以下、図面を参照して本開示に係る実施形態について説明する。なお、以下の図面は、模式的なものである。従って、細部は省略されることがあり、また、寸法比率等は現実のものと必ずしも一致しない。また、複数の図面相互の寸法比率も必ずしも一致しない。
また、各図には、説明の便宜のために、直交座標系xyzを付している。直交座標系xyzは、センサ素子(圧電体)の形状に基づいて定義されている。すなわち、x軸、y軸およびz軸は、結晶の電気軸(X軸)、機械軸(Y軸)および光軸(Z軸)を示すとは限らない。センサ素子は、いずれの方向が上方または下方として使用されてもよいものであるが、以下では、便宜上、z軸方向の正側を上方として、上面または下面等の用語を用いることがある。また、単に平面視という場合、特に断りがない限り、z軸方向に見ることをいうものとする。
同一または類似する構成については、「ユニット2A」、「ユニット2B」のように、互いに異なるアルファベットの付加符号を付すことがあり、また、この場合において、単に「ユニット2」といい、これらを区別しないことがある。
第2実施形態以降において、先に説明された実施形態の構成と共通または類似する構成について、先に説明された実施形態の構成に付した符号を用い、また、図示や説明を省略することがある。なお、先に説明された実施形態の構成と対応(類似)する構成については、先に説明された実施形態の構成と異なる符号を付した場合においても、特に断りがない点は、先に説明された実施形態の構成と同様とされてよい。
<第1実施形態>
(センサ素子の概要)
図1は、第1実施形態に係るセンサ素子1の構成を示す斜視図である。ただし、この図では、センサ素子1の表面に設けられる導体層の図示は基本的に省略されている。
センサ素子1は、例えば、x軸回りの角速度を検出する圧電振動式の角速度センサ51(符号は図3(b)および図4)を構成するものである。
センサ素子1は、例えば、互いに同様の構成を有するユニット2Aおよび2Bを有している。2つのユニット2は、それぞれ角速度に応じた電気信号(例えば電圧、電流および/または電荷。以下、電圧を例に取ることがある。)を生成可能であり、両者の信号は足し合わされる。なお、センサ素子は、1つのユニット2のみを含んで構成されてもよい。2つのユニット2は、x軸に平行な不図示の対称軸に対して、基本的に、線対称(および/またはz軸に平行な不図示の対称軸回りに180°回転対称)の構成(寸法等も含む)とされている。
なお、以下では、便宜上、2つのユニット2を代表してユニット2Aについて説明することがある。また、この際、ユニット2Aの構成要素の符号の後に、対応するユニット2Bの構成要素の符号を括弧で括って付すことがある。
センサ素子1は、圧電体3を有している。圧電体3に電圧が印加されて圧電体3が振動している状態で、圧電体3が回転されると、コリオリの力による振動が圧電体3に生じる。このコリオリの力による振動によって生じる電圧を検出することによって角速度が検出される。
(圧電体の全体形状)
圧電体3は、例えば、その全体が一体的に形成されている。圧電体3は、単結晶であってもよいし、多結晶であってもよい。また、圧電体3の材料は適宜に選択されてよく、例えば、水晶(SiO2)、LiTaO3、LiNbO3、PZTまたはシリコンである。
圧電体3において、電気軸(X軸)乃至は分極軸(以下、両者を代表して分極軸のみに言及することがある。)は、x軸に一致するように設定されている。なお、分極軸は、所定の範囲(例えば5°以内)でx軸に対して傾斜していてもよい。また、圧電体3が単結晶である場合において、機械軸(Y軸)および光軸(Z軸)は、適宜な方向とされてよいが、例えば、Y軸はy軸に一致し、Z軸はz軸に一致している。X軸、Y軸およびZ軸は、所定の範囲(例えば5°以内)でx軸、y軸およびz軸に対して傾斜していてもよい。
圧電体3は、例えば、全体として厚さ(z軸方向)が一定にされている。また、圧電体3は、例えば、y軸に平行な不図示の対称軸に対して線対称の形状に形成されている。また、例えば、圧電体3は、x軸に平行な不図示の対称軸に対して線対称(および/またはz軸に平行な対称軸回りに180°回転対称)に形成されている。
圧電体3は、例えば、ユニット2A(2B)において、基部5A(5B)と、基部5A(5B)から延びている4本の駆動腕7A〜7D(7E〜7H)および検出腕9A(9B)とを有している。また、圧電体3は、基部5Aおよび5Bを支持している1対の実装部11を有している。基部5、駆動腕7、検出腕9および実装部11は、例えば、xy平面に平行な同一平面内において延びている。
駆動腕7は、電圧(電界)が印加されることによって励振される部分である。検出腕9は、コリオリの力によって振動し、角速度に応じた電気信号(例えば電圧)を生成する部分である。基部5は、駆動腕7および検出腕9の支持、および駆動腕7から検出腕9への振動の伝達に寄与する部分である。実装部11は、不図示の実装基体(例えばパッケージの一部または回路基板)にセンサ素子1を実装することに寄与する部分である。
(基部)
基部5は、例えば、両端がx軸方向において互いに離れている長尺形状を有している。具体的には、例えば、基部5は、x軸方向に直線状に延びている。基部5の両端は、1対の実装部11によって支持される被支持部5aとなっている。従って、基部5は、両端が支持された梁のように撓み変形が可能となっている。
基部5の断面形状は、例えば、概ね矩形である。基部5の幅(y軸方向)および厚さ(z軸方向)は、いずれが他方よりも大きくてもよい。ただし、基部5は、後述するように、平面視において撓み変形することが予定されている。従って、基部5の幅は、比較的小さくされてよい。例えば、基部5の幅は、基部5の厚さの2倍以下、または1倍以下とされてよい。また、例えば、基部5の長さおよび幅は、撓み変形の固有振動数が、駆動腕7の、電圧印加によって励振される方向における固有振動数、および/または検出腕9の、コリオリの力によって振動する方向における固有振動数に近づくように調整されてよい。
(駆動腕)
駆動腕7は、基部5からy軸方向に延びており、その先端は自由端とされている。従って、駆動腕7は、片持ち梁のように撓み変形が可能となっている。ユニット2A(2B)において、駆動腕7Aおよび7D(7Eおよび7H)は、対を成しており、x軸方向に互いに離れた位置にて互いに並列(例えば平行)に延びている。同様に、駆動腕7Bおよび7C(7Fおよび7G)は、対を成しており、x軸方向に互いに離れた位置にて互いに並列(例えば平行)に延びている。対を成す2本の駆動腕7は、例えば、1対の被支持部5aの間の中央を通り、y軸に平行な不図示の対称軸に対して線対称に設けられている。
対を成す2本の駆動腕7は、例えば、概ね、互いに線対称の形状および大きさを有しており、両者の振動特性は互いに同等である。また、互いに隣り合う2本の駆動腕7同士(7Aおよび7Bの2本、7Cおよび7Dの2本、7Eおよび7Fの2本ならびに7Gおよび7Hの2本)は、例えば、概ね、互いに同一の形状および大きさを有しており、両者の振動特性は互いに同等である。
駆動腕7の形状は、例えば、概略、長尺の直方体状である。特に図示しないが、駆動腕7は、先端側部分において幅(x軸方向)が広くなるハンマ形状とされていてもよい。
駆動腕7は、後述するように、x軸方向において励振される。従って、駆動腕7は、その幅(x軸方向)が大きくなると、励振方向(x軸方向)における固有振動数が高くなり、その長さ(別の観点では質量)が大きくなると、励振方向における固有振動数は低くなる。駆動腕7の各種の寸法は、例えば、駆動腕7の励振方向における固有振動数が励振させたい周波数に近くなるように設定される。
(検出腕)
検出腕9A(9B)は、基部5A(5B)から延びている第1腕21Aおよび21B(21Cおよび21D)と、これら第1腕21の先端側かつ側方から基部5A(5B)側へ延びている第2腕23A(23B)とを有している。第2腕23の先端は、基部5に連結されておらず、自由端となっている。従って、検出腕9において、第1腕21は、基部5を固定端側、先端側を自由端側として撓み変形可能であり、また、第2腕23は、第1腕21と連結される側を固定端側、基部5側を自由端側として撓み変形可能である。なお、第1腕21の先端側は、例えば、第1腕21の長さ方向の中央よりも先端側を指す。第1腕21および第2腕23は、例えば、xy平面に平行な同一平面内において延びている。
各ユニット2において、第1腕21は、例えば、x軸方向において1対の駆動腕7の間となる位置において基部5からy軸方向に延びている。また、第1腕21は、例えば、1対の駆動腕7が延びる側と同一側に延びている。別の観点では、第1腕21は、1対の駆動腕7と並列(例えば平行)に延びている。1対の第1腕21Aおよび21B(21Cおよび21D)は、例えば、1対の被支持部5aの間の中央を通り、y軸に平行な対称軸に線対称に設けられている。1対の第1腕21は、例えば、互いに線対称の位置および形状とされている。第1腕21の長さは、例えば、駆動腕7の長さと同程度である。
各ユニット2において、第2腕23は、例えば、1対の第1腕21の間にてy軸方向に延びており、ひいては、第1腕21と並列(例えば平行)に延びている。第2腕23は、例えば、その端部が第1腕21の先端部と連結されている。具体的には、第1腕21および第2腕23の互いに対向する側面同士間にはこれらの腕と同一の厚さ(z軸方向)を有する連結部(符号省略)が介在している。第2腕23の長さは、例えば、駆動腕7および第1腕21の長さから、第2腕23と基部5との間の隙間を差し引いた長さである。
第1腕21および第2腕23の形状は、例えば、概略、長尺の直方体状である。なお、特に図示しないが、第1腕21または第2腕23は、先端側において幅(x軸方向)が広くなるハンマ形状とされていてもよい。
また、図示の例では、第1腕21および第2腕23は、z軸方向に貫通し、各腕に沿って延びる1以上の貫通溝(符号省略)を有している。別の観点では、第1腕21および第2腕23それぞれは、互いに並列に延び、根元および先端において互いに連結されている複数の分割腕25を有している。第1腕21および第2腕23それぞれにおける分割腕25の本数、幅、および間隔は、適宜に設定されてよい。
検出腕9(第1腕21および第2腕23)は、後述するように、本実施形態においては、コリオリの力によってz軸方向に振動する。従って、検出腕9は、その厚さ(z軸方向)が大きくなると、振動方向(z軸方向)における固有振動数が高くなり、その長さ(別の観点では質量)が大きくなると、励振方向における固有振動数は低くなる。検出腕9の各種の寸法は、例えば、検出腕9の振動方向における固有振動数が、駆動腕7の励振方向における固有振動数に近くなるように設定されてよい。
(実装部)
1対の実装部11は、例えば、y軸方向を長手方向とする形状に形成されている。より具体的には、例えば、実装部11は、z軸方向を厚み方向とする、平面形状が矩形の板状である。実装部11の幅(x軸方向)は、例えば、基部5の幅(y軸方向)、駆動腕7の幅(x軸方向)、検出腕9(そのうちの第1腕21または第2腕23)の幅(x軸方向)よりも広い。従って、実装部11は、他の部位(5、7、21および23)に比較して平面視において撓み変形(振動)し難くなっている。ただし、実装部11は、一部または全部において、他の部位(5、7、21または23)に比較して幅が狭くされていてもよい。実装部11の長さは、適宜に設定されてよい。
1対の実装部11の下面には、少なくとも4つのパッド13が設けられている。パッド13は、不図示の実装基体に設けられたパッドに対向し、その実装基体のパッドに対して半田乃至は導電性接着剤からなるバンプにより接着される。これにより、センサ素子1と実装基体との電気的な接続がなされ、また、基部5、駆動腕7および検出腕9は、実装基体から浮いた状態で支持され、振動可能となる。なお、基部5は、1対の駆動腕7よりもx軸方向の両側の部分(被支持部5a)において実装部11を介してパッド13に支持されることになる。4つのパッド13は、例えば、1対の実装部11の両端に設けられている。
(センサ素子の導体)
図2は、図1の領域IIを拡大して示す斜視図である。この図においては、導体にハッチングを付している。
センサ素子1は、圧電体3の表面等に設けられる導体として、上記のパッド13の他、駆動腕7に電圧を印加するための励振電極15Aおよび15Bと、検出腕9(分割腕25)に生じた信号を取り出すための検出電極17Aおよび17Bと、これらの電極に接続される複数の配線19(19A)とを有している。これらの導体は、例えば、圧電体3の表面に形成された導体層によって構成されている。導体層の材料は、例えば、Cu、Al等の金属である。
なお、図2は、1本の駆動腕7のみを示しているが、他の駆動腕7の形状および他の駆動腕7に設けられる励振電極15の構成も図示のものと同様(線対称を含む)である。また、図2は、1本の第1腕21の2本の分割腕25についてのみ検出電極17を示しているが、他の第1腕21および第2腕23の分割腕25に設けられる検出電極17も図示のものと同様である。
また、励振電極15および検出電極17の付加符号A、Bは、直交座標系xyzに基づいて付されている。従って、後述するように、一の駆動腕7の励振電極15Aと、他の駆動腕7の励振電極15Aとは同電位とは限らない。励振電極15B、検出電極17Aおよび17Bについても同様である。
(励振電極)
図3(a)は、図2のIIIa−IIIa線における断面図である。図3(b)は、図2のIIIb−IIIb線における断面図である。
図2、図3(a)および図3(b)に示すように、励振電極15Aは、各駆動腕7において、上面および下面(z軸方向の両側に面する1対の面)それぞれに設けられている。また、励振電極15Bは、各駆動腕7において、1対の側面(x軸方向の両側に面する1対の面)それぞれに設けられている。
なお、ユニット2Aと2Bとでは、駆動腕7が延びる方向が互いに異なるが、いずれにおいても、励振電極15の付加符号Aは、駆動腕7の上下面に対応し、励振電極15の付加符号Bは、駆動腕7の側面に対応するものとする。
各駆動腕7の上下左右の各面において、励振電極15は、例えば、各面の大部分を覆うように形成されている。ただし、励振電極15Aおよび15Bは、互いに短絡しないように、少なくとも一方(本実施形態では励振電極15A)が各面よりも幅方向において小さく形成されている。また、駆動腕7の根元側および先端側の一部も、励振電極15の非配置位置とされてよい。
各駆動腕7において、2つの励振電極15Aは、例えば互いに同電位とされる。例えば、2つの励振電極15Aは、配線19により互いに接続されている。また、各駆動腕7において、2つの励振電極15Bは、例えば互いに同電位とされる。例えば、2つの励振電極15Bは、配線19により互いに接続されている。
このような励振電極15の配置および接続関係において、励振電極15Aと励振電極15Bとの間に電圧を印加すると、例えば、駆動腕7においては、上面から1対の側面(x軸方向の両側)に向かう電界および下面から1対の側面に向かう電界が生じる。一方、分極軸は、x軸方向に一致している。従って、電界のx軸方向の成分に着目すると、駆動腕7のうちx軸方向の一方側部分においては電界の向きと分極軸の向きは一致し、他方側部分においては電界の向きと分極軸の向きは逆になる。
その結果、駆動腕7のうちx軸方向の一方側部分はy軸方向において収縮し、他方側部分はy軸方向において伸長する。そして、駆動腕7は、バイメタルのようにx軸方向の一方側へ湾曲する。励振電極15Aおよび15Bに印加される電圧が逆にされると、駆動腕7は逆方向に湾曲する。このような原理により、交流電圧が励振電極15Aおよび15Bに印加されると、駆動腕7はx軸方向において振動する。
(検出電極)
図4は、図1のIV−IV線における断面図である。
図2および図4に示すように、検出電極17Aは、第1腕21および第2腕23の複数の分割腕25それぞれにおいて、x軸方向の負側に面する面のうちのz軸方向の正側(例えば当該面の中央よりも正側)の領域、およびx軸方向の正側に面する面のうちのz軸方向の負側(例えば当該面の中央よりも負側)の領域にそれぞれ設けられている。検出電極17Bは、第1腕21および第2腕23の複数の分割腕25それぞれにおいて、x軸方向の負側に面する面のうちのz軸方向の負側(例えば当該面の中央よりも負側)の領域、およびx軸方向の正側に面する面のうちのz軸方向の正側(例えば当該面の中央よりも正側)の領域にそれぞれ設けられている。
なお、検出腕9Aおよび9Bは、基部5から延びる方向が互いに異なり、また、第1腕21および第2腕23は固定端から自由端への方向が互いに異なるが、いずれにおいても、検出電極17の付加符号Aは、−xの側面の+zの領域および+xの側面の−zの領域に対応し、検出電極17の付加符号Bは、−xの側面の−zの領域および+xの側面の+zの領域に対応するものとする。
分割腕25の各側面において、検出電極17Aおよび17Bは、互いに短絡しないように適宜な間隔を空けて、分割腕25に沿って延びている。各分割腕25において、検出電極17A同士は接続され、検出電極17B同士は接続されている。接続は、例えば、複数の配線19によってなされている。
このような検出電極17の配置および接続関係において、分割腕25がz軸方向に撓み変形すると、例えば、z軸方向に平行な電界が生じる。すなわち、分割腕25の各側面においては、検出電極17Aと検出電極17Bとの間に電圧が生じる。電界の向きは、分極軸の向きと、湾曲の向き(z軸方向の正側または負側)とで決定され、x軸方向の正側部分と負側部分とで互いに逆である。この電圧(電界)が検出電極17Aおよび検出電極17Bに出力される。分割腕25がz軸方向に振動すると、電圧は交流電圧として検出される。なお、電界は、上記のようにz軸方向に平行な電界が支配的であってもよいし、x軸方向に平行で、z軸方向の正側部分と負側部分とで互いに逆向きな電界の割合が大きくてもよい。いずれにせよ、分割腕25のz軸方向への撓み変形に応じた電圧が検出電極17Aと検出電極17Bとの間に生じる。
第1腕21および第2腕23のそれぞれの、複数の分割腕25間においては、検出電極17A同士が接続され、検出電極17B同士が接続されている。接続は、例えば、複数の配線19によってなされている。従って、第1腕21および第2腕23のそれぞれにおいて、複数の分割腕25の検出信号は加算される。すなわち、貫通溝を形成して分割腕25それぞれに複数の検出電極17を形成することによって、貫通溝が形成されない場合に比較して感度が向上している。
(配線)
配線19は、例えば、励振電極15同士の接続および検出電極17同士の接続を担っている。また、配線19は、電位の観点から2組に分けられた励振電極15、および電位の観点から2組に分けられた検出電極17の合計4組の電極と、4つのパッド13とを別々に接続している。
複数の配線19は、圧電体3の種々の部分の上面、下面および/または側面において適宜に配されることによって、その全体が圧電体3の表面に設けられる態様で、互いに短絡することなく、上述した接続を実現可能である。ただし、圧電体3上に位置する配線19の上を絶縁層を介して他の配線19が交差する、立体配線部が形成されても構わない。
(駆動回路および検出回路)
図3(b)に示すように、角速度センサ51は、励振電極15に電圧を印加する駆動回路103を有している。駆動回路103は、例えば、4つのパッド13のうち2つを介して励振電極15に接続されている。駆動回路103は、例えば、発振回路や増幅器を含んで構成されており、所定の周波数の交流電圧を各駆動腕7の励振電極15Aと励振電極15Bとの間に印加する。なお、周波数は、角速度センサ51内にて予め定められていてもよいし、外部の機器等から指定されてもよい。
図4に示すように、角速度センサ51は、検出電極17からの電気信号を検出する検出回路105を有している。検出回路105は、例えば、4つのパッド13のうち2つを介して検出電極17に接続されている。検出回路105は、例えば、増幅器や検波回路を含んで構成されており、各腕における検出電極17Aと検出電極17Bとの電位差を検出し、その検出結果に応じた電気信号を外部の機器等に出力する。より具体的には、例えば、上記の電位差は、交流電圧として検出され、検出回路105は、検出した交流電圧の振幅に応じた信号を出力する。この振幅に基づいて角速度が特定される。また、検出回路105は、駆動回路103の印加電圧と検出した電気信号との位相差に応じた信号を出力する。この位相差に基づいて回転の向き(正負)が特定される。
なお、駆動回路103および検出回路105は、全体として制御回路107を構成している。制御回路107は、例えば、チップ型のIC(Integrated Circuit)によって構成されており、センサ素子1が実装される、回路基板または適宜な形状の実装基体に実装されている。
(駆動腕の凹溝)
図2、図3(a)および図3(b)に示すように、各駆動腕7の上面および下面それぞれには、1本の凹溝31が形成されている。なお、以下では、駆動腕7の表面について説明するとき、z軸方向の正負に関わらずに、凹溝31が開口する側の面を上面として説明することがある。
凹溝31は、駆動腕7に沿って延びている。凹溝31の内面は、凹溝31(駆動腕7)の幅方向(x軸方向)の両側に、幅方向において互いに対向する1対の内壁面31aを有している。励振電極15Aは、凹溝31の内面に少なくとも一部(本実施形態では全部)が位置している。より詳細には、励振電極15Aは、1対の内壁面31aの概ね全面を覆っている。
従って、励振電極15Aと励振電極15Bとは、x軸方向に互いに対向する部分を有することになる。その結果、例えば、両電極によってx軸方向の電界が形成されやすくなり、励振の効率が向上する。
図示の例では、y軸方向に見て、凹溝31の内面は2つの内壁面31aによって構成されており(2つの内壁面31aが互いに交差しており)、底面(例えばz軸に概ね直交する面)を有していない。ただし、凹溝31の内面は、底面として概念できる部分を含んでいてもよい。
本実施形態の説明では、基本的に(後述する拡張部の影響を受ける部分を除いて)、1つの内壁面31aを1つの平面によって図示する。ただし、内壁面31aは、2以上の平面から構成されたり、曲面を含んで構成されたりしてもよい。圧電体3が水晶等の単結晶からなる場合において、内壁面31aは、その少なくとも一部が結晶面から構成されてよい。
内壁面31aは、y軸方向に見て、法線(不図示)がz軸に対してx軸側へ交差している。y軸方向に見て、内壁面31aの法線と、z軸とが成す角度は適宜に設定されてよく、図示の例では、90°未満である。ただし、当該角度は、90°であってもよい(内壁面31aはz軸に平行であってもよい。)。また、当該角度は、1対の内壁面31a間で異なっていてもよい。
凹溝31の幅(平面視における幅。内壁面31aの上縁の位置における幅。以下、同様。)は、例えば、基本的に(例えば後述する拡張部の影響を受ける部分を除いて)、凹溝31の全長に亘って一定である。別の観点では、駆動腕7の上下面のうちの凹溝31の非配置領域であって、凹溝31の両側に位置する部分(領域7a)の幅は、基本的に、凹溝31の全長に亘って一定である。なお、凹溝31は、基部5とは反対側の端部において、細くされるなどしていてもよい。
(拡張部)
図5(a)は、導体層を省略して駆動腕7の根本を示す斜視図である。図5(b)は、導体層を省略して駆動腕7の根本を示す平面図である。図5(c)は、駆動腕7の根元をその上面の導体層とともに示す平面図である。
図2、図3(a)、図3(b)および図5(a)〜図5(c)に示すように、駆動腕7は、凹溝31の非配置領域を拡張する拡張部33を有している。なお、図5(a)および図5(b)では、拡張部33と、他の部分との境界の一部を点線で示している。以下において、拡張部33の形状および寸法の説明は、特に断りがない限り、駆動腕7の上下面におけるものを基準とする。例えば、拡張部33から凹溝31側へ広がる裾野(内壁面31a)は、拡張部33には含まれない。
拡張部33は、凹溝31の非配置領域を凹溝31の基部5側から凹溝31の長さの途中まで凹溝31の幅の一部に拡張している。なお、このようにいう場合、例えば、凹溝31において、基部5側の端部の幅は、当該端部よりも駆動腕7の先端側に位置する部分(端部以外の全部または一部)の幅に比較して狭くなっている。別の表現では、例えば、凹溝31の非配置領域の上面が駆動腕7の幅に占める割合は、凹溝31の端部において、当該端部よりも駆動腕7の先端側に位置する部分(端部以外の全部または一部)に比較して大きくなっている。
拡張部33の数、位置および形状は適宜に設定されてよい。例えば、拡張部33は、1つの凹溝31の側方両側に2つ設けられている。各拡張部33は、凹溝31の基部5側の端面から凹溝31内に突出している。その突出方向は、例えば、駆動腕7(凹溝31)に平行である。別の観点では、拡張部33は、凹溝31の端部において凹溝31の側方両側から凹溝31内に張り出している。そして、凹溝31との境界(拡張部33の上面と凹溝31の内壁面31aとが成す稜線)は、駆動腕7に平行である。拡張部33の基部5とは反対側の先端は、例えば、先端ほど凹溝31の外側に位置するように細くなっている。
拡張部33の寸法も適宜に設定されてよい。例えば、各拡張部33は、長さ(y軸方向)が幅(x軸方向)よりも大きい。また、例えば、各拡張部33の幅(長さ方向において幅が異なる場合は例えば最大値または平均値。以下、同様。)は、凹溝31の幅の5%以上、および/または駆動腕7の幅の3%以上である。また、拡張部33が1つのみまたは複数で設けられている場合において、その幅の合計は、例えば、凹溝31の幅の50%以下、および/または駆動腕7の幅の40%以下である。また、例えば、各拡張部33の幅は、1μm以上または5μm以上である。拡張部33の長さは、例えば、凹溝31の長さの30%以下または10%以下である。拡張部33の長さは、凹溝31の幅よりも小さくてもよいし、同等でもよいし、長くてもよい。なお、拡張部33の長さおよび幅は、圧電体3の加工誤差よりも大きい。
図2に示すように、凹溝31の内面は、例えば、拡張部33によって幅が減じられた部分において若干高くなっている。ただし、凹溝31の内面は、凹溝31の長さ全体に亘って同等の深さに形成されてもよい。
(拡張部周囲の導体)
複数の配線19のうち、基部5から駆動腕7へ延びて励振電極15Aに接続されるものを配線19Aとする。なお、配線19は、例えば、励振電極15Aと他の励振電極15とを接続するものであってもよいし、励振電極15Aとパッド13とを接続するものであってもよい。
配線19Aは、例えば、基部5の上面から拡張部33の上面へ延びている。そして、配線19Aは、拡張部33の上面と凹溝31との幅方向(x軸方向)における境界を介して励振電極15Aに接続されている。
なお、上記の説明からも理解されるように、本開示の説明においては、y軸方向における拡張部33の位置から基部5側(拡張部33の位置含む)、かつ凹溝31の非配置領域に位置する導体は配線19Aであるものとする。すなわち、凹溝31内の導体は、拡張部33の側方(2つの拡張部33の間)に位置する部分も含めて励振電極15であるものとする。
配線19Aは、例えば、基部5から一定の幅で凹溝31に向かってy軸方向に延びている。その幅は、例えば、凹溝31の幅以上かつ駆動腕7の幅以下であり、図示の例では凹溝31の幅と同等である。そして、配線19Aは、拡張部33の全体に亘って広がっている。
別の観点では、平面視において、凹溝31の幅以上かつ駆動腕7の幅以下の幅の導体が基部5の上面から駆動腕7の上面(凹溝31を含む)に亘って延びている。そして、拡張部33の上面の配線19Aと、凹溝31内の励振電極15Aとは、例えば、拡張部33と凹溝31との稜線全体に亘って接続されている。なお、凹溝31の基部5側の端面(y軸方向に面する面)において、導体は成膜されていてもよいし、成膜されていなくてもよい。
(圧電体の励振および励振電極の接続関係)
図6(a)および図6(b)は、圧電体3の励振を説明するための模式的な平面図である。
図6(a)および図6(b)は、励振電極15に印加されている交流電圧の位相が互いに180°ずれている。上述のように、駆動腕7は、励振電極15に交流電圧が印加されることによってx軸方向において励振される。
各ユニット2において、検出腕9を挟んで対を成す2本の駆動腕7(7Aおよび7Dの2本、7Bおよび7Cの2本、7Eおよび7Hの2本ならびに7Fおよび7Gの2本)は、互いに逆側に曲がるように励振される。このような励振を実現するために、検出腕9を挟んで対を成す2本の駆動腕7間においては、励振電極15Aと励振電極15Bとが同電位とされている。同電位とされるべき励振電極15同士は、例えば、配線19によって接続されている。
また、各ユニット2において、互いに隣り合う2本の駆動腕7(7Aおよび7Bの2本、7Cおよび7Dの2本、7Eおよび7Fの2本ならびに7Gおよび7Hの2本)は、互いに同一側に曲がるように励振される。このような励振を実現するために、互いに隣り合う2本の駆動腕7間においては、励振電極15A同士が同電位とされ、励振電極15B同士が同電位とされている。同電位とされるべき励振電極15同士は、例えば、配線19によって接続されている。
2つのユニット2において、複数の駆動腕7はx軸方向に関して同様に励振される。すなわち、検出腕9に対してx軸方向の同一側に位置する4本の駆動腕7(7A、7B、7Eおよび7Fの4本ならびに7C、7D、7Gおよび7Hの4本)は、x軸方向において互いに同一側に曲がるように励振される。このような励振を実現するために、検出腕9に対してx軸方向の同一側に位置する駆動腕7間においては、励振電極15A同士が同一の電位とされ、励振電極15B同士が同一の電位とされる。同電位とされるべき励振電極15同士は、例えば、配線19によって接続されている。
各ユニット2において、図6(a)に示すように、検出腕9に対して−x側の駆動腕7と、検出腕9に対して+x側の駆動腕7とが互いに離れるように(x軸方向の外側へ)撓むと、その曲げモーメントが基部5に伝わり、基部5は検出腕9が延び出る側(ユニット2Aでは+y側、ユニット2Bでは−y側)へ撓む。その結果、検出腕9が先端側へ変位する。逆に、図6(b)に示すように、−x側の駆動腕7と、+x側の駆動腕7とが互いに近づくように(x軸方向の内側へ)撓むと、その曲げモーメントが基部5に伝わり、基部5は検出腕9が延び出る側とは反対側(ユニット2Aでは−y側、ユニット2Bでは+y側)へ変位する。その結果、検出腕9が根本側へ変位する。
従って、1対の駆動腕7がx軸方向に励振されることによって、検出腕9がy軸方向において振動(変位)することになる。
(角速度の検出および検出電極の接続関係)
図6(c)および図6(d)は、コリオリの力による検出腕9の振動を説明するための模式的な斜視図である。ただし、これらの図では、駆動腕7および基部5の変形については図示が省略されている。
図6(c)および図6(d)は、図6(a)および図6(b)の状態に対応している。図6(a)および図6(b)を参照して説明した振動が生じている状態で、センサ素子1がx軸回りに回転されると、検出腕9は、y軸方向に振動(変位)していることから、回転軸(x軸)と振動方向(y軸方向)とに直交する方向(z軸方向)においてコリオリの力を受けて振動(変形)する。
より具体的には、各ユニット2において、第2腕23は、矢印y1で示すコリオリの力の方向へ曲がるように撓み変形する。また、このような撓み変形を第2腕23に生じさせる曲げモーメントは、矢印y2で示すように第2腕23と第1腕21との連結部を介して第1腕21に伝わり、第1腕21にコリオリの力の方向とは反対側へ曲がる撓み変形を生じさせるように第1腕21に作用する。従って、第1腕21と第2腕23とはz軸方向において互いに逆側に撓み変形することになる。
各ユニット2において、第1腕21および第2腕23それぞれのz軸方向への撓み変形によって生じる電気信号は、検出電極17によって取り出される。そして、第1腕21および第2腕23において生じた電気信号は加算される。
このような加算を実現するために、各ユニット2において、第1腕21と第2腕23との間では、検出電極17Aと検出電極17Bとが接続されている。また、各ユニット2において、2つの第1腕21間においては、検出電極17A同士が接続され、検出電極17B同士が接続されている。接続は、例えば、複数の配線19によってなされている。
2つのユニット2間においては、検出腕9Aおよび9Bは、y軸方向において互いに逆側へ変位する位相で振動しているから、x軸回りの回転方向に対して同一側にコリオリの力を受ける。別の観点では、検出腕9Aおよび9Bは、z軸方向において互いに逆側へ曲がるように振動する。そして、2つの検出腕9によって取り出された信号は、加算される。
このような加算を実現するために、検出腕9Aと検出腕9Bとの間では、一方の検出腕9に係る第1腕21の検出電極17Aと他方の検出腕9に係る第1腕21の検出電極17Bとが接続され、一方の検出腕9に係る第2腕23の検出電極17Aと他方の検出腕9に係る第2腕23の検出電極17Bとが接続されている。接続は、例えば、複数の配線19によってなされている。
(センサ素子の製造方法)
図7(a)〜図7(e)は、センサ素子1の製造方法を説明する断面図であり、図3(b)の断面に対応している。
センサ素子1の製造方法は、概して言えば、エッチングによって圧電体3の各部(5、7、9および11)を形成するエッチング工程(図7(a)および図7(b))と、エッチングされた圧電体3の表面に導体(13、15、17および19)を形成する導体層形成工程(図7(c)〜図7(e))とを有している。具体的には、例えば、以下のとおりである。
まず、図7(a)に示すように、圧電体3が多数個取りされるウェハ35の両面にマスク37を形成する。マスク37は、例えば、ウェハ35のうち圧電体3の各部(5、7、9および11)となる部分に重なる部分を有している。換言すれば、マスク37は、ウェハ35のうち圧電体3となる領域の外側の領域に重なる開口を有している。
ただし、マスク37は、駆動腕7となる部分については、凹溝31の非配置領域となる部分にのみ重なっている。すなわち、マスク37は、凹溝31となる部分の上に開口37aを有している。特に図示しないが、マスク37は、検出腕9の貫通溝となる部分の上にも開口を有している。
次に、図7(b)に示すように、マスク37が形成されたウェハ35を薬液に浸して、ウェハ35の両面からエッチングを行う。これにより、ウェハ35の両面に凹部が形成され、さらには両面の凹部同士が結合されて貫通孔となり、圧電体3の外縁が形成される。開口37aは、マスク37の他の開口(圧電体3の外縁を形成する開口)に比較して小さいことから、開口37aでは、上記他の開口に比較してエッチングが進まない。その結果、開口37a下の凹部は両主面間で結合されず、凹溝31が形成される。
なお、特に図示しないが、開口37aは、駆動腕7の長手方向で複数の開口に分割されていてもよい。これにより、1つの開口の面積が小さくされ、さらにエッチングが進まないようにされる。この場合、凹溝31も長手方向において分割されるが、本開示の説明では、この長手方向に分割された凹溝31も1本であるものとする。
また、この段階において、圧電体3は、捨て代を介した連結によってウェハ状態が維持されていてもよいし、個片化されてもよい。圧電体のエッチングは、ウェットエッチングでもよいし、ドライエッチングでもよい。圧電体3が単結晶である場合においては、エッチングによって現れた結晶面が凹溝31の内面の少なくとも一部とされてよい。
次に、図7(c)に示すように、マスク37を除去し、圧電体3の上下面に導体のパターニング用のマスク39を形成する。マスク39は、圧電体3の上下面のうち、導体が形成されない領域に重なっている。換言すれば、マスク39は、圧電体3の上下面のうち、導体が形成される領域に開口を有している。図7(c)では、励振電極15Aと、拡張部33上の配線19Aとが形成される領域に重なる開口39aが図示されている。また、圧電体3の外周面(駆動腕7の側面等)は、マスクが形成されずに露出されている。
次に、図7(d)に示すように、スパッタリング等の薄膜形成法によって導体を形成する。このとき、導体となる材料は、例えば、矢印y5で示すように、一定の方向に移動して圧電体3に付着する。一方、圧電体3は、例えば、矢印y6で示すように、その材料の移動方向に上面の法線を一致させた向きを中心として、y軸に平行な軸回りに所定の角度範囲で、連続的または間欠的に回転される(傾斜される。)。同様の操作は、圧電体3の下面についても行われる。
その結果、図7(e)に示すように、圧電体3の上下面のマスク39の非配置位置、および圧電体3の外周面(駆動腕7の側面等)に導体が形成される。図7(e)では、導体のうち、励振電極15Aおよび15B、ならびに拡張部33上の配線19Aが図示されている。なお、分割腕25については、例えば、隣の分割腕25および検出腕9の側方に位置するダミー腕(例えばウェハの枠から延びている)等に分割腕25の側面に向かう材料が遮られ、分割腕25の側面のうち、圧電体3の上面側の一部および圧電体3の下面側の一部に検出電極17が形成される。その後、特に図示しないが、マスク39は除去される。
以上のとおり、本実施形態では、センサ素子1は、圧電体3と、励振電極15Aおよび15Bと、複数の配線19とを有している。圧電体3は、上面視において基部5および当該基部5から延び出ている駆動腕7を含んでいる。駆動腕7の上面には駆動腕7に沿って延びる凹溝31が形成されている。励振電極15Aは、凹溝31の内面に位置している。励振電極15Bは、駆動腕7の側面に位置している。複数の配線19は、励振電極15にそれぞれ接続されている。駆動腕7は、凹溝31の非配置領域を凹溝31の基部5側から凹溝31の長さの途中まで凹溝31の幅の一部に拡張する拡張部33を有している。複数の配線19は、基部5の上面から拡張部33の上面に延び、拡張部33の上面と凹溝31との幅方向における境界(稜線)を介して励振電極15Aに接続されている配線19Aを含んでいる。
従って、例えば、凹溝31の基部5側の端面に加えて、または代えて、凹溝31の側方にて励振電極15Aと配線19Aとを接続することができる。これにより、両者の導通の信頼性を向上させることができる。別の観点では、例えば、両者の導通の態様の自由度を向上させることができる。
ここで、例えば、圧電体3のエッチングに対する異方性によって、凹溝31の基部5側の端面は、基部5の上面に対する傾斜角が急峻になり、その一方で、凹溝31の内壁面31aの基部5の上面に対する傾斜角は緩やかになることがある。例えば、圧電体3が水晶であり、駆動腕7が延びる方向(y軸方向)のY軸に対する角度が5°以内であり、駆動腕7の幅方向(x軸方向)のX軸に対する角度が5°以内である場合には、そのような形状になりやすい。そのような場合においては、例えば、圧電体3の上方から導体となる材料を飛ばして成膜したときに、凹溝31の基部5側の端面よりも、内壁面31aの方が、導体が成膜されやすい。従って、励振電極15Aと配線19Aとの導通の信頼性を向上させる効果が向上する。
また、例えば、本実施形態の説明で例示したように、導体の成膜においては、y軸に平行な軸回りに回転される一方で、x軸に平行な軸回りに回転されないことがある。これは、例えば、y軸方向に延びる駆動腕7および/または検出腕9(本実施形態では双方)の側面(x軸に面する面)に電極(15Bまたは17)が形成される一方で、y軸に面する面には電極が形成されないことからである。このような場合においては、圧電体3の上方から導体となる材料を飛ばして成膜したときに、凹溝31の基部5側の端面よりも、内壁面31aの方が、導体が成膜されやすい。従って、励振電極15Aと配線19Aとの導通の信頼性を向上させる効果が向上する。
また、例えば、凹溝31の基部5側の端面を介して励振電極15Aと配線19Aとを導通させる場合は、その導通部分の幅は凹溝31の幅以下に限定される。一方、凹溝31の内壁面31aを介して励振電極15Aと配線19Aとを導通させる場合は、凹溝31の長さは凹溝31の幅よりも大きいことから、凹溝31の幅以下に限定されることはない。すなわち、設計の自由度が高い。
さらに、拡張部33を形成し、拡張部33と凹溝31との間で導通させていることから、例えば、配線19Aの幅(x軸方向)を十分に確保することができる。その結果、例えば、導通不良または配線抵抗の増加が生じるおそれを低減できる。別の観点では、拡張部33を形成していることから、拡張部33よりも駆動腕7の先端側において、凹溝31の幅を極力大きくすることができる。すなわち、凹溝31の両側の壁部を極力薄くすることができる。その結果、例えば、駆動腕7の振動特性が向上する。
また、本実施形態では、拡張部33が基部5側から凹溝31内に駆動腕7に平行に突出している。
従って、例えば、上記の励振電極15Aと配線19Aとの導通の信頼性を向上させる効果が向上する。具体的には、例えば、y軸に平行な回転軸回りに圧電体3を回転させたときに、内壁面31aのうち拡張部33に隣接する領域を導体の材料が飛んでくる方向に向けることが容易化される。また、例えば、凹溝31に先細り形状が形成されないから、後述する変形例(図10(c)または図10(d))に比較して、凹溝31を形成するエッチングを凹溝31の端部まで行うことが容易である。
また、本実施形態では、拡張部33が凹溝31の側方から凹溝31側へ広がっている。
従って、例えば、後述する第2実施形態(図8)に比較すると、凹溝31が拡張部33によって幅方向に分割されず、凹溝31の拡張部33に隣接する部分の幅が大きくされる。その結果、例えば、当該隣接する部分の一方の内壁面31aに励振電極15Aを成膜するときに、励振電極15Aとなる材料が他方の壁部に遮られてしまうおそれが低減される。ひいては、凹溝31の深くまで励振電極15Aを成膜しやすくなる。
また、本実施形態では、駆動腕7が延びる方向(y軸方向)の、駆動腕7の先端側の凹溝31の端部から拡張部33の手前までの範囲においては、励振電極15Aは、駆動腕7の上面のうち、凹溝31の内面のみに位置している。
すなわち、凹溝31の側方両側の凹溝31の非配置領域(領域7aおよび拡張部33)は、拡張部33を除いて、励振電極15Aの非配置領域となっている。別の観点では、駆動腕7の上面の両側縁部付近は、励振電極15Aと励振電極15Bとを短絡させないために励振電極15Aの非配置領域とされるところ、当該励振電極15Aの非配置領域まで、凹溝31が幅広に形成されている。このような構造は、上記のように拡張部33を形成して配線19Aの面積を確保したことによって実現が容易化されており、また、振動特性の向上の効果を奏する。
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態に係るセンサ素子201の一部を示す斜視図である。図9(a)〜図9(c)はセンサ素子201の一部を示す図であり、第1実施形態の図5(a)〜図5(c)に対応している。
第2実施形態のセンサ素子201は、基本的には、拡張部の形状のみが第1実施形態と相違する。ただし、拡張部の形状の相違に伴って、凹溝31、励振電極15Aおよび配線19A(これらの符号はそのまま用いる。)の形状も第1実施形態と相違する。
センサ素子201(圧電体203)の駆動腕207において、拡張部233は、第1実施形態の拡張部33と同様に、凹溝31の非配置領域を凹溝31の基部5側から凹溝31の長さの途中まで凹溝31の幅の一部に拡張している。
ただし、拡張部233は、拡張部33とは異なり、凹溝31の側方両側の縁部(上縁)から離れた位置にて、基部5側から凹溝31内に突出している。なお、凹溝31の側方の縁部は、凹溝31の開口の幅方向の縁部であり、凹溝31の内壁面31aと駆動腕207の上面のうちの凹溝31の非配置領域との稜線である。
拡張部233の数、位置および形状は適宜に設定されてよい。例えば、拡張部233の数は、1つの凹溝31に対して1つである。また、例えば、拡張部233は、凹溝31の幅方向の中央に位置している。拡張部233の突出方向は、例えば、駆動腕7(y軸方向)に平行である。別の観点では、拡張部233と凹溝31との境界(拡張部233の上面と凹溝31の内壁面31aとが成す稜線)は、駆動腕7に平行である。拡張部33の基部5とは反対側の先端は、適宜な形状とされてよい。拡張部233の寸法も適宜に設定されてよい。第1実施形態で述べた拡張部33の寸法についての説明は、第2実施形態の拡張部33の寸法に関する説明とされてよい。
凹溝31の内面は、例えば、拡張部233によって分割された部分において若干高くなっている。ただし、当該部分の深さは、他の部分の深さと同等とされてもよい。また、拡張部233が新たな壁部として構成されていることから、当該部分においては、内壁面は4面構成されている。すなわち、凹溝31全体の両側の2つの内壁面31aと、拡張部233の両側(凹溝31の内側)の2つの内壁面31bとが構成されている。
励振電極15Aおよび配線19Aを構成する導体は、例えば、第1実施形態と同様に、凹溝31の幅と同等の幅で、基部5の上面から駆動腕207の上面へ延びている。そして、駆動腕207の上面に位置する部分のうち、凹溝31の内面に位置する部分は励振電極15Aとなっており、拡張部233の上面および凹溝31よりも基部5側に位置する部分は配線19Aとなっている。配線19Aと励振電極15Aとは、拡張部233の上面と凹溝31の内壁面31aとの境界(稜線)を介して接続されており、また、例えば、拡張部233の側方両側で接続されている。
以上の構成を有するセンサ素子201の製造方法は、圧電体203をエッチングするときのマスクの具体的な形状(拡張部233に対応する部分)を除いては、第1実施形態のセンサ素子1の製造方法と同様とされてよい。
以上の実施形態においても、駆動腕207は、凹溝31の非配置領域を凹溝31の基部5側から凹溝31の長さの途中まで凹溝31の幅の一部に拡張する拡張部233を有している。また、複数の配線19は、基部5の上面から拡張部233の上面に延び、拡張部233の上面と凹溝31との幅方向における境界(稜線)を介して励振電極15Aに接続されている配線19Aを含んでいる。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、励振電極15Aと配線19Aとを好適に導通できる。
また、本実施形態では、拡張部233が凹溝31の側方両側の縁部から離れた位置にて、基部5側から凹溝31内に突出している。
従って、例えば、第1実施形態では、1つの拡張部33は、その側方片側において配線19Aと励振電極15Aとを導通させていたのに対して、1つの拡張部233は、その側方両側において配線19Aと励振電極15Aとを導通させることができる。その結果、例えば、配線19Aと励振電極15Aの導通を効率的に行うことができる。また、例えば、第1実施形態に比較して、凹溝31の基部5側の端部における励振電極15Aと励振電極15Bとの対向距離を短くしやすい。
<変形例>
図10(a)〜図10(d)は、種々の変形例に係る駆動腕の根元部分を示す平面図であり、第1実施形態の図5(b)に相当する。これらの図では、拡張部と他の部分との境界の一部に点線を付している。
図10(a)に示す駆動腕301は、第1実施形態の拡張部33を有している。ただし、この変形例では、凹溝31の側方の一方側にのみ拡張部33が設けられている。このように、拡張部33は、一つのみ設けられてもよい。
なお、圧電体の材料の種類および結晶軸の方向によっては、凹溝31の両側の1対の内壁面において、一方が他方よりも傾斜が緩やかな場合がある。このような場合において、傾斜が緩やかな方だけに、拡張部33が形成され、当該傾斜が緩やかな内壁面における導通をさらに向上させてもよいし、逆に、傾斜が急峻な方だけに拡張部33が形成され、導通が途切れるおそれを低減してもよい。
図10(b)に示す駆動腕303は、第2実施形態の拡張部233を有している。ただし、この変形例では、拡張部233は、2つ設けられている。このように、拡張部233は、2以上で設けられてもよいし、凹溝31の幅方向の中央に位置していなくてもよい。
図10(c)に示す駆動腕305は、第1実施形態と同様に、凹溝31の側方から凹溝側へ広がっている拡張部307を有している。ただし、拡張部307は、駆動腕305の先端側(紙面左側)ほど細くなる形状とされている。これにより、拡張部307と凹溝31との幅方向における境界は、幅方向に直交しておらず、幅方向に傾斜している。
別の観点では、これまでの拡張部は、平面視において凹溝31に凹部を形成していた(凹溝31の形状を数学でいう非凸集合にしていた)のに対して、この変形例では、凹溝31は拡張部307の存在によっても凸多角形(凸集合)である。また、拡張部307は、これまでの拡張部とは異なり、凹溝31内に突出しているという表現は馴染まない。
このような拡張部307も、これまでの拡張部と同様に、凹溝31の非配置領域を凹溝31の基部5側から凹溝31の長さの途中まで凹溝31の幅の一部に拡張していると言える。そして、これまでの拡張部と同様に、例えば、励振電極15Aと配線19Aとの導通に寄与する。
なお、図示の例では、2つの拡張部307の基部5側の幅の合計は、凹溝31の幅と同等となっているが、これよりも小さくてもよい。また、図示の例では、拡張部307は、凹溝31の両側に設けられているが、図10(a)と同様に、側方の一方側にのみ設けられてもよい。この場合において、拡張部の基部5側の幅は、凹溝31の幅と同等であってもよい(凹溝31の基部5側の端面は、x軸に対してy軸方向の一方側に傾斜する形状とされてもよい。)。
図10(d)に示す駆動腕309は、第2実施形態と同様に、凹溝31の側方両側の縁部から離れた位置にて基部5側から凹溝31内へ突出している拡張部311を有している。ただし、拡張部311は、駆動腕305の先端側(紙面左側)ほど細くなる形状とされている。また、拡張部311の基部5側の幅は、例えば、凹溝31の幅と同等とされている。このような形状であっても、これまでの拡張部と同様の作用が奏される。
なお、以上の実施形態および変形例において、センサ素子1および201は、それぞれ圧電素子の一例である。角速度センサ51は、圧電デバイスの一例である。駆動腕7、207、301、303、305および309は、それぞれ腕部の一例である。励振電極15Aは第1電極の一例である。励振電極15Bは第2電極の一例である。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
圧電素子または圧電デバイスは、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の一部として構成されてよい。この場合において、MEMSの基板上に圧電素子を構成する圧電体が実装されてもよいし、MEMSの基板が圧電体によって構成されており、その一部によって圧電素子の圧電体が構成されてもよい。
圧電デバイスは、角速度センサに限定されない。また、圧電素子は、センサ素子に限定されない。例えば、圧電デバイスは、発振信号を生成するものであってもよく、具体的には、水晶振動子等の圧電振動子または水晶発振器等の圧電発振器であってもよい。圧電素子は、これらの振動子または発振器に利用される振動素子であってよい。例えば、振動素子は、音叉型のものである。
圧電デバイスが発振信号を生成するものであってもよいことからも明らかなように、腕部は、駆動腕と概念されるものに限定されない。また、圧電デバイスが角速度センサの場合においても、腕部は、駆動腕に限定されないし、第1電極および第2電極は励振電極に限定されない。
例えば、角速度センサのセンサ素子として、角速度の大きさに応じた変形量で分極軸(電気軸)方向に振動する検出腕を有するものが知られている。このような検出腕は、例えば、実施形態の駆動腕と同様に、上下面に1対の検出電極が設けられ。両側の側面に他の1対の検出電極が設けられ、これにより電気信号が検出される。腕部ならびに第1電極および第2電極は、このような検出腕ならびに当該検出腕に設けられる検出電極であってもよい。この場合、制御回路は、第1電極および第2電極から信号を検出する。また、例えば、腕部は、駆動腕と検出腕とを兼ねるものであってもよい。例えば、腕部の長さ方向の互いに異なる位置に励振電極と検出電極とが設けられてもよい。
角速度センサは、実施形態に開示した態様に係るものに限定されず、公知の種々の態様のものとされてよい。例えば、角速度センサは、x軸(腕部に交差する軸、分極軸)回りの回転を検出するものに限定されず、y軸回りまたはz軸回りの回転を検出するものであってもよい。また、例えば、角速度センサは、1本の駆動腕と1本の検出腕とが互いに並列に延び、y軸回りの回転を検出する音叉型のものであってもよい。また、例えば、角速度センサは、互いに並列に延びて対を成す駆動腕がx軸方向において互いに同一側に曲がるように振動するものであってもよい。また、実施形態と同様に、互いに並列に延びて対を成す駆動腕がx軸方向において互いに逆側に曲がるように振動するものでありながら、y軸回りの回転によって検出腕がz軸方向に振動するものであってもよい。
第1電極(凹溝)、腕部の上下面の双方に設けられている必要は無く、一方のみに設けられていてもよい。また、第2電極は、腕部の両側の側面に設けられている必要は無く、一方のみに設けられていてもよい。凹溝の本数は、1本の腕部に対して1本に限定されず、1本の腕部に2本以上設けられてもよい。この場合に、各凹溝に拡張部が設けられてもよいし、一部の凹溝に拡張部が設けられてもよい。
実施形態において開示した角速度センサの振動態様は、新規なものである。この新たな振動態様の角速度センサは、z軸回りの回転を検出することにも利用可能である。この場合、検出腕は、z軸回りの回転によってx軸方向に振動する。この振動を検出する複数の検出電極の配置は、実施形態の励振電極と同様である。この場合の検出腕に凹溝および拡張部が設けられ、複数の検出電極が第1電極および第2電極とされてもよい。
また、この新たな振動態様の角速度センサにおいて、2つのユニットが設けられず、1つのユニットのみが設けられてもよい。また、2つのユニットは、実施形態とは逆に、駆動腕が延び出る側が互いに対向するように配置されたり、互いに逆の位相で励振されたりしてもよい。2つのユニットのうち一方がx軸回りの角速度の検出に供され、他方がz軸回りの角速度の検出に供されてもよい。
また、この新たな振動態様を実現する各ユニットにおいて、(少なくとも)1対の駆動腕と、(少なくとも1本の)検出腕とは、同一方向に(並列に)延びている必要はない。例えば、y軸方向の一方側に延びる1対の駆動腕に対して、y軸方向の他方側に延びる1本の検出腕が設けられてもよい。
また、新たな振動態様において、1本の基部から延びる駆動腕の本数と検出腕の本数との組み合わせは適宜である。例えば、1対の駆動腕に対して、y軸方向の正側に延びる検出腕と、y軸方向の負側に延びる検出腕とが設けられてもよい。また、1対の駆動腕の間に、互いに並列に延びる2本以上の検出腕を設けることも可能である。
また、例えば、1本の基部から互いに逆側に延びる2対の駆動腕を設けてもよい。この場合、+y側に延びる1対の駆動腕と、−y側に延びる1対の駆動腕とは、互いにx軸方向において逆側に振動するように(例えば+y側の1対の駆動腕が互いに離反するときは−y側の1対の駆動腕は互いに近接するように)励振される。これにより、2対の駆動腕からのモーメントが1本の基部に加算される。
新たな振動態様において、検出腕は、第1腕および第2腕を有するものに限定されず、第1腕のみを有していてもよい。また、1本の第1腕の両側に1対の第2腕が連結されてもよい。また、検出腕は、複数の分割腕から構成されるものに限定されない。新たな振動態様において、実装部は、矩形等の環状に形成されてもよい。