JP7301549B2 - 液体吐出ヘッドおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
このような液体吐出ヘッドでは、供給路を通じて供給される液体にゴミなどの異物が含まれていると、それらが流路や吐出口に侵入してしまい、液体の吐出不良が発生して画像品位の低下を引き起こすおそれがある。そのため、液体吐出ヘッドの信頼性向上という観点から、流路よりも上流側に、液体中の異物を捕集するフィルタ構造を設ける技術が知られている。特許文献1には、供給路自体が複数の孔からなり、フィルタ機能を兼ねる液体吐出ヘッドが記載されている。また、特許文献2には、流路に連通する側の供給路の開口部に、中空部を介して積層された少なくとも2つのフィルタ層を有する液体吐出ヘッドが記載されている。
そこで、本発明の目的は、液体中に比較的大きな異物が含まれる場合でも、安定して高品位の画像を得ることができる液体吐出ヘッドおよびその製造方法を提供することである。
また、本発明の液体吐出ヘッドの製造方法は、第1の面および第1の面と反対側の第2の面を有する基板と、基板の第1の面の側に設けられ、液体を吐出するための吐出口を有する吐出口形成部材とを有し、基板が、基板を貫通し、吐出口に液体を供給するための供給路を有し、供給路のうち第1の面の側の端部に、複数の第1の孔からなる第1のフィルタ部が設けられている、液体吐出ヘッドの製造方法であって、基板の第1の面の側に、複数の第1の孔と先導孔を形成する工程と、先導孔から基板にエッチングを行い、複数の第1の孔に連通する供給路を形成する工程と、供給路のうち第2の面の側の端部に、第1の孔の最小開口径よりも大きい最小開口径を有する複数の第2の孔からなる第2のフィルタ部を形成する工程と、を含み、第2のフィルタ部を形成する工程が、第2のフィルタ部が供給路の一部を構成するように、基板と一体に第2のフィルタ部を形成することを含んでいる。
液体吐出ヘッド1は、インクなどの液体を吐出して記録媒体に画像を記録するものであり、基板10と、吐出口形成部材9とを有している。基板10は、表面(以下、「基板表面」ともいう)21とその反対側の裏面(以下、「基板裏面」ともいう)22を有し、吐出口形成部材9は、基板10の表面21の側に設けられている。基板10は、例えばシリコンで形成されている。この場合、基板10の面方位は(100)であることが好ましく、基板10の厚みは580~750μmであることが好ましい。また、吐出口形成部材9は、後述するように、流路12を形成するとともに液体と接触する部材である。そのため、吐出口形成部材9には、構造材料としての高い機械的強度、下地である基板10側との密着性、耐液性(例えば耐インク性)が求められる。さらに、吐出口形成部材9には、吐出口11としての微細なパターンをパターニングするための解像性が求められる。このような材料としては、例えばエポキシ樹脂が挙げられる。
基板10には、基板10を貫通する供給路13が形成されている。供給路13は、X方向に延びるスリット状の形状を有し、その断面形状は、基板裏面22の側から基板表面21の側に向けて幅が狭くなるテーパー状である。供給路13は、基板表面21に開口する開口部13aを有し、開口部13aは、複数のエネルギー発生素子2からなる2つの列の間でX方向に延びている。なお、図示していないが、基板表面21には、エネルギー発生素子2に電気信号や電力を供給するために電気的に接続された配線層が設けられている。また、同様に図示していないが、基板裏面22には、例えばSIO2である酸化膜が設けられていてもよい。
第1のフィルタ部31(すなわち密着向上層20)の厚みや、第1の孔33の最小開口径、開口形状、配置は、特に制限はないが、第1のフィルタ部31の流抵抗などを考慮し、液体の吐出に影響を与えない範囲で決定されることが好ましい。例えば、第1のフィルタ部31の厚みは、0.5~3.0μmであることが好ましく、一例として2.0μmである。第1の孔33の最小開口径は、フィルタとしての捕集性能の観点から、吐出口11の最小開口径よりも小さいことが好ましく、例えば、吐出口11の最小開口径が15μmの場合、8~13μmであることが好ましい。ここで、最小開口径とは、開口径の最小値を意味する。また、第1の孔33の開口形状としては、フィルタとしての機能が発揮される限り、任意の形状が可能であるが、第1の孔33を均一にある程度の密度で配置することを考慮すると、円形や正多角形、ひし形、平行四辺形などが好ましい。また、第1の孔33の配置も特に制限はないが、同様に配置の密度と均一性を考慮すると、千鳥状配置が好ましい。一例として、第1の孔33は、図2(b)に示すように、円形(例えば直径10μm)の開口形状を有し、X,Y方向ともに所定のピッチ(例えば20μm)で千鳥状に配置されている。
第2のフィルタ部32は、基板表面21側に設けられた第1のフィルタ部31との間に一定以上の空間、好ましくは長さ350μm以上の空間を形成するように、基板裏面22側に設けられている。これにより、上述したように、第2のフィルタ部32が比較的大きな異物を捕集する場合に、捕集した異物によって一部の第2の孔34が塞がれたとしても、その塞がれた第2の孔34と第1のフィルタ部31との間には十分な空間が存在することになる。そのため、塞がれた第2の孔によって、第1のフィルタ部31から流路12への液体の供給が阻害されることを抑制することができ、液体の供給性能が損なわれることがない。また、いくつかの第2の孔34が塞がれたとしても、それよりも下流側に第1のフィルタ部31が設けられていることで、フィルタ全体としての捕集性能も維持することができる。
第2のフィルタ部32の厚みは、50~250μmであることが好ましい。また、第2のフィルタ部32の形成領域は、液体の吐出方向から見て、例えば、X方向に12000μm、Y方向に300μmである。第2の孔34の開口形状および配置に特に制限はなく、一例として、図2(c)に示すように、第2の孔34は、正方形の開口形状を有し、X,Y方向ともに所定のピッチで千鳥状に配置されている。第2の孔34の開口径は、例えば20~120μmであることが好ましい。なお、図示した例では、基板裏面22に、SiO2である酸化膜4が設けられているが、この酸化膜4は必ずしも設けられていなくてもよい。
図3(a)に示す配置例では、第2の孔34は、正方形の開口形状を有し、X,Y方向ともに、正方形の一辺の長さL(例えば20μm)の2倍のピッチ(例えば40μm)で千鳥状に配置されている。これに対し、第1の孔33は、円形(例えば直径10μm)の開口形状を有し、その中心が上記正方形の頂点に位置するように配置されている。このような配置例では、例えば、図3(b)に示すように、斜線で示した第2の孔34cが異物で塞がれたとしても、この第2の孔34cの下流側に位置する第1の孔33cは、異物によって塞がれていない他の第2の孔34a,34c,34dと距離が近い。そのため、このような配置例は、異物で塞がれた第2の孔34cの下流側に位置する第1の孔33cへの液体の供給性能の低下を最小限に抑えることができる点で有利である。なお、第1の孔33の開口形状は円形に限定されず、正多角形であってもよく、第2の孔34の開口形状も正方形に限定されず、矩形であってもよい。
次に、図4(a)に示すように、基板表面21の側に、第1のフィルタ部31を有する密着向上層20を形成する。具体的には、酸化膜4上に、例えばポリエーテルアミド樹脂をスピンコート法により成膜した後、パターニングを行い、複数の第1の孔33を形成し、第1のフィルタ部31を有する密着向上層20を形成する。パターニングは、例えばポジ型の感光性樹脂をマスクとして用いて、一般的なフォトリソグラフィー技術によって行われる。あるいは、密着向上層20として感光性のエポキシ樹脂を用い、一般的なフォトリソグラフィー技術によって直接パターニングを行うことで、第1のフィルタ部31を形成することもできる。なお、密着向上層20には、複数の第1の孔33と共に、後述する第1の先導孔24が形成される領域に対応して先導孔領域23が形成される。
第1の先導孔24は、後述するエッチング工程時にそこからエッチングを進行させて基板10に供給路13を形成するためのものであり、例えばパルスレーザー光を用いたレーザーアブレーション技術により形成される。第1の先導孔24は、供給路13の形成精度と均一性との観点から、基板10の長手方向(X方向)または短手方向(Y方向)に沿って形成されていることが好ましい。このとき、第1の先導孔24のX方向またはY方向における間隔は、開口部13aに対応する領域内で、第1の先導孔24の直径、レーザー加工の位置精度やアライメント精度等を考慮して設定されることが好ましい。例えば、第1の先導孔24の直径が10μm程度であり、レーザー加工の位置精度が±10μm程度、アライメント精度が±5μm程度である場合、第1の先導孔24のX方向における間隔は20~150μmであることが好ましい。第1の先導孔24をX方向に沿って形成する場合、その列数は、供給路13の中心線上に1列、または中心線を対称として2列であることが好ましい。本実施形態では、図2(b)に示すように、第1の先導孔24はX方向に1列形成されているが、2列形成する場合、例えば第1の先導孔23のY方向における間隔は20~60μmであることが好ましい。第1の先導孔24の深さは、第2のフィルタ部32の所望の厚み(基板表面21側の端部位置)を考慮して設定されることが好ましく、例えば350~600μmであることが好ましい。
改質層25は、後述するエッチング工程時に除去されことで、そこからエッチングを進行させて基板10に凹部14を形成するためのものであり、例えばレーザー照射により酸化膜4を改質して形成される。したがって、改質層25の形状や寸法を調整することで、凹部14を所望の形状や寸法に形成することができる。
次に、異方性エッチングを行い、図4(f)に示すように、第2のフィルタ部32を構成する第2の孔34を形成する。ここでは、図4(d)に示すエッチング工程と同様の条件で、異方性エッチングを行うことができる。このような異方性エッチングにより、第2の先導孔26からエッチングが進行し、第2の孔34が形成される。エッチング時間は、第2の孔34の所望の寸法に応じて設定されることが好ましく、例えば0.3~1.0時間であることが好ましい。ただし、上述の通り、異方性エッチング後に第2の孔34同士がつながって第2のフィルタ部32が形成されなくなることを考慮する必要がある。ここで、凹部14の開口部近傍の酸化膜4がバリとして残っている場合には、それを除去するために、例えばバッファードフッ酸(BHF)によるウェットエッチングを用いることができる。
まず、基板表面21に、例えばアクリル系紫外線硬化型テープ等のラミネートテープを貼り付け、基板裏面22の側からディスペンス等により供給路13の内部に穴埋め材を充填する。穴埋め材としては、例えばポリビニルアルコール(PVA)を用いることができる。穴埋め材の充填方法としては、例えば第2の孔34からの毛細管現象を利用し、さらに温調・圧力・ベーク条件等を適切に調整しながら充填する方法を用いることができる。次に、テープの材料特性に対応した波長の紫外線照射により、ラミネートテープを除去する。これにより、基板表面21側に、開口を備えていない平坦な面が形成される。この面に、スピンコート法等により、例えばポジ型の感光性樹脂を塗布し、一般的なフォトリソグラフィー技術を用いて、流路12を形成するための型材を形成する。そして、この型材上に、スピンコート法等により、例えばネガ型の感光性エポキシ樹脂を塗布し、一般的なフォトリソグラフィー技術を用いて、吐出口11を有する吐出口形成部材9を形成する。なお、密着向上層20に形成された先導孔領域23には、吐出口形成部材9が入り込むことで蓋がされたようになるため、先導孔領域23から異物が侵入することはない。最後に、例えば水を用いて、供給路13の内部に充填された穴埋め材を除去し、例えば乳酸メチルを用いて型材を除去する。これにより、第1のフィルタ部31を介して供給路13に連通する流路12が形成され、液体吐出ヘッド1が完成する。
図5(a)に示す構成例では、第2のフィルタ部32は、上流側の面が基板裏面22と同一平面になるように、基板裏面22側に形成されている。この場合、例えば、基板10の厚みを725μm、第2のフィルタ部32の厚みを150μmとすると、第1のフィルタ部31と第2のフィルタ部32との間には長さ575μmの空間が形成されている。また、第2の孔34は、一例として、一辺30μmの正方形の開口形状を有し、X,Y方向ともに60μmのピッチで配置されている。
この構成例では、改質層25の形成を省略し、基板裏面22側の酸化膜4の厚みを異方性エッチングに耐え得る厚みにすることで、第2のフィルタ部32の上流側の面が基板裏面22と同一平面になるように、第2のフィルタ部32を形成することができる。なお、基板裏面22に設けられた酸化膜4は除去せずに残しておいてもよいが、図示したように酸化膜4を除去する場合、BHFによるウェットエッチングを用いることができる。この構成例では、一例として、先導孔領域23は、直径40μmの円形に形成され、X方向に60μmのピッチで1列に形成される。
この構成例では、第2のフィルタ部32の形成方法として、第1のフィルタ部31の形成方法と同様の方法を用いることができる。なお、基板裏面22が保護膜6で被覆されている場合、供給路13は、第1の先導孔24を通じて基板表面21側から進行する異方性エッチングが基板裏面22に到達することで形成される。このとき、供給路13は、基板10の結晶方位に沿って形成されるため、第1の先導孔23の形成位置と異方性エッチングの条件により、その形状を制御することができる。この構成例では、一例として、先導孔領域23は、直径20μmの円形に形成され、X方向に40μmのピッチで1列に形成される。
9 吐出口形成部材
10 基板
31 第1のフィルタ部
32 第2のフィルタ部
Claims (7)
- 第1の面および該第1の面と反対側の第2の面を有する基板と、前記基板の前記第1の面の側に設けられ、液体を吐出するための吐出口を有する吐出口形成部材とを有し、前記基板が、該基板を貫通し、前記吐出口に液体を供給するための供給路を有し、前記供給路のうち前記第1の面の側の端部に、複数の第1の孔からなる第1のフィルタ部が設けられている、液体吐出ヘッドであって、
前記供給路のうち前記第2の面の側の端部に、前記第1の孔の最小開口径よりも大きい最小開口径を有する複数の第2の孔からなる第2のフィルタ部が設けられ、
前記第2のフィルタ部が、前記供給路の一部を構成するように前記基板と一体に形成されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。 - 前記供給路が、前記第1のフィルタ部と前記第2のフィルタ部との間に、前記基板の厚み方向の長さが350μm以上の空間を有する、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記第2のフィルタ部が、前記基板の前記第2の面に形成された凹部の内部に設けられている、請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記第1のフィルタ部が、前記基板と前記吐出口形成部材との間に設けられた有機膜に形成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記第1の孔が、円形または正多角形の開口形状を有し、前記第2の孔が、矩形の開口形状を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記第1のフィルタ部は、液体の吐出方向から見て、前記第1の孔の中心が前記矩形の頂点に位置するように配置されている、請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
- 第1の面および該第1の面と反対側の第2の面を有する基板と、前記基板の前記第1の面の側に設けられ、液体を吐出するための吐出口を有する吐出口形成部材とを有し、前記基板が、該基板を貫通し、前記吐出口に液体を供給するための供給路を有し、前記供給路のうち前記第1の面の側の端部に、複数の第1の孔からなる第1のフィルタ部が設けられている、液体吐出ヘッドの製造方法であって、
前記基板の前記第1の面の側に、前記複数の第1の孔と先導孔を形成する工程と、
前記先導孔から前記基板にエッチングを行い、前記複数の第1の孔に連通する前記供給路を形成する工程と、
前記供給路のうち前記第2の面の側の端部に、前記第1の孔の最小開口径よりも大きい最小開口径を有する複数の第2の孔からなる第2のフィルタ部を形成する工程と、を含み、
前記第2のフィルタ部を形成する工程は、前記第2のフィルタ部が前記供給路の一部を構成するように、前記基板と一体に前記第2のフィルタ部を形成することを含むことを特徴とする、液体吐出ヘッドの製造方法。
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