以下、図面を参照して本実施の形態を詳細に説明する。図1は、本実施の形態における画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。図2は、本実施の形態における画像形成装置1の制御系の主要部を示す。
画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に一次転写し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙に二次転写することにより、トナー像を形成する。
また、画像形成装置1には、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
図2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60、および制御部100等を備える。
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103等を備える。CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。
制御部100は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部100は、例えば、外部の装置から送信された画像データを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて用紙にトナー像を形成させる。通信部71は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿またはコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21および操作部22として機能する。表示部21は、制御部100から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部100に出力する。
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定またはユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部100の制御下で、記憶部72内の階調補正データ(階調補正テーブルLUT)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示す。図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、およびドラムクリーニング装置415等を備える。
感光体ドラム413は、例えばアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。電荷発生層は、電荷発生材料(例えばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなり、露光装置411による露光により一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト樹脂)に分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
制御部100は、感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413を一定の周速度(線速度)で回転させる。
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。これにより、感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
現像装置412は、例えば二成分現像方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるクリーニング部材等を有する。ドラムクリーニング装置415は、一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーをクリーニングブレードによって除去する。
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、及びベルトクリーニング装置426等を備える。
中間転写ベルト421は、無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも1つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写部におけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるバックアップローラー423Bに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙Sへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
中間転写ベルト421、バックアップローラー423Bおよび二次転写ローラー424により形成される二次転写ニップは、本発明の「転写部」に対応する。
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の一次転写ローラー422と当接する側にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
その後、用紙が二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙に二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、用紙の二次転写ローラー424と当接する側にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は用紙に静電的に転写される。トナー像が転写された用紙は定着部60に向けて搬送される。
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の表面に摺接するベルトクリーニングブレード等を有し、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。
定着部60は、用紙の定着面側に配置される定着面側部材を有する上側定着部60A、用紙の定着面の反対の面側に配置される裏面側支持部材を有する下側定着部60B、及び加熱源60C等を備える。定着面側部材に裏面側支持部材が圧接されることにより、用紙を狭持して搬送する定着ニップが形成される。
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙を定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙にトナー像を定着させる。定着部60は、定着器F内にユニットとして配置される。
上側定着部60Aは、定着面側部材である無端状の定着ベルト61、加熱ローラー62、上加圧ローラー63、およびエア分離ユニット60D等を有する(ベルト加熱方式)。定着ベルト61は、加熱ローラー62と上加圧ローラー63とに所定のベルト張力(例えば、400N)で張架されている。
定着ベルト61は、例えばPI(ポリイミド)からなる基体の外周面を弾性層として耐熱性のシリコンゴムで被覆し、さらに、表層に耐熱性樹脂であるPFA(パーフルオロアルコキシ)のチューブを被覆またはコーティングをしてなる。定着ベルト61は、トナー像が形成された用紙Sに接触して、当該トナー像を用紙Sに定着許容温度範囲で加熱定着する。ここで、定着許容温度範囲とは、用紙S上のトナーを溶融するのに必要な熱量を供給しうる温度であり、画像形成される用紙Sの紙種等によって異なる。
加熱ローラー62は、定着ベルト61を加熱する。加熱ローラー62は、定着ベルト61を加熱する加熱源60Cを内蔵している。加熱ローラー62は、例えば、ハロゲンヒーターであり、アルミニウム等から形成された円筒状の芯金における外周面をPTFEでコーティングした樹脂層で被覆された構成である。加熱源60Cの温度は、制御部100によって制御される。加熱源60Cによって加熱ローラー62が加熱され、その結果、定着ベルト61が加熱される。
上加圧ローラー63は、例えば鉄等の金属から形成された中実の芯金を、弾性層として耐熱性のシリコンゴムで被覆し、さらに、低摩擦で耐熱性樹脂であるPTFEでコーティングした樹脂層で被覆したものである。上加圧ローラー63は、定着部60における主駆動源(図示せず)により駆動回転する下加圧ローラー65に定着ベルト61を介して圧接される。
下側定着部60Bは、例えば裏面側支持部材である下加圧ローラー65を有する(ローラー加圧方式)。下加圧ローラー65は、PI(ポリイミド)からなる基材層の外周面を弾性層として耐熱性のシリコンゴムで被覆し、さらに、弾性層の外周面を表面離型層としてPFAチューブの樹脂層で被覆したものである。
制御部100は、主駆動源(駆動モーター)を制御して、下加圧ローラー65を図中反時計回り方向に回転させる。駆動モーターの駆動制御(例えば、回転のオン/オフ、周速度等)は、制御部100によって行われる。
下加圧ローラー65には、ハロゲンヒーター等の加熱源65Aが内蔵されている。この加熱源65Aが発熱することにより、下加圧ローラー65は加熱される。制御部100は、加熱源65Aに供給する電力を制御し、下加圧ローラー65を所定温度に制御する。
下加圧ローラー65は、定着ベルト61を介して上加圧ローラー63に所定の定着荷重で圧接される。このようにして、定着ベルト61と下加圧ローラー65との間には、用紙Sを狭持して搬送する定着ニップが形成される。
下加圧ローラー65が図中反時計回り方向に駆動回転すると、定着ベルト61が図中時計回り方向に従動回転する。これに伴い、上加圧ローラー63は、図中時計回り方向に従動回転する。また、加熱ローラー62は、図中時計回り方向に従動回転する。用紙Sの定着時、定着ベルト61の周速度は、下加圧ローラー65の周速度と同等となる。
エア分離ユニット60Dは、ファン送風部や送風ダクト等を備える。エア分離ユニット60Dは、定着ニップの用紙排出側から定着ベルト61に向けてエアを送風する。
定着部60において、上側定着部60A、下側定着部60Bおよび加熱源60Cは、定着ニップで用紙Sを加熱、加圧しながら搬送することにより、未定着のトナー像を用紙S上に定着させる。エア分離ユニット60Dは、定着ニップを通過した用紙Sの先端にエアを吹き付けることにより、定着ベルト61から用紙Sを分離させる。これにより、定着ニップを通過した用紙Sが定着ベルト61の表面に巻き付いて分離せず、巻き付きジャム等を発生させることを防止することができる。
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52および搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a〜51cには、坪量(剛度)やサイズ等に基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53a、ループローラー53b等の複数の搬送ローラー、用紙の両面に画像形成するための両面搬送経路等を有する。
給紙トレイユニット51a〜51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。このとき、ループローラー53bにより搬送された用紙Sの搬送方向先端がレジストローラー対53aに突き当てられて用紙Sにループが形成されることにより、給紙された用紙Sの斜行が補正されるとともに搬送タイミングが調整される(ループ搬送)。
レジストローラー対53aは、制御部100の制御の下、用紙Sの幅方向における位置を補正する。具体的には、レジストローラー対53aのニップに用紙Sが挟持されると、レジストローラー対53aが幅方向に移動して用紙Sを移動させるレジスト揺動の制御が行われることにより、用紙Sの幅方向における位置が補正される。
レジストローラー対53aは、用紙Sの幅方向における位置を補正した後、当該用紙Sがレジストローラー対53aを通過し終わる前、すなわち用紙Sの搬送途中で離間して、移動する前の位置に戻される。そして、レジストローラー対53aは、用紙Sの後端が通過した後、再度圧着される。
そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。なお、両面印刷時には、第一面への画像形成が行われた用紙Sは、両面搬送経路を通って表裏が反転された後、第二面にトナー像が二次転写および定着された後、排紙部52により機外に排紙される。
ところで、従来の画像形成装置では、転写部(二次転写ニップ)の上流側で発生した用紙Sの斜行は、上述したループ搬送およびレジスト揺動等の制御により矯正することができる。しかしながら、転写部の下流側におけるアライメントずれ等に起因した用紙Sの斜行に対しては、従来技術では十分に矯正できずに画像不良の原因となる問題があった。以下、この問題について、図3Aおよび図3Bを参照して説明する。
図3Aは、定着ニップを構成する上述した上加圧ローラー63および下加圧ローラー65にアライメント(取り付け角度)のずれがあり、定着ニップに進入した用紙Sの先端側が右側(装置の奥側)に曲がってしまう状態(図中、点線および矢印で示す)を誇張して表している。
図3Aに示す事例では、上加圧ローラー63および下加圧ローラー65のアライメントだけが正常でなく、その上流側の他の搬送部材(二次転写ニップやレジストローラー対53aなど)のアライメントは正常である場合を想定している。この場合、用紙Sは、定着ニップに進入するまでは、斜行等を生じることなく正常に搬送され、二次転写ニップにより用紙Sの所望の位置(正常位置)にトナー像が転写される(図3Bに示す用紙Sの上側部分の画像I参照)。しかしながら、当該用紙Sは、定着ニップに進入すると、上加圧ローラー63および下加圧ローラー65のアライメントずれに起因して、右方向に曲がり出す(図3A中の矢印参照)。この後、用紙Sの先端側の曲がり(スキュー成分)は、定着ニップから二次転写ニップへと伝搬され、当該斜行状態が二次転写ニップに伝搬すると、用紙後端側に転写されるトナー像が傾く画像不良となって顕在化する(図3Bの用紙Sの下側部分参照)。このような定着ニップの下流側の用紙Sの斜行に起因した画像不良(印刷される画像位置精度の悪化)は、用紙Sが長尺紙や剛度の高い厚紙の場合には顕著に目立つことになる。
これに対して、二次転写ニップの上流側における用紙Sの幅方向の端部位置のずれを検知してレジストローラー対53aを幅方向に揺動させる従来技術の制御では、用紙Sの幅方向の端部位置のずれが検知された時には既に二次転写ニップでのトナー像の位置ずれが発生している等の問題があった。
そこで、本実施の形態では、図4Aに示すように、レジストローラー対53a(53a−F,53a−R)を、用紙Sの幅方向に対応する画像形成装置1の前側および奥側に各々配置し、図5に示すように、互いに独立した駆動源(モーター54Fおよび54R)により回転駆動される構成とした。ここで、装置前側のレジストローラー対53a−Fおよび装置奥側のレジストローラー対53a−Rは、本発明の「用紙搬送部」に対応する。
また、本実施の形態では、制御部100は、用紙Sの搬送方向における二次転写ニップの下流(この例では定着ニップ)で用紙Sの斜行が発生した場合、各レジストローラー対53a−Fおよび53a−Rと二次転写ニップとによって用紙Sに張力を付与した状態で、当該斜行が抑制されるように、各々のレジストローラー対(53a−F、53a−R)の搬送速度を異ならせるように制御する。すなわち、本実施の形態では、これらレジストローラー対53a−F,53a−Rの搬送速度ないし搬送力に差をもたせることにより、定着ニップの下流側で生じたスキュー成分を打ち消すように制御を行う。
一具体例では、制御部100は、搬送方向における用紙Sの先行している先端側(図4Aの例では左側すなわち装置前側)に対応するレジストローラー対53a−Fの搬送速度を、他のレジストローラー対53a−Rの搬送速度よりも遅くするように制御する。言い換えると、制御部100は、斜行によって用紙Sが傾いた側に配置されているレジストローラー対53a−Rの搬送力を、他のレジストローラー対53a−Fの搬送力よりも大きくするように制御する。
加えて、制御部100は、搬送方向における用紙Sの遅れている先端側(図4Aの例では右側すなわち装置後側)に対応するレジストローラー対53a−Rの搬送速度を、斜行発生前の当該レジストローラー対53a−Rの搬送速度よりも速くする制御を行ってもよい(図6参照)。
但し、レジストローラー対53a−R(または53a−F)の搬送速度を二次転写ニップの搬送速度よりも速くすると、二次転写ニップとの間で用紙Sのループが発生し(図4Bの点線参照)、当該レジストローラー対の速度変化が二次転写ニップに伝達されにくくなるおそれがある。このため、レジストローラー対53a−R(または53a−F)の搬送速度を斜行発生前の搬送速度よりも速くする制御を行う場合には、二次転写ニップの搬送速度以下の範囲で速くすることが望ましい。
このような制御を行うことで、二次転写ニップとレジストローラー対53a−Fとの間での用紙Sの張力が、二次転写ニップとレジストローラー対53a−Rとの間での用紙Sの張力よりも高くなり、用紙Sの先行している先端側(左側)の進行を妨げようとする力が作用する。この結果、二次転写ニップにある用紙S部分の右側に斜行しようとするスキュー成分が打ち消されて、定着ニップで発生した用紙Sの先端側の斜行が二次転写ニップに伝搬しにくくなり、二次転写ニップの位置において用紙Sは直線的に進行し、画像位置ずれの発生が有効に抑制される。
ここで、定着ニップにおけるアライメントずれの程度(角度等)や用紙Sの斜行の向きなどが予め分かっており、かつ固定的(画一的)である場合、用紙Sの斜行の程度(向きや角度等)が予測できるため、用紙Sが定着ニップに入った後のレジストローラー対53a−Fおよび53a−Rの搬送速度(速度ないし搬送力の差)を一義的に定めることができる。しかしながら、実際には、定着部60は熱膨張や経年劣化などにより定着ニップ(ローラー等の表面状態など)が変動するため、用紙Sの斜行の程度は画一的に定まらないことが多い。
そこで、本実施の形態では、二次転写ニップの搬送方向の下流における用紙Sの斜行を検知する検知部を設け、制御部100は、かかる検知部の検知結果に応じて、各々のレジストローラー対53a−Fおよび53a−Rの搬送速度(搬送力)を制御する。
かかる検知部の構成例として、図4Aでは、用紙Sの搬送方向における定着ニップの下流側に、用紙Sの端部(幅方向における左右両端)の通過を検知するための端部検知センサー55(55F,55R)を、画像形成装置1の前側および奥側に配置している。
端部検知センサー55−F,55−Rは、例えば発光素子と受光素子を備えた光学式のセンサーであり、各々、用紙Sの搬送方向に直交する方向に並んで配置されている。そして、端部検知センサー55−Fは、搬送される用紙Sの左端側が発光素子と受光素子との間を通ると、用紙Sが通過している旨の検知信号を制御部100に出力する。同様に、端部検知センサー55−Rは、搬送される用紙Sの右端側が発光素子と受光素子との間を通ると、用紙Sが通過している旨の検知信号を制御部100に出力する。
かかる構成によれば、制御部100は、端部検知センサー55−Fおよび55−Rが用紙Sの各端の検知開始時のタイミングのずれ(時間差)から、用紙Sの先端側の斜行の有無および斜行の程度(向きや角度)を特定することができる。したがって、制御部100は、端部検知センサー55F,55Rの検知結果に基づいて用紙Sの斜行の程度を特定し、かかる特定結果に応じて各々のレジストローラー対53a−Fおよび53a−Rの搬送速度(搬送力)を制御する。
また、図5に示すように、本実施の形態では、レジストローラー対53a−Fおよびレジストローラー対53a−Rは、互いに別個のモーター(以下、レジストモーターと称する)54Fおよび54Rにより回転駆動される。このため、制御部100は、上記の端部検知センサー55F,55Rの検知結果に応じて、レジストモーター54Fとレジストモーター54Rの回転速度に差を持たせるように駆動制御することによって、各々のレジストローラー対53a−Fおよび53a−Rの搬送速度(搬送力)を制御する。
さらに、本実施の形態では、制御部100は、二次転写ニップとレジストローラー対53a−F,53a−Rとによって用紙Sに張力を付与した状態としながら、レジストローラー対53a−Fおよびレジストローラー対53a−Rの搬送速度(搬送力)の制御を行う。図4B中、従来のレジストローラー対による用紙Sの搬送状態を点線で示し、本実施の形態におけるレジストローラー対53a−F,53a−Rによる用紙Sの搬送状態を実線で示している。
図4B中に点線および実線で対比されるように、従来技術では、レジストローラー対による用紙Sの搬送速度は、二次転写ニップによる用紙Sの搬送速度よりも速く設定される。このため、従来は、図4B中に点線で示すように、二次転写ニップとレジストローラー対(53a)との間には用紙Sのたるみが形成されていた。
これに対して、本実施の形態では、定着ニップの下流側で生じたスキュー成分を、レジストローラー対53a−Fおよびレジストローラー対53a−Rの搬送速度差(言い換えると搬送力ないしレジストモーターの駆動力の大小)によって解消しようとするため、二次転写ニップとレジストローラー対(53a)との間に用紙Sのたるみがある場合、かかる搬送速度の差(駆動力の大小)が用紙Sに直ちに伝達されない問題が生じる。したがって、本実施の形態では、レジストローラー対53a−Fおよびレジストローラー対53a−Rにおける用紙Sの搬送速度は、バックアップローラー423Bと二次転写ローラー424とにより形成される二次転写ニップにおける用紙Sの搬送速度よりも若干遅い速度に設定した上で、制御部100が、端部検知センサー55−F,55−Rの検知結果に応じてレジストローラー対53a−Fおよび53a−Rの搬送速度を異ならせる制御を行う(図6参照)。
なお、レジストローラー対53a−F,53a−Rの搬送速度と二次転写ニップの搬送速度との差が過大の場合(すなわちレジストローラー対53a−F,53a−Rによる搬送速度が遅すぎる場合)、搬送中の用紙Sやレジストモーター54F,54Rにかかるストレスが大きくなるため、好ましくない。
そこで、本実施の形態では、定着ニップを通過した用紙Sの斜行が検知されるまでは、レジストローラー対53a−F,53a−Rにおける用紙Sの搬送速度を、上記の二次転写ニップにおける用紙Sの搬送速度よりも適度に遅い速度にするために、上述したレジストモーター54Fおよびレジストモーター54Rの駆動力を固定化する制御を行う。以下、この制御について図7Aおよび図7Bを参照して説明する。ここで、図7Aは、従来技術におけるレジストローラー対を回転駆動するレジストモーターの駆動制御の概要を示し、図7Bは、図7Aと対比した本実施の形態におけるレジストモーター(54Fおよび54R)の駆動制御の概要を示す。
図7Aの上段および中段に示すように、従来制御では、レジストモーターの速度(角速度)を用紙Sのニップ中の有無に関わらず一定に保つために、当該レジストモーターに印加する電圧のPWM(Pulse Width Modulation)波の値(デューティー比)を随時変える制御を行っていた。一方、この制御によれば、レジストモーターの駆動力が随時変化し、レジストローラー対の表面の耐久状態や熱膨張等のため、用紙Sの搬送速度が一定にならず、図7A中の下段に実線で示すように、目標速度(同点線)からの誤差が発生する場合があった。
これに対し、本実施の形態では、制御部100は、用紙Sが二次転写ニップに入ったタイミングでレジストモーター54Fおよび54Rに出力する電圧のPWM波の値(デューティー比)を一定にする(固定する)ように制御を行う(図7Bの上段参照)。かかる制御により、レジストモーター54F(54R)は、図7Bの中段に示すように、レジストローラー対53a−F(53a−R)による用紙Sのニップ中は速度が遅くなり、用紙Sの後端がレジストローラー対53a−F(53a−R)を抜けると速度が速くなる(すなわち角速度が変動する)駆動状態になる。一方、用紙Sが二次転写ニップとレジストローラー対53a−F(53a−R)の両方で挟持されている間は、かかる二次転写ニップとレジストローラー対53a−F(53a−R)との間に搬送速度差があり、これらの両方で引っ張られている用紙Sの張力によって、結果的にレジストローラー対53a−F(53a−R)による用紙搬送速度が二次転写ニップの用紙搬送速度に倣うように、レジストモーター54F(54R)の角速度が(受動的に)回転する。かかる回転動作により、用紙Sのニップ中において、レジストモーター54Fおよび54Rの駆動力が固定化されるとともに、図7Bの下段に示すように、上述したレジストローラー対53a−F(53a−R)の表面の耐久状態や熱膨張等の誤差を吸収して、レジストローラー対53a−Fおよび53a−Rによる用紙Sの搬送速度を一定に保つ(すなわち目標速度を維持する)ことができる。
以下、定着ニップの下流側で斜行が発生した場合の用紙Sの搬送制御の具体例について、図4Aに示す事例を前提として説明する。図4Aに示すように、定着ニップに進入した用紙Sの搬送方向の先端が右に曲がるような事例では、一対の端部検知センサー55F,55Rのうち、一方の端部検知センサー55Fによって用紙Sの左側の端部が検知された後に、他方の端部検知センサー55Rによって用紙Sの右側の端部が検知される。
制御部100は、かかる検知結果に応じて(例えば端部検知センサー55Fにより用紙Sの左側の端部が検知されたタイミングで)、一方のレジストローラー対53a−Fの搬送速度をより遅くする(例えばレジストモーター54Fに対するPWMのデューティー比をより小さくする)制御を開始する(図6参照)。また、制御部100は、端部検知センサー55−Fおよび55−Rが用紙Sの各端の検知開始時のタイミングのずれ(時間差)に基づいて、用紙Sの先端側の斜行の向きや角度を特定し、かかる特定結果に基づいて、各々のレジストローラー対53a−Fおよび53a−Rの搬送速度を制御する。本実施の形態のかかる構成および制御によれば、定着ニップの下流側で発生したスキュー成分を速やかに検知し、二次転写ニップでの用紙Sの曲がり(ひいてはトナー像の位置ずれ)の発生を抑制することができる。
上記のようなレジストローラー対53a−F(53a−R)の搬送速度の制御は、予め作成された制御テーブルを参照して行うことができる。ここで、制御テーブルには、用紙Sの斜行の程度(例えば、端部検知センサー55Fおよび55Rにより用紙Sの端部の通過が検知された時間の差)と、レジストローラー対53a−Fおよび53a−Rによる搬送速度の目標値(あるいはレジストモーター54Fおよび54Rに印加されるPWM波のデューティー比)と、を対応付けて登録しておく。
以下、図8のフローチャートを参照して、印刷ジョブの実行時におけるレジストローラーの搬送速度の制御例を説明する。図8に示す各処理は、印刷対象となる用紙Sの1枚毎に実行される。
印刷ジョブ実行開始後のステップS100において、制御部100は、上述した画像形成部40、用紙搬送部50等を制御することにより、中間転写ベルト421上にトナー像を一次転写し、用紙Sを二次転写ニップに向けて搬送することにより、中間転写ベルト421上のトナー像を二次転写ニップで用紙Sに転写させる。このとき、制御部100は、少なくとも用紙Sの搬送方向先端が定着ニップに入るまでは、用紙Sの斜行が発生していないものとみなして、レジストモーター54Fおよび54Rに印加されるPWM波のデューティー比(すなわち電圧の周期)を固定する。
ステップS110において、制御部100は、上述した端部検知センサー55Fおよび55Rの検知信号を監視して、当該用紙Sが定着部60の下流側で斜行しているか否かを判定する。具体的には、制御部100は、端部検知センサー55Fおよび55Rによる検知結果すなわち用紙Sの端部の通過タイミングが同時である場合には、用紙Sは斜行していない(ステップS110、NO)と判定して、本フローチャートの処理を終了する。
一方、制御部100は、端部検知センサー55Fおよび55Rによる検知結果(用紙Sの端部の通過タイミング)が同時でない場合、用紙Sは斜行している(ステップS110、YES)と判定して、ステップS120に移行する。
ステップS120において、制御部100は、当該用紙Sの先端側の斜行(スキュー成分)が用紙Sの二次転写ニップの部位に伝搬しないように、レジストローラー対53a−Fおよび53a−Rの搬送速度を制御する。
ステップS120の一具体例では、制御部100は、端部検知センサー55Fおよび55Rによる検知時刻の時間差を特定するとともに、上述した制御テーブルを参照して、当該時間差に対応する目標値の搬送速度になるように、レジストローラー対53a−Fおよび53a−Rを駆動するレジストモーター54Fおよび54Rを駆動制御する。
ステップS130において、制御部100は、当該用紙Sの後端がレジストローラー対53a−Fおよび53a−Rを抜けたか否かを判定する。ここで、制御部100は、用紙Sの後端が未だレジストローラー対53a−Fおよび53a−Rを抜けていない(ステップS130、NO)と判定した場合、上述したステップS120の制御を続行する。
一方、制御部100は、用紙Sの後端がレジストローラー対53a−Fおよび53a−Rを抜けた(ステップS130、YES)と判定した場合、一連の制御を終了する。
図4Aに示す例では、二次転写ニップの搬送方向の下流における用紙Sの斜行を検知する検知部の例として、用紙Sの搬送方向に直交する方向に並んで配置された一対の端部検知センサー55−F,55−Rを用いた。
検知部の他の例として、定着ニップの下流側の上方または下方に、用紙Sの搬送方向における先端側の辺を撮影するCCDカメラなどの撮影部を設ける構成としてもよい。この場合、制御部100は、当該カメラの撮影画像から、用紙Sの搬送方向における先端の辺の角度を特定し、特定された角度から斜行の有無および程度を特定し、対応するレジストローラー対53a−F(または53a−R)の搬送速度をより遅くする制御を行う。
検知部の他の例として、定着ニップの下流側に、用紙に印刷されたトナー像を読み取るイメージセンサーなどの画像読取部を設ける構成としてもよい。この場合、制御部100は、画像読取部で読み取られた用紙Sの先端側の画像から、トナー像の曲がりの角度を特定し、該特定された角度が用紙の曲がりの角度であるとみなして、対応するレジストローラー対53a−F(または53a−R)の搬送速度をより遅くする制御を行う。
以上説明したように、本実施の形態によれば、転写部の下流側で発生した用紙の斜行に対応して、転写部で用紙Sに転写される画像位置の精度向上を図ることができる。
上述した実施の形態では、レジストローラー対53a−Fおよび53a−Rを互いに別個の駆動源(レジストモーター54Fおよび54R)により回転駆動する構成とした。他の構成例として、レジストローラー対53a−Fおよび53a−Rを同一の駆動源(単一のレジストモーター)により回転駆動する構成とし、かかるレジストモーターの駆動力を公知の変速機構を介して各レジストローラー対53a−Fおよび53a−Rに伝達してもよい。この場合、用紙Sの斜行検知によりレジストローラー対53a−Fとレジストローラー対53a−Rとの搬送速度を変える際に、制御部100の制御により、変速機構におけるギヤ比等を切り換えるようにする。
上述した実施の形態では、中間転写ベルト421を用いて印刷する画像を用紙Sに二次的に転写させる転写部を備えた画像形成装置の例を説明した。他方、上記実施の形態は、印刷する画像を用紙Sに一次的に転写させる転写方式の画像形成装置(例えばモノクロプリンタなど)に対しても、同様に適用されることができる。
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。