JP2020040227A - 液体吐出ヘッド用基板、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 液体吐出ヘッド用基板の強度を向上させる。【解決手段】 液体吐出ヘッド用基板1は、吐出口形成部材9と、基板10とを含む。基板10は、その第1面21から第2面22へと貫通する供給路13と、供給路13の相対向する内面13a、13bに形成された梁51と、を有し、梁51の少なくとも一部は、吐出口形成部材9の少なくとも一部を支持している。【選択図】 図4
Description
本発明は、吐出口から液体を吐出する液体吐出ヘッドに用いられる液体吐出ヘッド用基板、及びその製造方法に関する。
インクジェット記録装置などの液体を吐出する液体吐出装置に搭載される液体吐出ヘッドには、液体を吐出する複数の吐出口が形成される吐出口形成部材と、吐出口形成部材を支持するシリコン基板とを有する液体吐出ヘッド用基板が設けられている。シリコン基板には、各吐出口に連通する供給路が形成され、ここから供給された液体が各吐出口に供給される。また、シリコン基板には、各吐出口に連通する流路内のインクを吐出するための吐出エネルギーを発生するエネルギー発生素子が設けられている。
液体吐出ヘッド用基板のうち、シリコン基板は、吐出口形成部材を支持する部材としての機能を果す必要上、所定の強度が求められる。シリコン基板の機械的強度を向上させる手法の一つとして、供給路内に梁を形成する手法が知られている。
特許文献1には、供給路内の相対向する短辺間をつなぐように梁を形成したシリコン基板を有するインクジェット記録ヘッドが開示されている。これによれば、シリコン基板の強度を向上させることが可能になる。
しかしながら、特許文献1に開示の液体吐出ヘッド用基板では、供給路内に形成された梁が、シリコン基板の一面に設けられる吐出口形成部材と離間した構造となっている。このため、液体吐出ヘッド基板のサイズ、供給路のサイズ、吐出口形成部材と封止剤の量などによっては、液体吐出ヘッド用基板全体としての強度が不足し、液体吐出ヘッド用基板が変形する場合がある。液体吐出ヘッド用基板の変形が生じる要因としては、例えば、インクとの接触による吐出口形成部材などの膨潤がある。すなわち、吐出口形成部材の供給路や吐出口の内側は常に液体に接触した状態にあり、また、吐出口形成部材の吐出口面や封止剤等も吐出口から吐出されたインクの一部が付着する可能性がある。このようにインクに曝された状態が継続すると、樹脂材料によって形成されている吐出口形成部材や封止剤が膨潤することがあり、それによって吐出口形成部材や封止剤などに応力変化が生じることがある。この際、液体吐出ヘッド用基板に十分な強度が確保されていない場合、液体吐出ヘッド用基板が変形したり、吐出口形成部材がシリコン基板から剥離し、製品品質を低下させたりすることがある。
本発明は、上記従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、液体吐出ヘッド用基板の強度を向上させることを目的とする。
本発明は、液体を吐出する吐出口が形成された吐出口形成部材と、前記吐出口形成部材を支持する第1面と当該第1面とは反対側の第2面とを有する基板とを含む液体吐出ヘッド用基板であって、前記基板は、前記第1面から前記第2面へと貫通する供給路と、前記供給路の相対向する内面に形成された梁と、を有し、前記梁の少なくとも一部は、前記吐出口形成部材の少なくとも一部を支持していることを特徴とする。
また、本発明は、液体を吐出する吐出口が形成された吐出口形成部材と、前記吐出口形成部材を支持する第1面と当該第1面とは反対側の第2面とを有する基板と、を含む液体吐出ヘッド用基板の製造方法であって、前記第1面から前記第2面へと貫通する供給路と、前記供給路の相対向する内面に梁を形成する基板加工工程と、前記基板の前記第1面に前記吐出口形成部材を形成する吐出口形成工程と、を備え、前記基板加工工程は、前記吐出口形成部材の少なくとも一部を支持する位置に、前記梁の少なくとも一部を形成することを特徴とする。
本発明によれば、液体吐出ヘッド用基板の強度を向上させることが可能になる。
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、同一もしくは相当部分には、同一の番号を付与す。
[第1の実施形態]
[第1の実施形態]
(基本構成)
図1は、本実施形態に係る体吐出ヘッド用基板を模式的に示す斜視図である。この液体吐出ヘッド用基板1は、シリコン基板10と、その一方の面(図1における上面)に設けられた吐出口形成部材9とを含み構成されている。シリコン基板10には、液体を吐出するためのエネルギーを発生させる複数のエネルギー発生素子2が所定のピッチで配列され、エネルギー発生素子列を形成している。図1では、シリコン基板10に2つの吐出口列を並行に配置した例を示している。エネルギー発生素子2は、液体吐出ヘッド用基板1を構成するシリコン基板10の相対向する2つの面のうち、一方の面(図1における上面)にのみ設けられている。
図1は、本実施形態に係る体吐出ヘッド用基板を模式的に示す斜視図である。この液体吐出ヘッド用基板1は、シリコン基板10と、その一方の面(図1における上面)に設けられた吐出口形成部材9とを含み構成されている。シリコン基板10には、液体を吐出するためのエネルギーを発生させる複数のエネルギー発生素子2が所定のピッチで配列され、エネルギー発生素子列を形成している。図1では、シリコン基板10に2つの吐出口列を並行に配置した例を示している。エネルギー発生素子2は、液体吐出ヘッド用基板1を構成するシリコン基板10の相対向する2つの面のうち、一方の面(図1における上面)にのみ設けられている。
以下の説明では、シリコン基板10の2つの面のうち、エネルギー発生素子2が設けられている面21を第1面と称し、第1面21と反対側の面22を第2面と称す。また、シリコン基板10は、エネルギー発生素子2の配列方向に延びる細長い長方形状を有する。以下、シリコン基板10の長手方向をX方向、X方向に交差する(本実施形態では直交する)する方向(シリコン基板10の短辺方向)をY方向とする。
シリコン基板10には、第1面21から第2面22に亘って貫通する供給路13が形成されている。供給路13は、シリコン基板10の第2面22の側から第1面21の側へと液体を供給し、後述の吐出口形成部材9(図1)の吐出口11に液体を供給する部分である。供給路13の第1面21の側の開口部は、エネルギー発生素子2の2つの列の間に位置している。
後述するように、供給路13は第2面22の側から異方性エッチングを行うことによってシリコン基板10に形成される。供給路13は、エネルギー発生素子2の配列方向、すなわちX方向に延出するスリット状の形状を有している。また、供給路13の横断面形状は、第2面の側から第1面の側に向けて狭くなるテーパー状をなしている。なお、供給路13の内面には、本実施形態の特徴的構成である長手梁51が形成されている。
図2は本実施形態における液体吐出ヘッド用基板1を示す図である。図2(a)は第2面側から見た底面図である。図2(b)は図2(a)に示す供給路13の短手方向(Y方向)における中心を通過し、かつ長手方向(X方向)と並行するIb−Ib線に沿って切断した縦断側面図である。図2に示すように、供給路13の内部には、相対向する内面(短辺部13a、13b)の間を接続するように、長手方向(X方向)に延出する長手梁51が形成されている。後述するように長手梁51は、シリコン基板10に対し異方性エッチングを行って供給路13を形成する際に、供給路13と同時に形成される。長手梁51は、供給路13が形成されたシリコン基板10の機械的強度を高める機能を有する。
シリコン基板10の厚さ方向における長手梁51の寸法(梁高さ)は、シリコン基板10の厚さ(第1面10aから第2面10bまでの各面に垂直な方向の長さ)よりも小さい。換言すれば、長手梁51は、シリコン基板10の厚さ方向(Z方向)には部分的にしか設けられていない。従って、長手梁(第1の梁)51を設けたことによって供給路13が複数に分断されることはない。
また、吐出口形成部材9には、図1に示すように、複数のエネルギー発生素子2に対応して複数の吐出口11が形成されている。吐出口形成部材9は、供給路13から各吐出口11に連通する流路12の天井や側壁などとしても機能する部材である。すなわち、吐出口形成部材9は、流路12の一部を形成する部材であり、液体吐出ヘッドの使用中は常に液体と接触することとなる。このため、吐出口形成部材9には、構造材料としての高い機械的強度、下地であるシリコン基板10側との密着性、耐液性(例えば耐インク性)が求められる。さらに吐出口形成部材9には、吐出口11としての微細なパターンをパターニングするための解像性が求められる。従って、吐出口形成部材9は上記のような条件を考慮した樹脂材料によって構成されている。
次に、液体吐出ヘッド用基板1を構成するシリコン基板10に対して供給路13及び長手梁51を同時に形成する工程について説明する。シリコン基板10の第2面22において供給路13が形成されるべき位置に対応する領域を供給路形成領域と呼ぶ。本実施形態によるシリコン基板10の加工方法では、供給路形成領域に対し、第1面21の側及び第2面22の側の両側から、あるいは第2面22の側のみからシリコン基板10に所定の深さの複数の貫通/未貫通孔(以下、先導孔)を形成する。その後、先導孔の開口部が形成されている面側からシリコン基板10の異方性エッチングを行う。
以下では、供給路形成領域に複数の先導孔を形成する工程を先導孔形成工程と呼ぶ。また、先導孔が形成されたシリコン基板10に対して異方性エッチングを行い、供給路13と供給路13内の長手梁51とを同時に形成する工程をエッチング工程と呼ぶ。また、先導孔形成工程とエッチング工程とを含めて基板加工工程と呼ぶ。
エッチング工程では、供給路形成領域以外の位置へと異方性エッチングが進行しないようにするため、シリコン基板10の第2面22には予めエッチングマスクを設けておく必要がある。エッチングマスクは、少なくとも供給路形成領域外に設けられる。エッチングマスクは、例えば、第2面22に酸化膜4を設けることによって形成する。また、供給路形成領域の一部にもエッチングマスクを設けることができる。
一方、シリコン基板の第1面21においても、エッチングマスクとして酸化膜4が予め設けられる。また、第1面21には、所望形状の長手梁51を得るために、第1面21に形成される供給路13の開口部の形成領域に対応して、第1面21と酸化膜4との間に後述する犠牲層を予め設けてもよい。
エッチング工程では、シリコン基板10の第2面22から異方性エッチングが進行すると共に、先導孔の側面及び底面からも異方性エッチングが進行する。このとき、複数の先導孔において、隣接する先導孔の間隔あるいは深さを変えることによって、異方性エッチングにおけるエッチングの進行速度が変化する。一般に、隣接する先導孔の間隔を狭くしたり、先導孔の深さを深くしたりすることによって、隣接する先導孔が異方性エッチングによって繋がるまでの時間も短くなる。これにより、エッチング速度は高まる。
なお、本実施形態に基づく加工方法によって、図1に示す液体吐出ヘッド用基板1を作成する場合、シリコン基板10としては、エネルギー発生素子2やエネルギー発生素子2に接続される配線層が、予め第1面21に形成されているものを用いることが好ましい。すなわち、エネルギー発生素子2や配線層を、供給路や長手梁の形成工程とは別個の工程によって形成しておくことにより、各製造工程を単純化することが可能になると共に、各部の精度をより高めることが可能になる。
(特徴構成)
次に、基本構成において説明した本実施形態の液体吐出ヘッド用基板1の特徴構成および製造工程をより具体的に説明する。
次に、基本構成において説明した本実施形態の液体吐出ヘッド用基板1の特徴構成および製造工程をより具体的に説明する。
<シリコン基板>
本実施形態では、加工すべきシリコン基板10として、基板面の結晶方位が(100)面となる細長い長方形状のシリコン基板10を用いる。シリコン基板10の第1面21には、図3(a)に示すように、エネルギー発生素子2が予め形成されている。なお、実際の基板には、エネルギー発生素子2に接続される配線層が形成されているが、本発明の本質にかかわるものではないため、図示は省略する。
本実施形態では、加工すべきシリコン基板10として、基板面の結晶方位が(100)面となる細長い長方形状のシリコン基板10を用いる。シリコン基板10の第1面21には、図3(a)に示すように、エネルギー発生素子2が予め形成されている。なお、実際の基板には、エネルギー発生素子2に接続される配線層が形成されているが、本発明の本質にかかわるものではないため、図示は省略する。
シリコン基板10の第2面22の一部には、例えばSiO2(二酸化ケイ素)である酸化膜4が設けられている。酸化膜4は、第2面22における供給路を形成すべき領域(供給路形成領域)の外側の領域を覆うように設けられている。さらに、供給路形成領域内にも、その一部の領域を覆うように設けられている。また、必須ではないが酸化膜4にシリコン基板10の第2面を保護する基板保護膜を形成してもよい。基板保護膜としては、例えばポリエーテルアミド樹脂を用いることができる。本実施形態では基板保護膜が設けられていない構成を想定している。
一方、シリコン基板10の第1面21の一部には、例えばSiO2である酸化膜4が設けられている。必須ではないが第1面21の一部に犠牲層を形成してもよい。犠牲層を形成する場合、その形成位置は、例えば、第1面21において供給路13が形成される位置とする。犠牲層を設けることにより、供給路13の開口幅をより良好に制御できるようになる。犠牲層は、シリコン基板10よりもエッチング液に対するエッチング速度が速い層である。例えばAl−Si合金、Al−Cu、Cu等で形成することができる。但し、本実施形態では、犠牲層が設けられていない構成を想定している。
<先導孔形成工程>
先導孔形成工程では、シリコン基板10の第1面21と第2面22の両側から、あるいは第2面22側のみから複数の先導孔を形成する。本実施形態では、図3(c)に示すように、第1面21側から加工する表先導孔32と、第2面22側から加工する裏先導孔33とを形成する。先導孔32、33の形成方法としては、例えばパルスレーザー光を用いたレーザーアブレーション技術による加工方法を用いることができる。先導孔32、33の深さは、貫通/未貫通も含めて任意の深さとすることができる。
先導孔形成工程では、シリコン基板10の第1面21と第2面22の両側から、あるいは第2面22側のみから複数の先導孔を形成する。本実施形態では、図3(c)に示すように、第1面21側から加工する表先導孔32と、第2面22側から加工する裏先導孔33とを形成する。先導孔32、33の形成方法としては、例えばパルスレーザー光を用いたレーザーアブレーション技術による加工方法を用いることができる。先導孔32、33の深さは、貫通/未貫通も含めて任意の深さとすることができる。
先導孔32、33は、供給路13および長手梁51の形成精度と均一性を維持するため、供給路13の長手方向の中心線(供給路13の開口部の短手方向(Y方向)における中心を通過する長手方向(X方向)の線)に沿って形成することが好ましい。先導孔32、33の配置間隔は、隣接する先導孔が互いに重ならないように設定することが好ましい。このため、先導孔32、33の配置間隔は、先導孔32、33の直径、レーザー光の照射による加工装置の加工位置精度やアライメント精度等を考慮して設定する。シリコン基板10上に加工される先導孔32、33の直径は5〜20μmが好ましい。なお、本実施形態では、先導孔32、33のそれぞれにおいて、X方向及びY方向に互いに隣接する先導孔それぞれの中心間の距離のうち、最短となる距離を先導孔の配置間隔と定義する。
<エッチング工程>
エッチング工程では、シリコン基板10の第2面22から異方性エッチングを行う。異方性エッチングに用いるエッチング液としては、例えば、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)やKOH(水酸化カリウム)等の強アルカリ溶液が挙げられる。エッチングが進行し、エッチング面が第1面21に到達することで、供給路13が形成される。供給路形成領域の寸法、すなわち供給路13の開口部の寸法は、作成しようとする液体吐出ヘッド用基板1における吐出口11の配置と、形成すべき供給路の寸法とに応じて定められる。このため、供給路13の開口部の寸法は一定の寸法に限定されるものではない。本実施形態では、吐出口列に沿った方向(X方向)における供給路13の開口部の寸法を5〜40mmとし、Y方向の寸法を200μm〜1.5mmとしている。
エッチング工程では、シリコン基板10の第2面22から異方性エッチングを行う。異方性エッチングに用いるエッチング液としては、例えば、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)やKOH(水酸化カリウム)等の強アルカリ溶液が挙げられる。エッチングが進行し、エッチング面が第1面21に到達することで、供給路13が形成される。供給路形成領域の寸法、すなわち供給路13の開口部の寸法は、作成しようとする液体吐出ヘッド用基板1における吐出口11の配置と、形成すべき供給路の寸法とに応じて定められる。このため、供給路13の開口部の寸法は一定の寸法に限定されるものではない。本実施形態では、吐出口列に沿った方向(X方向)における供給路13の開口部の寸法を5〜40mmとし、Y方向の寸法を200μm〜1.5mmとしている。
図3は、本実施形態における液体吐出ヘッド用基板1の一部を構成するシリコン基板10に対して供給路及び長手梁を形成する工程を模式的に示す縦断側面図である。図3(a)は、シリコン基板10の第1面21上に密着向上層(層)20を形成する工程を示している。密着向上層20としては、例えばポリエーテルアミドを用いることができる。密着向上層20の形成方法としては、例えばポジ型の感光性樹脂(図示せず)をマスクとして用い、一般的なフォトリソグラフィー技術によって形成する方法がある。また、密着向上層20として、感光性のエポキシ樹脂を用いることも可能である。この場合にも、一般的なフォトリソグラフィー技術によって密着向上層20を形成することができる。以下、密着向上層20として、ポリエーテルアミドを用いた場合を想定して説明を行う。
密着向上層20は、吐出口形成部材9との密着性を向上させるため、吐出口形成部材9の近傍にパターンを形成するように配置することが好ましい。以下の工程では、長手梁51と吐出口形成部材9(図1、図4参照)との密着性を向上させるため、密着向上層20の少なくとも一部が長手梁51に密着するように形成する。長手梁51と密着向上層20との密着領域が広いほど、長手梁51及び吐出口形成部材9は、密着向上層20に対してより強固に密着し、吐出口形成部材9は長手梁51によってより強固に支持される。その結果、液体吐出ヘッド用基板1の強度は向上し、吐出口形成部材9などに発生した応力に対する変形抑制効果も高まる。長手梁51に密着している密着向上層20の領域としては、第1面21における長手梁51の表面積の30〜100%を被覆していることが好ましい。
なお、本実施形態においては、長手梁51は吐出口形成部材9の少なくとも一部分を支持していればよく、長手梁51と直接接触する部分は密着向上層20に限定されない。長手梁51が密着向上層20以外の部分と接触する構成については、後述の実施例において説明する。
図3(b)は、シリコン基板10の第1面21上に基板表面保護膜16を形成した状態を示している。基板表面保護膜16は、第1面21の中で、表先導孔32を形成した部分以外の部分が、エッチング工程においてエッチングされるのを防止するために形成する膜である。基板表面保護膜16としては、例えば環化ゴム系の樹脂を用いることができる。基板表面保護膜16は、例えばスピンコート法により、シリコン基板10の第1面21に形成することができる。基板表面保護膜16の膜厚はエッチングに耐え得る厚さを有していることが必要であり、使用するエッチング液、エッチング条件等に応じて定める。例えば、TMAH水溶液(83℃、22%)による異方性エッチングを0.5〜4時間行う場合には、基板表面保護膜16を、5〜50μmの厚さに形成することが好ましい。
図3(c)は、長手梁51を形成するために、長手梁形成領域61に先導孔32、33及び改質層34を形成する工程を示している。なお、長手梁形成領域61に形成する表先導孔32を表先導孔321と定義する。まず、基板表面保護膜16の表面側(図3(c)において上面側)から、基板表面保護膜16、酸化膜4を貫通してシリコン基板10の内部に侵入する表先導孔32を複数形成する。隣接する表先導孔32の長手方向(X方向)及び短手方向(Y方向)の配置間隔は、以下のように設定することが好ましい。
例えば、表先導孔32の直径が10μm程度であり、レーザー加工装置の加工位置精度が±10μm程度、アライメント精度が±5μm程度である場合、長手方向(X方向)における表先導孔32の配置間隔は20〜60μm程度とすることが好ましい。また、表先導孔32の列(X方向に配列された複数の表先導孔32により構成される表先導孔の列)を、供給路13の長手方向の中心線を基準として対称となる位置に2列形成することが好ましい。
隣接する表先導孔32の短手方向(Y方向)における配置間隔は、形成すべき供給路13の短手方向における開口幅と、長手梁51の幅(短手方向における長さ)とに応じて定められるエッチング条件、及びエッチング時間等を考慮して設定することが好ましい。短手方向(Y方向)における表先導孔32の配置間隔は、例えば100〜150μmが好ましい。表先導孔32の深さについても、形成すべき供給路13の短手方向における開口幅と長手梁51の短手方向における長さに応じて定められるエッチング条件、及びエッチング時間等を考慮して設定することが好ましい。表先導孔32の深さは、例えば50〜300μmが好ましい。なお、本発明において、表先導孔32は長手梁51の形成に必ずしも必要ではない。長手梁51の形状によっては、表先導孔32の形成工程を省略することができる。表先導孔32を形成しない構成については、後述の実施例に記載する。
次に、シリコン基板10の第2面22の側から複数の裏先導孔33を形成する。複数の裏先導孔33のうち、表先導孔32に最も近く、かつ最も深く形成される裏先導孔を裏先導孔331とする。また、供給路13の形状および長手梁51の形状を制御するために裏先導孔331より外側に形成するものを裏先導孔332、裏先導孔331より内側に形成するものを裏先導孔333とする。裏先導孔331、332、333は、それぞれ、複数個が長手方向(X方向)に沿って配置されている。
裏先導孔331の長手方向(X方向)における配置間隔は、20〜60μmとすることが好ましい。表先導孔32が裏先導孔33に先行して形成されている場合、その先行して形成されている表先導孔32のX方向における配置間隔と同一の配置間隔で裏先導孔331を配置することが好ましい。X方向へ配置された複数の裏先導孔331から構成される裏先導孔列は、供給路13の長手方向(X方向)に延びる中心線を基準として対称となる位置に2列形成することが好ましい。
表先導孔32が裏先導孔33に先行して形成されている場合、裏先導孔331の短手方向(Y方向)における配置間隔は、表先導孔32の短手方向(Y方向)における間隔よりも広く設定することが好ましい。例えば、裏先導孔331は、当該裏先導孔331に最も近接する表先導孔32から短手方向(Y方向)において20〜60μm離して形成することが好ましい。すなわち、裏先導孔331の短手方向(Y方向)の配置間隔は、120〜270μmに設定することが好ましい。また、表先導孔32が先行して形成されていない場合、裏先導孔331の短手方向(Y方向)の配置間隔は、例えば100〜150μmに設定することが好ましい。
また、表先導孔32が裏先導孔33に先行して形成されている場合、裏先導孔331の深さ(Z方向の距離)は表先導孔32の深さとの和がシリコン基板10の厚さより大きくなるように設定することが好ましい。例えば、表先導孔32の深さを75〜300μmとした場合、裏先導孔331の深さは450〜650μmに設定することが好ましい。これに対し、表先導孔32が裏先導孔33に先行して形成されていない場合、裏先導孔331の深さは600〜725μmにすることが好ましい。
裏先導孔332の長手方向(X方向)の配置間隔は、裏先導孔331の長手方向の配置間隔と同一になるように設定することが好ましい。すなわち、20〜60μmとすることが好ましい。長手方向(X方向)に配置された複数の裏先導孔332から構成される裏先導孔列は、供給路13の中心を基準として互いに対称となる位置に2本以上の偶数本を形成することが好ましい。
裏先導孔332の短手方向(Y方向)の配置間隔は、形成すべき長手梁51の形状を考慮して、裏先導孔331の短手方向の配置間隔よりも大きな間隔に設定することが好ましい。裏先導孔331に最も近い裏先導孔332は、当該裏先導孔332に最も近い裏先導孔331から、短手方向(Y方向)において20〜60μm離して形成することが好ましい。また、裏先導孔331に最も近接する裏先導孔332の外側に、さらに裏先導孔332を形成する場合、当該外側に形成する先導孔332の内側に隣接する裏先導孔332に対して、短手方向において20〜60μm離して形成することが好ましい。裏先導孔332の深さは100〜600μmとすることが好ましい。
裏先導孔333の長手方向(X方向)の配置間隔は、裏先導孔331の長手方向の配置間隔と同一の間隔に設定することが好ましい。裏先導孔333の長手方向(X方向)の列数については、供給路13の長手方向に延びる中心線を基準として対称となる位置にそれぞれ1列以上形成することが好ましい。裏先導孔333を2列以上形成する場合、短手方向(Y方向)の配置間隔は、例えば40〜80μmとすることが好ましい。裏先導孔332の深さは100〜600μmが好ましい。
本発明において、裏先導孔332及び裏先導孔333は長手梁51の形成に必ずしも必要ではない。形成すべき長手梁51の形状によっては、裏先導孔332及び裏先導孔333の形成工程は省略できる。裏先導孔332及び裏先導孔333を形成しない構成については、後述の実施例において説明する。なお、上述した各先導孔の配置間隔、列数、及び深さ等については、形成すべき長手梁51の形状に応じて、適宜調整が可能である。
次に、酸化膜4を含むシリコン基板10の第2面22側に改質層34を形成する工程について説明する。改質を行う手法としては、例えばレーザーを照射する方法がある。酸化膜4を含むシリコン基板10の第2面22側にレーザーを照射することにより、レーザーが照射された部分が改質され、改質層34が形成される。改質層34が形成された部分には、酸化膜4が存在しなくなる。前述のように酸化膜4はエッチング工程においてマスクとしての機能を果すため、酸化膜4が存在しない部分についてはエッチングが進行する。従って、改質層34のパターン及びエッチング時間によって、供給路13の第2面22側の開口寸法を制御することができる。
改質層34は、裏先導孔33の中で最も外側に位置する先導孔(図3に示す例では、裏先導孔332)よりも外側に、当該先導孔を囲うように形成することが好ましい。さらに、最も外側に位置する先導孔と改質層34との間隔は、長手方向と短手方向のいずれにおいても同じ間隔になるように形成することが好ましい。この間隔としては供給路13の開口寸法にもよるが、例えば25〜500μmとすることが好ましい。
裏先導孔333を形成しない場合は、長手梁51が形成される直下にも改質を行う。これにより、第2面22に対して、掘込まれた位置に長手梁51が形成されるため、供給路13は長手梁51によって分断されることはなく、供給路13が全体的に連通した状態となる。また、裏先導孔333を形成する場合は、裏先導孔333からのエッチングによって供給路13を形成することができる。そして、この場合にも、供給路13は長手梁51によって分断されることはなく、全体的に連通した状態となる。つまり、改質処理を行わなくとも、裏先導孔333を形成することで、長手梁51を適正に形成することが可能である。よって、改質処理の要否は、形成すべき長手梁51の寸法形状に応じて適宜決定すればよい。
図3(d)は、異方性エッチングにより、供給路13および長手梁51を形成した状態を示している。エッチング液は、前述のTMAH、KOHを用いることができる。供給路13及び長手梁51の寸法形状に応じて、エッチング液の温度、濃度、及び処理時間などの条件を適切に設定することにより、供給路13の開口幅及び長手梁51の形状を制御することができる。
供給路13の第1面21における短手方向(Y方向)の開口幅は、例えば100〜170μmとすることが好ましい。また、供給路13の第2面22における短手方向の開口幅は、例えば200〜1000μmとすることが好ましい。長手梁51の横断面(短手方向に沿った断面(図3(d)))において、第1面21の長手梁51の梁幅W(図3(e))は、例えば30〜100μmとすることが好ましい。さらに、第1面21から第2面22に向かう長手梁51の梁高さH(図3(e))は、例えば50〜700μmとすることが好ましい。第1面21における長手梁51の長手方向の梁長さL(図2(b))は、供給路13の長辺の長さで決定される。
なお、供給路13の開口部近傍の酸化膜4がバリとして残っている場合には、例えばバッファードフッ酸(BHF)のウェットエッチングにより除去できる。エッチングが進行し、エッチング面が第1面21に到達することで、図3(d)に示すように供給路13が形成される。
供給路13を形成した後、シリコン基板10の第1面21側に形成されている基板表面保護膜16を除去する。図2(f)に、基板表面保護膜16を除去する工程を施した後の状態を示す。基板表面保護膜16を除去には、エチルベンゼン及びキシレンの混合液を用いる方法が挙げられる。
以上の図3に示す工程を経て、図2(a)の底面図に示すような細長い長方形状の開口部を有する供給路13が形成されると共に、供給路13内には、図2(b)に示すように、供給路13の長手方向(X方向)に延在する長手梁51が形成される。
次に、長手梁51を形成した後に行う吐出口形成工程を説明する。図4は長手梁51形成後に行う吐出口形成工程を示す模式図である。この吐出口形成工程では、まず、図4(a)に示すように、酸化膜4及び密着向上層20を含むシリコン基板10の第1面21側に、ラミネートテープ17を貼る。この工程に使用するラミネートテープ17としては、例えばアクリル系UV硬化型のテープを用いることができる。
次に、図4(b)に示すように、シリコン基板10の第2面22側から供給路13内に穴埋め材18を充填する。穴埋め材18としては、例えばポリビニルアルコール(PVA)からなるものを用いることができる。穴埋め材18の充填には、例えば供給路13内に挿入できる程度のニードル径を備えたディスペンス装置を用いた充填方法が適用可能である。
次に、図4(c)に示すように、シリコン基板10の第1面21側に貼り付けられたラミネートテープ17を除去する。このラミネートテープ17の除去は、テープ材料特性に対応した波長のUV照射によって行うことができる。
次に、図4(d)に示すように、シリコン基板10の第1面21に流路12となる型材19をパターニングする。型材19としては、例えばポジ型の感光性樹脂を用いることができる。型材19は、一般的なフォトリソグラフィー技術を用いて形成することができる。
次に、図4(e)に示すように、シリコン基板10の第1面21に吐出口11をパターニングする。吐出口形成部材9としては、例えばネガ型の感光性エポキシ樹脂を用いることができる。吐出口11は、一般的なフォトリソグラフィー技術を用いて形成することができる。
次に、図4(f)に示すように、穴埋め材18及び型材19を除去する。穴埋め材18の除去材料としては水を用いることができる。また、型材19の除去材料としては、例えば、乳酸メチルを用いることができる。穴埋め材18及び型材19を除去した後、ベーク処理を行う。
以上説明した工程により、本実施形態における液体吐出ヘッド用基板1が形成される。この液体吐出ヘッド用基板1では、長手方向(X方向)に延在する長手梁51の一面(図4では上面)が全体的に密着向上層20を介して吐出口形成部材9に密着する。すなわち、液体供給路においてもシリコン基板10に形成された長手梁51が吐出口形成部材9を支持する。このため、従来の液体吐出ヘッド用基板のように、シリコン基板の供給路内に形成されている長手梁が吐出口形成部材から離間した構造に比べ、本実施形態における液体吐出ヘッド用基板1の強度は大幅に向上する。その結果、樹脂材料によって形成された吐出口形成部材などが液体との接触により膨潤し、応力変化が発生したとしても、液体吐出ヘッド用基板1の変形や吐出口形成部材の剥離などを抑制することが可能になる。このため、本実施形態における液体吐出ヘッド用基板1によれば、液体吐出ヘッドの信頼性向上、延いては記録品質の維持・向上が期待できる。
(第1の実施形態に係る実施例)
以下、上述の第1の実施形態に基づく、実施例を説明する。
以下、上述の第1の実施形態に基づく、実施例を説明する。
<第1の実施形態の実施例1>
図5を参照しつつ、本実施例1の長手梁形成過程を説明する。本実施例1においては、密着向上層20のパターニング工程、及び基板表面保護膜16の形成・除去工程は、上述の実施形態と同様であり、これらの工程に関する重複説明は省略する。
図5を参照しつつ、本実施例1の長手梁形成過程を説明する。本実施例1においては、密着向上層20のパターニング工程、及び基板表面保護膜16の形成・除去工程は、上述の実施形態と同様であり、これらの工程に関する重複説明は省略する。
図5(a)は先導孔33、及び改質層34を形成する工程を示す横断面図である。本実施例1では、形成すべき長手梁51の表面(第1面)を100%被覆するように、密着向上層20によるパターニングを行った。この密着向上層20のパターンの寸法形状は、使用するフォトマスクのパターンによって調整可能である。また、シリコン基板10の厚さは725μmとし、供給路13の開口部の寸法は、短手方向において300μm、長手方向において20000μmを目標とした。
本実施例1では、上記実施形態において説明した表先導孔32の形成は行わず、裏先導孔33として、2組の裏先導孔331及び裏先導孔332を形成した。
まず、裏先導孔331を形成した。この裏先導孔331の形成において、長手方向の配置間隔は20μm、長手方向の列数は2列、短手方向の配置間隔は100μm、深さは725μmとした。なお、本実施例1では、基板表面保護膜16を貫通するように裏先導孔331を形成した。しかし、裏先導孔331は、基板表面保護膜16は貫通しない位置まで形成するようにしてもよい。
次に、裏先導孔332を形成した。この裏先導孔332の形成において、長手方向の配置間隔は20μm、長手方向の列数は2列、短手方向の配置間隔は200μm、深さは400μmとした。
次に、シリコン基板10の第2面22の表面に改質層34を形成した。この改質層34の形成工程では、まず供給路13の開口部を規定する改質パターンを裏先導孔332の外側に40μmの間隔をおいて形成した。改質パターンは、線幅を25μmとし、裏先導孔332を囲うようなロの字状の形状に形成した。また、シリコン基板10において、長手梁51を形成する直下の領域には、短手方向において120μmの線幅を有するパターンを、形成すべき供給路13の長手方向の長さ範囲に亘って形成した。
次に、供給路13及び長手梁51の形成工程及び基板表面保護膜16の除去工程を行った。図5(b)は、本実施例1において、供給路13及び長手梁51を異方性エッチングにより形成した状態を示す横断面図である。エッチング条件としては、TMAH水溶液(83℃、22%)を用い、エッチング時間を1時間に設定した。
長手梁51の形成過程では、第1面21及び第2面22側から(111)面を形成しつつエッチングが進行する。裏先導孔331においては(011)面のエッチングが行われることにより先導孔同士がつながるようにエッチングが進む。このエッチングの進行の差によって、シリコン基板10の中央付近ではシリコンが消失する。その結果、図5(b)に示すように、長手梁51が第1面21側とおよび第2面22側のそれぞれに形成される。それぞれの長手梁51の先端(シリコン基板10の中央に向けて突出する端部)には、上下と左右からのエッチングの影響により高次結晶面が形成される。また、第2面22側は改質処理を行っているため、第2面22側に形成される長手梁51は、第2面から30μm掘込まれた位置に形成される。このとき、供給路13の第1面21における短手方向の開口幅は120μmであった。
第1面21側に形成された長手梁51の短手方向の梁幅Wfは70μm、梁高さHfは50μmであった。また、第2面22側に形成された長手梁51の梁幅Wsは40μm、梁高さHsは20μmであった。なお、長手梁51の各寸法はこれに限定されるものではなく、実施形態に示した範囲内で適宜調整可能である。
図7(a)、(b)は本実施例1のシリコン基板10を示す図である。図7(a)は、図5(b)に示すシリコン基板10の供給路13を第2裏面22側からみた底面図である。また、図7(b)は、図7(a)のシリコン基板10を供給路13の短手方向(Y方向)における中心を通過し、かつ長手方向(X方向)と平行するVIIb−VIIb線に沿って切断した縦断側面図である。図7(a)、(b)に示すように、供給路13の短手方向における中央部には、第1面21側に位置する長手梁51と第2面22側に位置する長手梁51の2本の長手梁51が長手方向に沿って形成されている。また、図7(b)に示すように、第2面22側の長手梁51は、第2面22から第1面21に向かって掘込まれた位置に形成されている。
以上のように、本実施例1では、供給路13の第1面21側に形成された長手梁51に加えて、第2面22側にも長手梁51が形成されている。このため、第1面21側だけに長手梁51が形成されている構成に比べて、シリコン基板10の強度は高まり、シリコン基板10にかかる応力による変形をより確実に抑制することが可能になる。
<第1の実施形態の実施例2>
本実施例2では、密着向上層20のパターニング工程、及び基板表面保護膜16の形成・除去工程などを上述の実施形態と同様に行う。よって、これらの工程に関する重複説明は省略する。密着向上層20を、形成すべき長手梁の表面(第1面)を100%被覆するように予めパターニングした。このパターンの寸法形状は、使用するフォトマスクのパターンによって調整可能である。また、シリコン基板10の基板の厚さは725μmとし、供給路13の開口部の寸法は、短手方向において260μm、長手方向において20000μmを目標とした。
本実施例2では、密着向上層20のパターニング工程、及び基板表面保護膜16の形成・除去工程などを上述の実施形態と同様に行う。よって、これらの工程に関する重複説明は省略する。密着向上層20を、形成すべき長手梁の表面(第1面)を100%被覆するように予めパターニングした。このパターンの寸法形状は、使用するフォトマスクのパターンによって調整可能である。また、シリコン基板10の基板の厚さは725μmとし、供給路13の開口部の寸法は、短手方向において260μm、長手方向において20000μmを目標とした。
図6(a)は本実施例2の先導孔32、33を形成する工程を示している。本実施例2では、表先導孔32と裏先導孔33を形成する。裏先導孔33としては、図3に示す裏先導孔33のうち裏先導孔331のみを形成する。表先導孔32の長手方向の配置間隔は20μm、表先導孔32の長手方向の列数は2列、短手方向の配置間隔は120μm、深さは75μmとした。また、裏先導孔331の長手方向の配置間隔は20μm、長手方向の列数は2列、短手方向の配置間隔は160μm、深さは650μmとした。
次に、シリコン基板10の第2面22の表面に改質層34を形成する工程を実施した。この工程では、まず供給路13の開口部を規定する改質パターンを裏先導孔331の外側に40μmの間隔をあけて形成した。改質パターンは、線幅25μmのパターンにより、裏先導孔331を囲うようなロの字状の形状に形成した。また、シリコン基板10において、長手梁51を形成する直下の領域に関しては、短手方向において120μmの線幅を有するパターンを、形成すべき供給路13の長手方向の長さ範囲に亘って形成した。
次に、供給路13及び長手梁51の形成工程を行った。図6(b)は、異方性エッチングにより、供給路13及び長手梁51を形成した状態を示す横断面図である。エッチング条件としては、TMAH水溶液(83℃、22%)を用い、エッチング時間は1時間に設定した。長手梁51の形成過程では、第1面21および第2面22側からは(111)面を形成しつつエッチングが進行する。裏先導孔331においては、(011)面のエッチングが行われることにより、先導孔同士がつながるようにエッチングが進む。但し、本実施例2では、表先導孔32と裏先導孔331とでZ方向において重なる部分が短いため、エッチングの進行時間が短く、第2面22側の短手方向の先導孔間隔が広い。このため、シリコン基板10の中央付近で梁が分断されることなく、一つに繋がった状態で形成される。また、第2面22側は改質処理を行っているため、第2面22に対して15μm程度掘込まれた位置に形成される。このとき、供給路13の第1面21における短手方向の開口幅は140μmであった。第1面21側に形成された長手梁51の梁幅Wは100μm程度、梁高さHは710μmであった。なお、実施例2に示した長手梁51の各寸法はこれに限定されるものではなく、実施形態に示した範囲内で適宜調整可能である。
図7(c)、(d)は本実施例2のシリコン基板10を示す図である。図7(c)は、図6(b)に示すシリコン基板10の供給路13を第2面22側からみた底面図である。また、図7(d)は、図7(c)に示すシリコン基板10を供給路13の短手方向(Y方向)における中心を通過し、かつ長手方向(X方向)と平行するVIId−VIId線に沿って切断した断面図である。図7(c)、(d)に示すように、供給路13の短手方向における中央部には、供給路13の長手方向に沿って1つの長手梁51が形成されている。また、図7(d)に示すように、長手梁51の上面はシリコン基板10の第1面21と一致し、長手梁51の下面は、第2面22から第1面21に向かって掘込まれた位置に形成されている。
本実施例2に示した構成により、供給路13の第1面21側から第2面22側に向かって延在した形態で長手梁51が形成される。このため、長手梁51の体積は実施例1に比べてさらに増大する。その結果、記録ヘッド用基板の強度はさらに向上し、基板にかかる応力に対し、より高い変形抑制効果を期待できる。
<第1の実施形態の実施例3及び実施例4>
次に、第1の実施形態の実施例3を、図8(a)を参照しつつ説明する。本実施例3は、第1の実施形態における長手梁51と吐出口形成部材9とが直接的に密着する構成を備える。ここでは、長手梁51の梁幅Wは100μmとし、吐出口形成部材9による長手梁51の一面(図8(a)では上面)に対する被覆率は100%とした。
次に、第1の実施形態の実施例3を、図8(a)を参照しつつ説明する。本実施例3は、第1の実施形態における長手梁51と吐出口形成部材9とが直接的に密着する構成を備える。ここでは、長手梁51の梁幅Wは100μmとし、吐出口形成部材9による長手梁51の一面(図8(a)では上面)に対する被覆率は100%とした。
図8(a)は本実施例3の長手梁51と吐出口形成部材9とを模式的に示す横断面図である。本実施例3では、長手梁51と吐出口形成部材9とが直接的に密着し、供給路13の形成領域内において長手梁51が吐出口形成部材9を支持する構成となっている。なお、吐出口形成部材9における供給路13以外の部分は、エネルギー発生素子2の周囲近傍を除き、シリコン基板10の第1面21に形成された酸化膜4及び密着向上層20を介してシリコン基板10に支持されている。このような吐出口形成部材9と長手梁51とが直接的に密着する構成を形成する場合には、密着向上層20のパターニング工程時に梁形成領域上に密着向上層20および酸化膜4を設けずに、上述の吐出口形成工程を行う。
次に、第1の実施形態の実施例4を説明する。 図8(b)は本実施例4の長手梁51と吐出口形成部材9とを模式的に示す横断面図である。本実施例4は、上記実施例3と同様に、長手梁51と吐出口形成部材9とが密着する構成を備え、長手梁51の梁幅Wも、実施例3と同様に100μmとした。但し、本実施例4においては、吐出口形成部材9のうち、長手梁51と接触する面領域の一部に凹部91を形成し、この凹部91によって第1の梁の一面と前記吐出口形成部材との間に空隙gが形成されており、この点が実施例3と異なる。なお、空隙g以外の部分は、吐出口形成部材9と長手梁51の一面と直接的に密着している。
空隙gを形成する方法としては、例えば、次のような方法がある。まず、シリコン基板10の第1面21に凹部91に対応した形状の型材(図4(d))を形成する。この型材の一部には、型材の除去工程において除去液と接する部分を設けておく。次いで、シリコン基板10の第1面21側に吐出口形成部材9を形成した後、除去液によって流路12を形成すると同時に、型材を除去する。これにより、長手梁51と吐出口形成部材9との間に空隙gが形成される。この空隙gの形成領域を調整することによって、長手梁51の一面に対する吐出口形成部材9の被覆率空隙gを形成することにより、長手梁51の一面に対する吐出口形成部材9の被覆率は70%となっている。
このように、吐出口形成部材9の一部に凹部91を形成することにより、吐出口形成部材9の体積および長手梁51に対する被覆率を調整することができる。その結果、吐出口形成部材9に生じる応力変化の影響を、液体吐出ヘッド用基板1の寸法や供給路寸法の違いに応じて、調整することが可能になる。なお、長手梁51の上面に対する吐出口形成部材9の被覆率は、上記実施例に示した値に限定されるものではなく、吐出口部にかかる応力を考慮して、適切な被覆率を設定可能である。また、実施例3及び実施例4に示した長手梁51と吐出口形成部材9とが密着した構成、すなわち、長手梁51と吐出口形成部材9とが直接的に接触する構成は、上記実施例1及び実施例2に対しても適用可能である。
[第2の実施形態]
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態は、第1の実施形態と同様に図1に示す構成を有する。以下の説明において上記第1の実施形態と同一の機能を有する構成には同一の番号を付与し、その説明を省略する場合がある。
図9は第2の実施形態に係る液体吐出ヘッド用基板1を示す図である。図9(a)は、本実施形態の液体吐出ヘッド用基板1に設けられるシリコン基板10の供給路13を第2面22側からみた底面図である。また、図9(b)は、図9(a)のシリコン基板10を供給路13の短手方向(Y方向)における中心を通過し、かつ長手方向(X方向)と平行するIXb−IXb線に沿って切断した縦断側面図である。図9(c)は、図9(a)のシリコン基板10を、短手方向(Y方向)と並行するIXc−IXc線に沿って切断した横断面図である。
図9に示すように、液体吐出ヘッド用基板1の供給路13の内部には、相対向する短辺部13a、13bの間を接続するように、長手方向(X方向)に延出する長手梁(第1の梁)51が形成されている。さらに、相対する内面(長辺部13c、13d)の間を接続するように、短手方向(Y方向)に沿って短手梁(第2の梁)52が形成されている。長手梁51及び短手梁52は、シリコン基板10に対し異方性エッチングを行って供給路13を形成する際に、供給路13と同時に形成される。長手梁51及び短手梁52は、供給路13が形成されたシリコン基板10の機械的強度を高める機能を有する。
シリコン基板10の厚さ方向(Z方向)における長手梁51及び短手梁52の寸法(梁高さ)は、シリコン基板10の厚さよりも小さい。換言すれば、長手梁51及び短手梁52は、シリコン基板10の厚さ方向には部分的にしか設けられていない。従って、長手梁51及び短手梁52によって供給路13が複数に分断されることはない。このシリコン基板10の第1面21側には、第1の実施形態と同様に吐出口形成部材9(図1、及び図13(f)参照)が設けられる。
次に、液体吐出ヘッド用基板1を構成するシリコン基板10に対して供給路13、長手梁51及び短手梁52を形成する工程を説明する。
図9に示すように、一つの供給路13内に長手梁51と短手梁52を形成する場合、それぞれの梁に対応した先導孔の形成を行う必要がある。本実施形態では、供給路13を形成する供給路形成領域のうち、長手梁を形成する長手梁形成領域と、短手梁を形成する短手梁形成領域とを区別し、各領域に対応した先導孔の形成を行う。図10はシリコン基板10の底面図であり、図中、60は供給路形成領域を、61は長手梁形成領域を、62は短手梁形成領域をそれぞれ示している。
図9では、一つの供給路13内に、長手梁51と短手梁52がそれぞれ1本ずつ形成され、かつ各梁が互いに接触しない位置に形成されている構成を示している。すなわち、1本の長手梁51と1本の短手梁52とが共通する梁領域を持たないように形成された構成が図9に例示されている。これに対し、短手梁52を複数本形成することも可能である。但しこの場合には、短手梁52間に形成される長手梁51が、供給路13から分断されることが懸念される。そのため、長手梁51と短手梁52の少なくとも一部が接続されるように各梁の高さを調整することが必要になる。複数の短手梁52を形成する構成については、後に実施例2において説明する。
図11は、長手梁形成領域61に長手梁51を形成する工程を模式的に示す図であり、図10に示すシリコン基板10を、短手方向(Y方向)と並行するXI−XI線に沿って切断した横断面を示している。図11(a)はシリコン基板10の第1面21に密着向上層20を形成した状態を、図11(b)はシリコン基板10の第1面21上に基板表面保護膜16を形成した状態をそれぞれ示している。また、図11(c)は長手梁形成領域61に先導孔32、33及び改質層34を形成した状態を、図11(d)は異方性エッチングによって供給路13及び長手梁51を形成した状態を、図11(e)は図11(d)のXIe部の拡大図をそれぞれ示している。さらに、図11(f)は、基板表面保護膜16を除去する工程を施した後の状態を示している。
この第2の実施形態において、長手梁51の形成と短手梁52の形成は、供給路13の形成と同時に行われる。但し、図11は、長手梁51の形成工程に着目した図であり、短手梁52の形成工程は図12に示している。図11に示す長手梁51の形成工程自体は、前述の第1の実施形態において説明した図3に示す長手梁の形成工程と同様である。すなわち、図11(a)〜(f)は、図3(a)〜(f)に対応する。従って、ここでは、図11に基づく長手梁51の形成工程についての詳細説明は省略する。なお、図11(d)、(f)では、長手梁51が形成されると同時に、短手梁52が形成された状態を示しており、この点が長手梁51のみを形成する図3(d)、(d)と異なる。
また、第1面21における長手梁51の長方向の梁長さL1(図9(b))は、供給路13の開口部における長辺の長さと、短手梁52の形成位置で決定される。本実施形態では短手梁52を供給路13の長手方向における中央部に形成しているため、短手梁52の両側に位置する長手梁51の長手方向の梁長さL1は等しくなる。短手梁52の形成位置が供給路13の中央部からずれて形成される場合や、複数の短手梁52が形成される場合には、短手梁52の両側に位置する長手梁の長さL1は互いに異なる長さをとることもある。
次に、短手梁52の形成工程について説明する。
図12は、短手梁形成領域62に短手梁52を形成する工程を模式的に示す図であり、図10に示すシリコン基板10を、短手方向(Y方向)と並行するXII−XII線に沿って切断した横断面を示している。短手梁52は長手梁51と同時に形成するが、両者の形成過程を説明するため、図11とは別の図12を参照しつつ説明する。密着向上層20のパターニング、基板表面保護膜16の形成・除去については、上述の長手梁形成領域61に長手梁51を形成する工程と同様のため、詳細な説明は省略する。
図12(a)は、シリコン基板10の第1面21上に密着向上層20を形成する工程を示している。短手梁52は短辺方向(Y方向)に沿って形成するため、短手梁52は、吐出口の吐出特性(例えば、吐出口へのインクのリフィル性)に影響を及ぼさない位置に形成する必要がある。この点を考慮し、本実施形態では、第1面21から第2面22の方向に掘込んだ位置に短手梁52の上面(第1面21側の面)が位置するように形成する。このため、短手梁52を形成する領域(短手梁形成領域62(図10))を含む供給路形成領域60には、密着向上層20を形成しないようにすることが好ましい。
図12(b)は、シリコン基板10の第1面21上に基板表面保護膜16を形成する工程を示している。この工程は図11(b)に示した工程と同様である。
図12(c)は、短手梁52を形成するために、短手梁形成領域62に先導孔32、33、及び改質層34を形成する工程を示している。なお、以下の説明において短手梁形成領域62に形成する表先導孔32を表先導孔322と定義する。
まず、基板表面保護膜16の表面側(図12(c)において上面側)から、複数の表先導孔322を形成する。表先導孔322の長手方向(X方向)の配置間隔は20〜60μmとすることが好ましい。また、X方向に配列された複数の表先導孔322により構成される表先導孔列(長手方向の表先導孔列)を、供給路13の中心線を基準として対称となる位置に2列以上形成することが好ましい。隣接する表先導孔322の短手方向(Y方向)における配置間隔は、形成すべき供給路13の短手方向における開口幅と、長手梁51の幅(短手方向における長さ)とに応じて定められるエッチング条件及びエッチング時間等を考慮して設定することが好ましい。短手方向(Y方向)における表先導孔322の配置間隔は、例えば20〜60μmとすることが好ましい。さらに短手方向において両端に位置する表先導孔322の配置間隔は、上述の長手梁形成領域61に形成する表先導孔321(図11(c))の配置間隔と同一にすることが好ましい。これは、長手梁形成領域61と短手梁形成領域62の境界近傍における供給路の短手方向における開口寸法の差を少なくするためである。
上述のように、短手梁52は、第1面21から第2面22の方向に掘込んだ位置に形成することが好ましい。表先導孔322の深さは、50〜500μmとすることが好ましい。
次に、シリコン基板10の第2面22側から複数の裏先導孔33を形成する。なお、以下の説明において、短手梁形成領域62に形成する裏先導孔33を裏先導孔334と定義する。裏先導孔334は、表先導孔322が形成されている範囲内に形成されていればよく、表先導孔322と長手方向及び短手方向(X方向及びY方向)において同一の位置に形成することが好ましい。裏先導孔334の長手方向及び短手方向の配置間隔、及び長手方向に配列された複数の裏先導孔334から構成される裏先導孔列(長手方向の裏先導孔列)の列数の設定は、表先導孔列と同様に設定することが可能である。
なお、裏先導孔334は短手梁52の形成に必ずしも必要ではない。形成すべき短手梁52の形状によっては裏先導孔形成工程を省略することも可能である。但し、本実施形態では、X方向及びY方向における表先導孔322と同一の位置及び間隔で、第2面22側から裏先導孔334を形成する工程を行っている。短手梁52の梁高さが100μm程度以上となるように、裏先導孔334の深さは、表先導孔322の深さとの兼ね合いを考慮して設定することが好ましい。例えば、裏先導孔334の深さは50〜500μmとすることが好ましい。
次に、酸化膜4を含むシリコン基板10の第2面22側に改質層34を形成する。供給路13の幅を規定する外側の改質層34のパターンの形成方法は、上述の図11(c)に対応する図3(c)示した形成方法と同様であるため、説明は省略する。短手梁52の形状に寄与する内側の改質層34のパターンは、表先導孔322が形成されている範囲内に形成することが好ましい。なお、裏先導孔334は短手梁52の形成に必ずしも必要ではなく、形成すべき短手梁52の形状によっては、裏先導孔334の形成工程を省略することも可能である。また、本実施形態では、図5(a)に示すような、内側の改質層34の形成は行わず、外側の改質層34のみを形成した。
短手梁52の上面(第1面21側の面)は、第1面21から掘込まれた位置に形成されるため、供給路13は、短手梁52の上面側の領域と連通した状態となる。従って、必ずしも第2面22側を掘込む必要はない。従って、第2面22側に対して裏先導孔334及び改質層34を形成せずに短手梁52を形成してもよい。この場合、短手梁52の下面は、第2面22と同一面に形成されることとなる。
図12(d)、(e)は、異方性エッチングにより、供給路13および短手梁52を形成した状態を示している。エッチング液、エッチング条件、および供給路13の開口寸法の設定については、上述の図11(d)に対応する図3(d)と同様に行うことができる。短手梁52の梁幅W2(短手方向の長さ)は、例えば100〜1000μmで形成することが好ましい。また、第1面21から第2面22に向かう短手梁52の梁高さH2は、例えば100〜500μmとすることが好ましい。短手梁52の上面を第1面21から第2面22の方向に掘込む距離としては、吐出特性に影響しない範囲に設定することが好ましい。短手梁形成領域62を、第1面21から第2面22の方向に掘込む距離、すなわち、第1面21から短手梁52の上面までの距離としては、例えば50μm以上とすることが好ましい。
図12(f)は、シリコン基板10の第1面21側に形成されている基板表面保護膜16を除去した状態を示す横断面図である。基板表面保護膜16を除去する工程は、図11(f)に対応する図3(f)に示した工程と同様である。
長手梁51及び短手梁52の形成工程が終了した後、図13に示す吐出口形成工程を行う。図13に示す工程は、前述の第1の実施形態において説明した図4に示す吐出口形成工程と同様である。すなわち、図13(a)〜(f)は、図4(a)〜(f)に対応する。従って、ここでは、図13に基づく長手梁51の形成工程についての詳細説明は省略する。なお、図13では、長手梁51と共に短手梁52が形成された状態を示しており、この点が図4と異なる。
以上、図11〜図13に示した工程により、長手梁51、短手梁52を有した本実施形態における液体吐出ヘッド用基板1が形成される。
本実施形態における液体吐出ヘッド用基板1は、上記第1の実施形態と同様に、吐出口形成部材9を長手梁51が支持するため、従来の液体吐出ヘッドに比べて高い強度を得ることができる。さらに、供給路13の内部には、供給路13の短辺部13b、13bに亘って短手梁52が形成されているため、シリコン基板10の強度はさらに向上する。従って、吐出口形成部材9に応力変化などが発生しても、液体吐出ヘッド用基板1の変形を抑制することが可能になり、これを用いた液体吐出ヘッドの信頼性はさらに向上する。
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の思想及び範囲内において、上記実施形態に対して様々な変更及び変形が可能である。
(第2の実施形態に係る実施例)
以下、上述の第2の実施形態に基づく、実施例を説明する。
以下、上述の第2の実施形態に基づく、実施例を説明する。
<第2の実施形態の実施例1>
図14は、本実施例1における液体吐出ヘッド用基板のシリコン基板10の構成を示す図である。図14(a)は、シリコン基板10の供給路13を第2面22側から見た底面図である。図示のように、供給路13の長手方向(X方向)に沿って供給路の中央部に長手梁51が形成されている。さらに、供給路13の長手方向の中央部に、長手梁51と直交する短手方向(Y方向)に沿って短手梁52が形成されている。
図14は、本実施例1における液体吐出ヘッド用基板のシリコン基板10の構成を示す図である。図14(a)は、シリコン基板10の供給路13を第2面22側から見た底面図である。図示のように、供給路13の長手方向(X方向)に沿って供給路の中央部に長手梁51が形成されている。さらに、供給路13の長手方向の中央部に、長手梁51と直交する短手方向(Y方向)に沿って短手梁52が形成されている。
また、図14(b)は、図14(a)に示す供給路13の短手方向における中心を通過し、かつ長手方向(X方向)と平行するXIVb−XIVb線に沿って切断した縦断側面図である。図示のように、供給路13の内部で長手梁51及び短手梁52は互いに繋がった状態で形成されている。
図14(c)は、図14(a)のシリコン基板10を、短手方向(Y)と並行するXIVc−XIVc線に沿って切断した横断面図である。
上記のように、本実施例1における液体吐出ヘッド用基板は、長手梁51と短手梁52が繋がった構成を備える。長手梁51と短手梁52とが繋がるように構成するためには、上述の第2の実施形態に示した構成に対して、長手梁51の梁高さH1を大きくする必要がある。このような長手梁51の形成工程を図15に示す。なお、密着向上層20のパターニング工程、及び基板表面保護膜16の形成・除去工程は、上述の実施形態と同様であり、これらの工程に関する重複説明は省略する。
図15(a)は先導孔32、33及び改質層34を形成する工程を示す横断面図である。まず、形成すべき長手梁51の表面(第1面)を100%被覆するように密着向上層20によるパターニングを行った。この密着向上層20のパターンの寸法形状は、使用するフォトマスクのパターンによって調整可能である。また、シリコン基板10の基板厚さは725μmとし、供給路13の開口部の寸法は、短手方向において260μm、長手方向において20000μmを目標とした。
次に、シリコン基板10に対し、先導孔32を形成した。本実施例1では、図11に示した先導孔のうち、表先導孔32と、裏先導孔331を形成した。ここで、表先導孔32の長手方向の配置間隔は20μm、長手方向の列数は2列、短手方向の配置間隔は120μm、深さは75μmとした。また、裏先導孔331の形成において、長手方向の配置間隔は20μm、長手方向の列数は2列、短手方向の配置間隔は160μm、深さは650μmとした。
次に、シリコン基板10の第2面22の表面に改質層34を形成した。この改質層34の形成工程では、まず、供給路13の開口部を規定する改質パターンを、裏先導孔331の外側に40μmの間隔をあけて形成した。改質パターンは、線幅25μmとし、裏先導孔331を囲うようなロの字状に形成した。また、シリコン基板10のうち、長手梁51を形成する直下の領域に関しては、短手方向において120μmの線幅を有するパターンを、形成すべき供給路13の長手方向の長さに対応する範囲に亘って形成した。
次に、供給路13と共に、長手梁51及び短手梁52の形成を行った。図15(b)は異方性エッチングにより、供給路13及び長手梁51を形成した状態を示す横断面図である。エッチング条件としては、TMAH水溶液(83℃、22%)を用い、エッチング時間は1時間で設定した。
この長手梁51の形成過程では、エッチングが、第1面21および第2面22側から(111)面を形成しつつ進行する。裏先導孔331においては、(011)面に対してエッチングが行われることにより、先導孔同士がつながるようにエッチングが進む。なお、第2面22側には改質処理によって改質層34が形成されているため、第2面22に対しては、15μm掘込まれた位置までエッチングが進行する。このとき、供給路13の第1面21における短手方向の開口幅は140μmであった。第1面21側に形成された長手梁51の梁幅W1は100μm、梁高さH1は710μmであった。
短手梁52は、上記第2の実施形態に示した工程に基づいて形成したため、ここでは短手梁52の形成工程の詳細な説明は省略する。短手梁52の形成工程では、短手梁52の長手方向における長さL2は300μm、梁高さH2は400μmとした。また、短手梁52は第1面21から200μm掘込んだ距離に形成した。このときの表先導孔322の深さは200μm程度、裏先導孔334の深さは100μmとした。
以上のように、本実施例1に示す液体吐出ヘッド用基板1では、長手梁51と短手梁52とが繋がった形状を有するため、長手梁51と短手梁52の強度が高まり、シリコン基板10全体の強度向上が期待できる。なお、本実施例1に示した長手梁51、短手梁52の各寸法はこれに限定されるものではなく、実施形態に示した範囲内で適宜調整可能である。
以上のように、本実施例1に示す液体吐出ヘッド用基板1では、長手梁51と短手梁52とが繋がった形状を有するため、長手梁51と短手梁52の強度が高まり、シリコン基板10全体の強度向上が期待できる。なお、本実施例1に示した長手梁51、短手梁52の各寸法はこれに限定されるものではなく、実施形態に示した範囲内で適宜調整可能である。
<第2の実施形態の実施例2>
図16は、本実施例2における液体吐出ヘッド用基板のシリコン基板10の構成を示す図である。図16(a)は、シリコン基板10を第2面22側から見た底面図である。また、図16(b)は、図16(a)に示す供給路13の短手方向における中心を通過し、かつ長手方向(X方向)と平行するXVIb−XVIb線に沿って切断した縦断側面図である。
図16は、本実施例2における液体吐出ヘッド用基板のシリコン基板10の構成を示す図である。図16(a)は、シリコン基板10を第2面22側から見た底面図である。また、図16(b)は、図16(a)に示す供給路13の短手方向における中心を通過し、かつ長手方向(X方向)と平行するXVIb−XVIb線に沿って切断した縦断側面図である。
図16(b)に示すように、供給路13の内部には、長手梁51と短手梁52とが互いに繋がった状態で形成されている。さらに、短手梁52は、一つの供給路13内に複数形成されている。図では、短手梁52が3本形成された例を示している。すなわち、供給路13の長手方向における中央部に1本の短手梁52が形成されると共に、中央部の短手梁52の両側からそれぞれ5000μm離れた位置に残り2本の短手梁52が形成されている。なお、図16に示す構成は一例であり、短手梁52の構成、配置、本数等は本例に限定されるものではない。例えば、短手梁52の本数は、形成すべき供給路13の寸法、長手梁51および短手梁52の形状を考慮して、適宜設定することが可能である。各短手梁52の形成方法は上述の形成方法と同様であるため、ここでは形成方法に関する説明は省略する。
以上のように、本実施例2では、供給路13内に、長手梁51と、これに繋がる複数の短手梁52を設けた。このため、シリコン基板10の強度はさらに高まり、液体吐出ヘッド用基板1の全体的な強度も大幅に向上する。従って、記録ヘッド用基板を用いた記録ヘッドの信頼性は向上し、記録ヘッドを用いて形成される画像の品質の向上も期待できる。
なお、実施例2に示した長手梁51、短手梁52の各寸法はこれに限定されるものではなく、実施形態に示した範囲内で適宜変更可能である。例えば、短手梁52を次のように配置することも可能である。供給路13の長手方向における中央部に1本形成し、ここから両側にそれぞれ3000μm、5000μm離れた位置に、残りの2本の短手梁52を形成することも可能である。この場合、中央部に位置する短手梁52は第1面21から200μm掘込んだ距離に形成し、梁長さL2は300μm、梁高さH2は400μmとする。中央部に位置する短手梁52の両側に位置する2本の短手梁52は、第1面21から400μm掘込んだ距離に形成する。梁長さL2は400μm、梁高さH2は200μmとする。長手梁51の構成は実施例2と同様に形成する。
このように、短手梁52の形成位置を調整することにより、シリコン基板10に加わる力が部分的に異なる場合にも、これに適切に対応することが可能になる。すなわち、シリコン基板10において応力が発生する位置及び応力の大きさに応じて、短手梁の形成位置、及び寸法形状を決定することにより、シリコン基板10の変形をより効果的に抑制することが可能になる。なお、実施例3に示した長手梁51、短手梁52の各寸法はこれに限定されるものではなく、実施形態に示した範囲内で適宜調整可能である。
(他の実施形態)
以上説明した本発明に基づくシリコン基板の加工方法は、シリコン基板を含んで構成される構造体、特に液体吐出ヘッド等のデバイスの製造工程において、液体吐出ヘッドの液体供給路をシリコン基板に形成する際に好適なものである。上記実施形態では、液体吐出ヘッドにおいてエネルギー発生素子が設けられる基板すなわち液体吐出ヘッド用基板の製造方法に、本発明に基づくシリコン基板の加工方法を適用する例を示した。しかし、本発明に基づくシリコン基板の加工方法は、液体吐出ヘッド用基板の製造のみに用いられるものではなく、シリコン基板を用いる他の構造体の製造や加工にも用いることができる。なお、液体吐出ヘッド用基板の製造に本発明に基づくシリコン基板の加工方法を適用する場合、シリコン基板として、表面の結晶方位が(100)面であるかあるいは(100)面と結晶方位的に同等な面であるものを用いることが好ましい。この場合、基板厚が580〜750μmであるものを用いることが好ましい。
以上説明した本発明に基づくシリコン基板の加工方法は、シリコン基板を含んで構成される構造体、特に液体吐出ヘッド等のデバイスの製造工程において、液体吐出ヘッドの液体供給路をシリコン基板に形成する際に好適なものである。上記実施形態では、液体吐出ヘッドにおいてエネルギー発生素子が設けられる基板すなわち液体吐出ヘッド用基板の製造方法に、本発明に基づくシリコン基板の加工方法を適用する例を示した。しかし、本発明に基づくシリコン基板の加工方法は、液体吐出ヘッド用基板の製造のみに用いられるものではなく、シリコン基板を用いる他の構造体の製造や加工にも用いることができる。なお、液体吐出ヘッド用基板の製造に本発明に基づくシリコン基板の加工方法を適用する場合、シリコン基板として、表面の結晶方位が(100)面であるかあるいは(100)面と結晶方位的に同等な面であるものを用いることが好ましい。この場合、基板厚が580〜750μmであるものを用いることが好ましい。
1 液体吐出ヘッド用基板
9 吐出口形成部材
10 シリコン基板
11 吐出口
21 第1面
22 第2面
32 表先導孔
33 裏先導孔
51 長手梁(第1の梁)
52 短手梁(第2の梁)
9 吐出口形成部材
10 シリコン基板
11 吐出口
21 第1面
22 第2面
32 表先導孔
33 裏先導孔
51 長手梁(第1の梁)
52 短手梁(第2の梁)
Claims (13)
- 液体を吐出する吐出口が形成された吐出口形成部材と、前記吐出口形成部材を支持する第1面と当該第1面とは反対側の第2面とを有する基板とを含む液体吐出ヘッド用基板であって、
前記基板は、前記第1面から前記第2面へと貫通する供給路と、前記供給路の相対向する内面に形成された梁と、を有し、
前記梁の少なくとも一部は、前記吐出口形成部材の少なくとも一部を支持していることを特徴とする液体吐出ヘッド用基板。 - 前記吐出口形成部材は、複数の前記吐出口が所定の方向に沿って配列され、
前記供給路は、前記吐出口の配列方向に沿って延在し、
前記梁は、前記供給路の内面に前記配列方向に沿って延在するよう形成された第1の梁により構成されている、請求項1に記載の液体吐出ヘッド用基板。 - 前記第1の梁のうち前記吐出口形成部材を支持する面と反対側の面は、前記基板の第2面から第1面の方向に掘り込まれた位置に形成されている、請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド用基板。
- 前記吐出口形成部材は、複数の前記吐出口が所定の方向に沿って配列され、前記梁は、前記第1の梁と、前記供給路の内面に前記配列方向と交差する方向に沿って延在するように形成された第2の梁により構成されている、請求項1に記載の液体吐出ヘッド用基板。
- 前記第1の梁と前記第2の梁とは、互いに繋がらない状態で形成されている、請求項4に記載の液体吐出ヘッド用基板。
- 前記第1の梁と前記第2の梁は、互いに繋がった状態で形成されている、請求項4に記載の液体吐出ヘッド用基板。
- 前記第2の梁は、所定の間隔を介して複数本形成されている、請求項6に記載の液体吐出ヘッド用基板。
- 前記第1の梁は、当該第1の梁の一面に設けられた層を介して前記吐出口形成部材を支持している、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
- 前記層は、前記吐出口形成部材に密着する密着向上層を含む、請求項8に記載の液体吐出ヘッド用基板。
- 前記第1の梁は、前記吐出口形成部材に接触している、請求項3乃至7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
- 前記吐出口形成部材は、前記第1の梁と接触する面の一部に凹部を有し、前記凹部と前記吐出口形成部材との間に空隙が形成されている、請求項10に記載の液体吐出ヘッド用基板。
- 液体を吐出する吐出口が形成された吐出口形成部材と、前記吐出口形成部材を支持する第1面と当該第1面とは反対側の第2面とを有する基板と、を含む液体吐出ヘッド用基板の製造方法であって、
前記第1面から前記第2面へと貫通する供給路と、前記供給路の相対向する内面に梁を形成する基板加工工程と、
前記基板の前記第1面に前記吐出口形成部材を形成する吐出口形成工程と、を備え、
前記基板加工工程は、前記吐出口形成部材の少なくとも一部を支持する位置に、前記梁の少なくとも一部を形成することを特徴とする液体吐出ヘッド用基板の製造方法。 - 前記基板加工工程は、前記基板において、レーザー加工によって先導孔を形成した後、前記先導孔が形成された領域から異方性エッチングを施すことにより、前記供給路及び前記梁を形成する、請求項12に記載の液体吐出ヘッド用基板の製造方法。
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