JP2020138420A - インクジェット記録方法、及び液体噴射ヘッド - Google Patents

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Abstract

【課題】連続吐出安定性に優れる、インクジェット記録方法、及び液体噴射ヘッドを提供する。【解決手段】インク組成物を吐出するノズルと、前記インク組成物が供給される圧力室と、前記圧力室の前記インク組成物を循環可能とする循環帰路と、を備える液体噴射ヘッドを用いるインクジェット記録方法であって、前記インク組成物が、下限臨界共溶温度又は上限臨界共溶温度を有する温度応答性高分子を含有し、前記循環帰路内の前記インク組成物をゲル化させる、インクジェット記録方法、及び、インク組成物を吐出するノズルと、前記インク組成物が供給される圧力室と、前記圧力室の前記インク組成物を循環可能とする循環帰路と、前記循環帰路内の前記インク組成物を加熱又は冷却可能な温度調整機構と、を備える液体噴射ヘッド。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録方法、及び液体噴射ヘッドに関する。
インクジェット記録方法は、比較的単純な装置で、高精細な画像の記録が可能であり、各方面で急速な発展を遂げている。液体噴射ヘッドによるインク吐出状態を維持管理する方法として、特許文献1及び2では、ノズルからの前記水性インクの吐出状態を回復させる回復機構を備えたインクジェット記録装置が記載されている。
特開2017−217905号公報 特開2007−152830号公報
従来のインクジェット記録方法は、例えば、特許文献1及び2に示されるように、ノズル内のインク組成物を予備吐出により流動させることで吐出性を回復させることができるが、装置の用途や構造によっては、予備吐出による回復動作を頻繁に行えない。
そこで、本発明者らは、液体噴射ヘッド内で、液体を循環させ、予備吐出を行わなくとも、長期間にわたりインク組成物の連続吐出安定性を維持することを検討した。その中で、循環帰路において、インク組成物が増粘する又は固形分が沈降することで、液体噴射ヘッドの圧力室に、当該増粘した、又は沈降物が含まれるインク組成物が供給されることで、連続吐出安定性が損なわれることが見出された。
例えば、インク組成物を流動させるために、流動中のインク組成物を加熱する又は振動させることにより減粘することも考えられる。しかしながら、インク組成物の加熱又は振動により、分散用樹脂が色材から剥離し、色材の凝集又は沈降が起こることが分かった。その結果、インク組成物が増粘し、結果的に連続吐出安定性が得られなくなることが見出された。
以上の事情に鑑みて、本発明は、連続吐出安定性に優れる、インクジェット記録方法、及び液体噴射ヘッドを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、液体噴射ヘッドにおいて、インク組成物を循環帰路により圧力室に循環させ、その循環帰路内でインク組成物をゲル化させることで、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、インク組成物を吐出するノズルと、前記インク組成物が供給される圧力室と、前記圧力室の前記インク組成物を循環可能とする循環帰路と、を備える液体噴射ヘッドを用いるインクジェット記録方法であって、前記インク組成物が、下限臨界共溶温度又は上限臨界共溶温度を有する温度応答性高分子を含有し、前記循環帰路内の前記インク組成物をゲル化させる、インクジェット記録方法に関する。
本発明のインクジェット記録方法は、前記圧力室に供給される前記インク組成物をゾル化させることが好ましい。
前記液体噴射ヘッドは、前記循環帰路内の前記インク組成物を加熱又は冷却するゲル化機構をさらに備えることが好ましい。
前記ゲル化機構は、前記下限臨界共溶温度以上に前記インク組成物を加熱する、又は、前記上限臨界共溶温度以下に前記インク組成物を冷却する機構であることが好ましい。
前記液体噴射ヘッドが、前記循環帰路内の前記ゲル化機構より下流側に循環用ポンプをさらに備えることが好ましい。
前記液体噴射ヘッドは、インク組成物を吐出するノズルと、前記インク組成物が供給される圧力室と、前記ノズルと前記圧力室とを連通させる連通路と、前記連通路から前記圧力室に前記インク組成物を循環させる循環帰路と、を備えることが好ましい。
また、本発明の液体噴射ヘッドは、インク組成物を吐出するノズルと、前記インク組成物が供給される圧力室と、前記圧力室の前記インク組成物を循環可能とする循環帰路と、前記循環帰路内の前記インク組成物を加熱又は冷却可能な温度調整機構と、を備える。
本発明の第1実施形態における液体噴射装置の構成図である。 液体噴射ヘッドの断面図である。 液体噴射ヘッドの部分的な分解斜視図である。 圧電素子の断面図である。 液体噴射ヘッドにおけるインクの循環の説明図である。 液体噴射ヘッドのうち循環液室の近傍の平面図および断面図である。 第2実施形態における液体噴射ヘッドの部分的な分解斜視図である。 第2実施形態における循環液室の近傍の平面図および断面図である。 第3実施形態における循環液室の近傍の平面図および断面図である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
インクジェット記録方法
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、インク組成物を吐出するノズルと、前記インク組成物が供給される圧力室と、前記圧力室の前記インク組成物を循環可能とする循環帰路と、を備える液体噴射ヘッドを用いる。
当該方法において、インク組成物は、下限臨界共溶温度又は上限臨界共溶温度を有する温度応答性高分子を含有する。
また、前記循環帰路内の前記インク組成物をゲル化させる。
以上の構成を備えることで、連続吐出安定性に優れるインクジェット記録方法が提供される。
その理由は、定かではないが以下のとおりに考えられる。ただし、本発明は、当該作用機序に限定されない。
本実施形態のインクジェット記録方法は、液体噴射ヘッドにおいて、圧力室にインク組成物を循環させることで、インク組成物を流動させ、ノズルの吐出状態を初期の状態に維持することで、連続吐出安定性を向上させる。
しかしながら、そのようにインク組成物を循環させる従来のインクジェット記録方法では、循環帰路でインク組成物が、増粘又は固形物が沈殿し、循環帰路の流れが阻害されることがあった。例えば、粘度を低下させ流動性を高めるために、加熱などにより、インク組成物の温度を上昇させても、却って、インク組成物中に含まれる顔料などの固形分が沈殿し、インク組成物の循環を阻害することが見出された。
そこで、本実施形態のインクジェット記録方法では、下限臨界共溶温度又は上限臨界共溶温度を有する温度応答性高分子を含有するインク組成物を用いる。当該温度応答性高分子は、例えば、温度を調整することで、インク組成物全体をゲル化させることができ、また、逆に、温度を調整することで、インク組成物全体をゾル化させることもできる。
本実施形態のインクジェット記録方法では、当該インク組成物を用いて、循環帰路内で当該インク組成物をゲル化させることで、インク組成物中に含まれる固形分の分散状態が安定に維持される。
以上のとおり、液体噴射ヘッド内でインク組成物を循環し、当該インク組成物として、温度応答性高分子を含有するものを使用し、循環帰路内でゲル化させることで、連続吐出安定性に優れるインクジェット記録方法が提供できる。
本発明における各種用語の定義について説明する。
「ゲル化機構」とは、温度応答性高分子等を含有するインク組成物を、ゲル化させる温度調整機構である。ゲル化機構は、温度応答性高分子が下限臨界共溶温度を有する場合、加熱機構であることが好ましく、温度応答性高分子が上限臨界共溶温度を有する場合、冷却機構であることが好ましい。
ゲル化機構としては、特に限定されないが、例えば、ヒータ、ペルチェ素子等の温度調整素子が挙げられる。
「循環帰路」とは、圧力室からノズルに、インク組成物が供給されるインク組成物流路とは異なる流路であって、当該供給されたインク組成物を圧力室内に戻す流路を意味する。
−インクジェット記録装置−
――第1実施形態――
図1は、第1実施形態で用いるインクジェット記録装置100を例示する構成図である。第1実施形態で用いるインクジェット記録装置100は、インク組成物を媒体12に噴射するインクジェット方式の印刷装置である。媒体12は、典型的には印刷用紙であるが、樹脂フィルム又は布帛等の任意の材質の被記録媒体が媒体12として利用され得る。図1に例示されるとおり、インクジェット記録装置100には、インク組成物を貯留する液体容器14が設置される。例えばインクジェット記録装置100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、またはインク組成物を補充可能なインクタンクが液体容器14として利用される。色彩が相違する複数種のインク組成物が液体容器14に貯留されてもよい。
図1に例示されるとおり、インクジェット記録装置100は、制御ユニット20と搬送機構22と移動機構24と液体噴射ヘッド26とを備える。制御ユニット20は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と半導体メモリ等の記憶回路とを含み、インクジェット記録装置100の各要素を統括的に制御する。搬送機構22は、制御ユニット20による制御のもとで媒体12をY方向に搬送する。
移動機構24は、制御ユニット20による制御のもとで液体噴射ヘッド26をX方向に往復させる。X方向は、媒体12が搬送されるY方向に交差(典型的には直交)する方向である。第1実施形態の移動機構24は、液体噴射ヘッド26を収容する略箱型の搬送体242(キャリッジ)と、搬送体242が固定された搬送ベルト244とを具備する。なお、複数の液体噴射ヘッド26を搬送体242に搭載した構成や、液体容器14を液体噴射ヘッド26とともに搬送体242に搭載した構成も採用され得る。
液体噴射ヘッド26は、液体容器14から供給されるインクを制御ユニット20による制御のもとで複数のノズルN(噴射孔)から媒体12に噴射する。搬送機構22による媒体12の搬送と搬送体242の反復的な往復とに並行して各液体噴射ヘッド26が媒体12にインクを噴射することで、媒体12の表面に所望の画像が形成される。なお、X-Y平面(例えば媒体12の表面に平行な平面)に垂直な方向を以下ではZ方向と表記する。各液体噴射ヘッド26によるインクの噴射方向(典型的には鉛直方向)がZ方向に相当する。
図1に例示されるとおり、液体噴射ヘッド26の複数のノズルNはY方向に配列される。第1実施形態の複数のノズルNは、X方向に相互に間隔をあけて並設された第1列L1と第2列L2とに区分される。第1列L1および第2列L2の各々は、Y方向に直線状に配列された複数のノズルNの集合である。なお、第1列L1と第2列L2との間で各ノズルNのY方向に位置を相違させること(すなわち千鳥配置またはスタガ配置)も可能であるが、第1列L1と第2列L2とで各ノズルNのY方向の位置を一致させた構成を以下では便宜的に例示する。液体噴射ヘッド26においてY方向に平行な中心軸を通過するとともにZ方向に平行な平面(Y-Z平面)Oを以下の説明では「中心面」と表記する。
図2は、Y方向に垂直な断面における液体噴射ヘッド26の断面図であり、図3は、液体噴射ヘッド26の部分的な分解斜視図である。図2及び図3から理解されるとおり、第1実施形態の液体噴射ヘッド26は、第1列L1の各ノズルN(第1ノズルの例示)に関連する要素と第2列L2の各ノズルN(第2ノズルの例示)に関連する要素とが中心面Oを挟んで面対称に配置された構造である。すなわち、液体噴射ヘッド26のうち中心面Oを挟んでX方向の正側の部分(以下「第1部分」という)P1とX方向の負側の部分(以下「第2部分」という)P2とで構造は実質的に共通する。第1列L1の複数のノズルNは第1部分P1に形成され、第2列L2の複数のノズルNは第2部分P2に形成される。中心面Oは、第1部分P1と第2部分P2との境界面に相当する。
図2及び図3に例示されるとおり、液体噴射ヘッド26は流路形成部30を備える。流路形成部30は、複数のノズルNにインクを供給するための流路を形成する構造体である。第1実施形態の流路形成部30は、第1流路基板32(連通板)と第2流路基板34(圧力室形成板)との積層で構成される。第1流路基板32および第2流路基板34の各々は、Y方向に長尺な板状部材である。第1流路基板32のうちZ方向の負側の表面Faに、例えば接着剤を利用して第2流路基板34が設置される。
図2に例示されるとおり、第1流路基板32の表面Faの面上には、第2流路基板34のほか、振動部42と複数の圧電素子44と保護部材46と筐体部48とが設置される(図3では図示略)。他方、第1流路基板32のうちZ方向の正側(すなわち表面Faとは反対側)の表面Fbにはノズルプレート52と吸振体54とが設置される。液体噴射ヘッド26の各要素は、概略的には第1流路基板32や第2流路基板34と同様にY方向に長尺な板状部材であり、例えば接着剤を利用して相互に接合される。第1流路基板32と第2流路基板34とが積層される方向や第1流路基板32とノズルプレート52とが積層される方向(あるいは板状の各要素の表面に垂直な方向)を、Z方向として把握することも可能である。
ノズルプレート52は、複数のノズルNが形成された板状部材であり、例えば接着剤を利用して第1流路基板32の表面Fbに設置される。複数のノズルNの各々は、インク組成物を通過させる円形状の貫通孔である。第1実施形態のノズルプレート52には、第1列L1を構成する複数のノズルNと第2列L2を構成する複数のノズルNとが形成される。具体的には、ノズルプレート52のうち中心面OからみてX方向の正側の領域に、第1列L1の複数のノズルNがY方向に沿って形成され、X方向の負側の領域に、第2列L2の複数のノズルNがY方向に沿って形成される。第1実施形態のノズルプレート52は、第1列L1の複数のノズルNが形成された部分と第2列L2の複数のノズルNが形成された部分とにわたり連続する単体の板状部材である。第1実施形態のノズルプレート52は、半導体製造技術(例えばドライエッチングやウェットエッチング等の加工技術)を利用してシリコン(Si)の単結晶基板を加工することで製造される。ただし、ノズルプレート52の製造には公知の材料や製法が任意に採用され得る。
図2及び図3に例示されるとおり、第1流路基板32には、第1部分P1および第2部分P2の各々について、空間Raと複数の供給路61と複数の連通路63とが形成される。空間Raは、平面視で(すなわちZ方向からみて)Y方向に沿う長尺状に形成された開口であり、供給路61および連通路63はノズルN毎に形成された貫通孔である。複数の連通路63は平面視でY方向に配列し、複数の供給路61は、複数の連通路63の配列と空間Raとの間でY方向に配列する。複数の供給路61は、空間Raに共通に連通する。また、任意の1個の連通路63は、当該連通路63に対応するノズルNに平面視で重なる。具体的には、第1部分P1の任意の1個の連通路63は、第1列L1のうち当該連通路63に対応する1個のノズルNに連通する。同様に、第2部分P2の任意の1個の連通路63は、第2列L2のうち当該連通路63に対応する1個のノズルNに連通する。
図2及び図3に例示されるとおり、第2流路基板34は、第1部分P1および第2部分P2の各々について複数の圧力室Cが形成された板状部材である。複数の圧力室CはY方向に配列する。各圧力室C(キャビティ)は、ノズルN毎に形成されて平面視でX方向に沿う長尺状の空間である。第1流路基板32および第2流路基板34は、前述のノズルプレート52と同様に、例えば半導体製造技術を利用してシリコンの単結晶基板を加工することで製造される。ただし、第1流路基板32および第2流路基板34の製造には公知の材料や製法が任意に採用され得る。以上の例示の通り、第1実施形態における流路形成部30(第1流路基板32および第2流路基板34)とノズルプレート52とはシリコンで形成された基板を包含する。したがって、例えば前述の例示のように半導体製造技術を利用することで、流路形成部30およびノズルプレート52に微細な流路を高精度に形成できるという利点がある。
図2に例示されるとおり、第2流路基板34のうち第1流路基板32とは反対側の表面には振動部42が設置される。第1実施形態の振動部42は、弾性的に振動可能な板状部材(振動板)である。なお、所定の板厚の板状部材のうち圧力室Cに対応する領域について板厚方向の一部を選択的に除去することで、第2流路基板34と振動部42とを一体に形成することも可能である。
図2から理解されるとおり、第1流路基板32の表面Faと振動部42とは、各圧力室Cの内側で相互に間隔をあけて対向する。圧力室Cは、第1流路基板32の表面Faと振動部42との間に位置する空間であり、当該空間に充填されたインクに圧力変化を発生させる。各圧力室Cは、例えばX方向を長手方向とする空間であり、ノズルN毎に個別に形成される。第1列L1および第2列L2の各々について、複数の圧力室CがY方向に配列する。図2及び図3に例示される通り、任意の1個の圧力室Cのうち中心面O側の端部は平面視で連通路63に重なり、中心面Oとは反対側の端部は平面視で供給路61に重なる。したがって、第1部分P1および第2部分P2の各々において、圧力室Cは、連通路63を介してノズルNに連通するとともに、供給路61を介して空間Raに連通する。なお、流路幅が狭窄された絞り流路を圧力室Cに形成することで所定の流路抵抗を付加することも可能である。
図2に例示されるとおり、振動部42のうち圧力室Cとは反対側の面上には、第1部分P1および第2部分P2の各々について、相異なるノズルNに対応する複数の圧電素子44が設置される。圧電素子44は、駆動信号の供給により変形する受動素子である。複数の圧電素子44は、各圧力室Cに対応するようにY方向に配列する。任意の1個の圧電素子44は、図4に例示されるとおり、相互に対向する第1電極441と第2電極442との間に圧電体層443を介在させた積層体である。なお、第1電極441および第2電極442の一方を、複数の圧電素子44にわたり連続する電極(すなわち共通電極)とすることも可能である。第1電極441と第2電極442と圧電体層443とが平面視で重なる部分が圧電素子44として機能する。なお、駆動信号の供給により変形する部分(すなわち振動部42を振動させる能動部)を圧電素子44として画定することも可能である。以上の説明から理解されるとおり、第1実施形態の液体噴射ヘッド26は第1圧電素子と第2圧電素子とを具備する。例えば、第1圧電素子は、中心面OからみてX方向の一方側(例えば図2における右側)の圧電素子44であり、第2圧電素子は、中心面OからみてX方向の他方側(例えば図2における左側)の圧電素子44である。圧電素子44の変形に連動して振動部42が振動すると、圧力室C内の圧力が変動することで、圧力室Cに充填されたインクが連通路63とノズルNとを通過して噴射される。
図2の保護部材46は、複数の圧電素子44を保護するための板状部材であり、振動部42の表面(又は第2流路基板34の表面)に設置される。保護部材46の材料や製法は任意であるが、第1流路基板32や第2流路基板34と同様に、例えばシリコン(Si)の単結晶基板を半導体製造技術により加工することで保護部材46は形成され得る。保護部材46のうち振動部42側の表面に形成された凹部に複数の圧電素子44が収容される。
振動部42のうち流路形成部30とは反対側の表面(又は流路形成部30の表面)には配線基板28の端部が接合される。配線基板28は、制御ユニット20と液体噴射ヘッド26とを電気的に接続する複数の配線(図示略)が形成された可撓性の実装部品である。配線基板28のうち、保護部材46に形成された開口部と筐体部48に形成された開口部とを通過して外部に延出した端部が制御ユニット20に接続される。例えばFPC(Flexible Printed Circuit)やFFC(Flexible Flat Cable)等の可撓性の配線基板28が好適に採用される。
筐体部48は、複数の圧力室C(さらには複数のノズルN)に供給されるインクを貯留するためのケースである。筐体部48のうちZ方向の正側の表面が例えば接着剤で第1流路基板32の表面Faに接合される。筐体部48の製造には公知の技術や製法が任意に採用され得る。例えば樹脂材料の射出成形で筐体部48を形成することが可能である。
図2に例示されるとおり、第1実施形態の筐体部48には、第1部分P1及び第2部分P2の各々について空間Rbが形成される。筐体部48の区間Rbと第1流路基板32の空間Raとは相互に連通する。空間Raと空間Rbとで構成される空間は、複数の圧力室Cに供給されるインクを貯留する液体貯留室(リザーバー)Rとして機能する。液体貯留室Rは、複数のノズルNについて共用される共通液室である。第1部分P1及び第2部分P2の各々に液体貯留室Rが形成される。第1部分P1の液体貯留室Rは、中心面OからみてX方向の正側に位置し、第2部分P2の液体貯留室Rは、中心面OからみてX方向の負側に位置する。筐体部48のうち第1流路基板32とは反対側の表面には、液体容器14から供給されるインクを液体貯留室Rに導入するための導入口482が形成される。
図2に例示されるとおり、第1流路基板32の表面Fbには、第1部分P1及び第2部分P2の各々について吸振体54が設置される。吸振体54は、液体貯留室R内のインクの圧力変動を吸収する可撓性のフィルム(コンプライアンス基板)である。図3に例示されるとおり、吸振体54は、第1流路基板32の空間Raと複数の供給路61とを閉塞するように第1流路基板32の表面Fbに設置されて液体貯留室Rの壁面(具体的には底面)を構成する。
図2に例示されるとおり、第1流路基板32のうちノズルプレート52に対向する表面Fbには空間(以下「循環液室」という)65が形成される。第1実施液体の循環液室65は、平面視でY方向に延在する長尺状の有底孔(溝部)である。第1流路基板32の表面Fbに接合されたノズルプレート52により循環液室65の開口は閉塞される。
図2に例示されるとおり、第1流路基板32のうち第2流路基板34に対抗する表面FaにはヒータHが埋設される溝66が形成される。ヒータHは、循環液室65内の下限臨界共溶温度を有する温度応答性高分子を含有するインク組成物を加熱し、インク組成物をゲル化させる。上限臨界共溶温度を有する温度応答性高分子を含有するインク組成物を用いる場合、ヒータHは、ペルチェ素子等の冷却装置に変更してもよい。
図5は、循環液室65に着目した液体噴射ヘッド26の構成図である。図5に例示されるとおり、循環液室65は、第1列L1及び第2列L2に沿って複数のノズルNにわたり連続する。具体的には、第1列L1の複数のノズルNの配列と第2列L2の複数のノズルNの配列との間に循環液室65が形成される。したがって、図2に例示されるとおり、循環液室65は、第1部分P1の連通路63と第2部分P2の連通路63との間に位置する。以上の説明から理解されるとおり、第1実施形態の流路形成部30は、第1部分P1における圧力室C(第1圧力室)及び連通路63(第1連通路)と、第2部分P2における圧力室C(第2圧力室)及び連通路63(第2連通路)と、第1部分P1の連通路63と第2部分P2の連通路63との間に位置する循環液室65とが形成された構造体である。図2に例示されるとおり、第1実施形態の流路形成部30は、循環液室65と各連通路63との間を仕切る壁状の部分(以下「隔壁部」という)69を含む。
なお、前述のとおり、第1部分P1及び第2部分P2の各々において複数の圧力室C及び複数の圧電素子44がY方向に配列する。したがって、第1部分P1および第2部分P2の各々における複数の圧力室Cまたは複数の圧電素子44にわたり連続するように、循環液室65がY方向に延在すると換言することも可能である。また、図2及び図3から理解されるとおり、循環液室65と液体貯留室Rとが相互に間隔をあけてY方向に延在し、当該間隔内に圧力室Cと連通路63とノズルNとが位置するということも可能である。
図6は、液体噴射ヘッド26のうち循環液室65の近傍の部分を拡大した平面図及び断面図である。図6に例示されるとおり、第1実施形態における1個のノズルNは、第1区間n1と第2区間n2とを含む。第1区間n1と第2区間n2とは同軸に形成されて相互に連通する円形状の空間である。第2区間n2は、第1区間n1からみて流路形成部30側に位置する。第2区間n2の内径d2は第1区間n1の内径d1よりも大きい(d2>d1)。以上のように各ノズルNを階段状に形成した構成によれば、各ノズルNの流路抵抗を所望の特性に設定しやすいという利点がある。また、図6に例示されるとおり、第1実施形態における各ノズルNの中心軸Qaは、連通路63の中心軸Qbからみて循環液室65とは反対側に位置する。
図6に例示されるとおり、ノズルプレート52のうち流路形成部30に対向する表面には、第1部分P1及び第2部分P2の各々について複数の循環路72が形成される。第1部分P1の複数の循環路72(第1循環路の例示)は、第1列L1の複数のノズルN(又は第1列L1に対応する複数の連通路63)に1対1に対応する。また、第2部分P2の複数の循環路72(第2循環路の例示)は、第2列L2の複数のノズルN(又は第2列L2に対応する複数の連通路63)に1対1に対応する。
各循環路72は、X方向に延在する溝部(すなわち長尺状の有底孔)であり、インクを流通させる流路として機能する。第1実施形態の循環路72は、ノズルNから離間した位置(具体的には、当該循環路72に対応するノズルNからみて循環液室65側)に形成される。例えば、半導体製造技術(例えばドライエッチングやウェットエッチング等の加工技術)により複数のノズルN(特に第2区間n2)と複数の循環路72とが共通の工程で一括的に形成される。
図6に例示される通り、各循環路72は、ノズルNのうち第2区間n2の内径d2と同等の流路幅Waで直線状に形成される。また、第1実施形態における循環路72の流路幅(Y方向の寸法)Waは、圧力室Cの流路幅(Y方向の寸法)Wbよりも小さい。したがって、循環路72の流路幅Waが圧力室Cの流路幅Wbよりも大きい構成と比較して循環路72の流路抵抗を大きくすることが可能である。他方、ノズルプレート52の表面に対する循環路72の深さDaは全長にわたり一定である。具体的には、各循環路72はノズルNの第2区間n2と同等の深さに形成される。以上の構成によれば、循環路72と第2区間n2とを相異なる深さに形成する構成と比較して、循環路72および第2区間n2を形成しやすいという利点がある。なお、流路の「深さ」とは、Z方向における流路の深さ(例えば流路の形成面と流路の底面との高低差)を意味する。
第1部分P1における任意の1個の循環路72は、第1列L1のうち当該循環路72に対応するノズルNからみて循環液室65側に位置する。また、第2部分P2における任意の1個の循環路72は、第2列L2のうち当該循環路72に対応するノズルNからみて循環液室65側に位置する。そして、各循環路72のうち中心面Oとは反対側(連通路63側)の端部は、当該循環路72に対応する1個の連通路63に平面視で重なる。すなわち、循環路72は連通路63に連通する。他方、各循環路72のうち中心面O側(循環液室65側)の端部は循環液室65に平面視で重なる。すなわち、循環路72は循環液室65に連通する。以上の説明から理解されるとおり、複数の連通路63の各々が循環路72を介して循環液室65に連通する。したがって、図6に破線の矢印で図示されるとおり、各連通路63内のインクは循環路72を介して循環液室65に供給される。すなわち、第1実施形態では、第1列L1に対応する複数の連通路63と第2列L2に対応する複数の連通路63とが1個の循環液室65に対して共通に連通する。
図6には、任意の1個の循環路72のうち循環液室65に重なる部分の流路長Laと、循環路72のうち連通路63に重なる部分の流路長(X方向の寸法)Lbと、循環路72のうち流路形成部30の隔壁部69に重なる部分の流路長(X方向の寸法)Lcとが図示されている。流路長Lcは、隔壁部69の厚さに相当する。隔壁部69は、循環路72の絞り部分として機能する。したがって、隔壁部69の厚さに相当する流路長Lcが長いほど、循環路72の流路抵抗が増大する。第1実施形態では、流路長Laが流路長Lbよりも長く(La>Lb)、流路長Laが流路長Lcよりも長い(La>Lc)、という関係が成立する。さらに、第1実施形態では、流路長Lbが流路長Lcよりも長い(Lb>Lc)という関係が成立する(La>Lb>Lc)。以上の構成によれば、流路長Laや流路長Lbが流路長Lcよりも短い構成と比較して、連通路63から循環路72を介して循環液室65にインクが流入しやすいという利点がある。
以上に例示したとおり、第1実施形態では、圧力室Cが連通路63と循環路72とを介して間接的に循環液室65に連通する。すなわち、圧力室Cと循環液室65とは直接的には連通しない。以上の構成において、圧電素子44の動作により圧力室C内の圧力が変動すると、連通路63内を流動するインクのうちの一部がノズルNから外部に噴射され、残りの一部が連通路63から循環路72を経由して循環液室65に流入する。第1実施形態では、圧電素子44の1回の駆動により連通路63を流通するインクのうち、ノズルNを介して噴射されるインクの量(以下「噴射量」という)が、連通路63を流通するインクのうち循環路72を介して循環液室65に流入するインクの量(以下「循環量」という)を上回るように、連通路63とノズルと循環路72とのイナータンスが選定される。全部の圧電素子44を一斉に駆動した場合を想定すると、複数のノズルNによる噴射量の合計よりも、複数の連通路63から循環液室65に流入する循環量の合計(例えば循環液室65内の単位時間内の流量)のほうが多い、と換言することも可能である。
具体的には、連通路63を流通するインクのうち循環量の比率が70%以上となる(噴射量の比率が30%以下)となるように、連通路63とノズルと循環路72との各々の流路抵抗が決定される。以上の構成によれば、インクの噴射量を確保しながら、ノズルの近傍のインク組成物を効果的に循環液室65に循環させることが可能である。概略的には、循環路72の流路抵抗が大きいほど、循環量が減少する一方で噴射量が増加し、循環路72の流路抵抗が小さいほど、循環量が増加する一方で噴射量が減少する、という傾向がある。
図5に例示されるとおり、第1実施形態のインクジェット記録装置100は循環機構75を具備する。循環機構75は、循環液室65内のインクを液体貯留室Rに供給(すなわち循環)するための機構である。第1実施形態の循環機構75は、例えば、循環液室65からインクを吸引する吸引機構(例えばポンプ)と、インクに混在する気泡や異物を捕集するフィルター機構と、インクの加熱により増粘を低減する加温機構とを具備する(図示略)。循環機構75により気泡や異物が除去されるとともに増粘が低減されたインクが、循環機構75から導入口482を介して液体貯留室Rに供給される。以上の説明から理解される通り、第1実施形態では、液体貯留室R→供給路61→圧力室C→連通路63→循環路72→循環液室65→循環機構75→導入口482→液体貯留室Rという経路でインクが循環する。
これらの経路の中でも、連通路63→循環路72→循環液室65→循環機構75→導入口482が循環帰路に相当する。
図5から理解されるとおり、第1実施形態の循環機構75は、Y方向における循環液室65の両側からインクを吸引する。すなわち、循環機構75は、循環液室65のうちY方向の負側の端部の近傍と循環液室65のうちY方向の正側の端部の近傍とからインクを吸引する。なお、Y方向における循環液室65の一方の端部のみからインクを吸引する構成では、循環液室65の両端部間でインクの圧力に差異が発生し、循環液室65内の圧力差に起因して連通路63内のインクの圧力がY方向の位置に応じて相違し得る。したがって、各ノズルからのインクの噴射特性(例えば噴射量や噴射速度)がY方向の位置に応じて相違する可能性がある。以上の構成とは対照的に、第1実施形態では、循環液室65の両側からインクが吸引されるから、循環液室65の内部における圧力差が低減される。したがって、Y方向に配列する複数のノズルにわたりインクの噴射特性を高精度に近似させることが可能である。ただし、循環液室65内でのY方向における圧力差が特段の問題とならない場合には、循環液室65の一方の端部からインクを吸引する構成も採用され得る。
前述のとおり、循環路72と連通路63とは平面視で重なり、連通路63と圧力室Cとは平面視で重なる。したがって、循環路72と圧力室Cとは平面視で相互に重なる。他方、図5及び図6から理解される通り、循環液室65と圧力室Cとは平面視で相互に重ならない。また、圧電素子44は、X方向に沿って圧力室Cの全体にわたり形成されるから、循環路72と圧電素子44とは平面視で相互に重なる一方、循環液室65と圧電素子44とは平面視で相互に重ならない。以上の説明から理解され通り、圧力室Cまたは圧電素子44は、循環路72に平面視で重なる一方、循環液室65には平面視で重ならない。したがって、例えば圧力室Cまたは圧電素子44が循環路72に平面視で重ならない構成と比較して、液体噴射ヘッド26を小型化しやすいという利点がある。
以上に説明したとおり、第1実施形態では、連通路63と循環液室65とを連通させる循環路72がノズルプレート52に形成される。したがって、ノズルNの近傍のインクを効率的に循環液室65に循環させることが可能である。また、第1実施形態では、第1列L1に対応する連通路63と第2列L2に対応する連通路63とが両者間の循環液室65に共通に連通する。したがって、第1列L1に対応する各循環路72が連通する循環液室と第2列L2に対応する各循環路72が連通する循環液室とを別個に設けた構成と比較して、液体噴射ヘッド26の構成が簡素化される(ひいては小型化が実現される)という利点もある。
――第2実施形態――
第2実施形態に係るインクジェット記録装置を説明する。なお、以下に例示する各形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
図7は、第2実施形態における液体噴射ヘッド26の部分的な分解斜視図であり、第1実施形態で参照した図3に対応する。また、図8は、液体噴射ヘッド26のうち循環液室65の近傍の部分を拡大した平面図及び断面図であり、第1実施形態で参照した図6に対応する。
第1実施形態では、循環路72とノズルNとが相互に離間した構成を例示した。第2実施形態では、図7及び図8から理解されるとおり、循環路72とノズルNとが相互に連続する。すなわち、第1部分P1の1個の循環路72は第1列L1の1個のノズルNに連続し、第2部分P2の1個の循環路72は第2列L2の1個のノズルNに連続する。具体的には、図8に例示されるとおり、各ノズルNの第2区間n2が循環路72に連続する。すなわち、循環路72と第2区間n2とは相互に同等の深さに形成され、循環路72の内周面と第2区間n2の内周面とが相互に連続する。X方向に延在する1個の循環路72の底面にノズルN(第1区間n1)が形成された構成とも換言され得る。具体的には、循環路72の底面のうち中心面Oとは反対側の端部の近傍にノズルNの第1区間n1が形成される。その他の構成は第1実施形態と同様である。例えば、第2実施形態においても、循環路72のうち循環液室65に重なる部分の流路長Laは、循環路72のうち流路形成部30の隔壁部69に重なる部分の流路長Lcよりも長い(La>Lc)。
第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第2実施形態では、各ノズルNの第2区間n2と循環路72とが相互に連続する。したがって、循環路72とノズルNとが相互に離間する第1実施形態の構成と比較して、ノズルNの近傍のインクを効率的に循環液室65に循環させることができるという効果は格別に顕著である。
――第3実施形態――
図9は、第3実施形態における液体噴射ヘッド26のうち循環液室65の近傍の部分を拡大した平面図及び断面図である。図9に例示されるとおり、第3実施形態における第1流路基板32の表面Fbには、前述の第1実施形態と同様の循環液室65のほか、第1部分P1及び第2部分P2の各々に対応する循環液室67が形成される。循環液室67は、連通路63及びノズルNを挟んで循環液室65とは反対側に形成されてY方向に延在する長尺状の有底孔(溝部)である。第1流路基板32の表面Fbに接合されたノズルプレート52により、循環液室65および循環液室67の各々の開口が閉塞される。
第3実施形態の循環路72は、第1部分P1及び第2部分P2の各々において、循環液室65と循環液室67とにわたるようにX方向に延在する溝部である。具体的には、循環路72のうち中心面O側(循環液室65側)の端部は平面視で循環液室65に重なり、循環路72のうち中心面Oとは反対側(循環液室67側)の端部は循環液室67に平面視で重なる。また、循環路72は平面視で連通路63に重なる。すなわち、各連通路63は、循環路72を介して循環液室65及び循環液室67の双方に連通する。
循環路72の底面にノズルN(第1区間n1)が形成される。具体的には、循環路72のうち平面視で連通路63に重なる部分の底面にノズルNの第1区間n1が形成される。第2実施形態と同様に、第3実施形態においても、循環路72とノズルN(第2区間n2)とが相互に連続する、と表現することも可能である。以上の説明から理解されるとおり、第1実施形態及び第2実施形態では循環路72の端部に連通路63およびノズルNが位置するのに対し、第3実施形態では、X方向に延在する循環路72のうちの途中の部分に連通路63及びノズルNが位置する。
以上の説明から理解される通り、第3実施形態では、圧力室C内の圧力が変動すると、連通路63内を流動するインクの一部がノズルNから外部に噴射され、残りの一部が連通路63から循環路72を介して循環液室65及び循環液室67の双方に供給される。循環液室67内のインクは、循環液室65内のインクとともに循環機構75により吸引され、循環機構75により気泡や異物が除去されるとともに増粘が低減されてから液体貯留室Rに供給される。
第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第3実施形態では、循環液室65に加えて循環液室67が形成されるから、第1実施形態と比較して循環量を充分に確保できるという利点がある。なお、図9では、第2実施形態と同様に循環路72とノズルNとを連続させた構成を例示したが、第3実施形態において、第1実施形態と同様に循環路72とノズルNとを相互に離間させることも可能である。
また、第3実施形態において、循環液室65がなく、2つの循環液室67のみとしてもよい。つまり、第1部分P1及び第2部分P2の各々に対応する循環液室67のみを有する構造となる。このような構造の場合には第1部分P1と第2部分P2を循環するインクが混合しないような循環機構を構成することも可能である。
−インク組成物−
――温度応答性高分子――
本実施形態のインク組成物は、循環帰路内でゲル化させるため、下限臨界共溶温度又は上限臨界共溶温度を有する温度応答性高分子を含有する。
本実施形態のインク組成物は、温度応答性高分子を含んでいる。温度応答性高分子とは、所定の温度(臨界溶解温度)を境界として、溶媒と親和して溶解したゾル状態と、溶媒と親和せずに、三次元の網目構造を形成して不溶化したゲル状態と、の相転移挙動を示す化合物である。すなわち、温度応答性高分子を含有させることによって、臨界溶解温度の前後で、ゲル状態とゾル状態との相変化を起こさせることができる。
温度応答性高分子としては、例えば、溶媒に対して、臨界溶解温度以上の温度において不溶化し、臨界溶解温度未満の温度で可溶化する、下限臨界溶解温度を有する温度応答性高分子(以下、「LCST(Lower Critical Solution Temperature)型温度応答性高分子」ともいう)と、臨界溶解温度以下の温度において不溶化し、臨界溶解温度を超えた温度で可溶化する、上限臨界溶解温度を有する温度応答性高分子(以下、「UCST(Upper Critical Solution Temperature)型温度応答性高分子」ともいう)が挙げられる。
温度応答性高分子としては、LCST型及びUCST型のいずれも使用可能である。
例えば、LCST型温度応答性高分子を含有するインク組成物は、下限臨界溶解温度以上の温度とすることでゲル状態となり、下限臨界溶解温度未満の温度ではゾル状態となる。温度応答性高分子の下限臨界溶解温度は、30℃以上であることが好ましく、32℃以上50℃以下であることがより好ましく、32℃以上45℃以下であることがさらに好ましく、32℃以上40℃以下であることがよりさらに好ましく、32℃以上35℃以下であることがさらにより好ましい。温度応答性高分子の下限臨界溶解温度を、上記の範囲とすることにより、下限臨界溶解温度とインク組成物の保管時の環境温度との差を小さくして、インクジェットインクをゲル状態に維持するための温度調節を容易にすることができる。
温度応答性高分子は、インク組成物の溶媒に対して、可溶であることが好ましい。すなわち、本実施形態では、水などの水性媒体に対して可溶な、水溶性の温度応答性高分子を用いることが好ましい。なお、溶剤系のインク組成物のように、油性媒体に温度応答性高分子を配合する場合は、油溶性の温度応答性高分子を用いることが好ましい。
LCST型温度応答性高分子としては、特に限定されないが、例えば、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、又はN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのN−置換(メタ)アクリル酸アミドの重合体、又はこれらの共重合体、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、又はN−(メタ)アクリロイルモルホリンの重合体、又はこれらの共重合体、ポリオキシエチレンラウリルアミン等のポリオキシエチレンアルキルアミン誘導体、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート等のポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル誘導体、(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)(メタ)アクリレート等の(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル)(メタ)アクリレート、又は、これらから選ばれる1種の重合体、又は2種以上の共重合体、(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)アクリレート、(ポリオキシエチレンオレイルエーテル)メタクリレート等のポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、又はこれらから選ばれる1種の重合体、又は2種以上の共重合体、ステアリルアクリレート等の、炭素数18以上25以下のアルキル基を有するアルキルアクリレートから選ばれる1種の重合体、又は2種以上の共重合体、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール部分酢化物、ポリビニルメチルエーテル、(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン)ブロック共重合体が挙げられる。これらの温度応答性高分子は、1種を単独で、又は2種以上を組合せて用いてもよい。
UCST型温度応答性高分子としては、特に限定されないが、例えば、N,N’−ジメチル(アクリルアミドプロピル)アンモニウムプロパンスルホン酸の重合体、ポリエチレンオキシド、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(ウラシルアクリレート)、ポリ(メチルアクリルアミド)/ポリ(N−アセチルアクリルアミド)共重合体、ポリ(N−アクリロイルアスパラギンアミド)、ポリ(N−アクリロイルグルタミンアミド)、ポリ(N−アクリロイルグリシンアミド)、ポリ(N−メチルアクリロイルアスパラギンアミド)、ポリ(リボアデニル酸)が挙げられる。
温度応答性高分子の重量平均分子量は、10,000以上30,000以下であることが好ましく、10,000以上15,000以下であることがより好ましい。重量平均分子量を上記の範囲にすることにより、相転移の温度応答性が向上すると共に、インク組成物の粘度の上昇を抑えることができる。重量平均分子量は、標準ポリスチレンの検量線から、溶媒としてテトラヒドロフランを用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定できる。
以上のLCST型温度応答性高分子の中でも、相転移の温度応答性の鋭敏さから、N−イソプロピルアクリルアミド重合体(LCST:約32℃)、ステアリルアクリレート重合体(LCST:約38℃)、(N−イソプロピルアクリルアミド−N−ジメチルアクリルアミド)共重合体などを用いることが好ましい。
以上のLCST型温度応答性高分子の中でも、相転移の温度応答性の鋭敏さから、N,N’−ジメチル(アクリルアミドプロピル)アンモニウムプロパンスルホン酸が好ましい。
温度応答性高分子の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以上5.0質量%以下であることがさらに好ましく、1.0質量%以上3.0質量%以下であることがよりさらに好ましい。温度応答性高分子の含有量を上記の範囲にすることにより、インク組成物中の顔料等の成分の運動を規制するゲル状態を形成することができる。また、ゾル状態におけるインク組成物の粘度の上昇を抑えて、液体噴射ヘッドの吐出ノズルからの吐出を安定させることができる。
――色材――
本実施形態のインク組成物は、色材を含むことが好ましい。色材は、顔料であっても、染料であってもよい。
顔料は、有機顔料であっても、無機顔料であってもよい。有機顔料としては、特に限定されないが、例えば、アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料等の多環式顔料、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキ顔料、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。無機顔料としては、特に限定されないが、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化クロム等の金属酸化物顔料、カーボンブラックが挙げられる。
顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.(Colour Index Generic Name)ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、153、155、180、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ba))、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101、104、105、106、108、112、114、122、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219、C.I.ピグメントバイオレット19、23、C.I.ピグメントブルー1、2、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36が挙げられる。
黒色用の顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントブラック1、7(カーボンブラック)、11が挙げられる。白色用の顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントホワイト1、4、5、6(二酸化チタン)、6:1、7、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28が挙げられる。
これらの着色用の顔料の他に、パール顔料、メタリック顔料等の光輝顔料を用いてもよい。
インク組成物中での顔料の分散性を高めるために、顔料に表面処理を施してもよい。
顔料の表面処理とは、物理的処理又は化学的処理によって、顔料の粒子表面に、インク組成物の媒体と親和性を有する官能基を導入する方法である。例えば、後述の水系インク組成物に用いる場合は、カルボキシ基、スルホ基等の親水性基を導入することが好ましい。
なお、これらの顔料は、1種を単独で、又は2種以上を組合せて用いてもよい。
インク組成物が顔料を含む場合、顔料の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.1質量%以上30.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上20.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以上15.0質量%以下であることがさらに好ましく、1.5質量%以上10.0質量%以下であることがよりさらに好ましい。顔料の含有量を上記の範囲内とすることにより、被記録媒体などに形成する画像などの発色を確保すると共に、インクジェットインクの粘度上昇や、インクジェットヘッドにおける目詰まりの発生を抑えることができる。
染料としては、特に限定されないが、例えば、酸性染料、塩基性染料等の水溶性染料、分散剤(界面活性剤)を併用する分散染料、反応性染料が挙げられる。これらの染料としては、公知のものが採用可能である。
染料を用いる場合の含有量は、特に限定されないが、インク組成物の全質量に対して、例えば、0.5質量%以上30.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上25.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以上20.0質量%以下であることがさらに好ましい。染料の含有量を上記の範囲内とすることにより、被記録媒体に形成する画像などの発色を確保すると共に、インク組成物の粘度上昇や、ヘッド組成物における目詰まりの発生を抑えることができる。
――分散剤――
インク組成物は、好ましくは分散剤を含有する。
分散剤は、特に限定されないが、例えば、分散樹脂、界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、分散樹脂が好ましい。
分散樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクレート共重合体などのスチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、及びこれらの塩、芳香族スルホン酸塩のホルマリン縮合物が挙げられる。これらの分散剤は、1種を単独で、又は2種以上を組合せて用いてもよい。
顔料は、分散樹脂で被覆された顔料粒子を用いてもよい。
顔料粒子を被覆する方法としては、特に限定されないが、例えば、酸析法、転相乳化法、ミニエマルション重合法が挙げられる。
本実施形態のインク組成物は、水を含む水系インク組成物であっても、硬化型インク組成物であってもよい。以下、それぞれのインク組成物の上述以外の成分について詳細に説明する。
・水系インク組成物
――水――
本実施形態のインク組成物は、好ましくは溶媒として水を含む水系インク組成物である。水としては、特に限定されないが、例えば、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は、超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものが用いられる。また、紫外線照射や過酸化水素の添加などによって滅菌した水を使用すると、インクを長期間保存する場合に、かびやバクテリアの発生を抑制することができる。インク組成物に含まれる水の含有量は、特に限定されないが、インク組成物の全質量に対して、例えば、45質量%以上が好ましく、50質量%以上95質量%以下がより好ましく、55質量%以上90質量%以下がさらに好ましい。
――有機溶剤――
本実施形態のインク組成物は、溶媒として有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤を含有することにより、粘度、表面張力等のインクジェットインクの物性や、被記録媒体に塗布した際の乾燥、浸透等の挙動を制御することができる。
有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、1,2−アルカンジオール類、多価アルコール類、2−ピロリドン類、グリコールエーテル類が挙げられる。
1,2−アルカンジオール類としては、特に限定されないが、例えば、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールが挙げられる。1,2−アルカンジオール類は、被記録媒体に対するインクの濡れ性を高めて、均一に濡らす作用に優れている。そのため、滲みを抑えた画像などを形成することができる。
インク組成物が1,2−アルカンジオール類を含有する場合、1,2−アルカンジオールの含有量は、インク組成物の全質量に対して、1.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以上5.0質量%以下であることがさらに好ましい。
ここで、単に「多価アルコール類」は、1,2−アルカンジオール類以外の多価アルコール類を意味する。
多価アルコール類としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリンが挙げられる。多価アルコール類をインクジェットインクに添加することよって、インクジェットヘッドの吐出ノズル内におけるインクジェットインクの乾燥固化を抑制して、吐出ノズルの目詰まりや吐出不良などを低減することができる。
インク組成物が多価アルコール類を含有する場合、多価アルコール類の含有量は、インク組成物の全質量に対して、2.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以上15.0質量%以下であることがより好ましい。
2−ピロリドン類は、2―ピロリドン骨格を有する化合物である。
2−ピロリドン類としては、置換基を有していない2−ピロリドンの他に、特に限定されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン等の置換基を有する2−ピロリドンが用いられる。2―ピロリドン骨格における置換基としては、例えば、炭素数1以上5以下の飽和又は不飽和の炭化水素基等の有機基が挙げられる。これらの中でも、インク組成物の保存安定性の向上の観点から、2−ピロリドンを用いることが好ましい。
インク組成物が2−ピロリドン類を含有する場合、2−ピロリドン類の含有量は、インク組成物中の凝集物の発生を抑制する観点及び増粘抑制の観点から、インク組成物の全質量に対して、0.5質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上8.0質量%以下であることが好ましい。
グリコールエーテル類としては、特に限定されないが、例えば、アルキレングリコールモノエーテル、アルキレングリコールジエーテルが挙げられる。グリコールエーテル類をインクジェットインクに添加することよって、被記録媒体に対する濡れ性や浸透速度を調整できるため、画像や模様などを鮮明に形成することができる。
アルキレングリコールモノエーテルとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
アルキレングリコールジエーテルとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルが挙げられる。
インク組成物がグリコールエーテル類を含有する場合、グリコールエーテル類の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.05質量%以上、6質量%以下であることが好ましい。
以上、これらの有機溶剤は、1種を単独で、又は2種以上を組合せて用いてもよい。
――定着剤――
本実施形態の水系インク組成物は、定着剤を含有していてもよい。
定着剤は、インク組成物の被記録媒体に対する定着性や、インク組成物が形成する塗膜の強度を向上させる機能を有し、該塗膜の耐擦傷性や、インク組成物を捺染用途に用いた場合に洗濯堅牢性を改善させる効果がある。
定着剤としては、特に限定されないが、水溶性樹脂、樹脂分散体が挙げられる。
水溶性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシメチルセルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、又はこれらの塩が挙げられる。
インク組成物が水溶性樹脂を含有する場合、水溶性樹脂の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。樹脂分散体の含有量を上記範囲内とすることによって、インク組成物の吐出ノズル目詰まりを低減すると共に、インク組成物が形成する塗膜の耐擦傷性を向上させることができる。
樹脂分散体は、水系の樹脂分散体であって、樹脂の微小な粒子を水性媒体中に分散させたものであることが好ましい。樹脂分散体として、樹脂エマルションを用いてもよい。樹脂の分散方法としては、乳化剤(界面活性剤)を利用した強制乳化型、樹脂の分子構造中に親水部(親水基)を導入した自己乳化型などを用いることができる。
樹脂分散体に用いる樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、フルオレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、(塩化ビニル−酢酸ビニル)共重合体、(エチレン−酢酸ビニル)共重合体が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組合せて用いてもよい。
インク組成物が樹脂分散体を含有する場合、樹脂分散体の含有量は、インク組成物の全質量に対して、樹脂固形分換算で、2.0質量%以上25.0質量%以下であることが好ましく、4.0質量%以上15.0質量%以下であることがより好ましく、5.0質量%以上11.0質量%以下であることがより好ましい。樹脂分散体の含有量を上記範囲内とすることによって、インク組成物の吐出ノズル目詰まりを低減すると共に、インク組成物が形成する塗膜の耐擦傷性を向上させることができる。
――その他の成分――
本実施形態のインク組成物には、その他の成分として、界面活性剤、pH調整剤などを添加してもよい。
界面活性剤は、インク組成物の表面張力を低下させて、被記録媒体に対する濡れ性を向上させる機能を有している。界面活性剤としては、特限定されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤が挙げられる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(以上製品名、Air Products and Chemicals, Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上製品名、日信化学工業株式会社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上製品名、川研ファインケミカル株式会社製)が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等のポリシロキサン系化合物が挙げられる。
ポリエーテル変性オルガノシロキサンの市販品としては、例えば、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−348(以上製品名、BYK社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上製品名、信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましい。例えば、BYK−340(以上製品名、BYK社製)が挙げられる。
インク組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以上3.0質量%以下であることがより好ましい。
pH調整剤としては、特に限定されないが、例えば、有機塩基、無機塩基が挙げられる。これらのpH調整剤を用いて、インク組成物のpHを7.5以上、10.5以下の範囲に調整することが好ましい。
有機塩基としては、特に限定されないが、例えば、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリ−iso−プロパノールアミンなどのアルカノールアミン類が挙げられる。
インク組成物が有機塩基を含有する場合、有機塩基の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.1質量%以上3.0質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上2.0質量%以下であることがより好ましい。
無機塩基としては、特に限定されないが、例えば、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物が挙げられる。
インク組成物が無機塩基を含有する場合、無機塩基の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.03質量%以上0.15質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上0.10質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態のインクジェット組成物は、上述した成分の他に、防腐剤、防かび剤、酸化防止剤、キレート化剤等の種々の添加剤を含有していてもよい。
・硬化型インク組成物
――光重合性化合物――
本実施形態の硬化型インク組成物は、例えば、上述の成分以外に、光重合性化合物を含有する。光重合性化合物は、活性光線の照射によって重合又は架橋反応を生じて重合又は架橋し、インク組成物を硬化させる作用を有する化合物であればよい。
光重合性化合物は、モノマー、重合性オリゴマー、プレポリマー又はこれらの混合物のいずれであってもよい。
光重合性化合物としては、特に限定されないが、例えば、ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物が挙げられる。
これらの光重合性化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組合せて用いてもよい。
ラジカル重合性化合物は、不飽和カルボン酸エステル化合物であることが好ましく、(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタアクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基またはメタアクリロイル基を意味し、「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタクリルを意味する。
(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、およびt−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の単官能の(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、およびトリシクロデカンジメタノールジアクリレート等の2官能のアクリレート、ならびに、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、およびペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート等の3官能以上のアクリレートが挙げられる。
(メタ)アクリレートは、変性物であってもよい。変性物である(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、トリエチレンエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどを含むエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、トリプロピレンエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート等のエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性(メタ)アクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のカプロラクタム変性(メタ)アクリレートが挙げられる。
(メタ)アクリレートは、重合性オリゴマーであってもよい。重合性オリゴマーである(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、直鎖(メタ)アクリルオリゴマーが挙げられる。
これらの(メタ)アクリレートは、1種を単独で、又は2種以上を組合せて用いてもよい。
カチオン重合性化合物としては、特に限定されないが、例えば、ビニルエーテル化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、特に限定されないが、例えば、ブチルビニルエーテル、ブチルプロペニルエーテル、ブチルブテニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、エチルエトキシビニルエーテル、アセチルエトキシエトキシビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルおよびアダマンチルビニルエーテル等の単官能のビニルエーテル化合物、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールビニルエーテル、ブチレンジビニルエーテル、ジブチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ノルボルニルジメタノールジビニルエーテル、イソバイニルジビニルエーテル、ジビニルレゾルシンおよびジビニルハイドロキノン等の2官能のビニルエーテル化合物、グリセリントリビニルエーテル、グリセリンエチレンオキサイド付加物トリビニルエーテル(エチレンオサイドの付加モル数6)、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリビニルエーテルエチレンオキサイド付加物トリビニルエーテル(エチレンオキサイドの付加モル数3)、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンヘキサビニルエーテル、又はこれらのエチレンサイド付加物等の3官能以上のビニルエーテル化合物が挙げられる。
エポキシ化合物としては、特に限定されないが、例えば、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェノール(ポリエチレンオキシ)5−グリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ラウリルグリシジルエーテル、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,4−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、ノルボルネンオキシド等の単官能のエポキシ化合物、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の2官能のエポキシ化合物、ポリグリセロールトリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等の3官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
オキセタン化合物としては、特に限定されないが、例えば、2−(3−オキセタニル)−1−ブタノール、3−(2−(2−エチルヘキシルオキシエチル))−3−エチルオキセタン、3−(2−フェノキシエチル)−3−エチルオキセタン等の単官能のオキセタン化合物、キシリレンビスオキセタン、3,3′−(オキシビスメチレン)ビス(3−エチルオキセタン)等の多官能のオキセタン化合物が挙げられる。
これらのカチオン重合性化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組合せて用いてもよい。
インク組成物が光重合性化合物を含む場合、光重合性化合物の含有量は、インク組成物の全質量に対して、1.0質量%以上97.0質量%以下であることが好ましく、30.0質量%以上95.0質量%以下であることがより好ましく、50.0質量%以上95.0質量%以下であることがさらに好ましい。
――光重合開始剤――
硬化型インク組成物は、好ましくは光重合開始剤を含有する。
光重合開始剤は、上記光重合性化合物がラジカル重合性の官能基を有する化合物であるときは、光ラジカル開始剤を含み、上記光重合性化合物がカチオン重合性の官能基を有する化合物であるときは、光酸発生剤を含む。
光ラジカル開始剤としては、特に限定されないが、例えば、アセトフェノン系開始剤、ベンゾイン系開始剤、アシルホスフィンオキシド系開始剤、ベンジル又はメチルフェニルグリオキシエステル、ベンゾフェノン系開始剤、チオキサントン系開始剤、アミノベンゾフェノン系開始剤、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノンが挙げられる。
光酸発生剤としては、特に限定されないが、例えば、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート塩、ヨードニウム(4−メチルフェニル)(4−(2−メチルプロピル)フェニル)ヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、3−メチル−2−ブテニルテトラメチレンスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートが挙げられる。
インク組成物が光重合開始剤を含む場合、光重合開始剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.01質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上3.0質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上1.0質量%以下であることがさらに好ましい。
本実施形態のインク組成物は、上述した成分以外にも、光増感剤、重合禁止剤等のその他の成分をさらに含んでいてもよい。
本実施形態に係るインクジェット記録方法では、上述の本実施形態に係る液体噴射ヘッドを備えるインクジェット記録装置が用いられ、循環帰路内の本実施形態に係るインク組成物をゲル化させる。
より具体的には、本実施形態に係るインクジェット記録方法は、例えば、圧力室からノズルに本実施形態のインク組成物を供給すること(以下、単に「供給工程」ともいう)と、ノズルから本実施形態のインク組成物を吐出すること(以下、単に「吐出工程」ともいう)と、循環帰路から本実施形態のインク組成物の少なくとも一部を圧力室に循環させること(以下、単に「循環工程」ともいう)と、を含む。
なお、記録方法におけるこれらの工程は、同時に実施されてもよいし、任意の順で実施されてもよい。
−供給工程−
供給工程において、本実施形態のインク組成物は、圧力室からノズルに供給される。当該供給においては、インク組成物は、ゾル化させることが好ましい。インク組成物は、ゾル化していることで、ノズルからの噴射に適切な粘度の範囲となり、インクジェット記録を行うことができる。
インク組成物がLCST型温度応答性高分子を含有する場合、圧力室からノズルに供給するときのインク組成物の温度は、温度応答性高分子の下限臨界溶解温度未満であることが好ましく、温度応答性高分子の下限臨界溶解温度よりも3℃低い温度以下であることがより好ましく、温度応答性高分子の下限臨界溶解温度よりも5℃低い温度以下であることがさらに好ましい。当該圧力室からノズルに供給するときのインク組成物の温度は、温度応答性高分子の下限臨界溶解温度よりも20℃低い温度以上であることが好ましく、温度応答性高分子の下限臨界溶解温度よりも15℃低い温度以上であることがより好ましく、温度応答性高分子の下限臨界溶解温度よりも10℃低い温度以上であることがさらに好ましい。
インク組成物がUCST型温度応答性高分子を含有する場合、圧力室からノズルに供給するときのインク組成物の温度は、温度応答性高分子の上限臨界溶解温度超であることが好ましく、温度応答性高分子の上限臨界溶解温度よりも3℃高い温度以上であることがより好ましく、温度応答性高分子の上限臨界溶解温度よりも5℃高い温度以上であることがさらに好ましい。当該圧力室からノズルに供給するときのインク組成物の温度は、温度応答性高分子の上限臨界溶解温度よりも20℃高い温度以上であることが好ましく、温度応答性高分子の上限臨界溶解温度よりも15℃高い温度以上であることがより好ましく、温度応答性高分子の上限臨界溶解温度よりも10℃高い温度以上であることがさらに好ましい。
−吐出工程−
吐出工程において、噴射ヘッドのノズルから本実施形態のインク組成物が吐出される。
本実施形態の吐出工程では、例えば、被記録媒体の面(画像形成領域)に向けて、本実施形態に係るインク組成物をインクジェット方式により吐出し、被記録媒体に付着させて、画像を形成する。なお、吐出条件は、吐出されるインク組成物の物性によって適宜決定すればよい。
――被記録媒体――
被記録媒体として、特に限定されないが、例えば、吸収性又は非吸収性の被記録媒体が挙げられる。
吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、電子写真用紙等の普通紙、インクジェット用紙、一般のオフセット印刷に用いられるアート紙、コート紙、キャスト紙が挙げられる。ここで、上記のインクジェット用紙は、詳細には、シリカ粒子やアルミナ粒子から構成されたインク吸収層、あるいは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーから構成されたインク吸収層を備えたインクジェット専用紙ということもできる。
非吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル(以下、「PVC」ともいう)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック類のフィルム又はプレート、鉄、銀、銅、アルミニウム等の金属類のプレート、又はそれら各種金属を蒸着により製造した金属プレート又はプラスチック製のフィルム、ステンレス、真鋳等の合金のプレートが挙げられる。
―循環工程―
循環工程において、上述の供給工程で供給されたインク組成物の少なくとも一部は、循環帰路から圧力室に循環させる。このように、本実施形態に係るインクジェット記録方法は、インク組成物を循環させることで、液体噴射ヘッド内のインク組成物を流動させ、ヘッドの吐出状態を初期の状態に保ち、優れた連続吐出安定性が得られる。
本実施形態に係るインクジェット記録方法では、循環帰路内で、インク組成物をゲル化させる。なお、温度応答性高分子によりゲル化したインク組成物であっても、流動性を有するので、インク組成物を循環させることはできる。
従来、循環帰路内では、インク組成物中の分散状態が損なわれ、インク組成物が増粘する又はインク組成物中の固形分が沈降するということがあった。これに対して、例えば、従来のインク組成物を用いて、加熱することで粘度を低下させる、振動を加える等の方法が想定され得る。しかしながら、実際に加熱する又は振動を加えると、顔料に付着した分散樹脂が顔料から剥離するため等の要因により、インク組成物の分散特性が損なわれ、更に、増粘する或いは固形分が沈降することがあった。一方、本実施形態では、循環帰路内で、インク組成物をゲル化させることで、インク組成物中の固形分の凝集や沈降を抑制し、顕著に優れた連続吐出安定性が得られる。
インク組成物がLCST型温度応答性高分子を含有する場合、循環帰路内でのインク組成物の温度は、温度応答性高分子の下限臨界溶解温度以上であることが好ましく、温度応答性高分子の下限臨界溶解温度よりも5℃高い温度以上であることがより好ましく、温度応答性高分子の下限臨界溶解温度よりも8℃高い温度以上であることがさらに好ましい。当該圧力室からノズルに供給するときのインク組成物の温度は、温度応答性高分子の下限臨界溶解温度よりも30℃高い温度以下であることが好ましく、温度応答性高分子の下限臨界溶解温度よりも25℃高い温度以下であることがより好ましく、温度応答性高分子の下限臨界溶解温度よりも20℃高い温度以下であることがさらに好ましい。
インク組成物がUCST型温度応答性高分子を含有する場合、圧力室からノズルに供給するときのインク組成物の温度は、温度応答性高分子の上限臨界溶解温度以下であることが好ましく、温度応答性高分子の上限臨界溶解温度よりも5℃低い温度以下であることがより好ましく、温度応答性高分子の上限臨界溶解温度よりも8℃低い温度以下であることがさらに好ましい。当該圧力室からノズルに供給するときのインク組成物の温度は、温度応答性高分子の上限臨界溶解温度よりも20℃低い温度以上であることが好ましく、温度応答性高分子の上限臨界溶解温度よりも15℃低い温度以上であることがより好ましく、温度応答性高分子の上限臨界溶解温度よりも10℃低い温度以上であることがさらに好ましい。
−硬化工程−
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、吐出されたインク組成物を放射線の照射によって硬化させること(以下、単に「硬化工程」ともいう)を含むことが好ましい。
当該工程においては、インク組成物により被記録媒体上に形成された画像が、放射線の照射によって硬化膜となる。
硬化工程において用いる放射線源としては、特に限定されないが、例えば、紫外線発光ダイオード(以下、「UV−LED」ともいう)、紫外線レーザダイオード(以下、「UV−LD」ともいう)、水銀ランプ、メタルハライドランプ、ガス又は固体レーザーが挙げられる。
これらの中でも、小型、高寿命、高効率、低コストであるため、UV−LED、UV−LD)が好ましく、UV−LEDがより好ましい。
放射線の照射は、発光ピーク波長380nm以上400nm以下の光で照射することが好ましい。
照射における放射線源の発光ピーク波長は、365nm以上405nm以下の範囲が好ましく、380nm以上400nm以下の範囲がより好ましい。また、照射エネルギーは、50mJ/cm2以上1000mJ/cm2以下が好ましく、300mJ/cm2以上800mJ/cm2以下がより好ましい。
照射強度は、800mW/cm2以上2000mW/cm2以下とすることが好ましい。本実施形態のインク組成物は上記の照射強度による硬化工程に用いた場合でも優れた硬化性を得ることができるインク組成物である。
本実施形態のインクジェット記録方法は、上記各工程の他、従来のインクジェット記録方法が有する公知の工程を有していてもよい。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1〜3、比較例1〜3
下記表1に記載の各成分を混合溶解し、孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過することによりインク組成物を調製した。
得られたインク組成物について、以下のインクジェット記録方法を実施し、評価を行った。
評価
−連続吐出安定性−
図8に示される液体噴射ヘッドを備えるインクジェット記録装置「PX−G930」(製品名、セイコーエプソン株式会社製)を用いて、循環帰路で、インク組成物を表1に示す循環帰路温度に調整した。循環帰路での温度調整を行わない(ゲル化機構を作動させない)場合は、表1の循環帰路温度は、室温(25℃)である。そして、インク組成物循環「有」の場合は、循環量70%、「無」の場合は、循環量0%で、100個のノズルを備える液体噴射ヘッドを用いて、100,000発連続で、A4サイズの普通紙にインク組成物を室温(25℃)で吐出した。得られた画像を確認し、以下の評価基準で連続吐出安定性を評価した。
(評価基準)
A:詰まったノズルがない
B:詰まったノズルが10個以内である。
C:詰まったノズルが10個超である。
−粒度分布−
インク組成物の調製直後における顔料の分散性の指標として、粒度分布測定を行った。具体的には、粒径測定システム「ELSZ−1000」(製品名、大塚電子株式会社製)を用いて、25℃(ゾル状態)における体積基準粒度分布D1(50%)を測定し、以下の基準に従って評価した。その結果を表1に示した。
A:D1(50%)が、100nm以下である。
B:D1(50%)が、100nm超、300nm以下である。
C:D1(50%)が、300nm超である。
−保存安定性−
インク組成物の保存安定性の指標として、60℃にて5日間放置した後の、粒度分布測定を行った。具体的には、インク組成物を30mLのガラス管瓶に入れて密封して、60℃に温度調節した恒温槽に5日間投入した。次いで、恒温槽から取り出してから25℃まで放冷して、上記の粒度分布の測定と同様の方法で、体積基準粒度分布D2(50%)を測定した。上項の体積基準粒度分布D1(50%)からD2(50%)への変化量△D(50%)を計算し、以下の基準に従って評価した。その結果を表1に示した。なお、比較例1及び比較例2のインク組成物は、温度応答性高分子を含まないため、35℃にて5日間保持してもゲル状態にはならなかった。
A:△D(50%)が、D1(50%)の10%未満である。
B:△D(50%)が、D1(50%)の10%以上、30%未満である。
C:△D(50%)が、D1(50%)の30%以上である。
−粘性−
得られたインク組成物を、レオメーター「MCR−302」(Anton Paar社製)を用いて25℃にてせん断速度10(1/s)で静粘度を測定し、次の評価基準によって評価した。
(評価基準)
A:インク組成物の静粘度が6mPa・s未満。
B:インク組成物の静粘度が6mPa・s以上、10mPa・s未満。
C:インク組成物の静粘度が10mPa・s以上。
―顔料−
P.B.15:3 : C.I.ピグメントブルー15:3
―分散樹脂−
分散樹脂 : 「J−9151」(製品名、BYK社製)
−温度応答性高分子−
LCST型 : ポリ(イソプロピルアクリルアミド)重合体(LCST:32℃)
UCST型 : N,N’−ジメチル(アクリルアミドプロピル)アンモニウムプロパンスルホン酸の重合体(UCST:28℃)
−光重合性化合物−
C−1 : ポリエチレングリコールジアクリレート「NKエステルA−400」(製品名、新中村化学工業株式会社製)
C−2 : エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート「SR−499」(製品名、サートマー社製)
−界面活性剤−
BYK−348 : シリコーン系界面活性剤「BYK−348」(製品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)
TSF4452 : シリコーン系界面活性剤「TSF4452」(製品名、モメンティブ・パフォーマンス社製)
−そのほか−
重合禁止剤:「UV−10」(製品名、Trust&We社製)
重合開始剤:「Irgacure 819」(製品名、BASF社製)
CMC:カルボキシメチルセルロースナトリウム塩
以上、実施例及び比較例によれば、循環帰路を有する液体噴射ヘッドを備えるインクジェット記録装置において、循環帰路内のインク組成物をゲル化させることで、優れた連続吐出安定性が得られることがわかる。具体的には、インク組成物中に温度応答性高分子を含む実施例1又は2のインク組成物を、循環帰路内でゲル化させることで、優れた吐出安定性が得られた。一方、インク組成物中に温度応答性高分子を含まない比較例1又は2のインク組成物は、循環帰路内でゲル化させることができず、吐出安定性だけでなく、保存安定性も良好な結果とはならなかった。
100…液体噴射装置、12…媒体、14…液体容器、20…制御ユニット、22…搬送機構、24…移動機構、242…搬送体、244…搬送ベルト、26…液体噴射ヘッド、28…配線基板、30…流路形成部、32…第1流路基板、34…第2流路基板、42…振動部、44…圧電素子、46…保護部材、48…筐体部、482…導入口、52…ノズルプレート、54…吸振体、61…供給路、63…連通路、65,67…循環液室、H…ヒータ、69…隔壁部、n1…第1区間、n2…第2区間、72…循環路、75…循環機構。

Claims (6)

  1. インク組成物を吐出するノズルと、前記インク組成物が供給される圧力室と、前記圧力室の前記インク組成物を循環可能とする循環帰路と、を備える液体噴射ヘッドを用いるインクジェット記録方法であって、
    前記インク組成物が、下限臨界共溶温度又は上限臨界共溶温度を有する温度応答性高分子を含有し、
    前記循環帰路内の前記インク組成物をゲル化させる、インクジェット記録方法。
  2. 前記圧力室に供給される前記インク組成物をゾル化させる、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記液体噴射ヘッドが、前記循環帰路内の前記インク組成物を加熱又は冷却するゲル化機構をさらに備える、請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記ゲル化機構が、前記下限臨界共溶温度以上に前記インク組成物を加熱する、又は、前記上限臨界共溶温度以下に前記インク組成物を冷却する、請求項3に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記液体噴射ヘッドが、前記循環帰路内の前記ゲル化機構より下流側に循環用ポンプをさらに備える、請求項3又は4に記載のインクジェット記録方法。
  6. インク組成物を吐出するノズルと、
    前記インク組成物が供給される圧力室と、
    前記圧力室の前記インク組成物を循環可能とする循環帰路と、
    前記循環帰路内の前記インク組成物を加熱又は冷却可能な温度調整機構と、
    を備える液体噴射ヘッド。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN114134731A (zh) * 2021-09-06 2022-03-04 苏州大学 一种直喷酸性染料数码印花墨水及其应用

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