JP2019091792A - 非水系リチウム型蓄電素子 - Google Patents

非水系リチウム型蓄電素子 Download PDF

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Abstract

【課題】幅広い温度範囲での高い入出力特性と優れた高温耐久性とを両立することができ、高電圧領域でも特性を長期間保持することができる、非水系リチウム型蓄電素子を提供すること。【解決手段】負極、正極、セパレータ、及び非水系電解液を含む非水系リチウム型蓄電素子であって、負極が、負極集電体と負極活物質を含む負極活物質層とを有し、負極活物質層表面のXPSにより得られるSの元素濃度S168eVとFの元素濃度F685eVとの比S168eV/F685eVが0.025〜0.5であり、正極が、正極集電体と正極活物質を含む正極活物質層とを有し、正極活物質層の単位面積当たりのBET比表面積をA(m2/cm2)が0.2≦A≦10であり、正極活物質層表面のXPSにより得られるSの元素濃度S164eVとCの元素濃度Cとの比S164eV/Cが0.001〜0.05である、非水系リチウム型蓄電素子。【選択図】なし

Description

本発明は、非水系リチウム型蓄電素子に関する。
近年、地球環境の保全及び省資源を目指すエネルギーの有効利用の観点から、風力発電の電力平滑化システム又は深夜電力貯蔵システム、太陽光発電技術に基づく家庭用分散型蓄電システム、電気自動車用の蓄電システム等が注目を集めている。
これらの蓄電システムに用いられる電池の第一の要求事項は、エネルギー密度が高いことである。このような要求に対応可能な高エネルギー密度電池の有力候補として、リチウムイオン電池の開発が精力的に進められている。
第二の要求事項は、出力特性が高いことである。例えば、高効率エンジンと蓄電システムとの組み合わせ(例えば、ハイブリッド電気自動車)又は燃料電池と蓄電システムとの組み合わせ(例えば、燃料電池電気自動車)において、加速時には蓄電システムにおける高出力放電特性が要求されている。
現在、高出力蓄電デバイスとしては、電気二重層キャパシタ、ニッケル水素電池等が開発されている。
電気二重層キャパシタのうち、電極に活性炭を用いたものは、0.5〜1kW/L程度の出力特性を有する。この電気二重層キャパシタは、耐久性(サイクル特性及び高温保存特性)が高く、前記高出力が要求される分野で最適のデバイスと考えられてきた。しかしながら、そのエネルギー密度は1〜5Wh/L程度に過ぎない。そのため、電気二重層キャパシタは、更なるエネルギー密度の向上が必要である。
他方、現在ハイブリッド電気自動車で採用されているニッケル水素電池は、電気二重層キャパシタと同等の高出力を有し、かつ160Wh/L程度のエネルギー密度を有している。しかしながら、そのエネルギー密度及び出力をより一層高めるとともに、耐久性(特に、高温における安定性)を高めるための研究が精力的に進められている。
また、リチウムイオン電池においても、高出力化に向けての研究が進められている。例えば、放電深度(蓄電素子の放電容量に対する放電量の割合(%))50%において3kW/Lを超える高出力が得られるリチウムイオン電池が開発されている。しかしながら、そのエネルギー密度は100Wh/L以下であり、リチウムイオン電池の最大の特徴である高エネルギー密度を敢えて抑制した設計となっている。また、その耐久性(サイクル特性及び高温保存特性)については、電気二重層キャパシタに比べ劣る。そのため、リチウムイオン電池は、実用的な耐久性を持たせるためには、放電深度が0〜100%の範囲よりも狭い範囲で使用される。実際に使用できるリチウムイオン電池の容量は更に小さくなるから、耐久性をより一層向上させるための研究が精力的に進められている。
上記のように、高エネルギー密度、高出力特性、及び耐久性を兼ね備えた蓄電素子の実用化が強く求められている。しかしながら、上述した既存の蓄電素子には、それぞれ一長一短がある。そのため、これらの技術的要求を充足する新たな蓄電素子が求められている。その有力な候補として、リチウムイオンキャパシタと呼ばれる蓄電素子が注目され、開発が盛んに行われている。
リチウムイオンキャパシタは、リチウム塩を含む非水系電解液を使用する蓄電素子(非水系リチウム型蓄電素子)の一種であって、正極においては約3V以上で電気二重層キャパシタと同様の陰イオンの吸着・脱着による非ファラデー反応、負極においてはリチウムイオン電池と同様のリチウムイオンの吸蔵・放出によるファラデー反応によって、充放電を行う蓄電素子である。
上記の蓄電素子に一般的に用いられる電極材料とその特徴をまとめると、電極に活性炭等の材料を用い、活性炭表面のイオンの吸着・脱離(非ファラデー反応)により充放電を行う場合は、高出力かつ高耐久性を実現することができるが、エネルギー密度は低い(この場合のエネルギー密度を相対値の基準(例えば1倍)とする。)。一方、電極に酸化物又は炭素材料を用い、ファラデー反応により充放電を行う場合は、エネルギー密度が高くなる(この場合のエネルギー密度を、活性炭を用いた非ファラデー反応基準の相対値で、例えば10倍とする。)が、耐久性及び出力特性に課題がある。
これらの電極材料の組合せとして、電気二重層キャパシタは、正極及び負極に活性炭(エネルギー密度1倍)を用い、正負極共に非ファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、高出力かつ高耐久性を有するが、エネルギー密度が低い(正極1倍×負極1倍=1)という特徴がある。
リチウムイオン二次電池は、正極にリチウム遷移金属酸化物(エネルギー密度10倍)、負極に炭素材料(エネルギー密度10倍)を用い、正負極共にファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、高エネルギー密度(正極10倍×負極10倍=100)であるが、出力特性及び耐久性に課題がある。更に、ハイブリッド電気自動車等で要求される高耐久性を満足させるためには放電深度を制限しなければならず、リチウムイオン二次電池では、そのエネルギーの10〜50%しか使用できない。
リチウムイオンキャパシタは、正極に活性炭(エネルギー密度1倍)、負極に炭素材料(エネルギー密度10倍)を用い、正極では非ファラデー反応、負極ではファラデー反応により充放電を行うことを特徴とし、電気二重層キャパシタ及びリチウムイオン二次電池の特徴を兼ね備えた非対称キャパシタである。そして、リチウムイオンキャパシタは、高出力かつ高耐久性でありながら、高エネルギー密度(正極1倍×負極10倍=10)を有し、リチウムイオン二次電池のように放電深度を制限する必要がないことが特徴である。
リチウムイオンキャパシタの用途としては、例えば、鉄道、建機、自動車等における蓄電用途等が挙げられる。これらの用途では、作動環境が過酷なため、使用されるキャパシタは、40℃以上の高温から0℃以下の低温まで幅広い温度範囲において優れた特性を有する必要がある。40℃以上の高温環境下では、電解液の分解によるガス発生によって引き起こされる性能低下が問題となっている。
このような課題への対策技術として、非水系電解液中に添加剤を加え、負極活物質及び正極活物質の表面に、その分解物から成る被膜を形成させることによって、以後の充放電に伴う非水系電解液の分解を抑制し、電池の耐久性を向上させる技術がある。
これに関連する技術として、特許文献1及び2では、電解液中に異なる構造を持つ2種の添加剤を含有させた蓄電素子が提案されている。また、特許文献3では、非水系電解液に添加剤を加えることで、負極活物質の表面上に一定量の被膜を形成させた蓄電素子が、特許文献4では、非水系電解液に添加剤を加えることで、正極活物質の表面上に被膜を形成させた蓄電素子が、それぞれ提案されている。
また、0℃以下の低温環境下では、蓄電素子の内部抵抗が大きくなり、急激な出力低下が引き起こされるという問題がある。
このような問題を解決する手段として、特許文献5及び6では、電解液中に特定の溶媒を含有させることで低温特性を向上させたリチウムイオンキャパシタが提案されている。特許文献6では、電解液中の混合溶媒の比率を最適化し、特定の負極活物質との適合性を高めることで、低温特性を向上させ、かつ高温試験時のガス発生を抑制することができるリチウムイオンキャパシタが提案されている。また、特許文献7では、正極活物質層に特定のアルカリ金属化合物を特定量含有させることにより、幅広い温度範囲での高い入出力特性と、高温環境下における電解液の分解によるガス発生及び特性劣化の抑制とを両立することができるリチウムイオンキャパシタが提案されている。
近年、非水系リチウム型蓄電素子には更なる高エネルギー密度化が求められており、この高エネルギー密度化を達成するために、高電圧化が検討されている。しかし、非水系リチウム型蓄電素子の高電圧化、具体的には、4.1V以上の高電位で作動させることを行うと、正極での電解液溶媒の酸化分解が顕著に起こり、大量のガス発生と、それに伴う蓄電素子の特性劣化とを引き起こすため、耐久性に問題が生ずる。このような問題を解決する手段として、特許文献8では、含燐添加剤を電解液に含有させることで、正極に被膜を形成し、サイクル特性低下とサイクル時の発生ガスとを抑制するリチウムイオン二次電池用電解液が提案されている。
なお、本明細書において、メソ孔量はBJH法により、マイクロ孔量はMP法により、それぞれ算出される。BJH法は非特許文献1において提唱されている。MP法は、「t−プロット法」(非特許文献2)を利用して、マイクロ孔容積、マイクロ孔面積、及びマイクロ孔の分布を求める方法を意味し、非特許文献3に示されている。
特開2014−27196号公報 特開2013−206791号公報 特開2014−137861号公報 特開2015−191806号公報 特開2015−70032号公報 特開2011−258915号公報 国際公開第2017/126691号 特開2017−69146号公報
E.P.Barrett,L.G.Joyner and P.Halenda,J.Am.Chem.Soc.,73,373(1951) B.C.Lippens,J.H.de Boer,J.Catalysis,4319(1965) R.S.Mikhail,S.Brunauer,E.E.Bodor,J.Colloid Interface Sci.,26,45(1968)
特許文献1、2、及び4に記載の技術は、高温保存時のガス発生及び電極劣化を抑制させるものであるが、低温特性については十分とはいえない。特許文献3では、高温におけるサイクル特性に優れたキャパシタが提供されているが、高温保存試験後の特性変化に関しては十分とはいえない。
特許文献4及び5に記載のリチウムイオンキャパシタは、低温における蓄電素子の特性を向上し得るものであるが、高温における耐久性の改善については十分とはいえない。特許文献5では、低温特性の向上に加えて、高温試験時のガス発生が抑制されたリチウムイオンキャパシタが提供されているが、高温試験後の特性変化の抑制については十分とはいえない。
特許文献7では、低温特性の向上、及び高温試験時の特性に優れた蓄電素子が提案されているが、4.1V以上の高電圧耐久性については十分とはいえない。また、特許文献8では、高電圧領域でのサイクル特性に優れた電解液が提案されているが、高温保存耐久性、及び低温特性については十分とはいえない。
以上のように、従来のリチウムイオンキャパシタにおいては、低温特性及び高温耐久性のうちのどちらか一方に着目して改良を行っているが、低温特性と高温耐久性とを同時に満足するには至っていない。すなわち、実用化に重要となる、高温から低温までの幅広い温度範囲における蓄電素子の入出力特性及び耐久性については不十分である。それに加えて、高電圧、具体的には、4.1V以上の高電圧に対する耐久性については、考慮されていない。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、幅広い温度範囲での高い入出力特性と優れた高温耐久性とを両立することができ、更に、4.1V以上の高電圧領域でも、その特性を長期間にわたって保持することができる、非水系リチウム型蓄電素子を提供することである。
本発明者らは、非水系リチウム型蓄電素子において、正極活物質として活性炭を使用し、正極活物質層及び負極活物質層に特定の被膜を形成させ、正極活物質層の比表面積を制御することで、幅広い温度範囲での高い入出力特性と、4.1V以上の高電圧かつ高温環境下における電解液の分解によるガス発生及びこれに伴う蓄電素子の特性劣化の抑制とを両立することが可能となることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりのものである。
[1] 負極、正極、セパレータ、及びリチウム塩を含む非水系電解液を含む非水系リチウム型蓄電素子であって、
前記負極が、負極集電体と、前記負極集電体の片面上又は両面上に設けられた、負極活物質を含む負極活物質層とを有し、かつ、前記負極活物質はリチウムイオンを吸蔵・放出できる炭素材料を含み、
前記負極活物質層表面のX線光電子分光測定(XPS)により得られる、S2pスペクトルの168eVのピーク面積に基づいて求めたSの元素濃度をS168eV(atomic%)、F1sスペクトルの685eVのピーク面積に基づいて求めたFの元素濃度をF685eV(atomic%)とするとき、元素濃度比S168eV/F685eVが、0.025以上0.5以下であり、
前記正極が、正極集電体と、前記正極集電体の片面上又は両面上に設けられた、正極活物質を含む正極活物質層とを有し、かつ、前記正極活物質は活性炭を含み、
前記正極活物質層のBET法により測定される単位面積当たりの比表面積をA(m/cm)とするとき、0.2≦A≦10であり、かつ、
前記正極活物質層表面のX線光電子分光測定(XPS)により得られる、S2pスペクトルの164eVのピーク面積に基づいて求めたSの元素濃度をS164eV(atomic%)、C1sスペクトルのCのピーク面積に基づいて求めたCの元素濃度をC(atomic%)とするとき、元素濃度比S164eV/Cが、0.001以上0.05以下である、非水系リチウム型蓄電素子。
[2] 前記非水系電解液が、下記化学式(1)で表される化合物Xと、下記化学式(2−1)〜(2−5)のそれぞれで表される化合物から選択される1種以上の化合物Yとを含む、[1]に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
Figure 2019091792
{式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ホルミル基、炭素数2〜7のアシル基、ニトリル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基、又は炭素数2〜7のアルキルオキシカルボニル基を表す。}
Figure 2019091792
{式(2−1)〜(2−5)中のR〜R28は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基を表し;そして、
式(2−1)〜(2−3)及び(2−5)中のnは、それぞれ独立に、0〜3の整数である。}
[3] 前記化学式(1)で表される化合物が、チオフェン、2−メチルチオフェン、3−メチルチオフェン、2−シアノチオフェン、3−シアノチオフェン、2,5−ジメチルチオフェン、2−メトキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、2−クロロチオフェン、3−クロロチオフェン、2−アセチルチオフェン、及び3−アセチルチオフェンから成る群から選択される1種以上であり、
前記化学式(2−1)で表される化合物が、エチレンスルファート及び1,3−プロピレンスルファートから成る群から選択される1種以上であり、
前記化学式(2−2)で表される化合物が、1,3−プロパンスルトン、2,4−ブタンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−ブタンスルトン、及び2,4−ペンタンスルトンから成る群から選択される1種以上であり、
前記化学式(2−3)で表される化合物が、1,3−プロペンスルトン及び1,4−ブテンスルトンから成る群から選択される1種以上であり、
前記化学式(2−4)で表される化合物が、3−スルフォレンであり、そして、
前記化学式(2−5)で表される化合物が、亜硫酸エチレン、1,2−亜硫酸プロピレン、及び1,3−亜硫酸プロピレンから成る群から選択される1種以上である、[2]に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[4] 前記非水系電解液が、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネートから成る群から選択される少なくとも1種の非水溶媒を含有する、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[5] 前記非水系電解液が、LiPF及びLiBFから成る群から選択される1種以上を含有する、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[6] 前記非水系電解液が、LiN(SOF)を含有する、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[7] 前記正極集電体及び前記負極集電体が、それぞれ、無孔の金属箔である、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[8] 前記正極活物質に含まれる活性炭が、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、0.3<V1≦0.8、及び0.5≦V2≦1.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m/g以上3,000m/g以下を示す活性炭を含む、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[9] 前記正極活物質に含まれる活性炭が、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量V1(cc/g)が0.8<V1≦2.5を満たし、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量V2(cc/g)が0.8<V2≦3.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が2,300m/g以上4,000m/g以下を示す活性炭を含む、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[10] 前記正極活物質が、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な遷移金属酸化物を更に含む、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[11] 前記遷移金属酸化物が、層状構造、スピネル構造、及びオリビン構造から選ばれる構造を有する遷移金属酸化物である、[10]に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[12] 前記遷移金属酸化物が、LiNiCoAl(1−a−b){a及びbは、それぞれ、0.2<a<0.97、0.2<b<0.97を満たす。}、LiNiCoMn(1−c−d){c及びdは、それぞれ、0.2<c<0.97、0.2<d<0.97を満たす。}、LiCoO、LiMn、LiFePO、LiMnPO{xは0≦x≦1を満たす。}、及びLi(PO{zは0≦z≦3を満たす。}から成る群から選択される1種以上である、[10]又は[11]に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[13] 前記負極活物質がリチウムイオンでドープされており、そのドープ量が、前記負極活物質の単位質量当たり530mAh/g以上2,500mAh/g以下である、[1]〜[12]のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[14] 前記負極活物質のBET比表面積が1m/g以上1,500m/g以下である、[1]〜[13]のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[15] 前記負極活物質が粒子状であり、その平均粒子径が、1μm以上10μm以下である、[13]又は[14]に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[16] セル電圧4.2Vでの初期の内部抵抗をRa(Ω)、静電容量をF(F)、電力量をE(Wh)、電極体を収納している外装体の体積をV(L)、及び環境温度−10℃における内部抵抗をRbとした時、以下の(a)、(b)、及び(c)の要件:
(a)RaとFの積Ra・Fが0.3以上3.0以下である、
(b)E/Vが15以上50以下である、及び
(c)Rb/Raが10以下である
を同時に満たす、[1]〜[15]のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[17] セル電圧4.2Vでの初期の内部抵抗をRa(Ω)、セル電圧4.2V及び環境温度60℃において2か月間保存した後の25℃における内部抵抗をRc(Ω)とした時、以下の(d)及び(e)の要件:
(d)Rc/Raが0.3以上3.0以下である、並びに
(e)セル電圧4.2V及び環境温度60℃において2か月間保存した時に発生するガス量が、25℃において30×10−3cc/F以下である、
を同時に満たす、[1]〜[16]のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[18] 前記負極、前記正極、前記セパレータ、及び前記非水系電解液が、外層体に収納されており、
前記外装体が、金属缶又はラミネート包材である、[1]〜[17]のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
[19] [1]〜[18]のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子を含む、蓄電モジュール。
[20] [1]〜[18]のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子、又は[19]に記載の蓄電モジュールを含む、電力回生システム。
[21] [1]〜[18]のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子、又は[19]に記載の蓄電モジュールを含む、電力負荷平準化システム。
[22] [1]〜[18]のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子、又は[19]に記載の蓄電モジュールを含む、無停電電源システム。
[23] [1]〜[18]のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子、又は[19]に記載の蓄電モジュールを含む、非接触給電システム。
[22] [1]〜[18]のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子、又は[19]に記載の蓄電モジュールを含む、エナジーハーベストシステム。
[23] [1]〜[18]のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子、又は[19]に記載の蓄電モジュールを含む、蓄電システム。
本発明によれば、幅広い温度範囲での高い入出力特性と、高電圧、高温における電解液の分解によるガス発生及びこれによる蓄電素子の特性劣化の抑制とが両立された非水系リチウム型蓄電素子を提供することができる。
本発明の非水系リチウム型蓄電素子は、特に、リチウムイオンキャパシタとして適用すると、上記の特徴が最大限に発揮されるため、好ましい。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。本実施形態の各数値範囲における上限値及び下限値は任意に組み合わせて任意の数値範囲を構成することができる。
先ず、本明細書中で用いられる用語等の意義について、以下に説明する。
[無孔の集電体]
本願明細書において、「無孔の集電体」とは、少なくとも活物質層が設けられた領域において、リチウムイオンが集電体を通過して、リチウムイオン濃度が電極の表裏で均一化する程度の孔を有しない集電体を意味する。したがって、本発明の効果を奏する範囲内において、極めて小径又は微量の孔を有する集電体、及び活物質層が設けられていない領域に孔を有する集電体を排除するものではない。集電体のうち、活物質層が設けられていない領域には、孔があってもよいし、なくてもよい。
[BET比表面積、平均細孔径、メソ孔量、及びマイクロ孔量]
本明細書におけるBET比表面積、平均細孔径、メソ孔量、及びマイクロ孔量は、それぞれ以下の方法によって求められる値である。
試料を200℃で一昼夜真空乾燥し、窒素を吸着質として吸脱着の等温線の測定を行なう。ここで得られる吸着側の等温線を用いて、BET比表面積はBET多点法又はBET1点法により、平均細孔径は質量当たりの全細孔容積をBET比表面積で除すことにより、メソ孔量はBJH法により、マイクロ孔量はMP法により、それぞれ算出される。
BJH法は一般的にメソ孔の解析に用いられる計算方法で、Barrett, Joyner, Halendaらにより提唱されたものである(非特許文献1)。
また、MP法とは、「t−プロット法」(非特許文献2)を利用して、マイクロ孔容積、マイクロ孔面積、及びマイクロ孔の分布を求める方法を意味し、R.S.Mikhail, Brunauer, Bodorにより考案された方法である(非特許文献3)。
[平均粒子径]
本明細書における平均粒子径は、粒度分布測定装置を用いて粒度分布を測定した際、全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが50%となる点の粒子径(すなわち、50%径(Median径))を指す。この平均粒子径は市販のレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
[1次粒子径]
本明細書における1次粒子径は、粉体を電子顕微鏡で数視野撮影し、それらの視野中の2,000〜3,000個程度の粒子の粒子径を、全自動画像処理装置等を用いて計測し、これらを算術平均した値を1次粒子径とする方法により得ることができる。
[分散度]
本明細書における分散度は、JIS K5600に規定された粒ゲージによる分散度評価試験により求められる値である。すなわち、粒のサイズに応じた所望の深さの溝を有する粒ゲージに対して、溝の深い方の先端に十分な量の試料を流し込み,溝から僅かに溢れさせる。スクレーパーの長辺がゲージの幅方向と平行になり、粒ゲージの溝の深い先端に刃先が接触するように置く。次いで、スクレーパーをゲージの表面に垂直になるように保持しながら、ゲージの表面を均等な速度で、溝の深さ0まで溝の長辺方向に1〜2秒間かけて引く。そして、引き終わってから3秒以内に、ゲージの表面に対して20°以上30°以下の角度で光を当てて観察し、粒ゲージの溝に、粒の顕著な斑点が現れる点の深さを読み取る。
[粘度(ηb)及びTI値]
本明細書における粘度(ηb)及びTI値は、それぞれ以下の方法により求められる値である。
先ず、E型粘度計を用いて温度25℃、ずり速度2s−1の条件で2分以上測定した後の安定した粘度(ηa)を取得する。次いで、ずり速度を20s−1に変更した他は上記と同様の条件で測定した粘度(ηb)を取得する。TI値は、上記で得た粘度の値を用いて、TI値=ηa/ηbの式により算出される。ずり速度を2s−1から20s−1へ上昇させる際は、1段階で上昇させてもよいし、上記の範囲で多段的に上昇させ、適宜そのずり速度における粘度を取得しながら上昇させてもよい。
[XPS]
XPSを用いて元素の電子状態を解析することにより、化合物の結合状態を判別することができる。
XPSの測定条件の例として、例えば以下の条件を挙げることができる。
X線源:単色化AlKα
X線ビーム径:100μmφ(25W、15kV)
パスエネルギー(ナロースキャン):58.70eV
帯電中和:有り
スイープ数(ナロースキャン):10回(炭素、酸素)、20回(フッ素)、30回(リン)、40回(リチウム元素)、又は50回(ケイ素)
エネルギーステップ(ナロースキャン):0.25eV
XPSの測定前に、試料の表面をスパッタリングにてクリーニングすることが好ましい。スパッタリングの条件として、例えば、以下の条件を挙げることができる。
加速電圧:1.0kV
スパッタリング範囲:2mm×2mm
スパッタリング時間:1分間(SiO換算で1.25nm/min)
得られたXPSスペクトルについての帰属は、以下のとおりとすることができる。
(Li1s)
結合エネルギー50〜54eVのピーク:LiO又はLi−C結合
55〜60eVのピーク:LiF、LiCO、又はLiPO(式中、x、y、及びzは、それぞれ1〜6の整数である)
(C1s)
結合エネルギー285eVのピーク:C−C結合
286eVのピーク:C−O結合
288eVのピーク:COO
290〜292eVのピーク:CO 2−又はC−F結合
(O1s)
結合エネルギー527〜530eVのピーク:O2−(LiO)
531〜532eVのピークをCO、CO、OH、PO(式中、xは1〜4の整数である)、SiO(式中、xは1〜4の整数である)、533eVのピークをC−O、SiO(式中、xは1〜4の整数である)
(F1s)
結合エネルギー685eVのピーク:LiF
687eVのピーク:C−F結合
LiPO(式中、x、y、及びzは、それぞれ1〜6の整数である)、又はPF
(P2p)
結合エネルギー133eVのピーク:PO(式中、xは1〜4の整数である)
134〜136eVのピーク:PF(式中、xは1〜6の整数である)
(Si2p)
結合エネルギー99eVのピーク:Si又はシリサイド
101〜107eVのピーク:Si(式中、x及びyは、それぞれ任意の整数である)
(S2p)
結合エネルギー162eV〜167eVのピーク:C−S−C結合
168eV〜173eVのピーク:SO(式中、xは2〜4の整数である)
得られたスペクトルについて、ピークが重なる場合には、ガウス関数又はローレンツ関数を仮定してピーク分離したうえで、スペクトルを帰属することが好ましい。
<<非水系リチウム型蓄電素子>>
一般に、非水系リチウム型蓄電素子は、主な構成要素として、負極、正極、セパレータ、及び電解液を備え、これらが外装体内に収納されている。電解液としては、リチウム塩を溶解させた有機溶媒(以下、「非水系電解液」という。)を用いる。
本発明の非水系リチウム型蓄電素子も、負極、正極、セパレータ、及びリチウム塩を含む非水系電解液を含む。本発明の非水系リチウム型蓄電素子は、好ましくは、正極及び負極がセパレータを介して積層又は捲回された電極体(電極積層体又は電極捲回体)が、非水系電解液とともに外装体内に収納されて構成される。
<負極>
負極は、負極集電体と、この負極集電体の片面又は両面上に設けられた負極活物質層とを有する。
[負極集電体]
本実施形態における負極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、非水系電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化が起こらない金属箔であることが好ましい。このような金属箔としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔等が挙げられる。本実施形態に係る非水系リチウム型蓄電素子における負極集電体としては、銅箔が好ましい。
負極集電体として用いる金属箔は、凹凸又は貫通孔を持たない、通常の平滑表面の金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
負極作製の容易性、高い電子伝導性等の観点から、本実施形態における負極集電体は、無孔であることが好ましい。
負極集電体の厚さは、負極の形状及び強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば、1〜100μmが好ましい。負極集電体が孔又は凹凸を有するときには、負極集電体の厚さは、孔又は凹凸が存在しない領域の厚さに基づいて決定される。
[負極活物質層]
負極活物質層は、負極活物質を含む。
負極活物質層は、これ以外に、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
(負極活物質)
負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出できる物質が用いられる。
本実施形態における負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵・放出できる炭素材料を含むことを特徴とする。
負極活物質は、このような炭素材料以外の負極活物質を含んでいてもよい。
負極活物質は、粒子状であることが好ましい。
粒子状の負極活物質の平均粒子径は、1μm以上10μm以下であることが好ましい。粒子状の負極活物質の平均粒子径は、好ましくは、2μm以上又は2.5μm以上であり、かつ、6μm以下又は4μm以下である。
負極活物質のBET比表面積が1m/g以上1,500m/g以下であることが好ましい。負極活物質のより好ましいBET比表面積は、負極活物質の種類ごとに後述する。
負極活物質には、リチウムイオンをドープすることが好ましい。
本明細書において、負極活物質にドープされたリチウムイオンとしては、主に3つの形態が包含される。
第一の形態としては、非水系リチウム型蓄電素子を作製する前に、負極活物質に設計値として予め吸蔵させるリチウムイオンである。
第二の形態としては、非水系リチウム型蓄電素子を作製し、出荷する際の負極活物質に吸蔵されているリチウムイオンである。
第三の形態としては、非水系リチウム型蓄電素子をデバイスとして使用した後の負極活物質に吸蔵されているリチウムイオンである。
負極活物質にリチウムイオンをドープしておくことにより、得られる非水系リチウム型蓄電素子の容量及び作動電圧を良好に制御することが可能となる。
負極活物質の単位質量当たりのリチウムイオンのドープ量は、530mAh/g以上2,500mAh/g以下であることが好ましい。より好ましいドープ量は、負極活物質の材料ごとに後述する。
リチウムイオンをドープすることにより、負極電位が低くなる。したがって、リチウムイオンがドープされた負極活物質を含む負極を正極と組み合わせた場合には、非水系リチウム型蓄電素子の電圧が高くなるとともに、正極の利用容量が大きくなる。そのため、得られる非水系リチウム型蓄電素子の容量及びエネルギー密度が高くなる。
該ドープ量が530mAh/g以上であれば、負極活物質中の、リチウムイオンを一旦挿入したら脱離し得ない不可逆なサイトにもリチウムイオンが良好にドープされ、更に所望のリチウム量に対する負極活物質の量を低減することができる。そのため、負極活物質層の厚さを薄くすることが可能となり、高いエネルギー密度が得られる。ドープ量が多いほど負極電位が下がり、入出力特性、エネルギー密度、及び耐久性は向上する。
一方で、ドープ量が2,500mAh/g以下であれば、リチウム金属の析出等の副作用が発生するおそれがない。
本明細書において、出荷時及び使用後の非水系リチウム型蓄電素子における負極活物質のリチウムイオンのドープ量は、例えば、以下のようにして知ることができる。
先ず、負極活物質層をエチルメチルカーボネート又はジメチルカーボネートで洗浄し風乾した後、メタノール及びイソプロパノールから成る混合溶媒により抽出した抽出液と、抽出後の負極活物質層と、を得る。この抽出は、典型的にはArボックス内にて、環境温度23℃で行われる。
上記のようにして得られた抽出液と、抽出後の負極活物質層と、に含まれるリチウム量を、それぞれ、例えばICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析計)等を用いて定量し、その合計を求めることによって、負極活物質におけるリチウムイオンのドープ量を知ることができる。そして、得られた値を抽出に供した負極活物質の質量で割り付けて、上記単位の数値を算出すればよい。
本実施形態における負極活物質層に含まれる、リチウムイオンを吸蔵・放出できる炭素材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素材料;易黒鉛化性炭素材料;カーボンブラック;カーボンナノ粒子;活性炭;人造黒鉛;天然黒鉛;黒鉛化メソフェーズカーボン小球体;黒鉛ウイスカ;ポリアセン系物質等のアモルファス炭素質材料;石油系のピッチ、石炭系のピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、コークス、合成樹脂(例えばフェノール樹脂等)等の炭素質材料前駆体を熱処理して得られる炭素質材料;フルフリルアルコール樹脂又はノボラック樹脂の熱分解物;フラーレン;カーボンナノフォーン;等、及びこれらの複合炭素材料等を挙げることができる。
本実施形態における複合炭素材料の好ましい例は、以下の複合炭素材料1及び2である。これらのうちどちらかを選択して使用してもよく、又はこれらの双方を併用してもよい。
−複合炭素材料1−
複合炭素材料1は、BET比表面積が100m/g以上3,000m/g以下の炭素材料1種以上を基材として用い、この基材に炭素質材料を被着させた複合炭素材料である。
基材としては、特に制限されるものではないが、活性炭、カーボンブラック、鋳型多孔質炭素、高比表面積黒鉛、カーボンナノ粒子等を好適に用いることができる。
複合炭素材料1における基材のBET比表面積は、100m/g以上1,500m/g以下が好ましく、より好ましくは150m/g以上1,100m/g以下、更に好ましくは180m/g以上550m/g以下である。このBET比表面積が100m/g以上であれば、細孔を適度に保持することができ、リチウムイオンの拡散が良好となるため、高い入出力特性を示すことができる。他方、BET比表面積が1,500m/g以下であることにより、リチウムイオンの充放電効率が向上するため、サイクル耐久性が損なわれることがない。
複合炭素材料1における基材の平均粒子径は0.5μm以上20μm以下であることが好ましい。下限については、より好ましくは1μm以上であり、更に好ましくは2μm以上である。上限については、より好ましくは10μm以下であり、更に好ましくは8μm以下である。平均粒子径が1μm以上20μm以下であれば、良好な耐久性が保たれる。
複合炭素材料1における、炭素質材料の基材に対する質量比率は、10質量%以上200質量%以下が好ましい。この質量比率は、より好ましくは12質量%以上180質量%以下、更に好ましくは15質量%以上160質量%以下、特に好ましくは18質量%以上150質量%以下である。炭素質材料の質量比率が10質量%以上であれば、基材が有していたマイクロ孔を炭素質材料で適度に埋めることができ、リチウムイオンの充放電効率が向上するため、良好なサイクル耐久性を示すことができる。また、炭素質材料の質量比率が200質量%以下であれば、基材が有していた細孔を適度に保持することができ、リチウムイオンの拡散が良好となるため、高い入出力特性を示すことができる。
複合炭素材料1の単位質量当たりのリチウムイオンのドープ量は、530mAh/g以上2,500mAh/g以下であることが好ましい。ドープ量は、より好ましくは620mAh/g以上2,100mAh/g以下、更に好ましくは760mAh/g以上1,700mAh/g以下、特に好ましくは840mAh/g以上1,500mAh/g以下である。
以下、複合炭素材料1の好ましい例として、基材として活性炭を用い、この基材に、炭素質材料を被着させた場合の複合炭素材料1aについて説明する。
複合炭素材料1aは、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をVm1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をVm2(cc/g)とするとき、0.010≦Vm1≦0.300、0.001≦Vm2≦0.650であることが好ましい。
メソ孔量Vm1は、より好ましくは0.010≦Vm1≦0.225、更に好ましくは0.010≦Vm1≦0.200である。マイクロ孔量Vm2は、より好ましくは0.001≦Vm2≦0.200、更に好ましくは0.001≦Vm2≦0.150、特に好ましくは0.001≦Vm2≦0.100である。
メソ孔量Vm1が0.300cc/g以下であれば、BET比表面積を大きくすることができ、リチウムイオンのドープ量を高めることができることに加え、負極の嵩密度を高めることができる。その結果、負極を薄膜化することができる。また、マイクロ孔量Vm2が0.650cc/g以下であれば、リチウムイオンに対する高い充放電効率が維持できる。他方、メソ孔量Vm1及びマイクロ孔量Vm2が下限以上(0.010≦Vm1、0.001≦Vm2)であれば、高い入出力特性が得られる。
複合炭素材料1aのBET比表面積は、100m/g以上1,500m/g以下が好ましい。より好ましくは150m/g以上1,100m/g以下、更に好ましくは180m/g以上550m/g以下である。このBET比表面積が100m/g以上であれば、細孔を適度に保持することができ、リチウムイオンの拡散が良好となるため、高い入出力特性を示すことができる。また、リチウムイオンのドープ量を高めることができるため、負極を薄膜化することができる。他方、1,500m/g以下であることにより、リチウムイオンの充放電効率が向上するので、サイクル耐久性が損なわれることがない。
複合炭素材料1aの平均細孔径は、高い入出力特性にする点から、20Å以上であることが好ましく、25Å以上であることがより好ましく、30Å以上であることが更に好ましい。他方、高エネルギー密度にする点から、平均細孔径は、65Å以下であることが好ましく、60Å以下であることがより好ましい。
複合炭素材料1aの平均粒子径は1μm以上10μm以下であることが好ましい。下限については、より好ましくは2μm以上であり、更に好ましくは2.5μm以上である。上限については、より好ましくは6μm以下であり、更に好ましくは4μm以下である。平均粒子径が1μm以上10μm以下であれば良好な耐久性が保たれる。
複合炭素材料1aの水素原子/炭素原子の原子数比(H/C)は、0.05以上0.35以下であることが好ましく、0.05以上0.15以下であることがより好ましい。H/Cが0.35以下である場合には、活性炭表面に被着している炭素質材料の構造(典型的には、多環芳香族系共役構造)が良好に発達して容量(エネルギー密度)及び充放電効率が高くなる。他方、H/Cが0.05以上である場合には、炭素化が過度に進行することはないため良好なエネルギー密度が得られる。H/Cは、元素分析装置により測定される。
複合炭素材料1aは、基材の活性炭に由来するアモルファス構造を有し、同時に、主に被着した炭素質材料に由来する結晶構造を有する。X線広角回折法によると、複合炭素材料1aは、(002)面の面間隔d002が3.60Å以上4.00Å以下であり、このピークの半価幅から得られるc軸方向の結晶子サイズLcが8.0Å以上20.0Å以下であるものが好ましく、d002が3.60Å以上3.75Å以下であり、このピークの半価幅から得られるc軸方向の結晶子サイズLcが11.0Å以上16.0Å以下であるものがより好ましい。
上記の複合炭素材料1aの基材として用いる活性炭としては、得られる複合炭素材料1aが所望の特性を発揮する限り、特に制限はない。例えば石油系、石炭系、植物系、高分子系等の各種の原材料から得られた市販品を使用することができる。特に、平均粒子径が1μm以上15μm以下の活性炭粉末を用いることが好ましい。基材として用いる活性炭の平均粒子径は、より好ましくは2μm以上10μm以下である。
本実施形態において規定する細孔分布範囲を有する複合炭素材料1aを得るためには、基材に用いる活性炭の細孔分布が重要である。
該活性炭においては、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)としたとき、0.050≦V1≦0.500、0.005≦V2≦1.000、かつ、0.2≦V1/V2≦20.0であることが好ましい。
メソ孔量V1については、0.050≦V1≦0.350がより好ましく、0.100≦V1≦0.300が更に好ましい。マイクロ孔量V2については、0.005≦V2≦0.850がより好ましく、0.100≦V2≦0.800が更に好ましい。メソ孔量/マイクロ孔量の比率については、0.22≦V1/V2≦15.0がより好ましく、0.25≦V1/V2≦10.0が更に好ましい。活性炭のメソ孔量V1が0.500以下である場合及びマイクロ孔量V2が1.000以下である場合、上記本実施形態における複合炭素材料1aの細孔構造を得るためには適量の炭素質材料を被着させれば足りるので、細孔構造を制御し易くなる。一方、活性炭のメソ孔量V1が0.050以上である場合及びマイクロ孔量V2が0.005以上である場合、V1/V2が0.2以上である場合、及びV1/V2が20.0以下である場合にも構造が容易に得られる。
複合炭素材料1aにおいて、基材に被着させる炭素質材料の炭素源として、炭素質材料前駆体が用いられる。炭素質材料前駆体とは、熱処理することにより、基材である活性炭に炭素質材料を被着させることができる、固体、液体、又は溶剤に溶解可能な有機材料である。この炭素質材料前駆体としては、例えば、ピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、コークス、合成樹脂(例えばフェノール樹脂等)等を挙げることができる。これらの炭素質材料前駆体の中でも、安価であるピッチを用いることが、製造コスト上好ましい。ピッチは、大別して石油系ピッチと石炭系ピッチとに分けられる。石油系ピッチとしては、例えば原油の蒸留残査、流動性接触分解残査(デカントオイル等)、サーマルクラッカーに由来するボトム油、ナフサクラッキングの際に得られるエチレンタール等が例示される。
上記ピッチを用いる場合、該ピッチを活性炭との共存下で熱処理し、活性炭の表面においてピッチの揮発成分又は熱分解成分を熱反応させて該活性炭に炭素質材料を被着させることにより、複合炭素材料1aが得られる。この場合、200〜500℃程度の温度において、ピッチの揮発成分又は熱分解成分の活性炭細孔内への被着が進行し、400℃以上で該被着成分が炭素質材料となる反応が進行する。熱処理時のピーク温度(最高到達温度)は、得られる複合炭素材料1aの特性、熱反応パターン、熱反応雰囲気等により適宜決定されるものであるが、400℃以上であることが好ましく、より好ましくは450℃〜1,000℃であり、更に好ましくは500〜800℃程度である。また、熱処理時のピーク温度を維持する時間は、30分間〜10時間であることが好ましく、より好ましくは1時間〜7時間、更に好ましくは2時間〜5時間である。例えば、500〜800℃程度のピーク温度で2時間〜5時間に亘って熱処理する場合、活性炭表面に被着している炭素質材料は多環芳香族系炭化水素になっているものと考えられる。
炭素質材料前駆体として用いるピッチの軟化点は、30℃以上250℃以下が好ましく、60℃以上130℃以下が更に好ましい。軟化点が30℃以上であるピッチはハンドリング性に支障がなく、精度よく仕込むことが可能である。軟化点が250℃以下であるピッチには比較的低分子の化合物を多く含有し、従って該ピッチを用いると、活性炭内の細かい細孔まで被着することが可能となる。
上記の複合炭素材料1aを製造するための具体的方法としては、例えば、炭素質材料前駆体から揮発した炭化水素ガスを含む不活性雰囲気中で活性炭を熱処理し、気相で炭素質材料を被着させる方法が挙げられる。また、活性炭と炭素質材料前駆体とを予め混合し熱処理する方法、又は溶媒に溶解させた炭素質材料前駆体を活性炭に塗布して乾燥させた後に熱処理する方法も可能である。
複合炭素材料1aにおける炭素質材料の活性炭に対する質量比率が10質量%以上100質量%以下であるものが好ましい。この質量比率は、好ましくは15質量%以上80質量%以下でである。炭素質材料の質量比率が10質量%以上であれば、活性炭が有していたマイクロ孔を炭素質材料で適度に埋めることができ、リチウムイオンの充放電効率が向上するから、サイクル耐久性が損なわれることがない。また、炭素質材料の質量比率が100質量%以下であれば、複合炭素材料1aの細孔が適度に保持されて比表面積が大きいまま維持される。そのため、リチウムイオンのドープ量を高めることができる結果から、負極を薄膜化しても高出力密度かつ高耐久性を維持することができる。
−複合炭素材料2−
複合炭素材料2は、BET比表面積が0.5m/g以上80m/g以下の炭素材料1種以上を基材として用い、この基材に炭素質材料を被着させた複合炭素材料である。この場合の基材は、特に制限されるものではないが、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、低結晶黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンブラック等を好適に用いることができる。
複合炭素材料2における基材のBET比表面積は、1m/g以上50m/g以下が好ましく、より好ましくは1.5m/g以上40m/g以下、更に好ましくは2m/g以上25m/g以下である。このBET比表面積が1m/g以上であれば、リチウムイオンとの反応場を十分に確保できるため、高い入出力特性を示すことができる。他方、BET比表面積が50m/g以下であれば、リチウムイオンの充放電効率が向上し、かつ充放電中の非水系電解液の分解反応が抑制されるため、高いサイクル耐久性を示すことができる。
複合炭素材料2の平均粒子径は1μm以上10μm以下であることが好ましい。この平均粒子径は、より好ましくは2μm以上8μm以下、更に好ましくは3μm以上6μm以下である。平均粒子径が1μm以上であれば、リチウムイオンの充放電効率が向上できるため、高いサイクル耐久性を示すことができる。他方、平均粒子径が10μm以下であれば、複合炭素材料2と非水系電解液との反応面積が増加するため、高い入出力特性を示すことができる。
複合炭素材料2における炭素質材料の基材に対する質量比率は、1質量%以上30質量%以下が好ましい。この質量比率は、より好ましくは1.2質量%以上25質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以上20質量%以下である。炭素質材料の質量比率が質量1%以上であれば、炭素質材料によりリチウムイオンとの反応サイトを十分に増加でき、かつリチウムイオンの脱溶媒和も容易となるため、高い入出力特性を示すことができる。他方、炭素質材料の質量比率が30質量%以下であれば、炭素質材料と基材との間のリチウムイオンの固体内拡散を良好に保持できるため、高い入出力特性を示すことができる。また、リチウムイオンの充放電効率が向上できるため、高いサイクル耐久性を示すことができる。
複合炭素材料2の単位質量当たりのリチウムイオンのドープ量は、50mAh/g以上700mAh/g以下であることが好ましく、より好ましくは70mAh/g以上650mAh/g以下、更に好ましくは90mAh/g以上600mAh/g以下、特に好ましくは100mAh/g以上550mAh/g以下である。
以下、複合炭素材料2の好ましい例として、基材として黒鉛材料を用い、この基材に、炭素質材料を被着させた場合の複合炭素材料2aについて説明する。
複合炭素材料2aの平均粒子径は1μm以上10μm以下であることが好ましい。この平均粒子径は、より好ましくは2μm以上8μm以下、更に好ましくは3μm以上6μm以下である。平均粒子径が1μm以上であれば、リチウムイオンの充放電効率が向上できるため、高いサイクル耐久性を示すことができる。他方、10μm以下であれば、複合炭素材料2aと非水系電解液との反応面積が増加するため、高い入出力特性を示すことができる。
複合炭素材料2aのBET比表面積は、1m/g以上50m/g以下であることが好ましく、1m/g以上20m/g以下であることがより好ましく、更に好ましくは1m/g以上15m/g以下、1.5m/g以上15m/g以下、又は2m/g以上15m/g以下である。このBET比表面積が1m/g以上であれば、リチウムイオンとの反応場を十分に確保できるため、高い入出力特性を示すことができる。他方、BET比表面積が20m/g以下であれば、リチウムイオンの充放電効率が向上し、かつ充放電中の非水系電解液の分解反応が抑制されるため、高いサイクル耐久性を示すことができる。
複合炭素材料2aの基材として用いる黒鉛材料としては、得られる複合炭素材料2aが所望の特性を発揮する限り、特に制限はない。例えば、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化メソフェーズカーボン小球体、黒鉛ウイスカ等を使用することができる。黒鉛材料の平均粒子径は、好ましくは1μm以上10μm以下、より好ましくは2μm以上8μm以下である。
複合炭素材料2aにおいて、基材に被着させる炭素質材料の炭素源として用いる炭素質材料前駆体の機能及び具体例については、複合炭素材料1aにおける炭素質材料前駆体の場合と同様である。
複合炭素材料2aにおける炭素質材料の黒鉛材料に対する質量比率は、1質量%以上10質量%以下が好ましい。この質量比率は、より好ましくは1.2質量%以上8質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以上6質量%以下、特に好ましくは2質量%以上5質量%以下である。炭素質材料の質量比率が1質量%以上であれば、炭素質材料によりリチウムイオンとの反応サイトを十分に増加でき、かつリチウムイオンの脱溶媒和も容易となるため、高い入出力特性を示すことができる。他方、炭素質材料の質量比率が10質量%以下であれば、炭素質材料と黒鉛材料との間のリチウムイオンの固体内拡散を良好に保持できるため、高い入出力特性を示すことができる。また、リチウムイオンの充放電効率が向上できるため、高いサイクル耐久性を示すことができる。
―炭素材料以外の負極活物質―
本実施形態における、炭素材料以外の負極活物質としては、具体的には例えば、チタン酸化物、ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素合金、ケイ素化合物、錫、錫化合物等が例示される。
(負極活物質層のその他の成分)
本実施形態における負極活物質層は、必要に応じて、負極活物質の他に、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
―導電性フィラー―
導電性フィラーの種類は特に制限されるものではないが、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維等が例示される。導電性フィラーの使用量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは0質量部以上30質量部以下である。より好ましくは0質量部以上20質量部以下、更に好ましくは0質量部以上15質量部以下である。
―結着剤―
結着剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、PVdF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体、フッ素ゴム、アクリル共重合体等を用いることができる。結着剤の使用量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは1質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは2質量部以上27質量部以下、更に好ましくは3質量部以上25質量部以下である。結着剤の量が1質量部以上であれば、十分な電極強度が発現される。一方で、結着剤の量が30質量部以下であれば、負極活物質へのリチウムイオンの出入りを阻害せず、高い入出力特性が発現される。
―分散安定剤―
分散安定剤としては、特に制限されるものではないが、例えばPVP(ポリビニルピロリドン)、PVA(ポリビニルアルコール)、セルロース誘導体等を用いることができる。分散安定剤の使用量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは0質量部以上10質量部以下である。分散安定剤の量が10質量部以下であれば、負極活物質へのリチウムイオンの出入りを阻害せず、高い入出力特性が発現される。
[負極の製造]
負極は、負極集電体の片面上又は両面上に負極活物質層が設けられて成る。典型的な態様において、負極活物質層は負極集電体に固着している。
負極は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、負極活物質を含む各種材料を水又は有機溶剤中に分散又は溶解してスラリー状の塗工液を調製し、この塗工液を負極集電体上の片面又は両面に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより、負極を得ることができる。更に、得られた負極にプレスを施して、負極活物質層の膜厚又は嵩密度を調整してもよい。代替的には、溶剤を使用せずに、負極活物質を含む各種材料を乾式で混合し、得られた混合物をプレス成型した後、導電性接着剤を用いて負極集電体に貼り付ける方法も可能である。
以下、塗工液を用いる負極の製造方法について説明する。
(塗工液)
塗工液は、負極活物質と溶媒とを含み、更に結着剤、分散剤等の任意添加成分を含んでいてもよい。
塗工液の調製は、例えば、負極活物質を含む全部の材料をドライブレンドし、次いで水若しくは有機溶媒を加えて調製してもよいし;
負極活物質を含む材料の一部をドライブレンドして水若しくは有機溶媒を加えた後、結着剤、分散安定剤等を含む残りの材料が溶解又は分散した溶液若しくはスラリーを追加して調製してもよいし;又は、
水若しくは有機溶媒に結着剤、分散安定剤等が溶解若しくは分散した溶液若しくはスラリー中に、負極活物質を含む残りの材料を追加して調製してもよい。
水又は有機溶媒中に材料粉末を溶解又は分散させる方法は、特に制限されるものではないが、好適には、ホモディスパー、は多軸分散機、プラネタリーミキサー、薄膜旋回型高速ミキサー等の分散機等を用いることができる。良好な分散状態の塗工液を得るためには、周速1m/s以上50m/s以下で分散することが好ましい。周速1m/s以上であれば、各種材料が良好に溶解又は分散するため好ましい。また、周速50m/s以下であれば、分散による熱又はせん断力によっても各種材料が破壊されることなく、再凝集が生じることがないため好ましい。
塗工液の粘度(ηb)は、1,000mPa・s以上20,000mPa・s以下が好ましく、より好ましくは1,500mPa・s以上10,000mPa・s以下、更に好ましくは1,700mPa・s以上5,000mPa・s以下である。粘度(ηb)が1,000mPa・s以上であれば、塗膜形成時の液ダレが抑制され、塗膜幅及び膜厚が良好に制御できる。また、20,000mPa・s以下であれば、塗工機を用いた際の塗工液の流路における圧力損失が少なく、安定に塗工でき、また所望の塗膜厚みに制御できる。
塗工液のTI値(チクソトロピーインデックス値)は、1.1以上が好ましく、より好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.5以上である。TI値が1.1以上であれば、塗膜幅及び膜厚が良好に制御できる。
(塗工方法)
前記塗膜の形成は、特に制限されるものではないが、好適には例えば、ダイコーター、コンマコーター、ナイフコーター、グラビア塗工機等の塗工機を用いて行うことがでる。塗膜は、単層塗工で形成してもよいし、多層塗工して形成してもよい。塗工速度は0.1m/分以上100m/分以下であることが好ましく、より好ましくは0.5m/分以上70m/分以下、更に好ましくは1m/分以上50m/分以下である。塗工速度が0.1m/分以上であれば、安定に塗工できる。他方、塗工速度が100m/分以下であれば、塗工精度を十分に確保できる。
(塗膜の乾燥)
渡航により得られた塗膜は、次いで乾燥(溶媒除去)してもよい。
塗膜の乾燥方法は、特に制限されるものではないが、好適には例えば、熱風乾燥、赤外線(IR)乾燥等の乾燥方法を用いることができる。塗膜の乾燥は、単一の温度で乾燥させてもよいし、多段的又は漸進的に温度を変えて乾燥させてもよい。また、複数の乾燥方法を組み合わせて乾燥させてもよい。
乾燥温度は、25℃以上200℃以下であることが好ましく、より好ましくは40℃以上180℃以下、更に好ましくは50℃以上160℃以下である。乾燥温度が25℃以上であれば、塗膜中の溶媒を十分に揮発させることができる。他方、乾燥温度が200℃以下であれば、急激な溶媒の揮発による塗膜のヒビ割れ又はマイグレーションによる結着剤の偏在、及び負極集電体又は負極活物質層の酸化を抑制できる。
乾燥時間は、塗膜の厚さ、溶媒の沸点等に応じて適宜に調整されてよい。
(プレス)
塗膜を乾燥して得られる負極には、更にプレスを施して、負極活物質層の膜厚、嵩密度等を調整してもよい。 負極のプレス方法は特に制限されるものではないが、好適には油圧プレス機、真空プレス機、ロールプレス機等のプレス機を用いて行うことができる。負極活物質層の膜厚、嵩密度、及び電極強度は、プレス圧力、隙間、プレス部の表面温度等により調整できる。プレス圧力は、0.5kN/cm以上20kN/cm以下が好ましく、より好ましくは1kN/cm以上10kN/cm以下、更に好ましくは2kN/cm以上7kN/cm以下である。プレス圧力が0.5kN/cm以上であれば、電極強度を十分に高くできる。他方、プレス圧力が20kN/cm以下であれば、負極に撓み又はシワが生じることがなく、所望の負極活物質層の厚さ及び嵩密度に調整できる。また、プレスロール同士の隙間は、所望の負極活物質層の厚さ及び嵩密度となるように、プレス後の負極膜厚に応じて任意の値を設定できる。更に、プレス速度は負極に撓み又はシワが生じない任意の速度に設定できる。また、プレス部の表面温度は室温でもよいし、必要により加熱してもよい。加熱する場合のプレス部の表面温度の下限は、使用する結着剤の融点マイナス60℃以上が好ましく、より好ましくは45℃以上、更に好ましくは30℃以上である。他方、加熱する場合のプレス部の表面温度の上限は、使用する結着剤の融点プラス50℃以下が好ましく、より好ましくは30℃以下、更に好ましくは20℃以下である。例えば、結着剤にPVdF(ポリフッ化ビニリデン:融点150℃)を用いた場合、90℃以上200℃以下に加温することが好ましく、より好ましく105℃以上180℃以下、更に好ましくは120℃以上170℃以下で加温することである。また、結着剤にスチレン−ブタジエン共重合体(融点100℃)を用いた場合、40℃以上150℃以下に加温することが好ましく、より好ましくは55℃以上130℃以下、更に好ましくは70℃以上120℃以下に加温することである。
結着剤の融点は、DSC(Differential Scanning Calorimetry、示差走査熱量分析)の吸熱ピーク位置で求めることができる。例えば、パーキンエルマー社製の示差走査熱量計「DSC7」を用いて、試料樹脂10mgを測定セルにセットし、窒素ガス雰囲気中で、温度30℃から10℃/分の昇温速度で250℃まで昇温し、昇温過程における吸熱ピーク温度が融点となる。
プレス圧力、隙間、速度、及びプレス部の表面温度の条件を変えながら複数回プレスを実施してもよい。
[負極活物質層表面のXPS分析]
本実施形態に係る負極活物質層は、負極活物質層表面のX線光電子分光測定(XPS)により得られる、S2pスペクトルの168eVのピーク面積に基づいて求めたSの元素濃度をS168eV(atomic%)、F1sスペクトルの685eVのピーク面積に基づいて求めたFの元素濃度をF685eV(atomic%)とするとき、元素濃度比S168eV/F685eVが、0.025以上0.5以下であることが好ましく、0.08以上0.3以下であることが更に好ましい。この値が0.025以上であれば、非水系電解液が還元分解されて生ずるガスの抑制効果が発現する。この値が0.5以下であれば、初期の抵抗及び、高電圧、高温保存時の抵抗増加を抑制できる。
本実施形態の負極活物質層の表面が、XPSにおいて示す上記のピークは、負極活物質層の表面に含硫黄化合物が作用して生じる被膜に起因すると考えられる。
本実施形態における負極活物質層の表面に、XPS測定の際に上記のピークを発現させるための方法としては、例えば、
負極活物質層に含硫黄化合物を混合する方法、
負極活物質層に含硫黄化合物を吸着させる方法、
負極活物質層に含硫黄化合物を電気化学的に析出させる方法
等が挙げられる。
中でも、非水系電解液中に、特定の上記の含硫黄化合物の前駆体を含有させておき、本実施形態の非水系リチウム型蓄電素子を製造する工程における分解反応を利用して、負極活物質層表面に上記の含硫黄化合物前駆体の分解物を含む被膜を堆積させる方法が好ましい。特に、後述の正極前駆体中のアルカリ金属化合物を高電位で酸化分解させる工程を経て、上記被膜を堆積させる方法は、原理は定かではないが、低温環境下でも高い入出力特性を維持することができる被膜が形成するため、より好ましい。
負極活物質層の表面のXPSにおいて示す上記ピークを発現させる含硫黄化合物前駆体としては、後述の化学式(2−1)〜(2―5)のそれぞれで表される化合物の中から選択される含硫黄化合物を用い、これを電解液に含有させるのが好ましい。
<正極>
正極は、正極集電体と、その片面又は両面に存在する正極活物質層とを有する。
正極活物質層には、正極活物質として活性炭を含み、更にアルカリ金属化合物を含むことが好ましい。
正極活物質層は、正極活物質として活性炭を含み、リチウムドープ工程前の「正極前駆体」の段階では、正極活物質層はアルカリ金属化合物を更に含むことが好ましい。後述のように、本実施形態では蓄電素子組み立て工程内で、正極前駆体における正極活物質層中のアルカリ金属化合物が、負極に対するリチウムイオンのプレドープ源として機能する。
本明細書中、リチウムドープ工程前における、所定のアルカリ金属化合物を含む正極を「正極前駆体」といい、リチウムドープ工程後の正極を単に「正極」という。
[正極集電体]
本実施形態における正極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、電解液への溶出、電解質又はイオンとの反応等による劣化が起こらない材料であれば特に制限はないが、金属箔が好ましい。本実施形態の非水系リチウム型蓄電素子における正極集電体としては、アルミニウム箔が特に好ましい。
正極集電体として用いる金属箔は、凹凸又は貫通孔を持たない、通常の平滑表面の金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
電極作製の容易性、及び高い電子伝導性の観点から、本実施形態における正極集電体は、無孔であることが好ましい。
正極集電体の厚さは、正極の形状及び強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば、1〜100μmが好ましい。
[正極活物質層]
正極における正極活物質層は、正極活物質を含む。
正極活物質層は、正極活物質以外に、必要に応じて、遷移金属酸化物、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
また、正極前駆体の正極活物質層には、正極活物質以外のアルカリ金属化合物が更に含有されることが好ましい。
(正極活物質)
正極活物質は、活性炭を含む。
正極活物質としては、活性炭のみを使用してよく、又は活性炭に加えて、他の正極活物質を併用してよい。この他の正極活物質としては、例えば、活性炭以外の炭素材料、遷移金属酸化物等を挙げることができる。
−活性炭−
正極活物質として用いる活性炭の種類及びその原料には特に制限はない。しかしながら、高い入出力特性と、高いエネルギー密度とを両立させるために、活性炭の細孔を最適に制御することが好ましい。具体的には、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、
(1)高い入出力特性のためには、0.3<V1≦0.8、及び0.5≦V2≦1.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m/g以上3,000m/g以下である活性炭(以下、「活性炭1」ともいう。)が好ましく、また、
(2)高いエネルギー密度を得るためには、0.8<V1≦2.5、及び0.8<V2≦3.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が2,300m/g以上4,000m/g以下である活性炭(以下、「活性炭2」ともいう。)が好ましい。
以下、上記(1)活性炭1及び上記(2)活性炭2について、個別に順次説明していく。
(1)活性炭1
活性炭1のメソ孔量V1は、蓄電素子に組み込んだときの入出力特性を大きくする観点で、0.3cc/gより大きい値であることが好ましい。他方、正極の嵩密度の低下を抑える観点から、0.8cc/g以下であることが好ましい。上記V1は、より好ましくは0.35cc/g以上0.7cc/g以下、更に好ましくは0.4cc/g以上0.6cc/g以下である。
活性炭1のマイクロ孔量V2は、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.5cc/g以上であることが好ましい。他方、活性炭の嵩を抑え、電極としての密度を増加させ、単位体積当たりの容量を増加させるという観点から、1.0cc/g以下であることが好ましい。上記V2は、より好ましくは0.6cc/g以上1.0cc/g以下、更に好ましくは0.8cc/g以上1.0cc/g以下である。
マイクロ孔量V2に対するメソ孔量V1の比(V1/V2)は、0.3≦V1/V2≦0.9の範囲であることが好ましい。すなわち、高容量を維持しながら出力特性の低下を抑えることができる程度に、マイクロ孔量に対するメソ孔量の割合を大きくするという観点から、V1/V2が0.3以上であることが好ましい。一方で、高出力特性を維持しながら容量の低下を抑えることができる程度に、メソ孔量に対するマイクロ孔量の割合を大きくするという観点から、V1/V2は0.9以下であることが好ましい。より好ましいV1/V2の範囲は0.4≦V1/V2≦0.7、更に好ましいV1/V2の範囲は0.55≦V1/V2≦0.7である。
活性炭1の平均細孔径は、得られる蓄電素子の出力を最大にする観点から、17Å以上であることが好ましく、18Å以上であることがより好ましく、20Å以上であることが最も好ましい。また、容量を最大にする観点から、活性炭1の平均細孔径は25Å以下であることが好ましい。
活性炭1のBET比表面積は、1,500m/g以上3,000m/g以下であることが好ましく、1,500m/g以上2,500m/g以下であることがより好ましい。BET比表面積が1,500m/g以上の場合には、良好なエネルギー密度が得られ易く、他方、BET比表面積が3,000m/g以下の場合には、電極の強度を保つためにバインダーを多量に入れる必要がないので、電極体積当たりの性能が高くなる。
活性炭1の平均粒子径は、2〜20μmであることが好ましい。
上記平均粒子径が2μm以上であると、活物質層の密度が過度に高いために、電極体積当たりの容量が高くなる傾向がある。ここで、平均粒子径が小さいと耐久性が低いという欠点を招来する場合があるが、平均粒子径が2μm以上であればそのような欠点が生じ難い。一方で、平均粒子径が20μm以下であると、高速充放電に適合し易くなる傾向がある。上記平均粒子径は、より好ましくは2〜15μmであり、更に好ましくは3〜10μmである。
上記のような特徴を有する活性炭1は、例えば、以下に説明する原料及び処理方法を用いて得ることができる。
本実施形態では、活性炭1の原料として用いられる炭素源は、特に限定されるものではない。例えば、木材、木粉、ヤシ殻、パルプ製造時の副産物、バガス、廃糖蜜等の植物系原料;泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭、石油蒸留残渣成分、石油ピッチ、コークス、コールタール等の化石系原料;フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、セルロイド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の各種合成樹脂;ポリブチレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン等の合成ゴム;その他の合成木材、合成パルプ等、及びこれらの炭化物が挙げられる。これらの原料の中でも、量産対応及びコストの観点から、ヤシ殻、木粉等の植物系原料、及びそれらの炭化物が好ましく、ヤシ殻炭化物が特に好ましい。
これらの原料を活性炭1とするための炭化及び賦活の方式としては、例えば、固定床方式、移動床方式、流動床方式、スラリー方式、ロータリーキルン方式等の既知の方式を採用できる。
これらの原料の炭化方法としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ネオン、一酸化炭素、燃焼排ガス等の不活性ガス、又はこれらの不活性ガスを主成分とした他のガスとの混合ガスを使用して、400〜700℃(好ましくは450〜600℃)程度において、30分〜10時間程度に亘って焼成する方法が挙げられる。
上記炭化方法により得られた炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法が好ましく用いられる。これらのうち、賦活ガスとして、水蒸気又は二酸化炭素を使用する方法が好ましい。
この賦活方法では、賦活ガスを0.5〜3.0kg/h(好ましくは0.7〜2.0kg/h)の割合で供給しながら、上記炭化物を3〜12時間(好ましくは5〜11時間、更に好ましくは6〜10時間)掛けて800〜1,000℃まで昇温して賦活することが好ましい。
更に、上記炭化物の賦活処理に先立ち、予め上記炭化物を1次賦活してもよい。この1次賦活では、通常、炭素材料を水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて、900℃未満の温度で焼成してガス賦活する方法が、好ましく採用できる。
上記炭化方法における焼成温度及び焼成時間と、上記賦活方法における賦活ガス供給量、昇温速度及び最高賦活温度とを適宜組み合わせることにより、本実施形態において使用できる、上記の特徴を有する活性炭1を製造することができる。
(2)活性炭2
活性炭2のメソ孔量V1は、蓄電素子に組み込んだときの出力特性を大きくする観点から、0.8cc/gより大きい値であることが好ましい。他方、V1は、蓄電素子の容量の低下を抑える観点から、2.5cc/g以下であることが好ましい。上記V1は、より好ましくは1.00cc/g以上2.0cc/g以下、更に好ましくは、1.2cc/g以上1.8cc/g以下である。
活性炭2のマイクロ孔量V2は、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.8cc/gより大きい値であることが好ましい。一方、V2は、活性炭の電極としての密度を増加させ、単位体積当たりの容量を増加させるという観点から、3.0cc/g以下であることが好ましい。V2は、より好ましくは1.0cc/g超2.5cc/g以下、更に好ましくは1.5cc/g以上2.5cc/g以下である。
上述したメソ孔量及びマイクロ孔量を有する活性炭2は、従来の電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタ用として使用されていた活性炭よりもBET比表面積が高いものである。活性炭2のBET比表面積の具体的な値としては、2,300m/g以上4,000m/g以下であることが好ましい。BET比表面積の下限としては、3,000m/g以上であることがより好ましく、3,200m/g以上であることが更に好ましい。一方、BET比表面積の上限としては、3,800m/g以下であることがより好ましい。BET比表面積が2,300m/g以上の場合には、良好なエネルギー密度が得られ易く、他方、BET比表面積が4,000m/g以下の場合には、電極の強度を保つためにバインダーを多量に入れる必要がないので、電極体積当たりの性能が高くなる。
上記のような特徴を有する活性炭2は、例えば以下に説明するような原料及び処理方法を用いて得ることができる。
活性炭2の原料として用いられる炭素源としては、通常活性炭原料として用いられる炭素源であれば特に限定されるものではなく、例えば、木材、木粉、ヤシ殻等の植物系原料;石油ピッチ、コークス等の化石系原料;フェノール樹脂、フラン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂等の各種合成樹脂等が挙げられる。これらの原料の中でも、フェノール樹脂及びフラン樹脂は、高比表面積の活性炭を作製するのに適しており、特に好ましい。
これらの原料を炭化する方式又は賦活処理時の加熱方法としては、例えば、固定床方式、移動床方式、流動床方式、スラリー方式、ロータリーキルン方式等の公知の方式が挙げられる。加熱時の雰囲気は、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス、又はこれらの不活性ガスを主成分として他のガスと混合した混合ガス等が用いられる。炭化温度は400℃以上700℃以下(下限について、好ましくは450℃以上、更に好ましくは500℃以上。上限について、好ましくは650℃以下)程度で、0.5〜10時間程度にわたって焼成することが好ましい。
上記炭化処理後の炭化物の賦活方法としては、炭化物を、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法;及び炭化物をアルカリ化合物と混合した後に加熱処理を行う、アルカリ賦活法がある。これらのうち、高比表面積の活性炭を作製するにはアルカリ賦活法が好ましい。
この賦活方法では、炭化物とKOH、NaOH等のアルカリ化合物との質量比が1:1以上(アルカリ化合物の量が、炭化物の量と同じかこれよりも多い量)となるように混合した後に、不活性ガス雰囲気下で600℃以上900℃以下(好ましくは650℃以上850℃以下)の範囲において、0.5〜5時間にわたって加熱を行い、その後アルカリ化合物を酸及び水により洗浄除去し、更に乾燥を行う。
炭化物とアルカリ化合物とを混合するときに、アルカリ化合物の割合が増えるほどメソ孔量が増えるが、質量比1:3.5付近を境に、急激に孔量が増える傾向がある。したがって、炭化物とアルカリ化合物との質量比は、1:3よりもアルカリ化合物が多い比とすることが好ましく、1:5.5以下であることが好ましい。この質量比は、アルカリ化合物が増えるほど孔量が大きくなるが、その後の洗浄等の処理効率を考慮すると、上記範囲であることが好ましい。
マイクロ孔量を大きくし、メソ孔量を大きくしないためには、賦活する際に炭化物の量を多めにしてアルカリ化合物と混合するとよい。マイクロ孔量及びメソ孔量の双方を大きくするためには、アルカリ化合物の量を多めに使用するとよい。また、主としてメソ孔量を大きくするためには、アルカリ賦活処理を行った後に、水蒸気賦活を更に行うことが好ましい。
活性炭2の平均粒子径は、2μm以上20μm以下であることが好ましく、より好ましくは3μm以上10μm以下である。
(3)活性炭の使用態様
活性炭1及び2は、それぞれ、1種の活性炭から成るものであってもよいし、2種以上の活性炭の混合物であって、上記した各々の特性値を混合物全体として示すものであってもよい。
上記の活性炭1及び2は、これらのうちのいずれか一方を選択して使用してもよいし、両者を混合して使用してもよい。
−活性炭以外の正極活物質−
正極活物質は、活性炭1及び2のみから成っていてもよいし、活性炭1及び2と、これら以外の正極活物質(例えば、上特定のV及び/若しくはVを有さない活性炭、又は活性炭以外の炭素材料、炭素材料以外の正極活物質)を含んでもよい。例示の態様において、活性炭1及び2の合計含有量が、それぞれ、全正極活物質の50質量%より多い量であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上である。活性炭1及び2の合計の含有率は、全正極活物質の100質量%であることができる。しかしながら、他の材料、例えばリチウム遷移金属酸化物との併用による効果を良好に得る観点から、活性炭1及び2の合計の含有率は、例えば90質量%以下であることが好ましい。
本実施形態において正極活物質として用いられる、活性炭以外の炭素材料としては、例えば、カーボンナノチューブ、導電性高分子、又は多孔性の炭素材料を使用することが好ましい。
本実施形態において正極活物質として用いられる、炭素材料以外の正極活物質としては、例えば、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な、遷移金属酸化物が挙げられる。
この遷移金属酸化物には、特に制限はないが、層状構造、オリビン構造、及びスピネル構造から選ばれる構造を有する遷移金属酸化物であることが好ましい。
本実施形態では、正極前駆体に、正極活物質とは異なるアルカリ金属化合物が含まれていれば、後述のリチウムドープにて、アルカリ金属化合物がリチウムイオンのドーパント源となり、負極にプレドープができる。そのため、遷移金属化合物に予めリチウムイオンが含まれていなくても、リチウムドープ工程後には非水系リチウム蓄電素子として電気化学的な充放電をすることができる。しかしながら本実施形態における遷移金属酸化物としては、リチウム元素と、遷移金属元素とを有する酸化物が好ましい。この場合の遷移金属元素としては、例えば、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、バナジウム、及びクロムから成る群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
本実施形態における好ましい遷移金属酸化物として、具体的には、例えば、LiCoO、LiNiO、LiNi(1−y)(MはCo、Mn、Al、Fe、Mg、及びTiから成る群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、yは0.2<y<0.97を満たす。)、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiMnO、α−LiFeO、LiVO、LiCrO、LiFePO、LiMnPO、Li(PO、LiMn、LiMn(2−y)(MはCo、Mn、Al、Fe、Mg、及びTiから成る群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、yは0.2<y<0.97を満たす。)、LiNiCoAl(1−a−b)(a及びbは0.2<a<0.97、0.2<b<0.97を満たす。)、LiNiCoMn(1−c−d)(c及びdは0.2<c<0.97、0.2<d<0.97を満たす。)等が挙げられる。
上記において、xは0≦x≦1を満たし、zは0≦z≦3を満たす。
(アルカリ金属化合物)
本実施形態における正極活物質層に好ましく含有されるアルカリ金属化合物としては、後述のリチウムドープ工程において正極で分解し、リチウムイオンを放出することが可能であるという観点から、リチウム化合物であることが好ましく、具体的には例えば、炭酸リチウム、酸化リチウム、水酸化リチウム、フッ化リチウム、塩化リチウム、シュウ化リチウム、ヨウ化リチウム、窒化リチウム、シュウ酸リチウム、酢酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、及び炭酸セシウムから成る群から選択される1種以上が好適に用いられる。中でも、炭酸リチウム、酸化リチウム、及び水酸化リチウムから成る群から選択される1種以上がより好ましく、空気中での取り扱いが可能であり、かつ吸湿性が低いという観点から、炭酸リチウムが更に好ましい。
このようなアルカリ金属化合物は、電圧の印加によって分解し、負極へのリチウムドープのドーパント源として機能するとともに、正極活物質層において空孔を形成するから、電解液の保持性に優れ、イオン伝導性に優れる正極を形成することができる。
(1)正極前駆体中のアルカリ金属化合物
本実施形態の正極前駆体における正極集電体上に形成された正極活物質層には、正極活物質以外のアルカリ金属化合物が含有されることが好ましい。アルカリ金属化合物は、正極前駆体の正極活物質層中にいかなる態様で含まれていてもよい。例えば、アルカリ金属化合物は、正極集電体と正極活物質層との間に存在してもよく、正極活物質層の表面上に存在してもよいし、正極活物質層の内部に存在していてもよい。アルカリ金属化合物は、正極前駆体の正極集電体上に形成された正極活物質層の内部に含有されることが好ましい。
アルカリ金属化合物は、粒子状であることが好ましい。正極前駆体中に含有されるアルカリ金属化合物の平均粒子径は、0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。この平均粒子径の上限としては、50μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが更に好ましく、10μm以下であることが最も好ましい。他方、この平均粒子径の下限としては、0.1μm超であることがより好ましく、0.5μm以上であることが更に好ましい。アルカリ金属化合物の平均粒子径が0.1μm以上であれば、正極において、アルカリ金属化合物の分解反応後に残る空孔が電解液を保持するのに十分な容積を有することとなるため、高負荷充放電特性が向上する。アルカリ金属化合物の平均粒子径が100μm以下であれば、アルカリ金属化合物の表面積が過度に小さくはならないから、該アルカリ金属化合物の分解反応の速度を確保することができる。
正極前駆体が含有する、正極活物質以外のアルカリ金属化合物は、正極における正極活物質層の全質量を基準として、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、2.5質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。アルカリ金属化合物量が1質量%以上であると、後述のリチウムドープ工程において、十分な量のリチウムイオンを負極にドープすることができる。アルカリ金属化合物量が50質量%以下であると、負極へのリチウムイオンのドープ量が過度に多量になることが抑制されるとともに、アルカリ金属化合物の分解反応後に残る空孔の容積が過度に大きくならないため、正極活物質層の強度を維持することができる。
(2)正極のアルカリ金属化合物
本実施形態の正極における正極集電体上に形成された正極活物質層には、正極活物質以外のアルカリ金属化合物が含有されることが好ましい。
正極が含有する、正極活物質以外のアルカリ金属化合物の平均粒子径をXとし、正極活物質の平均粒子径をYとするとき、0.1μm≦X≦10μmであり、2μm≦Y≦20μmであり、かつX<Yであることが好ましい。Xは、更に好ましくは、0.5μm≦X≦5μmである。Xが0.1μm以上の場合、高負荷充放電サイクルで生成するフッ素イオンを吸着することにより、高負荷充放電サイクル特性が向上する。Xが10μm以下の場合、高負荷充放電サイクルで生成するフッ素イオンとの反応面積が増加するため、フッ素イオンの吸着を効率良く行うことができる。Yが2μm以上の場合、正極活物質間の電子伝導性を確保できる。Yが20μm以下の場合、電解質イオンとの反応面積が増加するために高い出力特性を発現できる。X<Yである場合、正極活物質間に生じる隙間にアルカリ金属化合物が充填されるため、正極活物質間の電子伝導性を確保しつつ、エネルギー密度を高めることができる。
正極が含有する、正極活物質以外のアルカリ金属化合物は、正極における正極活物質層の全質量を基準として、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、2.5質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。アルカリ金属化合物量が1質量%以上であると、高温環境下における正極上での電解液溶媒の分解反応を炭酸リチウムが抑制するため、高温耐久性が向上し、2.5質量%以上であると、その効果が顕著になる。また、アルカリ金属化合物量が50質量%以下であると、正極活物質間の電子伝導性がアルカリ金属化合物により阻害されることが比較的小さいため、高い入出力特性を示し、25質量%以下であると、高入出力特性が顕著になる。
−正極又は正極前駆体中のアルカリ金属化合物の分析方法−
(1)定性分析
正極活物質層中に含まれるアルカリ金属化合物の同定方法は特に限定されない。例えば、SEM−EDX(走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析)、顕微ラマン分析、XPS、固体Li−NMR、XRD(X線回折)、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)、AES(オージェ電子分光)、TPD/MS(加熱発生ガス質量分析)、DSC(示差走査熱量分析)等から選択される1種以上の分析手法を用いることにより、アルカリ金属化合物を同定することもできる。
(2)定量分析
正極又は正極前駆体に含まれるアルカリ金属化合物の定量方法を以下に記載する。
正極又は正極前駆体を有機溶媒で洗浄し、その後蒸留水で洗浄し、蒸留水での洗浄前後の正極又は正極前駆体の質量変化からアルカリ金属化合物を定量することができる。
洗浄のための有機溶媒としては、正極表面に堆積した非水系電解液の分解物を除去できればよく、特に限定されないが、アルカリ金属化合物の溶解度が2質量%以下である有機溶媒を用いれば、アルカリ金属化合物の溶出が抑制されるため好ましい。洗浄のための有機溶媒としては、例えば、メタノール、アセトン等の極性溶媒が好適に用いられる。
(正極活物質層の任意成分)
本実施形態における正極活物質層は、必要に応じて、正極活物質及びアルカリ金属化合物の他に、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでいてもよい。
これらの導電性フィラー、結着剤、及び分散安定剤については、負極活物質層における任意成分としての導電性フィラー、結着剤、及び分散安定剤として上記に説明した内容を、「負極」を「正極」と読み替えたうえで適宜援用してよい。
(正極活物質層の好ましい態様)
本実施形態における正極活物質層の目付は、正極集電体の片面当たり20g/m以上180g/m以下であることが好ましく、より好ましくは片面当たり25g/m以上120g/m以下であり、更に好ましくは30g/m以上80g/m以下である。この目付が20g/m以上であれば、十分な充放電容量を発現することができる。他方、この目付が180g/m以下であれば、正極内のイオン拡散抵抗を低く維持することができる。そのため、十分な出力特性が得られるとともに、セル体積を縮小することができ、したがって得られる蓄電素子のエネルギー密度を高めることができる。
正極活物質層の厚さは、正極集電体の片面当たり20μm以上200μm以下であることが好ましく、より好ましくは片面当たり25μm以上100μm以下であり、更に好ましくは30μm以上80μm以下である。この厚さが20μm以上であれば、十分な充放電容量を発現することができる。他方、この厚さが200μm以下であれば、正極内のイオン拡散抵抗を低く維持することができる。そのため、十分な出力特性が得られるとともに、セル体積を縮小することができ、したがって得られる蓄電素子のエネルギー密度を高めることができる。なお、集電体が貫通孔又は凹凸を有する場合における正極活物質層の厚さとは、集電体の貫通孔又は凹凸を有していない部分における正極活物質層の、片面当たりの厚さの平均値をいう。
後述のリチウムドープ工程後の正極における正極活物質層の嵩密度は、0.25g/cm以上であることが好ましく、より好ましくは0.30g/cm以上1.3g/cm以下の範囲である。正極活物質層の嵩密度が0.25g/cm以上であれば、高いエネルギー密度を発現でき、蓄電素子の小型化を達成できる。他方、この嵩密度が1.3g/cm以下であれば、正極活物質層内の空孔における非水系電解液の拡散が十分となり、高い出力特性が得られる。
本実施形における正極活物質層の、正極集電体単位面積当たりのBET比表面積は0.2m/cm以上10m/cm以下であることが好ましい。このBET比表面積が0.2m/cm以上であれば、アニオンの吸着脱離がしやすいため低抵抗な蓄電素子になり、10m/cm以下であれば、酸化反応場が少ないため、高電圧時の分解ガスの発生を抑制できる。
[正極の製造]
本実施形態の非水系リチウム型蓄電素子における正極は、正極活物質とアルカリ金属化合物とを含む正極活物質層を有する正極前駆体が、リチウムドープ工程を経て、アルカリ金属化合物を負極に対するリチウムイオンのプレドープ源として利用した後に形成される。したがって以下では先ず「正極前駆体」の製造について説明する。
(正極前駆体の製造)
正極前駆体は、正極集電体の片面上又は両面上に正極活物質層が設けられて成る。正極前駆体における正極活物質層は、上述のとおり、正極活物質とアルカリ金属化合物とを含む。典型的な態様において、正極活物質層は正極集電体に固着している。
本実施形態において、非水系リチウム型蓄電素子の正極となる正極前駆体は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、正極活物質及びアルカリ金属化合物、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を、水又は有機溶剤中に分散又は溶解してスラリー状の塗工液を調製し、この塗工液を正極集電体上の片面又は両面に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより正極前駆体を得ることができる。更に、得られた正極前駆体にプレスを施して、正極活物質層の厚さ若しくは嵩密度、又はこれらの双方を調整してもよい。代替的には、溶剤を使用せずに、正極活物質及びアルカリ金属化合物、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を乾式で混合し、得られた混合物をプレス成型した後、導電性接着剤を用いて正極集電体に貼り付ける方法も可能である。
以下、塗工液を用いる正極前駆体の製造方法について説明する。
(塗工液)
正極前駆体の塗工液は、正極活物質及びアルカリ金属化合物を含み、更に結着剤、分散剤等の任意添加成分を含んでいてもよい。
塗工液の調製は、例えば、正極活物質及びアルカリ金属化合物を含む全部の材料をドライブレンドし、次いで水若しくは有機溶媒を加えて調製してもよいし;
正極活物質及びアルカリ金属化合物のうちの少なくとも一方を含む材料の一部をドライブレンドして水若しくは有機溶媒を加えた後、結着剤、分散安定剤等を含む残りの材料が溶解又は分散した溶液又はスラリーを追加して調製してもよいし;又は、
水若しくは有機溶媒に結着剤、分散安定剤等が溶解又は分散した溶液又はスラリー中に、正極活物質及びアルカリ金属化合物のうちの少なくとも一方を含む残りの材料を追加して調製してもよい。
上記において、ドライブレンドする際には、例えば、正極活物質及びアルカリ金属化合物、並びに必要に応じて導電性フィラーを予備混合して、導電性の低いアルカリ金属化合物に導電性フィラーをコーティングさせる予備混合をしてもよい。これにより、後述のリチウムドープ工程において、正極前駆体においてアルカリ金属化合物が分解し易くなる。このドライブレンドには、例えばボールミル等を使用することができる。
塗工液の溶媒に水を使用する場合には、アルカリ金属化合物を加えることによって塗工液がアルカリ性になることがある。そのような場合には、必要に応じて塗工液にpH調整剤を添加してもよい。
塗工液の調製は、負極の塗工液と同様にして行うことができる。
塗工液の分散度は、粒ゲージで測定した粒度が0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。分散度の上限としては、より好ましくは粒度が80μm以下、更に好ましくは粒度が50μm以下である。粒度が0.1μm未満では、正極活物質を含む各種材料粉末の仕込み時の粒子径以下のサイズとなり、塗工液の調製時に材料を破砕する必要が生じ、好ましくない。また、粒度が100μm以下であれば、塗工液吐出時の詰まり、塗膜のスジ発生等がなく、安定に塗工ができる。
正極前駆体の塗工液の粘度(ηb)、TI値、塗工方法、塗膜の乾燥方法、及び任意的に行わるプレスについては、負極活物質層の形成と同様であってよい。
[正極活物質層表面のXPS分析]
本実施形態に係る正極活物質層は、正極活物質層表面のX線光電子分光測定(XPS)により得られる、元素濃度比S164eV/Cは、0.001以上0.05以下である。この値は、0.004以上0.01以下であることが好ましい。
164eV/Cが0.001以上であれば、非水系電解液の添加剤に由来する正極被膜が十分であるため、高電圧、高温保存時の電解液溶媒の分解ガスの生成が抑制される。S164eV/Cが0.05以下であれば、得られる蓄電素子の初期の抵抗を低く維持することができ、また、高電圧、高温保存時の抵抗増加も抑制できる。
本実施形態の正極活物質層の表面が、XPSにおいて示す上記のピークは、正極活物質層の表面にC−S−C構造を有する化合物が作用して生じる被膜に起因すると考えられる。
本実施形態における正極活物質層の表面に、XPS測定の際に上記のピークを発現させるための方法としては、例えば、
正極活物質層にC−S−C構造を有する化合物を混合する方法、
正極活物質層にC−S−C構造を有する化合物を吸着させる方法、
正極活物質層にC−S−C構造を有する化合物を電気化学的に析出させる方法
等が挙げられる。
中でも、非水系電解液中にC−S−C構造を有する特定の化合物を含有させておき、本実施形態の非水系リチウム型蓄電素子を製造する工程における分解反応を利用して、正極活物質層表面に上記の化合物の分解物を含む被膜を堆積させる方法が好ましい。特に、後述の正極前駆体中のアルカリ金属化合物を高電位で酸化分解させる工程を経て上記被膜を堆積させる方法は、低温環境下でも高い入出力特性を維持することができる被膜が形成するため、より好ましい。
正極活物質層の表面のXPSにおいて示す上記ピークを発現させるC−S−C構造を有する化合物の前駆体としては、後述の化学式(1)で表される化合物を用い、これを電解液に含有させるのが好ましい。
<セパレータ>
正極前駆体及び負極は、セパレータを介して積層されて、正極前駆体、負極及びセパレータを有する電極積層体が形成され、又はセパレータを介して積層したうえで捲回されて、正極前駆体、負極及びセパレータを有する電極捲回体が形成される。
セパレータとしては、リチウムイオン二次電池に用いられるポリエチレン製の微多孔膜若しくはポリプロピレン製の微多孔膜、又は電気二重層キャパシタで用いられるセルロース製の不織紙等を用いることができる。これらのセパレータの片面又は両面に、有機又は無機の微粒子から成る膜が積層されていてもよい。また、セパレータの内部に有機又は無機の微粒子が含まれていてもよい。
セパレータの厚さは5μm以上35μm以下が好ましい。5μm以上の厚さとすることにより、内部のマイクロショートによる自己放電が小さくなる傾向があるため好ましい。他方、35μm以下の厚さとすることにより、非水系リチウム型蓄電素子の入出力特性が高くなる傾向があるため好ましい。
有機又は無機の微粒子から成る膜の厚さは、1μm以上10μm以下が好ましい。この膜を1μm以上の厚さとすることにより、セパレータ内部のマイクロショートによる自己放電が小さくなる傾向があるため好ましい。他方、10μm以下の厚さとすることにより、非水系リチウム型蓄電素子の入出力特性が高くなる傾向があるため好ましい。
<電解液>
本実施形態の非水系リチウム型蓄電素子における電解液は、非水系電解液である。すなわち、この電解液は、後述する非水溶媒を含む。非水系電解液は、この非水系電解液の総量を基準として、0.5mol/L以上のリチウム塩を含有することが好ましい。すなわち、非水系電解液は、このリチウム塩が電離して生ずるリチウムイオンを電解質として含むことが好ましい。
[リチウム塩]
本実施形態における非水系電解液は、リチウム塩として、例えば、(LiN(SOF))、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、LiN(SOCF)(SOH)、LiC(SOF)、LiC(SOCF、LiC(SO、LiCFSO、LiCSO、LiPF、LiBF等から選ばれる1種以上を含有する。これらは、単独で用いることができ、2種以上を混合して用いてもよい。
高い伝導度を発現できることから、非水系電解液は、LiPF、LiN(SOF)、及びLiBFから成る群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、LiPF及びLiBFから成る群から選択される1種以上と、LiN(SOF)とを含有することがより好ましい。LiN(SOF)は、非水系電解液のイオン伝導度を高めるとともに、負極・正極界面に電解質被膜が適量堆積し、これにより電解液が分解して生ずるガスの発生を低減することができる。
非水系電解液中のリチウム塩濃度は、該非水系電解液の総量を基準として、0.5mol/L以上であることが好ましく、0.5mol/L以上2.0mol/L以下の範囲がより好ましい。リチウム塩濃度が0.5mol/L以上であれば、陰イオンが十分に存在するので蓄電素子の容量を十分高くできる。また、リチウム塩濃度が2.0mol/L以下である場合、未溶解のリチウム塩が非水系電解液中に析出すること、及び電解液の粘度が高くなり過ぎることを防止でき、伝導度が低下せず、出力特性も低下しないため好ましい。
[化合物X及び化合物Y]
非水系電解液は、下記化学式(1)で表される化合物Xと、下記化学式(2−1)〜(2−5)のそれぞれで表される化合物から選択される1種以上の化合物Yとを含むことが好ましい。
Figure 2019091792
{式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ホルミル基、炭素数2〜7のアシル基、ニトリル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基、又は炭素数2〜7のアルキルオキシカルボニル基を表す。}
Figure 2019091792
{式(2−1)〜(2−5)中のR〜R28は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基を表し;そして、
式(2−1)〜(2−3)及び(2−5)中のnは、それぞれ独立に、0〜3の整数である。}
化合物Xは、正極活物質表面のXPSにおいて、S2pスペクトル及びC1sスペクトルを発現する被膜を与えるC−S−C構造を有する化合物の前駆体として機能する。
化学式(1)中におけるR〜Rの炭素数2〜7のアシル基は、典型的にはアセチル基である。R〜Rの炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基は、典型的にはアセチルオキシ基(CHC(=O)O−)である。R〜Rの炭素数2〜7のアルキルオキシカルボニル基は、典型的にはメトキシカルボニル基(CH−O−C(=O)−)である。
化合物Xとして、具体的には、例えば、チオフェン、2−メチルチオフェン、3−メチルチオフェン、2−シアノチオフェン、3−シアノチオフェン、2,5−ジメチルチオフェン、2−メトキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、2−クロロチオフェン、3−クロロチオフェン、2−アセチルチオフェン、3−アセチルチオフェン等を挙げることができ、これらから選択される1種以上を、本実施形態における非水系電解液に含有させるのが好ましい。
非水系電解液中の化合物Xの含有割合は、非水系電解液の全質量に対して、0.01質量%以上4.5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上4.0質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上3.5質量%以下が更もに好ましい。
一方、化合物Yは、負極活物質表面のXPSにおいて、S2pスペクトルを発現する被膜を与える含硫黄化合物の前駆体として機能する。
式(2−1)〜(2−5)中のR〜R28における炭素数1〜12のアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基等である。炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基としては、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基が好ましく、例えば、クロロメチル基、ジクロロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、パーフルオロプロピル基等である。
化合物Xとして、具体的には、
化学式(2−1)で表される化合物として例えば、エチレンスルファート、1,3−プロピレンスルファート等を;
化学式(2−2)で表される化合物として例えば、1,3−プロパンスルトン、2,4−ブタンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−ブタンスルトン、2,4−ペンタンスルトン等を;
化学式(2−3)で表される化合物として例えば、1,3−プロペンスルトン、1,4−ブテンスルトン等を;
化学式(2−4)で表される化合物として例えば、3−スルフォレン等を;
化学式(2−5)で表される化合物として例えば、亜硫酸エチレン、1,2−亜硫酸プロピレン、1,3−亜硫酸プロピレン等を;
それぞれ挙げることができ、それぞれこれらから選択される1種以上を、本実施形態の非水系電解液に含有させるのが好ましい。
非水系電解液中の化合物Yの含有割合は、化学式(2−1)〜(2−5)のそれぞれで表される化合物の合計質量が、非水系電解液の全質量に占める割合として、0.01質量%以上4.5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上4.0質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上3.5質量%以下が更もに好ましい。
[非水溶媒]
本実施形態における非水系電解液は、非水溶媒として、好ましくは、環状カーボネート及び鎖状カーボネートから選択される1種以上を含有する。
非水系電解液が環状カーボネートを含有することは、所望の濃度のリチウム塩を溶解させる点で有利である。環状カーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(dFEC)等が挙げられる。
環状カーボネートの合計含有量は、非水系電解液の総量基準で、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。上記合計含有量が15質量%以上であれば、所望の濃度のリチウム塩を溶解させることが可能となり、高いリチウムイオン伝導度を発現することができる。環状カーボネートの合計含有量は、非水系電解液の総量基準で、70質量%以下、又は65質量%以下であることが好ましい。
また、本実施形態における非水系電解液が鎖状カーボネートを含有することは、高いリチウムイオン伝導度を発現する点で有利である。鎖状カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート等に代表されるジアルキルカーボネート化合物が挙げられる。ジアルキルカーボネート化合物は典型的には非置換である。
鎖状カーボネートの合計含有量は、非水系電解液の総量基準で、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。上記鎖状カーボネートの含有量が30質量%以上であれば、電解液の低粘度化が可能であり、高いリチウムイオン伝導度を発現することができる。上記合計濃度が95質量%以下であれば、電解液が、後述する添加剤を更に含有することが容易になる。
本実施形態における非水系電解液は、非水溶媒として、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネートから成る群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、
ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネートから選択される少なくとも1種の鎖状カーボネートと、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネートから選択される少なくとも1種の環状カーボネートと、を含有することが、より好ましい。
[添加剤]
本実施形態における非水系電解液は、上記の化合物X及び化合物Y、並びに非水溶媒の他に、環状ホスファゼン、非環状含フッ素エーテル、環状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル、環状酸無水物等から選択される1種以上を含んでいてもよい。
(環状ホスファゼン)
上記環状ホスファゼンとしては、例えば、エトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、ジエトキシテトラフルオロシクロトリホスファゼン、フェノキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン等を挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上が好ましい。
非水系電解液中の環状ホスファゼンの含有率は、非水系電解液の総量を基準として、0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。この値が0.5重量%以上であれば、高温における電解液の分解を抑制してガス発生を抑えることが可能となる。他方、この値が20質量%以下であれば、電解液のイオン伝導度の低下を抑えることができ、高い入出力特性を保持することができる。環状ホスファゼンの含有率は、より好ましくは2質量%以上15質量%以下であり、更に好ましくは4質量%以上12質量%以下である。
(非環状含フッ素エーテル)
非環状含フッ素エーテルとしては、例えば、HCFCFOCHCFCFH、CFCFHCFOCHCFCFH、HCFCFCHOCHCFCFH、CFCFHCFOCHCFCFHCF等が挙げられ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。中でも、電気化学的安定性の観点から、HCFCFOCHCFCFHが好ましい。
非水系電解液中の非環状含フッ素エーテルの含有量は、非水系電解液の総量を基準として、0.5質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。非環状含フッ素エーテルの含有量が0.5質量%以上であれば、非水系電解液の酸化分解に対する安定性が高まり、高温時耐久性が高い蓄電素子が得られる。他方、非環状含フッ素エーテルの含有量が15質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ、非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができるため、高度の入出力特性を発現することが可能となる。
(環状炭酸エステル)
環状炭酸エステルについては、ビニレンカーボネートが好ましい。
環状炭酸エステルの含有量は、非水系電解液の総量を基準として、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上5質量%以下であることが更に好ましい。環状炭酸エステルの含有量が0.5質量%以上であれば、負極上の良質な被膜を形成することができ、負極上での電解液の還元分解を抑制することにより、高温における耐久性が高い蓄電素子が得られる。他方、環状炭酸エステルの含有量が10質量%以下であれば、リチウム塩の溶解度が良好に保たれ、かつ、非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができるため、高度の入出力特性を発現することが可能となる。
(環状カルボン酸エステル)
環状カルボン酸エステルとしては、例えば、ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン、ガンマカプロラクトン、イプシロンカプロラクトン等を挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することが好ましい。中でも、ガンマブチロラクトンが、リチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から、特に好ましい。
環状カルボン酸エステルの含有量は、非水系電解液の総量を基準として、0.5質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。環状酸無水物の含有量が0.5質量%以上であれば、負極上に良質な被膜を形成することができ、負極上での非水系電解液の還元分解を抑制することにより、高温時耐久性が高い蓄電素子が得られる。他方、環状カルボン酸エステルの含有量が15質量%以下であれば、リチウム塩の溶解度が良好に保たれ、かつ、非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができるため、高度の入出力特性を発現することが可能となる。
(環状酸無水物)
環状酸無水物については、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、及び無水イタコン酸から選択される1種以上が好ましい。中でも工業的な入手のし易さによって電解液の製造コストが抑えられる点、非水系電解液中に溶解し易い点等から、無水コハク酸及び無水マレイン酸から選択することが好ましい。
環状酸無水物の含有量は、該非水系電解液の総量を基準として、0.5質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。環状酸無水物の含有量が0.5質量%以上であれば、負極上に良質な被膜を形成することができ、負極上における電解液の還元分解を抑制することにより、高温時耐久性が高い蓄電素子が得られる。他方、環状酸無水物の含有量が15質量%以下であれば、電解質塩の溶解度が良好に保たれ、かつ非水系電解液のイオン伝導度を高く維持することができ、従って高度の入出力特性を発現することが可能となる。尚、上記の環状酸無水物は、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
<外装体>
本実施形態の非水系リチウム型蓄電素子における外装体としては、例えば、金属缶、ラミネート包材等を使用できる。
金属缶としては、アルミニウム製のものが好ましい。
ラミネート包材としては、金属箔と樹脂フィルムとを積層したフィルムが好ましく、外層樹脂フィルム/金属箔/内装樹脂フィルムから成る3層構成のものが例示される。外層樹脂フィルムは、接触等により金属箔が損傷を受けることを防止するためのものであり、ナイロン又はポリエステル等の樹脂が好適に使用できる。金属箔は水分及びガスの透過を防ぐためのものであり、銅、アルミニウム、ステンレス等の箔が好適に使用できる。また、内装樹脂フィルムは、内部に収納する非水系電解液から金属箔を保護するとともに、外装体のヒートシール時に溶融封口させるためのものであり、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン等が好適に使用できる。
<非水系リチウム型蓄電素子>
本実施形態の非水系リチウム型蓄電素子は、負極、正極、セパレータ、及び非水系電解液が、外層体に収納されて構成される。好ましくは、負極、正極、及びセパレータは、後述する電極積層体又は電極捲回体が、上記の非水系電解液とともに、後述の外装体内に収納されて構成される。
<非水系リチウム型蓄電素子の製造方法>
[組みたて工程 電極体の作製]
本明細書における電極体とは、電極積層体及び電極捲回体を包含する概念であり、正極前駆体、セパレータ、及び負極がこの順に積層された構造を少なくとも1つ含む。
電極積層体は、枚葉の形状にカットした正極前駆体及び負極を、セパレータを介して積層して成る積層体に、正極端子及び負極端子を接続したものである。電極捲回体は、正極前駆体及び負極を、セパレータを介して積層及び捲回した捲回体に、正極端子及び負極端子を接続したものである。電極捲回体の形状は、円筒型であっても、扁平型であってもよい。
正極端子及び負極端子の接続の方法は特に限定はされないが、抵抗溶接、超音波溶接等の方法で行われてよい。
本実施形態における非水系リチウム型蓄電素子は、典型的には、以下の外装体への収納工程、任意的に行われる乾燥工程、注液・含浸・封止工程、リチウムドープ工程、及びエージング工程を順次に行うことにより、製造することができる。エージング工程後に、更に、追加充電工程若しくはガス抜き工程、又はこれらの双方を行ってもよい。
[外装体への収納工程]
電極体は、必要に応じて乾燥したうえで、金属缶又はラミネート包材に代表される外装体の中に収納し、非水系電解液を注液するための開口部を1方だけ残した状態で封止することが好ましい。外装体の封止方法は特に限定されないが、ラミネート包材を用いる場合は、ヒートシール、インパルスシール等の方法を用いることができる。
[乾燥工程]
外装体へ収納した電極体は、更に乾燥することにより、残存溶媒を除去することが好ましい。乾燥方法に限定はないが、例えば真空乾燥等により、乾燥してよい。残存溶媒は、正極活物質層又は負極活物質層の質量あたり、1.5質量%以下が好ましい。残存溶媒が1.5質量%より多いと、系内に残存する溶媒による、自己放電特性又はサイクル特性の悪化が顕著になるため、好ましくない。
[注液・含浸・封止工程]
外装体への収納工程、及び任意的な乾燥工程の終了後に、電極体が収納された外装体内に、非水系電解液を注液する。
注液後に、更に含浸を行い、正極、負極、及びセパレータを非水系電解液で十分に浸すことが望ましい。正極、負極、及びセパレータのうちの少なくとも一部が非水系電解液に浸っていない状態では、後述するリチウムドープ工程において、ドープが不均一に進むため、得られる非水系リチウム型蓄電素子の抵抗が上昇する、耐久性が低下する等の不都合が生じる場合がある。含浸の方法としては、特に制限されないが、例えば、注液後の電極体を、外装体が開口した状態で、減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にし、再度大気圧に戻す方法等を用いることができる。
注液後、好ましくは含浸後に、外装体が開口した状態の電極体を減圧しながら封止することにより、外装体を密閉することができる。
[リチウムドープ工程]
リチウムドープ工程において、前記正極前駆体と負極との間に電圧を印加して、正極前駆体中のアルカリ金属化合物を分解してリチウムイオンを放出し、負極でリチウムイオンを還元することにより、負極活物質層にリチウムイオンがプレドープされる。
このリチウムドープ工程において、正極前駆体中のアルカリ金属化合物の分解に伴い、CO等のガスが発生する。そのため、電圧を印加する際には、発生したガスを外装体の外部に放出する手段を講ずることが好ましい。この手段としては、例えば、外装体の一部を開口させた状態で電圧を印加する方法;外装体の一部に予めガス抜き弁、ガス透過フィルム等の適宜のガス放出手段を設置した状態で電圧を印加する方法;等を挙げることができる。
このリチウムイオン工程を経ることにより、蓄電素子中の「正極前駆体」は「正極」となる。
[エージング工程]
リチウムドープ工程後に、エージング工程を行うことが好ましい。エージング工程において、非水系電解液中の溶媒が負極で分解し、負極表面にリチウムイオン透過性の固体高分子被膜が形成される。この固体高分子被膜は、SEI(SolidElectrolyte Interphase)として機能すると考えられる。
エージングの方法としては、特に制限されないが、例えば、高温環境下で非水系電解液中の溶媒を反応させる方法等を用いることができる。
[追加充電工程]
エージング後に、電極体に追加充電を行うことが好ましい。追加充電により、非水系電解液中の電解質が正極で分解する。このことにより、フッ化物イオンが放出されて、セパレータ表面に付着して、粒子状の物質が生成される。その結果、セパレータへの電解液の浸透性及び保液性が向上するので、低抵抗な非水系リチウム型蓄電素子が得られる。また、上記セパレータ表面への粒子状物質の付着によって、高温下でのセパレータの機械的、電気化学的な耐久性が増し、その結果、高温保存下での耐久性に優れる非水系リチウム型蓄電素子を得ることができる。
[ガス抜き工程]
更にガス抜き工程を行い、非水系電解液、正極、及び負極中に残存しているガスを確実に除去することが好ましい。非水系電解液、正極、及び負極の少なくとも一部にガスが残存している状態では、イオン伝導が阻害されるため、得られる非水系リチウム型蓄電素子の抵抗が上昇してしまう。
ガス抜きの方法としては、特に制限されないが、例えば、外装体を開口した状態で電極体を減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にする方法等を用いることができる。
<非水系リチウム型蓄電素子の特性>
本実施形態の非水系リチウム型蓄電素子は、常温においても高温においても内部抵抗が低く、充放電サイクルを繰り返した場合の容量維持率が高く、リチウムの析出が抑制されている。更に、高充電状態で高温環境下に長期間保存した場合の発生ガス量が少なく、内部抵抗の上昇率が抑制されている。
本実施形態の非水系リチウム型蓄電素子は、セル電圧4.2Vでの初期の常温内部抵抗をRa(Ω)、静電容量をF(F)、電力量をE(Wh)、電極体を収納している外装体の体積をV(L)、及び環境温度−10℃における内部抵抗をRbとした時、以下の(a)、(b)、及び(c)の要件:
(a)RaとFの積Ra・Fが0.3以上3.0以下である、
(b)E/Vが15以上50以下である、及び
(c)Rb/Raが10以下である、
を同時に満たすことができる。
要件(a)について、Ra・Fは、大電流に対して十分な充電容量と放電容量とを発現させる観点から、3.0以下であることが好ましく、より好ましくは2.6以下であり、更に好ましくは2.4以下である。Ra・Fが上記の上限値以下であれば、優れた入出力特性を有する非水系リチウム型蓄電素子を得ることができる。そのため、非水系リチウム型蓄電素子を用いた蓄電システムと、例えば高効率エンジンと、を組み合わせること等によって、非水系リチウム型蓄電素子に印加される高負荷にも十分に耐え得ることになる。
要件(b)について、E/Vは、十分な充電容量と放電容量とを発現させる観点から、15以上であることが好ましく、より好ましくは18以上であり、更に好ましくは20以上である。E/Vが上記の下限値以上であれば、優れた体積エネルギー密度を有する蓄電素子を得ることができる。そのため、蓄電素子を用いた蓄電システムを、例えば、自動車のエンジンと組み合わせて使用する場合に、自動車内の限られた狭いスペースに蓄電システムを設置することが可能となる。
要件(c)について、Rb/Raは、−10℃という低温環境下においても十分な充電容量と放電容量とを発現させる観点から、10以下であることが好ましく、より好ましくは8以下であり、更に好ましくは6以下である。Rb/Raが上記の上限値以下であれば、低温環境下においても優れた出力特性を有する蓄電素子を得ることができる。そのため、低温環境下での自動車・バイク等のエンジン始動時に、モーターを駆動するための十分な電力を与える蓄電素子を得ることが可能となる。
本実施形態の非水系リチウム型蓄電素子は、セル電圧4.2Vでの初期の常温内部抵抗をRa(Ω)、セル電圧4.2V及び環境温度60℃において2か月間保存した後の25℃における内部抵抗をRc(Ω)とした時、以下の(d)及び(e)の要件:
(d)Rc/Raが0.3以上3.0以下である、並びに
(e)セル電圧4.2V及び環境温度60℃において2か月間保存した時に発生するガス量が、25℃において60×10−3cc/F以下である、
を同時に満たすことができる。
要件(d)について、Rc/Raは、高温環境下に長時間さらされた場合に、大電流に対して十分な充電容量と放電容量とを発現させる観点から、3.0以下であることが好ましく、より好ましくは2.0以下であり、更に好ましくは1.5以下である。Rc/Raが上記の上限値以下であれば、長期間安定して優れた出力特性を得ることができるため、デバイスの長寿命化につながる。
要件(e)について、セル電圧4.2V及び環境温度60℃において2か月間保存した際に発生するガス量は、発生したガスにより素子の特性を低下させないという観点から、発生ガス量を25℃において測定した値として、60×10−3cc/F以下であることが好ましく、より好ましくは45×10−3cc/F以下であり、更に好ましくは30×10−3cc/F以下である。上記の条件下で発生するガス量が上記の上限値以下であれば、デバイスが長期間高温にさらされた場合であっても、ガス発生によってセルが膨張するおそれがない。そのため、十分な安全性及び耐久性を有する蓄電素子を得ることができる。
以上におけるパラメータRa・F、E/V、Rb/Ra、及びRc/Ra、並びに発生ガス量は、それぞれ、後述の実施例に記載の手法によって測定・算出される値である。
<非水系リチウム型蓄電素子の用途>
本実施形態に係る複数個の非水系リチウム型蓄電素子は、これらを直列又は並列に接続することにより蓄電モジュールを作製することができる。
本実施形態の非水系リチウム型蓄電素子及び蓄電モジュールは、高出力かつ高容量であり、幅広い環境温度でその特性を維持することができるから、例えば、電力回生システム、電力負荷平準化システム、無停電電源システム、非接触給電システム、エナジーハーベストシステム、蓄電システム等に適用できる。特に、高負荷充放電サイクル特性が求められる用途、例えば、自動車のハイブリット駆動システムの電力回生システム;太陽光発電又は風力発電等の自然発電、マイクログリッド等における電力負荷平準化システム;工場の生産設備等における無停電電源システム;マイクロ波送電又は電界共鳴等の電圧変動の平準化及びエネルギーの蓄電を目的とした非接触給電システム;振動発電等で発電した電力の利用を目的としたエナジーハーベストシステム;等に、好適に適用できる。
以下に、本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<正極前駆体の製造>
(1)炭酸リチウムの粉砕
平均粒子径53μmの炭酸リチウム200gを、アイメックス社製の粉砕機(液体窒素ビーズミルLNM)を用い、液体窒素で−196℃に冷却化した後、ドライアイスビーズを用い、周速10.0m/sにて9分間粉砕した。
以上の操作により、−196℃で熱変性を防止しつつ脆性破壊することにより、炭酸リチウムを粉砕した。
この粉砕後の炭酸リチウムについて平均粒子径を測定したところ、1.5μmであった。
(2)正極活物質の調製
(2−1)正極活物質(活性炭A)の調製
破砕されたヤシ殻炭化物を、窒素雰囲気下、小型炭化炉中500℃において3時間炭化処理して炭化物を得た。得られた炭化物を賦活炉内へ入れ、1kg/hの水蒸気を予熱炉で加温した状態で前記賦活炉内へ導入し、900℃まで8時間かけて昇温して賦活した。賦活後の炭化物を取り出し、窒素雰囲気下で冷却して、賦活された活性炭を得た。得られた活性炭を10時間通水洗浄した後に水切りした。その後、115℃に保持された電気乾燥機内で10時間乾燥した後に、ボールミルで1時間粉砕を行うことにより、正極活物質としての活性炭Aを得た。
この活性炭Aについて、島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2000J)を用いて平均粒径を測定した結果、4.2μmであった。また、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積が2,360m/g、メソ孔量(V1)が0.52cc/g、マイクロ孔量(V2)が0.88cc/g、V1/V2=0.59であった。
(2−2)正極活物質(活性炭B)の調製
フェノール樹脂について、窒素雰囲気下、焼成炉中600℃において2時間の炭化処理を行った後、ボールミルにて粉砕し、更に分級を行って、平均粒径7μmの炭化物を得た。この炭化物とKOHとを、質量比1:5で混合し、窒素雰囲下、焼成炉中800℃で1時間加熱して賦活化を行った。その後、濃度2mol/Lに調整した希塩酸中で1時間にわたって混合物の撹拌洗浄を行った。更に、蒸留水でpH5〜6の間で安定するまで混合物を煮沸洗浄した後に乾燥を行うことにより、正極活物質としての活性炭Bを得た。
この活性炭Bについて、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積が3,627m/g、メソ孔量(V1)が1.50cc/g、マイクロ孔量(V2)が2.28cc/g、V1/V2=0.66であった。
<負極の製造>
(1)負極Aの製造
(1−1)負極活物質Aの調製
基材として、平均粒子径3.0μm、BET比表面積が1,780m/gの市販のヤシ殻活性炭150gをステンレススチールメッシュ製の籠に入れ、石炭系ピッチ(軟化点:50℃)270gを入れたステンレス製バットの上に置き、両者を電気炉(炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置して、熱反応を行うことにより、複合炭素材料Aを得た。この熱処理は、窒素雰囲気下で行い、600℃まで8時間で昇温し、同温度で4時間保持する方法によった。続いて自然冷却により60℃まで冷却した後、複合炭素材料Aを炉から取り出した。
得られた複合炭素材料Aについて、活性炭Aの場合と同様の方法で平均粒子径及びBET比表面積を測定した。その結果、平均粒子径は3.2μm、BET比表面積は262m/gであった。
複合炭素材料Aにおいて、石炭系ピッチ由来の炭素質材料の活性炭に対する質量比率は78%であった。
(1−2)負極Aの製造
次いで、上記で得た複合炭素材料Aを負極活物質として用いて負極Aを製造した。
複合炭素材料Aを85質量部、アセチレンブラックを10質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を5質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合して混合液を得た。得られた混合液を、PRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサーフィルミックスを用いて、周速15m/sの条件で分散して、塗工液を得た。
得られた塗工液の粘度(ηb)及びTI値を、東機産業社のE型粘度計TVE−35Hを用いて測定した。その結果、粘度(ηb)は2,789mPa・s、TI値は4.3であった。
東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて、上記塗工液を、貫通孔を持たない厚さ10μmの電解銅箔の両面に塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥温度85℃で乾燥した後、ロールプレス機を用いて圧力4kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスを実施することにより、負極A(両面負極A)を得た。
得られた負極Aの負極活物質層の厚さを、小野計器社製膜厚計Linear Gauge Sensor GS−551を用いて測定した。具体的には、負極Aの任意の10か所で負極Aの厚さを測定し、得られた厚さの平均値から銅箔の厚さを引いた値を、負極活物質層の厚さとして求めた。その結果、負極Aの負極活物質層の厚さは、片面当たり40μmであった。
(2)負極Bの製造
(2−1)負極活物質Bの調製
複合炭素材料Aの代わりに平均粒子径4.9μmの人造黒鉛を基材として用い、石炭系ピッチの使用量を50gとし、更に熱処理温度を1,000℃とした他は負極活物質Aの調製と同様にして、複合炭素材料Bを製造し、評価を行った。その結果、複合炭素材料BのBET比表面積は6.1m/gであった。
複合炭素材料Bにおいて、石炭系ピッチ由来の炭素質材料の人造黒鉛に対する質量比率は2%であった。
(2−2)負極Bの製造
上記で得た複合炭素材料Bを負極活物質として用いて負極Bを製造した。
複合炭素材料Bを80質量部、アセチレンブラックを8質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を12質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合して混合液を得た。得られた混合液を、PRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサーフィルミックスを用いて、周速15m/sの条件で分散して塗工液を得た。
得られた塗工液の粘度(ηb)及びTI値を、東機産業社のE型粘度計TVE−35Hを用いて測定した。その結果、粘度(ηb)は2,798mPa・s、TI値は2.7であった。
東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて、上記塗工液を、貫通孔を持たない厚さ10μmの電解銅箔の両面に塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥温度85℃で乾燥した後、ロールプレス機を用いて圧力4kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスを実施することにより、負極B(両面負極B)を得た。
また、負極Aと同様の方法により測定した負極Bの負極活物質層の厚さは、片面当たり25μmであった。
(3)負極Cの製造
上記「(1)負極Aの製造」において、負極集電体として厚さ15μmの、貫通孔を持つ銅箔とした以外は、負極Aの製造と同様の方法で負極C(両面負極C)を製造した。
負極Cの負極活物質層の厚さは、片面当たり40μmであった。
(4)負極Dの製造
上記「(2)負極Bの製造」において、負極集電体として厚さ15μmの、貫通孔を持つ銅箔とした以外は、負極Bの製造と同様の方法で負極D(両面負極D)を製造した。
負極Dの負極活物質層の厚さは、片面当たり25μmであった。
<実施例1>
(1)正極前駆体の製造
上記(2−1)で得た活性炭Aを正極活物質として用い、上記(1)で得た粉砕後の炭酸リチウムをアルカリ金属化合物として用いて、正極前駆体を製造した。
活性炭Aを57.5質量部、アルカリ金属化合物として平均粒径1.5μmの炭酸リチウムを30.0質量部、KB(ケッチェンブラック)を3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.5質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合して混合液を得た。得られた混合液を、PRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサーフィルミックスを用いて、周速17m/sの条件で分散して、塗工液を得た。
得られた塗工液の粘度(ηb)及びTI値を、東機産業社のE型粘度計TVE−35Hを用いて測定した。その結果、粘度(ηb)は2,700mPa・s、TI値は3.5であった。また、得られた塗工液の分散度をヨシミツ精機社製の粒ゲージを用いて測定した。その結果、粒度は35μmであった。
東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて、上記塗工液を、正極集電体としての厚さ15μmのアルミニウム箔の片面又は両面に、塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥温度100℃で乾燥した後、ロールプレス機を用いて圧力4kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスを行うことにより、正極前駆体を得た。
得られた正極前駆体の正極活物質層の膜厚を、小野計器社製膜厚計Linear Gauge Sensor GS−551を用いて測定した。具体的には、正極前駆体の任意の10か所で、正極前駆体の厚さを測定し、得られた厚さの平均値からアルミニウム箔の厚さを引いた値を、正極活物質層の厚さとして求めた。その結果、正極前駆体の正極活物質層の厚さは、片面当たり60μmであった。
(2)電解液の調製
有機溶媒として、エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC):メチルエチルカーボネート(EMC)=33.0:44.0:23.0(体積比)の混合溶媒を用い、全電解液に対するLiN(SOF)及びLiPFの濃度比が50:50(モル比)であり、かつ、LiN(SOF)及びLiPFの濃度の和が1.2mol/Lとなるように、それぞれの電解質塩を溶解して得た溶液に、添加剤のうちの化合物Xとしてチオフェン0.1質量%、及び化合物Yとして1,3−プロパンスルトン0.1質量%を添加することにより、非水系電解液を調製した。
ここで調製した電解液におけるLiN(SOF)及びLiPFの濃度は、それぞれ、0.6mol/L及び0.6mol/Lであった。
(3)蓄電素子の組立
両面負極A、片面正極前駆体及び両面正極前駆体を、それぞれ10cm×10cm(100cm)にカットした。最上面と最下面には片面正極前駆体を用い、更に両面負極A21枚と両面正極前駆体20枚とを用い、負極Aと正極前駆体との間のそれぞれに、厚さ15μmの微多孔膜セパレータを挟んで積層した。その後、負極Aと正極前駆体Aとに、それぞれ負極端子と正極端子とを超音波溶接にて接続して、電極積層体とした。この電極積層体を、80℃、50Paで、60時間、真空乾燥した。この電極積層体を、露点−45℃のドライエアー環境下にて、アルミラミネート包材から成る外装体内に収納した後、非水系電解液注入口を残して外装体をヒートシールすることにより、蓄電素子を組み立てた。このヒートシールは、180℃、20sec、1.0MPaの条件にて行った。
(4)非水系リチウム型蓄電素子の製造(非水系電解液の注液、含浸、及び封止工程)
上記のようにしてアルミラミネート包材の中に収納された電極積層体を、露点−40℃以下のドライエアー環境下に置き、上記で調製した非水系電解液約80gを温度25℃の大気圧下で注入した。続いて、非水系電解液注入後の電極積層体を減圧チャンバーの中に入れ、常圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻し、5分間静置した。その後、常圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻す第1減圧工程を4回繰り返した後、15分間静置した。更に、常圧から−91kPaまで減圧した後、大気圧に戻した。同様に減圧し、大気圧に戻す第2減圧工程を合計7回繰り返した。この第2減圧工程のときの減圧度は、それぞれ、−95、96、97、81、97、97、及び97kPaとした。
以上の工程により、非水系電解液を電極積層体に含浸させた。
その後、非水系リチウム型蓄電素子を減圧シール機に入れ、−95kPaに減圧した状態で、非水系電解液注入口を、180℃で10秒間、0.1MPaの圧力でヒートシールしてアルミラミネート包材を封止することにより、非水系リチウム型蓄電素子を製造した。
(5)リチウムドープ工程
得られた非水系リチウム型蓄電素子に対して、東洋システム社製の充放電装置(TOSCAT−3100U)を用いて、25℃環境下、電流値0.2Aで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を30時間継続する手法にで初期充電を行うことにより、負極にリチウムドープを行った。
(6)エージング工程
リチウムドープ後の非水系リチウム型蓄電素子を、45℃環境下、0.7Aで電圧3.0Vに到達するまで定電流放電を行った後、1Aで4.0Vまで定電流充電を行って、電圧を4.0Vに調整した。続いて、電圧調整後の非水系リチウム型蓄電素子を、60℃の恒温槽に48時間保管することにより、エージングを行った。
(7)ガス抜き工程
エージング後の非水系リチウム型蓄電素子を、温度25℃、露点−40℃のドライエアー環境下に置き、外装体であるアルミラミネート包材の一部を開封した。続いて、減圧チャンバーの中に、外装体の一部を開封した非水系リチウム型蓄電素子を入れ、KNF社製のダイヤフラムポンプ(N816.3KT.45.18)を用いて、大気圧から−80kPaまで3分間かけて減圧した後、3分間かけて大気圧に戻す工程を合計3回繰り返した。その後、減圧シール機に非水系リチウム型蓄電素子を入れ、−90kPaに減圧した後、200℃で10秒間、0.1MPaの圧力で開封口をヒートシールしてアルミラミネート包材を封止することにより、ガス抜きを行った。
(8)電解液中の添加剤の同定
完成した非水系リチウム型蓄電素子を2.9Vに調整した後、23℃の部屋に設置された露点−90℃以下、酸素濃度1ppm以下で管理されているArボックス内で、シリンジを用いて電解液を採取し、ポリプロピレン製のバイアルに入れ、密封した。大気非暴露を維持したまま、バイアル内の電解液をマイクロシリンジで採取し、GC/MS測定を行った。
GC/MS測定は、アジレント・テクノロジー製MSD5975を用いて実施した。測定条件は以下のとおりとした。
GCの注入口温度:300℃
キャリアガス:He
流速:1mL/min
カラム:アジレント・テクノロジー製、無極性カラムDB−1(30m×0.25mmI.D.、膜厚0.25μm)
カラム温度:40℃から300℃まで20℃/minで昇温:
スプリット比:1/100
注入量:1μL
MSとのインターフェイスの温度:300℃
MSのイオン源温度:230℃
イオン化法:電子イオン化法
上記手法で実施した結果、電解液中にチオフェン及び1,3−プロパンスルトンが検出された。
(9)非水系リチウム型蓄電素子の評価
(9−1)正極活物質層表面のXPS
リチウムドープ及びガス抜きを行って完成した非水系リチウム型蓄電素子を、電圧2.9Vに調整した後、23℃の部屋に設置された露点−90℃以下、酸素濃度1ppm以下で管理されているArボックス内で解体して、正極を取り出した。取り出した正極を、ジメチルカーボネート(DMC)で浸漬洗浄した後、大気非暴露を維持した状態下でサイドボックス中で真空乾燥させた。
乾燥後の正極を、トランスファーベッセルに入れ、大気非暴露を維持した状態でXPS測定を行った。
測定条件は以下のとおりとした。
X線源:単色化AlKα
X線ビーム径:100μmφ(25W、15kV)
パスエネルギー(ナロースキャン):58.70eV
帯電中和:有り
スイープ数(ナロースキャン):10回(炭素、酸素)、20回(フッ素)、30回(リン)、40回(リチウム)、又は50回(ケイ素)
エネルギーステップ(ナロースキャン):0.25eV
なお、XPSの測定前に、正極の表面をスパッタリングにてクリーニングした。スパッタリングの条件は、以下のとおりとした。
加速電圧:1.0kV
スパッタリング範囲:2mm×2mm
スパッタリング時間:1分間(SiO換算で1.25nm/min)
得られたXPSスペクトルを、上述の基準にしたがって、Li1s、C1s、O1s、F1s、P2p、Si2p、及びS2pの各結合エネルギーに帰属して、各ピークの面積、及び各元素の感度係数から、S2pスペクトルの164eVのピーク面積に基づいて求めた元素濃度をS164eV(atomic%)、C1sスペクトルのCのピーク面積に基づいて求めた元素濃度をC(atomic%)としたときの元素濃度比S164eV/Cを算出した。
その結果、実施例1の非水系リチウム型蓄電素子の正極のS164eVは0.05atomic%、Cの元素濃度Cは46atomic%であり、その比S164eV/Cは0.0011であった。
(9−2)正極集電体単位面積当たりの正極活物質層BET比表面積
完成した非水系リチウム型蓄電素子から(9−1)正極活物質層表面のXPSと同様にして取り出した正極を、200℃で一昼夜真空乾燥した後、窒素を吸着質として吸脱着の等温線の測定を行った。得られた吸着側の等温線を用いて算出した、正極集電体単位面積当たりの正極活物質層BET比表面積(表2では「単位面積当たりBET」と記載)は、9.13m/cmであった。
(9−3)負極活物質層表面のXPS
完成した非水系リチウム型蓄電素子から(9−1)正極活物質層表面のXPSと同様にして取り出した負極を用いて、正極活物質層表面のXPSと同様の方法で、負極活物質層の解析を行った。
その結果、実施例1の非水系リチウム型蓄電素子の負極のS168eVは0.3atomic%、F685eVは11.5atomic%であり、その比S168eV/F685eVは0.026であった。
(9−4)初期特性の評価
i)体積エネルギー密度の算出 完成した非水系リチウム型蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置(5V,360A)を用いて、2Cの電流値で4.2Vに到達するまで定電流充電を行い、続いて4.2Vの定電圧を印加する定電圧充電を、合計で30分行った。その後、2.2Vまで2Cの電流値で定電流放電を施した際の容量をQとし、F=Q/(4.2−2.2)により算出された静電容量F(F)と、体積V(L)とを用いて、下記数式:
E/V=F×(4.2−2.2)/2/3600/V
により、体積エネルギー密度を算出したところ、39.1Wh/Lであった。
なお、上記数式中の記号「E」は、静電容量F(F)を用いて、下記数式:
E=F×(4.2−2.2)/2/3600
により算出される電力量である。
ii)初期時定数の評価(Ra・Fの算出)
完成した非水系リチウム型蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置(5V,360A)を用いて、20Cの電流値で4.2Vに到達するまで定電流充電し、続いて4.2Vの定電圧を印加する定電圧充電を、合計で30分間行い、続いて、20Cの電流値で2.2Vまで定電流放電を行って、放電カーブ(時間−電圧)を得た。この放電カーブにおいて、放電時間2秒及び4秒の時点における電圧値から、直線近似にて外挿して得られる放電時間=0秒における電圧をEoとし、降下電圧ΔE=4.2−Eo、及びR=ΔE/(20C(電流値A))により常温内部抵抗Raを算出した。
また、完成した非水系リチウム型蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、20Cの電流値で4.2Vに到達するまで定電流充電を行い、次いで、4.2Vの定電圧を印加する定電圧充電を、合計で30分行った。その後、2.2Vまで2Cの電流値で定電流放電を施した際の容量をQとして、数式:F=Q/(4.2−2.2)により、静電容量Fを算出した。
上記で得られた静電容量Fと、常温内部抵抗Raとの積Ra・Fは、2.58ΩFであった。
iii)低温特性の評価(Rb/Raの算出)
完成した非水系リチウム型蓄電素子について、−10℃に設定した恒温槽内に2時間静置した後、恒温槽を−10℃に保ったまま富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置(5V,360A)を用いて、1.0Bの電流値で4.2Vに到達するまで定電流充電し、続いて4.2Vの定電圧を印加する定電圧充電を、合計で2時間行った。次いでて、50Cの電流値で2.2Vまで定電流放電を行って、放電カーブ(時間−電圧)を得た。この放電カーブにおいて、放電時間2秒及び4秒の時点における電圧値から、直線近似にて外挿して得られる放電時間=0秒における電圧をEoとして、下記数式:
降下電圧ΔE=4.2−Eo、及び
Rb=ΔE/(10C(電流値A))
により、低温内部抵抗Rbを算出した。
そして、この低温内部抵抗Rbと、上記「ii)初期時定数の評価(Ra・Fの算出)」で求めた常温内部抵抗Raとから求めた比Rb/Raは、6.2であった。
(9−5)高温保存特定の評価
i)抵抗上昇率の評価((Rc/Raの算出))
完成した非水系リチウム型蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス株式会社製の充放電装置(5V,360A)を用いて、100Cの電流値で4.2Vに到達するまで定電流充電し、続いて4.2Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で10分間行った。その後、セルを60℃環境下に保存し、2週間毎に60℃環境下から取り出し、同様の充電工程にてセル電圧を4.2Vに充電した後、再びセルを60℃環境下で保存した。この工程を2か月間繰り返すことにより、非水系リチウム型蓄電素子の2か月間の高温保存試験を行った。
この高温保存試験後の蓄電素子に対して、上記「ii)初期時定数の評価(Ra・Fの算出)」におけるRaを算出する手法と同様の操作により、高温保存試験後の常温内部抵抗Rcを算出した。
このRc(Ω)を、上記「ii)初期時定数の評価(Ra・Fの算出)」で求めた高温保存試験前の常温内部抵抗Ra(Ω)で除して算出した比Rc/Raは、1.75であった。
ii)ガス発生量の測定
完成した非水系リチウム型蓄電素子について、高温保存試験開始前のセル体積Va、及び高温保存試験を2か月間行った後のセルの体積Vbを、それぞれ、アルキメデス法によって測定した。
これらの値を用いて数式:Vb−Vaにより求めたガス発生量は、59×10−3cc/Fであった。
<実施例2〜30、及び比較例1〜10>
正極活物質の種類を表1に記載のとおりとした以外は、実施例1の「(1)正極前駆体の製造」と同じ方法に従って、正極集電体の片面及び両面に、片面当たりの厚さ60μmの正極活物質層を有する正極前駆体を得た。
そして、上記の正極前駆体を用い、負極種、並びに非水系電解液に添加する添加剤である化合物X及び化合物Yの種類及び添加量を、それぞれ表1に記載のとおりに変更した他は、実施例1と同様にして非水系リチウム型蓄電素子を製造し、各種の評価を行った。
評価結果は表2に示した。
<実施例31〜37、及び比較例11〜14>
活性炭Aの使用量を47.5質量部とし、かつ、表1に記載した種類及び量の遷移金属化合物を更に使用して塗工液を調製した他は、実施例1の「(1)正極前駆体の製造」と同じ方法に従って、正極集電体の片面及び両面に、片面当たりの厚さ60μmの正極活物質層を有する正極前駆体を得た。
そして、上記の正極前駆体を用い、非水系電解液に添加する添加剤である化合物X及び化合物Yの種類及び添加量を、それぞれ表1に記載のとおりに変更した他は、実施例1と同様にして非水系リチウム型蓄電素子を製造し、各種の評価を行った。
評価結果は表2に示した。
Figure 2019091792
Figure 2019091792
Figure 2019091792
Figure 2019091792
<実施例38〜41、並びに比較例15及び16>
表3に示したとおり、実施例1と同様にして蓄電阻止を組み立て、非水系電解液の注液、含浸、及び封止工程を順次に行って、非水系リチウム型蓄電素子を製造した。
得られた非水系リチウム型蓄電素子について、「(5)リチウムドープ工程」の際の初期充電電圧、及び「(6)エージング工程」の際の定電流充電の到達電圧を、それぞれ、表4に記載のとおりとした他は、実施例1と同様にしてリチウムドープ及びエージング、並びに各種の評価を行った。
評価結果は、実施例1の結果とともに表4に示した。
<比較例17>
(1)正極前駆体の製造
表3に示したとおり、活性炭Aの使用量を87.5質量部とし、かつ、アルカリ金属化合物を使用しなかった他は、実施例1の「(1)正極前駆体の製造」と同じ方法に従って、正極集電体の片面及び両面に、片面当たりの厚さ60μmの正極活物質層を有する正極前駆体を得た。
(2)蓄電素子の組立
両面負極C、及び上記で得た正極前駆体を、それぞれ、10cm×10cm(100cm)にカットした。カットした両面負極Cの片面に、複合多孔性材料Aの単位質量当たり760mAh/gに相当するリチウム金属箔を貼り付けた。
最上面と最下面には、片面正極前駆体を用い、更に、片面にリチウム箔を貼り付けた両面負極C21枚と両面正極前駆体20枚とを用い、負極Cと正極前駆体との間に、厚さ15μmの微多孔膜セパレータを挟んで積層した。この積層体を用いた他は実施例1の「(2)蓄電素子の組立」と同様にして、非水系リチウム型蓄電素子を組立てた。
(3)非水系リチウム型蓄電素子の製造(非水系電解液の注液、含浸、及び封止工程)
非水系電解液の注液、含浸、及び封止工程を、それぞれ、実施例1におけるのと同様にして行うことにより、非水系リチウム型蓄電素子を得た。
(4)リチウムドープ工程
得られた非水系リチウム型蓄電素子に対して、45℃に設定した恒温槽内で21時間静置することにより、負極にリチウムドープを行った。
(5)エージング工程
リチウムドープ後の非水系リチウム型蓄電素子について、セル電圧を3.0Vに調整した後、45℃に設定した恒温槽内で24時間保存した。続いて、アスカ電子製の充放電装置を用いて、充電電流10A、放電電流10Aとし、下限電圧2.0V、上限電圧4.0Vの間で定電流充電、定電流放電による充放電サイクルを2回繰り返した。
(6)非水系リチウム型蓄電素子の評価
上記充放電サイクル後の非水系リチウム型蓄電素子を用いた他は、実施例1と同様にして、各種の評価を行った。
評価結果は、実施例1の結果とともに表4に示した。
<比較例18〜20>
負極の種類、及び正極前駆体の製造に使用した正極活物質の種類を、それぞれ表3に記載のとおりとした他は、比較例17と同様にして非水系リチウム型蓄電素子を製造し、各種の評価を行った。
評価結果は、実施例1の結果とともに表4に示した。
表4の「正極分析結果」における「単位面積当たりBET」とは、正極集電体単位面積当たりの正極活物質層BET比表面積である。
Figure 2019091792
Figure 2019091792
本発明の非水系リチウム型蓄電素子は、例えば、自動車のハイブリット駆動システムの瞬間電力ピークのアシスト用途等における蓄電素子として好適に利用できる。
本発明の非水系リチウム型蓄電素子は、例えば、リチウムイオンキャパシタ又はリチウムイオン二次電池として好適に適用することができる。本発明の非水系リチウム型蓄電素子は、特に、リチウムイオンキャパシタとして適用したときに、本発明の効果が最大限に発揮されるため好ましい。

Claims (25)

  1. 負極、正極、セパレータ、及びリチウム塩を含む非水系電解液を含む非水系リチウム型蓄電素子であって、
    前記負極が、負極集電体と、前記負極集電体の片面上又は両面上に設けられた、負極活物質を含む負極活物質層とを有し、かつ、前記負極活物質はリチウムイオンを吸蔵・放出できる炭素材料を含み、
    前記負極活物質層表面のX線光電子分光測定(XPS)により得られる、S2pスペクトルの168eVのピーク面積に基づいて求めたSの元素濃度をS168eV(atomic%)、F1sスペクトルの685eVのピーク面積に基づいて求めたFの元素濃度をF685eV(atomic%)とするとき、元素濃度比S168eV/F685eVが、0.025以上0.5以下であり、
    前記正極が、正極集電体と、前記正極集電体の片面上又は両面上に設けられた、正極活物質を含む正極活物質層とを有し、かつ、前記正極活物質は活性炭を含み、
    前記正極活物質層のBET法により測定される単位面積当たりの比表面積をA(m/cm)とするとき、0.2≦A≦10であり、かつ、
    前記正極活物質層表面のX線光電子分光測定(XPS)により得られる、S2pスペクトルの164eVのピーク面積に基づいて求めたSの元素濃度をS164eV(atomic%)、C1sスペクトルのCのピーク面積に基づいて求めたCの元素濃度をC(atomic%)とするとき、元素濃度比S164eV/Cが、0.001以上0.05以下である、非水系リチウム型蓄電素子。
  2. 前記非水系電解液が、下記化学式(1)で表される化合物Xと、下記化学式(2−1)〜(2−5)のそれぞれで表される化合物から選択される1種以上の化合物Yとを含む、請求項1に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
    Figure 2019091792
    {式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ホルミル基、炭素数2〜7のアルキルカルボニル基、ニトリル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基、又は炭素数2〜7のアルキルオキシカルボニル基を表す。}
    Figure 2019091792
    {式(2−1)〜(2−5)中のR〜R28は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基を表し;そして、
    式(2−1)〜(2−3)及び(2−5)中のnは、それぞれ独立に、0〜3の整数である。}
  3. 前記化学式(1)で表される化合物が、チオフェン、2−メチルチオフェン、3−メチルチオフェン、2−シアノチオフェン、3−シアノチオフェン、2,5−ジメチルチオフェン、2−メトキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、2−クロロチオフェン、3−クロロチオフェン、2−アセチルチオフェン、及び3−アセチルチオフェンから成る群から選択される1種以上であり、
    前記化学式(2−1)で表される化合物が、エチレンスルファート及び1,3−プロピレンスルファートから成る群から選択される1種以上であり、
    前記化学式(2−2)で表される化合物が、1,3−プロパンスルトン、2,4−ブタンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−ブタンスルトン、及び2,4−ペンタンスルトンから成る群から選択される1種以上であり、
    前記化学式(2−3)で表される化合物が、1,3−プロペンスルトン及び1,4−ブテンスルトンから成る群から選択される1種以上であり、
    前記化学式(2−4)で表される化合物が、3−スルフォレンであり、そして、
    前記化学式(2−5)で表される化合物が、亜硫酸エチレン、1,2−亜硫酸プロピレン、及び1,3−亜硫酸プロピレンから成る群から選択される1種以上である、請求項2に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  4. 前記非水系電解液が、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネートから成る群から選択される少なくとも1種の非水溶媒を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  5. 前記非水系電解液が、LiPF及びLiBFから成る群から選択される1種以上を含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  6. 前記非水系電解液が、LiN(SOF)を含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  7. 前記正極集電体及び前記負極集電体が、それぞれ、無孔の金属箔である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  8. 前記正極活物質に含まれる活性炭が、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、0.3<V1≦0.8、及び0.5≦V2≦1.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m/g以上3,000m/g以下を示す活性炭を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  9. 前記正極活物質に含まれる活性炭が、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量V1(cc/g)が0.8<V1≦2.5を満たし、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量V2(cc/g)が0.8<V2≦3.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が2,300m/g以上4,000m/g以下を示す活性炭を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  10. 前記正極活物質が、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な遷移金属酸化物を更に含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  11. 前記遷移金属酸化物が、層状構造、スピネル構造、及びオリビン構造から選ばれる構造を有する遷移金属酸化物である、請求項10に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  12. 前記遷移金属酸化物が、LiNiCoAl(1−a−b){a及びbは、それぞれ、0.2<a<0.97、0.2<b<0.97を満たす。}、LiNiCoMn(1−c−d){c及びdは、それぞれ、0.2<c<0.97、0.2<d<0.97を満たす。}、LiCoO、LiMn、LiFePO、LiMnPO{xは0≦x≦1を満たす。}、及びLi(PO{zは0≦z≦3を満たす。}から成る群から選択される1種以上である、請求項10又は11に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  13. 前記負極活物質がリチウムイオンでドープされており、そのドープ量が、前記負極活物質の単位質量当たり530mAh/g以上2,500mAh/g以下である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  14. 前記負極活物質のBET比表面積が、1m/g以上1,500m/g以下である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  15. 前記負極活物質が粒子状であり、その平均粒子径が、1μm以上10μm以下である、請求項13又は14に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  16. セル電圧4.2Vでの初期の内部抵抗をRa(Ω)、静電容量をF(F)、電力量をE(Wh)、電極体を収納している外装体の体積をV(L)、及び環境温度−10℃における内部抵抗をRbとした時、以下の(a)、(b)、及び(c)の要件:
    (a)RaとFの積Ra・Fが0.3以上3.0以下である、
    (b)E/Vが15以上50以下である、及び
    (c)Rb/Raが10以下である
    を同時に満たす、請求項1〜15のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  17. セル電圧4.2Vでの初期の内部抵抗をRa(Ω)、セル電圧4.2V及び環境温度60℃において2か月間保存した後の25℃における内部抵抗をRc(Ω)とした時、以下の(d)及び(e)の要件:
    (d)Rc/Raが0.3以上3.0以下である、並びに
    (e)セル電圧4.2V及び環境温度60℃において2か月間保存した時に発生するガス量が、25℃において30×10−3cc/F以下である、
    を同時に満たす、請求項1〜16のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  18. 前記負極、前記正極、前記セパレータ、及び前記非水系電解液が、外層体に収納されており、
    前記外装体が、金属缶又はラミネート包材である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
  19. 請求項1〜18のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子を含む、蓄電モジュール。
  20. 請求項1〜18のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子、又は請求項19に記載の蓄電モジュールを含む、電力回生システム。
  21. 請求項1〜18のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子、又は請求項19に記載の蓄電モジュールを含む、電力負荷平準化システム。
  22. 請求項1〜18のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子、又は請求項19に記載の蓄電モジュールを含む、無停電電源システム。
  23. 請求項1〜18のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子、又は請求項19に記載の蓄電モジュールを含む、非接触給電システム。
  24. 請求項1〜18のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子、又は請求項19に記載の蓄電モジュールを含む、エナジーハーベストシステム。
  25. 請求項1〜18のいずれか一項に記載の非水系リチウム型蓄電素子、又は請求項19に記載の蓄電モジュールを含む、蓄電システム。
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