JP2020055747A - 炭素膜およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】自立性および導電性に優れる炭素膜ならびにその製造方法を提供する。【解決手段】単層繊維状炭素ナノ構造体と、多層繊維状炭素ナノ構造体とを含み、該単層繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が500m2/g以上である、炭素膜。また、BET比表面積が500m2/g以上の単層繊維状炭素ナノ構造体と、多層繊維状炭素ナノ構造体と、分散剤と、溶媒とを含有する繊維状炭素ナノ構造体分散液から、該溶媒を除去して、炭素膜を成膜する工程を含む、炭素膜の製造方法。なお、単層繊維状炭素ナノ構造体は、内壁同士が近接または接着したテープ状部分を全長に亘って有する単層の扁平筒状の炭素ナノ構造体を含む。【選択図】なし

Description

本発明は、炭素膜およびその製造方法に関し、特には、単層繊維状炭素ナノ構造体と、多層繊維状炭素ナノ構造体とを含む、炭素膜、および、当該炭素膜を製造する方法に関するものである。
近年、導電性、熱伝導性および機械的特性に優れる材料として、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)が注目されている。
しかし、CNT等の繊維状炭素ナノ構造体は直径がナノメートルサイズの微細な構造体であるため、単体では取り扱い性や加工性が悪い。そこで、例えば、複数本のCNTを膜状に集合させて「バッキーペーパー」と称されることもあるカーボンナノチューブ膜(以下、「CNT膜」と称することがある。)を形成し、当該CNT膜を導電膜などとして用いることが提案されている。具体的には、溶媒とCNTとを含むカーボンナノチューブ分散液からろ過および乾燥などの手段を用いて溶媒を除去することにより成膜したCNT膜を、太陽電池やタッチパネルなどの電極を構成する部材(例えば、導電膜や触媒層など)として用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
そして、上述したCNT膜などの、単層または多層繊維状炭素ナノ構造体を膜状に集合させてなる炭素膜は、導電性、熱伝導性および機械的特性に優れる膜状材料として注目されている。特に、多層CNTなどの多層繊維状炭素ナノ構造体は、単層CNTよりも、比較的生産が容易であり、かつ熱的および化学的安定性に優れることから、炭素膜材料として汎用されている。
特開2010−105909号公報
しかし、多層CNTのみで作製した炭素膜は、強度が不足して良好な自立性が得られない場合や、十分な導電性が得られない場合があった。
そこで、本発明は、自立性および導電性に優れる炭素膜ならびにその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、所定のBET比表面積を有する単層繊維状炭素ナノ構造体と、多層繊維状炭素ナノ構造体と、を含む炭素膜を形成することで、自立性および導電性に優れる炭素膜が得られることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の炭素膜は、単層繊維状炭素ナノ構造体と、多層繊維状炭素ナノ構造体とを含み、該単層繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が500m2/g以上であることを特徴とする。このように、BET比表面積が500m2/g以上の単層繊維状炭素ナノ構造体と、多層繊維状炭素ナノ構造体とを含めることにより、自立性および導電性に優れた炭素膜を提供することができる。
本発明の炭素膜では、前記単層繊維状炭素ナノ構造体と前記多層繊維状炭素ナノ構造体との含有割合が、質量比(単層繊維状炭素ナノ構造体/多層繊維状炭素ナノ構造体)で95/5〜5/95であることが好ましい。かかる単層繊維状炭素ナノ構造体と、多層繊維状炭素ナノ構造体との含有割合を質量比(単層繊維状炭素ナノ構造体/多層繊維状炭素ナノ構造体)で95/5〜5/95とすることにより、炭素膜の導電性を更に高めるとともに炭素膜の成膜性も向上させることができる。
また、本発明の炭素膜では、前記単層繊維状炭素ナノ構造体および前記多層繊維状炭素ナノ構造体がカーボンナノチューブを含むことが好ましい。カーボンナノチューブを含む繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、炭素膜の強度および自立性を更に高めることができる。
本発明の炭素膜の製造方法では、BET比表面積が500m2/g以上の単層繊維状炭素ナノ構造体と、多層繊維状炭素ナノ構造体と、分散剤と、溶媒とを含有する繊維状炭素ナノ構造体分散液から、該溶媒を除去して、炭素膜を成膜する工程を含むことを特徴とする。このように、かかる単層繊維状炭素ナノ構造体と、多層繊維状炭素ナノ構造体とを分散させた繊維状炭素ナノ構造体分散液から、溶媒を除去して成膜することにより、自立性および導電性に優れた炭素膜を製造することができる。
本発明の炭素膜の製造方法では、前記溶媒中に、前記単層繊維状炭素ナノ構造体と、前記多層繊維状炭素ナノ構造体と、前記分散剤とを添加してなる粗分散液を、キャビテーション効果または解砕効果が得られる分散処理に供して、該単層繊維状炭素ナノ構造体と該多層繊維状炭素ナノ構造体とを分散させて、前記繊維状炭素ナノ構造体分散液を調製する工程を更に含むことが好ましい。粗分散液をキャビテーション効果または解砕効果が得られる分散処理に供することにより、単層繊維状炭素ナノ構造体および多層繊維状炭素ナノ構造体を分散液中で均質に分散させることができる。この均質な分散液から成膜した炭素膜では、単層繊維状炭素ナノ構造体および多層繊維状炭素ナノ構造体がより一層均質に分散して存在するため、自立性および導電性その他の特性を一層向上させることができる。
本発明の炭素膜では、前記単層繊維状炭素ナノ構造体と前記多層繊維状炭素ナノ構造体との含有割合が、質量比(単層繊維状炭素ナノ構造体/多層繊維状炭素ナノ構造体)で95/5〜5/95であることが好ましい。かかる単層繊維状炭素ナノ構造体と、多層繊維状炭素ナノ構造体との含有割合を質量比(単層繊維状炭素ナノ構造体/多層繊維状炭素ナノ構造体)で95/5〜5/95とすることにより、導電性がより高く成膜性にも優れた炭素膜を製造することができる。
また、本発明の炭素膜の製造方法では、前記単層繊維状炭素ナノ構造体および前記多層繊維状炭素ナノ構造体がカーボンナノチューブを含むことが好ましい。カーボンナノチューブを含む繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、炭素膜の強度および自立性を更に高めることができる。
本発明によれば、自立性および導電性に優れる炭素膜ならびにその製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の炭素膜は、BET比表面積が500m2/g以上の単層繊維状炭素ナノ構造体と、多層繊維状炭素ナノ構造体とを含む。本発明の炭素膜は、本発明の炭素膜の製造方法を用いて製造することができる。
(炭素膜)
本発明の炭素膜は、複数本の繊維状炭素ナノ構造体を膜状に集合させてなる繊維状炭素ナノ構造体の集合体よりなる。そして、本発明の炭素膜は、BET比表面積500m2/g以上の単層繊維状炭素ナノ構造体を含むことを大きな特徴の一つとする。また、本発明の炭素膜は、多層繊維状炭素ナノ構造体を含むことも大きな特徴の一つとする。
なお、本発明において、炭素膜は、基材などの支持体上に形成された膜(支持体付き膜)であってもよいし、自立膜であってもよい。
[単層繊維状炭素ナノ構造体]
単層繊維状炭素ナノ構造体は、グラファイトの炭素六角網面が1層で1本の円筒形状を構成する炭素ナノ構造体、すなわち、単層カーボンナノチューブ(「単層CNT」と称することがある)を含む。本発明に用いるBET比表面積が500m2/g以上の単層繊維状炭素ナノ構造体としては、単層CNTのみからなるものであってもよいし、単層CNTと、単層CNT以外の非円筒形状の単層繊維状炭素ナノ構造体や後述するグラフェンナノテープとの混合物であってもよい。
本発明に用いる単層繊維状炭素ナノ構造体は、BET比表面積が500m2/g以上であるが、600m2/g以上であることが好ましく、800m2/g以上であることが更に好ましく、2500m2/g以下であることが好ましく、1200m2/g以下であることが更に好ましい。更に、単層繊維状炭素ナノ構造体が単層CNTを含み、当該単層CNTが主として開口したものである場合は、BET比表面積が1300m2/g以上であることが好ましい。単層繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が500m2/g以上であれば、炭素膜の熱伝導性および強度を十分に高めることができる。また、単層繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が2500m2/g以下であれば、単層繊維状炭素ナノ構造体の凝集を抑制して炭素膜中の単層繊維状炭素ナノ構造体の分散性を高めることができる。
なお、本発明において、「BET比表面積」とは、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
そして、上述した単層カーボンナノチューブは、例えば、カーボンナノチューブ製造用の触媒層を表面に有する基材上に、原料化合物およびキャリアガスを供給して、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)に準じて、効率的に製造することができる。なお、以下では、スーパーグロース法により得られるカーボンナノチューブを「SGCNT」と称することがある。
なお、スーパーグロース法により製造したカーボンナノチューブは、SGCNTのみから構成されていてもよいし、SGCNTと、非円筒形状の炭素ナノ構造体とから構成されていてもよい。
本発明の単層繊維状炭素ナノ構造体には、内壁同士が近接または接着したテープ状部分を全長に亘って有する単層または多層の扁平筒状の炭素ナノ構造体(以下、「グラフェンナノテープ(GNT)」と称することがある。)が含まれていてもよい。
ここで、GNTは、その合成時から内壁同士が近接または接着したテープ状部分が全長に亘って形成されており、炭素の六員環ネットワークが扁平筒状に形成された物質であると推定される。そして、GNTの形状が扁平筒状であり、かつ、GNT中に内壁同士が近接または接着したテープ状部分が存在していることは、例えば、GNTとフラーレン(C60)とを石英管に密封し、減圧下で加熱処理(フラーレン挿入処理)して得られるフラーレン挿入GNTを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察すると、GNT中にフラーレンが挿入されない部分(テープ状部分)が存在していることから確認することができる。
そして、GNTの形状は、幅方向中央部にテープ状部分を有する形状であることが好ましく、延在方向(軸線方向)に直交する断面の形状が、断面長手方向の両端部近傍における、断面長手方向に直交する方向の最大寸法が、いずれも、断面長手方向の中央部近傍における、断面長手方向に直交する方向の最大寸法よりも大きい形状であることがより好ましく、ダンベル状であることが特に好ましい。
ここで、GNTの断面形状において、「断面長手方向の中央部近傍」とは、断面の長手中心線(断面の長手方向中心を通り、長手方向線に直交する直線)から、断面の長手方向幅の30%以内の領域をいい、「断面長手方向の端部近傍」とは、「断面長手方向の中央部近傍」の長手方向外側の領域をいう。
なお、非円筒形状の炭素ナノ構造体としてGNTを含む単層炭素ナノ構造体は、触媒層を表面に有する基材を用いてスーパーグロース法によりCNTを合成する際に、触媒層を表面に有する基材(以下、「触媒基材」と称することがある。)を所定の方法で形成することにより、得ることができる。具体的には、GNTを含む炭素ナノ構造体は、アルミニウム化合物を含む塗工液Aを基材上に塗布し、塗布した塗工液Aを乾燥して基材上にアルミニウム薄膜(触媒担持層)を形成した後、アルミニウム薄膜の上に、鉄化合物を含む塗工液Bを塗布し、塗布した塗工液Bを温度50℃以下で乾燥してアルミニウム薄膜上に鉄薄膜(触媒層)を形成することで得た触媒基材を用いてスーパーグロース法によりGNTを合成することで得ることができる。
また、単層繊維状炭素ナノ構造体としては、平均直径(Av)に対する、直径の標準偏差(σ)に3を乗じた値(3σ)の比(3σ/Av)が0.20超0.60未満の炭素ナノ構造体を用いることが好ましく、3σ/Avが0.25超の炭素ナノ構造体を用いることがより好ましく、3σ/Avが0.50超の炭素ナノ構造体を用いることが更に好ましい。3σ/Avが0.20超0.60未満の単層繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、炭素ナノ構造体の配合量が少量であっても炭素膜の熱伝導性および強度を十分に高めることができるので、単層繊維状炭素ナノ構造体の配合により炭素膜の硬度が上昇する(即ち、柔軟性が低下する)のを抑制して、熱伝導性、柔軟性および強度を十分に高いレベルで並立させた炭素膜を得ることができる。
なお、「単層繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)」および「単層繊維状炭素ナノ構造体の直径の標準偏差(σ:標本標準偏差)」は、それぞれ、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択した単層繊維状炭素ナノ構造体100本の直径(外径)を測定して求めることができる。そして、単層繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)および標準偏差(σ)は、単層繊維状炭素ナノ構造体の製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られた単層繊維状炭素ナノ構造体を複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
そして、単層繊維状炭素ナノ構造体としては、前述のようにして測定した直径を横軸に、その頻度を縦軸に取ってプロットし、ガウシアンで近似した際に、正規分布を取るものが通常使用される。
更に、単層繊維状炭素ナノ構造体は、ラマン分光法を用いて評価した際に、Radial Breathing Mode(RBM)のピークを有することが好ましい。なお、三層以上の多層カーボンナノチューブのみからなる繊維状炭素ナノ構造体のラマンスペクトルには、RBMが存在しない。
また、単層繊維状炭素ナノ構造体は、ラマンスペクトルにおけるDバンドピーク強度に対するGバンドピーク強度の比(G/D比)が1以上20以下であることが好ましい。G/D比が1以上20以下であれば、単層繊維状炭素ナノ構造体の配合量が少量であっても炭素膜の熱伝導性および強度を十分に高めることができるので、単層繊維状炭素ナノ構造体の配合により炭素膜の硬度が上昇する(即ち、柔軟性が低下する)のを抑制して、熱伝導性、柔軟性および強度を十分に高いレベルで並立させた炭素膜を得ることができる。
更に、単層繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)は、0.5nm以上であることが好ましく、1nm以上であることが更に好ましく、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。単層繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)が0.5nm以上であれば、単層繊維状炭素ナノ構造体の凝集を抑制して炭素ナノ構造体の分散性を高めることができる。また、単層繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)が15nm以下であれば、炭素膜の熱伝導性および強度を十分に高めることができる。
また、単層繊維状炭素ナノ構造体は、合成時における構造体の平均長さが100μm以上5000μm以下であることが好ましい。なお、合成時の構造体の長さが長いほど、分散時にCNTに破断や切断などの損傷が発生し易いので、合成時の構造体の平均長さは5000μm以下であることが好ましい。
更に、単層繊維状炭素ナノ構造体は、スーパーグロース法によれば、カーボンナノチューブ成長用の触媒層を表面に有する基材上に、基材に略垂直な方向に配向した集合体(配向集合体)として得られるが、当該集合体としての、繊維状炭素ナノ構造体の質量密度は、0.002g/cm3以上0.2g/cm3以下であることが好ましい。質量密度が0.2g/cm3以下であれば、単層繊維状炭素ナノ構造体同士の結びつきが弱くなるので、炭素膜中で単層繊維状炭素ナノ構造体を均質に分散させることができる。また、質量密度が0.002g/cm3以上であれば、単層繊維状炭素ナノ構造体の一体性を向上させ、バラけることを抑制できるため取り扱いが容易になる。
更に、単層繊維状炭素ナノ構造体は、複数の微小孔を有することが好ましい。単層繊維状炭素ナノ構造体は、中でも、孔径が2nmよりも小さいマイクロ孔を有するのが好ましく、その存在量は、下記の方法で求めたマイクロ孔容積で、好ましくは0.40mL/g以上、より好ましくは0.43mL/g以上、更に好ましくは0.45mL/g以上であり、上限としては、通常、0.65mL/g程度である。単層繊維状炭素ナノ構造体が上記のようなマイクロ孔を有することで、単層繊維状炭素ナノ構造体の凝集が抑制され、単層繊維状炭素ナノ構造体が高度に分散した炭素膜を得ることができる。なお、マイクロ孔容積は、例えば、単層繊維状炭素ナノ構造体の調製方法および調製条件を適宜変更することで調整することができる。
ここで、「マイクロ孔容積(Vp)」は、単層繊維状炭素ナノ構造体の液体窒素温度(77K)での窒素吸脱着等温線を測定し、相対圧P/P0=0.19における窒素吸着量をVとして、式(I):Vp=(V/22414)×(M/ρ)より、算出することができる。なお、Pは吸着平衡時の測定圧力、P0は測定時の液体窒素の飽和蒸気圧であり、式(I)中、Mは吸着質(窒素)の分子量28.010、ρは吸着質(窒素)の77Kにおける密度0.808g/cm3である。マイクロ孔容積は、例えば、「BELSORP(登録商標)−mini」(日本ベル(株)製)を使用して求めることができる。
また、単層繊維状炭素ナノ構造体は、吸着等温線から得られるt−プロットが上に凸な形状を示すことが好ましい。中でも、開口処理が施されておらず、t−プロットが上に凸な形状を示すことがより好ましい。なお、「t−プロット」は、窒素ガス吸着法により測定された単層繊維状炭素ナノ構造体の吸着等温線において、相対圧を窒素ガス吸着層の平均厚みt(nm)に変換することにより得ることができる。すなわち、窒素ガス吸着層の平均厚みtを相対圧P/P0に対してプロットした、既知の標準等温線から、相対圧に対応する窒素ガス吸着層の平均厚みtを求めて上記変換を行うことにより、単層繊維状炭素ナノ構造体のt−プロットが得られる(de Boerらによるt−プロット法)。
ここで、表面に細孔を有する物質では、窒素ガス吸着層の成長は、次の(1)〜(3)の過程に分類される。そして、下記の(1)〜(3)の過程によって、t−プロットの傾きに変化が生じる。
(1)全表面への窒素分子の単分子吸着層形成過程
(2)多分子吸着層形成とそれに伴う細孔内での毛管凝縮充填過程
(3)細孔が窒素によって満たされた見かけ上の非多孔性表面への多分子吸着層形成過程
そして、上に凸な形状を示すt−プロットは、窒素ガス吸着層の平均厚みtが小さい領域では、原点を通る直線上にプロットが位置するのに対し、tが大きくなると、プロットが当該直線から下にずれた位置となる。かかるt−プロットの形状を有する単層繊維状炭素ナノ構造体は、単層繊維状炭素ナノ構造体の全比表面積に対する内部比表面積の割合が大きく、単層繊維状炭素ナノ構造体を構成する炭素ナノ構造体に多数の開口が形成されていることを示している。
なお、単層繊維状炭素ナノ構造体のt−プロットの屈曲点は、0.2≦t(nm)≦1.5を満たす範囲にあることが好ましく、0.45≦t(nm)≦1.5の範囲にあることがより好ましく、0.55≦t(nm)≦1.0の範囲にあることが更に好ましい。
なお、「屈曲点の位置」は、前述した(1)の過程の近似直線Aと、前述した(3)の過程の近似直線Bとの交点である。
更に、単層繊維状炭素ナノ構造体は、t−プロットから得られる全比表面積S1に対する内部比表面積S2の比(S2/S1)が0.05以上0.30以下であるのが好ましい。
また、単層繊維状炭素ナノ構造体の全比表面積S1および内部比表面積S2は、特に限定されないが、個別には、S1は、600m2/g以上1400m2/g以下であることが好ましく、800m2/g以上1200m2/g以下であることが更に好ましい。一方、S2は、30m2/g以上540m2/g以下であることが好ましい。
ここで、単層繊維状炭素ナノ構造体の全比表面積S1および内部比表面積S2は、そのt−プロットから求めることができる。具体的には、まず、(1)の過程の近似直線の傾きから全比表面積S1を、(3)の過程の近似直線の傾きから外部比表面積S3を、それぞれ求めることができる。そして、全比表面積S1から外部比表面積S3を差し引くことにより、内部比表面積S2を算出することができる。
因みに、単層繊維状炭素ナノ構造体の吸着等温線の測定、t−プロットの作成、および、t−プロットの解析に基づく全比表面積S1と内部比表面積S2との算出は、例えば、市販の測定装置である「BELSORP(登録商標)−mini」(日本ベル(株)製)を用いて行うことができる。
[多層繊維状炭素ナノ構造体]
多層繊維状炭素ナノ構造体は、グラファイトの炭素六角網面の複数層が同心円状に積層して1本の円筒形状を構成する炭素ナノ構造体、すなわち、多層カーボンナノチューブ(「多層CNT」と称することがある。)を含む。本発明で用いる多層繊維状炭素ナノ構造体としては、多層CNTのみからなるものであってもよいし、多層CNTと、多層CNT以外の非円筒形状の多層繊維状炭素ナノ構造体との混合物であってもよい。多層CNTは、特に限定しないが、2層〜8層が同心円状に積層して1本の円筒形状を構成する炭素ナノ構造体、すなわち、2層〜8層のカーボンナノチューブであることが好ましい。2層〜8層のカーボンナノチューブを使用すれば、9層以上のカーボンナノチューブを使用した場合と比較し、熱伝導シートの熱伝導性および強度を更に向上させることができるからである。
多層繊維状炭素ナノ構造体は、一般に、レーザーアブレーション法、アーク放電法、熱CVD法、プラズマCVD法、燃焼法などで製造することができるが、いずれの方法で製造したものであってもよい。特に、ゼオライトを触媒の坦体としてアセチレンを原料に熱CVD法で製造した多層CNTは、特に精製する必要がなく、多少の熱分解による不定形炭素被覆はあるものの、純度が高く良くグラファイト化されている点で、好ましい。市販品の例としては、Nanocy社製「NC7000」、昭和電工(株)製「VGCF−X」、バイエルホールディング(株)製「baytubes C150P」および「baytubes C70P」、保土谷化学工業社製「NT−7」などが挙げられる。
多層繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)は、4nm以上であることが好ましく、6nm以上であることが更に好ましく、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。多層繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)が4nm以上であれば、多層繊維状炭素ナノ構造体の凝集を抑制して炭素膜における分散性を高めることができる。また、多層繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)が15nm以下であれば、炭素膜の熱伝導性および強度を十分に高めることができる。
多層繊維状炭素ナノ構造体の平均長さは、0.01μm以上100μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下であることがより好ましい。多層繊維状炭素ナノ構造体の平均長さが0.01μm以上であれば、炭素膜の熱伝導性および強度を十分に高めることができる。多層繊維状炭素ナノ構造体の平均長さが100μm以下であれば、多層繊維状炭素ナノ構造体の凝集を抑制して炭素膜中での分散性を高めることができる。
多層繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積は、10m2/g以上500m2/g以下であることが好ましく、100m2/g以上350m2/g以下であることがより好ましく、150m2/g以上300m2/g以下であることが更に好ましい。多層繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が10m2/g以上であれば、炭素膜の熱伝導性および強度を十分に高めることができる。また、多層繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が500m2/g以下であれば、多層繊維状炭素ナノ構造体の凝集を抑制して炭素膜中での分散性を高めることができる。
[単層繊維状炭素ナノ構造体と多層繊維状炭素ナノ構造体との含有割合]
本発明の炭素膜は、BET比表面積が500m2/g以上の単層繊維状炭素ナノ構造体と、多層繊維状炭素ナノ構造体とを含有するものである。さらに、本発明の炭素膜は、BET比表面積が500m2/g以上の単層繊維状炭素ナノ構造体と、多層繊維状炭素ナノ構造体との含有割合が、質量比(単層繊維状炭素ナノ構造体/多層繊維状炭素ナノ構造体)で95/5〜5/95であることが好ましく、90/10〜10/90であることがより好ましい。炭素膜中における、BET比表面積が500m2/g以上の単層繊維状炭素ナノ構造体と多層繊維状炭素ナノ構造体との含有割合が上述の範囲内であれば、炭素膜の導電性を更に高めるとともに、炭素膜の成膜性を向上させることができる。
<炭素膜の性状>
本発明の炭素膜は、上述するように、BET比表面積が500m2/g以上の単層繊維状炭素ナノ構造体と、多層繊維状炭素ナノ構造体とを含有することにより、自立性および導電性に優れている。
なお、BET比表面積が500m2/g以上の単層繊維状炭素ナノ構造体と多層繊維状炭素ナノ構造体とを含有することにより、炭素膜が自立性および導電性に優れる理由は、明らかではないが、かかる単層繊維状炭素ナノ構造体と多層繊維状炭素ナノ構造体とを含有することにより、高度に発達したネットワークを有するポーラス構造を得ることができるためであると推察される。
本発明の炭素膜は、更に、以下の性状を有していることが好ましい。
[導電性]
本発明の炭素膜は、太陽電池やタッチパネルにおける導電膜として使用可能な導電性を有することが好ましい。具体的には、体積導電率が50S/cm以上であることが好ましく、100S/cm以上であることがより好ましく、150S/cm以上であることがより一層好ましい。体積導電率が50S/cm以上であれば、太陽電池やタッチパネルにおける導電膜として十分に使用可能な導電性を有するからである。
尚、炭素膜の体積導電率は、四端子四探針法にて測定することができる。また、炭素膜の体積導電率は、炭素膜の形成に使用する単層繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積および量、多層繊維状炭素ナノ構造体の種類、並びに、かかる単層繊維状炭素ナノ構造体と多層繊維状炭素ナノ構造体との含有割合などを調整することにより、調節することができる。
[単層および多層繊維状炭素ナノ構造体の含有量]
本発明の炭素膜は、75質量%以上が単層および多層繊維状炭素ナノ構造体で構成されていることが好ましく、製造時に不可避的に混入する不純物以外の成分を含まないことがより好ましい。単層および多層繊維状炭素ナノ構造体の含有量が75質量%以上であれば、導電性、熱伝導性および機械的特性などの特性を十分に高めることができるからである。
[光沢度]
本発明の炭素膜は、60度における膜表面の光沢度が5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、また、50以下であることが好ましい。
なお、炭素膜の光沢度は、JIS Z8741に準拠し、入射角度60度の条件で測定することができる。また、炭素膜の光沢度は、炭素膜の形成に使用する繊維状炭素ナノ構造体の種類および量、並びに、炭素膜の形成に使用する繊維状炭素ナノ構造体分散液の調製方法などを調整することにより調節することができる。
[密度]
更に、本発明の炭素膜の密度は、0.4g/cm3以上であることが好ましく、0.6g/cm3以上であることがより好ましく、また、1.0g/cm3以下であることが好ましい。
なお、本発明において、炭素膜の密度は、炭素膜の質量、面積および厚さを測定し、炭素膜の質量を体積で割って求めることができる。
[自立性]
更に、本発明の炭素膜は、支持体が存在していなくとも膜としての形状を保つことができる自立膜であることが好ましい。具体的には、本発明の炭素膜は、厚さが10nm〜3μm、面積が1mm2〜100cm2のサイズにおいて支持体無しで膜としての形状を保つことがより好ましい。
(炭素膜の製造方法)
本発明の炭素膜の製造方法は、上述した本発明の炭素膜を製造する際に用いることができる。そして、本発明の炭素膜の製造方法は、BET比表面積が500m2/g以上の単層繊維状炭素ナノ構造体と、多層繊維状炭素ナノ構造体と、分散剤と、溶媒とを含有する繊維状炭素ナノ構造体分散液から溶媒を除去して、炭素膜を成膜する工程(成膜工程)を含むことを特徴とする。なお、本発明の炭素膜の製造方法は、かかる単層繊維状炭素ナノ構造体、多層繊維状炭素ナノ構造体、分散剤および溶媒を含む粗分散液を分散処理して繊維状炭素ナノ構造体分散液を調製する工程(分散液調製工程)を成膜工程の前に含んでいてもよい。
そして、本発明の炭素膜の製造方法を用いて得られる炭素膜は、BET比表面積が500m2/g以上の単層繊維状炭素ナノ構造体と、多層繊維状炭素ナノ構造体とを含んでいるので、自立性および導電性に優れている。
<分散液調製工程>
ここで、分散液調製工程では、溶媒中にBET比表面積が500m2/g以上の単層繊維状炭素ナノ構造体、多層繊維状炭素ナノ構造体および分散剤を添加してなる粗分散液をキャビテーション効果または解砕効果が得られる分散処理に供し、単層および多層繊維状炭素ナノ構造体を分散させて繊維状炭素ナノ構造体分散液を調製することが好ましい。このように、キャビテーション効果または解砕効果が得られる分散処理を用いれば、単層および多層繊維状炭素ナノ構造体が良好に分散した繊維状炭素ナノ構造体分散液が得られるからである。そして、単層および多層繊維状炭素ナノ構造体が良好に分散した繊維状炭素ナノ構造体分散液を用いて炭素膜を調製すれば、単層および多層繊維状炭素ナノ構造体を均質に集合させて、導電性、熱伝導性および機械的特性などの特性に優れる炭素膜が得られる。
なお、本発明の炭素膜の製造方法で用いる繊維状炭素ナノ構造体分散液は、上記以外の公知の分散処理方法を用いて単層および多層繊維状炭素ナノ構造体を溶媒中に分散させることにより調製してもよい。また、繊維状炭素ナノ構造体分散液には、製造する炭素膜の用途に応じて、充填材、安定化剤、着色剤、電荷調整剤、滑剤などの既知の添加剤を配合してもよい。
[単層繊維状炭素ナノ構造体]
繊維状炭素ナノ構造体分散液の調製に用いる単層繊維状炭素ナノ構造体としては、上述したBET比表面積が500m2/g以上の単層繊維状炭素ナノ構造体を用いることができる。かかる単層繊維状炭素ナノ構造体は、単層CNTのみからなるものであってもよいし、単層CNTと、単層CNT以外の非円筒形状の単層繊維状炭素ナノ構造体やGNTとの混合物であってもよい。
[多層繊維状炭素ナノ構造体]
繊維状炭素ナノ構造体分散液の調製に用いる多層繊維状炭素ナノ構造体としては、上述した多層繊維状炭素ナノ構造体を用いることができる。かかる多層繊維状炭素ナノ構造体は、多層CNTのみからなるものであってもよいし、多層CNTと、多層CNT以外の非円筒形状の多層繊維状炭素ナノ構造体との混合物であってもよい。
[分散液中の単層および多層繊維状炭素ナノ構造体の含有割合]
繊維状炭素ナノ構造体分散液は、BET比表面積が500m2/g以上の単層繊維状炭素ナノ構造体と、多層繊維状炭素ナノ構造体とを含有するものである。さらに、本発明の炭素膜は、BET比表面積が500m2/g以上の単層繊維状炭素ナノ構造体と、多層繊維状炭素ナノ構造体との含有割合が、質量比(単層繊維状炭素ナノ構造体/多層繊維状炭素ナノ構造体)で95/5〜5/95であることが好ましく、90/10〜10/90であることがより好ましい。繊維状炭素ナノ構造体分散液中における、BET比表面積が500m2/g以上の単層繊維状炭素ナノ構造体と多層繊維状炭素ナノ構造体との含有割合が上述の範囲内であれば、導電性がより高く成膜性にも優れた炭素膜を製造することができる。
[分散剤]
また、繊維状炭素ナノ構造体分散液の調製に用いる分散剤は、単層および多層繊維状炭素ナノ構造体を分散可能であり、後述する溶媒に溶解可能であれば、特に限定されないが、界面活性剤、合成高分子または天然高分子を用いることができる。
ここで、界面活性剤としては、ドデシルスルホン酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
また、合成高分子としては、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリビニルアルコール、部分けん化ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、アセタール基変性ポリビニルアルコール、ブチラール基変性ポリビニルアルコール、シラノール基変性ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合樹脂、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ系樹脂、フェノキシ樹脂、変性フェノキシ系樹脂、フェノキシエーテル樹脂、フェノキシエステル樹脂、フッ素系樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
更に、天然高分子としては、例えば、多糖類であるデンプン、プルラン、デキストラン、デキストリン、グアーガム、キサンタンガム、アミロース、アミロペクチン、アルギン酸、アラビアガム、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、カードラン、キチン、キトサン、セルロース、並びに、その塩または誘導体が挙げられる。誘導体とはエステルやエーテルなどの従来公知の化合物を意味する。
これらの分散剤は、1種または2種以上を混合して用いることができる。中でも、単層および多層繊維状炭素ナノ構造体の分散性に優れることから、分散剤としては、界面活性剤が好ましく、デオキシコール酸ナトリウムなどが特に好ましい。
[溶媒]
繊維状炭素ナノ構造体分散液の溶媒としては、特に限定されることなく、例えば、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、アミルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系極性有機溶媒、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらは1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
[分散処理]
そして、分散液調製工程では、上述した溶媒に対して上述した単層繊維状炭素ナノ構造体、多層繊維状炭素ナノ構造体および分散剤を添加して、単層および多層繊維状炭素ナノ構造体を分散させて、繊維状炭素ナノ構造体分散液を調製する。かかる分散処理は、後述する公知の混合方法および分散方法を利用することができる。特に限定されないが、本発明の製造方法においては、以下に詳細に説明するキャビテーション効果が得られる分散処理または解砕効果が得られる分散処理に供することにより、繊維状炭素ナノ構造体分散液を調製することが好ましい。単層および多層繊維状炭素ナノ構造体をより均質に分散させた繊維状炭素ナノ構造体分散液を調製することができる。この均質な分散液から成膜した炭素膜では、単層繊維状炭素ナノ構造体と多層繊維状炭素ナノ構造体とがより一層均質に分散して存在するため、自立性および導電性その他の特性を一層向上させることができる。
[[キャビテーション効果が得られる分散処理]]
キャビテーション効果が得られる分散処理は、液体に高エネルギーを付与した際、水に生じた真空の気泡が破裂することにより生じる衝撃波を利用した分散方法である。この分散方法を用いることにより、単層および多層繊維状炭素ナノ構造体を良好に分散させることができる。
ここで、キャビテーション効果が得られる分散処理の具体例としては、超音波による分散処理、ジェットミルによる分散処理および高剪断撹拌による分散処理が挙げられる。これらの分散処理は一つのみを行なってもよく、複数の分散処理を組み合わせて行なってもよい。より具体的には、例えば超音波ホモジナイザー、ジェットミルおよび高剪断撹拌装置が好適に用いられる。これらの装置は従来公知のものを使用すればよい。
単層および多層繊維状炭素ナノ構造体の分散に超音波ホモジナイザーを用いる場合には、粗分散液に対し、超音波ホモジナイザーにより超音波を照射すればよい。照射する時間は、単層および多層繊維状炭素ナノ構造体の量等により適宜設定すればよく、例えば、3分以上が好ましく、30分以上がより好ましく、また、5時間以下が好ましく、2時間以下がより好ましい。また、例えば、出力は20W以上500W以下が好ましく、100W以上500W以下がより好ましく、温度は15℃以上50℃以下が好ましい。
また、ジェットミルを用いる場合、処理回数は、単層および多層繊維状炭素ナノ構造体の量等により適宜設定すればよく、例えば、2回以上が好ましく、5回以上がより好ましく、100回以下が好ましく、50回以下がより好ましい。また、例えば、圧力は20MPa以上250MPa以下が好ましく、温度は15℃以上50℃以下が好ましい。
さらに、高剪断撹拌を用いる場合には、粗分散液に対し、高剪断撹拌装置により撹拌および剪断を加えればよい。旋回速度は速ければ速いほどよい。例えば、運転時間(機械が回転動作をしている時間)は3分以上4時間以下が好ましく、周速は5m/秒以上50m/秒以下が好ましく、温度は15℃以上50℃以下が好ましい。
なお、上記したキャビテーション効果が得られる分散処理は、50℃以下の温度で行なうことがより好ましい。溶媒の揮発による濃度変化が抑制されるからである。
[[解砕効果が得られる分散処理]]
解砕効果が得られる分散処理は、単層および多層繊維状炭素ナノ構造体を溶媒中に均一に分散できることは勿論、上記したキャビテーション効果が得られる分散処理に比べ、気泡が消滅する際の衝撃波による単層および多層繊維状炭素ナノ構造体の損傷を抑制することができる点で一層有利である。
この解砕効果が得られる分散処理では、粗分散液にせん断力を与えて単層および多層繊維状炭素ナノ構造体の凝集体を解砕・分散させ、さらに粗分散液に背圧を負荷し、また必要に応じ、粗分散液を冷却することで、気泡の発生を抑制しつつ、単層および多層繊維状炭素ナノ構造体を溶媒中に均一に分散させることができる。
なお、粗分散液に背圧を負荷する場合、粗分散液に負荷した背圧は、大気圧まで一気に降圧させてもよいが、多段階で降圧することが好ましい。
ここに、粗分散液にせん断力を与えて単層および多層繊維状炭素ナノ構造体をさらに分散させるには、例えば、以下のような構造の分散器を有する分散システムを用いればよい。
すなわち、分散器は、粗分散液の流入側から流出側に向かって、内径がd1の分散器オリフィスと、内径がd2の分散空間と、内径がd3の終端部と(但し、d2>d3>d1である。)、を順次備える。
そして、この分散器では、流入する高圧(例えば10〜400MPa、好ましくは50〜250MPa)の粗分散液が、分散器オリフィスを通過することで、圧力の低下を伴いつつ、高流速の流体となって分散空間に流入する。その後、分散空間に流入した高流速の粗分散液は、分散空間内を高速で流動し、その際にせん断力を受ける。その結果、粗分散液の流速が低下すると共に、単層および多層繊維状炭素ナノ構造体が良好に分散する。そして、終端部から、流入した粗分散液の圧力よりも低い圧力(背圧)の流体が、繊維状炭素ナノ構造体分散液として流出することになる。
なお、粗分散液の背圧は、粗分散液の流れに負荷をかけることで粗分散液に負荷することができ、例えば、多段降圧器を分散器の下流側に配設することにより、粗分散液に所望の背圧を負荷することができる。
そして、粗分散液の背圧を多段降圧器により多段階で降圧することで、最終的に繊維状炭素ナノ構造体分散液を大気圧に開放した際に、繊維状炭素ナノ構造体分散液中に気泡が発生するのを抑制できる。
また、この分散器は、粗分散液を冷却するための熱交換器や冷却液供給機構を備えていてもよい。というのは、分散器でせん断力を与えられて高温になった粗分散液を冷却することにより、粗分散液中で気泡が発生するのをさらに抑制できるからである。
なお、熱交換器等の配設に替えて、粗分散液を予め冷却しておくことでも、単層および多層繊維状炭素ナノ構造体を含む溶媒中で気泡が発生することを抑制できる。
上記したように、この解砕効果が得られる分散処理では、キャビテーションの発生を抑制できるので、時として懸念されるキャビテーションに起因した単層および多層繊維状炭素ナノ構造体の損傷、特に、気泡が消滅する際の衝撃波に起因した単層および多層繊維状炭素ナノ構造体の損傷を抑制することができる。加えて、単層および多層繊維状炭素ナノ構造体への気泡の付着や、気泡の発生によるエネルギーロスを抑制して、単層および多層繊維状炭素ナノ構造体を均一かつ効率的に分散させることができる。
以上のような構成を有する分散システムとしては、例えば、製品名「BERYU SYSTEM PRO」(株式会社美粒製)などがある。そして、解砕効果が得られる分散処理は、このような分散システムを用い、分散条件を適切に制御することで、実施することができる。
[繊維状炭素ナノ構造体分散液の粘度]
なお、繊維状炭素ナノ構造体分散液の粘度は、0.001Pa・s以上であることが好ましく、0.01Pa・s以上であることが更に好ましく、また、0.8Pa・s以下であることが好ましく、0.6Pa・s以下であることが更に好ましい。繊維状炭素ナノ構造体分散液の粘度が0.001Pa・s以上0.8Pa・s以下であれば、後述する成膜工程においてBET比表面積が500m2/g以上の単層繊維状炭素ナノ構造体および多層繊維状炭素ナノ構造体を良好に成膜して、得られる炭素膜の導電性、熱伝導性および機械的特性などの特性を十分に高めることができると共に、炭素膜を容易に製造することができるからである。なお、繊維状炭素ナノ構造体分散液の粘度は、例えば、単層および多層繊維状炭素ナノ構造体ならびに分散剤の配合量や種類を変更することにより調整することができる。
ここで、本発明において、繊維状炭素ナノ構造体分散液の粘度は、B型粘度計を使用し、JIS K7117−1に準拠して、温度:23℃、ローター:M4、回転数:60rpmの条件下で測定することができる。
<成膜工程>
成膜工程では、上述した繊維状炭素ナノ構造体分散液から溶媒を除去して、炭素膜を成膜する。具体的には、成膜工程では、例えば下記(A)および(B)の何れかの方法を用いて、繊維状炭素ナノ構造体分散液から溶媒を除去し、炭素膜を成膜する。
(A)繊維状炭素ナノ構造体分散液を成膜基材上に塗布した後、塗布した繊維状炭素ナノ構造体分散液を乾燥させる方法。
(B)多孔質の成膜基材を用いて繊維状炭素ナノ構造体分散液をろ過し、得られたろ過物を乾燥させる方法。
なお、本発明の炭素膜の製造方法では、BET比表面積が500m2/g以上の単層繊維状炭素ナノ構造体と多層繊維状炭素ナノ構造体とを成膜することにより、高度に発達したネットワークを有するポーラス構造を得ることができるため、自立性および導電性に優れた炭素膜が得られると推察される。
[成膜基材]
ここで、成膜基材としては、特に限定されることなく、製造する炭素膜の用途に応じて既知の基材を用いることができる。
具体的には、上記方法(A)において繊維状炭素ナノ構造体分散液を塗布する成膜基材としては、樹脂基材、ガラス基材などを挙げることができる。ここで、樹脂基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、アラミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、脂環式アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、トリアセチルセルロースなどよりなる基材を挙げることができる。また、ガラス基材としては、通常のソーダガラスよりなる基材を挙げることができる。
また、上記方法(B)において繊維状炭素ナノ構造体分散液をろ過する成膜基材としては、ろ紙や、セルロース、ニトロセルロース、アルミナ等よりなる多孔質シートを挙げることができる。
[塗布]
上記方法(A)において繊維状炭素ナノ構造体分散液を成膜基材上に塗布する方法としては、公知の塗布方法を採用できる。具体的には、塗布方法としては、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、ロールナイフコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法などを用いることができる。
[ろ過]
上記方法(B)において成膜基材を用いて繊維状炭素ナノ構造体分散液をろ過する方法としては、公知のろ過方法を採用できる。具体的には、ろ過方法としては、自然ろ過、減圧ろ過、加圧ろ過、遠心ろ過などを用いることができる。
[乾燥]
上記方法(A)において成膜基材上に塗布した繊維状炭素ナノ構造体分散液または上記方法(B)において得られたろ過物を乾燥する方法としては、公知の乾燥方法を採用できる。乾燥方法としては、熱風乾燥法、真空乾燥法、熱ロール乾燥法、赤外線照射法等が挙げられる。乾燥温度は、特に限定されないが、通常、室温〜200℃、乾燥時間は、特に限定されないが、通常、0.1〜150分である。
<炭素膜の後処理>
ここで、上述のようにして成膜した炭素膜は、通常、単層繊維状炭素ナノ構造体、多層繊維状炭素ナノ構造体および分散剤などの繊維状炭素ナノ構造体分散液に含まれていた成分を繊維状炭素ナノ構造体分散液と同様の比率で含有している。そこで、本発明の炭素膜の製造方法では、任意に、成膜工程において成膜した炭素膜を洗浄して炭素膜から分散剤を除去してもよい。炭素膜から分散剤を除去すれば、炭素膜の導電性などの特性を更に高めることができる。
なお、炭素膜の洗浄は、分散剤を溶解可能な溶媒と接触させ、炭素膜中の分散剤を溶媒中に溶出させることにより行なうことができる。そして、炭素膜中の分散剤を溶解可能な溶媒としては、特に限定されることなく、繊維状炭素ナノ構造体分散液の溶媒として使用し得る前述した溶媒、好ましくは繊維状炭素ナノ構造体分散液の溶媒と同じものを使用することができる。また、炭素膜と溶媒との接触は、炭素膜の溶媒中へ浸漬、または、溶媒の炭素膜への塗布により行なうことができる。更に、洗浄後の炭素膜は、既知の方法を用いて乾燥させることができる。
また、本発明の炭素膜の製造方法では、任意に、成膜工程において成膜した炭素膜をプレス加工して密度を更に高めてもよい。繊維状炭素ナノ構造体の損傷または破壊による特性低下を抑制する観点からは、プレス加工する際のプレス圧力は3MPa未満であることが好ましく、プレス加工を行なわないことがより好ましい。
(炭素膜の用途)
本発明の炭素膜は、太陽電池やタッチパネルなどの導電膜として特に好適に用いることができる。
なお、本発明の炭素膜は、成膜基材上に形成した状態のままで、或いは、成膜基材から剥離してから使用することができる。また、本発明の炭素膜は、任意にオーバーコート層等の既知の機能層を積層してから各種製品に使用することもできる。ここで、オーバーコート層等の機能層の炭素膜上への積層は、既知の手法を用いて行なうことができる。
<タッチパネル>
具体的には、本発明の炭素膜は、透明基板上に形成されて静電容量式タッチパネルなどのタッチパネルのタッチセンサーを構成する導電層として好適に用いることができる。
<太陽電池>
また、本発明の炭素膜は、色素増感型太陽電池などの太陽電池の電極を構成する導電層や触媒層として用いることができる。より具体的には、本発明の炭素膜は、色素増感型太陽電池の光電極を構成する導電層や、色素増感型太陽電池の対向電極(触媒電極)を構成する導電層および/または触媒層として用いることができる。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<単層繊維状炭素ナノ構造体1の合成>
国際公開第2006/011655号に記載のスーパーグロース法で得たカーボンナノチューブを用いた。具体的には次の条件において、単層繊維状炭素ナノ構造体1を成長させた。
炭素化合物:エチレン;供給速度50sccm
雰囲気(ガス)(Pa):ヘリウム、水素混合ガス;供給速度1000sccm
圧力1大気圧
水蒸気添加量(ppm):300ppm
反応温度(℃):750℃
反応時間(分):10分
金属触媒(存在量):鉄薄膜;厚さ1nm
基板:シリコンウェハー。
得られた単層繊維状炭素ナノ構造体1は、BET比表面積1,050m2/g、ラマン分光光度計での測定において、単層カーボンナノチューブに特長的な100〜300cm-1の低周波数領域にラジアルブリージングモード(RBM)のスペクトルが観察された。また、透過型電子顕微鏡を用い、無作為に100本の単層繊維状炭素ナノ構造体1の直径を測定した結果、平均直径(Av)が3.3nm、直径分布(3σ)が1.9、(3σ/Av)が0.58であった。
<単層繊維状炭素ナノ構造体2の合成>
製造例1の金属触媒の鉄薄膜層の厚みを、5nmにした以外は同様の手法により、単層繊維状炭素ナノ構造体2を得た。得られた単層繊維状炭素ナノ構造体2は、BET比表面積620m2/g、ラマン分光光度計での測定において、単層カーボンナノチューブに特長的な100〜300cm-1の低周波数領域にラジアルブリージングモード(RBM)のスペクトルが観察された。また、透過型電子顕微鏡を用い、無作為に100本の単層繊維状炭素ナノ構造体2の直径を測定した結果、平均直径(Av)が5.9nm、直径分布(3σ)が3.3、(3σ/Av)が0.56であった。
<単層繊維状炭素ナノ構造体分散液1の調製>
分散剤を含む溶媒としてのデオキシコール酸ナトリウム(DOC)2質量%水溶液500mLに、上述した単層繊維状炭素ナノ構造体1を1.0g加え、分散剤としてDOCを含有する粗分散液を得た。この単層繊維状炭素ナノ構造体1を含む粗分散液を、分散時に背圧を負荷する多段圧力制御装置(多段降圧器)を有する高圧ホモジナイザー(株式会社美粒製、製品名「BERYU SYSTEM PRO」)に充填し、100MPaの圧力で粗分散液の分散処理を行った。具体的には、背圧を負荷しつつ、粗分散液にせん断力を与えて単層繊維状炭素ナノ構造体を分散させ、単層繊維状炭素ナノ構造体分散液1を得た。なお、分散処理は、高圧ホモジナイザーから流出した分散液を再び高圧ホモジナイザーに返送しつつ、10分間実施した。
<単層繊維状炭素ナノ構造体分散液2の調製>
単層繊維状炭素ナノ構造体分散液1で使用した単層繊維状炭素ナノ構造体1を、単層繊維状炭素ナノ構造体2に変えた以外は同様の操作により単層繊維状炭素ナノ構造体分散液2を得た。
<多層繊維状炭素ナノ構造体分散液の調製>
単層繊維状炭素ナノ構造体分散液1で使用した単層繊維状炭素ナノ構造体1を、Nanocyl社 NC7000(BET比表面積:270m2/g、平均直径:9.5nm、平均長さ:1.5μm、平均層数:7)に変えた以外は同様の操作により多層繊維状炭素ナノ構造体分散液を得た。
<実施例1>
200mLのビーカーに、作製した単層繊維状炭素ナノ構造体分散液1を90g、多層繊維状炭素ナノ構造体分散液10gを加え、スターラーにて10分間撹拌した。その後、混合したCNT分散液に対し、メンブレンフィルターを備えた減圧ろ過装置を用いて0.09MPaの条件下にてろ過を実施した。ろ過終了後、イソプロピルアルコールおよび水のそれぞれを減圧ろ過装置に通過させることで、メンブレンフィルター上に形成された炭素膜を洗浄し、その後15分間空気を通過させた。次いで、作製した炭素膜/メンブレンフィルターをエタノールに浸漬後、炭素膜を剥離することにより、炭素膜1を形成した。
得られた炭素膜1は、メンブレンフィルターと同等の大きさであり優れた成膜性を有し、かつフィルターから剥離しても膜の状態を維持しており、優れた自立性も有していた。また、得られた炭素膜1の導電性を測定(三菱化学アナリテック社製、製品名「ロレスタ―GX」)したところ、炭素膜1の体積導電率は310S/cmと非常に良好な導電性を示した。得られた炭素膜1の膜密度を測定した結果、密度は0.85g/cm3であった。次いで、作製した炭素膜1について、60度における光沢度を光沢度計((株)堀場製作所製、ハンディ光沢計グロスチェッカ、波長(890nm))を使用して測定した結果、光沢度は38であった。
<実施例2>
下記表1に示す配合比になるように、単層繊維状炭素ナノ構造体分散液1と多層繊維状炭素ナノ構造体分散液を混合した以外は、実施例1と同様の操作により、炭素膜2を形成した。
得られた炭素膜2は、メンブレンフィルターと同等の大きさであり優れた成膜性を有し、かつフィルターから剥離しても膜の状態を維持しており、優れた自立性も有していた。また、得られた炭素膜2の導電性を測定(三菱化学アナリテック社製、製品名「ロレスタ―GX」)したところ、炭素膜2の体積導電率は205S/cmと非常に良好な導電性を示した。得られた炭素膜2の膜密度を測定した結果、密度は0.63g/cm3であった。さらに、得られた炭素膜2について、60度における光沢度は22であった。
<実施例3>
下記表1に示す配合比になるように、単層繊維状炭素ナノ構造体分散液1と多層繊維状炭素ナノ構造体分散液を混合した以外は、実施例1と同様の操作により、炭素膜3を形成した。
得られた炭素膜3は、メンブレンフィルターと同等の大きさであり優れた成膜性を有し、かつフィルターから剥離しても膜の状態を維持しており、優れた自立性も有していた。また、得られた炭素膜3の導電性を測定(三菱化学アナリテック社製、製品名「ロレスタ―GX」)したところ、炭素膜3の体積導電率は76S/cmと良好な導電性を示した。得られた炭素膜3の膜密度を測定した結果、密度は0.57g/cm3であった.さらに、得られた炭素膜3について、60度における光沢度は13であった。
<実施例4>
下記表1に示す配合比になるように、単層繊維状炭素ナノ構造体分散液2と多層繊維状炭素ナノ構造体分散液を混合した以外は、実施例1と同様の操作により、炭素膜4を形成した。
得られた炭素膜4は、メンブレンフィルターと同等の大きさであり優れた成膜性を有し、かつフィルターから剥離しても膜の状態を維持しており、優れた自立性も有していた。また、得られた炭素膜4の導電性を測定(三菱化学アナリテック社製、製品名「ロレスタ―GX」)したところ、炭素膜4の体積導電率は64S/cmと良好な導電性を示した。得られた炭素膜4の膜密度を測定した結果、密度は0.66g/cm3であった。さらに、得られた炭素膜4について、60度における光沢度は25であった。
<実施例5>
下記表1に示す配合比になるように、単層繊維状炭素ナノ構造体分散液1と多層繊維状炭素ナノ構造体分散液を混合した以外は、実施例1と同様の操作により、炭素膜5を形成した。
得られた炭素膜5は、フィルターから剥離しても膜の状態を維持しており、優れた自立性も有していたが、膜の収縮が見られた。また、得られた炭素膜5の導電性を測定(三菱化学アナリテック社製、製品名「ロレスタ―GX」)したところ、炭素膜5の体積導電率は64S/cmと良好な導電性を示した。得られた炭素膜5の膜密度を測定した結果、密度は0.51g/cm3であった。さらに、得られた炭素膜5について、60度における光沢度は10であった。
<比較例1>
多層繊維状炭素ナノ構造体分散液のみを用いて実施例1と同様の操作により、比較例炭素膜1を形成した。
得られた比較例炭素膜1は、膜の収縮が顕著に見られ、かつメンブレンフィルター上の膜も割れが顕著に見られ、膜の自立性は全く見られなかった。
上記実施例及び比較例の結果を下記表1に示す。得られた炭素膜の成膜性について、メンブランフィルターから剥離した後に、メンブランフィルターと同等の大きさを有する膜の状態を維持できた場合には○と評価し、収縮や割れが認められた場合には×と評価した。得られた炭素膜の自立性について、フィルターから剥離しても膜の状態を維持できている場合には○と評価し、フィルターから剥離すると膜の状態が維持できなかった場合には×と評価した。また、評価測定ができなかった項目に関しては−とした。
Figure 2020055747
表1から、実施例の炭素膜は、自立性および導電性に優れていることがわかる。
本発明によれば、自立性および導電性に優れる炭素膜ならびにその製造方法を提供することができる。

Claims (7)

  1. 単層繊維状炭素ナノ構造体と、多層繊維状炭素ナノ構造体とを含み、
    該単層繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が500m2/g以上であり、該単層繊維状炭素ナノ構造体が、内壁同士が近接または接着したテープ状部分を全長に亘って有する単層の扁平筒状の炭素ナノ構造体を含む、炭素膜。
  2. 前記単層繊維状炭素ナノ構造体と前記多層繊維状炭素ナノ構造体との含有割合が、質量比(単層繊維状炭素ナノ構造体/多層繊維状炭素ナノ構造体)で95/5〜5/95である、請求項1に記載の炭素膜。
  3. 前記単層繊維状炭素ナノ構造体および前記多層繊維状炭素ナノ構造体がカーボンナノチューブを含む、請求項1または2に記載の炭素膜。
  4. BET比表面積が500m2/g以上の単層繊維状炭素ナノ構造体と、多層繊維状炭素ナノ構造体と、分散剤と、溶媒とを含有する繊維状炭素ナノ構造体分散液から、該溶媒を除去して、炭素膜を成膜する工程を含み、
    前記単層繊維状炭素ナノ構造体が、内壁同士が近接または接着したテープ状部分を全長に亘って有する単層の扁平筒状の炭素ナノ構造体を含む、炭素膜の製造方法。
  5. 前記溶媒中に、前記単層繊維状炭素ナノ構造体と、前記多層繊維状炭素ナノ構造体と、前記分散剤とを添加してなる粗分散液を、キャビテーション効果または解砕効果が得られる分散処理に供して、該単層繊維状炭素ナノ構造体と該多層繊維状炭素ナノ構造体とを分散させて、前記繊維状炭素ナノ構造体分散液を調製する工程を更に含む、請求項4に記載の炭素膜の製造方法。
  6. 前記繊維状炭素ナノ構造体分散液中の前記単層繊維状炭素ナノ構造体と前記多層繊維状炭素ナノ構造体との含有割合が、質量比(単層繊維状炭素ナノ構造体/多層繊維状炭素ナノ構造体)で95/5〜5/95である、請求項4または5に記載の炭素膜の製造方法。
  7. 前記単層繊維状炭素ナノ構造体および前記多層繊維状炭素ナノ構造体がカーボンナノチューブを含む、請求項4〜6のいずれか1項に記載の炭素膜の製造方法。
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