本発明のポリウレタン樹脂水性分散体(Q)は、数平均分子量(以下、Mnと略記)が500以上の高分子ポリオール(a)及び有機ポリイソシアネート(b)を必須構成単量体とするイソシアネート基末端プレポリマー(P)と鎖伸長剤(e)と末端封止剤(s)との反応物であるポリウレタン樹脂(U)と水性媒体とを含有する。
Mnが500以上のポリオール(a)としては、ポリエステルポリオール(a1)及びポリエーテルポリオール(a2)及びポリエーテルポリエステルポリオール(a3)等が挙げられる。
ポリエステルポリオール(a1)としては、ポリラクトンポリオール(a11)、ポリカーボネートポリオール(a12)、カルボン酸エステル基と炭酸エステル基とを有するポリエステルポリオール(a13)及び多価アルコールと多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体のみを構成単量体とするポリエステルポリオール(a14)等が挙げられる。
ポリラクトンポリオール(a11)としては、炭素数2〜20の多価アルコールを開始剤として炭素数3〜12のラクトンモノマー(β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、η−カプリロラクトン、11−ウンデカノラクトン及び12−トリデカノイド等)を開環重合させたもの等が挙げられる。ラクトンモノマーは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
炭素数2〜20の多価アルコールとしては、炭素数2〜12の直鎖又は分岐の脂肪族2価アルコール[エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコール等の直鎖アルコール;1,2−、1,3−又は2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,7−ヘプタンジオール、3−メチル−1,7−ヘプタンジオール、4−メチル−1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,8−オクタンジオール及び4−メチルオクタンジオール等の分岐アルコール等];炭素数6〜20の脂環式2価アルコール[1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−又は1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘプタンジオール、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジオキサン、2,7−ノルボルナンジオール、テトラヒドロフランジメタノール、1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等];炭素数8〜20の芳香脂肪族2価アルコール[m−又はp−キシリレンジオール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン及びビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等];炭素数3〜20の3価アルコール[脂肪族トリオール(グリセリン及びトリメチロールプロパン等)等];炭素数5〜20の4〜8価アルコール[脂肪族ポリオール(ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン及びジペンタエリスリトール等);糖(ショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシド及びその誘導体)];等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオール(a12)としては、前記炭素数2〜20の多価アルコールの1種又は2種以上(好ましくは2〜4種)と、低分子カーボネート化合物(例えば、アルキル基の炭素数1〜6のジアルキルカーボネート、炭素数2〜6のアルキレン基を有するアルキレンカーボネート及び炭素数6〜9のアリール基を有するジアリールカーボネート)の1種又は2種以上から、脱アルコール反応させながら縮合させることによって製造されるポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
(a12)に用いられる多価アルコールの内、ポリウレタン樹脂(U)の引張強伸度の観点から好ましいのは、2価アルコールであり、更に好ましいのは炭素数2〜8の脂肪族2価アルコールである。
カルボン酸エステル基と炭酸エステル基とを有するポリエステルポリオール(a13)としては、前記炭素数2〜20の多価アルコール、炭素数2〜10の多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体及び前記低分子カーボネート化合物の反応させたもの並びに前記ポリカーボネートポリオール(a12)に前記炭素数3〜12のラクトンモノマーを開環重合させたもの等が挙げられる。
炭素数2〜10の多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フマル酸及びマレイン酸等)、脂環式ジカルボン酸(ダイマー酸等)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸及びフタル酸等)、3価又はそれ以上のポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)、これらの無水物(無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸及び無水トリメリット酸等)、これらの酸ハロゲン化物(アジピン酸ジクロライド等)、これらの低分子量アルキルエステル(コハク酸ジメチル及びフタル酸ジメチル等)並びこれらの併用が挙げられる。
多価アルコールと多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体のみを構成単量体とするポリエステルポリオール(a14)としては、前記炭素数2〜20の多価アルコールと前記炭素数2〜10の多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とを反応させたもの等が挙げられる。
ポリエーテルポリオール(a2)としては、前記炭素数2〜20の多価アルコールに炭素数2〜12のアルキレンオキサイド(以下、AOと略記)を付加させた化合物等が挙げられる。AOは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよく、後者の場合はブロック付加(チップ型、バランス型、活性セカンダリー型等)でもランダム付加でもこれらの併用系でもよい。
炭素数2〜12のAOとしては、エチレンオキサイド、1,2−又は1,3−プロピレンオキサイド、1,2−,1,3−又は2,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、スチレンオキサイド、α−オレフィンオキサイド及びエピクロルヒドリン等が挙げられる。
ポリエーテルポリオール(a2)の具体例としては、ポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレング)グリコール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシ−3−メチルテトラメチレン)グリコール、テトラヒドロフラン/エチレンオキサイド共重合ジオール及びテトラヒドロフラン/3−メチルテトラヒドロフラン共重合ジオール等が挙げられる。
ポリエーテルポリエステルポリオール(a3)としては、前記ポリエーテルポリオール(a2)と同様の組成のポリエーテルポリオールの1種以上と前記炭素数2〜10の多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体の1種以上とを縮重合させて得られるもの等が挙げられる。
ポリオール(a)の内、耐熱黄変性の観点から好ましいのは、ポリラクトンポリオール(a11)、ポリカーボネートポリオール(a12)及びカルボン酸エステル基と炭酸エステル基とを有するポリエステルポリオール(a13)であり、更に好ましいのはこれらの内のジオールである。ポリオール(a)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ポリオール(a)のMnは、ポリウレタン樹脂(U)の引張強伸度の観点から、500以上、好ましくは500〜10,000、更好ましくは1,000〜5,000、特に好ましくは1,500〜3,000である。
尚、本発明におけるMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、例えば以下の条件で測定することができる。
装置:「Waters Alliance 2695」[Waters社製]
カラム:「Guardcolumn Super H−L」(1本)、「TSKgel SuperH2000、TSKgel SuperH3000、TSKgel SuperH4000(いずれも東ソー株式会社製)を各1本連結したもの」
試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:10μl
流量:0.6ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリエチレングリコール
有機ポリイソシアネート(b)としては、2〜3個又はそれ以上のイソシアネート基を有する炭素数4〜22の鎖状脂肪族ポリイソシアネート(b1)、炭素数8〜18の脂環式ポリイソシアネート(b2)、炭素数8〜26の芳香族ポリイソシアネート(b3)、炭素数10〜18の芳香脂肪族ポリイソシアネート(b4)及びこれらのポリイソシアネートの変性物(b5)等が挙げられる。有機ポリイソシアネート(b)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
炭素数4〜22の鎖状脂肪族ポリイソシアネート(b1)としては、例えばエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略記)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート及び2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートが挙げられる。
炭素数8〜18の脂環式ポリイソシアネート(b2)としては、例えばイソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、水添MDIと略記)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート及び2,5−又は2,6−ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
炭素数8〜26の芳香族ポリイソシアネート(b3)としては、例えば1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(以下、TDI略記)、粗製TDI、4,4’−又は2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略記)、粗製MDI、ポリアリールポリイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート及びm−又はp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートが挙げられる。
炭素数10〜18の芳香脂肪族ポリイソシアネート(b4)としては、例えばm−又はp−キシリレンジイソシアネート及びα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
(b1)〜(b4)のポリイソシアネートの変性物(b5)としては、上記ポリイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロハネート基、ウレア基、ビウレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基又はオキサゾリドン基含有変性物等;遊離イソシアネート基含有量が8〜33重量%、好ましくは10〜30重量%、特に12〜29重量%のもの)、例えば変性MDI(ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI及びトリヒドロカルビルホスフェート変性MDI等)、ウレタン変性TDI、ビウレット変性HDI、イソシアヌレート変性HDI及びイソシアヌレート変性IPDI等のポリイソシアネートの変性物が挙げられる。
有機ポリイソシアネート(b)の内、得られる皮膜の機械的強度及び耐熱黄変性の観点から好ましいのは(b1)及び(b2)、更に好ましいのは(b2)、特に好ましいのはIPDI及び水添MDIである。
ポリウレタン樹脂(U)に用いられる鎖伸長剤(e)には、イソシアネート基末端プレポリマー(P)と反応させる鎖伸長剤(e1)及び必要に応じてイソシアネート基末端プレポリマー(P)合成時に高分子ポリオール(a)及び有機ポリイソシアネート(b)と併用する鎖伸長剤(e2)がある。
イソシアネート基末端プレポリマー(P)と反応させる鎖伸長剤(e1)としては、水、炭素数2〜10のジアミン(例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、トルエンジアミン及びピペラジン)、炭素数2〜10のポリアルキレンポリアミン(例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン及びテトラエチレンペンタミン)並びにヒドラジン及びその誘導体(二塩基酸ジヒドラジド例えばアジピン酸ジヒドラジド等)が挙げられる。
鎖伸長剤(e2)としては前記鎖伸長剤(e1)として例示したものと同様のもの及び前記炭素数2〜20の多価アルコールが挙げられる。
鎖伸長剤(e)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
イソシアネート基末端プレポリマー(P)に水分散性を付与するために、イオン性基と活性水素原子を有する化合物(c)を用いてイオン性基を導入してもよい。(c)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
イオン性基と活性水素原子を有する化合物(c)としては、アニオン性基と活性水素原子を有する化合物(c1)及びカチオン性基と活性水素原子を有する化合物(c2)が挙げられる。
アニオン性基と活性水素原子を有する化合物(c1)としては、例えばアニオン性基としてカルボキシル基を含有し、炭素数が2〜10の化合物[ジアルキロールアルカン酸(例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸及び2,2−ジメチロールオクタン酸)、酒石酸及びアミノ酸(例えばグリシン、アラニン及びバリン)等]、アニオン性基としてスルホン酸基を含有し、炭素数が2〜16の化合物[3−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−1−プロパンスルホン酸及びスルホイソフタル酸ジ(エチレングリコール)エステル等]、アニオン性基としてスルファミン酸基を含有し、炭素数が2〜10の化合物[N,N−ビス(2−ヒドロキシルエチル)スルファミン酸等]等並びにこれらの化合物を中和剤で中和した塩が挙げられる。
(c1)の塩に用いられる中和剤としては、例えばアンモニア、炭素数1〜20のアミン化合物又はアルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウム等)が挙げられる。
炭素数1〜20のアミン化合物としては、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン及びモノエタノールアミン等の1級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン及びジイソプロパノールアミン、メチルプロパノールアミン等の2級アミン並びにトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルモノエタノールアミン及びトリエタノールアミン等の3級アミンが挙げられる。
(c1)の塩に用いられる中和剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
(c1)の塩に用いられる中和剤としては、生成するポリウレタン樹脂水性分散体の乾燥性及び得られる皮膜の耐水性の観点から、25℃における蒸気圧が高い化合物が好適である。このような観点から、(c1)の塩に用いられる中和剤としては、アンモニア、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン及びジメチルエチルアミンが好ましい。
(c1)の内、得られる皮膜の樹脂物性及びポリウレタン樹脂水性分散体の分散安定性の観点から好ましいのは、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸及びこれらの塩であり、更に好ましいのは2,2−ジメチロールプロピオン酸及び2,2−ジメチロールブタン酸のアンモニア又は炭素数1〜20のアミン化合物による中和塩である。
カチオン性基と活性水素原子を含有する化合物(c2)としては、例えばカチオン性基として3級アミノ基を有し、活性水素原子として水酸基を有する化合物、炭素数1〜20の3級アミノ基含有ジオール[N−アルキルジアルカノールアミン(例えばN−メチルジエタノールアミン、N−プロピルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン及びN−メチルジプロパノールアミン)及びN,N−ジアルキルモノアルカノールアミン(例えばN,N−ジメチルエタノールアミン)等]等の化合物を中和剤で中和した塩が挙げられる。
(c2)に用いられる中和剤としては、例えば炭素数1〜10のモノカルボン酸(例えばギ酸、酢酸、プロパン酸等)、炭酸、炭酸ジメチル、硫酸ジメチル、メチルクロライド及びベンジルクロライド等が挙げられる。
(c2)の塩に用いられる中和剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
(c1)及び(c2)に用いられる中和剤は、ウレタン化反応前、ウレタン化反応中、ウレタン化反応後、水分散工程前、水分散工程中又は水分散後のいずれの時期に添加してもよいが、ポリウレタン樹脂(U)の安定性及び水性分散体の安定性の観点から、水分散工程前又は水分散工程中に添加することが好ましい。また、脱溶剤時に揮発した中和剤分を脱溶剤後に追添加してもよく、追添加する中和剤は揮発した中和剤と同一でも異なっていてもよい。
ポリウレタン樹脂(U)に用いられる末端封止剤(s)としては、炭素数1〜10の1価アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、エチルセロソルブ及びカルビトール等)及び炭素数1〜10のモノアミン(モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン及びモノオクチルアミン等のモノ又はジアルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びジイソプロパノールアミン等のモノ又はジアルカノールアミン等)等が挙げられる。
これらの内、プレポリマー(P)の末端イソシアネート基と迅速に反応して生産の再現性を高める観点から好ましいのは炭素数1〜10のモノアミン、更に好ましいのはモノエタノールアミン及びジエタノールアミンである。末端封止剤(s)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体(Q)の製造方法は特に限定されず、例えば下記製造方法[1]又は[2]の製造方法で製造することができる。
製造方法[1]:ポリオール(a)及び有機ポリイソシアネート(b)を必須構成単量体とし、必要に応じてイオン性基と活性水素原子を有する化合物(c)、鎖伸長剤(e2)及び有機溶剤を用いてウレタン化反応を行ってイソシアネート末端プレポリマー(P)を得た後、(c)を用いた場合は中和剤を所定の重量比で混合後、水性媒体に分散させ、(P)と末端封止剤(s)を反応させた後、鎖伸長剤(e1)による伸長反応を行う方法。
製造方法[2]:ポリオール(a)及び有機ポリイソシアネート(b)を必須構成単量体とし、必要に応じてイオン性基と活性水素原子を有する化合物(c)、鎖伸長剤(e2)及び有機溶剤を用いてウレタン化反応を行ってイソシアネート末端プレポリマー(P)を得た後、末端封止剤(s)を反応させて、(c)を用いた場合は中和剤を所定の重量比で混合後、水性媒体に分散させ、鎖伸長剤(e1)による伸長反応を行う方法。
反応時に使用される有機溶剤としては、ケトン系溶剤(例えばアセトン及びメチルエチルケトン)、エステル系溶剤(例えば酢酸エチル)、エーテル系溶剤(例えばテトラヒドロフラン)、アミド系溶剤(例えばN,N−ジメチルホルムアミド及びN−メチルピロリドン)及び芳香族炭化水素系溶剤(例えばトルエン)等が挙げられる。
水性媒体としては、水、水と前記有機溶剤との混合物及び水とアルコール系溶剤(例えばメタノール、エタノール及びイソプロピルアルコール)との混合物等が挙げられる。
反応時に使用される有機溶剤及び水性媒体に使用される有機溶剤は、それぞれ1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
製造方法[1]及び[2]における中和剤は、イソシアネート末端プレポリマー(P)又はその有機溶剤溶液と予め混合することが好ましいが、(P)又はその有機溶剤溶液と共に水性媒体に投入してもよいし、水性媒体に混合しておいてもよい。
製造方法[1]における末端封止剤(s)としては、イソシアネート基に対して水より迅速に反応させるために炭素数1〜10のモノアミンを用いる必要がある。製造方法[2]における末端封止剤(s)としては、炭素数1〜10の1価アルコール及び炭素数1〜10のモノアミンのいずれも用いることができる。
イソシアネート基末端プレポリマー(P)のイソシアネート基含有量は、製造時のプレポリマー(P)の取り扱い性及びポリウレタン樹脂水性分散体(Q)から得られる接着層の接着強度の観点から好ましくは2〜4重量%である。
イソシアネート末端プレポリマー(P)が有するイソシアネート基のモル数に対する末端封止剤(s)のモル数の比率は、ポリウレタン樹脂水性分散体(Q)の乾燥膜の耐熱黄変性の観点から0.25〜0.75である必要があり、好ましくは0.30〜0.70、更に好ましくは0.40〜0.60である。
本発明におけるイソシアネート末端プレポリマー(P)は、ポリオール(a)、有機ポリイソシアネート(b)並びに必要よりイオン性基と活性水素原子を有する化合物(c)、鎖伸長剤(e2)及び有機溶剤を、加熱可能な設備で加熱してウレタン化反応することで得られる。例えば、容器中にイソシアネート末端プレポリマー(P)の原料を仕込んで均一撹拌後、加熱乾燥機や加熱炉で無撹拌下に加熱する方法や、簡易加圧反応装置(オートクレーブ)、コルベン、一軸若しくは二軸の混練機、プラストミル又は万能混練機等で、攪拌又は混練しながら加熱して反応する方法等が挙げられる。なかでも、攪拌又は混練しながら加熱して反応する方法は、得られるイソシアネート末端プレポリマー(P)の均質性が高くなり、得られる皮膜の機械的物性及び耐久性等がより優れる傾向があるため好ましい。
イソシアネート末端プレポリマー(P)を製造する際の反応温度は、(P)のアロハネート基及びビューレット基の含有量低減の観点から、60〜120℃が好ましく、更に好ましくは60〜110℃であり、最も好ましくは60〜100℃である。また、(P)を製造する際の時間は、使用する設備により適宜選択することができるが、一般的に1分〜100時間が好ましく、更に好ましくは3分〜30時間であり、特に好ましくは5分〜20時間である。この範囲であれば、本発明の効果を十分に発揮できる(P)が得られる。
イソシアネート基末端プレポリマー(P)を製造する際にウレタン化反応を促進させるために公知のウレタン化触媒を使用することも可能である。
ウレタン化触媒としては、金属触媒[錫系(トリメチルチンラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド、ジメチルチンジラウレート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエート及びジブチルチンマレエート等)、鉛系(オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、ナフテン酸鉛及びオクテン酸鉛等)、コバルト系(ナフテン酸コバルト等)、ビスマス系{ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート等}及び水銀系(フェニル水銀プロピオン酸塩等)等]、アミン触媒[トリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルヘキシレンジアミン、ジアザビシクロアルケン{1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン}等;ジアルキルアミノアルキルアミン{ジメチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノオクチルアミン及びジプロピルアミノプロピルアミン等]又は複素環式アミノアルキルアミン[2−(1−アジリジニル)エチルアミン及び4−(1−ピペリジニル)−2−ヘキシルアミン等]の炭酸塩又は有機酸塩(ギ酸塩等)等;N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、トリエチルアミン、ジエチルエタノールアミン及びジメチルエタノールアミン等]、並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
ウレタン化触媒は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
反応触媒の使用量は、得られるイソシアネート末端プレポリマー(P)の重量に基づいて、好ましくは1%以下、更に好ましくは0.001〜0.1%である。
イソシアネート末端プレポリマー(P)又はその有機溶剤溶液を水性媒体に分散させるにあたり、(P)又はその有機溶剤溶液の分散性及び水性分散体の安定性並びに(Q)の乾燥膜の機械的強度の観点から、前記イオン性基と活性水素原子を有する化合物(c)を用いることが好ましいが、(c)に代えて又は(c)と共に分散剤(h)を用いて(P)又はその有機溶剤溶液を水性媒体に分散させることもできる。
分散剤(h)としては、ノニオン性界面活性剤(h1)、アニオン性界面活性剤(h2)、カチオン性界面活性剤(h3)、両性界面活性剤(h4)及びその他の乳化分散剤(h5)が挙げられる。(h)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
(h1)としては、例えばAO付加型ノニオン性界面活性剤及び多価アルコール型ノニオン性界面活性剤が挙げられる。AO付加型としては、炭素数10〜20の脂肪族アルコールのEO付加物、フェノールのEO付加物、ノニルフェノールのEO付加物、炭素数8〜22のアルキルアミンのEO付加物及びポリプロピレングリコールのEO付加物等が挙げられ、多価アルコール型としては、多価(3〜8価又はそれ以上)アルコール(炭素数2〜30)の脂肪酸(炭素数8〜24)エステル(例えばグリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート及びソルビタンモノオレエート等)及びアルキル(炭素数4〜24)ポリ(重合度1〜10)グリコシド等が挙げられる。
(h2)としては、例えば炭素数8〜24の炭化水素基を有するエーテルカルボン酸又はその塩[ラウリルエーテル酢酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1〜100)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム等];炭素数8〜24の炭化水素基を有する硫酸エステル又はエーテル硫酸エステル及びそれらの塩[ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1〜100)ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1〜100)ラウリル硫酸トリエタノールアミン及び(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1〜100)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム等];炭素数8〜24の炭化水素基を有するスルホン酸塩[ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等];炭素数8〜24の炭化水素基を1個又は2個有するスルホコハク酸塩;炭素数8〜24の炭化水素基を有するリン酸エステル又はエーテルリン酸エステル及びそれらの塩[ラウリルリン酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1〜100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム等];炭素数8〜24の炭化水素基を有する脂肪酸塩[ラウリン酸ナトリウム及びラウリン酸トリエタノールアミン等];並びに炭素数8〜24の炭化水素基を有するアシル化アミノ酸塩[ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム及びラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム等]が挙げられる。
(h3)としては、例えば第4級アンモニウム塩型[塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム及びエチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等]並びにアミン塩型[ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩及びオレイルアミン乳酸塩等]が挙げられる。
(h4)としては、例えばベタイン型両性界面活性剤[ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン及びラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタインヒドロキシプロピルリン酸ナトリウム等]並びにアミノ酸型両性界面活性剤[β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等]が挙げられる。
(h5)としては、例えばポリビニルアルコール、デンプン及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体並びにポリアクリル酸ソーダ等のカルボキシル基含有(共)重合体及び米国特許第5906704号明細書に記載のウレタン基又はエステル基を有する乳化分散剤[例えばポリラクトンポリオールとポリエーテルジオールをポリイソシアネートで連結させたもの]等が挙げられる。
分散剤(h)は、イソシアネート末端プレポリマー(P)のウレタン化反応前、ウレタン化反応中、ウレタン化反応後、水分散工程前、水分散工程中又は水分散後のいずれの時期に添加してもよいが、イソシアネート末端プレポリマー(P)又はその有機溶剤溶液の分散性及び水性分散体の安定性の観点から、(P)又はその有機溶剤溶液の水分散工程前又は水分散工程中に添加することが好ましい。
(h)の使用量はポリウレタン樹脂(U)の重量に基づいて好ましくは0.01〜20重量%、更に好ましくは0.01〜10重量%、更に好ましくは0.1〜5重量%である。
イソシアネート末端プレポリマー(P)又はその有機溶剤溶液を水中に分散する装置としては、分散能力のある装置(A)であれば使用可能であるが、温度調整及び分散能力等の観点から、回転式分散混合装置(A1)、超音波式分散機(A2)又は混練機(A3)を用いることが好ましく、なかでも分散能力が特に優れる(A1)が更に好ましい。
回転式分散混合装置(A1)の主たる分散原理は、駆動部の回転等によって処理物に外部から剪断力を与えて微粒子化し、分散させるというものである。また、(A1)は、常圧、減圧又は加圧下で稼働させることができる。
回転式分散混合装置(A1)としては、例えばマックスブレンドやヘリカル翼等の一般的な攪拌羽を有する混合装置、TKホモミキサー[プライミクス(株)製]、クレアミックス[エムテクニック(株)製]、フィルミックス[プライミクス(株)製]、ウルトラターラックス[IKA(株)製]、エバラマイルダー[荏原製作所(株)製]、キャビトロン(ユーロテック社製)及びバイオミキサー[日本精機(株)製]等が例示される。
回転式分散混合装置(A1)を用いてイソシアネート末端プレポリマー(P)又はその有機溶剤溶液を分散処理する際の回転数は、分散能力の観点から、好ましくは10〜30000rpm、更に好ましくは20〜20000rpm、更に好ましくは30〜10000rpmである。
超音波式分散装置(A2)の主たる分散原理は、駆動部の振動によって処理物に外部からエネルギーを与えて微粒子化し、分散させるというものである。また、(A2)は、常圧、減圧又は加圧下で稼働させることができる。
超音波式分散装置(A2)としては、池本理化工業(株)、コスモ・バイオ(株)及び(株)ギンセン等から市販されている超音波式分散装置等を使用できる。
超音波式分散装置(A2)を用いてイソシアネート末端プレポリマー(P)又はその有機溶剤溶液を分散処理する際の振動数は、分散能力の観点から、好ましくは1〜100kHz、更に好ましくは3〜60kHz、特に好ましくは10〜30kHzである。
混練機(A3)の主たる分散原理は、(A3)の回転部で処理物を練ることでエネルギーを与えて微粒子化し、分散させるというものである。また(A3)は、常圧、減圧又は加圧下で稼働させることができる。
混練機(A3)としては、二軸押出機[池貝(株)製PCM−30等]、ニーダー[(株)栗本鐵工所製KRCニーダー等]、万能混合機[プライミクス(株)製ハイビスミックス等]及びプラストミル[(株)東洋精機製作所製ラボプラストミル等]等が例示される。
混練機(A3)を用いてイソシアネート末端プレポリマー(P)又はその有機溶剤溶液を分散処理する際の回転数は、分散能力の観点から、好ましくは1〜1000rpm、更に好ましくは3〜500rpm、特に好ましくは10〜200rpmである。
分散装置(A)に供給されるイソシアネート末端プレポリマー(P)又はその有機溶剤溶液と水の重量比は、目的とする水性分散体の樹脂成分含有量によって適宜選択されるが、好ましくは{(P)又はその有機溶剤溶液}/水=10/2〜10/100であり、更に好ましくは10/5〜10/50である。
分散装置(A)にて分散を行う際、必要に応じて、pH調整剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、劣化防止剤及び凍結防止剤等から選ばれる添加剤の1種以上を添加することができる。また、必要に応じて、分散後に脱溶剤、濃縮及び希釈等を行ってもよい。
pH調整剤としては、アルカリ性物質、例えば強塩基(アルカリ金属等)と弱酸(pKaが2.0を越える酸、例えば炭酸及び燐酸)の塩(重炭酸ナトリウム等)及び酸性物質(酢酸等)が挙げられる。
粘度調整剤としては増粘剤、例えば無機系粘度調整剤(ケイ酸ソーダやベントナイト等)、セルロース系粘度調整剤(Mnが20,000以上のメチルセルロール、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシメチルセルロース等)、タンパク質系粘度調整剤(カゼイン、カゼインソーダ及びカゼインアンモニウム等)、アクリル系(Mnが20,000以上のポリアクリル酸ナトリウム及びポリアクリル酸アンモニウム等)及びビニル系粘度調整剤(Mnが20,000以上のポリビニルアルコール等)が挙げられる。
消泡剤としては、長鎖アルコール(オクチルアルコール等)、ソルビタン誘導体(ソルビタンモノオレート等)、シリコーンオイル(ポリメチルシロキサン及びポリエーテル変性シリコーン等)等が挙げられる。
防腐剤としては、有機窒素硫黄化合物系防腐剤及び有機硫黄ハロゲン化物系防腐剤等が挙げられる。
劣化防止剤(紫外線吸収剤及び酸化防止剤等)としてはヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ヒドラジン系、リン系、ベンゾフェノン系及びベンゾトリアゾール系劣化防止剤及び安定化剤等が挙げられる。
凍結防止剤としては、エチレングリコール及びプロピレングリコール等が挙げられる。
粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、劣化防止剤及び凍結防止剤の含有量は、ポリウレタン樹脂水性分散体の重量に基づいてそれぞれ好ましくは5重量%以下、更に好ましくは3重量%以下である。
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体(Q)は更に架橋剤を含有することができる。
架橋剤としてはポリウレタン樹脂(U)に必要に応じて添加したアニオン性基と反応させることのできるカルボジイミド系架橋剤及び末端封止剤(s)にモノ又はジアルカノールアミンを使用した場合に末端水酸基と高温時に反応させることのできるブロックイソシアネート等がある。
イソシアネート末端プレポリマー(P)又はその有機溶剤溶液を水性媒体に分散させた後に、鎖伸長剤(d)及び末端封止剤(s)を反応させる装置としては特に限定されないが、分散装置(A)、フラスコ及びスタティックミキサー等で混合しながら反応させることが好ましい。
ポリウレタン樹脂水性分散体(Q)の固形分濃度(揮発性成分以外の成分の含有量)は、水性分散体の取り扱い易さの観点から、好ましくは20〜65重量%、更に好ましくは25〜55重量%である。固形分濃度は、水性分散体約1gをペトリ皿上にうすく伸ばし、精秤した後、循環式定温乾燥機を用いて130℃で、45分間加熱した後の重量を精秤し、加熱前の重量に対する加熱後の残存重量の割合(百分率)を計算することにより得ることができる。
ポリウレタン樹脂水性分散体(Q)のpHは、好ましくは2〜12、更に好ましくは4〜10である。pHは、pH Meter M−12[堀場製作所(株)製]で25℃で測定することができる。
ポリウレタン樹脂水性分散体(Q)の粘度は、好ましくは10〜100,000mPa・s、更に好ましくは10〜5,000mPa・sである。粘度はBL型粘度計を用いて、25℃の定温下で測定することができる。
ポリウレタン樹脂水性分散体(Q)中のポリウレタン樹脂(U)を含有する粒子の体積平均粒子径(Dv)は、好ましくは0.01〜1μm、更に好ましくは0.02〜0.7μm、特に好ましくは0.03〜0.4μmである。(Dv)が0.01μm以上であると粘度が適正でありハンドリング性が良好であり、1μm以下であると分散安定性がよい。体積平均粒子径(Dv)は光散乱粒度分布測定装置で測定される。
(Q)中の粒子の体積平均粒子径(Dv)は、(U)中のイオン性基、分散剤量及び分散工程で使用する分散機の種類及び運転条件によって調整することができる。従って、(Q)の体積平均粒子径(Dv)を所望の範囲とするためには、分散工程において、後述の回転式分散機、超音波式分散機及び混練機から選択される装置を用いると共に、必要により(U)中に導入されるイオン性基の含有量と、必要により添加する分散剤(h)の量を適宜調整すればよい。
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体(Q)は、液晶ディスプレイのバックライトユニット等に用いられるプリズムシート用部材としてのポリエステルフィルムと樹脂製のプリズムとの易接着層として好適に使用することができる。この場合、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に(Q)の乾燥膜を有する複層フィルムの形で用いられる。
プリズムシート用部材としてのポリエステルフィルムに使用されるポリエステルとしては、ジカルボン酸とグリコールを重縮合させたもの等が挙げられ、ジカルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられ、グリコールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,6−ヘキサングリコール等が挙げられる。この中で好ましいのはテレフタル酸とエチレングリコールとを重縮合させたポリエステルである。
プリズムシート用部材としてのポリエステルフィルムとしては、例えばポリエステルを単軸押出機及び冷却ロールを使用して、無延伸ポリエステルフィルムを作製し、得られた無延伸ポリエステルフィルムをロール又はテンター方式の延伸機により一方向に延伸し、ついで一段目の延伸方向と直交する方向に延伸する方法で製造されることが好ましい。
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に本発明のポリウレタン樹脂水性分散体(Q)の乾燥膜を有する複層フィルムを製造する方法としては、前記ポリエステルフィルムの製造工程中に塗工するインラインコーティング又は製造後のポリエステルフィルムに塗工するオフラインコーティングが挙げられる。(Q)のポリエステルフィルムへの密着性の観点からはインラインコーティングによる製造が好ましい。
(Q)の乾燥膜の膜厚は、密着性及び耐ブロッキング性の観点から0.1〜2μmであることが好ましい。
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、以下において部は重量部を、%は重量%を表す。
<実施例1>
撹拌機及び加熱装置を備えた簡易加圧反応装置にポリオール(a)としてのプラクセル220 57.0部、有機ポリイソシアネート(b)としてのIPDI 31.3部、イオン性基と活性水素原子を含有する化合物(c)としてのジメチロールプロピオン酸2.3部、鎖伸長剤(e2)としての1,4−ブタンジオール3.3部及び有機溶剤(1)としてのアセトン40.2部を仕込んで85℃で12時間攪拌してウレタン化反応を行い、イソシアネート末端プレポリマー(P−1)の70%有機溶剤溶液を製造した。イソシアネート末端プレポリマー(P−1)のイソシアネート基含有量は、3.30%であった。
次いでイソシアネート末端プレポリマー(P−1)の70%有機溶剤溶液を更に有機溶剤(2)としてのアセトン22.4部で60%に希釈した後、中和剤としてのトリエチルアミン1.6部を加え、水105.9部[鎖伸長剤(e1)としての水0.5部と水性媒体としての水105.4部との合計値]を10分かけて撹拌下に投入して(P−1)を分散させ、更に末端封止剤(s)としてのジエタノールアミンの50%水溶液11.1部及び水36.9部を加えた後、鎖伸長剤(e1)としての水による鎖伸長反応と末端封止反応を行いながら減圧下に65℃で8時間かけて有機溶剤(1)及び(2)を留去し、ポリウレタン樹脂(U)と水性媒体とを含有するポリウレタン樹脂水性分散体(Q−1)を得た。
<実施例2〜6及び比較例1〜6>
表1に記載の使用原料及び使用量に変更する以外は実施例1と同様にしてポリウレタン樹脂水性分散体(Q−2)〜(Q−6)及び(Q’−1)〜(Q’−6)を得た。尚、比較例1〜4では末端封止剤(s)による末端封止反応は行わなかった。
<実施例7>
撹拌機及び加熱装置を備えた簡易加圧反応装置にポリオール(a)としてのプラクセル220 57.0部、有機ポリイソシアネート(b)としてのIPDI 31.3部、末端封止剤(s)としてのn−ブチルアルコール3.7部、イオン性基と活性水素原子を含有する化合物(c)としてのジメチロールプロピオン酸2.3部、鎖伸長剤(e2)としての1,4−ブタンジオール3.3部及び有機溶剤(1)としてのアセトン41.5部を仕込んで85℃で12時間攪拌してウレタン化反応を行い、イソシアネート末端プレポリマー(P−7)の70%有機溶剤溶液を製造した。イソシアネート末端プレポリマー(P−7)のイソシアネート基含有量は、1.65%であった。
次いでイソシアネート末端プレポリマー(P−7)の70%有機溶剤溶液を更に有機溶剤(2)としてのアセトン21.6部で60%に希釈した後、中和剤としてのトリエチルアミン1.6部を加え、水106.2部[鎖伸長剤(e1)としての水0.5部と水性媒体としての水105.7部との合計値]を10分かけて撹拌下に投入して(P−7)を分散させ、更に水39.3部を加えた後、鎖伸長剤(e1)としての水による鎖伸長反応を行いながら減圧下に65℃で8時間かけて有機溶剤(1)及び(2)を留去し、ポリウレタン樹脂(U)と水性媒体とを含有するポリウレタン樹脂水性分散体(Q−7)を得た。
表1において商品名で記載した原料の組成は以下の通りである。
・プラクセル220:Mn=2,000のポリカプロラクトンジオール[(株)ダイセル製]
・エタナコール UH−200:Mn=2,000のポリ(1,6−ヘキサンジオール)カーボネートジオール[宇部興産(株)製]
・ニッポラン980R:Mn=2,000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール[日本ポリウレタン工業(株)製]
・PTMG2000:Mn=2,000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール[三菱ケミカル(株)製]
・クラレポリオールP−2010:Mn=2,000のポリ3−メチル−ペンタメチレンアジペート[(株)クラレ製]
実施例1〜7及び比較例1〜6で得られたポリウレタン樹脂水性分散体(Q−1)〜(Q−7)及び(Q’−1)〜(Q’−6)について密着性及び耐熱黄変性を下記評価方法により評価した結果を表1に示す。尚、各ポリウレタン樹脂水性分散体(Q)製造時のイソシアネート基末端プレポリマー(P)のイソシアネート基含有量及びプレポリマー(P)が有するイソシアネート基のモル数に対する末端封止剤(s)のモル数の比率も表1に併記した。
<密着性>
市販のPETフィルム[ルミラーL−100S・東レ(株)製]に、水で固形分を20%に希釈したポリウレタン樹脂水性分散体を7μmの厚みで塗布し、230℃で3分乾燥し、塗膜を作製した。この塗膜面にファインキュアーBCP−34[三洋化成工業(株)製アクリルウレタン系光硬化樹脂]を20μmの厚みで塗布し、紫外線を500mJ/cm2の条件で照射して硬化させた。得られた複層フィルムの硬化膜及びポリウレタン樹脂水性分散体の乾燥膜にJIS K5600−5−6に準拠して100個(10個×10個)のマスができるよう1mm幅にカッターナイフで切込みを入れ、透明感圧付着テープで剥離試験を行い密着性を評価した。評価結果は「試験後に基材上に残ったマス目/100」で表した。
<耐熱黄変性>
ポリウレタン樹脂水性分散体10部を、縦10cm×横20cm×深さ1cmのポリプロピレン製モールドに、乾燥後のフィルム膜厚が200μmになる量を流し込み、室温で12時間乾燥後、循風乾燥機で105℃で3時間加熱乾燥することによってフィルムを作製した。得られたフィルムを5cm角にカットしてガラス板(縦20cm×横20cm×厚み0.5cm)上に置き、循風乾燥機に入れて、140℃で4時間加熱したフィルム(1)と140℃で4時間加熱後、更に250℃で15分間加熱したフィルム(2)を得た。加熱前のフィルム、加熱後のフィルム(1)及び(2)について、日本電色工業(株)製「Spectro Photometer SD5000」を用いて黄色度(YI)を測定し、フィルム(1)又は(2)の黄色度(YI)から加熱前のフィルムの黄色度(YI0)を減じて△YI値を算出して下記の基準により耐熱黄変性を評価した。
<評価基準>
○:加熱前後のΔYI値が30未満
△:加熱前後のΔYI値が30以上60未満
×:加熱前後のΔYI値が60以上