以下、本発明の複数の実施形態による高圧ポンプを図面に基づき説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。また、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位は、同一または同様の作用効果を奏する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による高圧ポンプを図2に示す。
高圧ポンプ1は、図示しない車両に設けられる。高圧ポンプ1は、例えば内燃機関としてのエンジンに、燃料を高圧で供給するポンプである。高圧ポンプ1がエンジンに供給する燃料は、例えばガソリンである。すなわち、高圧ポンプ1の燃料供給対象は、ガソリンエンジンである。
図1に示すように、燃料タンク2に貯留された燃料は、燃料ポンプ3により配管4を経由して高圧ポンプ1に供給される。高圧ポンプ1は、燃料ポンプ3から供給された燃料を加圧し、配管6を経由して燃料レール7に吐出する。これにより、燃料レール7内の燃料は、蓄圧され、燃料レール7に接続する燃料噴射弁8からエンジンに噴射供給される。 図2に示すように、高圧ポンプ1は、ポンプボディ10、カバー15、パルセーションダンパ16、プランジャ20、吸入弁装置30、電磁駆動部40、吐出弁装置50等を備えている。
ポンプボディ10は、上ハウジング11、下ハウジング12、シリンダ13、ホルダ支持部14、ユニオン51等を有している。
上ハウジング11は、例えばステンレス等の金属により略直方体のブロック状に形成されている。上ハウジング11は、吸入穴部111、吐出穴部112、シリンダ穴部113、段差部114等を有している。吸入穴部111は、上ハウジング11の長手方向の一端に開口し、長手方向に延びるよう略円筒状に形成されている。これにより、吸入穴部111の内側に、吸入通路101が形成されている。吐出穴部112は、上ハウジング11の長手方向の他端に開口し、長手方向に延びるよう略円筒状に形成されている。これにより、吐出穴部112の内側に、吐出通路102が形成されている。ここで、吸入穴部111と吐出穴部112とは、同軸となるよう形成されている。
シリンダ穴部113は、上ハウジング11の短手方向の両端部に開口するよう吸入穴部111と吐出穴部112との間に略円筒状に形成されている。ここで、シリンダ穴部113の内側の空間は、吸入通路101と吐出通路102とに接続している。段差部114は、吐出穴部112を形成する上ハウジング11の内壁に形成されている。吐出穴部112は、段差部114に対し吸入穴部111側の内径が、吸入穴部111とは反対側の内径よりも小さくなるよう形成されている(図2、3参照)。
下ハウジング12は、例えばステンレス等の金属により板状に形成されている。下ハウジング12は、シリンダ穴部121を有している。シリンダ穴部121は、下ハウジング12を板厚方向に貫くよう略円形に形成されている。下ハウジング12は、シリンダ穴部113とシリンダ穴部121とが同軸になるよう上ハウジング11に嵌合するよう設けられている。ここで、上ハウジング11と下ハウジング12とは、特許請求の範囲における「ハウジング」に対応している。
シリンダ13は、例えばステンレス等の金属により有底円筒状に形成されている。シリンダ13は、吸入穴131、吐出穴132を有している。吸入穴131と吐出穴132とは、互いに対向するようシリンダ13の筒部の底部近傍に形成されている。つまり、吸入穴131と吐出穴132とは、シリンダ13の軸を挟むようにしてシリンダ13の径方向に延びるよう形成されている。シリンダ13は、吸入穴131が吸入通路101に接続するよう、かつ、吐出穴132が吐出通路102に接続するよう、上ハウジング11のシリンダ穴部113および下ハウジング12のシリンダ穴部121に挿通されている。シリンダ13の底部側の端部の外壁は、上ハウジング11のシリンダ穴部113を形成する内壁に嵌合している。
ホルダ支持部14は、例えばステンレス等の金属により略円筒状に形成されている。ホルダ支持部14は、シリンダ13と同軸となるよう、一端が下ハウジング12の上ハウジング11とは反対側に接続するよう設けられている。本実施形態では、ホルダ支持部14は、下ハウジング12と一体に形成されている。
ユニオン51は、例えばステンレス等の金属により略円筒状に形成されている。ユニオン51は、一端が上ハウジング11の吐出穴部112に挿し込まれるようにして設けられている。本実施形態では、ユニオン51は一端の外壁にネジ山を有し、上ハウジング11は吐出穴部112の内壁にネジ溝を有している。そして、ユニオン51は、吐出穴部112にねじ込まれることにより上ハウジング11に固定されている。なお、ユニオン51は、内側に吐出通路102を形成している。また、ユニオン51は、段差部52を有している。段差部52は、ユニオン51の内壁に形成されている。ユニオン51は、段差部52に対し段差部114側の内径が、段差部114とは反対側の内径よりも大きくなるよう形成されている(図2、3参照)。ユニオン51の他端、すなわち、上ハウジング11とは反対側の端部は、配管6の燃料レール7とは反対側の端部に接続される。
カバー15は、例えばステンレス等の金属により有底筒状、すなわち、カップ状に形成されている。カバー15は、上ハウジング11を内側に収容し、開口側の端部が下ハウジング12の外縁部に接続するよう設けられている。カバー15と下ハウジング12とは、全周に亘り溶接により接続されている。これにより、カバー15と下ハウジング12との間は液密に保たれている。カバー15の内側と下ハウジング12との間には、燃料ギャラリ100が形成されている。カバー15には、図示しないインレット部が設けられている。インレット部には、燃料ポンプ3に接続する配管4が接続される。これにより、燃料タンク2内の燃料は、インレット部を経由してカバー15の内側、すなわち、燃料ギャラリ100に流入する。
カバー15は、第1穴151、第2穴152を有している。第1穴151、第2穴152は、それぞれ、カバー15の内壁と外壁とを接続するよう形成されている。なお、第1穴151、第2穴152は、それぞれ、上ハウジング11の吸入穴部111、吐出穴部112に対応する位置に形成されている。ここで、ユニオン51は、カバー15の第2穴152および上ハウジング11の吐出穴部112に挿通されるようにして設けられている。また、ユニオン51の外壁とカバー15の第2穴152との間は、全周に亘り溶接されている。これにより、ユニオン51とカバー15との間は液密に保たれている。
パルセーションダンパ16は、カバー15の底部と上ハウジング11との間に設けられている。パルセーションダンパ16は、例えば2枚のダイアフラムの周縁部が接合されることにより形成され、内部に所定圧の気体が密封されている。カバー15の底部近傍には、係止部材161が設けられている。当該係止部材161の上ハウジング11側には、ダンパ支持部162が設けられている。ダンパ支持部162は、係止部材161との間にパルセーションダンパ16の外縁部を挟み込み、係止部材161に嵌合することで、パルセーションダンパ16を支持している。パルセーションダンパ16は、燃料ギャラリ100内の燃圧の変化に応じて弾性変形することで、燃圧脈動を低減可能である。
プランジャ20は、例えばステンレス等の金属により略円柱状に形成されている。プランジャ20は、大径部201、小径部202を有している。小径部202は、外径が大径部201の外径よりも小さく形成されている。大径部201と小径部202とは、同軸に一体に形成されている。プランジャ20は、大径部201側がシリンダ13の内側に挿し込まれるようにして設けられている。プランジャ20の大径部201の外径は、シリンダ13の内径とほぼ同じか、シリンダ13の内径よりやや小さく形成されている。これにより、プランジャ20は、大径部201の外壁がシリンダ13の内壁に摺動し、シリンダ13により軸方向に往復移動可能に支持される。
シリンダ13の筒部および底部の内壁とプランジャ20の大径部201側の端部の外壁との間に加圧室103が形成される。加圧室103は、プランジャ20がシリンダ13内で往復移動するとき、容積が変化する。
本実施形態では、ホルダ支持部14の内側にシールホルダ21が設けられている。シールホルダ21は、例えばステンレス等の金属により筒状に形成されている。シールホルダ21は、外壁がホルダ支持部14の内壁に嵌合するよう設けられている。また、シールホルダ21は、シリンダ13とは反対側の端部の内壁とプランジャ20の小径部202の外壁との間に略円筒状のクリアランスを形成するよう設けられている。シールホルダ21の内壁とプランジャ20の小径部202の外壁との間には、環状のシール22が設けられているシール22は、径内側のテフロン(登録商標)製のリングと径外側のゴム製のリングとからなる。シール22により、プランジャ20の小径部202周囲の燃料油膜の厚さが調整され、エンジンへの燃料のリークが抑制される。また、シールホルダ21のシリンダ13とは反対側の端部には、オイルシール23が設けられている。オイルシール23により、プランジャ20の小径部202の周囲のオイル油膜の厚さが調整され、オイルのリークが抑制される。
なお、プランジャ20の大径部201と小径部202との間の段差面とシール22との間には、プランジャ20の往復移動時に容積が変化する可変容積室104が形成されている。また、本実施形態では、下ハウジング12は、燃料ギャラリ100と可変容積室104とを連通可能な穴部122を有している。これにより、燃料ギャラリ100内の燃料は、穴部122を経由して可変容積室104との間を行き来することができる。
プランジャ20の小径部202の大径部201とは反対側の端部には、略円板状のスプリングシート24が設けられている。シールホルダ21とスプリングシート24との間には、付勢部材25が設けられている。付勢部材25は、例えばコイルスプリングであり、一端がスプリングシート24に当接し、他端がシールホルダ21に当接するよう設けられている。付勢部材25は、スプリングシート24を経由してプランジャ20を加圧室103とは反対側に付勢している。
なお、高圧ポンプ1は、プランジャ20の小径部202の大径部201とは反対側の端部が、エンジンの駆動軸に連動して回転するカム軸のカム5に当接するようエンジンに設けられる(図1参照)。これにより、エンジンが回転しているとき、カム5の回転により、プランジャ20が軸方向に往復移動する。このとき、加圧室103および可変容積室104の容積は、それぞれ周期的に変化する。
吸入弁装置30は、上ハウジング11の吸入通路101に設けられている。吸入弁装置30は、吸入弁座部31、吸入弁部材32、ストッパ33、吸入弁付勢部材34等を有している。
吸入弁座部31は、例えばステンレス等の金属により筒状に形成されている。吸入弁座部31は、吸入穴部111を形成する上ハウジング11の内壁に外壁が嵌合するよう設けられている。吸入弁座部31は、吸入弁座311を有している。吸入弁座311は、吸入弁座部31の加圧室103側の壁面のうち中央の穴の周囲に環状に形成されている。
吸入弁部材32は、例えばステンレス等の金属により形成されている。吸入弁部材32は、例えば略円板状の板部を有している。吸入弁部材32は、板部が吸入弁座311に当接可能、かつ、吸入通路101内で往復移動可能に設けられている。
ストッパ33は、例えばステンレス等の金属により有底筒状に形成されている。ストッパ33は、吸入穴部111を形成する上ハウジング11の内壁に外壁が嵌合するよう設けられている。
吸入弁付勢部材34は、吸入弁部材32の板部とストッパ33の底部との間に設けられている。吸入弁付勢部材34は、吸入弁部材32を吸入弁座311側に付勢する。
本実施形態では、ストッパ33の外縁部に形成された流路を経由することでストッパ33に対し吸入弁座部31側と加圧室103側との間で燃料が流通可能である。また、ストッパ33は、吸入弁部材32に当接することで、吸入弁部材32の加圧室103側への移動、すなわち、開弁方向の移動を規制可能である。また、ストッパ33は、吸入弁部材32と加圧室103との間に底部を有することにより、加圧室103側の燃料が吸入弁部材32に衝突することを抑制できる。
電磁駆動部40は、吸入弁装置30の近傍に設けられている。電磁駆動部40は、筒部材41、非磁性部材42、ニードル35、ニードル案内部36、ニードル付勢部材37、可動コア43、固定コア44、コイル45、コネクタ46、カバー部材47、48等を有している。
筒部材41は、例えば磁性材料により略円筒状に形成されている。筒部材41は、カバー15の第1穴151および上ハウジング11の吸入穴部111に挿通されるようにして設けられている。筒部材41は、一端の外壁が上ハウジング11の吸入穴部111の内壁に嵌合している。ここで、吸入弁座部31およびストッパ33は、筒部材41の一端と上ハウジング11の吸入穴部111を形成する内壁との間に挟み込まれた状態となっている。また、筒部材41の一端の内側には、吸入弁座部31の吸入弁座311とは反対側の端部が位置している。
吸入弁座部31は、内壁と外壁とを接続する穴部312を有している。穴部312は、吸入弁座部31の周方向に等間隔で複数形成されている。本実施形態では、穴部312は、2つ形成されている。すなわち、2つの穴部312は、吸入弁座部31の軸を挟んで互いに対向するよう形成されている。また、筒部材41は、一端から他端側へ向かって切り欠かれるようにして形成される溝部411を有している。溝部411は、吸入弁座部31の穴部312に対応する位置に1つずつ計2つ形成されている。また、上ハウジング11は、吸入穴部111を形成する内壁と外壁とを接続する穴部115を有している。穴部115は、筒部材41の溝部411に対応する位置に1つずつ計2つ形成されている。燃料ギャラリ100内の燃料は、穴部115、溝部411および穴部312を経由して吸入弁座部31の内側に流入可能である。吸入弁座部31の内側に流入した燃料は、吸入弁座311と吸入弁部材32との間、および、ストッパ33の流路を経由して加圧室103側へ流通可能である。
また、筒部材41の外壁とカバー15の第1穴151との間は、全周に亘り溶接されている。これにより、筒部材41とカバー15との間は液密に保たれている。
非磁性部材42は、非磁性材料により筒状に形成されている。非磁性部材42は、筒部材41の上ハウジング11とは反対側に、筒部材41と同軸となるよう設けられている。
ニードル35は、例えば金属により棒状に形成されている。ニードル35は、筒部材41の内側で軸方向に往復移動可能に設けられている。ニードル35は、一端が吸入弁部材32に当接可能である。
ニードル案内部36は、外壁が筒部材41の内壁に嵌合するよう設けられている。ニードル案内部36は、中央に案内穴部361を有している。案内穴部361は、ニードル案内部36の加圧室103側の壁面と加圧室103とは反対側の壁面とを接続するよう形成されている。案内穴部361には、ニードル35が挿通されている。案内穴部361の内径は、ニードル35の外径とほぼ同じか、ニードル35の外径よりやや大きく形成されている。案内穴部361の内壁とニードル35の外壁とは摺動可能である。これにより、ニードル案内部36は、ニードル35の軸方向の移動を案内可能である。
ニードル付勢部材37は、例えばコイルスプリングであり、ニードル案内部36の加圧室103側に設けられている。ニードル付勢部材37は、一端が、ニードル35から径外側へ環状に突出する突出部に当接し、他端がニードル案内部36に当接するよう設けられている。ニードル付勢部材37は、ニードル35を加圧室103側に付勢する。よって、ニードル付勢部材37は、ニードル35を経由して吸入弁部材32をストッパ33側へ付勢可能である。
可動コア43は、磁性材料により略円筒状に形成され、ニードル35の他端に圧入されている。これにより、可動コア43は、ニードル35とともに軸方向へ往復移動可能である。
固定コア44は、磁性材料により中実円筒状に形成され、可動コア43の加圧室103とは反対側に設けられている。固定コア44の加圧室103側の端部は、非磁性部材42に接続されている。
コイル45は、略円筒状に形成され、固定コア44および非磁性部材42の径外側に設けられている。コイル45の周囲は、樹脂材料によりモールドされ、コネクタ46を形成している。コネクタ46には、端子461がインサート成形されている。端子461とコイル45とは、電気的に接続されている。
カバー部材47、48は、磁性材料により形成されている。カバー部材47は、有底筒状に形成され、内側に固定コア44およびコイル45を収容し、底部が固定コア44に当接するよう設けられている。カバー部材48は、板状に形成され、中央に穴を有している。カバー部材48は、当該穴に筒部材41の他端が挿通された状態でカバー部材47の開口端を塞ぐようにして設けられている。ここで、カバー部材48は、カバー部材47と筒部材41とに当接している。
コイル45は、端子461を経由して外部から電力が供給されることにより磁界を生じる。コイル45に磁界が生じると固定コア44、カバー部材47、カバー部材48、筒部材41および可動コア43に磁気回路が形成され、可動コア43は、ニードル35とともに固定コア44側へ吸引される。なお、このとき、磁気回路は、非磁性部材42を避けるようにして形成される。
コイル45に電力が供給されていないとき、吸入弁部材32は、ニードル35を経由してニードル付勢部材37の付勢力により加圧室103側へ付勢され、ストッパ33側の面がストッパ33に当接した状態となる。このとき、吸入弁部材32は吸入弁座311から離間しているため、吸入通路101および吸入穴131における燃料の流れは許容されている。一方、コイル45に電力が供給されることにより可動コア43およびニードル35が固定コア44側に吸引されると、吸入弁部材32は、吸入弁付勢部材34の付勢力等により付勢されて加圧室103とは反対側へ移動し、吸入弁座311に当接する。これにより、吸入通路101および吸入穴131における燃料の流れが遮断される。
このように、吸入弁装置30は、電磁駆動部40の作動により、吸入通路101および吸入穴131における燃料の流れを許容または遮断可能である。なお、本実施形態では、吸入弁装置30は、電磁駆動部40とともに所謂ノーマリーオープンタイプの弁装置を構成している。
次に、本実施形態による高圧ポンプ1の吐出弁装置50について、詳細に説明する。
図3に示すように、吐出弁装置50は、弁座部60、吐出弁部材70、吐出弁付勢部材71、リリーフ弁部材80、リリーフ弁付勢部材89、支持部90等を備えている。
弁座部60は、例えばステンレス等の金属により形成され、ユニオン51の内側に設けられている。
弁座部60は、弁座部本体61、吐出弁通路67、リリーフ弁通路68、吐出弁座611、リリーフ弁座612、弁座部筒部62、および、弁座部突出部63を有する。
弁座部本体61は、吐出通路102を加圧室103側の空間である第1空間105と加圧室103とは反対側の空間である第2空間106とに区画するよう吐出通路102に設けられている。弁座部本体61は、加圧室103側の外壁がユニオン51の内壁に当接するよう設けられている。弁座部本体61の加圧室103とは反対側の外壁とユニオン51の内壁との間には、略円筒状の空間である筒状空間107が形成されている。
弁座部本体61は、第1空間105側の端面の中央から第2空間106側へ凹むよう形成される凹部65を有している。凹部65は、底部651、筒部652、テーパ部653を有している(図4参照)。底部651は、第1空間105側から第2空間106側へ向かうに従い内壁が弁座部本体61の軸に近づくようテーパ状に形成されている。筒部652は、底部651の外縁部から加圧室103側へ延びるよう形成されている。筒部652は、略円筒状の内壁を有している。テーパ部653は、筒部652の底部651とは反対側の端部から加圧室103側へ延びて弁座部本体61の加圧室103側の端面に開口するよう形成されている。テーパ部653は、第1空間105側から第2空間106側へ向かうに従い内壁が弁座部本体61の軸に近づくようテーパ状に形成されている。
弁座部本体61は、第2空間106側の端面の中央から第2空間106側へ突出するよう形成される突出部64を有している。突出部64は、第1空間105側から第2空間106側へ向かうに従い外壁が軸に近づくようテーパ状に形成されている。また、弁座部本体61は、突出部64の加圧室103とは反対側の端面から加圧室103側へ凹むよう形成される凹部66を有している。
吐出弁通路67は、第1空間105と第2空間106とを接続するよう弁座部本体61に形成されている。吐出弁通路67の第1空間105側の開口671は、凹部65の径外側に形成されている。吐出弁通路67の第2空間106側の開口672は、凹部66の底部に形成されている。本実施形態では、吐出弁通路67は、弁座部本体61に2つ形成されている。また、2つの吐出弁通路67は、弁座部本体61の軸を挟むよう、かつ、軸に対し傾斜するよう形成されている。
リリーフ弁通路68は、第2空間106と第1空間105とを接続し吐出弁通路67とは非連通となるよう弁座部本体61に形成されている。本実施形態では、リリーフ弁通路68は、第1通路681および第2通路682を有している。第1通路681は、弁座部本体61の軸に直交するよう延びて、両端部が弁座部本体61の外壁に開口するよう形成されている。これにより、第1通路681は、筒状空間107と連通している。
第2通路682は、弁座部本体61の軸に沿って延び、一端が第1通路681の中央に接続している。第2通路682は、他端の開口683が凹部65の底部651に形成されている(図4参照)。
吐出弁座611は、凹部66の外縁部に環状に形成されている。すなわち、吐出弁座611は、弁座部本体61の吐出弁通路67の第2空間106側の開口672の周囲に環状に形成されている。
リリーフ弁座612は、弁座部本体61のリリーフ弁通路68の第1空間105側の開口683の周囲に環状に形成されている。ここで、リリーフ弁座612は、第1空間105側から第2空間106側に向かうに従いリリーフ弁座612の軸に近づくようテーパ状に形成されている(図4参照)。
弁座部筒部62は、弁座部本体61の第1空間105側の端面の外縁部から加圧室103側へ筒状に延びるよう形成されている。ここで、弁座部筒部62の外壁は、ユニオン51の内壁に当接している。
弁座部突出部63は、弁座部筒部62の弁座部本体61とは反対側の端部から径外側へ突出するよう環状に形成されている。ここで、弁座部突出部63は、上ハウジング11の段差部114とユニオン51の加圧室103側の端部との間に挟み込まれている。これにより、弁座部60は、上ハウジング11に対する軸方向の相対移動が規制されている。
吐出弁部材70は、例えばステンレス等の金属により、略円板状に形成されている。吐出弁部材70は、吐出弁座611に当接可能なよう第2空間106に設けられ、吐出弁座611から離間または吐出弁座611に当接すると吐出弁通路67を開閉する。
本実施形態では、吐出弁装置50は、ホルダ72をさらに備えている。ホルダ72は、例えばステンレス等の金属により形成され、ユニオン51の内側、第2空間106に設けられている。ホルダ72は、ホルダ底部73、ホルダ筒部74、および、ホルダ突出部75を有している。
ホルダ底部73は、略円板状に形成され、板厚方向に貫く穴部731を中央に有している。ホルダ筒部74は、ホルダ底部73の外縁部から加圧室103側へ筒状に延びるよう形成されている。ホルダ筒部74の外壁とユニオン51の内壁との間には、略円筒状の空間である筒状空間108が形成されている。また、ホルダ筒部74のホルダ底部73とは反対側の端部の内側には、弁座部本体61の突出部64および吐出弁部材70が位置している。ホルダ筒部74のホルダ底部73とは反対側の端部の内壁は、突出部64の外壁の形状に対応するようテーパ状に形成されている。突出部64の外壁とホルダ筒部74の内壁との間には、筒状の空間である筒状空間109が形成されている。なお、筒状空間109と筒状空間107とは、ホルダ72と弁座部本体61との間の空間を経由して連通している(図3参照)。
ホルダ筒部74は、ホルダ底部73とは反対側の端部近傍の内壁と外壁とを接続するよう形成される穴部741を複数有している。これにより、穴部741は、筒状空間108と筒状空間109とに連通している。本実施形態では、穴部741は、例えばホルダ筒部74の周方向に等間隔で4つ形成されている。なお、上記構成により、リリーフ弁通路68は、筒状空間107、筒状空間109および穴部741を経由して筒状空間108に連通している。
ホルダ筒部74は、穴部741のホルダ底部73側の内壁に段差部742を有している。段差部742は、吐出弁部材70の外縁部が当接可能なよう略円環状に形成されている。
ホルダ突出部75は、ホルダ筒部74のホルダ底部73とは反対側の端部から径外側へ突出するよう環状に形成されている。ホルダ72は、ホルダ突出部75がユニオン51の内壁に嵌合し、かつ、ユニオン51の段差部52に当接するよう設けられている。これにより、ホルダ72は、ユニオン51に対する軸方向の相対移動が規制されている。
吐出弁付勢部材71は、例えばコイルスプリングであり、吐出弁部材70の弁座部60とは反対側に設けられている。吐出弁付勢部材71は、一端が吐出弁部材70に当接し、他端がホルダ72のホルダ底部73に当接するようホルダ筒部74の内側に設けられている。吐出弁付勢部材71は、吐出弁部材70を吐出弁座611側に付勢する。これにより、吐出弁部材70は、吐出弁座611に押し付けられる。
吐出弁部材70は、ホルダ72の内側で軸方向に往復移動可能に設けられている。吐出弁部材70は、ホルダ72の段差部742に当接することで、ホルダ底部73側への移動が規制される。よって、吐出弁部材70は、吐出弁座611と段差部742との間を軸方向に移動可能である。
リリーフ弁部材80は、例えばステンレス等の金属により形成されている。本実施形態では、リリーフ弁部材80の硬度は、弁座部60の硬度と同等に設定されている。リリーフ弁部材80は、リリーフ弁本体81、リリーフ弁シート部82、弁部材突出部83、燃料誘導部84を有する。
リリーフ弁本体81は、棒状、より具体的には略円柱状に形成されている。リリーフ弁部材80は、リリーフ弁本体81の一端である端部811が弁座部本体61の凹部65の内側に位置するよう、かつ、リリーフ弁本体81の他端が加圧室103側を向くよう第1空間105に設けられる。リリーフ弁本体81の端部811の加圧室103側には、大径部812が形成されている。端部811および大径部812は、略円柱状に形成されている。大径部812は、外径が端部811の外径より大きく設定されている(図4参照)。また、端部811は、外径が凹部65の筒部652の内径よりやや小さく形成されている。そのため、端部811と筒部652との間には、略円筒状の隙間が形成される。
リリーフ弁シート部82は、リリーフ弁座612に当接可能なようリリーフ弁本体81の一端(端部811)にリリーフ弁本体81と一体に形成されている。より具体的には、リリーフ弁シート部82は、リリーフ弁本体81の端部811の中央から第2空間106側に略円柱状に突出するよう形成されている。リリーフ弁シート部82は、第2空間106側に第1テーパ面821、第2テーパ面822を有している。第1テーパ面821は、第1空間105側から第2空間106側へ向かうに従いリリーフ弁シート部82の軸に近づくようテーパ状に形成されている。第2テーパ面822は、第1テーパ面821に接続するよう第1テーパ面821の第2空間106側に形成されている。第2テーパ面822は、第1空間105側から第2空間106側へ向かうに従いリリーフ弁シート部82の軸に近づくようテーパ状に形成されている。ここで、第1テーパ面821に沿って延びる仮想直線とリリーフ弁シート部82の軸との成す角は、第2テーパ面822に沿って延びる仮想直線とリリーフ弁シート部82の軸との成す角よりも小さい(図4参照)。よって、第1テーパ面821と第2テーパ面822との間(境界)にはエッジが形成される。
本実施形態では、第1テーパ面821に沿って延びる仮想直線とリリーフ弁シート部82の軸との成す角は、リリーフ弁座612に沿って延びる仮想直線とリリーフ弁座612の軸との成す角とほぼ同じに設定されている。そのため、リリーフ弁部材80は、第1テーパ面821がリリーフ弁座612に面接触により当接可能である。第1テーパ面821とリリーフ弁座612とが面接触するとき、リリーフ弁シート部82とリリーフ弁座612とは同軸の関係となる。このように、リリーフ弁部材80とリリーフ弁座612とは、第1テーパ面821とリリーフ弁座612とにより調心される。
図4に示すように、リリーフ弁シート部82と凹部65の底部651および筒部652との間には、環状の空間である中間室654が形成されている。
弁部材突出部83は、リリーフ弁本体81の大径部812の加圧室103側から径外側へ突出するよう環状に形成されている。
燃料誘導部84は、リリーフ弁本体81の他端、すなわち、加圧室103側の端部に設けられ、リリーフ弁本体81と一体に形成されている。燃料誘導部84は、加圧室103側から弁座部60側へ向かうに従い外壁が軸から離れるよう形成されている。そのため、加圧室103側から弁座部60側へ流れる燃料は、燃料誘導部84の外壁に沿って流れるとき、リリーフ弁本体81の径外方向に流れるよう誘導される。
リリーフ弁部材80は、リリーフ弁本体81の軸方向に往復移動可能なよう第1空間105に設けられる。
本実施形態では、吐出弁通路67の第1空間105側の開口671は、リリーフ弁部材80の外壁のうち最も外側の部位(弁部材突出部83の外壁)を通りリリーフ弁本体81の軸方向に筒状に延びる仮想筒状面C1の外側に形成されている(図3参照)。
リリーフ弁付勢部材89は、例えばコイルスプリングであり、内側にリリーフ弁本体81が挿通されている。すなわち、リリーフ弁付勢部材89は、リリーフ弁本体81の径外側に設けられている。リリーフ弁付勢部材89は、一端が弁部材突出部83の加圧室103側の壁面に当接している。
支持部90は、例えばステンレス等の金属により形成され、第1空間105に設けられている。なお、本実施形態では、支持部90の硬度は、弁座部60およびリリーフ弁部材80の硬度よりも低く設定されている。支持部90は、支持部本体91、支持部筒部92、ばね座部材93を有している。
支持部本体91は、略円板状に形成されている。支持部本体91は、案内穴部94を有している。案内穴部94は、支持部本体91の中央を板厚方向に貫くよう形成されている。案内穴部94には、リリーフ弁部材80のリリーフ弁本体81が挿通されている。案内穴部94は、内径がリリーフ弁本体81の他端、すなわち、加圧室103側の端部の外径とほぼ同じか、リリーフ弁本体81の加圧室103側の端部の外径よりやや大きく形成されている。よって、案内穴部94の内壁は、リリーフ弁本体81の他端側の外壁と摺動可能である。
支持部筒部92は、支持部本体91の外縁部から弁座部60側へ略円筒状に延びるよう形成されている。支持部90は、支持部筒部92の支持部本体91とは反対側の端部の外壁が弁座部筒部62の内壁に嵌合するよう設けられている。これにより、支持部90は、弁座部60に対し相対移動不能に設けられ、リリーフ弁部材80が軸方向に往復移動可能なよう支持部本体91によりリリーフ弁部材80を支持している。このように、支持部90の支持部本体91は、リリーフ弁部材80の軸方向の往復移動を案内するようリリーフ弁本体81の外壁を摺動可能に支持している。
支持部筒部92の支持部本体91側の端部の外壁と吐出穴部112を形成する上ハウジング11の内壁との間には、略円筒状の空間である筒状空間110が形成されている。
支持部筒部92は、内壁と外壁とを接続するよう形成される穴部921を複数有している。これにより、穴部921は、支持部筒部92の内側の空間と筒状空間110とに連通している。本実施形態では、穴部921は、例えば支持部筒部92の周方向に等間隔で4つ形成されている。
ばね座部材93は、支持部本体91および支持部筒部92とは別体に、略円板状に形成されている。ばね座部材93は、支持部本体91の弁座部60側に設けられている。ばね座部材93は、中央に板厚方向に貫く穴部を有し、当該穴部にリリーフ弁本体81の加圧室103側の端部が挿通されている。
リリーフ弁付勢部材89は、他端がばね座部材93の弁座部60側の面に当接している。リリーフ弁付勢部材89は、ばね座部材93を支持部本体91側に押し付けるとともに、リリーフ弁部材80をリリーフ弁座612側に付勢している。これにより、リリーフ弁シート部82の第1テーパ面821は、リリーフ弁座612に押し付けられる。
吐出弁部材70は、第1空間105内の燃料の圧力が、第2空間106内の燃料の圧力と吐出弁付勢部材71の付勢力との合計(吐出弁部材70の開弁圧)より大きくなると、吐出弁座611から離間し開弁する。このとき、加圧室103は、吐出穴132、筒状空間110、穴部921、支持部筒部92および弁座部筒部62の内側の空間、吐出弁通路67、凹部66、穴部741、筒状空間108を経由してユニオン51の配管6側の端部の内側の空間に連通する。これにより、加圧室103側、すなわち、第1空間105側の燃料は、吐出弁座611を経由して配管6側、すなわち、第2空間106側へ吐出される。なお、吐出弁部材70の開弁圧は、吐出弁付勢部材71の付勢力を調整することにより設定可能である。
一方、リリーフ弁部材80は、第2空間106内の燃料の圧力が、第1空間105内の燃料の圧力とリリーフ弁付勢部材89の付勢力との合計(リリーフ弁部材80の開弁圧)より大きくなると、リリーフ弁座612から離間し開弁する。このとき、ユニオン51の配管6側の端部の内側の空間は、筒状空間108、穴部741、筒状空間109、筒状空間107、リリーフ弁通路68の第1通路681、第2通路682、凹部65、弁座部筒部62および支持部筒部92の内側の空間、穴部921、筒状空間110、吐出穴132を経由して加圧室103に連通する。これにより、配管6側、すなわち、第2空間106側の燃料は、リリーフ弁座612を経由して加圧室103側、すなわち、第1空間105側へ戻される。その結果、第2空間106側の燃料の圧力が異常に高くなることを抑制可能である。なお、リリーフ弁部材80の開弁圧は、リリーフ弁付勢部材89の付勢力を調整することにより設定可能である。
また、本実施形態では、リリーフ弁付勢部材89の付勢力は、リリーフ弁部材80の端部811凹部65から抜け出ない程度より大きく設定されている。そのため、リリーフ弁部材80は、端部811が凹部65から抜け出ることが抑制される。
このように、本実施形態の吐出弁装置50は、吐出弁としての機能とリリーフ弁としての機能との両方を備えるリリーフ弁一体型の吐出弁装置である。
次に、本実施形態の高圧ポンプ1の作動について、図2に基づき説明する。
「吸入工程」
電磁駆動部40のコイル45への電力の供給が停止されているとき、吸入弁部材32は、ニードル付勢部材37およびニードル35により加圧室103側へ付勢されている。よって、吸入弁部材32は、吸入弁座311から離間、すなわち、開弁している。この状態で、プランジャ20がカム5側に移動すると、加圧室103の容積が増大し、吸入通路101内の燃料は、加圧室103に吸入される。
「調量工程」
吸入弁部材32が開弁した状態で、プランジャ20がカム5とは反対側に移動すると、加圧室103の容積が減少し、加圧室103内の燃料は、吸入通路101の燃料ギャラリ100側に戻される。調量工程の途中、コイル45に電力を供給すると、可動コア43がニードル35とともに固定コア44側に吸引され、吸入弁部材32が吸入弁座311に当接し閉弁する。プランジャ20がカム5とは反対側に移動するとき、吸入弁部材32を閉弁し吸入通路101の加圧室103側と燃料ギャラリ100側との間を遮断することにより、加圧室103から吸入通路101の燃料ギャラリ100側に戻される燃料の量が調整される。その結果、加圧室103で加圧される燃料の量が決定される。吸入弁部材32が閉弁することにより、燃料を加圧室103から吸入通路101の燃料ギャラリ100側に戻す調量工程は終了する。
「加圧工程」
吸入弁部材32が閉弁した状態でプランジャ20がカム5とは反対側にさらに移動すると、加圧室103の容積が減少し、加圧室103内の燃料は、圧縮され加圧される。加圧室103内の燃料の圧力が吐出弁部材70の開弁圧以上になると、吐出弁部材70が開弁し、燃料が加圧室103から配管6側、すなわち、第2空間106側に吐出される。
コイル45への電力の供給が停止され、プランジャ20がカム5側に移動すると、吸入弁部材32は再び開弁する。これにより、燃料を加圧する加圧工程が終了し、吸入通路101の燃料ギャラリ100側から加圧室103側に燃料が吸入される吸入工程が再開する。
上記の「吸入工程」、「調量工程」、「加圧工程」を繰り返すことにより、高圧ポンプ1は、吸入した燃料タンク2内の燃料を加圧、吐出し、燃料レール7に供給する。高圧ポンプ1から燃料レール7への燃料の供給量は、電磁駆動部40のコイル45への電力の供給タイミング等を制御することにより調節される。
例えば、コイル45への電力の供給が停止された状態が所定期間継続すると、吸入弁部材32は開弁状態を維持するため、加圧室103での燃料の加圧は行われず、燃料は高圧ポンプ1から燃料レール7に供給されない。また、吸入弁部材32の固着等、何らかの原因により吸入弁部材32が開弁状態を維持している場合も、加圧室103での燃料の加圧は行われず、燃料は高圧ポンプ1から燃料レール7に供給されない。
一方、例えば、コイル45への電力の供給が所定期間継続すると、吸入弁部材32は加圧工程で閉弁状態となるため、燃料は、加圧室103で加圧され、高圧ポンプ1から燃料レール7に供給され、第2空間106、配管6、燃料レール7内の燃料の圧力が増大していく。また、吸入弁部材32の固着等、何らかの原因により吸入弁部材32が閉弁状態を維持している場合も、燃料は、加圧室103で加圧され、高圧ポンプ1から燃料レール7に供給され、第2空間106、配管6、燃料レール7内の燃料の圧力が増大していく。
次に、本実施形態による高圧ポンプ1の吐出弁装置50の作動について説明する。
図5に示すように、第1空間105内の燃料の圧力が吐出弁部材70の開弁圧より大きくなると、吐出弁部材70は、吐出弁座611から離間し開弁する。このとき、加圧室103内の燃料は、吐出穴132、筒状空間110、穴部921、支持部筒部92および弁座部筒部62の内側の空間、吐出弁通路67、凹部66、穴部741、筒状空間108を経由してユニオン51の配管6側の端部の内側の空間に向かって流通可能となる。
本実施形態では、支持部90の支持部本体91は、リリーフ弁部材80の軸方向の移動を案内するようリリーフ弁本体81の外壁を摺動可能に支持している。そのため、加圧室103から吐出される燃料がリリーフ弁部材80の周囲を流れても、リリーフ弁部材80のリリーフ弁シート部82がリリーフ弁座612に対し径方向に相対移動または振動することが抑制される。これにより、リリーフ弁座612またはリリーフ弁シート部82の摩耗を抑制することができる。
また、本実施形態では、リリーフ弁シート部82は、リリーフ弁本体81と一体に形成されている。そのため、リリーフ弁シート部82とリリーフ弁本体81とが相対移動することはない。よって、例えばリリーフ弁本体81とリリーフ弁シート部82とが別体に形成される構成と比べ、リリーフ弁シート部82の位置が安定する。
また、本実施形態では、吐出弁通路67の第1空間105側の開口671は、リリーフ弁部材80の外壁のうち最も外側の部位(弁部材突出部83の外壁)を通りリリーフ弁本体81の軸方向に筒状に延びる仮想筒状面C1の外側に形成されている。そのため、加圧室103からの燃料の吐出時、リリーフ弁本体81の周囲の燃料は、リリーフ弁部材80の弁部材突出部83に流れを妨げられることなく、円滑に吐出弁通路67に流入することができる。
また、吐出弁部材70が開弁しているとき、リリーフ弁部材80の燃料誘導部84近傍を加圧室103側から弁座部60側へ向かう燃料は、燃料誘導部84により、リリーフ弁本体81の径外方向に流れるよう誘導される。これにより、燃料が支持部90の案内穴部94とリリーフ弁本体81との間に侵入することを抑制できる。そのため、案内穴部94とリリーフ弁本体81との間におけるキャビテーションエロージョンの発生を抑制でき、支持部90の案内穴部94の侵食を抑制することができる。
図6に示すように、第2空間106内の燃料の圧力がリリーフ弁部材80の開弁圧より大きくなると、リリーフ弁部材80は、リリーフ弁座612から離間し開弁する。このとき、ユニオン51の配管6側の端部の内側の空間内の燃料は、筒状空間108、穴部741、筒状空間109、筒状空間107、リリーフ弁通路68の第1通路681、第2通路682、凹部65、弁座部筒部62および支持部筒部92の内側の空間、穴部921、筒状空間110、吐出穴132を経由して加圧室103に向かって流通可能となる。
本実施形態では、支持部90の支持部本体91は、リリーフ弁部材80の軸方向の往復移動を案内するようリリーフ弁本体81の外壁を摺動可能に支持している。これにより、リリーフ弁部材80が開弁するとき、リリーフ弁部材80の加圧室103側への移動が安定する。
また、本実施形態では、リリーフ弁シート部82がリリーフ弁座612から離間すると、リリーフ弁通路68内の燃料は、中間室654に流入する(図4参照)。これにより、中間室654内の圧力が速やかに上昇し、リリーフ弁部材80を加圧室103側に速やかに移動させることができる。なお、中間室654内の燃料は、凹部65の筒部652およびテーパ部653とリリーフ弁本体81の端部811および大径部812との間を通って加圧室103側へ流れる。
以上説明したように、(1)本実施形態では、ポンプボディ10は、燃料を加圧する加圧室103、および、加圧室103で加圧され吐出される燃料が流れる吐出通路102を有する。
弁座部60は、弁座部本体61、吐出弁通路67、リリーフ弁通路68、吐出弁座611、および、リリーフ弁座612を有する。
弁座部本体61は、吐出通路102を加圧室103側の空間である第1空間105と加圧室103とは反対側の空間である第2空間106とに区画するよう吐出通路102に設けられる。吐出弁通路67は、第1空間105と第2空間106とを接続するよう弁座部本体61に形成される。リリーフ弁通路68は、第2空間106と第1空間105とを接続し吐出弁通路67とは非連通となるよう弁座部本体61に形成される。吐出弁座611は、弁座部本体61の吐出弁通路67の第2空間106側の開口672の周囲に環状に形成される。リリーフ弁座612は、弁座部本体61のリリーフ弁通路68の第1空間105側の開口683の周囲に環状に形成される。
吐出弁部材70は、吐出弁座611に当接可能なよう第2空間106に設けられ、吐出弁座611から離間または吐出弁座611に当接すると吐出弁通路67を開閉する。
吐出弁付勢部材71は、吐出弁部材70を吐出弁座611側に付勢する。
リリーフ弁部材80は、リリーフ弁本体81、および、リリーフ弁シート部82を有する。
リリーフ弁本体81は、棒状に形成される。リリーフ弁シート部82は、リリーフ弁座612に当接可能なようリリーフ弁本体81の一端にリリーフ弁本体81と一体に形成される。リリーフ弁部材80は、軸方向に往復移動可能なよう第1空間105に設けられる。
リリーフ弁付勢部材89は、リリーフ弁部材80をリリーフ弁座612側に付勢する。
支持部90は、リリーフ弁部材80の軸方向の往復移動を案内するようリリーフ弁本体81の外壁を摺動可能に支持する支持部本体91を有する。
本実施形態では、支持部90の支持部本体91は、リリーフ弁部材80の軸方向の往復移動を案内するようリリーフ弁本体81の外壁を摺動可能に支持する。そのため、高圧ポンプ1の加圧室103から吐出される燃料がリリーフ弁部材80の周囲を流れても、リリーフ弁部材80のリリーフ弁シート部82がリリーフ弁座612に対し径方向に相対移動または振動することが抑制される。これにより、リリーフ弁座612またはリリーフ弁シート部82の摩耗を抑制することができる。したがって、リリーフ弁部材80の開弁圧の経時変化を抑制することができる。
また、本実施形態では、リリーフ弁シート部82は、リリーフ弁本体81と一体に形成されている。そのため、リリーフ弁シート部82とリリーフ弁本体81とが相対移動することはない。よって、例えばリリーフ弁本体81とリリーフ弁シート部82とが別体に形成される構成と比べ、リリーフ弁シート部82の位置が安定する。したがって、リリーフ弁座612またはリリーフ弁シート部82の摩耗をさらに抑制することができる。
また、(2)本実施形態では、支持部90は、リリーフ弁本体81の他端側、すなわち、加圧室103側の端部の外壁を摺動可能に支持する。そのため、リリーフ弁部材80の往復移動時、リリーフ弁部材80の軸が傾くことを効果的に抑制できる。また、支持部90の内壁とリリーフ弁本体81の外壁との摺動箇所がリリーフ弁座612から遠い位置にあるため、支持部90の内壁とリリーフ弁本体81の外壁とが摺動により摩耗し摩耗粉が生じても、摩耗粉がリリーフ弁座612とリリーフ弁シート部82との間に噛み込むのを抑制することができる。
また、(3)本実施形態では、弁座部本体61は、第1空間105側の端面から第2空間106側へ凹むよう形成される凹部65を有している。リリーフ弁座612は、凹部65の底部651に形成されている。よって、リリーフ弁部材80は、リリーフ弁座612側の端部811が凹部65内に位置するよう設けられている。また、リリーフ弁部材80の端部811と凹部65との間には、容積可変の中間室654が形成されている。リリーフ弁シート部82がリリーフ弁座612から離間すると、中間室654内の圧力が速やかに上昇するため、リリーフ弁部材80を加圧室103側、すなわち、開弁方向へ速やかに移動させることができる。
また、(4)本実施形態では、リリーフ弁座612は、第1空間105側から第2空間106側に向かうに従い内径が小さくなるようテーパ状に形成されている。これにより、リリーフ弁部材80は、リリーフ弁座612に当接するとき、リリーフ弁座612に対し調心される。
また、(5)本実施形態では、リリーフ弁シート部82の第1テーパ面821および第2テーパ面822は、第1空間105側から第2空間106側に向かうに従い内径が小さくなるようテーパ状に形成されている。そのため、リリーフ弁シート部82の第1テーパ面821とテーパ状のリリーフ弁座612とを面接触により当接させることができる。よって、リリーフ弁シート部82とリリーフ弁座612との面圧を小さくでき、リリーフ弁座612またはリリーフ弁シート部82の摩耗を効果的に抑制できる。
また、(7)本実施形態では、吐出弁通路67の第1空間105側の開口671は、リリーフ弁部材80の外壁のうち最も外側の部位(弁部材突出部83の外壁)を通りリリーフ弁本体81の軸方向に筒状に延びる仮想筒状面C1の外側に形成されている。そのため、加圧室103からの燃料の吐出時、リリーフ弁本体81の周囲の燃料は、リリーフ弁部材80の弁部材突出部83に流れを妨げられることなく、円滑に吐出弁通路67に流入することができる。よって、燃料を加圧室103から配管6、燃料レール7に向けて円滑に吐出することができる。
また、(8)本実施形態では、弁座部60は、弁座部本体61から第1空間105側へ筒状に延びる弁座部筒部62を有している。支持部90は、支持部本体91から第2空間106側へ筒状に延びて弁座部筒部62の内壁に嵌合する支持部筒部92を有している。このように、リリーフ弁部材80を摺動可能に支持する支持部90とリリーフ弁座612が形成される弁座部60とは、相対移動不能なよう一体に設けられている。そのため、リリーフ弁部材80のリリーフ弁シート部82のリリーフ弁座612への当接位置が不安定になるのを抑制することができる。これにより、リリーフ弁座612またはリリーフ弁シート部82の摩耗を効果的に抑制できる。
また、(9)本実施形態では、リリーフ弁部材80は、リリーフ弁本体81から径外側へ突出するよう形成される弁部材突出部83を有している。リリーフ弁付勢部材89は、一端が弁部材突出部83に当接し、他端が支持部90に当接するよう設けられている。
また、上述のように、弁座部筒部62と支持部筒部92とを嵌合させることにより、弁座部60、リリーフ弁部材80、リリーフ弁付勢部材89、支持部90をユニット化することができる。そのため、リリーフ弁付勢部材89の付勢力を所望の大きさに設定しておくのが容易になる。また、リリーフ弁部材80を備える吐出弁装置50の高圧ポンプ1のポンプボディ10への組み付けが容易になる。
また、(10)本実施形態では、リリーフ弁付勢部材89は、筒状に形成されるコイルスプリングであり、リリーフ弁本体81の径外側に設けられている。そのため、リリーフ弁付勢部材89は、リリーフ弁部材80を軸方向のリリーフ弁座612側に安定して付勢することができる。これにより、リリーフ弁部材80は軸方向に往復移動するとき、軸の傾きが抑制される。その結果、リリーフ弁座612またはリリーフ弁シート部82の摩耗をより効果的に抑制できる。
また、(11)本実施形態では、ポンプボディ10は、内側に吐出通路102を形成する筒状のユニオン51、および、ユニオン51の一端が挿し込まれる上ハウジング11を有している。弁座部60は、径外側へ突出するよう形成されユニオン51の一端と上ハウジング11の段差部114との間に挟まれる弁座部突出部63を有している。これにより、弁座部60は、上ハウジング11およびユニオン51に対する軸方向の相対移動が規制される。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による高圧ポンプの一部を図7に示す。第2実施形態は、リリーフ弁部材80のリリーフ弁シート部の形状が第1実施形態と異なる。
第2実施形態では、リリーフ弁シート部85は、球面状に形成されている。そのため、リリーフ弁部材80は、リリーフ弁シート部85がリリーフ弁座612に線接触により当接可能である。リリーフ弁シート部82とリリーフ弁座612とが線接触するとき、リリーフ弁シート部82とリリーフ弁座612とは同軸の関係となる。このように、リリーフ弁部材80とリリーフ弁座612とは、リリーフ弁シート部85とリリーフ弁座612とにより調心される。
以上説明したように、(6)本実施形態では、リリーフ弁シート部85は、球面状に形成されている。そのため、リリーフ弁シート部85とテーパ状のリリーフ弁座612とを線接触により当接させることができる。よって、リリーフ弁シート部85とリリーフ弁座612との面圧を大きくでき、リリーフ弁部材80の閉弁時、リリーフ弁シート部85とリリーフ弁座612との間を液密に保持することができる。なお、本実施形態では、リリーフ弁シート部85が球面状に形成されているため、リリーフ弁シート部85とリリーフ弁座612との面圧が大きい場合でも、リリーフ弁シート部85とリリーフ弁座612との摩耗を抑制することができる。
(他の実施形態)
上述の実施形態では、支持部90の支持部本体91が、リリーフ弁本体81の他端側、すなわち、加圧室103側の端部の外壁を摺動可能に支持する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、支持部90の支持部本体91は、リリーフ弁本体81の軸方向のどの位置を摺動可能に支持することとしてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、弁座部本体61は、第1空間105側の端面から第2空間106側へ凹む凹部65を有さないこととしてもよい。この場合、リリーフ弁座612は、弁座部本体61の第1空間105側の端面に形成される。
また、本発明の他の実施形態では、リリーフ弁座612は、テーパ状に限らず、平面状に形成されていてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、リリーフ弁シート部は、テーパ状または球面状に限らず、例えば平面状等、どのような形状に形成されていてもよい。
また、上述の実施形態では、吐出弁通路67の第1空間105側の開口671が、リリーフ弁部材80の外壁のうち最も外側の部位を通りリリーフ弁本体81の軸方向に筒状に延びる仮想筒状面C1の外側に形成される例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、吐出弁通路67の第1空間105側の開口671は、少なくとも一部が仮想筒状面C1の内側に位置するよう形成されていてもよい。また、吐出弁通路67は、2つに限らず、1つ、または、3つ以上形成されていてもよい。
また、上述の実施形態では、支持部90の支持部筒部92が弁座部60の弁座部筒部62の内壁に嵌合する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、支持部筒部92は、弁座部筒部62の外壁に嵌合することとしてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、弁座部60は、弁座部筒部62を有さないこととしてもよい。また、支持部90は、支持部筒部92を有さないこととしてもよい。つまり、弁座部60と支持部90とは互いに嵌合していなくてもよい。この場合、支持部90(支持部本体91)を、吐出穴部112を形成する上ハウジング11の内壁に嵌合等させて設けることが考えられる。
また、本発明の他の実施形態では、リリーフ弁部材80は、弁部材突出部83を有さないこととしてもよい。この場合、リリーフ弁付勢部材89を、リリーフ弁部材80のリリーフ弁シート部82とは反対側の端部、または、リリーフ弁部材80の軸方向の所定位置等に当接するよう設けることが考えられる。また、本発明の他の実施形態では、リリーフ弁付勢部材89は、コイルスプリングに限らず、例えば板バネ等により形成してもよい。
また、本発明の他の実施形態では、ユニオン51は、上ハウジング11と一体に形成されることとしてもよい。この場合、弁座部60の弁座部突出部63を省略してもよい。
また、本発明の他の実施形態では、シリンダ、上ハウジングおよび下ハウジングのうち少なくとも2つが一体に形成された構成であってもよい。
また、本発明の他の実施形態では、吸入弁装置は、電磁駆動部とともにノーマリークローズタイプ(通常時閉弁型)の弁装置を構成していてもよい。また、吸入弁装置がノーマリークローズタイプの弁装置を構成しているのであれば、電磁駆動部を設けなくてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、カバーの内側にパルセーションダンパを設置しない構成であってもよい。さらに、カバーを設けない構成であってもよい。カバー部材を設けない構成の場合、燃料を、ポンプボディの吸入通路に直接供給することが考えられる。
また、本発明の他の実施形態では、高圧ポンプを、車両のエンジン以外の装置等へ向けて燃料を吐出する燃料ポンプとして用いてもよい。
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。