JP2019112353A - 自家腫瘍ワクチン及び免疫誘導方法 - Google Patents
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Abstract
Description
(1)腫瘍罹患者から採取した腫瘍組織由来の抗原物質
(a)腫瘍罹患者
本発明の自家腫瘍ワクチンの治療対象となる腫瘍罹患者は、ヒト以外の哺乳動物であり、具体的には、ラット、マウス、モルモットなどの実験動物、犬、猫等のペット、牛、豚、羊、山羊などの家畜が挙げられる。
腫瘍組織の採取方法は、公知の方法であれば特に限定することなく使用できる。具体的には、局所麻酔下での外科手術及び注射による吸引等が挙げられる。また、対象となる腫瘍組織の種類は、固形腫瘍であれば特に限定する必要はなく、具体的には、胃、腸、肝臓、腎臓、肺、子宮、脳、皮膚等に生じた腫瘍が挙げられる。
本発明の腫瘍罹患者から採取した腫瘍組織由来の抗原物質としては、腫瘍組織の細胞、腫瘍組織の破砕物、腫瘍組織のホルマリン固定物の破砕物、腫瘍組織の冷凍破砕物及びこれらの可溶化物等が挙げられる。なお、破砕物とは腫瘍組織を超音波処理等によって物理的に破砕したものであり、可溶化物とは腫瘍組織を界面活性剤等によって可溶化したものである。
本発明のリポソームとしては、医薬品等に使用でき、生物に無害な両親媒性脂質からなるリポソームであれば、特に限定することなく使用できる。このようなリポソームとしては、例えば、pH応答性リポソームや陽性荷電リポソームが挙げられる。
本発明の自家腫瘍ワクチンは、その免疫誘導効果を高めるため、α-ガラクトシルセラミド(α-Gal)、モノホスホリルリピッドA(MPL)、ポリI:C、トレハロースジミコレート、イミダゾキノリン誘導体(イミキモド又はR-848)、非メチル化CpG、サイトカイン、レクチン等の公知のアジュバントを含んでいてもよい。中でも、免疫誘導効果を高める能力が高いことから、α-ガラクトシルセラミドが好ましい。
本発明の自家腫瘍ワクチンは、アジュバント以外に、その免疫誘導効果を損なわない範囲で、公知の溶媒増粘剤、緩衝剤、等張化剤、防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤、安定化剤、キレート剤、保存剤、溶解補助剤、pH調整剤、界面活性剤等を含んでいてもよい。
本発明の自家腫瘍ワクチンは、リポソームに薬剤等を含ませる公知の方法により調製できる。例えば、リポソームの構成成分を溶媒と混合して容器内に入れ、溶媒を除去して容器の内壁面に脂質フィルムを形成したのち、抗原性物質やアジュバント等を含む溶液を容器に投入して両者を撹拌・混合することによって、抗原性物質等をリポソーム膜に封入する方法等が挙げられる。
本発明の自家腫瘍ワクチンはメトホルミンと併用して投与する。自家腫瘍ワクチンとメトホルミンの投与形態は、特に限定されず、投与時に、自家腫瘍ワクチンとメトホルミンとが組み合わされていればよい。
本発明の免疫誘導方法は、本発明の自家腫瘍ワクチンを非ヒト哺乳動物にメトホルミンと併用して投与する方法である。本発明の方法は、非ヒト哺乳動物であれば特に限定することなく適用できるが、飼主に与える影響等を考えると、牛、豚、馬等の家畜、犬、猫等のペットへの適用が好ましく、犬又は猫への適用がより好ましい。なお、投与方法については前記のとおりである。
自家腫瘍ワクチンの抗腫瘍効果
本発明の自家腫瘍ワクチンを、腫瘍細胞を皮下移植したマウスに投与して、その抗腫瘍効果を調べた。具体的には、以下のようにして調べた。
動物実験は、大阪府立大学大学院生命環境科学研究科動物実験指針に従った。6週令の齢のマウス5匹(メス、体重約16〜22g)を日本エスエルシー社から購入し、動物科学教育研究センターの飼育管理下で飼育した。給餌は固形飼料(オリエンタル酵母工業社製)を1日1匹当たり3〜5g回与え、飲水は水道水を自由に摂取させた。
(1)抗原物質及び移植用腫瘍細胞の調製
マウスに腫瘍細胞を皮下移植(2.0×106/head)し、腫瘍体積が十分に増大(2cm2)した時点で腫瘍塊を摘出した。摘出した腫瘍塊を、プローブ型の超音波破砕器を使用して、氷中で冷却しながら50Wの出力で1分間の処理を5回繰り返し、腫瘍細胞の超音波破砕物溶液(5 mg/ml)を得た。なお、超音波破砕物溶液の蛋白量はProtein Assay Kit(Bio-Rad社)により定量した。また、同じ腫瘍塊から移植用腫瘍細胞を得た。
DPPC、DOPE、SucPGをそれぞれ有機溶媒に溶解した。なお、有機溶媒はクロロホルム:メタノール=2:1(v/v)を使用した。梨型フラスコにモル比が1:1となるようにDPPC、DOPEを加え、脂質重量比が30%となるようにSucPGを加えた。また、α-Galをマウス1匹あたり5μgとなるよう梨型フラスコに加えた。ロータリーエバポレーターによって梨型フラスコから有機溶媒を除去し、脂質フィルムを作製した。真空ポンプにより室温で30分間脱気して、有機溶媒を梨型フラスコから完全に除去した。
腫瘍破砕抗原である腫瘍細胞の超音波破砕物溶液を梨型フラスコに1 ml加え、ボルテックスミキサーにて撹拌し、破砕抗原封入リポソームを調製した。破砕抗原封入リポソームに封入されていない破砕抗原を、19000×g、4℃で30分間の遠心洗浄を3回行って除去した。最終沈殿物に適量のPBSを加えて、自家腫瘍ワクチンとした。
移植用腫瘍細胞を別のマウスに皮下移植(2.0×106/head)した。移植したマウスをワクチン投与群(5匹)と実験対照群(5匹)にランダム分けた。ワクチン投与群のマウスには移植3日後から自家腫瘍ワクチンの皮下投与(100μg/head)を開始し、移植10日後及び移植17日後に自家移植ワクチンを同様に皮下投与した。一方、実験対照群のマウスには、自家腫瘍ワクチンの代わりに同量量の生理食塩水をワクチン投与群と同じ回数投与した。皮下移植後、生着腫瘍の増殖、具体的には腫瘍体積(mm3)を24日間に渡って毎日測定するとともに、日々の生存率を計算した。なお、腫瘍体積(mm3)は、腫瘍塊の長径a及び短径bをノギスで計測して、0.4ab2を計算して求めた。
実験データから平均値±標準偏差(SD)を算出した。また、統計学的有意差はWelch's t-testを使用して検定した。なお、p値が0.05以下の場合に有意差があるとした。
図1は、腫瘍移植後日数と腫瘍体積との関係を示すグラフであり、自家腫瘍ワクチンの抗腫瘍効果を示す。この図に示すように、自家腫瘍ワクチンは、皮下にすでに腫瘍が生着したマウスに対しても治療効果があり、生存期間も有意に延長できることが分かった(p<0.05又はp<0.01)。また、実験終了後、マウスから腫瘍塊を摘出し、その構成を調べたところ、E.G7-OVA以外の間葉系細胞が多く含まれていた。すなわち、腫瘍塊はヘテロな細胞集団であるにもかかわらず、治療効果が確認された。ただ、抗腫瘍ワクチンを投与しても、完治にまでは至らなかった。
メトホルミンの抗腫瘍効果
腫瘍細胞を皮下移植したマウスにメトホルミンを経口投与して、メトホルミンの抗腫瘍効果を調べた。具体的には、以下のようにして調べた。
動物実験及び腫瘍細胞は、比較例1と同様のものを使用した。なお、マウスの飼育は比較例1と同様に行った。また、メトホルミン(メトグルコ錠、大日本住友製薬)は水道水に溶解(5mg/mL)し、メトホルミン水溶液として投与した。
(1)腫瘍の移植とメトホルミンの投与
マウスの皮下に腫瘍細胞を移植(2.0×106/head)した。移植したマウスをメトホルミン投与群(4匹)と実験対照群(4匹)にランダム分けた。メトホルミン投与群のマウスには、飼育ケージの給水ビンに入れたメトホルミン水溶液を自由飲水で移植1日後から経口投与を開始し、皮下移植から12日間後まで継続した。一方、実験対照群には水道水を同じ期間投与した。
腫瘍細胞を皮下移植してから12日後に、腫瘍塊の腫瘍体積を測定・計算した。なお、測定方法等は比較例1と同じである。また、腫瘍体積を測定後、腫瘍塊をマウスから摘出し、腫瘍塊に含まれるCD8陽性細胞数及びそのPD-1分子発現量をフローサイトメーターにより解析した。なお、フローサイトメーターによる解析は、非特許文献2の記載に従って行った。その後、得られた実験データを比較例1と同様にして統計処理した。
図3は、腫瘍細胞移植12日後の腫瘍体積を、メトホルミン投与群と実験対照群との間で比較したグラフである。この図に示すように、メトホルミン投与群と実験対照群との間に、腫瘍細胞移植12日後の腫瘍体積に有意差はなかった。これは、メトホルミンは他の化学療法剤と異なり、腫瘍細胞に直接傷害を与えることがないからである、と考えられる。
自家腫瘍ワクチンとメトホルミンとの併用
自家腫瘍ワクチンとメトホルミンとを併用することによって、抗腫瘍効果が向上するか否かを調べた。具体的には、以下のようにして調べた。
動物実験及び腫瘍細胞は、比較例1と同様のものを使用した。また、メトホルミン水溶液は比較例2と同様にして調製した。なお、マウスの飼育は比較例1と同様に行った。
(1)自家腫瘍ワクチンの調製及び腫瘍細胞の皮下移植
比較例1と同様にして、自家腫瘍ワクチンを調製し、移植用腫瘍細胞を別のマウスの皮下に移植した。腫瘍細胞を移植したマウス(16匹)を4匹ずつ4つの群に分けた。すなわち、自家腫瘍ワクチン及びメトホルミンの両方とも投与されない群(以下、実験対照群、図中ではPBSと省略する。)、メトホルミンのみ投与される群(以下、メトホルミン投与群、図中ではPBS-Metと省略する。)、自家腫瘍ワクチンのみ投与される群(以下、自家腫瘍ワクチン投与群、図中ではLiposomeと省略する。)、メトホルミンと自家腫瘍ワクチンの両方とも投与される群(以下、併用群、図中ではLiposome-Metと省略する。)の4つの群に分けた。
自家腫瘍ワクチンを投与するマウス(自家腫瘍ワクチン投与群及び併用群)には移植1日後から自家腫瘍ワクチンの皮下投与(100μg/head)を開始し、移植8日後及び移植15日後に自家移植ワクチンを同様に皮下投与した。一方、自家腫瘍ワクチンを投与しないマウス(実験対照群及びメトホルミン投与群)には、自家腫瘍ワクチンの代わりに同量の生理食塩水をワクチン投与群と同じ回数投与した。
図6は、腫瘍移植後日数と腫瘍体積との関係を示すグラフであり、自家腫瘍ワクチンの抗腫瘍効果を示す。この図から、次の(a)から(c)のことが分かった。すなわち、(a)実験対照群とメトホルミン投与群の間に有意差は認められなかった。(b)移植後15日を経過すると、自家腫瘍ワクチン投与群と、実験対照群及びメトホルミン投与群との間に有意差が認められた(P<0.05)。(c)移植後13日を経過すると、併用群と他群との間に有意差が認められた(P<0.05)。
Claims (11)
- (1)腫瘍罹患者から採取した腫瘍組織由来の抗原物質と、(2)リポソームとを含む自家腫瘍ワクチンであって、メトホルミンを併用して投与するための自家腫瘍ワクチン。
- (1)腫瘍組織由来の抗原物質が、腫瘍組織の細胞、腫瘍組織の破砕物、腫瘍組織のホルマリン固定物の破砕物、腫瘍組織の冷凍破砕物及びこれらの可溶化物からなる群れより選ばれた少なくとも一種以上の物質である請求項1に記載の自家腫瘍ワクチン。
- (1)腫瘍組織由来の抗原物質が、腫瘍細胞の超音波破砕物である請求項2に記載の自家腫瘍ワクチン。
- (2)リポソームが、pH感受性リポソームである請求項1に記載の自己腫瘍ワクチン。
- (2)リポソームが、
ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジオレイルホスファチジルコリン、卵黄レシチン、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、ジミリストイルホスファチジン酸、ジパルミトイルホスファチジン酸、ジステアロイルホスファチジン酸、ジセチルリン酸、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、コレステロールからなる群より選ばれた少なくとも一種以上の脂質と、
サクシニル化ポリグリシドール、3-メチルグルタリル化ポリグリシドールからなる群れより選ばれた少なくとも一種以上のカルボキシル基修飾ポリグリシドールと、
を含む請求項4に記載の自家腫瘍ワクチン。 - (2)リポソームが、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン、サクシニル化ポリグリシドールの組み合わせから構成される請求項5に記載の自己腫瘍ワクチン。
- (3)アジュバントを含む請求項1に記載の自家腫瘍ワクチン。
- (3)アジュバントが、α-ガラクトシルセラミドである請求項7に記載の自家腫瘍ワクチン。
- 請求項1から請求項8の何れかに記載の自家腫瘍ワクチンとメトホルミンとを併用して非ヒト哺乳動物に投与する免疫誘導方法。
- メトホルミンを経口投与する請求項9に記載の免疫誘導方法。
- 非ヒト哺乳動物が、犬又は猫である請求項9又は請求項10に記載の免疫誘導方法。
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WO2023240264A1 (en) * | 2022-06-09 | 2023-12-14 | Ponnappan Ravi | Method of inducing an immune response |
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---|---|---|---|---|
WO2016027764A1 (ja) * | 2014-08-19 | 2016-02-25 | 国立大学法人 岡山大学 | 免疫細胞の機能増強方法及び免疫細胞の多機能性評価方法 |
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岡崎誠治他: "リポソームを応用した自家腫瘍ワクチンによる治療効果の解析", 第159回日本獣医学会学術集会講演要旨集, vol. 159, JPN6021039011, 23 August 2016 (2016-08-23), pages 363 - 12, ISSN: 0004607113 * |
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