詳細な説明
1つまたは複数のCAR、またはCARおよび改変HLA−EもしくはHLA−Gの発現が、CARが標的とする抗原を発現する細胞の死滅において有効であるT細胞を生成するための組成物および方法が本明細書に開示される。さらに、死滅は、CARまたはCAR−HLA−E発現構築物もしくはCAR−HLA−G発現構築物がTCR遺伝子および/またはB2M遺伝子に組み込まれた場合に有効である。このように改変された細胞は、CARがTCR遺伝子に組み込まれた結果としてTCR複合体が欠如することにより、これらのT細胞が他の非抗原担持細胞を標的とすることが妨げられると同時に、CARがB2Mに組み込まれることによるHLA複合体のノックアウトにより、導入された武装されたT細胞に対するHLAに基づく免疫応答が排除されるまたは低減するので、例えば養子細胞療法において治療薬として使用することができる。改変されたHLA−EまたはHLA−G複合体を発現するようにさらに改変された細胞はまた、宿主NK細胞による死滅も逃れることができる。さらに、他の目的の遺伝子を、CARおよび必要に応じて改変されたHLA−EまたはHLA−Gを担持する細胞に挿入することができ、かつ/または他の目的の遺伝子をノックアウトすることができる。
一般
本明細書に開示されている方法の実施、ならびに組成物の調製および使用には、別段の指定のない限り、分子生物学、生化学、クロマチン構造および解析、コンピュータ化学、細胞培養物、組換えDNAおよび当技術分野の技術の範囲内に入る関連する分野の従来の技法を使用する。これらの技法は、文献において十分に説明されている。例えば、Sambrook et al. MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, Second edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989 and Third edition, 2001;Ausubel et al., CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons, New York, 1987 and periodic updates;the series METHODS IN ENZYMOLOGY, Academic Press, San Diego;Wolffe, CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION, Third edition, Academic Press, San Diego, 1998;METHODS IN ENZYMOLOGY, Vol. 304, ”Chromatin” (P.M. Wassarman and A. P. Wolffe, eds.), Academic Press, San Diego, 1999;およびMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, Vol. 119, ”Chromatin Protocols” (P.B. Becker, ed.) Humana Press, Totowa, 1999を参照されたい。
定義
「核酸」、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は、互換的に使用され、直鎖状または環状コンフォメーションであり、一本鎖形態または二本鎖形態のいずれかであるデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指す。本開示の目的に関しては、これらの用語は、ポリマーの長さに関する限定とは解釈されるべきでない。当該用語は、天然のヌクレオチドの公知の類似体、ならびに塩基、糖および/またはリン酸部分(例えば、ホスホロチオエート骨格)が修飾されたヌクレオチドを包含し得る。一般に、特定のヌクレオチドの類似体は、同じ塩基対合特異性を有する;すなわち、Aの類似体はTと塩基対を形成する。
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために互換的に使用される。当該用語は、1つまたは複数のアミノ酸が対応する天然に存在するアミノ酸の化学的な類似体または修飾誘導体であるアミノ酸ポリマーにも当てはまる。
「結合」は、巨大分子間(例えば、タンパク質と核酸の間)の配列特異的な非共有結合性の相互作用を指す。相互作用が全体として配列特異的である限りは、結合相互作用の構成成分の全てが配列特異的である必要はない(例えば、DNA骨格内のリン酸残基との接触)。そのような相互作用は、一般に、10−6M−1またはそれ未満の解離定数(Kd)を特徴とする。「親和性」は、結合の強度を指す:結合親和性の増大は低Kdと相関する。「非特異的な結合」は、任意の目的の分子(例えば、操作されたヌクレアーゼ)と巨大分子(例えば、DNA)との間に生じる標的配列に依存しない非共有結合性の相互作用を指す。
「DNA結合性分子」は、DNAに結合することができる分子である。そのようなDNA結合性分子は、ポリペプチド、タンパク質のドメイン、より大きなタンパク質またはポリヌクレオチド内のドメインであり得る。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドはDNAであり、他の実施形態では、ポリヌクレオチドはRNAである。一部の実施形態では、DNA結合性分子はヌクレアーゼのタンパク質ドメイン(例えば、FokIドメイン)であり、他の実施形態では、DNA結合性分子はRNA誘導型ヌクレアーゼ(例えば、Cas9またはCfp1)のガイドRNA構成成分である。
「結合性タンパク質」は、別の分子に非共有結合により結合することが可能なタンパク質である。結合性タンパク質は、例えば、DNA分子(DNA結合性タンパク質)、RNA分子(RNA結合性タンパク質)および/またはタンパク質分子(タンパク質結合性タンパク質)に結合することができる。タンパク質結合性タンパク質の場合では、それ自体に結合することができ(ホモ二量体、ホモ三量体などを形成する)、かつ/または、異なるタンパク質(単数または複数)の1つまたは複数の分子に結合することができる。結合性タンパク質は、1つよりも多くの型の結合活性を有し得る。例えば、ジンクフィンガータンパク質は、DNA結合活性、RNA結合活性およびタンパク質結合活性を有する。
「ジンクフィンガーDNA結合性タンパク質」(または結合性ドメイン)は、亜鉛イオンの協調によって構造が安定化される結合性ドメイン内のアミノ酸配列の領域である1つまたは複数のジンクフィンガーを通じてDNAに配列特異的に結合するタンパク質、またはより大きなタンパク質内のドメインである。ジンクフィンガーDNA結合性タンパク質という用語は、多くの場合、ジンクフィンガータンパク質またはZFPと省略される。「ジンクフィンガーヌクレアーゼ」という用語は、1つのZFNならびに二量体を形成して標的遺伝子を切断するZFNの対(対のメンバーは、「左および右」または「第1および第2」または「対」と称される)を含む。
「TALE DNA結合性ドメイン」または「TALE」は、1つまたは複数のTALEリピートドメイン/単位を含むポリペプチドである。リピートドメインは、それぞれがリピート可変二残基(repeat variable diresidue)(RVD)を含み、TALEのその同類標的DNA配列への結合に関与する。単一の「リピート単位」(「リピート」とも称される)は、一般には33〜35アミノ酸の長さであり、天然に存在するTALEタンパク質内の他のTALEリピート配列と少なくともある程度の配列相同性を示す。TALEタンパク質は、リピート単位内の標準的または非標準的RVDを使用して標的部位に結合するように設計することができる。例えば、米国特許第8,586,526号および同第9,458,205号を参照されたい。「TALEN」という用語は、二量体を形成して標的遺伝子を切断する1つのTALENならびにTALENの対(対のメンバーは「左および右」または「第1および第2」または「対」と称される)を含む。
ジンクフィンガーおよびTALE DNA結合性ドメインは、例えば、天然に存在するジンクフィンガータンパク質の認識へリックス領域を操作すること(1つもしくは複数のアミノ酸を変更すること)により、またはDNA結合に関与するアミノ酸(リピート可変二残基(repeat variable diresidue)もしくはRVD領域)を操作することにより、所定のヌクレオチド配列に結合するように「操作され」得る。したがって、操作されたジンクフィンガータンパク質またはTALEタンパク質は、天然に存在しないタンパク質である。ジンクフィンガータンパク質およびTALEを操作するための方法の非限定的な例は、設計および選択である。設計されたタンパク質は、設計/組成が合理的基準に主に起因する天然には存在しないタンパク質である。設計のための合理的基準は、既存のZFPまたはTALE設計(標準的および非標準的RVD)および結合データに関する情報が保存されているデータベース内の情報を処理するための置換規則およびコンピュータ化アルゴリズムの適用を含む。例えば、米国特許第9,458,205号;同第8,586,526号;同第6,140,081号;同第6,453,242号;および同第6,534,261号を参照されたい;WO98/53058;WO98/53059;WO98/53060;WO02/016536およびWO03/016496も参照されたい。
「選択された」ジンクフィンガータンパク質、TALEタンパク質またはCRISPR/Cas系は、天然に見いだされず、その産生はファージディスプレイ、相互作用トラップまたはハイブリッド選択などの経験的プロセスに主に起因する。例えば、U.S.5,789,538;U.S.5,925,523;U.S.6,007,988;U.S.6,013,453;U.S.6,200,759;WO95/19431;WO96/06166;WO98/53057;WO98/54311;WO00/27878;WO01/60970;WO01/88197およびWO02/099084を参照されたい。さらに、TALEタンパク質(一般には標的部位に結合するRVDとヌクレオチドの間で1対1の対応を示す)およびCRISPR/Cas系のsgRNAをZFPが結合するZFP標的部位に容易に設計することができる。例えば、米国特許第9,873,894号および同第8,586,526号を参照されたい。
「TtAgo」は、遺伝子サイレンシングに関与すると考えられる原核生物アルゴノートタンパク質である。TtAgoは、細菌Thermus thermophilusに由来する。例えば、Swarts et al, ibid、G. Sheng et al., (2013) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 111, 652を参照されたい。「TtAgo系」は、例えばTtAgo酵素による切断のためのガイドDNAを含む、必要とされる構成成分の全てである。
「組換え」は、2つのポリヌクレオチド間の遺伝情報を交換するプロセスを指す。本開示の目的に関しては、「相同組換え(HR)」は、例えば、細胞における二本鎖切断の相同組換え修復機構による修復中に起こる、そのような交換の特殊化された形態を指す。このプロセスでは、ヌクレオチド配列相同性が必要であり、「ドナー」分子を「標的」分子(すなわち、二本鎖切断を受ける分子)の鋳型修復に使用し、また、ドナーから標的への遺伝情報の移行を導くので、「非クロスオーバー遺伝子変換」または「ショートトラクト遺伝子変換」として様々な名称で知られている。いかなる特定の理論にも制約されることなく、そのような移行は、切断された標的とドナーの間に形成されるヘテロ二重鎖DNAのミスマッチ矯正、および/または標的の一部になる遺伝情報を再合成するためにドナーを使用する「合成依存性鎖アニーリング」、および/または関連するプロセスを伴い得る。そのような特殊化されたHRの結果、多くの場合、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部または全部が標的ポリヌクレオチドに組み入れられるような標的分子の配列の変更がもたらされる。
本開示の方法では、本明細書に記載の1つまたは複数の標的化ヌクレアーゼにより、標的配列(例えば、細胞クロマチン)内の所定の部位(例えば、目的の遺伝子または遺伝子座)において二本鎖切断(DSB)が創出され、切断領域内のヌクレオチド配列に対する相同性を有する「ドナー」ポリヌクレオチドを細胞に導入することができる。DSBが存在することにより、ドナー配列の組込みが容易になることが示されている。必要に応じて、構築物は、切断領域内のヌクレオチド配列に対する相同性を有する。ドナー配列を物理的に組み込むこともでき、あるいは、ドナーポリヌクレオチドを相同組換えによる切断の修復のための鋳型として使用し、その結果、ヌクレオチド配列の全部または一部をドナーと同様に細胞クロマチンに導入する。したがって、細胞クロマチン内の第1の配列を変更することができ、ある特定の実施形態では、ドナーポリヌクレオチド内に存在する配列に変換することができる。したがって、「置き換える」または「置換え」という用語の使用は、1つのヌクレオチド配列の別のヌクレオチド配列による置換え(すなわち、情報という意味での配列の置換え)を表すと理解することができ、必ずしも1つのポリヌクレオチドの別のポリヌクレオチドによる物理的または化学的な置換えを必要とするものではない。
本明細書に記載の方法のいずれかでは、追加的なジンクフィンガータンパク質の対を細胞内の追加的な標的部位の追加的な二本鎖切断のために使用することができる。
細胞クロマチン内の目的の領域内の配列の標的化組換えおよび/または置換えおよび/または変更のための方法のある特定の実施形態では、染色体配列を、外因性「ドナー」ヌクレオチド配列を用いた相同組換えによって変更する。そのような相同組換えは、切断領域と相同な配列が存在する場合、細胞クロマチン内の二本鎖切断の存在によって刺激される。
本明細書に記載の方法のいずれかでは、第1のヌクレオチド配列(「ドナー配列」)は、目的の領域内のゲノム配列と相同であるが同一ではなく、それにより、相同組換えを刺激して、同一でない配列を目的の領域内に挿入させる配列を含有し得る。したがって、ある特定の実施形態では、目的の領域内の配列と相同なドナー配列の部分は、置き換えられるゲノム配列に対して約80〜99%(またはその間の任意の整数)の配列同一性を示す。他の実施形態では、例えば、100を超える連続した塩基対のドナー配列とゲノム配列の間で1ヌクレオチドのみが異なる場合、ドナー配列とゲノム配列の間の相同性は、99%よりも高い。ある特定の場合では、ドナー配列の非相同的部分は、目的の領域内には存在しない配列を含有し得、したがって、新しい配列が目的の領域に導入される。これらの例では、非相同配列は、一般に、目的の領域内の配列と相同または同一である50〜1,000塩基対(もしくはその間の任意の整数値)または1,000を超える任意の数の塩基対の配列に挟まれている。他の実施形態では、ドナー配列は、第1の配列と非相同的であり、非相同的組換え機構によってゲノム内に挿入される。
本明細書に記載の方法はいずれも、目的の遺伝子(単数または複数)の発現を破壊するドナー配列の標的化組込みによる細胞内の1つまたは複数の標的配列の部分的または完全な不活化のために使用することができる。部分的にまたは完全に不活化された遺伝子を有する細胞株も提供される。
さらに、本明細書に記載の標的化組込みの方法を使用して、1つまたは複数の外因性配列を組み込むこともできる。外因性核酸配列は、例えば、1つもしくは複数の遺伝子もしくはcDNA分子、または任意の型のコードもしくは非コード配列、ならびに1つまたは複数の調節エレメント(例えば、プロモーター)を含み得る。さらに、外因性核酸配列は、1つまたは複数のRNA分子(例えば、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、阻害性RNA(RNAi)、マイクロRNA(miRNA)など)を産生し得る。
「切断」は、DNA分子の共有結合骨格の破壊を指す。切断は、これらに限定されないが、リン酸ジエステル結合の酵素的または化学的加水分解を含めた種々の方法によって開始することができる。一本鎖切断および二本鎖切断のどちらも可能であり、二本鎖切断は、2つの別個の一本鎖切断事象の結果として起こり得る。DNA切断の結果、平滑末端または付着末端のいずれかが生じ得る。ある特定の実施形態では、融合ポリペプチドを標的化二本鎖DNA切断のために使用する。
「切断ハーフドメイン」は、第2のポリペプチド(同一であるかまたは異なる)と併せて、切断活性(好ましくは二本鎖切断活性)を有する複合体を形成するポリペプチド配列である。「第1および第2の切断ハーフドメイン」;「+および−切断ハーフドメイン」ならびに「右および左切断ハーフドメイン」という用語は、二量体を形成する切断ハーフドメインの対を指すために互換的に使用される。
「操作された切断ハーフドメイン」は、別の切断ハーフドメイン(例えば、別の操作された切断ハーフドメイン)と偏性ヘテロ二量体を形成するように改変された切断ハーフドメインである。それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,888,121号;同第7,914,796号;同第8,034,598号;同第8,623,618号および米国特許出願公開第2011/0201055号も参照されたい。
「配列」という用語は、DNAであってもRNAであってもよく、直鎖状であっても、環状であっても分枝状であってもよく、また、一本鎖であっても二本鎖であってもよい、任意の長さのヌクレオチド配列を指す。「ドナー配列」という用語は、ゲノム内に挿入されるヌクレオチド配列を指す。ドナー配列は、任意の長さ、例えば、2から10,000ヌクレオチドの間の長さ(またはその間もしくはそれを超える任意の整数値)、好ましくは約100から1,000ヌクレオチドの間の長さ(またはその間の任意の整数)、より好ましくは約200から500ヌクレオチドの間の長さであってよい。
「クロマチン」は、細胞ゲノムを含む核タンパク質構造である。細胞クロマチンは、核酸、主にDNA、ならびに、ヒストンおよび非ヒストン染色体タンパク質を含めたタンパク質を含む。大多数の真核細胞クロマチンは、ヌクレオソームの形態で存在し、ヌクレオソームコアは、ヒストンH2A、H2B、H3およびH4を2つずつ含む八量体と会合したおよそ150塩基対のDNAを含み;リンカーDNA(生物体に応じて長さは変動する)はヌクレオソームコア間に伸びている。ヒストンH1の分子は、一般に、リンカーDNAと会合している。本開示の目的に関しては、「クロマチン」という用語は、原核生物および真核生物の両方の細胞核タンパク質の全ての型を包含するものとする。細胞クロマチンは、染色体クロマチンおよびエピソームクロマチンの両方を含む。
「染色体」は、細胞のゲノムの全部または一部を含むクロマチン複合体である。細胞のゲノムは、多くの場合、細胞のゲノムを含む染色体の全ての収集物である核型によって特徴付けられる。細胞のゲノムは、1つまたは複数の染色体を含み得る。
「エピソーム」は、複製性核酸、核タンパク質複合体または細胞の染色体核型の一部ではない核酸を含む他の構造である。エピソームの例としては、プラスミドおよびある特定のウイルスゲノムが挙げられる。
「標的部位」または「標的配列」は、結合のために十分な条件が存在すれば結合性分子が結合する核酸の一部を定義する核酸配列である。例えば、配列5’GAATTC3’は、Eco RI制限エンドヌクレアーゼの標的部位である。この用語は、任意の配列の連続したまたは連続していない塩基対ならびに「対の」標的部位(例えば、本明細書に記載のZFNおよび/またはTALENの対の標的部位)を包含する。ヌクレアーゼの1つまたは複数のDNA結合性ドメイン(例えば、ZFP、TALE、単一ガイドRNA)がそれらのそれぞれの標的部位に結合した後、切断および改変(例えば、ドナーの組込みおよび/またはインデル改変)が、これらに限定されないが、DNA結合性ドメインが結合した配列内、対の標的部位の間、および/または標的部位のいずれかの3’もしくは5’側に隣接して(例えば、1〜50(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25もしくはそれよりも多くの塩基対を含む)もしくはそれよりも多くの塩基対内)を含めた、標的部位またはその付近のどこかで生じ得る。
「外因性」分子は、通常は細胞に存在しないが、1つまたは複数の遺伝学的、生化学的または他の方法によって細胞に導入することができる分子である。「細胞に通常存在すること」は、細胞の特定の発生段階および環境条件に対して決定される。したがって、例えば、筋肉の胚発生の間にだけ存在する分子は、成体筋肉細胞に対して外因性分子である。同様に、熱ショックによって誘導される分子は、熱ショック処理されていない細胞に対して外因性分子である。外因性分子は、例えば、機能不良性内因性分子の機能性バージョンまたは通常機能性内因性分子の機能不良性バージョンを含み得る。
外因性分子は、とりわけ、コンビナトリアルケミストリープロセスによって生成されるものなどの低分子、またはタンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖、上記の分子の任意の修飾誘導体、もしくは上記の分子の1つもしくは複数を含む任意の複合体などの巨大分子であってよい。核酸は、DNAおよびRNAを含み、一本鎖であっても二本鎖であってもよく、直鎖状であっても、分枝状であっても環状であってもよく、また、任意の長さであってよい。例えば、米国特許第8,703,489号および同第9,255,259号を参照されたい。核酸は、2重鎖を形成することが可能な核酸、ならびに3重鎖形成核酸を含む。例えば、米国特許第5,176,996号および同第5,422,251号を参照されたい。タンパク質としては、これらに限定されないが、DNA結合性タンパク質、転写因子、クロマチンリモデリング因子、メチル化されたDNA結合性タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、脱アセチル化酵素、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ジャイレースおよびヘリカーゼが挙げられる。
外因性分子は、内因性分子と同じ型の分子、例えば、外因性タンパク質または核酸であってよい。例えば、外因性核酸は、細胞に導入された感染性ウイルスゲノム、プラスミドもしくはエピソーム、または細胞内に通常は存在しない染色体を含み得る。外因性分子を細胞に導入するための方法は、当業者に公知であり、それらとして、これらに限定されないが、脂質媒介性移行(すなわち、中性およびカチオン性脂質を含めたリポソーム)、エレクトロポレーション、直接注射、細胞融合、粒子衝撃、リン酸カルシウム共沈澱、DEAE−デキストラン媒介性移行およびウイルスベクター媒介性移行が挙げられる。外因性分子は、内因性分子と同じ型であるが、細胞が由来するものとは異なる種に由来する分子であってよい。例えば、ヒト核酸配列を元々はマウスまたはハムスターに由来する細胞株に導入することができる。
対照的に、「内因性」分子は、特定の環境条件下、特定の発生段階で特定の細胞に通常存在する分子である。例えば、内因性核酸は、染色体、ミトコンドリア、葉緑体もしくは他の細胞小器官のゲノム、または天然に存在するエピソーム核酸を含み得る。追加的な内因性分子は、タンパク質、例えば、転写因子および酵素を含み得る。
「融合」分子は、2つまたはそれよりも多くのサブユニット分子が、好ましくは共有結合により連結した分子である。サブユニット分子は、同じ化学種の分子の場合もあり、異なる化学種の分子の場合もある。第1の型の融合分子の例としては、これらに限定されないが、融合タンパク質(例えば、ZFPまたはTALE DNA結合性ドメインと1つまたは複数の活性化ドメインの融合物)および融合核酸(例えば、上記の融合タンパク質をコードする核酸)が挙げられる。第2の型の融合分子の例としては、これらに限定されないが、3重鎖形成核酸とポリペプチドの融合物、および副溝結合物質と核酸の融合物が挙げられる。当該用語はまた、ポリヌクレオチド構成成分とポリペプチド構成成分を会合させて機能性分子を形成する系(例えば、単一ガイドRNAと機能性ドメインを会合させて遺伝子発現をモジュレートするCRISPR/Cas系)も含む。
細胞における融合タンパク質の発現は、融合タンパク質の細胞への送達に起因してもよく、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの細胞への送達により生じてもよく、ここで、ポリヌクレオチドが転写され、転写物が翻訳されて融合タンパク質が生成される。トランス−スプライシング、ポリペプチド切断およびポリペプチドライゲーションも細胞におけるタンパク質の発現に関与し得る。ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを細胞に送達するための方法は本開示の他の箇所に提示されている。
本開示の目的に関しては、「遺伝子」は、遺伝子産物をコードするDNA領域(下記を参照されたい)、ならびに遺伝子産物の産生を制御する全てのDNA領域を、そのような制御配列がコード配列および/または転写される配列に隣接しているか否かにかかわらず含む。したがって、遺伝子は、プロモーター配列、ターミネーター、リボソーム結合性部位および配列内リボソーム進入部位などの翻訳制御配列、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界エレメント、複製開始点、マトリックス付着部位および遺伝子座調節領域を含むが必ずしもこれらに限定されない。
「セーフハーバー」遺伝子座は、宿主細胞に対するいかなる有害作用も伴わずに遺伝子を挿入することができるゲノム内の遺伝子座である。挿入された遺伝子配列の発現が近隣の遺伝子由来のいかなるリードスルー発現によっても撹乱されないセーフハーバー遺伝子座が最も有益である。ヌクレアーゼ(単数または複数)によって標的とされるセーフハーバー遺伝子座の非限定的な例としては、CCR5、CCR5、HPRT、AAVS1、Rosaおよびアルブミンが挙げられる。例えば、米国特許第8,771,985号;同第8,110,379号;同第7,951,925号;米国特許出願公開第20100218264号;同第20110265198号;同第20130137104号;同第20130122591号;同第20130177983号;同第20130177960号;同第20150056705号;および同第20150159172号を参照されたい。
「遺伝子発現」とは、遺伝子に含有される情報の遺伝子産物への変換を指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造的RNAまたは任意の他の型のRNA)またはmRNAの翻訳によって生じるタンパク質であり得る。遺伝子産物はまた、キャップ形成、ポリアデニル化、メチル化、および編集などのプロセスによって修飾されたRNA、ならびに、例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADP−リボシル化、ミリスチル化、およびグリコシル化によって修飾されたタンパク質も含む。
遺伝子発現の「モジュレーション」または「改変」とは、遺伝子の活性の変化を指す。発現のモジュレーションとしては、これらに限定されないが、外因性分子(例えば、操作された転写因子)の結合を介した遺伝子の改変によるものを含めた、遺伝子活性化および遺伝子抑止を挙げることができる。モジュレーションは、ゲノム編集(例えば、切断、変更、不活化、ランダム突然変異)を介した遺伝子配列の改変によって実現することもできる。遺伝子不活化は、本明細書に記載の改変されていない細胞と比較した、遺伝子発現のあらゆる低減を指す。したがって、遺伝子不活化は、部分的または完全なものであり得る。
「目的の領域」は、例えば、外因性分子に結合することが望ましい、遺伝子内または遺伝子に隣接する遺伝子または非コード配列などの、細胞クロマチンの任意の領域である。結合は、標的化DNA切断および/または標的化組換えを目的とするものであり得る。目的の領域は、例えば、染色体内、エピソーム内、細胞小器官のゲノム内(例えば、ミトコンドリア、葉緑体)、または感染性ウイルスゲノム内に存在し得る。目的の領域は、遺伝子のコード領域内、例えばリーダー配列、トレーラー配列もしくはイントロンなどの転写される非コード領域内、または非転写領域内のコード領域の上流または下流にあり得る。目的の領域は、一ヌクレオチド対ほど小さい場合もあり、2,000ヌクレオチド対の長さ、または任意の整数値のヌクレオチド対に至る場合もある。
「真核」細胞としては、これらに限定されないが、真菌細胞(酵母など)、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞およびヒト細胞(例えば、T細胞)が挙げられる。
「作動的な連結」および「作動的に連結した」(または「作動可能に連結した」)という用語は、2つまたはそれよりも多くの構成成分(配列エレメントなど)が近位にあり、両方の構成成分が正常に機能し、構成成分のうちの少なくとも1つが、他の構成成分のうちの少なくとも1つに対して発揮される機能を媒介し得る可能性が認められるように構成成分が配置されていることに関して互換的に使用される。実例として、プロモーターなどの転写制御配列は、1つまたは複数の転写制御因子の存在または非存在に応答して転写制御配列によりコード配列の転写のレベルが調節される場合、コード配列に作動的に連結している。転写制御配列は、一般に、コード配列とシスで作動的に連結しているが、コード配列に直接隣接している必要はない。例えば、エンハンサーは、連続していないにもかかわらず、コード配列に作動的に連結した転写制御配列である。
融合ポリペプチドに関して、「作動的に連結した」という用語は、構成成分のそれぞれが、他の構成成分と連結した状態で、そのように連結していない場合と同じ機能を発揮するという事実を指し得る。例えば、DNA結合性ドメイン(例えば、ZFP、TALE)が活性化ドメインと融合した融合ポリペプチドに関して、DNA結合性ドメインと活性化ドメインは、融合ポリペプチドとして、DNA結合性ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合性部位に結合することができると同時に、活性化ドメインが遺伝子発現を上方制御することができる場合、作動的に連結している。DNA結合性ドメインが切断ドメインと融合した融合ポリペプチドの場合、DNA結合性ドメインと切断ドメインは、融合ポリペプチドとして、DNA結合性ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合性部位に結合することができると同時に、切断ドメインが標的部位の付近のDNAを切断することができる場合、作動的に連結している。同様に、DNA結合性ドメインが活性化または抑止ドメインと融合した融合ポリペプチドに関して、DNA結合性ドメインと活性化または抑止ドメインは、融合ポリペプチドとして、DNA結合性ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合性部位に結合することができると同時に、活性化ドメインが遺伝子発現を上方制御することができるまたは抑止ドメインが遺伝子発現を下方制御することができる場合、作動的に連結している。
タンパク質、ポリペプチドまたは核酸の「機能性断片」は、配列が全長タンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同一ではないが、それでもなお全長タンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同じ機能を保持するタンパク質、ポリペプチドまたは核酸である。機能性断片は、対応するネイティブな分子より多くの、より少ない、もしくは同じ数の残基を有し得、かつ/または、1つもしくは複数のアミノ酸もしくはヌクレオチド置換を含有し得る。核酸の機能(例えば、コード機能、別の核酸とハイブリダイズする能力)を決定するための方法は、当技術分野で周知である。同様に、タンパク質機能を決定するための方法が周知である。例えば、ポリペプチドのDNA結合機能を、例えば、フィルター結合法、電気泳動移動度シフト、または免疫沈降アッセイによって決定することができる。DNA切断は、ゲル電気泳動によってアッセイすることができる。Ausubelら、上記を参照されたい。タンパク質の別のタンパク質と相互作用する能力は、例えば、免疫共沈降、ツーハイブリッドアッセイまたは補完により、遺伝学的に、および生化学的の両方で決定することができる。例えば、Fields et al. (1989) Nature 340:245−246;米国特許第5,585,245号およびPCT WO98/44350を参照されたい。
「ベクター」は、遺伝子配列を標的細胞に移行することができる。一般には、「ベクター構築物」、「発現ベクター」および「遺伝子導入ベクター」は、目的の遺伝子の発現を方向付けることができ、遺伝子配列を標的細胞に移行することができる任意の核酸構築物を意味する。したがって、この用語は、クローニング、および発現ビヒクル、ならびに組込みベクターを包含する。
「レポーター遺伝子」または「レポーター配列」は、必ずではないが好ましくは常套的なアッセイで容易に測定されるタンパク質産物を産生する任意の配列を指す。適切なレポーター遺伝子としては、これらに限定されないが、抗生物質耐性(例えば、アンピシリン耐性、ネオマイシン耐性、G418耐性、ピューロマイシン耐性)を媒介するタンパク質をコードする配列、呈色または蛍光または発光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質、高感度緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ)、ならびに細胞成長および/または遺伝子増幅の増強を媒介するタンパク質(例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ)をコードする配列が挙げられる。エピトープタグとして、例えば、FLAG、His、myc、Tap、HAまたは任意の検出可能なアミノ酸配列の1つまたは複数のコピーが挙げられる。「発現タグ」は、目的の遺伝子の発現をモニタリングするために所望の遺伝子配列に作動可能に連結させることができるレポーターをコードする配列を含む。
「対象」および「患者」という用語は、互換的に使用され、ヒト患者および非ヒト霊長類などの哺乳動物、ならびにウサギ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、および他の動物などの実験動物を指す。したがって、「対象」または「患者」という用語は、本明細書で使用される場合、本発明の発現カセットを投与することができる任意の哺乳動物患者または対象を意味する。本発明の対象は、障害を有する対象または障害が発生するリスクがある対象を含む。
「処置すること(treating)」および「処置(treatment)」という用語は、本明細書で使用される場合、症状の重症度および/または発生頻度の低減、症状および/または根本原因の排除、症状および/またはそれらの根本原因の発生の予防、ならびに損傷の改善または修復を指す。がんおよび移植片対宿主病は、本明細書に記載の組成物および方法を使用して処置することができる状態の非限定的な例である。したがって、「処置すること(treating)」および「処置(treatment)」は、
(i)哺乳動物において、特にそのような哺乳動物に状態の素因があるが今のところはまだそれを有すると診断されていない場合に、疾患または状態が生じるのを防止すること;
(ii)疾患もしくは状態を阻害する、すなわち、その発症を阻止すること;
(iii)疾患もしくは状態を軽減する、すなわち、疾患もしくは状態の退縮を引き起こすこと;または
(iv)疾患または状態に起因する症状を軽減する、すなわち、根源の疾患または状態には対処せずに疼痛を軽減すること
を含む。
本明細書で使用される場合、「疾患」および「状態」という用語は、互換的に使用される場合もあり、特定の疾病または状態に既知の原因物質がなく(したがって、まだ病因が解明されていない)、したがって、まだ疾患としてではなく、望ましくない状態または症候群としか認識されず、程度の差はあるが特定の症状のセットが臨床医によって同定されているという点で異なる場合もある。
「医薬組成物」は、本発明の化合物と、生物活性のある化合物の哺乳動物、例えばヒトへの送達に関して当技術分野において一般に認められている媒体との製剤を指す。そのような媒体は、そのための全ての薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む。
「有効量」または「治療有効量」は、哺乳動物、好ましくはヒトに投与した場合に哺乳動物、好ましくはヒトにおける処置をもたらすために十分である、本発明の化合物の量を指す。「治療有効量」を構成する本発明の組成物の量は、化合物、状態およびその重症度、投与の様式、ならびに処置される哺乳動物の年齢に応じて変動するが、当業者が独自の知見および本開示を考慮して常套的に決定することができる。
DNA結合性ドメイン
HLA遺伝子もしくはHLA制御因子、またはTCR遺伝子、免疫チェックポイント遺伝子(例えば、CISH、PD1、CTLA−4など)および/または追加的な遺伝子(例えば、セーフハーバー)を含む任意の遺伝子内の標的部位に特異的に結合するDNA結合性ドメインを含む組成物が本明細書に記載される。これらに限定されないが、ジンクフィンガーDNA結合性ドメイン、TALE DNA結合性ドメイン、CRISPR/CasヌクレアーゼのDNA結合性部分(sgRNA)、またはメガヌクレアーゼ由来のDNA結合性ドメインを含めた任意のDNA結合性ドメインを本明細書に開示される組成物および方法に使用することができる。DNA結合性ドメインは、これらに限定されないが、本明細書に開示される標的部位のいずれか(例えば、表1に示されている12〜20またはそれよりも多くの連続したまたは連続していない塩基対の標的部位)に示される12ヌクレオチドまたはそれよりも多くのヌクレオチドの標的配列を含めた遺伝子内の任意の標的配列に結合し得る。ある特定の実施形態では、DNA結合性ドメインは、TCR遺伝子またはTCR制御遺伝子内の標的部位に(配列特異的に)結合し、TCR遺伝子の発現をモジュレートする。一部の実施形態では、DNA結合性ドメインはTCRA内の標的部位に結合し、他の実施形態では、ジンクフィンガーはTRBC内の標的部位に結合する。他の実施形態では、DNA結合性ドメインは、B2M遺伝子内の標的部位に配列特異的に結合し、B2M遺伝子の発現をモジュレートする。さらに別の実施形態では、DNA結合性ドメインは、CISH(例えば、表1に示されている標的部位)またはPD1遺伝子(例えば、米国特許第8,563,314号に示されている標的部位)などの免疫チェックポイント遺伝子に配列特異的に結合する。多数の遺伝子を同時に改変するために多数のDNA結合性ドメイン(同じまたは異なる遺伝子に結合する)を一緒に使用することができる(例えば、多数のヌクレアーゼ媒介性ノックアウトおよび/またはドナーの標的化組込みによる多重化)。
ある特定の実施形態では、DNA結合性ドメインは、ジンクフィンガータンパク質を含む。ジンクフィンガータンパク質は、選択される標的部位に結合するように操作されているという点で天然に存在しないことが好ましい。例えば、全てそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれるBeerli et al. (2002) Nature Biotechnol. 20:135−141;Pabo et al. (2001) Ann. Rev. Biochem. 70:313−340;Isalan et al. (2001) Nature Biotechnol. 19:656−660;Segal et al. (2001) Curr. Opin. Biotechnol. 12:632−637;Choo et al. (2000) Curr. Opin. Struct. Biol. 10:411−416;米国特許第6,453,242号;同第6,534,261号;同第6,599,692号;同第6,503,717号;同第6,689,558号;同第7,030,215号;同第6,794,136号;同第7,067,317号;同第7,262,054号;同第7,070,934号;同第7,361,635号;同第7,253,273号;および米国特許出願公開第2005/0064474号;同第2007/0218528号;同第2005/0267061号を参照されたい。
操作されたジンクフィンガー結合性ドメインは、天然に存在するジンクフィンガータンパク質と比較して新規の結合特異性を有し得る。操作する方法としては、これらに限定されないが、合理的設計および種々の型の選択が挙げられる。合理的設計は、例えば、トリプレット(またはクワドルプレット)ヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースであって、各トリプレットまたはクワドルプレットヌクレオチド配列が特定のトリプレットまたはクワドルプレット配列に結合するジンクフィンガーの1つまたは複数のアミノ酸配列と関連付けられるデータベースを使用することを含む。例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,453,242号および同第6,534,261号を参照されたい。
ファージディスプレイおよびツーハイブリッド系を含めた例示的な選択方法は、米国特許第5,789,538号;同第5,925,523号;同第6,007,988号;同第6,013,453号;同第6,410,248号;同第6,140,466号;同第6,200,759号;および同第6,242,568号;ならびにWO98/37186;WO98/53057;WO00/27878;WO01/88197およびGB2,338,237に開示されている。さらに、ジンクフィンガー結合性ドメインに対する結合特異性の増強は、例えば、米国特許第6,794,136号に記載されている。
さらに、これらおよび他の参考文献に開示されている通り、ジンクフィンガードメインおよび/またはマルチフィンガージンクフィンガータンパク質を、例えば、5アミノ酸またはそれよりも多くのアミノ酸の長さのリンカーを含めた任意の適切なリンカー配列を使用して連結することができる。6アミノ酸またはそれよりも多くのアミノ酸の長さの例示的なリンカー配列に関しては米国特許第6,479,626号;同第6,903,185号;および同第7,153,949号も参照されたい。本明細書に記載のタンパク質は、タンパク質の個々のジンクフィンガー間の適切なリンカーの任意の組合せを含み得る。さらに、ジンクフィンガー結合性ドメインに対する結合特異性の増強は、例えば、米国特許第6,794,136号に記載されている。
標的部位の選択;融合タンパク質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)を設計し構築するためのZFPおよび方法は、当業者に公知であり、米国特許第6,140,081号;同第5,789,538号;同第6,453,242号;同第6,534,261号;同第5,925,523号;同第6,007,988号;同第6,013,453号;同第6,200,759号;WO95/19431;WO96/06166;WO98/53057;WO98/54311;WO00/27878;WO01/60970;WO01/88197;WO02/099084;WO98/53058;WO98/53059;WO98/53060;WO02/016536およびWO03/016496において詳細に記載されている。
ある特定の実施形態では、DNA結合性ドメインは、TCR遺伝子またはTCR制御遺伝子内の標的部位に結合する(配列特異的に)操作されたジンクフィンガータンパク質であり、TCR遺伝子の発現をモジュレートする。一部の実施形態では、ジンクフィンガータンパク質はTCRA内の標的部位に結合し、他の実施形態では、ジンクフィンガーはTRBC内の標的部位に結合する。他の実施形態では、操作されたジンクフィンガータンパク質のDNA結合性ドメインは、B2M遺伝子内の標的部位に配列特異的に結合し、B2M遺伝子の発現をモジュレートする。さらに別の実施形態では、DNA結合性ドメインは、CISH遺伝子またはPD1遺伝子などの免疫チェックポイント遺伝子に配列特異的に結合する。
通常、ZFPは、少なくとも3つのフィンガーを含む。ZFPのいくつかは、4つ、5つまたは6つのフィンガーを含む。3つのフィンガーを含むZFPは、一般には、9または10ヌクレオチドを含む標的部位を認識し、4つのフィンガーを含むZFPは、一般には、12〜14ヌクレオチドを含む標的部位を認識し、6つのフィンガーを有するZFPは、18〜21ヌクレオチドを含む標的部位を認識し得る。ZFPは、転写活性化または抑止ドメインであり得る1つまたは複数の制御ドメインを含む融合タンパク質であってもよい。ZFPは、米国特許出願公開第20180087072号に記載されている通り、骨格領域への改変をさらに含み得る。
一部の実施形態では、DNA結合性ドメインは、ヌクレアーゼに由来し得る。例えば、I−SceI、I−CeuI、PI−PspI、PI−Sce、I−SceIV、I−CsmI、I−PanI、I−SceII、I−PpoI、I−SceIII、I−CreI、I−TevI、I−TevIIおよびI−TevIIIなどのホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼの認識配列が公知である。米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfort et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3379−3388;Dujon et al. (1989) Gene 82:115−118;Perler et al. (1994) Nucleic Acids Res. 22, 1125−1127;Jasin (1996) Trends Genet. 12:224−228;Gimble et al. (1996) J. Mol. Biol. 263:163−180;Argast et al. (1998) J. Mol. Biol. 280:345−353およびNew England Biolabsカタログも参照されたい。さらに、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合特異性を、非天然標的部位に結合するように操作することができる。例えば、Chevalier et al. (2002) Molec. Cell 10:895−905;Epinat et al. (2003) Nucleic Acids Res. 31:2952−2962;Ashworth et al. (2006) Nature 441:656−659;Paques et al. (2007) Current Gene Therapy 7:49−66;米国特許出願公開第20070117128号を参照されたい。
他の実施形態では、DNA結合性ドメインは、植物病原体Xanthomonas(Boch et al, (2009) Science 326: 1509−1512およびMoscou and Bogdanove, (2009) Science326: 1501を参照されたい)およびRalstonia(Heuer et al (2007) Applied and Environmental Microbiology 73(13): 4379−4384);米国特許出願公開第20110301073号および同第20110145940号を参照されたい)に由来するものと同様のTALエフェクター由来の操作されたドメインを含む。Xanthomonas属の植物病原性細菌は、重要な作物植物において多くの疾患を引き起こすことが公知である。Xanthomonasの病原性は、25種よりも多くの異なるエフェクタータンパク質を植物細胞に注射する保存されたIII型分泌(T3S)系に依存する。これらの注射されたタンパク質としては、植物転写活性化因子を模倣し、植物トランスクリプトームを操作する転写活性化因子様エフェクター(TALE)がある(Kay et al (2007) Science 318:648−651を参照されたい)。これらのタンパク質は、DNA結合性ドメインおよび転写活性化ドメインを含有する。最もよく特徴付けられたTALEのうちの1つはXanthomonas campestgris pv.Vesicatoria由来のAvrBs3である(Bonas et al (1989) Mol Gen Genet 218: 127−136およびWO2010079430を参照されたい)。TALEは、タンデムリピートの集中ドメインを含有し、各リピートが、これらのタンパク質のDNA結合特異性に重要であるおよそ34アミノ酸を含有する。さらに、TALEは、核局在化配列および酸性転写活性化ドメインを含有する(概説に関しては、Schornack S, et al (2006) J Plant Physiol 163(3): 256−272を参照されたい)。さらに、植物病原性の細菌であるRalstonia solanacearumにおいて、R.solanacearum biovar 1 strain GMI1000およびbiovar 4 strain RS1000においてXanthomonasのAvrBs3ファミリーに相同であるbrg11およびhpx17と称される2つの遺伝子が見出されている(Heuer et al (2007) Appl and Envir Micro 73(13): 4379−4384を参照されたい)。これらの遺伝子は、ヌクレオチド配列が互いと98.9%同一であるが、hpx17のリピートドメイン内の1,575bpの欠失により異なる。しかし、どちらの遺伝子産物もXanthomonasのAvrBs3ファミリータンパク質との40%未満の配列同一性を有する。
これらのTALエフェクターの特異性は、タンデムリピート内に見いだされる配列に依存する。リピートされた配列は、およそ102塩基対を含み、リピートは、一般には、互いと91〜100%相同である(Bonas et al, ibid)。リピートの多型は、通常、12位および13位に位置し、12位および13位の超可変二残基(リピート可変二残基またはRVD領域)の同一性とTAL−エフェクターの標的配列の連続したヌクレオチドの同一性の間には1対1の対応があると思われる(Moscou and Bogdanove, (2009) Science 326:1501および Boch et al (2009) Science 326:1509−1512を参照されたい)。実験的に、これらのTAL−エフェクターのDNA認識についての天然のコードは、12位および13位のHD配列(リピート可変二残基またはRVD)によりシトシン(C)への結合が導かれ、NGがTに結合し、NIがA、C、GまたはTに結合し、NNがAまたはGに結合し、INGがTに結合するように決定されている。これらのDNA結合リピートは、新しい配列と相互作用し、植物細胞における非内在性レポーター遺伝子の発現を活性化することができる人工転写因子を作製するために、新しい組合せおよび数のリピートを有するタンパク質にアセンブルされている(Boch et al, ibid)。操作されたTALタンパク質をFokI切断ハーフドメインと連結して、非定型的RVDを有するTALENを含めたTALエフェクタードメインヌクレアーゼ融合物(TALEN)がもたらされている。例えば、米国特許第8,586,526号を参照されたい。
一部の実施形態では、TALENは、エンドヌクレアーゼ(例えば、FokI)切断ドメインまたは切断ハーフドメインを含む。他の実施形態では、TALE−ヌクレアーゼは、メガTALである。これらのメガTALヌクレアーゼは、TALE DNA結合性ドメインおよびメガヌクレアーゼ切断ドメインを含む融合タンパク質である。メガヌクレアーゼ切断ドメインは単量体で活性であり、活性のための二量体形成を必要としない。(Boissel et al., (2013) Nucl Acid Res: 1−13, doi: 10.1093/nar/gkt1224を参照されたい)。
さらに別の実施形態では、ヌクレアーゼは、compact TALENを含む。これらは、TALE DNA結合性ドメインとTevIヌクレアーゼドメインが連結した単鎖融合タンパク質である。融合タンパク質は、TALE DNA結合性ドメインがTevIヌクレアーゼドメインに対してどこに位置しているかに応じて、TALE領域によって局在化されるニッカーゼとして作用し得るか、または二本鎖切断を創出し得る(Beurdeley et al (2013) Nat Comm 4:1762 DOI: 10.1038/ncomms2782を参照されたい)。さらに、ヌクレアーゼドメインもDNA結合機能性を示す場合がある。任意のTALENを1つまたは複数のメガTALEを有する追加的なTALEN(例えば、1つまたは複数のTALEN(cTALENまたはFokI−TALEN)と組み合わせて使用することができる。
さらに、これらおよび他の参考文献に開示されている通り、ジンクフィンガードメインおよび/またはマルチフィンガージンクフィンガータンパク質またはTALEを、例えば、5アミノ酸またはそれよりも多くのアミノ酸の長さのリンカーを含めた任意の適切なリンカー配列を使用して連結することができる。6アミノ酸またはそれよりも多くのアミノ酸の長さの例示的なリンカー配列に関しては、米国特許第6,479,626号;同第6,903,185号;および同第7,153,949号も参照されたい。本明細書に記載のタンパク質は、タンパク質の個々のジンクフィンガー間の適切なリンカーの任意の組合せを含み得る。さらに、ジンクフィンガー結合性ドメインに対する結合特異性の増強は、例えば、米国特許第6,794,136号に記載されている。
ある特定の実施形態では、DNA結合性ドメインは、DNAに結合する単一ガイドRNA(sgRNA)を含め、CRISPR/Casヌクレアーゼ系の一部である。例えば、米国特許第9,873,894号;および同第8,697,359号、米国特許出願公開第20150159172号を参照されたい。系のRNA構成成分をコードするCRISPR(クラスター化された規則的な配置の短い回文配列リピート(clustered regularly interspaced short palindromic repeats))遺伝子座、およびタンパク質をコードするcas(CRISPR関連)遺伝子座(Jansen et al., 2002. Mol. Microbiol. 43: 1565−1575;Makarova et al., 2002. Nucleic Acids Res. 30: 482−496;Makarova et al., 2006. Biol. Direct 1: 7;Haft et al., 2005. PLoS Comput. Biol. 1: e60)によりCRISPR/Casヌクレアーゼ系の遺伝子配列が構成される。微生物宿主におけるCRISPR遺伝子座は、CRISPR関連(Cas)遺伝子ならびにCRISPR媒介性核酸切断の特異性をプログラミングできる非コードRNAエレメントの組合せを含有する。
II型CRISPRは、最もよく特徴付けられた系の1つであり、標的化DNA二本鎖切断が4つの逐次的なステップで行われる。第1に、2つの非コードRNA、プレcrRNAアレイおよびtracrRNAがCRISPR遺伝子座から転写される。第2に、tracrRNAがプレcrRNAのリピート領域にハイブリダイズし、プレcrRNAの、個々のスペーサー配列を含有する成熟crRNAへのプロセシングを媒介する。第3に、成熟crRNA:tracrRNA複合体により、機能性ドメイン(例えば、Casなどのヌクレアーゼ)が標的DNAにcrRNA上のスペーサーと標的認識のための追加的な要件であるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の隣の標的DNA上のプロトスペーサーの間のワトソン・クリック塩基対合を介して方向付けられる。最後に、Cas9により標的DNAの切断が媒介されて、プロトスペーサー内の二本鎖切断が創出される。CRISPR/Cas系の活性は、3つのステップ:(i)「適応」と称されるプロセスにおいて、異質DNA配列がCRISPRアレイに挿入されて、今後の攻撃が防止されるステップと、(ii)関連するタンパク質が発現され、ならびにアレイが発現およびプロセシングされるステップと、その後の(iii)異質核酸によるRNA媒介性干渉ステップとで構成される。したがって、細菌細胞では、いわゆる「Cas」タンパク質のいくつかがCRISPR/Cas系の天然の機能に関与し、異質DNAなどの挿入などの機能において役割を果たす。
ある特定の実施形態では、Casタンパク質は、天然に存在するCasタンパク質の「機能性誘導体」であり得る。ネイティブな配列のポリペプチドの「機能性誘導体」は、ネイティブな配列のポリペプチドと共通する定性的な生物学的性質を有する化合物である。「機能性誘導体」は、これらに限定されないが、ネイティブな配列の断片、ならびに、対応するネイティブな配列のポリペプチドと共通する生物活性を有するのであれば、ネイティブな配列のポリペプチドの誘導体およびその断片を含む。本明細書において意図されている生物活性は、機能性誘導体のDNA基質を断片に加水分解する能力である。「誘導体」という用語は、ポリペプチドのアミノ酸配列バリアント、共有結合性の修飾物の両方、および誘導体Casタンパク質などのその融合物を包含する。Casポリペプチドの適切な誘導体またはその断片としては、これらに限定されないが、Casタンパク質の突然変異体、融合物、共有結合性の修飾物またはその断片が挙げられる。Casタンパク質またはその断片、ならびにCasタンパク質の誘導体またはその断片を含むCasタンパク質は、細胞から入手可能であるか、または化学的に合成することができるか、またはこれらの2つの手順の組合せによって入手可能である。細胞は、Casタンパク質を天然に産生する細胞であってもよく、あるいはCasタンパク質を天然に産生し、内因性Casタンパク質をより高い発現レベルで産生するように、または、内因性Casと同じもしくは異なるCasをコードする外因的に導入された核酸からCasタンパク質を産生するように遺伝子操作された細胞であってもよい。一部の場合では、細胞は、Casタンパク質を天然には産生せず、Casタンパク質を産生するように遺伝子操作される。一部の実施形態では、Casタンパク質は、AAVベクターを介して送達するための小さなCas9オルソログである(Ran et al (2015) Nature 510, p. 186)。したがって、DNA結合性ドメインは、表1に示されている標的部位または少なくとも9ヌクレオチドに結合するsgRNAを含み得る。
一部の実施形態では、DNA結合性ドメインはTtAgo系の一部である(Swarts et al, ibid;Sheng et al, ibidを参照されたい)。真核生物では、遺伝子サイレンシングは、タンパク質のアルゴノート(Ago)ファミリーによって媒介される。このパラダイムでは、Agoは、小さな(19〜31nt)RNAに結合する。このタンパク質−RNAサイレンシング複合体は、標的RNAを、低分子RNAと標的の間のワトソン・クリック塩基対合を介して認識し、標的RNAをヌクレオチド鎖切断的に切断する(Vogel (2014) Science 344:972−973)。対照的に、原核生物Agoタンパク質は、小さな一本鎖DNA断片に結合し、外来(多くの場合、ウイルス)DNAを検出し、除去するように機能する可能性がある(Yuan et al., (2005) Mol. Cell 19, 405;Olovnikov, et al. (2013) Mol. Cell 51, 594;Swarts et al., ibid)。例示的な原核生物Agoタンパク質としては、Aquifex aeolicus、Rhodobacter sphaeroides、およびThermus thermophilusに由来するものが挙げられる。
最もよく特徴付けられた原核生物Agoタンパク質のうちの1つは、T.thermophilusに由来するものである(TtAgo;Swarts et al. ibid)。TtAgoは、5’リン酸基を有する15ntまたは13〜25ntのいずれかの一本鎖DNA断片と会合する。TtAgoが結合するこの「ガイドDNA」は、タンパク質−DNA複合体をDNAの第三者分子内のワトソン・クリック相補DNA配列に結合するように方向付ける働きをする。これらのガイドDNA内の配列情報により標的DNAが同定されたら、TtAgo−ガイドDNA複合体により標的DNAが切断される。そのような機構は、標的DNAに結合している間のTtAgo−ガイドDNA複合体の構造によっても支持される(G. Sheng et al., ibid)。Rhodobacter sphaeroides由来のAgo(RsAgo)は同様の性質を有する(Olivnikov et al. ibid)。
任意のDNA配列の外因性ガイドDNAをTtAgoタンパク質にローディングすることができる(Swarts et al. ibid.)。TtAgo切断の特異性はガイドDNAによって方向付けられるので、したがって、外因性の、研究者に指定されたガイドDNAを用いて形成されたTtAgo−DNA複合体によりTtAgo標的DNA切断が相補的な研究者に指定された標的DNAに方向付けられる。このように、DNAにおける標的化二本鎖切断を創出することができる。TtAgo−ガイドDNA系(または他の生物体由来のオルソロガスAgo−ガイドDNA系)の使用により、細胞内のゲノムDNAの標的化切断が可能になる。そのような切断は、一本鎖または二本鎖であり得る。哺乳動物ゲノムDNAの切断に関しては、哺乳動物細胞における発現に対してコドン最適化されたTtAgoのバージョンの使用が好ましいと思われる。さらに、TtAgoタンパク質が細胞透過性ペプチドと融合している場合、細胞をin vitroにおいて形成されたTtAgo−DNA複合体で処理することが好ましい場合がある。さらに、37℃における活性が改善されるように突然変異誘発によって変更されたTtAgoタンパク質のバージョンを使用することが好ましい場合がある。Ago−RNA媒介性DNA切断を使用して、DNA切断の活用に関する当技術分野における標準の技法を使用した遺伝子ノックアウト、標的化遺伝子付加、遺伝子矯正、標的化遺伝子欠失を含めた多数の転帰に影響を及ぼすことができる。したがって、本明細書に記載の細胞への結合およびその改変(例えば、挿入および/または欠失による発現のモジュレーションおよび/または遺伝子改変)のために任意のDNA結合性ドメインを使用することができる。ある特定の実施形態では、標的遺伝子(単数または複数)の改変をもたらす分子(単数または複数)のDNA結合性ドメイン(単数または複数)は、表1に示されている標的部位の少なくとも9ヌクレオチドを含む標的部位に結合する。
融合分子
本明細書に記載の異種性制御(機能性)ドメイン(またはその機能性断片)に関連するDNA結合性ドメイン(例えば、ZFPまたはTALE、単一ガイドRNAなどのCRISPR/Cas構成成分)を含む融合分子も提供される。一般的なドメインとして、例えば、転写因子ドメイン(活性化因子、リプレッサー、コアクチベーター、コリプレッサー)、サイレンサー、癌遺伝子(例えば、myc、jun、fos、myb、max、mad、rel、ets、bcl、myb、mosファミリーメンバーなど);DNA修復酵素およびそれらの関連する因子および修飾因子;DNA再構成酵素およびそれらの関連する因子および修飾因子;クロマチン関連タンパク質およびそれらの修飾因子(例えば、キナーゼ、アセチラーゼおよび脱アセチル化酵素);ならびにDNA修飾酵素(例えば、メチルトランスフェラーゼ、トポイソメラーゼ、ヘリカーゼ、リガーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、ポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼ)およびそれらの関連する因子および修飾因子が挙げられる。そのような融合分子は、本明細書に記載のDNA結合性ドメインおよび転写制御ドメインを含む転写因子ならびにDNA結合性ドメインおよび1つまたは複数のヌクレアーゼドメインを含むヌクレアーゼを含む。
活性化(転写活性化ドメイン)を実現するための適切なドメインとしては、HSV VP16活性化ドメイン(例えば、Hagmann et al., J. Virol. 71, 5952−5962 (1997)を参照されたい)、核ホルモン受容体(例えば、Torchia et al., Curr. Opin. Cell. Biol. 10:373−383 (1998)を参照されたい);核因子カッパBのp65サブユニット(Bitko & Barik, J. Virol. 72:5610−5618 (1998)およびDoyle & Hunt, Neuroreport 8:2937−2942 (1997));Liu et al., Cancer Gene Ther. 5:3−28 (1998))、またはVP64などの人工キメラ機能性ドメイン(Beerli et al., (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:14623−33)、およびデグロン(Molinari et al., (1999) EMBO J. 18, 6439−6447)が挙げられる。追加的な例示的な活性化ドメインとしては、Oct1、Oct−2A、Sp1、AP−2、およびCTF1(Seipel et al., EMBO J. 11, 4961−4968 (1992))ならびにp300、CBP、PCAF、SRC1 PvALF、AtHD2AおよびERF−2が挙げられる。例えば、Robyr et al. (2000) Mol. Endocrinol. 14:329−347;Collingwood et al. (1999) J. Mol. Endocrinol. 23:255−275;Leo et al. (2000) Gene 245:1−11; Manteuffel−Cymborowska (1999) Acta Biochim. Pol. 46:77−89;McKenna et al. (1999) J. Steroid Biochem. Mol. Biol. 69:3−12;Malik et al. (2000) Trends Biochem. Sci. 25:277−283;およびLemon et al. (1999) Curr. Opin. Genet. Dev. 9:499−504を参照されたい。追加的な例示的な活性化ドメインとしては、これらに限定されないが、OsGAI、HALF−1、C1、AP1、ARF−5、ARF−6、ARF−7、およびARF−8、CPRF1、CPRF4、MYC−RP/GP、ならびにTRAB1が挙げられる。例えば、Ogawa et al. (2000) Gene 245:21−29;Okanami et al. (1996) Genes Cells 1:87−99;Goff et al. (1991) Genes Dev. 5:298−309;Cho et al. (1999) Plant Mol. Biol. 40:419−429;Ulmason et al. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:5844−5849;Sprenger−Haussels et al. (2000) Plant J. 22:1−8;Gong et al. (1999) Plant Mol. Biol. 41:33−44;およびHobo et al. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:15,348−15,353を参照されたい。
DNA結合性ドメインと機能性ドメインの間での融合タンパク質(またはそれをコードする核酸)の形成においては、活性化ドメインまたは活性化ドメインと相互作用する分子のいずれかが機能性ドメインとして適切であることは当業者には明らかになろう。活性化複合体および/または活性化活性(例えばヒストンアセチル化など)を標的遺伝子に動員することができる本質的に任意の分子が融合タンパク質の活性化ドメインとして有用である。融合分子における機能的ドメインとしての使用に適したインスレータードメイン、局在化ドメイン、ならびにISWI含有ドメインおよび/またはメチル結合性ドメインタンパク質などのクロマチンリモデリングタンパク質は、例えば、米国特許第7,053,264号に記載されている。
例示的な抑止ドメインとしては、これらに限定されないが、KRAB A/B、KOX、TGF−ベータ誘導性初期遺伝子(TIEG)、v−erbA、SID、MBD2、MBD3、DNMTファミリーのメンバー(例えば、DNMT1、DNMT3A、DNMT3B)、Rb、およびMeCP2が挙げられる。例えば、Bird et al. (1999) Cell 99:451−454;Tyler et al. (1999) Cell 99:443−446;Knoepfler et al. (1999) Cell 99:447−450;およびRobertson et al. (2000) Nature Genet. 25:338−342を参照されたい。追加的な例示的な抑止ドメインとしては、これらに限定されないが、ROM2およびAtHD2Aが挙げられる。例えば、Chem et al. (1996) Plant Cell 8:305−321;およびWu et al. (2000) Plant J. 22:19−27を参照されたい。
融合分子は、当業者に周知のクローニングおよび生化学的コンジュゲーションの方法によって構築される。融合分子は、機能性ドメイン(例えば、転写活性化または抑止ドメイン)に関連するDNA結合性ドメイン(例えば、ZFP、TALE、sgRNA)を含む。融合分子はまた、必要に応じて、核局在化シグナル(例えばSV40ミディアムT−抗原に由来するものなど)およびエピトープタグ(例えば、FLAGおよび赤血球凝集素など)も含む。融合タンパク質(およびそれらをコードする核酸)は、翻訳の読み枠が融合物の構成成分の間で保存されるように設計する。
一方の機能性ドメイン(またはその機能性断片)のポリペプチド構成成分と他方の非タンパク質DNA結合性ドメイン(例えば、抗生物質、インターカレーター、副溝結合物質、核酸)の間の融合物は、当業者に公知の生化学的コンジュゲーションの方法によって構築される。例えば、Pierce Chemical Company(Rockford、IL) Catalogueを参照されたい。副溝結合物質とポリペプチドとの間の融合物を作製するための方法および組成物は、Mapp et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:3930−3935に記載されている。さらに、CRISPR/Cas系の単一ガイドRNAは機能的ドメインと会合して活性な転写制御因子およびヌクレアーゼを形成する。
ある特定の実施形態では、標的部位は、細胞クロマチンの到達可能な領域内に存在する。到達可能な領域は、例えば、米国特許第7,217,509号および同第7,923,542号に記載されている通り決定することができる。標的部位が細胞クロマチンの到達可能な領域内に存在しない場合、1つまたは複数の到達可能な領域を米国特許第7,785,792号および同第8,071,370号に記載されている通り生成することができる。追加的な実施形態では、融合分子のDNA結合性ドメインは、その標的部位が到達可能な領域内にあるか否かにかかわらず細胞クロマチンに結合することができる。例えば、そのようなDNA結合性ドメインは、リンカーDNAおよび/またはヌクレオソームDNAに結合することができる。この型の「パイオニア」DNA結合性ドメインの例は、ある特定のステロイド受容体において、および肝細胞核因子3(HNF3)において見いだされる(Cordingley et al. (1987) Cell 48:261−270;Pina et al. (1990) Cell 60:719−731;およびCirillo et al. (1998) EMBO J. 17:244−254)。
融合分子は、当業者には公知の通り、薬学的に許容される担体を用いて製剤化することができる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th ed., 1985;ならびに米国特許第6,453,242号および同第6,534,261号を参照されたい。
融合分子の機能性構成成分/ドメインは、融合分子が標的配列にDNA結合性ドメインを介して結合すると遺伝子の転写に影響を及ぼすことができる種々の異なる構成成分のいずれかから選択することができる。したがって、機能性構成成分としては、これらに限定されないが、活性化因子、リプレッサー、コアクチベーター、コリプレッサー、およびサイレンサーなどの種々の転写因子ドメインを挙げることができる。
追加的な例示的な機能的ドメインは、例えば、米国特許第6,534,261号および同第6,933,113号において開示されている。
外因性小分子またはリガンドによって制御される機能的ドメインも選択することができる。例えば、機能性ドメインの活性なコンフォメーションが外部RheoChem(商標)リガンドの存在下でのみ想定される場合、RheoSwitch(登録商標)技術を使用することができる(例えば、US20090136465を参照されたい)。したがって、ZFPを調節可能な機能性ドメインに作動可能に連結することができ、得られるZFP−TFの活性は外部リガンドにより調節される。
ヌクレアーゼ
ある特定の実施形態では、融合分子は、切断(ヌクレアーゼ)ドメインに関連するDNA結合性ドメインを含む。したがって、遺伝子改変は、ヌクレアーゼ、例えば、操作されたヌクレアーゼを使用して実現することができる。操作されたヌクレアーゼの技術は、天然に存在するDNA結合性タンパク質を操作することに基づく。例えば、ホーミングエンドヌクレアーゼを、調整されたDNA結合特異性を用いて操作することが記載されている。Chames et al. (2005) Nucleic Acids Res 33(20):e178;Arnould et al. (2006) J. Mol. Biol. 355:443−458。さらに、ZFPを操作することも記載されている。例えば、米国特許第6,534,261号;同第6,607,882号;同第6,824,978号;同第6,979,539号;同第6,933,113号;同第7,163,824号;および同第7,013,219号を参照されたい。
さらに、ZFNおよびTALEN−その意図された核酸標的をその操作された(ZFPまたはTALE)DNA結合性ドメインを通じて認識し、ヌクレアーゼ活性によりDNAをDNA結合性部位の付近でカットさせることができる機能性実体を創出するためにZFPおよび/またはTALEがヌクレアーゼドメインと融合され得る。
したがって、本明細書に記載の方法および組成物は、広範に適用可能であり、任意の目的のヌクレアーゼを伴い得る。ヌクレアーゼの非限定的な例としては、メガヌクレアーゼ、TALENおよびジンクフィンガーヌクレアーゼが挙げられる。ヌクレアーゼは、異種DNA結合性および切断ドメイン(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ;異種性切断ドメインを有するメガヌクレアーゼDNA結合性ドメイン)を含み得る、あるいは、天然に存在するヌクレアーゼのDNA結合性ドメインを、選択された標的部位に結合するように変更することができる(例えば、同類の結合性部位とは異なる部位に結合するように操作されたメガヌクレアーゼ)。
本明細書に記載のヌクレアーゼのいずれかでは、ヌクレアーゼは、操作されたTALE DNA結合性ドメインおよびTALENとも称されるヌクレアーゼドメイン(例えば、エンドヌクレアーゼおよび/またはメガヌクレアーゼドメイン)を含み得る。これらのTALENタンパク質を使用者に選択された標的配列との頑強な部位特異的相互作用のために操作するための方法および組成物が公開されている(米国特許第8,586,526号を参照されたい)。一部の実施形態では、TALENは、エンドヌクレアーゼ(例えば、FokI)切断ドメインまたは切断ハーフドメインを含む。他の実施形態では、TALE−ヌクレアーゼは、メガTALである。これらのメガTALヌクレアーゼは、TALE DNA結合性ドメインおよびメガヌクレアーゼ切断ドメインを含む融合タンパク質である。メガヌクレアーゼ切断ドメインは単量体で活性であり、活性のための二量体形成を必要としない。(Boissel et al., (2013) Nucl Acid Res: 1−13, doi: 10.1093/nar/gkt1224を参照されたい)。さらに、ヌクレアーゼドメインもDNA結合機能性を示す場合がある。
さらに別の実施形態では、ヌクレアーゼは、compact TALEN(cTALEN)を含む。これらは、TALE DNA結合性ドメインとTevIヌクレアーゼドメインを連結する単鎖融合タンパク質である。融合タンパク質は、TALE DNA結合性ドメインがTevIヌクレアーゼドメインに対してどこに位置しているかに応じて、TALE領域によって局在化されるニッカーゼとして作用し得るか、または二本鎖切断を創出し得る(Beurdeley et al (2013) Nat Comm: 1−8 DOI: 10.1038/ncomms2782を参照されたい)。任意のTALENを追加的なTALEN(例えば、1つまたは複数のメガTALを有する1つまたは複数のTALEN(cTALENまたはFokI−TALEN))または他のDNA切断酵素と組み合わせて使用することができる。
ある特定の実施形態では、ヌクレアーゼは、切断活性を示すメガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼ)またはその一部を含む。天然に存在するメガヌクレアーゼは、15〜40塩基対の切断部位を認識し、一般に、4つのファミリー:LAGLIDADGファミリー(配列番号63として開示されている「LAGLIDADG」)、「、GIY−YIGファミリー、His−CystボックスファミリーおよびHNHファミリーに群分けされる。例示的なホーミングエンドヌクレアーゼとしては、I−SceI、I−CeuI、PI−PspI、PI−Sce、I−SceIV、I−CsmI、I−PanI、I−SceII、I−PpoI、I−SceIII、I−CreI、I−TevI、I−TevIIおよびI−TevIIIが挙げられる。それらの認識配列は公知である。米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfort et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3379−3388;Dujon et al. (1989) Gene 82:115−118;Perler et al. (1994) Nucleic Acids Res. 22, 1125−1127;Jasin (1996) Trends Genet. 12:224−228;Gimble et al. (1996) J. Mol. Biol. 263:163−180;Argast et al. (1998) J. Mol. Biol. 280:345−353およびNew England Biolabsカタログも参照されたい。
主にLAGLIDADGファミリー(配列番号63として開示されている「LAGLIDADG」)に由来する、天然に存在するメガヌクレアーゼ由来のDNA結合性ドメインは、植物、酵母、Drosophila、哺乳動物細胞およびマウスにおける部位特異的ゲノム改変を促進するために使用されているが、この手法は、メガヌクレアーゼ認識配列を保存する相同な遺伝子(Monet et al. (1999), Biochem. Biophysics. Res. Common. 255: 88−93)または認識配列が導入されている予め操作されたゲノム(Route et al. (1994), Mol. Cell. Biol. 14: 8096−106;Chilton et al. (2003), Plant Physiology. 133: 956−65;Puchta et al. (1996), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 5055−60;Rong et al. (2002), Genes Dev. 16: 1568−81;Gouble et al. (2006), J. Gene Med. 8(5):616−622)のいずれかの改変に限られている。したがって、メガヌクレアーゼを医学的にまたはバイオテクノロジー的に関連する部位において新規の結合特異性を示すように操作する試みがなされている(Porteus et al. (2005), Nat. Biotechnol. 23: 967−73;Sussman et al. (2004), J. Mol. Biol. 342:31−41;Epinat et al. (2003), Nucleic Acids Res. 31:2952−62;Chevalier et al. (2002) Molec. Cell 10:895−905;Epinat et al. (2003) Nucleic Acids Res. 31:2952−2962;Ashworth et al. (2006) Nature 441:656−659;Paques et al. (2007) Current Gene Therapy 7:49−66;米国特許出願公開第20070117128号;同第20060206949号;同第20060153826号;同第20060078552号;および同第20040002092号)。さらに、メガヌクレアーゼ由来の天然に存在するまたは操作されたDNA結合性ドメインを異種性ヌクレアーゼ由来の切断ドメイン(例えば、FokI)と作動可能に連結することができ、かつ/または、メガヌクレアーゼ由来の切断ドメインを異種DNA結合性ドメイン(例えば、ZFPまたはTALE)と作動可能に連結することができる。
他の実施形態では、ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)またはTALE DNA結合性ドメイン−ヌクレアーゼ融合物(TALEN)である。ZFNおよびTALENは、選択された遺伝子内の標的部位に結合するように操作されたDNA結合性ドメイン(ジンクフィンガータンパク質またはTALE DNA結合性ドメイン)および切断ドメインまたは切断ハーフドメイン(例えば、本明細書に記載の制限ヌクレアーゼおよび/またはメガヌクレアーゼに由来する)を含む。
上で詳細に記載されている通り、ジンクフィンガー結合性ドメインおよびTALE DNA結合性ドメインを、選択された配列に結合するように操作することができる。例えば、Beerli et al. (2002) Nature Biotechnol. 20:135−141;Pabo et al. (2001) Ann. Rev. Biochem. 70:313−340;Isalan et al. (2001) Nature Biotechnol. 19:656−660;Segal et al. (2001) Curr. Opin. Biotechnol. 12:632−637;Choo et al. (2000) Curr. Opin. Struct. Biol. 10:411−416を参照されたい。操作されたジンクフィンガー結合性ドメインまたはTALEタンパク質は、天然に存在するタンパク質と比較して、新規の結合特異性を有し得る。操作する方法としては、これらに限定されないが、合理的設計および種々の型の選択が挙げられる。合理的設計は、例えば、トリプレット(またはクワドルプレット)ヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーまたはTALEアミノ酸配列を含むデータベースであって、各トリプレットまたはクワドルプレットヌクレオチド配列が、特定のトリプレットまたはクワドルプレット配列に結合するジンクフィンガーまたはTALEリピート単位の1つまたは複数のアミノ酸配列に関連付けられるデータベースを使用することを含む。例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,453,242号および同第6,534,261号を参照されたい。
標的部位の選択;ならびに融合タンパク質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)を設計し、構築するための方法は、当業者に公知であり、それらの全体が本明細書において参照により組み込まれる米国特許第7,888,121号および同第8,409,861号において詳細に記載されている。
さらに、これらおよび他の参考文献に開示されている通り、ジンクフィンガードメイン、TALEおよび/またはマルチフィンガージンクフィンガータンパク質を、例えば、5アミノ酸またはそれよりも多くのアミノ酸の長さのリンカーを含めた任意の適切なリンカー配列を使用して連結することができる。6アミノ酸またはそれよりも多くのアミノ酸の長さの例示的なリンカー配列に関しては、例えば、米国特許第6,479,626号;同第6,903,185号;および同第7,153,949号を参照されたい。本明細書に記載のタンパク質は、タンパク質の個々のジンクフィンガー間の適切なリンカーの任意の組合せを含み得る。米国特許第8,772,453号も参照されたい。
したがって、ZFN、TALENおよび/またはメガヌクレアーゼなどのヌクレアーゼは、任意のDNA結合性ドメインおよび任意のヌクレアーゼ(切断)ドメイン(切断ドメイン、切断ハーフドメイン)を含み得る。上記の通り、切断ドメインは、DNA結合性ドメイン、例えば、ジンクフィンガーまたはTAL−エフェクターDNA結合性ドメインおよびヌクレアーゼまたはメガヌクレアーゼDNA結合性ドメイン由来の切断ドメインおよび異なるヌクレアーゼ由来の切断ドメインに対して異種性であり得る。異種性切断ドメインは、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得ることができる。切断ドメインが由来し得る例示的なエンドヌクレアーゼとしては、これらに限定されないが、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼが挙げられる。例えば、2002−2003 Catalogue、New England Biolabs、Beverly、MA;およびBelfort et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3379−3388を参照されたい。DNAを切断する追加的な酵素が公知である(例えば、S1ヌクレアーゼ;リョクトウヌクレアーゼ;膵臓DNase I;小球菌ヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼ;Linn et al. (eds.) Nucleases, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1993も参照されたい)。これらの酵素(またはその機能性断片)の1つまたは複数を切断ドメインおよび切断ハーフドメインの供給源として使用することができる。
同様に、切断ハーフドメインは、上記の通り、切断活性のために二量体形成を必要とする任意のヌクレアーゼまたはその一部に由来し得る。一般に、融合タンパク質が切断ハーフドメインを含む場合、切断には2つの融合タンパク質が必要である。あるいは、2つの切断ハーフドメインを含む単一のタンパク質を使用することができる。2つの切断ハーフドメインが同じエンドヌクレアーゼ(またはその機能性断片)に由来してもよく、各切断ハーフドメインが異なるエンドヌクレアーゼ(またはその機能性断片)に由来してもよい。さらに、2つの融合タンパク質の標的部位は、2つの融合タンパク質のそれらのそれぞれの標的部位への結合により、切断ハーフドメインが互いに、切断ハーフドメインが例えば二量体形成によって機能性切断ドメインを形成することを可能にする空間的配向に置かれるように、互いに対して配置されることが好ましい。したがって、ある特定の実施形態では、標的部位の端付近は5〜8ヌクレオチドまたは15〜18ヌクレオチド隔てられている。しかし、任意の整数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対が2つの標的部位間に介在してよい(例えば、2から50ヌクレオチド対まで、またはそれよりも多く)。一般に、切断の部位は標的部位間に位置するが、切断部位から1〜50塩基対(または1〜5塩基対、1〜10塩基対、および1〜20塩基対を含めた、その間の任意の値)、1〜100塩基対(またはその間の任意の値)、100〜500塩基対(またはその間の任意の値)、500〜1000塩基対(またはその間の任意の値)、またはさらには1kbよりも大きくを含め、切断部位から1キロベースまたはそれよりも大きく離れても位置し得る。
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は、多くの種に存在し、DNAに配列特異的に結合し(認識部位において)、DNAを結合部位またはその付近で切断することができる。ある特定の制限酵素(例えば、IIS型)は、DNAを認識部位から出た部位で切断し、分離可能な結合および切断ドメインを有する。例えば、IIS型酵素FokIは、一方の鎖上のその認識部位から9ヌクレオチド、および他方の鎖上のその認識部位から13ヌクレオチドにおけるDNAの二本鎖切断を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号;同第5,436,150号および同第5,487,994号;ならびにLi et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4275−4279;Li et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2764−2768;Kim et al. (1994a) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:883−887;Kim et al. (1994b) J. Biol. Chem. 269:31,978−31,982を参照されたい。したがって、一実施形態では、融合タンパク質は、少なくとも1つのIIS型制限酵素に由来する切断ドメイン(または切断ハーフドメイン)、および操作されていてもされていなくてもよい1つまたは複数のジンクフィンガー結合性ドメインを含む。
切断ドメインが結合性ドメインから分離可能である例示的なIIS型制限酵素は、FokIである。この特定の酵素は、二量体として活性である。Bitinaite et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 10,570−10,575。したがって、本開示の目的に関しては、開示される融合タンパク質に使用されるFokI酵素の一部は、切断ハーフドメインと考えられる。したがって、ジンクフィンガー−FokI融合物を使用した細胞の配列の標的化二本鎖切断および/または標的化置換えに関しては、それぞれがFokI切断ハーフドメインを含む2つの融合タンパク質を使用して、触媒として活性な切断ドメインを再構成することができる。あるいは、ジンクフィンガー結合性ドメインおよび2つのFokI切断ハーフドメインを含有する単一ポリペプチド分子を使用することもできる。ジンクフィンガー−FokI融合物を使用した標的化切断および標的化配列変更に関するパラメーターは本開示の他の箇所に提示されている。
切断ドメインまたは切断ハーフドメインは、切断活性を保持する、または多量体を形成(例えば、二量体を形成)して機能性切断ドメインを形成する能力を保持するタンパク質の任意の部分であってよい。
例示的なIIS型制限酵素は、その全体が本明細書に組み込まれる国際公開WO07/014275に記載されている。追加的な制限酵素は、分離可能な結合および切断ドメインも含有し、これらは本開示により意図されている。例えば、Roberts et al. (2003) Nucleic Acids Res. 31:418−420を参照されたい。
ある特定の実施形態では、例えば、その全ての開示全体が本明細書において参照により組み込まれる米国特許第7,914,796号;同第8,034,598号;および同第8,623,618号;ならびに米国特許出願公開第20110201055号に記載されている通り、切断ドメインはホモ二量体形成を最小限にするまたは防止する1つまたは複数の操作された切断ハーフドメイン(二量体形成ドメイン突然変異体とも称される)を含む。FokIの446位、447位、479位、483位、484位、486位、487位、490位、491位、496位、498位、499位、500位、531位、534位、537位、および538位のアミノ酸残基は全てFokI切断ハーフドメインの二量体形成に影響を及ぼすための標的である。
偏性ヘテロ二量体を形成するFokIの例示的な操作された切断ハーフドメインとして、第1の切断ハーフドメインがFokIの490位および538位のアミノ酸残基に突然変異を含み、第2の切断ハーフドメインがアミノ酸残基486および499に突然変異を含む対が挙げられる。
したがって、一実施形態では、490位の突然変異によりGlu(E)がLys(K)で置き換えられ;538位の突然変異によりIso(I)がLys(K)で置き換えられ;486位の突然変異によりGln(Q)がGlu(E)で置き換えられ;499位の突然変異によりIso(I)がLys(K)で置き換えられる。具体的には、本明細書に記載の操作された切断ハーフドメインを、1つの切断ハーフドメインの490位(E→K)および538位(I→K)を突然変異させて、「E490K:I538K」と称される操作された切断ハーフドメインを作出することによって、および別の切断ハーフドメインの486位(Q→E)および499位(I→L)を突然変異させて、「Q486E:I499L」と称される操作された切断ハーフドメインを作出することによって調製した。本明細書に記載の操作された切断ハーフドメインは、異常な切断が最小化または消失した偏性ヘテロ二量体突然変異体である。例えば、その開示全体があらゆる目的に関して参照によって組み込まれる米国特許第7,914,796号および同第8,034,598号を参照されたい。ある特定の実施形態では、操作された切断ハーフドメインは、486位、499位および496位(野生型FokIと相対的に番号付けされた)における突然変異、例えば、486位の野生型Gln(Q)残基がGlu(E)残基で置き換えられ、499位の野生型Iso(I)残基がLeu(L)残基で置き換えられ、496位の野生型Asn(N)残基がAsp(D)またはGlu(E)残基で置き換えられた突然変異(それぞれ「ELD」および「ELE」ドメインとも称される)を含む。他の実施形態では、操作された切断ハーフドメインは、490位、538位および537位(野生型FokIと相対的に番号付けされた)における突然変異、例えば、490位の野生型Glu(E)残基がLys(K)残基で置き換えられ、538位の野生型Iso(I)残基がLys(K)残基で置き換えられ、537位の野生型His(H)残基がLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換えられた突然変異(それぞれ「KKK」および「KKR」ドメインとも称される)を含む。他の実施形態では、操作された切断ハーフドメインは、490位および537位(野生型FokIと相対的に番号付けされた)における突然変異、例えば、490位の野生型Glu(E)残基がLys(K)残基で置き換えられ、537位の野生型His(H)残基がLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換えられた突然変異(それぞれ「KIK」および「KIR」ドメインとも称される)を含む。例えば、その開示全体があらゆる目的に関して参照により組み込まれる米国特許第7,914,796号;同第8,034,598号;および同第8,623,618号を参照されたい。他の実施形態では、操作された切断ハーフドメインは、「Sharkey」および/または「Sharkey」突然変異を含む(Guo et al, (2010) J. Mol. Biol. 400(1):96−107を参照されたい)。
あるいは、ヌクレアーゼを、いわゆる「分割酵素(split−enzyme)」技術を使用し、in vivoにおいて核酸標的部位でアセンブルすることができる(例えば、米国特許出願公開第20090068164号を参照されたい)。そのような分割酵素の構成成分を別々の発現構築物上で発現させることもでき、1つのオープンリーディングフレームに連結することもでき、その場合、個々の構成成分は、例えば、自己切断性2AペプチドまたはIRES配列によって分離されている。構成成分は、個々のジンクフィンガー結合性ドメインまたはメガヌクレアーゼ核酸結合性ドメインのドメインであってよい。
ヌクレアーゼ(例えば、ZFNおよび/またはTALEN)を、使用前に、例えば、米国特許第8,563,314号に記載されている通り、酵母に基づく染色体系において活性についてスクリーニングすることができる。
ある特定の実施形態では、ヌクレアーゼは、CRISPR/Cas系を含む。系のRNA構成成分をコードするCRISPR(クラスター化された規則的な配置の短い回文配列リピート)遺伝子座、およびタンパク質をコードするCas(CRISPR関連)遺伝子座(Jansen et al., 2002. Mol. Microbiol. 43: 1565−1575;Makarova et al., 2002. Nucleic Acids Res. 30: 482−496;Makarova et al., 2006. Biol. Direct 1: 7;Haft et al., 2005. PLoS Comput. Biol. 1: e60)によりCRISPR/Casヌクレアーゼ系の遺伝子配列が構成される。微生物宿主におけるCRISPR遺伝子座は、CRISPR関連(Cas)遺伝子ならびにCRISPR媒介性核酸切断の特異性をプログラミングできる非コードRNAエレメントの組合せを含有する。
II型CRISPRは、最もよく特徴付けられた系の1つであり、標的化DNA二本鎖切断が4つの逐次的なステップで行われる。第1に、2つの非コードRNA、プレcrRNAアレイおよびtracrRNAがCRISPR遺伝子座から転写される。第2に、tracrRNAがプレcrRNAのリピート領域にハイブリダイズし、プレcrRNAの、個々のスペーサー配列を含有する成熟crRNAへのプロセシングを媒介する。第3に、成熟crRNA:tracrRNA複合体により、Cas9が標的DNAにcrRNA上のスペーサーと標的認識のための追加的な要件であるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の隣の標的DNA上のプロトスペーサーの間のワトソン・クリック塩基対合を介して方向付けられる。最後に、Cas9により標的DNAの切断が媒介されて、プロトスペーサー内の二本鎖切断が創出される。CRISPR/Cas系の活性は、3つのステップ:(i)「適応」と称されるプロセスにおいて、異質DNA配列がCRISPRアレイに挿入されて、今後の攻撃が防止されるステップと、(ii)関連するタンパク質が発現され、ならびにアレイが発現およびプロセシングされるステップと、その後の(iii)異質核酸によるRNA媒介性干渉ステップとで構成される。したがって、細菌細胞では、いわゆる「Cas」タンパク質のいくつかがCRISPR/Cas系の天然の機能に関与し、異質DNAなどの挿入などの機能において役割を果たす。
ある特定の実施形態では、Casタンパク質は、天然に存在するCasタンパク質の「機能性誘導体」であり得る。ネイティブな配列のポリペプチドの「機能性誘導体」は、ネイティブな配列のポリペプチドと共通する定性的な生物学的性質を有する化合物である。「機能性誘導体」は、これらに限定されないが、ネイティブな配列の断片、ならびに、対応するネイティブな配列のポリペプチドと共通する生物活性を有するのであれば、ネイティブな配列のポリペプチドの誘導体およびその断片を含む。本明細書において意図されている生物活性は、機能性誘導体のDNA基質を断片に加水分解する能力である。「誘導体」という用語は、ポリペプチドのアミノ酸配列バリアント、共有結合性の修飾物の両方、およびその融合物を包含する。Casポリペプチドの適切な誘導体またはその断片としては、これらに限定されないが、Casタンパク質の突然変異体、融合物、共有結合性の修飾物またはその断片が挙げられる。Casタンパク質またはその断片、ならびにCasタンパク質の誘導体またはその断片を含むCasタンパク質は、細胞から入手可能であるか、または化学的に合成することができるか、またはこれらの2つの手順の組合せによって入手可能である。細胞は、Casタンパク質を天然に産生する細胞であってもよく、あるいはCasタンパク質を天然に産生し、内因性Casタンパク質をより高い発現レベルで産生するように、または、内因性Casと同じもしくは異なるCasをコードする外因的に導入された核酸からCasタンパク質を産生するように遺伝子操作された細胞であってもよい。一部の場合では、細胞は、Casタンパク質を天然には産生せず、Casタンパク質を産生するように遺伝子操作される。
TCR遺伝子および他の遺伝子を標的とする例示的なCRISPR/Casヌクレアーゼ系は、例えば、米国特許出願公開第20150056705号に開示されている。ヌクレアーゼ(単数または複数)により、標的部位内に1つまたは複数の二本鎖および/または一本鎖カットを生じさせることができる。ある特定の実施形態では、ヌクレアーゼは、触媒として不活性な切断ドメイン(例えば、FokIおよび/またはCasタンパク質)を含む。例えば、米国特許第9,200,266号;同第8,703,489号およびGuillinger et al. (2014) Nature Biotech. 32(6):577−582を参照されたい。触媒として不活性な切断ドメインは、触媒として活性なドメインと組み合わせることで、一本鎖カットを生じさせるニッカーゼとして作用し得る。したがって、2つのニッカーゼを組み合わせて使用して、特定の領域内に二本鎖カットを生じさせることができる。追加的なニッカーゼも当技術分野で公知である、例えば、McCaffrey et al. (2016) Nucleic Acids Res. 44(2):e11. doi: 10.1093/nar/gkv878. Epub 2015 Oct 19。
標的部位
上に詳細に記載されている通り、DNA結合性ドメインは、選択された任意の配列に結合するように操作することができる。操作されたDNA結合性ドメインは、天然に存在するDNA結合性ドメインと比較して新規の結合特異性を有し得る。
本明細書に記載のヌクレアーゼは、TCR遺伝子またはB2M遺伝子の、例えば、表1に示されている少なくとも9ヌクレオチド(例えば、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21またはそれよりも多くの連続したまたは連続していない)標的部位を標的とする。したがって、本明細書に記載の組成物は、TCR遺伝子が、TCRA遺伝子のエクソンc2において改変されている(例えば、CARもしくはCAR−HLA−EもしくはCAR−HLA−G導入遺伝子の挿入を含めた挿入および/もしくは欠失によって):B2M遺伝子が、B2M遺伝子のエクソン1で改変されている(例えば、CAR導入遺伝子の挿入を含めた挿入および/もしくは欠失によって);かつ/またはHPRT遺伝子が改変されている(例えば、CARもしくはCAR−HLA−EもしくはCAR−HLA−G導入遺伝子の挿入を含めた挿入および/または欠失によって)、細胞を含む。改変は、標的部位内におけるものであってもよく、あるいは、標的部位の3’または5’末端に隣接していてもよい(例えば、1〜5ヌクレオチド、1〜10ヌクレオチドまたは1〜20ヌクレオチド以内)。さらに別の実施形態では、改変は、表1の対の標的部位の間のものであってよい。
ドナー
本明細書に記載の通りヌクレアーゼ媒介性切断後に任意のドナーをゲノムに挿入して組み込むことができる。ドナーは、1つもしくは複数のコード配列(例えば、CAR);1つもしくは複数のRNA(RNAi、shRNAなど);1つまたは複数の非コード配列;および/または他の配列を含み得る。ドナー構築物は、mRNA形態で、または本明細書に記載のウイルスまたは非ウイルスDNAベクターを使用して細胞または対象に送達することができる。ある特定の実施形態では、ドナーをmRNA形態で送達する、または、これらに限定されないが、AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAV8.2、AAV9およびAAVrh10ならびに/またはAAV2/8、AAV2/5およびAAV2/6などのシュードタイピングされたAAVを含めた1つまたは複数のAAVベクターで運ぶ。
ある特定の実施形態では、ドナーは、これらに限定されないが、1つまたは複数のCARをコードする配列;ならびに1つまたは複数のB2Mコード配列;1つまたは複数のHLA−Gおよび/またはHLA−Eコード配列;1つまたは複数のレポーター(例えば、GFP)などを含めた1つまたは複数の導入遺伝子を含む。
CARをコードする配列(CAR陽性(+)T細胞を作製するため)は、共刺激ドメインおよび活性化ドメインを含む細胞内シグナル伝達部分と連結した特定の腫瘍抗原に対する特異性を有する細胞外単鎖可変断片(scFv)を含み得る。共刺激ドメインは、例えばCD28に由来するものであってよく、活性化ドメインは、例えばCD3−ゼータに由来するものであってよい。CAR導入遺伝子は、2つ、3つ、4つ、またはそれよりも多くの共刺激ドメインを含み得る。CAR scFvは、例えば、全ての正常なB細胞、ならびにこれらに限定されないが、NHL、CLL、および非T細胞ALLを含めたB細胞悪性腫瘍を含めたB細胞系列の細胞によって発現される膜貫通タンパク質であるCD19を標的とするように設計することができる。例えば、米国特許第9,855,298号を参照されたい。ある特定の実施形態では、CARは、FMC63−CD8BBZと称されるCARを含み、ここで、FMC63は、抗CD19 scFv配列であり(米国特許第9,701,758号を参照されたい)、CD8BBZは、CARのscFv以外の部分(CD8ヒンジ/膜貫通ドメイン(CD8)、41BB遺伝子由来の共刺激ドメイン(BB)、CD3z遺伝子由来の活性化ドメイン(Z))を指す。
これらに限定されないが、その対立遺伝子バリアントおよび/または機能性断片を含めた任意のHLA−Eおよび/またはHLA−Gをコードする配列を本明細書に記載の組成物および方法に使用することができる。ある特定の実施形態では、2つの主要なHLA−E対立遺伝子バリアント:HLA−E*0101(本明細書ではERまたはHLA−E0101とも称される)またはHLA−E*0103(本明細書ではEGまたはHLA−E0103とも称される)のうちの一方をコードする配列を含む導入遺伝子が使用される。HLA−E0101およびHLA−E0103は、1アミノ酸位だけが異なり、HLA−E0101の107位のアルギニンがHLA−E0103ではグリシンに置き換えられている(Celik et al, ibid)。別の実施形態では、ドナーは、融合タンパク質、例えば、B2M−HLA−Gおよび/またはB2M−HLA−E融合タンパク質を含む。融合タンパク質をコードする導入遺伝子の構成成分は、これらに限定されないが、HLA−Gおよび/もしくはHLA−E遺伝子配列の前にB2M遺伝子配列;またはB2M遺伝子配列の前にHLA−Gおよび/もしくはHLA−E遺伝子配列を含めた任意の順序であってよい。
例として、CAR配列、B2M配列、HLA−Eおよび/またはHLA−G配列に対して1つのドナー(例えば、配列の1つまたは複数の間に自己切断性2Aペプチドおよび/またはリンカーを伴って)を含め、1つまたは複数のドナーを使用して導入遺伝子を導入することができる。ある特定の実施形態では、ドナーは、CARをコードする配列(単数または複数)とB2M/HLA−GまたはEをコードする配列(例えば、B2M−HLA−G/E融合タンパク質をコードする配列)の間に2A配列を含む。あるいは、CAR配列に対して1つのドナー、ならびにB2M、HLA−Eおよび/またはHLA−G遺伝子に対して1つまたは複数の別のドナー、例えば、第1のCARドナーと、B2M/HLA−E/G融合タンパク質に対する第2のドナー(1つまたは複数のCAR配列もさらに含み得る)を使用することができる。ある特定の実施形態では、ドナーは、CARならびにB2M−HLA−Eおよび/またはG融合タンパク質をコードし、CARと融合タンパク質の間に自己切断性2Aペプチドを伴い、さらに、融合タンパク質のタンパク質コード配列間に1つまたは複数のリンカー(例えば、1、2、3、4、5、6またはそれよりも多くのGS4リンカー)を伴う導入遺伝子を含む。
本明細書に記載のドナーはいずれも、任意の長さの相同アーム(ヌクレアーゼが標的とする遺伝子に対するもの)を含み得る。例えば、米国特許第8,822,221号;同第7,972.854号を参照されたい。「長い相同アーム」は約1Kbの長さであり、「短い相同アーム」は約250bpから750bpまでの長さいずれかである。
さらに、ドナーはいずれも、これらに限定されないが、相同アーム;1つまたは複数の導入遺伝子(その発現が同じまたは異なる調節エレメントによって駆動される)、例えば、レポーター、B2M、HLA−G、HLA−Eおよび/または1つまたは複数のCARなど;ならびに、1つもしくは複数の構成的プロモーターもしくは誘導性プロモーター(例えば、PGK)、1つもしくは複数のエンハンサー配列(例えば、TCRエンハンサー配列);2A配列;ポリアデニル化シグナル(単数または複数);IRES配列、5’UTRおよび/もしくは3’UTR領域;および/または1つもしくは複数の(G4S)4リンカーなどの追加的な配列を含めた構成成分の任意の組合せを含み得る。ある特定の実施形態では、Xenopusベータグロビン配列(例えば、5’UTRに)。
ドナーはいずれも、WPRE配列を含み得る。任意のWPRE配列を本発明の実施に使用することができる。適切な配列の非限定的な例は、米国特許出願公開第20160326548号および米国特許第6,136,597号;同第6,284,469号;同第6,312,912号;および同第6,287,814号に開示されている。ある特定の実施形態では、WPRE配列は、野生型と比較して突然変異を含む。例えば、米国特許第7,419,829号およびZanta−Boussif et al .(2009) Gene Therapy 16:605−619 or a truncation(Choi et al, ibid)を参照されたい。同じまたは異なるWPRE配列の1つまたは複数を使用することもできる。WPREは、ドナーの3’UTRおよび/または5’UTRにあってよい。ある特定の実施形態では、WPRE配列は、
を含む。
さらに、ドナーは、TCRaエンハンサー配列を含めた1つまたは複数のT細胞受容体エンハンサーを含み得る。例えば、Ho & Leiden (1990) Mol. Cell. Biol. 10 (9): 4720−4727;Kappes et al .(1991) Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 88: 2204−2208を参照されたい。ある特定の実施形態では、T細胞受容体エンハンサーは、配列:
を含む。他の実施形態では、TCRαエンハンサー配列は、以下の通りである:
したがって、ドナーの非限定的な例として、
(1)以下の配列:それぞれサイズが約1Kbの相同アーム(B2Mに対するもの)に挟まれた導入遺伝子(GFP、CARなど)に作動可能に連結したPGKプロモーター配列を含む長い相同アーム(長いアーム)を有するドナー;
(2)以下:それぞれサイズが250bpの相同アーム(B2Mに対するもの)に挟まれた導入遺伝子に作動可能に連結したPGKプロモーター配列を含む、短い相同アーム(短いアーム)を有するドナー;
(3)3’UTRにWPRE配列、例えば、
を含むWPRE配列をさらに含む(2)のドナー;
(4)PGKプロモーターの上流のT細胞エンハンサー配列、例えば、以下の配列:
をさらに含む(2)のドナー;または
(5)TCRαエンハンサー配列、例えば、以下の配列:
をさらに含む(2)のドナー;
(6)Xenopusベータグロビン遺伝子の5’非翻訳領域由来の配列、必要に応じて以下の配列:
をさらに含む(2)のドナー
(7)hPGKプロモーターによって駆動される導入遺伝子(例えば、GFP、CAR、B2M、HLA−Eおよび/またはHLA−G)を挟むTRAC E部位に対する短い相同アーム(423bpの左側のアームおよび393bpの右側のアーム)を含有するドナー。ドナーは、必要に応じてTRAC遺伝子座へのTIのmiseqによる定量化を可能にする「miseqタグ」も含む;
(8)hPGKプロモーターによって駆動される導入遺伝子(例えば、GFP、CAR、B2M、HLA−Eおよび/またはHLA−G)を挟むTRAC E部位に対する長い相同アーム(1000bpの左側のアームおよび992bpの右側のアーム)を有するドナー。ドナーは「miseqタグ」を含まない;
(9)hPGKプロモーターによって駆動される導入遺伝子(例えば、GFP、CAR、B2M、HLA−Eおよび/またはHLA−G)および突然変異WPREエレメント(導入遺伝子の後)を挟むTRAC E部位に対する短い相同アーム(350bpの左側のアームおよび393bpの右側のアーム)を有するドナー。ドナーは必要に応じて「miseqタグ」も含有する;
(10)hPGKプロモーターによって駆動されるFMC63−CD8BBZ CAR導入遺伝子を挟むTRAC E部位に対する短い相同アーム(423bpの左側のアームおよび393bpの右側のアーム)を含有するドナー。ドナーは、必要に応じてTRAC遺伝子座へのTIのmiseqによる定量化を可能にする「miseqタグ」も含む;
(11)導入遺伝子配列の後にWPRE配列をさらに含む(10)のドナー;
(12)B2MおよびHLA−Eを発現する融合タンパク質と自己切断性P2Aペプチドによって連結したFMC63−CD8BBZ CAR導入遺伝子を挟むTRAC E部位に対する短い相同アーム(360bpおよび393bpの右側のアーム)を有するドナー。導入遺伝子はhPGKプロモーターによって駆動され、また、その後に突然変異WPREエレメントが続く。ドナーは必要に応じて「miseqタグ」も含有する;
(13)HLA−EがHLA−Gで置き換えられている(12)のドナー;
(14)HLA−EおよびHLA−Gの両方を含む(13)のドナー;
(15)hPGKプロモーターによって駆動されるHLA−G導入遺伝子を挟むTRAC E部位に対する長い相同アーム(例えば、1000bpの左側のアームおよび992bpの右側のアーム)を有するドナー;
(16)HLA−G導入遺伝子がHLA−E導入遺伝子(例えば、HLA E0101またはE0103(Celik et al, ibid))で置き換えられている(15)のドナー;
(17)HLA−G導入遺伝子をさらに含む(15)のドナー;
(18)HLA−Eおよび/またはHLA−G導入遺伝子と連結したB2Mをコードする配列をさらに含み、必要に応じて、導入遺伝子のいずれかの間(例えば、B2MとHLA−Gの間;B2MとHLA−Eの間;B2M、HLA−GおよびHLA−Eの間;HLA−GとHLA−Eの間など)に1、2、3、4、5、6またはそれよりも多くのコピーのG4Sペプチドを有するリンカーを介する、(15)〜(17)のいずれかのドナー;
(19)必要に応じて導入遺伝子の1つまたは複数(例えば、B2MおよびHLA−E/GまたはB2Mのみ、例えば、HLA−Gの単一のペプチドを含まないドナー)の前にシグナルペプチドをさらに含む、(15)〜(18)のいずれかのドナー;
(20)必要に応じてB2MおよびHLA−Gおよび/またはHLA−Eを発現する融合タンパク質と自己切断性P2Aペプチドによって連結したCAR導入遺伝子(例えば、FMC63−CD8BBZ)をさらに含む、(15)〜(19)のいずれかのドナー;ならびに
(21)突然変異WPREエレメントおよび必要に応じてmiseqタグをさらに含む(20)のドナー。
送達
タンパク質(例えば、転写因子、ヌクレアーゼ、TCRおよびCAR分子)、ポリヌクレオチドならびに/または本明細書に記載のタンパク質および/もしくはポリヌクレオチドを含む組成物は、例えば、タンパク質および/またはmRNA構成成分の注射によるものを含めた任意の適切な手段によって標的細胞に送達することができる。一部の態様では、ヌクレアーゼおよび/またはドナーをmRNAとして送達し、導入遺伝子をウイルスベクター、ミニサークルDNA、プラスミドDNA、一本鎖DNA、直鎖DNA、リポソーム、ナノ粒子などの他のモダリティを介して送達する。例えば、米国特許第20140335063号を参照されたい。一部の実施形態では、タンパク質を細胞に細胞スクイージングによって導入する(Kollmannsperger et al (2016) Nat Comm 7, 10372 doi: 10.1038/ncomms 10372を参照されたい)。
適切な細胞としては、これらに限定されないが、真核細胞および/または細胞株ならびに原核細胞および/または細胞株が挙げられる。そのような細胞から生成されるそのような細胞または細胞株の非限定的な例としては、T細胞、COS、CHO(例えば、CHO−S、CHO−K1、CHO−DG44、CHO−DUXB11、CHO−DUKX、CHOK1SV)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28−G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0−Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293−F、HEK293−H、HEK293−T)、およびperC6細胞ならびにSpodoptera fugiperda(Sf)などの昆虫細胞、またはSaccharomyces、PichiaおよびSchizosaccharomycesなどの真菌細胞が挙げられる。ある特定の実施形態では、細胞株は、CHO−K1、MDCKまたはHEK293細胞株である。適切な細胞としては、例として、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、造血幹細胞、神経幹細胞および間葉系幹細胞などの幹細胞も挙げられる。
本明細書に記載のDNA結合性ドメインを含むタンパク質を送達する方法は、例えば、その全ての開示全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,453,242号;同第6,503,717号;同第6,534,261号;同第6,599,692号;同第6,607,882号;同第6,689,558号;同第6,824,978号;同第6,933,113号;同第6,979,539号;同第7,013,219号;および同第7,163,824号に記載されている。
本明細書に記載のDNA結合性ドメインおよびこれらのDNA結合性ドメインを含む融合タンパク質は、DNA結合性タンパク質の1つまたは複数をコードする配列を含有するベクターを使用して送達することもできる。さらに、追加的な核酸(例えば、ドナー)もこれらのベクターによって送達することができる。これらに限定されないが、プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター;ヘルペスウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターなどを含めた任意のベクター系を使用することができる。参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,534,261号;同第6,607,882号;同第6,824,978号;同第6,933,113号;同第6,979,539号;同第7,013,219号;および同第7,163,824号も参照されたい。さらに、これらのベクターはいずれも、1つもしくは複数のDNA結合性タンパク質をコードする配列および/または必要に応じて追加的な核酸を含み得ることが明らかになろう。したがって、本明細書に記載の1つまたは複数のDNA結合性タンパク質、および必要に応じて追加的なDNAを細胞に導入する場合、これらを同じベクターで運ぶこともでき、異なるベクターで運ぶこともできる。多数のベクターを使用する場合、各ベクターが、1つまたは多数のDNA結合性タンパク質および所望の追加的な核酸をコードする配列を含んでよい。
操作されたDNA結合性タンパク質をコードする核酸を細胞(例えば、哺乳動物細胞)および標的組織に導入するため、ならびに所望の追加的なヌクレオチド配列を共導入するために、従来のウイルスに基づく遺伝子移入法およびウイルスに基づくものではない遺伝子移入法を使用することができる。そのような方法は、in vitroにおいて細胞に核酸(例えば、DNA結合性タンパク質および/またはドナーをコードする)を投与するために使用することもできる。ある特定の実施形態では、in vivoまたはex vivoにおける遺伝子治療への使用のために核酸を投与する。非ウイルスベクター送達系としては、DNAプラスミド、ネイキッド核酸、およびリポソーム、脂質ナノ粒子またはポロキサマーなどの送達ビヒクルと複合体を形成した核酸が挙げられる。ウイルスベクター送達系としては、エピソーム性または細胞への送達後に組み込まれるゲノムのいずれかを有するDNAおよびRNAウイルスが挙げられる。遺伝子治療手順の概説については、Anderson, Science 256:808−813 (1992);Nabel & Felgner, TIBTECH 11:211−217 (1993);Mitani & Caskey, TIBTECH 11:162−166 (1993);Dillon, TIBTECH 11:167−175 (1993);Miller, Nature 357:455−460 (1992);Van Brunt, Biotechnology 6(10):1149−1154 (1988);Vigne, Restorative Neurology and Neuroscience 8:35−36 (1995);Kremer & Perricaudet, British Medical Bulletin 51(1):31−44 (1995);Haddada et al., in Current Topics in Microbiology and Immunology Doerfler and Bohm (eds.) (1995); およびYu et al., Gene Therapy 1:13−26 (1994)を参照されたい。
核酸の非ウイルス性送達の方法としては、エレクトロポレーション、リポフェクション、微量注射、微粒子銃、ビロソーム、リポソーム、脂質ナノ粒子、免疫リポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸コンジュゲート、ネイキッドDNA、mRNA、人工ビリオン、および作用物質により増強されるDNAの取り込みが挙げられる。例えば、Sonitron 2000 system(Rich−Mar)を使用したソノポレーションを核酸の送達のために使用することもできる。好ましい実施形態では、1つまたは複数の核酸をmRNAとして送達する。翻訳効率および/またはmRNA安定性を増大させるために、キャップ形成されたmRNAを使用することも好ましい。ARCA(抗逆方向キャップ類似体(anti−reverse cap analog))キャップまたはそのバリアントが特に好ましい。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,074,596号および同第8,153,773号を参照されたい。
追加的な例示的な核酸送達系としては、Amaxa Biosystems(Cologne、Germany)、Maxcyte,Inc.(Rockville、Maryland)、BTX Molecular Delivery Systems(Holliston、MA)およびCopernicus Therapeutics Incにより提供されるものが挙げられる(例えば、US6008336を参照されたい)。リポフェクションは、例えば、US5,049,386、US4,946,787;およびUS4,897,355に記載されており、リポフェクション試薬は商業的に販売されている(例えば、Transfectam(商標)、Lipofectin(商標)、およびLipofectamine(商標)RNAiMAX)。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適したカチオン性および中性脂質としては、Felgner、WO91/17424、WO91/16024のものが挙げられる。送達は、細胞への送達(ex vivo投与)または標的組織への送達(in vivo投与)であり得る。
免疫脂質複合体などの標的化リポソームを含めた脂質:核酸複合体の調製は当業者に周知である(例えば、Crystal, Science 270:404−410 (1995);Blaese et al., Cancer Gene Ther. 2:291−297 (1995);Behr et al., Bioconjugate Chem. 5:382−389 (1994);Remy et al., Bioconjugate Chem. 5:647−654 (1994);Gao et al., Gene Therapy 2:710−722 (1995);Ahmad et al., Cancer Res. 52:4817−4820 (1992);米国特許第4,186,183号、同第4,217,344号、同第4,235,871号、同第4,261,975号、同第4,485,054号、同第4,501,728号、同第4,774,085号、同第4,837,028号、および同第4,946,787号を参照されたい)。
追加的な送達方法としては、送達される核酸のEnGeneIC送達ビヒクル(EDV)へのパッケージングの使用が挙げられる。これらのEDVは、抗体の一方のアームが標的組織に対する特異性を有し、他方のアームがEDVに対する特異性を有する二重特異性抗体を使用して標的組織に特異的に送達される。抗体によりEDVが標的細胞表面に運ばれ、次いで、EDVがエンドサイトーシスによって細胞内に運ばれる。細胞内に入ったら、内容物が放出される(MacDiarmid et al (2009) Nature Biotechnology 27(7) p. 643を参照されたい)。
操作されたDNA結合性タンパク質をコードする核酸、および/または所望のドナー(例えば、CARまたはACTR)を送達するための、RNAまたはDNAウイルスに基づく系の使用では、体内の特定の細胞にウイルスをターゲティングし、ウイルスペイロードを核に輸送するための高度に進化したプロセスを利用する。ウイルスベクターを患者に直接投与することもでき(in vivo)、ウイルスベクターを使用して細胞をin vitroで処理することができ、改変された細胞を患者に投与する(ex vivo)。核酸を送達するための従来のウイルスに基づく系としては、これらに限定されないが、遺伝子移入のためのレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴、ワクシニアおよび単純ヘルペスウイルスベクターが挙げられる。宿主ゲノムへの組込みは、レトロウイルス、レンチウイルス、およびアデノ随伴ウイルスによる遺伝子移入法を用いて可能であり、多くの場合、挿入された導入遺伝子の長期発現がもたらされる。さらに、多くの異なる細胞型および標的組織において高い形質導入効率が観察されている。
レトロウイルスのトロピズムは、外来エンベロープタンパク質を組み入れ、標的細胞の潜在的な標的集団を拡大することによって変更することができる。レンチウイルスベクターは、非***細胞に形質導入または感染することができ、一般には高ウイルス力価を生じさせるレトロウイルスベクターである。レトロウイルスによる遺伝子移入系の選択は標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、最大で6〜10kbの外来配列のパッケージング能力を有するシス作用性の長い末端反復で構成される。最小のシス作用性LTRがベクターの複製およびパッケージングに十分であり、次いで、これらを、治療用遺伝子を標的細胞に組み込んで恒久的な導入遺伝子発現をもたらすために使用する。広く使用されているレトロウイルスベクターとしては、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に基づくもの、およびこれらの組合せが挙げられる(例えば、Buchscher et al., J. Virol. 66:2731−2739 (1992);Johann et al., J. Virol. 66:1635−1640 (1992);Sommerfelt et al., Virol. 176:58−59 (1990);Wilson et al., J. Virol. 63:2374−2378 (1989);Miller et al., J. Virol. 65:2220−2224 (1991);PCT/US94/05700を参照されたい)。
一過性発現が好ましい適用では、アデノウイルスに基づく系を使用することができる。アデノウイルスに基づくベクターでは、多くの細胞型において非常に高い形質導入効率が可能であり、また、細胞***が必要ない。そのようなベクターを用いて、高力価および高レベルの発現が得られている。このベクターは、比較的単純な系で多量に作出することができる。また、例えば、核酸およびペプチドのin vitroにおける産生において、ならびにin vivoおよびex vivoにおける遺伝子治療手順のためにアデノ随伴ウイルス(「AAV」)ベクターを使用して細胞に標的核酸を形質導入する(例えば、West et al., Virology 160:38−47 (1987);米国特許第4,797,368号;WO93/24641;Kotin, Human Gene Therapy 5:793−801 (1994);Muzyczka, J. Clin. Invest. 94:1351 (1994)を参照されたい)。組換えAAVベクターの構築は、米国特許第5,173,414号;Tratschin et al., Mol. Cell. Biol. 5:3251−3260 (1985);Tratschin, et al., Mol. Cell. Biol. 4:2072−2081 (1984);Hermonat & Muzyczka, PNAS USA 81:6466−6470 (1984);およびSamulski et al., J. Virol. 63:03822−3828 (1989)を含めたいくつかの刊行物に記載されている。
少なくとも6つのウイルスベクター手法が臨床試験における遺伝子移入のために現在利用可能であり、これらは、欠陥ベクターを、ヘルパー細胞株に挿入された遺伝子によって補完して形質導入剤を生成することを伴う手法を利用する。
pLASNおよびMFG−Sは、臨床試験において使用されているレトロウイルスベクターの例である(Dunbar et al., Blood 85:3048−305 (1995);Kohn et al., Nat. Med. 1:1017−102 (1995);Malech et al., PNAS USA 94:22 12133−12138 (1997))。PA317/pLASNは、遺伝子治療試験において使用された最初の治療用ベクターであった(Blaese et al., Science 270:475−480 (1995))。MFG−Sパッケージングベクターに関して50%またはそれよりも高い形質導入効率が観察されている(Ellem et al., Immunol Immunother. 44(1):10−20 (1997);Dranoff et al., Hum. Gene Ther. 1:111−2 (1997))。
組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)は、欠陥および非病原性パルボウイルスアデノ随伴2型ウイルスに基づく有望な代替遺伝子送達系である。ベクターは全て、導入遺伝子発現カセットを挟むAAV 145bp末端逆位配列のみを保持するプラスミドに由来する。形質導入された細胞のゲノムへの組込みに起因する効率的な遺伝子移入および安定な導入遺伝子送達がこのベクター系の重要な特徴である(Wagner et al., Lancet 351:9117 1702−3 (1998)、Kearns et al., Gene Ther. 9:748−55 (1996))。AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAV8.2、AAV9およびAAVrh10を含めた他のAAV血清型ならびにAAV2/8、AAV2/5およびAAV2/6などのシュードタイピングされたAAVを本発明に従って使用することもできる。
複製欠損性組換えアデノウイルスベクター(Ad)は、高力価で作出することができ、いくつかの異なる細胞型に容易に感染する。大多数のアデノウイルスベクターは、導入遺伝子によりAd E1a、E1b、および/またはE3遺伝子が置き換えられるように操作される;その後、複製欠陥性ベクターを、欠失した遺伝子機能をトランスで供給するヒト293細胞において繁殖させる。Adベクターにより、肝臓、腎臓および筋肉において見いだされるものなどの非***性の分化細胞を含めた多数の型の組織にin vivoにおいて形質導入することができる。従来のAdベクターは、大きな運搬容量を有する。臨床試験におけるAdベクターの使用の例では、筋肉内注射を用いた抗腫瘍免疫のためのポリヌクレオチド治療が伴った(Sterman et al., Hum. Gene Ther. 7:1083−9 (1998))。臨床試験における遺伝子移入のためのアデノウイルスベクターの使用のさらなる例としては、Rosenecker et al., Infection 24:1 5−10 (1996);Sterman et al., Hum. Gene Ther. 9:7 1083−1089 (1998);Welsh et al., Hum. Gene Ther. 2:205−18 (1995);Alvarez et al., Hum. Gene Ther. 5:597−613 (1997);Topf et al., Gene Ther. 5:507−513 (1998);Sterman et al., Hum. Gene Ther. 7:1083−1089 (1998)が挙げられる。
宿主細胞に感染することができるウイルス粒子を形成するためにパッケージング細胞を使用する。そのような細胞としては、アデノウイルスをパッケージングする293細胞、およびレトロウイルスをパッケージングするψ2細胞またはPA317細胞が挙げられる。遺伝子治療に使用されるウイルスベクターは、通常、核酸ベクターをウイルス粒子中にパッケージングする産生細胞株によって生成される。ベクターは、一般には、パッケージングおよびその後の宿主への組込み(該当する場合)に必要な最小限のウイルス配列を含有し、他のウイルス配列は発現させるタンパク質をコードする発現カセットで置き換える。欠如したウイルスの機能はパッケージング細胞株によってトランスに供給される。例えば、遺伝子治療において使用されるAAVベクターは、一般には、パッケージングおよび宿主ゲノムへの組込みに必要なAAVゲノム由来の末端逆位配列(ITR)配列のみを有する。ウイルスDNAを、他のAAV遺伝子、すなわち、repおよびキャップをコードするヘルパープラスミドを含有するがITR配列を欠く細胞株にパッケージングにする。細胞株にヘルパーとしてアデノウイルスも感染させる。ヘルパーウイルスにより、AAVベクターの複製およびヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現が促進される。ヘルパープラスミドはITR配列を欠くので有意な量ではパッケージングされない。アデノウイルスのコンタミネーションは、例えば、アデノウイルスの感受性がAAVよりも高い加熱処理によって低減することができる。さらに、AAVは、バキュロウイルス系を使用して製造することができる(例えば、米国特許第6,723,551号および同第7,271,002号を参照されたい)。
293またはバキュロウイルス系からのAAV粒子の精製は、一般には、ウイルスを産生する細胞の成長、その後、細胞の上清からのウイルス粒子の収集または細胞の溶解と粗溶解物からのウイルスの収集を伴う。次いで、AAVを、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、米国特許第7,419,817号および同第6,989,264号を参照されたい)、イオン交換クロマトグラフィーとCsCl密度遠心分離(例えば、PCT公開WO2011094198A10)、イムノアフィニティークロマトグラフィー(例えば、WO2016128408)またはAVBセファロースを使用した精製(例えば、GE Healthcare Life Sciences)を含めた当技術分野で公知の方法によって精製する。
多くの遺伝子治療の適用では、遺伝子治療ベクターが高い程度の特異性で特定の組織型に送達されることが望ましい。したがって、ウイルスベクターを、リガンドをウイルスの外表面上のウイルスコートタンパク質との融合タンパク質として発現させることにより、所与の細胞型に対する特異性を有するように改変することができる。リガンドは、目的の細胞型に存在することが公知の受容体に対する親和性を有するように選択される。例えば、Hanら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:9747−9751 (1995))では、モロニーマウス白血病ウイルスを、gp70と融合したヒトヘレグリンを発現するように改変することができ、組換えウイルスが、ヒト上皮増殖因子受容体を発現するある特定のヒト乳がん細胞に感染することが報告されている。この原理を、標的細胞が受容体を発現し、ウイルスが細胞表面受容体のリガンドを含む融合タンパク質を発現する他のウイルス−標的細胞対に拡張することができる。例えば、繊維状ファージを、事実上任意の選択された細胞受容体に対する特異的な結合親和性を有する抗体断片(例えば、FABまたはFv)をディスプレイするように操作することができる。上記の説明は主にウイルスベクターに当てはまるが、同じ原理を非ウイルスベクターに適用することができる。そのようなベクターを、特定の標的細胞による取り込みに有利な特定の取り込み配列を含有するように操作することができる。
遺伝子治療ベクターは、個々の患者に、下記の通り、一般には全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、もしくは頭蓋内注入)または局所的適用によって投与することにより、in vivoで送達することができる。あるいは、ベクターは、例えば、個々の患者から外植された細胞(例えば、リンパ球、骨髄穿刺液、組織生検材料)または普遍的なドナー造血幹細胞などの細胞にex vivoで送達することができ、その後、通常はベクターが組み入れられた細胞を選択した後、細胞を患者に再度埋め込む。
診断、研究、移植のため、または遺伝子治療(例えば、トランスフェクトされた細胞の宿主生物体への再注入による)のためのex vivo細胞トランスフェクションは当業者に周知である。好ましい実施形態では、細胞を対象の生物体から単離し、DNA結合性タンパク質の核酸(遺伝子またはcDNA)をトランスフェクトし、対象の生物体(例えば、患者)に再注入する。ex vivoトランスフェクションに適した種々の細胞型が当業者に周知である(例えば、Freshney et al., Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Technique (3rd ed. 1994))およびどのように細胞を患者から単離し、培養するかの考察に関してそこで引用されている参考文献を参照されたい)。
一実施形態では、細胞トランスフェクションおよび遺伝子治療のためのex vivo手順に幹細胞を使用する。幹細胞を使用することの利点は、幹細胞をin vitroにおいて他の細胞型に分化させることもでき、哺乳動物(例えば、細胞のドナー)に導入することもでき、そこで幹細胞が骨髄に生着することである。GM−CSF、IFN−γおよびTNF−αなどのサイトカインを使用してin vitroにおいてCD34+細胞を臨床的に重要な免疫細胞型に分化させるための方法が公知である(Inaba et al., J. Exp. Med. 176:1693−1702 (1992)を参照されたい)。
公知の方法を使用して幹細胞を形質導入および分化のために単離する。例えば、骨髄細胞をCD4+およびCD8+(T細胞)、CD45+(panB細胞)、GR−1(顆粒球)、およびIad(分化した抗原提示細胞)などの望ましくない細胞に結合する抗体でパニングすることによって骨髄細胞から幹細胞を単離する(Inaba et al., J. Exp. Med. 176:1693−1702 (1992)を参照されたい)。
一部の実施形態では、改変された幹細胞を使用することもできる。例えば、アポトーシスに対して抵抗性にした神経幹細胞であって、本発明のZFP TFも含有する幹細胞を治療用組成物として使用することができる。アポトーシスに対する抵抗性は、例えば、幹細胞またはさらに例えばカスパーゼ−6特異的ZFNを使用してカスパーゼを破壊した幹細胞においてBAXおよび/またはBAKをBAX特異的ZFNまたはBAK特異的ZFNを使用してノックアウトすることによって生じさせることができる(米国特許出願公開第20100003756号を参照されたい)。これらの細胞に、TCRを制御することが公知であるZFP TFをトランスフェクトすることができる。
治療用DNA結合性タンパク質(またはこれらのタンパク質をコードする核酸)を含有するベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソームなど)をin vivoにおける細胞の形質導入のために生物体に直接投与することもできる。あるいは、ネイキッドDNAを投与することができる。投与は、これらに限定されないが、注射、注入、局所的適用およびエレクトロポレーションを含めた、分子を導入し、最終的に血液または組織細胞と接触させるために通常使用される経路のいずれかによるものである。そのような核酸を投与する適切な方法が利用可能であり、当業者に周知であり、また、特定の組成物を投与するために1つよりも多くの経路を使用することができるが、多くの場合、特定の経路により、別の経路よりも早急かつ有効な反応がもたらされ得る。
DNAを造血幹細胞に導入するための方法は、例えば、米国特許第5,928,638号において開示されている。導入遺伝子を造血幹細胞、例えば、CD34+細胞に導入するのに有用なベクターは、アデノウイルス35型を含む。
導入遺伝子を免疫細胞(例えば、T細胞)に導入するのに適したベクターとしては、非組込み型レンチウイルスベクターが挙げられる。例えば、Ory et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:11382−11388;Dull et al. (1998) J. Virol. 72:8463−8471;Zuffery et al. (1998) J. Virol. 72:9873−9880;Follenzi et al. (2000) Nature Genetics 25:217−222を参照されたい。
薬学的に許容される担体は、投与される特定の組成物によって、ならびに組成物の投与に使用される特定の方法によって一部決定される。したがって、下記の通り、利用可能な多種多様な適切な医薬組成物の製剤が存在する(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th ed., 1989を参照されたい)。
上記の通り、開示された方法および組成物は、これらに限定されないが、原核細胞、真菌細胞、古細菌の細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞、脊椎動物細胞、哺乳動物細胞ならびに任意の型のT細胞および幹細胞を含めたヒト細胞を含めた任意の細胞型において使用することができる。タンパク質発現のための適切な細胞株は、当業者に公知であり、それらとして、これらに限定されないが、COS、CHO(例えば、CHO−S、CHO−K1、CHO−DG44、CHO−DUXB11)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28−G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0−Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293−F、HEK293−H、HEK293−T)、perC6、Spodoptera fugiperda(Sf)などの昆虫細胞、ならびにSaccharomyces、PichiaおよびSchizosaccharomycesなどの真菌細胞が挙げられる。これらの細胞株の後代、バリアントおよび誘導体を使用することもできる。
適用
開示された組成物および方法は、これらに限定されないが、治療および研究への適用を含めた、細胞上の特異的な表面抗原に応答するT細胞(武装されたT細胞)を生成することが望まれるあらゆる適用のために使用することができる。
例えば、開示された組成物をin vivoおよび/またはex vivo(細胞療法)で使用して、養子細胞療法のために1つまたは複数の外因性CAR、外因性TCR、または他のがん特異的受容体分子を発現するように改変されたT細胞における機能的内因性TCRおよび/またはHLA複合体の発現を破壊し、それにより、がんを処置および/または防止することができる。さらに、そのような状況では、細胞内の機能的TCR発現および/またはHLA発現の抑止を排除すること、または健康な非標的化組織(すなわち、移植片対宿主応答)との望ましくない交差反応のリスクを実質的に低下させることができる。さらに、細胞が改変されたHLA−EまたはHLA−G複合体を発現するように改変されたHLA−EまたはHLA−G導入遺伝子を含めることにより、宿主NK細胞による死滅の回避を助けることができる。したがって、CARを必要に応じて改変されたHLA−EまたはHLA−G複合体と共に含む普遍的なドナーT細胞を生成することができ、したがって、これらの普遍的な細胞を、それを必要とするあらゆる患者にもたらすことができる。
さらに、操作された、CARを含むT細胞は、養子細胞療法に有用であり得る追加的な導入遺伝子を含み得る。例えば、これらの細胞は、自殺遺伝子の発現が活性化されると操作されたT細胞のアポトーシスを引き起こすように外因性シグナルによって制御される自殺遺伝子を含み得る(Wang et al.(2017) J. Hematol Oncol 10: 53)。CAR−T細胞におけるCD40Lの過剰発現もCAR−Tの効力に有益であることが示されている(Curran et al (2015) Mol Ther. 23: 769−78を参照されたい)。現在、いくつかのグループにより、IL−12分泌とCAR発現を組み合わせた「第4世代」CAR T細胞が考案されている。Koneru and colleagues(Oncoimmunology (2015); 4: e994446)は、いわゆる「普遍的なサイトカイン媒介性死滅に向け直されたT細胞」(TRUCK)を使用して直向性卵巣腫瘍移植モデルにおける卵巣がんを処置した。
他の導入遺伝子は、他の目的の抗原または改変されたHLA−EまたはHLA−Gを発現する導入遺伝子に特異的である追加的なCAR配列を含み得る。抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞の養子移入には進行したB細胞悪性腫瘍に対する注目すべき治癒的潜在性があることが示されているが、多数の試験により、CD19陰性白血病細胞の出現に起因する患者の再発が報告されている。したがって、一方がCD19に対して特異的であり、他方がCD20に特異的である2つのCARを使用し、かつ、必要に応じて、改変されたHLA−EまたはHLA−G複合体を発現させることにより、再発を防止することができる。さらに、2つの別々のCAR構築物を使用するのではなく、CAR導入遺伝子自体に、CD19とCD20の両方を認識することができる二重特異性CARをコードさせることができる(Zah et al (2016) Cancer Immunol Res, 4 (6): 498−508)。CD19特異的CARで武装し、必要に応じて、改変されたHLA−EまたはHLA−G複合体を含むT細胞には、B細胞リンパ腫などのB細胞悪性腫瘍ならびにALL、AMLおよびNHLなどの他の血液がんを処置するための治療的使用の可能性がある(Scheuermann and Racila (1995) Leuk Lymphoma. 18 (5−6): 385−97)。CARで武装されたT細胞を使用して標的化することができる他のがんとしては、悪性神経膠腫(臨床試験識別子:NCT01454596を参照されたい)、頭頸部の扁平上皮細胞がん(SCCHN)(臨床試験識別子:NCT01818323を参照されたい)、神経芽細胞腫(臨床試験識別子:NCT01822652を参照されたい)、悪性胸膜中皮腫(臨床試験識別子:NCT01722149を参照されたい)、進行した肉腫(臨床試験識別子:NCT00902044を参照されたい)、腎癌(Kakarla and Gottschalk, (2014) Cancer J 20 (2): 151−155)が挙げられる。したがって、本明細書に記載の組成物および方法は、これらに限定されないが、卵巣がん、脳がん、前立腺がん、肝がん、腎がん、白血病、リンパ腫、脊髄がんおよびCNSなどを含めた任意のがんを処置するために使用することができる。
CARを用いて潜在的に標的化するための治療的価値がある他の抗原としては、BCMA、EpCAM、CEA、HER−2、gpA33、ムチン、TAG−72、CAIX、PSMA、葉酸結合性抗体、葉酸受容体FR−α、CD19、CD20、CD22、EGFR、EGFRvIII、EpCam、EphA2、ERBB2/HER2、ERBB3、FAP、MET、Igκ、IL−1RAP、IGF1R、EPHA3、Lewis Y、NKG2Dリガンド、ROR1、FR−a、GD2、GPC3、IL−13Ra2、L1−CAM、MUC1、PD−L1、PSCA、PSMA、VEGFR2、c−MET、CD133、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、VEGF、VEGFR、αVβ3およびα5β1 インテグリン、CD30、CD33、CD52、CD70、CD123、CD138、CD171、CD16V、CTLA4、およびエナシンなどの腫瘍細胞に関連するまたはがん関連プロセスに関連する他の抗原が挙げられる。
本明細書に開示される方法および組成物の他の潜在的適用としては、他の目的の遺伝子をモジュレートすることなどの追加的な工学的操作方法が挙げられる。これらの他の遺伝子としては、PD1および/またはCTLA4などのチェックポイント阻害遺伝子が挙げられ、ここで、これらの遺伝子のノックアウトにより、T細胞応答の腫瘍媒介性抑制を防止することができる。さらに、目的のCARのTCR関連遺伝子への挿入を含むT細胞をさらに操作してB2M遺伝子をノックアウトすることができ、B2M遺伝子に組み込まれたCARを含むT細胞をさらに操作して、TCR関連遺伝子をノックアウトすることができる。これらの改変T細胞には改変されたHLA−EまたはHLA−G複合体も含めることができ、したがって、操作されたT細胞は、宿主NK細胞による死滅を回避することができる。これらの追加的な突然変異は、「既製の」適用のための普遍的なT細胞の創出に有用であり得る。
方法および組成物は、幹細胞組成物も含み、ここで、幹細胞内のTCRA遺伝子および/またはTCRB遺伝子および/またはB2M遺伝子がモジュレート(改変)されており、当該細胞は、1つまたは複数のCARをさらに含む。例えば、TCRノックアウトまたはノックダウンによりモジュレートされた同種異系造血幹細胞をHLA適合患者に骨髄アブレーション後に導入することができる。これらの変更されたCARを含むHSCにより、患者の再コロニー形成が可能になるが、潜在的なGvHDは引き起こされない。導入される細胞はまた、根源の疾患を処置するためのその後の治療中に役立つ他の変更(例えば、化学療法抵抗性)も有してよい。改変されたHLA−EまたはHLA−G複合体を必要に応じて含むTCRおよび/またはHLAヌル細胞は外傷患者の緊急治療室の状況での「既製の」治療として使用することもできる。
本発明の方法および組成物は、TCRおよび関連する障害のin vitroモデルおよびin vivoモデル、例えば、動物モデルの設計およびインプリメンテーションのためにも有用であり、これにより、これらの障害の研究が可能になる。
本明細書で言及されている全ての特許、特許出願および刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
開示は明瞭さおよび理解のために例証および例としてある程度詳細に提示されているが、本開示の主旨または範囲から逸脱することなく種々の変化および改変を実施できることが当業者には明らかになるであろう。したがって、前述の開示および以下の実施例は、限定するものと解釈されるべきではない。特に、ジンクフィンガータンパク質DNA結合性ドメインを用いて例示しているが、これらに限定されないが、TAL−エフェクタードメインDNA結合性ドメイン、sgRNA(CRISPR/Cas系のもの)および/またはTtago DNA結合性ドメイン、下に例示されている標的部位の12〜25ヌクレオチドに結合する任意のDNA結合性ドメインを含めた任意のDNA結合性ドメインを標的化改変のために使用することができる。
(実施例1)
ヌクレアーゼの設計
TCRA特異的ZFN、B2M特異的ZFN、CISH特異的ZFN、PD1特異的ZFN、CTLA−4およびHPRT特異的ZFNを、基本的にUrnov et al. (2005) Nature 435 (7042): 646−651, Lombardo et al (2007) Nat Biotechnol. Nov; 25 (11): 1298−306、および米国特許出願公開第20150164954号、同第20140301990号および米国特許第8,563,314号、同第8,956,828号、同第9,402,879号および同第9,597,357号;ならびに米国特許出願第62/583,724号に記載されている通り、二本鎖DNA切断の部位特異的導入が可能になるように設計し、構築した。これらの遺伝子および他の遺伝子の結合および改変のためのCRISPR/Cas系のsgRNAに関しては米国特許第9,873,894号も参照されたい。さらに、例示的なZFN対の認識ヘリックスならびに標的配列は以下の表1に示されている。ジンクフィンガー設計の標的部位が最初の列に示されている。ZFP認識ヘリックスによって標的化される標的部位内のヌクレオチドが大文字で示されており、非標的化ヌクレオチドが小文字で示されている。TRAC特異的ZFNに関しては、米国特許出願第16/009,975号も参照されたい。B2M特異的ZFNに関しては、米国特許出願公開第20170173080号も参照されたい。CISH特異的ZFNに関しては、米国仮特許出願第62/583,724号を参照されたい。
FokIヌクレアーゼドメインとZFP DNA結合性ドメインを接合するために使用するリンカーも示されている(米国特許出願公開第20150132269号を参照されたい)。例えば、ドメインリンカーL0のアミノ酸配列は、DNA結合性ドメイン−QLVKS−FokIヌクレアーゼドメイン(配列番号5)である。同様に、ドメインリンカーN7aのアミノ酸配列は、FokIヌクレアーゼドメイン−SGTPHEVGVYTL−DNA結合性ドメイン(配列番号37)であり、N7cは、FokIヌクレアーゼドメイン−SGAIRCHDEFWF−DNA結合性ドメイン(配列番号38)である。適切な場合には、米国特許出願公開第20180087072号に記載されているジンクフィンガー骨格に対する改変も示されている。表1に使用されている表示法では、「Qm5」は、示されているフィンガーのマイナス5位(−1〜+6の番号が付されたヘリックスに対して)において、この位置のアルギニンがグルタミン(Q)に置き換えられていることを意味し、「Qm14」は、マイナス14位に通常存在するアルギニン(R)がグルタミン(Q)で置き換えられていることを意味する。nQm5における「n」という略語は、突然変異が、5または6フィンガータンパク質を築くのに使用された2つのフィンガーモジュールのN末端フィンガーに存在することを意味する。「なし」は、認識ヘリックス領域外に変化がないことを示す。
全てのZFNを試験し、それらの標的部位に結合することが見いだされ、ヌクレアーゼとして活性であることが見いだされた。
本明細書に記載のZFPは、ジンクフィンガータンパク質のリン酸接触残基および/またはFokIドメインに対する1つまたは複数の突然変異、例えば、米国特許出願公開第20180087072号に記載されているnR−5Qabc突然変異体(ZFP骨格に対するもの)および/またはR416Sおよび/またはK525S突然変異体(FokIに対するもの)も含み得る。例えば、ZFN SBS#68812およびSBS#68813はどちらも、DNA骨格との非特異的リン酸接触を低減するためにZFP骨格およびFokIドメインに突然変異を含み、当該突然変異は表1に示されている。
したがって、本明細書に記載のヌクレアーゼ(例えば、ZFPを含むヌクレアーゼ)は、それらの標的部位に結合し、TCRA遺伝子を切断し、それにより、配列番号1〜2のいずれかを含むTCRA遺伝子内に遺伝子改変を、これらの配列のいずれか内および/もしくはそれに隣接した(例えば、配列番号1〜2のいずれかに示されている標的配列;および/もしくは対の標的部位の間)改変(挿入および/もしくは欠失)ならびに/またはエクソン2のTTGAAA内の改変を含め、生じさせる。本明細書に記載のヌクレアーゼ(例えば、ZFPを含むヌクレアーゼ)は、それらの標的部位に結合し、B2M遺伝子を切断し、それにより、配列番号3〜4のいずれかを含むB2M遺伝子内に遺伝子改変を、これらの配列のいずれか内および/もしくはそれに隣接した(例えば、配列番号3〜4のいずれかに示されている標的配列;および/もしくは対の標的部位の間)改変(挿入および/もしくは欠失)ならびに/またはエクソン1のGCCTTA内の改変を含め、生じさせる。本明細書に記載のヌクレアーゼ(例えば、ZFPを含むヌクレアーゼ)は、それらの標的部位に結合し、HPRT遺伝子を切断し、それにより、配列番号5〜6のいずれかを含むHPRT遺伝子内の遺伝子改変(例えば、CARをコードする導入遺伝子の挿入)を、これらの配列のいずれか内および/もしくはそれに隣接した(例えば、配列番号5または6のいずれかに示されている標的配列;および/もしくは対の標的部位の間)改変(挿入および/もしくは欠失)、ならびに/または、導入遺伝子が内因性HPRTプロモーターから発現される(しかしHPRT遺伝子は発現されない)改変を含めたイントロン1内の改変を含め、生じさせる。図1を参照されたい。
さらに、DNA結合性ドメイン(ZFP)は全てそれらの標的部位に結合し、これらの標的部位(表1に示されている12またはそれよりも多くのヌクレオチドの長さの標的配列である標的部位)を認識するZFP、TALEおよびsRNA DNA結合性ドメインをまた、1つまたは複数の転写制御ドメインと関連する場合、活性な操作された転写因子内に製剤化した。
(実施例2)
CD19を有するK562細胞の構築
簡単に述べると、正常なK562細胞を、10%FBSを伴うRPMI培地で培養し、次いで、Amaxaエレクトロポレーションデバイスにおいて、50μg/mLの、EF1aプロモーターによって駆動されるヒトCD19発現カセット(NCBI遺伝子ID:930、コドン最適化されたもの)およびHPRT遺伝子内のZFNカット部位を挟む相同アームを含有するプラスミドに加えて、40μg/mLの、ヒトHPRT遺伝子のイントロン1を標的とするHPRT特異的ZFN(37706/48407)をコードするmRNAの存在下でエレクトロポレーションを行った。細胞を、エレクトロポレーション後培地中で終夜回復させ、次いで、6−チオグアニン(6−TG)を6μMの濃度で添加し、細胞を27日間培養した。CD19発現を評価するために、細胞を、ヒトCD19細胞外ドメインを標的とする、PE−Cy7とコンジュゲートした抗体で染色した。陰性対照として、改変されていない(「ナイーブな」)K562を同様に培養し、染色した。結果(図2)から、CD19導入遺伝子を受けた細胞のみが抗体で染色されたことが示される。
(実施例3)
CD19−CAR T細胞による抗原特異的細胞死滅
次に、GFPまたはCD19 CAR発現カセットのいずれか(Kochenderfer et al (2009)J Immunother 32 (7): 689−702)がTCRA遺伝子座またはB2M遺伝子座に標的化挿入された細胞を生成するために実験を実施した。TCRA特異的ZFN対SBS#55266/SBS#53853またはB2M対SBS#57071/SBS#57531(全て表1に示されている)をmRNAとして、相同性指向標的化挿入を可能にするためにTRACまたはB2M切断遺伝子座に対する相同アームに挟まれた導入遺伝子発現カセット(GFPまたはCD19−CAR)をコードするAAV6ベクターと一緒に、T細胞またはK562細胞にエレクトロポレーションによって導入した。
簡単に述べると、1:1の比のCD4:CD8ヒトT細胞を解凍し、CD3/28Dynabeads(登録商標)を用い(細胞:ビーズ比1:3)、X−vivo15 T細胞培養培地中で活性化させた(0日目)。3日間培養した後(3日目)、細胞を、Maxcyteエレクトロポレーション緩衝剤中、ZFN mRNA(TCRAまたはB2M ZFN)の存在下で1mL当たり細胞3×107個まで濃縮し、Maxcyteデバイスを使用してエレクトロポレーションした。次いで、濃縮され、エレクトロポレーションされた細胞を組織培養ウェルに入れ、濃縮された細胞に、導入遺伝子ドナーを含むAAV6ベクターを対応する遺伝子座様式で添加した(例えば、TCRA相同アームを有するAAV6ドナーベクターをTCRA ZFNで処理した細胞に添加した)。導入遺伝子発現カセットは、切断部位特異的(TCRAまたはB2M)相同アーム(HA)、hPGKプロモーターにより駆動される導入遺伝子(GFPまたはCD19 CARのいずれか)、およびBGHポリA配列で構成された。AAV6ベクターの添加後、細胞を37℃で20分にわたって回復させた。次いで、細胞を培養培地中に1mL当たり細胞3×106個まで希釈し、30℃で終夜培養した(米国特許出願公開第20170137845号を参照されたい)。翌朝、細胞を追加的な培養培地中に1mL当たり細胞0.5×106個まで希釈した。以下のZFNとドナーの組合せを含む細胞集団を作製した:
(a)移入なし:ZFN mRNAのエレクトロポレーションもAAV6ドナーの添加もしていない細胞;
(b)B2M ZFN mRNAのみをエレクトロポレーションし、AAV6ドナーは添加していない細胞;
(c)TCRA ZFN mRNAのみをエレクトロポレーションし、AAV6ドナーは添加していない細胞;
(d)B2M ZFN mRNAをエレクトロポレーションし、AAV6 B2M HA;hPGK−eGFP−BGHポリAドナーを添加した細胞;
(e)TCRA ZFN mRNAをエレクトロポレーションし、AAV6 TCRA HA;hPGK−eGFP−BGHポリAドナーを添加した細胞;
(f)B2M ZFN mRNAをエレクトロポレーションし、AAV6 B2M HA;hPGK−FMC63−CD8BBZ(CD19 CAR)−BGHポリAドナーを添加した細胞;
(e)TCRA ZFN mRNAをエレクトロポレーションし、AAV6 TCRA HA;hPGK−FMC63−CD8BBZ(CD19 CAR)−BGHポリAドナーを添加した細胞。
上記の通り、上の略語は以下を指す:HA=相同アーム;B2M=B2M遺伝子;PGK=PGKプロモーター;BGH=ウシ成長ホルモン(BGH)遺伝子由来のポリA配列;FMC63は、NCIからの抗CD19 scFv配列である(米国特許第9,701,758号を参照されたい);CD8BBZは、CARのscFv以外の部分を指す=CD8ヒンジ/膜貫通ドメイン(CD8)、41BB遺伝子由来の共刺激ドメイン(BB)、CD3z遺伝子由来の活性化ドメイン(Z)。
全ての実験を、エレクトロポレーション中の細胞密度1ml当たり細胞3×10
7個で行った。翌日(4日目)、細胞を1mL当たり細胞0.5×10
6個まで希釈し、37℃の培養に移した。3日後(7日目)、細胞を1mL当たり細胞0.5×10
6個まで再度希釈した。培養下に置いてさらに3日後、および7日後(それぞれ10日目および14日目)に、細胞をFACSMiSeq解析のために回収した(1mL当たり細胞0.5×10
6個まで希釈した)。データを以下の表2に示す。
次に、機能活性を測定した。まず、実施例2からのCD19を発現するK562細胞と混合したナイーブなK562細胞を使用して50:50混合物を作製した。この混合物を、トランスフェクトしていないT細胞またはTCRAノックアウトT細胞のいずれかで処理した。図3に結果が示されており、図3A〜3Cは、ナイーブなT細胞で処理した、またはTCRAノックアウトT細胞で処理した混合物単独を示す。細胞をCD19特異的抗体で染色し、K562細胞の集団はいずれも、添加されたT細胞による影響を受けなかった。
次に、標的細胞の同様の50:50混合物を、B2M遺伝子座またはTCRA遺伝子座のいずれかに挿入された、CAR導入遺伝子を担持するT細胞で処理した。ナイーブなK562標的およびCD19+K562標的の集団を2:1エフェクター:標的から0.125エフェクター:標的までの様々なエフェクター:標的細胞比で処理した。結果から、CARのB2M遺伝子またはTCRA遺伝子のいずれへの挿入でも、機能的CARの発現がもたらされることが示された(4Aと4Bを比較されたい)。どちらのCAR−T細胞集団についても、エフェクター:標的比2:1でCD19+K562細胞のほぼ全てが死滅した(それぞれ0.4%および0.1%のCD19+K562細胞が、B2M遺伝子またはTCRA遺伝子にCARが挿入されたT細胞での処理後に残存した)。
最後に、エフェクター:標的細胞比に応じた残存するCD19+K562細胞のパーセントのプロットを作成し(図5)、これにより、どちらの型のCAR−T細胞も、標的化された抗原を発現する細胞の死滅に関して活性かつ有効であることが実証される。
第2の実験を上記の通り行い、ここで、実験条件は、細胞をTCRAおよびB2Mの両方に特異的なZFN対で処理したこと(2重ノックアウト)およびCD19 CAR導入遺伝子ドナーがTCRA特異的相同アームを含んだこと以外は同じであった。データを以下の表3、および図6に示す。
第3の実験を上記の通り行い、ここでは、TRAC特異的ヌクレアーゼで処理したT細胞の遺伝子型および表現型も、様々な用量のTRACヌクレアーゼの投与後に評価した。図7および表4に示されている通り、ヌクレアーゼ媒介性TRAC改変により、TRACノックアウト遺伝子型(TRACインデル)および表現型(CD3陰性)を有する細胞が>95%でもたらされた。
さらに、図8に示されている通り、FACS解析により、TRACのヌクレアーゼ媒介性不活化(ノックアウト)により、選択を伴わずに少なくとも99.5%の表面TCR(CD3)の消失が一貫して実現されることが示された。同様に、図9に示されている通り、TRAC(左側のパネル)またはB2M(右側のパネル)にこれらの遺伝子の特異的なヌクレアーゼによる切断によって組み込まれた導入遺伝子(GFP)により、FACS解析によって決定された通り高度に効率的な導入遺伝子発現がもたらされた(TRACでは93%およびB2Mでは91%)。この実験では、ドナーの不在下で、細胞の93%がTRAC遺伝子座およびB2M遺伝子座の両方でノックアウトが起こった。
健康なドナーT細胞をまた、TRACおよびB2Mヌクレアーゼ(これらの遺伝子を不活化するため)と、TRAC遺伝子を標的とするCAR(CD19)導入遺伝子(相同アーム)を含むAAVドナーを組み合わせて単一のステップで処理した(TRACおよびB2Mならびにドナーを同時投与した)。図10に示されている通り、高度に効率的なCAR発現(細胞の>75%)およびTRAC/B2Mノックアウト(それぞれ>94%および>88%)が単一の編集ステップで実現された。
第4の実験のセットを行って、GFPドナーおよび/またはCD19 CARの挿入と組み合わせて、T細胞における多数の遺伝子座の「マルチプレックス」ノックアウトの効率を評価した。第1の実験では、TRAC(SBS68812/SBS68813を使用する)およびB2M(SBS57071/SBS57531を使用する)における切断による2つのドナー導入遺伝子の組込みの効率を試験した。この実験では、CD19 CARドナーはTRAC相同アームを含み、AAV形質導入によって細胞に導入された。GFPドナーはB2M相同アームを含み、同じくAAV形質導入によって細胞に導入された。
図11に示されている通り、標的遺伝子は90%を超える効率で切断され、ドナーを添加した場合、GFPドナーについては90%で、およびCD19 CARドナーについては77%で標的化組込みが起こった。CD19 CAR組込みの結果は、CD19 CAR導入遺伝子のみを使用した図10Cに示されている結果と一致した。したがって、切断されたTRAC遺伝子座におけるCD19 CARの組込み効率は、切断されたB2M遺伝子座におけるGFP導入遺伝子の同時組込みによる影響を受けず、逆もまた同じであった。
さらなる実験において、SBS68812/SBS68813 TRAC試薬およびSBS57071/SBS57531 B2M ZFN試薬を使用した。CISH遺伝子座(チェックポイント遺伝子、米国仮出願第62/583,724号を参照されたい)を標的とするZFN試薬の第3のセット(SBS59488/SBS59489)も上の表1に記載の通り使用した。
上記の方法においてCISH特異的試薬をTRAC特異的ZFNおよびB2M特異的ZFNと組み合わせて使用した。種々のZFN対に加えて、細胞をAAV−GFPドナーでも処理し、得られたノックアウトおよび組込みデータを図12Aに示す。TRAC相同アームを含むGFPドナーおよび多数の異なるヌクレアーゼで処理した細胞について、ノックアウトおよびドナーの組込みデータを以下の表5に示す。前の実験で生じたCD19 CAR導入遺伝子ドナー効率データ(図11に示されている)を使用して予想されるCD19 CAR導入遺伝子のTRAC遺伝子座への組込みの効率を推定し、この推定データを図12Bおよび表5に示す。
したがって、本明細書で示されているように、本明細書に記載の方法を使用してCAR+改変細胞が高率で得られる。
(実施例4)
細胞をCARならびに改変HLA−Eおよび/またはHLA−Gを発現するように操作すること
CD19 CARならびに改変HLA−Eおよび/またはHLA−G複合体を発現する細胞を実施例3に記載されている方法に従って作出した。簡単に述べると、TCRA特異的ZFN対SBS#55266/SBS#53853またはB2M対SBS#57071/SBS#57531(全て表1に示されている)をmRNAとして、相同性指向標的化挿入を可能にするためにTRACまたはB2M切断遺伝子座のいずれかに対する相同アームに挟まれた導入遺伝子発現カセット(GFPまたはCD19−CARまたはCD19−HLA−EおよびCD19−HLA−Gの一方または両方)をコードするAAV6ベクターと一緒に、T細胞にエレクトロポレーションによって導入する。
細胞を、CD19特異的CAR発現およびHLA−EまたはHLA−G発現について、FACS解析およびこれら2つの細胞表面タンパク質に特異的な標識された抗体を使用して特徴付ける。FACS解析により、細胞がCD19特異的CARと改変HLA−Eおよび/またはHLA−G複合体の両方を発現することが実証される。CD19特異的CARの活性を上記の通り測定し、細胞がCD19 CAR媒介性死滅できることが見いだされる。細胞をさらにアッセイに供して、当技術分野で公知の方法(例えば、クロムの放出アッセイなど)を使用してNK細胞による細胞の死滅をモニタリングする。CD19 CARおよび改変HLA−EまたはHLA−G複合体を含む細胞は、改変HLA−EまたはHLA−G複合体を欠く細胞よりもNK媒介性死滅に対して抵抗性である。
TRAC遺伝子座およびB2M遺伝子座のタンパク質コード領域を標的とするZFN対を使用した(TRACに対してはSBS#68877/SBS#68876およびB2Mに対してはSBS#57071/SBS#57531)。簡単に述べると、1:1の比のCD4:CD8ヒトT細胞を解凍し、X−vivo15 T細胞培養培地中、CD3/28 Dynabeads(1:3細胞:ビーズ比)を用いて活性化した(0日目)。3日間培養した後(3日目)、細胞を、Maxcyteエレクトロポレーション緩衝剤中、ZFN mRNAの存在下で1mL当たり細胞3×107個まで濃縮し、次いで、Maxcyteデバイスを使用してエレクトロポレーションした。次いで、濃縮し、エレクトロポレーションした細胞を組織培養ウェルに入れ、次いで、導入遺伝子ドナーを含有するAAV6を濃縮された細胞に添加し、それを回復させ、37℃で20分インキュベートした。次いで、細胞を培養培地中に1mL当たり細胞3×106個まで希釈し、30℃で終夜培養した。翌朝、細胞を追加的な培養培地中に1mL当たり細胞0.5×106個まで希釈した。
以下に群を説明する(全てのZFNをZFN毎に60μg/mLのmRNAでエレクトロポレーションし、AAV6ドナーを細胞当たり1×105個のウイルスゲノムで添加した)。AAV B2M−HLA−G融合導入遺伝子は、PGKプロモーターによって駆動され、B2M−HLA−G融合導入遺伝子を発現するTRAC相同アームを有するものであった。簡単に述べると、B2M−HLA−G導入遺伝子は、リーダーシグナルペプチド配列を含むが末端の終止コドンを欠く全長B2M遺伝子、その後に(G4S)4リンカー、その後にリーダーシグナルペプチドがない全長HLA−G*01:01配列を含む。合成前にB2M−HLA−G融合カセット全体をコドン最適化した(図13)。
実験を米国特許出願公開第20170137845号に記載されているプロトコールを使用し、1mL当たり細胞3×107個の細胞密度で行い、エレクトロポレーション後に30℃で終夜培養して低温ショック処理した。翌日(4日目)、細胞を1mL当たり細胞0.5×106個まで希釈し、37℃の培養に移した。3日後(7日目)、細胞を1mL当たり細胞0.5×106個まで再度希釈した。10日目に、細胞をFACS解析のために回収した(1mL当たり細胞0.5×106個まで希釈した)。
FACS解析に関しては、調査される各細胞表面抗原に特異的な蛍光色素とコンジュゲートした抗体を含有する染色緩衝剤(1%BSAおよび0.02%NaN3を伴うPBS)100μL中で細胞表面染色を実施した。以下の表6に詳述するパネル1またはパネル2仕様に従って抗体カクテルを作製した。いずれかの抗体カクテルに再懸濁させた細胞を暗所で30分インキュベートし、PBSで2回洗浄した後、フローサイトメーターでデータを取得した。
細胞内染色に関しては、細胞をまずCytofix/Cytoperm(商標)溶液100μLに再懸濁させ、4℃で20分インキュベートした。1×Perm/Wash溶液で細胞を2回洗浄した後、固定した細胞をいずれかの抗体カクテルに暗所で30分にわたって再懸濁させた。細胞を1×Perm/Wash(商標)溶液で2回洗浄した後、血球計算器でデータを取得した。
図14に示されている通り、B2M−HLA−G融合タンパク質は、内因性B2MおよびTRAC遺伝子座の発現を欠くT細胞の細胞内および表面上に明確に発現された。図14Aは、ZFN媒介性TRAC KOにより、表面CD3発現の97%の消失が実現され(左側のパネル)、B2M KOにより、表面HLAクラス−I分子の81%の消失が実現される(HLA−ABC、右側のパネル)ことをフローサイトメトリーによって例示する。薄い灰色のピークは、ニセまたは無処理のT細胞に対応し、濃い灰色のピークは、ZFNで処理した細胞に対応する。2重KO T細胞に上記のB2M−HLA−G導入遺伝子を発現するAAV6ドナーによって形質導入した。図14Bおよび14Cは、TRAC遺伝子座への標的化組込みのために融合B2M−HLA−G導入遺伝子を発現するAAV6ドナーを形質導入した2重KO T細胞における上首尾のB2MおよびHLA−Gの発現を例示する。具体的には、HLA−GはT細胞上に天然には発現されないので、14Bおよび14Cにおける明確なHLA−Gの濃い灰色のピークから、細胞内および細胞表面上の両方における明確なB2M−HLA−G導入遺伝子の組込みおよびその発現が実証された(左側のパネル)。薄い灰色のピークは、CD3およびB2Mについて2重KOであるがAAVドナーで形質導入されていない細胞に対応する。B2M−HLA−G導入遺伝子の発現は、14Bおよび14C、右側のパネルにおける明確なB2Mの薄い灰色のピークによってさらに裏付けられ、ここで、B2Mは、内因性B2Mを欠く細胞へのB2M−HLA−G構築物の組込みに起因して発現され、シグナルが細胞内および細胞表面上の両方で検出される。濃い灰色のピークは、B2M発現を欠く細胞である。
したがって、細胞の効率的なヌクレアーゼ媒介性改変が実現された。
(実施例5)
標的化組込み
A.B2M
B2M遺伝子座のタンパク質コード領域を標的とするB2M標的化ZFN対SBS#57071/SBS#57531を以下の通り種々のドナー構築物の標的化組込みのために使用した。簡単に述べると、1:1の比のCD4:CD8ヒトT細胞を解凍し、IL2を含むX−VIVO(商標)15 T細胞培養培地中、CD3/28 Dynabeads(1:3細胞:ビーズ比)で活性化(0日目、Lonza BioWhittaker)した。3日間培養した後(3日目)、細胞を、Maxcyteエレクトロポレーション緩衝剤中、ZFN mRNAの存在下で1mL当たり細胞3×107個まで濃縮し、次いで、Maxcyteデバイスを使用してエレクトロポレーションした。次いで、濃縮し、エレクトロポレーションした細胞を組織培養ウェルに入れ、次いで、導入遺伝子ドナーを含有するAAV6を濃縮された細胞に添加し、それを回復させ、37℃で20分インキュベートした。使用したドナー構築物は以下の通りであった:
(1)以下の配列:それぞれサイズが1Kbの相同アーム(B2Mに対するもの)に挟まれたGFP導入遺伝子に作動可能に連結したPGKプロモーター配列を含む、長い相同アーム(長いアーム)を有するドナー;
(2)以下:それぞれサイズが250bpの相同アーム(B2Mに対するもの)に挟まれたGFP導入遺伝子に作動可能に連結したPGKプロモーター配列を含む、短い相同アーム(短いアーム)を有するドナー;
(3)3’UTRにWPRE配列をさらに含み、WPRE配列が、
を含む(2)のドナー;
(4)PGKプロモーターの上流に以下:
のT細胞エンハンサー配列をさらに含む(2)のドナー;または
(5)以下:
のTCRαエンハンサー配列をさらに含む(2)のドナー;
(6)Xenopusベータグロビン遺伝子の5’非翻訳領域からの配列:
をさらに含む(2)のドナー
次いで、細胞を培養培地中に1mL当たり細胞3×106個まで希釈し、30℃で終夜培養した。
全てのZFNをZFN毎に60μg/mLのmRNAでエレクトロポレーションし、全てのAAV6ドナーを細胞当たり1×105個のウイルスゲノムで添加した。全ての実験を、米国特許出願公開第20170137845号に記載されているプロトコール(極度の低温ショック)を使用し、1ml当たり細胞3×107個の細胞密度で行い、エレクトロポレーション後に30℃で終夜培養して低温ショック処理した。
翌日(4日目)、細胞を1mL当たり細胞0.5×106個まで希釈し、37℃の培養に移した。3日後(7日目)、細胞を1mL当たり細胞0.5×106個まで再度希釈した。培養下に置いてさらに3日後、および7日後(それぞれ10日目および14日目)に、細胞をFACSMiSeq解析のために回収した(1mL当たり細胞0.5×106個まで希釈した)。
図15AおよびBに示されている通り、GFP発現から、標的組込みが上首尾であり、本明細書に開示される通りZFN標的部位内にB2Mゲノム改変(インデルおよびTI)を含む遺伝子改変細胞を得たことが示された。
最も高い平均蛍光強度(MFI)は、エンハンサーを含有する構築物内に存在し、これは、短い相同アームを含有する標準の構築物と比較して65%の改善を示した。
B.ドナーのB2M/TRAC2重ノックアウト細胞への標的化組込み
さらに、HLA−EまたはHLA−G導入遺伝子の組込みを含めた、導入遺伝子が組み込まれたTRAC/B2M2重ノックアウト(DKO)を生成するために、B2MおよびTRAC ZFNおよび種々のドナーの両方を使用した実験も上記の通り実施した(10%ヒト血清およびIL−2を伴うRPMIを培養培地として使用した以外)。ドナーは、以下の通り、上で図17および19の説明において詳細に記載されている:
(1)hPGKプロモーターによって駆動されるGFP導入遺伝子を挟むTRAC E部位に対する相同性を有する423bpの左側のアームおよび393bpの右側のアームを含有するドナー。ドナーは、TRAC遺伝子座へのTIのmiseqによる定量化を可能にする「miseqタグ」も含有する。
(2)hPGKプロモーターによって駆動されるGFP導入遺伝子を挟むTRAC E部位に対する相同性を有する1000bpの左側のアームおよび992bpの右側のアームを有するドナー。ドナーは「miseqタグ」を含有しない;
(3)hPGKプロモーターによって駆動されるGFP導入遺伝子を挟むTRAC E部位に対する相同性を有する350bpの左側のアームおよび393bpの右側のアーム、ならびにその後に突然変異WPREエレメントを含有するドナー。ドナーは「miseqタグ」も含有する;
(4)hPGKプロモーターによって駆動されるFMC63−CD8BBZ CAR導入遺伝子を挟むTRAC E部位に対する相同性を有する423bpの左側のアームおよび393bpの右側のアームを含有するドナー。ドナーは「miseqタグ」も含有する;
(5)hPGKプロモーターによって駆動されるFMC63−CD8BBZ CAR導入遺伝子を挟むTRAC E部位に対する相同性を有する423bpの左側のアームおよび393bpの右側のアーム、ならびにその後に突然変異WPREエレメントを含有するドナー。ドナーは「miseqタグ」も含有する;
(6)B2MおよびHLA−Eを発現する融合タンパク質と自己切断性P2Aペプチドによって連結したFMC63−CD8BBZ CAR導入遺伝子を挟むTRAC E部位に対する相同性を有する360bpの左側のアームおよび393bpの右側のアームを含有するドナー。導入遺伝子はhPGKプロモーターによって駆動され、また、後ろに突然変異WPREエレメントが続く。ドナーは「miseqタグ」も含有する;
(7)B2MおよびHLA−Gを発現する融合タンパク質と自己切断性P2Aペプチドによって連結したFMC63−CD8BBZ CAR導入遺伝子を挟むTRAC E部位に対する相同性を有する360bpの左側のアームおよび393bpの右側のアームを含有するドナー。導入遺伝子はhPGKプロモーターによって駆動され、また、後ろに突然変異WPREエレメントが続く。ドナーは「miseqタグ」も含有する;
(8)hPGKプロモーターによって駆動されるHLA−G導入遺伝子を挟むTRAC E部位に対する相同性を有する1000bpの左側のアームおよび992bpの右側のアームを含有するドナー;
(9)hPGKプロモーターによって駆動されるHLA−E0101導入遺伝子を挟むTRAC E部位に対する相同性を有する1000bpの左側のアームおよび992bpの右側のアームを含有するドナー;
(10)hPGKプロモーターによって駆動されるHLA−E0103導入遺伝子を挟むTRAC E部位に対する相同性を有する1000bpの左側のアームおよび992bpの右側のアームを含有するドナー;
(11)hPGKプロモーターによって駆動されるHLA−G導入遺伝子を挟むTRAC E部位に対する相同性を有する1000bpの左側のアームおよび992bpの右側のアームを含有するドナー;
(12)hPGKプロモーターによって駆動される連結したB2M HLA−G導入遺伝子を挟むTRAC E部位に対する相同性を有する1000bpの左側のアームおよび992bpの右側のアームを含有するドナー。B2MとHLA−Gの間のリンカーは、2コピーのG4Sペプチドを含有する。HLA−Gは、シグナルペプチドを含有しない;hPGKプロモーターによって駆動される連結したB2M HLA−G導入遺伝子を挟むTRAC E部位に対する相同性を有する1000bpの左側のアームおよび992bpの右側のアームを含有するドナー。B2MとHLA−Gの間のリンカーは、4コピーのG4Sペプチドを含有する。HLA−Gは、シグナルペプチドを含有しない;
(13)hPGKプロモーターによって駆動される連結したB2M HLA−G導入遺伝子を挟むTRAC E部位に対する相同性を有する1000bpの左側のアームおよび992bpの右側のアームを含有するドナー。B2MとHLA−Gの間のリンカーは、6コピーのG4Sペプチドを含有する。HLA−Gは、シグナルペプチドを含有しない;
(14)hPGKプロモーターによって駆動されるHLA−E0101導入遺伝子を挟むTRAC E部位に対する相同性を有する1000bpの左側のアームおよび992bpの右側のアームを含有するドナー;
(15)hPGKプロモーターによって駆動されるHLA−E0103導入遺伝子を挟むTRAC E部位に対する相同性を有する1000bpの左側のアームおよび992bpの右側のアームを含有するドナー;
(16)hPGKプロモーターによって駆動される連結したB2M HLA−E0101導入遺伝子を挟むTRAC E部位に対する相同性を有する1000bpの左側のアームおよび992bpの右側のアームを含有するドナー。B2MとHLA−E0101の間のリンカーは、4コピーのG4Sペプチドを含有する。HLA−E0101は、シグナルペプチドを含有しない(Celik et al, ibid);
(17)hPGKプロモーターによって駆動される連結したB2M HLA−E0101導入遺伝子を挟むTRAC E部位に対する相同性を有する1000bpの左側のアームおよび992bpの右側のアームを含有するドナー。B2MとHLA−E0101の間のリンカーは、4コピーのG4Sペプチドを含有する。HLA−E0103は、シグナルペプチドを含有しない;
(18)hPGKプロモーターによって駆動されるGFP導入遺伝子を挟むTRAC E部位に対する相同性を有する1000bpの左側のアームおよび992bpの右側のアームを含有するドナー;
(19)B2MおよびHLA−Gを発現する融合タンパク質と自己切断性P2Aペプチドによって連結したFMC63−CD8BBZ CAR導入遺伝子を挟むTRAC E部位に対する相同性を有する360bpの左側のアームおよび393bpの右側のアームを含有するドナー。導入遺伝子はhPGKプロモーターによって駆動され、また、後ろに突然変異WPREエレメントが続く。ドナーは、「miseqタグ」も含有する。
示されている例示的なドナーを使用した結果が図17および19に示されており、ヌクレアーゼ媒介性標的化組込みによりドナーの導入遺伝子が効率的に組み込まれた。図18は、図17に示されている通り、示されている試料のフローサイトメトリーの結果を示す。図20〜26は、示されているドナーについての結果を示す(図19)。
示されている通り、B2M−HLA−EまたはHLA−G融合タンパク質も発現するCAR+細胞(TCR遺伝子を標的とする)を含め、標的化組込みにより、タンパク質発現がもたらされた。
本明細書で言及されている全ての特許、特許出願および刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
開示は、理解を明瞭にするために例証および実施例として一部の詳細が提示されているが、本開示の主旨または範囲から逸脱することなく種々の変化および改変を行うことができることが当業者には明らかになろう。したがって、前述の説明および実施例は、限定するものと解釈されるべきではない。