米国特許第7,879,331号明細書;同第7,879,332;および同第8,293,242号明細書では、発明者らは、血液製剤からタンパク質生成物を抽出し調製する際にエタノールの使用を省く加塩手順を構想した。エタノールおよび他のアルコールは、それらが所望のタンパク質を変性させる恐れがあることから、問題となる可能性がある。
本発明の主題では、発明者らは、クリオプレシピテートを塩沈殿ステップの前に脱クリオプレシピテート血漿(脱クリオ血漿)から分離する必要がない、簡略化した方法を発見した。加えて、中間物質を含む他の血液製剤が、精製タンパク質の単離をもたらす塩分画用の基質として利用可能である。また、ごく少量の所望のタンパク質生成物が第1ペーストおよび第2ペーストに残っている場合、そのペーストを再度溶かし、さらなる精製ステップを行うことなく、その所望のタンパク質生成物の収率の高さを維持することが可能である。アルファ1−プロテイナーゼインヒビターの場合、発明者らは、ごく少量のアルファ1−プロテイナーゼインヒビターが、22wt%から34wt%の高さの塩濃度で沈殿することを発見した。この結果は、アルファ1−プロテイナーゼインヒビターが高塩濃度で沈殿することを教示する文献に照らすと、驚くべきである。ごく少量のアルファ1−プロテイナーゼインヒビターがペースト内に紛れ込むことから、第2上清から高収率を得ることが可能である。このように、プロセスはペースト処理の省略により改善される。本明細書で検討するプロセスには、精製タンパク質を得るために必要な、単一塩分別ステップ、ダイアフィルトレーション、および単一精製ステップ(例えば、クロマトグラフィー)のみ、またはこれらのステップの多数を伴うプロセスが含まれる。
驚くべきことに、第2上清を、最小限の前処理(例えば、バイオバーデン濾過、溶媒/界面活性剤処理、ダイアフィルトレーション、または限外濾過)でアフィニティカラムに適用し、タンパク質生成物の単離をさらに簡略化することが可能である。さらに、アルブミンおよびイムノグロブリンなどの追加のタンパク質生成物を、種々のプロセス中間体から得ることが可能である。
これらの、および本明細書で考察する他の全ての外部資料は、参照によりそれらの全体が組み込まれるものとする。組み込まれた参考文献における用語の定義またはその使用が、本明細書で提供する該用語の定義と一致しないまたは反する場合は、本明細書で提供する該用語の定義を適用し、参考文献中の該用語の定義は適用しない。
文脈が反対のことを定める場合を除き、本明細書で記載される全ての範囲は、その端点を包含するものとして解釈するべきであり、オープン・エンドの範囲は、商業的に実用的な値を含むものと解釈するべきである。同様に、全ての値リストは、文脈が反対のことを指し示している場合を除き、中間値を包含すると考えるべきである。
本発明の主題は、血液系物質からタンパク質生成物を生成することが可能な方法を提供する。好適な方法は、(1)血液系物質に塩を加えて、第1中間体を生成するステップであって、前記塩は前記第1中間体の11〜20wt%を成すステップと;(2)前記第1中間体を分離して、第1上清と第1ペーストを生成するステップと;(3)前記第1上清に塩を加えて、第2中間体を生成するステップであって、前記塩は前記第2中間体の15〜30wt%を成す、ステップと;(4)前記第2中間体を分離して、第2上清と第2ペーストを生成するステップと;(5)適切なクロマトグラフィー法(例えば、アフィニティクロマトグラフィー)により、前記第2上清から第3中間体を分離するステップと;(6)前記第3中間体を、適切なクロマトグラフィー法(例えば、イオン交換クロマトグラフィー)により分離して、タンパク質生成物を含有する溶離液を生成するステップとを含む。ステップ(1)と(2)の組み合わせ、またはステップ(3)と(4)の組み合わせを、本文書を通して、「塩分画」という場合がある。単一塩分画ステップが所望のタンパク質を生成するおよび/または単一クロマトグラフィーステップが許容可能な純度で所望のタンパク質を産生することは、血液系物質が事前処理を受けていた場合は特に、本発明の主題の範囲内にある。クロマトグラフィーによるタンパク質精製が好ましいが、当技術分野で既知の他のタンパク質精製方法も、塩分画により得られる中間体から1つまたは複数の所望のタンパク質を単離するために、クロマトグラフィーの代わりに、またはクロマトグラフィーに加えて、本発明の方法に組み込むことが可能である。
いくつかの種類のタンパク質を、単一ロットの血液系物質から選択的に抽出可能であることについて考える。第1ペースト、第2ペースト、本文書の発明の主題に従って生成された任意のペースト、第1クロマトグラフィー精製ステップ(例えば、アフィニティクロマトグラフィーラン)からのフロースルー、第2クロマトグラフィー精製ステップ(例えば、イオン交換クロマトグラフィー)からのフロースルー、本文書に開示する発明の主題に従って実行された任意のクロマトグラフィーランからの任意の分画、および、本発明の主題の他の中間物質のそれぞれを、さらに、塩分画および/またはクロマトグラフィーにより処理することが可能であることを理解されたい。本明細書で使用する場合、「中間物質」は、個々の処理ステップにより生成される物質を指す。好適な実施形態では、上記で言及した物質をさらに処理することにより、血液系物質から単離タンパク質を生成する。また、本発明の主題の中間物質を、他の分画および/または精製プロセス(例えば、血漿タンパク質精製スキームを含むProMetic Life Sciencesにより実現されたプロセス、PlasmaCap EBAプロセスを含むTherapure Biopharmaにより実現されたプロセス、および/または他の既知の分画プロセス)の開始点として使用することについても考える。
本明細書で使用する場合、「血液系物質」は、血漿、原料血漿、新鮮凍結血漿、回収血漿、再利用血漿、分画血漿、Cohn分画、NitschmannおよびKistlerの分画、および中間物質と定義する。本明細書で記載する方法は、必ずしも、出発物質として生成物を含有する凍結血漿を必要とするわけではないが、典型的には、生成物を含有する従来の血漿は凍っており、通常は、さらなる処理および/または精製の前に、解凍ステップを必要とすることを理解されたい。
血液系物質に加えた塩に関し、使用可能な塩の幅は広く、例えば、(限定するわけではないが)クエン酸塩、酢酸塩、グルコン酸塩、および/またはカプリル酸塩が含まれる。適切な塩は水溶性である。水溶性の塩の使用が好適であるが、非水溶性塩(例えば、クエン酸カルシウムおよび/または低水溶性の他の塩)を、非水溶性塩の溶解度を高めるキレート剤(例えば、EDTA)と共に使用することも除外されない。典型的には、第1沈殿物と第1上清が、塩含有率が10.1−25wt%、より典型的には、10.1−11、11−13、13−15、および15−20wt%である第1中間体において生じる。たんぱく質分離は、pHを3−10の範囲の特異的な値に調整することにより、および/または、混合物の温度を0−25℃の範囲の特異的な値に調整することにより、改善することができる。
一部の実施形態では、タンパク質を固定する(例えば、多量体の形成を最小限にする)還元剤を、血液系物質、第1中間体、第1上清、第1ペースト、第2中間体、第2上清、もしくは第2ペースト、および/または任意のその組み合わせに加える(例えば、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(「TCEP」)、ジチオトレイトール(「DTT」)、β−メルカプトエタノール(「βME」)、および/またはその塩)。当技術分野で既知である、他の実践的なタンパク質精製および/または固定化方法も、本発明の主題の断続的ステップとして使用することができる。
第1中間体を分離して第1上清と第1ペーストを生成するステップは、遠心分離および/または濾過により達成することが可能であることを理解されたい。遠心分離を使用する場合、第1沈殿物はペレット(つまり、第1ペースト)を形成し、そこから第1上清がデカントされ、ピペットで移され、または別の方法で除去され得る。ペレットは、また、本明細書ではペーストともいう。より大きい処理規模では、遠心分離よりも濾過が好適である。濾過を使用する場合、第1上清が濾過液であり、第1沈殿物がフィルタケーク(第1ペースト/沈殿物)を形成する。用語ペーストおよび沈殿物は、本文書では区別なく使用し、ペーストは、典型的には、沈殿物を上清から分離するための遠心分離(例えば)により得られる。
第2上清に関し、15〜50wt%、より典型的には、15−21、21−23、23−25、25−27、27−30、30−33、33−37、37−40、40−43、43−47、および47−50wt%の塩含有率について考える。塩は第1上清に加えるため、第2中間体の塩濃度は、第1中間体の塩濃度よりも高いだろう。たんぱく質分離は、pHを3−10の範囲の特異的な値に調整することにより、および/または、混合物の温度を0−25℃の範囲の特異的な値に調整することにより、改善させることができる。同様の考えが、第1上清と第1沈殿物の分離に適用されるように、第2上清の第2沈殿物からの分離にも適用される。単一塩分画ステップを伴うプロセスでは、15〜50wt%という典型的な塩含有率を、上記のように使用することが可能である。また、塩分画は、再溶解した第2ペーストにおいて実行することが可能であるとも考えられ、ここでは、塩濃度は、第1塩分画ステップの塩濃度より低い場合も高い場合もある。
図6に描くように、血液物質をクロマトグラフィーによりまず処理して、第1フロースルーと第1溶離液を生成することが可能であると考えられる。クロマトグラフィーは、2つ以上の別個の溶離液を生成することが可能であり、各溶離液は独立して処理されて、同じまたは異なるタンパク質を産生することが可能であることを理解されたい。次に、塩を本文書全体に記載する方法で第1フロースルーに加え、第1中間体を作る。第1中間体を第1上清と第1ペーストに分離する。本文書全体に記載するように、単一クロマトグラフィープロセスを使用することが可能であり(例えば、アフィニティクロマトグラフィー)、一続きの同じクロマトグラフィープロセスを順に使用することが可能であり(例えば、2つのイオン交換クロマトグラフィーランを順に)、一続きの同じクロマトグラフィープロセスを中間プロセスと共に使用することが可能であり(例えば、イオン交換クロマトグラフィーランの次に塩分画、その次にイオン交換クロマトグラフィーラン)、一続きの異なるクロマトグラフィープロセスを順に使用することが可能であり(例えば、アフィニティクロマトグラフィーランの次にイオン交換クロマトグラフィーラン)、一続きの異なるクロマトグラフィープロセスを中間プロセスと共に使用することが可能であり(例えば、アフィニティクロマトグラフィーランの次に塩分画、その次にイオン交換クロマトグラフィーラン)、または、これらのスキームの何れかの組み合わせを使用することが可能であると考えられる。アフィニティクロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーが好適であるが、本発明の主題は、ゲル浸透クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、フルオロアパタイトクロマトグラフィー、拡張床吸着クロマトグラフィー、または固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィーにより処理した血液系物質についても検討することを理解されたい。
本明細書で使用する場合、ダイアフィルトレーションは、タンパク質生成物を含有する溶液/緩衝液を交換するために使用する連続的濾過を意味する。限外濾過は、本明細書で使用する場合、タンパク質生成物の希釈液を濃縮する連続的濾過プロセスである。ダイアフィルトレーションおよび限外濾過では、垂直フロー濃縮およびタンジェンシャルフロー濃縮の両方が考えられる。有利なことに、ダイアフィルトレーションおよび/または限外濾過により、塩、低分子量種、および/または処理剤が除去される。ダイアフィルトレーションまたは限外濾過は、本発明の主題の塩分画ステップの間、および/またはクロマトグラフィーステップの間、および/または、塩分画ステップとクロマトグラフィーステップの間で使用可能であることを理解されたい。本発明方法の一部の実施形態では、上清または再溶解ペーストをアフィニティクロマトグラフィーにかける前に、その上清または再溶解ペーストを濾過してバイオバーデンを除去し、溶媒および界面活性剤で処理して、上清/再溶解ペースト中の任意のエンベロープウイルスを不活性化し、および/または、脱塩する(例えば、ダイアフィルトレーションおよび限外濾過により)ことが可能である。
いくつかの例示的な実施形態では、アフィニティクロマトグラフィーにより中間体を上清または再溶解ペーストから分離するステップにおいて、適切なアフィニティ樹脂を使用する。アフィニティ樹脂は、Bio−Rad、Sigma−Aldrich、GE Healthcare Life Sciences、Thermo Fisher Scientific、Merck Millipore、GenScript、およびProMetic Life Sciencesなどの供給業者より購入可能である。
アルファ1−プロテイナーゼインヒビターの生成で使用するあるプロセスでは、例えば、アルファ1−プロテイナーゼインヒビター特異的アフィニティ樹脂を使用して、アルファ1−プロテイナーゼインヒビターを含有する第3中間体を生成する。同様に、アルブミン特異的アフィニティ樹脂を使用して、アルブミンを第2上清から単離することが可能である。そのため、第2上清を、非常に多くのアフィニティクロマトグラフィーカラムに順番に適用して、異なるタンパク質を抽出することが可能であることが明らかなはずである。例えば、アルファ1−プロテイナーゼインヒビターの生成におけるアフィニティクロマトグラフィーステップは、フロースルーとウォッシュを生成する。そのフロースルーおよび/またはウォッシュは、アルブミン特異的アフィニティカラムに適用することが可能である。次に、アルブミン特異的アフィニティカラムからのフロースルーおよび/またはウォッシュを、同じまたは異なるタンパク質に特異的な第3アフィニティカラムに適用することが可能である。
ウイルスを不活性化するおよび/またはタンパク質生成物からウイルスを除去するために、溶離液を溶媒界面活性剤で処理し、ナノ濾過し、低温殺菌し、さもなければ、ウイルスを不活性化するまたは除去することが示されている方法で処理することが可能である。本発明の主題に従う方法は、特に、アルファ1−プロテイナーゼインヒビター、ガンマグロブリン、アルブミン、および/または他のタンパク質を含むタンパク質生成物の調製に適している。
他の態様では、本発明方法は、さらに、第2タンパク質生成物を第1ペーストまたは第2ペーストから単離するステップを含み得る。さらに、第2タンパク質生成物は、アフィニティクロマトグラフィーステップの過程で生成されたフロースルーおよび/またはウォッシュから単離することができる。そのため、第2タンパク質生成物は第1タンパク質生成物とは異なり得、アルファ1−プロテイナーゼインヒビター、ガンマグロブリン、アルブミン、および/または他のタンパク質を含み得ることが明らかなはずである。
本発明の主題のさらなる態様では、ガンマグロブリンを生成する方法は、さらに、ガンマグロブリンを第2ペーストから単離するステップを含み得る。そのため、IgG特異的アフィニティ樹脂を使用して、IgGを第2ペーストから単離することが可能である。さらに、別のアフィニティ樹脂を使用して、所望のタンパク質を特異的な中間体(例えば、上清、沈殿物(ペースト)、およびクロマトグラフィー分画が含まれる)から単離することが可能である。
一部の態様では、本発明の主題は、血液系物質から生成物を生成する、プロセスモジュールを含む方法について考えるが、その各モジュールは、インプット物質を受け取り、少なくとも1つのアウトプット物質を生成する。各モジュールは、分画モジュール、クロマログラフィーモジュール、ダイアフィルトレーションモジュール、または限外濾過モジュールを含み得る。モジュールの種類は、血液系物質から種々のタンパク質生成物を生成するように種々の配列で構成され得る。一部の実施形態は2つのモジュールを含むが、本発明の主題の方法は、3つ、4つ、または5つのモジュールか、または、所望の生成物を生成するのに必要なだけモジュールを含むことが可能である。最小では、プロセスは、塩分画モジュールおよび/またはダイアイフィルトレーション/限外濾過モジュールを含有するだろう。
分画モジュールは、塩分画、Cohn分画、NitschmannおよびKistlerの分画、カプリル酸塩分画、ポリエチレングリコール分画、またはその変種を使用して、インプット物質を上清とペーストに変換することが可能である。適切なインプット物質には、血液系物質、分画血漿、クロマトグラフィーフロースルー、溶離液、ウォッシュ、またはそのサブ分画が含まれる。1つまたは複数の分画モジュールは、また、本明細書で考察する塩分画ステップを含み、少なくとも上清およびペーストを生成する。
検討したクロマトグラフィーモジュールは、アフィニティクロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、フルオロアパタイトクロマトグラフィー、拡張床吸着クロマトグラフィー、または固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィーなどのプロセスを利用する。クロマトグラフィーモジュールは、インプット物質を、フロースルー、溶離液、ウォッシュ、およびそのサブ分画に分離させることを理解されたい。さらに、各モジュールのインプット物質は、血液系物質を含むか、または、任意の他のモジュールのフロースルー、溶離液、上清、またはペーストを含むと考えられる。
本発明の主題の種々の目的、特徴、態様、および利点は、同様の番号が同様の構成要素を表す添付の図面と併せて、好適な実施形態についての以下の詳細な説明からより明らかになろう。
本発明の主題は、血漿含有生成物から、高収率で多数のタンパク質生成物を生成する改善された方法を提供する。血漿は、有用な治療薬である非常に多くのタンパク質と凝固因子を含有する。例えば、アルファ1−プロテイナーゼインヒビターは、肺組織の崩壊を引き起こし得るアルファ1−プロテイナーゼインヒビター欠乏症の人を治療するために使用される。別の種類の血漿タンパク質はガンマグロブリンであり、これは、免疫不全および免疫疾患を治療するために使用される。アルブミンおよび他のタンパク質(例えば、フィブリノゲン、プロトロンビン、アルファ1−酸性糖タンパク質、アルファ1−フェトプロテイン、アルファ2−マクログロブリン、ベータ2−マイクログロブリン、ハプトグロビン、セルロプラスミン、補体成分3、補体成分4、C反応性タンパク質、トランスフェリン、マンノース結合レクチン等)も、本発明の主題に従う方法により、血漿から単離することが可能である。
好適な実施形態では、血液系物質には、回収血漿または再利用血漿を、より好適には新鮮凍結血漿、さらにより好適には、原料血漿が含まれる。他の血液系物質、例えば、分画血液、分画血液系物質、分画血漿、カプリル酸塩分画血漿、ポリエチレングリコール分画血漿、Cohn分画、NitschmannおよびKistlerの分画、および任意の中間物質、または血漿分画より得られる他の物質を使用することができる。血漿含有生成物は、典型的には、凍った状態で保管および輸送され、さらなる処理または精製の前に解凍されることを理解されたい。解凍プロセスでは、血漿はクリオプレシピテートと「脱クリオ」血漿、つまり脱クリオプレシピテート血漿に分離し得る。本明細書で使用する場合、「脱クリオ」血漿は、凍結血漿を解凍し、血漿からクリオプレシピテートを分離することにより生じる上清液を指し、クリオプレシピテートを含まない。全血漿、つまり、脱クリオ血漿およびクリオプレシピテートの両方を、さらなる処理ステップにかけることが好ましいが、後続の処理ステップで脱クリオ血漿のみを使用することも除外されない。任意選択的に、タンパク質生成物の生成の前に、またはその一部として、クリオプレシピテートを(例えば混ぜることにより)脱クリオ血漿に再度組み込むことが可能である。
図1に、本発明の主題の一実施形態のフローダイアグラムを示す。新鮮なまたは解凍した血漿含有生成物と塩を混ぜ、典型的には10.1−25wt%の添加塩、より典型的には10.1−11、11−13、13−15、および15−20wt%の添加塩、好適には11−13wt%、より好適には12wt%の添加塩である第1中間体を形成する。塩濃度の典型的な許容範囲は±1wt%である。本発明の方法での使用に適した塩には、限定するわけではないが、クエン酸塩、酢酸塩、グルコン酸塩、およびカプリル酸塩が含まれる。固体塩を血漿生成物に加えることも可能だが、好適な方法では、濃縮し、pHを調整した塩溶液を血漿生成物に加える。所望のタンパク質生成物に応じて、塩溶液のpHを約pH3〜pH8に調整して、タンパク質分画を最適化することが可能である。
例えば、50wt%クエン酸原液は、600mLの水(例えば、注入用の水)に500gのクエン酸を溶解することにより調製することが可能である。次に、溶液の体積を、追加の水で1000mLにする。50%クエン酸ナトリウム溶液は、600mLの水に500gのクエン酸三ナトリウムを溶解することに調製することが可能である。十分なクエン酸溶液をクエン酸ナトリウム溶液に加えてpHが約7の溶液を得て、次に、十分な水を加えて体積を1000mLにする。
血漿、中間体、および上清は溶液の凝固点と周囲温度の間、概して0〜25℃の温度で処理され得る。一実施形態では、血漿生成物を20℃で維持し、室温のクエン酸/クエン酸塩溶液を、そのクエン酸/クエン酸塩が、得られる第1中間体の11−13wt%、好適には12重量%を成すまで、血漿に加える。塩の添加は、第1中間体を、第1沈殿物および第1上清に分離させるだろう。別の実施形態では、第1中間体を撹拌し、2〜8℃まで冷却し、沈殿物を生成する。第1沈殿物は、高分子量タンパク質と大部分の脂質を含有する。好適には第1中間体を、沈殿が完了するまで(典型的には60分間以上)撹拌する。
第1上清および第1沈殿物は、上記のように遠心分離または濾過により、第1上清と第1ペーストに分離することが可能である。次に、本文書で考察するように、第1ペーストを溶解し、塩分画、クロマトグラフィープロセス、他の慣習的なタンパク質精製方法、またはその組み合わせなどのさらなるプロセスにかける。
例示的な実施形態では、第1上清を2〜8℃まで冷却し、追加のクエン酸/クエン酸塩溶液を第1上清に加えて第2中間体を生成する。前記第2中間体は、15−21、21−23、23−25、25−27、および27−30wt%のクエン酸/クエン酸塩、好適には21−23wt%のクエン酸/クエン酸塩、より好適には22wt%のクエン酸/クエン酸塩を含む。クエン酸/クエン酸塩以外の塩/緩衝液の組み合わせの使用も考えられる。当業者であれば、第2中間体における塩濃度は、第1中間体における塩濃度より高いことを理解する。好適には、第2中間体を、第2沈殿の形成が完了するまで、例えば一晩、撹拌する。第2沈殿物の中には、免疫グロブリンを見つけることが可能である。
第1中間体のように、第2中間体を、遠心分離および/または濾過により、第2上清と第2ペーストに分離することが可能である。遠心分離を使用する場合、第2ペーストは、第2沈殿物から形成されたペレットであり、第2上清はデカントされ、ピペットで移され、または別の方法でペレットから除去され得る。濾過を使用する場合、第2ペーストは第2沈殿物より形成されたフィルタケークであり、第2上清は濾液である。
イオン交換クロマトグラフィーの溶離液は、好適には、1つまたは複数の血漿タンパク質を含む。一部の実施形態では、溶離液は、アルファ1−プロテイナーゼインヒビター、ガンマグロブリン、アルブミン、フィブリノゲン、プロトロンビン、アルファ1−酸性糖タンパク質、アルファ1−フェトプロテイン、アルファ2−マクログロブリン、ベータ2−マイクログロブリン、ハプトグロビン、セルロプラスミン、補体成分3、補体成分4、C反応性タンパク質、トランスフェリン、マンノース結合レクチンのうち1つを含む。一部の実施形態では、溶離液は、上記タンパク質の少なくとも2つの組み合わせを含む。
任意選択的に、図2に示すように、第2上清をバイオバーデン減少フィルタを使用して濾過して、細菌、菌類胞子、菌糸、および他の「バイオバーデン」を除去することが可能である。例示的なバイオバーデン減少フィルタとしては、Sartorius、Pall、およびEMD Milliporeのブランド(例えば、Sartopore 2XLG 0.8/0.2、Supra EK1P/EAV1.5/0.2、Milligard(登録商標)、Polysep(登録商標)II、Lifegard(商標)、Clarigard(登録商標)、Polygard(登録商標)−CN、Polygard(登録商標)−CR、Polygard(登録商標)−CT)で製作されたフィルタが挙げられる。
別の任意選択的ステップは、ダイアフィルトレーションおよび/または限外濾過により、クエン酸塩濃縮物を減少させることである。フィルタのサイズは、流速を最小限(例えば、3−6L/h)にする一方、対象タンパク質が、濾液とともにフィルタを通って流れることを防ぐように選択することが可能である。例えば、30kD膜は、アルファ1−プロテイナーゼインヒビターを保持するが、比較的速い液体の流れは該膜を通過させる。クエン酸塩濃度の低減は、約55−60mS/cm〜約10mS/cm、最も好適には〜5mS/cm以下という導電性の低下と相関し得る。
エンベロープウイルスおよびいくつかの非エンベロープウイルスの不活性化は、ウイルスエンベロープ膜脂質を変性させることにより達成することが可能である。例えば、溶媒/界面活性剤(例えば、tri−n−ブチルホスフェートおよびポリソルベート80;tri−n−ブチルホスフェートおよびTriton X−100)を使用して、第2上清を処理することが可能である。有利なことに、溶媒/界面活性剤処理は、また、細菌および真菌汚染を死滅させ、内毒素を洗い流すこともできる。本発明の主題の好適な実施形態では、第2上清1kgにつき、tri−n−ブチルホスフェートとポリソルベート80が23.09:76.91の混合物13.2gを、第2上清に加える。
本発明者らは、アフィニティ樹脂が、タンパク質生成物の個々の成分を単離するのに使用可能であることについて考えた。例として、ProMetic BioSciences Ltd.およびProMetic BioTherapeuticsが、凝固因子、プラスミノゲン、フィブリノゲン、免疫グロブリン、アルブミン、アルファ1−プロテイナーゼインヒビターに特異的に結合するアフィニティ樹脂を製造する。GE Healthcareは、アルファ1−プロテイナーゼインヒビターに結合する単一ドメイン抗体を担持する架橋アガロース樹脂を製造する。必要な樹脂の量は、第2上清中のタンパク質量および樹脂の負荷用量に左右される。典型的には、第2上清の適用後に、非特異的静電相互作用により樹脂に吸着されたタンパク質を除去する塩溶液(例えば、100mM NaCl)で、アフィニティ樹脂を洗浄する。次に、所望のタンパク質を、樹脂製造業者より推奨される溶出液を使用してアフィニティカラムから溶出させるが、他の溶出プロトコルの使用が除外されるわけではない。アルファ1−プロテイナーゼインヒビターとGE HealthcareのAlpha−1 Antitrypsin Select樹脂の場合、タンパク質生成物は、緩衝塩化マグネシウム溶液(例えば、50mM Tris−HCl中の2M MgCl2、pH=7.40)を使用して、アフィニティクロマトグラフィーカラムから溶出させることが可能である。典型的なタンパク質生成物が、アフィニティクロマトグラフィーステップの後、70−98%の範囲で産生する。
第3中間体は、典型的には、ダイアフィルトレーション/限外濾過にかけて、塩濃度を低減させる。ダイアフィルトレーション/限外濾過の後、導電性は、約120mS/cmから10mS/cm以下、好適には、5mS/cm以下まで低下する。
発明者らは、樹脂から第3中間体に濾過された任意のアフィニティリガンドは、イオン交換クロマトグラフィーステップの後、タンパク質生成物から分離することが可能であると予想する。適切な樹脂は、Bio−Rad、Sigma−Aldrich、およびAsahi Chemical&Industrial Co.Ltd.より供給される(例えば、Asahi Q500陰イオン交換樹脂は、樹脂1ミリリットルにつき、26.5mgのアルファ1−プロテイナーゼインヒビターの動的結合容量を示した)。検討した方法では、500mLのQ500樹脂カラムを、50mM Tris−HCl、pH7.40において平衡化する。第3中間体をそのカラムに充填し、50mM Tris−HCl、pH7.40緩衝液中で0mM〜350mM NaClの段階勾配で溶出する。
本方法は、さらに、小さい非エンベロープウイルス(例えば、アデノウイルス、パルボウイルス、パポバウイルス、ヒトパピローマウイルス)を除去する、20nmポアフィルタを使用するナノ濾過ステップを含み得る。ナノ濾過されたタンパク質生成物は、次に、所望の製剤に応じて、さらに処理され得る。さらなる処理ステップには、限外濾過および/またはダイアフィルトレーション、製剤化、除菌濾過、充填、および凍結乾燥のうち1つまたは複数が含まれる。
図2に描くように、フロースルー、ウォッシュ、および第2沈殿物はそれぞれ、本明細書で言及する血漿タンパク質の1つまたは組み合わせを含有し得る。好適な実施形態では、図2の除菌濾過タンパク質生成物は、1種類の血漿タンパク質を含む。図2に描くように、第2沈殿物およびフロースルーおよびウォッシュからの他のタンパク質の単離には、本明細書に記載する塩分画およびクロマトグラフィープロセスが含まれる。
図3は、図1に類似したフローダイアグラムを描く。しかしながら、図3の出発物質は血液系物質である。本文書に記載するように、血液系物質には、原料血漿、新鮮凍結血漿、回収血漿、再利用血漿、分画血液、分画血液系物質、分画血漿、Cohn分画、NitschmannおよびKistlerの分画、および分画物質の任意の中間物質が含まれる。他の分画プロセス、例えば、Cohn分画またはNitschmannおよびKistlerの分画からの中間物質も、図3の方法の出発物質として使用可能であると考えられる。さらに、少なくとも図1〜8を含む、本発明の主題の方法の何れかからの中間物質も、図3の方法の出発点として使用可能であると見込まれる。
図3の第1塩および第2塩は、本文書で開示する塩の何れかであり得ることに注意されたい。さらに、第1塩および第2塩は同じであり得ると考えられる。図3のフローダイアグラムは、また、第1クロマトグラフィーステップおよび第2クロマトグラフィーステップを含む。第1クロマトグラフィーステップおよび第2クロマトグラフィーステップは、少なくとも部分的に、アフィニティクロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、フルオロアパタイトクロマトグラフィー、または固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィーを含み得ると考えられる。第1クロマトグラフィーステップおよび第2クロマトグラフィーステップは、充填床モードまたは拡張床吸着モードとすることが可能である。第1クロマトグラフィーステップおよび第2クロマトグラフィーステップは、また、同じ種類のクロマトグラフィーを含み得る。いくつかのプロセスは、単一クロマトグラフィーステップを要する場合がある一方、他は、2つ以上のステップを要する場合があると考えられる。さらに、本明細書に記載するように、塩を使用して得られるたんぱく質分画からのタンパク質精製は、クロマトグラフィーに加え、タンパク質精製/固定化ステップを要する場合もあれば、クロマトグラフィー以外のタンパク質精製/固定化ステップを要する場合もあると考えられる。
上記したように、第2クロマトグラフィープロセスからの溶離液は、本明細書で言及する血漿タンパク質の少なくとも1つを含むことを理解されたい。
図4は、図3に類似したフローダイアグラムを描く。しかしながら、図4は、第1沈殿物および第2沈殿物、ならびに第1フロースルーおよび第2フロースルーの追加処理を含み、これにより、単一ロットの血液系物質から多数の生成物を生成する。第1沈殿物は、溶解し、さらに、本文書で言及するように塩分画および/またはクロマトグラフィープロセスにより処理し得ることを理解されたい。図示するように、第2〜第6クロマトグラフィーステップそれぞれの生成物は、本明細書で記載するような、単離血漿タンパク質であることが好ましい。一部の実施形態では、第1〜第6クロマトグラフィーステップはそれぞれ、他とは異なる。第1〜第5タンパク質は、互いに別箇の血漿タンパク質であると考えられるが、ただし、いくつかのタンパク質バッチは少なくとも部分的に同じタンパク質を含有し得る。
図5は、単一ロットの血液系物質からイムノグロブリンG(「IgG」)および他のタンパク質を単離することについてのフローダイアグラムを描く。第1中間体および第2中間体の調製は、図1〜4に関し前述した方法と同じであるか、またはそれと類似している可能性がある。図4のフローダイアグラムのように、第2沈殿物を第1クロマトグラフィーステップによりさらに処理してIgGを生成する。第1クロマトグラフィーステップは、IgG特異的アフィニティ樹脂を経由するアフィニティクロマトグラフィーを含むと考えられるが、第1クロマトグラフィーステップは、全体的にまたは部分的に、当技術分野で既知である他の種類のクロマトグラフィーも含み得ることも理解されたい。さらに、他のタンパク質生成物、例えば、本明細書で記載する血漿タンパク質などを生成するために、第1フロースルーを第2クロマトグラフィーステップにより処理する。後続のクロマトグラフィーステップおよび塩分画ステップは、所望の単離タンパク質生成物および組み合わせを産生するために実行され得ることを理解されたい。
図6は、血液系物質から所望の生成物を得る代替方法についてのフローダイアグラムを描く。図6のフローダイアグラムは、第1クロマトグラフィーステップにより血液系物質を処理することで始まる。一部の実施形態では、血液系物質は、他の分画プロセスの中間物質か、さもなければ分画血液系物質である。図6の第1フロースルーは、次に、図1および3に記載するように塩分画し、第2上清を第2クロマトグラフィーステップで処理することにより、第2溶離液を生成する。第1溶離液および第2溶離液は、本明細書で記載するように血漿タンパク質を含むことを理解されたい。好適な実施形態では、第2溶離液は、単離型血漿タンパク質を含む。
図7は、図3に類似したフローダイアグラムを描く。しかしながら、図7は、第3クロマトグラフィーステップを含む実施形態を開示する。第3クロマトグラフィーステップは、これまでに考察したまたは当技術分野で既知のクロマトグラフィーステップの何れかを含み得ることを理解されたい。一部の実施形態では、第1〜第3クロマトグラフィーステップは、同じ種類のクロマトグラフィーを含む。第3クロマトグラフィーステップ前後の追加のクロマトグラフィーステップについても考える。一部の実施形態では、第3クロマトグラフィーステップの溶離液は、本明細書で記載する血漿タンパク質の少なくとも1つを含む。一部の実施形態では、その溶離液は、単離型血漿タンパク質を含む。
図8は、図3に類似したフローダイアグラムを描く。しかしながら、図8は、第2上清にTCEPを加えて第3中間体を生成する追加ステップを含む。TCEPは、第2上清において、少なくともいくつかのタンパク質の多量体形成を低減させると考えられる。また、追加のまたは代替の還元剤を使用して、図8のステップを通して、タンパク質の多量体形成を最小限にすることができることも考えられる(例えば、DTTおよびβME)。一部の実施形態では、第2クロマトグラフィーステップの溶離液は、本明細書で記載する血漿タンパク質の少なくとも1つを含む。一部の実施形態では、溶離液は、単離型血漿タンパク質を含む。
図9は、図3に類似した別のフローダイアグラムを描く。図8では、沈殿剤を第2上清に加えて第3中間体を生成することにより、追加の沈殿ステップを実行する。沈殿物は、第1または第2の塩(例えば、クエン酸塩、酢酸塩、およびグルコン酸塩)、別の塩(例えば、塩化ナトリウム塩、硫酸アンモニウム塩、カプリル酸塩など)、ポリエチレングリコール、アルコール、または別の沈殿物を含み得る。次に、第3中間体を遠心分離および/または濾過により分離して、第3上清と第3沈殿物を生成することが可能である。第3上清と第3沈殿物を、それぞれ、任意選択的な精製ステップ(例えば、上記のように、クロマトグラフィーステップ、溶媒/界面活性剤処理、バイオバーデン濾過、および/または濃縮ステップ)にかけて、それぞれ第1タンパク質および第2タンパク質を生成することができる。多数のタンパク質生成物を、第3上清および第3沈殿物の何れかまたは両方より精製することができることを理解されたい。
ヒト血漿を、米国特許第7,879,331号明細書に記載されているように、12%クエン酸塩および22%クエン酸塩のタンパク質沈殿ステップに続けてかけた。22%クエン酸塩で分画より生じる上清のクエン酸塩濃度を、別個の研究で、26%。30%、または34%に上げた。結果として生じる中間体を撹拌しながら5℃未満まで冷やし、この温度で60分間撹拌した。沈殿物は、(米国特許第7,879,331号明細書に記載されているように)遠心分離により分離し、分画を、アルファ1−プロテイナーゼインヒビター(A1PI)、アルブミン、および総タンパク質について、ネフェロメトリーにより解析した。結果を表1に表す。値は、100%(上清と沈殿物の合計)に正規化した、上清(上清)および沈殿物(沈殿物)それぞれで見られるパーセンテージである。
有利なことに、クエン酸塩濃度を上げると、結果として生じる上清から追加のタンパク質が除去された一方、アルファ1−プロテイナーゼインヒビターとアルブミンの小分画のみが沈殿した。そのため、第3沈殿ステップを実行することは、結果として生じる上清から非生成物タンパク質を除去すると同時に、タンパク質生成物の小分画のみをなくすことにおいて有用であり得る。本発明の主題のさらなる態様では、生成物を血液系物質から生成するプロセスは、第1モジュールおよび第2モジュールを含み得る。各モジュールは、インプット物質を受け取り、少なくとも1つのアウトプット物質を産生するように構成される。第1モジュールおよび第2モジュールは、それぞれ、分画モジュール、クロマトグラフィーモジュール、濾過モジュール、分離モジュール、または滅菌モジュールを含み得る。あるモジュールのインプットは、別のモジュールのアウトプットを含み得る。
図10は、本発明の主題により考えられるいくつかのモジュールを描く。分画モジュールでは、インプット物質を、塩分画、Cohn分画、もしくはNitschmannおよびKistlerの分画、カプリル酸塩分画、またはその変種により分画する。塩をインプット物質に加え、中間体を生成する。モジュールが本明細書で検討する塩分画ステップを利用する場合、アウトプット物質は、少なくとも、上清とペーストまたは沈殿物を含む。
クロマトグラフィーモジュールに関しては、インプット物質は、クロマトグラフィープロセスにより、フロースルー、ウォッシュ、および1つまたは複数の溶離液に分離する。適切なクロマトグラフィープロセスには、アフィニティクロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、フルオロアパタイトクロマトグラフィー、拡張床吸着クロマトグラフィー、または固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィーが含まれる。クロマトグラフィーモジュールのアウトプット物質は、少なくともフロースルーと溶離液を含み、ウォッシュを含む場合もある。
限外濾過モジュールおよびダイアフィルトレーションモジュールについても考える。ダイアフィルトレーションモジュールまたは限外濾過モジュールは、それぞれ、インプット物質を脱塩し濃縮する適切な濾過方法であることを理解されたい。さらに、ウイルス減少モジュール(例えば、ナノ濾過または本明細書に記載の別の方法による)およびウイルス不活性化モジュール(例えば、溶媒/界面活性剤処理または本明細書に記載の別の方法による)も考えられる。さらに、還元剤/固定化モジュール(例えば、TCEP、DTT、βME、または他の適切な還元剤を用いた処理による)についても、本発明の主題により考える。
モジュールの配列は、血液系物質から種々の生成物を生成するように構成され得る。本発明プロセスで利用するモジュールの数に関し、発明者らは、必要なモジュールの数は、所望の生成物を生成するのに必要なモジュールプロセスステップ数に左右されると考える。一部の実施形態は1つまたは2つのモジュールを含む。本発明の主題の好適な方法は、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれ以上のモジュールを含む。
図11は、図10のモジュールを利用する本発明の主題のいくつかのサンプルモジュールプロセスを描く。1つのモジュールからのアウトプットが、別のモジュールのインプットとして使用されることを理解されたい。図11のプロセスAに描くように、血液系物質は、分画モジュールのインプット物質として使用される。分画モジュールのアウトプット(上清およびペースト)の少なくとも1つは、ダイアフィルトレーションモジュールのインプット物質として使用される。ダイアフィルトレーションモジュールのアウトプットは、次に、下流プロセスのインプット物質としてさらに使用される。
図11のプロセスBは、分画モジュールにおいて、インプット物質として血液系物質を使用する。分画モジュールのアウトプット(上清およびペースト)の少なくとも1つは、ダイアフィルトレーションモジュールのインプット物質として使用される。ダイアフィルトレーションモジュールのアウトプットは、次に、クロマトグラフィーモジュール1のインプット物質として使用される。クロマトグラフィーモジュール1のアウトプット(フロースルー、ウォッシュ、および溶離液)の少なくとも1つは、クロマトグラフィーモジュール2のインプット物質として使用される。クロマトグラフィーモジュール1および2は、同じ種類のクロマトグラフィーとすることも可能であるし、異なる種類のクロマトグラフィーとすることも可能であることを理解されたい。クロマトグラフィーモジュール2のアウトプットの少なくとも1つは、ウイルス不活性化モジュールのインプット物質として使用される。ウイルス不活性化モジュールのアウトプットは、ウイルス減少モジュールのインプット物質として使用される。ウイルス減少モジュールのアウトプットは、血液系タンパク質(例えば、アルファ1−プロテイナーゼインヒビター、ガンマグロブリン、イムノグロブリン、アルブミン、第VIII因子、第IX因子、第XIII因子、タンパク質C、アンチトロンビンIII、フィブリノゲン、およびC1エステラーゼインヒビターの少なくとも1つ)を含む。
図11のプロセスCは、分画モジュール1のインプット物質として血漿を使用する。分画モジュール1のアウトプット(上清およびペースト)の少なくとも1つは、分画モジュール2のインプット物質として使用される。分画モジュール1および2は、同じ種類の分画とすることも可能であるし、異なる種類の分画とすることも可能であることを理解されたい。分画モジュール2のアウトプットの少なくとも1つは、ウイルス不活性化モジュールのインプット物質として使用される。ウイルス不活性化モジュールのアウトプットは、ダイアフィルトレーションモジュールのインプット物質として使用される。ダイアフィルトレーションモジュールのアウトプットは、次に、クロマトグラフィーモジュール1のインプット物質として使用される。クロマトグラフィーモジュール1のアウトプット(フロースルー、ウォッシュ、および溶離液)の少なくとも1つは、還元剤モジュールのインプット物質として使用される。還元剤モジュールのアウトプットは、次に、クロマトグラフィーモジュール2のインプット物質として使用される。クロマトグラフィーモジュール1および2は、同じ種類のクロマトグラフィーとすることも可能であるし、異なる種類のクロマトグラフィーとすることも可能であることを理解されたい。クロマトグラフィーモジュール2のアウトプットの少なくとも1つは、ウイルス減少モジュールのインプット物質として使用される。ウイルス減少モジュールのアウトプットは、血液系タンパク質(例えば、アルファ1−プロテイナーゼインヒビター、ガンマグロブリン、イムノグロブリン、アルブミン、第VIII因子、第IX因子、第XIII因子、タンパク質C、アンチトロンビンIII、フィブリノゲン、およびC1エステラーゼインヒビターの少なくとも1つ)を含む。
さらに、第1モジュールのインプット物質は、血液系物質および任意の他のモジュールからのアウトプット物質、例えば、フロースルー、溶離液、上清、ペースト、または溶解ペーストの少なくとも1つを含み得ると考えられる。1つのモジュールからのアウトプット物質を同じモジュールに戻して再生利用することも除外されない。
本発明のある実施形態を記載し、特許請求するために使用される、成分量、濃度、反応条件などの特性を表す数は、場合によっては、用語「約」により修正されることを理解されたい。したがって、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載する数値パラメータは、特定の実施形態により得られると考えられる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。数値パラメータは、報告された有効数字の数に照らし、かつ、通常の四捨五入技法の適用により解釈するべきである。本発明の一部の実施形態の広い範囲を説明している数値範囲および数値パラメータは近似値であるものの、特定の例において記載した数値は、可能な限り正確に報告している。本発明の一部の実施形態に示す数値は、各試験測定法で見られる標準偏差より必ず生じる、ある特定のエラーを含み得る。
本明細書の記載および続く特許請求の範囲全体で使用される場合、「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「その(the)」の意味には、文脈が明らかに他を意味する場合を除き、複数の指示対象が含まれる。また、本明細書の記載で使用される場合、「において(in)」の意味には、文脈が明らかに他を意味する場合を除き、「において(in)」および「の上で(on)」が含まれる。
本明細書における数値範囲の記載は、単に、その範囲内に含まれる各別個の値を個別に言及する簡略な方法として機能することを意図するものである。本明細書で他に指示がない限り、各別個の値は、本明細書で個別に言及されたものとして、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の全ての方法は、本明細書において他が指示されない限りまたは文脈において明らかに相反しない限り、任意の適切な順番で実施することができる。本明細書のある特定の実施形態に関連し提供される任意のおよび全ての例または例示的な言葉(例えば「のような」)の使用は、単に本発明をより良く明らかにすることを意図するものであり、本来特許請求される本発明の範囲に制限を課すものではない。本明細書におけるいかなる言い回しも、本発明の実施に不可欠な、特許請求されない任意の要素を示すものと解釈するべきではない。
本明細書に開示する本発明の代替要素または実施形態のグループ分けは、限定と解釈するべきではない。各グループの構成要素は、個別に、またはグループの他の構成要素もしくは本明細書で見られる他の要素との任意の組み合わせで言及され、特許請求され得る。グループの1つまたは複数の構成要素が、便宜上および/または特許性を理由として、グループに含まれることもグループから外されることもあり得る。このような任意の包含または削除が生じる場合、本明細書は、ここでは、修正されたグループを含有し、これにより、添付の特許請求の範囲で使用される全てのマーカッシュグループの記載を満たすとみなされる。
すでに記載したものに加え、さらに多くの修正が本明細書の発明概念から逸脱することなく可能であることが当業者には明白であろう。したがって、本発明の主題は、添付の特許請求の範囲を除いて制限されるべきではない。さらに、本明細書および特許請求の範囲の両方の解釈において、全ての用語は文脈に即した、実現可能な最も広範な方法で解釈されるべきである。特に、用語「含む」および「含んだ」は、要素、コンポーネント、またはステップを非排他的な方法で言及し、言及された要素、コンポーネントまたはステップが、明確に言及されていない他の要素、コンポーネント、またはステップと共に存在し、利用され、または組み合わされ得ることを示すと解釈されるべきである。本明細書および特許請求の範囲が、A、B、C…及びNからなる群から選択されるものの少なくとも1つに言及する場合、その文章は、AとN、またはBとNなどではなく、その群から1つの構成要素のみを要求しているものと解釈するべきである。
本明細書での議論は、本発明の主題の多くの実施形態例を提供する。各実施形態は発明要素の単一の組み合わせを表すが、本発明の主題は、開示する要素の可能な組み合わせを全て含むと考えられる。したがって、ある実施形態が要素A、B、およびCを含み、第2実施形態が要素BおよびDを含む場合、本発明の主題は、また、明示的に開示されていなくとも、A、B、C、またはDの他の残りの組み合わせを含むとも考えられる。