以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
本発明に係る錠剤印刷装置の印刷対象物である錠剤は、一例である錠剤Tbを例に挙げて説明するが、錠剤は、裸錠(素錠)、糖衣錠、フィルムコーティング錠(FC錠)、腸溶錠、ゼラチン被包錠、多層錠、有核錠等の錠剤やタブレットを含むほか、硬カプセル、軟カプセル等のカプセル錠を含み得るもので、医薬用、食用、洗剤用、工業用等、その用途を問わない。
本発明の実施の一形態に係る錠剤搬送装置が用いられる錠剤印刷装置は、図1に示すように構成される。図1において、印刷対象の錠剤Tbを貯めるホッパー11から第1振動フィーダ12a及び第2振動フィーダ12bが続き、第2振動フィーダ12bから更に続いて整列フィーダ14が配置されている。整列フィーダ14の後方には、錠剤搬送装置としての第1搬送機構17が配置されており、整列フィーダ14の後端部と第1搬送機構17の前端部に上からかぶさるように、受け渡しフィーダ16が配置されている。第1搬送機構17の下方に、互いに端部が上下方向でオーバーラップするように、錠剤搬送装置としての第2搬送機構18が配置されている。
第1振動フィーダ12a及び第2振動フィーダ12bのそれぞれは、例えば、樋状の搬送路に加振器が設けられた構造となっており、ホッパー11から順次供給される錠剤Tbが振動によって前記搬送路内を整列フィーダ14に向けて順次移動する。整列フィーダ14は、搬送路上に整列ガイドが配置された構造となっており、その整列ガイドによって錠剤Tbを、例えば、1列にして受け渡しフィーダ16に向けて順次搬送する。なお、整列フィーダ14は、複数列にて錠剤Tbを搬送するようにすることもできる。受け渡しフィーダ16は、図示しない2つのプーリに、気体透過性を有する搬送ベルトが巻き掛けられ、その搬送ベルトの内側に吸気装置に結合した吸気チャンバ(いずれも不図示)が設けられた構造となっている。そして、受け渡しフィーダ16において搬送ベルトは、整列フィーダ14からの錠剤Tbを吸気チャンバの吸気作用によって引き受けて搬送し、当該吸気チャンバの吸気作用が働かなくなる位置にてその錠剤Tbを第1搬送機構17に引き渡す。
第1搬送機構17(錠剤搬送装置)は、駆動プーリ172と、テンションプーリ173と、2つの調整プーリ174a、174bとに搬送ベルト171が巻き掛けられた構造となっている。搬送ベルト171には、図2に示すように、錠剤Tbの搬送方向Dに延びる仮想線Lv上に一列になって複数の吸引孔176が形成されている。この吸引孔176は、例えば搬送ベルト171における搬送方向Dと直交する方向の中央に設けられる。仮想線Lvは、この吸引孔176の中心を結ぶ線である。なお、錠剤Tbが整列フィーダ14にて複数列に整列されて受け渡しフィーダ16から複数列になって搬送ベルト171に受け渡される場合、錠剤Tbの列の数に応じた列数の吸引孔176が形成されることになる。駆動プーリ172は、モータMによって駆動され、モータMの駆動に伴う駆動プーリ172の回転によって環状の搬送ベルト171が回転移動する。また、モータMの駆動軸の回転に伴って動作する第1エンコーダ45が設けられている。環状の搬送ベルト171の内側に、真空ポンプ等の吸気装置に排気口175aを介して結合した吸気チャンバ175が設けられている。吸気チャンバ175の吸気作用により、搬送ベルト171の裏面側から、その搬送ベルト171に形成された各吸引孔176を通して空気(気体)が吸引される。この各吸引孔176により、錠剤Tbが搬送ベルト171の表面に引き付けられて吸引保持され、整列した状態で搬送される。
第1搬送機構17(錠剤搬送装置)においては、印刷を目的とした位置(目的位置)として設定された印刷位置Ptに、第1インクジェットヘッド22が、搬送ベルト171の表面に対向して設けられている。第1インクジェットヘッド22は、複数のノズルを備え、印刷データに従って、圧電素子や熱素子等のエネルギー発生素子を駆動させることにより、各ノズルからインク滴を噴出して印刷を行う。搬送ベルト171の周囲には、錠剤Tbの搬送方向Dにおける印刷位置Ptの上流側に第1姿勢確認カメラ21(撮影部)が、更にその上流側に第1気体噴出機200(気流発生機)が、それぞれ搬送ベルト171の表面に対向するように設けられている。搬送方向Dにおける印刷位置Pt(第1インクジェットヘッド22)の下流側には、第1印刷確認カメラ23が設けられ、更に駆動プーリ172により折り返したその下流側には、第1乾燥ユニット25、及び2つの回収トレイ26a、26bが順次設けられている。また、吸気チャンバ175内には、2つのエア噴射ノズル24a、24bが、搬送ベルト171を挟んで回収トレイ26a、26bに対向するように設けられている。エア噴射ノズル24aから噴射されるエアにより搬送ベルト171に吸引保持された錠剤Tbが回収トレイ26aに飛ばされ、エア噴射ノズル24bから噴射されるエアにより搬送ベルト171に吸引保持された錠剤Tbが回収トレイ26bに飛ばされる。
第1姿勢確認カメラ21の撮影領域は、搬送ベルト171における前記印刷位置Ptと第1気体噴出機200との間の所定範囲に設定されている。第1姿勢確認カメラ21の撮影により得られる画像により、印刷位置Ptに向かう錠剤Tbの傾き等の姿勢や割れ、カケ等の損傷の有無を判別することができる。第1印刷確認カメラ23の撮影領域は、搬送方向Dにおける印刷位置Ptの下流側の搬送ベルト171の所定範囲に設定される。第1印刷確認カメラ23の撮影により得られる画像により、錠剤Tb表面の印刷状態の良否を判別することができる。
第2搬送機構18(錠剤搬送装置)は、上述した第1搬送機構17と略同様の構造である。具体的には、第2搬送機構18は、第2エンコーダ46が装着されたモータMによって駆動される駆動プーリ182と、テンションプーリ183と、2つの調整プーリ184a、184bとに搬送ベルト181が巻き掛けられた構造となっており、その搬送ベルト181の内側に吸気装置(不図示)に排気口185aを介して結合された吸気チャンバ185が設けられている。搬送ベルト181には、搬送ベルト171と同様に、錠剤Tbの搬送方向Dに延びる仮想線Lv上に一列になって複数の吸引孔が形成されている(図2参照)。そして、吸気装置(図示略)の動作に基づいた吸気チャンバ185の吸気作用により、搬送ベルト181の裏面側から、その搬送ベルト181に形成された各吸引孔を通して空気(気体)が吸引される。この各吸引孔により、錠剤Tbが搬送ベルト181の表面に引き付けられて吸引保持され、整列した状態で搬送される。
第2搬送機構18において、印刷を目的とした位置(目的位置)として設定された印刷位置Ptに、第1インクジェットヘッド22と同様の構造の第2インクジェットヘッド32が搬送ベルト181の表面に対向して設けられている。そして、搬送ベルト181の周囲には、その第2インクジェットヘッド32とともに、第2気体噴出機300(気流発生機)、第2姿勢確認カメラ31(撮影部)、第2印刷確認カメラ33、第2乾燥ユニット35、及び2つの回収トレイ36a、36bが、第1搬送機構17における、第1インクジェットヘッド22、第1姿勢確認カメラ21、第1印刷確認カメラ23、第1乾燥ユニット25、及び2つの回収トレイ26a、26bと同様の機能をもつものとして、また、同様の相対的位置関係にて、設けられている。吸気チャンバ185内には、2つのエア噴射ノズル34a、34bが、第1搬送機構17における2つのエア噴射ノズル24a、24bと同様に、搬送ベルト181を挟んで回収トレイ36a、36bに対向するように設けられている。第2搬送機構18では、第1搬送機構17とは異なり、錠剤Tbの搬送方向Dにおける搬送ベルト181の最下流の部分に対向して収納トレイ37が配置されている。
上述した構造の錠剤印刷装置では、印刷制御部100の制御のもと、次のようにして順次錠剤Tbの表面に文字やマークが印刷される。
ホッパー11から繰り出されて整列フィーダ14及び引き渡しフィーダ16を介して第1搬送機構17の搬送ベルト17上に順次供給される錠剤Tbは、搬送ベルト171によって印刷位置Ptに向けて搬送される。その搬送される各錠剤Tbは、複数の吸引孔176による吸引により、搬送ベルト171の表面に引き付けられて前記複数の吸引孔176が形成される仮想線Lv上に整列した状態になる(図2参照)。このように搬送ベルト171によって整列して搬送される各錠剤Tbは、第1気体噴出機200から搬送ベルト171の表面に向けて噴出される気体(空気)により形成される気流の影響を受けつつ、印刷位置Ptに向かう。
例えば、第1気体噴出機200と第1姿勢確認カメラ21との間の所定位置に、錠剤検出用のセンサ(不図示)が設けられており、このセンサからの検出信号に基づいて錠剤Tbが検出されると、以後、第1エンコーダ45の値に基づいて、検出位置を起点とした錠剤Tbの位置が印刷制御部100によって認識される。このように検出された錠剤Tbが第1姿勢確認カメラ21で撮影され、その撮影により得られた画像に基づいて、錠剤Tbの汚れ、カケ等の損傷の有無が判定され、更に、損傷が無いと判定された錠剤Tbの搬送ベルト171上での姿勢(錠剤Tbの表裏、搬送ベルト171上での位置、搬送ベルト171上での保持されている向きは鉛直方向の向き等の姿勢を含む)が、印刷制御部100により判定される。その後、損傷が無いと判定された錠剤Tbが印刷位置Ptを通過するときに、姿勢についての情報を加味した印刷制御部100の制御のもと、その錠剤Tbに印刷データに従った文字やマーク等が印刷される。このとき、損傷があると判定された錠剤Tb、及び正常な印刷ができない姿勢であると判定された錠剤Tbについては印刷がなされない。以後、印刷制御部100は、その印刷がなされなかった錠剤Tbの位置(第1エンコーダ45の値に基づく)を追跡する。
更に、上記印刷を経た錠剤Tbは、第1印刷確認カメラ23により撮影され、その撮影画像に基づいて錠剤Tbに正常に文字やマークが印刷されたか否かが、印刷制御部100により判定される。以後、印刷制御部100は、正常に印刷されなかったと判定された錠剤Tbの位置(第1エンコーダ45の値に基づく)を追跡する。第1印刷確認カメラ23の位置を通過した錠剤Tbは、第1乾燥ユニット25に対向して搬送される際に、表面に印刷された文字やマークのインクが乾燥(定着)させられる。そして、カケ等の損傷により印刷がなされずに、印刷制御部100により位置が追跡されている錠剤Tb、及び、カケ等の損傷はないが、印刷がかすれる等正常になされなかった錠剤Tbは、一方のエア噴射ノズル24aに対向する位置に到達すると、そのエア噴射ノズル24aから噴射されるエアによって搬送ベルト171から飛ばされて、回収トレイ26aに回収される。また、カケ等の損傷はないが、姿勢不良等により印刷を行わず、印刷制御部100により位置が追跡されている錠剤Tbは、他方のエア噴射ノズル24bに対向する位置に達すると、そのエア噴射ノズル24bから噴射されるエアによって搬送ベルト171から飛ばされて、他方の回収トレイ26bに回収される。
表面に文字やマークが正常に印刷された錠剤Tbは、搬送ベルト171の移動に伴って搬送され、吸引チャンバ175の吸気作用が働かなくなった位置にて搬送ベルト171から第2搬送機構18の搬送ベルト181上に落ちる。このようにして、表面に正常に印刷のなされた錠剤Tbが第1搬送機構17から第2搬送機構18に受け渡される。このとき、印刷された面が搬送ベルト181側になるように裏返された状態で受け渡される。
第2搬送機構18においても、第1搬送機構17の場合と同様の動作が行われる。具体的には、印刷制御部100での制御のもと、搬送ベルト181の移動に伴って順次搬送される錠剤Tbの、位置検出用のセンサ(不図示)の検出信号の出力タイミングを基点とした第2エンコーダ46の値に基づく位置追跡、各錠剤Tbの裏面(第1搬送機構17で印刷された面の反対側の面)に対する第2インクジェットヘッド32(印刷位置Ppに位置する)による文字やマーク等の印刷、第2乾燥ユニット35による錠剤Tbに印刷された文字やマークのインクの乾燥、エア噴射ノズル34aによる損傷や印刷不良のある錠剤Tbの回収トレイ36aへの回収、及びエア噴射ノズル34bによる印刷不可の錠剤Tbの回収トレイ36bへの回収がなされる。そして、正常に印刷された錠剤Tbは、吸引チャンバ185の吸気作用が働かなくなった位置にて、収納トレイ37内に落ち、収容される。
ところで、第1搬送機構17において、錠剤Tbが受け渡しフィーダ16から第1搬送ベルト171に落ちて受け渡される際に、錠剤Tbが揺れ動く。このため、受け渡しフィーダ16から受け渡されて搬送ベルト171によって印刷位置Ptに向かう錠剤Tbには、例えば、図3Aに示すように、吸引孔176による吸引の作用を中央部で受けて、錠剤Tbの被印刷領域が搬送ベルト171の表面と略平行な姿勢(目的とする処理が適切に行える姿勢の一例)のものや、例えば、図3Bに示すように、吸引孔176による吸引の作用を周辺部で受けて、搬送ベルト171の表面に対して傾いた姿勢のものが混在し得る。このような姿勢のばらつきは、図3A、図3Bに示すような球形状を上下につぶしたような側面視で楕円形状となる錠剤では起こりやすい。特に、上下につぶされた側面方向から見て、曲面の曲率が大きいほど起こりやすい傾向となる。ある程度の傾きであれば、本来の目的である適切な印刷(錠剤Tbの被印刷面の予定している位置に、ブレや曲り、歪みのない印刷が行えること)が可能であるが、傾きの程度が大きくなると、その適切な印刷が難しくなる。このような状況は、第1搬送ベルト171からの錠剤Tbが第2搬送ベルト181に落ちて受け渡される第2搬送機構18でも同様に生じ得る。
このような事情から、第1搬送機構17において印刷位置Pt(第1インクジェットヘッド22)の上流側であって、錠剤Tbが吸引保持される位置の上方に第1気体噴出機200(気流発生機)が設けられるとともに、第2搬送機構18において印刷位置Pt(第2インクジェットヘッド32)の上流側に第2気体噴出機300(気流発生機)が設けられている。第1気体噴出機200と第2気体噴出機300とは同じ構造のものであるので、以下、第1気体噴出機200について詳細に説明する。
気流発生機の第1の例としての第1気体噴出機200は、印刷位置Pt(第1インクジェットヘッド22)の上流側であって第1姿勢確認カメラ21の更に上流側において、図4に示すように、搬送ベルト171に形成された複数の吸引孔176が配列される仮想線Lvに対向して配置されている。そして、第1気体噴出機200には、前記仮想線Lvに対向して開口し、錠剤Tbの搬送方向Dに延びる単一のスリット(噴出口:不図示)が形成されている。このスリットから、図5に示すように、搬送方向Dに所定の圧力分布(図5中破線矢印で示す)、例えば、搬送方向Dの位置に応じて実質的に変化のない均一な圧力分布をもって気体(空気)が噴出される。
このような第1気体噴出機200のスリットから一枚のカーテン状に複数の吸引孔176が並ぶ仮想線Lvに向けて噴出される気体(空気)により、搬送ベルト171上の各錠剤Tbに気流が与えられる(図5参照)。上述のように傾いて保持された錠剤Tbは不安定である。したがって、この気流によって、それまで傾いていた姿勢の錠剤Tbのその姿勢が変わる。例えば、図3Bに示すように、吸引孔176による吸引により傾いた姿勢で搬送ベルト171上に吸引保持されている錠剤Tbについては、上方から吹き付ける気流の力によりその傾きの程度が小さくなって、図3Aに示すような安定した姿勢に、あるいは、その安定した姿勢に近い姿勢に変わる。傾いた姿勢で吸引孔176に吸引保持された錠剤Tbは、言い換えれば錠剤Tbの重心から離れた位置において吸引孔176により吸引保持されている。したがって、上方から吹き付ける気流の力によって容易に姿勢が変わる。一方、例えば、図3Aに示すように、吸引孔176による吸引により、搬送ベルト171の表面に略平行の安定した姿勢で搬送ベルト171上に吸着引保持されている錠剤Tbについては、上方から前記気流が与えられる状況においてもその姿勢が変わり難い。このような安定した姿勢で吸引孔176に吸引保持された錠剤Tbは、言い換えれば錠剤Tbの重心に近い位置が吸引孔176によって吸引されている。したがって、上方から吹き付ける気流の力によっても姿勢が変わりにくい。
搬送ベルト上で傾いた姿勢の錠剤Tb、すなわち適切な印刷を妨げる姿勢にて搬送ベルト171によって搬送される錠剤Tbが、第1気体噴出機200の下を通過することにより、その錠剤Tbの姿勢が適切な印刷が可能な姿勢に変わる。そして、このように姿勢が変わった錠剤Tbは、吸引孔176により搬送ベルト171の面により安定して吸引保持された状態で、印刷位置Ptに向けて搬送される。その結果、より多くの数の錠剤Tbが適切な印刷が可能な姿勢にて、第1姿勢確認カメラ21の撮影範囲を通り、印刷位置Ptに向けて搬送される。これにより、印刷不良の錠剤Tbや、姿勢不良により印刷がなされない錠剤Tbの数を減らすことができ、より効率的な錠剤Tbに対する印刷が可能となる。
気流発生機の第2の例としての第1気体噴出機について説明する。
この第1気体噴出機210は、図6に示すように、気体(空気)を噴出する複数のノズル210a〜210k(例えば、11個)を備えている。複数のノズル210a〜210kは、搬送ベルト171の複数の吸引孔176が配列される仮想線Lvに対向するように配列されており、隣接するノズルの間隔は、錠剤Tbの搬送方向Dの下流側ほど小さい。また、このように搬送方向Dの位置に応じて変化するノズルの間隔のいずれについても、錠剤Tbの直径よりも小さい。更に、第1気体噴出機210(複数のノズル210a〜210k)が配置される領域において、複数の吸引孔176による吸引力は、錠剤Tbの搬送方向Dの下流側ほど大きくなるように設定されている。このように配列された複数のノズル210a〜210kのそれぞれから所定の圧力にて気体(空気)が噴出される。なお、第2の例における第1気体噴出機210からの気体の圧力分布は図6中破線矢印で示す。
このような第1気体噴出機210では、複数のノズル210a〜210kから吸引孔176が並ぶ仮想線Lvに向けて噴出される気体(空気)により搬送ベルト171上の各錠剤Tbに気流が与えられる(図6参照)。この気流は、複数のノズル210a〜210kにおける隣接ノズルの間隔に応じて、第1気体噴出機210の下流側にいくほど密度が高くなる。このように変化する気流と徐々に強さが大きくなる吸引孔176による吸引保持力とが相まって、それまで傾いていた姿勢の錠剤Tbのその姿勢が変わる(図3B→図3A)。具体的には、吸引孔176による吸引力が小さい上流側では、傾いた姿勢で吸引孔176に吸引保持された錠剤Tbがより揺れ動きやすくなる。つまり、姿勢が変わりやすくなる。これに加え、第1気体噴出機200から錠剤Tb表面に与えられる気流によって錠剤Tbが揺れ、傾いたの錠剤Tbの姿勢がさらに変化することになる。つまり、傾いた姿勢で吸引孔176に吸引保持されていた錠剤Tbについては、前述したとおり錠剤Tbの重心から離れた位置において吸引保持されている。さらに吸引孔176による吸引保持力を低下させているため、気流によってより容易に姿勢が変わる。そして、徐々に第1気体噴出機210の間隔が狭くなることによって、錠剤Tbの上面が受ける気体流量が増加して、錠剤Tbが第1気体噴出機210側から押さえつけられる形になる。このため、より確実に錠剤Tbが図3Aに示すような安定した姿勢へと変化する。さらに、吸引孔176による吸引力が大きい下流側では、複数のノズル210a〜201kの隣接する間隔が錠剤Tbの直径より小さく設定されている。これによって、錠剤Tbの姿勢が、上記変化後の姿勢に維持されるようになる。また、複数のノズル210a〜210kにおける隣接する間隔が錠剤Tbの直径より小さく設定されているので、各錠剤Tbに対して2つのノズルから噴出する気体による気流が作用することになり、錠剤Tbの姿勢を安定させ易い。一方、例えば、図3Aに示すように、吸引孔176により、搬送ベルト171の表面に略平行の安定した姿勢で搬送ベルト171上に吸引保持されている錠剤Tbについては、第1の例(図4及び図5参照)と同様の理由により、上方から前記気流が与えられる状況においてもその姿勢が変わり難い。
搬送ベルト上で傾いた姿勢の錠剤Tb、すなわち、適切な印刷を妨げる姿勢にて搬送ベルト171によって搬送される錠剤Tbが複数のノズル210a〜210kで構成される第1気体噴出機210の下を通過することにより、その錠剤Tbの姿勢が適切な印刷が可能な姿勢に変わる。その結果、第1の例(図4及び図5参照)と同様に、より多くの数の錠剤Tbが適切な印刷が可能な姿勢にて、第1姿勢確認カメラ21の撮影範囲を通り、印刷位置Ptに向けて搬送される。これにより、印刷不良の錠剤Tbや、姿勢不良により印刷がなされない錠剤Tbの数を減らすことができ、より効率的な錠剤Tbに対する印刷が可能となる。
なお、この第2の例は第1の例よりも錠剤Tbの外形において曲率が小さな錠剤Tbに適している。図2に示す例では、一つの錠剤Tbは複数の吸引孔176によって吸引保持されている。錠剤Tb一つに対して吸引保持に寄与する吸引孔176の数は、錠剤Tbの直径と、錠剤Tbの外形の曲率によって決まる。外形の曲率が小さな錠剤Tbは、曲率が大きな錠剤Tbに比べ、よりたくさんの吸引孔176により吸引保持される可能性が高い。このようにたくさんの吸引孔176によって保持される場合、一旦保持されるとその姿勢を変化させにくい。したがって外形の曲率が小さいと、もし不安定な状態で吸引された場合には、そのままの姿勢が維持されやすくなる。第2の例は、吸引孔176による吸引力を低下させているから、錠剤Tbの吸引保持力が弱まり、第1気体噴出機210によってより錠剤Tbの姿勢を変化させやすい。第2の例によれば、外形の曲率が小さな錠剤Tbにおいても第1の例よりも確実に、適切な印刷が可能な姿勢に変化させることができる。また第2の例は、重量が大きな錠剤Tbについても有効である。重量が大きな錠剤Tbは、自重によって吸引孔176側に吸引保持されやすくなる。したがって、外形の曲率が小さな錠剤Tbと同様の理由で、第1の例よりも確実に、適切な印刷が可能な姿勢に変化させることができる。
気流発生機の第3の例としての第1気体噴出機について説明する。
この第1気体噴出機220は、図7に示すように、気体(空気)を噴出する複数のノズル(図7において●で示される)を備えている。この複数のノズルは、第1グループ220aと第2グループ220bとに分けられる。第2グループ220bのノズルは、第1グループ220aのノズルより印刷位置Pt(第1インクジェットヘッド22)近くに配置されている。第1グループ220aのノズルは、搬送ベルト171の複数の吸引孔176が配列される仮想線Lvを挟む第1領域E1及び第2領域E2のそれぞれに向けて気体を噴出するように配列されている。そして、第1領域E1に向けて気体を噴出するノズル及び第2領域E2に向けて気体を噴出するノズルは、千鳥状に配列されている。第2グループ220bのノズルは、仮想線Lv真上に配置されている。また、第2グループ220bにおける隣接ノズルの間隔は、第1グループ220aにおける隣接ノズルの間隔より小さい。このように配列された第1グループ220aのノズル及び第2グループ220bのノズルから所定の圧力にて気体(空気)が噴出される。
このような第1気体噴出機220のより上流側の部分では、千鳥状に配列された第1グループ220aのノズルから吸引孔176が並ぶ仮想線Lvを挟んだ第1領域E1及び第2領域E2に向けて噴出される気体(空気)により搬送ベルト171の前記仮想線Lv上に並ぶ各錠剤Tbに気流が与えられる。第1気体噴出機220のより下流側の部分では、直線状に配列された第2グループ220bのノズルから吸引孔176が並ぶ仮想線Lvに向けて噴出される気体(空気)により搬送ベルト171上の各錠剤Tbに気流が与えられる。
このように第1グループ220aの千鳥状に配列されたノズルから噴出される気体による気流と、及び第2グループ220bの直線状に配列されたノズルから噴出される気体による気流のそれぞれと、により、それまで傾いていた姿勢の錠剤Tbのその姿勢が変わる。具体的には、より上流側の第1グループ220aの千鳥状に並んだノズルから噴出される気体の影響を受ける領域では、搬送方向Dにおける位置に応じて気流の錠剤Tbにあたる部分が変わるために、その錠剤Tbが揺れ動いて、傾いた姿勢が変化することになる。傾いた姿勢の錠剤Tbの姿勢が気流によって容易に変化する理由は、前述の第1、第2の例において述べたとおりである。そして、より下流側の第2グループ220bの直線状に特に密に並んだノズルから噴出される気体による気流の影響を受ける領域において、錠剤Tbの上面中心付近が受ける気体流量が増加して、錠剤Tbが第1気体噴出機220側から押さえつけられるようになる。これによって錠剤Tbが図3Aに示すような安定した姿勢へと変化しやすくなり、さらに錠剤Tbの姿勢が、上記変化後の姿勢に維持される。一方、例えば、図3Aに示すように、吸引孔176による吸引により、搬送ベルト171の表面に略平行の安定した姿勢で搬送ベルト171上に吸引保持されている錠剤Tbについては、第1の例(図4及び図5参照)及び第2の例(図6参照)と同様に、上方から前記気流が与えられる状況においてもその姿勢が変わり難い。
搬送ベルト上で傾いた姿勢の錠剤Tb、すなわち適切な印刷を妨げる姿勢にて搬送ベルト171によって搬送される錠剤Tbが第1グループ220aのノズル及び第2グループ220bのノズルで構成される第1気体噴出機220の下を通過することにより、その錠剤Tbの姿勢が適切な印刷が可能な姿勢に変わる。その結果、第1の例及び第2の例と同様に、より多くの数の錠剤Tbが適切な印刷が可能な姿勢にて、第1姿勢確認カメラ21の撮影範囲を通り、印刷位置Ptに向けて搬送される。印刷不良の錠剤Tbや、姿勢不良により印刷がなされない錠剤Tbの数を減らすことができ、より効率的な錠剤Tbに対する印刷が可能となる。
なお、この第3の例は他の各例と比較して、サイズが大きな錠剤Tbに適している。サイズが大きな錠剤Tbは、小さな錠剤Tbと比べれば吸引孔176によって吸引保持される面積が大きくなることが考えられる。したがって、吸引孔176の真上から気体を噴出することによって吸引孔176に吸引保持された錠剤Tbの姿勢を変化させることが難しい場合も考えられる。第3の例における、第1グループ220aの千鳥状に配列されたノズルから気体を噴出することによって、錠剤Tbの吸引孔176に保持されていない部分に気体が当たり、大きな錠剤Tbであっても姿勢を変化させやすくなる。第3の例によれば、大きな錠剤Tbにおいても他の各例よりも確実に、印刷が可能な姿勢に変化させることができる。
気流発生機の第4の例としての第1気体噴出機について説明する。
第1気体噴出機230は、図8に示される。この第1気体噴出機230は、第1の例(図4及び図5参照)と同様に、搬送ベルト171に形成された複数の吸引孔176が配列される仮想線Lv(図4参照)に対向して配置される。そして、第1気体噴出機230には、前記仮想線Lvに対向して開口する複数の噴出口(不図示)が形成されている。これら複数の噴出口から、図8に破線矢印の長さで示すような圧力分布をもって気体(空気)が噴出される。具体的には、第1気体噴出機230の上流側の第1部分230aは、搬送方向Dにおける位置に応じて異なる圧力分布、例えば、搬送方向Dの位置に応じて弱から強への変動を繰り返す圧力分布をもって気体を噴出する。第1気体噴出機230の下流側の第2部分230bは、搬送方向Dにおいて均一となる圧力分布をもって気体を噴出する。なお、第1部分230aの圧力分布において、弱とする箇所は、例えば、噴出孔(不図示)に多孔質のスポンジなどの部材(不図示)を取り付けることによって圧力を低下させる。あるいは、噴出孔の径を小さくするようにしても良い。
このような第1気体噴出機230の上流側の第1部分230aでは、搬送方向Dにおける位置に応じて弱から強への変動を繰り返す圧力分布をもって噴出される気体(空気)により、搬送ベルト171上の各錠剤Tbに気流が与えられる。第1気体噴出機230の下流側の第2部分230bでは、搬送方向Dにおいて均一となる圧力分布をもって噴出される気体(空気)により、搬送ベルト171上の各錠剤Tbに気流が与えられる。
このように第1気体噴出機230の第1部分230aから弱から強への変動を繰り返す圧力分布をもって噴出する気体による気流及び第2部分230bの均一な圧力分布をもって噴出する気体による気流によって、それまで傾いていた姿勢の錠剤Tbのその姿勢が変わる。具体的には、より上流側の第1部分230aから噴出される気体の影響を受ける領域では、搬送ベルト171上の各錠剤Tbに対して搬送方向Dにおいて弱から強への変動を繰り返す圧力の気流が与えられるので、錠剤Tbは揺れやすい。したがって、傾いた姿勢の錠剤Tbの姿勢が気流によって変化することになる。傾いた姿勢の錠剤Tbの姿勢が気流によって容易に変化する理由は、上記各例において述べたとおりである。そして、より下流側の第2部分230bから噴出される気体の影響を受ける領域では、錠剤Tbの上面が受ける気体の流量が増加して、錠剤Tbが第1気体噴出機230側から押さえつけられるようになる。これによって錠剤Tbが図3Aに示すような安定した姿勢へと変化しやすくなり、また、錠剤Tbの姿勢が、上記変化後の姿勢に維持される。一方、例えば、図3Aに示すように、吸引孔176により搬送ベルト171の表面に略平行の安定した姿勢で搬送ベルト171上に吸引保持されている錠剤Tbについては、上述した各例と同様に、上方から前記気流が与えられる状況においてもその姿勢が変わり難い。
搬送ベルト上で傾いた姿勢の錠剤Tb、すなわち適切な印刷を妨げる姿勢にて搬送ベルト171によって搬送される錠剤Tbが上述した第1部分230a及び第2部分230bを有する第1気体噴出機230の下を通過することにより、その錠剤Tbの姿勢が適切な印刷が可能な姿勢に変わる。その結果、より多くの数の錠剤Tbが適切な印刷が可能な姿勢にて、第1姿勢確認カメラ21の撮影範囲を通り、印刷位置Ptに向けて搬送される。これにより、印刷不良の錠剤Tbや、姿勢不良で印刷がなされない錠剤Tbの数を減らすことができ、より効率的な錠剤Tbに対する印刷が可能となる。
なお、この第4の例は他の各例と比較して、外形の曲率が大きな錠剤Tbに適している。先にも述べたとおり、錠剤Tbの外形の曲率が大きい場合、錠剤Tbが接する吸引孔176の数は減ることになる。第4の例によれば、吸引孔176による吸引保持力は低下させることなく錠剤Tbを保持した状態で、上方からの第1部分230aによる気体の噴出に緩急をつけることで、外形の曲率が大きな錠剤Tbを搬送ベルト171から落下させることなく姿勢を変更させやすくなる。第4の例によれば、外形の曲率が大きな錠剤Tbにおいても他の各例よりも確実に、印刷が可能な姿勢に変化させることができる。
気流発生機の第5の例としての第1気体噴出機について説明する。
第1気体噴出機240は、図9に示される。この第1気体噴出機240は、第1の例(図4、図5参照参照)と同様に、搬送ベルト171に形成された複数の吸引孔176が配列される仮想線Lvに対向して配置される。そして、第1気体噴出機240には、前記仮想線Lvに対向して開口する複数の噴出口(図示されず)が形成されている。これら複数の噴出口から、図9に示すような圧力分布(図9中破線矢印の長さで示す)をもって気体(空気)が噴出される。具体的には、第1気体噴出機240の気体噴出の開始点から始まる上流側部分240aは、搬送方向Dに向けて徐々に大きくなって所定圧力に達する圧力分布をもって気体を噴出する。第1気体噴出機240の中央部分240bは、上流側部分240aから続いて、搬送方向Dにおいて前記所定圧力の均一の圧力分布をもって気体を噴出する。また、第1気体噴出機240の気体噴出の終点に至る下流側部分240cは、中央部分240bから続いて、前記所定圧力から搬送方向Dに向けて前記終点まで徐々に小さくなる圧力分布をもって気体を噴出する。更に、上流側部分240aが対向する領域における吸引孔176による吸引力及び下流側部分240cが対向する領域における吸引孔176による吸引力のそれぞれは、中央部分240bが対向する領域における吸引孔176による吸引力より大きい。なお、第5の例における吸引孔176からの吸引圧力は図9中破線矢印の長さで示す。
このような第1気体噴出機240の上流側部分240aでは、開始点から搬送方向Dに向けて徐々に大きくなる圧力分布をもって噴出される気体(空気)により、中央部分240cでは、所定圧力の均一の圧力分布をもって噴出される気体(空気)により、更に、下流側部分240cでは、搬送方向Dに向けて終点まで徐々に小さくなる圧力分布をもって噴出される気体により、搬送ベルト171上の各錠剤Tbに気流が与えられる。具体的には、搬送ベルト171により搬送される各錠剤Tbは、第1気体噴出機240(上流側部分240a)の領域に進入する際に、第1気体噴出機240(上流側部分240a)から噴出する気体により受ける気流の強さが急激に変化せずに徐々に大きくなる。さらにこの領域においては、吸引孔176による吸引力が比較的大きく設定されている。これにより、錠剤Tbは、第1気体噴出機240から噴出される気体によって一気に吹き飛ばされることなく、よりスムーズに第1気体噴出機240の領域に進入することができる。また、各錠剤Tbが第1気体噴出機240(下流側部分240c)の領域から脱する際に、第1気体噴出機240(下流側部分240c)から噴出する気体が急激になくなるのではなく、徐々に小さくなるとともに、吸引孔176による吸引力が比較的大きく設定されている。搬送される錠剤Tbは、吸引や吹き付ける気流によって錠剤Tbにかかる力が変化すると揺れやすくなる。特にその変化が急激であると揺れやすい。したがって、上方からの気流による圧力を徐々に小さくすることで、気流の変化による揺れを抑制し、略平行な姿勢に変化した錠剤Tbをそのままの姿勢で保つようにできる。また、上方からの気流を徐々に小さくすると同時に吸引孔176による吸引保持力を強めることで、搬送ベルト171への保持力を高め、より略平行な姿勢に変化した錠剤Tbをそのままの姿勢で保つようにできる。これにより、錠剤Tbは、よりスムーズに第1気体噴出機240の領域から脱することができる。
また、搬送ベルト171により搬送される各錠剤Tbが第1気体噴出機240の中央部分240bの領域を進む際には、第1の例(図4及び図5参照)と同様に、第1気体噴出機240の中央部分240bから噴出する気体により各錠剤Tbに与えられる気流により、それまで傾いていた姿勢の錠剤Tbのその姿勢が変わる。具体的には、前述の第1の例と同じである。一方、例えば、図3Aに示すように、吸引孔176による吸引により、搬送ベルト171の表面に略平行の安定した姿勢で搬送ベルト171上に吸引保持されている錠剤Tbについては、各例で述べたとおり、上方から前記気流が与えられる状況においても姿勢が変わり難い。
上述したような第1気体噴出機240によれば、搬送ベルト171により搬送される各錠剤Tbは、第1気体噴出機240の領域に進入する際に、第1気体噴出機240から噴出される気体によって一気に吹き飛ばされてしまうこと、また、第1気体噴出機240の領域から脱する際に、上方から与えられる気流が急激になくなることによって姿勢が不安定なもの(正常な印刷を妨げるほど傾いた姿勢)となることが防止される。更に、第1の例と同様に、適切な印刷を妨げる姿勢にて搬送ベルト171によって搬送される錠剤Tbは、第1気体噴出機240の上流側部240aから更に中央部240bの下を通過することにより、印刷が可能な姿勢に変わりやすくなる。その結果、より多くの数の錠剤Tbが印刷が可能な姿勢にて、第1姿勢確認カメラ21の撮影範囲を通り、印刷位置Ptに向けて搬送される。これにより、印刷不良の錠剤Tbや、姿勢不良で印刷がなされない錠剤Tbの数を減らすことができ、より効率的な錠剤Tbに対する印刷が可能となる。
なお、この第5の例は第4の例と同じく、外形の曲率が大きな錠剤Tbに適している。先にも述べたとおり、錠剤Tbの外形の曲率が大きい場合、錠剤Tbが接する吸引孔176の数は減ることになる。つまり、第1気体噴出機240から噴出される気体により吹き飛ばされる可能性も考えられる。第5の例によれば、第1気体噴出機240による気体の噴出が開始されるときに、吸引孔176による吸引力を強める。これとともに、第1気体噴出機240からの気体を、急激に錠剤Tbに供給するのではなく、徐々に強めている。これによって、外形の曲率が大きな錠剤Tbであっても搬送ベルト171から落下させることなく姿勢を変更させやすくなる。第5の例によれば、第4の例と同様、外形の曲率が大きな錠剤Tbにおいても他の各例よりも確実に、印刷が可能な姿勢に変化させることができる。
気流発生機構の第6の例について説明する。
この気流発生機250は、図10に示される。この気流発生機250は、気体吸引機251と気体噴出機252とを備えている。気体噴出機252は、気体吸引機251より印刷位置Pt近くに配置されている。気体吸引機251及び気体噴出機252は、搬送ベルト171に形成された複数の吸引孔176が配列される仮想線Lv(図4参照)に対向して配置される。気体吸引機251には、前記仮想線Lvに対向して開口する複数の吸引口(図示されず)が形成されている。これら複数の吸引口を通して、図10に破線矢印の長さで示すような吸引力分布をもって気体を吸引する。具体的には、気体吸引機251の気体吸引の開始点から始まる上流側部分251aは、搬送方向Dに向けて徐々に大きくなって所定吸引力に達する吸引力分布をもって気体を吸引する。気体吸引機251の中央部分251bは、上流側部分251aから続いて、搬送方向Dにおいて所定吸引力の均一の吸引力分布をもって気体を吸引する。また、気体吸引機251の気体吸引の終点に至る下流側部分251cは、中央部分251bから続いて、所定吸引力から搬送方向Dに向けて終点まで徐々に小さくなる吸引力分布をもって気体を吸引する。気体吸引機251の下流側に設けられる気体噴出機252には、搬送ベルト171に形成された複数の吸引孔176が配列される仮想線Lv(図4参照)に対向して開口する複数の噴出口(図示されず)が形成される。これら複数の噴出口を通して、搬送方向Dにおいて所定圧力の均一の圧力分布をもって気体を噴出する。更に、気体吸引機251により気体が吸引される搬送ベルト171の領域における吸気孔176による吸引力は、他の領域(気体噴出機252に対応する領域を含む)における吸気孔176による吸引力より小さく設定されている。
このような気流発生機250において、気体吸引機251の上流側部分251aでは、開始点から搬送方向Dに向けて徐々に大きくなる吸引力分布をもった気体の吸引作用により、中央部分251bでは、所定吸引力の均一の吸引力分布をもった気体の吸引作用により、更に、下流部分251cでは、搬送方向Dに向けて終点まで徐々に小さくなる吸引力分布をもった吸引作用により、搬送ベルト171上の各錠剤Tbに気流が与えられる。更に、気体吸引機251の下流側に設けられた気体噴出機252では、搬送方向Dにおいて均一となる圧力分布をもって噴出される気体(空気)により搬送ベルト171上の各錠剤Tbに気流が与えられる。
このように気体吸引機251の上流部分251a、中央部分251c及び下流部分251cでの種々(徐々に大きく、均一、徐々に小さく)の吸引力分布をもった上方からの吸引作用による気流と搬送ベルト171側からの吸引孔176による吸引とが相まって、それまで傾いていた姿勢の錠剤Tbのその姿勢が変わる。具体的には、吸引孔176によって比較的小さい吸引力にて保持される搬送ベルト171上の錠剤Tbが気体吸引機251からの種々の吸引力分布をもった上方からの吸引作用をうけることによりその錠剤Tbが揺れ動きながら搬送される。つまり、上流側部分251aにおいては徐々に気体吸引機251の吸引作用により錠剤Tbの姿勢が変化し、その後中央部分251bにおいては吸引孔176による吸引力が弱まるとともに気体吸引機251側の吸引力が強まる。これによって、中央部分251bにおいては錠剤Tbが上方に引っ張られる力が強くなり、錠剤Tbは大きく揺れ動くことになる。これによって搬送方向Dにおいて気体吸引機251よりも上流側に錠剤Tbが位置していたときの姿勢が変化することになる。さらに、下流側部分251cにおいて気体吸引機251側への吸引力が抑えられることによって錠剤Tbの揺れが徐々におさまり、より下流側の気体噴出機252から噴出される気体により生ずる気流と吸気孔176による吸引とが相まって、錠剤Tbの姿勢が、上記変化後の姿勢に維持される。一方、例えば、図3Aに示すように、吸引孔176による吸引により、搬送ベルト171の表面に略平行の安定した姿勢で搬送ベルト171上に吸引保持されている錠剤Tbについては、上述した各例と同様に、上述したような気体吸引により生ずる気流が与えられる状況においてもその姿勢が変わり難い。
搬送ベルト上で傾いた姿勢の錠剤Tb、すなわち適切な印刷を妨げる姿勢にて搬送ベルト171によって搬送される錠剤Tbが上述した気体吸引機251及び気体噴出機252を備えた気流発生機250の下を通過することにより、その錠剤Tbの姿勢が、印刷が可能な姿勢に変わる。その結果、より多くの数の錠剤Tbが適切な印刷が可能な姿勢にて、第1姿勢確認カメラ21の撮影範囲を通り、印刷位置Ptに向けて搬送される。これにより、印刷不良の錠剤Tbや、姿勢不良により印刷がなされない錠剤Tbの数を減らすことができ、より効率的な錠剤Tbに対する印刷が可能となる。
なお、この第6の例は第4、5の例と同じく、外形の曲率が大きな錠剤Tbに適している。先にも述べたとおり、錠剤Tbの外形の曲率が大きい場合、錠剤Tbが接する吸引孔176の数は減ることになる。つまり、錠剤Tbの上方から気体を噴出することによって錠剤Tbが搬送ベルト171から落下する可能性も考えられる。第6の例によれば、気体吸引機251によって錠剤Tbの上方の気体を吸引するので、気体を直接錠剤Tbに対して吹き付ける場合と比べて、錠剤Tbが搬送ベルト171から落下する可能性が低くなる。したがって、外形の曲率が大きな錠剤Tbであっても搬送ベルト171から落下させることなく姿勢を変更させやすくなる。第6の例によれば、第4、5の例と同様、外形の曲率が大きい錠剤Tbにおいても他の各例よりも確実に、印刷が可能な姿勢に変化させることができる。
なお、上述した気流発生機に係る各例を備えた錠剤搬送装置(第1搬送機構17、第2搬送機構18)は、錠剤印刷装置に適用されるものであったが、これに限定されず、例えば、錠剤の外観検査を行うための錠剤検査装置等、他の錠剤に係る装置に適用することができる。
上述した各例は、適宜組み合わせることができる。例えば、第1、4、5の例においては単一のスリットから気体を噴出するものであったが、これに限定されず、複数の噴出口を有するものであってもよい。第6の例においても、気体吸引機251の複数の吸引口が単一のスリットであってもよい。また、各例において、気体噴出口や気体吸引口は、スリットであっても丸孔状のものであっても、それらが混在するものであってもよい。
また、第3の例において説明した、千鳥状に配列されたノズルを他の各例と置き換えたり、組み合わせたりしてもよい。
また、気体の噴出や吸引の圧力分布は各例記載のものを置き換えたり、組み合わせたりしてもよい。
また、第2の例における複数のノズル210a〜210kの、隣接するノズルの間隔は、錠剤Tbの直径よりも小さいとしたが、これに限らず、錠剤Tbの搬送方向D上流側においてはノズルの間隔を錠剤Tbの直径よりも大きくし、下流側においては直径よりも小さくするようにしてもよい。このように複数のノズルの間隔を設定することにより、上流側においては傾いた状態の錠剤Tbの姿勢に変化を与え、下流側においてはその変化した姿勢を維持させるようにすることができる。
なお、上述した各例においては、いずれも錠剤Tbは搬送ベルト171の吸引孔176による吸引保持がなされている。これによって、錠剤Tbの上方からの気流によって錠剤Tbが揺れ動き、姿勢が変化しやすい環境となっても、吸引孔176による吸引保持により、搬送ベルト171から落下したり、搬送ベルト171上での位置が大きく変化したりすることなく、錠剤Tbの傾きを変化させることができる。
また、上述した各例においては、搬送ベルト171により搬送される錠剤Tbの上方から気流を与える気流発生機を用いて錠剤Tbの姿勢を変化させる例を説明した。しかし、これに限らず、搬送ベルト171の吸引孔176により吸引保持力を調節することによって、あるいは吸引孔176の吸引保持力の調節と気流発生機との相互作用によって、錠剤Tbの姿勢を変化させるようにしてもよい。
また、上述した各例においては、錠剤Tbの印刷位置を目的位置として説明したが、これに限定されない。例えば第1姿勢確認カメラ21、第2姿勢確認カメラ31による錠剤Tbの姿勢確認位置を目的位置としても良いし、第1印刷確認カメラ23、第2印刷確認カメラ33による印刷確認位置を目的位置としても良い。いずれの位置においても、錠剤Tbが図3Aに示すような姿勢で搬送されることが求められる。例えば、第1姿勢確認カメラ21による錠剤Tbの姿勢確認位置においては、錠剤Tbの傾き等の姿勢や割れ、カケ等の損傷の有無を判別する。しかしながら、錠剤Tbが傾いた姿勢である場合には、第1姿勢確認カメラによって撮像した画像に、錠剤Tbの一部分が映らず、割れやカケの有無の判別が行えないことがある。あるいは錠剤Tbが傾いていることによって影になり、その部分の割れやカケの有無の判別が行えないことがある。また、第1印刷確認カメラ23においても同様に、印刷が行われた領域すべてが撮像画像に写らず、印刷状態の良否の判定ができないことがある。あるいは傾いた姿勢の錠剤Tbが印刷処理途中にさらに揺れ動いてしまい姿勢が変化した場合に、印刷状態の良否の判定に用いる基準のパターンと異なる状態になってしまうことから印刷状態の良否の判定ができないことがある。したがって、姿勢確認位置、印刷確認位置においても、錠剤Tbが、それぞれ目的とする処理(姿勢確認、印刷確認)が適切に行える姿勢で搬送されることが求められる。これらの目的位置においても、例えば錠剤Tbの被印刷領域が搬送ベルト171の表面と略平行な姿勢が、目的とする処理が適切に行える姿勢の一例である。第2搬送機構の、姿勢確認位置、印刷確認位置においても同様である。
以上、本発明の実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。