JP2020033601A - 継目無鋼管 - Google Patents
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Abstract
Description
本実施形態の継目無鋼管の化学組成は、次の元素を含有する。
炭素(C)は、不可避に含有される。つまり、C含有量は0%超である。Cは、鋼材の強度を高める。Cが少しでも含有されれば、この効果がある程度得られる。しかしながら、C含有量が0.06%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の耐硫酸腐食性が低下する。したがって、C含有量は0.06%以下である。C含有量の過剰な低減は製造コストを引き上げる。したがって、工業生産を考慮した場合、C含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%である。鋼材の強度をより有効に高める場合、C含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.01%である。C含有量の好ましい上限は0.055%であり、さらに好ましくは0.05%である。
シリコン(Si)は不可避に含有される。つまり、Si含有量は0%超である。Siは鋼を脱酸する。Siはさらに、フェライトに固溶して鋼材の強度を高める。Siが少しでも含有されれば、この効果がある程度得られる。しかしながら、Si含有量が0.55%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の溶接性及び靭性が低下する。したがって、Si含有量は0.55%以下である。Si含有量の過剰な低減は製造コストを引き上げる。したがって、工業生産を考慮した場合、Si含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%である。鋼材の強度をより有効に高める場合、Si含有量の好ましい下限は0.05%であり、さらに好ましくは0.10%である。Si含有量の好ましい上限は0.50%であり、さらに好ましくは0.45%である。
マンガン(Mn)は、鋼材の強度を高める。Mn含有量が0.70%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、十分な強度が得られない。一方、Mn含有量が1.40%を超えれば、鋼材の靭性が低下する。したがって、Mn含有量は0.70〜1.40%である。Mn含有量の好ましい下限は0.80%であり、さらに好ましくは0.90%である。Mn含有量の好ましい上限は1.35%であり、さらに好ましくは、1.30%であり、さらに好ましくは、1.25%である。
燐(P)は不可避に含有される不純物である。つまり、P含有量は0%超である。Pは、粒界に偏析して、鋼材の耐硫酸腐食性を低下する。P含有量が0.020%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、十分な耐硫酸腐食性が得られない。したがって、P含有量は、0.020%以下である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、P含有量の過剰な低減は、製造コストを引き上げる。したがって、工業生産を考慮した場合、P含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.001%である。
硫黄(S)は不可避に含有される不純物である。つまり、S含有量は0%超である。Sは、鋼材の熱間加工性を低下する。S含有量が0.020%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、十分な熱間加工性が得られない。したがって、S含有量は0.020%以下である。S含有量の過剰な低減は、製造コストを引き上げる。したがって、工業生産を考慮した場合、S含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%である。S以外の他の元素が本実施形態の範囲内である場合、Sは耐硫酸腐食性を高めることができる。したがって、S含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.005%である。S含有量の好ましい上限は0.018%であり、さらに好ましくは0.016%である。
銅(Cu)は、鋼材の耐硫酸腐食性を高める。Cu含有量が0.25%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、十分な耐硫酸腐食性が得られない。一方、Cu含有量が0.45%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の溶接性及び熱間加工性が低下する。したがって、Cu含有量は0.25〜0.45%である。Cu含有量の好ましい下限は0.26%であり、さらに好ましくは0.27%である。Cu含有量の好ましい上限は0.40%であり、さらに好ましくは0.38%であり、さらに好ましくは0.36%である。
ニッケル(Ni)は、不可避に含有される。つまり、Ni含有量は0%超である。Niは、鋼材の耐塩酸腐食性を高める。Niが少しでも含有されていれば、この効果がある程度得られる。しかしながら、Ni含有量が0.50%を超えれば、鋼材の溶接性及び熱間加工性が低下する。したがって、Ni含有量は0.50%以下である。Ni含有量の過剰な低減は、製造コストを引き上げる。したがって、工業生産を考慮した場合、Ni含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。耐塩酸腐食性をさらに有効に高めることを考慮すれば、Ni含有量の好ましい下限は0.05%であり、さらに好ましくは0.10%である。Ni含有量の好ましい上限は0.44%であり、さらに好ましくは0.40%であり、さらに好ましくは0.35%である。
モリブデン(Mo)は不可避に含有される。つまり、Mo含有量は0%超である。Moは鋼材の耐硫酸腐食性を高める。Moが少しでも含有されれば、この効果がある程度得られる。一方、Mo含有量が0.20%を超えれば、鋼材の耐食性が低下する。したがって、Mo含有量は0.20%以下である。Mo含有量の過剰な低減は、製造コストを引き上げる。したがって、Mo含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.005%である。耐硫酸腐食性をさらに高める場合、Mo含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.02%であり、さらに好ましくは0.03%である。Mo含有量の好ましい上限は0.19%であり、さらに好ましくは0.18%であり、さらに好ましくは0.17%である。
アンチモン(Sb)は、鋼材の耐硫酸腐食性を高める。Sb含有量が0.05%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、十分な耐硫酸腐食性が得られない。一方、Sb含有量が0.15%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の熱間加工性及び溶接性が低下する。したがって、Sb含有量は0.05〜0.15%である。Sb含有量の好ましい下限は0.06%であり、さらに好ましくは0.07%であり、さらに好ましくは0.08%である。Sb含有量の好ましい上限は0.14%であり、さらに好ましくは0.13%である。
本実施形態の継目無鋼管の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Nb:0.100%以下、Ta:0.100%以下、V:0.100%以下、Ti:0.100%以下、及び、W:1.00%以下、からなる群から選択される1元素又は2元素以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも、鋼材の高温強度を高める。
ニオブ(Nb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Nb含有量は0%であってもよい。Nbが含有される場合、Nbは鋼中において炭化物又は炭窒化物を生成し、継目無鋼管の高温強度を高める。Nbが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Nb含有量が高すぎれば、その効果が飽和する。したがって、Nb含有量は0.100%以下である。Nb含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.010%である。Nb含有量の好ましい上限は0.090%であり、さらに好ましくは0.080%である。
タンタル(Ta)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Ta含有量は0%であってもよい。Taが含有される場合、Taは鋼中において炭化物又は炭窒化物を生成し、継目無鋼管の高温強度を高める。Taが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Ta含有量が高すぎれば、その効果が飽和する。したがって、Ta含有量は0.100%以下である。Ta含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.010%である。Ta含有量の好ましい上限は0.090%であり、さらに好ましくは0.080%である。
バナジウム(V)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、V含有量は0%であってもよい。Vが含有される場合、Vは鋼中において炭化物又は炭窒化物を生成し、継目無鋼管の高温強度を高める。Vが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、V含有量が高すぎれば、その効果が飽和する。したがって、V含有量は0.100%以下である。V含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.010%である。V含有量の好ましい上限は0.090%であり、さらに好ましくは0.080%である。
チタン(Ti)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Ti含有量は0%であってもよい。Tiが含有される場合、Tiは鋼中において炭化物又は炭窒化物を生成し、継目無鋼管の高温強度を高める。Tiが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Ti含有量が高すぎれば、その効果が飽和する。したがって、Ti含有量は0.100%以下である。Ti含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.010%である。Ti含有量の好ましい上限は0.090%であり、さらに好ましくは0.080%である。
タングステン(W)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、W含有量は0%であってもよい。Wが含有される場合、Wは継目無鋼管の高温強度を高める。Wが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、W含有量が高すぎれば、その効果が飽和する。したがって、W含有量は1.00%以下である。W含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.05%であり、さらに好ましくは0.10%である。W含有量の好ましい上限は0.90%であり、さらに好ましくは0.80%である。
カルシウム(Ca)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Ca含有量は0%であってもよい。Caが含有される場合、耐硫酸腐食性の低下を抑制しつつ、鋼材の清浄性を高める。Caが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Ca含有量が高すぎれば、その効果が飽和する。したがって、Ca含有量は0.0100%以下である。Ca含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.0002%であり、さらに好ましくは0.0010%である。Ca含有量の好ましい上限は0.0090%であり、さらに好ましくは0.0080%である。
マグネシウム(Mg)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Mg含有量は0%であってもよい。Mgが含有される場合、耐硫酸腐食性の低下を抑制しつつ、鋼材の清浄性を高める。Mgが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Mg含有量が高すぎれば、その効果が飽和する。したがって、Mg含有量は0.0100%以下である。Mg含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.0002%であり、さらに好ましくは0.0010%である。Mg含有量の好ましい上限は0.0090%であり、さらに好ましくは0.0080%である。
希土類元素(REM)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、REM含有量は0%であってもよい。REMが含有される場合、耐硫酸腐食性の低下を抑制しつつ、鋼材の清浄性を高める。REMが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、REM含有量が高すぎれば、その効果が飽和する。したがって、REM含有量は0.0100%以下である。REM含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.0002%であり、さらに好ましくは0.0010%である。REM含有量の好ましい上限は0.0090%であり、さらに好ましくは0.0080%である。
ボロン(B)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、B含有量は0%であってもよい。Bが含有される場合、耐硫酸腐食性の低下を抑制しつつ、鋼材の清浄性を高める。Bが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、B含有量が高すぎれば、その効果が飽和する。したがって、B含有量は0.0050%以下である。B含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.0002%であり、さらに好ましくは0.0010%である。REM含有量の好ましい上限は0.0040%であり、さらに好ましくは0.0030%である。
錫(Sn)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Sn含有量は0%であってもよい。Snが含有される場合、鋼材の被削性が高まる。Snが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Sn含有量が高すぎれば、鋼材の熱間加工性が低下する。したがって、Sn含有量は0.30%以下である。Sn含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.10%である。Sn含有量の好ましい上限は0.25%であり、さらに好ましくは0.20%である。
鉛(Pb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Pb含有量は0%であってもよい。Pbが含有される場合、鋼材の被削性が高まる。Pbが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Pb含有量が高すぎれば、鋼材の熱間加工性が低下する。したがって、Pb含有量は0.30%以下である。Pb含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.10%である。Pb含有量の好ましい上限は0.25%であり、さらに好ましくは0.20%である。
セレン(Se)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Se含有量は0%であってもよい。Seが含有される場合、鋼材の耐酸性が高まる。Seが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Se含有量が高すぎれば、鋼材の製造性が低下して、製造コストが高くなる。したがって、Se含有量は0.100%以下である。Se含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.010%である。Se含有量の好ましい上限は0.090%であり、さらに好ましくは0.080%であり、さらに好ましくは0.070%である。
テルル(Te)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Te含有量は0%であってもよい。Teが含有される場合、鋼材の耐酸性が高まる。Teが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Te含有量が高すぎれば、鋼材の製造性が低下して、製造コストが高くなる。したがって、Te含有量は0.100%以下である。Te含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.010%である。Te含有量の好ましい上限は0.090%であり、さらに好ましくは0.080%であり、さらに好ましくは0.070%である。
ビスマス(Bi)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Bi含有量は0%であってもよい。Biが含有される場合、鋼材の耐酸性が高まる。Biが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Bi含有量が高すぎれば、鋼材の製造性が低下して、製造コストが高くなる。したがって、Bi含有量は0.100%以下である。Bi含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.010%である。Bi含有量の好ましい上限は0.090%であり、さらに好ましくは0.080%であり、さらに好ましくは0.070%である。
銀(Ag)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Ag含有量は0%であってもよい。Agが含有される場合、高温下での鋼材の耐硫酸腐食性が高まる。Agが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Ag含有量が高すぎれば、鋼材の熱間加工性が低下する。したがって、Ag含有量は0.500%以下である。Ag含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.010%である。Ag含有量の好ましい上限は0.400%であり、さらに好ましくは0.250%であり、さらに好ましくは0.100%である。
パラジウム(Pd)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Pd含有量は0%であってもよい。Pdが含有される場合、高温下での鋼材の耐硫酸腐食性が高まる。Pdが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Pd含有量が高すぎれば、鋼材の熱間加工性が低下する。したがって、Pd含有量は0.100%以下である。Pd含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.010%である。Pd含有量の好ましい上限は0.090%であり、さらに好ましくは0.080%であり、さらに好ましくは0.070%である。
本実施形態の継目無鋼管のミクロ組織では、フェライトの面積率が90.0%以上である。ミクロ組織において、フェライト以外の残部は、パーライトである。つまり、本実施形態の継目無鋼管のミクロ組織(マトリックス(母相))は、フェライト及びパーライトからなる組織である。本実施形態の継目無鋼管のミクロ組織において、フェライトの面積率が90.0%未満であれば、応力腐食割れが発生しやすくなる。フェライト面積率が90.0%以上であれば、応力腐食割れが発生しにくくなる。したがって、フェライトの面積率は90.0%以上である。フェライト面積率の好ましい下限は92.0%であり、さらに好ましくは95.0%である。
本実施形態の継目無鋼管ではさらに、肉厚中央部でのフェライトの結晶粒度番号が8.0以下である。ここで、本明細書における結晶粒度番号は、JIS G0551(2013)に準拠した結晶粒度番号を意味する。
本実施形態の継目無鋼管の引張強度は、380MPa以上であり、降伏強度は230MPa以上である。引張強度が380MPa未満、又は、降伏強度が230MPa未満であれば、火力ボイラー用途及びガス化溶融炉等の排煙設備に代表される、硫酸腐食環境用途の継目無鋼管として適さない。引張強度が380MPa以上であり、かつ、降伏強度が230MPa以上であれば、上述の排煙設備に代表される硫酸腐食環境用途の継目無鋼管として十分な強度を有する。引張強度の好ましい下限は390MPaであり、さらに好ましくは400MPaである。引張強度の好ましい上限は特に限定されないが、たとえば、600MPaであり、580MPaであってもよい。降伏強度の好ましい下限は240MPaであり、さらに好ましくは250MPaである。降伏強度の上限は特に限定されないが、たとえば、450MPaであり、440MPaであってもよい。
本実施形態の継目無鋼管の製造方法の一例を説明する。本実施形態の継目無鋼管の製造方法は、素材準備工程と、熱間加工工程と、熱処理工程とを備える。
素材準備工程では、上述の化学組成を有する溶鋼を用いて、鋳造法により素材を製造する。素材は、溶鋼を用いて連続鋳造法により製造されるスラブやブルームであってもよいし、連続鋳造法により製造される丸ビレットであってもよい。丸ビレットは、長手方向に垂直な断面が円形状のビレットである。また、素材は、溶鋼を用いて造塊法により製造されるインゴットであってもよい。
熱間加工工程では、鋳造法により製造された素材に対して熱間加工を実施して、継目無鋼管を製造する。
減面率={1−(A1/A0)}×100
本実施形態の継目無鋼管の製造方法では、製管後の焼準処理は省略されてもよい。粒度番号を小さくする(つまり、粗粒にする)観点では、焼準処理を省略した方が有利である。しかしながら、機械的性質等の品質の安定性等の理由で、必要に応じて、焼準処理を実施してもよい。
本実施形態の継目無鋼管は、硫酸露点腐食が生じる燃焼排気ガス雰囲気、つまり、硫酸腐食環境での使用に適する。より具体的には、本実施形態の継目無鋼管は、ボイラーやガス化溶融炉の排煙設備に好適である。ここでいうボイラーは、たとえば、重油、石炭等の化石燃料、液化天然ガス等のガス燃料、都市ごみ等の一般廃棄物、木工屑、繊維屑、廃油、プラスチック、排タイヤ、医療廃棄物等の産業廃棄物、及び、下水汚泥などを燃焼させる設備である。また、排煙設備はたとえば、煙道ダクト、ケーシング、熱交換器、煙突等である。
[ミクロ組織観察試験]
各試験番号の継目無鋼管の肉厚中央部からサンプルを採取した。サンプルの表面のうち、継目無鋼管の長手方向に垂直な断面を観察面とした。観察面に対して鏡面研磨を実施した。鏡面研磨後のサンプルを、ナイタール腐食液に浸漬して、エッチングによる組織現出を行った。エッチングした観察面を、SEMを用いて、二次電子像にて観察した。1視野あたり400μm2程度(倍率5000倍)とし、5視野観察した。各視野において、コントラストから相(フェライト、パーライト)を特定した。各視野で特定されたフェライトの面積率(合計5視野)の算術平均値を、フェライトの面積率(%)と定義した。
各試験番号の継目無鋼管の肉厚中央部から、サンプルを採取した。採取されたサンプルを樹脂埋めして、サンプルの表面を研磨した。研磨するサンプルの表面(観察面)は、継目無鋼管の長手方向に垂直な断面とした。樹脂埋めしたサンプルの観察面を研磨した後、サンプルをナイタール腐食液に浸漬して、表面のフェライトの結晶粒界を現出させた。腐食した観察面の任意の5視野において、各視野のフェライトの結晶粒度番号を求めた。各視野の面積は、0.066mm2とした。JIS G0551(2013)の7.2に規定された結晶粒度標準図との比較により、各視野における結晶粒度番号を評価した。5視野で評価した粒度番号の算術平均値を、フェライト結晶粒の結晶粒度番号と定義した。得られたフェライト結晶粒度番号を、表2中の「結晶粒度番号」欄に示す。
試験番号1〜5の継目無鋼管の肉厚中央部から、JIS Z 2241(2011)に準拠した円弧状試験片を採取した。試験片の平行部の長さは50mmであり、平行部は、継目無鋼管の長手方向に平行であった。採取した試験片を用いて、常温(25℃)、大気中にて、JIS Z 2241(2011)に準拠した引張試験を実施した。引張試験により得られた応力−ひずみ曲線から、引張強度(MPa)及び降伏強度(MPa)を求めた。降伏強度は、0.2%オフセット耐力とした。得られた引張強度及び降伏強度を表2に示す。なお、試験番号5の引張強度及び降伏強度は得ていないものの、試験番号4と同じ化学組成であり、さらに、結晶粒度番号が試験番号4よりも高いことから、試験番号5の降伏強度及び引張強度は試験番号4よりも高いことは当業者に自明である。
各試験番号の継目無鋼管から、以下に示す各試験ごと(6時間硫酸腐食試験、24時間硫酸腐食試験、48時間硫酸腐食試験)に、肉厚のほぼ中央部から2つのクーポン試験片(各試験番号ごとに合計で6個のクーポン試験片)を採取した。クーポン試験片の幅は10mmであり、厚さは3mmであり、長さは40mmであった。
試験結果を表2及び図1〜図3に示す。表2を参照して、試験番号1〜5のミクロ組織はいずれも、フェライト面積率が90.0%以上であった。また、いずれの試験番号においても、引張強度は380MPa以上であり、降伏強度は230MPa以上であった。
Claims (7)
- 化学組成が、質量%で、
C:0.06%以下、
Si:0.55%以下、
Mn:0.70〜1.40%、
P:0.020%以下、
S:0.020%以下、
Cu:0.25〜0.45%、
Ni:0.50%以下、
Mo:0.20%以下、
Sb:0.05〜0.15%、及び、
残部がFe及び不純物、からなり、
フェライトの面積率が90.0%以上であり、
肉厚中央部でのフェライトの結晶粒度番号が8.0以下であり、
引張強度が380MPa以上であり、
降伏強度が230MPa以上である、
継目無鋼管。 - 請求項1に記載の継目無鋼管であって、
前記化学組成はさらに、
Nb:0.100%以下、
Ta:0.100%以下、
V:0.100%以下、
Ti:0.100%以下、及び、
W:1.00%以下、からなる群から選択される1元素又は2元素以上を含有する、
継目無鋼管。 - 請求項1又は請求項2に記載の継目無鋼管であって、
前記化学組成はさらに、
Ca:0.0100%以下、
Mg:0.0100%以下、
希土類元素:0.0100%以下、及び、
B:0.0050%以下、からなる群から選択される1元素又は2元素以上を含有する、
継目無鋼管。 - 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の継目無鋼管であって、
前記化学組成はさらに、
Sn:0.30%以下、及び、
Pb:0.30%以下、からなる群から選択される1元素又は2元素を含有する、
継目無鋼管。 - 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の継目無鋼管であって、
前記化学組成はさらに、
Se:0.100%以下、
Te:0.100%以下、及び、
Bi:0.100%以下、からなる群から選択される1元素又は2元素以上を含有する、
継目無鋼管。 - 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の継目無鋼管であって、
前記化学組成はさらに、
Ag:0.500%以下、及び、
Pd:0.100%以下、からなる群から選択される1元素又は2元素を含有する、
継目無鋼管。 - 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の継目無鋼管であって、
前記肉厚中央部でのフェライトの結晶粒度番号が6.0以下である、
継目無鋼管。
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- 2018-08-30 JP JP2018161305A patent/JP7091947B2/ja active Active
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