JP2020063411A - 塗膜、塗膜の製造方法および塗膜を形成するための塗料 - Google Patents

塗膜、塗膜の製造方法および塗膜を形成するための塗料 Download PDF

Info

Publication number
JP2020063411A
JP2020063411A JP2019136749A JP2019136749A JP2020063411A JP 2020063411 A JP2020063411 A JP 2020063411A JP 2019136749 A JP2019136749 A JP 2019136749A JP 2019136749 A JP2019136749 A JP 2019136749A JP 2020063411 A JP2020063411 A JP 2020063411A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
coating film
fluoropolymer
coating
particles
group
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2019136749A
Other languages
English (en)
Inventor
瑞菜 豊田
Mizuna Toyoda
瑞菜 豊田
俊 齋藤
Takashi Saito
俊 齋藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
AGC Inc
Original Assignee
Asahi Glass Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Glass Co Ltd filed Critical Asahi Glass Co Ltd
Publication of JP2020063411A publication Critical patent/JP2020063411A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Application Of Or Painting With Fluid Materials (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)
  • Paints Or Removers (AREA)

Abstract

【課題】乾燥性および耐水性を具備する塗膜の提供。【解決手段】含フッ素重合体と、シロキサン結合を有する化合物とを含み、25℃から45℃まで昇温したときの膜厚の変化率が0.1〜4%であることを特徴とする塗膜。【選択図】なし

Description

本発明は、塗膜、塗膜の製造方法および塗膜を形成するための塗料に関する。
窯業建材の表面は、外観や耐候性等のために塗膜によって被覆される。このような塗膜としては、耐候性の点から、含フッ素重合体を含む塗膜が採用される場合がある。特に、建築物の外壁材として用いられる窯業建材においては、耐候性に優れるために塗膜の塗り替え回数が削減でき、環境保護およびコスト削減に貢献する点から、含フッ素重合体を含む塗膜が注目されている(引用文献1)。
窯業建材を塗膜によって被覆するタイミングは様々である。例えば、工場において塗膜付き窯業建材が製造され、その後施工現場に運搬されて組み立てられる場合や、あらかじめ組み立てられた窯業建材に対し、施工現場において塗膜が付与される場合がある。また、塗膜付き窯業建材を施工現場において組み立てた後、さらに別の塗膜が付与される場合もある。
このように、窯業建材が塗膜によって被覆されるタイミングが多様化している現在においては、その塗膜に要求される性能のレベルも向上している。
特開2009−185300号公報
塗膜付き窯業建材が施工現場に運搬される場合、通常、窯業建材同士は重ねられた状態で運搬される。このとき、塗膜付き窯業建材は、生産効率の点から、塗膜付与後は早急に重ね合わされ、運搬されるため、乾燥性が高いことが必要とされる。一方で、塗膜には、空気中の湿度または雨を吸水しにくいこと、つまり塗膜の耐水性が高いことも要求される。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたのであって、乾燥性および耐水性を具備する塗膜の提供を目的とする。また、上記塗膜の製造方法、および上記塗膜を形成するための塗料の提供を目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
(1) 含フッ素重合体と、シロキサン結合を有する化合物とを含み、
25℃から45℃まで昇温したときの膜厚の変化率が0.1〜4%であることを特徴とする塗膜。
(2) シロキサン結合を有する化合物に対する含フッ素重合体の質量比が、1〜50である、(1)に記載の塗膜。
(3) 含フッ素重合体を、塗膜の全質量に対して50〜90質量%含む、(1)または(2)に記載の塗膜。
(4) 含フッ素重合体が、フルオロオレフィンに基づく単位と、フッ素原子を有さず反応性基を有する単位とを含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の塗膜。
(5) 塗膜は、含フッ素重合体の粒子同士の一部が融着してなり、複数の粒子によって構成される空間がシロキサン結合を有する化合物によって充填されている塗膜であって、
塗膜の膜厚方向に垂直な断面において、粒子のうち粒子径が100〜200nmである粒子表面における、非融着部分の含有割合が、透過型電子顕微鏡を用いて分析し、算出する測定方法で0%超90%未満である、(1)〜(4)のいずれかに記載の塗膜。
(6) 界面活性剤を含む、(1)〜(5)のいずれかに記載の塗膜。
(7) シロキサン結合を有する化合物が、アルカリ金属ケイ酸塩および反応性基を有するオルガノポリシロキサンの一方または両方の縮合物である、(1)〜(6)のいずれかに記載の塗膜。
(8) シロキサン結合を有する化合物が、MO・nSiOで表されるアルカリ金属ケイ酸塩の縮合物(Mはアルカリ金属であり、nは正数である。)であり、MO・nSiOにおける、MOに対するSiOのモル比nが1〜300である、(1)〜(6)のいずれかに記載の塗膜。
(9) フッ素原子に対するアルカリ金属原子の質量比が1.0×10−4〜0.1である、(8)に記載の塗膜。
(10) シロキサン結合を有する化合物が、さらに、エポキシ基を有するオルガノシランの縮合物を含む、(8)または(9)に記載の塗膜。
(11) さらに光触媒性粒子を含む、(1)〜(10)のいずれかに記載の塗膜。
(12) 水分散性の含フッ素重合体の粒子およびアルカリ金属ケイ酸塩を含む塗料を塗布し、乾燥させて、(1)〜(11)のいずれかに記載の塗膜を形成する、塗膜の製造方法。
(13) 水分散性の含フッ素重合体の粒子およびMO・nSiOで表されるアルカリ金属ケイ酸塩を含み、
O・nSiOにおける、MOに対するSiOのモル比nが10〜270であり、
アルカリ金属ケイ酸塩に対する含フッ素重合体の質量比が2〜20であり、
含フッ素重合体を全固形分に対して50〜90質量%含むことを特徴とする塗料。
(14) さらに光触媒性粒子または光触媒前駆体を含む、(13)に記載の塗料。
(15) シロキサン結合を有する化合物が、反応性基を有するオルガノポリシロキサンの縮合物であり、
オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子に直接結合している炭素数1〜5のアルキル基、およびケイ素原子に直接結合している炭素数1〜5のアルコキシ基を有する、(1)〜(6)のいずれかに記載の塗膜。
(16) さらにゼオライトを含む、(15)に記載の塗膜。
(17) 基材と、(15)または(16)に記載の塗膜と、塗膜上に積層された、光触媒性粒子を含む塗膜とを有する、複層塗膜付き基材。
(18) 水分散性の含フッ素重合体の粒子、反応性基を有するオルガノポリシロキサンおよびゼオライトを含む塗料を基材上に塗布し、乾燥させて塗膜を形成したのち、得られた塗膜上に光触媒性粒子を含む塗料を塗布し、乾燥させて塗膜を形成して、(17)に記載の複層塗膜付き基材を得る、複層塗膜付き基材の製造方法。
(19) 水分散性の含フッ素重合体の粒子および反応性基を有するオルガノポリシロキサンを含み、
オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子に直接結合している炭素数1〜5のアルキル基、およびケイ素原子に直接結合している炭素数1〜5のアルコキシ基を有し、
オルガノポリシロキサンに対する含フッ素重合体の質量比が1〜20であり、
含フッ素重合体を全固形分に対して50〜90質量%含むことを特徴とする塗料。
本発明によれば、乾燥性および耐水性を具備する塗膜、塗膜の製造方法、ならびに塗膜を形成するための塗料を提供できる。
本発明の例1における塗膜表面を透過型電子顕微鏡を用いて観察して得られた画像である。
本発明における用語の意味は以下の通りである。
「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
単位とは、単量体の重合により直接形成された、上記単量体1分子に基づく原子団と、上記原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。重合体が含む全単位に対する、それぞれの単位の含有量(モル%)は、含フッ素重合体を核磁気共鳴スペクトル法により分析して求められ、含フッ素重合体の製造に際して使用する成分の仕込み量からも決定できる。
「(メタ)アクリル」とは「アクリル」と「メタクリル」の総称であり、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の総称である。
酸価および水酸基価は、それぞれ、JIS K 0070−3(1992)の方法に準じて測定される値である。
粒子の平均粒子径は、動的光散乱法により求められるD50の値である。なお、D50は、動的光散乱法により求めた粒子の粒度分布(実施例では、ELS−8000(大塚電子社製)を使用)において、小さな粒子側から起算した体積累計50体積%の粒子直径を表す。
ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定される中間点ガラス転移温度の値である。ガラス転移温度は、Tgともいう。
最低造膜温度は、含フッ素重合体を乾燥させたとき、亀裂のない均一な塗膜が形成される最低の温度である。本発明では、造膜温度測定装置IMC−1535型(井元製作所社製)を用いて測定される値である。最低造膜温度は、MFTともいう。
固形分の質量とは、塗料が溶媒を含む場合に、塗料から溶媒を除去した質量である。なお、溶媒以外の塗料の固形分を構成する成分に関して、その性状が液体状であっても、固形分とみなす。なお、塗料の固形分の質量は、塗料を130℃で20分加熱した後に残存する質量として求められる。
本発明の塗膜(以下、本塗膜ともいう。)は、乾燥性および耐水性に優れる。その理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。
本塗膜は、含フッ素重合体とシロキサン結合を有する化合物とを含む状態で、温度変化させた際の膜厚の変化率が特定範囲に規定されている。これにより、シロキサン結合を有する化合物により構成される立体構造に含フッ素重合体が好適に包囲されると考えられる。そのため、シロキサン結合を有する化合物によって含フッ素重合体が適度に疎である状態を維持でき、温度変化による含フッ素重合体の変化に対する適応性が高いとともに、塗膜中に保持されやすい水分等が出入りしやすいと考えられる。したがって、塗膜の乾燥性および耐水性が高度に発現すると考えられる。
本塗膜において、25℃から45℃まで昇温したときの膜厚の変化率は、本塗膜の乾燥性と耐水性とに優れる点から、0.1〜4%であり、0.3〜3.0%が好ましく、0.5〜2.5%が特に好ましい。上記膜厚の変化率は、含フッ素重合体およびシロキサン結合を有する化合物の種類または量等により適宜調節できる。
本明細書において、膜厚の変化率は、JIS 7197−1991に記載の方法に基づき、熱機械分析装置を用いて測定される値であり、本明細書の実施例においては、膜厚方向に対し0.25cmあたり5mgの圧縮荷重をかけながら25℃から45℃まで昇温したときの、25℃における塗膜の膜厚と、45℃における塗膜の膜厚との差の絶対値を、25℃における塗膜の膜厚で除算し100倍して得られる割合(%)として求められる値である。
本塗膜における含フッ素重合体は、耐候性の点から、フルオロオレフィンに基づく単位(以下、単位Fともいう。)を含む重合体であることが好ましい。
フルオロオレフィンは、水素原子の1以上がフッ素原子で置換されたオレフィンである。フルオロオレフィンは、フッ素原子で置換されていない水素原子の1以上が塩素原子で置換されていてもよい。
フルオロオレフィンを含む含フッ素重合体としては、フルオロオレフィンの単独重合体、2種以上のフルオロオレフィンの共重合体、フルオロオレフィンとフルオロオレフィン以外の単量体との共重合体等が挙げられる。
本塗膜における含フッ素重合体は、本塗膜の耐候性と、乾燥性と耐水性とに優れる点から、共重合体であることが好ましく、フルオロオレフィンとフルオロオレフィン以外の単量体との共重合体であることが特に好ましい。
フルオロオレフィンとしては、CF=CF、CF=CFCl、CF=CHF、CH=CF、CF=CFCF、CF−CH=CHF、CF−CF=CH等が挙げられる。フルオロオレフィンは、本塗膜の耐候性の観点から、CF=CFまたはCF=CFClがより好ましく、CF=CFClが特に好ましい。フルオロオレフィンは、2種以上を併用してもよい。
単位Fの含有量は、本塗膜が乾燥性と耐水性とに優れる点から、含フッ素重合体が含む全単位に対して、20〜70モル%が好ましく、30〜60モル%がより好ましく、45〜55モル%が特に好ましい。
フルオロオレフィン以外の単量体としては、フルオロオレフィン以外のフッ素原子を有する単量体(以下、単量体Rともいう)、およびフッ素原子を有さない単量体が挙げられる。
単量体Rとしては、反応性基を有してよいフルオロアルキルビニルエーテル、フルオロアルキルビニルエステル等が挙げられる。
反応性基としては、水酸基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、加水分解性シリル基、スルホ基、カルボキシ基等が挙げられる。なお、加水分解性シリル基とは、加水分解してシラノール基を生成する基である。また、スルホ基およびカルボキシ基は、イオン化して−SO または−COOとなっていてもよく、塩化して−SO Naまたは−COONa等になっていてもよい。単量体Rが反応性基を有する場合の反応性基としては、スルホ基、カルボキシ基、およびこれらの基がイオン化または塩化している基が好ましい。
含フッ素重合体が、単量体Rに基づく単位を含む場合、含フッ素重合体が含む全単位に対する単量体Rに基づく単位の含有量は、20〜80モル%が好ましい。
含フッ素重合体は、本塗膜の乾燥性と耐水性とに優れる点から、フルオロオレフィン以外の単位として、フッ素原子を有さず反応性基を有する単位(以下、単位Cともいう。)を含むことが好ましい。
含フッ素重合体が単位Cを含む場合、本塗膜における含フッ素重合体は、単位Cにおける反応性基の一部または全部を、他の成分(例えば、硬化剤等)と反応した状態で有していてもよい。つまり、本塗膜における含フッ素重合体は、硬化剤による架橋構造を有する状態で存在していてもよい。ただし、本塗膜は、シロキサン結合を有する化合物を含み、温度変化に際する膜厚の変化率が特定範囲に調節されているため、硬化剤による架橋構造を有さなくとも、塗膜が良好に形成される。
単位Cは、反応性基を有する単量体(以下、単量体Cともいう。)に基づく単位であってもよく、反応性基を有する単位を含む含フッ素重合体において、該基を異なる反応性基に変換させて得られる単位であってもよい。このような単位としては、水酸基を有する単位を含む含フッ素重合体に、ポリカルボン酸やその酸無水物等を反応させて、水酸基の一部または全部をカルボキシ基に変換させて得られる単位が挙げられる。反応性基としては、上述した単量体Rが有してよい反応性基と同様の基が挙げられる。
単位Cは、シロキサン結合を有する化合物に含フッ素重合体が包囲された状態で固定できる点から、反応性基として水酸基またはカルボキシ基を有することが好ましい。
水酸基を有する単量体Cとしては、ヒドロキシ基を有する、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル、アリルエステル、(メタ)アクリル酸エステル、アリルアルコール等が挙げられる。水酸基を有する単量体Cとしては、ヒドロキシビニルエーテルまたはヒドロキシアリルエーテルが好ましい。
水酸基を有する単量体Cとしては、式X−Zで表される単量体が好ましい。
は、CH=CHC(O)O−、CH=C(CH)C(O)O−、CH=CHOC(O)−、CH=CHCHOC(O)−、CH=CHO−またはCH=CHCHO−であり、CH=CHO−またはCH=CHCHO−であることが好ましい。
は、ヒドロキシ基を有する炭素数2〜42の1価の有機基である。有機基は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。また、有機基は、環構造からなっていてもよく、環構造を含んでいてもよい。
上記有機基としては、水酸基を有する炭素数2〜6のアルキル基、水酸基を有する炭素数6〜8のシクロアルキレン基を含むアルキル基、または水酸基を有するポリオキシアルキレン基が好ましい。
水酸基を有する単量体Cの2種以上を併用する場合、単量体Cのうち少なくとも1種は、水酸基を有するポリオキシアルキレン基を有する単量体であることが好ましい。つまり、この場合において、単位Cは、水酸基を有するポリオキシアルキレン基を有する単量体に基づく単位を含むのが好ましい。単位Cに対する、水酸基を有するポリオキシアルキレン基を有する単量体に基づく単位の比(水酸基を有するポリオキシアルキレン基を有する単量体に基づく単位/単位C)は、モル比で0.01〜1.0が好ましく、0.03〜0.50であることがより好ましい。
水酸基を有する単量体Cの具体例としては、CH=CHO−CH−cycloC10−CHOH、CH=CHCHO−CH−cycloC10−CHOH、CH=CHO−CH−cycloC10−CH−(OCHCH15OH、CH=CHOCHCHOH、CH=CHCHOCHCHOH、CH=CHOCHCHCHCHOH、およびCH=CHCHOCHCHCHCHOHが挙げられる。
なお、「−cycloC10−」はシクロへキシレン基を表し、「−cycloC10−」の結合部位は、通常1,4−である。
カルボキシ基を有する単量体Cとしては、不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシ基を有する単量体のヒドロキシ基にカルボン酸無水物を反応させて得られる単量体等が挙げられる。
カルボキシ基を有する単量体Cの具体例としては、CH=CHCOOH、CH(CH)=CHCOOH、CH=C(CH)COOH、HOOCCH=CHCOOH、CH=CH(CHn11COOHで表される単量体(ただし、n11は1〜10の整数を示す。)、CH=CHO(CHn12OC(O)CHCHCOOHで表される単量体(ただし、n12は1〜10の整数を示す。)が挙げられる。
単量体Cは、2種以上を併用してもよい。
含フッ素重合体における単位Cの含有量は、含フッ素重合体が含む全単位に対して、0.5〜40モル%が好ましく、5〜35モル%がより好ましく、10〜30モル%が特に好ましい。
含フッ素重合体は、フッ素原子を有さない単位として、反応性基を有さない単位(以下、「単位D」ともいう。)を含んでもよい。単位Dは、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル、アリルエステル、および(メタ)アクリル酸エステルから選択される少なくとも1種(以下、「単量体D」ともいう。)に基づく単位が好ましい。
単量体Dとしては、フルオロオレフィンとの共重合性および含フッ素重合体の耐候性の点から、ビニルエーテルおよびビニルエステルの一方または両方が好ましい。
単量体Dの具体例としては、エチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、酢酸ビニル、ピバル酸ビニル、ネオノナン酸ビニル(HEXION社商品名 ベオバ9)、ネオデカン酸ビニル(HEXION社商品名 ベオバ10)、バーサチック酸ビニル、安息香酸ビニル、tert−ブチル安息香酸ビニル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジルが挙げられる。
単量体Dは、2種以上を併用してもよい。
含フッ素重合体が単位Dを含む場合、単位Dの含有量は、含フッ素重合体が含む全単位に対して、5〜60モル%が好ましく、10〜50モル%が特に好ましい。
含フッ素重合体は、本塗膜の膜厚の変化率を調節する点から、含フッ素重合体が含む全単位に対して、単位Fと単位Cと単位Dとを、この順に、20〜70モル%、0.1〜35モル%、5〜60モル%含む共重合体であるのが好ましく、30〜60モル%、5〜35モル%、10〜50モル%含む共重合体であるのが特に好ましい。また、含フッ素重合体は、単位F、単位Cおよび単位Dからなるのが特に好ましい。
含フッ素重合体は、非フッ素重合体と複合化されていてもよい。非フッ素重合体とは、フッ素原子を有さない重合体である。複合化とは、上述したフルオロオレフィンの単独重合体、2種以上のフルオロオレフィンの共重合体、またはフルオロオレフィンとフルオロオレフィン以外の単量体との共重合体からなるコア部の表面に、さらにフッ素原子を含まない非フッ素単量体をシード重合してシェル部を形成して、コアシェル構造を構築することを意味する。
コア部を構成する含フッ素重合体としては、2種以上のフルオロオレフィンの共重合体が好ましい。
2種以上のフルオロオレフィンの共重合体としては、CH=CFとCF=CFとの共重合体、CH=CFとCF=CFCFとの共重合体、CH=CFとCF=CFClとの共重合体、CH=CFとCF=CFとCF=CFClとの共重合体、CH=CFとCF=CFとCF=CFCFとの共重合体、CF=CFとCF=CFCFとの共重合体等が挙げられ、耐候性およびシェル部との親和性の点から、CH=CFとCF=CFとの共重合体が好ましい。
シェル部を構成する非フッ素重合体としては、(メタ)アクリル酸エステルに基づく単位を含む重合体が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、本塗膜の耐水性の点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルは、2種以上を併用してもよい。(メタ)アクリル酸エステルは、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、加水分解性シリル基等の反応性基を有していてもよい。
含フッ素重合体が非フッ素重合体と複合化されてコアシェル構造を構成している場合、シェル部の非フッ素重合体の質量に対する、コア部の含フッ素重合体の質量の比(コア部の質量/シェル部の質量)は、10/90〜90/10が好ましく、20/80〜80/20がより好ましく、30/70〜70/30が特に好ましい。
含フッ素重合体は、二種以上を併用してもよい。本塗膜が二種以上の含フッ素重合体を含む場合、本塗膜の防汚性および防曇性等に優れる点からは、単位Fおよび単量体Rに基づく単位(以下、単位Rともいう。)を含む含フッ素重合体と、単位F、単位Cおよび単位Dを含む含フッ素重合体と、を含むことが好ましく、単位Fおよび単位Rからなる重合体と、単位F、単位Cおよび単位Dからなる重合体と、を含むことが特に好ましい。
本塗膜が、含フッ素重合体として上記二種の含フッ素重合体を含む場合、単位Fおよび単位Rを含む含フッ素重合体に対する、単位F、単位Cおよび単位Dを含む含フッ素重合体の質量比(単位F、単位Cおよび単位Dを含む含フッ素重合体の質量/単位Fおよび単位Rを含む含フッ素重合体の質量)は、5〜15が好ましい。
含フッ素重合体のTgは、本塗膜の乾燥性の点から、0〜120℃が好ましく、10〜70℃が特に好ましい。
含フッ素重合体のMFTは、本塗膜の乾燥性の点から、0〜100℃が好ましく、10〜60℃が特に好ましい。
含フッ素重合体が水酸基価を有する場合、含フッ素重合体の水酸基価は、耐水性の点から、10〜150mgKOH/gが好ましく、15〜40mgKOH/gが特に好ましい。
含フッ素重合体が酸価を有する場合、含フッ素重合体の酸価は、10〜150mgKOH/gが好ましく、15〜40mgKOH/gが特に好ましい。
含フッ素重合体は、酸価または水酸基価のどちらか一方のみを有してもよく、両方を有してもよい。含フッ素重合体が酸価および水酸基価の両方を有する場合、酸価および水酸基価の合計が、10〜150mgKOH/gであるのが好ましい。
含フッ素重合体が水酸基価または酸価を上記範囲内で有すると、シロキサン結合を有する化合物との相互作用がより良好になる。
本塗膜は、硬化剤による架橋構造を有さなくとも塗膜が良好に形成される点から、含フッ素重合体のTgが10〜70℃であり、MFTが10〜60℃であり、水酸基価が15〜40mgKOH/gであることが特に好ましい。
本塗膜は、本塗膜の乾燥性および耐水性に優れる点から、本塗膜の全質量に対して、含フッ素重合体を50〜90質量%含むことが好ましい。
含フッ素重合体の製造方法としては、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等が挙げられる。含フッ素重合体は、シロキサン結合を有する化合物によって好適に包囲できる点から、水を主成分とする溶媒中にて粒子状に分散している状態として製造されることが好ましい。水を主成分とするとは、溶媒中に水が90%以上含まれることを意味する。したがって、含フッ素重合体は、水と重合開始剤の存在下、各単量体を重合させて製造されることが好ましい。
重合においては、必要に応じて、界面活性剤、分子量調整剤(ドデシルメルカプタン、ブチルメルカプタン等)、pH調整剤等を添加してもよい。
本塗膜は、シロキサン結合を有する化合物を含む。シロキサン結合を有する化合物としては、コロイダルシリカ、オルガノポリシロキサン、または縮合してシロキサン結合を形成する前駆体(以下、「シロキサン前駆体」ともいう。)から形成される化合物等が挙げられる。シロキサン前駆体としては、オルガノシラン、上記オルガノポリシロキサンのうち反応性基を有するオルガノポリシロキサン、アルカリ金属ケイ酸塩等が挙げられる。本塗膜は、シロキサン結合を有する化合物を2種以上含んでもよく、2種以上のシロキサン前駆体から生成されるシロキサン結合を有する化合物を含んでもよい。
本塗膜は、本塗膜の硬度の点から、本塗膜の全質量に対して、シロキサン結合を有する化合物を1〜20質量%含むことが好ましい。
本塗膜において、シロキサン結合を有する化合物に対する含フッ素重合体の質量比(含フッ素重合体の質量/シロキサン結合を有する化合物の質量)は、1〜50であることが好ましい。
シロキサン結合を有する化合物としては、本塗膜の形成時に含フッ素重合体を包囲しやすく、本塗膜が乾燥性および耐水性に優れる点から、シロキサン前駆体から形成される化合物が好ましく、アルカリ金属ケイ酸塩および反応性基を有するオルガノポリシロキサンの一方または両方の縮合物が特に好ましい。
アルカリ金属ケイ酸塩は、酸等の触媒の存在または脱水により縮合してシロキサン結合を形成する。
アルカリ金属ケイ酸塩としては、MO・nSiOで表されるアルカリ金属ケイ酸塩が好ましい。なお、Mはアルカリ金属であり、nは正数である。アルカリ金属ケイ酸塩は、結晶水を有していてもよい。
O・nSiOにおけるMとしては、Li、Na、K、Rb、Cs等が挙げられ、Li、NaまたはKが好ましく、含フッ素重合体とアルカリ金属ケイ酸塩との親和性を促進する点および本塗膜の耐水性の点から、Naが特に好ましい。
O・nSiOにおけるMOに対するSiOのモル比nは、1〜300が好ましく、10〜270が好ましく、20〜50が特に好ましい。nが1以上であると、含フッ素重合体とアルカリ金属ケイ酸塩との親和性が向上し、含フッ素重合体がアルカリ金属ケイ酸塩により包囲されやすく、本塗膜の乾燥性が向上すると考えられる。nが300以下であると、残存するアルカリ金属イオンにより本塗膜に水が保持されることが抑制され、本塗膜の耐水性が向上すると考えられる。
本塗膜におけるシロキサン結合を有する化合物がアルカリ金属ケイ酸塩の縮合物である場合、本塗膜の好ましい態様は以下である。
本塗膜の全質量に対するアルカリ金属原子の含有割合は、本塗膜の耐水性の点から、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.10〜1.0質量%であることが特に好ましい。
本塗膜におけるフッ素原子に対するアルカリ金属原子の質量比(アルカリ金属原子の質量/フッ素原子の質量)は、本塗膜が乾燥性および耐水性に優れる点から、1.0〜10−4〜0.1であることが好ましく、1.0〜10−3〜0.01であることが特に好ましい。
本塗膜の全質量に対するシロキサン結合を有する化合物の含有割合は、本塗膜の耐水性の点から、1〜20質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることが特に好ましい。
本塗膜が含むシロキサン結合を有する化合物に対する含フッ素重合体の質量比(含フッ素重合体の質量/シロキサン結合を有する化合物の質量)は、本塗膜が乾燥性および耐水性に優れる点から、2〜20であることが好ましく、5〜15であることが特に好ましい。
オルガノポリシロキサンは、シロキサン結合およびケイ素原子に直接結合している有機基を有する高分子化合物である。有機基としては、アルキル基、アリール基等が挙げられ、アルキル基が好ましい。有機基として、さらに反応性基を有していてもよい。反応性基としては、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。
オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子に直接結合している反応性基をさらに有していてもよい。この場合の反応性基としては、上述した有機基が有していてもよい反応性基と同様であり、アミノ基およびアルコキシ基の一方または両方が好ましく、オルガノポリシロキサンの縮合が良好に進行する点から、アルコキシ基が特に好ましい。
反応性基を有するオルガノポリシロキサンは、シロキサン前駆体としての役割も果たす。
オルガノポリシロキサンは、含フッ素重合体との親和性の点から、ケイ素原子に直接結合しているアルキル基およびアルコキシ基の一方または両方を有することが好ましく、アルキル基およびアルコキシ基をともに有することが特に好ましい。
上記アルキル基としては、含フッ素重合体との親和性の点から、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
上記アルコキシ基としては、オルガノポリシロキサンの安定性に優れ、本塗膜を形成する際に含フッ素重合体を包囲しやすい点から、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜3のアルコキシ基がより好ましく、エトキシ基が特に好ましい。
オルガノポリシロキサンが、ケイ素原子に直接結合しているアルキル基およびアルコキシ基有する場合、上記アルコキシ基に対する上記アルキル基のモル比は、1〜5が好ましく、2〜4がより好ましく、2.5〜3.5が特に好ましい。
本塗膜におけるシロキサン結合を有する化合物が、反応性基を有するオルガノポリシロキサンの縮合物である場合、本塗膜の好ましい態様は以下である。
本塗膜の全質量に対するシロキサン結合を有する化合物の含有割合は、本塗膜の耐水性の点から、0.1〜10質量%であることが好ましく、1.0〜5.0質量%であることが特に好ましい。
本塗膜が含むシロキサン結合を有する化合物に対する含フッ素重合体の質量比(含フッ素重合体の質量/シロキサン結合を有する化合物の質量)は、本塗膜が乾燥性および耐水性を具備する点から、10〜70であることが好ましく、20〜50であることが特に好ましい。
なお、反応性基を有するオルガノポリシロキサンの縮合物において、反応性基は全部が反応に供されていてもよく、一部が未反応のまま残存していてもよい。
オルガノシランは、ケイ素原子に直接結合している有機基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物である。
オルガノシランとしては、式 SiR (OR4−pで表される加水分解性シランが好ましい。
は有機基または水素原子であり、式−Q11−R11で表される基が好ましい。
11は、炭素数1〜18のアルキレン基またはエーテル性酸素原子を含む炭素数1〜18のアルキレン基である。Q11は、炭素数3〜9のエーテル性酸素原子を含むアルキレン基であるのが好ましく、−C2mOCH−であるのが特に好ましい。mは、3〜8の整数である。
11は、水素原子、ビニル基、エポキシ基、オキセタニル基、エポキシシクロヘキシル基、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基、ウレイド基、メルカプト基またはイソシアネート基であり、本塗膜の乾燥性の点から、エポキシ基、オキセタニル基またはエポキシシクロヘキシル基が好ましく、エポキシ基が特に好ましい。
は有機基または水素原子であり、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。本塗料の貯蔵安定性の点からは、メチル基またはエチル基が好ましく、エチル基が特に好ましい。
pは1〜4の整数であり、1または2が好ましく、1が特に好ましい。
本塗料は、本塗膜の耐水性および貯蔵安定性の点から、エポキシ基およびエトキシシリル基を有するオルガノシランを含むことが特に好ましい。
オルガノシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
オルガノシランは、二種以上を併用してもよい。
本塗膜は、アルカリ金属ケイ酸塩の縮合物とオルガノシランの縮合物とを含むことが好ましい。この場合、含フッ素重合体は、反応性基、特には水酸基を有することが好ましい。
本塗膜が、オルガノシランの縮合物とアルカリ金属ケイ酸塩の縮合物とをともに含み、さらに反応性基を有する含フッ素重合体を含む場合、本塗膜において、含フッ素重合体の反応性基と、アルカリ金属ケイ酸塩が有するシラノール基とが、オルガノシランを介して部分的に相互作用するため、含フッ素重合体がアルカリ金属ケイ酸塩の縮合物に包囲され、含フッ素重合体が適度に疎である状態で維持されると考えられる。したがって、本塗膜の耐水性がより向上すると考えられる。
本塗膜は、含フッ素重合体およびシロキサン結合を有する化合物以外の成分を含んでいてもよい。上記成分としては、含フッ素重合体およびシロキサン結合を有する化合物以外の樹脂、添加剤等が挙げられる。
含フッ素重合体およびシロキサン結合を有する化合物以外の樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
添加剤としては、界面活性剤、硬化剤、硬化触媒、顔料、分散剤、消泡剤、造膜助剤、つや消し剤、レベリング剤、増粘剤、光安定剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、防汚剤、低汚染化処理剤、可塑剤等が挙げられる。なお、硬化剤は、未反応の状態で本塗膜中に残存していてもよく、含フッ素重合体において上述したように含フッ素重合体の反応性基と反応して架橋構造を形成していてもよい。ただし、上述したように、本塗膜は、硬化剤を有さなくとも本発明の効果を発現する。
上記樹脂および添加剤は、2種以上を併用してもよい。
本塗膜は更に、後述する光触媒活性を有する粒子を含んでもよい。
特に、本塗膜がシロキサン結合を有する化合物としてアルカリ金属ケイ酸塩の縮合物を含む場合において、本塗膜は光触媒活性を有する粒子を含むのが好ましい。この場合、アルカリ金属ケイ酸塩の縮合物によって、光触媒活性を有する粒子による光触媒活性から含フッ素重合体が保護されるため、含フッ素重合体の劣化が抑制されると考えられる。従って、乾燥性および耐水性に優れるとともに、単層構造かつ耐久性に優れた、光触媒活性を有する塗膜が得られると考えられる。
光触媒活性を有する粒子は、アルカリ金属ケイ酸塩および含フッ素重合体の100質量部に対して1〜100質量部含まれることが好ましく、2〜40質量部含まれることが特に好ましい。
本塗膜は、含フッ素重合体およびシロキサン前駆体を含む塗料を塗布し、乾燥させて形成される塗膜であることが好ましい。上記塗料が含む、含フッ素重合体、シロキサン結合を有する化合物およびシロキサン前駆体に関しては、本塗膜において上述したとおりである。また、上記塗料は、本塗膜が含んでもよい成分として上述した各成分をさらに含んでいてもよい。
本塗膜を形成する塗料は、含フッ素重合体が溶媒(水、有機溶剤等)に分散または溶解している塗料であってもよく、含フッ素重合体を含む固体粒子からなる粉体塗料であってもよい。本塗膜を形成するための塗料は、本発明の効果の点から、含フッ素重合体が水を主成分とする溶媒中にて粒子状に分散している塗料(以下、特定塗料ともいう。)であることが好ましい。本明細書において、水を主成分とする溶媒中に分散している含フッ素重合体の粒子を、水分散性の含フッ素重合体の粒子ともいい、単に含フッ素重合体の粒子ともいう。
特定塗料を用いて本塗膜を形成すると、本塗膜の形成過程において、シロキサン前駆体が含フッ素重合体の粒子を包囲するように縮合すると考えられる。これにより、シロキサン結合を有する化合物の立体構造が含フッ素重合体の粒子を包囲するように構成され、本塗膜の乾燥性および耐水性がさらに向上すると考えられる。
特定塗料が水分散性の含フッ素重合体を含む場合、含フッ素重合体の分散性の点から、特定塗料は界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤は、特に限定せず用いることができ、例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤が挙げられる。
特定塗料における水は、含フッ素重合体の粒子を分散させる分散媒である。分散媒は、水のみからなるか、水と水溶性有機溶媒とからなる混合溶媒が好ましい。後者の場合、水溶性有機溶媒の含有量は、水の全質量に対して、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。水溶性有機溶としては、アルコール(メタノール、エタノール、ブタノール等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン等)等が挙げられ、本塗料の貯蔵安定性の点から、アルコールが好ましく、エタノールが特に好ましい。
特定塗料は、特定塗料の貯蔵安定性および含フッ素重合体の粒子の分散安定性の点から、本塗料の全質量に対して、水を10〜90質量%含むことが好ましく、40〜60質量%含むことが特に好ましい。
特定塗料の全質量に対する含フッ素重合体の含有割合は、10〜90質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることが好ましい。
特定塗料における、フッ素重合体の粒子の平均粒子径は、本塗膜の耐水性の観点から、200nm以下が好ましく、190nm以下がより好ましく、185nm以下が特に好ましい。上記平均粒子径の下限値は、通常50nmである。
特定塗料の全質量に対するシロキサン前駆体の含有割合は、0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることが好ましい。
特定塗料が含むシロキサン前駆体がアルカリ金属ケイ酸塩である場合、特定塗料の好ましい態様は以下である。
特定塗料の全固形分に対するアルカリ金属原子の含有割合は、本塗膜の耐水性の点から、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.10〜1.0質量%であることが特に好ましい。
特定塗料におけるフッ素原子に対するアルカリ金属原子の質量比(アルカリ金属原子の質量/フッ素原子の質量)は、本塗膜が乾燥性および耐水性に優れる点から、1.0〜10−4〜0.1であることが好ましく、1.0〜10−3〜0.01であることが特に好ましい。
特定塗料の全固形分質量に対するシロキサン前駆体の含有割合は、本塗膜の耐水性の点から、1〜20質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることが特に好ましい。
特定塗料が含むシロキサン前駆体に対する含フッ素重合体の質量比(含フッ素重合体の質量/シロキサン前駆体の質量)は、本塗膜が乾燥性および耐水性に優れる点から、2〜20であることが好ましく、5〜15であることが特に好ましい。
特定塗料は、シロキサン前駆体としてアルカリ金属ケイ酸塩を含む場合、特定塗料から形成される塗膜の膜厚の変化率を調節する点から、水分散性の含フッ素重合体の粒子およびMO・nSiOで表されるアルカリ金属ケイ酸塩を含み、該MO・nSiOにおける、MOに対するSiOのモル比nが10〜270であり、アルカリ金属ケイ酸塩に対する含フッ素重合体の質量比が2〜20であり、含フッ素重合体を全固形分に対して50〜90質量%含む塗料であることが特に好ましい。このような塗料であれば、25℃から45℃まで昇温したときの膜厚の変化率が0.1〜4%である塗膜を良好に形成できる。
特定塗料が、シロキサン前駆体としてアルカリ金属ケイ酸塩を含む場合、特定塗料は、粉末状、ゾル状、もしくは、スラリー状の、光触媒活性を有する粒子または所定の処理により光触媒活性を有する粒子に転換し得る光触媒前駆体を更に含んでもよい。光触媒活性を有する粒子およびその前駆体に関しては、後述する通りである。
特定塗料が含むシロキサン前駆体が、反応性基を有するオルガノポリシロキサンである場合、特定塗料の好ましい態様は以下である。
特定塗料の全固形分質量に対するシロキサン前駆体の含有割合は、本塗膜の耐水性の点から、0.1〜10質量%であることが好ましく、1.0〜5.0質量%であることが特に好ましい。
特定塗料が含む含フッ素重合体に対するオルガノポリシロキサンの質量比は、本塗膜が乾燥性および耐水性に優れる点から、10〜70であることが好ましく、20〜50であることが特に好ましい。
特定塗料は、シロキサン前駆体として反応性基を有するオルガノポリシロキサンを含む場合、特定塗料から形成される塗膜の膜厚の変化率を調節する点から、水分散性の含フッ素重合体の粒子および反応性基を有するオルガノポリシロキサンを含み、該オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子に直接結合している炭素数1〜5のアルキル基、およびケイ素原子に直接結合している炭素数1〜5のアルコキシ基を有し、該オルガノポリシロキサンに対する含フッ素重合体の質量比が1〜20であり、含フッ素重合体を全固形分に対して50〜90質量%含む塗料であることが特に好ましい。このような塗料であれば、25℃から45℃まで昇温したときの膜厚の変化率が0.1〜4%である塗膜を良好に形成できる。
特定塗料は、オルガノシランを含んでもよい。特に、特定塗料が含むシロキサン前駆体がアルカリ金属ケイ酸塩である場合、特定塗料は、オルガノシランを含むことが好ましい。オルガノシランに関しては、本塗膜において上述したオルガノシランと同様であるので、詳細な説明を省略する。
特定塗料がオルガノシランを含む場合、特定塗料の全固形分質量に対するオルガノシランの含有割合は、1〜10質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることが特に好ましい。
特定塗料は、縮合触媒を含んでもよい。特に、特定塗料が含むシロキサン前駆体がアルカリ金属ケイ酸塩である場合、特定塗料は、添加剤として縮合触媒を含むことが好ましい。この場合、縮合触媒としては、光や熱等の照射により分解して酸を発生する化合物であればよく、塗膜形成時にシロキサン結合の生成が良好に進行する点から、熱の照射により分解して酸を発生する化合物が好ましい。
特定塗料における縮合触媒の含有割合は、アルカリ金属ケイ酸塩の縮合反応が充分に進行すると共に本塗膜の劣化が生じない点から、特定塗料が含むアルカリ金属ケイ酸塩の全質量に対して0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%が特に好ましい。
特定塗料は、ゼオライトを含んでもよい。特に、特定塗料が含むシロキサン前駆体が反応性基を有するオルガノポリシロキサンである場合、特定塗料は、添加剤としてゼオライトを含むことが好ましい。特定塗料がゼオライトを含むと、長期使用によって発生する酸等を吸着し安定化するため、耐候性に優れる。
ゼオライトとしては、A型ゼオライト、X型ゼオライト、T型ゼオライト、Y型ゼオライト、チヤバサイト、モルデナイト、エリオナイト、クリノブチロライト等が挙げられ、長期使用により発生する酸等を吸着しやすい点で、A型ゼオライトが好ましい。
特定塗料におけるゼオライトの含有割合は、特定塗料の全固形分質量に対して0.1〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%が特に好ましい。
本塗料は、本塗料が含んでよい成分として上述した各成分を混合して製造されればよい。混合順および混合方法は、特に限定されない。
本塗膜は、基材上に含フッ素重合体およびシロキサン前駆体を含む塗料を塗布して形成されることが好ましい。
本塗膜の膜厚は、本塗膜の耐久性の点から、25〜100μmが好ましく、30〜80μmが特に好ましい。
本塗膜は、顔料を含まない状態でヘイズ値が0〜3である透明な塗膜であることが好ましい。本塗膜が透明である場合、含フッ素重合体とシロキサン結合を有する化合物との親和性が高く、緻密な塗膜を形成できるため、本塗膜の耐水性がより優れる。
本塗膜は、熱機械分析装置を用いて測定される線膨張係数の絶対値が1×10−4〜1×10−3であることが好ましい。本塗膜の線膨張係数の絶対値が上記範囲内であると、本塗膜の乾燥性がより優れる。
本塗膜が特定塗料から形成される塗膜である場合、本塗膜は、水分散性の含フッ素重合体の粒子同士が融着して形成されることが好ましい。含フッ素重合体の粒子は、全部が融着していてもよく、一部が非融着部分として残存していてもよい。本塗膜は、本塗膜が乾燥性および耐水性に優れる点からは、図2に示すように、含フッ素重合体の粒子同士の一部が非融着部分として残存していることが好ましい。この場合、複数の含フッ素重合体の粒子によって構成される空間は、図2に示すように、シロキサン結合を有する化合物によって充填されていることが好ましい。なお、図2において、明コントラスト部分が含フッ素重合体の粒子であり、暗コントラスト部分がシロキサン結合を有する化合物である。
本塗膜における含フッ素重合体の粒子の融着度合は、本塗膜の膜厚方向に垂直な断面において、無作為に選出された10個の含フッ素重合体の粒子のうち粒子径が100〜200nmである粒子表面における、透過型電子顕微鏡を用いて分析し算出される非融着部分の面積の割合の平均値から判断できる。
本塗膜において、上記方法によって算出される含フッ素重合体の粒子の非融着部分の含有割合が、粒子の表面積に対して0%超90%未満であることが好ましく、10%超70%未満であることが特に好ましい。
基材の材質の具体例としては、非金属材料(樹脂、ゴム、木材等の有機質材料、コンクリート、ガラス、セラミックス、石材等の無機質材料等)、金属材料(鉄、鉄合金、アルミニウム、アルミニウム合金等)が挙げられる。
基材は、公知の表面処理がなされていてもよい。表面処理としては、金属皮膜処理、化成処理等が挙げられる。金属皮膜処理としては、電気めっき、溶融めっき、蒸着めっきが挙げられる。化成処理としては、クロメート処理、リン酸塩処理等が挙げられる。
本塗料の塗布方法としては、刷毛、ローラー、ディッピング、スプレー、ロールコーター、ダイコーター、アプリケーター、スピンコーター等の塗布装置を使用する方法等が挙げられる。
本塗膜は、本塗料を塗布して塗布層を形成し、得られた塗布層を乾燥させて形成するのが好ましい。塗布後の乾燥温度は、0〜50℃が好ましい。本塗膜は、塗布層を形成して乾燥させたのち、必要に応じて加熱硬化させて形成してもよい。加熱硬化温度としては、50〜200℃が好ましい。乾燥時間は通常30分〜2週間であり、加熱硬化時間は通常1分〜24時間である。ただし、本塗料は、硬化剤を含まず加熱硬化を行わなくとも、塗膜の形成が良好である。
本発明によれば、基材と、基材上に配置された本塗膜を有する塗膜付き基材が得られる。
本発明における塗膜付き基材は、基材と本塗膜との間に、さらに異なる塗膜を有していてもよい。このような塗膜としては、本塗膜と基材との密着性を向上させる下塗り塗膜、本発明における塗膜付き基材の耐衝撃性等を向上させる中塗り塗膜等が挙げられる。下塗り塗膜としては、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等を含む下塗り塗料により形成される塗膜が挙げられる。
本発明における塗膜付き基材は、本塗膜上にさらに異なる塗膜を有していてもよい。このような塗膜としては、光触媒活性を有する塗膜(以下、光触媒塗膜ともいう。)が挙げられる。
本塗膜は、含フッ素重合体がシロキサン結合を有する化合物に包囲されていると考えられるため、本塗膜表面に光触媒塗膜が積層されていても、含フッ素重合体が劣化しにくい。特に、光触媒活性を有する粒子(以下、光触媒性粒子ともいう。)は、他の塗膜の劣化を抑制するために表面処理され、光触媒の性能を低下させている場合があるが、光触媒活性により劣化しにくい本塗膜であれば、表面処理されていない光触媒性粒子を含む光触媒塗膜を直接積層することもできる。
さらに、本塗膜は、塗膜表面の乾燥性および温度変化に際する膜厚の変化率が特定範囲に調節されているため、本塗膜と光触媒塗膜との密着性にも優れる。したがって、光触媒塗膜が発揮する自浄作用が長期間継続するため、窯業建材用の塗膜付き基材として好適に使用できる。特に、本塗膜が含むシロキサン結合を有する化合物が、オルガノポリシロキサンの縮合物である場合、光触媒反応で発生する水素ラジカルによる分子鎖の切断を抑制できるため、本塗膜と光触媒活性を有する塗膜との界面が劣化することなく密着性により優れる。
したがって、本塗膜は、光触媒塗膜が積層された場合であっても、光触媒活性により劣化しにくく光触媒塗膜との密着性に優れるため、耐水性に優れる。
光触媒塗膜は、光触媒性粒子と、光触媒性粒子を固定するバインダーを含む。
光触媒性粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化スズ、酸化鉄等の金属酸化物の粒子が挙げられる。さらに、可視光活性を有するものとして、上記金属酸化物の結晶内に、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、銅、ニオブ、モリブデン、ロジウム、スズ、タングステン等の金属元素や、窒素、硫黄、リン、炭素等を0.01〜50質量%ドープしたものや、上記金属酸化物の粒子の表面に銅、鉄、ニッケル、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等の金属または金属化合物を担持したもの等が挙げられる。光触媒性粒子としては、光触媒塗膜の自浄作用に優れる点から、酸化チタンの粒子が好ましい。酸化チタンとしては、アナターゼ型酸化チタンが好ましい。
光触媒性粒子の粒子径は、1〜1,000nmが好ましく、2〜100nmが特に好ましい。
バインダーとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、無機皮膜を形成しうる無機系化合物等を制限なく使用できる。
光触媒性粒子は、光触媒塗膜におけるバインダーの100質量部に対して1〜100質量部含まれることが好ましく、2〜40質量部含まれることが特に好ましい。
本塗膜上に光触媒塗膜を形成する場合、本塗膜上に光触媒性粒子を含む塗料を塗布し、乾燥させて塗膜を形成すればよい。
光触媒性粒子を含む塗料は、バインダーまたは硬化してバインダーを形成するバインダー前駆体と、粉末状、ゾル状、もしくは、スラリー状の光触媒性粒子または所定の処理により光触媒性粒子に転換し得る光触媒前駆体とを混合して製造されればよい。例えば上記アナターゼ型酸化チタンは、ゾル状のアモルファス型過酸化チタンを100℃以上の温度で加熱することで、ゾル状のアナターゼ型酸化チタンとして得られる。
本塗膜を有する塗膜付き基材は、乾燥性および耐水性に優れるため、塗膜温度が40℃程度の状態で他材と積層されても塗膜表面と他材が貼りつくことがなく、かつ耐水性にも優れ、また光触媒塗膜の積層にも耐えうる。したがって、本塗膜を有する塗膜付き基材は、窯業建材として好適に用いられる。また、本塗膜を有する塗膜付き基材は、塗膜表面の親水性にも優れ、かつ塗膜のヘイズが低く透明性が高いため、防汚性および防曇性が要求される透明基材(メガネやカメラ等のレンズ、ガラスやプラスチック製の窓)、ミラー等にも好適に使用できる。
以下、例を挙げて本発明を詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの例に限定されない。例1〜7は実施例であり、例8および9は比較例である。
[略称]
BMA:ブチルメタクリレート
CHMVE:シクロヘキシルメチルビニルエーテル
CHVE:シクロヘキシルビニルエーテル
CTFE:クロロトリフルオロエチレン
EVE:エチルビニルエーテル
MMA:メチルメタクリレート
TFE:テトラフルオロエチレン
VdF:フッ化ビニリデン
重合体1水分散液:重合体が含む全単位に対して、CTFEに基づく単位を50モル%、EVEに基づく単位を46モル%、CHMVEに基づく単位を3モル%、CMEOVEに基づく単位を1モル%含む含フッ素重合体1(水酸基価15mgKOH/g、酸価0mgKOH/g、Tg16℃、MFT27℃)の粒子を含む50質量%水分散液。重合体1の粒子の平均粒子径は154nmである。
重合体2水分散液:重合体が含む全単位に対して、TFEに基づく単位を21モル%、VdFに基づく単位を54モル%、MMAに基づく単位を16モル%、BMAに基づく単位を9モル%含む重合体2(水酸基価0mgKOH/g、酸価0mgKOH/g、Tg5℃、MFT15℃)の粒子を含む50質量%水分散液。なお、重合体2は、TFEに基づく単位およびVdFに基づく単位からなる含フッ素重合体をコア部とし、MMAに基づく単位およびBMAに基づく単位をシェル部とするコアシェル構造を有しており、平均粒子径は130nmである。
S1:NaO濃度6.23質量%、SiO濃度24質量%である水溶液
S2:NaO濃度0.07質量%、SiO濃度18質量%である水溶液
S3:NaO濃度0.56質量%、SiO濃度14質量%である水溶液
S4:3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
S5:ポリメチルエトキシシロキサンの50質量%水分散液
造膜助剤:EHG(日本乳化剤社商品名)
消泡剤:デヒドラン1620(BASF社商品名)
増粘剤:ポリアクリル酸系増粘剤、TT−615(ローム&ハース社商品名プライマル)
光安定剤:Tinuvin292(BASF社商品名)
[例1〜9]
表1に記載の成分を混合して分散し、重合体の粒子が水を主とする溶媒中に分散している各塗料を得た。
スレート板(縦120mm、横60mm、板厚15mm)の表面に、下塗り塗料(大日本塗料社商品名:Vセラン#700)を、エアスプレーにて乾燥膜厚が20μmになるように塗布し、100℃で180秒間乾燥させて下塗り膜を形成した。次いで、下塗り膜の上に各塗料をエアスプレーにて乾燥膜厚が40μmになるように塗布し、100℃で180秒間乾燥させて塗膜を形成して、各塗料から形成されてなる塗膜を有する基材を得て試験板Aとし、後述の通り評価した。
また、ガラス板の表面に、各塗料をエアスプレーにて乾燥膜厚が25μmになるように塗布し、100℃で30秒間乾燥させて塗膜を形成して、各塗料から形成されてなる塗膜を有する基材を得て試験板Bとし、後述の通り評価した。
[評価方法]
(膜厚の変化率)
試験板Aに対し、熱機械分析装置(TMA6100、日立ハイテクサイエンス社製品)を用いて、膜厚の深さ方向に対し、0.25cmあたり5mgの圧縮荷重をかけながら25℃から45℃まで昇温したときの膜厚の変化率の絶対値を測定し、以下のとおり評価した。
なお、上記変化率は、25℃における塗膜の膜厚と、45℃における塗膜の膜厚との差の絶対値を、25℃における塗膜の膜厚で除算し100倍して得られる割合(%)として求められる。
(乾燥性)
試験板Aに対し、試験板を乾燥後、塗膜温度40℃以上の状態で塗膜上にガーゼを乗せ、さらにガーゼ上から20kgのおもりを乗せて、40℃で静置した。24時間後、ガーゼを剥がし、塗膜に残ったガーゼの付着量を以下のとおり評価した。
S:塗膜面にガーゼの付着が認められなかった。
A:塗膜面の5%未満にガーゼの付着が認められた。
B:塗膜面の5%以上20%未満にガーゼの付着が認められた。
C:塗膜面の20%以上にガーゼの付着が認められた。
(耐水性)
試験板Aに対し、試験板を60℃の温水に18時間浸漬後、5℃の冷水に15時間浸漬し、その後5℃で乾燥させて、塗膜の耐水性を以下のとおり評価した。
S:塗膜面の80%以上の面積に、白化やふくれの発生が認められなかった。
A:塗膜面の40%以上80%未満の面積に、白化やふくれの発生が認められなかった。
B:塗膜面の20%以上40%未満の面積に、白化やふくれの発生が認められなかった。
C:塗膜面の20%以上の面積に、白化やふくれの発生が認められた。
(ヘイズ)
試験板Bに対し、ヘイズメーター(日本電色(株)製、商品名「NDH−5000W」)を用いてJIS K7136に準拠して測定した。
A:ヘイズ値が0.1〜3である。
B:ヘイズ値が3超である。
(塗膜形成状態)
試験板Aの塗膜の膜厚方向に垂直な断面において、無作為に選出された10個の含フッ素重合体の粒子のうち粒子径が100〜200nmである粒子表面における、透過型電子顕微鏡を用いて分析される非融着部分の面積の割合の平均値を算出した。得られた平均値が0%超90%未満である場合はA、それ以外をBとした。
透過型電子顕微鏡による分析は、日立ハイテクノロジーズ社製 HT7700を用いて、加速電圧:100kv、撮影モード:HR(高分解能)の条件にて行った。なお、図1は例2における塗膜表面の画像である。
(光触媒密着性)
例4、7〜9で得られる試験板Aの塗膜面に、光触媒性粒子(ジョリパット クリーンマジックスプレータイプ、アイカ工業社製)を含む塗料を、エアスプレーにて乾燥膜厚が5〜10μmになるように塗布し、25℃で3日間乾燥させて光触媒塗膜を形成した。
光触媒塗膜を形成した試験板Aに対し、メタルハライドランプを光源とする促進耐候性試験機(ダイプラメタルウェザーDMW:商品名、ダイプラ・ウィンテス社製)を用いて、促進耐候性試験を行った。なお、試験においては、照射(63℃、40%RH×4時間、シャワー5秒間/10分間)と結露(30℃、98%RH×4時間)とを交互に1500時間にわたり繰り返した
促進耐候性試験後の塗膜表面に直径1〜2mmの純水を滴下し、着滴30秒後の液滴をビデオカメラで撮影して画像解析した。該液滴の端点と頂点を結ぶ直線の、試験片に対する角度の2倍を静的接触角の測定値とした。測定は3回行い、得られた測定値の平均値を静的接触角の値として、以下の通り評価した。静的接触角が小さいほど、光触媒塗膜が保持されている。
A:接触角が30°未満である。
B:接触角が30°以上50°未満である。
C:接触角が50°以上である。
結果を表2に示す。
(防汚性)
例1〜3、5、6で得られる試験板Aの塗膜面に、油性マジック(PILOT社商品 油性ツインマーカー青色)を付着させ、1分間静置した。次いでイオン交換水で濡らしたベンコットンで塗膜面の油性マジックを拭き取り、目視により油性マジックの濃度が低下しているかどうかを以下の基準に基づいて評価した。
S:拭き取り後における塗膜面の油性マジックの濃さが、拭き取り前の濃さと比較して5%以下である。
A:拭き取り後における塗膜面の油性マジックの濃さが、拭き取り前の濃さと比較して5%超30%以下である。
B:拭き取り後における塗膜面の油性マジックの濃さが、拭き取り前の濃さと比較して30%超80%以下である。
C:拭き取り後における塗膜面の油性マジックの濃さが、拭き取り前の濃さと比較して80%超である。
結果を表3に示す。

Claims (19)

  1. 含フッ素重合体と、シロキサン結合を有する化合物とを含み、
    25℃から45℃まで昇温したときの膜厚の変化率が0.1〜4%であることを特徴とする塗膜。
  2. 前記シロキサン結合を有する化合物に対する前記含フッ素重合体の質量比が、1〜50である、請求項1に記載の塗膜。
  3. 前記含フッ素重合体を、前記塗膜の全質量に対して50〜90質量%含む、請求項1または2に記載の塗膜。
  4. 前記含フッ素重合体が、フルオロオレフィンに基づく単位と、フッ素原子を有さず反応性基を有する単位とを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗膜。
  5. 前記塗膜は、前記含フッ素重合体の粒子同士の一部が融着してなり、複数の前記粒子によって構成される空間が前記シロキサン結合を有する化合物によって充填されている塗膜であって、
    前記塗膜の膜厚方向に垂直な断面において、前記粒子のうち粒子径が100〜200nmである粒子表面における、非融着部分の含有割合が、透過型電子顕微鏡を用いて分析し、算出する測定方法で0%超90%未満である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗膜。
  6. 界面活性剤を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗膜。
  7. 前記シロキサン結合を有する化合物が、アルカリ金属ケイ酸塩および反応性基を有するオルガノポリシロキサンの一方または両方の縮合物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗膜。
  8. 前記シロキサン結合を有する化合物が、MO・nSiOで表されるアルカリ金属ケイ酸塩の縮合物(Mはアルカリ金属であり、nは正数である。)であり、前記MO・nSiOにおける、MOに対するSiOのモル比nが1〜300である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗膜。
  9. フッ素原子に対するアルカリ金属原子の質量比が1.0×10−4〜0.1である、請求項8に記載の塗膜。
  10. 前記シロキサン結合を有する化合物が、さらに、エポキシ基を有するオルガノシランの縮合物を含む、請求項8または9に記載の塗膜。
  11. さらに光触媒性粒子を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の塗膜。
  12. 水分散性の含フッ素重合体の粒子およびアルカリ金属ケイ酸塩を含む塗料を塗布し、乾燥させて、請求項1〜11のいずれか1項に記載の塗膜を形成する、塗膜の製造方法。
  13. 水分散性の含フッ素重合体の粒子およびMO・nSiOで表されるアルカリ金属ケイ酸塩を含み、
    前記MO・nSiOにおける、MOに対するSiOのモル比nが10〜270であり、
    前記アルカリ金属ケイ酸塩に対する前記含フッ素重合体の質量比が2〜20であり、
    前記含フッ素重合体を全固形分に対して50〜90質量%含むことを特徴とする塗料。
  14. さらに光触媒性粒子または光触媒前駆体を含む、請求項13に記載の塗料。
  15. 前記シロキサン結合を有する化合物が、反応性基を有するオルガノポリシロキサンの縮合物であり、
    前記オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子に直接結合している炭素数1〜5のアルキル基、およびケイ素原子に直接結合している炭素数1〜5のアルコキシ基を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗膜。
  16. さらにゼオライトを含む、請求項15に記載の塗膜。
  17. 基材と、請求項15または16に記載の塗膜と、前記塗膜上に積層された、光触媒性粒子を含む塗膜とを有する、複層塗膜付き基材。
  18. 水分散性の含フッ素重合体の粒子、反応性基を有するオルガノポリシロキサンおよびゼオライトを含む塗料を基材上に塗布し、乾燥させて塗膜を形成したのち、得られた塗膜上に光触媒性粒子を含む塗料を塗布し、乾燥させて塗膜を形成して、請求項17に記載の複層塗膜付き基材を得る、複層塗膜付き基材の製造方法。
  19. 水分散性の含フッ素重合体の粒子および反応性基を有するオルガノポリシロキサンを含み、
    前記オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子に直接結合している炭素数1〜5のアルキル基、およびケイ素原子に直接結合している炭素数1〜5のアルコキシ基を有し、
    前記オルガノポリシロキサンに対する前記含フッ素重合体の質量比が1〜20であり、
    前記含フッ素重合体を全固形分に対して50〜90質量%含むことを特徴とする塗料。
JP2019136749A 2018-10-11 2019-07-25 塗膜、塗膜の製造方法および塗膜を形成するための塗料 Pending JP2020063411A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018192770 2018-10-11
JP2018192770 2018-10-11

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2020063411A true JP2020063411A (ja) 2020-04-23

Family

ID=70386840

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019136749A Pending JP2020063411A (ja) 2018-10-11 2019-07-25 塗膜、塗膜の製造方法および塗膜を形成するための塗料

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2020063411A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1116760B1 (en) Coated articles
JP5348126B2 (ja) コーティング剤用組成物
JP4812902B1 (ja) 防汚塗料組成物及び防汚塗膜の形成方法
TW200911905A (en) Curable fluorine-containing polymer composition
CN105745287A (zh) 包含氮丙啶化合物和非氟化聚合物的含氟聚合物涂层
WO2016076235A1 (ja) 粉体塗料用組成物、粉体塗料および塗装物品
JP6046436B2 (ja) 防汚塗膜の形成方法及び防汚塗装物
JPH08295826A (ja) 水性塗料用樹脂組成物および耐汚染性に優れた塗膜の形成方法
JP2011098282A (ja) 基材の被覆方法
JP5366440B2 (ja) 太陽電池用カバー材
JP3257288B2 (ja) 含フッ素系重合体水性分散液
JP6179649B2 (ja) 積層体
JP3489403B2 (ja) 含フッ素樹脂水性分散組成物および塗装物
WO1998046688A1 (fr) Composition de couchage resistant aux intemperies
JP5617489B2 (ja) 塗料用組成物の製造方法および塗装物品
JP2020063411A (ja) 塗膜、塗膜の製造方法および塗膜を形成するための塗料
JP2001164173A (ja) 建材用塗装物品
JPH10130581A (ja) 外板用塗膜、塗料組成物、塗膜形成方法及び被塗物
JP2008163137A (ja) 熱線高反射外装材及びその製造方法、並びに、外装仕上げ工法
WO1999061717A1 (fr) Materiau de construction pour interieur ou exterieur presentant une resistance satisfaisante a l'encrassement
JPH1067945A (ja) 熱硬化性樹脂組成物
JP5999154B2 (ja) 塗料用組成物の製造方法および塗装物品の製造方法
JP6828786B2 (ja) 水性分散体、塗膜及び塗装物品、並びに、水性分散体の製造方法
WO2006077751A1 (ja) 低汚染性塗料組成物およびそれから得られる低汚染性塗膜
WO2007018269A1 (ja) 防曇性物品およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20210825