以下、添付図面を参照して、X線CTシステム及び医用処理装置の実施形態について詳細に説明する。なお、本願に係るX線CTシステム及び医用処理装置は、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。
(第1の実施形態)
まず、図1を参照しながら、第1の実施形態に係るX線CTシステム10の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係るX線CTシステム10の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、X線CTシステム10は、架台装置110と、寝台装置130と、コンソール装置140とを有する。なお、X線CTシステム10は、X線CT装置又はX線CTスキャナとも呼ばれる。
図1においては、非チルト状態での回転フレーム113の回転軸又は寝台装置130の天板133の長手方向をZ軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をX軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をY軸方向とする。なお、図1は、説明のために架台装置110を複数方向から描画したものであり、X線CTシステム10が架台装置110を1つ有する場合を示す。
架台装置110は、X線管111と、X線検出器112と、回転フレーム113と、X線高電圧装置114と、制御装置115と、ウェッジ116と、コリメータ117と、DAS118とを有する。
X線管111は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管111は、X線高電圧装置114からの高電圧の印加により、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することで、被検体Pに対し照射するX線を発生する。
X線検出器112は、X線管111から照射されて被検体Pを通過したX線を検出し、検出したX線量に対応した信号をDAS118へと出力する。X線検出器112は、例えば、X線管111の焦点を中心とした1つの円弧に沿ってチャンネル方向(チャネル方向)に複数の検出素子が配列された複数の検出素子列を有する。X線検出器112は、例えば、チャネル方向に複数の検出素子が配列された検出素子列が列方向(スライス方向、row方向)に複数配列された構造を有する。
例えば、X線検出器112は、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドはコリメータ(1次元コリメータ又は2次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、フォトダイオード等の光センサを有する。なお、X線検出器112は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
回転フレーム113は、X線管111とX線検出器112とを対向支持し、制御装置115によってX線管111とX線検出器112とを回転させる円環状のフレームである。例えば、回転フレーム113は、アルミニウムを材料とした鋳物である。なお、回転フレーム113は、X線管111及びX線検出器112に加えて、X線高電圧装置114やウェッジ116、コリメータ117、DAS118等を更に支持することもできる。更に、回転フレーム113は、図1において図示しない種々の構成を更に支持することもできる。以下では、架台装置110において、回転フレーム113、及び、回転フレーム113と共に回転移動する部分を、回転部とも記載する。
X線高電圧装置114は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管111に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管111が発生するX線に応じた出力電圧の制御を行なうX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。なお、X線高電圧装置114は、回転フレーム113に設けられてもよいし、図示しない固定フレームに設けられても構わない。
制御装置115は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。制御装置115は、入力インターフェース143からの入力信号を受けて、架台装置110及び寝台装置130の動作制御を行なう。例えば、制御装置115は、回転フレーム113の回転や架台装置110のチルト、寝台装置130の動作等について制御を行なう。一例を挙げると、制御装置115は、架台装置110をチルトさせる制御として、入力された傾斜角度(チルト角度)情報により、X軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム113を回転させる。なお、制御装置115は架台装置110に設けられてもよいし、コンソール装置140に設けられてもよい。
ウェッジ116は、X線管111から照射されたX線量を調節するためのX線フィルタである。具体的には、ウェッジ116は、X線管111から被検体Pへ照射されるX線が予め定められた分布になるように、X線管111から照射されたX線を減衰させるX線フィルタである。例えば、ウェッジ116は、ウェッジフィルタ(wedge filter)やボウタイフィルタ(bow−tie filter)であり、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウム等を加工して作製される。
コリメータ117は、ウェッジ116を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。なお、コリメータ117は、X線絞りと呼ばれる場合もある。また、図1においては、X線管111とコリメータ117との間にウェッジ116が配置される場合を示すが、X線管111とウェッジ116との間にコリメータ117が配置される場合であってもよい。この場合、ウェッジ116は、X線管111から照射され、コリメータ117により照射範囲が制限されたX線を透過して減衰させる。
DAS118は、X線検出器112が有する各検出素子によって検出されるX線の信号を収集する。例えば、DAS118は、各検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行なう増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。DAS118は、例えば、プロセッサにより実現される。
DAS118が生成したデータは、回転フレーム113に設けられた発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)を有する送信機から、光通信によって、架台装置110の非回転部分(例えば、固定フレーム等。図1での図示は省略している)に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置140へと転送される。ここで、非回転部分とは、例えば、回転フレーム113を回転可能に支持する固定フレーム等である。なお、回転フレーム113から架台装置110の非回転部分へのデータの送信方法は、光通信に限らず、非接触型の如何なるデータ伝送方式を採用してもよいし、接触型のデータ伝送方式を採用しても構わない。
寝台装置130は、スキャン対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台131と、寝台駆動装置132と、天板133と、支持フレーム134とを有する。基台131は、支持フレーム134を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置132は、被検体Pが載置された天板133を、天板133の長軸方向に移動する駆動機構であり、モータ及びアクチュエータ等を含む。支持フレーム134の上面に設けられた天板133は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置132は、天板133に加え、支持フレーム134を天板133の長軸方向に移動してもよい。
コンソール装置140は、メモリ141と、ディスプレイ142と、入力インターフェース143と、処理回路144とを有する。なお、コンソール装置140は架台装置110とは別体として説明するが、架台装置110にコンソール装置140又はコンソール装置140の各構成要素の一部が含まれてもよい。
メモリ141は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ141は、被検体Pに対するスキャンを実行することで収集される各種のデータを記憶する。また、例えば、メモリ141は、X線CTシステム10に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。なお、メモリ141は、X線CTシステム10とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
ディスプレイ142は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ142は、処理回路144による物質弁別の結果を示す画像を表示したり、ユーザからの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を表示したりする。例えば、ディスプレイ142は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ142は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置140本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
入力インターフェース143は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路144に出力する。例えば、入力インターフェース143は、再構成画像を再構成する際の再構成条件や、再構成画像から表示用のCT画像を生成する際の画像処理条件等をユーザから受け付ける。例えば、入力インターフェース143は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行なうタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インターフェース143は、架台装置110に設けられてもよい。また、入力インターフェース143は、コンソール装置140本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インターフェース143は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、コンソール装置140とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路144へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース143の例に含まれる。
処理回路144は、スキャン機能144a、処理機能144b、及び制御機能144cを実行することで、X線CTシステム10全体の動作を制御する。なお、スキャン機能144aは、スキャン部の一例である。また、処理機能144bは、処理部の一例である。
例えば、処理回路144は、スキャン機能144aに相当するプログラムをメモリ141から読み出して実行することにより、被検体Pに対するスキャンを実行する。例えば、スキャン機能144aは、X線高電圧装置114を制御することにより、X線管111に高電圧を供給する。これにより、X線管111は、被検体Pに対し照射するX線を発生する。また、スキャン機能144aは、寝台駆動装置132を制御することにより、被検体Pを架台装置110の撮影口内へ移動させる。また、スキャン機能144aは、ウェッジ116の位置、及び、コリメータ117の開口度及び位置を調整することで、被検体Pに照射されるX線の分布を制御する。また、スキャン機能144aは、制御装置115を制御することにより回転部を回転させる。また、スキャン機能144aによってスキャンが実行される間、DAS118は、X線検出器112における各検出素子からX線の信号を収集し、検出データを生成する。また、スキャン機能144aは、DAS118から出力された検出データに対して、前処理を施す。例えば、スキャン機能144aは、DAS118から出力された検出データに対して、対数変換処理やオフセット補正処理、チャンネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施す。なお、前処理を施した後のデータについては生データとも記載する。また、前処理を施す前の検出データ及び前処理を施した後の生データを総称して、投影データとも記載する。
また、処理回路144は、処理機能144bに相当するプログラムをメモリ141から読み出して実行することにより、前処理後の投影データに基づいて画像データを生成する。例えば、処理機能144bは、投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行なってCT画像データを生成する。また、処理機能144bは、投影データに基づいて、複数の基準物質による物質弁別を行なう。なお、処理機能144bは、再構成処理を施す前の段階(投影データの段階)で物質弁別を行なってもよいし、再構成処理を施した後の段階(再構成画像の段階)で物質弁別を行なってもよい。処理機能144bによる弁別処理については後述する。
また、処理回路144は、制御機能144cに対応するプログラムをメモリ141から読み出して実行することにより、ディスプレイ142における表示の制御を行なう。例えば、制御機能144cは、入力インターフェース143を介してユーザから受け付けた入力操作等に基づいて、処理機能144bにより生成された再構成画像を、公知の方法により表示用のCT画像(任意断面の断層像データや3次元画像データ等)に変換する。そして、制御機能144cは、変換した表示用のCT画像をディスプレイ142に表示させる。また、例えば、制御機能144cは、処理機能144bによる物質弁別の結果を示す画像をディスプレイ142に表示させる。また、制御機能144cは、ネットワークを介して各種のデータを送信する。一例を挙げると、制御機能144cは、処理機能144bにより生成された再構成画像や物質弁別の結果を示す画像を、図示しない画像保管装置に送信して保管させる。
図1に示すX線CTシステム10においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ141へ記憶されている。処理回路144は、メモリ141からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、プログラムを読み出した状態の処理回路144は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
なお、図1においては単一の処理回路144にて、スキャン機能144a、処理機能144b、及び制御機能144cが実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路144を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路144が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
また、処理回路144は、ネットワークを介して接続された外部装置のプロセッサを利用して、機能を実現することとしてもよい。例えば、処理回路144は、メモリ141から各機能に対応するプログラムを読み出して実行するとともに、X線CTシステム10とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)を計算資源として利用することにより、図1に示す各機能を実現する。
以上、X線CTシステム10の構成例について説明した。以下、X線CTシステム10が行なう処理について詳細に説明する。
まず、物質弁別の一例について、図2A及び図2Bを用いて説明する。図2A及び図2Bは、第1の実施形態に係るスキャン及び物質弁別について説明するための図である。なお、図2A及び図2Bでは一例として、kVスイッチング方式のスキャンA11を実行し、3種類の基準物質による物質弁別を行なう場合について説明する。具体的には、スキャン機能144aは、図2Aに示す6つのビュー(ビューV11、ビューV12、ビューV13、ビューV14、ビューV15、ビューV16)において、ビューごとにX線のエネルギーを変化させることで、kVスイッチング方式のスキャンA11を実行する。
より具体的には、スキャン機能144aは、X線高電圧装置114を制御することにより、ビューV11において、エネルギーE11のX線をX線管111から発生させる。これにより、スキャン機能144aは、ビューV11において、エネルギーE11に対応する投影データを収集する。
同様に、スキャン機能144aは、ビューV12においてエネルギーE12のX線を発生させ、ビューV13においてエネルギーE13のX線を発生させ、ビューV14においてエネルギーE11のX線を発生させ、ビューV15においてエネルギーE12のX線を発生させ、ビューV16においてエネルギーE13のX線を発生させる。これにより、スキャン機能144aは、ビューV12においてエネルギーE12に対応する投影データを収集し、ビューV13においてエネルギーE13に対応する投影データを収集し、ビューV14においてエネルギーE11に対応する投影データを収集し、ビューV15においてエネルギーE12に対応する投影データを収集し、ビューV16においてエネルギーE13に対応する投影データを収集する。
次に、スキャン機能144aは、図2Bに示すように、ビューごとに収集した複数の投影データを、X線のエネルギーごとに分離する。具体的には、スキャン機能144aは、投影データを、エネルギーE11に対応する投影データ(ビューV11及びビューV14の投影データ)と、エネルギーE12に対応する投影データ(ビューV12及びビューV15の投影データ)と、エネルギーE13に対応する投影データ(ビューV13及びビューV16の投影データ)とに分離する。
なお、以下では、複数の投影データをまとめて、投影データセットとも記載する。即ち、スキャン機能144aは、ビューごとに収集した複数の投影データを、エネルギーE11に対応する投影データセットと、エネルギーE12に対応する投影データセットと、エネルギーE13に対応する投影データセットとに分離する。
次に、処理機能144bは、図2Bに示す3つの投影データセットのそれぞれについて、欠損部分のデータを補間する。例えば、エネルギーE11のX線が照射されたのはビューV11及びビューV14であるため、エネルギーE11に対応する投影データセットについては、ビューV12、ビューV13、ビューV15及びビューV16のデータが欠損している。そこで、処理機能144bは、エネルギーE11に対応する投影データセットについて、欠損部分であるビューV12、ビューV13、ビューV15及びビューV16のデータを補間する。なお、処理機能144bによる補間処理の例としては、線形補間、ラグランジェ補間、シグモイドなどが挙げられる。また、欠損部分のデータを補間した後、処理機能144bは、エネルギーE11に対応する投影データセットから再構成画像I11を再構成する。
同様に、処理機能144bは、エネルギーE12に対応する投影データセットについて欠損部分のデータを補間し、再構成画像I12を再構成する。また、処理機能144bは、エネルギーE13に対応する投影データセットについて欠損部分のデータを補間し、再構成画像I13を再構成する。
次に、処理機能144bは、再構成画像I11、再構成画像I12及び再構成画像I13について3種類の基準物質による物質弁別を行なう。なお、基準物質の例としては、水、ヨード、カルシウム、ハイドロキシアパタイト、脂肪、ガドリニウム等が挙げられる。具体的には、処理機能144bは、3つの再構成画像それぞれについて、線減弱係数の分布を求め、線減弱係数の分布の各画素について3つの基準物質の混合量や混合割合を算出する。より具体的には、処理機能144bは、再構成画像I11、再構成画像I12及び再構成画像I13における画素ごとに、以下の式(1)に示す連立方程式を解くことで、物質弁別を行なう。
ここで、「μ(E1)」は単色X線エネルギー「E1」における各画素の線減弱係数を示し、「μ(E2)」は単色X線エネルギー「E2」における各画素の線減弱係数を示し、「μ(E3)」は単色X線エネルギー「E3」における各画素の線減弱係数を示す。また、「μα(E)」は基準物質αの線減弱係数を示し、「μβ(E)」は基準物質βの線減弱係数を示し、「μγ(E)」は基準物質γの線減弱係数を示す。また、「cα」は基準物質αの混合量を示し、「cβ」は基準物質βの混合量を示し、「cγ」は基準物質γの混合量を示す。なお、各基準物質のエネルギーごとの線減弱係数は既知である。例えば、処理機能144bは、「E1」にエネルギーE11を代入し、「E2」にエネルギーE12を代入し、「E3」にエネルギーE13を代入して式(1)の連立方程式を解くことで、3種類の基準物質「α、β、γ」による物質弁別を行なう。
そして、処理機能144bは、物質弁別の結果を示す画像を生成する。例えば、処理機能144bは、基準物質ごとに、物質弁別画像を生成する。一例を挙げると、処理機能144bは、図2Bに示すように、基準物質αを強調した物質弁別画像と、基準物質βを強調した物質弁別画像と、基準物質γを強調した物質弁別画像とをそれぞれ生成する。また、制御機能144cは、生成された物質弁別画像をディスプレイ142に表示させる。
上述したように、3種類のX線エネルギーでkVスイッチング方式のスキャンA11を実行することで、原理上、3種類の基準物質による物質弁別を行なうことが可能である。しかしながら、図2Bに示したように、3種類のエネルギーの間で切り替えを行なったことによって、エネルギーごとの投影データ量(ビュー数)は少なくなっている。即ち、実際に収集されているエネルギーごとのデータ量が少ないため、物質弁別の精度低下が懸念される。更に、3種類のX線エネルギーを用いてスキャンA11を実行するためには高頻度でX線のエネルギーを変化させる必要が生じ、X線管111から照射するX線のエネルギーが不安定となる可能性もある。そこで、X線CTシステム10は、以下で詳細に説明する処理回路144の処理によって、3種類以上の基準物質による物質弁別の実現性を向上させる。
具体的には、まず、スキャン機能144aは、図3に示すように、エネルギーE21のX線によるスキャンA21を実行する。即ち、スキャン機能144aは、ビューごとにX線のエネルギーを変化させることなくスキャンA21を実行して、エネルギーE21に対応する投影データセットを収集する。なお、図3は、第1の実施形態に係るスキャン及び物質弁別について説明するための図である。また、スキャンA21は、第1スキャンの一例である。また、エネルギーE21は、第1のX線エネルギーの一例である。また、エネルギーE21に対応する投影データセットは、第1投影データセットの一例である。
なお、処理機能144bは、スキャンA21により収集された投影データセットについて、品質改善のための処理を施すこととしてもよい。例えば、処理機能144bは、機械学習の手法により、スキャンA21により収集された投影データセットに対するデノイズ処理を実行する。
例えば、処理機能144bは、投影データセットからノイズを除去するように機能付けられた学習済みモデルM1を事前に生成して、メモリ141に記憶させる。例えば、処理機能144bは、同一の被検体又はファントムについて収集された、低品質の投影データセット及び高品質の投影データセットの組み合わせを学習データとして用いて、学習済みモデルM1を生成する。即ち、処理機能144bは、低品質の投影データセットを入力側データ、高品質の投影データセットを出力側データとする機械学習を実行することにより、学習済みモデルM1を生成する。なお、例えば、低品質の投影データセットは低線量のX線を用いて収集された投影データセットであり、高品質の投影データセットは高線量のX線を用いて収集された投影データセットである。
ここで、学習済みモデルM1は、例えば、ニューラルネットワーク(Neural Network)により構成することができる。ニューラルネットワークとは、層状に並べた隣接層間が結合した構造を有し、情報が入力層側から出力層側に伝播するネットワークである。例えば、処理機能144bは、上述した学習データを用いて多層のニューラルネットワークについて深層学習(ディープラーニング)を実行することで、学習済みモデルM1を生成する。なお、多層のニューラルネットワークは、例えば、入力層と、複数の中間層(隠れ層)と、出力層とにより構成される。
一例を挙げると、処理機能144bは、低品質の投影データセットを入力側データとしてニューラルネットワークに入力する。ここで、ニューラルネットワークにおいては、入力層側から出力層側に向かって一方向に隣接層間でのみ結合しながら情報が伝播し、出力層からは、デノイズ後の投影データセットを推定した投影データセットが出力される。
処理機能144bは、入力側データを入力した際にニューラルネットワークが好ましい結果を出力することができるよう、ニューラルネットワークのパラメータを調整する。例えば、処理機能144bは、投影データセット間の近さを表す関数(誤差関数)を用いて、ニューラルネットワークのパラメータを調整する。一例を挙げると、処理機能144bは、出力側データとして入力した高品質の投影データセットと、ニューラルネットワークが推定した投影データセットとの間の誤差関数を算出し、算出した誤差関数が極小となるようにパラメータを調整する。即ち、処理機能144bは、誤差関数が極小となるようにニューラルネットワークを学習させることで、学習済みモデルM1を生成する。また、処理機能144bは、生成した学習済みモデルM1を、メモリ141に記憶させる。
そして、スキャンA21が実行された際、処理機能144bは、メモリ141から学習済みモデルM1を読み出し、読み出した学習済みモデルM1を用いてデノイズを実行する。即ち、処理機能144bは、スキャンA21により収集された投影データセットを学習済みモデルM1に入力することにより、デノイズされた投影データセットを取得する。
なお、学習済みモデルM1がニューラルネットワークにより構成されるものとして説明したが、処理機能144bは、ニューラルネットワーク以外の機械学習手法により、学習済みモデルM1を生成してもよい。また、処理機能144bが学習済みモデルM1を生成するものとして説明したが、学習済みモデルM1は、他の装置において生成されるものであっても構わない。
次に、処理機能144bは、スキャンA21により収集された投影データセットから、再構成画像I21を再構成する。なお、処理機能144bは、投影データセットの場合と同様、再構成画像について品質改善のための処理を施すこととしてもよい。次に、再構成画像I21に基づいて、後述するスキャンA22のスキャン範囲が設定される。
一例を挙げると、制御機能144cは、再構成画像I21に対するレンダリング処理を行って、参照画像を生成する。ここで、レンダリング処理の例としては、断面再構成法(MPR:Multi Planar Reconstruction)により、再構成画像I21から、任意断面の2次元画像を生成する処理が挙げられる。また、レンダリング処理の他の例としては、ボリュームレンダリング(Volume Rendering)処理や、最大値投影法(MIP:Maximum Intensity Projection)により、再構成画像I21から、3次元の情報を反映した2次元画像を生成する処理が挙げられる。次に、制御機能144cは、生成した参照画像をディスプレイ142に表示させる。そして、制御機能144cは、参照画像を参照したユーザからの入力操作を受け付けることで、スキャンA22のスキャン範囲を設定する。
即ち、スキャンA21は、スキャンA22のスキャン範囲を設定するための位置決め撮影である。従って、スキャンA21は、診断対象の臓器等を含むように、比較的広域に対して行なわれることが好ましい。
次に、スキャン機能144aは、参照画像に設定されたスキャン範囲に対して、スキャンA22を実行する。例えば、スキャン機能144aは、ビューごとに、エネルギーE22とエネルギーE23との間でX線のエネルギーを変化させることでスキャンA22を実行する。スキャンA22により、スキャン機能144aは、エネルギーE22に対応する投影データセット、及び、エネルギーE23に対応する投影データセットを実質的に同時に収集する。
なお、スキャンA22は、第2スキャンの一例である。また、エネルギーE22は、第2のX線エネルギーの一例である。また、エネルギーE23は、第3のX線エネルギーの一例である。エネルギーE21、エネルギーE22及びエネルギーE23は、互いに異なるエネルギーである。例えば、エネルギーE21は、エネルギーE22及びエネルギーE23の両方より大きい。また、例えば、エネルギーE21は、エネルギーE22及びエネルギーE23の両方より小さい。また、例えば、エネルギーE21は、エネルギーE22及びエネルギーE23の間のエネルギーである。また、エネルギーE22に対応する投影データセットは、第2投影データセットの一例である。また、エネルギーE23に対応する投影データセットは、第3投影データセットの一例である。
また、スキャン機能144aは、被検体Pの心拍又は呼吸の周期に応じて、スキャンA21とスキャンA22とを同期させて実行することとしてもよい。即ち、スキャン機能144aは、心拍又は呼吸による周期的な動きによってスキャンA21とスキャンA22との間の位置ずれが生じないように、スキャンA21とスキャンA22とを同期させて実行することとしてもよい。
例えば、スキャン機能144aは、スキャンA21及びスキャンA22と並行して、被検体Pの心電波形を取得する。例えば、スキャン機能144aは、被検体Pに装着した心電計により被検体Pの心電波形を取得する。そして、スキャン機能144aは、スキャンA21における心電波形に対して、スキャンA22における心電波形の位相が一致するように、スキャンA22を実行する。
また、例えば、スキャン機能144aは、スキャンA21及びスキャンA22と並行して、被検体Pの呼吸波形を取得する。例えば、スキャン機能144aは、呼吸センサにより被検体Pの呼吸波形を取得する。一例を挙げると、スキャン機能144aは、呼吸センサとして、レーザ発生器と受光器を用いて呼吸波形を取得する。具体的には、スキャン機能144aは、被検体Pの腹部表面からの反射光の信号を処理し、レーザ照射から反射光受光までの時間又は反射光信号の位相変化に基づいて、レーザ発生器と被検体の腹部表面との間の距離をリアルタイムに繰り返し演算することで、呼吸波形を取得する。なお、呼吸センサの例はこれに限定されるものではなく、スキャン機能144aは、例えば、被検体Pの腹部に装着された圧力センサや、被検体Pを撮影する光学カメラ等により、呼吸波形を取得することとしても構わない。そして、スキャン機能144aは、スキャンA21における呼吸波形に対して、スキャンA22における呼吸波形の位相が一致するように、スキャンA22を実行する。
また、処理機能144bは、スキャンA21により収集されたデータと、スキャンA22により収集されたデータとの位置合わせを行なうこととしてもよい。即ち、処理機能144bは、エネルギーE21に対応する投影データセットと、エネルギーE22に対応する投影データセット及びエネルギーE23に対応する投影データセットとを位置合わせする。これにより、処理機能144bは、スキャンA21とスキャンA22との間に生じる被検体Pの体動等の影響を低減することができる。
次に、スキャン機能144aは、図3に示すように、エネルギーE22に対応する投影データセットとエネルギーE23に対応する投影データセットとを分離する。次に、処理機能144bは、分離後の投影データセットのそれぞれについて欠損部分のデータを補間し、補間後の投影データセットについて再構成処理を行なう。例えば、処理機能144bは、エネルギーE22に対応する投影データセットから再構成画像I22を再構成する。また、処理機能144bは、エネルギーE23に対応する投影データセットから再構成画像I23を再構成する。
なお、処理機能144bは、スキャンA22により収集された投影データセットについて、品質改善のための処理を施すこととしてもよい。例えば、処理機能144bは、機械学習の手法により、スキャンA22により収集された投影データセットに対するデノイズ処理を実行する。
一例を挙げると、スキャンA22が実行された際、処理機能144bは、メモリ141から学習済みモデルM1を読み出し、学習済みモデルM1に対して、エネルギーE22に対応する投影データセットを入力する。ここで、処理機能144bは、欠損部分のデータを補間する前の投影データセットを入力してもよいし、欠損部分のデータを補間した後の投影データセットを入力してもよい。これにより、処理機能144bは、エネルギーE22に対応する投影データセットについてデノイズを実行する。同様に、処理機能144bは、エネルギーE23に対応する投影データセットについてデノイズを実行する。そして、処理機能144bは、エネルギーE22に対応するデノイズ後の投影データセットから、再構成画像I22を再構成する。また、処理機能144bは、エネルギーE23に対応するデノイズ後の投影データセットから、再構成画像I23を再構成する。
次に、処理機能144bは、再構成画像I21、再構成画像I22及び再構成画像I23について3種類の基準物質による物質弁別を行なう。例えば、処理機能144bは、上記した式(1)の「E1」にエネルギーE21を代入し、「E2」にエネルギーE22を代入し、「E3」にエネルギーE23を代入して連立方程式を解くことで、3種類の基準物質「α、β、γ」による物質弁別を行なう。
そして、処理機能144bは、物質弁別の結果を示す画像を生成する。例えば、処理機能144bは、基準物質ごとに、物質弁別画像を生成する。一例を挙げると、処理機能144bは、図3に示すように、基準物質αを強調した物質弁別画像と、基準物質βを強調した物質弁別画像と、基準物質γを強調した物質弁別画像とをそれぞれ生成する。また、制御機能144cは、生成された物質弁別画像をディスプレイ142に表示させる。
即ち、X線CTシステム10は、単一のX線エネルギーを用いたスキャンA21と、kVスイッチング方式のスキャンA22とを実行することで、3種類の基準物質による物質弁別を行なうことができる。ここで、スキャンA22は、2種類のエネルギーの間でX線のエネルギーを変化させるものであり、図2Bに示した場合と比較して、エネルギーごとの投影データ量(ビュー数)は多くなっている。また、スキャンA22は、2種類のエネルギーの間でX線のエネルギーを変化させるものであり、図2Bに示した場合と比較して、X線のエネルギーを変化させる頻度を低減することが可能である。即ち、スキャンA22においては、図2Bに示した場合と比較して、X線管111から照射するX線のエネルギーを安定化させることができる。
従って、X線CTシステム10は、スキャンA21とスキャンA22とを実行することで、物質弁別の精度を向上させることができる。また、位置決め撮影であるスキャンA21は、画像収集のための処理フローにおいて一般的に行なわれるものであり、処理フローが複雑化することもない。以上より、X線CTシステム10は、3種類の基準物質による物質弁別の実現性を向上させることができる。
また、X線CTシステム10は、スキャンA21の結果を、スキャンA22の位置決めに使用するとともに、物質弁別の処理にも使用する。即ち、X線CTシステム10は、スキャンA21による被検体Pの被ばくをより有意義なものとすることができる。
次に、X線CTシステム10による処理の手順の一例を、図4を用いて説明する。図4は、第1の実施形態に係るX線CTシステム10の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。
ステップS101及びステップS106は、スキャン機能144aに対応する。ステップS102、ステップS103、ステップS107、ステップS108及びステップS109は、処理機能144bに対応する。ステップS104、ステップS105及びステップS110は、制御機能144cに対応する。
まず、処理回路144は、被検体Pに対してスキャンA21を実行し、エネルギーE21に対応する投影データセットを収集する(ステップS101)。次に、処理回路144は、エネルギーE21に対応する投影データセットに対して再構成処理を実行し、再構成画像I21を生成する(ステップS102)。次に、処理回路144は、再構成画像I21に対するレンダリング処理を行なうことで参照画像を生成し(ステップS103)、生成した参照画像をディスプレイ142に表示させる(ステップS104)。
ここで、処理回路144は、参照画像を参照したユーザによりスキャン範囲が設定されたか否かを判定し(ステップS105)、スキャン範囲が設定されていない場合には待機状態となる(ステップS105否定)。一方で、スキャン範囲が設定された場合(ステップS105肯定)、処理回路144は、参照画像に設定されたスキャン範囲に対してスキャンA22を実行し、エネルギーE22に対応する投影データセット及びエネルギーE23に対応する投影データセットを実質的に同時に収集する(ステップS106)。次に、処理回路144は、エネルギーE22に対応する投影データセット及びエネルギーE23に対応する投影データセットに対して再構成処理を実行し、再構成画像I22及び再構成画像I23を生成する(ステップS107)。
次に、処理回路144は、ステップS102において生成された再構成画像I21と、ステップS107において生成された再構成画像I22及び再構成画像I23とに基づいて、3種類の基準物質による物質弁別を行なう(ステップS108)。例えば、処理回路144は、上記した式(1)を解くことで、3種類の基準物質「α、β、γ」による物質弁別を行なう。また、処理回路144は、物質弁別の結果を示す画像として、物質弁別画像を生成する(ステップS109)。そして、処理回路144は、生成した物質弁別画像をディスプレイ142に表示させ(ステップS110)、処理を終了する。
なお、図3においては1つのビューごとにX線のエネルギーを変化させるものとして説明したが、スキャン機能144aは、複数のビューごとにX線のエネルギーを変化させることとしても構わない。
また、物質弁別の結果を示す画像として、基準物質ごとに生成された物質弁別画像について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、処理機能144bは、複数の物質弁別画像を用いて、各基準物質の混合割合に基づく重み付け計算処理を行なうことにより、所定のエネルギーにおける仮想単色X線画像や密度画像、実効原子番号画像等、種々の画像を生成することができる。
また、これまで、スキャンA21をスキャンA22の前に実行するものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。即ち、スキャン機能144aは、スキャンA22をスキャンA21の前に実行することとしても構わない。
例えば、スキャン機能144aは、まず、エネルギーE22に対応する投影データセット及びエネルギーE23に対応する投影データセットを実質的に同時に収集するスキャンA22を実行する。この場合、スキャンA22は、後に実行されるスキャンA21のスキャン範囲を設定するための位置決め撮影である。従って、スキャンA22は、診断対象の臓器等を含むように、比較的広域に対して行なわれることが好ましい。
次に、処理機能144bは、エネルギーE22に対応する投影データセット及びエネルギーE23に対応する投影データセットに対して再構成処理を実行し、再構成画像I22及び再構成画像I23を生成する。また、処理機能144bは、再構成画像I22及び再構成画像I23の少なくとも一方に基づいて参照画像を生成する。また、制御機能144cは、生成した参照画像をディスプレイ142に表示させる。また、制御機能144cは、ユーザから、参照画像に対するスキャン範囲の設定を受け付ける。そして、処理機能144bは、参照画像に設定されたスキャン範囲に対して、エネルギーE21に対応する投影データセットを収集するスキャンA21を実行する。
また、再構成処理を施す前の段階で、スキャンA21により収集されたデータとスキャンA22により収集されたデータとの位置合わせを行なうものとして説明したが、処理機能144bは、再構成処理を施した後の段階で位置合わせを行なってもよい。即ち、処理機能144bは、再構成画像I21と、再構成画像I22及び再構成画像I23とを位置合わせする場合であっても構わない。
上述したように、第1の実施形態によれば、スキャン機能144aは、第1のX線エネルギーに対応する第1投影データセットを収集する第1スキャンを実行する。また、スキャン機能144aは、第1のX線エネルギーとは異なる第2のX線エネルギーに対応する第2投影データセットと、第1のX線エネルギー及び第2のX線エネルギーとは異なる第3のX線エネルギーに対応する第3投影データセットと、を実質的に同時に収集する第2スキャンを実行する。また、処理機能144bは、第1投影データセット、第2投影データセット及び第3投影データセットに基づいて、3種類の基準物質による物質弁別を行なう。従って、第1の実施形態に係るX線CTシステム10は、3種類の基準物質による物質弁別の実現性を向上させることができる。
また、スキャン機能144aは、1又は複数のビューごとに、第2のX線エネルギーと第3のX線エネルギーとの間でX線のエネルギーを変化させることで、第2スキャンを実行する。即ち、スキャン機能144aは、第2スキャンとして、kVスイッチング方式のデュアルエナジー収集を行なう。従って、X線CTシステム10において特別なハードウェア構成は必要ではなく、高い実現性で物質弁別のためのスキャンを実行することができる。
また、スキャン機能144aは、第1のX線エネルギーを、第2のX線エネルギー及び第3のX線エネルギーの両方より大きくし、又は第2のX線エネルギー及び第3のX線エネルギーの両方より小さくして、第2スキャンを実行する。これにより、スキャン機能144aは、第2のX線エネルギーと第3のX線エネルギーとの間のエネルギー差を小さくして、第2スキャンにおいてX線のエネルギーを切り替える際、出力を安定させることができる。
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、第2スキャンとして、kVスイッチング方式のデュアルエナジー収集を行なう場合について説明した。これに対し、第2の実施形態では、第2スキャンとして、積層型検出器方式(デュアルレイヤー方式とも記載する)のデュアルエナジー収集を行なう場合について説明する。
第2の実施形態に係るX線CTシステム10は、図1に示した第1の実施形態に係るX線CTシステム10と同様の構成を有する。但し、第2の実施形態に係るX線CTシステム10は、X線検出器112として、積層型検出器を備える。例えば、X線検出器112は、第1の層112aと、第2の層112bとから構成され、X線管111から照射されたX線を分光して検出する。以下、第1の実施形態において説明した点については図1と同一の符号を付し、説明を省略する。
例えば、スキャン機能144aは、まず、エネルギーE31のX線によるスキャンA31を実行する。具体的には、スキャン機能144aは、X線高電圧装置114を制御することによりX線管111からエネルギーE31のX線を発生させつつ、回転部を回転させて、スキャンA31を実行する。
ここで、X線検出器112は、図5のスキャンA31に示すように、第1の層112aにおいてエネルギーE32のX線を検出し、第2の層112bにおいてエネルギーE33のX線を検出する。即ち、X線検出器112は、X線管111から照射されたエネルギーE31のX線を、エネルギーE32のX線とエネルギーE33のX線とに分光して検出する。なお、図5は、第2の実施形態に係るデュアルレイヤー方式のスキャンについて説明するための図である。
また、スキャン機能144aは、第1の層112aにおいて検出されたX線に基づく投影データセットと、第2の層112bにおいて検出されたX線に基づく投影データセットとを合成する。即ち、スキャン機能144aは、エネルギーE32に対応する投影データセットと、エネルギーE33に対応する投影データセットとを合成することにより、エネルギーE31に対応する投影データセットを生成する。なお、スキャンA31は、第1スキャンの一例である。また、エネルギーE31は、第1のX線エネルギーの一例である。また、エネルギーE31に対応する投影データセットは、第1投影データセットの一例である。
次に、処理機能144bは、エネルギーE31に対応する投影データセットから、再構成画像I31を再構成する。次に、制御機能144cは、再構成画像I31に対するレンダリング処理を行って参照画像を生成し、生成した参照画像をディスプレイ142に表示させる。そして、制御機能144cは、参照画像を参照したユーザからの入力操作を受け付けることで、後述するスキャンA32のスキャン範囲を設定する。
なお、再構成画像I31に基づいて参照画像を生成するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、処理機能144bは、エネルギーE32に対応する投影データセットに基づいて再構成画像I32を生成し、制御機能144cは、再構成画像I32に基づいて参照画像を生成してもよい。また、例えば、処理機能144bは、エネルギーE33に対応する投影データセットに基づいて再構成画像I33を生成し、制御機能144cは、再構成画像I33に基づいて参照画像を生成してもよい。即ち、制御機能144cは、第1の層112a及び第2の層112bの少なくとも一方での検出結果に基づいて、参照画像を生成する。
次に、スキャン機能144aは、参照画像に設定されたスキャン範囲に対して、スキャンA32を実行する。具体的には、スキャン機能144aは、X線高電圧装置114を制御することによりX線管111からエネルギーE34のX線を発生させつつ、回転部を回転させて、スキャンA32を実行する。
ここで、X線検出器112は、図5のスキャンA32に示すように、第1の層112aにおいてエネルギーE35のX線を検出し、第2の層112bにおいてエネルギーE36のX線を検出する。即ち、X線検出器112は、X線管111から照射されたエネルギーE34のX線を、エネルギーE35のX線とエネルギーE36のX線とに分光して検出する。
なお、スキャンA32は、第2スキャンの一例である。また、エネルギーE35は、第2のX線エネルギーの一例である。また、エネルギーE36は、第3のX線エネルギーの一例である。なお、図5に示す場合、第1のX線エネルギーであるエネルギーE31は、第2及び第3のX線エネルギーであるエネルギーE35及びエネルギーE36の両方より小さい。また、エネルギーE35に対応する投影データセットは、第2投影データセットの一例である。また、エネルギーE36に対応する投影データセットは、第3投影データセットの一例である。即ち、スキャン機能144aは、第2のX線エネルギーであるエネルギーE35に対応する投影データセット、及び、第3のX線エネルギーであるエネルギーE36に対応する投影データセットを実質的に同時に収集する。
次に、処理機能144bは、エネルギーE35に対応する投影データセットから再構成画像I35を再構成する。また、処理機能144bは、エネルギーE36に対応する投影データセットから再構成画像I36を再構成する。
なお、スキャン機能144aは、被検体Pの心拍又は呼吸の周期に応じて、スキャンA31とスキャンA32とを同期させて実行することとしてもよい。また、処理機能144bは、スキャンA31により収集されたデータと、スキャンA32により収集されたデータとの位置合わせを行なうこととしてもよい。ここで、処理機能144bは、投影データセットの段階で位置合わせを行なってもよいし、再構成画像の段階で位置合わせを行なってもよい。
次に、処理機能144bは、再構成画像I31、再構成画像I35及び再構成画像I36について3種類の基準物質による物質弁別を行なう。例えば、処理機能144bは、上記した式(1)の「E1」にエネルギーE31を代入し、「E2」にエネルギーE35を代入し、「E3」にエネルギーE36を代入して連立方程式を解くことで、3種類の基準物質「α、β、γ」による物質弁別を行なう。
そして、処理機能144bは、物質弁別の結果を示す画像を生成する。例えば、処理機能144bは、基準物質ごとに、物質弁別画像を生成する。例えば、処理機能144bは、基準物質αを強調した物質弁別画像と、基準物質βを強調した物質弁別画像と、基準物質γを強調した物質弁別画像とをそれぞれ生成する。また、処理機能144bは、複数の物質弁別画像を用いて、各基準物質の混合割合に基づく重み付け計算処理を行なうことにより、所定のエネルギーにおける仮想単色X線画像や密度画像、実効原子番号画像等、種々の画像を生成することもできる。また、制御機能144cは、物質弁別の結果を示す画像を、ディスプレイ142に表示させる。
上述したように、第2の実施形態によれば、スキャン機能144aは、第1のX線エネルギーに対応する第1投影データセットを収集する第1スキャンを実行する。また、スキャン機能144aは、積層型のX線検出器112を用いて第2スキャンを実行し、第2のX線エネルギーに対応する第2投影データセットと第3のX線エネルギーに対応する第3投影データセットとを実質的に同時に収集する。また、処理機能144bは、第1投影データセット、第2投影データセット及び第3投影データセットに基づいて、3種類の基準物質による物質弁別を行なう。従って、第2の実施形態に係るX線CTシステム10は、3種類の基準物質による物質弁別の実現性を向上させることができる。
なお、3種類の基準物質による物質弁別を行なう他の手法としては、例えば、3層以上の積層型検出器を使用することが考えられる。しかしながら、このような特別なハードウェアを用いることは、コスト等の面で実現性が低い。これに対し、X線CTシステム10は、一般に使用されている2層の積層型検出器により、3種類の基準物質による物質弁別を実現することができる。
また、図5に示すエネルギーE31を第1のX線エネルギーの例として説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、処理機能144bは、図5に示すエネルギーE32を第1のX線エネルギーとして、3種類の基準物質による物質弁別を行なうこともできる。一例を挙げると、処理機能144bは、エネルギーE32に対応する投影データセットに基づいて再構成画像I32を生成する。そして、処理機能144bは、再構成画像I32、再構成画像I35及び再構成画像I36について3種類の基準物質による物質弁別を行なう。例えば、処理機能144bは、上記した式(1)の「E1」にエネルギーE32を代入し、「E2」にエネルギーE35を代入し、「E3」にエネルギーE36を代入して連立方程式を解くことで、3種類の基準物質「α、β、γ」による物質弁別を行なう。同様に、処理機能144bは、図5に示すエネルギーE33を第1のX線エネルギーとして、3種類の基準物質による物質弁別を行なうこともできる。
また、図5に示すエネルギーE35及びエネルギーE36を第2及び第3のX線エネルギーの例として説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、処理機能144bは、エネルギーE35及びエネルギーE34を第2及び第3のX線エネルギーとして、3種類の基準物質による物質弁別を行なうこともできる。また例えば、処理機能144bは、エネルギーE34及びエネルギーE36を第2及び第3のX線エネルギーとして、3種類の基準物質による物質弁別を行なうこともできる。
また、3種類の基準物質による物質弁別を行なう場合について説明したが、処理機能144bは、4種類以上の基準物質による物質弁別を行なうこともできる。例えば、処理機能144bは、エネルギーE32に対応する投影データセット、エネルギーE33に対応する投影データセット、エネルギーE35に対応する投影データセット、エネルギーE36に対応する投影データセットに基づいて、4種類の基準物質による物質弁別を行なうことができる。なお、この場合、エネルギーE32は第1のX線エネルギーの一例であり、エネルギーE35は第2のX線エネルギーの一例であり、エネルギーE36は第3のX線エネルギーの一例であり、エネルギーE33は第4のX線エネルギーの一例である。また、エネルギーE32に対応する投影データセットは第1投影データセットの一例であり、エネルギーE35に対応する投影データセットは第2投影データセットの一例であり、エネルギーE36に対応する投影データセットは第3投影データセットの一例であり、エネルギーE33に対応する投影データセットは第4投影データセットの一例である。
同様に、処理機能144bは、図5に示す6つのエネルギーのうちの5つのエネルギーに対応する5つの投影データセットに基づいて、5種類の基準物質による物質弁別を行なうことができる。同様に、処理機能144bは、図5に示す6つのエネルギーに対応する6つの投影データセットに基づいて、6種類の基準物質による物質弁別を行なうことができる。
なお、図5においては、スキャンA31においてX線管111から照射されるX線のエネルギーであるエネルギーE31が、スキャンA32においてX線管111から照射されるX線のエネルギーであるエネルギーE34より小さいものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、エネルギーE31がエネルギーE34より大きい場合であってもよい。
また、エネルギーE31とエネルギーE34とは同じ大きさであってもよい。この場合、エネルギーE32とエネルギーE35とは略同じ大きさとなり、エネルギーE33とエネルギーE36とは略同じ大きさとなる。そこで、処理機能144bは、エネルギーE31に対応する投影データセット及びエネルギーE34に対応する投影データセットの少なくとも一方と、エネルギーE32に対応する投影データセット及びエネルギーE35に対応する投影データセットの少なくとも一方と、エネルギーE33に対応する投影データセット及びエネルギーE36に対応する投影データセットの少なくとも一方とに基づいて、3種類の基準物質による物質弁別を行なうことができる。
また、スキャンA31及びスキャンA32を実行する場合について説明したが、これら2つのスキャンのうちの一方を省略することとしてもよい。例えば、スキャン機能144aは、スキャンA31のみを実行する場合であってもよい。この場合、処理機能144bは、エネルギーE31に対応する投影データセットと、エネルギーE32に対応する投影データセットと、エネルギーE33に対応する投影データセットとに基づいて、3種類の基準物質による物質弁別を行なうことができる。
また、X線CTシステム10は、積層型検出器に代えて、フォトンカウンティング方式の検出器を用いて第2スキャンを実行する場合であってもよい。即ち、X線CTシステム10は、第2スキャンとして、フォトンカウンティング方式のデュアルエナジー収集を行なってもよい。
例えば、スキャン機能144aは、まず、エネルギーE41のX線によるスキャンA41を実行する。具体的には、スキャン機能144aは、X線高電圧装置114を制御することによりX線管111からエネルギーE41のX線を発生させつつ、回転部を回転させて、スキャンA41を実行する。また、X線検出器1121は、被検体Pを透過したX線を検出する。
ここで、スキャン機能144aは、X線検出器1121から出力された電気信号(パルス)の数を計数することで、各検出素子に入射したX線光子の数を計数するとともに、この信号に対して所定の演算処理を行なうことで、当該信号の出力を引き起こしたX線光子のエネルギー値を計測する。これにより、X線CTシステム10は、設定したエネルギービン(bin)ごとに、X線光子の数を計数することができる。
例えば、スキャン機能144aは、スキャンA41において、1つのエネルギービン(bin)のみを用いてX線光子の数を計数する。これにより、スキャン機能144aは、エネルギーE41に対応する投影データセットを収集する。なお、スキャンA41は、第1スキャンの一例である。また、エネルギーE41は、第1のX線エネルギーの一例である。また、エネルギーE41に対応する投影データセットは、第1投影データセットの一例である。
次に、処理機能144bは、エネルギーE41に対応する投影データセットから、再構成画像I41を再構成する。次に、制御機能144cは、再構成画像I41に対するレンダリング処理を行って参照画像を生成し、生成した参照画像をディスプレイ142に表示させる。そして、制御機能144cは、参照画像を参照したユーザからの入力操作を受け付けることで、後述するスキャンA42のスキャン範囲を設定する。
次に、スキャン機能144aは、参照画像に設定されたスキャン範囲に対してスキャンA42を実行し、X線検出器1121は、被検体Pを透過したX線を検出する。なお、スキャンA42において被検体Pに対して照射するX線のエネルギーは、スキャンA41と同様にエネルギーE41であってもよいし、エネルギーE41と異なるエネルギーであってもよい。ここで、スキャン機能144aは、例えば、エネルギーE42及びエネルギーE43のそれぞれに対応する2つのエネルギービン(bin)を設定し、エネルギーE42のX線光子の数とエネルギーE43のX線光子の数とをそれぞれ計数する。これにより、スキャン機能144aは、エネルギーE42に対応する投影データセットとエネルギーE43に対応する投影データセットとを収集する。
なお、スキャンA42は、第2スキャンの一例である。また、エネルギーE42は、第2のX線エネルギーの一例である。また、エネルギーE43は、第3のX線エネルギーの一例である。ここで、エネルギーE41、エネルギーE42及びエネルギーE43は、互いに異なるエネルギーである。例えば、エネルギーE41は、エネルギーE42及びエネルギーE43の両方より大きい。また、例えば、エネルギーE41は、エネルギーE42及びエネルギーE43の両方より小さい。また、例えば、エネルギーE41は、エネルギーE42及びエネルギーE43の間のエネルギーである。また、エネルギーE42に対応する投影データセットは、第2投影データセットの一例である。また、エネルギーE43に対応する投影データセットは、第3投影データセットの一例である。
次に、処理機能144bは、エネルギーE42に対応する投影データセットから再構成画像I42を再構成する。また、処理機能144bは、エネルギーE43に対応する投影データセットから再構成画像I43を再構成する。なお、スキャン機能144aは、被検体Pの心拍又は呼吸の周期に応じて、スキャンA41とスキャンA42とを同期させて実行することとしてもよい。また、処理機能144bは、スキャンA41により収集されたデータと、スキャンA42により収集されたデータとの位置合わせを行なうこととしてもよい。ここで、処理機能144bは、投影データセットの段階で位置合わせを行なってもよいし、再構成画像の段階で位置合わせを行なってもよい。
次に、処理機能144bは、再構成画像I41、再構成画像I42及び再構成画像I43について3種類の基準物質による物質弁別を行なう。例えば、処理機能144bは、上記した式(1)の「E1」にエネルギーE41を代入し、「E2」にエネルギーE42を代入し、「E3」にエネルギーE43を代入して連立方程式を解くことで、3種類の基準物質「α、β、γ」による物質弁別を行なう。
そして、処理機能144bは、物質弁別の結果を示す画像を生成する。例えば、処理機能144bは、基準物質ごとに、物質弁別画像を生成する。例えば、処理機能144bは、基準物質αを強調した物質弁別画像と、基準物質βを強調した物質弁別画像と、基準物質γを強調した物質弁別画像とをそれぞれ生成する。また、処理機能144bは、複数の物質弁別画像を用いて、各基準物質の混合割合に基づく重み付け計算処理を行なうことにより、所定のエネルギーにおける仮想単色X線画像や密度画像、実効原子番号画像等、種々の画像を生成することもできる。また、制御機能144cは、物質弁別の結果を示す画像を、ディスプレイ142に表示させる。
上述したように、第2の実施形態によれば、スキャン機能144aは、第1のX線エネルギーに対応する第1投影データセットを収集する第1スキャンを実行する。また、スキャン機能144aは、フォトンカウンティング型のX線検出器1121を用いて第2スキャンを実行し、第2のX線エネルギーに対応する第2投影データセットと第3のX線エネルギーに対応する第3投影データセットとを実質的に同時に収集する。また、処理機能144bは、第1投影データセット、第2投影データセット及び第3投影データセットに基づいて、3種類の基準物質による物質弁別を行なう。従って、第2の実施形態に係るX線CTシステム10は、3種類の基準物質による物質弁別の実現性を向上させることができる。
なお、3種類の基準物質による物質弁別を行なう他の手法としては、例えば、3つ以上のエネルギービンを設定して、フォトンカウンティング方式のマルチエナジー収集を行なうことが考えられる。しかしながら、エネルギービンが多くなるほど一度に扱うデータ量や使用する回路数が増加し、データ伝送、発熱、コストといった面で課題を生じるため、多くのエネルギービンを設定することは実現性が低い。これに対し、X線CTシステム10は、エネルギービンの数を抑制しつつ、3種類の基準物質による物質弁別を実現することができる。
また、3種類の基準物質による物質弁別を行なう場合について説明したが、処理機能144bは、4種類以上の基準物質による物質弁別を行なうこともできる。例えば、処理機能144bは、スキャンA41において2つのエネルギービンを設定し、エネルギーE41のX線光子の数とエネルギーE44のX線光子の数とをそれぞれ計数する。ここで、エネルギーE44は、第4のX線エネルギーの一例であり、エネルギーE41、エネルギーE42及びエネルギーE43とは異なるエネルギーである。また、エネルギーE44に対応する投影データセットは、第4投影データセットの一例である。
即ち、スキャン機能144aは、スキャンA41を実行することで、エネルギーE41に対応する投影データセット及びエネルギーE44に対応する投影データセットを実質的に同時に収集する。この場合、処理機能144bは、4種類の基準物質による物質弁別を行なうこともできる。即ち、処理機能144bは、エネルギーE41に対応する投影データセット、エネルギーE42に対応する投影データセット、エネルギーE43に対応する投影データセット、エネルギーE44に対応する投影データセットに基づいて、4種類の基準物質による物質弁別を行なうことができる。
(第3の実施形態)
上述した第1〜2の実施形態では、第2スキャンとして、kVスイッチング方式、デュアルレイヤー方式又はフォトンカウンティング方式のデュアルエナジー収集を行なう場合について説明した。これに対し、第3の実施形態では、第2スキャンとして、2つのX線管を用いたデュアルソース方式のデュアルエナジー収集を行なう場合について説明する。
第3の実施形態に係るX線CTシステム10は、X線管111として、X線管1111及びX線管1112を備える。また、第3の実施形態に係るX線CTシステム10は、X線検出器112として、X線管1111から照射されたX線を検出するX線検出器1122と、X線管1112から照射されたX線を検出するX線検出器1123とを備える。以下、第1〜第2の実施形態において説明した点については図1と同一の符号を付し、説明を省略する。
例えば、スキャン機能144aは、まず、エネルギーE51のX線によるスキャンA51を実行する。例えば、スキャン機能144aは、X線高電圧装置114を制御することによりX線管1111からエネルギーE51のX線を発生させつつ、回転部を回転させて、スキャンA51を実行する。これにより、スキャン機能144aは、エネルギーE51に対応する投影データセットを収集する。なお、スキャンA51は、第1スキャンの一例である。また、エネルギーE51は、第1のX線エネルギーの一例である。また、エネルギーE51に対応する投影データセットは、第1投影データセットの一例である。
次に、処理機能144bは、エネルギーE51に対応する投影データセットから、再構成画像I51を再構成する。次に、制御機能144cは、再構成画像I51に対するレンダリング処理を行って参照画像を生成し、生成した参照画像をディスプレイ142に表示させる。そして、制御機能144cは、参照画像を参照したユーザからの入力操作を受け付けることで、後述するスキャンA52のスキャン範囲を設定する。
次に、スキャン機能144aは、参照画像に設定されたスキャン範囲に対して、スキャンA52を実行する。具体的には、スキャン機能144aは、X線高電圧装置114を制御することにより、X線管1111からエネルギーE52のX線を発生させ、X線管1112からエネルギーE53のX線を発生させる。更に、スキャン機能144aは、X線管1111及びX線管1112を含む回転部を回転させて、スキャンA52を実行する。
なお、スキャンA52は、第2スキャンの一例である。また、エネルギーE52は、第2のX線エネルギーの一例である。また、エネルギーE53は、第3のX線エネルギーの一例である。ここで、エネルギーE51、エネルギーE52及びエネルギーE53は、互いに異なるエネルギーである。例えば、エネルギーE51は、エネルギーE52及びエネルギーE53の両方より大きい。また、例えば、エネルギーE51は、エネルギーE52及びエネルギーE53の両方より小さい。また、例えば、エネルギーE51は、エネルギーE52及びエネルギーE53の間のエネルギーである。また、エネルギーE52に対応する投影データセットは、第2投影データセットの一例である。また、エネルギーE53に対応する投影データセットは、第3投影データセットの一例である。即ち、スキャン機能144aは、第2のX線エネルギーであるエネルギーE52に対応する投影データセット、及び、第3のX線エネルギーであるエネルギーE53に対応する投影データセットを実質的に同時に収集する。
次に、処理機能144bは、エネルギーE52に対応する投影データセットから再構成画像I52を再構成する。また、処理機能144bは、エネルギーE53に対応する投影データセットから再構成画像I53を再構成する。
なお、スキャン機能144aは、被検体Pの心拍又は呼吸の周期に応じて、スキャンA51とスキャンA52とを同期させて実行することとしてもよい。また、処理機能144bは、スキャンA51により収集されたデータと、スキャンA52により収集されたデータとの位置合わせを行なうこととしてもよい。ここで、処理機能144bは、投影データセットの段階で位置合わせを行なってもよいし、再構成画像の段階で位置合わせを行なってもよい。
次に、処理機能144bは、再構成画像I51、再構成画像I52及び再構成画像I53について3種類の基準物質による物質弁別を行なう。例えば、処理機能144bは、上記した式(1)の「E1」にエネルギーE51を代入し、「E2」にエネルギーE52を代入し、「E3」にエネルギーE53を代入して連立方程式を解くことで、3種類の基準物質「α、β、γ」による物質弁別を行なう。
そして、処理機能144bは、物質弁別の結果を示す画像を生成する。例えば、処理機能144bは、基準物質ごとに、物質弁別画像を生成する。例えば、処理機能144bは、基準物質αを強調した物質弁別画像と、基準物質βを強調した物質弁別画像と、基準物質γを強調した物質弁別画像とをそれぞれ生成する。また、処理機能144bは、複数の物質弁別画像を用いて、各基準物質の混合割合に基づく重み付け計算処理を行なうことにより、所定のエネルギーにおける仮想単色X線画像や密度画像、実効原子番号画像等、種々の画像を生成することもできる。また、制御機能144cは、物質弁別の結果を示す画像を、ディスプレイ142に表示させる。
上述したように、第3の実施形態によれば、スキャン機能144aは、第1のX線エネルギーに対応する第1投影データセットを収集する第1スキャンを実行する。また、スキャン機能144aは、X線管1111から第2のX線エネルギーのX線を照射させ、X線管1112から第3のX線エネルギーのX線を照射させることで、第2スキャンを実行し、第2のX線エネルギーに対応する第2投影データセットと第3のX線エネルギーに対応する第3投影データセットとを実質的に同時に収集する。また、処理機能144bは、第1投影データセット、第2投影データセット及び第3投影データセットに基づいて、3種類の基準物質による物質弁別を行なう。従って、第3の実施形態に係るX線CTシステム10は、3種類の基準物質による物質弁別の実現性を向上させることができる。
なお、3種類の基準物質による物質弁別を行なう他の手法としては、例えば、3組以上のX線管及びX線検出器を使用することが考えられる。しかしながら、このような特別なハードウェアを用いることは、コスト等の面で実現性が低い。これに対し、X線CTシステム10は、一般に使用されているデュアルソース方式で、3種類の基準物質による物質弁別を実現することができる。
また、X線管1111を用いてスキャンA51を実行する場合について説明したが、スキャン機能144aは、X線管1112を用いてスキャンA52を実行することとしても構わない。
また、スキャン機能144aは、X線管1111及びX線管1112の両方を用いて、スキャンA51を実行しても構わない。例えば、スキャン機能144aは、X線管1111からエネルギーE51のX線を照射させ、X線管1112からエネルギーE54のX線を照射させる。更に、スキャン機能144aは、X線管1111及びX線管1112を含む回転部を回転させて、スキャンA51を実行する。ここで、エネルギーE54は、第4のX線エネルギーの一例であり、エネルギーE51、エネルギーE52及びエネルギーE53とは異なるエネルギーである。また、エネルギーE54に対応する投影データセットは、第4投影データセットの一例である。
即ち、スキャン機能144aは、スキャンA51を実行することで、エネルギーE51に対応する投影データセット及びエネルギーE54に対応する投影データセットを実質的に同時に収集する。この場合、処理機能144bは、4種類の基準物質による物質弁別を行なうこともできる。即ち、処理機能144bは、エネルギーE51に対応する投影データセット、エネルギーE52に対応する投影データセット、エネルギーE53に対応する投影データセット、エネルギーE54に対応する投影データセットに基づいて、4種類の基準物質による物質弁別を行なうことができる。
(第4の実施形態)
上述した第1〜3の実施形態では、第2スキャンとして、kVスイッチング方式、デュアルレイヤー方式、フォトンカウンティング方式又はデュアルソース方式のデュアルエナジー収集を行なう場合について説明した。これに対し、第4の実施形態では、第2スキャンとして、スプリット方式のデュアルエナジー収集を行なう場合について説明する。
第4の実施形態に係るX線CTシステム10は、ウェッジ116として、例えば、X線管111から照射されたX線を、エネルギーの異なる複数のX線に分割するフィルタを備える。例えば、X線CTシステム10は、ウェッジ116として、X線フィルタ116a及びX線フィルタ116bを備える。X線フィルタ116a及びX線フィルタ116bは、材質や厚み等が異なり、同一エネルギーのX線を、エネルギーの異なる複数のX線に分割する。なお、X線フィルタ116aは、第1のX線フィルタの一例である。また、X線フィルタ116bは、第2のX線フィルタの一例である。以下、第1〜第3の実施形態において説明した点については図1と同一の符号を付し、説明を省略する。
例えば、スキャン機能144aは、まず、エネルギーE61のX線によるスキャンA61を実行する。例えば、スキャン機能144aは、X線管111から照射されたX線を、X線フィルタ116a、X線フィルタ116b、又は他のX線フィルタによってエネルギーE61まで減衰させて、スキャンA61を実行する。これにより、スキャン機能144aは、エネルギーE61に対応する投影データセットを収集する。なお、スキャンA61は、第1スキャンの一例である。また、エネルギーE61は、第1のX線エネルギーの一例である。また、エネルギーE61に対応する投影データセットは、第1投影データセットの一例である。
次に、処理機能144bは、エネルギーE61に対応する投影データセットから、再構成画像I61を再構成する。次に、制御機能144cは、再構成画像I61に対するレンダリング処理を行って参照画像を生成し、生成した参照画像をディスプレイ142に表示させる。そして、制御機能144cは、参照画像を参照したユーザからの入力操作を受け付けることで、後述するスキャンA62のスキャン範囲を設定する。
次に、スキャン機能144aは、参照画像に設定されたスキャン範囲に対して、スキャンA62を実行する。具体的には、スキャン機能144aは、X線管111から照射されたX線を、X線フィルタ116aによってエネルギーE62まで減衰させ、X線フィルタ116bによってエネルギーE63まで減衰させて、スキャンA62を実行する。より具体的には、スキャン機能144aは、X線フィルタ116a及びX線フィルタ116bを図1に示したZ軸方向(列方向)に並べた状態において、X線フィルタ116a及びX線フィルタ116bに対してX線管111からX線を照射させる。これにより、スキャン機能144aは、列方向にエネルギーE62のX線とエネルギーE63のX線とを分布させた状態において、スキャンA62を実行することができる。
なお、スキャンA62は、第2スキャンの一例である。また、エネルギーE62は、第2のX線エネルギーの一例である。また、エネルギーE63は、第3のX線エネルギーの一例である。ここで、エネルギーE61、エネルギーE62及びエネルギーE63は、互いに異なるエネルギーである。例えば、エネルギーE61は、エネルギーE62及びエネルギーE63の両方より大きい。また、例えば、エネルギーE61は、エネルギーE62及びエネルギーE63の両方より小さい。また、例えば、エネルギーE61は、エネルギーE62及びエネルギーE63の間のエネルギーである。また、エネルギーE62に対応する投影データセットは、第2投影データセットの一例である。また、エネルギーE63に対応する投影データセットは、第3投影データセットの一例である。即ち、スキャン機能144aは、第2のX線エネルギーであるエネルギーE62に対応する投影データセット、及び、第3のX線エネルギーであるエネルギーE63に対応する投影データセットを実質的に同時に収集する。
次に、処理機能144bは、エネルギーE62に対応する投影データセットから再構成画像I62を再構成する。また、処理機能144bは、エネルギーE63に対応する投影データセットから再構成画像I63を再構成する。
なお、スキャン機能144aは、被検体Pの心拍又は呼吸の周期に応じて、スキャンA61とスキャンA62とを同期させて実行することとしてもよい。また、処理機能144bは、スキャンA61により収集されたデータと、スキャンA62により収集されたデータとの位置合わせを行なうこととしてもよい。ここで、処理機能144bは、投影データセットの段階で位置合わせを行なってもよいし、再構成画像の段階で位置合わせを行なってもよい。
次に、処理機能144bは、再構成画像I61、再構成画像I62及び再構成画像I63について3種類の基準物質による物質弁別を行なう。例えば、処理機能144bは、上記した式(1)の「E1」にエネルギーE61を代入し、「E2」にエネルギーE62を代入し、「E3」にエネルギーE63を代入して連立方程式を解くことで、3種類の基準物質「α、β、γ」による物質弁別を行なう。
そして、処理機能144bは、物質弁別の結果を示す画像を生成する。例えば、処理機能144bは、基準物質ごとに、物質弁別画像を生成する。例えば、処理機能144bは、基準物質αを強調した物質弁別画像と、基準物質βを強調した物質弁別画像と、基準物質γを強調した物質弁別画像とをそれぞれ生成する。また、処理機能144bは、複数の物質弁別画像を用いて、各基準物質の混合割合に基づく重み付け計算処理を行なうことにより、所定のエネルギーにおける仮想単色X線画像や密度画像、実効原子番号画像等、種々の画像を生成することもできる。また、制御機能144cは、物質弁別の結果を示す画像を、ディスプレイ142に表示させる。
上述したように、第4の実施形態によれば、スキャン機能144aは、第1のX線エネルギーに対応する第1投影データセットを収集する第1スキャンを実行する。また、スキャン機能144aは、透過したX線を第2のX線エネルギーまで減衰させるX線フィルタ116aと、透過したX線を第3のX線エネルギーまで減衰させるX線フィルタ116bとを用いて第2スキャンを実行し、第2のX線エネルギーに対応する第2投影データセットと第3のX線エネルギーに対応する第3投影データセットとを実質的に同時に収集する。また、処理機能144bは、第1投影データセット、第2投影データセット及び第3投影データセットに基づいて、3種類の基準物質による物質弁別を行なう。従って、第4の実施形態に係るX線CTシステム10は、3種類の基準物質による物質弁別の実現性を向上させることができる。
例えば、3種類の基準物質による物質弁別を行なう他の手法としては、例えば、3種類以上のX線フィルタを使用することが考えられる。しかしながら、このような特別なハードウェアを用いることは、コスト等の面で実現性が低い。これに対し、X線CTシステム10は、一般に使用されている2種類のX線フィルタにより、3種類の基準物質による物質弁別を実現することができる。
なお、X線フィルタ116aとX線フィルタ116bとを用いてスキャンA62を実行する場合について説明したが、スキャン機能144aは、これら2つのX線フィルタのうちいずれか一方のみを用いてスキャンA62を実行することとしても構わない。
例えば、スキャン機能144aは、X線管111からエネルギーE62のX線を照射させるとともに、X線の一部をX線フィルタ116bによってエネルギーE63まで減衰させて、スキャンA62を実行する。より具体的には、スキャン機能144aは、列方向の所定範囲のX線を、X線フィルタ116bによってエネルギーE62からエネルギーE63まで減衰させて、被検体Pに照射させる。なお、X線フィルタ116bによる減衰を受けなかったX線については、エネルギーE62のまま被検体Pに照射される。これにより、スキャン機能144aは、列方向にエネルギーE62のX線とエネルギーE63のX線とを分布させた状態においてスキャンA62を実行し、エネルギーE62に対応する投影データセットとエネルギーE63に対応する投影データセットとを実質的に同時に収集することができる。
また、スキャン機能144aは、スキャンA61においてデュアルエナジー収集を実行しても構わない。例えば、スキャン機能144aは、X線管111から照射されたX線のうち列方向の所定範囲のX線をX線フィルタ116aによってエネルギーE61まで減衰させ、他のX線をX線フィルタ116bによってエネルギーE64まで減衰させて、スキャンA61を実行する。また、例えば、スキャン機能144aは、X線管111から照射されたエネルギーE61のX線のうち列方向の所定範囲のX線を、X線フィルタ116bによってエネルギーE61からエネルギーE64まで減衰させて、スキャンA61を実行する。これにより、スキャン機能144aは、列方向にエネルギーE61のX線とエネルギーE64のX線とを分布させた状態においてスキャンA61を実行し、エネルギーE61に対応する投影データセットとエネルギーE64に対応する投影データセットとを実質的に同時に収集する。ここで、エネルギーE64は、第4のX線エネルギーの一例であり、エネルギーE61、エネルギーE62及びエネルギーE63とは異なるエネルギーである。また、エネルギーE64に対応する投影データセットは、第4投影データセットの一例である。
スキャンA61によってエネルギーE61に対応する投影データセット及びエネルギーE64に対応する投影データセットを収集した場合、処理機能144bは、4種類の基準物質による物質弁別を行なうことができる。即ち、処理機能144bは、エネルギーE61に対応する投影データセット、エネルギーE62に対応する投影データセット、エネルギーE63に対応する投影データセット、エネルギーE64に対応する投影データセットに基づいて、4種類の基準物質による物質弁別を行なうことができる。
(第5の実施形態)
さて、これまで第1〜第4の実施形態について説明したが、上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
例えば、これまで、スキャン対象領域をユーザが設定するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、制御機能144cは、再構成画像、又は再構成画像に基づいて生成した参照画像を解析し、診断対象の臓器等を抽出することで、スキャン対象領域を自動設定してもよい。
また、上記した式(1)について「μ」を線減弱係数、「c」を混合量として説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、処理機能144bは、各物質における「μ」を質量減弱係数とし、「c」を密度として、式(1)を解くこととしても構わない。
また、再構成処理を施した後の段階で物質弁別を行なうものとして説明したが、処理機能144bは、再構成処理を施す前の段階で物質弁別を行なってもよい。即ち、処理機能144bは、投影データセットの各画素について式(1)の連立方程式を解くことで、物質弁別を行なうこととしても構わない。
また、物質弁別をX線CTシステム10が実行するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、物質弁別は、X線CTシステム10と異なる他の装置において実行されても構わない。以下、この点について、図6に示す医用情報処理システム1を例として説明する。図6は、第5の実施形態に係る医用情報処理システム1の構成の一例を示すブロック図である。医用情報処理システム1には、X線CTシステム10、及び、物質弁別を実行する医用処理装置20が含まれる。
図6に示すように、X線CTシステム10と医用処理装置20とは、ネットワークNWを介して相互に接続される。ここで、ネットワークNWを介して接続可能であれば、X線CTシステム10及び医用処理装置20が設置される場所は任意である。例えば、医用処理装置20は、X線CTシステム10と異なる病院に設置されてもよい。即ち、ネットワークNWは、院内で閉じたローカルネットワークにより構成されてもよいし、インターネットを介したネットワークでもよい。また、図6においてはX線CTシステム10を1つ示すが、医用情報処理システム1は複数のX線CTシステム10を含んでもよい。
医用処理装置20は、ワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。例えば、医用処理装置20は、図6に示すように、メモリ21と、ディスプレイ22と、入力インターフェース23と、処理回路24とを有する。
メモリ21は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ21は、X線CTシステム10から送信された各種のデータを記憶する。また、例えば、メモリ21は、医用処理装置20に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。なお、メモリ21は、医用処理装置20とネットワークNWを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
ディスプレイ22は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ22は、処理回路24による物質弁別の結果を示す画像を表示したり、ユーザからの各種操作を受け付けるためのGUI等を表示したりする。例えば、ディスプレイ22は、液晶ディスプレイやCRTディスプレイである。ディスプレイ22は、デスクトップ型でもよいし、医用処理装置20本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
入力インターフェース23は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路24に出力する。例えば、入力インターフェース23は、再構成画像を再構成する際の再構成条件や、再構成画像から表示用のCT画像を生成する際の画像処理条件等をユーザから受け付ける。例えば、入力インターフェース23は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行なうタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インターフェース23は、医用処理装置20本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インターフェース23は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、医用処理装置20とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路24へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース23の例に含まれる。
処理回路24は、処理機能24a及び制御機能24bを実行することで、医用処理装置20全体の動作を制御する。なお、処理機能24aは、処理部の一例である。処理回路24による処理については後述する。
図6に示す医用処理装置20においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ21へ記憶されている。処理回路24は、メモリ21からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、プログラムを読み出した状態の処理回路24は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
なお、図6においては単一の処理回路24にて、処理機能24a及び制御機能24bが実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路24を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路24が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
また、処理回路24は、ネットワークNWを介して接続された外部装置のプロセッサを利用して、機能を実現することとしてもよい。例えば、処理回路24は、メモリ21から各機能に対応するプログラムを読み出して実行するとともに、医用処理装置20とネットワークNWを介して接続されたサーバ群(クラウド)を計算資源として利用することにより、図6に示す各機能を実現する。
例えば、まず、X線CTシステム10におけるスキャン機能144aは、被検体Pに対して、エネルギーE71に対応する投影データセットを収集するスキャンA71を実行する。また、スキャン機能144aは、エネルギーE72に対応する投影データセットと、エネルギーE73に対応する投影データセットとを実質的に同時に収集する第2スキャンを実行する。
ここで、スキャンA71は第1スキャンの一例であり、スキャンA72は第2スキャンの一例である。また、エネルギーE71は第1のX線エネルギーの一例であり、エネルギーE72は第2のX線エネルギーの一例であり、エネルギーE73は第3のX線エネルギーの一例である。なお、エネルギーE71、エネルギーE72及びエネルギーE73は、互いに異なるエネルギーである。また、エネルギーE71に対応する投影データセットは第1投影データセットの一例であり、エネルギーE72に対応する投影データセットは第2投影データセットの一例であり、エネルギーE73に対応する投影データセットは第3投影データセットの一例である。
スキャン機能144aは、スキャンA71をスキャンA72の前に実行してもよいし、スキャンA72をスキャンA71の前に実行してもよい。また、スキャン機能144aは、スキャンA72を、kVスイッチング方式、デュアルレイヤー方式、フォトンカウンティング方式、デュアルソース方式及びスプリット方式のいずれの方式で実行しても構わない。
次に、処理機能144bは、エネルギーE71に対応する投影データセットから再構成画像I71を再構成する。また、処理機能144bは、エネルギーE72に対応する投影データセットから再構成画像I72を再構成する。また、処理機能144bは、エネルギーE73に対応する投影データセットから再構成画像I73を再構成する。また、制御機能144cは、ネットワークNWを介して、再構成画像I71、再構成画像I72及び再構成画像I73を医用処理装置20に送信する。
次に、医用処理装置20における処理機能24aは、再構成画像I71、再構成画像I72及び再構成画像I73について3種類の基準物質による物質弁別を行なう。また、処理機能24aは、物質弁別の結果を示す画像を生成する。例えば、処理機能24aは、基準物質ごとの物質弁別画像や、所定のエネルギーにおける仮想単色X線画像、密度画像、実効原子番号画像等を生成する。
或いは、制御機能144cは、エネルギーE71に対応する投影データセット、エネルギーE72に対応する投影データセット、及び、エネルギーE73に対応する投影データセットを、ネットワークNWを介して医用処理装置20に送信する。次に、医用処理装置20における処理機能24aは、エネルギーE71に対応する投影データセットから再構成画像I71を再構成する。また、処理機能24aは、エネルギーE72に対応する投影データセットから再構成画像I72を再構成する。また、処理機能24aは、エネルギーE73に対応する投影データセットから再構成画像I73を再構成する。次に、処理機能24aは、再構成画像I71、再構成画像I72及び再構成画像I73について3種類の基準物質による物質弁別を行ない、物質弁別の結果を示す画像を生成する。なお、再構成画像の段階で物質弁別を行なうものとして説明したが、処理機能24aは、投影データセットの段階で物質弁別を行なってもよい。
そして、制御機能24bは、処理機能24aが生成した物質弁別の結果を示す画像をディスプレイ22に表示させる。或いは、制御機能24bは、物質弁別の結果を示す画像をX線CTシステム10に送信する。この場合、X線CTシステム10における制御機能144cは、物質弁別の結果を示す画像をディスプレイ142に表示させる。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、あるいは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリ141又はメモリ21に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
なお、図1においては、単一のメモリ141が処理回路144の各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明した。また、図6においては、単一のメモリ21が処理回路24の各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、複数のメモリ141を分散して配置し、処理回路144は、個別のメモリ141から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。同様に、複数のメモリ21を分散して配置し、処理回路24は、個別のメモリ21から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。また、メモリ141又はメモリ21にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
上述した実施形態に係る各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。即ち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
また、上述した実施形態で説明した処理方法は、予め用意された処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この処理プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この処理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、3種類以上の基準物質による物質弁別の実現性を向上させることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。