JP2020143309A - フェライト系ステンレス鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】成形加工性及び成形加工後の耐加工肌荒れ性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を提供する。【解決手段】Cr:11.0%以上30.0%以下、C:0.001%以上0.030%以下、Si:0.01%以上2.00%以下、Mn:0.01%以上2.00%以下、P:0.005%以上0.100%以下、S:0.0100%以下、N:0.030%以下を含み、さらに、Ti:0.50%以下、Nb:1.0%以下の1種または2種を含み、残部がFe及び不純物からなり、JIS G 0551にて測定される結晶粒度番号が9.0以上であり、JIS Z 2254にて測定される平均r値が1.20以上であり、粒径が0.05〜0.30μmの範囲の析出物の密度が100,000個/mm2以上であることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板を採用する。【選択図】なし

Description

本発明は、フェライト系ステンレス鋼板に関し、特に、成形加工する際の成形性並びに耐加工肌荒れ性に優れるフェライト系ステンレス鋼板に関する。
オーステナイト系ステンレス鋼の代表鋼種であるSUS304(18Cr−8Ni)は、耐食性、加工性、美麗性等に優れることから家電、厨房品、建材等広く用いられている。但し、SUS304は高価かつ価格変動の激しいNiを多量に添加しているため鋼板の価格が高いとされている。一方、フェライト系ステンレス鋼はNiを含有しない、もしくは含有量が極めて少ないため、コストパフォーマンスに優れる材料として需要が増加している。しかし、フェライト系ステンレス鋼を成形用途として使用する場合、問題となるのが成形限界と成形後に表面凹凸が形成されることによる耐加工肌荒れ性の劣化である。
まず成形限界について比較すると、オーステナイト系ステンレス鋼の場合は張り出し性に優れるが、フェライト系ステンレス鋼の張り出し性は低く、形状を大きく変化させることが出来ない。しかし結晶方位(集合組織)を調整して深絞り性を制御することが出来るため、フェライト系ステンレス鋼を成形用途として用いる場合では、深絞りを主体とした成形手法を用いる場合が多い。
次に、成形加工後の表面特性、特に加工肌荒れ(成形後の表面凹凸)について述べる。ここで「表面凹凸」とは、加工や成形を行った後に鋼板表面に生じる微細な凹凸(肌荒れ)を指し、この微細な凹凸は結晶粒に対応していることから、結晶粒径が大きいほど表面凹凸も顕著になる。
オーステナイト系ステンレス鋼の場合、加工硬化特性に優れており細粒組織が比較的作りやすいため結晶粒度番号が約10の鋼板が製造されている。このため成形加工後の表面凹凸(肌荒れ)は小さく、ほとんど問題とならない。一方、フェライト系ステンレス鋼の結晶粒度はSUS430で9程度、SUS430LXで7程度とオーステナイト系ステンレス鋼に比べて小さい。ここで粒度番号が小さいことは結晶粒径が大きいことを示している。
フェライト系ステンレス鋼が粗粒になりやすい要因としては、フェライト系ステンレス鋼では再結晶粒径が大きくなりやすいことに加え、SUS430LXのような、C、Nを低減させて加工性、成形性の向上を図った高純フェライト系ステンレス鋼では粒成長しやすいためである。またフェライト系ステンレス鋼において、冷延回数を増やして結晶粒径が細かい製品板を製造しても肌荒れが生成する場合があり、その原因は必ずしも明確ではない。
家電製品の筺体あるいは器物のように比較的厳しい成形性が要求される場合、フェライト系ステンレス鋼ではSUS430LXのような高純フェライト系ステンレス鋼が用いられることが多い。また、成形後の強度を担保するために、用いられるステンレス鋼板の板厚は大半の場合は0.6mm以上であるが、前述のようにフェライト系ステンレス鋼は結晶粒径が大きいために成形後の肌荒れが大きく、研磨による表面凹凸の除去が通常行われている。
上述した背景から、高純度フェライト系ステンレス鋼の肌荒れを軽減する手法が開示されている。
特許文献1には、高純度のフェライト系ステンレス鋼を用いて析出粒子のサイズ及び結晶粒径を制御して加工肌荒れの少ない成形性に優れたフェライト系ステンレス鋼及びその製造方法が開示されている。しかし特許文献1では、結晶粒径が小さい鋼板が得られているものの成形した際の深絞り性は十分ではなく、また結晶粒径が小さいにもかかわらず成形後の肌荒れが発生しやすい問題があった。
特許文献2には、TiとNbを含有したフェライト系ステンレス鋼において低温で熱間圧延を実施し、かつ高い冷間圧延率を取ることで細粒とし、成形時の耐肌荒れ性に優れたステンレス鋼を製造する技術を開示している。このような技術によって特許文献2のステンレス鋼は、結晶粒度番号は9.5と細粒組織が得られているもののカップ絞り成形をした後の肌荒れ性は必ずしも十分ではない。
特許文献3には、Nb及び/またはTiを含有する成分を有する鋼の最終冷延前の結晶粒径を制御することで深絞り性、リジング性および耐肌荒れ性に優れたフェライト系ステンレス鋼が開示されている。しかし、特許文献3では最終製品の結晶粒径は15μm(結晶粒度番号で9.1)であり、肌荒れ性が不十分である。
特許第4749888号公報 特開平7−292417号公報 特許第3788311号公報
以上のようにフェライト系ステンレス鋼の成形加工を考えた場合、所定の形状に成形が出来、かつ成形後の表面特性を満足させることは非常に困難であるのが現状である。このためフェライト系ステンレス鋼を成形用途として使用する場合は、成形後に生じた表面凹凸を除去するために研磨工程を行う必要がある。しかしこの研磨工程において研磨時間がかかり製造コストがかさむ上、研磨にて生じた粉じんが多く発生するなどの問題がある。
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、成形加工性及び成形加工後の耐加工肌荒れ性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を提供するものである。
本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1] 質量%にて、
Cr:11.0%以上30.0%以下、
C:0.001%以上0.030%以下、
Si:0.01%以上2.00%以下、
Mn:0.01%以上2.00%以下、
P:0.005%以上0.100%以下、
S:0.0100%以下、
N:0.030%以下を含み、
さらに、Ti:0.50%以下、Nb:1.0%以下の1種または2種を含み、
残部がFe及び不純物からなり、
JIS G 0551にて測定される結晶粒度番号が9.0以上であり、
JIS Z 2254にて測定される平均r値が1.20以上であり、
粒径が0.05〜0.30μmの範囲の析出物の密度が100,000個/mm以上であることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板。
[2] 質量%にて、更に、
B:0.0001%以上0.0025%以下、
Sn:0.005%以上0.50%以下、
Ni:1.00%以下、
Cu:1.00%以下、
Mo:2.00%以下、
W:1.00%以下、
Al:1.00%以下、
Co:0.50%以下、
V:0.50%以下、
Zr:0.50%以下、
Ca:0.0050%以下、
Mg:0.0050%以下、
Y:0.10%以下、
Hf:0.20%以下、
REM:0.10%以下、
Sb:0.50%以下の1種または2種以上を含有していることを特徴とする[1]に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
[3] 前記析出物は、Nbを含まず、かつ、P、Tiが平均原子比でTi/P:0.5〜2.0の範囲となる成分を有する析出物であることを特徴とする[1]または[2]に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
[4] 前記析出物は、Tiを含まず、かつ、P、Nbが平均原子比でNb/P:0.5〜2.0の範囲となる成分を有する析出物であることを特徴とする[1]または[2]に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
[5] 前記析出物は、平均原子比でTi/P:0.5〜2.0かつNb/P:0.5〜2.0の範囲となる成分を有する析出物であることを特徴とする[1]または[2]に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
本発明によれば、成形加工性及び成形加工後の耐加工肌荒れ性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を提供できる。
フェライト系ステンレス鋼の加工肌荒れに影響を及ぼす因子として、結晶粒度が知られている。しかし、上述したように、冷延条件等の制御を行っても粒成長しやすいため、細粒化の効果が小さく加工肌荒れが発生する場合があり、近年、加工肌荒れの発生をより安定して抑制できる鋼が望まれていた。
そこで本発明者らは、フェライト系ステンレス鋼における加工肌荒れと金属組織の関係を調査した。その結果、鋼中に析出物を多量に析出させてから冷間圧延を施すことによって析出物の周囲に局所的に歪みを生じさせ、その後、焼鈍を行うことによって再結晶核生成頻度を増加し、非常に細粒化された金属組織が得られ、加工肌荒れが改善することを初めて知見した。また、析出した析出物の組成によって細粒化効果が異なることを知見した。焼鈍温度等の製造条件を調整することで析出物の組成を制御でき、これにより、結晶粒度番号10以上の細粒組織を得ることも可能になった。更に、このように細粒化された金属組織は、平均r値が高くなり、成形性が向上することも見出した。
以下、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板について説明する。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板は、質量%にて、Cr:11.0%以上30.0%以下、C:0.001%以上0.030%以下、Si:0.01%以上2.00%以下、Mn:0.01%以上2.00%以下、P:0.005%以上0.100%以下、S:0.0100%以下、N:0.030%以下を含み、さらに、Ti:0.50%以下、Nb:1.0%以下の1種または2種を含み、残部がFe及び不純物からなり、JIS G 0551にて測定される結晶粒度番号が9.0以上であり、JIS Z 2254にて測定される平均r値が1.20以上であり、粒径が0.05〜0.30μmの範囲の析出物の密度が100,000個/mm以上であるフェライト系ステンレス鋼板である。
フェライト系ステンレス鋼板に含まれる析出物は、P及びFeを含有する析出物であってもよい。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板は、質量%にて、更に、B:0.0001%以上0.0025%以下、Sn:0.005%以上0.50%以下、Ni:1.00%以下、Cu:1.00%以下、Mo:2.00%以下、W:1.00%以下、Al:1.00%以下、Co:0.50%以下、V:0.50%以下、Zr:0.50%以下、Ca:0.0050%以下、Mg:0.0050%以下、Y:0.10%以下、Hf:0.20%以下、REM:0.10%以下、Sb:0.50%以下の1種または2種以上を含有してもよい。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板は、析出物が、下記(1)〜(3)のいずれかの析出物であることが好ましい。
(1)Nbを含まず、かつ、P、Tiが平均原子比でTi/P:0.5〜2.0の範囲となる成分を有する析出物。
(2)Tiを含まず、かつ、P、Nbが平均原子比でNb/P:0.5〜2.0の範囲となる成分を有する析出物。
(3)P、Ti、Nbが平均原子比でTi/P:0.5〜2.0かつNb/P:0.5〜2.0の範囲となる成分を有する析出物。
上記(1)の析出物は、鋼成分としてTiを含み、Nbを含まない場合の析出物であり、上記(2)の析出物は、鋼成分としてNbを含み、Tiを含まない場合の析出物であり、上記(3)の析出物は、鋼成分としてTi及びNbを含む場合の析出物である。
フェライトステンレス鋼板の鋼成分の限定理由を以下に説明する。各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
Crは、ステンレス鋼の基本特性である耐食性を向上する元素である。11.0%未満では十分な耐食性が得られないため下限は11.0%以上とする。一方、過度量のCrを含有させるとσ相(Fe−Crの金属間化合物)相当の金属間化合物の生成を促進して製造時の割れを助長するため上限は30.0%以下とする。安定製造性(歩留まり、圧延疵等)点から14.0%以上、25.0%以下が望ましい。更に望ましくは16.0%以上、20.0%以下がよい。
Cは、本実施形態において重要な成形性を低下させる元素であるため少ない方が好ましい。また、Cは、TiまたはNbと結合してTiCまたはNbCを形成することでCが固定化されるが、C量が過剰になると、Pと化合するTiまたはNbが不足してしまい、細粒化に必要な析出物を十分に形成させることができなくなる。従ってC量の上限を0.030%以下とする。但し、過度な低減は精錬コストの上昇を招くため下限は0.001%以上とする。精錬コスト及び成形性の両者を考慮した場合0.002%以上、0.020%以下が好ましい。
Siは、耐酸化性向上元素であるが過剰量のSiを含有させると成形性の低下を招くため上限を2.00%以下とする。成形性の点からSi量は低い方が好ましいが、過度の低下は原料コストの増加を招くため下限を0.01%以上とする。製造性の観点から望ましい範囲は0.05%以上、1.00%以下であり、さらに望ましくは0.05%以上、0.30%以下である。
Mnは、Si同様に、多量のMnを含有させると成形性の低下を招くため上限を2.00%以下とする。成形性の点からMn量は低い方が好ましいが、過度の低下は原料コストの増加を招くため下限を0.01%以上とする。製造性の観点から望ましい範囲は0.05%以上、1.00%以下であり、さらに望ましくは0.05%以上、0.30%以下である。
Pは、本実施形態の鋼板中においてリン化物からなる析出物として析出させることで耐加工肌荒れ性の向上に寄与する重要な元素である。リン化物の析出量を確保し、耐加工肌荒れ性を向上させるためにP量は0.005%以上とする。しかし、Pは成形性を低下させる元素であるため、上限を0.100%以下とする。なお、P量の過度な低減は原料コストの上昇をもたらすことに加え、成形性と耐加工肌荒れ性の両者を考慮した場合、好ましい範囲は0.010%以上、0.050%以下、更に望ましくは0.020%以上、0.040%以下である。
Sは、不純物元素であり、製造時の割れを助長するため低い方が好ましく、上限を0.0100%以下とする。S量は低いほど好ましく0.0030%以下が望ましい。一方、過度の低下は精錬コストの上昇を招くため下限は0.0003%以上とすることが望ましい。製造性とコストの点から、好ましい範囲は0.0004%以上、0.0020%以下である。
Nは、Cと同様に成形性を低下させる元素であり、上限を0.030%以下とする。但し、過度な低減は精錬コストの上昇に繋がるため、下限は0.002%以上とすることが好ましい。成形性と製造性の点から好ましい範囲は0.005%以上、0.015%以下である。
TiおよびNbの1種または2種を下記のように含有する。
Tiは、C,Nと結合し、TiC、TiN等の析出物としてC,Nを固定する高純度化を通じて平均r値の向上をもたらす。また、Tiはリン(P)とともに析出物を形成する。Tiを含む析出物により、析出物の周囲に局部的に歪みを導入させやすくなり、再結晶核が多数形成されて再結晶組織が細粒化させる。これらの効果を得るため、Tiを含有させる場合は下限を0.02%以上とすることが好ましい。一方、Tiを過度に含有させると合金コストの上昇や再結晶温度上昇に伴う製造性の低下を招くため、上限は0.50%以下とする。成形性及び製造性の点から、好ましい範囲は0.05%以上、0.30%以下である。更に、Tiの上記効果を積極的に活用する好適な範囲は0.10%以上、0.20%以下である。
Nbも、Ti同様にC,Nを固定する安定化元素であって、この作用による鋼の高純度化を通じて平均r値の向上をもたらす。また、NbはTiと同様に、リン(P)とともに析出物を形成し、析出物の周囲の金属組織に歪みを導入させやすくし、再結晶組織を細粒化させる。これら効果を得るため、Nbを含有させる場合は下限を0.02%以上とすることが好ましい。一方、Nbを過度に含有させると合金コストの上昇や再結晶温度上昇に伴う製造性の低下に繋がるため、上限は1.0%以下とする。合金コストや製造性の点から、好ましい範囲は0.03%以上、0.30%以下である。更に、Nbの上記効果を積極的に活用する好適な範囲は0.04%以上、0.15%以下である。更に望ましくは0.06〜0.10%である。
また、TiとNbの両方を含有させることで、析出物中にPとともにTiとNbとが含有されるようになり、析出物の周囲の金属組織に歪みがより一層導入されやすくなり、再結晶組織をより一層細粒化させることが可能になる。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板は、上述してきた元素以外(残部)は、Fe及び不純物からなるが、本実施形態では、更に上記の基本組成に加えて下記の元素群のうち1種または2種以上を選択的に含有させてもよい。すなわち、B、Sn、Ni、Cu、Mo、W、Al、Co、V、Zr、Ca、Mg、Y、Hf、REM、Sbの含有量の下限は0%以上である。
なお、本実施形態における「不純物」とは、鋼を工業的に製造する際に鉱石やスクラップ等のような原料をはじめとして製造工程の種々の要因によって混入する成分であり、不可避的に混入する成分も含む。
Bは、二次加工性を向上させる元素である。その効果を発揮するには0.0001%以上が必要であるためこれを下限とする。一方、過度に含有させると製造性、特に鋳造性の劣化を招くため0.0025%以下を上限とする。好ましい範囲は0.0003%以上、0.0012%以下である。
Snは、耐食性を向上させる効果を有する元素であるため室温での腐食環境に応じて含有させてもよい。その効果は0.005%以上で発揮されるためこれを下限とする。一方、多量に含有させると製造性の劣化を招くため、0.50%以下を上限とする。製造性を考慮して好ましい範囲は0.02%以上、0.10%以下である。
Ni、Cu、Mo、Al、W、Co、V、Zrは、耐食性あるいは耐酸化性を高めるのに有効な元素であり、必要に応じて含有してよい。但し、過度に含有させると成形性の低下を招くばかりでなく合金コストの上昇や製造性を阻害することに繋がる。そのため、Ni、Cu、Al、Wの上限は1.00%以下とする。Moは製造性の低下をもたらすため上限は2.00%以下とする。Co、V、Zrの上限は0.50%以下とする。いずれの元素もより好ましい含有量の下限は0.004%以上とする。
Ca、Mgは、熱間加工性や2次加工性を向上させる元素であり、必要に応じて含有させてもよい。但し、過度に含有させると製造性を阻害することに繋がるため、Ca、Mgの上限は0.0050%以下とする。好ましい下限はともに0.0001%以上とする。
製造性と熱間加工性を考慮した場合、好ましい範囲はCa、Mgともに0.0002%以上、0.0010%以下である。
Y、Hf、REMは、熱間加工性や鋼の清浄度の向上、ならびに耐酸化性改善に対して有効な元素であり、必要に応じて含有してもよい。含有させる場合、Hfの上限は0.20%以下とし、Y、REMの上限はそれぞれ0.10%以下とする。好ましい下限はY、Hf、REMともに0.001%以上とする。ここで、本実施形態における「REM」とは、原子番号57〜71に帰属する元素群(ランタノイド)から選択される1種以上で構成されるものあり、例えば、La、Ce、Pr、Nd等である。また、本実施形態でいう「REM」の含有量とはランタノイドの合計量である。
Sbは、Snと同様に耐食性向上効果を持つ元素であり、必要に応じて含有させてもよい。ただし多量に含有させると製造性の劣化を招くため、0.50%以下を上限とする。一方、耐食性向上の効果は0.005%以上で発揮されるためこれを下限とする。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼鈑は、上述してきた元素以外は、Fe及び不純物(不可避的不純物を含む)からなるが、以上説明した各元素の他にも、本発明の効果を損なわない範囲で含有させることが出来る。本実施形態では、例えばBi、Pb、Se、H、Ta等が含有されていてもよいが、その場合は可能な限り低減することが好ましい。
一方、これらの元素は、本発明の課題を解決する限度において、その含有割合が制御され、必要に応じて、Bi≦100ppm、Pb≦100ppm、Se≦100ppm、H≦100ppm、Ta≦500ppmの1種以上を含有してもよい。
次に、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板の金属組織について説明する。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼鈑は、結晶粒度番号が9.0以上のフェライト単相組織からなる。結晶粒度番号は9.0以上とする。成形後の加工肌荒れは結晶粒度番号が大きいほど、すなわちフェライト結晶粒の粒径が小さいほど生じにくいためこれを下限とする。肌荒れをさらに抑制するためには9.5以上が好ましく、更に望ましくは10.0以上である。
結晶粒度番号の測定方法は、JIS G 0551(2013年)の線分法で求めることができる。なお、「粒度番号:9」は結晶粒内を横切る1結晶粒あたりの平均線分長14.1μmに相当し、「粒度番号:10」は結晶粒内を横切る1結晶粒あたりの平均線分長10.0μmに相当する。結晶粒度測定は試験片断面の光学顕微鏡組織写真より、1試料につき横切る結晶粒数を500以上とする。エッチング液は王水または逆王水がよいが、結晶粒界が判断できるのであれば他の溶液でも構わない。また隣接する結晶粒の方位関係によっては粒界が鮮明に見えない場合があるため、濃くエッチングするのが好ましい。また結晶粒界測定に当たって双晶粒界は測定しないこととする。
また、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼鈑は、平均r値(ランクフォード値)が1.20以上であることが好ましい。平均r値を1.20以上とすることで、フェライト系ステンレス鋼板の成形性を向上させ、より厳しい加工を行うことができると同時に、成型時の荷重を低下させ、金型の消耗を抑えることができる。平均r値はより好ましくは1.3以上であり、更に好ましくは1.4以上である。
平均r値の測定方法は、JIS Z 2254(2008年)の塑性ひずみ比試験方法により測定することができる。平均r値は、JIS Z 2254(2008年)に従い、下記式(A)によって求めることができる。
平均r値=(r+2r45+r90)/4 ・・・(A)
但し、(A)式中のrは圧延方向のr値、r90は圧延直角方向のr値、r45は圧延45度方向のr値を示す。
次に、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板に含まれる析出物について説明する。本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板には、粒径が0.05〜0.30μmの範囲の析出物が含まれている。この粒径範囲に含まれる析出物の個数密度は100,000個/mm以上である。この析出物はPを含むリン化合物であり、P及びFeを含有する。更に、析出物には、TiまたはNbの一方または両方が含まれる。このような析出物が100,000個/mm以上の高い個数密度で含まれることにより、冷間圧延によって析出物の周囲の金属組織に歪みが導入されやすくなり、再結晶核が多数生成し、細粒組織が得られやすくなる。析出物の個数密度が100,000個/mm未満では、歪みの導入により形成される再結晶核が少なくなり、十分な細粒化が図れなくなる。
また、個数密度の限定対象となる析出物の粒径を0.05〜0.30μmの範囲に限定した理由は、0.05μm未満の析出物または0.30μmを超える析出物は再結晶核の形成に寄与しないためである。
本実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼板における析出物は、下記(1)〜(3)のいずれかの組成を有する析出物であることが好ましい。これらの析出物は、いずれもP及びFeを含有し、更に、TiまたはNbの一方または両方を含有する。本実施形態では、少なくともPを含有し、かつ、下記の成分を有する析出物を鋼中に析出させた上で、鋼板を冷間圧延することで、析出物の周囲に局所的な歪みを生じさせる。析出物は、後に説明する第2焼鈍を行うことにより、下記の成分範囲となるように析出する。下記(1)の析出物は、鋼成分としてTiを含み、Nbを含まない場合の析出物であり、下記(2)の析出物は、鋼成分としてNbを含み、Tiを含まない場合の析出物であり、下記(3)の析出物は、鋼成分としてTi及びNbを含む場合の析出物である。なお、平均原子比は、5個以上の析出物の原子比の平均値である。
(1)Nbを含まず、かつ、P、Tiが平均原子比でTi/P:0.5〜2.0の範囲となる析出物。
(2)Tiを含まず、かつ、P、Nbが平均原子比でNb/P:0.5〜2.0の範囲となる析出物。
(3)P、Ti、Nbが平均原子比でTi/P:0.5〜2.0かつNb/P:0.5〜2.0の範囲となる析出物。
析出物の密度の測定方法について説明する。個数密度の測定は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いる。まず、鋼板表面から深さ20μmまでの領域の断面薄膜試料を作製する。得られた断面薄膜試料についてTEMにより3万倍の倍率にて画像を撮影する。撮影数は10視野以上とする。各視野における析出物の個数をカウントする。個数の計測対象は、粒径が0.05〜0.30μmの範囲の析出物とする。そして、カウントした析出物の総数を、撮影された視野の面積で除する。析出物の粒径は、析出物の最大長さを粒径とする。
また、析出物の原子比は次のようにして測定する。原子比の測定は、エネルギー分散型X線元素分析装置(EDS)が装備されたTEMを用いる。まず、密度の測定方法の場合と同様にして、鋼板表面から深さ20μmまでの領域の断面薄膜試料を作製するが、密度の測定に用いた断面薄膜試料をそのまま用いてもよい。断面薄膜試料をTEMで観察し、粒径0.05〜0.3μmの析出物を確認し、EDSにより析出物から検出された全元素を100原子%としたときの、Ti、Nb及びPの組成比を測定する。そして、測定されたTi、Nb、Pの原子%の比を取ってNb/P及びTi/Pを求める。平均原子比は、5個以上の析出物についてそれぞれの原子比の測定値の平均値とする。
次に、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法を説明する。本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板の製造工程は、熱間圧延、冷間圧延及び焼鈍を組み合わせることとし、必要に応じて、適宜、酸洗を行うこととする。すなわち、製造方法の一例として、例えば、製鋼−熱間圧延−熱延板焼鈍―冷間圧延−中間焼鈍−冷間圧延−最終焼鈍の各工程からなる製法を採用できる。
本実施形態において制御すべき条件は、熱延焼鈍後の冷間圧延条件、冷間圧延後の中間焼鈍条件、そして、更に冷間圧延を施した後の最終焼鈍条件であり、それ以外の工程、条件については特に制限はない。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板は、上記の化学成分を有する熱間圧延鋼板の再結晶を目的とした熱延板焼鈍(以下、第1焼鈍という)の後、10〜50%の圧下率で冷間圧延(以下、第1冷間圧延という)し、次いで、均熱温度680〜800℃、均熱時間30秒以上の条件で中間焼鈍(以下、第2焼鈍という)し、次いで、冷間圧延(以下、第2冷間圧延という)し、次いで、再結晶温度T1℃〜(T1+20)℃の範囲で最終焼鈍(以下、第3焼鈍という)することにより製造する。
鋼板を10〜50%の圧延率で第1冷間圧延した後に、均熱温度680〜800℃で第2焼鈍することで、析出物を多量に析出させ、更に第2冷間圧延することによって析出物の周囲の金属組織に局部的に歪みを導入して再結晶の核を形成させ、更に第3焼鈍することで再結晶化を促し、微細な再結晶粒を析出させる。
鋳造、熱間圧延、冷却及び巻取りの条件は特に制限はなく、一般的なフェライト系ステンレス鋼板の製造条件で熱間圧延鋼板を製造すればよい。
(第1焼鈍)
第1焼鈍は、熱間圧延によって得られた熱間圧延板を一旦再結晶化させるために行う。第1焼鈍によって熱間圧延板を再結晶化させることで、r値を高くすることができる。第1焼鈍は、再結晶温度T1(℃)以上、T1+50(℃)以下の均熱温度で行うことが好ましい。また、第1焼鈍の均熱時間は、例えば、10秒〜60秒がよい。
(第1冷間圧延)
第1焼鈍後の熱間圧延焼鈍鋼板に対し、10〜50%の圧下率で第1冷間圧延を行う。第1冷間圧延によって鋼中に歪みを導入し、その後の第2焼鈍において析出物を析出させ易くする。圧下率が10%未満では第2焼鈍におけるNb、Tiの拡散が遅くなり析出物の析出量が不足するので好ましくない。また、圧下率が50%を超えると析出物の析出量は十分になるが、板厚が薄くなり第2冷間圧延の圧下率を十分に確保できなくなり、第3焼鈍時の再結晶の駆動力になる歪み量が減少してしまい、結晶粒度番号9.0以上を達成できなくなる。
(第2焼鈍)
第1冷間圧延後、均熱温度680〜800℃、均熱時間30秒以上の条件で第2焼鈍を行う。第2焼鈍によって、本実施形態に係る析出物を多量に析出させる。均熱温度が680℃未満ではTi、Nb等の拡散速度が遅くなり析出物の析出量が不足して析出物の密度が低下する。また、均熱温度が800℃を超えると析出物が固溶しやすくなり析出物の密度が低下する。また、NbおよびTiを複合添加した場合、均熱温度が680℃未満ではNbの母材への固溶度がTiと比べて低いため析出物中のNb量が多くなり、適切な原子比を確保できなくなる。また、均熱温度が800℃以上の場合はNbの母材への固溶度Tiと比べて高いため析出物中のNb量が少なくなり、この場合も適切な原子比を確保できなくなる。
均熱時間は30秒以上、3分(180秒)以下が好ましい。均熱時間が短すぎると析出物の析出量が不足して析出物の密度が低下し、長すぎると析出物が粗大化し密度が小さくなる。
(第2冷間圧延)
析出物を析出させた鋼板に対して第2冷間圧延を行う。第2冷間圧延によって、析出物の周囲の金属組織に歪みを導入して再結晶核を形成させる。第2冷間圧延の圧下率は50%以上がよい。圧下率が50%未満では第3焼鈍時の再結晶の駆動力になる歪み量が減少してしまい、結晶粒度番号9.0以上を達成できなくなる。また、第2冷間圧延の圧下率の上限は特に限定する必要はないが、例えば85%以下にすればよい。
(第3焼鈍)
第2冷間圧延後の鋼板に対して第3焼鈍を行う。第3焼鈍を行うことにより、第2冷間圧延によって形成された再結晶核を起点にして再結晶化が進行し、微細な再結晶組織が得られる。第3焼鈍における均熱温度は、再結晶温度T1℃〜(T1+20)℃の範囲とする。均熱温度が再結晶温度T1℃未満では、十分に再結晶が進まず、細粒組織を得ることができない。また、均熱温度が(T1+20)℃を超えると、再結晶粒が粗大化してしまう。
第3焼鈍の均熱時間は、10秒〜60秒とすることが好ましい。均熱時間が短いと再結晶化が十分に進まず、均熱時間が長すぎると再結晶粒が粗大化してしまう。
再結晶温度T1は次のようにして決定する。第2冷間圧延後の鋼板から複数のサンプルを採取し、各サンプルについて10℃刻みで熱処理を行う。そして、各サンプルのL断面の光学顕微鏡による組織観察から未再結晶粒の有無を判断し、未再結晶粒が観察されない最も低い温度をT1とする。
第1焼鈍、第2焼鈍及び第3焼鈍の終了後それぞれ、必要に応じて、酸洗等の脱スケール処理を行ってもよい。
以上説明した製造方法によって、本実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼板を製造することができる。
なお、本実施形態においては、第1焼鈍、第2焼鈍及び第3焼鈍は、バッチ式焼鈍でも連続式焼鈍でも構わない。また、各焼鈍は、必要であれば水素ガスあるいは窒素ガスなどの無酸化雰囲気で焼鈍する光輝焼鈍でもよいし、大気中で焼鈍しても構わない。
また、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板に適用される板厚は特に限定しないが、強度確保の観点から0.5mm以上、好ましくは0.6mm以上であることが望ましい。板厚が薄い場合は成形後の部品において強度が不十分となる場合があるためである。製造対象となる部品のサイズや形状、耐荷重等を考慮して板厚を決定すればよい。
以上、本実施形態によれば、成形加工性及び成形後の耐加工肌荒れ性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を提供することができる。また、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板は耐加工肌荒れ性に優れるため、特に、成形加工後に表面凹凸(肌荒れ)を除去するための研磨を要する用途に好適である。
次に本発明の実施例を示す。本実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、以下の実施例で用いた条件に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
表1に示すA〜Nの成分組成を有するステンレス鋼を溶製してスラブに鋳造し、スラブを熱間圧延にて所定の板厚まで圧延した。その後、再結晶を目的とした焼鈍(第1焼鈍)、中間冷間圧延(第1冷間圧延)、中間焼鈍(第2焼鈍)、仕上げ冷間圧延(第2冷間圧延)及び仕上げ焼鈍(第3焼鈍)を施して0.6mm厚のステンレス鋼板(製品板)No.1〜28を製造した。第1焼鈍は、均熱温度を再結晶温度T1(℃)以上、T1+50(℃)以下の範囲とし、均熱時間は10秒〜60秒の範囲とした。中間冷間圧延(第1冷間圧延)の圧下率、中間焼鈍(第2焼鈍)の均熱温度と均熱時間、最終冷間圧延(第2冷間圧延)の圧下率、仕上げ焼鈍(第3焼鈍)の均熱温度及び均熱時間は表2のように変化させた。
次に、得られたステンレス鋼板No.1〜No.28の幅中央付近から試験片を切り出し、JIS G 0551(2013年)に準拠して線分法によって結晶粒度番号(GSN)を測定した。なお、結晶粒度を測定する際は、試験片断面の光学顕微鏡組織写真より、1試料につき横切る結晶粒数を500以上とした。
平均r値の測定方法は、JIS Z 2254の塑性ひずみ比試験方法により測定した。試験片は、ステンレス鋼板No.1〜No.28の幅中央付近から切り出した。平均r値は、JIS Z 2254(2008年)に従い、下記式(B)によって求めた。
平均r値=(r+2r45+r90)/4 ・・・(B)
但し、(B)式中のrは圧延方向のr値、r90は圧延直角方向のr値、r45は圧延45度方向のr値を示す。
析出物の密度の測定は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた。まず、鋼板表面から深さ20μmまでの領域の断面薄膜試料を作製した。得られた断面薄膜試料についてTEMにより3万倍の倍率にて画像を撮影した。撮影数は10視野以上とした。各視野における析出物の個数をカウントした。個数の計測対象は、粒径が0.05〜0.30μmの範囲の析出物とした。そして、カウントした析出物の総数を、撮影された視野の面積で除することで、析出物の密度を求めた。なお、析出物の粒径は、析出物の最大長さを粒径とした。
析出物の原子比の測定は、エネルギー分散型X線元素分析装置(EDS)が装備されたTEMを用いた。まず、密度の測定方法の場合と同様にして、鋼板表面から深さ20μmまでの領域の断面薄膜試料を作製した。断面薄膜試料をTEMで観察し、粒径0.05〜0.3μmの析出物を確認し、EDSにより析出物から検出された全元素を100原子%としたときの、Ti、Nb及びPの組成比を測定した。そして、測定されたTi、Nb、Pの原子%の比を取ってNb/P及びTi/Pを求めた。本実施例では、5個の析出物についてそれぞれの原子比を求め、これらの平均値を平均原子比とした。
さらに、ステンレス鋼板No.1〜No.28よりφ110mmの試料を切り出し、油圧成形試験機により絞り比2.2のカップ成形試験を行った。カップ成形後の肌荒れには絞り比が大きく影響するが、その他の成形条件は影響を及ぼさないことが分かっている。
なお今回実施したカップ成形試験条件は、ポンチ径が50mm、ポンチ肩Rが5mm、ダイス径が52mm、ダイス肩Rが5mm、しわ押さえ圧が1トン、クリアランスが片側0.4t(tは板厚)とした。さらに、試料とポンチ間の潤滑剤として、出光興産株式会社製の防錆油「ダフニーオイルコートZ3(登録商標)」を塗布し、その後に成形後の鋼板表面を保護するために潤滑シート「ニチアス株式会社製ナフロンテープTOMBO9001」を貼り付けた。
絞り比2.2で成形が出来た試料についてはカップ成形後の表面粗さを測定し加工肌荒れを評価した。
カップ成形後の試料の圧延方向の縦壁部内側の高さ中央部において高さ方向に平行に5mm長さについて二次元接触式の表面粗さ測定機を用いてJIS B 0601に記載の表面粗さ測定を行い、算術平均粗さRaを算出した。算術平均粗さRa1.00μmを基準とし、Raが1.00μm未満の場合を加工肌荒れ評価が良好と判断し、Raが1.00μm以上の場合を加工肌荒れ評価を不良と判断した。
以上の測定結果及び評価結果を表2に示す。
表2に示すように、試験例1、3、6〜9、11、13〜15、17、19、20、25〜28は、鋼成分が本発明範囲を満たし、また製造条件が好ましい範囲を満たした。このため、析出物が多量に析出して微細な再結晶組織が得られた。これらの試験例は、平均r値が1.20以上と高く成形性に優れ、また、加工後の肌荒れ性に優れていた。
一方、表2のNo.2は、中間冷間圧延の圧下率が5%と低かったため、析出物が十分に析出せずに密度が低くなり、結晶粒度番号が9.0未満になり、加工後肌荒れ性が劣化した。
No.4は、中間焼鈍温度が660℃と低かったため、析出物が十分に析出せずに密度が低くなり、結晶粒度番号が9.0未満になり、加工後肌荒れ性が劣化した。
No.5及びNo.16は、仕上げ焼鈍温度が(T1+20)℃を超えたため、仕上げ焼鈍時に再結晶粒の粗大化が起こり、結晶粒度番号が9.0未満になり、加工後肌荒れ性が劣化した。
No.10及びNo,18は、中間焼鈍温度がそれぞれ840℃、820℃と高いため、析出物が一部固溶して密度が低くなり、結晶粒度番号が9.0未満になり、加工後肌荒れ性が劣化した。
No.12は、中間冷間圧延の圧下率が60%と高く、このため最終冷間圧延の圧下率を低くせざるを得なかった。これにより、最終冷間圧延による歪みの付与が十分になされず、再結晶核が十分に形成されず、結晶粒度番号が9.0未満になり、加工後肌荒れ性が劣化した。
No.21及びNo.22は、C量が過剰であったため、Ti及びNbがそれぞれ炭化物の生成に使われ、Ti及びNbを含む析出物が形成されなかった。また、C量が過剰であったため、平均r値が1.20未満となり、成形性が低下した。
No.23及びNo.24は、Ti及びNbの両方が含まれなかったため、Ti及びNbを含む析出物が形成されなかった。また、Ti及びNbの炭化物が形成されなかったため、平均r値が1.20未満となり、成形性が低下した。
Figure 2020143309
Figure 2020143309

Claims (5)

  1. 質量%にて、
    Cr:11.0%以上30.0%以下、
    C:0.001%以上0.030%以下、
    Si:0.01%以上2.00%以下、
    Mn:0.01%以上2.00%以下、
    P:0.005%以上0.100%以下、
    S:0.0100%以下、
    N:0.030%以下を含み、
    さらに、Ti:0.50%以下、Nb:1.0%以下の1種または2種を含み、
    残部がFe及び不純物からなり、
    JIS G 0551にて測定される結晶粒度番号が9.0以上であり、
    JIS Z 2254にて測定される平均r値が1.20以上であり、
    粒径が0.05〜0.30μmの範囲の析出物の密度が100,000個/mm以上であることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板。
  2. 質量%にて、更に、
    B:0.0001%以上0.0025%以下、
    Sn:0.005%以上0.50%以下、
    Ni:1.00%以下、
    Cu:1.00%以下、
    Mo:2.00%以下、
    W:1.00%以下、
    Al:1.00%以下、
    Co:0.50%以下、
    V:0.50%以下、
    Zr:0.50%以下、
    Ca:0.0050%以下、
    Mg:0.0050%以下、
    Y:0.10%以下、
    Hf:0.20%以下、
    REM:0.10%以下、
    Sb:0.50%以下の1種または2種以上を含有していることを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
  3. 前記析出物は、Nbを含まず、かつ、P、Tiが平均原子比でTi/P:0.5〜2.0の範囲となる成分を有する析出物であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
  4. 前記析出物は、Tiを含まず、かつ、P、Nbが平均原子比でNb/P:0.5〜2.0の範囲となる成分を有する析出物であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
  5. 前記析出物は、平均原子比でTi/P:0.5〜2.0かつNb/P:0.5〜2.0の範囲となる成分を有する析出物であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフェライト系ステンレス鋼板。
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