JP2020016003A - 難燃生地および積層難燃生地および繊維製品 - Google Patents
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Abstract
【課題】火炎または熱によって曝露された際に生地の両面に凹凸構造が発現し、難燃性と遮熱性とを有する、難燃生地および積層難燃生地および繊維製品を提供する。【解決手段】アラミド繊維を含む糸1とアラミド繊維を含む糸2とを含む難燃生地であって、生地の表面に糸1が露出し、かつ生地の裏面に糸2が露出する領域Aと、生地の表面に糸2が露出し、かつ生地の裏面に糸1が露出する領域Bとを有することを特徴とする難燃生地。【選択図】図2
Description
本発明は、火炎または熱によって曝露された際に生地の両面に凹凸構造が発現し、難燃性と遮熱性とを有する、難燃生地および積層難燃生地および繊維製品に関する。
従来、消防服などの防護服に用いられる布帛として種々の布帛が提案されている。例えば、特許文献1では、最外層が難燃性・遮熱機能を有し、中間層が透湿防水機能を有し、最内層が遮熱機能を有する多層構造布帛が提案されている。また、特許文献2では、二重織組織を有する布帛が提案されている。しかしながら、難燃性と遮熱性とを両立させる点でまだ満足とはいえなかった。
また、特許文献3では、火炎または熱によって曝露された際に凹凸構造が発現する難燃生地が提案されているが、まだ十分とは言えなかった。
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、火炎または熱によって曝露された際に生地の両面に凹凸構造が発現し、難燃性と遮熱性とを有する、難燃生地および積層難燃生地および繊維製品を提供することにある。
本発明者らは上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、難燃生地を構成する糸条および生地の組織を巧みに工夫することにより、火炎または熱によって曝露された際に生地の両面に凹凸構造が発現することを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば、「アラミド繊維を含む糸1とアラミド繊維を含む糸2とを含む難燃生地であって、生地の表面に糸1が露出し、かつ生地の裏面に糸2が露出する領域Aと、生地の表面に糸2が露出し、かつ生地の裏面に糸1が露出する領域Bとを有することを特徴とする難燃生地。」が提供される。
その際、前記糸1および/または糸2が紡績糸であることが好ましい。また、前記糸1がパラ系アラミド繊維を糸重量に対し50重量%以上含み、糸2がパラ系アラミド繊維を30%以下含むことが好ましい。また、前記糸1と糸2との熱収縮率の差が5%以上であることが好ましい。また、生地の表面または裏面において、前記領域Aと領域Bとがパターン状に配されてなることが好ましい。また、熱曝露前の難燃生地の厚みDが2.0mm以下であることが好ましい。また、難燃生地の厚みDと熱曝露後の該生地の厚みdとが以下の関係にあることが好ましい。
d−D>1.0mm
また、本発明によれば、前記の難燃生地に他の生地を積層してなり、3層以上に積層してなる積層難燃生地が提供される。その際、前記積層生地において、前記難燃生地を2層以上に配してなることが好ましい。また、積層生地において、ASTM F 1868 PartCで規定される全熱損失(THL)が300W/m2以上であり、かつISO9151に規定する耐輻射熱試験において、センサー温度が24℃上昇するまでの時間HTI24が13秒以上であることが好ましい。また、積層生地において、積層生地全体の厚みEと熱曝露後の該積層生地の厚みeとが以下の関係にあることが好ましい。
e−E>1.0mm
また、積層生地において、防水透湿フィルムを片面にラミネートされた生地を含むことが好ましい。
d−D>1.0mm
また、本発明によれば、前記の難燃生地に他の生地を積層してなり、3層以上に積層してなる積層難燃生地が提供される。その際、前記積層生地において、前記難燃生地を2層以上に配してなることが好ましい。また、積層生地において、ASTM F 1868 PartCで規定される全熱損失(THL)が300W/m2以上であり、かつISO9151に規定する耐輻射熱試験において、センサー温度が24℃上昇するまでの時間HTI24が13秒以上であることが好ましい。また、積層生地において、積層生地全体の厚みEと熱曝露後の該積層生地の厚みeとが以下の関係にあることが好ましい。
e−E>1.0mm
また、積層生地において、防水透湿フィルムを片面にラミネートされた生地を含むことが好ましい。
また、本発明によれば、前記の難燃生地または積層難燃生地を用いてなり、防護服、消防防火服、消防活動服、救助服、ワークウェア、警察制服、自衛隊衣服、および軍服からなる群より選択されるいずれかの繊維製品が提供される。
本発明によれば、火炎または熱によって曝露された際に生地の両面に凹凸構造が発現し、難燃性と遮熱性とを有する、難燃生地および積層難燃生地および繊維製品が得られる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。まず、本発明の難燃生地はアラミド繊維を含む糸1とアラミド繊維を含む糸2とを含む。かかる糸1と糸2とは同一ではない。
ここで、前記糸1および/または糸2において、糸の形状は長繊維でもよいが、糸に含まれる繊維の組成を任意に調整する上で紡績糸が好ましい。その際、紡績手法としては、エアジェット紡績、リング紡績を使用することが好ましい。
また、アラミド繊維(全芳香族ポリアミド繊維)にはパラ系アラミド繊維とメタ系アラミド繊維があり、前記糸1がパラ系アラミド繊維を糸重量に対し50重量%以上含み、糸2がパラ系アラミド繊維を30%以下含むことが好ましい。
なお、メタ系アラミド繊維は通常、耐熱温度が高く、かつ熱収縮率が大きいという特性を有する。一方、パラ系アラミド繊維は通常、耐熱温度が高く、かつ熱収縮率が小さく、かつ強度が大きいという特性を有する。
ここで、メタ系アラミド繊維は、その繰返し単位の85モル%以上がm−フェニレンイソフタルアミドであるポリマーからなる繊維である。かかるメタ系アラミド(全芳香族ポリアミド)は、15モル%未満の範囲内で第3成分を含んだ共重合体であっても差しつかえない。
このようなメタ系アラミド(全芳香族ポリアミド)は、従来から公知の界面重合法により製造することができ、そのポリマーの重合度としては、0.5g/100mlの濃度のN−メチル−2−ピロリドン溶液で測定した固有粘度(I.V.)が1.3〜1.9dl/gの範囲のものが好ましく用いられる。
上記メタ系アラミド(全芳香族ポリアミド)にはアルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩が含有されていてもよい。アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩としては、ヘキシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、ヘキシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラフェニルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルテトラデシルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルアンモニウム塩等の化合物が好ましく例示される。なかでもドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、またはドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルアンモニウム塩は、入手しやすく、熱的安定性も良好なうえ、N−メチル−2−ピロリドンに対する溶解度も高いため特に好ましく例示される。
上記アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩の含有割合は、十分な染色性の改良効果を得るために、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミドに対して2.5モル%以上(好ましくは3.0〜7.0モル%)であるものが好ましい。
また、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミドとアルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩を混合する方法としては、溶媒中にポリ−m−フェニレンイソフタルアミドを混合、溶解し、それにアルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩を溶媒に溶解する方法などが用いられそのいずれを用いてもよい。このようにして得られたドープは、従来から公知の方法により繊維に形成される。
メタ系アラミド繊維に用いるポリマーは、染着性や耐変褪色性を向上させる等目的で、下記の式(1)で示される反復構造単位を含む芳香族ポリアミド骨格中に、反復構造の主たる構成単位とは異なる芳香族ジアミン成分、または芳香族ジカルボン酸ハライド成分を、第3成分として芳香族ポリアミドの反復構造単位の全量に対し1〜10mol%となるように共重合させることも可能である。
−(NH−Ar1−NH−CO−Ar1−CO)− ・・・式(1)
ここで、Ar1はメタ配位または平行軸方向以外に結合基を有する2価の芳香族基である。
−(NH−Ar1−NH−CO−Ar1−CO)− ・・・式(1)
ここで、Ar1はメタ配位または平行軸方向以外に結合基を有する2価の芳香族基である。
また、第3成分として共重合させることも可能であり、式(2)、(3)に示した芳香族ジアミンの具体例としては、例えば、p−フェニレンジアミン、クロロフェニレンジアミン、メチルフェニレンジアミン、アセチルフェニレンジアミン、アミノアニシジン、ベンジジン、ビス(アミノフェニル)エーテル、ビス(アミノフェニル)スルホン、ジアミノベンズアニリド、ジアミノアゾベンゼン等が挙げられる。式(4)、(5)に示すような芳香族ジカルボン酸ジクロライドの具体例としては、例えば、テレフタル酸クロライド、1,4−ナフタレンジカルボン酸クロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド、4,4’−ビフェニルジカルボン酸クロライド、5−クロルイソフタル酸クロライド、5−メトキシイソフタル酸クロライド、ビス(クロロカルボニルフェニル)エーテルなどが挙げられる。
H2N−Ar2−NH2 ・・・式(2)
H2N−Ar2−Y−Ar2−NH2 ・・・式(3)
XOC−Ar3−COX ・・・式(4)
XOC−Ar3−Y−Ar3−COX ・・・式(5)
ここで、Ar2はAr1とは異なる2価の芳香族基、Ar3はAr1とは異なる2価の芳香族基、Yは酸素原子、硫黄原子、アルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の原子又は官能基であり、Xはハロゲン原子を表す。
H2N−Ar2−NH2 ・・・式(2)
H2N−Ar2−Y−Ar2−NH2 ・・・式(3)
XOC−Ar3−COX ・・・式(4)
XOC−Ar3−Y−Ar3−COX ・・・式(5)
ここで、Ar2はAr1とは異なる2価の芳香族基、Ar3はAr1とは異なる2価の芳香族基、Yは酸素原子、硫黄原子、アルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の原子又は官能基であり、Xはハロゲン原子を表す。
また、メタ系アラミド繊維の結晶化度は、染料の吸尽性がよく、より少ない染料でまたは染色条件が弱くても狙いの色に調整し易いという点で、5〜35%であることが好ましい。さらには、染料の表面偏在が起こり難く耐変褪色性も高い点および実用上必要な寸法安定性も確保できる点で15〜25%であることがより好ましい。
また、メタ系アラミド繊維の残存溶媒量は、メタ系アラミド繊維の優れた難燃性能を損なわない点および染料の表面偏在が起こり難く耐変褪色性も高い点で、0.1重量%以下であることが好ましい。
前記メタ系アラミド繊維は以下の方法により製造することができ、特に後述する方法により、結晶化度や残存溶媒量を上記範囲とすることができる。
メタ系アラミド(全芳香族ポリアミド)ポリマーの重合方法としては、特に限定されず、例えば特公昭35−14399号公報、米国特許第3360595号公報、特公昭47−10863号公報などに記載された溶液重合法、界面重合法を用いてもよい。
紡糸溶液としては、とくに限定する必要はないが、上記溶液重合や界面重合などで得られた、芳香族コポリアミドポリマーを含むアミド系溶媒溶液を用いてもよいし、上記重合溶液から該ポリマーを単離し、これをアミド系溶媒に溶解したものを用いてもよい。
ここで用いられるアミド系溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを例示することができるが、とくにN,N−ジメチルアセトアミドが好ましい。
上記の通り得られた共重合芳香族ポリアミドポリマー溶液は、さらにアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含むことにより安定化され、より高濃度、低温での使用が可能となり好ましい。好ましくはアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩がポリマー溶液の全重量に対して1重量%以下(より好ましくは0.1重量%以下)である。
紡糸・凝固工程においては、上記で得られた紡糸液(メタ系アラミド重合体溶液)を凝固液中に紡出して凝固させる。
紡糸・凝固工程においては、上記で得られた紡糸液(メタ系アラミド重合体溶液)を凝固液中に紡出して凝固させる。
紡糸装置としては特に限定されるものではなく、従来公知の湿式紡糸装置を使用することができる。また、安定して湿式紡糸できるものであれば、紡糸口金の紡糸孔数、配列状態、孔形状等は特に制限する必要はなく、例えば、孔数が1000〜30000個、紡糸孔径が0.05〜0.2mmのステイプルファイバー(短繊維)用の多ホール紡糸口金等を用いてもよい。
また、紡糸口金から紡出する際の紡糸液(メタ系アラミド重合体溶液)の温度は、20〜90℃の範囲が適当である。
また、紡糸口金から紡出する際の紡糸液(メタ系アラミド重合体溶液)の温度は、20〜90℃の範囲が適当である。
繊維を得るために用いる凝固浴としては、実質的に無機塩を含まない、アミド系溶媒、好ましくはNMPの濃度が45〜60質量%の水溶液を、浴液の温度10〜50℃の範囲で用いる。アミド系溶媒(好ましくはNMP)の濃度が45質量%未満ではスキンが厚い構造となってしまい、洗浄工程における洗浄効率が低下し、繊維の残存溶媒量を低減させることが困難となるおそれがある。一方、アミド系溶媒(好ましくはNMP)の濃度が60質量%を超える場合には、繊維内部に至るまで均一な凝固を行うことができず、このためやはり、繊維の残存溶媒量を低減させることが困難となるおそれがある。なお、凝固浴中への繊維の浸漬時間は、0.1〜30秒の範囲が適当である。
引続き、アミド系溶媒、好ましくはNMPの濃度が45〜60質量%の水溶液であり、浴液の温度を10〜50℃の範囲とした可塑延伸浴中にて、3〜4倍の延伸倍率で延伸を行う。延伸後、10〜30℃のNMPの濃度が20〜40質量%の水溶液、続いて50〜70℃の温水浴を通して十分に洗浄を行う。
洗浄後の繊維は、温度270〜290℃にて乾熱処理を施し、上記の結晶化度および残存溶媒量の範囲を満たすメタ系アラミド繊維を得ることができる。
洗浄後の繊維は、温度270〜290℃にて乾熱処理を施し、上記の結晶化度および残存溶媒量の範囲を満たすメタ系アラミド繊維を得ることができる。
前記メタ系アラミド繊維において、繊維の形態としては、長繊維(マルチフィラメント)でもよいし短繊維でもよい。特に、他の繊維と混紡する上で繊維長25〜200mmの短繊維が好ましい。また、単繊維繊度としては1〜5dtexの範囲が好ましい。
メタ系アラミド繊維の市販品としては、コーネックス(商標名)、コーネックス(商標名)ネオ、ノーメックス(商標名)などが例示される。
メタ系アラミド繊維の市販品としては、コーネックス(商標名)、コーネックス(商標名)ネオ、ノーメックス(商標名)などが例示される。
また、パラ系アラミド繊維としては、主鎖中に芳香族環を有するポリアミドからなる繊維であり、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド(PPTA)でもよいし共重合タイプのコポリパラフェニレン−3,4’オキシジフェニレンテレフタルアミド(PPODPA)であってもよい。パラ系アラミド繊維の市販品としては、テクノーラ(商標名)、ケブラー(商標名)およびトワロン(商標名)などが例示される。
また、糸1および糸2において、パラ系アラミド繊維および/またはメタ系アラミド繊維のみで構成されることが好ましいが、パラ系アラミド繊維やメタ系アラミド繊維に混合使用できる繊維としては、ポリベンゾイミダゾール繊維、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ノボロイド繊維、難燃アクリル繊維、ポリクラール繊維、難燃ポリエステル繊維、難燃綿繊維、難燃レーヨン繊維、難燃ビニロン繊維、難燃ウール繊維が挙げられる。
また、前記糸1と糸2との熱収縮率の差が10%以上であることが好ましい。ただし、本発明でいう「熱収縮率」とは、450℃5分間で乾熱処理を行った際に、熱処理前後の糸長の収縮率である。前記の前記糸1と糸2のうち、熱収縮率が大きい糸Aと熱収縮率が小さい糸Bとの乾熱収縮率の差HABが5%以上(好ましくは10%以上、より好ましくは17〜40%)であることが好ましい。かかる乾熱収縮率の差HABが10%よりも小さいと、布帛が火炎または熱によって曝露された際に凹凸構造が発現しないおそれがある。
乾熱収縮率(%)=((試験前の長さ(mm)―試験後の長さ(mm))/(試験前の長さ(mm))×100
熱収縮率差HAB(%)=(糸Aの乾熱収縮率(%))―(糸Bの乾熱収縮率(%))
乾熱収縮率(%)=((試験前の長さ(mm)―試験後の長さ(mm))/(試験前の長さ(mm))×100
熱収縮率差HAB(%)=(糸Aの乾熱収縮率(%))―(糸Bの乾熱収縮率(%))
前記の前記糸1と糸2(前記の熱収縮率が大きい糸Aと熱収縮率が小さい糸B)としては、難燃性の点でともにアラミド繊維(全芳香族ポリアミド繊維)を含むことが好ましく、ともにアラミド繊維(全芳香族ポリアミド繊維)のみからなることがより好ましい。特に、熱収縮率が大きい糸Aが、メタ系アラミド繊維を50〜98重量%、パラ系アラミド繊維を2〜50重量%含むことが好ましい。特に、熱収縮率が大きい糸Aがパラ系アラミド繊維を30%以下含むことが好ましい。また、熱収縮率が小さい糸Bが、パラ系アラミド繊維を糸重量に対し50重量%以上(より好ましくはパラ系アラミド繊維を50〜100重量%、特に好ましくはパラ系アラミド繊維を80〜100重量%)含むことが好ましい。また、熱収縮率が小さい糸Bが、メタ系アラミド繊維を0〜50重量%含むことが好ましい。
本発明の難燃生地は、生地の表面に糸1が露出し、かつ生地の裏面に糸2が露出する領域Aと、生地の表面に糸2が露出し、かつ生地の裏面に糸1が露出する領域Bとを有する。
ここで、前記領域Aと領域Bとがパターン状に配されていることが好ましい。例えば、前記領域Aと領域Bとがストライプ状または市松格子状に交互に配されていることが好ましい。切り替え間隔(ストライプ1か所の巾や市松格子1か所の1辺の長さ)は2〜100mm(より好ましくは4〜60mm、さらに好ましくは6〜50mm)が好ましい。
本発明の布帛において、目付けとしては300g/m2以下(より好ましくは50〜300g/m2)であることが好ましい。目付けが300g/m2よりも大きいと自重で凹凸構造が発現しないおそれがある。
本発明の布帛において、布帛組織は限定されず、織物でもよいし経編物や丸編物(緯編物)などの編物でもよい。なかでも織物が好ましい。織物組織としては、図1に示す組織が好ましい。
布帛の製造方法は特に限定されず、前記の糸1と糸2を用いて常法により製編織することができる。その際、好ましい織機として、シャトル織機、レピア織機、エアジェット織機などが挙げられる。編機としてはトリコット編機や丸編機などが挙げられる。
かくして得られた難燃生地において、熱曝露前の難燃生地の厚みDが2.0mm以下であることが好ましい。また、難燃生地の厚みDと熱曝露後の該生地の厚みdとが以下の関係にあることが好ましい。
d−D>1.0mm
また、本発明によれば、前記の難燃生地に他の生地を積層してなり、3層以上の生地からなる積層難燃生地が提供される。その際、前記難燃生地を最外層以外の層に配していることが好ましい。また、前記積層生地において、前記難燃生地を2層以上に配してなることが好ましい。
d−D>1.0mm
また、本発明によれば、前記の難燃生地に他の生地を積層してなり、3層以上の生地からなる積層難燃生地が提供される。その際、前記難燃生地を最外層以外の層に配していることが好ましい。また、前記積層生地において、前記難燃生地を2層以上に配してなることが好ましい。
ここで、積層生地において、ASTM F 1868 PartCで規定される全熱損失(THL)が300W/m2以上であり、かつISO9151に規定する耐輻射熱試験において、センサー温度が24℃上昇するまでの時間HTI24が13秒以上であることが好ましい。
また、積層生地において、積層生地全体の厚みEと熱曝露後の該積層生地の厚みeとが以下の関係にあることが好ましい。
e−E>1.0mm
また、積層生地において、積層生地全体の厚みEと熱曝露後の該積層生地の厚みeとが以下の関係にあることが好ましい。
e−E>1.0mm
最外層は、好ましくはメタ系アラミド繊維とパラ系アラミド繊維からなる布帛により構成され、布帛の種類としては、織編物、及び、不織布が使用されるが、実用的には強度の点で織物とすることが好ましい。また、該メタ系アラミド繊維とパラ系アラミド繊維は、フィラメント、混繊糸、紡績糸等の形で使用できるが、混紡して紡績糸の形態で使用するものが好ましい。該パラ系アラミド繊維の混合比率としては、最外層を構成する全繊維重量に対して、1〜70重量%であることが好ましい。該パラ系アラミド繊維の混合比率が、1重量%未満では、火炎に曝露された際に布帛が破壊、すなわち穴があくおそれがある。また、70重量%を超えると、該パラ系アラミド繊維がフィブリル化して耐摩耗性が低下するので好ましくない。該最外層はシングルプライ、ダブルプライであってもよい。該最外層に対しては、コーティング法、スプレー法、又は、浸漬法などの加工法により、フッ素系の撥水樹脂を付与して加工することが、より高い耐水性能や耐薬品性能を有する防護服を得るためには好ましい。
最内層は、透湿防水性を有するものであることが好ましく、メタ系もしくはパラ系アラミド繊維からなる織物に透湿防水性の薄膜フィルムを積層したものが最も好ましく用いられる。特に、最適な最内層として、難燃性素材であるポリメタフェニレンイソフタルアミド等のメタ系アラミド繊維からなる織布を用い、該織布に透湿防水性のあるポリテトラフルオロエチレン等からなる薄膜フィルムをラミネート加工したものが例示される。このような最内層により、透湿防水性や耐薬品性が向上し、着用者の汗の蒸散を促進するので、着用者のヒートストレスを減少することができる。該布帛を構成する繊維は紡績糸、フィラメントであってもよく、形態としては織物、ニット、または不織布であってもよい。
次に、本発明の繊維製品は、前記の難燃生地または積層難燃生地を用いてなり、防護服、消防防火服、消防活動服、救助服、ワークウェア、警察制服、自衛隊衣服、および軍服からなる群より選択されるいずれかの繊維製品である。
かかる繊維製品は、火炎または熱によって曝露された際に生地の両面に凹凸構造が発現し、難燃性と遮熱性とを有する。
かかる繊維製品は、火炎または熱によって曝露された際に生地の両面に凹凸構造が発現し、難燃性と遮熱性とを有する。
次に本発明の実施例および比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(1)熱収縮率
450℃5分間で乾熱処理を行った際に、熱処理前後の糸長の収縮率である。
乾熱収縮率(%)=((試験前の長さ(mm)―試験後の長さ(mm))/(試験前の長さ(mm))×100
(2)厚み
JIS L 1018(有毛編物)に準拠し、3g/cm2の荷重をかけ測定を行った。
(3)全熱損失
ASTM F 1868 PartCに準拠し、全熱損失を求めた。
(4)遮熱性(耐輻射熱)
ISO9151に基づき熱流束80kW/m2において、輻射熱曝露開始から銅製のセンサーが24℃上昇する時間、HTI24を求めた。
(1)熱収縮率
450℃5分間で乾熱処理を行った際に、熱処理前後の糸長の収縮率である。
乾熱収縮率(%)=((試験前の長さ(mm)―試験後の長さ(mm))/(試験前の長さ(mm))×100
(2)厚み
JIS L 1018(有毛編物)に準拠し、3g/cm2の荷重をかけ測定を行った。
(3)全熱損失
ASTM F 1868 PartCに準拠し、全熱損失を求めた。
(4)遮熱性(耐輻射熱)
ISO9151に基づき熱流束80kW/m2において、輻射熱曝露開始から銅製のセンサーが24℃上昇する時間、HTI24を求めた。
[実施例1]
最外層には、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(帝人社製、商標名:コーネックス)とコパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人社製、商標名:テクノーラ)とを混合比率が90:10 となる割合で混合した耐熱繊維からなる紡績糸(番手:40/2)を用いて2/1の綾織に織成した布帛(目付:240g/m2)を用いた。
最外層には、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(帝人社製、商標名:コーネックス)とコパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人社製、商標名:テクノーラ)とを混合比率が90:10 となる割合で混合した耐熱繊維からなる紡績糸(番手:40/2)を用いて2/1の綾織に織成した布帛(目付:240g/m2)を用いた。
中間層の生地が、図1に示す織組織からなり、領域Aにおいては表面は紡績糸1(ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(帝人社製、商標名:コーネックス)とコパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人会社製、商標名:テクノーラ)とを混合比率が95:5 となる割合で混合した耐熱繊維からなる紡績糸(番手:40/2))から構成され、かつ、裏面は紡績糸2(コパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人社製、商標名:テクノーラ)からなる紡績糸(番手:40/2))から構成されており、領域Bにおいては表面は紡績糸2から構成され、かつ裏面は紡績糸1から構成される難燃生地を用いた。なお、領域Aと領域Bとは市松格子状に配され、市松格子1か所の1辺の長さは8mmであった。
最内層には、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(帝人社製、商標名:コーネックス)とコパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人株式会社製、商標名:テクノーラ)とを混合比率が95:5 となる割合で混合した耐熱繊維からなる紡績糸(番手:40/−)を用いて平織りに織成した。織布(目付は65g/m2)に市中のポリテトラフルオロエチレン製の透湿防水性フィルムをラミネートした。上記最外層、中間層、最内層の3層を重ねた耐熱性防護服の評価結果を表1に示す。
かかる防護服は、図2のように、火炎または熱によって曝露された際に生地の両面に凹凸構造が発現し、難燃性と遮熱性とを有するものであった。
[比較例1]
実施例1において、中間層の糸1と糸2に同じ紡績糸(ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(帝人社製、商標名:コーネックス)とコパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人社製、商標名:テクノーラ)とを混合比率が95:5 となる割合で混合した耐熱繊維からなる紡績糸(番手:40/2))を用いる以外は実施例1と同様に実施した。
実施例1において、中間層の糸1と糸2に同じ紡績糸(ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(帝人社製、商標名:コーネックス)とコパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人社製、商標名:テクノーラ)とを混合比率が95:5 となる割合で混合した耐熱繊維からなる紡績糸(番手:40/2))を用いる以外は実施例1と同様に実施した。
[比較例2]
実施例1において、領域Aと領域Bの表面に同じ紡績糸1(ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(帝人社製、商標名:コーネックス)とコパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人会社製、商標名:テクノーラ)とを混合比率が95:5 となる割合で混合した耐熱繊維からなる紡績糸(番手:40/2))を用い、領域Aと領域Bの裏面に同じ紡績糸2(コパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人社製、商標名:テクノーラ)からなる紡績糸(番手:40/2))を用いる以外は実施例1と同様に実施した。
実施例1において、領域Aと領域Bの表面に同じ紡績糸1(ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(帝人社製、商標名:コーネックス)とコパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人会社製、商標名:テクノーラ)とを混合比率が95:5 となる割合で混合した耐熱繊維からなる紡績糸(番手:40/2))を用い、領域Aと領域Bの裏面に同じ紡績糸2(コパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人社製、商標名:テクノーラ)からなる紡績糸(番手:40/2))を用いる以外は実施例1と同様に実施した。
本発明によれば、火炎または熱によって曝露された際に生地の両面に凹凸構造が発現し、難燃性と遮熱性とを有する、難燃生地および積層難燃生地および繊維製品が得られその工業的価値は極めて大である。
Claims (13)
- アラミド繊維を含む糸1とアラミド繊維を含む糸2とを含む難燃生地であって、生地の表面に糸1が露出し、かつ生地の裏面に糸2が露出する領域Aと、生地の表面に糸2が露出し、かつ生地の裏面に糸1が露出する領域Bとを有することを特徴とする難燃生地。
- 前記糸1および/または糸2が紡績糸である、請求項1に記載の難燃生地。
- 前記糸1がパラ系アラミド繊維を糸重量に対し50重量%以上含み、糸2がパラ系アラミド繊維を30%以下含む、請求項1または請求項2に記載の難燃生地。
- 前記糸1と糸2との熱収縮率の差が5%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の難燃生地。
- 生地の表面または裏面において、前記領域Aと領域Bとがパターン状に配されてなる、請求項1〜4のいずれかに記載の難燃生地。
- 熱曝露前の難燃生地の厚みDが2.0mm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の難燃生地。
- 難燃生地の厚みDと熱曝露後の該生地の厚みdとが以下の関係にある、請求項1〜6のいずれかに記載の難燃生地。
d−D>1.0mm - 請求項1〜7のいずれかに記載の難燃生地に他の生地を積層してなり、3層以上に積層してなる積層難燃生地。
- 前記積層生地において、前記難燃生地を2層以上に配してなる、請求項8に記載の積層難燃生地。
- 積層生地において、ASTM F 1868 PartCで規定される全熱損失(THL)が300W/m2以上であり、かつISO9151に規定する耐輻射熱試験において、センサー温度が24℃上昇するまでの時間HTI24が13秒以上である、請求項8または請求項9に記載の積層難燃生地。
- 積層生地において、積層生地全体の厚みEと熱曝露後の該積層生地の厚みeとが以下の関係にある、請求項8〜10に記載の積層難燃生地。
e−E>1.0mm - 積層生地において、防水透湿フィルムを片面にラミネートされた生地を含む、請求項8〜10に記載の積層難燃生地。
- 請求項1〜12のいずれかに記載された難燃生地または積層難燃生地を用いてなり、防護服、消防防火服、消防活動服、救助服、ワークウェア、警察制服、自衛隊衣服、および軍服からなる群より選択されるいずれかの繊維製品。
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