JP2020153341A - 真空ポンプ - Google Patents
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Abstract
Description
(ターボ分子ポンプの全体構成)
図1は本発明に係る真空ポンプの一実施形態を示す図であり、ターボ分子ポンプ100の断面図である。ターボ分子ポンプ100は、ベース2とケーシング10とで構成される筐体内に、ロータ3などの回転体を収容している。ケーシング10の上端部に吸気口10aが設けられ、ベース2に排気口2aが設けられている。
ロータ3はシャフト1に締結されており、そのシャフト1はモータ4により回転駆動される。ロータ3が締結されたシャフト1の上部は永久磁石軸受装置PBで、下部は転がり軸受装置BBで回転自在に支持されている。ロータ3には排気機能部として回転翼30と円筒部31とが形成されている。回転翼30に対応して、固定側排気機能部としての固定翼20が設けられている。回転翼30と固定翼20とによりターボポンプ部が構成される。円筒部31に対応して、固定筒21が固定側排気機能部として設けられている。この円筒部31と固定筒21とによりHolweckポンプ部(ねじ溝ポンプ部)が構成される。
このようなターボ分子ポンプ100は、回転体の回転により、吸気口10aから吸い込んだ不図示の真空チャンバ内の気体を排気口2aに排気することで、真空チャンバ内が真空排気される。
永久磁石軸受装置PBは、永久磁石6,7を用いた磁気軸受であり、円筒状の永久磁石6はロータ3に固定されている。一方、固定側の永久磁石7は磁石ホルダ11に保持され、永久磁石6の内周側に対向配置されている。磁石ホルダ11の中央には、転がり軸受9を保持する軸受ホルダ13が固定されている。転がり軸受9はシャフト1の上側のラジアル方向の振れを制限するために設けられているものであり、転がり軸受9の内輪とシャフト1との間には隙間が形成されている。この隙間の寸法は、永久磁石6,7間の隙間寸法より小さく設定されている。これにより、ロータ3の振れ回りが大きくなった場合に、永久磁石6,7同士が接触するのを防止している。
図2は、転がり軸受装置BBの構成を詳細に示す拡大図である。
転がり軸受装置BBは、転がり軸受40と、転がり軸受40の外輪42を弾性的に保持する弾性保持装置50とを備えている。
転がり軸受40は、内輪41と、内輪41の外周部にボールを介して設けられた外輪42とを有する。内輪41は、ナット61によってシャフト1に固定されている。外輪42は、図1に示すように、弾性保持装置50でベース2に弾性的に支持されている。
弾性保持装置50は、ベース2に固定されたベアリングハウジング51と、ベアリングハウジング51で転がり軸受40の外輪42を弾性保持する複数の弾性部材52a、52b、52c(以下、代表符号52で表すこともある)と、外輪42の下部外周縁を収容するカップ状のカラー53と、グリース充填部56およびグリース逃げ部57と、少なくともグリース充填部56に満たされたグリースGRとを備えている。
弾性部材52aと52b、およびOリング55は、ハウジングナット54の締め込み力により押圧されて圧縮変形している。
弾性保持装置50には、ベアリングハウジング51の内周面51indと、カラー53の外周面53outと、ハウジングナット54の上面54aと、弾性部材52b、52CおよびOリング55とに囲まれた空間56にグリース(潤滑剤)GRが充填されている。この空間をグリース充填部56と呼ぶ。グリースGRは、転がり軸受40を冷却する機能(冷却機能)を持つ反面、外輪42の振動をベアリングハウジング51に伝える性質(振動伝達性)を有する。振動伝達性は振動伝達率で表し、振動伝達率が高いとわずかな回転体のアンバランスでポンプの振動が大きくなる。
なお、隙間寸法G1は弾性部材52cの上方の隙間寸法、隙間寸法G2は弾性部材52cの下方の隙間寸法である。
グリース充填部56には一定量のグリースGRが充填されるが、冷却機能が低い,または振動伝達率が高い場合がある。これは、ポンプ構成部品の寸法公差、組み立て時のねじ締め付け力などの組立公差が原因で、グリース充填部56の容積にバラツキが生じると、グリース充填部56に一定量のグリースを充填してもグリース充填率がばらつくからと推定できる。グリース充填率とは、グリース充填部56に充填したグリースの容積をグリース充填部56の容積で除した値である。
そこで、実施の形態では、グリース充填部56に連通するグリース逃げ部57がベアリングハウジング51に設けられている。具体的には、グリース逃げ部57は、ベアリングハウジング51の内周面51inb,51incから径方向外方向に向かって延在する平面視が輪帯形状で所定の厚みのある溝である。グリース逃げ部57の機能については後述する。
これは以下の影響係数により説明することができる。
影響係数は、ポンプの振動加速度avを回転体のアンバランスbvで割った値cv=av/bvとして示すことができる。ここで、av,bv,cvはベクトル量である。
グリース充填部56のグリース充填率は、影響係数cvに影響を与える。グリース充填率が大きくなるとグリースの密度が大きくなり、転がり軸受40からベアリングハウジング51への温度伝達率が上がり、ロータ3などの回転体の温度が下がりやすくなる。一方,回転体からベアリングハウジング51、すなわちベース2への振動伝達率も上がり、ロータ3などで構成される回転体のアンバランス量に対してポンプが振動しやすくなる。そのため,ベアリングハウジング51内に充填(注入)するグリース量は、シリンジなどで定量に管理する必要がある。
(1)ポンプ構成部品の製作公差、組立公差に拘わらず(ポンプ個体差に拘わらず)、グリース充填率を一定にすることができる。これにより、影響係数に影響を与えることがなく、グリースによる振動抑制機能、冷却機能がいずれのターボ分子ポンプ100でも保証することができる。
また、真空ポンプごとの校正作業が不要となり、工数が削減できる。
(2)グリース逃げ部57を、弾性保持装置50の構成部品の中で最も大きなベアリングハウジング51内に設けたので、グリース逃げ部57の加工が容易である。
(変形例1,2)
図3および図4に示すように、グリース逃げ部57a、57bをハウジングナット54内で回転軸方向に延在させるように設けてもよい。図3の例では、グリース逃げ部57aは、グリース充填部56の最外周部、つまり、Oリング55と接する箇所に設けられた円筒状の溝である。図4では、ハウジングナット54の上面に形成されるグリース充填部56のうち、カラー53とベアリングハウジング51との間のグリース充填部56と等しい半径の位置にグリース逃げ部57bを設けている。この逃げ部57bも円筒状の溝である。
変形例1,2は、実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
この変形例では、充填されたグリースが円筒状の溝57a,57bに逃げやすくなり、グリース充填率を小さい値に保つことにより、放熱効果は低減するが、振動低減効果を狙うことができる。
図5および図6に示すように、グリース逃げ部57c、57dをカラー53内に設けてもよい。図5では、ハウジングナット54の上面に形成されるグリース充填部56に連通させて回転軸方向にグリース逃げ部57cを延在させている。図5のグリース逃げ部57cは、回転軸方向に延在する円筒状の溝である。図6では、カラー53とベアリングハウジング51との間に形成されているグリース充填部56に連通させて径方向にグリース逃げ部57dを延在させている。図6のグリース逃げ部57dは、平面視円環状の、所定の厚みを有する環状リング溝である。図6の例では、実施の形態と同様にグリース振動伝達率を安定させ影響係数を一定に保つことができる。
実施の形態と変形例1〜4のターボ分子ポンプでは、グリース充填部56は、少なくとも、外輪42を収容するカラー53の外周面53outとベアリングハウジング51の内周面51indとの間に設けられている。グリース充填部56を、外輪42の外周面42outとベアリングハウジング51の内周面51inbとの間に設けてもよい。たとえば、図2で説明した寸法G1の隙間をグリース充填部としてもよい。
実施の形態と変形例1〜4のターボ分子ポンプでは、一つのグリース逃げ部57を設けたが、2つ以上のグリース充填部57を同じ部材、あるいは異なる部材にそれぞれ設けても良い。
実施の形態と変形例1〜4のターボ分子ポンプでは、外輪42の上端面および下端面に弾性部材52a、52bを設けたが、いずれか一方だけ設けても良い。
実施の形態と変形例1〜4はターボ分子ポンプに本発明を適用したが、本発明は、排気機能部にターボポンプ部およびHolweckポンプ部を備えたターボ分子ポンプに限らず、タービン翼のみを備えた真空ポンプ、ジーグバーンポンプやHolweckポンプなどのドラッグポンプのみを備えた真空ポンプ、あるいはそれらを組み合わせた真空ポンプにも適用することができる。
部品の公差、組立公差などによりグリース充填部の容積が異なってもグリース充填率を一定の値とすることができる。
第2の態様の真空ポンプは、第1の態様の真空ポンプにおいて、空所は、弾性保持装置の構成部材の径方向に延在して形成されている。
弾性保持装置の比較的大型の部材に空所を設けるようにしたので、空所を空けやすくなり、容積も比較的大きく設定することができる。
第3の態様の真空ポンプは、第1の態様または第2の態様の真空ポンプにおいて、弾性保持装置は、外輪の外周側に配設された筒状のベアリングハウジングと、弾性部材をベアリングハウジング内で固定するハウジング固定部材とを有し、空所は、前記ベアリングハウジング内で、軸受外輪の径方向外側の潤滑剤充填部近傍において、径方向に延在する環状の溝として形成されている。
弾性保持装置の比較的大型の部材に空所を設けるようにしたので、空所を空けやすくなり、容積も比較的大きく設定することができる。また、ベアリングハウジング内で潤滑剤充填部近傍に逃げ部を設けたので、潤滑剤の密度が安定し、振動伝達率を安定させ、影響係数を一定に保つことができる。
第4の態様の真空ポンプは、第1の態様または第2の態様の真空ポンプにおいて、弾性保持装置は、外輪の外周側に配設された筒状のベアリングハウジングと、弾性部材をベアリングハウジング内で固定するハウジング固定部材とを有し、空所は、ハウジング固定部材内に回転軸方向に延在する筒状の溝として形成されている。
第5の態様の真空ポンプは、第1の態様から第4の態様のいずれかの真空ポンプにおいて、潤滑剤の充填量は、潤滑剤充填部の容積と空所の容積の和よりも少なく、潤滑剤充填部の容積以上の量である。このように充填量を設定すると、グリース充填部はグリースで確実に満たすことができる。
ハウジングナット、55…Oリング、56…グリース充填部、57…グリース逃げ部(空所)、100…ターボ分子ポンプ、PB…永久磁石軸受装置、BB…転がり軸受装置
Claims (5)
- 回転体を支持する転がり軸受と、
前記転がり軸受の外輪を弾性部材で弾性支持する弾性保持装置と、を有する真空ポンプにおいて、
前記弾性保持装置は、
前記外輪の外周側に設けられ、潤滑剤で満たされた潤滑剤充填部と、
前記潤滑剤充填部に連通する空所とを有する真空ポンプ。 - 請求項1に記載の真空ポンプにおいて、
前記空所は、前記弾性保持装置の構成部材の径方向に延在して形成されている真空ポンプ。 - 請求項1または2に記載の真空ポンプにおいて、
前記弾性保持装置は、
前記外輪の外周側に配設された筒状のベアリングハウジングと、
前記弾性部材を前記ベアリングハウジング内で固定するハウジング固定部材とを有し、
前記空所は、前記ベアリングハウジング内で、軸受外輪の径方向外側の潤滑剤充填部近傍において、径方向に延在する環状の溝として形成されている真空ポンプ。 - 請求項1または2に記載の真空ポンプにおいて、
前記弾性保持装置は、
前記外輪の外周側に配設された筒状のベアリングハウジングと、
前記弾性部材を前記ベアリングハウジング内で固定するハウジング固定部材とを有し、
前記空所は、ハウジング固定部材内に回転軸方向に延在する筒状の溝として形成されている真空ポンプ。 - 請求項1から4までのいずれか一項に記載の真空ポンプにおいて、
前記潤滑剤の充填量は、前記潤滑剤充填部の容積と前記空所の容積の和よりも少なく、前記潤滑剤充填部の容積以上の量である真空ポンプ。
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