JP2021031309A - マリモカーボンおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】新たな構造的バリエーションを有するマリモカーボンを提供する。また、マリモカーボンの繊維状ナノ炭素構造を調節できる新たな製造手順を提供する。【解決手段】表面が酸化された酸化ダイヤモンド微粒子と、酸化ダイヤモンド微粒子の表面から放射的に伸長した複数のカーボンナノフィラメントと、酸化ダイヤモンド微粒子より小さい直径を有する複数の金属触媒粒子とを含むマリモカーボンであって、金属触媒粒子中の金属は、ニッケルと、15モル%以上の銅または亜鉛とを含み、個々の金属触媒粒子は、個々の前記カーボンナノフィラメントの一端に付着しているマリモカーボン、およびその製造方法が提供される。化学修飾されたマリモカーボンおよびその製造方法も提供される。【選択図】図1

Description

本開示は炭素材料に関する。より具体的には、本開示は、ダイヤモンドのコアからナノメートル規模の直径を有する多数の炭素繊維が伸長した構造を有するマリモカーボンに関する。
マリモカーボンは、北海道の阿寒湖に生息する有名な植物マリモに似た、略球状の外観を有するナノカーボン材料である。表面が酸化されたダイヤモンド微粒子を核として、そこから根を張るように繊維状ナノ炭素が成長していることにより、全体として、上記核よりはるかに直径が大きい略球状のマリモ様形状が達成されている。
マリモカーボンは、従来、担体としての酸化ダイヤモンド微粒子に担持された遷移金属(Ni、Co、またはPd)触媒と炭化水素ガスとの接触反応により気相合成されてきた(特許文献1、2)。酸素吸着状態にあるダイヤモンド表面では、酸素の電気陰性により電子的な偏りが生じ、特異な固体表面電子状態となって、触媒の担持および作用に影響を与えていると考えられている。
繊維状ナノ炭素の成長過程は、次の3段階からなると考えられている(非特許文献1)。(1)触媒金属微粒子の表面に、炭素を含む原料ガスが接触し、分解、吸着する。(2)吸着したガス分子が触媒金属微粒子に固溶し、微粒子内を拡散、移動する。(3)触媒金属微粒子の、ガス分子吸着面の反対側から固体炭素が析出し、繊維状ナノ炭素を形成する。一方、原料の炭化水素ガスを構成する元素のうち水素は、水素分子として放出されると考えられる。
マリモカーボンの繊維状ナノ炭素(カーボンナノフィラメント;CNFと略される)は、典型的には、カップ状(略円錐状)またはコイン状の多数のグラフェン片が互いに積み重なって形成されて成長する。特許文献2は、炭素析出反応の温度をより高くまたはより低く選択してその温度に一定に保持することにより、カップ状のグラフェン片の円錐の半頂角をより狭める、あるいはより広める(よりコイン状に近づける)ことを記載している。グラフェン片の半頂角は、ナノフィラメントの単位長さ当たりのグラフェンエッジ数に影響し、従って担体としてのマリモカーボンが触媒を担持する能力にも影響する。
特許第5544503号 特許第5854314号
R.T.K. Baker et al., Nucleation and growth of carbon deposits from the nickel catalyzed decomposition of acetylene, J. Catal., 26, p. 51 (1972)
マリモカーボンのユニークな物理的および化学的特性ならびに潜在的アプリケーションの多様性を考慮すると、その繊維状ナノ炭素構造におけるさらなるバリエーションを提供すること、および/またはその繊維状ナノ炭素構造を調節できる製造手順のさらなるバリエーションを提供することが有用になり得る。
本開示は、新たな構造的バリエーションを有するマリモカーボンを提供し、また、マリモカーボンの繊維状ナノ炭素構造を調節できる新たな製造手順を提供する。
本開示は以下の実施形態を含む。
[1]
表面が酸化された酸化ダイヤモンド微粒子と、前記酸化ダイヤモンド微粒子の表面に担持された金属触媒粒子とを含むダイヤモンド触媒微粒子を、炭化水素ガスを含む気相中で、カーボンナノフィラメントが合成される触媒反応温度に加熱して、前記ダイヤモンド触媒微粒子の表面にカーボンナノフィラメントを成長させることを含む、マリモカーボンの製造方法であって、
前記金属触媒粒子中の金属は、ニッケルと、15モル%以上の第二の金属とを含み、前記第二の金属は銅であり、
前記銅をニッケルに置き換える以外は同条件とする製造方法と比較して、金属触媒粒子1個あたり3本以上のカーボンナノフィラメントに付着している金属触媒粒子の割合が増加する、
マリモカーボンの製造方法。
[2]
前記触媒反応温度が、605℃以上725℃以下である、[1]に記載の製造方法。
[3]
表面が酸化された酸化ダイヤモンド微粒子と、前記酸化ダイヤモンド微粒子の表面に担持された金属触媒粒子とを含むダイヤモンド触媒微粒子を、炭化水素ガスを含む気相中で、カーボンナノフィラメントが合成される触媒反応温度に加熱して、前記ダイヤモンド触媒微粒子の表面にカーボンナノフィラメントを成長させることを含む、マリモカーボンの製造方法であって、
前記金属触媒粒子中の金属は、ニッケルと、15モル%以上の第二の金属とを含み、前記第二の金属は亜鉛であり、
前記亜鉛をニッケルに置き換える以外は同条件とする製造方法と比較して、カーボンナノフィラメントの平均繊維径が細くなり、且つカーボンナノフィラメントの繊維径分布の標準偏差が小さくなる、
マリモカーボンの製造方法。
[4]
前記触媒反応温度が、605℃以上725℃以下である、[3]に記載の製造方法。
[5]
マリモカーボンのカーボンナノフィラメントの表面を化学修飾する方法であって、
前記マリモカーボンを、硝酸、過酸化水素、または次亜塩素酸もしくはその塩の水溶液に浸漬すること、および
前記浸漬により得られた水性混合物を、室温より高く沸騰温度以下の温度で処理することにより前記マリモカーボンのカーボンナノフィラメントの表面に酸素含有官能基を導入すること
を含む方法。
[6]
[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法を実行してマリモカーボンを製造すること、
製造された前記マリモカーボンを、硝酸、過酸化水素、または次亜塩素酸もしくはその塩の水溶液に浸漬すること、および
前記浸漬により得られた水性混合物を、室温より高く沸騰温度以下の温度で処理することによりマリモカーボンのカーボンナノフィラメントの表面に酸素含有官能基を導入すること
を含む、化学修飾されたマリモカーボンの製造方法。
[7]
表面が酸化された酸化ダイヤモンド微粒子と、
前記酸化ダイヤモンド微粒子の表面から放射的に伸長した複数のカーボンナノフィラメントと、
前記酸化ダイヤモンド微粒子より小さい直径を有する複数の金属触媒粒子と
を含むマリモカーボンであって、
前記金属触媒粒子中の金属は、ニッケルと、15モル%以上の第二の金属とを含み、前記第二の金属は銅であり、
個々の前記金属触媒粒子は、個々の前記カーボンナノフィラメントの一端に付着しており、
前記金属触媒粒子の20%以上が、金属触媒粒子1個あたり3本以上のカーボンナノフィラメントに付着している、
マリモカーボン。
[8]
表面が酸化された酸化ダイヤモンド微粒子と、
前記酸化ダイヤモンド微粒子の表面から放射的に伸長した複数のカーボンナノフィラメントと、
前記酸化ダイヤモンド微粒子より小さい直径を有する複数の金属触媒粒子と
を含むマリモカーボンであって、
前記金属触媒粒子中の金属は、ニッケルと、15モル%以上の第二の金属とを含み、前記第二の金属は亜鉛であり、
個々の前記金属触媒粒子は、個々の前記カーボンナノフィラメントの一端に付着しており、
前記カーボンナノフィラメントの80%以上が、15〜35nmの範囲内の繊維径を有する、
マリモカーボン。
[9]
X線光電子分光によって測定されるカーボンナノフィラメント表面の酸素原子濃度が2.5原子%以上である、化学修飾された[7]または[8]に記載のマリモカーボン。
[10]
化学修飾される前記マリモカーボンは、[7]または[8]に記載のマリモカーボンである、[5]に記載の方法。
本開示の実施形態によるマリモカーボンは、導電性、高い電気二重層容量、高い嵩密度、全般的な取り扱いやすさ、低いコスト、高い通水性(水に接触させると内部の空気が直ちに水に置き換わる)、白金等の触媒を効率よく担持する能力等、産業的に有用な様々な特性を提供することができ、従来のマリモカーボンからさらに向上した比表面積および細孔容積を有することができる。本実施形態のマリモカーボンは、例えば、固体高分子型燃料電池(PEFC)の電極触媒担体として有用である。
図1のAは、異なる合成温度において、金属触媒のニッケルに異なる比率の亜鉛を添加した場合における、マリモカーボンの炭素析出量を示す。図1のBは、亜鉛の添加比率と炭素析出量との関係を、異なる合成反応温度について示している。 図2は、マリモカーボンのカーボンナノフィラメント(CNF)のSEM写真(左)と繊維径ヒストグラム(右)を示す。上はNi80%−Zn20%の金属触媒を有する一実施形態のマリモカーボンであり、下はNi100%の金属触媒を有する従来型のマリモカーボンである(いずれも合成温度590℃)。 図3のAは、金属触媒のNiに、異なる比率のCuを添加した場合における、マリモカーボンのCNFのSEM写真(上)、および、個々の金属触媒粒子から成長しているCNFの数の変化を示すヒストグラム(下)を示す。図3のBは枝分かれ構造のCNFの拡大SEM写真を、図3のCは金属触媒粒子から複数のCNFが成長している様子のTEM写真を示す(いずれもCu20%のマリモカーボンのもの)。Aにおいては、金属触媒粒子に付着しているCNFの典型的な例を破線で示し、その例における金属触媒粒子1個に付着したCNFの数も示している。Bにおいては、枝分かれ構造により生じたCNF間の空隙を破線で示している。 図4は、炭化水素ガス(CH)の存在下でマリモカーボン合成を行った場合には、Cuを含有する金属触媒粒子の粒子径が増大したが、アルゴンガスや水素ガスの存在下ではその増大が起こらないことを示す触媒粒子径ヒストグラムである。 図5は、触媒粒子径の増加およびCNFの枝分かれ成長の反応機構のモデルを示す。
一側面において、本開示は、マリモカーボン自体のカーボンナノフィラメントの成長に関わる金属触媒として、ニッケル(Ni)に第二の金属が添加されたものを有するマリモカーボンを提供する。この第二の金属は銅(Cu)または亜鉛(Zn)であるが、以下の説明は、特に明示されない限りその両方の態様に適用される。なお、酸化ダイヤモンドへの金属触媒の担持、およびマリモカーボンの共通の基本的特徴は、特許文献1、2および特開2004−277241号等に記載されている。
マリモカーボンのコアであり成長核であるのは、表面が酸化された酸化ダイヤモンド微粒子である。この微粒子の粒径は特に限定されないが、過度に大きくなると、後述する固定床流通式反応装置において微粒子が浮遊しにくくなり得るため、800nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましい。酸化ダイヤモンド微粒子の粒径の下限も特に限定されないが、典型的なマリモ構造を成長させるためには好ましくは200nm以上、より好ましくは300nm以上である。本開示において、粒子の粒径(直径)は、電子顕微鏡画像上で観察される最大径として定義することができる。
上記の粒径範囲に入るダイヤモンド微粒子は市販されている。その表面を酸化して酸化ダイヤモンド微粒子にする方法は公知であり、例えば酸素雰囲気下または空気中で350〜450℃において処理すれば表面の酸化が達成される。
本実施形態のマリモカーボンは、上記酸化ダイヤモンド微粒子の表面から放射的に伸長した複数のカーボンナノフィラメントを含む。「放射的」とは、酸化ダイヤモンド微粒子をコアとして、そのコアの実質的に全表面に渡ってカーボンナノフィラメントの伸長が見られることを意味する。カーボンナノフィラメントの放射的な伸長によって全体的に略球状のマリモ様構造が形成される。例えば図2、3から明らかなように、個々のカーボンナノフィラメントは必ずしも真っすぐではなく、酸化ダイヤモンド微粒子の表面から必ずしも垂直に成長し続けるわけでもないことが理解されるべきである。
カーボンナノフィラメントの数は、酸化ダイヤモンド微粒子担体上に担持される金属触媒粒子の数と関連することが当業者に理解される。多数のカーボンナノフィラメントが伸長していることにより、マリモカーボンの直径は上記コアの直径より著しく大きくなり得る。炭素析出の反応時間をどれだけ長くするかにもよるが、マリモカーボンの直径はコアの直径の例えば2〜200倍、あるいは10〜100倍であり得る。また、カーボンナノフィラメントの合計重量は、コアの重量の1〜10倍程度であり得る。コアである酸化ダイヤモンドはsp炭素である一方、カーボンナノフィラメントは主にsp炭素であることが当業者に理解される。
マリモカーボンにおける金属触媒粒子は、担体としての酸化ダイヤモンド微粒子に担持されるものであり、当然ながら酸化ダイヤモンド微粒子より小さい直径を有することが理解される。後述するように、またマリモカーボンの技術分野で公知であるように、金属触媒粒子は、酸化ダイヤモンドを金属塩溶液に含浸した後に焼成することにより形成され得るものであり、酸化ダイヤモンド上に多数配置される。その粒径は典型的には1〜50nm程度になっていると考えられるが、シンタリング等に起因してさらに粒径が大きくなることもあり得る。当該金属の合計量は、例えば酸化ダイヤモンド微粒子の重量の0.5〜10%であり得、3〜7%が好ましい。
個々の金属触媒粒子は、個々のカーボンナノフィラメントの一端に付着している。これは、金属触媒粒子から炭素析出が起こってカーボンナノフィラメントが成長することの結果である。通常は、カーボンナノフィラメントの先端、すなわち酸化ダイヤモンド微粒子に接続する根元とは反対の方の一端に金属触媒粒子が付着していると考えられるが、根元において金属触媒粒子に付着していると見られるカーボンナノフィラメントも含まれ得る。
一実施形態において、金属触媒粒子中の金属は、ニッケルに加えて銅を含む。金属触媒粒子中の金属全体に対する銅の比率は、好ましくは15モル%以上である。金属触媒粒子中の金属全体に対する銅の比率は、例えば15〜90モル%であり得、18〜50モル%が好ましく、18〜30モル%がより好ましく、20〜25モル%が特に好ましい。金属触媒粒子中の銅以外の金属の好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%、さらに好ましくは100モル%がニッケルであり得る。すなわち、特に好ましい実施形態では、金属触媒粒子中の金属はニッケルおよび銅のみからなる。
金属触媒粒子が銅を含む本実施形態において、好ましくは、金属触媒粒子の20%以上が、金属触媒粒子1個あたり3本以上のカーボンナノフィラメントに付着している。このような「枝分かれ」構造は、高比率の銅の含有により、個々の金属触媒粒子から複数のカーボンナノフィラメントが成長できるようになったこと、および/または、複数の金属触媒粒子がシンタリングにより融合したことの結果であると考えられる。後述するように、枝分かれの増加に相関して金属触媒粒子の粒径の増加も観察されるため、銅の含有によりシンタリングが促進されそのことが枝分かれ構造の形成に関与していることが推測される。
金属触媒粒子1個あたりに付着しているカーボンナノフィラメントの数は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)によりマリモカーボンを画像化して画像上で測定することができる。3本以上のカーボンナノフィラメントに付着している金属触媒粒子の割合が30%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、70%以上であることが特に好ましい。枝分かれ構造が含まれることにより、カーボンナノフィラメント間の空隙が増加するため、例えばPEFCの電極触媒担体としての性能が向上し得る。
別の実施形態において、金属触媒粒子中の金属は、ニッケルに加えて亜鉛を含む。金属触媒粒子中の金属全体に対する亜鉛の比率は、好ましくは15モル%以上である。金属触媒粒子中の金属全体に対する亜鉛の比率は、例えば15〜50モル%であり得、18〜40モル%が好ましく、18〜30モル%がより好ましく、20〜25モル%が特に好ましい。金属触媒粒子中の亜鉛以外の金属の好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%、さらに好ましくは100モル%がニッケルであり得る。すなわち、特に好ましい実施形態では、金属触媒粒子中の金属はニッケルおよび亜鉛のみからなる。
金属触媒粒子が亜鉛を含む本実施形態において、好ましくはカーボンナノフィラメントの80%以上が、より好ましくは90%以上が、15〜35nmの範囲内の繊維径を有する。このように、高比率の亜鉛の含有により、カーボンナノフィラメントの繊維径が細く均一なマリモカーボンを得ることができる。
この実施形態における金属触媒中のNiおよびZnは、それぞれ立方晶の酸化物NiO、ZnOを作って、複合化してNi−Zn−O(cubic)の状態で存在していると見られる。この構造により、上述した銅含有金属触媒の場合とは対照的に、加熱の際の触媒同士のシンタリングすなわち粒成長が抑制されるため、担持された当初の粒径が比較的維持され、それに対応した、均一に細いカーボンナノフィラメントが成長すると考えられる。
別の側面において、本開示は、金属触媒としてニッケル(Ni)に第二の金属が添加されたものを使用して、上記のようなマリモカーボンを製造する方法を提供する。この第二の金属は銅(Cu)または亜鉛(Zn)であるが、以下の説明は、特に明示されない限りその両方の態様に適用される。なお、酸化ダイヤモンドへの金属触媒の担持を含め、マリモカーボンの製造に共通の基本的特徴は、特許文献1、2および特開2004−277241号等に記載されている。
本実施形態の製造方法では、表面が酸化された酸化ダイヤモンド微粒子と、酸化ダイヤモンド微粒子の表面に担持された金属触媒粒子とを含むダイヤモンド触媒微粒子が使用される。表面が酸化された酸化ダイヤモンド微粒子については上述したとおりである。本実施形態の製造方法は、酸化ダイヤモンド微粒子の表面に金属触媒粒子を担持させてダイヤモンド触媒微粒子を調製する工程をさらに含み得る。本実施形態の製造方法は、ダイヤモンド微粒子の表面を酸化して酸化ダイヤモンド微粒子を調製する工程もさらに含み得る。酸化ダイヤモンド微粒子の表面に金属触媒粒子を担持させることは、例えば以下に記述するような含浸法により達成される。
まず、金属触媒粒子の金属に対応する金属塩の水溶液に、酸化ダイヤモンド微粒子を含浸する。例えばNi−Cu金属触媒にする場合にはニッケルと銅のそれぞれの塩(例えば硝酸塩)を溶解した混合水溶液を使用する。Ni−Zn金属触媒にする場合も同様である。混合水溶液中のこれらの塩のモル比を調節することにより、金属触媒粒子中の金属のモル比を調節できることが理解される。水溶液中の金属塩の濃度は、飽和濃度を上限として、当業者が適宜調節することができる。担持される金属の合計量が、例えば酸化ダイヤモンド微粒子の重量の0.5〜10%、好ましくは3〜7%となるように金属塩の濃度および含浸時間を調節し得る。
次に、水分を除去して、金属塩を酸化ダイヤモンド表面に付着させる。水分の除去は、凍結乾燥により行うことが好ましい。続いて、塩の成分が分解される温度、例えば400〜550℃で試料を加熱・焼成することにより、金属のみを酸化ダイヤモンドに担持させることができる。
このようにして得たダイヤモンド触媒微粒子を、炭化水素ガスを含む気相中で、カーボンナノフィラメントが合成される触媒反応温度に加熱する。これは触媒と炭化水素ガスとの接触反応を利用した化学的気相合成法である。使用可能な炭化水素ガスの例としては、メタン、エタン、プロパン、エチレン、およびアセチレンが挙げられるが、これらに限定されない。メタンおよびエタンがより好ましく、メタンが特に好ましい。
本実施形態の化学的気相合成法には、固定床流通式反応装置が好適に使用される。典型的な固定床流通式反応装置は、石英管のリアクタ、リアクタ内に反応ガスを導入するように構成されたマスフローコントローラー、リアクタ内の雰囲気温度を感知するように構成された熱電対、および、リアクタ外部に設置されリアクタ内の反応雰囲気温度を制御するように構成された温度可変ヒータを含む。熱電対で反応雰囲気温度を測定し、温度可変ヒータの制御系にフィードバックすることで、反応温度を一定に保つことができる。ダイヤモンド触媒微粒子を、例えば石英製のボートに入れてリアクタ内に設置し、リアクタ内に反応ガスを導入する。ガス流により、ダイヤモンド触媒微粒子の浮遊が起こり、酸化ダイヤモンド微粒子のあらゆる表面から(より正確には、酸化ダイヤモンド微粒子のあらゆる表面にある金属触媒から)放射的にカーボンナノフィラメントが伸長できるようになる。ガス流量は10〜50mL/分(sccm)が好適である。特許文献1に記載された流動気相合成装置を使用すると、ダイヤモンド触媒微粒子の浮遊および撹拌がさらに促進され好ましい。
目的物以外の生成を抑制するために、ターゲット反応温度に達するまでの昇温過程ではリアクタ内を不活性ガス(アルゴン等)で満たし、ターゲット反応温度に達した後に反応ガスに切り替えて合成を開始し、反応温度を一定に保って合成を行うことが好ましい。同様に、反応後に室温まで冷却する降温過程はリアクタ内を不活性ガスで満たすことが好ましい。
触媒反応温度は、例えば450℃〜590℃、450℃〜600℃、または450℃〜605℃未満の範囲内であり得る。あるいは、触媒反応温度を、600℃超〜725℃、または605℃〜700℃の範囲内としてもよい。金属触媒が上記第二の金属を含むことによって、このような高い反応温度が利用可能になることが見出された。触媒反応温度に保持する時間は、個々のアプリケーションに応じて望まれる炭素析出量(カーボンナノフィラメント量)にもよるが、通常は30分以上であることが好ましく、60分以上がより好ましく、3時間以上がさらに好ましい。触媒反応温度に保持する時間は通常は10時間以下であり、5時間以下が好ましい。この時間のあいだ、ダイヤモンド触媒微粒子の表面にカーボンナノフィラメントの成長が起こる。
一実施形態の製造方法において、金属触媒粒子中の金属は、ニッケルに加えて銅を含む。金属触媒粒子中の金属全体に対する銅の比率は、好ましくは15モル%以上である。金属触媒粒子中の金属全体に対する銅の比率は、例えば15〜90モル%であり得、18〜50モル%が好ましく、18〜30モル%がより好ましく、20〜25モル%が特に好ましい。金属触媒粒子中の銅以外の金属の好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%、さらに好ましくは100モル%がニッケルであり得る。すなわち、特に好ましい実施形態では、金属触媒粒子中の金属はニッケルおよび銅のみからなる。
金属触媒粒子が銅を含む本実施形態では、銅を同モル数のニッケルに置き換える以外は同条件とする製造方法と比較して、金属触媒粒子1個あたり3本以上のカーボンナノフィラメントに付着している金属触媒粒子の割合が増加する。好ましくは、得られるマリモカーボンにおいて、金属触媒粒子の20%以上が、金属触媒粒子1個あたり3本以上のカーボンナノフィラメントに付着している。3本以上のカーボンナノフィラメントに付着している金属触媒粒子の割合が30%以上となることがより好ましく、50%以上となることがさらに好ましく、70%以上となることが特に好ましい。
別の実施形態の製造方法において、金属触媒粒子中の金属は、ニッケルに加えて亜鉛を含む。金属触媒粒子中の金属全体に対する亜鉛の比率は、好ましくは15モル%以上である。金属触媒粒子中の金属全体に対する亜鉛の比率は、例えば15〜50モル%であり得、18〜40モル%が好ましく、18〜30モル%がより好ましく、20〜25モル%が特に好ましい。金属触媒粒子中の亜鉛以外の金属の好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%、さらに好ましくは100モル%がニッケルであり得る。すなわち、特に好ましい実施形態では、金属触媒粒子中の金属はニッケルおよび亜鉛のみからなる。
金属触媒粒子が亜鉛を含む本実施形態では、亜鉛を同モル数のニッケルに置き換える以外は同条件とする製造方法と比較して、カーボンナノフィラメントの平均繊維径が細くなり、且つカーボンナノフィラメントの繊維径分布の標準偏差が小さくなる。好ましくは、得られるマリモカーボンにおいて、カーボンナノフィラメントの80%以上が、より好ましくは90%以上が、平均繊維径から10nm以内の繊維径を有する。例えば、得られるマリモカーボンにおいて、カーボンナノフィラメントの80%以上が、より好ましくは90%以上が、15〜35nmの範囲内の繊維径を有し得る。
第二の金属が銅である実施形態および亜鉛である実施形態のいずれにおいても、上記製造方法は、得られたマリモカーボンに白金(Pt)触媒を担持させる工程をさらに含み得る。従って、本開示は、上述したマリモカーボンに白金触媒が担持されたものも提供する。この白金触媒は、例えば燃料電池の触媒として使用されるものであって、上述してきたマリモカーボン自体の合成のために含まれる金属触媒と混同されるべきではない。マリモカーボンのような炭素材料に白金触媒を担持させる技術自体は、例えば特許文献2およびJournal of Power Sources, volume 195, 2010, pp. 5862-5867に記載されているように公知であり、本実施形態において適用することができる。
一例であるナノコロイド法においては、まず、上記で得られたマリモカーボンを水に懸濁させる。この水は、例えば0.1〜0.3mM程度のNaOHで塩基性にしてあることが好ましい。次に、懸濁液に白金を加える。白金は、ヘキサクロロ白金酸六水和物(HClPt・6HO)の形態で提供され得、その濃度は例えば1〜5mM程度が好適である。白金の分散安定化剤としてクエン酸(0.5〜1mM程度)も添加することが好ましい。次に還元剤(例えば100〜200mMのNaBH)を加えることにより、マリモカーボン担持Pt触媒のナノコロイド溶液が得られる。これを遠心分離して乾燥させればよい。上記各工程における成分の添加後に超音波処理をすることにより懸濁を促進させることが好ましい。白金の担持量は、マリモカーボンの重量の例えば5〜50%であり得る。
別の側面において、本開示は、化学修飾されたマリモカーボンおよびその調製方法を提供する。
マリモカーボンを化学修飾する可能性はこれまで具体的に検討されてこなかった。上述したように、マリモカーボンのカーボンナノフィラメントの表面には通常、多量のグラフェンエッジが存在するが、発明者らは、このグラフェンエッジに様々な官能基を導入することによって、マリモカーボンに新たな物性および有用性を付与することを企図した。本実施形態はマリモカーボンの化学修飾の具体的手法を初めて確立したものである。
本実施形態は、マリモカーボンのカーボンナノフィラメントの表面に酸素含有官能基を導入する方法であって、マリモカーボンを、硝酸、過酸化水素、または次亜塩素酸もしくはその塩の水溶液に浸漬すること、および上記浸漬により得られた水性混合物を、室温より高く沸騰温度以下の温度で処理することを含む方法を提供する。次亜塩素酸の塩の具体例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、およびカルシウム塩が挙げられ、ナトリウム塩すなわち次亜塩素酸ナトリウムが特に好ましい。
この実施形態におけるマリモカーボンは、上述したNi−Zn金属触媒もしくはNi−Cu金属触媒に基づくマリモカーボン、あるいは、やはり上述したように、Ni−Zn金属触媒もしくはNi−Cu金属触媒に基づく製造方法を実行することにより製造されたマリモカーボンであることが特に好ましい。しかしながら、本実施形態の方法は、それ以外のマリモカーボン全般、例えばNiのみの一元系金属触媒に基づくマリモカーボンにも同様に適用できる。
上記酸素含有官能基は、例えば、OH基、C=O基、またはC−O−C基であり得るがこれらに限定されない。硝酸の水溶液の濃度は、例えば1〜14.5Mであり得、好ましくは5〜14M、より好ましくは10〜13Mであり得る。過酸化水素の水溶液の濃度は、例えば1〜10Mであり得、好ましくは5〜10M、より好ましくは8〜10Mであり得る。次亜塩素酸もしくはその塩の水溶液の濃度は、塩素換算で例えば0.5〜5重量%であり得、好ましくは1〜5重量%、あるいは2〜4重量%であり得る。上述したようにマリモカーボンは通水性が高いため、水溶液への浸漬において有利である。
浸漬により得られた水性混合物を、室温より高く沸騰温度以下である温度で処理することにより、カーボンナノフィラメントの表面に上記官能基が導入される。処理のあいだ混合物を撹拌することが好ましい。上記処理温度は、例えば40〜沸点未満、45〜90℃、あるいは50〜80℃であり得る。この温度における処理時間は、上記水溶液の濃度および温度と同様に、個々のアプリケーションごとに望まれる官能基の量などに応じて変動させ得るが、例えば0.5〜24時間、1〜12時間、1〜6時間、あるいは1〜3時間であり得る。過酸化水素水溶液による酸化処理を行う場合には、処理時間を3時間以内にすることによりOH基の割合が相対的に大きくなり、有利になり得る。
本実施形態の方法は、酸化処理後にマリモカーボンを水で洗浄することを含み得、さらにマリモカーボンを乾燥させることを含み得る。
上記のように液相で酸化処理されたマリモカーボンは、X線光電子分光(XPS)によって測定されるカーボンナノフィラメントの表面の酸素原子濃度が2.5原子%以上であり得る。この酸素原子濃度は例えば3〜10原子%、あるいは4〜7原子%であり得る。従って、本開示の別の側面において、化学修飾された結果としてこれらの酸素原子濃度を有するマリモカーボンが提供される。特定の実施形態では、上述したNi−Zn金属触媒もしくはNi−Cu金属触媒に基づくマリモカーボンが化学修飾されこれらの酸素原子濃度を有し得る。
[実施例1]Ni−Zn触媒を用いたマリモカーボンの合成
粒径500nm以下の市販のダイヤモンド微粒子を材料として使用した。予め熱酸化処理(450℃、0.5時間)して表面を酸化させたダイヤモンド微粒子(以下、O−diaという)を触媒担体として、含浸法によりこれにNiおよびZnを担持させて、Ni−Zn/O−dia触媒の粒子を得た。より具体的には、水に、O−diaと、異なる比率の硝酸ニッケル六水和物(Ni(NO・6HO)および硝酸亜鉛六水和物(Zn(NO・6HO)とを加え、超音波撹拌処理して懸濁溶解液とした後に、これを凍結および減圧乾燥し(フリーズドライ)、焼成してNi−Zn/O−dia触媒を粉末として得た。担体に対して合計5重量%の金属触媒を担持させた。金属触媒中の全金属のうち亜鉛の比率を0〜100モル%のあいだで変動させ、残りはニッケルであった。
特許文献2に記載されたものと同様の固定床流通式反応装置を用いて、上記Ni−Zn/O−dia触媒粒子からカーボンナノフィラメントを成長させて、マリモカーボンの合成を行った。原料ガスとしては、30mL/分のCHを用いた。反応の温度と時間は実験に応じて変動させたが、通常は反応温度を698〜948K(425〜675℃)とし、反応時間は60分間とした。室温から反応温度への昇温、および反応温度から室温への冷却のあいだは原料ガスではなくアルゴンのみを流通させ、これは反応時間には含まれない。
反応による炭素析出量(成長したカーボンナノフィラメントの量)は、触媒金属1モルあたりの重量増加の値として求めた。SEMを用いて繊維状ナノ炭素の繊維径を測定し、平均繊維径および繊維径の分布(ヒストグラム)を調べた。
図1は、金属触媒がニッケルに加えて亜鉛を含むことにより、炭素析出量および炭素析出可能温度が変化することを示している。触媒金属がNi単独(Zn=0モル%)の場合では、863K(590℃)より高い温度では全く炭素析出が見られなかった。しかしながら、Znが添加されることにより、873K(600℃)超の温度でも炭素析出が起こることが見出された(図1A)。Zn単独(Zn=100モル%)ではいずれの温度でも炭素析出が見られなかった。
図1Bに示されているように、Zn比率を増やしていって20モル%近く(例えば15モル%以上)になると、炭素析出量が激減する。しかしながら、そのように一見悪条件と思われる高Zn含量をあえて使用してマリモカーボンを製造したところ、以下のように予測外の発見があった。
すなわち、従来型のマリモカーボン(Ni=100モル%)では、カーボンナノフィラメントの平均繊維径が40〜50nm程度であり30〜65nmに渡る比較的広い繊維径分布が存在するのに対し、同条件で金属触媒の金属組成だけNi80%−Zn20%に変更したマリモカーボンでは、カーボンナノフィラメントの平均繊維径が約25nmと著しく細くなり、且つ、大部分のカーボンナノフィラメントが15〜35nmの繊維径を有して、繊維径分布が著しく狭くなっていた(図2)。
上記の結果は、高い比率のZnの存在によって、従来のNi触媒と比べて触媒の物理化学的状態が変化した可能性を示唆した。そこで、Ni=100モル%の従来型マリモカーボンとNi80%−Zn20%のマリモカーボンとをX線回折(XRD)法(CuKα線)で分析した。その結果、従来型マリモカーボンのXRDプロファイルはNi(cubic)のピークを有することで特徴づけられるのに対し、Ni80%−Zn20%のマリモカーボンのXRDプロファイルでは、Ni(cubic)のピークが消失しており、NiO(cubic)に相当するピークおよびZnO(cubic)に相当するピークが顕著に表れていた(図示していない)。しかも、NiO(cubic)に相当するピーク(42.86°)は、NiO(cubic)の標準試料のピーク(43.35°)と比べて2θが小さい側にシフトしており、ZnO(cubic)に相当するピーク(49.86°)は、ZnO(cubic)の標準試料のピーク(49.38°)と比べて2θが大きい側にシフトしていた。これらのデータから、Niの一部がZnに置換され、金属触媒がNi−Zn−O(cubic)の状態で存在していることが示唆される。
[実施例2]Ni−Cu触媒を用いたマリモカーボンの合成
硝酸亜鉛六水和物の代わりに硝酸銅三水和物(Cu(NO・3HO)を使用してNi−Cu/O−dia触媒としたことを除いては、実施例1と本質的に同様の手順でマリモカーボンを合成した。反応温度は600℃、反応時間は60分間とした。
従来のマリモカーボンの合成では、1個の金属触媒粒子から1本のカーボンナノフィラメントが成長するのが通常であり、従って生成されたマリモカーボンにおいては金属触媒粒子1個当たりに1本のカーボンナノフィラメントが付着しているのが通常である。驚くべきことに、15モル%以上という高い比率のCuを添加すると、金属触媒粒子1個当たりに3本以上のカーボンナノフィラメントが付着している「枝分かれ」構造が顕著に増加することが見出された(図3)。Ni80%−Cu20%としたマリモカーボンでは、金属触媒粒子1個当たり5本のカーボンナノフィラメントが付着している事象が最も頻度が高かった。
さらに、炭素析出の反応時間が10分、30分、60分と長くなるにつれ、枝分かれが観察される頻度が高くなっていくが、金属触媒粒子の直径も大きくなっていくことが観察された。図4は、Ni−Cu/O−dia触媒粒子(Ni80%−Cu20%)を、アルゴン雰囲気下で昇温していって600℃の反応温度に達した直後(0min)、および、600℃で60分間Ar、H、またはCHを流通した後の、金属触媒粒子の直径分布を示す。Ar雰囲気またはH雰囲気では触媒粒子径は実質的に増加しないと見られたのに対し、CH雰囲気では全体として触媒粒子径が顕著に増加したことが確認できる。この結果は、触媒粒子径の増加は、高温そのものによって引き起こされるのではなく、CHから反応後に放出されるHガスによって引き起こされるのでもなく、CHとの接触反応こそがその要因であることを示している。図5は、現時点で考えられる、触媒粒子径の増加およびカーボンナノフィラメントの枝分かれ成長の反応機構のモデルを示す。
実施例1で示した亜鉛の場合と同様、金属触媒がニッケルに加えて銅を含むことにより、600℃超の温度でも炭素析出が起こりマリモカーボンが得られることが見出された(図示していない)。実際、試験された最高温度である725℃においても炭素析出が見られた。また、金属触媒の金属におけるCuの比率を90モル%まで上げてもなお炭素析出が見られたが、Cu100%では炭素析出が起こらなかった。
表1は、本実施例で調製された異なるマリモカーボン試料の比表面積および細孔容積をBET法により測定した結果を示す。高い比率でのCuの含有により引き起こされた枝分かれ構造により、比表面積および細孔容積が顕著に増加したと見られる。
[実施例3]液相酸化によるマリモカーボンの化学修飾
以下の実施例は、金属触媒がNiのみの一元系であるかさらに他の金属を含む二元系であるかに関わらず、マリモカーボン全般に適用できる化学修飾の手法を確立した実験を記述する。
この例では、酸化ダイヤモンド微粒子に5重量%のNi触媒が担持されたダイヤモンド触媒微粒子に対して反応ガス(CH)を550℃にて3時間接触反応させることによって合成したマリモカーボンを使用した。
60℃の温度の、13Mもしくは6.5Mの硝酸(HNO)、または9.8Mの過酸化水素(H)の水溶液中で、マリモカーボンを1〜24時間浸漬・撹拌した。酸化処理により生じ得る残渣の影響を除くため、生成物を純水で洗浄し、80℃で乾燥させた。比較として、マリモカーボンを空気中450℃で加熱することによる酸化処理も試みたが、マリモカーボンが燃えて破壊されてしまうという困難が存在した。マリモカーボン表面形態に対する、化学処理の影響を調べるために、得られた生成物をSEMで観察した。また、X線光電子分光(XPS)装置を用いてカーボンナノフィラメント表面の化学状態を分析した。
XPS分析において、硝酸または過酸化水素による酸化処理を行ったマリモカーボンのO1sスペクトルから、C=O基(530.9eV)、OH基(533.2eV)、およびC−O−C基(534.4eV)の存在が確認された(Thin Solid Films, 590, 40 (2015))。いずれも3時間までの酸化処理ではOH基のピークが最も大きく、次いでC=O基のピークが大きかった。H処理したマリモカーボンでは、3時間を超えて処理時間が長くなるにつれてC=O基のピークが大きくなり、OH基のピークよりも大きくなった。一方、HNO処理したマリモカーボンでは、処理時間が長くなっても各官能基のピークの形や大きさに大きな変化は見られなかった。
液相中で酸化処理を行ったマリモカーボンのXPSスペクトルのO/C強度比は、上記いずれの処理液を使用した場合も、酸化処理前と比較して大きくなり、1時間以下の処理でもマリモカーボン表面を酸化して官能基を付与することが可能であることが示された。XPSスペクトルから酸素原子濃度を算出すると、酸化処理前のマリモカーボンでは1原子%以下であったのに対し、上記のように1時間酸化処理したものは、3〜6原子%であった。これは、試料から測定された元素の合計を100%として求めた値である。硝酸よりも過酸化水素を使用した場合の方が酸素原子濃度がより高くなる傾向が見られた。
すなわち、液相中での酸化処理により、カーボンナノフィラメント表面に酸素含有官能基が結合(化学吸着)したマリモカーボンを得ることができた。また、SEM観察の結果から、酸化処理後のマリモカーボンは酸化処理前と同様に略球状の外観を有し、カーボンナノフィラメントの繊維状構造を維持していることが確認された。

Claims (10)

  1. 表面が酸化された酸化ダイヤモンド微粒子と、前記酸化ダイヤモンド微粒子の表面に担持された金属触媒粒子とを含むダイヤモンド触媒微粒子を、炭化水素ガスを含む気相中で、カーボンナノフィラメントが合成される触媒反応温度に加熱して、前記ダイヤモンド触媒微粒子の表面にカーボンナノフィラメントを成長させることを含む、マリモカーボンの製造方法であって、
    前記金属触媒粒子中の金属は、ニッケルと、15モル%以上の第二の金属とを含み、前記第二の金属は銅であり、
    前記銅をニッケルに置き換える以外は同条件とする製造方法と比較して、金属触媒粒子1個あたり3本以上のカーボンナノフィラメントに付着している金属触媒粒子の割合が増加する、
    マリモカーボンの製造方法。
  2. 前記触媒反応温度が、605℃以上725℃以下である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 表面が酸化された酸化ダイヤモンド微粒子と、前記酸化ダイヤモンド微粒子の表面に担持された金属触媒粒子とを含むダイヤモンド触媒微粒子を、炭化水素ガスを含む気相中で、カーボンナノフィラメントが合成される触媒反応温度に加熱して、前記ダイヤモンド触媒微粒子の表面にカーボンナノフィラメントを成長させることを含む、マリモカーボンの製造方法であって、
    前記金属触媒粒子中の金属は、ニッケルと、15モル%以上の第二の金属とを含み、前記第二の金属は亜鉛であり、
    前記亜鉛をニッケルに置き換える以外は同条件とする製造方法と比較して、カーボンナノフィラメントの平均繊維径が細くなり、且つカーボンナノフィラメントの繊維径分布の標準偏差が小さくなる、
    マリモカーボンの製造方法。
  4. 前記触媒反応温度が、605℃以上725℃以下である、請求項3に記載の製造方法。
  5. マリモカーボンのカーボンナノフィラメントの表面を化学修飾する方法であって、
    前記マリモカーボンを、硝酸、過酸化水素、または次亜塩素酸もしくはその塩の水溶液に浸漬すること、および
    前記浸漬により得られた水性混合物を、室温より高く沸騰温度以下の温度で処理することにより前記マリモカーボンのカーボンナノフィラメントの表面に酸素含有官能基を導入すること
    を含む方法。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法を実行してマリモカーボンを製造すること、
    製造された前記マリモカーボンを、硝酸、過酸化水素、または次亜塩素酸もしくはその塩の水溶液に浸漬すること、および
    前記浸漬により得られた水性混合物を、室温より高く沸騰温度以下の温度で処理することによりマリモカーボンのカーボンナノフィラメントの表面に酸素含有官能基を導入すること
    を含む、化学修飾されたマリモカーボンの製造方法。
  7. 表面が酸化された酸化ダイヤモンド微粒子と、
    前記酸化ダイヤモンド微粒子の表面から放射的に伸長した複数のカーボンナノフィラメントと、
    前記酸化ダイヤモンド微粒子より小さい直径を有する複数の金属触媒粒子と
    を含むマリモカーボンであって、
    前記金属触媒粒子中の金属は、ニッケルと、15モル%以上の第二の金属とを含み、前記第二の金属は銅であり、
    個々の前記金属触媒粒子は、個々の前記カーボンナノフィラメントの一端に付着しており、
    前記金属触媒粒子の20%以上が、金属触媒粒子1個あたり3本以上のカーボンナノフィラメントに付着している、
    マリモカーボン。
  8. 表面が酸化された酸化ダイヤモンド微粒子と、
    前記酸化ダイヤモンド微粒子の表面から放射的に伸長した複数のカーボンナノフィラメントと、
    前記酸化ダイヤモンド微粒子より小さい直径を有する複数の金属触媒粒子と
    を含むマリモカーボンであって、
    前記金属触媒粒子中の金属は、ニッケルと、15モル%以上の第二の金属とを含み、前記第二の金属は亜鉛であり、
    個々の前記金属触媒粒子は、個々の前記カーボンナノフィラメントの一端に付着しており、
    前記カーボンナノフィラメントの80%以上が、15〜35nmの範囲内の繊維径を有する、
    マリモカーボン。
  9. X線光電子分光によって測定されるカーボンナノフィラメント表面の酸素原子濃度が2.5原子%以上である、化学修飾された請求項7または8に記載のマリモカーボン。
  10. 化学修飾される前記マリモカーボンは、請求項7または8に記載のマリモカーボンである、請求項5に記載の方法。
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