JP2019157289A - 難燃性紡績糸 - Google Patents
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Abstract
【課題】安全で環境に対応した高い難燃性を示すと共に、特に防護衣料において、より安全な性能を長期にわたり提供することが可能な耐久性に優れた、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を用いた紡績糸を提供すること。【解決手段】有機溶剤に5%以上溶解し、該有機溶剤の60%水溶液には不溶であり、熱分解開始温度が300℃以上である有機リン化合物を、紡糸ドープに対しリン含有量が0.2〜5.0wt%となるように添加した後、紡糸して得た原綿を用いて紡績する。【選択図】なし
Description
本発明は、メタ型全芳香族ポリアミド繊維からなる紡績糸に関するものであり、さらに詳しくは、該紡績糸を構成する繊維の燃焼時限界酸素指数LOIが少なくとも33以上である難燃性能を持ったメタ型全芳香族ポリアミド繊維からなる紡績糸に関するものである。
従来、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸ジハライドとから製造される全芳香族ポリアミドが耐熱性及び難燃性に優れていることは周知であり、また、これらの全芳香族ポリアミドはアミド系極性溶媒に可溶であり、全芳香族ポリアミドを該溶媒に溶解した重合体溶液から乾式紡糸、湿式紡糸、半乾半湿式紡糸等の方法により繊維となし得ることもよく知られている。これら全芳香族ポリアミドのうち、ポリメタフェニレンイソフタルアミドで代表されるメタ型全芳香族ポリアミド(「メタアラミド」と称されることもある)の繊維からなる紡績糸は、耐熱・難燃性繊維として特に有用なものであり、これらの特性を発揮する分野、例えば、フィルター、電子部品等の産業用途や、耐熱性、防炎性、耐炎性が重視される防護衣等の防災安全衣料用途等に用いられている。
これらの分野においてメタ型全芳香族ポリアミド繊維からなる紡績糸の難燃性は、火災防止、人命保護の観点からもより高く安定したものが求められている。
これらの分野においてメタ型全芳香族ポリアミド繊維からなる紡績糸の難燃性は、火災防止、人命保護の観点からもより高く安定したものが求められている。
そこで、メタ型全芳香族ポリアミド繊維からなる紡績糸の難燃性を改善するため、ポリマーに有機リン化合物、含リンフェノール樹脂、ハロゲン化合物等を添加する方法が提案されており、ハロゲン原子含有の有機リン化合物を配合して難燃性を改善する方法が提案されている(下記特許文献1参照)。
しかし、繊維を安定して加工するのを妨げないように添加されるこれらの剤は低分子量の有機化合物であるため、繊維成形加工時にその一部が排出・脱落されてしまう傾向があり、さらにはハロゲン含有の為に環境問題を危惧した近年の脱ハロゲン化の動きに逆行している。
一方、メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、その製造プロセスにアミド系有機溶媒を使用することが一般的であり、このことにより繊維中にアミド系溶媒が残留することが知られており、このことにより、本来メタ型全芳香族ポリアミドが有している難燃性が充分に発揮できず、難燃性に劣るものしか得られないという欠点を有している(特許文献2〜10)。
メタ型全芳香族ポリアミド繊維からなる紡績糸の難燃性能を向上させるには、この残留溶媒量を低減することが望ましいと考え、メタ型全芳香族ポリアミドの重量を基準にして0.1〜10重量%の層状粘土鉱物を含有させ、この繊維中に残存する溶媒量を1.0%以下とし、本来メタ型全芳香族ポリアミドが有している難燃性を有効に発現させ、難燃剤を配合することなしに難燃効果の良好なメタ型全芳香族ポリアミド繊維を得る方法が提案されている。(特許文献11)
しかし、この方法での難燃性向上には限界があり、それ以上の性能を与えるには難燃剤の配合が必須となり、当初の課題が十分に解決されていなかった。
さらに、繊維中に添加が容易であり、安価な難燃剤の多くは、160℃〜300℃で熱分解するために該繊維の製造段階で分解が開始し、黄色く変色するため、白色の繊維を得ることが出来なかった。
さらに、繊維中に添加が容易であり、安価な難燃剤の多くは、160℃〜300℃で熱分解するために該繊維の製造段階で分解が開始し、黄色く変色するため、白色の繊維を得ることが出来なかった。
本発明は、上記背景技術における問題点の解決を課題とし、その目的は、より安全で環境に対応した難燃性の高いメタ型全芳香族ポリアミド繊維からなる紡績糸を提供することにある。
発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討をおこなった結果、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造に用いる有機溶剤に5%以上溶解し、該有機溶剤60%水溶液においては不溶となる有機リン化合物からなる難燃剤をメタ型全芳香族ポリアミド繊維中に対しリン含有量が0.2%から5.0%となるように添加することで、その繊維の限界酸素指数LOIが少なくとも33以上と、難燃剤の添加なしでは発現し得ない高い難燃性能を持ったメタ型全芳香族ポリアミド繊維が得られることを見出し、難燃性の高い紡績糸を得ることができた。
即ち、本発明によれば、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む紡績糸であって、該繊維中におけるリン含有量が0.2wt%以上となるように有機リン化合物が含有されており、該繊維の燃焼時限界酸素指数LOIが33以上であり、かつ明度L値が85以上である難燃性紡績糸が得られる。
該有機リン化合物は、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造に用いる有機溶剤に5%以上溶解するため、紡糸ドープへの添加が容易であり、該有機リン化合物とメタ型全芳香族ポリアミドがともに溶解状態で均一に混合されることから繊維成形加工時に単糸切れなどの不具合が起こりにくくなり安定した繊維の製造が可能となる。
また、該有機リン化合物は、該有機溶剤60%水溶液において不溶となる特性を持っていることから、繊維成形加工時においてその凝固液となる該有機溶剤水溶液中への溶出がなく、繊維中に効率よく残留するため難燃性能発現への寄与率が高くなる。
さらに、該有機リン化合物の熱分解開始温度が300℃以上である時、繊維成形加工時に実施される熱処理による分解は、ほとんど起こらず、変色や強度低下も小さくなり、L値が85以上のメタ型全芳香族ポリアミド繊維を得ることができる。さらに該有機リン化合物にハロゲンが含まれていないものを選択することにより環境問題への対応も可能となる。
また、該有機リン化合物は、該有機溶剤60%水溶液において不溶となる特性を持っていることから、繊維成形加工時においてその凝固液となる該有機溶剤水溶液中への溶出がなく、繊維中に効率よく残留するため難燃性能発現への寄与率が高くなる。
さらに、該有機リン化合物の熱分解開始温度が300℃以上である時、繊維成形加工時に実施される熱処理による分解は、ほとんど起こらず、変色や強度低下も小さくなり、L値が85以上のメタ型全芳香族ポリアミド繊維を得ることができる。さらに該有機リン化合物にハロゲンが含まれていないものを選択することにより環境問題への対応も可能となる。
本発明によれば、有機リン化合物からなる難燃剤がメタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造に用いる有機溶剤に5%以上溶解し、紡糸ドープ中で該メタ型全芳香族ポリアミドと溶解混合されるため均一に混合され、繊維成形加工において糸切れなどの生産性低下が少なくなる。
また、該有機溶剤60%水溶液において不溶となる特性を持っていることから、繊維成形加工時において使用される凝固液となる該有機溶剤水溶液中への溶出がなく、繊維中に効率よく残留することから、該有機溶剤水溶液に溶解する難燃剤を用いた場合に対し少ない添加量で効果を得ることができる。
また、コスト面・環境面から該有機溶媒は使い捨てとせず凝固液から抽出・蒸留・回収され再利用するが、この工程への難燃剤の混入がなく腐食などの影響を与えることが無くなる。さらに熱分解開始温度が300℃以上である該有機リン化合物を使用することでL値が85以上の白色メタ型全芳香族ポリアミド繊維からなる紡績糸を得ることが可能となる。
本発明におけるメタ型全芳香族ポリアミドは、メタ型芳香族ジアミンとメタ型芳香族ジカルボン酸ハライドとを原料として、例えば溶液重合や界面重合させることにより製造されるポリアミドであるが、本発明の目的を阻害しない範囲内で、例えばパラ型等の他の共重合成分を共重合したものであってもよい。
上記メタ型芳香族ジアミンとしては、メタフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフエニルスルホン等及びこれらの芳香環にハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基等の置換基を有する誘導体、例えば2,4−トルイレンジアミン、2,6−トルイレンジアミン、2,4−ジアミノクロルベンゼン、2,6−ジアミノクロルベンゼン等を使用することができる。なかでも、メタフェニレンジアミン、またはメタフェニレンジアミンを70モル%以上含有する上記の混合ジアミンが好ましい。
また、上記メタ型芳香族ジカルボン酸ハライドとしては、イソフタル酸クロライド、イソフタル酸ブロマイド等のイソフタル酸ハライド、及びこれらの芳香環にハロゲン、炭素数1〜3のアルコキシ基等の置換基を有する誘導体、例えば3−クロルイソフタル酸クロライド、3−メトキシイソフタル酸クロライドを使用することができる。なかでも、イソフタル酸クロライド又はイソフタル酸クロライドを70モル%以上含有する上記の混合カルボン酸ハライドが好ましい。
上記のジアミンとジカルボン酸ハライド以外で使用し得る共重合成分としては、芳香族ジアミンとして、パラフェニレンジアミン、2,5−ジアミノクロルベンゼン、2,5−ジアミノブロムベンゼン、アミノアニシジン等のベンゼン誘導体、1,5−ナフチレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等が挙げられ、一方、芳香族ジカルボン酸ハライドとして、テレフタル酸クロライド、1,4−ナフタレンジカルボン酸クロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド、4,4’−ビフェニルジカルボン酸クロライド、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸クロライド等が挙げられる。
これらの共重合成分の共重合比は、あまりに多くなりすぎるとメタ型全芳香族ポリアミドの特性が低下しやすいので、メタ型全芳香族ポリアミドの全酸成分を基準として20モル%以下が好ましい。特に、好適なメタ型全芳香族ポリアミドは、全繰返し単位の80モル%以上がメタフェニレンイソフタルアミド単位からなるポリアミドであり、なかでもポリメタフェニレンイソフタルアミドが好ましい。
かようなメタ型全芳香族ポリアミドの重合度は、30℃において97%濃硫酸を溶媒として測定した固有粘度(IV)が1.3〜3.0の範囲が適当である。
かようなメタ型全芳香族ポリアミドの重合度は、30℃において97%濃硫酸を溶媒として測定した固有粘度(IV)が1.3〜3.0の範囲が適当である。
次にここで得られたメタ型全芳香族ポリアミドを溶解する溶媒に溶解して紡糸ドープを調整するが、重合後メタ型全芳香族ポリアミドを単離せずそのまま紡糸ドープとすることも可能である。ここで用いる溶媒としてアミド系溶媒を一般的に用いることができ、主なアミド系溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等を例示することができる。これらのなかでは溶解性と取り扱い安全性の観点から、NMPまたはDMAcを用いることが好ましい。
溶液濃度としては、次工程である紡糸・凝固工程での凝固速度および重合体の溶解性の観点から、適当な濃度を適宜選択すればよく、例えば、ポリマーがポリメタフェニレンイソフタルアミドで溶媒がNMPの場合には、通常は10〜30質量%の範囲とすることが好ましい。
本発明において、この紡糸ドープに有機リン化合物からなる難燃剤を添加するが、特に紡糸ドープの溶媒に5%以上溶解し、さらにこの溶媒の60%水溶液には溶解しない特性を持ったものを選定して添加することで、紡糸ドープ中に溶解させ均一に混ぜ合わすことが可能となり、繊維成形加工後の繊維中への残留率も高く効率の良い加工となる。
一方、溶媒に5%未満しか溶解しない場合、紡糸ドープに必要な量を溶解することが困難となる。さらにこの溶媒に不溶な場合、紡糸ドープに添加するには均一に分散させることが必要となるが、非常に難しい工程となる。また均一に分散できたとしても粒子または、粒子の凝集物が存在すると繊維成形加工時に単糸が切断するなどの不具合が多く発生する上、繊維化できたとしても該繊維の強度が低下する。
また、紡糸ドープの溶媒に5%以上溶解し、この溶媒の60%水溶液にも十分溶解するものは、繊維成形加工時にこの溶媒と一緒に難燃剤も抜け落ちてしまいあらかじめ多くの剤を添加しておかなければその性能を発現することが出来ず、効率が悪く不適切な加工となる。
該有機リン化合物の熱分解開始温度は、300℃以上であることが好ましく、さらに330℃以上であることがより好ましい。この熱分解開始温度が高いと有機リン酸化合物による難燃性能が高くなるだけでなく、メタ型全芳香族ポリアミドの繊維成形加工時に実施する熱処理加工時に分解が抑えられそれに起因する変色や難燃性の低下を防ぐことができる。
さらに該有機リン化合物にハロゲンが含まれていないものを選択することで、環境問題への対応も可能となる。
さらに該有機リン化合物にハロゲンが含まれていないものを選択することで、環境問題への対応も可能となる。
ここで用いる有機リン化合物からなる難燃剤として、芳香族リン酸エステル類、芳香族縮合リン酸エステル類、含ハロゲンリン酸エステル類、含ハロゲン縮合リン酸エステル類の中から上記特徴にあったものを選定することができる。特に紡糸ドープの溶媒に5%以上溶解し、さらにこの溶媒の60%水溶液には溶解しない特性を持ったものに該当するのは、芳香族縮合リン酸エステル類に多く、主に、レゾルシノールビス−ジフェニルホスフェート(RDP)レゾルシノールビス−ジキシレニルホスフェート(RDX)ビスフェノールAビス−ジフェニルホスフェート(BDP)などを使用することができる。
次に、上記のとおり調製された紡糸ドープを凝固液中へ紡出し凝固させる。紡糸装置としては特に限定されるものではなく、従来公知の湿式紡糸装置を使用することができる。
また、安定して湿式紡糸できるものであれば、紡糸口金の紡糸孔数、配列状態、孔形状等は特に制限する必要はなく、例えば、孔数が500〜30,000個、紡糸孔径が0.05〜0.2mmのスフ用の多ホール紡糸口金等を用いてもよい。
また、紡糸口金から紡出する際の紡糸ドープの温度は、10〜90℃の範囲が適当である。
また、安定して湿式紡糸できるものであれば、紡糸口金の紡糸孔数、配列状態、孔形状等は特に制限する必要はなく、例えば、孔数が500〜30,000個、紡糸孔径が0.05〜0.2mmのスフ用の多ホール紡糸口金等を用いてもよい。
また、紡糸口金から紡出する際の紡糸ドープの温度は、10〜90℃の範囲が適当である。
本発明に用いられる繊維を得るために用いる凝固浴の例としては、無機塩を含まないアミド系溶媒濃度45〜60質量%の水溶液を、浴液の温度10〜35℃の範囲で用いる。
アミド系溶媒濃度45質量%未満ではスキンが厚い構造となってしまい、洗浄工程における洗浄効率が低下し、最終繊維に溶媒が残存することとなる。また、アミド系溶媒濃度60質量%を超える場合には、繊維内部に至るまで均一な凝固を行うことができず、このため、繊維成形加工時に単糸が切断するなどの不具合が多く発生する。なお、凝固浴中への繊維の浸漬時間は、0.1〜30秒の範囲が適当である。
アミド系溶媒濃度45質量%未満ではスキンが厚い構造となってしまい、洗浄工程における洗浄効率が低下し、最終繊維に溶媒が残存することとなる。また、アミド系溶媒濃度60質量%を超える場合には、繊維内部に至るまで均一な凝固を行うことができず、このため、繊維成形加工時に単糸が切断するなどの不具合が多く発生する。なお、凝固浴中への繊維の浸漬時間は、0.1〜30秒の範囲が適当である。
次に凝固浴にて凝固して得られた繊維が可塑状態にあるうちに、可塑延伸浴中にて繊維を延伸処理する。可塑延伸浴液としては特に限定されるものではなく、従来公知の浴液を採用することができる。
本発明に用いられる繊維を得るためには、可塑延伸浴中の延伸倍率を、3.5〜5.0倍の範囲とする必要があり、さらに好ましくは3.7〜4.5倍の範囲とする。本発明に用いられる繊維の製造においては、可塑延伸浴中にて特定倍率の範囲で可塑延伸することにより、凝固糸中からの脱溶剤を促進することができる。
可塑延伸浴中での延伸倍率が3.5倍未満である場合には、凝固糸中からの脱溶剤が不十分となる。また、破断強度が不十分となり、紡績工程等の加工工程における取り扱いが困難となる。一方で、延伸倍率が5.0倍を超える場合には、単糸切れが発生するため、工程安定性が悪くなる。
可塑延伸浴の温度は、10〜90℃の範囲が好ましい。好ましくは温度20〜90℃の範囲にあると、工程安定性がよい。
可塑延伸浴の温度は、10〜90℃の範囲が好ましい。好ましくは温度20〜90℃の範囲にあると、工程安定性がよい。
次に、繊維中に残留している溶剤を洗浄する。この工程においては、可塑延伸浴にて延伸された繊維を、十分に洗浄する。洗浄は、得られる繊維の品質面に影響を及ぼすことから、多段で行うことが好ましい。特に、洗浄工程における洗浄浴の温度および洗浄浴液中のアミド系溶媒の濃度は、繊維からのアミド系溶媒の抽出状態および洗浄浴からの水の繊維中への浸入状態に影響を与える。このため、これらを最適な状態とする目的においても、洗浄工程を多段とし、温度条件およびアミド系溶媒の濃度条件を制御することが好ましい。
温度条件およびアミド系溶媒の濃度条件については、最終的に得られる繊維の品質を満足できるものであれば、特に限定されるものではない。ただし、最初の洗浄浴を60℃以上の高温とすると、水の繊維中への浸入が一気に起こるため、繊維中に巨大なボイドが生成し、品質の劣化を招く。このため、最初の洗浄浴は、30℃以下の低温とすることが好ましい。
繊維中に溶媒が残っている場合、該繊維の難燃性を低下させる上に、該繊維を用いた製品の加工、および当該繊維を用いて形成された製品の使用における環境安全性においても好ましくない。このため、本発明に用いられる繊維に含まれる溶媒量は、0.2%以下であり、より好ましくは0.15%以下であり、0.1%以下であることが特に好ましい。
次に、乾熱処理工程においては、洗浄工程を経た繊維を、乾燥・熱処理する。乾熱処理の方法としては特に限定されるものではないが、例えば、熱ローラー、熱板等を用いる方法を挙げることができる。乾熱処理を経ることにより、最終的に、本発明に用いられるメタ型全芳香族ポリアミド繊維を得ることができる。
本発明に用いられる繊維を得るためには、乾熱処理工程における熱処理温度を、260〜350℃の範囲とする必要があり、270〜340℃の範囲とすることがさらに好ましい。
熱処理温度が260℃未満の場合には、繊維の結晶化が不十分となり、繊維の収縮性が高くなる。一方で、350℃を越える場合には、繊維の結晶化が大きくなりすぎるため、破断伸度が著しく低下する。また、乾熱処理温度を270〜340℃の範囲とすることは、得られる繊維の破断強度の向上に寄与する。
本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維からなる紡績糸は、上記で得られたメタ型全芳香族ポリアミド繊維(トウ)に捲縮を付与したのち、短くカットし、打綿、梳綿、練条、粗紡、巻返し工程を経て、メタ型全芳香族ポリアミド繊維からなる紡績糸を得ることが出来る。
紡績糸を得るためには、先ず、メタ型全芳香族ポリアミド長繊維に捲縮を施す。捲縮を施す方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。
引き続き、捲縮処理が施された長繊維をカットすることにより、紡績工程に付すための短繊維を得る。カットする方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。例えば、ロータリーカッターを用いて、長繊維を所定の繊維長にカットする方法が挙げられる。
[紡績工程]
続いて、捲縮が打綿、梳綿、練条、粗紡、精紡、仕上などを行うことで、紡績糸を得ることができる。紡績糸を作製する方法は特に限定されるものではなく、リング紡績やエアジェット紡績などの公知の方法を採用することができる。
続いて、捲縮が打綿、梳綿、練条、粗紡、精紡、仕上などを行うことで、紡績糸を得ることができる。紡績糸を作製する方法は特に限定されるものではなく、リング紡績やエアジェット紡績などの公知の方法を採用することができる。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳しく具体的に説明する。ただし、これらの実施例および比較例は本発明の理解を助けるためのものであって、これらの記載によって本発明の範囲が限定されるものではない。
なお、実施例中の「部」および「%」は特に断らない限りすべて質量基準に基づくものであり、量比は特に断らない限り質量比を示す。実施例および比較例における各物性値は下記の方法で測定した。
なお、実施例中の「部」および「%」は特に断らない限りすべて質量基準に基づくものであり、量比は特に断らない限り質量比を示す。実施例および比較例における各物性値は下記の方法で測定した。
<固有粘度(I.V.)>
ポリマーを97%濃硫酸に溶解し、オストワルド粘度計を用い30℃で測定した。
<溶解度評価>
溶解度評価は、2種の評価液で実施した。(i)メタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造に用いる有機溶剤100%、(ii)該有機溶剤60%水溶液(有機溶剤60/水40)
以下の手順で実施した。
(1)評価液100gをあらかじめ計量したフラスコに測定対象の化合物5gを加え2時間攪拌した後、全て溶解した場合、溶解度:>5%とする。
(2)溶け残りが確認された場合、12時間以上静置した後、溶け残りが全て溶解していた場合も、溶解度:>5%とする。
(3)この段階で溶け残りが確認された場合、上澄み液を50g秤量瓶に取り出し、絶乾法で溶解濃度を重量%で求める。
ポリマーを97%濃硫酸に溶解し、オストワルド粘度計を用い30℃で測定した。
<溶解度評価>
溶解度評価は、2種の評価液で実施した。(i)メタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造に用いる有機溶剤100%、(ii)該有機溶剤60%水溶液(有機溶剤60/水40)
以下の手順で実施した。
(1)評価液100gをあらかじめ計量したフラスコに測定対象の化合物5gを加え2時間攪拌した後、全て溶解した場合、溶解度:>5%とする。
(2)溶け残りが確認された場合、12時間以上静置した後、溶け残りが全て溶解していた場合も、溶解度:>5%とする。
(3)この段階で溶け残りが確認された場合、上澄み液を50g秤量瓶に取り出し、絶乾法で溶解濃度を重量%で求める。
<番手>
JIS L1095に基づき、綿番手を測定した。
<破断強力、破断伸度>
JIS L1095に基づき、インストロン社製 型番5565を用いて、以下の条件で測定した。測定は60回実施し、その平均値を採用した。
(測定条件)
つかみ間隔 :50mm
初荷重 :0.074cN
引張速度 :30cm/分
<難燃性LOI値>
JIS K7201のLOI測定法に準拠して、LOI値を求めた。
<明度L値・色度b値>
分光色彩計 SD7000(日本電色工業製)を用いて測定した。
<熱分解開始温度>
Pyris1 TGA(PerkinElmer製)にて熱重量測定を10℃/minの速度で昇温して実施、サンプル重量が5%減少した温度を熱分解開始温度とした。
JIS L1095に基づき、綿番手を測定した。
<破断強力、破断伸度>
JIS L1095に基づき、インストロン社製 型番5565を用いて、以下の条件で測定した。測定は60回実施し、その平均値を採用した。
(測定条件)
つかみ間隔 :50mm
初荷重 :0.074cN
引張速度 :30cm/分
<難燃性LOI値>
JIS K7201のLOI測定法に準拠して、LOI値を求めた。
<明度L値・色度b値>
分光色彩計 SD7000(日本電色工業製)を用いて測定した。
<熱分解開始温度>
Pyris1 TGA(PerkinElmer製)にて熱重量測定を10℃/minの速度で昇温して実施、サンプル重量が5%減少した温度を熱分解開始温度とした。
(ポリマー重合)
乾燥窒素雰囲気下の反応容器に、水分率が100ppm以下のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)721.5質量部を秤量し、このDMAc中にメタフェニレンジアミン97.2質量部(50.18モル%)を溶解させ、0℃に冷却した。この冷却したDMAc溶液に、さらにイソフタル酸クロライド(以下IPCと略す)181.3質量部(49.82モル%)を徐々に攪拌しながら添加し、重合反応を行った。
次に、平均粒径が10μm以下の水酸化カルシウム粉末を66.6質量部秤量し、重合反応が完了したポリマー溶液に対してゆっくり加え、中和反応を実施した。水酸化カルシウムの投入が完了した後、さらに40分間攪拌して、透明なポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液からポリメタフェニレンイソフタルアミドを単離してIVを測定したところ、1.65であった。また、ポリマー溶液中のポリマー濃度は17%であった。
乾燥窒素雰囲気下の反応容器に、水分率が100ppm以下のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)721.5質量部を秤量し、このDMAc中にメタフェニレンジアミン97.2質量部(50.18モル%)を溶解させ、0℃に冷却した。この冷却したDMAc溶液に、さらにイソフタル酸クロライド(以下IPCと略す)181.3質量部(49.82モル%)を徐々に攪拌しながら添加し、重合反応を行った。
次に、平均粒径が10μm以下の水酸化カルシウム粉末を66.6質量部秤量し、重合反応が完了したポリマー溶液に対してゆっくり加え、中和反応を実施した。水酸化カルシウムの投入が完了した後、さらに40分間攪拌して、透明なポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液からポリメタフェニレンイソフタルアミドを単離してIVを測定したところ、1.65であった。また、ポリマー溶液中のポリマー濃度は17%であった。
[実施例1〜4]
芳香族縮合リン酸エステルであるレゾルシノールビス−ジキシレニルホスフェートのDMAcへの溶解度を測定したところ、溶解度:>5%、DMAc60%水溶液には、溶解度:0%で不溶であった。また、この化合物の熱分解開始温度は320℃であった。この化合物を難燃剤として該ポリマー溶液に、ポリマー成分中のリン含有量としてそれぞれ0.20%、0.30%、0.40%、0.50%となるよう添加し、減圧脱泡して紡糸ドープとした。
芳香族縮合リン酸エステルであるレゾルシノールビス−ジキシレニルホスフェートのDMAcへの溶解度を測定したところ、溶解度:>5%、DMAc60%水溶液には、溶解度:0%で不溶であった。また、この化合物の熱分解開始温度は320℃であった。この化合物を難燃剤として該ポリマー溶液に、ポリマー成分中のリン含有量としてそれぞれ0.20%、0.30%、0.40%、0.50%となるよう添加し、減圧脱泡して紡糸ドープとした。
[比較例1]
有機リン化合物のDMAcへの溶解度が5%以上ではあるが、DMAc60%水溶液にもよく溶解するトリス(クロロプロピル)ホスフェート(熱分解開始温度:160℃)を該ポリマー溶液に、ポリマー成分中のリン含有量で0.95%となるよう添加し、減圧脱泡して紡糸ドープとした。このときポリマー成分中の塩素含有量は3.20%であった。
有機リン化合物のDMAcへの溶解度が5%以上ではあるが、DMAc60%水溶液にもよく溶解するトリス(クロロプロピル)ホスフェート(熱分解開始温度:160℃)を該ポリマー溶液に、ポリマー成分中のリン含有量で0.95%となるよう添加し、減圧脱泡して紡糸ドープとした。このときポリマー成分中の塩素含有量は3.20%であった。
[比較例2]
該ポリマー溶液に、なにも添加せず、減圧脱泡して紡糸ドープとした。
(紡糸)
上記紡糸ドープを、孔径0.07mm、孔数500の紡糸口金から、浴温度30℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。凝固液の組成は、水/DMAc=45/55(質量部)であり、凝固浴中に糸速7m/分で吐出して紡糸した。
引き続き、温度40℃の水/DMAc=45/55の組成の可塑延伸浴中にて、3.7倍の延伸倍率で延伸を行った。
該ポリマー溶液に、なにも添加せず、減圧脱泡して紡糸ドープとした。
(紡糸)
上記紡糸ドープを、孔径0.07mm、孔数500の紡糸口金から、浴温度30℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。凝固液の組成は、水/DMAc=45/55(質量部)であり、凝固浴中に糸速7m/分で吐出して紡糸した。
引き続き、温度40℃の水/DMAc=45/55の組成の可塑延伸浴中にて、3.7倍の延伸倍率で延伸を行った。
延伸後、20℃の水/DMAc=70/30の浴(浸漬長1.8m)、続いて20℃の水浴(浸漬長3.6m)で洗浄し、さらに60℃の温水浴(浸漬長5.4m)に通して十分に洗浄を行った。
洗浄後の繊維について、表面温度300℃の熱ローラーにて乾熱処理を施し、メタ型全芳香族ポリアミド繊維をトウの状態でサンプリングし破断強力、破断伸度の測定を行った。
洗浄後の繊維について、表面温度300℃の熱ローラーにて乾熱処理を施し、メタ型全芳香族ポリアミド繊維をトウの状態でサンプリングし破断強力、破断伸度の測定を行った。
さらに得られたトウ状態の繊維を束ねてクリンパーを通し、捲縮を付与した後、カッターでカットして51mmの短繊維とすることにより、原綿を得た。得られた原綿を用いて難燃性LOI値と色差計を用いて明度Lと色度bの値を測定した。この結果を表1に示す。
得られた51mmの短繊維を用いて、通常のリング紡績法により20番手の紡績糸を得た。結果を表2に示す。
[実施例5]
芳香族縮合リン酸エステルのDMAcへの溶解度が5%以上、DMAc60%水溶液には、溶解度:0%で不溶であるレゾルシノールビス−ジキシレニルホスフェート(熱分解開始温度:320℃)を該ポリマー溶液に、ポリマー成分中のリン含有量で0.50%となるよう添加し、更に耐光安定剤としてチヌビン234をポリマー成分に対し3.0%となるよう添加し、減圧脱泡して紡糸ドープとした。
芳香族縮合リン酸エステルのDMAcへの溶解度が5%以上、DMAc60%水溶液には、溶解度:0%で不溶であるレゾルシノールビス−ジキシレニルホスフェート(熱分解開始温度:320℃)を該ポリマー溶液に、ポリマー成分中のリン含有量で0.50%となるよう添加し、更に耐光安定剤としてチヌビン234をポリマー成分に対し3.0%となるよう添加し、減圧脱泡して紡糸ドープとした。
[比較例3]
該ポリマー溶液に、耐光安定剤としてチヌビン234のみをポリマー成分に対し3.0%となるよう添加し、減圧脱泡して紡糸ドープとした。
これらの紡糸ドープを用い、上記(紡糸)と同様の方法で、トウの状態で破断強力、破断伸度の測定を行い、得られた原綿を用いて難燃性LOI値と色差計を用いて明度Lと色度bの値を測定した。さらに、得られた51mmの短繊維を用いて、通常のリング紡績法により20番手の紡績糸を得、これら紡績糸の耐光性の評価を行った。その結果を表2に示す。
該ポリマー溶液に、耐光安定剤としてチヌビン234のみをポリマー成分に対し3.0%となるよう添加し、減圧脱泡して紡糸ドープとした。
これらの紡糸ドープを用い、上記(紡糸)と同様の方法で、トウの状態で破断強力、破断伸度の測定を行い、得られた原綿を用いて難燃性LOI値と色差計を用いて明度Lと色度bの値を測定した。さらに、得られた51mmの短繊維を用いて、通常のリング紡績法により20番手の紡績糸を得、これら紡績糸の耐光性の評価を行った。その結果を表2に示す。
実施例1において少量の難燃剤の添加で難燃性LOI値を33まで向上することができた。更に実施例2〜4において難燃剤の添加量が増えるとともに難燃性LOI値の向上が確認された。この時、難燃剤を添加していない比較例2に対して、強力の低下は確認されなかった。
一方比較例1で用いた難燃剤は、過剰に添加することで難燃性を向上させることができたが、繊維強度の低下がみられ、原綿色も黄色く変色し、白色製品としての価値が低いものとなった。
一方比較例1で用いた難燃剤は、過剰に添加することで難燃性を向上させることができたが、繊維強度の低下がみられ、原綿色も黄色く変色し、白色製品としての価値が低いものとなった。
白色製品において光にさらされることによる変色が問題になるが、比較例2の耐光性は1級を示し、光を照射した部分の変色がひどくこれを解決するために耐光安定剤を添加することができる。
比較例3において耐光剤のみを添加すると耐光性が3級と良好となるが、耐熱性の低い耐光剤が添加されたことにより原綿の難燃性LOI値は26と低い値となった。
実施例5において難燃剤を添加することにより、耐光性3級を維持しながら難燃性LOI値が36まで改善された。
比較例3において耐光剤のみを添加すると耐光性が3級と良好となるが、耐熱性の低い耐光剤が添加されたことにより原綿の難燃性LOI値は26と低い値となった。
実施例5において難燃剤を添加することにより、耐光性3級を維持しながら難燃性LOI値が36まで改善された。
本発明によって、有機リン化合物からなる難燃剤の添加なしでは発現しない高い難燃性能を持ったメタ型全芳香族ポリアミド繊維からなる紡績糸を得ることができ、バッグフィルター、電子部品等の産業用途や、耐熱性、防炎性、耐炎性が重視される防護衣等の防災安全衣料用途等においてこれまでに無い極めて有用な白色の繊維素材を提供することができる。
Claims (4)
- メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む紡績糸であって、該繊維中におけるリン含有量が0.2wt%以上となるように有機リン化合物が含有されており、該繊維の燃焼時限界酸素指数LOIが33以上であり、かつ明度L値が85以上である難燃性紡績糸。
- メタ型全芳香族ポリアミド繊維に含まれる有機リン化合物の熱分解開始温度が300℃以上である請求項1記載の難燃性紡績糸。
- 有機リン化合物が、該繊維の製造に用いる有機溶剤に5%以上溶解し、該有機溶剤の60%水溶液には不溶である請求項1または2に記載の難燃性紡績糸。
- メタ型全芳香族ポリアミド繊維におけるハロゲン含有量が0.2wt%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃性紡績糸。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2018044224A JP2019157289A (ja) | 2018-03-12 | 2018-03-12 | 難燃性紡績糸 |
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2018
- 2018-03-12 JP JP2018044224A patent/JP2019157289A/ja active Pending
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