JP6901253B2 - 接着性細胞培養用基材、ならびにこれを利用した細胞培養容器および細胞培養方法 - Google Patents

接着性細胞培養用基材、ならびにこれを利用した細胞培養容器および細胞培養方法 Download PDF

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Description

本発明は、接着性細胞培養用基材、ならびに当該接着性細胞培養用基材を有する細胞培養容器、および当該接着性細胞培養用基材を使用した細胞培養方法に関する。
肝臓、膵臓、皮膚、血管等の各器官を形成する細胞は、生体内において、細胞同士が三次元的にネットワークを形成し機能を発現している。
そこでこれらの器官の機能を再生する再生医療の研究において、これらの器官の細胞を培養する場合には、細胞同士が三次元的にネットワークを形成できるような培養(すなわち、三次元培養)が求められる。細胞同士が三次元的にネットワークを形成した組織としてスフェロイドがある。しかしながら一般的な樹脂製の細胞培養用基材の表面で細胞を培養する場合、細胞は平面状に広がって増殖(二次元培養)し、三次元的なネットワークは形成されない。
三次元培養を行うための手法として、細胞接着性が低い樹脂層を形成した容器内にて浮遊状態で培養を行う方法(特許文献1)や、凹凸構造をナノインプリントした基材を用いる方法(特許文献2)が知られている。
特開2008−061609号公報 特開2014−210404号公報
特許文献1に記載されるような細胞接着性の低い基材を用いて培養を行うと、細胞の運動性が高くなるため細胞同士の接着性が高くなる。これにより、形成されるスフェロイドの大きさを制御することが困難となる。また、浮遊培養ではスフェロイドのサイズが大きくなるため、スフェロイドの中心部に存在する細胞が壊死するおそれがある。また、細胞を培養する場合、定期的に培地の交換が必須であるが、特許文献1に記載されるような細胞付着性の低い基材の場合、スフェロイドが浮遊した状態で形成されるため、培地交換時の培地除去の際に培地とともにスフェロイドも除去され、長期間の培養が困難である。
特許文献2に記載されるような凹凸構造をインプリントした基材(すなわち、ナノ凹凸構造を形成した基材)を用いることでスフェロイド形成が促進されるものの、かような微細構造を有する基材はインプリント加工に伴うコストが高く、また使用時に凹部に溜まった気泡抜きが必要であるため作業が煩雑となる。また、凹凸構造をインプリントした基材(すなわち、ナノ凹凸構造を形成した基材)ではスフェロイドが基材に弱く付着しているため、スフェロイド同士が会合しやすく、スフェロイドの大きさの制御が困難な場合がある。さらに、スフェロイドが基材から離れやすいため、培地交換時にスフェロイドを失いやすい問題があった。
細胞培養に用いられる器具類は、培養に使用する前にあらかじめ滅菌処理を行う必要がある。細胞培養用器具類の滅菌処理としては、オートクレーブ滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌、ガンマ線滅菌などが知られている。しかしながら、オートクレーブ滅菌は熱可塑性樹脂製等の耐熱性の低い器具類の滅菌処理には適さず、エチレンオキサイドガスは器具類に吸収された残留ガスによる安全性の観点から再生医療目的で使用される細胞培養用器具類の滅菌に用いるには懸念が残る。一方、ガンマ線滅菌は耐熱耐圧性の低い器具類の滅菌にも適用でき、またエチレンオキサイドガスのような残留ガスの問題も無いという利点がある。上記のような滅菌手段について、本発明者らは、従来の細胞培養用基材はガンマ線滅菌に適しないという課題が存在することを見出した。すなわち、従来の細胞培養用基材をガンマ線滅菌して細胞培養に用いると、細胞による三次元的なネットワーク形成が著しく低下することを見出した。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、凹凸構造のインプリント(すなわち、ナノ凹凸構造の形成)を必要とせずに、かつガンマ線滅菌後であっても、スフェロイドを基材表面上に形成可能な接着性細胞培養用基材を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、細胞培養面のプロテオグリカン吸着量が所定数値以上である接着性細胞培養用基材によって上記課題が解決されることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明によれば、凹凸構造のインプリント(すなわち、ナノ凹凸構造の形成)を必要とせずに、かつガンマ線滅菌後であっても、スフェロイドを基材表面上に付着した状態で形成することができる接着性細胞培養用基材を提供できる。スフェロイドが基材表面に付着しているため、スフェロイド同士が会合して大きくなることが回避でき、かつ培地交換時にスフェロイドを失うことも回避できる。
図1は、プロテオグリカン吸着量の測定方法を模式的に示した図である。 図2は、本発明の細胞培養容器を模式的に示す。 図3は、340℃焼成した6FDA/TPEQフィルムをガンマ線滅菌し(プロテオグリカン吸着量=98.4ng/cm)、当該フィルム上で培養したラット初代肝細胞(培養5日目)の顕微鏡写真である。
<接着性細胞培養用基材>
本発明の一形態は、細胞培養面のプロテオグリカン吸着量が75ng/cm以上である、接着性細胞培養用基材である。かような接着性細胞培養用基材を用いることにより、凹凸構造のナノインプリントを必要とせずに、かつガンマ線滅菌後であっても、スフェロイドを基材表面上に付着した状態で形成することができる。そのメカニズムは依然として明確ではないが、以下のように推測される。
接着性細胞培養用基材をガンマ線照射により滅菌した場合、基材表面において樹脂等の基材の形成材料の改質反応が起こり、結果として基材上に化学結合手が生じると考えられる。かような基材上の化学結合手の存在等により、細胞の基材への接着性が向上すると考えられる。このため、細胞が平面的に広がって増殖しやすくなり、二次元的な培養になるため、スフェロイド形成が困難になると考えられる。
ヘパラン硫酸等のプロテオグリカンは生体に含まれる糖−タンパク質複合体であるが、疎水性相互作用や静電気相互作用等により樹脂製素材等の各種の素材に吸着することが知られている。また、一般に、基材に対する細胞の接着性は、基材表面が適度な疎水性を有する場合に強くなり、親水性表面には接着しにくいことが知られている。したがって、プロテオグリカン吸着量が所定数値以上の接着性細胞培養用基材では、基材上へ培養細胞を播種した際、細胞の基材表面への接着性が過度に強固にならず、スフェロイド形成が可能となるのではないかと推測される。一方、細胞培養面のプロテオグリカン吸着量が75ng/cm未満の基材は、細胞が二次元的な増殖を示すか、または基材上に細胞が接着できなくなるため、浮遊したスフェロイドが形成される。これは、細胞培養面のプロテオグリカン吸着量が75ng/cm未満の基材は、(1)細胞培養面の疎水性が細胞の接着にとって適度な範囲となり、細胞の基材への接着性が強くなる結果、細胞が平面的に広がって増殖する、あるいは(2)細胞が分泌する細胞外マトリックスを構成するタンパク質(例えば、コラーゲン、エラスチンなど)等の成分や、インテグリン等の細胞接着タンパク質の基材への接着性が低く、細胞が浮遊してしまうためではないかと考えられる。なお、以上のメカニズムは推測であり、本発明の技術的範囲を制限するものではない。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で測定する。
<接着性細胞培養用基材>
本発明にかかる接着性細胞培養用基材(以下、単純に「基材」とも称する。)は、後述の方法により測定されるプロテオグリカン吸着量が75ng/cm以上であることを特徴とする。これにより、凹凸構造のナノインプリントを必要とせずに、かつガンマ線滅菌後であっても、スフェロイドを基材表面上に付着した状態で形成することができる。なお、本明細書において、単に「プロテオグリカン吸着量」と記載する場合、8kGyのガンマ線を照射した後の接着性細胞培養用基材を用いて測定した値を指す。ガンマ線照射後にプロテオグリカン吸着量は低下する傾向にあるものの、ガンマ線照射後のプロテオグリカン吸着量が上記範囲であれば、スフェロイドの形成が促進される。なお、本発明における接着性細胞培養用基材は8kGyのガンマ線を照射した場合のプロテオグリカン吸着量が所定値以上であればよく、本発明の技術的範囲が、ガンマ線を照射済みの接着性細胞培養用基材に限定されるものではない。すなわち、ガンマ線を未照射の接着性細胞培養用基材であっても、下記手法により8kGyの条件でガンマ線を照射した場合のプロテオグリカン吸着量が所定値以上であれば、本発明の技術的範囲に含まれる。
(プロテオグリカン吸着量の測定方法)
以下、適宜図1を参酌しながら、プロテオグリカン吸着量の測定方法について説明する。図1は、プロテオグリカン吸着量の測定方法のうち、接着性細胞培養用基材に対するプロテオグリカンを吸着させるステップを示す。図1に示すように、台座3上に、接着性細胞培養用基材1b、300μlのプロテオグリカン溶液2および接着性細胞培養用基材1aをこの順で配置する。このとき、接着性細胞培養用基材1aおよび1bは、細胞培養面がプロテオグリカン溶液2と接するように配置する。台座3は、振動安定性確保のため、シャーレ4に収容されている。シャーレ4に収容された台座3、当該台座3上に配置された接着性細胞培養用基材1b、プロテオグリカン溶液2および接着性細胞培養用基材1aを、まとめてユニット10と称する。プロテオグリカン溶液2は、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(シグマ社;H4777)を、終濃度が5μg/mLとなるようにDulbecco’s PBS(−)に使用直前に溶解して調製する。接着性細胞培養用基材1aおよび1bは、それぞれ直径14mmの円形とする。水を入れたバットを収容して加湿した37℃の5体積%COインキュベーター内にユニット10を静置し、収容から20時間後に取り出してプロテオグリカン溶液を回収する。回収後、後のプロテオグリカン濃度測定をすぐに行わない場合は、回収した溶液を−20℃で保管する。回収したプロテオグリカン溶液中のプロテオグリカン濃度の測定にはELISA法も利用できが、本発明においてはGlycosaminoglycan Sulpated Alcian Blue Binding Assay(Euro Diagnostica)を用いて測定する。初期濃度(5μg/mL)と20時間後のプロテオグリカン濃度との差およびフィルムの面積(1枚片面当たり1.54cm×2枚分で3.08cm)から、基材の単位面積当たりのプロテオグリカン吸着量(ng/cm)を算出する。
ガンマ線照射後の接着性細胞培養用基材について上記方法にて測定されるプロテオグリカン吸着量は75ng/cm以上であれば特に制限されないが、好ましくは80ng/cm以上であり、より好ましくは85ng/cm以上、更に好ましくは90ng/cm以上であり、特に好ましくは95ng/cm以上であり、最も好ましくは100ng/cm以上である。これにより、細胞が浮遊することなく適度に基材に付着するため、ガンマ線照射後であってもスフェロイドを基材表面上に付着した状態で形成することが可能となる。プロテオグリカン吸着量の上限は特に制限されないが、スフェロイド形成がより良好であるという観点から、好ましくは200ng/cm以下、より好ましくは190ng/cm以下、さらに好ましくは180ng/cm以下である。
基材のプロテオグリカン吸着量は、適切な材質を選択することによって基材のプロテオグリカン吸着量を所望の数値に設定することができる。特に制限されるものではないが、より具体的には、基材を形成する樹脂の製造時における焼成温度や、樹脂を構成する分子構造内における撥水性を発現する官能基(例えば、トリフルオロメチル基等のフッ素含有基)の割合等を調整すること等により、プロテオグリカン吸着量を制御することができる。例えば、樹脂製造時における焼成温度を高くすることにより、基材のプロテオグリカン吸着量を多くすることができる。この詳細なメカニズムは不明であるものの、例えばポリイミドのような樹脂の場合、焼成温度の向上によるイミド化率の向上と関係しているものと推測される。また、樹脂の単位構造当たりのフッ素原子の割合を多くすることにより、おそらくは撥水性の向上によりプロテオグリカンが樹脂にアクセスしにくくなるため、基材のプロテオグリカン吸着量を少なくすることができる。なお、本発明において、基材のプロテオグリカン吸着量が所望の範囲である限り、その制御手段が上記に制限されるものではない。
接着性細胞培養用基材の細胞培養面は、静的水接触角が75°以上かつ転落角が15°以上であることが好ましい。接着性細胞培養用基材がかような条件を満たすことにより、接着性細胞培養用基材上でのスフェロイド形成がより一層促進される。スフェロイド形成性の観点から、静的水接触角は、より好ましくは80°超、更に好ましくは81°超であり、静的水接触角の上限は、例えば150°未満、好ましくは120°未満、より好ましくは100°以下、更に好ましくは90°未満である。スフェロイド形成性の観点から、転落角は、18°以上、20°以上、22°以上、24°以上の順で高いほど好ましい。転落角の上限値は、例えば80°未満、好ましくは70°未満、より好ましくは60°未満、更に好ましくは50°未満である。なお、上記の静的水接触角や転落角は、実施例に記載の方法で測定される値である。
接着性細胞培養用基材の材質は、樹脂等が例示できるが、プロテオグリカン吸着量の制御のしやすさの観点から、好ましくは樹脂を含む。かような樹脂としては、接着性細胞培養用基材として利用可能な生体適合性の高いものであり、細胞培養面のプロテオグリカン吸着量が75ng/cm以上であるものであれば特に制限されない。特に限定されないが、例えば、接着性細胞培養用基材が含む樹脂は、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂(例えば、含フッ素ポリイミド樹脂)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリジメチルシロキサン等や、これらのブレンドが例示でき、焼成温度によるプロテオグリカン吸着量の制御が容易であるという観点から、ポリイミド樹脂が好ましく用いられる。すなわち、本発明の好ましい一実施形態では、接着性細胞培養用基材が、ポリイミド樹脂を含む。ポリイミド樹脂としては、以下の式(I)で示される構成単位を含むポリイミド樹脂が例示できる。また、スフェロイド形成が良好であり、耐熱性が向上して焼成温度の制御がより容易になるという観点から、分子内にフッ素原子を有する樹脂が好ましく、含フッ素ポリイミド(含フッ素ポリイミド樹脂)がより好ましい。本発明で用いられるポリイミド樹脂は、典型的には、酸二無水物とジアミンとを各々1種以上重合させて得られるポリアミド酸をイミド化することにより得られる。ポリイミド樹脂は、ポリアミド酸を化学構造の一部に含んでいてもよい。ポリイミド樹脂を製造する方法としては、例えば二段合成法が使用できる。ポリイミド樹脂の二段合成法は前駆体としてポリアミド酸を合成し、ポリアミド酸をポリイミド酸に変換する方法である。前駆体としてのポリアミド酸はポリアミド酸誘導体であってもよい。ポリアミド酸誘導体としては、例えばポリアミド酸塩、ポリアミド酸アルキルエステル、ポリアミド酸アミド、ビスメチリデンピロメリチドからのポリアミド酸誘導体、ポリアミド酸シリルエステル、ポリアミド酸イソイミドなどが挙げられる。ポリイミドとしてはピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の酸無水物と、オキシジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからなるポリイミドが例示できる。フッ素原子を有する樹脂としては、例えば、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)/1,4−ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン(TPEQ)共重合体、6FDA/4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)/TPEQ共重合体、4,4‘−(4−4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸(BPADA)/2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)等の以下の式(I)で示される構成単位を含む含フッ素ポリイミド樹脂;エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等が例示できる。
Figure 0006901253
上記式(I)中、Xは酸素原子、硫黄原子、または2価の有機基の何れかを示し;Yは2価の有機基を示し;Z、Z、Z、Z、Z、及びZは互いに独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子のいずれかを示し、pは0又は1である。なお、ポリイミド樹脂において、式(I)で示される化学構造は、樹脂の構成単位ごとに異なってもよく、同一であってもよい。X、Y、Z、Z、Z、Z、Z、及びZの少なくとも1つはフッ素原子を1個以上含むことが好ましい。
上記式(I)中、p=0である場合にはXは存在していなくても(換言すれば、左右のベンゼン環が直接結合していても)よいが、p=1である場合には、左右のベンゼン環はXを介して結合する。
で示される2価の有機基としては、具体的には、アルキレン基、アリーレン基、アリーレンオキシ基、アリーレンチオ基等が挙げられ、これらの中でも、アルキレン基、アリーレンオキシ基、アリーレンチオ基が好ましく、アルキレン基、アリーレンオキシ基がより好ましく、これらはフッ素原子で置換されていてもよい。上記アルキレン基の炭素数は、例えば1〜12であり、好ましくは1〜6である。
の例であるフッ素原子で置換されたアルキレン基としては、例えば、−C(CF−、−C(CF−C(CF−等を例示することができる。Xの例である上述したアルキレン基の中では、−C(CF−が好適である。
の例であるアリーレン基としては、例えば、以下のものを例示することができる。
Figure 0006901253
の例であるアリーレンオキシ基としては、例えば、以下のものを例示することができる。
Figure 0006901253
の例であるアリーレンチオ基としては、例えば、以下のものを例示することができる。
Figure 0006901253
増殖活性が低下した細胞であっても、ガンマ線照射後の基材上にスフェロイドを良好に形成しうるという観点からは、Xで示される2価の有機基は、上記b−2〜b−10およびc−2〜c−10からなる群から選択されることが好ましく、上記b−7〜b−9およびc−7〜c−9からなる群から選択されることがより好ましく、b−8で表される構造であることが更に好ましい。
の例である上述したアリーレン基、アリーレンオキシ基及びアリーレンチオ基は、各々独立して、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、好ましくはフッ素原子又は塩素原子、より好ましくはフッ素原子である。)、メチル基及びトリフルオロメチル基よりなる群から選択される基により置換されていてもよい。これら置換基は複数であってもよく、その場合には置換基の種類は互いに同一であっても異なっていてもよい。アリーレン基、アリーレンオキシ基及びアリーレンチオ基に置換している好適な置換基は、フッ素原子及び/又はトリフルオロメチル基であり、好適にはフッ素原子である。アリーレン基、アリーレンオキシ基及びアリーレンチオ基は、Yにフッ素原子が含まれない場合、少なくとも1つ以上のフッ素原子で置換されることが好ましい。
上記式(I)中、Yで示される2価の有機基としては、特に制限されないが、例えば、芳香環を有する2価の有機基が挙げられる。詳しくは、1個のベンゼン環からなる基もしくは、2個以上のベンゼン環が炭素原子(すなわち、単結合、またはアルキレン基)、酸素原子、硫黄原子を介して又は直接結合した構造を有する基が挙げられる。具体的には、以下の基を例示することができる。
Figure 0006901253
Figure 0006901253
Figure 0006901253
Figure 0006901253
Yの例である上述した芳香環を有する2価の有機基は、置換可能であれば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、好ましくはフッ素原子又は塩素原子、より好ましくはフッ素原子である。)、メチル基及びトリフルオロメチル基からなる群から選択される基により置換されていてもよい。これら置換基は複数であってもよく、その場合には置換基の種類は互いに同一であっても異なっていてもよい。芳香環を有する2価の有機基に置換している好適な置換基は、特にXにフッ素原子が含まれない場合は、フッ素原子及び/又はトリフルオロメチル基であることが好ましく、より好適にはフッ素原子である。
スフェロイド形成性の観点から、上記式(I)中、Yはd−3、d−9、e−1〜e−4、f−6、およびf−7からなる群から選択される構造であることが好ましく、より好ましくはe−1、e−3またはe−4の構造であり、更に好ましくはe−4の構造である。
上記式(I)中、Z、Z、Z、Z、Z、及びZは、各々同じであってもよく異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子から選ばれ、XおよびYの少なくとも一方にフッ素原子が含まれない場合、Z、Z、Z、Z、Z、及びZの少なくとも1つはフッ素原子であることが好ましい。
スフェロイド形成性の観点から、本発明の好ましい一実施形態では、上記式(I)中、Xで示される2価の有機基が、−C(CF−、上記b−2〜b−10およびc−2〜c−10からなる群から選択され;かつ、Yが、d−3、d−9、e−1〜e−4、f−6、およびf−7からなる群から選択される。本発明のより好ましい一実施形態では、上記式(I)中、Xで示される2価の有機基が、b−7〜b−9およびc−7〜c−9からなる群から選択され;かつ、Yが、e−1、e−3およびe−4からなる群から選択される。
上記の式(I)で示される構成単位からなるポリイミド樹脂は、酸二無水物とジアミンとの重合により得られるポリアミド酸を焼成する手法により得ることができる。以下に、一具体例として、6FDA/TPEQ共重合体の合成過程を示す。なお、上記「式(I)で示される構成単位からなるポリイミド樹脂」のイミド化率は、100%でなくともよい。すなわち、式(I)で示される構成単位からなるポリイミド樹脂は、上記式(I)で表される構造単位のみからなるものであってもよいが、本発明の目的効果が損なわれない範囲において、環状イミド構造が脱水閉環せずにアミド酸のままである構成単位が一部に含まれていてもよい。
Figure 0006901253
ポリアミド酸合成反応は有機溶媒中で行われることが好適である。ポリアミド酸合成反応に用いられる有機溶媒としては、原料である酸二無水物とジアミンとの反応が効率よく進行でき、かつこれらの原料に対して不活性であれば、特に限定されるものではない。例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、ニトロメタン、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、メタノール等の極性溶媒;トルエンやキシレン等の非極性溶媒等が挙げられる。中でも、極性溶媒を用いることが好ましい。これらの有機溶媒は、単独で使用されてもよいし、2種以上の混合物として使用されてもよい。
接着性細胞培養用基材の形成材料として、上記の式(I)で示される構成単位からなるポリイミド樹脂を用いる場合、細胞培養面のプロテオグリカン吸着量を高くするためには、ポリイミド樹脂製造時の焼成温度を高くしたり、樹脂に含まれるフッ素原子数を多くしたりすればよい。焼成温度を高くすることによりプロテオグリカン吸着量が向上する詳細なメカニズムは不明であるが、イミド化率と関連していると推測され、高温の焼成によってポリアミド酸のイミド化率が高くなりポリイミド樹脂の原料であるジアミンに由来する2級アミンの割合が減少することで樹脂の電荷が変化するためではないかと推測される。焼成温度は、樹脂の分子構造によっても異なるため一概には規定できないが、例えば、6FDA/TPEQ共重合体、BPADA/TPEQ共重合体、またはBPADA/HFBAPP共重合体を焼成する場合は340℃以上である。かような高い温度帯で焼成を行うことにより、接着性細胞培養用基材を、細胞培養面のプロテオグリカン吸着量が75ng/cm以上であるものとし、ガンマ線滅菌後であっても、ナノ凹凸構造の形成を必要とせずにスフェロイドを基材表面上に形成することができる。分子内にフッ素原子を有する樹脂(例えば、式(I)で示される構成単位を含む含フッ素ポリイミド樹脂)を用いることで、上記のような高温での焼成におけるプロテオグリカン吸着量の制御がしやすくなる。焼成温度の上限は特に制限されないが、例えば、500℃未満、好ましくは450℃以下である。焼成時間は、例えば、0.2〜10時間である。
また、接着性細胞培養用基材の形成材料として、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体のように、フッ素原子を有しないモノマーとフッ素原子を有するモノマーとの共重合体を用いる場合は、フッ素原子を有しないモノマー(上記ではエチレン)の割合を少なくし、分子構造内のフッ素原子の割合を増やすことで、プロテオグリカン吸着量を高くすることができる。
上記の接着性細胞培養用基材の形成材料である樹脂の重量平均分子量は、例えば、5,000〜2,000,000、好ましくは8,000〜1,000,000であり、さらに好ましくは20,000〜500,000である。なお、本明細書において、樹脂の重量平均分子量は、以下の手法により測定された値である。重量平均分子量が上記範囲であることにより、ガンマ線照射後のスフェロイド形成性がより良好となる。
(重量平均分子量の測定)
装置:東ソー株式会社製 HCL−8220GPC
カラム:TSKgel Super AWM−H
溶離液(LiBr・HO、リン酸入りNMP):0.01mol/L
測定方法:0.5重量%の溶液を溶離液で作製し、ポリスチレンで作製した検量線をもとに分子量を算出する。
本発明にかかる接着性細胞培養用基材は、細胞培養面のプロテオグリカン吸着量が75ng/cm以上であるものであればよく、上記樹脂等の主成分のみからなるものでも、他の材料を含むものでもよい。例えば、接着性細胞培養用基材は、プロテオグリカン吸着量が少ない樹脂(例えばポリスチレン等)、無機ガラスまたは金属等の支持部材上に、プロテオグリカン吸着量が75ng/cm以上である樹脂からなる樹脂層を細胞培養面に有する構成でもよい。あるいは、接着性細胞培養用基材は、可塑剤、酸化防止剤等の添加剤成分をさらに含んでもよい。基材の厚さも特に制限されず、任意に設定できるが、例えば0.1μm〜10mm、好ましくは1μm〜1mmである。
本発明にかかる接着性細胞培養用基材は、ナノ凹凸構造の形成加工を施さなくともスフェロイド形成に用いることが可能であるが、ナノ凹凸構造を有するものを排除しない。接着性細胞培養用基材に対するナノ凹凸構造の形成加工は、例えば、特開2014−210404号公報に記載の手法により行うことができる。
<細胞培養容器、細胞培養方法>
本発明の一実施形態では、上記の接着性細胞培養用基材を有する、細胞培養容器が提供される。本発明の細胞培養用容器は、本発明の細胞培養用基材と他の部材とが組み合わされて構成されていてもよいし、本発明の細胞培養用基材と他の部材とが一体化されて構成されていてもよいし、本発明の細胞培養用基材のみにより構成されていてもよい。
図2に、本発明にかかる細胞培養容器の一実施形態を例示する。細胞培養容器は、図2(A)のように接着性細胞培養用基材1からなるものでもよく、あるいは、図2(B)や(C)のように接着性細胞培養用基材1と支持部材20とからなるものであってもよい。図2では、細胞培養容器を、開口した側から平面視したときの内郭形状及び外郭形状は、それぞれ例えば円、多角形(四角形、三角形等)などの任意の形状であることができる。支持部材20を構成する材料としては、例えば、無機ガラス;カーボン;シリコン等の金属;ポリエチレン、ポリプロピレン、環状オレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂;エポキシ樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ビニルエーテル、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリアリールエーテル、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリールエーテルケトン、フェノール樹脂、ポリエーテルニトリル(PEN)等が例示できる。
本発明の細胞培養用容器は、本発明の細胞培養用基材を備えていればよく、全体としてどのような形状であってもよい。例えば、シングル若しくはマルチウェルプレートなどの培養用のプレート、シャーレ、ディッシュ、フラスコ、バッグ等の各種容器の形状であることができる。本発明の細胞培養用容器はまた、大量培養装置や潅流培養装置などの培養装置における細胞培養用容器の形態であってもよい。
本発明の一実施形態では、上記の接着性細胞培養用基材上で接着性細胞を培養する工程を含む、細胞培養方法が提供される。上記の接着性細胞培養用基材は、ナノ凹凸構造を形成しなくとも、その表面上で接着性細胞を培養することによりスフェロイドを形成することができる。また、上記の接着性細胞培養用基材は、ガンマ線滅菌をした後でもスフェロイド形成が可能であることから、耐熱耐圧性の低い部材と組み合わせた細胞培養用器具に用いることができる。さらに、ガンマ線滅菌が可能であるから、エチレンオキサイドガスのような残留ガスの問題も無いという利点がある。本発明のさらなる実施形態では、上記培養する工程において、接着性細胞を三次元培養する、細胞培養方法が提供される。
本発明の細胞培養方法で培養される細胞の種類は特に限定されず、正常細胞、がん細胞、およびハイブリドーマ等の融合細胞等が使用でき、遺伝子導入等の人工的処理がされた細胞であってもよい。特に限定されないが、例えば、人工多能性幹細胞(Induced pluripotent stem cells:iPS細胞)、胚性幹細胞(Embryonic stem cells:ES細胞)、間葉系幹細胞等の一般的に三次元培養を行うことが求められている細胞や、各種前駆細胞及び幹細胞を含む、脂肪細胞、肝細胞、腎細胞、膵臓細胞、乳腺細胞、内皮細胞、上皮細胞、平滑筋細胞、筋芽細胞、心筋細胞、神経細胞、グリア細胞、樹状細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、骨細胞、線維芽細胞、各種血液系細胞、網膜細胞、角膜由来細胞、生殖腺由来細胞、各種線細胞、その他間葉系前駆細胞、各種癌細胞等の細胞が挙げられる。これらの細胞が由来する生物種も特に制限されず、ヒトおよび非ヒト動物由来の各種細胞を用いることができる。細胞が由来する生物種としては、例えば、ヒト、アカゲザル、ミドリザル、カニクイザル、チンパンジー、タマリンおよびマーモセット等の霊長類、マウス、ラット、ハムスターおよびモルモット等の齧歯類、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ニワトリ、ウズラ、ミンク、ツパイ、ならびにゼブラフィッシュ等が例示できる。
細胞培養に用いる培地は、細胞に合わせて適宜選択すればよい。培地の種類は特に限定されないが、例えば、任意の細胞培養基本培地や分化培地、初代培養専用培地等を用いることができる。具体的には、イーグル細小必須培地(EMEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、α−MEM、グラスゴーMEM(GMEM)、IMDM、RPMI1640、ハムF−12、MCDB培地、ウィリアムス培地E、Hepatocyte thaw medium、およびこれらの混合培地等が挙げられるが、これらには限定されず、細胞が増殖や分化に必要な成分が含まれる培地であれば利用可能である。さらに、血清、各種成長因子、分化誘導因子、抗生物質、ホルモン、アミノ酸、糖、塩類等を添加した培地を使用してもよい。培養温度も特に制限されないが、通常は25〜40℃程度で行う。
三次元培養により形成される組織としては、スフェロイドや、三次元細胞集合体が挙げられる。スフェロイド又は三次元細胞集合体は肝細胞のような単一な細胞で形成されたスフェロイド又は三次元細胞集合体でも、各種線維芽細胞や血管内皮細胞等と肝細胞のような2種以上の異なる細胞種が混在したスフェロイド又は三次元細胞集合体でも良い。使用できる細胞としては、上記の各種細胞が挙げられる。一実施形態では、上記の接着性細胞培養用基材であって、前記細胞培養面にスフェロイドが接着した、接着性細胞培養用基材が提供される。他の実施形態では、当該前記細胞培養面にスフェロイドが接着した接着性細胞培養用基材を有する、細胞培養容器が提供される。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、特記しない限り、以下の操作は室温(25℃)で行った。
<比較例1>
1.ポリアミド酸樹脂組成物の調製
100ml容量の三口フラスコに1,4−ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン(TPEQ)2.976g(10.2ミリモル)、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)4.524g(10.2ミリモル)、N,N−ジメチルアセトアミド42.5gを仕込んだ。窒素雰囲気下、室温で5日間攪拌することで、含フッ素ポリアミド酸樹脂組成物(固形分濃度15.0質量%)を得た。該ポリアミド酸の重量平均分子量は18万であった。なお、ポリアミド酸の重量平均分子量と、焼成後の含フッ素ポリイミド樹脂の重量平均分子量は実質的に同一である。
2.含フッ素ポリイミドフィルムの作製
得られた含フッ素ポリアミド酸樹脂組成物を、硝子基材上にダイコーターを用いて焼成後の含フッ素ポリイミドフィルムの厚みが30μmとなるようにフィルム状に製膜し、320℃で1時間、窒素雰囲気下で焼成を行った。その後、フィルムを硝子から剥離して、含フッ素ポリイミドフィルム1を得た。
<実施例1>
焼成温度を340℃に変更した以外は比較例1と同様の操作を行い、含フッ素ポリイミドフィルム2を得た。
<実施例2>
1.ポリアミド酸樹脂組成物の調製
100ml容量の三口フラスコに1,4−ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン(TPEQ)3.842g(7.38ミリモル)、4,4’−(4−4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸(BPADA)2.158g(7.38ミリモル)、N−メチルピロリドン34gを仕込んだ。窒素雰囲気下、室温で5日間攪拌することで、ポリアミド酸樹脂組成物(固形分濃度15.0質量%)を得た。該ポリアミド酸の重量平均分子量は12万であった。なお、ポリアミド酸の重量平均分子量と、焼成後のポリイミド樹脂の重量平均分子量は実質的に同一である。
2.ポリイミドフィルムの作製
得られたポリアミド酸樹脂組成物を、硝子基材上にダイコーターを用いて焼成後のポリイミドフィルムの厚みが30μmとなるようにフィルム状に製膜し、340℃で1時間、窒素雰囲気下で焼成を行った。その後、フィルムを硝子から剥離して、ポリイミドフィルム3を得た。BPADA/TPEQ共重合体の構成単位を、以下に示す。
Figure 0006901253
<実施例3>
1.ポリアミド酸樹脂組成物の調製
100ml容量の三口フラスコに2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)3.006g(5.77ミリモル)、4,4’−(4−4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸(BPADA)2.994g(5.77ミリモル)、N−メチルピロリドン34gを仕込んだ。窒素雰囲気下、室温で5日間攪拌することで、含フッ素ポリアミド酸樹脂組成物(固形分濃度15.0質量%)を得た。該ポリアミド酸の重量平均分子量は10万であった。なお、ポリアミド酸の重量平均分子量と、焼成後の含フッ素ポリイミド樹脂の重量平均分子量は実質的に同一である。
2.含フッ素ポリイミドフィルムの作製
得られた含フッ素ポリアミド酸樹脂組成物を、硝子基材上にダイコーターを用いて焼成後の含フッ素ポリイミドフィルムの厚みが30μmとなるようにフィルム状に製膜し、340℃で1時間、窒素雰囲気下で焼成を行った。その後、フィルムを硝子から剥離して、含フッ素ポリイミドフィルム4を得た。BPADA/HFBAPP共重合体の式(I)で示される構成単位を、以下に示す。
Figure 0006901253
<静的水接触角の測定>
装置:自動接触角計(協和界面科学製:DM−500)
測定方法:フィルム上に水2μlを滴下した直後の液滴の付着角度を測定した(測定温度:25℃)。
<転落角の測定>
装置:自動接触角計(協和界面科学製:DM−500)
測定方法:フィルム上に水25μlを滴下した後、基材を連続的に傾けていき、流れ落ちた際の角度を転落角とした。(測定温度:25℃)。
<プロテオグリカン吸着量の測定>
ヘパラン硫酸プロテオグリカン(シグマ社;H4777)をDulbecco’s PBS(−)(Wako社;041−20211)でプロテオグリカン濃度が5μg/mLとなるように溶解し、プロテオグリカン溶液を得た。シャーレの上の台座に上記のフィルム1枚(直径14mmの円形)をセットし、当該フィルム上にプロテオグリカン溶液を300μLマウントした。
同じ種類のフィルム(直径14mmの円形)を、プロテオグリカン溶液にさらに1枚被せてプロテオグリカン溶液を2枚のフィルムで挟み、フィルムとプロテオグリカン溶液とが接触する面積が一定になるようにセットし、ユニットを得た。これを、水を入れたバットを収容して加湿した37℃の5体積%COインキュベーター内に静置した。20時間後にユニットを取り出し、プロテオグリカン溶液を回収した。回収した溶液は測定まで−20℃で保管した。
回収したプロテオグリカン溶液中のプロテオグリカン濃度を測定した。濃度の測定は、Glycosaminoglycan Sulpated Alcian Blue Binding Assay(Euro Diagnostica)を用いて行い、測定プロトコルは添付のマニュアルに準拠した。初期濃度(5μg/mL)と20時間後のプロテオグリカン濃度との差およびフィルムの面積(1枚片面当たり1.54cm×2枚分で3.08cm)から、単位面積当たりのプロテオグリカン吸着量(μg/cm)を算出した。
測定結果を表2に示す。なお、表2中、プロテオグリカン吸着量の測定は後述のガンマ線滅菌後のフィルムを用いて行い、接触角および転落角の測定はガンマ線滅菌前のフィルムを用いて行った。
<ラット初代肝細胞の取得>
Specific viral pathogen freeのWistarラット、オス、9週齢、体重200gを日本エスエルシー株式会社より購入した。ラット初代肝細胞の取得は培養細胞実験ハンドブック(羊土社)第10章、「肝細胞」に記載の方法を参考に行った。具体的には、Wistarラットをイソフルラン麻酔下で開腹し、門脈にカテーテルを挿入して以下記載の組成の前かん流液を注入した。次に胸腔を開き、右心房に入る下大静脈を切開し、血液を放出させた。肝臓からの脱血が十分になされたことを確認した後にかん流を止め、かん流液を以下記載の組成のコラゲナーゼ溶液に換えて、かん流を行った。細胞間組織がコラゲナーゼにより消化されたことを確認した後、かん流を止めた。肝臓を切り離し、ガラスシャーレに移した後、冷やしたEMEM High Glucose培地(Wako社)を添加して、ピペッティングにより細胞を分散させた。次に150mm濾過器により未消化の組織を除去した。細胞懸濁液は、50G、1分の遠心分離を数回繰り返して非実質細胞を除去した。得られた肝細胞の生存率はトリパンブルー排除法で計測し、生存率85%以上の肝細胞をラット初代肝細胞として培養試験に使用した。
Figure 0006901253
<ラット初代肝細胞を用いた3次元培養評価>
細胞培養試験には、上記のように調製した含フッ素ポリイミドフィルム1および2(直径14mmの円形)をガンマ線滅菌して用いた(ガンマ線滅菌の条件:8kGy)。
前述の方法で取得したラット初代肝細胞を、以下組成の血清培地で懸濁し、1.33×10cells/cmとなるように、6.25×10cells/mLのラット初代肝細胞懸濁液 0.4mLを、ガンマ線滅菌処理したフィルムに播種し、37℃,5% CO条件下で培養を行った。培地交換は播種後4時間、培養1日目、3日目、5日目に培地を全量除去後、血清培地を0.4mL添加して行った。培養5日目に各フィルム上のスフェロイド形成および付着細胞の有無の確認を行った。その結果、フィルム1上では部分的にスフェロイド形成されたが、二次元的な形態も観察された。これに対して、フィルム2上では付着細胞はほとんど観察されず、スフェロイドが基材表面上に付着した状態で形成されていることを確認した(図3)。
(血清培地の組成)
William’s E medium(和光純薬)、10%(w/v)FBS(和光純薬)、8.6nM インスリン、255nM デキサメサゾン、50ng/mL EGF、5KIU/mL アプロチニン、抗生物質(ペニシリン(100unit/mL)/ストレプトマイシン(100μg/mL)/アムホテリシンB(0.25μg/mL))。
Figure 0006901253
<ラット凍結肝細胞を用いた3次元培養評価>
初代肝細胞に比べて、細胞の増殖活性が低下した凍結肝細胞を用いて、培養試験を行った。
細胞培養試験には、上記のように調製したポリイミドフィルム3、含フッ素ポリイミドフィルム4(直径14mmの円形)をガンマ線滅菌して用いた。
ラット凍結肝細胞およびHepatocyte thaw mediumはオリエンタル酵母工業より購入して実験に使用した。また、実験開始前に前記組成の血清培地200μLに、0.4(w/v)% トリパンブルー溶液(和光純薬株式会社製)50μLを添加して、染色液を作製した。
液体窒素からラット凍結肝細胞の入ったバイアルを取り出し、37℃ウォーターバスにバイアルを入れて細胞懸濁液を融解した。70%(v/v)エタノールでバイアルを拭いた後に、安全キャビネット内に移し、バイアル中の細胞懸濁液全量を、予め37℃に温めたHepatocyte thaw medium 45mLに添加し、室温、86×g、6分間遠心分離を行った。上清を廃棄後、前記血清培地 10mLを添加し、細胞懸濁液を作製した。細胞懸濁液 50μLと前記染色液 50μLを混合し、血球計算盤を用いて生細胞数と生存率を測定し、生存率85%以上のラット凍結肝細胞を用いて培養試験を実施した。
前述の方法で取得したラット凍結肝細胞を、前記組成の血清培地で懸濁し、1.33×10cells/cmとなるように、6.25×10cells/mLのラット凍結肝細胞懸濁液 0.4mLを、ガンマ線滅菌処理したフィルムに播種し、37℃,5体積% CO条件下で培養を行った。培地交換は播種後4時間、培養1日目、3日目、5日目に培地を全量除去後、血清培地を0.4mL添加して行った。培養5日目にフィルム上のスフェロイド形成および二次元的な付着細胞の有無の確認を行った。
Figure 0006901253
1,1a,1b 接着性細胞培養用基材(フィルム)、
2 プロテオグリカン溶液、
3 台座、
4 シャーレ、
10 ユニット、
20 支持部材、
100、101、102 細胞培養容器。

Claims (7)

  1. 樹脂を含み、細胞培養面のヘパラン硫酸プロテオグリカン吸着量が95ng/cm以上であ
    前記樹脂は、下記式(I):
    Figure 0006901253

    上記式(I)中、
    pは、1であり、
    は、−C(CF −、−C(CF −C(CF −、および下記b−1〜b−10からなる群から選択される基であり、
    Figure 0006901253

    、Z 、Z 、Z 、Z およびZ は、水素原子であり、
    Yは、下記e−1〜e−5からなる群から選択される基である
    Figure 0006901253

    で表される構成単位を含む、接着性細胞培養用基材。
  2. 細胞培養面の静的水接触角が75°以上かつ転落角が15°以上である、請求項1に記載の接着性細胞培養用基材。
  3. 前記式(I)において、X が−C(CF −および前記b−8から選択される基であり、Yがe−1およびe−4から選択される基である、請求項1または2に記載の接着性細胞培養用基材。
  4. 前記樹脂が、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)/1,4−ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン(TPEQ)共重合体、4,4’−(4−4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸(BPADA)/2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)共重合体、および4,4’−(4−4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸(BPADA)/1,4−ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン(TPEQ)共重合体から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着性細胞培養用基材。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の接着性細胞培養用基材を有する、細胞培養容器。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の接着性細胞培養用基材上で接着性細胞を培養する工程を含む、細胞培養方法。
  7. 前記培養する工程において、前記接着性細胞を三次元培養する、請求項6に記載の細胞培養方法。
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