JP2020056485A - 車両の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】噛み合い式の係合装置を解放することに伴うショックや、解放時間のバラツキを抑制することができる車両の制御装置を提供する。【解決手段】噛み合い式係合機構を係合状態から解放状態に切り替える要求がある場合に、噛み合い式係合機構が負担するトルクを連続的に低減させる(ステップS2)とともに、入力側噛み合い歯と出力側噛み合い歯との噛み合いを解消する所定荷重を作用させ(ステップS3)、入力側噛み合い歯と出力側噛み合い歯との噛み合い量が減少したことを条件に、トルク制御部による噛み合い式係合機構が負担するトルクの低減を停止する(ステップS5)ように構成されている。【選択図】図4
Description
この発明は、噛み合い式の係合機構を係合または解放させることにより駆動力源から駆動輪に伝達されるトルクを変更可能な車両の制御装置に関するものである。
特許文献1には、エンジンと駆動輪とのトルクの伝達経路に、ハイ側変速機構とロー側変速機構とを介してモータが連結されたハイブリッド車両の変速制御装置が記載されている。この変速制御装置は、ハイ側変速機構に設けられた摩擦クラッチと、ロー側変速機構に設けられた噛み合いクラッチとの係合状態を制御することにより、いずれの変速機構を介してトルクを伝達するかを切り替えるように構成されている。そして、ロー側変速機構を介してトルクを伝達している状態から、ハイ側変速機構を介してトルクを伝達する状態への変速時には、まず、摩擦クラッチの伝達トルク容量を比例的に増大させることにより、噛み合いクラッチに作用するトルクを低減させて、噛み合いクラッチの噛み合い面に作用する摩擦力を低下させる。また、変速開始から設定時間が経過した時点で、噛み合いクラッチを解放するための抜き力を所定値まで増大させる。この設定時間は、噛み合いクラッチが解放した時点におけるショックが生じない程度まで噛み合いクラッチに作用するトルクが低下すると推定される変速経過時間から所定時間を減算した時間に設定されている。このように摩擦クラッチの伝達トルク容量と噛み合いクラッチを解放するための抜き力とを制御することにより、摩擦クラッチの伝達トルク容量の増大に伴って、噛み合いクラッチに作用するトルクが低下し、その低下したトルクに基づく噛み合い面での摩擦力と、増大させた抜き力とが釣り合った時点で、噛み合いクラッチが解放される。
特許文献1に記載された変速制御装置は、変速開始から摩擦クラッチの伝達トルク容量を比例的に変化させることにより、噛み合いクラッチに作用するトルクが、抜き力で解放可能なトルク程度まで低下した時に、そのタイミングで噛み合いクラッチを解放できる。しかしながら、制動力や車両重量、あるいは路面の勾配角度などの種々の要件によって摩擦クラッチや噛み合いクラッチに作用するトルクの大きさが変動することや、噛み合いクラッチの噛み合い長さが異なっていることなどを要因として、噛み合いクラッチが解放されるまでの時間が変動する場合や、噛み合いクラッチを解放する時点における噛み合いクラッチに作用するトルクに応じてショックの大きさが変動する可能性がある。すなわち、噛み合いクラッチを安定して解放することができない可能性がある。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、噛み合い式の係合装置を解放することに伴うショックや、解放時間のバラツキを抑制することができる車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、この発明は、入力側噛み合い歯と、出力側噛み合い歯とを選択的に噛み合わせることによりトルクを伝達する噛み合い式係合機構と、前記入力側噛み合い歯と前記出力側噛み合い歯との噛み合いを解消する荷重を制御可能なアクチュエータと、前記噛み合い式係合機構が負担するトルクを低減可能なトルク制御部とを備えた車両の制御装置において、前記噛み合い式係合機構を係合状態から解放状態に切り替える要求がある場合に、前記トルク制御部により前記噛み合い式係合機構が負担するトルクを連続的に低減させるとともに、前記アクチュエータにより前記入力側噛み合い歯と前記出力側噛み合い歯との噛み合いを解消する荷重を所定荷重に制御し、前記入力側噛み合い歯と前記出力側噛み合い歯との噛み合い量が減少したことを条件に、前記トルク制御部による前記噛み合い式係合機構が負担するトルクの低減を停止する低減停止制御と、前記アクチュエータにより前記入力側噛み合い歯と前記出力側噛み合い歯との噛み合いを解消する荷重を前記所定荷重よりも増大させる抜き力増大制御との少なくともいずれか一方を実行するように構成されていることを特徴とするものである。
この発明においては、噛み合い式係合機構を解放する場合には、トルク制御部により噛み合い式係合機構が負担するトルクを連続的に低減させるとともに、アクチュエータにより入力側噛み合い歯と出力側噛み合い歯との噛み合いを解消する荷重を所定荷重に制御し、入力側噛み合い歯と出力側噛み合い歯との噛み合い量が減少したことを条件に、トルク制御部による噛み合い式係合機構が負担するトルクの低減を停止する低減停止制御と、アクチュエータにより入力側噛み合い歯と出力側噛み合い歯との噛み合いを解消する荷重を所定荷重よりも増大させる抜き力増大制御との少なくともいずれか一方を実行するように構成されている。そのため、噛み合い式係合機構に作用するトルクの変動が少ない状態で、噛み合い式係合機構を解放することができる。その結果、噛み合い式係合機構が解放するまでの時間のバラツキや、噛み合い式係合機構が解放することに伴うショックのバラツキを抑制できる。
この発明の実施形態における車両の一例を図1を参照して説明する。図1に示す車両は、いわゆるハイブリッド車両1であって、エンジン2と二つのモータ3,4とを駆動力源として備えた2モータタイプの駆動装置5を備えている。第1モータ3は、発電機能のあるモータ(すなわちモータ・ジェネレータ:MG1)によって構成されている。この第1モータ3によって、エンジン2の回転数を制御するとともに、第1モータ3で発電された電力を第2モータ4に供給し、その第2モータ4が出力する駆動トルクを走行のための駆動トルクに加えることができるように構成されている。なお、第2モータ4は発電機能のあるモータ(すなわちモータ・ジェネレータ:MG2)によって構成することができる。
エンジン2には、動力分割機構6が連結されている。この動力分割機構6は、エンジン2から出力されたトルクを第1モータ3側と出力側とに分割する機能を有する分割部7と、そのトルクの分割率を変更する機能を有する変速部8とにより構成されている。
分割部7は、三つの回転要素によって差動作用を行う構成であればよく、遊星歯車機構を採用することができる。図1に示す例では、シングルピニオン型の遊星歯車機構によって構成されている。図1に示す分割部7は、サンギヤ9と、サンギヤ9に対して同心円上に配置された、内歯歯車であるリングギヤ10と、これらサンギヤ9とリングギヤ10との間に配置されてサンギヤ9とリングギヤ10とに噛み合っているピニオンギヤ11と、ピニオンギヤ11を自転および公転可能に保持するキャリヤ12とにより構成されている。そのサンギヤ9が主に反力要素として機能し、リングギヤ10が主に出力要素として機能し、キャリヤ12が主に入力要素として機能する。
エンジン2が出力した動力が前記キャリヤ12に入力されるように構成されている。具体的には、エンジン2の出力軸13に、動力分割機構6の入力軸14が連結され、その入力軸14がキャリヤ12に連結されている。なお、キャリヤ12と入力軸14とを直接連結する構成に替えて、歯車機構などの伝動機構を介してキャリヤ12と入力軸14とを連結してもよい。また、その出力軸13と入力軸14との間にダンパ機構やトルクコンバータなどの機構を配置してもよい。
サンギヤ9に第1モータ3が連結されている。図1に示す例では、分割部7および第1モータ3は、エンジン2の回転中心軸線と同一の軸線上に配置され、第1モータ3は分割部7を挟んでエンジン2とは反対側に配置されている。この分割部7とエンジン2との間で、これら分割部7およびエンジン2と同一の軸線上に、その軸線の方向に並んで変速部8が配置されている。
変速部8は、シングルピニオン型の遊星歯車機構によって構成されており、サンギヤ15と、サンギヤ15に対して同心円上に配置された内歯歯車であるリングギヤ16と、これらサンギヤ15とリングギヤ16との間に配置されてこれらサンギヤ15およびリングギヤ16に噛み合っているピニオンギヤ17と、ピニオンギヤ17を自転および公転可能に保持しているキャリヤ18とを有し、サンギヤ15、リングギヤ16、およびキャリヤ18の三つの回転要素によって差動作用を行う差動機構である。この変速部8におけるサンギヤ15に分割部7におけるリングギヤ10が連結されている。また、変速部8におけるリングギヤ16に、出力ギヤ19が連結されている。
上記の分割部7と変速部8とが複合遊星歯車機構を構成するように噛み合い式の第1クラッチ機構CL1が設けられている。第1クラッチ機構CL1は、一対の回転要素を選択的に連結するように構成されており、図1に示す例では、変速部8におけるキャリヤ18を、分割部7におけるキャリヤ12に選択的に連結するように構成されている。この第1クラッチ機構CL1を係合させることにより分割部7におけるキャリヤ12と変速部8におけるキャリヤ18とが連結されてこれらが入力要素となり、また分割部7におけるサンギヤ9が反力要素となり、さらに変速部8におけるリングギヤ16が出力要素となった複合遊星歯車機構が形成される。
さらに、変速部8の全体を一体化させるための噛み合い式の第2クラッチ機構CL2が設けられている。この第2クラッチ機構CL2は、変速部8におけるキャリヤ18とリングギヤ16もしくはサンギヤ15とを、あるいはサンギヤ15とリングギヤ16とを連結するなどの少なくともいずれか二つの回転要素を連結するためのものである。すなわち、第2クラッチ機構CL2は、第1クラッチ機構CL1により連結される一対の回転要素とは異なる他の一対の回転要素を連結するものであり、図1に示す例では、第2クラッチ機構CL2は、変速部8におけるキャリヤ18とリングギヤ16とを連結するように構成されている。
そして、第1クラッチ機構CL1および第2クラッチ機構CL2は、エンジン2および分割部7ならびに変速部8と同一の軸線上に配置され、かつ変速部8を挟んで分割部7とは反対側に配置されている。なお、各クラッチ機構CL1,CL2同士は、図1に示すように、半径方向で内周側と外周側とに並んだ状態に配置されていてもよく、あるいは軸線方向に並んで配置されていてもよい。
上記のエンジン2や分割部7あるいは変速部8の回転中心軸線と平行にカウンタシャフト20が配置されている。前記出力ギヤ19に噛み合っているドリブンギヤ21がこのカウンタシャフト20に取り付けられている。また、カウンタシャフト20にはドライブギヤ22が取り付けられており、このドライブギヤ22が終減速機であるデファレンシャルギヤユニット23におけるリングギヤ24に噛み合っている。さらに、前記ドリブンギヤ21には、第2モータ4におけるロータシャフト25に取り付けられたドライブギヤ26が噛み合っている。したがって、前記出力ギヤ19から出力された動力もしくはトルクに、第2モータ4が出力した動力もしくはトルクを、上記のドリブンギヤ21の部分で加えるように構成されている。このようにして合成された動力もしくはトルクをデファレンシャルギヤユニット23から左右のドライブシャフト27に出力し、その動力やトルクが前輪28R,28Lに伝達されるように構成されている。
図1に示す例では、第1モータ3から出力された駆動トルクを、前輪28R,28Lに伝達するために、出力軸13または入力軸14を選択的に固定できる摩擦式あるいは噛み合い式のブレーキ機構B1が設けられている。すなわち、ブレーキ機構B1を係合して出力軸13または入力軸14を固定することにより、分割部7におけるキャリヤ12や、変速部8におけるキャリヤ18を反力要素として機能させ、分割部7におけるサンギヤ9を入力要素として機能させることができるように構成されている。なお、ブレーキ機構B1は、第1モータ3が駆動トルクを出力した場合に、反力トルクを発生させることができればよく、出力軸13または入力軸14を完全に固定する構成に限らず、要求される反力トルクを出力軸13または入力軸14に作用させることができればよい。または、出力軸13や入力軸14が、エンジン2の駆動時に回転する方向とは逆方向に回転することを禁止するワンウェイクラッチをブレーキ機構B1として設けてもよい。
上記のエンジン2、各モータ3,4、各クラッチ機構CL1,CL2、およびブレーキ機構B1を制御するための電子制御装置(ECU)29が設けられている。このECU29は、マイクロコンピュータを主体にして構成され、ハイブリッド車両1に搭載された種々のセンサからデータが入力され、その入力されたデータと、予め記憶されているマップや演算式などとに基づいて、エンジン2、各モータ3,4、各クラッチ機構CL1,CL2、およびブレーキ機構B1に指令信号を出力するように構成されている。そのECU29に入力される信号は、例えば、車速、アクセル開度、第1モータ(MG1)3の回転数、第2モータ(MG2)4の回転数、エンジン2の出力軸13の回転数(エンジン回転数)、変速部8におけるリングギヤ16またはカウンタシャフト20の回転数である出力回転数、各クラッチ機構CL1,CL2やブレーキ機構B1に設けられたピストンのストローク量、図示しない蓄電装置の温度、各モータ3,4を制御するためのインバータなどの電力制御装置の温度、第1モータ3の温度、第2モータ4の温度、分割部7や変速部8などを潤滑するオイル(ATF)の温度、蓄電装置の充電残量(以下、SOCと記す)などである。
上記のECU29は、要求される駆動力や車速、あるいはSOCなどの種々の条件に応じてエンジン2から駆動トルクを出力して走行するHV走行モードと、エンジン2から駆動トルクを出力することなく、第1モータ3や第2モータ4から駆動トルクを出力して走行するEV走行モードとを選択的に設定する。さらに、HV走行モードは、第1モータ3を低回転数で回転させた場合(「0」回転を含む)に、変速部8におけるリングギヤ16の回転数よりもエンジン2(または入力軸14)の回転数が高回転数となるHV-Loモードと、変速部8におけるリングギヤ16の回転数よりもエンジン2(または入力軸14)の回転数が低回転数となるHV-Hiモードと、変速部8におけるリングギヤ16の回転数とエンジン2(または入力軸14)の回転数が同一である直結モードとを選択的に設定する。
なお、EV走行モードは、第1モータ3から出力されたトルクの増幅率が比較的大きいEV-Loモードと、第1モータ3から出力されたトルクの増幅率が比較的小さいEV-Hiモードと、第2モータ4のみから駆動トルクを出力するシングルモードとを設定することができる。上記のEV-Loモードは、第1クラッチ機構CL1およびブレーキ機構B1を係合することにより設定され、EV-Hiモードは、第2クラッチ機構CL2およびブレーキ機構B1を係合することにより設定され、シングルモードは、各クラッチ機構CL1,CL2およびブレーキ機構B1を解放することにより設定される。
上記のHV-Loモードは、第1クラッチ機構CL1のみを係合することにより設定される走行モードであり、エンジン2から出力されたトルクを前輪28R,28Lに伝達するために、第1モータ3から反力トルクを発生させる。その場合、第1モータ3が発電機として機能するときには、第1モータ3により発電された電力が、第2モータ4に供給されて、エンジン2から動力分割機構6を介して伝達されたトルクに、ドリブンギヤ21の部分で第2モータ4から出力されたトルクが加算される。
また、HV-Hiモードは、第2クラッチ機構CL2のみを係合することにより設定される走行モードであり、HV-Loモードと同様に、エンジン2から出力されたトルクを前輪28R,28Lに伝達するために、第1モータ3から反力トルクを発生させる。その場合、第1モータ3が発電機として機能するときには、第1モータ3により発電された電力が、第2モータ4に供給されて、エンジン2から動力分割機構6を介して伝達されたトルクに、ドリブンギヤ21の部分で第2モータ4から出力されたトルクが加算される。
さらに、直結モードは、第1クラッチ機構CL1および第2クラッチ機構CL2を係合することにより設定される走行モードであり、動力分割機構6を構成する各回転要素が一体に回転する。すなわち、HV-LoモードやHV-Hiモードと異なり、第1モータ3から反力トルクを発生させることなく、エンジン2から前輪28R,28Lにトルクが伝達される。なお、直結モードでは、第1モータ3から駆動トルクを出力することにより、動力分割機構6を介して伝達されるトルクを増大させることができ、または第1モータ3から回生トルクを出力することにより、動力分割機構6を介して伝達されるトルクを低減させることができる。
上述した第1クラッチ機構CL1および第2クラッチ機構CL2の構成を説明するための模式図を図2に示している。図2に示す例では、入力軸14やキャリヤ12と一体となって回転するように構成された第1回転部材30と、キャリヤ18と一体となって回転するように構成された第2回転部材31とにより第1クラッチ機構CL1が構成されており、第2回転部材31と、リングギヤ16や出力ギヤ19と一体となって回転するように構成された第3回転部材32とにより第2クラッチ機構CL2が構成されている。
第1回転部材30における第2回転部材31に対向した面には、第1回転部材30の回転方向(図における左右方向)に所定の間隔を空けて複数の噛み合い歯(以下、第1噛み合い歯と記す)30aが形成されている。同様に、第2回転部材31における第1回転部材30に対向した面には、第1噛み合い歯30aに噛み合うように、第2回転部材31の回転方向に所定の間隔を空けて複数の噛み合い歯(以下、第2噛み合い歯と記す)31aが形成されている。さらに、第3回転部材32における第2回転部材31に対向した面には、第3回転部材32の回転方向(図における左右方向)に所定の間隔を空けて複数の噛み合い歯32aが形成されている。同様に、第2回転部材31における第3回転部材32に対向した面には、第3回転部材32に形成された複数の噛み合い歯32aに噛み合うように、第2回転部材31の回転方向に所定の間隔を空けて複数の噛み合い歯31bが形成されている。
また、図2に示す例では、第1回転部材30を第2回転部材31側に押圧する荷重と、第2回転部材31から離隔する荷重とを発生可能な第1アクチュエータ33が、第1回転部材30に連結され、同様に第3回転部材32を第2回転部材31側に押圧する荷重と、第2回転部材31から離隔する荷重とを発生可能な第2アクチュエータ34が、第3回転部材32に連結されている。なお、これらのアクチュエータ33,34は、電磁アクチュエータであってもよく、油圧アクチュエータであってもよい。
図2に示す例では、第1クラッチ機構CL1および第2クラッチ機構CL2が係合した直結モードを設定している状態を示してある。このように各クラッチ機構CL1,CL2を係合した状態からいずれか一方のクラッチ機構CL2(CL1)を解放させて、HV-HiモードやHV-Loモードを設定する場合には、その解放するクラッチ機構CL2(CL1)に作用するトルクを低下させるとともに、第1回転部材30または第3回転部材32を第2回転部材31から離隔させる方向の荷重を、第1回転部材30または第3回転部材32に作用させる。
図3は、第2クラッチ機構CL2を解放する直前の状態を示しており、図3に示す例では、第1噛み合い歯30aにおける回転方向に向いた側面と、その側面に対向した第2噛み合い歯31aの側面とを接触させるとともに、その接触面に作用する荷重を増大させる。つまり、第1クラッチ機構CL1が負担するトルクを増大させる。これは、第1モータ3のトルクを制御することにより実行できる。そのように第1クラッチ機構CL1が負担するトルクを増大させることに伴って、第2クラッチ機構CL2が負担するトルクが減少するため、第2クラッチ機構CL2における噛み合い歯同士の接触面に作用する摩擦力を低減できる。そのように摩擦力を低減した状態で、第3回転部材32を第2回転部材31から離隔させる方向に第2アクチュエータ34から荷重を作用させることにより、第3回転部材32が第2回転部材31から離隔して、第2クラッチ機構CL2を解放させる。
この発明の実施形態における制御装置は、上述したように噛み合い式のクラッチ機構を解放させる際に、そのクラッチ機構を解放することに伴うショックや、その解放時間のバラツキを抑制するように構成されている。その制御の一例を図4に示している。図4に示す例では、まず、走行モードの切り替え要求があるか否かを判断する(ステップS1)。より具体的には、現時点で係合しているクラッチ機構の解放を伴う走行モードの切り替え要求があるか否かを判断する。このステップS1は、例えば、車速と要求駆動力とに応じて設定するべき走行モードを定めたマップをECU29に予め記憶しておき、そのマップと、車速センサやアクセル開度センサによって検出された信号とに基づいて判断することができる。
走行モードの切り替え要求がないことによりステップS1で否定的に判断された場合は、そのままこのルーチンを一旦終了する。それとは反対に走行モードの切り替え要求があることによりステップS1で肯定的に判断された場合は、解放するクラッチ機構に作用するトルクを低減させるトルク低減制御を実行する(ステップS2)。このステップS2は、上述したように第1モータ3のトルクを制御することにより実行可能である。より具体的には、直結モードからHV-Loモードへの切り替え時には、第2クラッチ機構CL2が、ステップS2で対象とする解放するクラッチ機構に相当し、その第2クラッチ機構CL2に作用するトルクは、第1モータ3からトルクを出力することにより実行可能である。その際、第2クラッチ機構CL2に作用するトルクを急激に低下させると、ショックが生じる可能性があるため、予め定められた変化率で第2クラッチ機構CL2に作用するトルクを低下させる。なお、以下の説明では、便宜上、直結モードからHV-Loモードへの切り替え、すなわち、第2クラッチ機構CL2を解放させる場合について説明する。
第2クラッチ機構CL2に作用するトルクを低減させるトルク低減制御を実行した後に、第3回転部材32を第2回転部材31から離隔させるための荷重(抜き力)を第1所定荷重に設定して、第2アクチュエータ34から出力する(ステップS3)。この第1所定荷重は、第2クラッチ機構CL2を解放した時点で車両1にショックが生じない程度まで、第2クラッチ機構CL2に作用するトルクが低下した時点での第2クラッチ機構CL2のそれぞれの噛み合い歯に作用する摩擦力と、同一の値に定められている。また、ステップS3は、例えば、第2クラッチ機構CL2を解放した時点で車両1にショックが生じない程度まで、第2クラッチ機構CL2に作用するトルクが低下する時間を、第1モータ3のトルクの変化率などから求め、その求められた時間から余裕代分の時間を減算した設定時間が、第1モータ3のトルクを変更させ始めてから経過した時点で、実行するように構成されていてもよい。これは、第2アクチュエータ34から長期間に亘って第3回転部材32を第2回転部材31から離隔させる荷重を発生させることに伴うエネルギー損失を抑制するためである。
上述したように第2クラッチ機構CL2に作用するトルクを低下させつつ、第3回転部材32が第2回転部材31から離隔する荷重を作用させることにより、第2クラッチ機構CL2のそれぞれの噛み合い歯に作用する摩擦力が、第3回転部材32を第2回転部材31から離隔させる荷重以下となった時点で、第3回転部材32が第2回転部材31から離隔し始める。したがって、ステップS3についで、第2クラッチ機構CL2の噛み合い長さが減少したか否かを判断する(ステップS4)。このステップS4は、第3回転部材32のストローク量を検出するセンサなどの検出値に基づいて判断することができる。
第2クラッチ機構CL2の噛み合い長さが減少していないことによりステップS4で否定的に判断された場合は、第2クラッチ機構CL2の噛み合い長さが減少するまでステップS4を繰り返し実行する。それとは反対に、第2クラッチ機構CL2の噛み合い長さが減少したことによりステップS4で肯定的に判断された場合は、トルク低減制御を停止し(ステップS5)、第2クラッチ機構CL2が解放したか否かを判断する(ステップS6)。このステップS6は、ステップS4と同様に、第3回転部材32のストローク量を検出するセンサなどの検出値に基づいて判断することができる。または、第2クラッチ機構CL2が解放されることにより、第1モータ3などの回転数が変動するため、第1モータ3の回転数を検出するセンサや、エンジン回転数を検出するセンサなどの検出値が変動したか否かなどに基づいて判断することができる。
第2クラッチ機構CL2が解放していないことによりステップS6で否定的に判断された場合は、第2クラッチ機構CL2が解放されるまで、ステップS6を繰り返し実行する。すなわち、第2クラッチ機構CL2が解放されるまで、第2クラッチ機構CL2に作用するトルクを一定に保つとともに、第2アクチュエータ34から一定の第1所定荷重を出力し続ける。それとは反対に、第2クラッチ機構CL2が解放したことによりステップS6で肯定的に判断された場合は、第3回転部材32を第2回転部材31から離隔させるための荷重を「0」に設定して(ステップS7)、このルーチンを一旦終了する。
図5は、第2クラッチ機構CL2を解放させる際における第2クラッチ機構CL2に作用するトルク、抜き力、噛み合い長さの変化を説明するためのタイムチャートである。なお、図4に示す制御を実行した場合における変化を実線で示し、第2クラッチ機構CL2に作用するトルクを低減するトルク低減制御を実行し続けた場合における変化を破線で示している。
図5に実線で示すように走行モードの切り替え要求があることにより、第2クラッチ機構CL2に作用するトルクはt0時点から比例的に低下させられている。その際には、抜き力は、「0」に維持されており、その結果、噛み合い長さも所定値に維持されている。
ついで、第2クラッチ機構CL2を解放した時点で車両1にショックが生じない程度まで、第2クラッチ機構CL2に作用するトルクが低下する時間から余裕代分の時間を減算した設定時間が経過したt1時点から、抜き力が増大させられている。その場合、第2クラッチ機構CL2の各噛み合い歯に作用する摩擦力は、抜き力よりも大きいため、噛み合い長さは所定値に維持されている。
そして、第2クラッチ機構CL2を解放した時点で車両1にショックが生じない程度まで、第2クラッチ機構CL2に作用するトルクが低下したt2時点で、抜き力が第2クラッチ機構CL2の各噛み合い歯に作用する摩擦力以上となることにより、噛み合い長さが減少している。その結果、図4の制御例におけるステップS4で肯定的に判断されるため、第2クラッチ機構CL2に作用するトルクを低減させるトルク低減制御が停止させられ、第2クラッチ機構CL2に作用するトルクが一定に保たれている。
そのように第2クラッチ機構CL2に作用するトルクが一定に保たれ、かつ抜き力を作用させ続けることにより、抜き力が第2クラッチ機構CL2の各噛み合い歯に作用する摩擦力以上となる状態が維持されるため、噛み合い長さが比例的に減少し、t3時点で第2クラッチ機構CL2が解放される。
一方、図5に破線で示すように、第2クラッチ機構CL2に作用するトルクを低減させるトルク低減制御を実行し続けると、すなわち、第1モータ3のトルクを増大させ続けると、図2および図3に示す構成では、t4時点で第2クラッチ機構CL2の噛み合い方向が反転して、反対側の噛み合い面が接触することにより、その接触面に作用する摩擦力がt5時点で抜き力以上となるため、噛み合い長さの減少が停滞し、その結果、第2クラッチ機構CL2を解放できなくなっている。
上述したように噛み合い長さが減少した時点で、第2クラッチ機構CL2に作用するトルクを一定に保ち、かつ抜き力を作用させ続けることにより、第2クラッチ機構CL2の解放時に第2クラッチ機構CL2に作用するトルクを一定に保てるため、その解放に伴うショックのバラツキを抑制できる。また、第2クラッチ機構CL2が解放し始めてから、すなわち噛み合い長さが減少し始めてからは、抜き力から摩擦力を減算した第3回転部材32に作用する荷重を一定に保つことができるため、第2クラッチ機構CL2が解放するまでの時間のバラツキを抑制できる。
この発明の実施形態における制御装置は、解放するクラッチ機構に作用するトルクがほぼ一定の間に、そのクラッチ機構を解放することができればよい。そのため、上述した制御例では、解放するクラッチ機構に作用するトルクを一定に保って、クラッチ機構を解放させるように構成しているが、解放するクラッチ機構に作用するトルクの変動幅が少ないうちにクラッチ機構を解放させるように構成してもよい。
その制御例を図6に示してある。なお、図4に示す制御例と同一のステップには同一のステップ番号を付してその説明を省略する。図6に示す例では、第2クラッチ機構CL2の噛み合い長さが低下したことによりステップS4で肯定的に判断された場合は、図4に示す例とは異なり、第2クラッチ機構CL2に作用するトルクを低減するトルク低減制御を継続したまま、抜き力を第2所定荷重に増大させ(ステップS10)、ステップS6に移行する。なお、第2所定荷重は、噛み合い長さが長いほど大きな値に設定することが好ましい。
その制御例を実行して第2クラッチ機構CL2を解放させる際における第2クラッチ機構CL2に作用するトルク、抜き力、噛み合い長さの変化を説明するためのタイムチャートを図7に示してある。図7に示す例では、噛み合い長さが減少し始めたt2時点で、抜き力を第2所定荷重に増大させている。その結果、噛み合い長さが急激に減少して、t10時点で第2クラッチ機構CL2が解放されている。したがって、t2時点からt10時点までの時間が短縮されることにより、第2クラッチ機構CL2に作用するトルクの変化幅が小さくなる。
上述したように制御することにより、第2クラッチ機構CL2に作用するトルクの変化幅が小さいうちに第2クラッチ機構CL2を解放させることができるため、第2クラッチ機構CL2の解放時に第2クラッチ機構CL2に作用するトルクのバラツキを抑制できる。その結果、その解放に伴うショックのバラツキを抑制できる。また、第2クラッチ機構CL2が解放し始めてから、すなわち噛み合い長さが減少し始めてからは、抜き力を大きくすることにより、極短時間で第2クラッチ機構CL2を解放することができ、その時間のバラツキを抑制できる。
また、噛み合い式の係合機構は、解放開始時における噛み合い長さにバラツキがある場合があり、解放するまでの時間や、解放時に作用するトルクの大きさなどにバラツキが生じる可能性がある。そのため、解放開始時に、一旦、噛み合い長さを調整することが好ましい。その制御の一例を図8に示してある。なお、図8に示す例は、噛み合い長さを調整する制御例について説明するためのフローチャートであり、図4や図6に示す制御例と組み合わせてもよい。また、図4や図6と同様のステップについては同一のステップ番号を付してその説明を省略する。
図8に示す例では、トルク低減制御が実行された後でかつ抜き力を第1所定荷重に設定する前に、噛み合い長さが長くなるように所定の挿入力を発生させる(ステップS20)。この挿入力は、第2クラッチ機構CL2に作用するトルクに関わらず、最大噛み合い長さまで挿入可能な荷重に設定してもよく、挿入力を発生させる時点における第2クラッチ機構CL2に作用するトルクに応じた値であってもよい。また、ここでは、噛み合い長さを増大させる方向に荷重を作用させる例を説明しているが、例えば、噛み合い歯の摩擦係数を局部的に大きく形成するなどにより、噛み合い長さを減少させる際における開始位置を定めるための位置決め構造を備えている場合には、ステップS20でその摩擦力以下の抜き力を発生させて、噛み合い長さを調整するように構成してもよい。
図9には、図8に示す制御例を実行して第2クラッチ機構CL2を解放させる際における第2クラッチ機構CL2に作用するトルク、抜き力、噛み合い長さの変化を説明するためのタイムチャートを示している。なお、図9では、図8に示す制御例の効果を説明するためのタイムチャートを示しており、トルク低減制御を停止することや、抜き力を増大させる制御は実行していない。また、図9では、噛み合い長さが比較的長い第1噛み合い長さから単に第2クラッチ機構を解放した例を破線で示し、噛み合い長さが第1噛み合い長さよりも短い第2噛み合い長さから単に第2クラッチ機構を解放した例を一点鎖線で示し、噛み合い長さが第2噛み合い長さである状態から図8に示す制御例を実行して第2クラッチ機構を解放した例を実線で示している。
図9に示す例では、t1時点で挿入力が一時的に増大させた後に、抜き力を発生させている。その結果、t1時点で噛み合い長さが増大するとともに、t2時点までの間は、噛み合い長さが増大した状態が維持されている。そして、t2時点で第2クラッチ機構CL2の噛み合い歯に作用する摩擦力よりも抜き力が大きくなることにより噛み合い長さが減少している。
上述したように制御することにより、噛み合い長さのバラツキがクラッチ機構の解放時間のバラツキに影響することを抑制できる。また、クラッチ機構が解放される時点にクラッチ機構に作用するトルクの大きさにバラツキが生じることを抑制することができ、その結果、クラッチ機構を解放することに伴うショックの大きさのバラツキを抑制することができる。
なお、この発明の実施形態における噛み合い式の係合機構は、図1に示す構成の車両に搭載されたものに限定されず、例えば、エンジンのみを備えたガソリン車や、モータのみを備えた電気自動車などに搭載されていてもよい。また、この係合機構は、従来知られている有段式の変速機構などの種々の変速機構に設けられたものであってもよい。さらに、解放する噛み合い式の係合機構に作用するトルクを低減させる手段は、第1モータのトルク制御によるものに限らず、例えば、他の摩擦クラッチ機構の伝達トルク容量を制御することにより実行してもよい。
さらに、噛み合い式の係合機構は、例えば、係合または解放するように可動する回転部材に、解放側の荷重を常時作用させるリターンスプリングと、係合側に荷重を発生させるアクチュエータとにより構成され、そのアクチュエータの制御量を調整することにより、抜き力や挿入力を制御するように構成してもよい。
1…ハイブリッド車両、 2…エンジン、 3,4…モータ、 5…駆動装置、 6…動力分割機構、 7…分割部、 8…変速部、 9,15…サンギヤ、 10,16,24…リングギヤ、 12,18…キャリヤ、 13…出力軸、 14…入力軸、 20…カウンタシャフト、 27…ドライブシャフト、 28R,28L…前輪、 29…ECU(電子制御装置)、 CL1,CL2…クラッチ機構、 30,31,32…回転部材、 30a,31a,31b,32a…噛み合い歯、 33,34…アクチュエータ。
Claims (1)
- 入力側噛み合い歯と、出力側噛み合い歯とを選択的に噛み合わせることによりトルクを伝達する噛み合い式係合機構と、前記入力側噛み合い歯と前記出力側噛み合い歯との噛み合いを解消する荷重を制御可能なアクチュエータと、前記噛み合い式係合機構が負担するトルクを低減可能なトルク制御部とを備えた車両の制御装置において、
前記噛み合い式係合機構を係合状態から解放状態に切り替える要求がある場合に、前記トルク制御部により前記噛み合い式係合機構が負担するトルクを連続的に低減させるとともに、前記アクチュエータにより前記入力側噛み合い歯と前記出力側噛み合い歯との噛み合いを解消する荷重を所定荷重に制御し、
前記入力側噛み合い歯と前記出力側噛み合い歯との噛み合い量が減少したことを条件に、前記トルク制御部による前記噛み合い式係合機構が負担するトルクの低減を停止する低減停止制御と、前記アクチュエータにより前記入力側噛み合い歯と前記出力側噛み合い歯との噛み合いを解消する荷重を前記所定荷重よりも増大させる抜き力増大制御との少なくともいずれか一方を実行するように構成されている
ことを特徴とする車両の制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018189261A JP2020056485A (ja) | 2018-10-04 | 2018-10-04 | 車両の制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2018189261A JP2020056485A (ja) | 2018-10-04 | 2018-10-04 | 車両の制御装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2020056485A true JP2020056485A (ja) | 2020-04-09 |
Family
ID=70106886
Family Applications (1)
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JP2018189261A Pending JP2020056485A (ja) | 2018-10-04 | 2018-10-04 | 車両の制御装置 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2020056485A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE112021001877T5 (de) | 2020-03-26 | 2023-02-02 | Denso Corporation | Sicherheitssystem |
-
2018
- 2018-10-04 JP JP2018189261A patent/JP2020056485A/ja active Pending
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