JP2020164661A - ポリアミド樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

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Abstract

【解決手段】ポリアミド樹脂(A)50〜99質量%と、下記要件(1)〜(3)を満たす酸変性ポリオレフィン(B)1〜50質量%と、前記ポリアミド樹脂(A)及び酸変性ポリオレフィン(B)の合計100質量部に対し、2つ以上の官能基を有する多官能性化合物(C)0.05〜5質量部、オレフィンオリゴマー(D)0〜5質量部、及び無機充填剤(E)1〜100質量部とを含有するポリアミド樹脂組成物。(1)変性度が0.1〜2.0質量%である。(2)MFR(ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重)が0.5〜100g/10分である。(3)ASTM D1238で測定される密度が855〜900kg/m3である。【効果】本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂が固有に備える衝撃強度が損なわれることなく、優れた成形性(成形時の流動性)や外観(表面光沢)が付与されたポリアミド樹脂組成物である。【選択図】なし

Description

本発明は自動車部品、機械部品、電気・電子機器部品などとして有用な機械特性、流動性に優れる、ポリアミド樹脂組成物およびそれからなる成形品に関するものである。
ポリアミド樹脂はその優れた耐熱性、機械特性、成形性等を有するため、自動車等輸送機部品、一般機械部品、精密機械部品、電子・電気機器部品、レジャースポーツ用品、土木建築用部材等の様々な分野で広く使用されている。
一方で、近年の工業用成形品の小型化・薄肉化に伴う軽量化に対する要求がますます高まっており、特に自動車や電気・電子機器用途に用いるポリアミド樹脂はこれらの要求に対し、剛性や衝撃強度等の機械特性を低下させることなく、溶融時の流動性を改良させることが望まれている。
ポリアミド樹脂のアイゾット衝撃強度などの衝撃強度を改良する方法として、α,β−不飽和カルボン酸をグラフトしたエチレン・α−オレフィン共重合体をポリアミド樹脂に配合する方法が提案されている(特許文献1〜3)。しかし、これらの公報に提案されているポリアミド樹脂組成物では、衝撃強度を向上させようとすると、成形時の流動性が大幅に低下してしまうことを本発明者は確認している。
さらにドアハンドル、フェンダー又はドアミラーステーのような自動車用外装部材にポリアミド樹脂を用いる場合は、材料に高強度・高剛性が要求されるので、樹脂にガラス繊維等の無機充填材を高充填したものを射出成形することが多い。しかし、無機充填材を高充填すると、ポリアミド樹脂組成物自身の流動性が低下し易くなり、成形性がさらに低下してしまう問題があった。
成形品の成形性を改善する方法として、例えば、分子量の低いポリアミド樹脂を用いたり、流動性改質剤(可塑剤やワックス類)を用いたりする方法がある。しかし、これら方法には衝撃強度の低下や成形時のガスやシルバーストリーク、ピンホール発生の問題があるので、適用には制限がある。さらに、ポリアミドを構成するジアミン成分として特定のジアミンを用いることによって、機械的強度、成形性、表面外観に優れたポリアミド樹脂組成物を得る方法が開示されている(特許文献4及び5)。しかし、この方法の効果は未だ十分ではない。また、ポリアミド樹脂にホモポリプロピレンや特定の酸変性ポリオレフィンを配合することによって衝撃強度の向上と耐熱性のバランスに優れたポリアミド樹脂組成物を得る方法も開示されている(特許文献6)。しかし、ここでは成形性(射出成型時のスパイラルフロー性)に関しては十分検討されていない。
したがって、ポリアミド樹脂が固有に備える機械的強度(衝撃強度)をできるだけ損なうことなく、成形性(射出成型時のスパイラルフロー性)や外観(表面光沢)に優れたポリアミド樹脂組成物が従来から望まれていた。
特開昭55−009662号公報 特公昭62−013379号公報 特開平9−087475号公報 特開2008−095066号公報 特開2011−148267号公報 特開2015−010100号公報
本発明の目的は、上記の各問題点を解決すること、即ちポリアミド樹脂が固有に備える衝撃強度を損なうことなく、成形性(成形時の流動性)や外観(表面光沢)に優れたポリアミド樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、かかる課題を解決するために、鋭意研究、検討を重ねた結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1] ポリアミド樹脂(A)50〜99質量%と、下記要件(1)〜(3)を満たす酸変性ポリオレフィン(B)1〜50質量%と、前記ポリアミド樹脂(A)及び酸変性ポリオレフィン(B)の合計100質量部に対し、2つ以上の官能基を有する多官能性化合物(C)0.05〜5質量部、オレフィンオリゴマー(D)0〜5質量部、及び無機充填剤(E)1〜100質量部とを含有するポリアミド樹脂組成物。
(1)変性度が0.1〜2.0質量%である。
(2)MFR(ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重)が0.5〜100g/10分である。
(3)ASTM D1238で測定される密度が855〜900kg/m3である。
[2] 前記酸変性ポリオレフィン(B)がエチレン起因骨格単位10〜95モル%と炭素原子数3〜8のα−オレフィン起因骨格単位3〜40モル%とを含むエラストマーの不飽和カルボン酸またはその誘導体によりグラフト変性された変性体を含む[1]に記載のポリアミド組成物。
[3] 多官能性化合物(C)が有する官能基が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基、イソシアネート基、エステル基、及びアミド基から選択される少なくとも1種の基である[1]または[2]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[4] オレフィンオリゴマー(D)の重量平均分子量(Mw)は、1000〜30000の範囲にある[1]〜[3]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
[5] 無機充填剤(E)がガラス繊維である[1]〜[4]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む成形品。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂が固有に備える衝撃強度が損なわれることなく、優れた成形性(成形時の流動性)や外観(表面光沢)が付与されたポリアミド樹脂組成物である。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、特定の官能基を有する多官能性化合物(C)及び無機充填剤(E)を含有し、任意的にオレフィンオリゴマー(D)を含有する。
以下、本発明の形態にかかるポリアミド樹脂組成物の各構成要素について詳細に説明する。
[ポリアミド樹脂(A)]
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は特に限定されず、本発明の効果を損なわない範囲において従来知られる各種のポリアミド樹脂を制限なく使用できる。例えば、アミノ酸ラクタム、あるいはジアミンとジカルボン酸との重縮合反応により得られる溶融成形可能なポリアミド樹脂を使用できる。ポリアミド樹脂(A)の具体例としては、以下の樹脂が挙げられる。
(1)炭素原子数4〜12の有機ジカルボン酸と炭素原子数2〜13の有機ジアミンとの重縮合物、例えばヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との重縮合物であるポリヘキサメチレンアジパミド[6,6ナイロン]、ヘキサメチレンジアミンとアゼライン酸との重縮合物であるポリヘキサメチレンアゼラミド[6,9ナイロン]、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸との重縮合物であるポリヘキサメチレンセバカミド[6,10ナイロン]、ヘキサメチレンジアミンとドデカンジオン酸との重縮合物であるポリヘキサメチレンドデカノアミド[6,12ナイロン]、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとの重縮合物である半芳香族ポリアミド(PA6T、PA9T、PA10T、PA11T)、ビス−p−アミノシクロヘキシルメタンとドデカンジオン酸との重縮合物であるポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカン。
上記有機ジカルボン酸としては、例えばアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、フェニレンジオキシジ酢酸、オキシジ安息香酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などが挙げられる。上記有機ジアミンとしては、例えばヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナンジアミン、オクタンジアミン、デカンジアミン、ウンデカジアミン、ウンデカンジアミン、ドデカンジアミンなどが挙げられる。
(2)ω−アミノ酸の重縮合物、例えばω−アミノウンデカン酸の重縮合物であるポリウンデカンアミド[11ナイロン]。
(3)ラクタムの開環重合物、例えばε−アミノカプロラクタムの開環重合物であるポリカプラミド[6ナイロン]、ε−アミノラウロラクタムの開環重合物ポリラウリックラクタム[12ナイロン]。
中でも、ポリヘキサメチレンアジパミド[6,6ナイロン]、ポリヘキサメチレンアゼラミド[6,9ナイロン]、ポリカプラミド[6ナイロン]が好ましい。
また本発明では、例えばアジピン酸とイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとから製造されるポリアミド樹脂なども使用できるし、さらに6ナイロンと6,6ナイロンとの混合物のように2種以上のポリアミド樹脂を配合したブレンド物も使用できる。
[酸変性ポリオレフィン(B)]
次に本発明で用いる酸変性エラストマー(B)について説明する。酸変性エラストマー(B)はポリアミド樹脂組成物の衝撃強度を向上させるために必須な成分である。
本発明に用いる酸変性ポリオレフィン(B)は、下記の要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とする。
(1) 変性度が0.1〜2.0質量%、好ましくは0.1〜1.5質量%、より好ましくは0.2〜1.0質量%である。
変性度が少な過ぎると成形体の衝撃強度が低下する場合がある。一方、変性度が多過ぎると、前述のポリアミド樹脂(A)や後述する多官能性化合物(C)および無機化合物(E)に含まれる官能基との反応が進行することで、酸変性ポリオレフィン(B)のポリアミド樹脂(A)への分散性が低下してしまい、衝撃強度の改質材としての本来の効果が発現しなくなるだけではなく、ポリアミド樹脂組成物の流動性が低下する恐れがある。
(2)MFR(ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重)は、0.5〜100g/10分、好ましくは1〜80g/10分である。加工性や機械物性の観点から、MFRは前記範囲内であることが好ましい。酸変性ポリオレフィン(B)のMFRが100g/10分より高いと、酸変性ポリオレフィン(B)自体の機械的強度が低くなり十分な衝撃強度を発現できなくなる。またMFRが0.5g/10分より低いと、ポリアミド樹脂組成物の流動性が低下する。
(3) ASTM D1238で測定される密度が855〜900kg/m3、好ましくは860〜885kg/m3である。
酸変性ポリオレフィン(B)の密度が900kg/m3より高いと、酸変性ポリオレフィン(B)自体の機械的強度が低くなり十分な衝撃強度を発現できなくなる。また密度が855kg/m3分より低いと、ポリアミド樹脂組成物の剛性が低下する恐れがある。
この酸変性エラストマー(B)は、酸変性前のエラストマー(b)を不飽和カルボン酸またはその誘導体をラジカル開始剤の存在下でグラフト反応させて得られる。
[酸変性前のエラストマー(b)]
酸変性前のエラストマー(b)は、エチレン起因骨格単位10〜95モル%と炭素原子数3〜8のα−オレフィン起因骨格単位3〜40モル%とからなるエチレンとα−オレフィンとの共重合体である。なお炭素原子数3〜8のα−オレフィン起因骨格単位の含量は好ましくは5〜30モル%、より好ましくは10〜25モル%、特に好ましくは12〜20モル%である。α−オレフィン含量がこのような範囲にあると、柔軟性が良好で取扱いが容易な変性体を得ることができる。しかも、このエラストマーを用いると、衝撃強度に優れた成形体を提供し得るポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
酸変性前のエラストマー(b)は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が、好ましくは0.5〜1.4dl/g、より好ましくは0.7〜1.4dl/gである。極限粘度[η]がこのような範囲にあると、変性体とポリアミド樹脂(A)とのブレンド性が良好になる。
上記のような特性を有する変性前のエラストマー(b)は、例えば、可溶性バナジウム化合物とアルキルアルミニウムハライド化合物とからなるバナジウム系触媒、又はジルコニウムのメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物とからなるジルコニウム系触媒の存在下に、エチレンと炭素原子数3〜8のα−オレフィンとをランダムに共重合させることによって調製することができる。
なお炭素原子3〜8のα−オレフィンとしては、その入手容易性からプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましく、1−ブテンが特に好ましい。各コモノマーの構成単位(モル%)は、例えば13C−NMRスペクトルの分析によって求められる。
また酸変性前のエラストマー(b)のショアーA硬度は柔軟性の観点から、好ましくは20〜90、より好ましくは35〜60である。ショアーA硬度は、試料を190〜230℃で加熱溶融させた後、15〜25℃の冷却温度でプレス成形して得られた試験体を、23℃±2℃の環境下で72時間以上保管し、A型測定器を用い、押針接触後直ちに目盛りを読むことによって得られる値である(ASTM D2240に準拠)。
さらに酸変性前のエラストマー(b)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1.2〜3.5である。この範囲にある酸変性前のエラストマー(b)を用いることで、酸変性エラストマー(B)のべたつき感が抑制される。
酸変性前のエラストマー(b)のガラス転移温度(Tg)が−10℃〜−50℃の範囲内で観測されることが、機械物性の観点から好ましい。このTgは、示差走査熱量計(DSC)を用いて、23℃±2℃で72時間以上の状態調節を実施した後の試験体を、−40℃まで冷却してから昇温速度10℃/minで測定したときに得られるDSC曲線上で検出することが出来る。
これらの酸変性前のエラストマー(b)の製造方法は特に限定されないが、オレフィンを重合できる公知の触媒、例えば、固体状チタン成分及び有機金属化合物を主成分とする触媒、又はメタロセン化合物を触媒の成分として用いたメタロセン触媒の存在下で、エチレンと他のα−オレフィンとを共重合して製造できる。好ましくは、メタロセン触媒の存在下で共重合することにより得られる。
[酸変性ポリオレフィン(B)の製造方法]
酸変性ポリオレフィン(B)は、例えば、前述したエラストマー(b)に、マレイン酸又はその無水物をラジカル開始剤の存在下でグラフト反応させて得られる。
マレイン酸又はその無水物の仕込み量は、酸変性前のエラストマー(b)100質量部に対して、通常0.010〜15質量部、好ましくは0.010〜5.0質量部である。ラジカル開始剤の使用量は、変性前のポリオレフィン100質量部に対して、通常0.0010〜1.0質量部、好ましくは0.0010〜0.30質量部である。
ラジカル開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物又は金属水素化物などを用いることができる。ラジカル開始剤は、マレイン酸又はその無水物、及び変性前のポリオレフィンや他の成分とそのまま混合しても使用することができるが、少量の有機溶媒に溶解してから使用することもできる。この有機溶媒としては、ラジカル開始剤を溶解し得る有機溶媒であれば特に限定されない。
マレイン酸又はその無水物によるグラフト変性は、従来公知の方法で行うことができる。プロピレン系ポリアミド樹脂組成物を有機溶媒に溶解し、次いでマレイン酸又はその無水物及びラジカル開始剤などを溶液に加え、70〜200℃、好ましくは80〜190℃の温度で、0.5〜15時間、好ましくは1〜10時間反応させる方法が挙げられる。
また、押出機などを用いて、無溶媒で、ラジカル開始剤存在下、マレイン酸又はその無水物と、変性前ポリオレフィンとを反応させて酸変性体を製造することもできる。この反応は、通常は変性前ポリオレフィンの融点以上の温度で、通常0.5〜10分間行われることが望ましい。
[ポリアミド樹脂組成物における(A)ポリアミド樹脂及び(B)オレフィン系エラストマーの含有量]
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)50〜99質量%と酸変性ポリオレフィン(B)1〜50質量%、好ましくはポリアミド樹脂(A)60〜98質量%と酸変性ポリオレフィン(B)2〜40質量%、より好ましくはポリアミド樹脂(A)70〜95質量%と酸変性ポリオレフィン(B)5〜30質量%、特に好ましくはポリアミド樹脂(A)75〜93質量%と酸変性ポリオレフィン(B)7〜25質量%(ただし、成分(A)と成分(B)は合計して100質量%)の割合で用いることによって得られる。このような割合でポリアミド樹脂(A)及び酸変性ポリオレフィン(B)を用いることによって、衝撃強度の向上効果と成形時流動性のバランスに優れた成形体が提供される。
[特定の官能基を有する多官能性化合物(C)]
(以下、化合物(C)と称することがある)及びオレフィンオリゴマー(D)、無機充填剤(E)を併用することで得られる。
本発明で用いる特定の官能基を有する多官能性化合物(C)(以下、化合物(C)と称することがある)は、本発明のポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるために必要な成分である。化合物(C)としては、分子中に官能基を2つ以上有するものであれば限定はされず、3つ以上有するものであることが更に好ましい。この化合物(C)は低分子化合物であっても良いし、高分子量の重合体であっても良い。このような化合物(C)の官能基としては水酸基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基、イソシアネート基、エステル基、アミド基から選択された少なくとも1種類であることが好ましく、化合物(C)の官能基はこれらの中から2つ以上、好ましくは3つ以上の同一あるいは異なる官能基を有していることが好ましい。
化合物(C)の好ましい例として、官能基が水酸基の場合は、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−へキサントリオール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、トリエタノールアミン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリトリメチロールプロパン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、スクロース、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼンなどの炭素数3〜24の多価アルコールやポリビニルアルコールなどのポリマーが挙げられる。なかでも、流動性、機械物性の点から分岐構造を有するグリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが好ましい。
化合物(C)の好ましい例として、官能基がカルボキシル基の場合は、プロパン−1,2,3−トリカルボン酸、2−メチルプロパン−1,2,3−トリスカルボン酸、ブタン−1,2,4−トリカルボン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸、ベンゼンペンタカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸、シクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸、ナフタレン−2,5,7−トリカルボン酸、ピリジン−2,4,6−トリカルボン酸、ナフタレン−1,2,7,8−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸などの多価カルボン酸やアクリル酸、メタクリル酸などのポリマーが挙げられ、それらの酸無水物も使用できる。なかでも、流動性の点から分岐構造を有するプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸およびその酸無水物が好ましい。
化合物(C)の好ましい例として、官能基がアミノ基の場合、1,2,3−トリアミノプロパン、1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、1,2,4−トリアミノブタン、1,2,3,4−テトラミノブタン、1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、1,2,3−トリアミノシクロヘキサン、1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、1,2,3−トリアミノベンゼン、1,2,4,5−テトラミノベンゼン、1,2,4−トリアミノナフタレン、2,5,7−トリアミノナフタレン、2,4,6−トリアミノピリジン、1,2,7,8−テトラミノナフタレン、1,4,5,8−テトラミノナフタレン等が挙げられる。なかでも、流動性の点から分岐構造を有する1,2,3−トリアミノプロパン、1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、1,3,5−トリアミノベンゼンが好ましい。
化合物(C)の好ましい例として、官能基がグリシジル基の場合は、トリグリシジルトリアゾリジン−3,5−ジオン、トリグリシジルイソシアヌレートなどの単量体や、ポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)−g−ポリメチルメタクリレート、グリシジル基含有アクリルポリマー、グリシジル基含有アクリル/スチレンポリマーなどのポリマーが挙げられる。
化合物(C)の好ましい例として、官能基がイソシアネート基の場合は、ノナントリイソシアネート(例えば4−イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート(TIN))、デカントリイソシアネート、ウンデカントリイソシアネート、ドデカントリイソシアネートなどが挙げられる。
本発明で用いる化合物(C)はポリアミド樹脂(A)のアミド基部分と反応し、ポリアミド樹脂(A)の主鎖および側鎖に導入されていても良く、ポリアミド樹脂(A)と反応せずに、配合時の構造を保っていても良い。このような化合物(C)をポリアミド樹脂(A)に添加することで、ポリアミド樹脂の分子内および分子間に作用する水素結合を弱め、内部滑剤として作用することによりポリアミド樹脂(A)の流動性を高め、先述した酸変性ポリオレフィン(B)や後述する無機充填剤(E)を併用して得られるポリアミド樹脂組成物の機械的強度と流動性の良好なバランスを発現することが可能となる。
また化合物(C)の分子量は流動性の点で、100〜10000の範囲であることが好ましく、150〜8000の範囲であることがより好ましく、200〜5000の範囲であることがさらに好ましい。分子量が100以上であると、化合物(C)のポリアミド樹脂組成物からのブリードアウトが少ない。また、化合物(C)の分子量が10000以下であると、ポリアミド樹脂組成物の流動性に優れる。
本発明における化合物(C)の配合量は、成分(A)及び成分(B)成分の合計100質量部に対して、0.05〜5質量部の範囲であることが必須であり、流動性と機械物性の点から、0.05〜3質量部の範囲であることが好ましく、0.1〜1質量部の範囲であることがより好ましい。 化合物(C)の添加量が5質量部を超えて含まれると、ポリアミド樹脂組成物の流動性は向上するものの、衝撃強度などの機械的強度が低下する傾向にあるため好ましくない。また、添加量が0.05質量部より少ないとポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させる効果が小さい。
[オレフィンオリゴマー(D)]
本発明で用いるオレフィンオリゴマー(D)は、ポリアミド樹脂組成物の機械的強度と流動性のバランスを付与するために必要な成分である。オレフィンオリゴマー(D)の配合量は、成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対し、流動性および機械物性の点から0〜5質量部範囲であることが好ましく、0.5〜4質量部の範囲であることがより好ましく、1〜3質量部の範囲で配合することがさらに好ましい。
本発明において、オレフィンオリゴマー(D)としては、公知のものを使用することができ、エチレンの直接重合により得られる高密度型エチレンオリゴマーや低密度型エチレンオリゴマー、ポリエチレンやポリプロピレンの熱分解法により得られた低分子量ポリエチレンや低分子量ポリプロピレンなどが挙げられる。
これらの中でも特にエチレンモノマーを直接重合することにより得られたエチレンオリゴマー(以下ポリエチレンワックスと称する)が、樹脂成形用途において、べたつきの原因となる低軟化点成分や、成形品表面にブリードアウトする低分子量成分が少ないので好ましい。
本発明で用いられるポリエチレンワックスは、エチレン単独重合体またはエチレンと炭素原子数3〜10のα−オレフィンとの共重合体からなる。
ここでα−オレフィンとして好ましくは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどが挙げられる。ポリエチレンワックスとして好ましくは、エチレンと、プロペン、1−ブテン、1−ヘキセンまたは4−メチル−1−ペンテンとの共重合体である。
ポリエチレンワックスは、エチレン単位の含有量が80〜100モル%、好ましくは85〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%の範囲にある。ポリエチレンワックスがエチレンとα−オレフィンとの共重合体である場合には、エチレン単位の含有量が80〜99モル%、好ましくは90〜99モル%であることが好ましい。
ポリエチレンワックスのエチレン単位の含有量が上記範囲内にあると、べたつき成分がなく、特に粉末状態での保存安定性に優れたポリエチレンワックスが得られる。
ポリエチレンワックスのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)は、1000〜30000の範囲にあることが好ましく、1500〜20000の範囲がより好ましく、2000〜10000の範囲にあることがさらに好ましい。またポリエチレンワックスの、分子量分布Mw/Mnは3以下、好ましくは2.9以下、より好ましくは2.8以下である。
ポリエチレンワックスは、密度が850〜980kg/m3、好ましくは890〜970kg/m3、より好ましくは900〜950kg/m3の範囲にあることが望ましい。
ポリエチレンワックスの分子量や密度が上記範囲内にあると、常温で固体、溶融状態で低粘度となり、取り扱いが容易なポリエチレンワックスが得られる。
このようなオレフィンオリゴマーの製造に好適に用いられる金属触媒としては、チーグラー系触媒、メタロセン系触媒などがある。特にメタロセン系触媒を用いてポリエチレンワックスを製造すると、様々な特性、時には新規な諸特性の組み合せを有するポリエチレンワックスを合成することができ、そのため種々の用途における要求物性を、他の触媒を用いて製造されたポリエチレンワックスよりも、より目標通りに達成することができる点で好ましい。このことは、メタロセン系触媒を用いて得られたポリエチレンワックスを用いて得られた酸化ポリエチレンワックスにも当てはまることである。
[無機充填剤(E)]
無機充填剤(E)の配合量は成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対し、流動性および機械物性の点で1〜100質量部の範囲であることが好ましく、5〜95質量部の範囲であることがより好ましく、5〜90質量部の範囲であることがさらに好ましい。無機充填材の添加量が1質量部未満である場合には、無機充填材を添加することによる機械的特性を向上させる効果が少なく、一方100質量部を超えて添加した場合には、機械的特性の向上には効果があるが、多官能性化合物を添加したとしても樹脂組成物の流動性が低くなるので好ましくない。
本発明の樹脂組成物に使用できる無機充填剤(E)の種類としては、ガラス繊維やガラスフレークが好ましく、それぞれ単独で使用することも、混合して使用することもできる。また無機充填材(E)としては、これらに限定されず、繊維状、板状、粉末状、粒状などの充填剤も混合して使用することができる。具体的には、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状化合物、スメクタイト、バーミキュライト、雲母、タルク、パイロフィライト、カオリン鉱物及び蛇紋石鉱物などの層状ケイ酸塩鉱物等の充填剤が挙げられる。無機充填剤(E)としては、これらのなかでもガラス繊維が好ましい。
ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。またガラス繊維の断面形状は一般的な円形でも良く、まゆ形、長円形などの非円形でも良い。
本発明に使用するガラス繊維の断面形状が円形の場合は平均直径が3〜50μmの範囲にあることが好ましく、6〜25μmがより好ましい。ガラス繊維の平均直径が3μm未満ではガラスファイバー同士が凝集したり、ポリアミド樹脂(A)との接触面積(表面積)が広くなるため、ポリアミド樹脂組成物の流動性が低下したりする恐れがある。また50μmより大きいと、ポリアミド樹脂組成物に十分な剛性や強度が付与できない恐れがある。
またガラス繊維の断面形状が非円形の場合は、断面の最も長い径(長径)の平均長さが3〜120μmの範囲にあることが好ましく、5〜60μmがより好ましい。最も短い径(短径)の平均長さは0.3〜20μmが好ましく、0.5〜15μmがより好ましい。長径と短径の比は1.2〜10の範囲にあることが好ましく、1.5〜7.5の範囲にあることがより好ましい。非円形断面のガラス繊維の長径および短径が上記の関係を満足することで、得られるポリアミド樹脂組成物は剛性、衝撃強度、流動性に優れる。
なお本発明のガラス繊維は、繊維長が好ましくは1〜20mm、より好ましくは1.5〜12mm、さらに好ましくは2〜10mmの範囲である。上記範囲のガラス繊維を用いることで、ポリアミド樹脂(A)との取り扱い性や混練性に優れ、得られるポリアミド樹脂組成物に十分な剛性や機械的強度が得られる。
さらに本発明に使用する上記のガラス繊維はその表面を公知の集束剤、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤などのカップリング剤および/または、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、アクリル系樹脂やオレフィン系樹脂などの結束剤でガラス繊維の表面を被覆または集束処理されていてもよい。なかでもカップリング剤としては、アミノシランやエポキシシランなどのシラン系カップリング剤が好適に用いられる。また結束剤としてはウレタン樹脂やエポキシ樹脂がマトリックス樹脂であるポリアミド樹脂(A)との親和性、接着性に優れるため好適である。
さらに本発明のポリアミド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、結晶核剤、可塑剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、安定剤、離型剤、顔料および染料を含む着色剤、滑剤、帯電防止剤等を一種以上添加することができる。
本発明の樹脂組成物の製造方法は、本発明で規定する要件を満たす限り特に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド樹脂(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、多官能性化合物(C)、オレフィンオリゴマー(D)および無機充填剤(E)を一軸または二軸押出機で、均一に溶融混練する方法や、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などが好ましく用いられる。生産性の点で、一軸または二軸押出機で均一に溶融混練する方法が好ましく、機械特性に優れた樹脂組成物を得られるという点で、二軸押出機で均一に溶融混練する方法がより好ましい。なかでも、スクリュー長さをL、スクリュー直径をDとすると、L/D>30の二軸押出機を使用して溶融混練する方法が特に好ましい。L/Dが大きい程、化合物(C)による流動性改良効果も大きくなる。二軸押出機のL/Dの上限は150であり、好ましくはL/Dが30を越え、100以下のものが使用できる。
また、本発明において二軸押出機を用いる場合のスクリュー構成としては、フルフライトおよびニーディングディスクを組み合わせて用いられるが、本発明の組成物を得るためにはスクリューによる均一的な混練が必要である。
本発明において溶融混練する場合に、各成分を投入する方法は、例えば、投入口を2カ所有する押出機を用い、スクリュー根元側に設置した主投入口からポリアミド樹脂(A)および酸変性ポリオレフィン(B)、化合物(C)、オレフィンオリゴマー(D)を供給し、主投入口と押出機先端の間に設置した副投入口から無機充填剤(E)を供給し溶融混合する方法などが挙げられる。
[成形品]
本発明の樹脂組成物は、通常公知の射出成形、押出成形、プレス成形などの任意の方法で成形することができ、各種成形品に加工し利用することができる。成形品としては、射出成形品、押出成形品などとして利用することができる。
本発明において、上記各種成形品は、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができ、特に、特に自動車用部材、電気・電子機器用部材として好適である。
特に本発明のポリアミド樹脂組成物は流動性に優れる点を活かして、厚み0.01〜1.0mmの薄肉部位を有する射出成形品に加工することが可能である。具体的には、エアインテークマニホールド、インタークーラーインレット、エキゾーストパイプカバー、インナーブッシュ、ベアリングリテーナー、エンジンマウント、エンジンヘッドカバー、リゾネーター、及びスロットルボディ、チェーンカバー、サーモスタットハウジング、アウトレットパイプ、ラジエータータンク、オイルネーター、及びデリバリーパイプ等の自動車エンジンルームの部品等などの自動車部品を挙げることができる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例で用いた原料成分は以下の通りである。
実施例などで使用する主要原料の略号およびその内容を以下にまとめて示す。
ポリアミド樹脂(A)
A−1: 66ナイロン(東レ社製、アミラン(登録商標)CM3001-N、溶融温度265℃、密度1140kg/m3
酸変性前のエラストマー(b)
酸変性前のエラストマー(b)として、2種類の三井化学株式会社製のエチレン・1-ブテン共重合体(EBR)であるエラストマー(b−1)〜(b−2)を用いた。
エラストマー(b−1)〜(b−2)の性状は以下の通りである。
(b−1)エチレン含量81モル%、MFR(230℃、2.16kg荷重)0.9g/10分
(b−2)エチレン含量85モル%、MFR(230℃、2.16kg荷重)65g/10分
[酸変性ポリオレフィン(B)の調製]
実施例及び比較例で酸変性ポリオレフィン(B)として用いた酸変性ポリオレフィン(B−1)〜(B−3)の調製方法を以下に示す。
(酸変性ポリオレフィン(B−1)の調製方法)
エチレン・1−ブテン共重合体(b−1)10kgと、無水マレイン酸(MAH)60g及び2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン(日油社製、商品名パーヘキサ25B)15gをアセトンに溶解した溶液とをブレンドした。次いで、得られたブレンド物を、スクリュー径30mm、L/D=40の二軸押出機のホッパーから投入し、樹脂温度200℃、スクリュー回転数240rpm、吐出量12kg/hrでストランド状に押出した。得られたストランドを十分冷却した後、造粒することで、酸変性ポリオレフィン(B−1)を得た。得られた酸変性ポリオレフィン(B−1)の物性の測定結果を表1に示す。なお、酸変性ポリオレフィン(B)の変性度(無水マレイン酸含量)(質量%)は、FT−IRにてカルボニル基に帰属される波数1780cm−1ピーク強度に基づき、別途作成した検量線から求めた。
(酸変性ポリオレフィン(B−2)〜(B−3)の調製方法)
エチレン・1−ブテン共重合体(b−1)の種類、無水マレイン酸(MAH)及び2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン(日油社製、商品名パーヘキサ25B)の配合量を表1に示したように変更した以外は、酸変性ポリオレフィン(B−1)の調製方法と同様にして酸変性ポリオレフィン(B−2)〜(B−3)を得た。得られた酸変性ポリオレフィンの物性の測定結果を表1に示す。
なお得られた酸変性ポリオレフィン(B)の各種物性は以下の通りに測定した。
(測定用プレスシートの作製)
200℃に設定した神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、10MPaで圧力シート成形した。0.5〜3mm厚のシート(スペーサー形状:240×240×2mm厚の板に80×80×0.5〜3mm、4個取り)の場合、余熱を5〜7分程度し、10MPaで1〜2分間加圧した後、20℃に設定した別の神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、10MPaで圧縮し、5分程度冷却して測定用試料を作成した。熱板は5mm厚の真鍮板を用いた。上記方法により作製したサンプルを用いて各種物性評価試料に供した。
(ショアーA硬度)
ASTM D2240に準拠して測定した。
(MFR)
230℃、2.16kg荷重の条件でメルトフローレート(MFR)を測定した。
(密度)
ASTM D1505に準拠して密度を測定した。
Figure 2020164661
多官能性化合物 (C)
多官能性化合物 (C)として、下記の多官能性化合物 (C−1)及び(C−2)を用いた。
C−1:ジペンタエリスリトール(分子量254、東京化成社製)
C−2:ペンタエリトリトールテトラステアラート(分子量1220、東京化成社製)
オレフィンオリゴマー(D)
オレフィンオリゴマー(D)として、下記のオレフィンオリゴマー(D−1)及び(D−2)を用いた。
D−1:メタロセン触媒重合型ポリエチレンワックス(分子量(粘度法)4000、密度980kg/m3
D−2:チーグラー触媒重合型ポリエチレンワックス(分子量(粘度法)4000、密度980kg/m3
無機充填剤 (E)
無機充填剤 (E)として、下記の無機充填剤(E−1)及び(E−2)を用いた。
E−1:ガラス繊維(チョップドストランドタイプ、円形断面、繊維径10μm、ウレタン系結束剤で処理されている)
E−2: ガラス繊維(チョップドストランドタイプ、非円形長円断面、繊維長径24μm、繊維短径6μm、長径と短径の比は4、ウレタン系結束剤で処理されている)
[実施例1]
ポリアミド樹脂(A−1)85質量部と、酸変性ポリオレフィン(B−1)15質量部(樹脂の合計100質量部)と多官能性化合物(C−1)0.5質量部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合してドライブレンド物を調製した。次いで、このドライブレンド物を290℃に設定した二軸押出機(L/D=40、30mmφ)の主投入口に投入しながら、副投入口からから無機充填剤(E−1)45質量部を順次投入してポリアミド樹脂組成物のペレットを調製した。この際スクリュー回転数200rpm、吐出量10kg/hrで押出した。
得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを100℃で12時間乾燥した後、シリンダー温度285℃、金型温度40℃で射出成形を行ない、物性試験用試験片を作製した。
続いて、下記の方法により、ポリアミド樹脂組成物の物性評価を行なった。結果を表2に示す。
(1)引張り試験
厚み1/8”の試験片を用い、ASTM D638に従って、降伏点強度、破断伸びを測定した。なお、試験片の状態調製は、乾燥状態で23℃の温度で2日行なった。
(2)曲げ試験
厚み1/8”の試験片を用い、ASTM D790に従って、曲げ弾性率(FM;kg/cm2)を測定した。なお、試験片の状態調製は、乾燥状態で23℃の温度で2日行なった。
(3)アイゾット衝撃試験
厚み1/8”の試験片を用い、ASTM D256に従って、−40℃及び23℃でノッチ付きアイゾット衝撃強度を測定した。
(4)流動性
シリンダー温度280℃、射出圧力100MPa、金型温度80℃とした50t型締力の射出成形機にて、3.8mmφ半円のスパイラル状の溝を持った金型に射出成形し、流動距離(スパイラルフロー長)を測定した。
(5)外観(グロス)
シリンダー温度280℃、射出圧力80MPa、金型温度80℃とした70t型締力の射出成形機にて、100mm×100mm、厚さ3mmの角板を成形し、60°鏡面光沢度をJIS Z8741に準拠し測定した。
評価結果を表2に示す。
[実施例2〜11、比較例1〜12]
実施例2〜11、比較例1〜12においては、各成分の配合量を表1に示したようにした以外は実施例1と同様の方法でポリアミド樹脂組成物のペレットを調製した。オレフィンオリゴマー(D)を配合する場合は、ポリアミド樹脂(A−1)と、酸変性ポリオレフィン(B−1)および多官能性化合物(C−1)と同時に、ヘンシェルミキサーに投入し混合してドライブレンド物を調製した。次いで、このペレットから実施例1と同様の方法で物性試験用試験片を作製した。
実施例1と同様の方法でポリアミド樹脂組成物の物性評価を行なった。結果を表2に示す。
Figure 2020164661
表2の結果より以下のことが明らかとなった。
実施例1と比較例5との比較および実施例11と比較例12との比較から、多官能性化合物(C)が添加されていると、ポリアミド樹脂組成物の流動性が大幅に改良されることがわかる。
実施例1および実施例2〜3、比較例5,6との比較では、多官能性化合物(C)とオレフィンオリゴマー(D)を含む場合、−40℃での衝撃強度と流動性の改良効果が大きいことがわかる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は衝撃強度向上効果と成形時流動性のバランスに優れるので、樹脂材料にそのような物性が求められる各種分野にエンジニアリングプラスチックとして産業上極めて有用である。

Claims (6)

  1. ポリアミド樹脂(A)50〜99質量%と、下記要件(1)〜(3)を満たす酸変性ポリオレフィン(B)1〜50質量%と、前記ポリアミド樹脂(A)及び酸変性ポリオレフィン(B)の合計100質量部に対し、2つ以上の官能基を有する多官能性化合物(C)0.05〜5質量部、オレフィンオリゴマー(D)0〜5質量部、及び無機充填剤(E)1〜100質量部とを含有するポリアミド樹脂組成物。
    (1)変性度が0.1〜2.0質量%である。
    (2)MFR(ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重)が0.5〜100g/10分である。
    (3)ASTM D1238で測定される密度が855〜900kg/m3である。
  2. 前記酸変性ポリオレフィン(B)がエチレン起因骨格単位10〜95モル%と炭素原子数3〜8のα−オレフィン起因骨格単位3〜40モル%とを含むエラストマーの不飽和カルボン酸またはその誘導体によりグラフト変性された変性体を含む請求項1に記載のポリアミド組成物。
  3. 多官能性化合物(C)が有する官能基が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基、イソシアネート基、エステル基、及びアミド基から選択される少なくとも1種の基である請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
  4. オレフィンオリゴマー(D)の重量平均分子量(Mw)は、1000〜30000の範囲にある請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  5. 無機充填剤(E)がガラス繊維である請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含む成形品。
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