以下添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について、さらに具体的かつ詳細に説明する。各図において、矢印XおよびYは水平方向を示し、互いに直交する。矢印Zは上下方向を示す。
<用語の説明>
この明細書において、「記録」(「プリント」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。さらに人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かも問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録(プリント)」の定義と同様広く解釈されるべきものである。従って、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。なお、インクの成分については、特に限定はないが、本実施形態では、色材である顔料、水、樹脂を含む水性顔料インクを用いる場合を想定する。
またさらに、「記録要素(又はノズル)」とは、特にことわらない限り吐出口ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言うものとする。
以下に用いる記録ヘッド用の素子基板(ヘッド基板)とは、シリコン半導体からなる単なる基体を指し示すものではなく、各素子や配線等が設けられた構成を差し示すものである。
さらに、基板上とは、単に素子基板の上を指し示すだけでなく、素子基板の表面、表面近傍の素子基板内部側をも示すものである。また、本発明でいう「作り込み(built−in)」とは、別体の各素子を単に基体表面上に別体として配置することを指し示している言葉ではなく、各素子を半導体回路の製造工程等によって素子板上に一体的に形成、製造することを示すものである。
<記録システム>
図1は本発明の一実施形態に係る記録システム1を概略的に示した正面図である。記録システム1は、転写体2を介して記録媒体Pにインク像を転写することで記録物P’を製造する、枚葉式のインクジェットプリンタである。記録システム1は、記録装置1Aと、搬送装置1Bとを含む。本実施形態では、X方向、Y方向、Z方向が、それぞれ、記録システム1の幅方向(全長方向)、奥行き方向、高さ方向を示している。記録媒体PはX方向に搬送される。
<記録装置>
記録装置1Aは、記録ユニット3、転写ユニット4および周辺ユニット5A〜5D、および、供給ユニット6を含む。
<記録ユニット>
記録ユニット3は、複数の記録ヘッド30と、キャリッジ31とを含む。図1と図2を参照する。図2は記録ユニット3の斜視図である。記録ヘッド30は、転写体(中間転写体)2に液体インクを吐出し、転写体2上に記録画像のインク像を形成する。
本実施形態の場合、各記録ヘッド30は、Y方向に延設されたフルラインヘッドであり、使用可能な最大サイズの記録媒体の画像記録領域の幅分をカバーする範囲にノズルが配列されている。記録ヘッド30は、その下面に、ノズルが開口したインク吐出面を有しており、インク吐出面は、微小隙間(例えば数mm)を介して転写体2の表面と対向している。本実施形態の場合、転写体2は円軌道上を循環的に移動する構成であるため、複数の記録ヘッド30は、放射状に配置されている。
各ノズルには吐出素子が設けられている。吐出素子は、例えば、ノズル内に圧力を発生させてノズル内のインクを吐出させる素子であり、公知のインクジェットプリンタのインクジェットヘッドの技術が適用可能である。吐出素子としては、例えば電気熱変換体によりインクに膜沸騰を生じさせ気泡を形成することでインクを吐出する素子、電気機械変換体(ピエゾ素子)によってインクを吐出する素子、静電気を利用してインクを吐出する素子等が挙げられる。高速で高密度の記録の観点からは電気熱変換体を利用した吐出素子を用いることができる。
本実施形態の場合、記録ヘッド30は、9つ設けられている。各記録ヘッド30は、互いに異なる種類のインクを吐出する。異なる種類のインクとは、例えば、色材が異なるインクであり、イエロインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインク等のインクである。1つの記録ヘッド30は1種類のインクを吐出するが、1つの記録ヘッド30が複数種類のインクを吐出する構成であってもよい。このように複数の記録ヘッド30を設けた場合、そのうちの一部が色材を含まない無色のインク(例えば、クリアインクや転写促進液)を吐出してもよい。転写促進液を有色のインクが吐出された後に転写体2に吐出することで、転写体2に形成された画像の記録媒体への転写が促進され、転写後の転写体2への残留インクを大幅に低減させることができる。
キャリッジ31は、複数の記録ヘッド30を支持する。各記録ヘッド30は、インク吐出面側の端部がキャリッジ31に固定されている。これにより、インク吐出面と転写体2との表面の隙間をより精密に維持することができる。キャリッジ31は、案内部材RLの案内によって、記録ヘッド30を搭載しつつ変位可能に構成されている。本実施形態の場合、案内部材RLは、Y方向に延設されたレール部材であり、X方向に離間して一対設けられている。キャリッジ31のX方向の各側部にはスライド部32が設けられている。スライド部32は案内部材RLと係合し、案内部材RLに沿ってY方向にスライドする。
図3は記録ユニット3の変位態様を示しており、記録システム1の右側面を模式的に示した図である。記録システム1の後部には回復ユニット12が設けられている。回復ユニット12は記録ヘッド30の吐出性能を回復する機構を有する。そのような機構としては、例えば、記録ヘッド30のインク吐出面をキャッピングするキャップ機構、インク吐出面をワイピングするワイパ機構、インク吐出面から記録ヘッド30内のインクを負圧吸引する吸引機構を挙げることができる。
案内部材RLは、転写体2の側方から回復ユニット12に渡って延設されている。記録ユニット3は、案内部材RLの案内により、実線で記録ユニット3を示した吐出位置POS1と、破線で記録ユニット3を示した回復位置POS3との間で変位可能であり、不図示の駆動機構により移動される。
吐出位置POS1は、記録ユニット3が転写体2にインクを吐出する位置であり、記録ヘッド30のインク吐出面が転写体2の表面に対向する位置である。回復位置POS3は、吐出位置POS1から退避した位置であり、記録ユニット3が回復ユニット12上に位置する位置である。回復ユニット12は記録ユニット3が回復位置POS3に位置した場合に、記録ヘッド30に対する回復処理を実行可能である。本実施形態の場合、記録ユニット3が回復位置POS3に到達する前の移動途中においても回復処理を実行可能である。吐出位置POS1と回復位置POS3の間には予備回復位置POS2があり、回復ユニット12は記録ヘッド30が吐出位置POS1から回復位置POS3へ移動中に、予備回復位置POS2において記録ヘッド30に対する予備的な回復処理を実行可能である。
図11はキャリッジ31に搭載されている記録ヘッド30の取り付けの様子を示す図である。
9つの記録ヘッド30おのおのにはx方向とy方向とに直交するz軸周りの記録ヘッドの傾きを補正するためのアクチュエータ33が取り付けられている。アクチュエータ33と記録ヘッド30との間には摺動部とカム機構を有し(不図示)、アクチュエータ33を動作させることでz軸回りの記録ヘッドの傾きを調整することが可能である。
<転写ユニット>
図1を参照して転写ユニット4について説明する。転写ユニット4は、転写ドラム41と圧胴42とを含む。これらの胴は、Y方向の回転軸周りに回転する回転体であり、円筒形状の外周面を有している。図1において、転写ドラム41および圧胴42の各図形内に示した矢印は、これらの回転方向を示しており、転写ドラム41は時計回りに、圧胴42は反時計回りに回転する。
転写ドラム41は、その外周面に転写体2を支持する支持体である。転写体2は、転写ドラム41の外周面上に、周方向に連続的にあるいは間欠的に設けられる。連続的に設けられる場合、転写体2は無端の帯状に形成される。間欠的に設けられる場合、転写体2は、有端の帯状に複数のセグメントに分けて形成され、各セグメントは転写ドラム41の外周面に等ピッチで円弧状に配置することができる。
転写ドラム41の回転により、転写体2は円軌道上を循環的に移動する。転写ドラム41の回転位相により、転写体2の位置は、吐出前処理領域R1、吐出領域R2、吐出後処理領域R3およびR4、転写領域R5、転写後処理領域R6に区別することができる。転写体2はこれらの領域を循環的に通過する。
吐出前処理領域R1は、記録ユニット3によるインクの吐出前に転写体2に対する前処理を行う領域であり、周辺ユニット5Aによる処理が行われる領域である。本実施形態の場合、反応液が付与される。吐出領域R2は記録ユニット3が転写体2にインクを吐出してインク像を形成する形成領域である。吐出後処理領域R3およびR4はインクの吐出後にインク像に対する処理を行う処理領域であり、吐出後処理領域R3は周辺ユニット5Bによる処理が行われる領域であり、吐出後処理領域R4は周辺ユニット5Cによる処理が行われる領域である。転写領域R5は転写ユニット4により転写体2上のインク像が記録媒体Pに転写される領域である。転写後処理領域R6は、転写後に転写体2に対する後処理を行う領域であり、周辺ユニット5Dによる処理が行われる領域である。
本実施形態の場合、吐出領域R2は、一定の区間を有する領域である。他の領域R1、R3〜R6は、吐出領域R2に比べるとその区間は狭い。時計の文字盤に喩えると、本実施形態の場合、吐出前処理領域R1は概ね10時の位置であり、吐出領域R2は概ね11時から1時の範囲であり、吐出後処理領域R3は概ね2時の位置であり、吐出後処理領域R4は概ね4時の位置である。転写領域R5は概ね6時の位置であり、転写後処理領域R6は概ね8時の領域である。
転写体2は、単層から構成してもよいが、複数層の積層体としてもよい。複数層で構成する場合、例えば、表面層、弾性層、圧縮層の三層を含んでもよい。表面層はインク像が形成される画像形成面を有する最外層である。圧縮層を設けることで、圧縮層が変形を吸収し、局所的な圧力変動に対してその変動を分散し、高速記録時においても転写性を維持することができる。弾性層は表面層と圧縮層との間の層である。
表面層の材料としては、樹脂、セラミック等各種材料を適宜用いることができるが、耐久性等の点で圧縮弾性率の高い材料を用いることができる。具体的には、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素含有樹脂、加水分解性有機ケイ素化合物を縮合して得られる縮合物等が挙げられる。表面層には、反応液の濡れ性、画像の転写性等を向上させるために、表面処理を施して用いてもよい。表面処理としては、フレーム処理、コロナ処理、プラズマ処理、研磨処理、粗化処理、活性エネルギー線照射処理、オゾン処理、界面活性剤処理、シランカップリング処理などが挙げられる。これらを複数組み合わせてもよい。また、表面層に任意の表面形状を設けることもできる。
圧縮層の材料としては、例えばアクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。このようなゴム材料の成形時には、所定量の加硫剤、加硫促進剤等を配合し、さらに発泡剤、中空微粒子或いは食塩等の充填剤を必要に応じて配合し、多孔質のゴム材料としてもよい。これにより、様々な圧力変動に対して気泡部分が体積変化を伴って圧縮されるため、圧縮方向以外への変形が小さく、より安定した転写性、耐久性を得ることができる。多孔質のゴム材料としては、各気孔が互いに連続した連続気孔構造のものと、各気孔がそれぞれ独立した独立気孔構造のものがあるが、いずれの構造であってもよく、これらの構造を併用してもよい。
弾性層の部材としては、樹脂、セラミック等、各種材料を適宜用いることができる。加工特性等の点で、各種エラストマー材料、ゴム材料を用いることができる。具体的には、例えばフルオロシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム等が挙げられる。また、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、スチレンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン/プロピレン/ブタジエンのコポリマー、ニトリルブタジエンゴム等が挙げられる。特に、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴムは、圧縮永久ひずみが小さいため、寸法安定性、耐久性の面で有利である。また、温度による弾性率の変化が小さく、転写性の点でも有利である。
表面層と弾性層の間、弾性層と圧縮層の間には、これらを固定するために各種接着剤や両面テープを用いることもできる。また、転写体2は、転写ドラム41に装着する際の横伸びの抑制や、コシを保つために圧縮弾性率が高い補強層を含んでもよい。また、織布を補強層としてもよい。転写体2は前記材質による各層を任意に組み合わせて作製することができる。
圧胴42は、その外周面が転写体2に圧接される。圧胴42の外周面には、記録媒体Pの先端部を保持するグリップ機構が少なくとも一つ設けられている。グリップ機構は圧胴42の周方向に離間して複数設けてもよい。記録媒体Pは圧胴42の外周面に密接して搬送されつつ、圧胴42と転写体2とのニップ部を通過するときに、転写体2上のインク像が転写される。
転写ドラム41と圧胴42とを駆動するモータ等の駆動源は、これらに共通とし、歯車機構等の伝達機構により、駆動力を分配することができる。
<周辺ユニット>
周辺ユニット5A〜5Dは転写ドラム41の周囲に配置されている。本実施形態の場合、周辺ユニット5A〜5Dは、順に、付与ユニット、吸収ユニット、加熱ユニット、清掃ユニットである。
付与ユニット5Aは、記録ユニット3によるインクの吐出前に、転写体2上に反応液を付与する機構である。反応液は、インクを高粘度化する成分を含有する液体である。ここで、インクの高粘度化とは、インクを構成している色材や樹脂等がインクを高粘度化する成分と接触することによって化学的に反応し、あるいは物理的に吸着し、これによってインクの粘度の上昇が認められることである。このインクの高粘度化には、インク全体の粘度上昇が認められる場合のみならず、色材や樹脂等のインクを構成する成分の一部が凝集することにより局所的に粘度の上昇が生じる場合も含まれる。
インクを高粘度化する成分は、金属イオン、高分子凝集剤など、特に制限はないが、インクのpH変化を引き起こして、インク中の色材を凝集させる物質を用いることができ、有機酸を用いることができる。反応液の付与機構としては、例えば、ローラ、記録ヘッド、ダイコーティング装置(ダイコータ)、ブレードコーティング装置(ブレードコータ)などが挙げられる。転写体2に対するインクの吐出前に反応液を転写体2に付与しておくと、転写体2に達したインクを直ちに定着させることができる。これにより、隣接するインク同士が混ざり合うブリーディングを抑制することができる。
吸収ユニット5Bは、転写前に、転写体2上のインク像から液体成分を吸収する機構である。インク像の液体成分を減少させることで、記録媒体Pに記録される画像のにじみ等を抑制することができる。液体成分の減少を異なる視点で説明すれば、転写体2上のインク像を構成するインクを濃縮すると表現することもできる。インクを濃縮するとは、インクに含まれる液体成分が減少することによって、インクに含まれる色材や樹脂といった固形分の液体成分に対する含有割合が増加することを意味する。
吸収ユニット5Bは、例えば、インク像に接触してインク像の液体成分の量を減少させる液吸収部材を含む。液吸収部材はローラの外周面に形成されてもよいし、液吸収部材が無端のシート状に形成され、循環的に走行されるものでもよい。インク像の保護の点で、液吸収部材の移動速度を転写体2の周速度と同じにして液吸収部材を転写体2と同期して移動させてもよい。
液吸収部材は、インク像に接触する多孔質体を含んでもよい。液吸収部材へのインク固形分付着を抑制するため、インク像に接触する面の多孔質体の孔径は、10μm以下であってもよい。ここで、孔径とは平均直径のことを示し、公知の手段、例えば水銀圧入法や、窒素吸着法、SEM画像観察等で測定可能である。なお、液体成分は、一定の形を有さず、流動性があり、ほぼ一定の体積を有するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、インクや反応液に含まれる水や有機溶媒等が液体成分として挙げられる 。
加熱ユニット5Cは、転写前に、転写体2上のインク像を加熱する機構である。インク像を加熱することで、インク像中の樹脂が溶融し、記録媒体Pへの転写性を向上する。加熱温度は、樹脂の最低造膜温度(MFT)以上とすることができる。MFTは一般的に知られている手法、例えばJIS K 6828−2:2003や、ISO2115:1996に準拠した各装置で測定することが可能である。転写性及び画像の堅牢性の観点から、MFTよりも10℃以上高い温度で加熱してもよく、更に、20℃以上高い温度で加熱してもよい。加熱ユニット5Cは、例えば、赤外線等の各種ランプ、温風ファン等、公知の加熱デバイスを用いることができる。加熱効率の点で、赤外線ヒータを用いることができる。
清掃ユニット5Dは、転写後に転写体2上を清掃する機構である。清掃ユニット5Dは、転写体2上に残留したインクや、転写体2上のごみ等を除去する。清掃ユニット5Dは、例えば、多孔質部材を転写体2に接触させる方式、ブラシで転写体2の表面を擦る方式、ブレードで転写体2の表面をかきとる方式等の公知の方式を適宜用いることができる。また、清掃に用いる清掃部材は、ローラ形状、ウェブ形状等、公知の形状を用いることができる。
以上の通り、本実施形態では、付与ユニット5A、吸収ユニット5B、加熱ユニット5C、清掃ユニット5Dを周辺ユニットとして備えるが、これらの一部のユニットに転写体2の冷却機能を付与するか、あるいは、冷却ユニットを追加してもよい。本実施形態では、加熱ユニット5Cの熱により転写体2の温度が上昇する場合がある。記録ユニット3により転写体2にインクを吐出した後、インク像がインクの主溶剤である水の沸点を超えると、吸収ユニット5Bによる液体成分の吸収性能が低下する場合がある。吐出されたインクが水の沸点未満に維持されるように転写体2を冷却することで、液体成分の吸収性能を維持することができる。
冷却ユニットは、転写体2に送風する送風機構や、転写体2に部材(例えばローラ)を接触させ、この部材を空冷または水冷で冷却する機構であってもよい。また、清掃ユニット5Dの清掃部材を冷却する機構であってもよい。冷却タイミングは、転写後、反応液の付与前までの期間であってもよい。
<供給ユニット>
供給ユニット6は、記録ユニット3の各記録ヘッド30にインクを供給する機構である。供給ユニット6は記録システム1の後部側に設けられていてもよい。供給ユニット6は、インクの種類毎に、インクを貯留する貯留部TKを備える。貯留部TKは、メインタンクとサブタンクとによって構成されてもよい。各貯留部TKと各記録ヘッド30とは流路6aで連通し、貯留部TKから記録ヘッド30へインクが供給される。流路6aは、貯留部TKと記録ヘッド30との間でインクを循環させる流路であってもよく、供給ユニット6はインクを循環させるポンプ等を備えてもよい。流路6aの途中または貯留部TKには、インク中の気泡を脱気する脱気機構を設けてもよい。流路6aの途中または貯留部TKには、インクの液圧と大気圧との調整を行うバルブを設けてもよい。貯留部TK内のインク液面が、記録ヘッド30のインク吐出面よりも低い位置となるように、貯留部TKと記録ヘッド30のZ方向の高さが設計されてもよい。
<搬送装置>
搬送装置1Bは、記録媒体Pを転写ユニット4へ給送し、インク像が転写された記録物P’を転写ユニット4から排出する装置である。搬送装置1Bは、給送ユニット7、複数の搬送胴8、8a、二つのスプロケット8b、チェーン8cおよび回収ユニット8dを含む。図1において、搬送装置1Bの各構成の図形の内側の矢印はその構成の回転方向を示し、外側の矢印は記録媒体Pまたは記録物P’の搬送経路を示している。記録媒体Pは給送ユニット7から転写ユニット4へ搬送され、記録物P’は転写ユニット4から回収ユニット8dへ搬送される。給送ユニット7側を搬送方向で上流側と呼び、回収ユニット8d側を下流側と呼ぶ場合がある。
給送ユニット7は、複数の記録媒体Pが積載される積載部を含むと共に、積載部から一枚ずつ記録媒体Pを、最上流の搬送胴8に給送する給送機構を含む。各搬送胴8、8aはY方向の回転軸周りに回転する回転体であり、円筒形状の外周面を有している。各搬送胴8、8aの外周面には、記録媒体P(または記録物P’)の先端部を保持するグリップ機構が少なくとも一つ設けられている。各グリップ機構は、隣接する搬送胴間で記録媒体Pを受け渡されるように、その把持動作および解除動作が制御される。
二つの搬送胴8aは、記録媒体Pの反転用の搬送胴である。記録媒体Pを両面記録する場合、表面への転写後に、圧胴42から下流側に隣接する搬送胴8へ記録媒体Pを渡さずに、搬送胴8aに渡す。記録媒体Pは、二つの搬送胴8aを経由して表裏が反転され、圧胴42の上流側の搬送胴8を経由して再び圧胴42へ渡される。これにより、記録媒体Pの裏面が転写ドラム41に面することになり、裏面にインク像が転写される。
チェーン8cは、二つのスプロケット8b間に巻き回されている。二つのスプロケット8bの一方は駆動スプロケットであり他方は従動スプロケットである。駆動スプロケットの回転によりチェーン8cが循環的に走行する。チェーン8cには、その長手方向に離間して複数のグリップ機構が設けられている。グリップ機構は、記録物P’の端部を把持する。下流端に位置する搬送胴8からチェーン8cのグリップ機構に記録物P’が渡され、グリップ機構に把持された記録物P’はチェーン8cの走行により回収ユニット8dへ搬送され、把持が解除される。これにより記録物P’が回収ユニット8d内に積載される。
<後処理ユニット>
搬送装置1Bには、後処理ユニット10A、10Bが設けられている。後処理ユニット10A、10Bは転写ユニット4よりも下流側に配置され、記録物P’に対して後処理を行う機構である。後処理ユニット10Aは、記録物P’の表面に対する処理を行い、後処理ユニット10Bは、記録物P’の裏面に対する処理を行う。処理の内容としては、例えば、記録物P’の画像記録面に、画像の保護や艶出し等を目的としたコーティングを挙げることができる。コーティングの内容としては、例えば、液体の塗布、シートの溶着、ラミネート等を挙げることができる。
<検査ユニット>
搬送装置1Bには、検査ユニット9A、9Bが設けられている。検査ユニット9A、9Bは転写ユニット4よりも下流側に配置され、記録物P’の検査を行う機構である。
本実施形態の場合、検査ユニット9Aは、記録物P’に記録された画像を撮影する撮影装置であり、例えば、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子を含む。検査ユニット9Aは、連続的に行われる記録動作中に、記録画像を撮影する。検査ユニット9Aが撮影した画像に基づいて、記録画像の色味などの経時変化を確認し、画像データあるいは記録データの補正の可否を判断することができる。本実施形態の場合、検査ユニット9Aは、圧胴42の外周面に撮像範囲が設定されており、転写直後の記録画像を部分的に撮影可能に配置されている。検査ユニット9Aにより全ての記録画像の検査を行ってもよいし、所定数毎に検査を行ってもよい。
本実施形態の場合、検査ユニット9Bも、記録物P’に記録された画像を撮影する撮影装置であり、例えば、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子を含む。検査ユニット9Bは、テスト記録動作において記録画像を撮影する。検査ユニット9Bは、記録画像の全体を撮影し、検査ユニット9Bが撮影した画像に基づいて、記録データに関する各種の補正の基本設定を行うことができる。本実施形態の場合、チェーン8cで搬送される記録物P’を撮影する位置に配置されている。検査ユニット9Bにより記録画像を撮影する場合、チェーン8cの走行を一時的に停止して、その全体を撮影する。検査ユニット9Bは、記録物P’上を走査するスキャナであってもよい。
図8は検査ユニット9Bとその周辺部の構成を記録装置の上方から眺めた図であり、図9は検査ユニット9Bとその周辺部の構成を記録装置の手前から眺めた図である。
図8〜図9において、記録媒体Pは搬送方向801へ搬送され、検査ユニット9Bの近傍でその搬送を停止し、搬送方向と直交方向803へ走査可能なCCDセンサユニット802を利用して、画像を撮像する。記録媒体Pの先頭をチェーン8cに設置されたグリップ機構906で挟持し、チェーン8cを循環的に走行させることによって、記録媒体Pを検査ユニット9Bまで搬送する。記録媒体Pの領域805を撮像する際には、上下方向908に駆動可能な昇降台907を押さえつけ位置907Bへ移動させることにより、記録媒体PをCCDセンサ802に近接させて領域805の画像を撮像する。
<制御ユニット>
次に、記録システム1の制御ユニットについて説明する。図4および図5は記録システム1の制御ユニット13のブロック図である。制御ユニット13は、上位装置(DFE)HC2に通信可能に接続され、また、上位装置HC2はホスト装置HC1に通信可能に接続される。
ホスト装置HC1は、例えば、情報処理装置であるPCであってもよいし、サーバ装置であってもよい。また、ホスト装置HC1と上位装置HC2間の通信方法については、有線/無線のいずれでもよく、特に限定するものではない。
ホスト装置HC1では、記録画像の元になる原稿データが生成、あるいは保存される。ここでの原稿データは、例えば、文書ファイルや画像ファイル等の電子ファイルの形式で生成される。この原稿データは、上位装置HC2へ送信され、上位装置HC2では、受信した原稿データを制御ユニット13で利用可能なデータ形式(例えば、RGBで画像を表現するRGBデータ)に変換する。変換後のデータは、画像データとして上位装置HC2から制御ユニット13へ送信され、制御ユニット13は受信した画像データに基づき、記録動作を開始する。
本実施形態の場合、制御ユニット13は、メインコントローラ13Aと、エンジンコントローラ13Bとに大別される。メインコントローラ13Aは、処理部131、記憶部132、操作部133、画像処理部134、通信I/F(インタフェース)135、バッファ136および通信I/F137を含む。
処理部131は、CPU等のプロセッサであり、記憶部132に記憶されたプログラムを実行し、メインコントローラ13A全体の制御を行う。記憶部132は、RAM、ROM、ハードディスク、SSD等の記憶デバイスであり、CPU131(処理部)が実行するプログラムや、データを格納し、また、CPU131にワークエリアを提供する。記憶部132のほか、外付けの記憶部が更に設けられていてもよい。操作部133は、例えば、タッチパネル、キーボード、マウス等の入力デバイスであり、ユーザの指示を受け付ける。操作部133は、例えば、入力部と表示部が一体となった構成であってもよい。なお、ユーザ操作は、操作部133を介した入力に限定するものではなく、例えば、ホスト装置HC1や上位装置HC2から指示を受け付けるような構成であってもよい。
画像処理部134は例えば画像処理プロセッサを有する電子回路である。バッファ136は、例えば、RAM、ハードディスクやSSDである。通信I/F135は上位装置HC2との通信を行い、通信I/F137はエンジンコントローラ13Bとの通信を行う。図4において破線矢印は、画像データの処理の流れを例示している。上位装置HC2から通信IF135を介して受信された画像データは、バッファ136に蓄積される。画像処理部134はバッファ136から画像データを読み出し、読み出した画像データに所定の画像処理を施して、再びバッファ136に格納する。バッファ136に格納された画像処理後の画像データは、プリントエンジンが用いる記録データとして、通信I/F137からエンジンコントローラ13Bへ送信される。
図5に示すように、エンジンコントローラ13Bは、エンジン制御部14、15A〜15Eを含み、記録システム1が備えるセンサ群およびアクチュエータ群16の検知結果の取得および駆動制御を行う。これらの各制御部は、CPU等のプロセッサ、RAMやROM等の記憶デバイス、外部デバイスとのインタフェースを含む。なお、制御部の区分けは一例であり、一部の制御を更に細分化した複数の制御部で実行してもよいし、逆に、複数の制御部を統合して、それらの制御内容を一つの制御部で行うように構成してもよい。
エンジン制御部14は、エンジンコントローラ13Bの全体の制御を行う。記録制御部15Aは、メインコントローラ13Aから受信した記録データをラスタデータ等、記録ヘッド30の駆動に適したデータ形式に変換する。記録制御部15Aは、各記録ヘッド30の吐出制御を行う。
転写制御部15Bは、付与ユニット5Aの制御、吸収ユニット5Bの制御、加熱ユニット5Cの制御、及び清掃ユニット5Dの制御を行う。
信頼性制御部15Cは、供給ユニット6の制御、回復ユニット12の制御、および記録ユニット3を吐出位置POS1と回復位置POS3との間で移動させる駆動機構の制御を行う。
搬送制御部15Dは、転写ユニット4の駆動制御や、搬送装置1Bの制御を行う。検査制御部15Eは、検査ユニット9Bの制御、および検査ユニット9Aの制御を行う。
センサ群およびアクチュエータ群16のうち、センサ群には、可動部の位置や速度を検知するセンサ、温度を検知するセンサ、撮像素子等が含まれる。アクチュエータ群にはモータ、電磁ソレノイド、電磁バルブ等が含まれる。
<動作例>
図6は記録動作の例を模式的に示す図である。転写ドラム41および圧胴42が回転されつつ、以下の各工程が循環的に行われる。状態ST1に示すように、始めに転写体2上に付与ユニット5Aから反応液Lが付与される。転写体2上の反応液Lが付与された部位は転写ドラム41の回転に伴って移動していく。反応液Lが付与された部位が記録ヘッド30の下に到達すると、状態ST2に示すように記録ヘッド30から転写体2にインクが吐出される。これによりインク像IMが形成される。その際、吐出されるインクが転写体2上の反応液Lと混ざりあうことで、色材の凝集が促進される。吐出されるインクは、供給ユニット6の貯留部TKから記録ヘッド30に供給される。
転写体2上のインク像IMは転写体2の回転に伴って移動していく。インク像IMが吸収ユニット5Bに到達すると状態ST3に示すように吸収ユニット5Bによりインク像IMから液体成分が吸収される。インク像IMが加熱ユニット5Cに到達すると状態ST4に示すように加熱ユニット5Cによりインク像IMが加熱され、インク像IM中の樹脂が溶融し、インク像IMが造膜される。このようなインク像IMの形成に同期して、搬送装置1Bにより記録媒体Pが搬送される。
状態ST5に示すように、インク像IMと記録媒体Pとが転写体2と圧胴42とのニップ部に到達し、記録媒体Pにインク像IMが転写され、記録物P’が製造される。ニップ部を通過すると、記録物P’に記録された画像が検査ユニット9Aにより撮影され、記録画像が検査される。記録物P’は搬送装置1Bにより回収ユニット8dへ搬送される。
転写体2上のインク像IMが形成されていた部分は、清掃ユニット5Dに到達すると状態ST6に示すように清掃ユニット5Dにより清掃される。清掃後、転写体2は一回転したことになり、同様の手順で記録媒体Pへのインク像の転写が繰り返し行われる。上記の説明では理解を容易にするために、転写体2の一回転で一枚の記録媒体Pへのインク像IMの転写が一回行われるように説明したが、転写体2の一回転で複数枚の記録媒体Pへのインク像IMの転写が連続的に行うことができる。
このような記録動作を継続していくと各記録ヘッド30のメンテナンスが必要となる。
図7は各記録ヘッド30のメンテナンスの際の動作例を示している。状態ST11は、吐出位置POS1に記録ユニット3が位置している状態を示す。状態ST12は、記録ユニット3が予備回復位置POS2を通過している状態を示し、通過中に回復ユニット12により記録ユニット3の各記録ヘッド30の吐出性能を回復する処理が実行される。その後、状態ST13に示すように、記録ユニット3が回復位置POS3に位置した状態で、回復ユニット12により各記録ヘッド30の吐出性能を回復する処理が実行される。
<記録ヘッドの構成>
図12は記録ヘッド30をインク吐出面の側から眺めた図を示す図である。
図12に示すように、記録ヘッド30はそれぞれが平行四辺形の形状のヘッドチップ(ヘッド基板)10を複数、Y方向に繋ぎ合わせて構成されている。各ヘッドチップには24列のノズル列が配置されており、また各ノズル列を構成するノズルは解像度600dpiとなるピッチでX方向に斜めに配置されている。各ノズル列のノズルは解像度600dpiのピッチで配列されているが、各列間ではノズルは1/4ピッチずつノズル配列方向にずらして配置される。従って、4つの連続するノズル列を組み合わせて、例えば、列0〜3および、列4〜7など組み合わせて用いることでy方向に解像度2400dpiの記録を達成することができる。
また、図12において、blkで示されている番号は各ノズルに割り当てられたブロック番号を示す。この実施形態では、記録媒体上におけるX方向の記録解像度を1200dpiとし、ブロック番号の割り当てられたノズルを時分割して選択し、選択された記録素子(ヒータ)を駆動することにより画像の記録を行う。この時分割駆動では、y方向に連続する16個のノズル(seg0から15まで)を1つのグループとして、各ノズル列のノズルを複数のグループに分割し、各グループのノズルを順番に駆動する。結果として、同一のX方向1画素の記録に関してseg15はseg0に対して(15/16)×1200dpi相当の距離ずれるように遅れたタイミングで駆動される。X方向に隣接する各カラムに対して同じように時分割駆動で記録を行う。
図13はノズル配列と時分割駆動、着弾の様子を示す図である。
ここでは、時分割駆動における1グループを構成する連続する16個のノズルに関して説明する。図13(a)に示すように、16個のノズルはX方向にずらされて配置されている。このずれに伴って、インク液滴の着弾がずれる量の方向に対して解消するように、図13(b)に示すように、時分割駆動のタイミングを設定する。このような時分割駆動を実行することで、図13(c)に示すように、Y方向にインク着弾がまっすぐになる。このようにしてグループ内のノズルの数をXとするとき、駆動順番が1上がるにつれ1/Xずつずれるようにノズルが配置されている。
なお、図13では16個のノズルの時分割駆動によって着弾がずれる量に対して、16個のノズルがX方向に(1/16)×1200dpiに相当する量ずれて配置されている例を示した。ここで、時分割駆動における1グループのノズル数を一般にXをすれば、(1/X)画素に相当する量だけずれてX個のノズルが配置されるとも言える。しかしながら、16個のノズルのうち一部のノズルだけX方向にずれて配置されていても良い。
<記録ヘッドの位置ずれ補正方法>
ここでは、記録ヘッドの位置ズレ検知方法、補正方法について説明する。
図14は記録媒体と記録ヘッドと検査ユニットの位置関係と、テストパターンの記録位置とヘッド位置ずれ補正を説明するための図である。ここでは、記録媒体Pとしてカット紙を用い、ヘッド位置ずれ補正のためのテストパターン1002を記録する例を示している。なお、ここで使用するカット紙1枚にテストパターンは収まるが、カット紙のサイズによっては2回分のテストパターンを記録することがある。矢印1003は、記録ヘッド30のノズル配列方向を示している。
ここで説明する複数の記録ヘッド30はそれぞれは、記録媒体Pの搬送方向に関して下流側から、K(ブラック)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Y(イエロ)、クリアインクの5色に対応している。しかしながら、記録ヘッドが吐出するインクの色順が異なってもよいし、G(グレー)、LM(ライトマゼンタ)、LC(ライトシアン)等の他色に対応した記録ヘッドが増えたり、変化したりしてもよい。
検査ユニット9Bは、記録ヘッド30に対して、記録媒体Pの搬送方向の下流側に配置する。検査ユニット9Bは、記録ヘッド30の位置ずれ量を検出するために、記録媒体Pに記録されたテストパターン1002を読み取る。
各記録ヘッド30は上述のように複数のヘッドチップ10で構成されている。ここでは各記録ヘッド30は36個のヘッドチップ10で構成されているとするが、ヘッドチップの数が変化してもよい。ヘッドチップ10には24個のノズル列1005が配置されている。なお、ノズル列の数はこれに限定されるものではなく、他の数でも良い。ただし、上述のように、4列のノズル列により記録解像度2400dpiを達成していることを考慮すると、ノズル列数は4の整数倍であることが好ましい。
次に、ヘッド位置ずれの種類について説明する。これらのずれはいずれも、記録ヘッドのヘッドチップやノズルの製造誤差、もしくは、ヘッドチップ配置誤差等に起因する。
ヘッドチップ10内のノズル列1005間の列間ずれ、ヘッドチップ10のチップ間ずれ、複数の記録ヘッド30の色間ずれ等がある。このようなずれがあると、インク液滴の着弾位置が理想位置からずれるため記録画像の品位が悪化する。ヘッド位置ずれ補正は、ヘッドチップ10のインク吐出タイミング、もしくは、吐出ノズルを変化させることで、インクの着弾位置を補正する機能である。
ここでは、矢印1003と直交方向のずれについては、記録ヘッド30を構成する各ヘッドチップ10の吐出タイミングを変化させて形成されたドットの位置ずれを補正する。矢印1003方向のずれについては、記録データを変化させることによって位置ずれを補正する。記録ヘッド30の傾きについては、前述したように記録ヘッド30をアクチュエータ33によって回転することで位置ずれを補正する。
テストパターン1002は、記録ヘッド30のヘッド位置ずれ補正をするためのテストパターンである。また、テストパターン1002は、5つの記録ヘッド30に対応してテストパターン1006〜1010を含み、それぞれは各記録ヘッド30に対応する位置ずれ量を検出するためのテストパターンである。言い換えると、テストパターン1006〜1010はそれぞれ、Kインク、Cインク、Mインク、Yインク、クリアインクに対応するテストパターンである。これらテストパターンを用いて、対応する記録ヘッド30のヘッド傾き量と、各ヘッドチップの各ノズル列間の列間ずれ量と、各ヘッドチップ間のチップ間ずれ量を算出する。
なお、テストパターン1002を構成するテストパターンは5つの記録ヘッド分から増減してもよいし、テストパターンの順番が変わってもよい。また、テストパターン1011は複数の記録ヘッド間の色間ずれ量を算出するためのテストパターンである。この点については、図17を参照して後で詳細に説明する。
図14は、Kインクに対応するテストパターン1006の一部を拡大したパターン1014が示されているが、C,M,Yインクに対応するテストパターン1007〜1009の拡大パターン(不図示)も、テストパターン1006と同等の形状である。また、クリアインクに対応するテストパターン1010の一部を拡大したパターン1015も示されている。なお、これらのパターンは一例であり、記録ヘッドの種類による各テストパターンとインク色の対応関係は変更してもよい。
され、パターン1015は、パターン1014と比較しても、それぞれが大型化したパターンを用いているため、記録媒体Pの下地色と記録色であるクリアインクの輝度値差が小さくても、検出精度を上げることが可能である。なお、パターン1014において、領域1016は、K、C、M、Yインクそれぞれを吐出するヘッドチップ1個分に対応するパターンであり、パターン1015において、領域1019は、クリアインクを吐出するヘッドチップ1個分に対応するパターンである。
パターン1014、1015それぞれにおいて、黒色で表現されている領域は、対応の記録色で記録した領域である。また、白色で表現されている領域は記録媒体Pの下地色であり、記録色で記録されていない領域である。
記録ヘッド30では、図12で示したように、複数のヘッドチップ10が直線的に並べられた構成であり、ヘッドチップ10ごとに、ヘッドチップ10に対応したパターン1016又は1019をノズル列方向1003と平行して直線的に記録する。
ここで、ヘッドチップに対応したパターン1016、1019の構成と記録方法について説明する。
ヘッドチップに対応したパターン1016は、検知マーク1017と、アライメントマーク1018と、パターンマッチング用パターン1022とで構成される。一方、ヘッドチップに対応したパターン1019は、検知マーク1020と、アライメントマーク1021と、パターンマッチング用パターン1023とで構成される
検知マーク1017、1020は画像解析処理で、読取画像におけるヘッドチップに対応したパターンを検出するために用いられるパターンであり、また、図示のような矩形領域に記録されるパターンである。各ヘッドチップは複数のノズル列を備えるので、検知マーク1017、1020は、複数のノズル列によるインク吐出によって記録される。複数のノズル列を使用して記録を行うことで、たとえ吐出不良ノズルがある場合でも、他のノズル列のノズルからインク吐出がなされるため、吐出不良ノズルによる検知パターンの欠損が低減される。これにより、画像解析処理で安定して検知マークを検出することができる。
アライメントマーク1018、1021は、画像解析処理で、パターンマッチング用パターン1022、1023の解析領域の基準位置を算出するためのパターンである。アライメントマーク1018、1021は、図示のような矩形領域に記録されるパターンであり、ノズル列に対応したパターンマッチング用パターン1022、1023ごとに、複数列のノズル列からのインク吐出によって記録される。
パターンマッチング用パターン1022、1023は、画像解析処理で、ヘッドの位置ずれを検出するためのパターンであり、記録色や算出するずれ量の種類に応じて、パターンマッチング用パターン1022、1023のいずれかを使い分ける。
クリアインクで形成するパターンは記録媒体Pの下地色と記録色の輝度値の信号差が出づらいため、大型化したパターンマッチング用パターン1023を用いて位置ずれを検出する。
図15は、パターンマッチング用パターン1022、1023の詳細レイアウトを示した図である。
図15において、YPはパターンマッチング用パターン1022の縦方向の画素数を示し、XPは横方向の画素数を示し、YPLはパターンマッチング用パターン1023の縦方向の画素数を示し、XPLは横方向の画素数を示している。
この実施形態において、YPはノズル列方向1003と直交方向、XPはノズル列方向1003と平行方向であり、どちらも1200dpi単位でその値は82画素である。また、YPLはノズル列方向1003と直交方向、XPLはノズル列方向1003と平行方向であり、どちらも1200dpi単位でその値は210画素である。なお、これらの画素数として別の値を用いてもよい。
図16A〜図16Bはヘッドチップに対応したパターン1016、1019と吐出ノズルの対応について示した図である。
ヘッドチップ10のノズル列1005は複数のノズルから構成され、ここでは、1つのヘッドチップには24個のノズル列が配置されている。ヘッドチップ1つ分のテストパターンは、ヘッドチップの各ノズル列のノズルのうち、破線1207〜1208で示す範囲内のノズルを使用して記録される。なお、この範囲はヘッドチップの構成によって異なってもよい。
ヘッドチップ1つ分のパターン1016のパターンマッチング用パターンは、テストパターン1201内の各数字のノズル列に対応しているパターンであり、対応する数字のノズル列を使用して記録される。テストパターン1201の記録を行うノズルの配置によって、0列のパターンを基準に残りの各ノズルとの相対位置から位置ずれを算出する。しかし、例外として領域1202で示したパターンマッチング用パターン1022は左隣りのヘッドチップのノズル20列で記録したパターンマッチング用パターンである。従って、検査対象自身のヘッドチップで記録したパターンではないため、ノズル列の位置ずれ算出では用いない。
ヘッドチップ1つにつきパターン1016を記録し、各パターン1016の1ノズル分のパターンマッチング用パターン1つから各チップの製造誤差による位置ずれと、ヘッドの傾きを算出する。各ヘッドチップのチップ間ずれと、ヘッドの傾きは、記録媒体P上で記録できた左端または右端より1つ内側のパターン1016に対応するヘッドチップを基準のチップとして算出する。また、記録媒体Pはそのサイズが可変である。これにより、記録媒体Pの左端または右端のパターン1016が欠けたパターンとなることがある。このようなパターンのときは、領域1203以上の長さのパターンが記録されている場合、右端領域1204、左端領域1202を算出用のパターンとして選択する。
記録ヘッドによっては、ヘッドチップ1つ分のテストパターンはパターン1016ではなく、領域1023に示すようなレイアウトになることがある。このときのパターンマッチング用パターン1022それぞれは、領域1205を記録するノズルに対応している。領域1205のPは複数のノズルでパターンマッチング用パターン1022を記録することを意味しており、これを用いてその記録ヘッドの傾きを算出する。
ヘッドチップ1つ分のテストパターン1019のパターンマッチング用パターン1023それぞれは、領域1206を記録するノズルに対応している。領域1206のPは複数のノズルでパターンマッチング用パターン1023を記録することを意味しており、これを用いて記録ヘッドの傾きを算出する。
ヘッドチップ1つ分のパターン1016、1023は、記録媒体Pへの記録タイミングを、ノズルの製造誤差とヘッドチップの製造誤差の交差を加味した量をずらして記録されている。よって、この誤差によるテストパターンの重なりが生じないようにしている。
図17は記録ヘッド間の色間ずれ補正計算を行うテストパターンと記録ヘッドとヘッドチップの対応について示した図である。
図17に示すテストパターン1301を用いて記録ヘッド30同士の位置誤差を算出する。この算出のために、対応するインク色を吐出する記録ヘッドを用いてパターン1302を記録する。各記録ヘッドで複数のヘッドチップ10からパターンの記録に使用する1つのヘッドチップ1303を選択する。ここでは、ヘッドチップ1303を使って、テストパターン1011を記録する。さて、テストパターン1301において、黒色で表現されている箇所が、対応の記録色で記録したパターンの箇所であり、白色で表現されている箇所が、記録媒体Pの地色の箇所を示す。
図17において、K、C、M、Yで示された各インクでの記録にはパターンマッチング用パターン1022を使用し、Tで示されたクリアインクでの記録にはパターンマッチング用パターン1023を使用する。ここでは、Kインクを吐出する記録ヘッドを基準ヘッドとしてパターン1302を記録し、各記録ヘッドの位置ずれを算出する。基準ヘッドのパターンは、ずれを算出する対象の記録色のパターンマッチング用パターンと同様のパターンを使用する。なお、色によって対応するパターンマッチング用パターンを変更してもよい。
なお、記録ヘッドの色間ずれを算出するテストパターン1301は記録媒体Pへの記録タイミングを、記録ヘッドの色間ずれの最大ずれ量を超えてずらして記録している。このように、各記録ヘッドの記録タイミングをずらすことで、テストパターンの重なりが生じないようにしている。
・ノズル列間のずれ量の算出
図18は、ノズル列間のずれ量の算出方法を示す図である。
この実施形態では、1つのヘッドチップ内に24個のノズル列が配置されており、記録媒体Pの搬送方向に関して下流側から数えて最初のノズル列を0列目、最後のノズル列を23列目として、各ノズル列を番号付けしている。以下、これらのノズル列をそれぞれ、ノズル列0〜23と呼ぶ。
ここでは、図18に示したテストパターン1201のレイアウトに従って記録されたパターンをスキャナで読取って得られたスキャン画像を用いて、ノズル列間のずれ量を算出する方法について説明する。
テストパターン1201において、各矩形内に示された数値は、図16Aを参照して説明したように、パターンマッチング用パターンの記録で用いたノズル列の番号を示している。例えば、パターンマッチング用パターン1405は、ノズル列0を用いて記録していることを示している。
以降、ノズル列xを用いて記録したパターンを列xパターンと呼ぶ。
図18に示すように、テストパターン1201を、領域1401〜1404からなる4つの領域に分割する。領域1401では、0列パターン1405及び1406を基準とする。同様に、領域1402、1403、1404においても、列0パターン1407及び1408、1409及び1410、1411及び1412を、それぞれ基準とする。領域1401〜1404のそれぞれで、2つの列0パターンを基準として、他のノズル列を用いて記録したパターンとのずれ量を算出する。
例として、ノズル列0とノズル列9のずれ量を算出する方法について述べる。
図18の下側に示した図において、列0パターン1414は、領域1401の列0パターン1405であり、列0パターン1415は領域1401の列0パターン1406であり、それぞれ基準となる列0パターンである。また、列9パターン1416は、領域1401に記録された列9パターンである。
ノズル列0とノズル列9で各パターンを記録した時、着弾位置ずれが全くない場合は、列0パターン1414と1415を結ぶ直線上に列9パターンが記録されるようにパターンが配置される。このような着弾位置ずれが全くない場合、理想位置で列9パターン1418が記録される。
さて、列0パターン1416の記録位置1416と理想位置に記録された列9パターン1418との間のずれ量は、ノズル列0に対するノズル列9の位置ずれ量となる。そのずれ量は、横方向成分1417、縦方向成分1419で表される。
ずれ量の縦方向成分1419は、列0パターン1414と1415を結ぶ直線に対して、列9パターン1416から引いた垂線の長さである。よって、ずれ量の縦方向成分1419は、列0パターン1414と1415、列9パターン1416の位置から算出可能であり、同様にずれ量の横方向成分1417も、これらの位置から求めることができる。
以上に述べた方法を適用することで、列0パターンを基準として、列1〜列23パターンのずれ量を算出し、ノズル列0に対するノズル列1〜23の位置ずれ量を求めることができる。
・ヘッドチップ間のずれ量と記録ヘッドの傾き量の算出
図19はヘッドチップ間のX方向のずれ量、及び、記録ヘッドの傾き量の算出方法を示した図である。
ここでは、1つの記録ヘッドに36個のヘッドチップが配置されており、記録装置の奥行方向(図1における紙面と直角方向)に関し、奥側から数えて最初のヘッドチップをチップ0、最後をチップ35として、各ヘッドチップを番号付けしている。図19においては、右側が記録装置の奥側、左側が記録装置の手前側である。
図19を参照して、テストパターン1201のレイアウトに従って、記録されたパターンをスキャナによって読み取って得られたスキャン画像を用いて、記録ヘッドの傾き量、ヘッドチップ間のずれ量を算出する方法について説明する。
図19には、チップ35を用いてテストパターン1201のレイアウトに従って記録されたパターン1501が示されており、そのパターンの中に、0列のノズル列で記録されたタイルパターン1502が含まれる。
チップ35により記録されたパターン1502とチップ0により記録されたパターン1509の重心を結ぶ線を傾きを求める基準線1510から得られる傾き1511は検査ユニット9Bのセンサに対する傾きを示す。各チップ間のX方向のずれ量は各チップの0列のノズル列により記録されたタイルパターンの重心から基準線1510に降ろした垂線の距離となる。
例えば、チップ34の0列のノズル列で記録されたタイルパターン1503の重心から基準線1510に降ろした垂線の距離1504がチップ34のチップ間のX方向のずれ量となる。同様に、チップ18の0列のノズル列で記録されたタイルパターン1505の重心から基準線1510に降ろした垂線の距離1506がチップ18のチップ間のX方向のずれ量となる。同様に、チップ1の0列のノズル列で記録されたタイルパターン1507の重心から基準線1510に降ろした垂線の距離1508がチップ1のチップ間のX方向のずれ量となる。図示していない他のチップに関しても同様に算出する。
記録ヘッド間の傾き量は基準ヘッドの傾き量と各ヘッドの傾き量から算出する。
ここでは、基準ヘッドをKインクを吐出する記録ヘッドとする。
各記録ヘッドの基準線から得られる検査ユニット9Bのセンサに対する傾きをθ_K、θ_C、θ_M、θ_Y、θ_Tとすると、
Cインク用の記録ヘッドの基準ヘッドKに対する傾き =θ_C−θ_K
Mインク用の記録ヘッドの基準ヘッドKに対する傾き =θ_M−θ_K
Yインク用の記録ヘッドの基準ヘッドKに対する傾き =θ_Y−θ_K
クリアインク用の記録ヘッドの基準ヘッドKに対する傾き=θ_T−θ_K
となる。そして、上記のように求めたCインク、Mインク、Yインク、クリアインク用の各記録ヘッドの傾き量に応じて、アクチュエータ33を動作させて各記録ヘッドの傾きを補正する。各記録ヘッドのヘッドチップ間のX方向のずれに対する補正は、上記求めたチップ間のずれ量に応じて吐出タイミングを変化させることで補正する。
図20は記録ヘッドの傾きとヘッドチップ間のX方向のずれを補正後の状態を示す図である。ここで、図20(a)は基準ヘッドKを示し、図20(b)は補正前の記録ヘッドを示している。点線は図18で示した基準線1510である。図20(c)はヘッドチップ間ずれ補正後の基準ヘッドKを示している。ここでは、基準ヘッドに対しては傾きの補正は行わない。図20(d)は傾きとヘッドチップ間のX方向のずれを補正後の記録ヘッドを示している。
上述した課題のため、各ヘッドチップの傾きの補正は行わない。X方向において、各ヘッドチップにおける傾きによる記録位置のずれが、1画素の長さ未満(1画素=1200dpi)のずれとなるようにヘッドチップの製造公差で担保する。このようにして、記録ヘッドの傾きを補正しながら、文字、罫線の品位向上を実現する。
なお、上記の説明では複数の記録ヘッドを備え、その1つである基準ヘッドKに対する各記録ヘッドの傾きを補正する例を示した。しかしながら、例えば、1つの記録ヘッドを備えた記録装置においては、1つの記録ヘッドの基準線から得られる検査ユニット9Bのセンサに対する傾きをスキャナに対する傾きを補正しても良い。
・記録ヘッド間のずれ量(色間ずれ)
図21は各記録ヘッド間のずれ量の算出方法を示した図である。
以下の説明において、記録媒体Pの搬送方向の下流側から数えて最初のKインクを吐出する記録ヘッドをヘッドKとし、Cインク、Mインク、Yインクを吐出する記録ヘッドをそれぞれ、ヘッドC、ヘッドM、ヘッドYと呼ぶ。また、クリアインクを吐出する記録ヘッドをヘッドTを呼ぶ。
ここでは、テストパターン1302のレイアウトに従って記録されたパターンをスキャナによって読取って得られたスキャン画像を用いて、各記録ヘッド間のずれ量(以後、色間ずれという)を算出する方法について説明する。
図21に示すように、複数のヘッドチップから選択又は指定されたヘッドチップ1303によってテストパターン1011が記録されるが、色間ずれ量を算出するためにはテストパターン1301、1302が用いられる。ここでは、図18で説明したチップ18が選択される。また、説明のため、テストパターン1301にはその概要となるパターンが図示され、テストパターン1302にはどのような色のインク(即ち、どの記録ヘッド)が用いられるのかが示されている。
テストパターン1302に示されているように、パターン1601〜10は基準ヘッドであるヘッドKで記録したパターンである。それ以外のインク色のパターンはそれぞれ記録ヘッド間の位置ずれの算出対象である色である。ここでは、Cインク、Mインク、Yインク、T(クリアインク)によって記録されるパターンとしているが、記録色の数は増減してもよい。テストパターン1302では、他の記録ヘッドによるパターンが入る領域を確保している。
ここでは、Cヘッド、Mヘッド、Yヘッドは、図15で示したパターンマッチング用パターン1022を記録する。よって、これらに対応する基準パターンのKパターン1601〜1606にもパターンマッチング用パターン1022が記録される。
一方、クリアインクによるパターン1617には、図15で示したパターンマッチング用パターン1023が記録される。よって、これに対応する基準パターンのKパターン1607、1608、1609、1610にもパターンマッチング用パターン1023が記録される。
なお、基準ヘッドと色間ずれの算出対象となる記録ヘッドは、同種のパターンマッチング用パターンを使用する。
この実施形態では、基準ヘッドと他の記録ヘッドとの間のずれ量を算出する際に、各記録ヘッドに対して同様の方法を用いて算出する。ここでは、その例としてヘッドKとヘッドT間のずれ量を算出する方法について、図21の下側に示した図を参照して説明する。
図21の下側に示した図において、パターン1620は図21の上側に示した図のパターン1607であり、同様にパターン1621はパターン1608であり、これらはヘッドKのチップ18で記録した基準ヘッドのパターンである。また、パターン1622はパターン1617であり、ヘッドTのチップ18でパターンであり、ずれ量の算出対象となる記録ヘッドのパターンである。
ヘッドKとヘッドTで各パターンを記録した時、着弾位置ずれが全くない場合は、パターン1620と1621を結ぶ直線上にヘッドTによるパターンが記録されるようにパターンを配置している。従って、着弾位置ずれが全くない理想位置には、ヘッドTによりパターン1624が記録される。
ここでは、スキャン画像上に記録されたパターン1622と理想位置に記録されるパターン1624との間のずれは、ヘッドKに対してヘッドTに相対的な位置ずれが生じているとし、そのずれ量1625が図21には示されている。ずれ量1625は、パターン1620と1621を結ぶ直線に対して、パターン1622から引いた垂線の長さである。よって、ずれ量1625は、パターン1620、1621、1622の位置から求めることができる。また、パターン1620と1621を結ぶ直線と直交する方向にパターン1624から直線を引いた時、パターン1624と1622のずれ量1626を求めることができる。
この実施形態では、記録ヘッド位置ずれ補正の計算は、ヘッド位置のずれ量1625と直交する方向についても実行する。従って、ヘッド位置ずれ量はずれ量1625と1626についての両方向について計算される。
以上に示した方法を適用すれば、基準ヘッド(ヘッドK)に対して、ヘッドK以外の各記録ヘッドの色間ずれ量をそれぞれ求めることができる。
・マーク検出
図22はヘッドチップに対応したマーク検出処理を示した図である。
ここでは、ズレ量算出のテストパターンの読取画像から、ヘッドチップに対応したパターンの検知マークを検出する処理について説明する。
図22は、図16に示したパターン1016で示すような、各ヘッドチップに対応したパターンを示している。この実施形態において、ヘッドチップに対応したテストパターンは、図16に示したパターン1016、1019、1023の3種類があるが、検出処理は同様である。また、記録ヘッド30同士の位置誤差を算出するための、図17に示したテストパターン1301についても検出処理は同様である。ここでは、例として、図16に示したパターン1016を用いて説明する。
マーク検知処理は、大きく分けて3つのステップがある。
第1ステップでは、検知マーク1017を検出する。検知マーク1017の検出位置に基づいて、ヘッドチップ1つ分のテストパターンの位置を推定する。
第2ステップでは、テストパターンの推定位置に基づいて、アライメントマーク1703を検出する。アライメントマーク1703は、各パターンマッチング用パターンの近傍に記録されているため、アライメントマーク1703の検出位置から対応するパターンマッチング用パターン位置を推定する。
第3ステップでは、パターンマッチング用パターン推定位置に基づいて、パターンマッチングを用いたパターン位置検出を行う。
第1ステップにおける、検知マーク1017を検出する処理を説明する。
この処理は、読取画像を構成するRGB各色3成分のデータから、検出対象のパターンの記録ヘッドの記録色で最も濃度が高くなる色成分の輝度値を使用する。例えば、C(シアン)の場合はR成分、M(マゼンタ)の場合はG成分、Y(イエロ)の場合はB成分を使用する。なお、K(ブラック)のように、全ての色成分で高い濃度となる記録色の場合は、いずれかの色成分を指定して使用する。
図22において、領域1705は検知マーク1017の一部を拡大した部分を表したものである。検知マーク1017は、読取画像の所定領域の平均濃度に基づき検出する。検知マーク検出領域1706は、平均濃度を取得する領域である。平均濃度が所定濃度以上の場合、該領域1706を検知マークの領域として判断し、検知マーク検出領域1706の中心位置を検知マーク検出位置1707とする。領域や所定濃度の設定は変更してもよい。
続いて、検知マーク1017の左上端位置と右上端位置を検出する。領域1708は検知マーク1017の左上端部を、領域1710は右上端部をそれぞれ拡大した部分を表したものである。検知マーク検出位置1707から所定濃度以上の領域を走査し、所定濃度以上の領域の左上端部1709を検知マーク左上端位置とする。同様に、その所定濃度以上の領域の右上端部1711を検知マーク右上端位置とする。検知マーク左上端位置1709に基づき決定した位置を起点に、所定領域の重心を計算することでアライメントマーク検出範囲を推定する。
このようにして、図14に示したパターン1016の検知マーク1017を検出することで、アライメントマーク1703等の検出範囲を推定することができる。
アライメントマーク1703の検出処理についても、検知マーク1017の検出処理と同様で、所定濃度以上の領域を走査し、濃度領域の重心計算により、アライメントマーク位置を検出する。
続いて、パターンマッチング用パターンの位置を推定する。領域1704はパターンマッチング用パターン左上端位置を示す領域である。また、検知マークの検知結果を、このパターンはどの記録ヘッドのどのチップに対応するテストパターンであるかを判断に使用する。パターンマッチング用パターンは上記の処理によって、大体の位置を決めた後、パターンマッチング処理を含む位置検出処理を行うことによって、最終的な画像上の位置を検出する。
このパターンマッチング用パターンの画像上の位置が、ヘッド位置ずれ補正における各種ずれ量(ノズル列間の製造誤差、チップ間の製造誤差、記録ヘッドの傾き、記録ヘッド間の位置ずれ)計算で使用する距離を算出する位置である。
図23はヘッド位置ずれの読取と解析の手順を示すフローチャート、つまり、記録媒体に記録したヘッド位置ずれ補正のためのテストパターンを用いて行うヘッド位置ずれ補正処理のフローチャートである。
まずステップS101では、検査ユニット9Bは、記録媒体Pに記録されたヘッド位置ずれ補正算出用のテストパターン1002を読み取る。このとき、検査ユニット9Bは、白基準板を読み取って生成したシェーディングデータを用いてシェーディング補正を行ってテストパターン1002を読み取る。
ここで、検査ユニット9Bによるテストパターン1002の読取開始タイミングは、テストパターンの記録開始から所定量の時間を待ちあわせた時間としてもよいし、テストパターンの記録終了からの所定量、記録媒体Pを搬送後の時間としてもよい。一方、読取終了タイミングは、読取開始から所定の副走査ライン数を読取終了後とする。
ステップS102では、検査制御部15Eは、ステップS101で読取ったテストパターン1002の読取画像から、各ヘッドチップ10に対応したパターンを検出する。各ヘッドチップ10に対応したパターンを検出する処理については、図21を参照して詳細に説明した通りである。
また、読取画像を表現するRGB各色成分データの信号値で各記録ヘッド30の各ヘッドチップ10に対応する検知マークを検知し、最終的にパターンマッチング用パターン1022、1023を検出する。さらに、各ヘッドチップ10に対応したパターンは、各記録ヘッド30の各ヘッドチップ10に対応したパターン1016、1019、1023のいずれか、または記録ヘッドの位置ずれ用のパターン1301に分かれる。
ステップS103では、検査制御部15Eは、ステップS102で検出した各記録ヘッド30の各ヘッドチップ10に対応したパターンを用いて、各記録ヘッド30の各ヘッドチップ10のノズル列間ずれ補正の計算を行う。さらに、各記録ヘッド30の各ヘッドチップ10のチップ間ずれ補正の計算と、各記録ヘッド30の傾き補正の計算を実行する。
ステップS104では、検査制御部15Eは、ステップS102で検出した記録ヘッド30の位置ずれ用のパターン1301を用いて、各記録ヘッド30の位置ずれ補正の計算を実行する。
従って以上説明した実施形態に従えば、各記録ヘッドの傾きや各ヘッドチップのヒータを時分割駆動することに係る記録づれを適切に補正して高品位な記録を実現することができる。
<他の実施形態>
上記実施形態では、記録ユニット3が複数の記録ヘッド30を有するが、一つの記録ヘッド30を有してもよい。記録ヘッド30はフルラインヘッドでなくてもよく、記録ヘッド30をY方向に走査させながらインク像を形成するシリアル方式であってもよい。
記録媒体Pの搬送機構は、ローラ対によって記録媒体Pを挟持して搬送する方式等、他の方式であってもよい。ローラ対によって記録媒体Pを搬送する方式等においては、記録媒体Pとしてロールシートを用いてもよく、転写後にロールシートをカットして記録物P’を製造してもよい。
上記実施形態では、転写体2を転写ドラム41の外周面に設けたが、転写体2を無端の帯状に形成し、循環的に走行させる方式等、他の方式であってもよい。
さらに上記実施形態の記録システムは転写体に画像を形成し、その画像を記録媒体に転写する方式を採用していたが本発明はこれによって限定されるものではない。例えば、記録ヘッドから直接にインクを記録媒体に吐出して画像を形成する方式を採用した記録装置に対しても本発明は適用可能である。この場合、用いられる記録ヘッドはフルラインヘッドでも良いし、往復移動するシリアルタイプの記録ヘッドでも良い。