JP2020094146A - ホットメルト接着剤 - Google Patents

Abstract

【課題】耐熱性に優れ、低温から高温まで広い範囲で接着性が良好で、熱安定性にも優れたホットメルト接着剤を提供すること。【解決手段】（Ａ）オレフィン共重合体、（Ｂ）粘着付与樹脂および（Ｃ）ワックスを有し、（Ａ）オレフィン共重合体は（Ａ１）融点が１００〜１４０℃のメタロセン系エチレン／αオレフィン共重合体を含む、ホットメルト接着剤。【選択図】なし

Description

本発明は、ホットメルト接着剤、及びホットメルト接着剤を用いて製造された製品に関する。

ホットメルト接着剤は、無溶剤の接着剤であり、加熱溶融することで被着体に塗工後、冷却することで固化して接着性を発現するので、瞬間接着及び高速接着が可能であるという特徴を有し、例えば、紙加工、木工、衛生材料及び電子分野等の幅広い分野で使用されている。

上記ホットメルト接着剤のベースポリマーとして、その用途に応じて、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体（以下、「ＥＶＡ」ともいう）、エチレン−エチルアクリレート共重合体（以下、「ＥＥＡ」ともいう）等のエチレン／カルボン酸エステル共重合体や、
ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとαオレフィンとの共重合体等のポリオレフィン；
スチレン系ブロック共重合体（例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体及びそれらの水素添加物）等の合成ゴム；
ポリウレタン；等が汎用されている。

これらのホットメルト接着剤のなかで、ポリオレフィンをベースポリマーとしたホットメルト接着剤は、製本、包装、木工や不織布等、様々な分野で利用されている（特許文献１〜２ご参照）。

特許文献１には、ポリオレフィンである半結晶性プロピレンポリマー、非官能化ワックス、及びエチレン−エチレン性不飽和エステルコポリマーを含むホットメルト接着剤が開示されている（[請求項１]、[表１]〜[表６]）。特許文献１のホットメルト接着剤は、[００８９]に記載されているように、パッケージ、バッグ、箱、カートン、ケース、トレー、多層袋製本、紙製品（例えば、ペーパータオル（例えば、多用途タオル）、トイレットペーパー、フェイシャルティシュー、化学雑巾、ティッシュ、タオル（例えば、ペーパータオル）、及びこれらの組み合わせを含む様々な基材を接着する用途で有用である。

しかしながら、特許文献１のホットメルト接着剤は、耐熱性に乏しく、高温での接着性が十分とは言えない。特許文献１の接着剤を使用して段ボール箱を製造した場合、段ボール箱内で保持される内容物が暖かい場合、内容物の熱で接着剤の性能が安定せず、組み立てられた段ボール箱が開いてしまう可能性がある。

特許文献２には、エチレン／炭素数３〜２０のオレフィン共重合体およびエチレンカルボン酸エステル共重合体を含むホットメルト接着剤が記載されている。このホットメルト接着剤は、ホットメルトガンから噴出される際の糸曳を低減したものである（[請求項１]、[表１]〜[表２]）。しかしながら、接着後の耐熱性、高温時の接着性に関しては、特許文献２のホットメルト接着剤も、未だ改善の余地がある。

特表２０１７−５３８８０６号公報 特開２０１２−１７７００９号公報

本発明は上記従来の問題を解決するものであり、本発明の目的は、耐熱性に優れ、低温から高温まで広い範囲で接着性が良好で、熱安定性にも優れたホットメルト接着剤を提供することである。

本発明は、（Ａ）オレフィン共重合体、（Ｂ）粘着付与樹脂および（Ｃ）ワックスを有し、
（Ａ）オレフィン共重合体は（Ａ１）融点が１００〜１４０℃のメタロセン系エチレン／αオレフィン共重合体を含む、ホットメルト接着剤を提供する。

ある一形態においては、（Ａ１）メタロセン系エチレン／αオレフィン共重合体は、エチレン含有率が７．０〜１０．０重量％である。

ある一形態においては、（Ａ１）メタロセン系エチレン／αオレフィン共重合体は、メタロセン系プロピレン／エチレン共重合体である。

ある一形態においては、（Ａ）〜（Ｃ）の総重量１００重量部に対し、（Ａ１）が１０〜７０重量部含まれる。

また、本発明は、被着体である紙における接着部分と、その複数の接着部分に接着し固化した上記いずれかに記載のホットメルト接着剤とを、有してなる紙製品を提供する。

本発明によれば、耐熱性および熱安定性に優れ、広い温度範囲での接着性(特に、高温接着性)に優れたホットメルト接着剤が提供される。例えば、本発明のホットメルト接着剤を用いて製造された紙製品は優れた耐熱性を示す。

よって、本発明のホットメルト接着剤を有する紙製品は、包装（梱包）する内容物の熱の影響を受け難くなる。

本発明のホットメルト接着剤は（Ａ）オレフィン共重合体、（Ｂ）粘着付与樹脂および（Ｃ）ワックスを必須成分として含む。

尚、本明細書において「ホットメルト接着剤」とは、常温で固形であるが、加熱して融
解することで流動性を有し、例えば、基材、被着体等の対象物に塗工することができ、冷
却することで硬化し接着する接着剤をいう。

＜（Ａ）オレフィン共重合体＞
（Ａ）オレフィン共重合体とは、単量体であるオレフィンの共重合体であり、ポリエチレンやポリプロピレン等の単独重合体は含まない。（Ａ）オレフィン共重合体としては、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体、エチレンと他のαオレフィンとの共重合体が挙げられる。αオレフィンとは、αオレフィンとは、炭素−炭素の二重結合α位にある、つまり末端にあるアルケンである。

（Ａ）オレフィン共重合体において、オレフィンとしては、具体的に、エチレン、プロピレン、１−ブテン、１−ペンテン、１−ヘキセン、１−ヘプテン、１−オクテン、１−ノネン、１−デセン、ｃｉｓ−２−ブテン、ｔｒａｎｓ−２−ブテン、イソブチレン、ｃｉｓ−２−ペンテン、ｔｒａｎｓ−２−ペンテン、３−メチル−１−ブテン、２−メチル−２−ブテン及び２，３−ジメチル−２−ブテン等が例示される。

（Ａ）オレフィン共重合体としては、具体的に、エチレン／オクテン共重合体、エチレン／ブテン共重合体、エチレン／ヘキセン共重合体、プロピレン／エチレン共重合体、プロピレン／１−ブテン共重合体、プロピレン／エチレン／１−ブテンの３元共重合体、プロピレン／１−ヘキセン／１−オクテンの３元重合体、プロピレン／１−ヘキセン／メチルペンテンの３元共重合体が挙げられる。これらの共重合体は、単独でも複数種類が混合されても良い。

（Ａ）オレフィン共重合体の市販品の一例として、
ダウ・ケミカル社製のアフィニティＧＡ１９００（商品名）、アフィニティＧＡ１９５０（商品名）、アフィニティＥＧ８１８５（商品名）、アフィニティＥＧ８２００（商品名）、エンゲージ８１３７（商品名）、エンゲージ８１８０（商品名）、エンゲージ８４００（商品名）；
エボニックデグサ社製のベストプラスト７０３（商品名）、ベストプラスト７０８（商品名）；
エクソンモービル社製のビスタマックス２３３０、ビスタマックス６２０２、ビスタマックス８８８０；
イーストマンケミカル社製のＥａｓｔｏｆｌｅｘ Ｅ１０１６ＰＬ-１；
三井石油化学社製のタフマーシリーズ；
プライムポリマー社製のエボリューＳＰ１０７１Ｃ、エボリューＳＰ２０３０、エボリューＳＰ２５３０Ｓ、エボリューＳＰ４０２０；
東ソー社製のニポロンＺ ＨＭ５１０Ｒ、ニポロンＺ ＨＭ３００Ｋ；
三菱ケミカル社製のウィンテックＷＭＧ０３、ウィンテックＷＳＸ０３、ウィンテックＷＭＧ０３ＵＸ、ウィンテックＷＭＧ０２ＵＸ；
等が挙げられる。

（Ａ）オレフィン共重合体については、本発明の目的を損なわない限り、結晶性、非晶性については問われないが、接着性の向上を考慮すると、結晶性オレフィン共重合体を含むのが好ましい。

ここで、「結晶性」とは、通常「結晶性」と呼ばれるものを意味し、より具体的には高分子が規則正しく配列する状態をいう。「非晶性」とは、通常、結晶性ではないことを意味するが、より具体的には、高分子の分子鎖が不規則に配列する状態をいう。

本発明において、（Ａ）オレフィン共重合体は、（Ａ１）融点が１００〜１４０℃のメタロセン系エチレン／αオレフィン共重合体を含んでいる。

本明細書における融点とは、示差走査熱量測定（ＤＳＣ）を用いて測定された値をいう。具体的には、ＳＩＩナノテクノロジー社製のＤＳＣ６２２０（商品名）を用い、アルミ容器に試料を１０ｍｇ秤量し、昇温速度１０℃／ｍｉｎで測定して、融解ピークの頂点の温度を融点という。

メタロセン系エチレン／αオレフィン共重合体とは、メタロセン触媒を用いてエチレンとαオレフィンを重合することで生成される重合体である。メタロセン触媒で生成された重合体は、非常に分子量分布が狭く、結晶性に偏りを生じさせることがない。メタロセン系エチレン／αオレフィン共重合体は、エチレン部位とαオレフィン部位との並び方や、各構成単位の含有割合等について均一なので、接着力低下の原因となる低分子量体が生じる可能性が低くなり、接着力が低下しない。

（Ａ１）メタロセン系エチレン／αオレフィン共重合体の融点が１００〜１４０℃の範囲にあると、耐熱性が向上し、本発明のホットメルト接着剤は、低温時の接着性を維持しつつ、高温時の接着性が非常に優れたものとなる。

（Ａ１）メタロセン系エチレン／αオレフィン共重合体の融点が１００℃より低い場合、ホットメルト接着剤の耐熱性が低下し、高温時の接着性が低くなってしまう。メタロセン系エチレン／αオレフィン共重合体の融点が１４０℃より高い場合、ホットメルト接着剤は、高温時の接着性には優れるが、低温時の接着性が低くなる。

（Ａ１）メタロセン系エチレン／αオレフィン共重合体は、エチレン含有率が７．０〜１０．０重量％であるのが好ましく、特に７．０〜９．０重量％が好ましく、７．０〜８．０重量％最も望ましい。（Ａ１）メタロセン系エチレン／αオレフィン共重合体のエチレン含有率が上記範囲にあることによって、（Ａ１）メタロセン系エチレン／αオレフィン共重合体の融点が高くなり、本発明のホットメルト接着剤の耐熱性は優れたものとなる。

尚、本明細書において、エチレン含有率は、エチレンとαオレフィン重合体の総重量に対するエチレン構造体の割合であり、ＡＳＴＭ法に基づくエクソンモービル法で測定された値とする。

本発明において、（Ａ１）メタロセン系エチレン／αオレフィン共重合体は、メタロセン系エチレン／プロピレン共重合体であるのが好ましい。低融点のポリエチレン単位と高融点のポリプロピレン単位を有し、ポリプロピレン単位を多量に含む（Ａ１）は融点が高くなり、ホットメルト接着剤の耐熱性を向上させるのに寄与する。

（Ａ１）メタロセン系エチレン／αオレフィン共重合体の一例として、実施例で開示されているエクソンモービル社製のビスタマックスＡ（試作品）が挙げられる。

＜（Ｂ）粘着付与樹脂＞
（Ｂ）粘着付与樹脂は、ホットメルト接着剤に通常使用されるものであって、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されることはない。

粘着付与樹脂として、例えば、天然ロジン、変性ロジン、水添ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの３次元ポリマー、水添テルペンのコポリマーの水素化誘導体、ポリテルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体、脂肪族石油炭化水素樹脂、脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、芳香族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、環状脂肪族石油炭化水素樹脂、環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体を例示することができる。これらの粘着付与樹脂は、単独で、又は組み合わせて使用することができる。粘着付与樹脂は、色調が無色〜淡黄色であって、臭気が実質的に無く熱安定性が良好なものであれば、液状タイプの粘着付与樹脂も使用できる。これらの特性を総合的に考慮すると、粘着付与樹脂として、上述の樹脂等の水素化誘導体が好ましい。

粘着付与樹脂として、市販品を用いることができる。そのような市販品として例えば、エクソンモービル社製のＥＣＲ５６００（商品名）、丸善石油化学社製のマルカクリヤーＨ（商品名）、ヤスハラケミカル社製のクリアロンＫ１００（商品名）、荒川化学社製のアルコンＭ１００（商品名）、出光石油化学社製のアイマーブＳ１００（商品名）、アイマーブＹ１３５（商品名）、アイマーブＰ１２５（商品名）、ヤスハラケミカル社製のクリアロンＫ４０９０（商品名）及びクリアロンＫ４１００、エクソンモービル社製のＥＣＲ２３１Ｃ（商品名）、ＥＣＲ１７９ＥＸ（商品名）、ＪＴＸＧエネルギー社製のＴ-ＲＥＺ ＨＣ１０３（商品名）、Ｔ-ＲＥＺ ＨＡ１０３（商品名）、Ｔ-ＲＥＺ ＨＡ１２５（商品名）、Ｔ-ＲＥＺ ＨＢ１０３（商品名）、Ｔ-ＲＥＺ ＨＡ０８５（商品名）、イーストマンケミカル社製のリガライトＲ７１００（商品名）を例示することができる。

＜（Ｃ）ワックス＞
（Ｃ）ワックスとは、常温で固体、加熱すると液体となる重量平均分子量が１５０００未満の有機物である。ワックスは、合成ワックスでも天然ワックスでも差し支えない。

合成ワックスとしては、フィッシャートロプシュワックス、ポリオレフィンワックス（例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレン／ポリプロピレンワックス）等が例示される。

「フィッシャートロプシュワックス」とは、フィッシャートロプシュ法によって合成され、一般的にフィッシャートロプシュワックスとされているものをいう。フィッシャートロプシュワックスは、成分分子が比較的幅広い炭素数分布を持つワックスから成分分子が狭い炭素数分布を持つようにワックスを分取したものである。

フィッシャートロプシュワックスとしては、サゾールワックス社のサゾールＨ１（商品名）、サゾールＣ８０（商品名）、日本精蝋社のＦＴ−１１５（商品名）が市販されている。

天然ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタンワックス、ペトロラタムが挙げられる。

パラフィンワックスとは、減圧蒸留抽出油から分離生成した常温で固形のワックスである。代表的なパラフィンワックスとして、日本精蝋社製のＰａｒａｆｆｉｎ Ｗａｘシリーズが挙げられる。

マイクロクリスタリンワックスとは、減圧蒸留ボトムまたは重質抽出油から分離生成した常温で固形のワックスである。代表的なマイクロクリスタリンワックスとして、日本精蝋社製のＨｉ-Ｍｉｃシリーズが挙げられる。

ペトロラタムとしては、減圧蒸留ボトムから分離生成した常温で半固形のワックスである。代表的なペトロラタムとして、中央油化社製のＣｅｎｔｏｎ ＣＰシリーズが挙げられる。

これらのワックスは、単独で用いられても、複数種類が混合されても良い。

本発明において、（Ｃ）ワックスは、融点が６０〜１５０℃であることが好ましく、８０〜１３０℃であることが望ましく、９０〜１２０℃であることが最も望ましい。（Ｃ）ワックスの融点が高くなることによって、本発明のホットメルト接着剤は、耐熱性および熱安定性が向上し、高温領域の接着強度が優れる。フィッシャートロプシュワックスの融点は、（Ａ１）の融点の定義、測定方法が同様に適用される。

＜ホットメルト接着剤＞
本発明のホットメルト接着剤では、成分（Ａ）〜（Ｃ）の総重量１００重量部に対し、（Ａ１）メタロセン系エチレン／αオレフィン共重合体の配合量は１０〜７０重量部が好ましく、特に３０〜７０重量部が好ましく、３５〜６５重量部が最も望ましい。

（Ａ１）メタロセン系エチレン／オレフィン共重合体の配合量が上記範囲であることによって、ホットメルト接着剤の耐熱性や熱安定性が向上し、低温時の接着が維持されつつ、高温時の接着性を向上させることが可能となる。

本発明のホットメルト接着剤では、成分（Ａ）〜（Ｃ）の総重量１００重量部に対し、（Ｂ）粘着付与樹脂の配合量が２０〜６０重量部であるのが好ましく、特に２０〜５０重量部が好ましく、２０〜４５重量部が最も望ましい。

（Ｂ）粘着付与樹脂の配合量が上記範囲であることによって、ホットメルト接着剤は、初期接着性が向上し、低温から高温までの広い温度領域での接着性が維持される。

本発明のホットメルト接着剤では、成分（Ａ）〜（Ｃ）の総重量１００重量部に対し、（Ｃ）ワックスの配合量が５〜３０重量部であるのが好ましく、特に１０〜２５重量部が好ましく、１５〜２５重量部が最も望ましい。

（Ｃ）ワックスの配合量が上記範囲であることによって、ホットメルト接着剤は、粘度が低くなり、各成分の相溶性が向上することによって、結果的に耐熱性や熱安定性が向上し、低温時の接着が維持されつつ、高温時の接着性を向上する。

本発明に係るホットメルト接着剤は、必要に応じて、更に各種添加剤を含んでもよい。

そのような各種添加剤として、例えば、可塑剤、安定化剤（紫外線吸収剤、酸化防止剤）、微粒子充填剤を例示することができる。

「可塑剤」は、ホットメルト接着剤の溶融粘度低下、柔軟性の付与、被着体への濡れ向上を目的として配合され、エチレン系共重合体に相溶し、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。可塑剤として、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル及び芳香族系オイルを挙げることができる。無色、無臭であるパラフィン系オイルが特に好ましい。

可塑剤として市販品を用いることができる。例えば、Ｋｕｋｄｏｎｇ Ｏｉｌ＆Ｃｈｅｍ社製のＷｈｉｔｅ Ｏｉｌ Ｂｒｏｏｍ３５０（商品名）、出光興産社製のダイアナフレシアＳ３２（商品名）、ダイアナプロセスオイルＰＷ−９０（商品名）、ＤＮオイルＫＰ−６８(商品名)、ＢＰケミカルズ社製のＥｎｅｒｐｅｒＭ１９３０（商品名）、Ｃｒｏｍｐｔｏｎ社製のＫａｙｄｏｌ（商品名）、エッソ社製のＰｒｉｍｏｌ３５２（商品名）を例示することができる。これらの可塑剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。

「安定化剤」とは、ホットメルト接着剤の熱、空気及び光等による分子量低下、ゲル化、着色、臭気の発生等を防止して、ホットメルト接着剤の安定性を向上するために配合されるものであり、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。安定化剤として、例えば、酸化防止剤及び紫外線吸収剤を例示することができる。

「紫外線吸収剤」は、ホットメルト接着剤の耐光性を改善するために使用される。「酸化防止剤」は、ホットメルト接着剤の酸化劣化を防止するために使用される。酸化防止剤及び紫外線吸収剤は、一般的にホットメルト接着剤に使用されるものであり、後述する目的とする紙製品を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。

「酸化防止剤」として、例えばフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤を例示できる。紫外線吸収剤として、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を例示できる。更に、ラクトン系安定剤を添加することもできる。これらは単独又は組み合わせて使用することができる。

安定化剤として、市販品を使用することができる。例えば、住友化学工業（株）製のスミライザーＧＭ（商品名）、スミライザーＴＰＤ（商品名）及びスミライザーＴＰＳ（商品名）、チバスペシャリティーケミカルズ社製のイルガノックス１０１０（商品名）、イルガノックスＨＰ２２２５ＦＦ（商品名）、イルガフォス１６８（商品名）及びイルガノックス１５２０（商品名）、ＡＤＥＫＡのアデカスタブＡＯ−６０（商品名）、城北化学社製のＪＦ７７（商品名）、ＪＰ−６５０（商品名）を例示することができる。これら安定化剤は、単独でも組み合わせて使用できる。

本発明のホットメルト接着剤は、更に、微粒子充填剤を含むことができる。微粒子充填剤は、一般に使用されているものであれば良く、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に限定されることはない。「微粒子充填剤」として、例えば雲母、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、ケイソウ土、尿素系樹脂、スチレンビーズ、焼成クレー、澱粉等を例示できる。これらの形状は、好ましくは球状であり、その寸法（球状の場合は直径）については特に限定されるものではない。

本発明に係るホットメルト接着剤は、一般的に知られているホットメルト接着剤の製造方法を用いて、（Ａ）オレフィン共重合体、（Ｂ）粘着付与樹脂、（Ｃ）ワックス、更に必要に応じて上述の各種添加剤を配合して製造することができる。例えば、上述の成分を所定量配合し、加熱溶融して製造することができる。目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、各成分を加える順序、加熱方法等は、特に制限されるものではない。

＜ホットメルト接着剤を有する製品＞
本発明に係るホットメルト接着剤は、加熱及び溶融され、被着体の接着部分に塗工され、塗工された溶融状態のままで他の被着体に接触され、その後冷却及び固化されて、被着体を接合する。被着体としては、例えば、電子部品、木工、建築材料、衛生材料、紙材料等が挙げられるが、中でも紙、特に板紙が好適である。

尚、板紙とはいわゆる厚紙を意味し、木材パルプ、古紙などを原料とした厚い紙の総称をいう（ＪＩＳ Ｐ ０００１ ４００１）。段ボールは、板紙を波形に成形した中しんの片面又は両面に板紙のライナーを貼ったシートである。ライナーに使用される板紙には、クラフトパルプ及び故紙を原材料とするクラフトライナー（Ｋライナー）及び故紙を原料とするジュートライナー（Ｃライナー）等がある。段ボールの典型例には、ＪＩＳ １５１６に記載された外装用段ボールが含まれる。

本発明に係る紙製品は、被着体である紙材料における接着部分と、その複数の接着部分に接着し、固化したホットメルト接着剤とを有してなる。紙材料は、例えば段ボール箱を組み立てる場合のように単一の部材であってよく、また、工芸品を作製する場合のように複数の部材であってもよい。

紙製品の種類は特に限定されないが、典型的には、製本、カレンダー、段ボール包装容器及びカートン等を例示できる。本発明のホットメルト接着剤の特性を考慮すると、本発明の紙製品として、段ボール包装容器及びカートン等の板紙から構成される紙製品が特に有効である。

ホットメルト接着剤を接着部分に塗工する方法は、目的とする紙製品を得ることができる限り、特に制限されるものではないが、ホットメルトアプリケーターが広く利用される。ホットメルトアプリケーターとして、例えば、ノードソン社製のプロブルーＰ４メルター（商品名）、プロブルーＰ１０メルター（商品名）等を例示することができる。

塗工方法は、例えば、接触塗工、非接触塗工に大別される。「接触塗工」とは、ホットメルト接着剤を塗工する際、噴出機を部材やフィルムに接触させる塗工方法をいい、「非接触塗工」とは、ホットメルト接着剤を塗工する際、噴出機を部材やフィルムに接触させない塗工方法をいう。接触塗工方法として、例えば、スロットコーター塗工及びロールコーター塗工等を例示でき、非接触塗工方法として、例えば、螺旋状に塗工できるスパイラル塗工、波状に塗工できるオメガ塗工やコントロールシーム塗工、面状に塗工できるスロットスプレー塗工やカーテンスプレー塗工、点状に塗工できるドット塗工、線状に塗工できるビード塗工等を例示できる。

ホットメルトアプリケーターで本発明のホットメルト接着剤を塗工する場合（ホットメルトアプリケーターでホットメルト接着剤を地面と水平方向に吐出して、塗工する場合であっても）、ホットメルト接着剤の糸状物が殆ど吐出しなくなる。従って、被着体の接着部分以外の領域又はアプリケーターの噴出口の周辺領域が糸状物で汚れることがない。

以下、本発明を更に詳細に、より具体的に説明することを目的として、実施例及び比較例を用いて本発明を説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら制限するものではない。実施例に示した割合は、特に断らない限り不揮発分の重量を基準にしたものである。

以下にホットメルト接着剤の原料、および配合、評価方法を記載する。

（Ａ）オレフィン共重合体
（Ａ１−１）メタロセン系プロピレン／エチレン共重合体（エチレン含有率：7.1重量％、融点：112℃、190℃溶融粘度：1850mPas、エクソンモービル社製 ビスタマックスＡ（試作品））
（Ａ１−２）メタロセン系エチレン/ヘキセン共重合体（エチレン含有率：5重量％未満、融点：100℃、メルトフローレート：10g/min、(株)プライムポリマー社製 エボリューＳＰ１０７１Ｃ（商品名））
（Ａ１−３）メタロセン系エチレン/ヘキセン共重合体（エチレン含有率：5重量％未満、融点：127℃、メルトフローレート：1.8g/min、(株)プライムポリマー社製 エボリューＳＰ４０２０（商品名））
（Ａ２）メタロセン系プロピレン/エチレン共重合体（エチレン含有率：6.0重量％、融点：97℃、190℃溶融粘度：1200mPas、エクソンモービル社製 ビスタマックス８８８０（商品名））
（Ａ３）メタロセン系エチレン/オクテン共重合体（1-オクテン含有率：35〜37重量％、融点：70℃、メルトフローレート：500g/10min、ダウ・ケミカル社製 アフィニティＧＡ１９５０（商品名））
（Ａ４）メタロセン系エチレン/オクテン共重合体（1-オクテン含有率：30〜40重量％、融点：70℃、メルトフローレート：1250g/10min、ダウ・ケミカル社製 アフィニティＧＡ１８７５（商品名））
（Ａ５）メタロセン系エチレン/オクテン共重合体（1-オクテン含有率：30〜40重量％、融点：68℃、メルトフローレート：660g/10min、ダウ・ケミカル社製 アフィニティＧＡ１０００Ｒ（商品名））
（Ａ６）メタロセン系プロピレン／エチレン系共重合体（融点：142℃、三菱ケミカル社製 ウィンテックＷＭＧ０３（商品名））

（Ｂ）粘着付与樹脂
（Ｂ１）水添脂環式／芳香族共重合系炭化水素樹脂（軟化点：103℃、ＪＸＴＧエネルギー社製 Ｔ−ＲＥＺ ＨＣ１０３（商品名））
（Ｂ２）水添脂環式炭化水素樹脂（軟化点：103℃、ＪＸＴＧエネルギー社製 Ｔ−ＲＥＺ ＨＡ１０３（商品名））
（Ｂ３）水添脂環式炭化水素樹脂（軟化点：125℃、ＪＸＴＧエネルギー社製 Ｔ−ＲＥＺ ＨＡ１２５（商品名））

（Ｃ）ワックス
（Ｃ１）フィッシャートロプシュワックス（融点：108℃、針入度2、サゾール社製 サゾールワックスＨ１（商品名））
（Ｃ２）パラフィンワックス（融点：69℃、針入度12、日本精蝋社製 パラフィン１５５Ｆ（商品名））
（Ｃ３）マイクロスタリンワックス（融点：84℃、針入度12、日本精蝋社製 ハイミック１０８０（商品名））
（Ｃ４）ポリエチレンワックス（融点：109℃、針入度7、三井化学社製 ハイワックス３２０Ｐ（商品名））
（Ｃ５）ポリプロピレンワックス（融点：140/148℃、針入度1以下、三井化学社製 ハイワックスＮＰ１０５（商品名））

（Ｄ）酸化防止剤
（Ｄ１）フェノール系酸化防止剤（ＡＤＥＫＡ社製社製 アデカスタブＡＯ６０（商品名））
（Ｄ２）リン系酸化防止剤（城北化学社製 ＪＰ６５０（商品名））
（Ｄ３）イオウ系酸化防止剤（住友化学社製 スミライザーＴＰＳ（商品名））

これらの成分を表１及び表３に示す割合（重量部）で溶融混合した。万能攪拌機を用いて、各成分を約１５０℃で約１時間かけて溶融混合して、実施例１〜９、及び比較例１〜５のホットメルト接着剤を製造した。実施例及び比較例のホットメルト接着剤について、耐熱性、接着性、熱安定性を下記の方法を用いて評価した。評価結果を表２及び表４に示す。

耐熱性、接着性は、Ｋライナー段ボールにホットメルト接着剤を塗布してサンプルを得た。熱安定性は、ホットメルト接着剤を１８０℃雰囲気下で７２時間保管し、粘度変化率及び炭化物の発生を確認した。以下に各評価の概要について記載する。

＜耐熱性＞
（サンプル作製）
１８０℃に溶融させたホットメルト接着剤を、Ｋライナー段ボールに、塗工量２ｇ／ｍ、セットタイム１０秒、オープンタイム３秒、プレス圧１ｋｇ／２５ｃｍ^２の条件でＫライナー段ボールを貼り合わせた。

（評価方法）
作製したサンプルを７０℃雰囲気下で、応力方向に３００ｇ／２５ｃｍ^２荷重を掛け、貼り合わせたサンプルが剥離するまでの時間を測定した。評価基準は以下のとおりである。

◎ ： 剥離時間が５時間より長い
○ ： 剥離時間が２時間〜５時間
× ： 剥離時間が２時間未満

＜接着性＞
（サンプル作製）
１８０℃に溶融させたホットメルト接着剤を、Ｋライナー段ボールに、塗工量２ｇ／ｍ、セットタイム１０秒、オープンタイム３秒、プレス圧１ｋｇ／２５ｃｍ^２の条件でＫライナー段ボールを貼り合わせた。

（評価方法）
作製したサンプルを７０℃、２３℃、又は−１０℃に設定した恒温槽中に２４時間養生し、その後、その雰囲気下にて、手剥離にて強制剥離した。全接着面積に占めるＫライナー段ボールの破壊の割合を材破率（材料が破壊された割合）とし、その状態を評価した。評価基準は以下のとおりである。

◎ ： 材破率が８０％より高い
○ ： 材破率が６０％〜８０％
△ ： 材破率が４０％以上で、６０％未満
× ： 材破率が４０％未満

＜熱安定性＞
（サンプル作製）
ホットメルト接着剤を７０ｃｃのガラス瓶に２０ｇ入れ、１８０℃恒温槽にて７２時間保管し、１）粘度増減率、２）炭化物の発生について確認した。

（評価方法）
１）粘度増減率
粘度増減率は、ホットメルト接着剤の１８０℃での初期粘度に対し、１週間後のホットメルト接着剤の１８０℃での粘度が増減した割合である。

具体的には、以下の計算式にて求めた。

粘度増減率（％）＝（１８０℃で１週間保管後の溶融粘度）×１００／１８０℃での初期粘度）−１００

評価基準は以下のとおりである。

◎ ： 粘度増減率が５％未満
○ ： 粘度増減率が５％〜１０％
△ ： 粘度増減率が１０％より大きく、２０％より小さい
× ： 粘度増減率が２０％以上

２）炭化物の発生
評価基準は以下のとおりである。

◎ ： 炭化物なし
○ ： 炭化物がわずかにあり
△ ： 炭化物があり
× ： 炭化物が著しい

表２及び表４に示すように、実施例１〜９のホットメルト接着剤は、耐熱性、熱安定性に優れ、広い温度範囲（−１０〜７０℃）での接着性が高い。特に７０℃での接着性が高いので、段ボール等の包装資材で荷物を梱包する際、内容物(荷物)の熱を気にすることなく梱包作業を進めることが可能となる。

これに対し、比較例１〜５のホットメルト接着剤は、耐熱性、熱安定性、接着性のいずれかが著しく劣っている。

比較例１、２のホットメルト接着剤は、成分（Ａ１）を含まず、成分（Ａ）としての融点が低くなっているので、耐熱性が低く、高温時の接着性が低くなっている。

比較例３のホットメルト接着剤は、成分（Ａ１）を含まずに成分（Ａ６）を含むことで、成分（Ａ）としての融点が高くなりすぎ、低温（−１０℃）の接着性が低くなっている。

比較例４のホットメルト接着剤は（Ｂ）粘着付与樹脂を含まず、比較例５のホットメルト接着剤は（Ｃ）ワックスを含まない。従って、比較例４，５のホットメルト接着剤は、常温（２３℃）から低温（−１０℃）にかけて接着性が低くなり、熱安定性にも乏しい。

本発明は、ホットメルト接着剤を提供する。本発明に係るホットメルト接着剤は、紙加工分野全般に利用でき、特に段ボール等の組立や滑り止めに好適である。

Claims (5)

1. （Ａ）オレフィン共重合体、（Ｂ）粘着付与樹脂および（Ｃ）ワックスを有し、
   （Ａ）オレフィン共重合体は（Ａ１）融点が１００〜１４０℃のメタロセン系エチレン／αオレフィン共重合体を含む、ホットメルト接着剤。
2. （Ａ１）メタロセン系エチレン／αオレフィン共重合体は、エチレン含有率が７．０〜１０．０重量％である、請求項１に記載のホットメルト接着剤。
3. （Ａ１）メタロセン系エチレン／αオレフィン共重合体は、メタロセン系プロピレン／エチレン共重合体である、請求項１または２に記載のホットメルト接着剤。
4. （Ａ）〜（Ｃ）の総重量１００重量部に対し、（Ａ１）が１０〜７０重量部含まれる、請求項１〜３のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤。
5. 被着体である紙における接着部分と、その複数の接着部分に接着し固化した請求項１〜４のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤とを、有してなる紙製品。