JP2021024860A - 骨組織関連疾患の予防または治療剤 - Google Patents

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朋未 牧野
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史明 島
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Kumi Ogi
久美 荻
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Tadashi Okano
匡志 岡野
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Abstract

【課題】間葉系幹細胞を含むスフェロイドを有効成分として含有する、骨再生や、骨組織関連疾患の予防または治療のための剤を提供すること。【解決手段】間葉系幹細胞を含むスフェロイドを有効成分として含有する、剤であり、好ましくは該スフェロイドが、開口部の口径が直径1000μm以下の凹部を複数有し、該凹部の内側面が細胞非接着性表面を有し、かつ、該凹部の底面が細胞接着性表面を有する細胞培養用基材で培養されたスフェロイドである剤。【選択図】なし

Description

本発明は、骨再生、骨組織関連疾患の予防または治療等に使用しうる剤に関する。より詳しくは、本発明は、所定の細胞培養物を有効成分として含有する剤に関する。
骨欠損や骨折などの修復および治療に関する臨床応用が研究されている。例えば、特許文献1では、細胞培養の足場として利用されている自己組織化ペプチドハイドロゲルに、骨形成を誘導する作用を有する蛋白質(BMP:Bone morphogenetic protein)を含ませることにより、骨の形成量や成熟速度を増加させることができることが開示されている。
特開2012−82180号公報
しかしながら、本発明者の検討によれば、投与する蛋白質による副作用が生じたり、その調製方法が煩雑であったりするなど、蛋白製剤には問題があった。また、細胞製剤とする場合には、二次元の細胞培養体では効果が十分ではなかったり、三次元の細胞培養体では足場材料との好適な組み合わせを見つけ、その調製方法を確立させるには困難が多かったりするため、更なる改良の余地があった。
また、骨形成においては、軟骨細胞が肥大軟骨細胞に分化し、血管侵入を受けて石灰化すると、血管から侵入した骨芽細胞や破骨細胞によって骨組織へと置換されることによって、骨が形成されるものと考えられる。即ち、骨形成においては、軟骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞など種々の細胞群が関係するものと考えられる。
一方で、間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cells;MSCs)は、優れた抗炎症作用ならびに自己再生能および多分化能を有する。このような間葉系幹細胞を細胞製剤として用いる際には、培養された細胞同士が三次元的にネットワークを形成したスフェロイド(細胞塊;細胞凝集体)の形態で用いることが、疾患の創傷治癒効果を向上させるという観点からは好ましい。しかしながら、スフェロイドを有効成分として含有する細胞製剤のうち、骨再生を示すもの、さらには、骨組織関連疾患に対して高い治療効果を示すものは未だ知られていない。
本発明は、間葉系幹細胞を含むスフェロイドを有効成分として含有する、骨再生剤や、骨組織関連疾患の予防または治療剤等を提供することを目的とする。
本発明は、下記〔1〕〜〔12〕に関する。
〔1〕 間葉系幹細胞を含むスフェロイドを有効成分として含有する、骨再生剤。
〔2〕 間葉系幹細胞を含むスフェロイドを有効成分として含有する、骨組織関連疾患の予防または治療剤。
〔3〕 さらに、抗炎症のための剤である、前記〔1〕又は〔2〕記載の剤。
〔4〕 さらに、軟骨再生のための剤である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の剤。
〔5〕 開口部の口径が直径1000μm以下の凹部を複数有する細胞培養用基材上で培養されたスフェロイドである、前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の剤。
〔6〕 培養面が細胞接着性表面を有する細胞培養用基材上で培養されたスフェロイドである、前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の剤。
〔7〕 細胞接着性表面が細胞接着性を示す物質で構成される、前記〔6〕記載の剤。
〔8〕 細胞接着性表面がポリイミド樹脂を含む、前記〔6〕又は〔7〕記載の剤。
〔9〕 開口部の口径が直径1000μm以下の凹部を複数有し、該凹部の内側面が細胞非接着性表面を有し、かつ、該凹部の底面が細胞接着性表面を有する細胞培養用基材で培養されたスフェロイドである、前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の剤。
〔10〕 スフェロイドが、抗炎症に関係するタンパク質及び/又はそれをコードする遺伝子を発現している、前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の剤。
〔11〕 抗炎症に関係するタンパク質が、TSG-6である、前記〔10〕記載の剤。
〔12〕 骨組織関連疾患が、変形性関節症、離断性骨軟骨炎、関節軟骨損傷、骨折、難治性骨折、関節リウマチ、乾癬性関節炎、脊椎関節炎、痛風性関節炎、偽痛風性関節炎、骨形成不全症、及び骨粗鬆症からなる群より選ばれる、前記〔2〕〜〔11〕のいずれかに記載の剤。
本発明によれば、骨再生、さらには、骨組織関連疾患に対して高い治療効果を示しうる、スフェロイド含有細胞製剤が提供される。
図1は、試験例1における単一細胞とスフェロイドによる修復組織のトルイジンブルー染色およびGFP染色の結果を示す。 図2は、試験例1における単一細胞とスフェロイドによる修復組織のトルイジンブルー染色およびII型コラーゲンの染色結果を示す。 図3は、試験例1におけるブランク、単一細胞とスフェロイドによる軟骨構造を評価した結果を示す。 図4は、試験例1におけるブランク、単一細胞とスフェロイドによる新生骨増加率をマッソントリクローム染色の染色結果から解析した結果である。(グラフ:新生骨増加率、写真:染色写真)を示す。 図5は、試験例1における単一細胞とスフェロイドによる修復組織のHE染色結果を示す。 図6は、試験例1における単一細胞とスフェロイドによる修復組織のトルイジンブルー染色結果を示す。 図7Aは、試験例2における単一細胞とスフェロイドのTSG−6の発現遺伝子量を対比した結果を示し、図7Bは、試験例2における単一細胞とスフェロイドのTGF−β1の発現遺伝子量を対比した結果を示す。
本発明の一形態は、間葉系幹細胞を含むスフェロイドを有効成分として含有する、剤である。このような剤は、例えば、骨再生(骨組織の修復)剤、さらには、骨組織関連疾患の予防または治療剤等として使用しうる。
本発明におけるスフェロイドは、間葉系幹細胞を含むものであればよく、間葉系幹細胞を培養して得られたものであってもよい。
間葉系幹細胞(MSC)としては、未分化の間葉系細胞である限り特に制限はされず、哺乳動物の骨髄、骨膜、脂肪組織、末梢血、臍帯血等から常法に従い採取したものを用いることができる。また、採取後、未分化のMSCをプラスチック付着性の有無等により選択することもできる。ここで、MSCとしては、調達の容易さおよび高い増殖性という観点から、脂肪組織由来の間葉系幹細胞を用いることが好ましい。また、MSCとしては、本発明の剤の投与対象と同種の哺乳動物由来のMSCを用いることが好ましく、投与対象以外の同種の哺乳動物由来のMSCや、投与対象自身のMSC(自家細胞)を用いることができる。これらの細胞が由来する生物種も特に制限されず、ヒトおよび非ヒト哺乳動物由来の各種細胞を用いることができる。細胞が由来する生物種としては、例えば、ヒト、アカゲザル、ミドリザル、カニクイザル、チンパンジー、タマリンおよびマーモセット等の霊長類、マウス、ラット、ハムスターおよびモルモット等の齧歯類、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ等が例示できる。なお、MSCとしては、MSCを70〜90%コンフルエント(好ましくは80%コンフルエント)まで増殖させて得られた細胞をゼロ継代とし、それをさらに増殖させて、例えば、1〜10継代のMSCを用いてもよい。
スフェロイドとしては、特に限定されず、公知のものを用いてもよいが、得られるスフェロイドの細胞外マトリックス含有量、均一性等の観点から、開口部の口径が直径1000μm以下の凹部を複数有する細胞培養用基材上で培養されたスフェロイドであってもよい。
例えば、凹部内にてスフェロイドを調製する場合、基材における凹部の個数は、基材面積や培養する細胞の種類等によって一概に設定することはできず、当該技術常識に従って適宜設定することができる。例えば、単位面積(cm2)あたりの下限個数は1個としてもよいが、10個、20個、30個、50個などを例示でき、上限個数は1000個、500個、300個、200個、100個などを例示することができる。また、基材表面における凹部の総数は、例えば、10個以上、100個以上、1000個以上、10000個以上、50000個以上など、適宜設定することができる。
前記凹部の開口部の形状は、円形に限られず、例えば、多角形や楕円であってもよい。開口部の口径は直径1000μm以下であればよく、培養する細胞のサイズによって当該技術常識に従って適宜設定することができる。本発明において、口径とは、対象箇所の形状によらず、対象箇所を包接するようにして形成される円の直径(最大長さ)のことである。開口部の口径としては、例えば、10〜1000μm、10〜700μm、10〜600μm、10〜500μmの範囲内が例示される。
前記凹部の底面の形状は、円形に限られず、例えば、多角形や楕円であってもよく、開口部の形状と同一であっても異なるものであってもよい。また、底面は、平板状(平坦状)であっても湾曲していてもよく、平滑であってもよいが、平坦及び/又は平滑な底面であることがより好ましい。底面の口径(長さ)は開口部の口径と同一であっても異なるものであってもよく、底面の口径が開口部の口径より小さいものであっても、底面の口径が開口部の口径より大きいものであってもよい。底面の口径としては、例えば、10〜1000μm、10〜700μm、10〜600μm、10〜500μm、10〜400μm、10〜300μmの範囲内が例示される。例えば、底面の口径が開口部の口径より小さい場合、凹部の形状としては、凹部の底面側に向かったテーパー形状が形成される。
底面の口径と開口部の口径の比(底面の口径/開口部の口径)は、特に限定されるものではないが、細胞の播種や回収のしやすさの観点から、5/1〜1/5、3/1〜1/3、1/1〜1/2が例示される。
また、開口部と隣接する開口部との間の距離(間隙)は、特に限定されるものではないが、所望する細胞培養に応じて、例えば、800μm以下、700μm以下、600μm以下、500μm以下、300μm以下、200μm以下、100μm以下などの範囲内が例示され、有限値であればよい。
前記凹部の深さは、培養する細胞のサイズによって当該技術常識に従って適宜設定することができる。例えば、10〜1000μm、10〜300μm等の範囲内が例示される。
開口部の口径と凹部の深さの比(開口部の口径/凹部の深さ)は、特に限定されるものではないが、細胞の播種や回収のしやすさの観点から、5/1〜1/5、3/1〜1/3、2/1〜1/2が例示される。前記範囲内の場合、細胞が凹部から飛び出し難く、また、細胞の回収や脱泡処理といった作業がしやすくなる。
前記凹部の底面の厚みは、特に限定されず、当該技術常識に従って適宜設定することができる。
また、前記凹部の内表面はスフェロイドを形成できるのであれば特に制限されない。スフェロイドを凹部内で形成させる観点、及び得られるスフェロイドの接着性を向上させる観点から、スフェロイドの培養面が細胞接着性表面を有するような細胞培養用基材を用いてもよい。この場合、細胞接着性表面が凹部内表面の一部を形成しても全面であってもよく、例えば、凹部の内側面や底面の一部又は全面であってもよい。
細胞接着性表面とは、例えば、培養に用いる溶液中において、細胞が当該表面上に沈降した場合に、当該細胞が、ある一定の接着点を持って接着することである。または、ピペッティング等の液流等によって剥離可能な程度に固定化されるように接着する表面のことである。また、細胞が接着して二次元的に維持又は増殖されるような表面ではなく、層状やスフェロイド状等の立体的な又は三次元の組織体を形成することが可能な程度に接着する表面を挙げることができる。かかる表面は、例えば、細胞接着性を示す物質が凹部底面を構成する基材表面に物理的又は化学的に固定又は配置されて形成されたものであればよく、細胞接着性を示す物質が該凹部以外に配置されたものでも、基材そのものが細胞接着性を示す物質からなるものであってもよい。
細胞接着性を示す物質としては、培養に用いる細胞が接着するか、又は用いる細胞の細胞膜に存在するたんぱく質や糖鎖等の細胞表面分子に対して結合し得る物質であれば特に限られず用いることができる。親水性を示すものであっても疎水性を示すものであってもよいが、細胞接着性やスフェロイドの形成性等の観点から、親水性(特に、超親水性ではない親水性)又は疎水性(特に、超疎水性ではない疎水性)のものが好ましく、更に好ましくは、疎水性を示すものが好ましい。また、細胞接着性を示す物質の接着性の程度は、細胞が凹部内から飛び出さない程度であってもよい。このような物質の一例を挙げると、生体から取得され若しくは合成された物質が挙げられ、例えば、タンパク質(コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン等)や、合成樹脂(フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリジメチルシロキサン、これらの混合物等)が含まれる。合成樹脂を選択する場合、合成樹脂自体の強度や耐熱性から、取り扱い性に優れる細胞培養用基材を得ることができる。また、生体適合性の観点から、接着性のスフェロイドが得られる観点から、得られるスフェロイドの均一性が向上する観点から、または種々の細胞と適度に接着することにより培地交換作業が容易となる観点から、ポリイミド樹脂のような合成樹脂を選択することが好ましい。ポリイミド樹脂のような非生物由来の成分を選択することで、ポリイミド樹脂を含む細胞培養用基材により得られるスフェロイドは、再生医療や創薬等の分野への適用が容易となる。
ポリイミド樹脂としては、以下の式(I)で示される構成単位を含むポリイミド樹脂が例示できる。また、スフェロイド形成が良好であるという観点から、分子内にフッ素原子を有する樹脂が好ましく、含フッ素ポリイミド(含フッ素ポリイミド樹脂)がより好ましい。本発明で用いられるポリイミド樹脂は、典型的には、酸二無水物とジアミンとを各々1種以上重合させて得られるポリアミド酸をイミド化することにより得られる。ポリイミド樹脂は、ポリアミド酸を化学構造の一部に含んでいてもよい。ポリイミド樹脂を製造する方法としては、公知の手法で製造すればよい。一例として二段合成法が使用できる。ポリイミド樹脂の二段合成法は前駆体としてポリアミド酸を合成し、ポリアミド酸をポリイミド酸に変換する方法である。前駆体としてのポリアミド酸はポリアミド酸誘導体であってもよい。ポリアミド酸誘導体としては、例えばポリアミド酸塩、ポリアミド酸アルキルエステル、ポリアミド酸アミド、ビスメチリデンピロメリチドからのポリアミド酸誘導体、ポリアミド酸シリルエステル、ポリアミド酸イソイミドなどが挙げられる。ポリイミドとしてはピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の酸無水物と、オキシジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからなるポリイミドが例示できる。フッ素原子を有する樹脂としては、例えば、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)/1,4−ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン(TPEQ)共重合体、6FDA/1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPER)共重合体、6FDA/4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)/TPEQ共重合体、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸(BPADA)/2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、6FDA/2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン(BAPP)共重合体、6FDA/2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)共重合体、6FDA/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)共重合体、6FDA/4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)共重合体等の以下の式(I)で示される構成単位を含む含フッ素ポリイミド樹脂;エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等が例示できる。
上記式(I)中、Xは酸素原子、硫黄原子、または2価の有機基のいずれかを示し;
Yは2価の有機基を示し;
、Z、Z、Z、Z、及びZは互いに独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子のいずれかを示し、
pは0または1である。
なお、ポリイミド樹脂において、式(I)で示される化学構造は、樹脂の構成単位ごとに異なってもよく、同一であってもよい。X、Y、Z、Z、Z、Z、Z、及びZの少なくとも1つはフッ素原子を1個以上含むことが好ましい。
上記式(I)中、p=0である場合にはXは存在していなくても(換言すれば、左右のベンゼン環が直接結合していても)よいが、p=1である場合には、左右のベンゼン環はXを介して結合する。
で示される2価の有機基としては、具体的には、アルキレン基、アリーレン基、アリーレンオキシ基、アリーレンチオ基等が挙げられ、これらの中でも、アルキレン基、アリーレンオキシ基、アリーレンチオ基が好ましく、アルキレン基、アリーレンオキシ基がより好ましく、これらはフッ素原子で置換されていてもよい。上記アルキレン基の炭素数は、例えば1〜12であり、好ましくは1〜6である。
の例であるフッ素原子で置換されたアルキレン基としては、例えば、−C(CF−、−C(CF−C(CF−等を例示することができる。Xの例である上述したアルキレン基の中では、−C(CF−が好適である。
の例であるアリーレン基としては、例えば、以下のものを例示することができる。
の例であるアリーレンオキシ基としては、例えば、以下のものを例示することができる。
の例であるアリーレンチオ基としては、例えば、以下のものを例示することができる。
基材上にスフェロイドを良好に形成しうるという観点からは、Xで示される2価の有機基は、上記b−2〜b−10およびc−2〜c−10からなる群から選択されるものでもよく、上記b−7〜b−9およびc−7〜c−9からなる群から選択されるものでもよく、b−8で表される構造であってもよい。
の例である上述したアリーレン基、アリーレンオキシ基及びアリーレンチオ基は、各々独立して、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、好ましくはフッ素原子または塩素原子であり、より好ましくはフッ素原子である)、メチル基およびトリフルオロメチル基よりなる群から選択される基により置換されていてもよい。これら置換基は複数であってもよく、その場合には置換基の種類は互いに同一であっても異なっていてもよい。アリーレン基、アリーレンオキシ基およびアリーレンチオ基に置換している好適な置換基は、フッ素原子および/またはトリフルオロメチル基であり、好適にはフッ素原子である。アリーレン基、アリーレンオキシ基およびアリーレンチオ基は、Yにフッ素原子が含まれない場合、少なくとも1つ以上のフッ素原子で置換されることが好ましい。
上記式(I)中、Yで示される2価の有機基としては、特に制限されないが、例えば、芳香環を有する2価の有機基が挙げられる。詳しくは、1個のベンゼン環からなる基もしくは、2個以上のベンゼン環が炭素原子(すなわち、単結合、またはアルキレン基)、酸素原子、硫黄原子を介してまたは直接結合した構造を有する基が挙げられる。具体的には、以下の基を例示することができる。
Yの例である上述した芳香環を有する2価の有機基は、置換可能であれば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、好ましくはフッ素原子または塩素原子、より好ましくはフッ素原子である)、メチル基およびトリフルオロメチル基からなる群から選択される基により置換されていてもよい。これら置換基は複数であってもよく、その場合には置換基の種類は互いに同一であっても異なっていてもよい。芳香環を有する2価の有機基に置換している好適な置換基は、特にXにフッ素原子が含まれない場合は、フッ素原子および/またはトリフルオロメチル基であることが好ましく、より好適にはフッ素原子である。
スフェロイド形成性の観点から、上記式(I)中、Yはd−3、d−9、e−1〜e−4、f−6、およびf−7からなる群から選択される構造であることが好ましく、より好ましくはe−1、e−3またはe−4の構造である。
上記式(I)中、Z、Z、Z、Z、Z、及びZは、各々同じであってもよく異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子から選ばれ、XおよびYの少なくとも一方にフッ素原子が含まれない場合、Z、Z、Z、Z、Z、およびZの少なくとも1つはフッ素原子であることが好ましい。
スフェロイド形成性の観点から、本発明の好ましい一実施形態では、上記式(I)中、Xで示される2価の有機基が、−C(CF−、上記b−2〜b−10およびc−2〜c−10からなる群から選択され;かつ、Yが、d−3、d−9、e−1〜e−4、f−6、およびf−7からなる群から選択される。本発明のより好ましい一実施形態では、上記式(I)中、Xで示される2価の有機基が、−C(CF−、b−7〜b−9およびc−7〜c−9からなる群から選択され;かつ、Yが、e−1、e−3およびe−4からなる群から選択される。
上記の式(I)で示される構成単位からなるポリイミド樹脂は、酸二無水物とジアミンとの重合により得られるポリアミド酸を焼成する手法により得ることができる。なお、上記「式(I)で示される構成単位からなるポリイミド樹脂」のイミド化率は、100%でなくともよい。すなわち、式(I)で示される構成単位からなるポリイミド樹脂は、上記式(I)で表される構成単位のみからなるものであってもよいが、本発明の目的効果が損なわれない範囲において、環状イミド構造が脱水閉環せずにアミド酸のままである構成単位が一部に含まれていてもよい。
ポリアミド酸合成反応は有機溶媒中で行われることが好適である。ポリアミド酸合成反応に用いられる有機溶媒としては、原料である酸二無水物とジアミンとの反応が効率よく進行でき、かつこれらの原料に対して不活性であれば、特に限定されるものではない。例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、ニトロメタン、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、メタノール等の極性溶媒;トルエンやキシレン等の非極性溶媒等が挙げられる。中でも、極性溶媒を用いることが好ましい。これらの有機溶媒は、単独で使用されてもよいし、2種以上の混合物として使用されてもよい。アミド化反応後の反応混合物をそのまま熱イミド化に供してもよい。前記ポリアミド酸の溶液中の前記ポリアミド酸の濃度は特に限定されないが、得られる樹脂組成物の重合反応性と重合後の粘度、その後の製膜、焼成での取り扱いやすさから、好ましくは、5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。前記ポリアミド酸の粘度は特に限定されるものではないが、公知の測定方法に従って測定することができ、例えば、23℃において1〜20Pa・s、好ましくは3〜15Pa・sの範囲内である。
前記ポリアミド酸を、熱イミド化または化学イミド化のいずれかによりイミド化して含フッ素ポリイミドを含む樹脂組成物を得る。特定の実施形態では、前記ポリアミド酸を、加熱処理によりイミド化(熱イミド化)して含フッ素ポリイミドを含む樹脂組成物を得る。熱イミド化で得られたポリイミドは、触媒の残存の可能性がなく、細胞培養用途ではより好ましい。
熱イミド化によりイミド化する場合、例えば、前記ポリアミド酸を、空気中で、またはより好ましくは窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で、或いは真空中で、好ましくは温度50〜400℃、より好ましくは100〜380℃、好ましくは時間0.1〜10時間、より好ましくは0.2〜5時間の条件下で焼成してイミド化反応を行うことによりポリイミドを含む樹脂組成物を得ることができる。
熱イミド化反応に供する前記ポリアミド酸は、適当な溶媒中に溶解された形態であることが好ましい。溶媒としては、ポリアミド酸を溶解するものであれば良く、ポリアミド酸合成反応に関して上記した溶媒を用いることもできる。
化学イミド化によりイミド化する場合では、適当な溶媒中で後述の脱水環化試薬の使用によりポリアミド酸を直接イミド化することができる。
前記脱水環化試薬は、ポリアミド酸を化学的に脱水環化してポリイミドとする作用を有するものであれば、特に制限なく用いることができる。このような脱水環化試薬としては、第三級アミン化合物を単独で用いるか、または、第三級アミン化合物とカルボン酸無水物とを組合せて用いることが、イミド化を効率よく促進させうる点で好ましい。
第三級アミン化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン等が挙げられる。これらの中でも特に、ピリジン、DABCO、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタンが好ましく、DABCOがより好ましい。第三級アミン化合物は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
カルボン酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられる。これらの中でも特に、無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸が好ましく、無水酢酸がより好ましい。カルボン酸無水物は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
化学イミド化においてポリアミド酸を溶解する溶媒としては、溶解性に優れる極性溶媒が好適である。例えば、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、これらの中でも特に、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドおよびN−メチルピロリドンからなる群より選ばれる1種以上であることが均一反応をする観点から好ましい。アミド化反応の溶媒としてこれらの溶媒を用いた場合、アミド化反応後の反応混合物からポリアミド酸を分離せずそのまま化学イミド化に用いることができる。
ポリイミド樹脂の重量平均分子量は、例えば、5,000〜2,000,000、好ましくは8,000〜1,000,000であり、さらに好ましくは20,000〜500,000である。なお、ポリアミド酸の重量平均分子量と、焼成後のポリイミド樹脂の重量平均分子量とは実質的に同一であり、本明細書において、樹脂の重量平均分子量は、以下の手法により測定された値である。重量平均分子量が上記範囲であることにより、ポリイミド樹脂の合成および取扱い、フィルム化、スフェロイド形成性がより良好となる。
(重量平均分子量の測定)
装置:東ソー株式会社製HCL−8220GPC
カラム:TSKgel Super AWM−H
溶離液(LiBr・H2O、リン酸入りNMP):0.01mol/L
測定方法:0.5重量%の溶液を溶離液で作製し、ポリスチレンで作製した検量線をもとに分子量を算出する。
細胞接着性物質又は細胞接着性表面[疎水性(特に、超疎水性でない疎水性)の細胞接着性物質又は細胞接着性表面]は、好ましくは、静的水接触角が70°以上であってもよく、転落角が15°以上であってもよく、また、静的水接触角が70°以上かつ転落角が15°以上であってもよい。
細胞接着性物質又は細胞接着性表面がこのような条件を満たすことにより、スフェロイド形成がより一層促進される。
スフェロイドの接着性およびスフェロイド形成性の観点から、静的水接触角は、より好ましくは75°以上(例えば、75°超)であり、さらに好ましくは77°以上、さらに好ましくは79°以上、よりさらに好ましくは80°以上(例えば、80°超)であり、静的水接触角の上限は、例えば150°未満であり、好ましくは120°以下(例えば、120°未満)であり、より好ましくは110°以下であり、さらに好ましくは100°以下(例えば、99°未満、98°以下、97°以下、95°以下等)である。
一方、細胞接着性物質又は細胞接着性表面[親水性(特に、超親水性でない親水性)の細胞接着性物質又は細胞接着性表面]は、静的水接触角が65°以下であってもよく、より好ましくは55°以下、更に好ましくは50°以下を有していてもよい。なお、下限値は、0°以上となってもよく、好ましくは5°以上、より好ましくは10°以上であってもよい。
スフェロイド形成性の観点から、転落角は、18°以上、19°以上、20°以上、22°以上、24°以上、26°以上、28°以上、30°以上の順で高いほど好ましい。転落角の上限値は、例えば80°未満であり、好ましくは70°以下(例えば、70°未満)であり、より好ましくは60°以下(例えば、60°未満)であり、さらに好ましくは50°以下(例えば、50°未満)である。なお、上記の静的水接触角や転落角は、以下の方法により測定される値であってもよい。
(静的水接触角の測定方法)
装置:自動接触角計(協和界面科学製:DM−500)
測定方法:表面(細胞非接着性表面又は細胞接着性表面)又はフィルム(細胞非接着性又は細胞接着性の物質で形成したフィルム)上に水2μLを滴下した直後の液滴の付着角度を測定する(測定温度:25℃)。
(転落角の測定方法)
装置:自動接触角計(協和界面科学製:DM−500)
測定方法:表面(細胞非接着性表面又は細胞接着性表面)又はフィルム(細胞非接着性又は細胞接着性の物質で形成したフィルム)上に水25μLを滴下した後、基材を連続的に傾けていき、流れ落ちた際の角度を転落角とする(測定温度:25℃)。
細胞接着性表面を構成する樹脂は、可塑剤、酸化防止剤等の添加剤成分をさらに含んでもよい。
細胞接着性を示す表面が、凹部内表面を占める割合としては、特に限定はされないが、例えば、凹部の底面のうち、90%以上、95%以上、99%以上、実質的に底面全てを占めることが好ましい。
また、前記凹部は、前記した細胞接着性表面以外に、細胞非接着性表面を有するものであってもよい。例えば、凹部の内側面が細胞非接着性表面を有し、底面が細胞接着性表面を有する態様を挙げることができる。かかる構成を有することにより、得られるスフェロイドの均一性を向上することが可能となる。
細胞非接着性表面とは、例えば、培養に用いる溶液中において、細胞が当該表面上に沈降した場合に、当該細胞が、その形状をほとんど変化させず、全く接着しないか又は一時的に弱く接着したとしても自然に脱離する表面のことである。かかる表面は、例えば、細胞非接着性を示す物質が凹部を構成する基材表面に物理的又は化学的に固定されて形成されたものであればよく、基材そのものが細胞非接着性を示す物質からなるものであってもよい。
細胞非接着性を示す物質としては、培養に用いる細胞が接着しないか又は用いる細胞の細胞膜に存在するたんぱく質や糖鎖等の細胞表面分子に対して結合しない物質であれば特に限られず用いることができ、生体適合性を有するものであっても、有さないものであってもよい。また、疎水性を示すものであっても親水性を示すものであってもよく、例えば、超撥水性(超疎水性)のものや超親水性のものであってもよい。細胞の非接着性、スフェロイドの均一性および形成性等の観点から、疎水性(特に超疎水性)[例えば、疎水性又は親水性(特に疎水性)の細胞接着性表面又は当該表面を構成する樹脂(さらにはその接触角)に対してより疎水性(特に超疎水性)]を示す物質が特に好ましいが、親水性(特に超親水性)[例えば、親水性又は疎水性(例えば、疎水性)の細胞接着性表面又は当該表面を構成する樹脂(さらにはその接触角)に対してより親水性(特に超親水性)]を示す物質も好ましい。
このような物質の一例を示すと、エチレングリコール及びその誘導体、MPC(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)及びその誘導体、HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)及びその誘導体等を含む化合物あるいはそれら化合物の重合体、SPC(セグメント化ポリウレタン)及びその誘導体等を含む化合物や、生体から取得されたタンパク質(アルブミン等)、細胞が接着しない糖鎖(アガロース、セルロース等)を、細胞の種類に応じて適宜選択して用いることができる。なかでも、細胞接着性表面との接着性の観点から、または、細胞培養用基材の製造工程を簡素化できる観点から、または得られる細胞又はスフェロイドの均一性が向上する観点等から、MPC及びその誘導体あるいはそれらの重合体が好ましい。
なお、物質は、取扱性、所望の疎水性(例えば、超疎水性)・親水性(例えば、超親水性)の程度等に応じて、適宜、変性したものを使用してもよい。例えば、親水性の物質を架橋処理等することで、親水性と水に対する低溶解性を両立させてもよい。また、原料となる物質(例えば、疎水性又は親水性)を、適宜、疎水化処理ないし親水化処理(例えば、疎水性基ないし親水性基の導入等)し、所望の疎水性ないし親水性の材質を得てもよい。
細胞非接着性を示す物質の固定化は、これらを含有する溶液を基材表面上で乾燥させる方法、当該物質を溶融させて圧着する方法、基材に塗布した当該物質をUV等のエネルギー線で硬化させる方法、当該物質が有する官能基と基材上の官能基との間で化学反応(例えば、カルボキシル基やアミノ基等の官能基間の縮合反応等)を起こさせて共有結合を形成させる方法、又は当該物質が有するチオール基と基材に予め形成された金属(プラチナ、金等)薄膜とを結合させる方法により、当該基材表面上に固定化することができる。固定化する際の厚みは特に限定されず、0.01〜1000μmが例示される。
細胞非接着性を示す表面が、凹部内表面を占める割合としては、特に限定はされないが、例えば、凹部の内側面を占める割合としては、培養細胞の凹部の内側面への付着性を低減させる程度であることが好ましい。好ましくは内側面の面積の90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは全てを占めることが好ましい。
細胞非接着性を示す表面は、形成されるスフェロイドのサイズを均一にしたり、円形度を向上させる観点から、その表面特性として、例えば、前記した静的水接触角を指標として判断することができる。例えば、前記したような物質で形成された疎水性表面である場合、静的水接触角は好ましくは90°以上、より好ましくは93°以上、更に好ましくは95°以上となる。また、150°以下となってもよく、好ましくは130°以下、より好ましくは120°以下である。
一方、親水性表面である場合、静的水接触角は好ましくは65°以下、より好ましくは55°以下、更に好ましくは50°以下となる。また、0°以上となってもよく、好ましくは5°以上、より好ましくは10°以上である。
一例を挙げると、疎水性が高いMPCポリマー(又は当該MPCで形成された表面)では、静的水接触角が、例えば、90°以上、100°以上のような静的水接触角を実現しうる。
なお、このような静的水接触角は、細胞非接着性表面における値であってもよく、細胞非接着性を示す物質(又は細胞非接着性表面を構成する物質)における値であってもよい。
また、得られるスフェロイドのサイズ均一性や円形度を向上させる点においては、細胞接着性表面と細胞非接着性表面の接着程度のバランスをとることが重要でもある。よって、仮に、細胞非接着性表面が接着性を示すものであっても、細胞接着性表面より低接着性であればよい。例えば、上記の静的水接触角を指標とした場合、細胞接着性表面(又は細胞接着性物質)と細胞非接着性表面(又は細胞非接着性物質)における静的水接触角の差(又はその絶対値)が3°以上(例えば、5°以上)となることが好ましく、10°以上(例えば、12°以上)となることがより好ましく、15°以上となることがさらに好ましい。また、上限は、細胞非接着性物質(表面)及び細胞接着性物質(表面)の疎水性・親水性の組み合わせ等に応じて適宜選択でき、特に限定されないが、例えば、100°、90°、80°、70°、60°、50°、40°、30°などであってもよい。
凹部は前記した構造を有してもよいが、凹部の辺縁部でもある基材表面も、細胞培養用シート製造の簡便化の観点から細胞非接着性表面を有していてもよい。かかる構成を有することにより、辺縁部に播種された細胞も凹部内にてスフェロイドを形成しやすくなる。基材表面の細胞非接着性表面は、凹部の内側面と同じ細胞非接着性表面であっても、異なる細胞非接着性表面であってもよい。同じ細胞非接着性表面の場合は、基材表面と凹部の内側面は連続した表面を有していてもよい。細胞非接着性を示す表面が、凹部の辺縁部でもある基材表面を占める割合としては、特に限定はされないが、凹部の辺縁部のうち、90%以上、95%以上、99%以上、実質的に辺縁部全てを占めることが好ましい。細胞非接着性を示す表面が、凹部の辺縁部と凹部の内側面との合計を占める割合としては、特に限定はされないが、凹部の辺縁部と凹部の内側面との合計のうち、90%以上、95%以上、99%以上、実質的に辺縁部と内側面全てを占めることが好ましい。
本発明においてスフェロイドの調製に用いる細胞培養用基材としては、得られるスフェロイドのサイズ均一性や接着性を向上させる点においては、例えば、開口部の口径が直径1000μm以下の凹部を複数有し、該凹部の内側面が細胞非接着性表面を有し、かつ、該凹部の底面が細胞接着性表面を有する細胞培養用基材を挙げることができる。また、前記細胞培養用基材は、凹部の底面を含む層と凹部の内側面を含む層を含む層状構造物であってもよい。ここで、凹部の内側面を含む層とは、層自体は貫通孔を有する層を構成している。本発明で用いることができる細胞培養用基材の一態様として、例えば、貫通孔を有する細胞非接着性表面を有する層と、細胞接着性表面を有する層との積層物である細胞培養用シートを挙げることができる。
細胞非接着性表面を有する層は、細胞非接着性を示す物質を層状の基材に固定化したものであっても、細胞非接着性を示す物質からなる層であってもよいが、貫通孔を形成する観点から、または細胞培養用シートの製造を簡略化する観点から、細胞非接着性を示す物質を層状の基材に固定化したものが好ましい。このような形態とすることにより、細胞培養用シートの製造がより簡便となり、さらに例えば基材に貫通孔または凹部を形成してから細胞非接着性を示す物質を固定すること等により、細胞培養用シートの凹部形成に伴い細胞非接着表面がダメージを受けることを無くすことも可能となるため、細胞培養用シートの細胞培養特性向上の観点からも好ましい。
層状の基材としては、当該技術分野で公知のものであれば用いることができる。例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニル、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、シリコン等の合成樹脂、EPDM(Ethylene Propylene Diene Monomer)等の合成ゴムや天然ゴム、ガラス、セラミック、ステンレス鋼等の金属材料等からなる板状体が挙げられる。透明基材であることも好ましい形態の一つである。
層状の基材への細胞非接着性を示す物質の固定化は、前記した凹部の内側面に細胞非接着性を示す物質を固定化する方法と同様に行うことができる。なお、作業性の観点から、後述の貫通孔を形成してから、固定化を行うことが好ましい。
細胞非接着性表面を有する層は、好ましくは細胞培養用シートのシート表面と貫通孔を含む。前記貫通孔は、好ましくはその壁が前記した凹部の内側面に相当するものであり、開口部やその反対の端部の口径や形状は、前記した凹部と同様に設定することができる。また、貫通孔の深さは細胞非接着性表面を有する層の厚みに相当するが、前記した凹部の深さにも相当し、凹部と同様に設定することができる。なお、細胞非接着性を示す物質を層状の基材に固定化する場合は、細胞非接着性を示す物質の層として、例えば、1nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、細胞非接着性を示す物質の層と基材を含めた層全体の厚みが、前記した細胞非接着性表面を有する層の厚みの範囲内になるのであれば適宜設定することができる。
貫通孔の形成は、前記したサイズの貫通孔が形成できるのであれば特に限定されず、実施することができる。例えば、穿孔加工(ドリル等)、光微細加工(レーザー(例えば、CO2レーザー、エキシマレーザー、半導体レーザー、YAGレーザー)等)、エッチング加工、エンボス加工等により形成することができる。前記加工において、貫通孔の形状がテーパー形状になるような加工であってもよく、その際に、端部の周囲が変形し、開口部の辺縁部と、開口部と隣接する開口部の中間領域に位置する部分の層厚みが異なるような構造を形成してもよい。
細胞接着性表面を有する層は、細胞接着性を示す物質を層状の基材に固定化したものであっても、細胞接着性を示す物質からなる層であってもよい。
細胞接着性表面を有する層の厚みは、例えば、1nm以上、4mm以下であり、1μm以上、1mm以下であることが好ましく、前記した凹部の底面の厚みと同じであっても良い。
細胞培養用シートとしては、前記した細胞接着性表面を有する層と細胞非接着性表面を有する層との間に、さらに接着層(粘着層)を含む態様も含む。
接着層としては、当該技術分野で公知のものであれば用いることができる。例えば、シリコン系樹脂、合成ゴム、天然ゴムなどが挙げられ、好ましくは低溶出性の接着層を用いることができる。好ましくは市販の両面テープなどを用いてもよい。
接着層の厚みは、特に限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、適宜設定することができる。例えば、0.5〜100μmが例示される。
細胞培養用シートは、上記以外の層が積層されていても良く、空洞を有する層が積層されていても良い。
細胞培養用シートは、厚みは特に限定されないが、取り扱い性の観点から、10〜5000μmが好ましく、100〜2000μmがより好ましい。また、シート面積も特に限定されず、例えば、0.01〜10000cm2、好ましくは0.03〜5000cm2が例示される。
前記細胞培養用シートは、公知の細胞培養装置にそのまま設置したものでもよい。また、対象装置の大きさに合わせて、適宜サイジング加工したものであってもよい。例えば、該シートを培養ディッシュ、フラスコ、培養バック等の各種細胞培養用容器に収容して固定し、該容器に細胞を含む培地を加えて培養を実施することができる。また、前記細胞培養用シートを設置した細胞培養用器具自体が、シングル若しくはマルチウェルプレートなどの培養用のプレート、培養シャーレ、培養ディッシュ、フラスコ、培養バック等の各種細胞培養用容器の形態であってもよい。
細胞を培養する際に使用する培地や条件は、使用する細胞に応じて適宜設定することができる。なお、前記細胞培養用シート又は該シートを設置した細胞培養用器具を使用する際に、必要に応じて予め脱泡処理を行うことが好ましい。脱泡処理としては、特に限定されず、霧吹き、ピペッティング、振盪、加温冷却などの温度変化、遠心処理、真空脱気、超音波処理などの一般的な処理を行うことができ、好ましいのは、霧吹き、ピペッティング、温度変化である。
前記細胞培養用シートを用いることにより、区画分けされた形状(複数の凹部により形成される形状)により、播種細胞がソートされ、また、基材が保有する適度な付着性が発揮されることから、得られるスフェロイドの均一性が向上する。また、前記適度な付着性により、培養作業時の取扱いに優れ、細胞培養用シート又は細胞培養用器具を揺する又は軽くピペッティングするだけで、スフェロイドを回収することもできる。前記細胞培養用シートは、開口部の口径が1000μm以下といった微細な凹部であるにも関わらず、それぞれの凹部にて、細胞接着性の底面とそれを囲む細胞非接着性の内側面によって特殊な接着環境が形成されることになって、得られるスフェロイドのサイズ均一性や円形度が向上するだけでなく、収率も向上するという効果が奏されると推定される。但し、本発明は、これらの推測に拘束されるものではない。
得られるスフェロイドの直径は、特に限定されないが、例えば10〜1000μm、好ましくは10〜800μmである。ここで、スフェロイドの直径は、常法(例えば、画像解析ソフト、粒度分布計)により測定することが可能であり、例えば、流体直径、円相当径として表示されうる。得られるスフェロイドは、円形度が例えば、0.5〜1.0、好ましくは0.7〜1.0である。
上述したスフェロイドを有効成分として含有する本発明に係る剤は、骨組織又は歯周組織における欠損部位や損傷部位の、修復、復元又は再生の用途に使用でき、前述のように、例えば、骨再生用(骨再生剤、骨補填剤)等として使用しうる。また、本発明に係る剤の適用分野は、特に制限されず、例えば、骨再生医療などの分野の他、頭蓋、顎、顔面の復元外科、美容外科、形成外科、整形外科、口腔外科、耳鼻咽喉科、歯科等の分野に適用できる。
また、本発明の剤は、骨組織関連疾患の予防または治療剤等として使用することもできる。上記のように、本発明の剤は、骨再生を伴いうるため、骨組織関連疾患の予防や治療用等として好適である。
骨組織関連疾患とは、骨組織に関連した疾患であり、骨の再生によって症状が改善しうる任意の疾患を意味する。骨組織関連疾患としては、例えば、変形性関節症、離断性骨軟骨炎、関節軟骨損傷、骨折、難治性骨折、関節リウマチ、乾癬性関節炎、脊椎関節炎、痛風性関節炎、偽痛風性関節炎、骨形成不全症、骨粗鬆症などが挙げられる。
本発明の一態様として、下記の態様も含む。
・間葉系幹細胞を含むスフェロイドを、それを必要とする患者に投与することを含む、骨再生方法。
・骨再生に用いられる、間葉系幹細胞を含むスフェロイド。
・骨再生のための医薬の製造における、間葉系幹細胞を含むスフェロイドの使用。
本発明の一態様として、下記の態様も含む。
・間葉系幹細胞を含むスフェロイドを、それを必要とする患者に投与することを含む、骨組織関連疾患の予防または治療方法。
・骨組織関連疾患の予防または治療に用いられる、間葉系幹細胞を含むスフェロイド。
・骨組織関連疾患の予防または治療のための医薬の製造における、間葉系幹細胞を含むスフェロイドの使用。
本発明に係るスフェロイドは、間葉系幹細胞を有効成分として含有するものであることにより、TGFβ1(Transforming Growth Factor(腫瘍増殖因子)-β1)遺伝子を優位に発現している。TGFβ1は、TGF-βスーパーファミリーの一種であり、哺乳動物のTGF-βには、β1、β2及びβ3の3つのアイソフォームが存在している。TGFβ1は細胞増殖のほか、成長、分化や運動性の調節といった機能を担っており、胚形成、組織再構築や創傷治療などの生理的機能にも関与しているが、前記遺伝子の発現量の増加により、軟骨細胞や骨芽細胞などにも作用を及ぼし骨形成に何らかの作用を示すことができる。また、前記スフェロイドは、抗炎症に関係するタンパク質及び/又はそれをコードする遺伝子を発現している。抗炎症に関係するタンパク質としては、特に限定されないが、例えば、TSG-6(Tumor necrosis factor (TNF)-stimulated gene 6)を指標として評価することができる。TSG-6は、ヒアルロン酸結合ドメインを有するヒアルロン酸結合タンパク質の一種であり、前記ヒアルロン酸結合ドメインは細胞外マトリックスの安定性と細胞移動に関与している。また、TSG-6は、インターα阻害剤(inter-alpha-inhibitor; IαI)と共有及び/又は非共有結合複合体を形成すると、IαIのセリンプロテアーゼ活性を増強する。前記抗炎症に関係するタンパク質の発現により、骨の再生や抗炎症効果を奏することから、骨組織関連疾患の予防・治療効果に優れるものと推定している。すなわち、本発明に係るスフェロイドは、骨再生や抗炎症の作用効果または作用機序を有しているといえる。
本発明に係る剤は、従来公知の細胞製剤における知見を参照しつつ、同様にして調製、保管、投与することが可能である。本発明に係る剤は、通常、注射剤の形態を有する。注射剤を調製する場合は、有効成分にpH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、および局所麻酔剤などを添加し、常法により皮下、筋肉内および静脈内用注射剤を製造することができる。この場合のpH調節剤および緩衝剤としてはクエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸食塩水などが挙げられる。安定化剤としてはピロ亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、チオグリコール酸、およびチオ乳酸などが挙げられる。局所麻酔剤としては塩酸プロカイン、および塩酸リドカインなどが挙げられる。等張化剤としては、塩化ナトリウムおよびブドウ糖などが例示されうる。
本発明に係る剤はまた、有効成分に加え、必要に応じて、一般的に用いられる各種の添加剤成分をさらに含みうる。
本発明に係る剤に含有される有効成分の量は、当該有効成分の用量範囲や投薬の回数などにより適宜決定されうる。
本発明に係る剤の投与方法としては、損傷部への局所投与のほか、関節内、髄腔内、静脈内、皮下組織内、筋肉内などへの注射投与を含み、これらに限られない。
用量範囲は特に限定されず、含有される成分の有効性、投与形態、投与経路、疾患の種類、対象の性質(体重、年齢、病状および他の医薬の使用の有無など)、および担当医師の判断などに応じて適宜設定されうる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、室温とは20〜30℃を意味する。
調製例1:細胞培養用シート
<細胞接着性表面を有する層の調製(含フッ素ポリイミドフィルムの調製)>
100mL容量の三口フラスコに、1,4−ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン2.976g(10.2ミリモル)、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物4.524g(10.2ミリモル)、N−メチルピロリドン42.5gを仕込んだ。窒素雰囲気下室温で撹拌後、5日間保持することで、含フッ素ポリアミド酸樹脂組成物(固形分濃度15.0質量%、6FDA/TPEQポリアミド酸)を得た。該ポリアミド酸の粘度は6Pa・sであった。
上記で得られた含フッ素ポリアミド酸樹脂組成物を、焼成後の含フッ素ポリイミドフィルムの厚みが40μmとなるようにダイコーターを用いてガラス基体上に塗布し、塗膜を形成した。次いで、360℃にて1時間、窒素雰囲気下で塗膜の焼成を行った。その後、焼成物をガラス基体から剥離して、含フッ素ポリイミドフィルムを得た。この含フッ素ポリイミドフィルムの静的水接触角は80.8°、転落角は23.8°であった。
上記における物性の測定方法は以下の通りである。
(粘度の測定)
装置:アズワン製 粘度計 VISCOMETER TV-22
設定:VI RANGE:H ROTOR No.6 SPEED:10rpm
粘度計校正用標準液:日本グリース(株) JS 14000
測定方法:粘度計校正用標準液で校正後、ワニス0.3gを用いて測定する。(測定温度:23℃)
(静的水接触角の測定)
装置:自動接触角計(協和界面科学製:DM−500)
測定方法:フィルム上に水2μLを滴下した直後の液滴の付着角度を測定する(測定温度:25℃)。
(転落角の測定)
装置:自動接触角計(協和界面科学製:DM−500)
測定方法:フィルム上に水25μLを滴下した後、基材を連続的に傾けていき、流れ落ちた際の角度を転落角とする(測定温度:25℃)。
<細胞非接着性表面を有する層の調製>
両面テープ(厚み25μm)の片面の剥離テープを剥離後透明なPETフィルム(厚み250μm)に貼り合わせたものに対して、CO2レーザーを用いて、直径300μm、ピッチ500μmで千鳥配置の貫通孔を形成した(形成された貫通孔:400個/cm2レーザー入射側孔径500μm、レーザー放出側孔径300μm)。その後、PETフィルム側の表面にMPCポリマー溶液(0.5%エタノール溶液、疎水性MPCポリマー)を厚みが0.05μmとなるようにコーティングし、50℃の乾燥機内で2時間乾燥処理して、細胞非接着性表面を有する層[PETフィルムのコーティング層(MPCポリマーのコーティング層)側の静的水接触角107.5°]を得た。
<細胞培養用シート・細胞培養用容器の調製>
次いで、細胞非接着性表面を有する層の両面テープのもう一方の剥離テープを除去した側の面に、上記で作製した細胞接着性表面を有する層を貼りあわせて、細胞培養用シートを調製した(シート厚み:315μm)。得られた細胞培養用シートを培養プレート内へ設置し、細胞培養に用いる容器を完成した。
実施例1
細胞は、GFP遺伝子導入Lewis系ラットから抽出した脂肪由来幹細胞を用いた。
<脱泡処理>
調製例1の細胞培養用容器の脱泡処理を行った。具体的には、容器に1mL程度のPBSを加えてピペッティングの作業を行い、37℃の5%(v/v)CO2インキュベーター内で15分間静置した。次いで、PBSをアスピレーターで吸引し、1%抗生物質を含んだKBM ADSC-2培地を0.2mL加えて、37℃の5%(v/v)CO2インキュベーター内で1晩静置した。
<スフェロイドの作製>
予め幹細胞を培養している培養用フラスコから培地を除去し、細胞剥離液アキュターゼTM(プロモセル製)を5mL添加した後、37℃の5%(v/v)CO2インキュベーター内で5分程度保持して細胞を剥離した。次いで、剥離液を回収し、PBSを10mL加えて洗浄してチューブへ移した。210×gで5分間遠心処理を施し、1mLの1%抗生物質を含んだKBM ADSC-2培地で懸濁させて、細胞数のカウントを行った。その後、1.0×106細胞/mLの濃度となるように調製した。
37℃の5%(v/v)CO2インキュベーター内で1晩静置して脱泡処理を行った細胞培養用容器の培地を除去し、500細胞/穴となるように細胞を播種した。安全キャビネット内で15分静置した後、37℃の5%(v/v)CO2インキュベーターに入れて4時間静置した。次いで、追加で1%抗生物質を含んだKBM ADSC-2培地を加え、再び37℃の5%(v/v)CO2インキュベーターに入れて3日間培養し、直径が約150μmのスフェロイドを得た。
試験例1(in vivo実験)
8週齢Lewis系ラット10匹の両側大腿骨滑車部にφ1.6mmの骨軟骨欠損を作製し、右膝に実施例1の脂肪由来幹細胞のスフェロイドを20個、左膝に脂肪由来幹細胞の単一細胞1.0×104個を投与した。また、ブランクとして、同様に骨軟骨欠損を作製し、そこにPBSを投与したものを用意した。4週後の修復組織の肉眼的評価、HE染色、トルイジンブルー染色、GFP及びII型コラーゲン、マッソントリクロームの免疫組織化学染色を用いて組織学的評価を行った。2週後、4週後及び12週後の修復組織について、HE染色及びトルイジンブルー染色を用いて組織学的評価を行った。
結果、スフェロイド投与群では、4週経過時点で肉眼的に軟骨様組織での修復像を認め、組織学的にもトルイジンブルー染色で異染性が確認できた(図1)。同時にII型コラーゲンも陽性を示し(図2)、Wakitani scoreによる評価では、単一細胞投与群と比較し、スフェロイド投与群で軟骨構造の有意な改善を認めた(表1、図3)。また、GFP免疫染色では4週後の修復組織における軟骨様細胞で陽性を認めた(図1)ことから、修復された軟骨様細胞は脂肪由来幹細胞が直接分化した可能性が考えられた。さらにスフェロイド投与群では軟骨の修復(図1:欠損上部の軟骨の写真)ならびにマッソントリクローム軟骨下骨の修復も良好であることが確認された(図4:新生骨増加率評価)。なお、マッソントリクローム染色では、染色が濃い部分が骨化した部分、染色が淡い部分もしくは白い部分が未骨化の部分、肉芽組織であり、新生骨増加率としては、軟骨を除く欠損部分を選択した後、ImageJで2値化し、当該部分における濃い部分を検出して面積率を算出し、解析を行った。HE染色では、スフェロイド投与群において、2週経過時点で欠損孔の底部から骨の修復を確認でき、4週経過時点で軟骨様細胞の形成が確認でき、また、12週経過時点ではスフェロイド投与群、単一細胞投与群共に、軟骨下骨の修復が確認でき、さらにスフェロイド投与群で単一細胞投与群よりもしっかりとした骨りょう構造を呈していた(図5)。また、トルイジンブルー染色では、スフェロイド投与群において、4週経過時点で旺盛な軟骨様細胞の確認、軟骨基質の再生に加え、海綿骨再生能も促進している様子が確認できた(図6)。
試験例2(in vitro実験)
Lewis系ラットより分離培養した脂肪由来幹細胞のスフェロイド型と単一細胞型においてPCR評価法を行った。治療関連遺伝子発現(性質の特定)、抗炎症性サイトカインの遺伝子発現(治療効果の根拠の特定)を評価した。上記脂肪由来幹細胞のスフェロイド型には、実施例1で得られたスフェロイドを使用した。
PCRの結果、脂肪由来幹細胞のスフェロイド型では抗炎症性サイトカインであるTSG-6及び、TGFβ1が多く発現していた(図7)。
脂肪由来幹細胞のスフェロイドは、単一細胞よりも、抗炎症性サイトカインTSG-6及び、骨芽細胞の増殖を促すTGFβ1を多く発現し、骨と軟骨の修復に有効であった。また、その修復には投与した脂肪由来幹細胞自身が分化している可能性も示唆するものであった。
本発明の剤は、簡便に調製することができ、かつ、細胞培養の作業自体も効率的に行なうことが可能となるので、例えば、骨再生医療などの分野の他、頭蓋、顎、顔面の復元外科、美容外科、形成外科、整形外科、口腔外科、耳鼻咽喉科、歯科等の抗炎症効果を期待する分野にも適用できる。

Claims (12)

  1. 間葉系幹細胞を含むスフェロイドを有効成分として含有する、骨再生剤。
  2. 間葉系幹細胞を含むスフェロイドを有効成分として含有する、骨組織関連疾患の予防または治療剤。
  3. さらに、抗炎症のための剤である、請求項1又は2記載の剤。
  4. さらに、軟骨再生のための剤である、請求項1〜3のいずれかに記載の剤。
  5. 開口部の口径が直径1000μm以下の凹部を複数有する細胞培養用基材上で培養されたスフェロイドである、請求項1〜4のいずれかに記載の剤。
  6. 培養面が細胞接着性表面を有する細胞培養用基材上で培養されたスフェロイドである、請求項1〜5のいずれかに記載の剤。
  7. 細胞接着性表面が細胞接着性を示す物質で構成される、請求項6記載の剤。
  8. 細胞接着性表面がポリイミド樹脂を含む、請求項6又は7記載の剤。
  9. 開口部の口径が直径1000μm以下の凹部を複数有し、該凹部の内側面が細胞非接着性表面を有し、かつ、該凹部の底面が細胞接着性表面を有する細胞培養用基材で培養されたスフェロイドである、請求項1〜8のいずれかに記載の剤。
  10. スフェロイドが、抗炎症に関係するタンパク質及び/又はそれをコードする遺伝子を発現している、請求項1〜9のいずれかに記載の剤。
  11. 抗炎症に関係するタンパク質が、TSG-6である、請求項10記載の剤。
  12. 骨組織関連疾患が、変形性関節症、離断性骨軟骨炎、関節軟骨損傷、骨折、難治性骨折、関節リウマチ、乾癬性関節炎、脊椎関節炎、痛風性関節炎、偽痛風性関節炎、骨形成不全症、及び骨粗鬆症からなる群より選ばれる、請求項2〜11のいずれかに記載の剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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