以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、説明に用いる各図は概念図であり、各部の形状は必ずしも厳密なものではない場合がある。また、本実施形態では、例としてハイブリッド車両に適用された制動制御装置について説明する。
<第一実施形態>
第一実施形態の制動制御装置1は、車両用制動装置Zに組み込まれている。この車両用制動装置Zは、図1に示すように、制動制御装置1と、シリンダ機構2と、ストロークシミュレータ3と、電磁弁41、42、43と、アクチュエータ5と、ストロークセンサ61と、圧力センサ62〜64と、ホイールシリンダ71、72、73、74と、回生制動機構Yと、を備えている。まず、制動制御装置1以外の部分について簡単に説明する。
シリンダ機構2は、マスタシリンダ20と、マスタピストン21、22と、マスタリザーバ23と、を備えている。マスタピストン21、22は、マスタシリンダ20内に摺動可能に配設されている。マスタピストン21、22は、ブレーキ操作部材であるブレーキペダル9の操作に応じて移動する。マスタピストン21、22は、マスタシリンダ20内を、第1マスタ室20aと第2マスタ室20bとに区画している。マスタリザーバ23は、第1マスタ室20a及び第2マスタ室20bと連通する流路(油路)を有するリザーバタンク(大気圧リザーバ)である。マスタリザーバ23の内部は隔壁により3つの部屋に仕切られている。マスタリザーバ23の内部は、第1マスタ室20aに連通する部屋、第2マスタ室20bに連通する部屋、及び、後述する制動制御装置1の還流路13に接続される部屋に分かれている。マスタリザーバ23と各マスタ室20a、20bとは、マスタピストン21、22の移動により連通/遮断される。第1マスタ室20aは、流路81及び電磁弁41を介してアクチュエータ5(後述する第1配管系統51)に接続されている。第2マスタ室20bは、流路82及び電磁弁42を介してアクチュエータ5(後述する第2配管系統52)に接続されている。
ストロークシミュレータ3は、ブレーキペダル9の操作に対して反力を発生させる装置であって、シリンダ、ピストン、及びバネ等により構成されている。ストロークシミュレータ3は、流路82、83及び電磁弁43を介して第2マスタ室20bに接続されている。流路83は、流路82のうち第2マスタ室20bと電磁弁42との間の部分に接続されている。
電磁弁41、42は、いわゆるマスタカット弁であって、ノーマルオープン型の電磁弁である。電磁弁41、42は、対応するマスタ室20a、20bとアクチュエータ5とを接続する流路81、82に設けられている。電磁弁43は、いわゆるシミュレータカット弁であって、ノーマルクローズ型の電磁弁である。電磁弁43は、流路82とストロークシミュレータ3とを接続する流路83に設けられている。ブレーキ操作が開始されると、後述するブレーキECU18の制御により、電磁弁41、42は閉弁され、電磁弁43は開弁される。また、無通電状態では、電磁弁41、42は開弁し、電磁弁43は閉弁する。電気系の故障が発生した場合、上記無通電状態となり、ストロークシミュレータ3への流路はカットされ、マスタ室20a、20bとホイールシリンダ71〜74は連通し、ドライバのブレーキ操作によりホイールシリンダ71〜74の液圧が上昇する。
アクチュエータ5は、いわゆる下流側の調圧装置であって、上流側の装置から供給されるブレーキ液の液圧を調整してホイールシリンダ71〜74に供給する装置である。アクチュエータ5は、複数の電磁弁、電動ポンプ、及びリザーバ等を備えて構成されている。アクチュエータ5は、後述するブレーキECU18からの指令に基づき、各ホイールシリンダ71〜74に対して、加圧制御、保持制御、又は減圧制御等を実行することができる。アクチュエータ5は、前輪のホイールシリンダ71、72に接続される第1配管系統51と、後輪のホイールシリンダ73、74に接続される第2配管系統52と、を備えている。本実施形態では前後配管が採用されている。アクチュエータ5は、ABS制御(アンチスキッド制御)や横滑り防止制御等の特殊制御を実行することができる。また、アクチュエータ5は、回生協調制御に対応して作動することもできる。アクチュエータ5の詳細説明については、公知であるため省略する。
ストロークセンサ61は、ブレーキペダル9の操作量(ストロークSt)を検出するセンサである。圧力センサ62は、マスタ室20a、20bの圧力(マスタ圧Pin)を検出するセンサであって、流路81のうちの第1マスタ室20aと電磁弁41との間の部分に接続されている。圧力センサ63は、制動制御装置1から第1配管系統51に供給される前輪制動液圧(前輪検出値Pfa)を検出するセンサである。前輪制動液圧は、アクチュエータ5が作動していない状態における、車両の前輪に備えられた前輪ホイールシリンダ71、72の液圧といえる。圧力センサ64は、制動制御装置1から第2配管系統52に供給される後輪制動液圧(後輪検出値Pra)を検出するセンサである。後輪制動液圧は、アクチュエータ5が作動していない状態における、車両の後輪に備えられた後輪ホイールシリンダ73、74の液圧といえる。以下、圧力センサ63の検出値を前輪検出値Pfaと称し、圧力センサ64の検出値を後輪検出値Praと称する。
ホイールシリンダ71〜74は、車輪に液圧制動力を付与するための摩擦ブレーキ装置に組み込まれた部材(液圧制動力付与部材)である。回生制動機構Yは、図示しないが、主に、モータ、インバータ、及びバッテリを備えている。第一実施形態の回生制動機構Yは、前輪に対して配置されている。つまり、第一実施形態の車両は、前輪に駆動モータが設けられ、前輪に回生制動力が付与される車両である。また、各車輪に対して、車輪速度センサ65が設置されている。アクチュエータ5は、後述するブレーキECU18により車輪速度センサ65の情報に基づき制御され、アンチロックブレーキシステム(ABS)や横滑り防止装置として機能する。
ここで、第一実施形態の制動制御装置1について説明する。制動制御装置1は、電気モータ11と、ポンプ12と、還流路13と、第1差圧制御弁14と、第2差圧制御弁15と、第1分離シリンダ16と、第2分離シリンダ17と、ブレーキECU18と、ハイブリッドECU19と、を備えている。電気モータ11は、ポンプ12に接続され、ブレーキECU18の制御により駆動する。電気モータ11には、モータの回転数及び回転角を検出するセンサが設けられており、各検出値(回転数Na及び回転角Mk)はブレーキECU18に送信される。なお、モータの回転数Naは、モータの回転角Mkが時間微分されて演算され得る。ポンプ12は、電気モータ11の駆動力により駆動する。還流路13は、ポンプ12の吐出口と吸入口とを接続する流路であり、本実施形態ではマスタリザーバ23を含んで構成されている。
第1差圧制御弁14は、還流路13に配置された、連通状態と差圧状態(絞り状態)とを制御可能な電磁弁である。第1差圧制御弁14の一方側接続口は、還流路13を介してポンプ12の吐出口に接続されている。第2差圧制御弁15は、還流路13に配置された、連通状態と差圧状態(絞り状態)とを制御可能な電磁弁である。第2差圧制御弁15は、還流路13を介して、一方側接続口が第1差圧制御弁14の他方側接続口に接続され、他方側接続口がマスタリザーバ23を介してポンプ12の吸入口に接続された電磁弁である。
第1分離シリンダ16は、入力口が流路16aを介して還流路13に接続され、出力口が流路16bを介して流路82(第2配管系統52)に接続されたシリンダ部材である。第1分離シリンダ16の入力口は、還流路13のうちポンプ12の吐出口と第1差圧制御弁14との間の部分に接続されている。第1分離シリンダ16は、主に、シリンダ部161と、ピストン部162と、弾性部材163と、を備えている。シリンダ部161は、一方側の底部に入力口が設けられ、他方側の底部に出力口が設けられた有底筒状部材(シリンダ状の部材)である。ピストン部162は、円柱部材であって、シリンダ部161内に摺動可能に配置されている。弾性部材163は、シリンダ部161内に配置された圧縮ばねであって、ピストン部162を入力口側に付勢している。
ピストン部162の端面には凹部が形成されている。ピストン部162は、シリンダ部161内を、入力口側の入力室161aと出力口側の出力室161bとに区画している。入力室161aにブレーキ液が供給されると、ピストン部162は、弾性部材163の付勢力に逆らって所定の可動範囲c内で移動する。第1分離シリンダ16は、任意の液圧のブレーキ液が流路16aを介して入力室161aに供給されると、出力室161bからブレーキ液を当該任意の液圧で(入力と同じ液圧で)出力するように構成されている。機能によれば、入力室161aは分離室ともいえ、出力室161bは加圧室ともいえる。まとめると、第1分離シリンダ16は、シリンダ部161及びピストン部162を含んで構成され、後輪のホイールシリンダ73、74に接続される出力室161b、及びピストン部162に対して出力室161bとは反対側に位置する入力室161aを有している。なお、圧力センサ64は流路16aに接続されている。
第2分離シリンダ17は、入力口が流路17aを介して還流路13に接続され、出力口が流路17bを介して流路81(第1配管系統51)に接続されたシリンダ部材である。第2分離シリンダ17の入力口は、還流路13のうち第1差圧制御弁14と第2差圧制御弁15との間の部分(ポンプ12を介さない部分)に接続されている。第2分離シリンダ17は、第1分離シリンダ16同様、主に、シリンダ部171と、ピストン部172と、弾性部材173と、を備えている。また、シリンダ部171内は、ピストン部172により入力室171aと出力室171bとに区画されている。第2分離シリンダ17は、第1分離シリンダ16同様、入力された液圧と同じ圧力の液圧を出力するように構成されている。第2分離シリンダ17の可動範囲は、第1分離シリンダ16の可動範囲cと同じである。圧力センサ63は流路17aに接続されている。また、シリンダ部161、171の周面には、マスタリザーバ23に接続されるポートが形成されている。第2分離シリンダ17の構成は第1分離シリンダ16と同様であるため、説明は省略する。
ブレーキECU18は、CPUやメモリを備える電子制御ユニットであって、各センサ61〜65の検出値に基づいて、電磁弁41〜43、電気モータ11、差圧制御弁14、15、及びアクチュエータ5を制御する。詳細は後述する。ハイブリッドECU19は、CPUやメモリを備える電子制御ユニットであって、回生制動機構Yを制御する。ハイブリッドECU19は、ブレーキECU18と共働して回生協調制御を実行する。ブレーキECU18とハイブリッドECU19との間では、通信バスを介して、各種情報(例えば、目標減速度の情報や実際に発生している回生制動力の情報等)が送受信される。
ブレーキECU18は、制動制御装置1の各部に対する制御に関して、電気モータ11を制御するモータ制御部181と、第1差圧制御弁14を制御する第1弁制御部182と、第2差圧制御弁15を制御する第2弁制御部183と、を備えている。モータ制御部181は、各種情報に基づいて、電気モータ11の回転数を制御する。第1弁制御部182は、制御電流により、第1差圧制御弁14の状態を連通状態(差圧実質0状態)と差圧状態とで切り替え、差圧状態の場合は発生させる差圧(絞り)を制御する。第1差圧制御弁14が差圧状態に制御されてポンプ12が駆動すると、第1差圧制御弁14のポンプ12の吐出口側の液圧(以下、第1液圧ともいう)が第1差圧制御弁14の第2差圧制御弁15側の液圧(以下、第2液圧ともいう)よりも、指示された差圧に応じて高くなる。
第2弁制御部183は、制御電流により、第2差圧制御弁15の状態を連通状態と差圧状態とで切り替え、差圧状態の場合は発生させる差圧を制御する。第2差圧制御弁15が差圧状態に制御されてポンプ12が駆動すると、第2液圧が第2差圧制御弁15のポンプ12の吸入口側の液圧(以下、第3液圧ともいう)よりも、指示された差圧に応じて高くなる。つまり、第1差圧制御弁14と第2差圧制御弁15を差圧状態にしてポンプ12を駆動することで、比較的高圧の第1液圧と比較的低圧の第2液圧を発生させることができる(第1液圧>第2液圧>第3液圧=大気圧)。
また、第1差圧制御弁14が差圧状態に制御され且つ第2差圧制御弁15が連通状態に制御されている場合、差圧指示値に応じて第1液圧が大気圧よりも高圧となり、第2液圧及び第3液圧がマスタリザーバ23同様に大気圧となる(第1液圧>第2液圧=第3液圧=大気圧)。このように、第2差圧制御弁15は、第1差圧制御弁14とポンプ12(電気モータ11)とで発生させた第1液圧を、減少調整して第2液圧を発生させる装置といえる。また、第1差圧制御弁14は第1液圧を調節する電磁弁といえ、第2差圧制御弁15は第2液圧を調整する電磁弁といえる。第1液圧は「調整液圧」に相当し、第2液圧は「修正液圧」に相当する。また、第3液圧はリザーバ液圧ともいえる。なお、第1差圧制御弁14が連通状態に制御され且つ第2差圧制御弁15が差圧状態に制御されている場合、差圧指示値に応じて第1液圧及び第2液圧が大気圧よりも高圧且つ同じ液圧となり、第3液圧が大気圧となる(第1液圧=第2液圧>第3液圧=大気圧)。
高圧側の液圧である第1液圧は、第1分離シリンダ16及び第2配管系統52を介して、後輪のホイールシリンダ73、74に供給される。低圧側の液圧である第2液圧は、第2分離シリンダ17及び第1配管系統51を介して、前輪のホイールシリンダ71、72に供給される。この第1液圧の供給と第2液圧の供給は同時に行われる。
このように制動制御装置1は、電気モータ11によって発生された液圧を調整して第1液圧(調整液圧)とし、第1液圧を後輪制動液圧として付与する液圧発生ユニット1Aと、第1液圧を減少調整して第2液圧(修正液圧)とし、第2液圧を前輪制動液圧として付与する液圧修正ユニット1Bと、を備えているといえる。つまり、液圧発生ユニット1Aは、電気モータ11と、ポンプ12と、還流路13と、第1差圧制御弁14と、モータ制御部181と、第1弁制御部182と、を備えている。また、液圧修正ユニット1Bは、第2差圧制御弁15と、第2弁制御部183と、を備えている。さらに具体的には、制動制御装置1は、液圧発生ユニット1A及び液圧修正ユニット1Bを備える上流側加圧装置Z1と、下流側加圧装置であって車輪速度センサ65の検出値に基づいてABS制御を実行可能なアクチュエータ5と、を備えている。また、制動制御装置1は、回生協調制御を実行する車両に適用され、上流側加圧装置Z1と、下流側加圧装置であるアクチュエータ5と、を備えている。また、別の記載方法として、制動制御装置1は、主に電気モータ11及び第2差圧制御弁15を備える低圧制御機構と、低圧制御機構に直列的に配置され、第1差圧制御弁14を備える差圧制御機構(高圧制御機構)と、それらを制御する制御部(ブレーキECU18)と、を備えているともいえる。ブレーキECU18は、少なくとも上流側加圧装置Z1を制御する制御部といえる。
ここで、ブレーキECU18とハイブリッドECU19による回生協調制御の流れの一例について、図2を参照して説明する。ブレーキECU18は、まず各センサ61〜64等の検出値、具体的にマスタ圧Pin、ストロークSt、前輪検出値Pfa、後輪検出値Pra、及び回転角Mkを読み込む(S101)。ブレーキECU18は、これらの情報(例えばストロークSt)に基づき、現状が制動中かであるか否かを判定する(S102)。制動中である場合(S102:Yes)、ブレーキECU18は、マスタ圧Pin及びストロークStの少なくとも一方に基づいて、目標減速度Gtを演算する(S103)。そして、ブレーキECU18は、目標減速度Gtが予め設定された回生上限値(回生制動力の上限値)rgよりも大きいか否かを判定する(S104)。
目標減速度Gtが回生上限値rgよりも大きい場合(S104:Yes)、ブレーキECU18は、ハイブリッドECU19に対して、回生制動力の指示値である回生指示値Rgとして回生上限値rgを送信する(S105)。そして、ブレーキECU18は、目標減速度Gtを液圧(液圧次元)に変換して(F(Gt))、要求液圧(目標ホイール圧ともいえる)Ptを算出する(S106)。ここで、関数F(x)は目標減速度を液圧に変換するための予め設定された関数である。また、ブレーキECU18は、回生指示値Rgを液圧に変換して液圧変換値G(Rg)を算出し、前輪への要求液圧である前輪目標値Pftとして要求液圧Ptから液圧変換値G(Rg)を減算した値を設定し、後輪への要求液圧である後輪目標値Prtとして要求液圧Ptを設定する(S107)。ここで、関数G(x)は回生指示値を液圧に変換するための予め設定された関数である。
一方、目標減速度Gtが回生上限値rg以下である場合(S104:No)、ブレーキECU18は、ハイブリッドECU19に対して、回生指示値Rgとして目標減速度Gtを送信する(S108)。そして、ブレーキECU18は、前輪目標値Pft及び後輪目標値Prtを0に設定する(S109)。
ブレーキECU18は、前輪目標値Pft及び後輪目標値Prtに基づいて、電気モータ11のモータ回転数の目標値Ntを演算する(S110)。ブレーキECU18は、回転数における目標値Ntと検出値Naとの偏差に基づき、電気モータ11に対して、回転数フィードバック制御を実行する(S111)。また、ブレーキECU18は、液圧における後輪目標値Prtと後輪検出値Praとの偏差に基づき、第1差圧制御弁14に対して、液圧フィードバック制御を実行する(S112)。また、ブレーキECU18は、液圧における前輪目標値Pftと前輪検出値Pfaとの偏差に基づき、第2差圧制御弁15に対して、液圧フィードバック制御を実行する(S113)。
第一実施形態の制動制御装置1によれば、第1液圧(後輪制動液圧)≧第2液圧(前輪制動液圧)の範囲で任意の特性を設定し得る。一例として、回生制動力が加わる前輪の制動力と、回生制動力が加わらない後輪の制動力との関係を、図3の例に示すような関係にすることができる。つまり、ブレーキECU18は、所定条件が満たされるまで(ここでは目標減速度Gtが回生上限値rgを超えるまで)は、前輪目標値Pft及び後輪目標値Prtを0に設定し、前輪の回生制動力のみで車両を制動する。そして、所定条件が満たされると(目標減速度Gtが回生上限値rgを超えると)、ブレーキECU18は、電気モータ11及び第1差圧制御弁14を制御し、前輪のホイールシリンダ71、72を加圧せずに後輪のホイールシリンダ73、74を目標減速度Gtに応じて加圧し、後輪にのみ液圧制動力を発生させる。つまり、ブレーキECU18は、2つの差圧制御弁14、15のうち第1差圧制御弁14のみを差圧状態に制御する。この状態では、前輪には回生制動力のみが作用し、後輪には液圧制動力のみが作用する。
これにより、後輪の制動力のみが増大し(図3の縦軸の値のみが増加)、前後輪の制動力を理想配分線に近づけることができる。また、図3における縦軸の値のみを増加させて理想配分線に効率的に近づけることができるため、それをしない場合(例えば傾きをもつ場合)に比べて、前輪の回生制動力のみで全制動力とする時間(回生時間)を最大限長くすることができる。回生制動力のみの状態から前後輪の液圧制動力を同時に上昇させる制御の場合、制動力配分を理想配分線に近づけるためには、回生時間の限界よりも早めに液圧制動力を発生させなければならない。後輪の液圧制動力のみを発生させる制御は、例えば、図2のステップS107において、任意の所定条件(例えば後輪検出値が所定値になること等)が満たされるまではPftを0で維持するように設定することでも実現できる。
その後、ブレーキECU18は、前輪のホイールシリンダ71、72に対しても、要求液圧Ptから液圧変換値G(Rg)を減算した値に基づいて加圧制御を実行し、前後輪を別々の液圧(前輪には第2液圧、後輪には第1液圧)で同時に加圧する。つまり、ブレーキECU18は、第1差圧制御弁14が差圧状態である際に、さらに第2差圧制御弁15も差圧状態に制御する。この状態では、前輪には回生制動力と第2液圧による液圧制動力とが作用し、後輪には第1液圧による液圧制動力が作用する。
このように、第一実施形態によれば、電気モータ11を用いた1系統の加圧装置により、前後輪に対して別々の液圧を同時に加圧することができる。つまり、上流側加圧装置Z1と下流側加圧装置5とを備える制動装置において、上流側加圧装置Z1のみで前後輪に別々の液圧制動力を発生させることができる。これにより、ABS制御等の特殊制御が行われない通常ブレーキ時に、上流側の1系統の加圧装置のみで車輪に対する2チャンネル(2ch)制御が可能となり、電磁弁の作動音の発生を抑えつつ(アクチュエータ5を使用せず)、前後輪の制動力の配分を理想配分線に近づけることができる。また、本構成は、アクチュエータ5の耐久性の向上にもつながる。また、本構成によれば、2ch制御のために上流側又は下流側に2つの独立したモータを設ける必要がなく、コスト及び体格の増大が抑制される。
また、例えば、制動制御装置1をハイブリッド車両に適用した場合、上記のように上流側だけで2ch制御(2ch回生)が実行できるため、アクチュエータ5を用いることなく、回生制動力を最大限発揮させることができ、且つ制動力の配分を理想配分線に近づけることができる。また、回生協調制御は、ブレーキ操作に対して常に行われるため、ABS制御等の特殊制御に比較して、実行回数ははるかに多くなり、アクチュエータ5での2ch制御実行には多数の課題が生じる。しかし、第一実施形態によれば、アクチュエータ5を用いることなく上流で2ch制御が可能であるため、アクチュエータ5の作動による作動音発生の抑制、アクチュエータ5の耐久性の向上、及びスムーズな昇圧等が可能となる。つまり、本構成によれば、下流側の作動による課題発生を抑制しつつ、燃費向上と運動性能(車両安定性)向上の両立が可能となる。
また、本構成によれば、差圧制御弁14、15を用いた液圧制御であるため、オンオフ弁での制御とは異なり、スムーズな昇圧と作動音の抑制が可能となる。また、マスタリザーバ23の内部が複数の(ここでは3つの)部屋に仕切られるとともに、分離シリンダ16、17が設けられていることで、第1配管系統51と第2配管系統52のいずれか一方に液漏れが発生したとしても、他方の系統については制動制御装置1によるサーボ制御を継続することができる。例えば、第2配管系統52が液漏れした場合、マスタリザーバ23内の第2マスタ室20bに連通する部屋のブレーキ液は消費される。しかし、マスタリザーバ23内の隔壁と第1分離シリンダ16とによって、第2配管系統52は、第1配管系統51及び制動制御装置1の還流路13と流体的に分離されているため、マスタリザーバ23内の他の部屋のブレーキ液が消費されることが抑制される。分離シリンダ16、17のピストン部162、172の移動が所定の可動範囲cに制限され、液圧発生ユニット1A及び液圧修正ユニット1Bと、ホイールシリンダ71〜74との間でブレーキ液が移動されない。つまり、圧力は伝達されるが、ブレーキ液の移動が発生しない「流体的な分離」によって、一方の配管系統の失陥で失われるブレーキ液の量が限定される。分離シリンダ16、17によって、制動制御装置1の信頼度は、より向上され得る。
また、第一実施形態では、電気モータ11が駆動した場合、差圧制御弁14、15の連通状態であっても若干のオリフィス効果が生じ、入出口間に差圧が発生する。分離シリンダ16、17は、起動圧(ピストン部162、172の始動圧)が当該差圧よりも大きくなるように構成されている。これにより、差圧制御弁14、15への指示差圧が0(すなわち連通状態)である場合、差圧制御弁14、15のオリフィスで発生した液圧によっても分離シリンダ16、17は作動せず、当該液圧がホイールシリンダ71〜74に加わることが防止される。
<第二実施形態>
第二実施形態の制動制御装置10は、第一実施形態と比較して、液圧発生ユニットの構成の点で異なっている。したがって、異なっている部分のみを説明する。第二実施形態の説明において、第一実施形態の説明及び図面を適宜参照できる。
図4に示すように、第二実施形態の液圧発生ユニット10Aは、第一実施形態の液圧発生ユニット1Aの構成に加えて、アキュムレータ91と、電磁弁92と、を備えている。アキュムレータ91は、蓄圧装置(高圧源)であって、還流路13のうちポンプ12の吐出口と電磁弁92との間に接続されている。アキュムレータ91は、ポンプ12の駆動により所定圧(高圧)のブレーキ液を貯留する。電磁弁92は、ポンプ12の吐出口と、流路16aと還流路13との接続部との間に設けられたノーマルクローズ型の電磁弁である。換言すると、電磁弁92は、一方側接続口がポンプ12の吐出口に接続され、他方側接続口が流路16a及び第1差圧制御弁14に接続された常閉弁である。なお、ここでの電磁弁92は、流量制御可能な電磁弁を採用しているが、オンオフ弁(2値制御弁)であっても良い。
第二実施形態によれば、電気モータ11及びポンプ12の駆動によりアキュムレータ91に所定圧が蓄圧された後、電磁弁92が開弁され且つ差圧制御弁14、15が差圧状態に制御されることで、ホイールシリンダ71〜74が加圧される。つまり、ブレーキECU18は、加圧制御において、電磁弁92を閉状態にしたまま電気モータ11を駆動させて、アキュムレータ91を蓄圧し、電磁弁92を開状態にし、第一実施形態同様に第1差圧制御弁14及び第2差圧制御弁15を差圧状態に制御する。ブレーキECU18は、機能として、さらに、電磁弁92の開閉(流量)を制御する弁制御部を備えるといえる。本構成によっても、第一実施形態同様、所定流路間で異なる液圧(差圧)が発生し、後輪のホイールシリンダ73、74に比較的高圧のブレーキ液を供給し、前輪のホイールシリンダ71、72に比較的低圧のブレーキ液を供給することができる。第二実施形態によっても第一実施形態同様の効果が発揮される。部品点数の面では、第一実施形態が有利である反面、加圧応答速度の面では、第2実施形態が有利である。
<第三実施形態>
第三実施形態の制動制御装置100は、第一実施形態と比較して、液圧発生ユニット及び液圧修正ユニットの構成の点で異なっている。したがって、異なっている部分のみを説明する。第三実施形態の説明において、第一及び第二実施形態の説明及び図面を適宜参照できる。
図5に示すように、制動制御装置100は、電気モータ93と、電動シリンダ94と、電磁弁95、96と、カット弁97、98と、これらの装置を制御するブレーキECU18と、ハイブリッドECU19と、を備えている。電気モータ93は、第一実施形態の電気モータ11同様、ブレーキECU18に制御されて駆動し、電動シリンダ94に駆動力を伝達する。電動シリンダ94は、シリンダ及びピストンを備え、電気モータ93の駆動によりピストンが移動し、ピストンの前進によりシリンダ内のブレーキ液を出力口から出力する機構である。電動シリンダ94は、ピストンが初期位置にある際には、流路94aを介してマスタリザーバ23とシリンダ内とを連通させ、ピストンが所定量前進すると当該流路94aを遮断するように構成されている。
電磁弁95は、一方側接続口が電動シリンダ94の出力口及びカット弁97に接続され、他方側接続口が電磁弁96及びカット弁98に接続された、ノーマルオープン型の電磁弁である。電磁弁95には逆止弁が設けられている。流路95aは、電磁弁95の一方側接続口と電動シリンダ94の出力口とを接続する流路である。流路97aは、カット弁97の一方側接続口と流路95aとを接続する流路である。流路96aは、電磁弁95の他方側接続口と電磁弁96の一方側接続口とを接続する流路である。流路96bは、電磁弁96の他方側接続口と流路94aとを接続する流路である。電磁弁96は、ノーマルクローズ型の電磁弁である。電磁弁95、96は、流量調整可能な電磁弁である。
カット弁97は、一方側接続口が流路97aを介して流路95aに接続され、他方側接続口が流路97bを介して第2配管系統52に接続された、ノーマルクローズ型の電磁弁である。カット弁98は、一方側接続口が流路98aを介して流路96aに接続され、他方側接続口が流路98bを介して第1配管系統51に接続された、ノーマルクローズ型の電磁弁である。カット弁97、98は、オンオフ弁(2値制御弁)である。流路94a、95a、96a、96bは還流路(還流路13に相当する)を構成している。
後輪側を比較的高圧とし前輪側を比較的低圧として前後輪に対して加圧する場合、ブレーキECU18は、電磁弁95を流量制御状態(連通)とし、電磁弁96を閉状態(適宜開弁して減圧調整)とし、電気モータ93により電動シリンダ94を駆動して液圧を発生させる。そして、ブレーキECU18は、カット弁97、98を開弁して、ホイールシリンダ71〜74にブレーキ液を供給する。前輪側を加圧する場合(前輪側≦後輪側)、例えば電磁弁95を適宜開状態として(流量調整して)、高圧のブレーキ液が前輪側に流れるようにする。減圧制御の場合、ブレーキECU18は、電磁弁96の開弁、及び/又は電気モータ93の駆動制御(回転角又は回転方向)を実行する。このように、第三実施形態によっても、上流側のみで2ch制御が可能となる。
第三実施形態において、液圧発生ユニット100Aは、電気モータ93と、電動シリンダ94と、電磁弁95及び/又は電磁弁96と、ブレーキECU18(一部機能)とを備えるといえる。また、液圧修正ユニット100Bは、電磁弁95、96及びブレーキECU18(一部機能)を備えるといえる。
<第四実施形態>
第四実施形態の制動制御装置は、第一実施形態と比較して、ホイールシリンダ71〜74の接続先及び第1分離シリンダ16の設定の点で異なっている。したがって、異なっている部分のみを説明する。第四実施形態の説明において、第一実施形態の説明及び図面を適宜参照できる。
図6に示すように、第四実施形態では、第一実施形態と異なり、前輪のホイールシリンダ71、72が第2配管系統52を介して第1分離シリンダ(「第1シリンダ装置」に相当する)16に接続され、後輪のホイールシリンダ73、74が第1配管系統51を介して第2分離シリンダ(「第2シリンダ装置」に相当する)17に接続されている。換言すると、第四実施形態では、ホイールシリンダ71〜74について、第一実施形態の構成から前輪と後輪とを入れ替えている。つまり、第1分離シリンダ16から出力される第1液圧は、前輪のホイールシリンダ71、72に供給される。また、第2分離シリンダ17から出力される第2液圧は、後輪のホイールシリンダ73、74に供給される。回生制動機構Yは、第一実施形態同様、前輪に設けられている。
第1分離シリンダ16には、所定のセット荷重が設定されている。上述のとおり、第1分離シリンダ16は、シリンダ部161と、シリンダ部161内を摺動可能なピストン部162と、シリンダ部161内でピストン部162を所定の方向(還流路13側すなわち入力室161a側)に付勢する弾性部材163と、を備えている。また、第2分離シリンダ17は、シリンダ部171と、シリンダ部171内を摺動可能なピストン部172と、シリンダ部171内でピストン部172を所定の方向(還流路13側すなわち入力室171a側)に付勢する弾性部材173と、を備えている。液圧発生ユニット1Aは、第1分離シリンダ16(入力室161a)に第1液圧を付与し、第1分離シリンダ16は、第1液圧によるピストン部162の摺動に応じて、前輪制動液圧を前輪のホイールシリンダ71、72に向けて出力する。また、液圧修正ユニット1Bは、第2分離シリンダ17(入力室171a)に第2液圧を付与し、第2分離シリンダ17は、第2液圧のよるピストン部172の摺動に応じて、後輪制動液圧を後輪のホイールシリンダ73、74に向けて出力する。
第四実施形態では、第1分離シリンダ16におけるピストン部162がシリンダ部161内で摺動するために必要な力が、第2分離シリンダ17におけるピストン部172がシリンダ部171内で摺動するために必要な力よりも大きい。より具体的に、第1分離シリンダ16の弾性部材163のセット荷重(以下「第1セット荷重」という)は、第2分離シリンダ17の弾性部材173のセット荷重(以下「第2セット荷重」という)よりも大きい。第1及び第2セット荷重は、ピストン部162、172の動き出し荷重であって、例えば、弾性部材163、173のばね定数及び/又は初期の圧縮長さにより設定できる。このように、第1分離シリンダ16は、第1セット荷重が第2セット荷重より大きくなるように構成されている。
第四実施形態によれば、第1差圧制御弁14よりもポンプ12側の液圧、すなわちポンプ12に近い側で発生する液圧である第1液圧が、第1分離シリンダ16を介して前輪のホイールシリンダ71、72に供給されるため、前輪制動液圧の昇圧速度を高めることができる。これにより、減速度への寄与度が高い前輪の制動力の応答性を向上させることができ、急制動への応答性も向上させることができる。また、第四実施形態の構成では、前輪の液圧制動力が後輪の液圧制動力よりも高くなりやすいため、後輪の液圧制動力の過剰は抑制され、車両安定性も向上する。
また、第四実施形態によれば、第1差圧制御弁14を閉弁することで、前輪のみに液圧制動力を発生させることができる。また、第四実施形態によれば、第1分離シリンダ16に第1セット荷重が設定されていることで、第1液圧が第1セット荷重未満になるように第1差圧制御弁14及び第2差圧制御弁15を制御することで、第2分離シリンダ17のみを機能させ、後輪のホイールシリンダ73、74のみを加圧することも可能となる。つまり、図7に示すような調圧可能範囲が形成され、制動力を理想配分線に近づけるための調圧制御も可能となる。図7において第1セット荷重は、起動圧Psで表されている。第1セット荷重は、差圧制御弁14が通電されて所定の第1液圧(ここでは起動圧Ps)が発生するまではピストン部162が摺動しないように設定されている。第1セット荷重は、前輪の液圧制動力の応答性と後輪の液圧制動力の調圧可能範囲とのバランスを考慮して設定される。
また、第四実施形態によれば、前輪のホイールシリンダ71、72の昇圧速度を高くすることができため、当該昇圧速度を高めるための第1差圧制御弁14(流路)の大型化が不要となり、小型化及び省電力化が可能となる。また、第四実施形態によれば、後輪のみに液圧制動力を付加することができるため、後輪に回生制動装置Yが設けられた車両への適用も有効となる。つまり、第四実施形態の構成によれば、回生制動装置Yが前後輪のいずれに設置されても有効に機能する。また、第四実施形態によれば、前輪のみに液圧制動力を付加することができるため、トラクションコントロール等の制御もアクチュエータ5を作動させることなく制動制御装置1のみで可能となり、作動音抑制の面で有利となる。
第四実施形態の構成は、第二実施形態の構成にも適用できる。つまり、図4に示すように、第二実施形態におけるホイールシリンダ73、74を前輪に接続し、ホイールシリンダ71、72を後輪に接続し、第1分離シリンダ16に第1セット荷重(第1セット荷重>第2セット荷重)を設定しても良い。これによっても、上記同様の効果が発揮される。
<その他>
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、第一及び第二実施形態の制動制御装置1、10における分離シリンダ16、17は、第三実施形態同様、電磁弁(カット弁)に置き換えられても良い。また、アクチュエータ5はなくても良い。上記実施形態で用いられる各弁のタイプは、上記に以外のものでも良い。また、ブレーキECU18は、2つのECUで構成されていても良い。また、この場合、電気モータ11が二重巻き線などにより両方のECUから制御可能に構成され、第1差圧制御弁14は一方のECUに制御されるように構成され、第2差圧制御弁15は他方のECUに制御されるように構成されていても良い。これにより、いずれか一方のECUが故障した場合でも、正常のECUが電気モータ11と第1差圧制御弁14又は第2差圧制御弁15とを制御でき、少なくとも2輪に対して液圧制動力を発生させることができる。また、例えば二重巻き線を用いて、第1差圧制御弁14が両方のECUで制御可能に構成され、第2差圧制御弁15も両方のECUで制御可能に構成されていても良い。
また、所定条件が満たされた際(例えば車両停車中でブレーキ操作がなされておらずイグニッションがオフされた後など)、例えばブレーキECU18が制御機構の機能チェックを実行するようにしても良い。ブレーキECU18は、例えば、検査として電気モータ11と第1差圧制御弁14のみを作動させ、目標値(差圧指示値)と圧力センサ64の検出値(実圧)とが一致しているか否かを判定する。ブレーキECU18は、一致していれば正常と判定する。そして、第1差圧制御弁14が正常である場合、ブレーキECU18は、電気モータ11と第2差圧制御弁15のみを作動させ、目標値(差圧指示値)と圧力センサ63の検出値(実圧)とが一致しているか否かを判定する。ブレーキECU18は、一致していれば正常と判定し、両方正常である場合に制御機構が正常であると判定する。
また、第一〜第三実施形態において、制動制御装置1、10、100は、前後輪を入れ替えて(ホイールシリンダの接続先を入れ替えて)、比較的高圧である第1液圧を前輪のホイールシリンダに供給し、比較的低圧である第2液圧を後輪のホイールシリンダに供給するように構成されても良い。これは前輪に高い液圧制動力を付与できる構成となるため、後輪に回生制動機構Yが設けられている車両に対して有効である。すなわち、制動制御装置1、10、100は、電気モータ11によって発生された液圧を調整して第1液圧(調整液圧)とし、第1液圧を前輪制動液圧として付与する液圧発生ユニットと、第1液圧を減少調整して第2液圧(修正液圧)とし、第2液圧を後輪制動液圧として付与する液圧修正ユニットと、を備えても良い。まとめると、前後輪の一方であって駆動(回生)モータが設けられた車輪を回生輪とし、前後輪の他方であって駆動(回生)モータが設けられていない車輪を非回生輪とすると、制動制御装置1、10、100は、回生輪に備えられたホイールシリンダのモータ側制動液圧、及び非回生輪に備えられたホイールシリンダの非モータ側制動液圧を調整する制動制御装置であって、電気モータ11によって発生された液圧を調整して第1液圧(調整液圧)とし、第1液圧を非モータ側制動液圧として付与する液圧発生ユニットと、第1液圧を減少調整して第2液圧(修正液圧)とし、第2液圧をモータ側制動液圧として付与する液圧修正ユニットと、を備えるといえる。
また、回生協調制御の観点から本実施形態を記載すると、制動制御装置1、10、100は、目標減速度と実際に生じている回生制動力に基づいて前輪と後輪に対する各目標液圧を設定し、各実際の液圧が対応する目標液圧に一致するように上流側の加圧機構(電気モータや電磁弁等)を制御する装置といえる。したがって、この場合、アクチュエータ5は、専らABS制御及び横滑り防止制御を実行するために設けられているといえる。また、液圧修正ユニット1Bは、液圧発生ユニット1Aと協働して、第1液圧に対して減少調整及び同圧調整を選択的に実行して第2液圧を発生させるともいえる。
また、第一実施形態及び第二実施形態の構成において、第四実施形態同様に、第1分離シリンダ16におけるピストン部162がシリンダ部161内で摺動するために必要な力が、第2分離シリンダ17におけるピストン部172がシリンダ部171内で摺動するために必要な力よりも大きくても良い。例えば、第一実施形態及び第二実施形態において、第1分離シリンダ16に第1セット荷重(第1セット荷重>第2セット荷重)が設定されても良い。つまり、第一実施形態及び第二実施形態は、第四実施形態の前後輪を入れ替えた構成であっても良い。これによれば、第一実施形態及び第二実施形態の構成において、第1セット荷重を考慮した制御(第1液圧<第1セット荷重)により、前輪の液圧制動力のみを増大させることができ、上流側加圧装置Z1による前後制動力の調整可能範囲が大きくなる(図7参照)。このように、第1分離シリンダ16は、ピストン部162の摺動に応じて第1液圧を前輪制動液圧及び後輪制動液圧の一方として付与し、第2分離シリンダ17は、ピストン部172の摺動に応じて第2液圧を前輪制動液圧及び後輪制動液圧の他方として付与する。なお、各分離シリンダ16、17は、圧縮ばね以外の部材でピストン部162、172を付勢するように構成されても良い。
また、第1分離シリンダ16及び第2分離シリンダ17を備える実施形態において、第1分離シリンダ16及び第2分離シリンダ17のうち一方のみを備えるように構成されてもよい。例えば第四実施形態の構成において、第2分離シリンダ17をなくし、第1分離シリンダ16のみを備えるようにしてもよい。
また、ピストン部162がシリンダ部161内で摺動するために必要な力と、ピストン部172がシリンダ部171内で摺動するために必要な力とは、夫々、弾性部材163、173以外によって設定されてもよい。例えば、第1分離シリンダ16は弾性体である第1シール部材を備えてもよい。第1シール部材はシリンダ部161内面に設けられた部材であり、ピストン部162が所定の可動範囲cで移動する場合にピストン部162に接触する部材である。第1シール部材の材料特性や形状によって、ピストン部162がシリンダ部161内で摺動するために必要な力が設定されてもよい。また、第1シール部材と弾性部材163との組み合わせによって、ピストン部162がシリンダ部161内で摺動するために必要な力が設定されてもよい。第1シール部材の数は一つでも、複数でもよい。なお、第2分離シリンダ17も第2シール部材を備えてもよい。第2シール部材は第1シール部材と同じシール部材でも、異なるシール部材でもよい。
制動制御装置1、10は、上述の実施形態で開示された車両用制動装置Zと異なる構成を有する車両用制動装置に組み込まれてもよい。例えば制動制御装置は、電磁弁41、42、43を備えない車両用制動装置に組み込まれてもよい。この場合、例えば車両用制動装置は、シリンダ機構と、ストロークシミュレータ3と、アクチュエータ5とを備える。シリンダ機構は、マスタピストンが摺動可能に内部に設けられたマスタシリンダを備える。マスタシリンダはサーボ室とマスタ室とを有する。サーボ室には、マスタピストンを摺動する為のサーボ圧が供給される。マスタ室はマスタピストンの駆動に応じて液圧をアクチュエータ5に出力する。ストロークシミュレータ3はブレーキ操作量に応じて反力を発生するように構成されている。この場合、制動制御装置1、10は、第1液圧と第2液圧とのうち一方をサーボ室に供給し、他方をアクチュエータ5に供給する。この場合であっても、制動制御装置1、10は第1液圧と第2液圧とを付与できるので、前輪と後輪との夫々に別々の液圧を加圧することができる。なおこの場合、制動制御装置1、10は、第1分離シリンダ16と第2分離シリンダ17との両方を備えてもよいし、一方のみを備えてもよい。制動制御装置1、10が第1分離シリンダ16と第2分離シリンダ17との一方のみを備える場合、分離シリンダはマスタシリンダに接続する流路上に設けられてもよいし、アクチュエータ5に接続する流路上に設けられてもよい。
更にこの場合、制動制御装置1、10は第1分離シリンダ16と第2分離シリンダ17とを備えなくてもよい。例えば、第1液圧を供給する為の流路がサーボ室と接続され、第2液圧を供給する流路がアクチュエータ5に接続されていてもよい。即ち、第1差圧制御弁14よりもポンプ12側の液圧である第1液圧がマスタシリンダに供給され、第1差圧制御弁14と第2差圧制御弁15との間の液圧である第2液圧がアクチュエータ5に供給される。この場合、第1液圧はマスタシリンダのマスタピストンを摺動させる為の力として用いられ、第2液圧はアクチュエータ5に直接流入する。マスタピストンがマスタシリンダ内で摺動する為の力は、マスタピストンを所定位置に付勢する付勢部材のセット荷重によって設定されていてもよい。付勢部材のセット荷重に応じて、マスタピストンの摺動しやすさが設定される。従って、マスタシリンダで調整された第1液圧が前輪のホイールシリンダ71、72に供給される。マスタシリンダが備えるマスタピストンの数は一つでも複数でもよい。この例では、マスタシリンダが「第1シリンダ装置」に相当する。第2液圧による全ての力は、アクチュエータ5を経て後輪のホイールシリンダ73、74に供給される。従ってアクチュエータ5が駆動しない場合、第2液圧の全てを後輪のホイールシリンダ73、74に供給することができる。この形態であっても、制動制御装置1、10は前輪と後輪との夫々に別々の液圧を加圧することができる。なお制動制御装置1、10は回生制動機構Yを備えてもよい。回生制動機構Yは前輪側と後輪側との一方または両方に設けられていてもよい。また、第2液圧を供給する為の流路がマスタシリンダと接続され、第1液圧を供給する為の流路がアクチュエータ5に接続されていてもよい。
また制動制御装置1、10が第1分離シリンダ16と第2分離シリンダ17とを備えない形態において、前輪側ホイールシリンダと後輪側ホイールシリンダとの夫々に設けられている付勢部材のセット荷重が調整されていてもよい。この場合、例えば第1液圧が供給されるホイールシリンダに設けられた付勢部材のセット荷重が、第2液圧が供給されるホイールシリンダに設けられた付勢部材のセット荷重よりも大きく設定されていてもよい。この場合であっても、第1分離シリンダ16と第2分離シリンダ17とを備えた形態と同様の効果が得られる。