以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
本発明の実施形態を説明する前に、本発明が適用される一例としての操舵装置の構成について図1を用いて簡単に説明する。
まず、自動車の前輪を操舵するための操舵装置について説明する。操舵装置1は図1に示すように構成されている。図示しないステアリングホイールに連結されたステアリングシャフト2の下端には図示しないピニオンが設けられ、このピニオンは車体左右方向へ長い図示しないラックと噛み合っている。このラックの両端には前輪を左右方向へ操舵するためのタイロッド3が連結されており、ラックはラックハウジング4に覆われている。そして、ラックハウジング4とタイロッド3との間にはゴムブーツ5が設けられている。
ステアリングホイールを回動操作する際のトルクを補助するため、電動パワーステアリング装置6が設けられている。即ち、ステアリングシャフト2の回動方向と回動トルクとを検出するトルクセンサ7が設けられ、トルクセンサ7の検出値に基づいてラックにギヤ10を介して操舵補助力を付与する電動モータ部8と、電動モータ部8に配置された電動モータを制御する電子制御装置(ECU)部9とが設けられている。電動パワーステアリング装置6の電動モータ部8は、出力軸側の外周部の3箇所が図示しないねじを介してギヤ10に接続され、電動モータ8部の出力軸とは反対側に電子制御部9が設けられている。
電動パワーステアリング装置6においては、ステアリングホイールが操作されることによりステアリングシャフト2がいずれかの方向へ回動操作されると、このステアリングシャフト2の回動方向と回動トルクとをトルクセンサ7が検出し、この検出値に基づいて制御回路部が電動モータの駆動操作量を演算する。この演算された駆動操作量に基づいて電力変換回路部のパワースイッチング素子により電動モータが駆動され、電動モータの出力軸はステアリングシャフト1を操作方向と同じ方向へ駆動するように回動される。出力軸の回動は、図示しないピニオンからギヤ10を介して図示しないラックへ伝達され、自動車が操舵されるものである。これらの構成、作用は既によく知られているので、これ以上の説明は省略する。
繰り返しなるが、図13において、金属カバー54は水等の液体が内部に浸入しないように、モータハウジング側環状溝部52と接着される開口部以外は密閉構造とされている。このため、液状シール剤53によってシールする場合において、液状シール剤53をモータハウジング側環状溝部52の環状溝51に充填した後に、金属カバー54の金属カバー側環状先端部55を環状溝51に差し込んで、液状シール剤53に浸漬するようにしている。
ところが、金属カバー54の金属カバー側環状先端部55を環状溝51に差し込んで、液状シール剤53に浸漬した後も、金属カバー54は環状溝51に継続して差し込まれる。このため、金属カバー54の内部に残留している空気が圧縮され、この圧縮圧力によって液状シール剤53が外部に押し出されて、シール機能が不完全になる恐れがある。したがって、このシール機能が不完全な部分から、水等が金属カバー54内に浸入して電子制御部を腐食させる、更にこの腐食によって電気的な短絡を発生するといった悪影響を与える恐れがある。
このような背景から、本実施形態では次のような構成の電動パワーステアリング装置を提案するものである。
本実施形態においては、電動モータの回転軸の出力部とは反対側の金属製のモータハウジングの端面部に電動モータを制御する電子制御部と、この電子制御部と外部機器を接続する樹脂製コネクタを設ける共に、モータハウジングの端面部の外周面に環状の溝からなるモータハウジング側環状溝部を形成し、樹脂製コネクタの外周に液密的に係合して電子制御部を覆う金属カバーの開口端に、モータハウジング側環状溝部の環状溝と対向する金属カバー側環状先端部を形成し、モータハウジング側環状溝部に金属カバー側環状先端部が対向して配置された状態で、モータハウジング側環状溝部と金属カバー側環状先端部との間に液状シール剤が充填されていると共に、樹脂製コネクタに金属カバーの内部と外部環境域を接続する接続孔を形成した構成とした。
これよれば、樹脂製コネクタに金属カバーの内部と外部環境域を接続する接続孔を形成したことによって、金属カバーを取り付ける際に生じる金属カバー内の空気の圧縮圧力を外部環境域に逃がすことができ、これによって液状シール剤が外部に押し出されるのを抑制することができる。したがって、このシール機能が充分得られるので電気的な信頼性を向上することが可能となる。
以下、本発明の実施形態になる電動パワーステアリング装置の具体的な構成について、図2乃至図11を用いて詳細に説明する。
図2は本実施形態になる電動パワーステアリング装置の全体的な構成を示した図面であり、図3は図2に示す電動パワーステアリング装置の構成部品を分解して斜め方向から見た図面であり、図4から図9は各構成部品の組み立て順序にしたがって各構成部品を組み付けていった状態を示す図面である。したがって、以下の説明では、各図面を適宜引用しながら説明を行うものとする。
図2に示すように、電動パワーステアリング装置を構成する電動モータ部8は、アルミニウム、或いはアルミ合金等のアルミ系金属から作られた筒部を有するモータハウジング11及びこれに収納された図示しない電動モータとから構成され、電子制御部9は、モータハウジング11の軸方向の出力軸とは反対側に配置された、アルミニウム、或いはアルミ合金等のアルミ系金属、或いは鉄系の金属で作られた金属カバー12及びこれに収納された図示しない電子制御組立体から構成されている。
モータハウジング11と金属カバー12は、その対向端面に形成され外周方向の固定領域部において、後述する加締め固定によって一体的に固定される。金属カバー12の内部に収納された電子制御部は、必要な電源を生成する電源回路部や、電動モータ部8の電動モータを駆動制御するMOSFET或いはIGBT等からなるパワースイッチング素子を有する電力変換回路や、このパワースイッチング素子を制御する制御回路部からなり、パワースイッチング素子の出力端子と電動モータのコイル入力端子とはバスバーを介して電気的に接続されている。
モータハウジング11とは反対側の金属カバー12の端面には、金属カバー12に形成した孔部からコネクタ端子組立体13が露出している。金属カバー12は、モータハウジング11の端面側に固定された電子制御部の全てと、電子制御部を外部の機器と接続するコネクタ端子組立体13の一部を覆うように形成され、電子制御部を機械的、電気的に保護するようになっている。
コネクタ端子組立体13は合成樹脂から形成されている樹脂製コネクタであり、コネクタ端子組立体13と金属カバー12は、組み立て状態では液密的に係合されている。例えば、シリコン製のシールリングを介して両者が圧接係合され、これによって液密構造を確保することができる。或いは、コネクタ端子組立体13の表面に金属カバーの端面を収納する溝を形成し、この溝に液状シール剤を充填して金属カバーの端面を収納することで液密を確保することができる。
また、コネクタ端子組立体13は、モータハウジング11に形成した固定部に固定ねじによって固定されている。コネクタ端子組立体13には電力供給用のコネクタ端子形成部13A、検出センサ用のコネクタ端子形成部13B、制御状態を外部機器に送出する制御状態送出用のコネクタ端子形成部13Cを備えている。
そして、金属カバー12に収納された電子制御組立体は、合成樹脂から作られた電力供給用のコネクタ端子形成部13Aを介して電源から電力が供給され、また検出センサ類から運転状態等の検出信号が検出センサ用のコネクタ形成端子部13Bを介して供給され、現在の電動パワーステアリング装置の制御状態信号が制御状態送出用のコネクタ端子形成部13Cを介して送出されている。
図3に電動パワーステアリング装置6の分解斜視図を示している。モータハウジング11には内部に円環状の鉄製のサイドヨーク(図示せず)が嵌合されており、このサイドヨーク内に電動モータ(図示せず)が収納されているものである。電動モータの出力部14はギヤを介してラックに操舵補助力を付与している。尚、電動モータの具体的な構造は良く知られているので、ここでは説明を省略する。
モータハウジング11はアルミ合金から作られており、電動モータで発生した熱や、後述する電源回路部や電力変換回路部で発生した熱を外部大気に放出するヒートシンク部材として機能している。電動モータとモータハウジング11で電動モータ部8を構成している。
電動モータ部8の出力部14の反対側のモータハウジング11の端面部15には電子制御部ECが取り付けられている。電子制御部ECは、電力変換回路部16、電源回路部17、制御回路部18、コネクタ端子組立体13から構成されている。モータハウジング11の端面部15は、モータハウジング11と一体的に形成されているが、この他に端面部15だけを別体に形成し、ねじや溶接によってモータハウジング11と一体化しても良いものである。
ここで、電力変換回路部16、電力変換回路部17、制御回路部18は冗長系を構成するものであり、主電子制御部と副電子制御部の二重系を構成している。そして、通常は主電子制御部によって電動モータが制御、駆動されているが、主電子制御部に異常や故障が生じると、副電子制御部に切り換えられて電動モータが制御、駆動されるようになるものである。
したがって、後述するが、通常は主電子制御部からの熱がモータハウジング11に伝えられ、主電子制御部に異常や故障が生じると、主電子制御部が停止して副電子制御部が作動し、モータハウジング11には副電子制御部からの熱が伝えられるものである。
ただ、本実施形態では採用していないが、主電子制御部と副電子制御部を合せて正規の電子制御部として機能させ、一方の電子制御部に異常、故障が生じると、他方の電子制御部で半分の能力によって電動モータを制御、駆動することも可能である。この場合、電動モータの能力は半分となるが、いわゆる「パワーステアリング機能」は確保されるようになっている。したがって、通常の場合は、主電子制御部と副電子制御部の熱がモータハウジング11に伝えられるものである。
電子制御部ECは制御回路部18、電源回路部17、電力変換回路部16、コネクタ端子組立体13から構成されており、端面部15側から離れる方向に向かって、電力変換回路部16、電源回路部17、制御回路部18、コネクタ端子組立体13の順序で配置されている。制御回路部18は電力変換回路部16のスイッチング素子を駆動する制御信号を生成するもので、マイクロコンピュータ、周辺回路等から構成されている。電源回路部17は、制御回路部18を駆動する電源及び電力変換回路部16の電源を生成するもので、コンデンサ、コイル、スイッチング素子等から構成されている。電力変換回路部16は、電動モータのコイルに流れる電力を調整するもので、3相の上下アームを構成するスイッチング素子等から構成されている。
電子制御部ECで発熱量が多いのは、主に電力変換回路部16、電源回路部17であり、電力変換回路部16、電源回路部17の熱は、アルミ合金からなるモータハウジング11から放熱されるものである。この詳細な構成については、図4乃至図9を用いて後述する。
制御回路部18と金属カバー12の間には、合成樹脂からなるコネクタ端子組立体13が設けられており、車両バッテリ(電源)や外部の図示しない他の制御装置と接続されている。もちろん、このコネクタ端子組立体13は、電力変換回路部16、電源回路部17、制御回路部18と接続されていることはいうまでもない。
金属カバー12は、電力変換回路部16、電源回路部17、制御回路部18を収納してこれらを液密的に封止する機能を備えているものであり、本実施形態では加締め固定によってモータハウジング11に固定されている。
次に、図4から図9に基づき各構成部品の構成と組み立て方法について説明する。先ず、図4はモータハウジング11の外観を示しており、図5はその軸方向断面を示している。
図4、図5において、モータハウジング11は、筒状の形態に形成されて側周面部11Aと、側周面部11Aの一端を閉塞する端面部15と、側周面部11Aの他端を閉塞する端面部19とから構成されている。本実施形態では、モータハウジング11は有底円筒状であり、側周面部11Aと端面部15は一体的に形成されている。また、端面部19は、蓋の機能を備えており、側周面部11Aに電動モータを収納した後に側周面部11Aの他端を閉塞するものである。
また、端面部15の全周面には環状溝部(以下、モータハウジング側環状溝部と表記する)35が設けられており、このモータハウジング側環状溝部35に、図9に示す金属カバー12の開口端(以下、金属カバー側環状先端部と表記する)37が収納されるものである。モータハウジング側環状溝部35と金属カバー12の金属カバー側環状先端部37の間の部分は、いわゆる液状シール剤によって液密的に接合されている。
図5にあるように、モータハウジング11の側周面部11Aの内部には、鉄心にコイル20が巻回されたステータ21が嵌合されており、このステータ21の内部に、永久磁石を埋設したロータ22が回転可能に収納されている。ロータ22には回転軸23が固定されており、一端は出力部14となり、他端は回転軸23の回転位相や回転数を検出するための回転検出部24となっている。回転検出部24には永久磁石が設けてあり、端面部15に設けた貫通孔25を貫通して外部に突き出している。そして、図示しないGMR素子等からなる感磁部によって回転軸23の回転位相や回転数を検出するようになっている。
図4に戻って、回転軸23の出力部14とは反対側に位置する端面部15の面には電力変換回路部16(図3参照)、電源回路部17(図3参照)の放熱部15A、15Bが形成されている。端面部15の四隅には、基板/コネクタ固定凸部26が一体的に植立されており、内部にねじ穴26Sが形成されている。
基板/コネクタ固定凸部26は後述する制御回路部18の基板、及びコネクタ端子組立体13を固定するために設けられている。また、後述する電力変換用放熱領域15Aから植立した基板/コネクタ固定凸部26には、これも後述する電源用放熱領域15Bと軸方向で同じ高さの基板受け部27が形成され、基板受け部27には、ねじ孔27Sが形成されている。この基板受け部27は後述する電源回路部17のガラスエポキシ基板31を載置、固定するためのものである。
端面部15を形成する、回転軸23と直交する径方向の平面領域は2分割されている。1つはMOSFET等のスイッチング素子よりなる電力変換回路部16が取り付けられる電力変換用放熱領域15Aを形成し、もう1つは電源回路部17が取り付けられる電源用放熱領域15Bを形成している。本実施形態では、電力変換用放熱領域15Aの方が電源用放熱領域15Bより面積が大きく形成されている。これは、上述したように二重系を採用しているため、電力変換回路部16の設置面積を確保するためである。
そして、電力変換用放熱領域15Aと電源用放熱領域15Bは、軸方向(回転軸23が延びる方向)に向けて高さが異なる段差を有している。つまり、電源用放熱領域15Bは、電動モータの回転軸23の方向で見て、電力変換用放熱領域15Aに対して離れる方向に段差を有して形成されている。この段差は、電力変換回路部16を設置した後に電源回路部17を設置した場合に、電力変換回路部16と電源回路部17が夫々干渉しない長さに設定されている。
電力変換用放熱領域15Aには、3個の細長い矩形の突状放熱部28が形成されている。この突状放熱部28は後述する二重系の電力変換回路部16が設置されるものである。また、突状放熱部28は、電動モータの回転軸23の方向で見て電動モータから離れる方向に突出して延びているものである。
また、電源用放熱領域15Bは平面状であって、後述する電源回路部17が設置されるものである。したがって、突状放熱部28は電力変換回路部16で発生した熱を端面部15に伝熱する放熱部として機能し、電源用放熱領域15Bは電源回路部17で発生した熱を端面部15に伝熱する放熱部として機能するものである。
尚、突状放熱部28は省略することができ、この場合は電力変換用放熱領域15Aが電力変換回路部16で発生した熱を端面部15に伝熱する放熱部として機能する。ただ、本実施形態では、突状放熱部28に電力変換回路部16の金属基板を摩擦撹拌接合によって溶着して確実な固定を図っている。
このように、本実施形態になるモータハウジング11の端面部15においては、ヒートシンク部材を省略して軸方向の長さを短くできるようになるものである。また、モータハウジング11は十分な熱容量を有しているので、電源回路部17や電力変換回路部16の熱を効率よく外部に放熱することができるようになるものである。
次に、図6は電力変換回路部16を突条放熱部28(図4参照)に設置した状態を示している。図6にある通り、電力変換用放熱領域15Aに形成された突状放熱部28(図4参照)の上部には二重系よりなる電力変換回路部16が設置されている。電力変換回路部16を構成するスイッチング素子は金属基板(ここではアルミ系の金属を使用している)に載置され、放熱されやすく構成されている。そして、金属基板は突状放熱部28に摩擦撹拌接合によって溶着されている。
したがって、金属基板は突状放熱部28(図4参照)に強固に固定され、またスイッチング素子で発生した熱を効率良く突状放熱部28(図4参照)に伝熱させることができる。突状放熱部28(図4参照)に伝えられた熱は電力変換用放熱領域15Aに拡散され、更にモータハウジング11の側周面部11Aに伝熱されて外部に放熱されるものである。ここで、上述した通り、電力変換回路部16の軸方向の高さは、電源用放熱領域15Bの高さより低くなっているので、後述する電源回路部17と干渉することはないものである。
このように、電力変換用放熱領域15Aに形成された突状放熱部28の上部に電力変換回路部16が設置されている。したがって、電力変換回路部16のスイッチング素子で発生した熱を効率良く突状放熱部28に伝熱させることができる。更に、突状放熱部28に伝えられた熱は電力変換用放熱領域15Aに拡散され、モータハウジング11の側周面部11Aに伝熱されて外部に放熱されるようになる。
次に、図7は電力変換回路部16の上から電源回路部17を設置した状態を示している。図7にある通り、電源用放熱領域15Bの上部には電源回路部17が設置されている。電源回路部17を構成するコンデンサ29やコイル30等はガラスエポキシ基板31に載置されている。電源回路部17も二重系が採用されており、図からわかるように、夫々対称にコンデンサ29やコイル30等からなる電源回路が形成されている。尚、ガラスエポキシ基板31には、電力変換回路16のスイッチング素子以外のコンデンサ等の電気素子が載置されている。
このガラスエポキシ基板31の電源用放熱領域15B(図6参照)側の面は、電源用放熱領域15Bと接触するようにして端面部15に固定されている。固定方法は、図7にあるように、基板/コネクタ固定凸部26の基板受け部27に設けられたねじ穴27Sに図示しない固定ねじによって固定されている。また、電源用放熱領域15B(図6参照)に設けられたねじ穴27Sにも図示しない固定ねじによって固定されている。
尚、電源回路部17がガラスエポキシ基板31で形成されているため、両面実装が可能となっている。そして、ガラスエポキシ基板31の電源用放熱領域15B(図6参照)側の面には、図示しないGMR素子やこれの検出回路等からなる回転位相、回転数検出部が実装され、回転軸23(図5参照)に設けた回転検出部24(図5参照)と協働して、回転の回転位相や回転数を検出するようになっている。
このように、ガラスエポキシ基板31は電源用放熱領域15B(図6参照)に接触するようにして固定されているので、電源回路部17で発生した熱を効率良く電源用放熱領域15B(図6参照)に伝熱させることができる。電源用放熱領域15B(図6参照)に伝えられた熱は、モータハウジング11の側周面部11Aに拡散して伝熱されて外部に放熱されるものである。ここで、ガラスエポキシ基板31と電源用放熱領域15B(図6参照)の間は、熱伝達性の良い接着剤、放熱グリース、放熱シートのいずれか1つを介在させることで、更に熱伝達性能を向上させることができる。
このように、電源用放熱領域15Bの上部には電源回路部17が設置されている。電源回路部17の回路素子が載置されたガラスエポキシ基板31の電源用放熱領域15B側の面は、電源用放熱領域15Bと接触するようにして端面部15に固定されている。したがって、電源回路部17で発生した熱を効率良く電源用放熱領域15Bに伝熱させることができる。電源用放熱領域15Bに伝えられた熱は、モータハウジング11の側周面部11Aに拡散して伝熱されて外部に放熱されるようになる。
次に、図8は電源回路部17の上から制御回路部18を設置した状態を示している。図8にある通り、電源回路部17の上部には制御回路部18が設置されている。制御回路部18を構成するマイクロコンピュータ32や周辺回路33はガラスエポキシ基板34に載置されている。制御回路部18も二重系が採用されており、図からわかるように、夫々対象にマイクロコンピュータ32や周辺回路33からなる制御回路が形成されている。尚、マイクロコンピュータ32や周辺回路33は、ガラスエポキシ基板34の電源回路17側の面に設けられていても良いものである。
このガラスエポキシ基板34は、図8にあるように、基板/コネクタ固定凸部26(図7参照)の頂部に設けられたねじ穴26Sにコネクタ端子組立体13によって挟まれる形態で図示しない固定ねじによって固定されており、電源回路部17(図7参照)のガラスエポキシ基板31と制御回路部18のガラスエポキシ基板34の間は、図7に示す電源回路部17のコンデンサ29やコイル30等が配置される空間となっている。
次に、図9は制御回路部18の上からコネクタ端子組立体13を設置した状態を示している。図9にある通り、制御源回路部18の上部にはコネクタ端子組立体13が設置されている。そして、コネクタ端子組立体13は基板/コネクタ固定凸部26の頂部に設けられたねじ穴に制御回路部18を挟み込むようにして固定ねじ36によって固定されている。この状態で、図3に示すようにコネクタ端子組立体13が電力変換回路部16、電源回路部17、制御回路部18と接続されている。
更にこの後に金属カバー12の金属カバー側環状先端部37が、モータハウジング11のモータハウジング側環状溝部35に収納され、金属カバー12の外周方向に沿って設けられた加締め固定部によって固定されるものである。図10に示す通り、この加締め固定部38は、金属カバー12の外周において、回転軸23の軸線を中心にして、ほぼ120°間隔に形成されている。
次に、加締め固定部38と、金属カバー12及びモータハウジング11の端面部15の接合部分の詳細を図10乃至図11を用いて説明する。図10は、モータハウジング11と金属カバー12が加締め固定によって固定された状態の電動パワーステアリング装置6の外観を示し、図11は、図10の軸方向の要部断面を示している。
図10において、金属カバー12の外周面には、複数(3個)の加締め固定部38が形成されている。この加締め固定部38は、モータハウジング11の端面部15の全周面に形成したモータハウジング側環状溝部35からコネクタ端子組立体13側に向けて軸方向に延びた、電力変換用放熱領域15A、電源用放熱領域15Bを形成する固定壁39に設けられた加締め溝、或いは加締め孔等からなる加締め凹部(図示せず)に、金属カバー12の壁面が押し込み工具によって押し込まれて塑性変形して加締められることで形成されている。金属カバー12の軸方向の位置決めは、コネクタ組立体13を利用して行われており、金属カバー12の軸方向位置が決まった状態で、金属カバー12の壁面が押し込み工具によって加締め凹部に押し込まれて加締められるようになっている。
また、図11に示しているように、金属カバー12の金属カバー側環状先端部37が収納される、モータハウジング側環状溝部35によって形成される空間には、液密用の液状シール剤40が隙間なく充填されている。したがって、加締め固定部38と金属カバー12の金属カバー側環状先端部37の間には液密用のシール領域が形成されるので、塩水等はシール領域で浸入が阻止される。このため、加締め固定部38には塩水等が浸入しないので、加締め固定部38が腐食するのが抑制されて、機械的な信頼性を向上することが可能となる。更には、電子制御部9への塩水等の浸入が抑制されるので電気的な信頼性を併せて向上することが可能となる。
一方、コネクタ組立体13の金属カバー12との対向面には、金属カバー12の上面側環状先端部41を収納するコネクタ側収納溝42が形成され、液状シール材40が充填されている。そして、金属カバー12の上面側環状先端部41がコネクタ側収納溝42に収納された状態で液密構造を確保している。或いは、コネクタ側収納溝42と上面側環状先端部41の間に、シールリングを介装して液密構造を確保することもできる。
更に、コネクタ組立体13には、金属カバー12の内部と、金属カバー12の外側である外部環境域を接続する接続孔43が形成されている。この接続孔43は、金属コネクタ端子と合成樹脂との間の微小な隙間ではなく、充分な空気流通面積を備えた孔として形成されている。
また、接続孔43の形成位置は、コネクタ組立体13に接続される相手側コネクタ端子が嵌合される位置とされ、これによって接続孔43は相手側コネクタ端子で囲繞されて密閉(完全密閉ではない)されるので、自動車の走行に伴う飛び石や被水の影響を少なくすすることができる。
更に、接続孔43は金属カバー12をモータハウジング11に固定した後に液状シール剤で封止することができる。これによって、水等が金属カバー12内に浸入することを抑制することができる。尚、接続孔43は流通面積が大きい接続孔部43Lと、これに繋がる流通面積が小さい接続孔部43Sとから形成されている。
そして、流通面積が大きい接続孔部43Lは外部環境域に接続され、流通面積が小さい接続孔部43Sは金属カバーの内部に接続されている。このため、金属カバー12をモータハウジング11に固定した後に流通面積が大きい接続孔部43Lを液状シール剤で封止した時に、流通面積が小さい接続孔部43Sによって、液状シール剤が金属ケース12内に流入することを抑制することができる。
以上のような構成において、液状シール部材40は、流動可能なように所要の粘度を付与された状態にされており、先ず液状シール剤40をモータハウジング側環状溝部35内に流し込んでおき、この状態で金属カバー12の金属カバー側環状先端部37がモータハウジング側環状溝部35内に進入して収納されるものである。そして、金属カバー側環状先端部37の進入にあわせて、液状シール剤40が、金属カバー側環状先端部37とモータハウジング側環状溝部35の側面壁の隙間を埋めるように流動していくものである。
この時、金属カバー12内の空気は、コネクタ組立体13に形成した接続孔43を通過して外部環境域に逃がされるので、金属カバー12内の空気の圧力は上昇しなく、液状シール剤40を外部に押し出すことが抑制されるようになる。このように、コネクタ組立体13に金属カバー12の内部と外部環境域を接続する接続孔43を形成したことによって、金属カバー12を取り付ける際に生じる金属カバー12内の空気の圧縮圧力を、外部環境域に逃がすことができ、これによって液状シール剤40が外部に押し出されるのを抑制することができる。したがって、シール機能が充分得られるので電気的な信頼性を向上することが可能となる。
尚、上述した実施形態では、モータハウジング側環状溝部35は、モータハウジング11の端面部15の外周側に突出して形成されているが、図12に示すようなモータハウジング側環状溝部35とすることも可能である。
図12において、モータハウジング11の端面部15の外周面に形成されたモータハウジング側環状溝部35Aは、回転軸23(図11参照)の軸線と同一であるモータハウジング11の軸線に直交する半径方向で内側に、固定壁39から所定距離だけ後退した(内側に凹んでいる)形状に形成されている。そして、金属カバー12の金属カバー側環状先端部37がモータハウジング側環状溝部35Aに対向するように配置されている。また、金属カバー側環状先端部37トモータハウジング側環状溝部35Aの間には液状シール材40が充填されている。このような構成のものにおいても、本実施形態の構成を適用することができる。
尚、液密用の液状シール剤40は、接着性を有する合成樹脂を使用しており、本実施形態ではシリコンゴム系の弾性接着剤を使用している。シリコンゴム系の弾性接着剤は、外的な振動、衝撃等の応力を吸収し、接着界面に応力が集中しにくい性質を有している。このため、電動パワーステアリング装置のように振動、衝撃等が作用するものでは、接着界面が剥がれて液密機能が喪失する恐れがあるが、シリコンゴム系の弾性接着剤を使用することで、液密機能が喪失する恐れを少なくすることができる。また、本実施形態では、接着性を有する液状シール剤40で封止を行うため、従来から使用されてきた液密用のOリングを省略することができる。このため、Oリングを収納する収納溝を固定壁39に形成する必要がなく、製造コストの高騰を抑制することができる。
このシリコン系の弾性接着剤(液状シール剤)40は、接着機能を備える液状ガスケット(FIPG:FORMED IN PLACE GASKET)であっても良いものであり、常温硬化や加熱硬化する材料で作られているものを使用することができる。
尚、本実施形態によれば、固定ねじを使用しないで金属カバー12とモータハウジング11を加締め固定によって固定するので、外観形状を小さく、しかも重量を低減することができる。更に、Oリングを用いる場合は、Oリングを収納する収納溝を形成する必要があるが、本実施形態の場合はOリングを使用しないので収納溝等の加工が必要なく、製造コストの高騰を抑制することができる。
尚、液状シール剤40をアルミナ等の伝熱性の良い材料を混練した高放熱性の液状シール剤40とすることで、接着面積が大きいことと併せて、電力変換用放熱領域15Aや電源用放熱領域15Bの熱を金属カバー12に効率的に放熱させることが可能となる。これによって、電源回路部17や電力変換回路部16を構成する電気部品からの熱を効率よく外部に放熱してやることができ、小型化が可能となる。
上述した実施形態では、固定ねじを使用しないで金属カバー11とモータハウジング11を固定する固定手段として、3ヶ所に加締め固定部38を形成したが、全周に亘って加締め固定部を形成することも可能である。
以上述べた通り、本発明によれば、電動モータの回転軸の出力部とは反対側の金属製のモータハウジングの端面部に電動モータを制御する電子制御部と、この電子制御部と外部機器を接続する樹脂製コネクタを設ける共に、モータハウジングの端面部の外周面に環状の溝からなるモータハウジング側環状溝部を形成し、樹脂製コネクタの外周に液密的に係合して電子制御部を覆う金属カバーの開口端に、モータハウジング側環状溝部の環状溝と対向する金属カバー側環状先端部を形成し、モータハウジング側環状溝部に金属カバー側環状先端部が対向して配置された状態で、モータハウジング側環状溝部と金属カバー側環状先端部との間に液状シール剤が充填されていると共に、樹脂製コネクタに金属カバーの内部と外部環境域を接続する接続孔を形成する構成とした。
これによれば、樹脂製コネクタに金属カバーの内部と外部環境域を接続する接続孔を形成したことによって、金属カバーを取り付ける際に生じる金属カバー内の空気の圧縮圧力を外部環境域に逃がすことができ、これによって液状シール剤が外部に押し出されるのを抑制することができる。したがって、このシール機能が充分得られるので電気的な信頼性を向上することが可能となる。
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。