JP2019209768A - 車両用ホイール - Google Patents
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Abstract
Description
このヘルムホルツレゾネータは、ウェル部の外周面に向けて押し付けられるとその両縁部が弾性変形することで周溝に容易に嵌り込む。そのため、このようなヘルムホルツレゾネータによれば、ホイールに対する取り付けを容易に行うことができる。
しかしながら、ウェル部の外周面に取り付けられたヘルムホルツレゾネータには、車両走行時のタイヤの高速回転によって極めて大きな遠心力が生じる。そのため、接着剤でリムに取り付けられたヘルムホルツレゾネータの固着力を一段と向上させた車両用ホイールが望まれる。
以下では、まず車両用ホイールの全体構成について説明した後に、ヘルムホルツレゾネータとしての副気室部材と、接着剤によるリムへの副気室部材の取付構造と、について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両用ホイール1の斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係る車両用ホイール1は、例えばアルミニウム合金、マグネシウム合金などの金属製のリム11に、例えばポリアミド樹脂などの合成樹脂製の副気室部材10(ヘルムホルツレゾネータ)が取り付けられて構成されている。
図1中、符号12は、リム11を図示しないハブに連結するためのディスクである。
次に、副気室部材10について説明する。
図2は、副気室部材10の全体斜視図である。図3は、図1のIII−III断面図である。
図2に示すように、副気室部材10は、一方向に長い部材であって、本体部13と、管体18と、を備えている。このような副気室部材10は、本体部13の中央でホイール幅方向Yに延びる仕切り壁16を境に、ホイール周方向Xに対称形状となるように構成されている。
本体部13は、内側が中空になっている。この中空部(図示省略)は、後記の副気室SC(図3参照)を形成している。この中空部は、仕切り壁16によってホイール周方向Xに二分されている。
具体的には、本体部13は、ウェル部11cの外周面11dに沿って配置される底板25bと、縦壁15に沿って配置される側板25cと、底板25bと側板25cとの間で斜辺を形成する上板25aと、が直角三角形を形成するように相互に接続された構成となっている。
つまり、側板25cと底板25bとは、その挟角で直角を形成している。上板25aは、側板25c側からホイール幅方向Yに遠ざかるほど、上板25aが底板25b側に近づくように傾斜している。
なお、側板25cは、特許請求の範囲にいう「底板の両端縁のうち一方の端縁から立ち上がる側板」に相当する。
このような上板25aと底板25bと側板25cとは、本体部13の内側に副気室SCを囲繞形成している。
図1に示すように、管体18は、本体部13におけるホイール幅方向Yの一側(車両用ホイール1の内側)に偏位した位置で、本体部13からホイール周方向Xに突出するように形成されている。
連通孔18aは、本体部13の内側に形成される副気室SC(図3参照)と、ウェル部11c(図3参照)上でタイヤ(図示省略)との間に形成されるタイヤ空気室9(図3参照)と、を連通させている。
次に、リム11(図1参照)に対する副気室部材10(図1参照)の取付構造について説明する。
図3に示すように、副気室部材10の本体部13は、接着剤21でリム11に接続されている。接着剤21は、ウェル部11cの外周面11dから縦壁15に掛けて連続的な膜を形成している。
図4に示すように、縦壁15における接着剤21の膜厚T1は、ウェル部11cの外周面11dにおける接着剤21の膜厚T2よりも薄くなっている。
接着剤21は、薄いほうがせん断に強く、厚いほうが剥離に強い。
図5は、図3に示す副気室部材10とリム11との間に介在する接着剤21の膜厚[μm]と、この接着剤21のせん断強度[N/mm2]、及び剥離強度[N/mm]との関係を示すグラフである。なお、せん断強度[N/mm2]は、JISK6850(1999)に準拠したものであり、剥離強度[N/mm]は、JISK6854(1999)に準拠したものである。
したがって、本実施形態での副気室部材10(図3参照)は、縦壁15(図3参照)の接着剤21(図3参照)の膜厚を図5に示すT1とし、外周面11d(図3参照)の接着剤21の膜厚を図5に示すT2とすることによって、リム11に対する副気室部材10の固着力が最大となる。
ちなみに、このような接着剤21の硬化形態としては、特に制限はないが、中でも化学反応型のものが好ましい。
接着剤21の塗布法としては、例えばバーコート法、ロールコート法、スプレーコート法、刷毛塗り法、ホットメルト法などが挙げられるがこれに限定されるものではない。
また、特に、遠心力F(図3参照)が働いた際に、せん断力が生じる接着剤21の付与面がレーザ食刻面で形成されたものがさらに好ましい。つまり、図3に示す縦壁15及び/又は本体部13の側板25cがレーザ食刻面で形成されたものがさらに好ましい。
図6に示すように、縦壁15の表面は、レーザ食刻面22で形成されている。
このレーザ食刻面22は、食刻溝22aと、畝部22bとで構成されている。
本実施形態での食刻溝22aは、例えばYAGレーザを縦壁15の表面上で一方向に走査させた際に縦壁15に形成されたものであり、所定の溝深さで図6の紙面表側から裏側に向けて延びたものを想定している。
また、本実施形態での畝部22bは、食刻溝22aの幅方向両側のそれぞれで、所定高さの盛り上がりで形成され、食刻溝22aの延在方向に沿って延びている。
なお、本実施形態での食刻溝22a及び畝部22bの延在方向は、ホイール周方向Xに設定されたものを想定しているがこれに限定されるものではない。
これによりレーザ食刻面22には、食刻溝22a内に深く入り込む接着剤21と、オーバハング部やアーチに係止される接着剤21とによって、接着剤21のアンカ構造が構築される。
したがって、リム11に対する副気室部材10の固着力がより一層強固となる。
なお、このようなレーザ食刻面22は、前記のように、本体部13の側板25cの表面にも形成できることは言うまでもない。
図7に示すように、本体部13の上板25aと側板25cとの接合部には、R部13aが形成されている。
そして、縦壁15aと第1側板25c1との間に配置される接着剤21は、R部13aの上方に広がって、これらR部13aを上方から覆っている。
このR部13aの上方を覆う接着剤21によって、リム11に対する副気室部材10の固着力がより一層高められる。
次に、本実施形態の車両用ホイール1の奏する作用効果について説明する。
本実施形態の車両用ホイール1は、副気室部材10が接着剤21によってリム11に取り付けられている。
このような車両用ホイール1によれば、従来の車両用ホイール(例えば、特許文献1参照)と異なってリム11に副気室部材10を取り付けるための周溝を切削加工する必要がない。したがって、この車両用ホイール1によれば、製造工程が簡素化されて従来よりも製造コストを一段と削減することができる。
このような車両用ホイール1においては、外周面11dと底板25bとの間に配置される接着剤21は、その剥離方向に働こうとする副気室部材10に掛る遠心力Fに抗する。また、縦壁15と側板25cとの間に配置される接着剤21は、そのせん断方向に働こうとする副気室部材10に掛る遠心力Fに抗する。
つまり、接着剤21は、底板25b及び側板25cにおける限られた接着面で、その剥離方向とせん断方向との両方向にて遠心力Fに抗することで、リム11に対する副気室部材10の固着力を一段と向上させることができる。
一方、ホイール回転時に上板25aに掛る遠心力は、mrω2(ω:角速度)で表される。つまり、上板25aを形成する素材(例えば、樹脂)の質点mに着目すると、前記のように傾斜する上板25aの質点mの回転中心からの距離rは、縦壁15から離れるほど短くなる。その結果、副気室部材10に働く遠心力は、縦壁15から離れるほど減少する。
これとは逆に、副気室部材10の「縦壁15に隣接する部分」は、側板25c(側壁)を形成する素材の質量も加えられて、遠心力が最も大きく働く。
図8は、第1変形例に係る車両用ホイール1の構成説明図である。図9は、第2変形例に係る車両用ホイール1の構成説明図である。図10は、第3変形例に係る車両用ホイール1の構成説明図である。なお、これら第1変形例から第3変形例において、前記実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
この本体部13は、ホイール幅方向Yの内側で、外周面11dからリムフランジ側へ立ち上る縦壁15aと、ホイール幅方向Yの外側で、外周面11dからリムフランジ側へ立ち上る縦壁15bと、の間に嵌り込むように配置されている。
なお、縦壁15aは、前記実施形態での縦壁15(図3参照)と同様に、外周面11dとのなす角度が略直角になっている。
また、縦壁15bは、ホイール径方向Zの外側に向かうほどホイール幅方向Yの外側に開くように傾斜している。
つまり、ウェル部11cの外周面11dと縦壁15aとの成す角度が略直角になっていることで、底板25bと第1側板25c1とが略直角を成し、底板25bと第2側板25c2とが略直角を成している。つまり、断面視での本体部13は、第2側板25c2が略直角台形の上底を成し、第1側板25c1が略直角台形の下底を成している。
これにより上板25aは、第1側板25c1側から第2側板25c2に向かうほどホイール径方向Zの内側に変位するように傾斜している。
また、縦壁15aと第1側板25c1とは、膜厚T1(図4参照)の接着剤21で接着され、底板25bと外周面11dとは、膜厚T2(図4参照)の接着剤21で接着されている。そして、膜厚T1は、膜厚T2よりも薄くなっている(膜厚T1<膜厚T2)。
なお、第2側板25c2は、リム11と接着されておらず、特許請求の範囲にいう「他方の端縁から立ち上がる側板」に相当する。
このような車両用ホイール1においては、上板25aを形成する素材の質点m、言い換えれば遠心力F(mrω2:但しω回転角速度)の構成要素である質点mの回転中心からの距離rは、第1側板25c1から離れるほど短くなる。その結果、本体部13に働く遠心力Fは、接着された第1側板25c1から離れるほど減少する。
したがって、車両用ホイール1によれば、第2側板25c2側でのリム11に対する接着を省略することができる。
タイヤバルブ2は、一端がタイヤ空気室9内に臨み、他端がリム11の外側に臨んでいる。そして、バルブコア(図示省略)を内蔵するバルブステム3は、リム11に設けられたバルブ挿通孔4に圧入されている。
この第2変形例に係る車両用ホイール1は、取付け補強部5がリム11と接着されていない第2側板25c2の高さ方向(ホイール径方向Zの外側)の上端に配置されている。
そして、取付け補強部5は、ホイール径方向Zの外側から第2側板25c2に当接している。
これによりバルブステム3(取付け補強部5)は、副気室部材10が遠心力Fによってホイール径方向Zの外側に向けて変位しようとするところ、その変位を防止するいわゆる副気室部材10の抜け止め部材となっている。
なお、変形例2の車両用ホイール1では、抜け止め部材としてタイヤバルブ2を使用しているが、タイヤバルブ2とは別途に、他の部材を抜け止め部材として配置することもできる。
この金属プレート24は、外周面11dとの対向面24aが、接着剤21に対する接着用の平坦面を有している。この平坦面としては、金属プレート24の表面が、例えば電解研磨、バフ研磨などによって1μm以下の平面度に加工されたものを想定している。
また、縦壁15aに対する金属プレート24の対向面24bは、前記の平坦化処理された後にさらにレーザ食刻が施されたもの(レーザ食刻面22(図6参照))を想定している。
このような副気室部材10は、金属プレート24を予め金型内に配置したインサート成形で得ることができる。
また、この第3変形例の車両用ホイール1によれば、金属プレート24の補強効果によって、副気室部材10の本体部13の剛性をさらに高めることができる。
また、この第3変形例の車両用ホイール1は、金属プレート24の側面14との対向面24bがレーザ食刻面22で形成されているので、リム11に対する副気室部材10の固着力がより一層強固となる。
2 タイヤバルブ(抜け止め部材)
5 取付け補強部
10 副気室部材(ヘルムホルツレゾネータ)
11 リム(ホイール)
11c ウェル部
11d 外周面
13 本体部
13a R部
15a 縦壁
15b 縦壁
18 管体
18a 連通孔
21 接着剤
22 レーザ食刻面
22a 食刻溝
22b 畝部
24 金属プレート
25a 上板
25b 底板
25c 側板
25c1 第1側板(側板)
25c2 第2側板(側板)
F 遠心力
SC 副気室
T1 膜厚
T2 膜厚
X ホイール周方向
Y ホイール幅方向
Z ホイール径方向
Claims (5)
- ホイールに接着されたヘルムホルツレゾネータを備え、
前記ヘルムホルツレゾネータは、底板と、前記底板の両端縁のうち一方の端縁から立ち上がる側板と、を有するとともに、
前記底板と、前記側板とがホイールに接着されていることを特徴とする車両用ホイール。 - 前記ヘルムホルツレゾネータは、前記底板と対向する上板をさらに備え、
前記上板は、前記端縁の反対側で前記側板と接続されるとともに、前記側板から離れるほど前記底板に近づくように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の車両用ホイール。 - 前記ヘルムホルツレゾネータは、前記底板の両端縁のうち他方の端縁から立ち上がるとともにホイールと接着されていない側板をさらに有し、
前記両端縁のそれぞれの前記側板のうち、ホイールと接着されていない前記側板の前記底板からの高さは、ホイールと接着されている前記側板の前記底板からの高さよりも低いことを特徴とする請求項1に記載の車両用ホイール。 - 前記底板の両端縁のうち他方の端縁側におけるホイールの所定位置には、前記ヘルムホルツレゾネータの抜け止め部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ホイール。
- 前記抜け止め部材は、タイヤバルブであることを特徴とする請求項4に記載の車両用ホイール。
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