以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
まず、自動車の前輪を操舵するための操舵装置について説明する。操舵装置1は図1に示すように構成されている。図示しないステアリングホイールに連結されたステアリングシャフト2の下端には図示しないピニオンが設けられ、このピニオンは車体左右方向へ長い図示しないラックと噛み合っている。このラックの両端には前輪を左右方向へ操舵するためのタイロッド3が連結されており、ラックはラックハウジング4に覆われている。そして、ラックハウジング4とタイロッド3との間にはゴムブーツ5が設けられている。
ステアリングホイールを回動操作する際のトルクを補助するため、電動パワーステアリング装置6が設けられている。即ち、ステアリングシャフト2の回動方向と回動トルクとを検出するトルクセンサ7が設けられ、トルクセンサ7の検出値に基づいてラックにギヤ10を介して操舵補助力を付与する電動モータ部8と、電動モータ部8に配置された電動モータを制御する電子制御装置(ECU)部9とが設けられている。電動パワーステアリング装置6の電動モータ部8は、出力軸側の外周部の3箇所が図示しないねじを介してギヤ10に接続され、電動モータ8部の出力軸とは反対側に電子制御部9が設けられている。
電動パワーステアリング装置6においては、ステアリングホイールが操作されることによりステアリングシャフト2がいずれかの方向へ回動操作されると、このステアリングシャフト2の回動方向と回動トルクとをトルクセンサ7が検出し、この検出値に基づいて制御回路部が電動モータの駆動操作量を演算する。この演算された駆動操作量に基づいて電力変換回路部のパワースイッチング素子により電動モータが駆動され、電動モータの出力軸はステアリングシャフト1を操作方向と同じ方向へ駆動するように回動される。出力軸の回動は、図示しないピニオンからギヤ10を介して図示しないラックへ伝達され、自動車が操舵される。これらの構成、作用は既によく知られているので、これ以上の説明は省略する。
繰り返しなるが、図18において、液状シール剤62においては接着性と粘性を備えていることが要因となって、金属カバー側環状先端部64をモータハウジング60の端面側に矢印の方向に押し込んでいく時、金属カバー側環状先端部64の内周面に接する液状シール剤62に引張り力が作用する。
このため、金属カバー側環状先端部64をモータハウジング60の端面側に押し込んでいく時、シール剤収納溝部61に充填されている液状シール剤62が、金属カバー側環状先端部64の内周面の移動に沿って引っ張られて移動する現象が生じる。これによって、シール剤収納溝部61に液状シール剤62が存在しない空間Pが発生し、結果的にシール長が短くなって、塩水等が金属カバー63内に浸入する恐れが高くなり、機械的及び電気的な信頼性を損なうという課題が新たに生じるようになる。
本発明においては、電動モータの回転軸の出力部とは反対側の金属製のモータハウジングの端面部の外周面に形成され、モータハウジングの軸線に直交する径方向の内側に後退する環状溝からなるモータハウジング側環状溝部と、電動モータを制御する電子制御部を覆うカバーの開口端に形成され、モータハウジング側環状溝部の環状溝に外側から対向するカバー側環状先端部とを備え、モータハウジング側環状溝部に金属カバー側環状先端部が対向して配置された状態で、モータハウジング側環状溝部とカバー側環状先端部との間に液状シール剤が充填されていると共に、カバー側環状先端部の内周面には、カバーの径方向で外側に向けて傾斜して拡開する環状傾斜面が形成され、更に環状傾斜面の先端内周側が弧の形状、或いは傾斜形状に形成されている構成とした。
これよれば、カバー側環状先端部の内周面には、カバーの径方向で外側に向けて傾斜して拡開する環状傾斜面が形成され、更に環状傾斜面の先端内周側が弧状、或いは傾斜形状に形成されているので、カバー側環状先端部をモータハウジングの端面側に押し込んでいく時、液状シール剤がカバー側環状先端部の内周面の移動に沿って引っ張られて移動するのが抑制され、液状シール剤が存在しない空間が発生するのを抑制することができる。
以下、本発明の実施形態になる電動パワーステアリング装置の具体的な構成について、図2乃至図15を用いて詳細に説明する。
図2は本実施形態になる電動パワーステアリング装置の全体的な構成を示した図面であり、図3は図2に示す電動パワーステアリング装置の構成部品を分解して斜め方向から見た図面であり、図4から図9は各構成部品の組み立て順序にしたがって各構成部品を組み付けていった状態を示す図面である。したがって、以下の説明では、各図面を適宜引用しながら説明を行うものとする。
尚、図4から図9において、制御回路部と電源回路部の電子部品や電気部品は、図3に示すものと構成が若干異なっているが、機能的には同じ機能である。
図2に示すように、電動パワーステアリング装置を構成する電動モータ部8は、アルミニウム、或いはアルミ合金等のアルミ系金属から作られた筒部を有するモータハウジング11及びこれに収納された図示しない電動モータとから構成され、電子制御部9は、モータハウジング11の軸方向の出力軸とは反対側に配置された、アルミニウム、或いはアルミ合金等のアルミ系金属、或いは鉄系の金属で作られた金属カバー12及びこれに収納された図示しない電子制御組立体から構成されている。
モータハウジング11と金属カバー12は、その対向端面に形成され外周方向の固定領域部において、加締め固定によって一体的に固定される。金属カバー12の内部に収納された電子制御組立体は、必要な電源を生成する電源回路部や、電動モータ部8の電動モータを駆動制御するMOSFET或いはIGBT等からなるパワースイッチング素子を有する電力変換回路や、このパワースイッチング素子を制御する制御回路部からなり、パワースイッチング素子の出力端子と電動モータのコイル入力端子とはバスバーを介して電気的に接続されている。
モータハウジング11とは反対側の金属カバー12の端面には、金属カバー12に形成した孔部からコネクタ端子組立体13が露出している。また、コネクタ端子組立体13は、モータハウジング11に形成した固定部に固定ねじによって固定されている。コネクタ端子組立体13には電力供給用のコネクタ端子形成部13A、検出センサ用のコネクタ端子形成部13B、制御状態を外部機器に送出する制御状態送出用のコネクタ端子形成部13Cを備えている。
そして、金属カバー12に収納された電子制御組立体は、合成樹脂から作られた電力供給用のコネクタ端子形成部13Aを介して電源から電力が供給され、また検出センサ類から運転状態等の検出信号が検出センサ用のコネクタ形成端子部13Bを介して供給され、現在の電動パワーステアリング装置の制御状態信号が制御状態送出用のコネクタ端子形成部13Cを介して送出されている。
図3に電動パワーステアリング装置6の分解斜視図を示している。モータハウジング11には内部に円環状の鉄製のサイドヨーク(図示せず)が嵌合されており、このサイドヨーク内に電動モータ(図示せず)が収納されている。電動モータの出力部14はギヤを介してラックに操舵補助力を付与している。尚、電動モータの具体的な構造は良く知られているので、ここでは説明を省略する。
モータハウジング11はアルミ合金から作られており、電動モータで発生した熱や、後述する電源回路部や電力変換回路部で発生した熱を外部大気に放出するヒートシンク部材として機能している。電動モータとモータハウジング11で電動モータ部8を構成している。
電動モータ部8の出力部14の反対側のモータハウジング11の端面部15には電子制御部ECが取り付けられている。電子制御部ECは、電力変換回路部16、電源回路部17、制御回路部18、コネクタ端子組立体13から構成されている。モータハウジング11の端面部15は、モータハウジング11と一体的に形成されているが、この他に端面部15だけを別体に形成し、ねじや溶接によってモータハウジング11と一体化しても良い。
ここで、電力変換回路部16、電力変換回路部17、制御回路部18は冗長系を構成するものであり、主電子制御部と副電子制御部の二重系を構成している。そして、通常は主電子制御部によって電動モータが制御、駆動されているが、主電子制御部に異常や故障が生じると、副電子制御部に切り換えられて電動モータが制御、駆動されるようになる。
したがって、後述するが、通常は主電子制御部からの熱がモータハウジング11に伝えられ、主電子制御部に異常や故障が生じると、主電子制御部が停止して副電子制御部が作動し、モータハウジング11には副電子制御部からの熱が伝えられる。
ただ、本実施形態では採用していないが、主電子制御部と副電子制御部を合せて正規の電子制御部として機能させ、一方の電子制御部に異常、故障が生じると、他方の電子制御部で半分の能力によって電動モータを制御、駆動することも可能である。この場合、電動モータの能力は半分となるが、いわゆる「パワーステアリング機能」は確保されるようになっている。したがって、通常の場合は、主電子制御部と副電子制御部の熱がモータハウジング11に伝えられる。
電子制御部ECは制御回路部18、電源回路部17、電力変換回路部16、コネクタ端子組立体13から構成されており、端面部15側から離れる方向に向かって、電力変換回路部16、電源回路部17、制御回路部18、コネクタ端子組立体13の順序で配置されている。制御回路部18は電力変換回路部16のスイッチング素子を駆動する制御信号を生成するもので、マイクロコンピュータ、周辺回路等から構成されている。電源回路部17は、制御回路部18を駆動する電源及び電力変換回路部16の電源を生成するもので、コンデンサ、コイル、スイッチング素子等から構成されている。電力変換回路部16は、電動モータのコイルに流れる電力を調整するもので、3相の上下アームを構成するスイッチング素子等から構成されている。
電子制御部ECで発熱量が多いのは、主に電力変換回路部16、電源回路部17であり、電力変換回路部16、電源回路部17の熱は、アルミ合金からなるモータハウジング11から放熱される。この詳細な構成については、図4乃至図9を用いて後述する。
制御回路部18と金属カバー12の間には、合成樹脂からなるコネクタ端子組立体13が設けられており、車両バッテリ(電源)や外部の図示しない他の制御装置と接続されている。もちろん、このコネクタ端子組立体13は、電力変換回路部16、電源回路部17、制御回路部18と接続されていることはいうまでもない。
金属カバー12は、電力変換回路部16、電源回路部17、制御回路部18を収納してこれらを液密的に封止する機能を備えているものであり、本実施形態では加締め固定によってモータハウジング11に固定されている。
次に、図4から図9に基づき各構成部品の構成と組み立て方法について説明する。先ず、図4はモータハウジング11の外観を示しており、図5はその軸方向断面を示している。
図4、図5において、モータハウジング11は、筒状の形態に形成されて側周面部11Aと、側周面部11Aの一端を閉塞する端面部15と、側周面部11Aの他端を閉塞する端面部19とから構成されている。本実施形態では、モータハウジング11は有底円筒状であり、側周面部11Aと端面部15は一体的に形成されている。また、端面部19は、蓋の機能を備えており、側周面部11Aに電動モータを収納した後に側周面部11Aの他端を閉塞する。
また、端面部15の全周面には径方向外側に向けて開口した環状溝を有するモータハウジング側環状溝部35が設けられている。そして、このモータハウジング側環状溝部35に、図9に示す金属カバー12の開口端(以下、金属カバー側環状先端部と表記する)37が対向して配置される。モータハウジング側環状溝部35と金属カバー12の金属カバー側環状先端部37の間の部分は、いわゆる液状シール剤によって液密的に接合される。
図5にあるように、モータハウジング11の側周面部11Aの内部には、鉄心にコイル20が巻回されたステータ21が嵌合されており、このステータ21の内部に、永久磁石を埋設したロータ22が回転可能に収納されている。ロータ22には回転軸23が固定されており、一端は出力部14となり、他端は回転軸23の回転位相や回転数を検出するための回転検出部24となっている。回転検出部24には永久磁石が設けてあり、端面部15に設けた貫通孔25を貫通して外部に突き出している。そして、図示しないGMR素子等からなる感磁部によって回転軸23の回転位相や回転数を検出するようになっている。
図4に戻って、回転軸23の出力部14とは反対側に位置する端面部15の面には電力変換回路部16(図3参照)、電源回路部17(図3参照)の放熱部15A、15Bが形成されている。端面部15の四隅には、基板/コネクタ固定凸部26が一体的に植立されており、内部にねじ穴が形成されている。
基板/コネクタ固定凸部26は後述する制御回路部18の基板、及びコネクタ端子組立体13を固定するために設けられている。また、後述する電力変換用放熱領域15Aから植立した基板/コネクタ固定凸部26には、これも後述する電源用放熱領域15Bと軸方向で同じ高さの基板受け部27が形成され、基板受け部27には、ねじ孔が形成されている。この基板受け部27は後述する電源回路部17のガラスエポキシ基板31を載置、固定するためのものである。
端面部15を形成する、回転軸23と直交する径方向の平面領域は2分割されている。1つはMOSFET等のパワースイッチング素子よりなる電力変換回路部16が取り付けられる電力変換用放熱領域15Aを形成し、もう1つは電源回路部17が取り付けられる電源用放熱領域15Bを形成している。本実施形態では、電力変換用放熱領域15Aの方が電源用放熱領域15Bより面積が大きく形成されている。これは、上述したように二重系を採用しているため、電力変換回路部16の設置面積を確保するためである。
そして、電力変換用放熱領域15Aと電源用放熱領域15Bは、軸方向(回転軸23が延びる方向)に向けて高さが異なる段差を有している。つまり、電源用放熱領域15Bは、電動モータの回転軸23の方向で見て、電力変換用放熱領域15Aに対して離れる方向に段差を有して形成されている。この段差は、電力変換回路部16を設置した後に電源回路部17を設置した場合に、電力変換回路部16と電源回路部17が夫々干渉しない長さに設定されている。
電力変換用放熱領域15Aには、3個の細長い矩形の突状放熱部28が形成されている。この突状放熱部28は後述する二重系の電力変換回路部16が設置される。また、突状放熱部28は、電動モータの回転軸23の方向で見て電動モータから離れる方向に突出して延びている。
また、電源用放熱領域15Bは平面状であって、後述する電源回路部17が設置される。したがって、突状放熱部28は電力変換回路部16で発生した熱を端面部15に伝熱する放熱部として機能し、電源用放熱領域15Bは電源回路部17で発生した熱を端面部15に伝熱する放熱部として機能する。
尚、突状放熱部28は省略することができ、この場合は電力変換用放熱領域15Aが電力変換回路部16で発生した熱を端面部15に伝熱する放熱部として機能する。ただ、本実施形態では、突状放熱部28に電力変換回路部16の金属基板を摩擦撹拌接合によって溶着して確実な固定を図っている。
このように、本実施形態になるモータハウジング11の端面部15においては、ヒートシンク部材を省略して軸方向の長さを短くできるようになる。また、モータハウジング11は十分な熱容量を有しているので、電源回路部17や電力変換回路部16の熱を効率よく外部に放熱することができるようになる。
次に、図6は電力変換回路部16を突条放熱部28(図4参照)に設置した状態を示している。図6にある通り、電力変換用放熱領域15Aに形成された突状放熱部28(図4参照)の上部には二重系よりなる電力変換回路部16が設置されている。電力変換回路部16を構成するスイッチング素子は金属基板(ここではアルミ系の金属を使用している)に載置され、放熱されやすく構成されている。そして、金属基板は突状放熱部28に摩擦撹拌接合によって溶着されている。
したがって、金属基板は突状放熱部28(図4参照)に強固に固定され、またスイッチング素子で発生した熱を効率良く突状放熱部28(図4参照)に伝熱させることができる。突状放熱部28(図4参照)に伝えられた熱は電力変換用放熱領域15Aに拡散され、更にモータハウジング11の側周面部11Aに伝熱されて外部に放熱される。ここで、上述した通り、電力変換回路部16の軸方向の高さは、電源用放熱領域15Bの高さより低くなっているので、後述する電源回路部17と干渉することはない。
このように、電力変換用放熱領域15Aに形成された突状放熱部28の上部に電力変換回路部16が設置されている。したがって、電力変換回路部16のスイッチング素子で発生した熱を効率良く突状放熱部28に伝熱させることができる。更に、突状放熱部28に伝えられた熱は電力変換用放熱領域15Aに拡散され、モータハウジング11の側周面部11Aに伝熱されて外部に放熱されるようになる。
次に、図7は電力変換回路部16の上から電源回路部17を設置した状態を示している。図7にある通り、電源用放熱領域15Bの上部には電源回路部17が設置されている。電源回路部17を構成するコンデンサ29やコイル30等はガラスエポキシ基板31に載置されている。電源回路部17も二重系が採用されており、図からわかるように、夫々対称にコンデンサ29やコイル30等からなる電源回路が形成されている。尚、ガラスエポキシ基板31には、電力変換回路16のスイッチング素子以外のコンデンサ等の電気素子が載置されている。
このガラスエポキシ基板31の電源用放熱領域15B(図6参照)側の面は、電源用放熱領域15Bと接触するようにして端面部15に固定されている。固定方法は、図7にあるように、基板/コネクタ固定凸部26の基板受け部27に設けられたねじ穴に図示しない固定ねじによって固定されている。また、電源用放熱領域15B(図6参照)に設けられたねじ穴にも図示しない固定ねじによって固定されている。
尚、電源回路部17がガラスエポキシ基板31で形成されているため、両面実装が可能となっている。そして、ガラスエポキシ基板31の電源用放熱領域15B(図6参照)側の面には、図示しないGMR素子やこれの検出回路等からなる回転位相、回転数検出部が実装され、回転軸23(図5参照)に設けた回転検出部24(図5参照)と協働して、回転の回転位相や回転数を検出するようになっている。
このように、ガラスエポキシ基板31は電源用放熱領域15B(図6参照)に接触するようにして固定されているので、電源回路部17で発生した熱を効率良く電源用放熱領域15B(図6参照)に伝熱させることができる。電源用放熱領域15B(図6参照)に伝えられた熱は、モータハウジング11の側周面部11Aに拡散して伝熱されて外部に放熱される。ここで、ガラスエポキシ基板31と電源用放熱領域15B(図6参照)の間は、熱伝達性の良い接着剤、放熱グリース、放熱シートのいずれか1つを介在させることで、更に熱伝達性能を向上させることができる。
このように、電源用放熱領域15Bの上部には電源回路部17が設置されている。電源回路部17の回路素子が載置されたガラスエポキシ基板31の電源用放熱領域15B側の面は、電源用放熱領域15Bと接触するようにして端面部15に固定されている。したがって、電源回路部17で発生した熱を効率良く電源用放熱領域15Bに伝熱させることができる。電源用放熱領域15Bに伝えられた熱は、モータハウジング11の側周面部11Aに拡散して伝熱されて外部に放熱されるようになる。
次に、図8は電源回路部17の上から制御回路部18を設置した状態を示している。図8にある通り、電源回路部17の上部には制御回路部18が設置されている。制御回路部18を構成するマイクロコンピュータ32や周辺回路33はガラスエポキシ基板34に載置されている。制御回路部18も二重系が採用されており、図からわかるように、夫々対象にマイクロコンピュータ32や周辺回路33からなる制御回路が形成されている。尚、マイクロコンピュータ32や周辺回路33は、ガラスエポキシ基板34の電源回路17側の面に設けられていても良い。
このガラスエポキシ基板34は、図8にあるように、基板/コネクタ固定凸部26(図7参照)の頂部に設けられたねじ穴にコネクタ端子組立体13によって挟まれる形態で図示しない固定ねじによって固定されており、電源回路部17(図7参照)のガラスエポキシ基板31と制御回路部18のガラスエポキシ基板34の間は、図7に示す電源回路部17のコンデンサ29やコイル30等が配置される空間となっている。
次に、図9は制御回路部18の上からコネクタ端子組立体13を設置した状態を示している。図9にある通り、制御源回路部18の上部にはコネクタ端子組立体13が設置されている。そして、コネクタ端子組立体13は基板/コネクタ固定凸部26の頂部に設けられたねじ穴に制御回路部18を挟み込むようにして固定ねじ36によって固定されている。この状態で、図3に示すようにコネクタ端子組立体13が電力変換回路部16、電源回路部17、制御回路部18と接続されている。
更にこの後に金属カバー12の金属カバー側環状先端部37が、モータハウジング11のモータハウジング側環状溝部35を外側から覆うようにして配置され、金属カバー12の外周方向に沿って設けられた加締め固定部によって固定される。
図10に示す通り、この加締め固定部38は、金属カバー12の外周において、回転軸23の軸線を中心にして、ほぼ120°間隔に形成されている。図10は、モータハウジング11と金属カバー12が加締め固定によって固定された状態の電動パワーステアリング装置6の外観を示している。尚、図11は金属カバー12がモータハウジング11の端面部15に固定される前の断面を示している。
図10、図11において、金属カバー12の外周面には、複数(3個)の加締め固定部38が形成されている。この加締め固定部38は、モータハウジング11の端面部15の全周面に形成したモータハウジング側環状溝部35からコネクタ端子組立体13側に向けて軸方向に延びた、電力変換用放熱領域15A、電源用放熱領域15Bを形成する固定壁39に設けられた加締め溝、或いは加締め孔等からなる加締め凹部40に、金属カバー12の壁面が押し込み工具によって押し込まれて塑性変形して加締められることで形成されている。金属カバー12の軸方向の位置決めは、コネクタ組立体13を利用して行われており、金属カバー12の軸方向位置が決まった状態で、金属カバー12の壁面が押し込み工具によって加締め凹部40に押し込まれて加締められるようになっている。
また、金属カバー12の金属カバー側環状先端部37が配置される、モータハウジング側環状溝部35によって形成される空間には、液密用の液状シール剤41が隙間なく充填される。したがって、加締め固定部38と金属カバー12の金属カバー側環状先端部37の間には液密用のシール領域が形成されるので、塩水等はシール領域で浸入が阻止される。このため、加締め固定部38には塩水等が浸入しないので、加締め固定部38が腐食するのが抑制されて、機械的な信頼性を向上することが可能となる。更には、電子制御部9への塩水等の浸入が抑制されるので電気的な信頼性を併せて向上することが可能となる。
次に、金属カバー側環状先端部37とモータハウジング側環状溝部35の接合領域付近の更に詳細な構成について、図12、図13を用いて説明する。
図12において、金属カバー12の金属カバー側環状先端部37の最先端の外周径Dcとモータハウジング11の端面部15の外周径Dhは、ほぼ同じ半径とされており、それぞれの外周面は見掛け上では同一面(面一)に形成されている。そして、モータハウジング11の端面部15の外周面に形成されたモータハウジング側環状溝部35は、回転軸23(図11参照)の軸線と同一であるモータハウジング11の軸線に直交する半径方向で内側に、固定壁39から所定距離Lだけ後退した(内側に凹んでいる)形状に形成されている。
一方、金属カバー12の金属カバー側環状先端部37は、開口面が外側に向けて折り曲げ加工によって拡開されており、金属カバー側環状先端部37の内周面には、金属カバー12の径方向で外側に向けて傾斜して拡開する環状傾斜面37INが形成されている。この環状傾斜面37INの折り曲げ始点37Sは、モータハウジング側環状溝部35の図面上で上側の壁面35U付近から折り曲げられて拡開されている。
そして、図11にある通り液状シール剤41は、金属カバー12が取り付けられる前に、モータハウジング側環状溝部35に充填されるように塗布される。ここで、上述した通り、液状シール剤41は接着性と粘性を備えており、金属カバー側環状先端部37をモータハウジング11の端面部15の方向に押し込んでいく時、金属カバー側環状先端部37の内周面である環状傾斜面37INに接する液状シール剤41に引っ張り力が作用する。このため、モータハウジング側環状溝部35に充填されている液状シール剤41が、金属カバー側環状先端部37の環状傾斜面37INの移動に沿って引っ張られて移動する現象が生じる。
しかしながら、本実施形態では、金属カバー側環状先端部37の内周面には、金属カバー12の径方向で外側に向けて傾斜して拡開する環状傾斜面37INが形成されていることで、液状シール剤41と接触して生じる引っ張り力が、矢印で示しているように、少なくとも環状傾斜面37INに沿った方向と、金属カバー12の押し込み方向と、径方向とに分散されるようになる。このため、液状シール剤41が金属カバー側環状先端部37の環状傾斜面37INの移動に沿って引っ張られても、その荷重が分散されるので、液状シール剤41の移動による空間が形成されるのが抑制されることになる。
このように、金属カバー側環状先端部37をモータハウジング11の端面部15の側に押し込んでいく時、モータハウジング側環状溝部35に充填されている液状シール剤41が、金属カバー側環状先端部37の環状傾斜面37INの移動に沿って引っ張られて移動する現象が抑制される。これによって、モータハウジング側環状溝部35に液状シール剤41が存在しない空間が発生し難くなり、シール長が長くなることで、塩水等が金属カバー12内に浸入する恐れが抑制され、結果的に機械的及び電気的な信頼性を向上することができるようになる。
ここで、図13に示すように、本実施形態になる金属カバー12の金属カバー側環状先端部37の環状傾斜面37INの傾斜角θは、好ましくは5°〜9°の範囲に決められていれば十分に液状シール剤41を残存させることができる。
そして、実際にモータハウジング側環状溝部35の軸方向の長さで、どの程度の割合で液状シール剤41が金属カバー側環状先端部37の環状傾斜面37INと接触しているかを測定した。この場合、金属カバー12を周方向で等間隔に8分割して、それぞれの部分での接着長さの割合(接着長さ/モータハウジング側環状溝部35の軸方向の長さ)を求めて平均化した。
図18に示す従来の構造においては、接着長さの割合は約43%であったのに対して、環状傾斜面37INの傾斜角θが5°の場合は約81%、7°の場合は約89%、9°の場合は約92%であった。したがって、若干の余裕を見て環状傾斜面37INの傾斜角θは、4°〜12°の範囲に決められていれば、充分であると見做せる。
ただ、このような実施形態においては、次に述べるような課題も想定されるので、これに対する対策が重要である。
図14に示している通り、金属カバー側環状先端部37の先端面37Tの全面が、回転軸23の軸線23Cに直交する面に形成されている。このため、先端面37Tの面が、液状シール剤41に対して液状シール剤41を押し出していくことになり、結果的に金属カバー側環状先端部37の環状傾斜面37INと液状シール剤41の接着面の距離が短くなるという現象を生じることになる。
このような現象によって、環状傾斜面37INと液状シール剤41の接着面の距離が短くなるのを抑制するために、図15に示すように、カバー側環状先端部37の先端側の内周面には、金属カバー12の径方向で外側に向けて傾斜して拡開する環状傾斜面37INが形成され、更に環状傾斜面37INの先端内周側が弧状に形成されている。
図15において、金属カバー12の金属カバー側環状先端部37は、外側に向けて湾曲するように折り曲げられており、環状傾斜面37INは、直線部37Lと弧状部37Cとから形成されている。弧状部37Cは直線部37Lより先端側に形成されており、この弧状部37Cは、液状シール剤41側に向かって突出する形状とされている。
このような形状とされているので、金属カバー12の金属カバー側環状先端部37を、モータハウジング11のモータハウジング側環状溝部35に組み込んでいく過程で、弧状部37Cに液状シール剤41が接触するようになる。この時、弧状部37Cと液状シール剤41の間では摩擦が少なくなって、液状シール剤の押し出し量を少なくでき、液状シール剤41の接着面の距離が短くなるという現象を抑制することができる。
また、金属カバー側環状先端部37の折り曲げられた部分は、モータハウジング11の端面部15の外周より外側に張り出すので、モータハウジング11の端面部15の外周と同じ面(面一)になるように、張り出した部分を切断して面一面37Eとしている。これによって、この種の電動駆動装置の大径化を避けることが可能となる。
このように、金属カバー側環状先端部37をモータハウジング11の端面部15の側に押し込んでいく時、モータハウジング側環状溝部35に充填されている液状シール剤41が、金属カバー側環状先端部37の移動に沿って引っ張られて移動する現象が抑制される。
これによって、モータハウジング側環状溝部35に液状シール剤41が存在しない空間が発生し難くなり、シール長が長くなることで、塩水等が金属カバー12内に浸入する恐れが抑制され、結果的に機械的及び電気的な信頼性を向上することができるようになる。
図15に示す実施形態は、金属カバー12の金属カバー側環状先端部37が、開口面が外側に向けて湾曲するようにして折り曲げることで拡開されて、直線部37Lと弧状部37Cとからなる環状傾斜面37INが形成されている。同様に、図16に示す実施形態は、金属カバー12の金属カバー側環状先端部42の環状傾斜面42INの先端側の内周面に、プレス、研磨、或いは切削によって弧状部42Cが形成されている。
これに対して、本実施形態は図17に示すように、金属カバー12の金属カバー側環状先端部43の環状傾斜面43INの先端側の内周面に、プレス、研磨、或いは切削によって傾斜面部43Cを形成したものである。この傾斜面部43Cの傾斜角θ2は、直線部43Lの傾斜角θ1に対して外側に向けて更に傾斜した傾斜形状に形成されている。ここで、夫々の傾斜角θ1、θ2は回転軸23の軸線の23Cに平行な金属カバー12の上側の内周壁に対する角度を示している。
本実施形態も図15に示したものと同様に傾斜面部43Cと液状シール剤41の間では摩擦が少なくなって、液状シール剤の押し出し量を少なくでき、液状シール剤41の接着面の距離が短くなるという現象を抑制することができる。
この構造によっても、金属カバー側環状先端部43をモータハウジング11の端面部15の側に押し込んでいく時、モータハウジング側環状溝部35に充填されている液状シール剤41が、金属カバー側環状先端部43の移動に沿って引っ張られて移動する現象が抑制される。
これによって、モータハウジング側環状溝部35に液状シール剤41が存在しない空間が発生し難くなり、シール長が長くなることで、塩水等が金属カバー12内に浸入する恐れが抑制され、結果的に機械的及び電気的な信頼性を向上することができるようになる。
尚、上述したそれぞれの実施形態において、液密用の液状シール剤41は、接着性を有する合成樹脂を使用しており、本実施形態ではシリコンゴム系の弾性接着剤を使用している。
シリコンゴム系の弾性接着剤は、外的な振動、衝撃等の応力を吸収し、接着界面に応力が集中しにくい性質を有している。このため、電動パワーステアリング装置のように振動、衝撃等が作用するものでは、接着界面が剥がれて液密機能が喪失する恐れがあるが、シリコンゴム系の弾性接着剤を使用することで、液密機能が喪失する恐れを少なくするこができる。
また、本実施形態では、接着性を有する液状シール剤41で封止を行うため、従来から使用されてきた液密用のOリングを省略することができる。このため、Oリングを収納する収納溝を固定壁39に形成する必要がなく、製造コストの高騰を抑制することができる。
このシリコン系の弾性接着剤(液状シール剤41)は、接着機能を備える液状ガスケット(FIPG:FORMED IN PLACE GASKET)であっても良いものであり、常温硬化や加熱硬化する材料で作られているものを使用することができる。
また、固定ねじを使用しないで金属カバー12とモータハウジング11を加締め固定部38によって固定するので、外観形状を小さく、しかも重量を低減することができる。
更に、Oリングを用いる場合は、Oリングを収納する収納溝を形成する必要があるが、本実施形態の場合はOリングを使用しないので収納溝等の加工が必要なく、製造コストの高騰を抑制することができる。
尚、液状シール剤41をアルミナ等の伝熱性の良い材料を混練した高放熱性の液状シール剤41とすることで、接着面積が大きいことと併せて、電力変換用放熱領域15Aや電源用放熱領域15Bの熱を金属カバー12に効率的に放熱させることが可能となる。これによって、電源回路部や電力変換回路部を構成する電気部品からの熱を効率よく外部に放熱してやることができ、小型化が可能となる。
上述した実施形態では、固定ねじを使用しないで金属カバー11とモータハウジング11を固定する固定手段として、3ヶ所に加締め固定部38を形成したが、全周に亘って加締め固定部を形成することも可能である。
以上述べた通り、本発明によれば、電動モータの回転軸の出力部とは反対側のモータハウジングの端面部の外周面に形成され、モータハウジングの軸線に直交する径方向の内側に後退する環状溝からなるモータハウジング側環状溝部と、電動モータを制御する電子制御部を覆うカバーの開口端に形成され、モータハウジング側環状溝部の環状溝に外側から対向するカバー側環状先端部とを備え、モータハウジング側環状溝部にカバー側環状先端部が対向して配置された状態で、モータハウジング側環状溝部とカバー側環状先端部との間に液状シール剤が充填されていると共に、カバー側環状先端部の内周面には、カバーの径方向で外側に向けて傾斜して拡開する環状傾斜面が形成され、更に環状傾斜面の先端内周側が弧の形状、或いは環状傾斜面より外側に傾斜した傾斜形状に形成されている構成とした。
これによれば、カバー側環状先端部の内周面には、カバーの径方向で外側に向けて傾斜して拡開する環状傾斜面が形成され、更に環状傾斜面の先端内周側が円弧状に形成されているので、カバー側環状先端部をモータハウジングの端面側に押し込んでいく時、液状シール剤がカバー側環状先端部の内周面の移動に沿って引っ張られて移動するのが抑制され、液状シール剤が存在しない空間が発生するのを抑制することができる。
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。