいずれかの樹脂組成物;
0.5 ≦ (X・Mn)/112200 ≦ 2 (I)
[5]さらにマグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群から選択される少なくとも1種の多価金属イオン(C)を含有し、多価金属イオン(C)の含有量がエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と片末端酸変性ポリプロピレン(B)の合計100質量部に対して、5〜200ppmである、[1]〜[4]のいずれかの樹脂組成物;
[6]さらにエステル結合又はアミド結合を有するヒンダードフェノール系化合物(D)を含有し、ヒンダードフェノール系化合物(D)の含有量がエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と片末端酸変性ポリプロピレン(B)の合計100質量部に対して、1000〜50000ppmである、[1]〜[5]のいずれかの樹脂組成物;
[7][1]〜[6]のいずれかの樹脂組成物からなるバリア層を有する多層構造体;
[8]さらにポリプロピレンからなる層を最外層及び最内層として有する、[7]の多層構造体;
[9]融点が140℃未満の樹脂を主成分とする層、融点が200℃以上の樹脂を主成分とする層及び厚み1μm以上の金属層をいずれも有さない、[7]又は[8]の多層構造体;
[10][7]〜[9]のいずれかの多層構造体の回収物を含む回収層を有する多層構造体;
[11][7]〜[10]のいずれかの多層構造体を有する包装材料;
[12][7]〜[10]のいずれかの多層構造体の回収物を含む、回収組成物;
[13][7]〜[10]のいずれかの多層構造体を粉砕した後に溶融成形する、多層構造体の回収方法;
を提供することで解決される。
本発明の樹脂組成物をガスバリア層として有する多層構造体は、ガスバリア性及び外観に優れる。また、本発明の多層構造体の回収物を溶融成形する際に、樹脂の劣化(ゲル化)や相溶性不良による諸問題の発生が抑制される。さらに、本発明の樹脂組成物は粘度安定性が高いため、回収再使用の際に長期間の連続溶融成形を行うことができる。したがって、回収助剤を用いることなく、前記回収物を多層構造体の少なくとも1層として再使用できるため、多層構造体の製造工程が簡略化され、製造コストも低減する。
本発明の樹脂組成物は、EVOH(A)及び片末端酸変性ポリプロピレン(B)を含有する樹脂組成物であって、EVOH(A)のエチレン単位含有量が15〜60モル%、けん化度が85モル%以上であり、片末端酸変性ポリプロピレン(B)の数平均分子量が1500〜50000であり、EVOH(A)に対する片末端酸変性ポリプロピレン(B)の質量比[(B)/(A)]が0.5/99.5〜30/70である。
(EVOH(A))
本発明の樹脂組成物に含有されるEVOH(A)は、通常、エチレンとビニルエステルとを重合して得られるエチレン−ビニルエステル共重合体をけん化することで得られる。EVOH(A)のエチレン単位含有量は15〜60モル%である。当該含有量が15モル%以上であると、本発明の樹脂組成物の溶融成形性が向上する。エチレン単位含有量は、20モル%以上が好ましく、25モル以上がより好ましい。一方、エチレン単位含有量が60モル%以下であると、本発明の樹脂組成物のガスバリア性が向上する。エチレン単位含有量は、50モル%以下が好ましく、40モル以下がより好ましい。EVOH(A)のエチレン単位含有量は、1H−NMR測定により求められる。
EVOH(A)のけん化度は85モル%以上である。けん化度とは、EVOH(A)中のビニルアルコール単位及びビニルエステル単位の総数に対するビニルアルコール単位の数の割合を意味する。けん化度が85モル%以上であると、本発明の樹脂組成物のガスバリア性が向上する。けん化度は95モル%以上が好ましく、99モル%以上がより好ましい。EVOH(A)のけん化度は、1H−NMR測定により求められる。
EVOH(A)は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、エチレン、ビニルエステル及びビニルアルコール以外の他の単量体単位を含有していてもよい。他の単量体単位の含有量は5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、実質的に含有されていないことが特に好ましい。他の単量体単位としては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン;(メタ)アクリル酸エステル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸;アルキルビニルエーテル;N−(2−ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド又はその4級化物、N−ビニルイミダゾール又はその4級化物、N−ビニルピロリドン、N,N−ブトキシメチルアクリルアミド、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン等が挙げられる。
EVOH(A)のMFR(メルトフローレート、210℃、2.16kg荷重下)は0.1〜50g/10minが好ましい。EVOH(A)のMFRは0.5g/10min以上がより好ましく、1g/10min以上がさらに好ましい。一方、EVOH(A)のMFRは30g/10min以下がより好ましく、15g/10min以下がさらに好ましい。本発明において、樹脂のMFRは、JIS K 7210:2014に準拠して測定される。
(片末端酸変性ポリプロピレン(B))
本発明の樹脂組成物に含有される片末端酸変性ポリプロピレン(B)は、片末端に選択的に炭素―炭素二重結合を有するポリプロピレンを、ラジカル補足剤の存在下に酸と反応させることで得られる。反応に供される酸としては、不飽和カルボン酸又はその誘導体を用いることができ、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。中でも無水マレイン酸が最も好適である。片末端酸変性ポリプロピレン(B)としては、プロピレン単独重合体に加え、プロピレン系共重合体として、プロピレンと、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとを共重合したものも使用できる。片末端酸変性ポリプロピレン(B)中のプロピレン単位含有量は50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、95モル%以上が特に好ましい。
片末端酸変性ポリプロピレンの数平均分子量(Mn)は1500〜50000である。数平均分子量(Mn)が上記範囲であると、本発明の樹脂組成物からなる層とポリプロピレン層を積層させた多層構造体を回収して再使用する際に、EVOH(A)とポリプロピレンとの相溶性が向上し、また樹脂組成物の粘度安定性が増すことで成形加工性も改善する。片末端酸変性ポリプロピレン(B)の数平均分子量(Mn)は2000以上がより好ましく、4000以上がさらに好ましい。一方、片末端酸変性ポリプロピレン(B)の数平均分子量は30000以下がより好ましく、20000以下がさらに好ましい。
片末端酸変性ポリプロピレン(B)の酸価は4〜80mgKOH/gが好ましい。酸価が4mgKOH/g以上であると、本発明の樹脂組成物からなる層とポリプロピレン層を積層させた多層構造体を回収して再使用する際に、EVOH(A)とポリプロピレンとの相溶性が向上する。酸価は8mgKOH/g以上が好ましく、12mgKOH/g以上がより好ましい。一方、酸価が80mgKOH/g以下であると、本発明の樹脂組成物の粘度安定性が良好となる。さらに、上記の再使用の際にEVOH(A)とポリプロピレンとの相溶性が向上するうえに、樹脂のゲル化が抑制される。酸価は60mgKOH/g以下が好ましく、50mgKOH/g以下がより好ましい。
片末端酸変性ポリプロピレン(B)の酸価(X)及び数平均分子量(Mn)は、下記式(I)を満たすことが好ましい。式(I)は、片末端酸変性ポリプロピレン(B)の高分子鎖当りの酸変性度が一定の範囲にあることを示しており、式(I)を満たすと、本発明の樹脂組成物の粘度安定性が良好となる。さらに、本発明の樹脂組成物からなる層とポリプロピレン層を積層させた多層構造体を回収して再使用する際に、EVOH(A)とポリプロピレンとの相溶性が向上するうえに、樹脂のゲル化が抑制される。
0.5 ≦ (X・Mn)/112200 ≦ 2 (I)
片末端酸変性ポリプロピレン(B)の融点は120℃以上が好ましい。融点が上記範囲であると、得られる樹脂組成物の耐熱性が向上し、また本発明の樹脂組成物からなる層とポリプロピレン層を積層させた多層構造体を回収して再使用する際に、EVOH(A)とポリプロピレンとの相溶性も向上する。融点は130℃以上が好ましい。一方、融点は通常165℃以下である。
本発明の樹脂組成物における、EVOH(A)に対する片末端酸変性ポリプロピレン(B)の質量比[(B)/(A)]は0.5/99.5〜30/70である。比[(B)/(A)]が0.5/99.5以上であると、本発明の樹脂組成物の粘度安定性が良好となる。また、本発明の樹脂組成物からなる層とポリプロピレン層を積層させた多層構造体を回収して再使用する際に、EVOH(A)とポリプロピレンとの相溶性が向上する。さらに、本発明の樹脂組成物を含む多層構造体の回収物を溶融混練して得られる回収組成物の色相が良好となる。比[(B)/(A)]は2/98以上が好ましく、4/96以上がより好ましい。一方、比[(B)/(A)]が30/70以下であると、本発明の樹脂組成物の粘度安定性、ガスバリア性及び透明性が良好となる。また、樹脂のゲル化が抑制される。比[(B)/(A)]は20/80以下がより好ましく、10/90以下がさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物中の全樹脂成分に対するEVOH(A)及び片末端酸変性ポリプロピレン(B)の合計含有量は80質量%以上である。合計含有量は90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、本発明の樹脂組成物中の樹脂成分が実質的にEVOH(A)及び片末端酸変性ポリプロピレン(B)のみであってもよい。
(多価金属イオン(C))
本発明の樹脂組成物は、さらにマグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群から選択される少なくとも1種の多価金属イオン(C)を含有することが好ましい。多価金属イオン(C)を含有することで、樹脂のゲル化や押出機内のスクリューへの付着が抑制される。中でも、本発明の樹脂組成物は、多価金属イオン(C)として、マグネシウムイオン又はカルシウムイオンを含有することが好ましく、マグネシウムイオンを含有することがより好ましい。
本発明の樹脂組成物が、多価金属イオン(C)をカルボン酸塩として含有することが好ましい。このときのカルボン酸としては、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸のいずれであってもよいが、脂肪族カルボン酸が好ましい。脂肪族カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、モンタン酸等が挙げられ、酢酸が好ましい。カルボン酸塩の炭素数は1〜20が好ましく、10以下がより好ましく、5以下がさらに好ましく、3以下が特に好ましい。
多価金属イオン(C)の含有量は、EVOH(A)及び片末端酸変性ポリプロピレン(B)の合計100質量部に対して、5〜200ppmが好ましい。当該含有量が5ppm以上であると、本発明の樹脂組成物の粘度安定性が良好となるとともに、樹脂のゲル化や押出機内のスクリューへの付着が抑制される。前記含有量は20ppm以上がより好ましく、40ppm以上がさらに好ましい。一方、前記含有量が200ppm以下であると、本発明の樹脂組成物の粘度安定性及び色相が良好となる。前記含有量は100ppm以下がより好ましく、80ppm以下がさらに好ましく、60ppm以下が特に好ましい。
(ヒンダードフェノール系化合物(D))
本発明の樹脂組成物は、さらにエステル結合又はアミド結合を有するヒンダードフェノール系化合物(D)を含有することが好ましい。ヒンダードフェノール系化合物(D)を含有することで、樹脂組成物の増粘及びゲル化や押出機内のスクリューへの付着がさらに抑制される。ヒンダードフェノール系化合物(D)は、少なくとも1つのヒンダードフェノール基を有する。ヒンダードフェノール基とは、フェノールのヒドロキシル基が結合した炭素に隣接する炭素の少なくとも1つに嵩高い置換基が結合したものをいう。嵩高い置換基としては、炭素原子1〜10のアルキル基が好ましく、t−ブチル基がより好ましい。
ヒンダードフェノール系化合物(D)は室温付近において固体であることが好ましい。ブリードアウトを抑制する点から、ヒンダードフェノール系化合物(D)の融点又は軟化温度は、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、70℃以上がさらに好ましい。同様の点から、ヒンダードフェノール系化合物(D)の分子量は、200以上が好ましく、400以上がより好ましく、600以上がさらに好ましい。一方、前記分子量は、通常、2000以下である。また、EVOH(A)との混合を容易にする点から、ヒンダードフェノール系化合物(D)の融点又は軟化温度は、200℃以下が好ましく、190℃以下がより好ましく、180℃以下がさらに好ましい。
ヒンダードフェノール系化合物(D)はエステル結合又はアミド結合を有する。ヒンダードフェノール系化合物(D)がエステル結合又はアミド結合を有することで、EVOH(A)との相溶性が向上し、より効果的にゲルの発生を防止できる。この効果は、ヒンダードフェノール系化合物(D)がアミド結合を有する場合に特に顕著となる。エステル結合を有するヒンダードフェノール系化合物(D)としては、ヒンダードフェノール基を有する脂肪族カルボン酸と脂肪族アルコールとのエステルが挙げられ、アミド結合を有するヒンダードフェノール系化合物(D)としては、ヒンダードフェノール基を有する脂肪族カルボン酸と脂肪族アミンとのアミドが挙げられる。
ヒンダードフェノール系化合物(D)の具体的な構造としては、BASF社からからイルガノックス1010として市販されているペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、イルガノックス1076として市販されている3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、イルガノックス1035として市販されている2,2'-チオジエチルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、イルガノックス1135として市販されている3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸オクタデシル、イルガノックス245として市販されているビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)、イルガノックス259として市販されている1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、イルガノックス1098として市販されているN,N'-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]が挙げられる。中でも、イルガノックス1098として市販されているN,N'-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]、及びイルガノックス1010として市販されているペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]が好ましく、前者がより好ましい。
ヒンダードフェノール系化合物(D)の含有量は、EVOH(A)及び片末端酸変性ポリプロピレン(B)の合計100質量部に対して、1000〜50000ppmが好ましい。ヒンダードフェノール系化合物(D)の含有量が上記範囲であると、ヒンダードフェノール系化合物(D)のブリードアウトが抑制され、本発明の樹脂組成物からなる層を含む多層構造体の回収物を溶融成形する場合の着色やゲル化の発生が抑制される。前記含有量は、6000ppm以上がより好ましい。溶融成形時の樹脂組成物のゲル化、及び着色を適度に抑制できる観点からは、前記含有量は20000ppm以下がより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、EVOH(A)及び片末端酸変性ポリプロピレン(B)等の樹脂、多価金属イオン(C)及びヒンダードフェノール系化合物(D)以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、アルカリ金属イオン、多価金属イオン(C)以外のアルカリ土類金属イオン、カルボン酸、リン酸化合物、ホウ素化合物、酸化促進剤、ヒンダードフェノール系化合物(D)以外の酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤(溶融安定剤)、光開始剤、脱臭剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラー、乾燥剤、充填剤、顔料、染料、加工助剤、難燃剤、防曇剤等が挙げられる。本発明の樹脂組成物中の、樹脂、多価金属イオン(C)及びヒンダードフェノール系化合物(D)以外の他の成分の合計含有量は20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
(樹脂組成物の製造方法)
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されないが、EVOH(A)、片末端酸変性ポリプロピレン(B)、並びに必要に応じて多価金属イオン(C)やヒンダードフェノール系化合物(D)及びその他の添加剤を溶融混練することで製造できる。このとき、EVOH(A)と片末端酸変性ポリプロピレン(B)を溶融混練した後に、多価金属イオン(C)やヒンダードフェノール系化合物(D)を加えてさらに溶融混練してもよい。多価金属イオン(C)やヒンダードフェノール系化合物(D)は、粉末等の固体状態のまま、又は溶融物として配合してもよく、溶液に含まれる溶質又は分散液に含まれる分散質として配合してもよい。溶液及び分散液としては、それぞれ水溶液、水分散液が好適である。溶融混練は、例えばニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー等の既知の混合装置又は混練装置を使用して行うことができる。溶融混練時の温度は、使用するEVOH(A)や片末端酸変性ポリプロピレン(B)の融点等に応じて適宜調節でき、通常、150℃以上300℃以下の温度範囲内の温度を採用すればよい。
(多層構造体)
本発明の樹脂組成物からなるバリア層(以下、樹脂組成物層と略記することがある)を有する多層構造体が本発明の好適な実施態様である。本発明の樹脂組成物はガスバリア性に優れるとともに、色相及び透明性にも優れる。したがって、本発明の多層構造体はガスバリア性及び外観に優れる。
本発明の多層構造体はさらにポリプロピレンからなる層を最外層及び最内層として有することが好ましい。ポリプロピレンは、耐熱性、機械物性、及びヒートシール性に優れ、また経済的に入手できることから、ポリプロピレンからなる層を最外層及び最内層に有する多層構造体は、レトルト容器等の包装材料としても好ましく使用できる。前記ポリプロピレンとしては、例えばポリプロピレン;プロピレンと、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとを共重合したプロピレン系共重合体等が挙げられる。プロピレン系共重合体中のプロピレン単位含有量は50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、95モル%以上が特に好ましい。
本発明の多層構造体に用いられるポリプロピレンのMFR(190℃、2.16kg荷重下)は、通常0.1〜50g/10minである。また、当該ポリプロピレンの密度は、通常0.88〜0.93g/cm3である。
本発明の多層構造体はさらに他の層を有し、本発明の樹脂組成物からなる層と他の層の間に接着性樹脂からなる層(以下、接着性樹脂層と略記することがある)が配置されていることが好ましい。接着性樹脂としては、酸価が0.5mgKOH/g以上2mgKOH/g未満、MFR(190℃、2.16kg荷重下)が0.5〜3g/10minである酸変性ポリプロピレンが通常用いられる。酸変性ポリプロピレンは、不飽和カルボン酸又はその無水物をポリプロピレンにグラフトさせて得られるが、そのグラフト位置はポリプロピレンの高分子鎖に対して通常はランダムである。このように、接着性樹脂として使用される酸変性ポリプロピレンと上述した片末端酸変性ポリプロピレン(B)とは、酸変性位置や酸価、溶融粘度等の物性が互いに大きく異なり、互いを置き換えて機能、品質要求を満たすことは一般に困難である。
本発明の多層構造体中の各層の厚みは用途に応じて適宜調整すればよい。本発明の多層構造体の厚みに対する、本発明の樹脂組成物層の厚みの比[樹脂組成物層/多層構造体]は、通常、0.01〜0.15である。ここで、樹脂組成物層が複数含まれている場合はそれらの合計厚みを用いる。本発明の多層構造体における、接着性樹脂層の厚みに対する本発明の樹脂組成物層の厚みの比[樹脂組成物層/接着性樹脂層]は、通常、0.5〜5である。ここで、樹脂組成物層や接着性樹脂層が複数含まれている場合は合計厚みを用いる。
本発明の多層構造体の製造方法としては、例えば共押出成形法、押出ラミネート法、ドライラミネート法、共射出成形法等が例示される。共押出成形法としては、共押出ラミネート法、共押出シート成形法、共押出インフレーション成形法、共押出ブロー成形法等が挙げられる。
得られた多層構造体のシート、フィルム、パリソン等に対して、さらに絞り成形等の熱成形法、ロール延伸法、パンタグラフ式延伸法、インフレーション延伸法、ブロー成形法等の二次加工を施してもよい。
本発明の多層構造体を製造する際に発生する端部や不良品を回収した回収物(スクラップ)を再使用することが好ましい。本発明の多層構造体を粉砕した後に溶融成形する多層構造体の回収方法、及び本発明の多層構造体の回収物を含む回収組成物もまた本発明の好適な実施態様である。
本発明の多層構造体の回収に際して、まず、本発明の多層構造体の回収物を破砕する。粉砕された回収物を、そのまま溶融成形して回収組成物を得てもよいし、必要に応じてその他の成分とともに溶融成形して回収組成物を得てもよい。回収物に添加する成分としてはポリプロピレンが挙げられる。当該ポリプロピレンとしては、本発明の多層構造体に用いられるものとして上述したものが用いられる。本発明の多層構造体の回収物を溶融成形する際に、回収助剤を用いなくても、樹脂のゲル化や相溶性不足に起因する外観や機械物性の低下が抑制される。したがって、本発明の多層構造体の回収物に対して回収助剤を添加する必要はなく、工程の簡略化やコスト低減のためには、回収助剤を添加しないことが好ましい。粉砕された回収物を直接多層構造体等の成形品の製造に供してもよいし、粉砕された回収物を溶融成形して、回収組成物からなるペレットを得た後、当該ペレットを成形品の製造に供してもよい。
なお、本発明の多層構造体は、融点が140℃未満の樹脂を主成分とする層、融点が200℃以上の樹脂を主成分とする層及び厚み1μm以上の金属層をいずれも有さないことが好ましい。融点が140℃未満の樹脂を主成分とする層を有さないため、本発明の多層構造体をレトルト容器に用いた場合に、レトルト処理による変形、白化、層間剥離等の問題を抑制できる。一方、本発明の多層構造体は、融点が200℃以上の樹脂を主成分とする層及び厚み1μm以上の金属層を有さないため、多層構造体の粉砕した回収物を溶融成形する場合に、他の成分との混合が不均一になることを抑制できる。
こうして得られる回収組成物における、ポリプロピレンに対するEVOH(A)の質量比[EVOH(A)/ポリプロピレン]は、2/98〜30/70が好ましい。質量比[EVOH(A)/ポリプロピレン]が2/98未満の場合、回収物の使用比率が低下するおそれがある。一方、質量比[EVOH(A)/ポリプロピレン]が30/70以下であると、回収組成物の溶融成形性と機械物性が向上する。
本発明の回収組成物を、上述した多層構造体を構成する少なくとも1層として再使用することが好ましい。すなわち、回収物を溶融成形して得られた回収層を含有する多層構造体からなる成形品を製造し、その成形品の回収物を、再び同様の多層構造体における回収層の原料として用いることが好ましい。
回収層をさらに有する多層構造体の層構成として、下記のものが例示される。ここで、ポリプロピレン層をP、本発明の樹脂組成物層をE、接着性樹脂層をA、回収層をRとする。
3層 R/A/E
4層 P/R/A/E
5層 R/A/E/A/P,R/A/E/A/R
6層 P/R/A/E/A/P、P/R/A/E/A/R
7層 P/R/A/E/A/R/P
本発明の多層構造体中の回収層の厚みは用途に応じて適宜調整すればよいが、本発明の多層構造体の合計厚みに対する、本発明の回収層の厚みの比[回収層/多層構造体]は、通常、0.1〜0.8である。ここで、回収層が複数含まれている場合は合計厚みを用いる。
本発明の樹脂組成物層をバリア層として有する多層構造体は、ガスバリア性及び外観に優れる。しかも、当該多層構造体の回収物を溶融成形する場合、回収助剤を用いなくても、樹脂の劣化(ゲル化)や相溶性不足に起因する問題の発生が抑制される。そのため、本発明の多層構造体の回収物は再使用しやすい。したがって、本発明の樹脂組成物からなる層を有する多層構造体は、食品包装容器の包装材料等として好適に用いられる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
(1)EVOHのエチレン単位含有量及びけん化度
EVOHのペレットを、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)、添加剤としてトリフルオロ酢酸(TFA)を含む重ジメチルスルホキシド(DMSO−d6)に溶解した。得られた溶液を500MHzの1H−NMR(日本電子株式会社製「GX−500」)を用いて80℃で測定し、エチレン単位、ビニルアルコール単位、ビニルエステル単位のピーク強度比よりエチレン単位含有量及びけん化度を求めた。
(2)片末端酸変性ポリプロピレンの酸価
片末端酸変性ポリプロピレンペレット400mgをキシレン80mlに溶解させ、フェノールフタレインを指示薬として、水酸化カリウム−エタノール溶液で滴定することで酸価を求めた。水酸化カリウム−エタノール溶液の濃度は、酸価に応じて、0.005〜0.5mol/Lの範囲で適宜調整した。
(3)片末端酸変性ポリプロピレンの数平均分子量
片末端酸変性ポリプロピレンの数平均分子量(Mn)は、1,2−ジクロロベンゼンを移動相に用い、示差屈折率検出器を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により、ポリスチレン換算値として求めた。具体的には、以下の方法を採用した。
装置:東ソー社製「8121HTGPC」
GPCカラム:昭和電工株式会社製「HT−806M」2本を直列に連結
移動相:1,2−ジクロロベンゼン
流速:1.0mL/分
試料濃度:0.11mg/ml
試料注入量:300μL
カラム温度:140℃
検出器:示差屈折率検出器
標準物質:ポリスチレン
(4)片末端酸変性ポリプロピレンの融点
片末端酸変性ポリプロピレンペレットについて、示差走査熱量計(TA Instrument社製「Q2000」)を用いて、20℃から220℃まで10℃/分で昇温した後、−10℃/分で20℃まで冷却し、再度20℃から220℃まで10℃/分で昇温して測定を実施した。2回目の昇温過程における融解ピークから融点を求めた。
(5)回収性評価(ダイビルドアップ、スクリュービルドアップ、回収組成物の色相)
日本ポリプロ株式会社製ポリプロピレン「ノバテックPP EA7AD」(密度0.90g/cc、MFR(190℃、2.16kg荷重下)0.7g/10分)4000gと、各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のペレット1000gを混合し、下記に示す押出条件にて溶融混練した後、得られたペレットを再度溶融混練する操作を4回繰り返し、計5回溶融混練した。この間、各溶融混練の過程において、30分間おきにダイ上に蓄積された付着樹脂を採取、秤量し、測定値の合計をダイビルドアップ(目ヤニ)量とした。次に、1kgの高密度ポリエチレンでパージした後、スクリューを取り外してスクリュー上の付着樹脂を採取・秤量することでスクリュービルドアップ(ゲル化した樹脂)量を求めた。また、HunterLab社製分光測色計「LabScan XE Sensor」を用い、計5回の溶融混練後に得られた回収組成物ペレットのYI(イエローインデックス)値を測定した。これらは、例えばポリプロピレン樹脂からなる層と本発明の樹脂組成物からなる層を有する多層構造体の回収性の指標となる。なお、ダイビルドアップ量は樹脂組成物とポリプロピレンとの相溶性の指標となり、ダイビルドアップ量が少ない程、相溶性に優れ、相溶性不足に起因する問題が起こりにくくなる。また、YI値は対象物の黄色度(黄色み)を表す指標であり、YI値が高いほど黄色度が強く、一方、YI値が低いほど黄色度が弱く、着色が少ないことを表す。
押出機:東洋精機製作所製2軸押出機
スクリュー径:25mmφ
スクリュー回転数:100rpm
シリンダー、ダイ温度設定:C1/C2/C3/C4/C5/D=180/200/230/230/230/230℃
吐出速度:6kg/時間
[実施例1]
エチレン含有量27モル%、けん化度99.95モル%、MFR(210℃、2.16kg荷重)4.1g/10minであるEVOH95質量部と、酸価16mgKOH/g、数平均分子量8000、融点140℃である無水マレイン酸片末端変性ポリプロピレン(MPP−1)(BAKER HUGHES社製「X−10082」)5質量部を二軸押出機を用いて220℃で溶融混練した後、ペレタイザーを用いてペレット化することで樹脂組成物ペレットを得た。このとき、EVOH、片末端酸変性ポリプロピレン及び樹脂組成物の評価は、上記(1)〜(5)の方法により行った。結果を表1に示す。
[実施例2〜6、比較例1〜2]
EVOHと無水マレイン酸片末端変性ポリプロピレンの混合比を表1に記載されたとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例7〜11]
EVOHと無水マレイン酸片末端変性ポリプロピレンに加えて、酢酸マグネシウム水溶液を二軸押出機内に供給したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットの作製及び評価を行った。なお、マグネシウムイオンの添加量は表1に記載されたとおりである。結果を表1に示す。
[実施例12]
EVOHと無水マレイン酸片末端変性ポリプロピレンに加えて、酢酸カルシウム水溶液を二軸押出機内に供給したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットの作製及び評価を行った。ただし、カルシウムイオンの添加量は表1に記載されたとおりである。結果を表1に示す。
[実施例13]
EVOHと無水マレイン酸片末端変性ポリプロピレンに加えて、酢酸亜鉛水溶液を二軸押出機内に供給したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットの作製及び評価を行った。ただし、亜鉛イオンの添加量は表1に記載されたとおりである。結果を表1に示す。
[実施例14]
EVOHと無水マレイン酸片末端変性ポリプロピレンに加えて、エステル結合を有するヒンダードフェノール系化合物(BASF社製「イルガノックス1010」、融点115℃、分子量1178を二軸押出機に供給したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットの作製及び評価を行った。ただし、エステル結合を有するヒンダードフェノール系化合物の添加量は表1に記載されたとおりである。結果を表1に示す。
[実施例15〜17]
EVOHと無水マレイン酸片末端変性ポリプロピレンに加えて、アミド結合を有するヒンダードフェノール系化合物(BASF社製「イルガノックス1098」、融点160℃、分子量637)を二軸押出機に供給したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットの作製及び評価を行った。ただし、アミド結合を有するヒンダードフェノール系化合物の添加量は表1に記載されたとおりである。結果を表1に示す。
[実施例18]
EVOHと無水マレイン酸片末端変性ポリプロピレンに加えて、酢酸マグネシウム水溶液及びアミド結合を有するヒンダードフェノール系化合物(BASF社製「イルガノックス1098」)を二軸押出機内に供給したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットの作製及び評価を行った。ただし、マグネシウムイオン及びアミド結合を有するヒンダードフェノール系化合物の添加量は表1に記載されたとおりである。結果を表1に示す。
[実施例19]
酸価56mgKOH/g、数平均分子量2500、融点125℃である無水マレイン酸片末端変性ポリプロピレン(MPP−2)(BAKER HUGHES社製「X−10088」)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットの作製及び評価を行った。
[実施例20]
エチレン含有量38モル%、けん化度99.95モル%、MFR(210℃、2.16kg荷重)4.7g/10minであるEVOHを使用したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットの作製及び評価を行った。
[比較例3]
酸価104mgKOH/g、数平均分子量1000、融点105℃である無水マレイン酸片末端変性ポリプロピレン(MPP−3)(BAKER HUGHES社製「X−10065」)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットの作製及び評価を行った。
[比較例4]
酸価13mgKOH/g、数平均分子量27000、融点154℃である無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン(MPP−4)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットの作製及び評価を行った。
[比較例5]
酸価81mgKOH/g、数平均分子量3000、融点137℃である無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン(MPP−5)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレットの作製及び評価を行った。
[実施例21]
実施例1で得られた樹脂組成物ペレット、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製「ノバテックPP EA7AD」(密度0.90g/cc、MFR(190℃、2.16kg荷重下)0.7g/10分))及びポリプロピレン接着性樹脂(三井化学社製「アドマーQF500」(密度0.90g/cc、MFR(190℃、2.16kg荷重下)1.5g/10min))を用い、3種5層共押フィルムである多層構造体(ポリプロピレン樹脂/ポリプロピレン接着性樹脂/樹脂組成物/ポリプロピレン接着性樹脂/ポリプロピレン樹脂=50μm/10μm/10μm/10μm/50μm)を製造した。押出機及び押出条件、使用したダイは下記の通りとした。
EVOH
押出機:単軸押出機(東洋精機株式会社 ラボ機ME型CO−EXT)
スクリュー:口径20mmφ、L/D20、フルフライトスクリュー
押出温度:供給部/圧縮部/計量部/ダイ=175/210/220/230℃
ポリプロピレン接着性樹脂
押出機:単軸押出機(株式会社テクノベル SZW20GT−20MG−STD)
スクリュー:口径20mmφ、L/D20、フルフライトスクリュー
押出温度:供給部/圧縮部/計量部/ダイ=150/200/220/230℃
ポリプロピレン樹脂
押出機:単軸押出機(株式会社プラスチック工学研究所 GT−32−A)
スクリュー:口径32mmφ、L/D28、フルフライトスクリュー
押出温度:供給部/圧縮部/計量部/ダイ=170/220/230/230℃
ダイ:300mm幅3種3層用コートハンガーダイ(プラスチック工学研究所社製)
次に、該多層構造体を任意の大きさに2枚切り出して互いに重ね合わせ、3辺をヒートシールすることによってパウチ状の包装材料を製造した。得られた多層構造体及び包装材料の20℃、65%RH条件下での酸素透過度は0.4cc/(m2・day・atm)であり、ガスバリア性に優れ、また目視でフィッシュアイや着色は確認されず、外観にも優れていた。該多層構造体及び包装材料は使用後に回収及び粉砕し、溶融成形することで、新たな多層構造体の一部(回収層)として再使用することができる。

Claims (13)

  1. エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)及び片末端酸変性ポリプロピレン(B)を含有する樹脂組成物であって、
    エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)のエチレン単位含有量が15〜60モル%、けん化度が85モル%以上であり、
    片末端酸変性ポリプロピレン(B)の数平均分子量が1500〜50000であり、
    エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)に対する片末端酸変性ポリプロピレン(B)の質量比[(B)/(A)]が0.5/99.5〜30/70である樹脂組成物。
  2. 全樹脂成分に対するエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)及び片末端酸変性ポリプロピレン(B)の合計含有量が80質量%以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 片末端酸変性ポリプロピレン(B)の酸価が4〜80mgKOH/gである、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 片末端酸変性ポリプロピレン(B)の酸価(X)及び数平均分子量(Mn)が下記式(I)を満たす、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
    0.5 ≦ (X・Mn)/112200 ≦ 2 (I)
  5. さらにマグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群から選択される少なくとも1種の多価金属イオン(C)を含有し、
    多価金属イオン(C)の含有量がエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と片末端酸変性ポリプロピレン(B)の合計100質量部に対して、5〜200ppmである、請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
  6. さらにエステル結合又はアミド結合を有するヒンダードフェノール系化合物(D)を含有し、
    ヒンダードフェノール系化合物(D)の含有量がエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と片末端酸変性ポリプロピレン(B)の合計100質量部に対して、1000〜50000ppmである、請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物からなるバリア層を有する多層構造体。
  8. さらにポリプロピレンからなる層を最外層及び最内層として有する、請求項7に記載の多層構造体。
  9. 融点が140℃未満の樹脂を主成分とする層、融点が200℃以上の樹脂を主成分とする層及び厚み1μm以上の金属層をいずれも有さない、請求項7又は8に記載の多層構造体。
  10. 請求項7〜9のいずれかに記載の多層構造体の回収物を含む回収層を有する多層構造体。
  11. 請求項7〜10のいずれかに記載の多層構造体を有する包装材料。
  12. 請求項7〜10のいずれかに記載の多層構造体の回収物を含む、回収組成物。
  13. 請求項7〜10のいずれかに記載の多層構造体を粉砕した後に溶融成形する、多層構造体の回収方法。
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