JP2019054110A - イオン性化合物キャリア注入材料を用いた有機el素子 - Google Patents

イオン性化合物キャリア注入材料を用いた有機el素子 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、電子注入層やホール注入層に用いるキャリア注入材料を開発することにより、駆動電圧の膜厚依存性が少なく、大気中で安定な有機EL素子を提供することを課題とする。【解決手段】下記式(1)で表されるイオン性化合物キャリア注入材料を含むことを特徴とする有機EL素子。(式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立にアルキル基を表し、R3及びR4はそれぞれ独立にフッ素原子を含むアルキル基を表し、nは1以上の整数を表す。)【選択図】なし

Description

本発明は、有機電子デバイス用のイオン性化合物キャリア注入材料に関する。
有機EL(エレクトロルミネッセンス)は、電流注入により自発光する現象であり、この現象を利用した有機ELデバイス(OLED)は、高視野角、高コントラスト、極薄構造、低電圧駆動、及び高い応答速度などの特長を有することから、次世代型面発光デバイスとして照明やディスプレイへの応用が期待されている。
将来の大面積有機デバイスを可能とする量産性に優れた塗布型有機ELデバイスの実現には、基板上で安定に発光するOLEDが必要である。安定な発光を阻害する要因は、電子注入層やホール注入層を構成するキャリア注入材料が、大気中の酸素や水と反応することによるデバイスの劣化にあると考えられており、酸素や水に強い大気安定なOLEDの開発が求められている。大気安定なOLEDの開発にあたり、殊に陰極上層に用いられる電子注入材料は、アルカリ金属やアルカリ金属塩といった活性の高い材料であるため、大気中で酸化又は潮解することで、電子注入層の機能が失活し、さらには陰極部の酸化劣化も引き起こしてしまう。大気中で安定な電子注入材料としては、例えば、非特許文献1に2−(2−メトキシフェニル)−1,3−ジメチル−1H−ベンゾイミダゾール−3−イウムアイオダイドが報告されているが、電子注入性にまだ改善の余地がある。したがって、大気安定なOLEDの開発には、アルカリ金属などの活性の高い電子注入材料の代替材料の探索が必要である。
一方、有機EL素子の電子注入層は、1〜2nm程度の極薄膜でないと機能しない、といった問題点も抱えている。例えば、非特許文献2では、電子輸送機能を有するピリジン含有ポリマーに、標準の電子注入材料である8−ヒドロキシキノリノラートリチウム(Liq)を混合してなる電子注入層が報告され、該電子注入層を有するデバイスでは、駆動電圧の膜厚依存性が抑制されることが報告されているが、それでも膜厚が2nmから8nmと厚くなると2倍以上の高電圧化が生じており、電子注入層の機能も充分とはいえない。他にも、ポリイオン液体であるポリビニルピリジニウムヨージド塩を電子注入材料として用いた有機EL素子の例が非特許文献3に報告されている。この電子注入層は5nmの厚膜にしても低電圧であったが、10nmでは高電圧となってしまう。
Bin et al., ACS Appl. Mater. Interfaces 7, 6444 (2015). Chiba et al., Adv. Funct. Mater. 24, 6038 (2014). Ohisa et al., J. Mater. Chem. C 4, 6713 (2016).
本発明は、電子注入層やホール注入層に用いるキャリア注入材料を開発することにより、駆動電圧の膜厚依存性が少なく、大気中で安定な有機EL素子を提供することを課題とする。
本発明は以下の事項からなる。
本発明の有機EL素子は、下記式(1)で表されるイオン性化合物キャリア注入材料を含むことを特徴とする。
(式(1)中、R1及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表し、R3及びR4はそれぞれ独立にフッ素原子を含むアルキル基を表し、nは1以上の整数を表す。)
前記イオン性化合物キャリア注入材料は、陰極に隣接して配置されていることが好ましい。
前記イオン性化合物キャリア注入材料は、陽極に隣接して配置されていることが好ましい。
前記イオン性化合物キャリア注入材料は、陽極及び陰極の間に配置され、かつ、該陽極及び陰極の両方に隣接して配置されていることが好ましい。
本発明のキャリア注入材料を用いれば、駆動電圧の膜厚依存性が少なく、大気中で安定な有機EL素子を提供することができる。
Poly(DDA)TFSIを電子注入層に用いたとき、陰極側の界面にpoly(DDA)カチオンが存在し、ホール輸送層側の界面にTFSIアニオンが存在すると考察される。このことから、電子注入層にTFSIと相互作用(双極子)を形成する化合物を挿入すれば、陰極−Poly(DDA)の仕事関数のシフトと、TFSI−化合物の仕事関数のシフトという複数の仕事関数を変えることができると考えられ、有機EL素子としての機能が向上することが期待できる。
図1はPoly(DDA)TFSI(薄い線)及びPoly(DDA)Cl(濃い線)の1H−NMRスペクトルのチャートである。図1から、Poly(DDA)Clのアニオン交換反応が起きているのがわかる。 図2はPoly(DDA)PFSI(薄い線)及びPoly(DDA)Cl(濃い線)の1H−NMRスペクトルのチャートである。図2から、Poly(DDA)Clのアニオン交換反応が起きているのがわかる。 図3はPoly(DDA)Cl、Poly(DDA)TFSI、及びPoly(DDA)PFSIのそれぞれの薄膜に水を滴下した時の接触角を示す写真である。 図4はPoly(DDA)Cl、Poly(DDA)TFSI、及びPoly(DDA)PFSIの屈折率を示すグラフである。 図5は電子注入層(層厚:0nm、5nm、10nm、20nm、30nm、50nm)にPoly(DDA)TFSIを用いた有機EL素子特性を表す図である。図5(a)は素子構成、図5(b)は電流密度−電圧特性、図5(c)は輝度−電圧特性、図5(d)は外部量子効率−電流密度特性を表す。
図6はホール注入層(層厚:0nm、5nm、10nm、20nm、30nm、50nm)にPoly(DDA)TFSIを用いた有機EL素子特性を表す図である。図6(a)は素子構成、図6(b)は電流密度−電圧特性、図6(c)は輝度−電圧特性、図6(d)は外部量子効率−電流密度特性を表す。 図7は電子注入層(層厚:0nm、5nm、10nm、20nm)にPoly(DDA)PFSIを用いた有機EL素子特性を表す図である。図7(a)は素子構成、図7(b)は電流密度−電圧特性、図7(c)は輝度−電圧特性、図7(d)は外部量子効率−電流密度特性を表す。 図8は電子注入層(層厚:10nm)にPoly(DDA)X(X=Cl、TFSI又はPFSI)を用いた有機EL素子特性を表す図である。図8(a)は素子構成、図8(b)は電流密度−電圧特性、図8(c)は輝度−電圧特性、図8(d)は外部量子効率−電流密度特性を表す。 図9は実施例5の有機EL素子の特性を示すグラフである。図9(a)は電流2mAでのELスペクトル、図9(b)は外部量子効率−電流密度特性、図9(c)は電力効率−電流密度特性、図9(d)は電流効率−電流密度特性、図9(e)は電流密度−電圧特性を表す。 図10は、電子注入層にLiqを用いた有機EL素子、及び、電子注入層にPoly(DDA)TFSIを用いた有機EL素子の大気安定性試験の結果であって、0時間、1時間、及び24時間置いた後の発光画像の様子を示す写真である。
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明の有機EL素子は、下記式(1)で表されるイオン性化合物キャリア注入材料を含むことを特徴とする。
式(1)中、R1及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、及びヘキシル基等が挙げられる。これらのうち、メチル基、及びエチル基等が好ましく、メチル基がより好ましい。
3及びR4はそれぞれ独立にフッ素原子を含むアルキル基を表す。フッ素原子を含むアルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、及びヘプタフルオロプロピル基等が挙げられる。フッ素原子を含むアルキル基はパーフルオロアルキル基が好ましく、具体的には、トリフルオロメチル基、及びペンタフルオロエチル基がより好ましく、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
なお、これらのアルキル基は、本発明の効果を損ねない範囲内で、窒素や酸素などのヘテロ原子を1つ以上含んでもよい。
nは1以上、具体的には1〜1万の整数を表す。
本発明のイオン性化合物キャリア注入材料(以下「ポリイオン液体」ともいう。)は、上記式(1)に示すように、1,1−ジアルキルピロリジニウム基を含む陽イオン(poly(DDA)+)とビス(フルオロアルカンスルホニル)アミン陰イオン(TFSI-)とからなる高分子化合物である。
ここで、ポリイオン液体とは、常温で液体の塩であり、不揮発性、難燃性、及び高イオン導電性などの特徴を有する。また、対アニオンを変えることで様々な物性を付与できると考えられる。ポリイオン液体は、一般的なキャリア注入材料とは異なり、高い電荷密度を有することから大きい双極子が形成され、高いキャリアの注入特性が期待できる。また、対アニオンの交換による疎水性化などにより、大気下での安定性の付与が可能である。このことから、ポリイオン液体はアルカリ金属に代替するキャリア注入材料として有望である。なお、キャリア注入材料とは、有機EL素子を構成する電子注入層やホール注入層に用いる電子注入材料やホール注入材料をいう。
上記式(1)で表されるポリイオン液体は、具体的には、1,1−ジメチルピロリジニウム基を含む陽イオン(poly(DDA)+)とビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミン陰イオン(TFSI-)とからなる高分子化合物である。上記ポリイオン液体は、陽イオンと陰イオンとの組み合わせにより、様々な物理的及び化学的特性を求めることができるが、殊に有機溶媒に対する溶解性が高いか、又は該ポリイオン液体を有機溶媒に安定的に分散できるものが好ましい。
上記式(1)で表されるポリイオン液体は、下記構造式で表されるPoly(DDA)TFSI又はPoly(DDA)PFSIが特に好ましい。
上記ポリイオン液体は、先に単分子型化合物を合成した後、これを通常のラジカル反応させることにより、高分子形態の化合物を合成してもよいし、或いは、高分子で合成した化合物を使用してもよい。
上記ポリイオン液体は、種々の公知の方法により製造することができる。例えば、Poly(DDA)TFSIは、以下のようなアニオン交換反応を用いて合成される。
すなわち、Poly(DDA)Cl水溶液と、LiTFSI(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム)水溶液をそれぞれ調製した後、これらをナスフラスコに入れて5分間攪拌し、吸引濾過により、白色固体のポリマーを回収した後、洗浄し、減圧乾燥することにより、収率80%でPoly(DDA)TFSIを得る。
ただし、本発明のポリイオン液体は、上記方法に限られることなく、公知の種々の方法を組み合わせて製造することができる。
次に、前記ポリイオン液体で電子注入層やホール注入層を形成した有機EL素子について説明する。
本発明の有機EL素子は、支持基板上に、少なくとも陽極、発光層、キャリア注入層、及び陰極がこの順に積層されて構成される。キャリア注入層は、ホール注入層及び電子注入層から選ばれる一種以上の層をいう。発光層及びキャリア注入層に加えて、必要に応じて所定の層が設けられる。図5〜8は、支持基板、陽極、ホール注入層、発光層、電子注入層及び陰極がこの順に積層される有機EL素子の例を示している。
有機EL素子は、各構成要素を順次積層することによって形成される。本発明では、キャリア注入層は上記ポリイオン液体を塗布成膜することによって形成される。また、陰極は、陰極材料を含むインクを塗布成膜するか、又は陰極となる導電性薄膜を転写することによって形成される。
有機EL素子は、例えば、塗布成膜によって各層を形成する。すなわち、まず表面に予め陽極が形成された支持基板を用意し、該支持基板上にホール注入材料を含むインクを塗布成膜し、ホール注入層を形成する。次に、発光層となる材料を含むインクをホール注入層上に塗布成膜し、発光層を形成した後、電子注入材料を含むインクを発光層上に塗布成膜し、電子注入層を形成する。陰極材料を含むインクを電子注入層上に塗布成膜して陰極を形成し、有機EL素子を形成する。
なお、陽極は、溶液塗布法の他に、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、及びメッキ法等によって形成してもよい。陰極は、塗布成膜法に代えて、いわゆるラミネート法によって形成してもよい。
上記した有機EL素子の製造工程は、大気中で行うことができ、例えば、クリーンルームにおいて行うことができる。なお、必要に応じて、不活性ガス雰囲気下において上記製造工程を行ってもよい。
また、塗布成膜には、例えば、バーコート法、キャピラリーコート法、スリットコート法、インクジェット法、スプレーコート法、ノズルコート法、及び印刷法等が用いられる。各層の形成には、すべて同じ塗布法を用いてもよいし、インクの種類に応じて適宜最適な塗布法を個別に用いてもよい。
本発明の有機EL素子は、枚葉方式によって各層を形成する以外に、例えば、ロール・ツー・ロール法によって形成してもよい。
次に、有機EL素子の層構成及び各層の構成材料について説明する。
上記のとおり、有機EL素子は、陽極及び陰極からなる一対の電極と、該電極間に設けられる複数の有機層とを含んで構成され、該複数の有機層として少なくとも一層の発光層とキャリア注入層を有する。なお、有機EL素子は、本発明の効果を損なわない範囲内で有機物と無機物とを含む層、及び無機物等を含んでいてもよい。有機層を構成する有機物は、低分子化合物でも高分子化合物でもよく、また低分子化合物と高分子化合物との混合物でもよいが、高分子化合物を含むことが好ましい。
以下に本発明の有機EL素子の層構成の例を示す。
(i)支持基板/陽極/発光層/電子注入層/陰極
(ii)支持基板/陽極/ホール注入層/発光層/電子注入層/陰極
(iii)支持基板/陽極/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/電子注入層/陰極
(iv)支持基板/陽極/ホール輸送層/発光層/電子注入層/陰極
陰極と発光層との間に設けられる層としては、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層等が挙げられる。陰極と発光層との間に電子注入層と電子輸送層との両方を設ける場合、陰極に近い層が電子注入層であり、発光層に近い層が電子輸送層である。陽極と発光層との間に設けられる層としては、ホール注入層、ホール輸送層、電子ブロック層等が挙げられる。陽極と発光層との間にホール注入層とホール輸送層との両方を設ける場合、陽極に近い層がホール注入層であり、発光層に近い層がホール輸送層である。
<支持基板>
支持基板には、ボトムエミッション型の有機EL素子の場合、光透過性を示すものが用いられ、トップエミッション型の有機EL素子の場合、光透過性又は不透光性のものが用いられる。
支持基板には、具体的には、ガラス板、金属板、プラスチック、高分子フィルム、及びシリコン板、並びにこれらを積層したものなどが用いられる。
<陽極>
ボトムエミッション型の有機EL素子の場合、陽極には光透過性を示す電極が用いられ、例えば、電気伝導度の高い金属酸化物、金属硫化物及び金属等の薄膜が挙げられ、具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、金、白金、銀、及び銅等からなる薄膜が用いられる。また、ポリアニリン若しくはその誘導体、又はポリチオフェン若しくはその誘導体等の有機の透明導電膜を陽極として用いてもよい。
トップエミッション型の有機EL素子の場合、陽極には、光を反射する材料を用いてもよく、このような材料としては、仕事関数3.0eV以上の金属、金属酸化物、金属硫化物が好ましい。
陽極の膜厚は、通常20nm〜1μmであり、好ましくは50nm〜500nmである。
<ホール注入層>
ホール注入材料としては、本発明のポリイオン液体の他に、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム及び酸化アルミニウム等の酸化物、並びにフェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、アモルファスカーボン、ポリアニリン、及びポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT:PSS)等のポリチオフェン誘導体等が挙げられる。
ホール注入層は、例えば、ホール注入材料を含む溶液からの成膜が挙げられる。このときの溶媒には、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート、及び水等が挙げられる。
ホール注入層の膜厚は、通常1nm〜1μmであり、好ましくは5nm〜200nmである。
なお、塗布型の有機EL素子の場合、寿命の向上の観点から、ホール注入層と発光層との間に、インターレイヤー材料として、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−アルト−N−(4−ブチルフェニル)ジフェニルアミン)(TFB)等が用いられる。
<発光層>
発光層は、通常、蛍光やりん光を発光する有機物、又は該有機物とドーパントとから構成される。なお、有機物は、低分子化合物でも高分子化合物でもよいが、標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が103〜108程度の高分子化合物を含むことが好ましい。
発光材料には、種々のものが用いられる。青色に発光する材料には、例えば、ジスチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ポリ[(9,9−ジ−n−オクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−アルト−(ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,8−ジイル)](F8BT)等のチアジアゾール誘導体、及びそれらの重合体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、並びにポリフルオレン誘導体が挙げられる。緑色に発光する材料には、例えば、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、及びそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、並びにポリフルオレン誘導体が挙げられる。赤色に発光する材料には、例えば、クマリン誘導体、チオフェン環化合物、及びそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、並びにポリフルオレン誘導体が挙げられる。
<電子注入層>
電子注入層はイオン性ポリマーを含んで構成される。電子注入層を構成するイオン性ポリマーとしては、本発明のポリイオン液体が好適に用いられる。
電子注入材料として、上記ポリイオン液体以外に、炭酸セシウム(Cs2CO3);8−キノリノラトナトリウム(Naq)、8−ヒドロキシキノリノラートリチウム(Liq)、リチウム2−(2−ピリジル)フェノラート(Lipp)、及びリチウム2−(2’,2’’−ビピリジン−6’−イル)フェノラート(Libpp)等のリチウムフェノラート塩等のアルカリ金属塩;並びに酸化亜鉛(ZnO)が挙げられる。これらのうち、Liqは大気中で安定であり、大気下に曝露できないCs2CO3よりも低電圧化及び高効率化できることから、塗布型電子注入材料として有用である。また、これらの材料は、通常、有機ポリマーバインダーに添加して用いられる。
本発明のポリイオン液体は、大気中で安定に存在し、かつ、電荷の注入性や輸送性に優れるため、高輝度で発光する素子が得られる。
ポリイオン液体を形成する方法としては、例えば、イオン性ポリマーを含有する溶液を用いて成膜する方法が挙げられる。
電子注入層の膜厚は、駆動電圧と発光効率とが適度な値となり、かつ、ピンホールが発生しない厚さとすればよく、通常1nm〜1μm、好ましくは2nm〜200nmであり、発光層を保護する観点から、5nm〜1μmがより好ましい。
<陰極>
陰極には、一般的にAlの金属電極が用いられる。その他、例えば、PEDOT:PSS等の導電性樹脂からなる薄膜、並びに樹脂及び導電性フィラーからなる薄膜等が用いられる。
樹脂及び導電性フィラーからなる薄膜の場合、樹脂には導電性樹脂が使用でき、導電性フィラーには、金属微粒子や導電性ワイヤー等を使用できる。導電性フィラーには、Au、Ag、Al、Cu、及びC等が使用できる。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例により制限されるものではない。
〔合成例〕イオン性化合物キャリア注入材料の合成
下記合成例1及び2に示すように、Poly(DDA)TFSI及びPoly(DDA)PFSIを合成した。
なお、使用したPoly(DDA)Cl aq.は、平均Mw.400,000〜500,000の20wt%水溶液であり、式(1)において、R1及びR2がメチル基であり、対アニオンが塩化物イオンである化合物に該当する。
[合成例1]Poly(DDA)TFSIの合成
Poly(DDA)Cl aq.(10ml;12.7mmol)をH2O(40ml)で希釈した。また、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI)(4.26g;14.85mmol)をHO(10ml)に溶かし、溶液を調製した。これらの2つの溶液を100mlのナスフラスコに入れ、攪拌した。5分後、反応を停止し、吸引濾過により析出した白色固体のポリマーを回収した。HO(300ml)で洗浄後、60℃で減圧乾燥を行った。収量は4.12g(モノマー単位で10.1mmol:収率80%)であった。
1H−NMRによる帰属>
Poly(DDA)Clの1H−NMRスペクトル(メタノール−d3(重溶媒)、5mg/0.7ml)と、Poly(DDA)TFSIの1H−NMRスペクトル(アセトニトリル−d3(重溶媒)、5mg/0.7ml)をそれぞれ測定し、チャートを重ね合わせた。
結果を図1に示す。図1中、濃い線はPoly(DDA)Clのスペクトルを表し、薄い線はPoly(DDA)TFSIのスペクトルを表す。
化学シフト(δ値)4.63はPoly(DDA)Cl由来のピークであると考えられるが、Poly(DDA)TFSIのデータにおいてδ=4.63付近にピークが見られないことから、アニオン交換反応が行われたことがわかる。
[合成例2]Poly(DDA)PFSIの合成
Poly(DDA)Cl aq.(0.5ml:0.620mmol)をH2O(2ml)で希釈した。また、LiPFSI(288mg:0.744mmol)をH2O(7ml)に溶かし、溶液を調製した。これらの2つの溶液を20mlのナスフラスコに入れ、攪拌した。5分後、反応を停止し、吸引濾過にて析出した白色固体のポリマーを回収した。H2O(300ml)にて洗浄後、減圧乾燥を行った。収量は259mg(モノマー単位で0.484mmol:収率78%)
1H−NMRによる帰属>
Poly(DDA)Clの1H−NMRスペクトル(メタノール−d3(重溶媒)、5mg/0.7ml)と、Poly(DDA)PFSIの1H−NMRスペクトル(アセトニトリル−d3(重溶媒)、5mg/0.7ml)をそれぞれ測定し、チャートを重ね合わせた。
結果を図2に示す。図2中、濃い線はPoly(DDA)Clのスペクトルを表し、薄い線はPoly(DDA)PFSIのスペクトルを表す。
化学シフト(δ値)4.63はPoly(DDA)Cl由来のピークであると考えられるが、Poly(DDA)PFSIのデータにおいてδ=4.63付近にピークが見られないことから、アニオン交換反応が行われたことがわかる。
〔試験例〕
[試験例1]接触角
Poly(DDA)Cl並びに合成例1及び2で得られたポリマーをそれぞれ石英基板上に成膜し、デジタルカメラ撮影により、ポリマー膜上に水を滴下した時の接触角を測定した。
結果を図3に示す。Poly(DDA)Clでは19.9°と親水性を示したが、Poly(DDA)TFSI及びPoly(DDA)PFSI上では80°以上と疎水性を示した。
[試験例2]屈折率
シリコン基板上に、Poly(DDA)Cl並びに合成例1及び2で得られた各ポリマーを成膜し、分光エリプソ測定により屈折率を測定した。
結果を図4に示す。Poly(DDA)TFSI及びPoly(DDA)PFSIともに1.44〜1.47の屈折率を示した。
[試験例3]電極の仕事関数
紫外光電子分光法(UPS)により、ITO電極及びAl電極の仕事関数を決定した。次にITO上及びAl上に各ポリマーを塗布し、UPSを測定し、仕事関数を決定した。
結果を表1に示す。
Poly(DDA)TFSIはITOの仕事関数を深くし、Alの仕事関数を浅くした。この結果はPoly(DDA)TFSIを陽極側又は陰極側に配置することで、正孔又は電子が注入しやすくなることを示している。一方、Poly(DDA)ClはAlの仕事関数も、ITOの仕事関数も浅くした。Poly(DDA)Clは陰極側でのみ使用ができる。Poly(DDA)PFSIはITO及びAlともに、ほとんど仕事関数のシフトが見られなかった。
[実施例1]
Poly(DDA)TFSIを電子注入層(膜厚x=0nm、5nm、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm)として使用した有機EL素子を作製し、評価した。結果を図5に示す。
従来の材料とは異なり、5nmの薄膜よりも10nm以上の厚膜の方が良好な電子注入特性が得られる結果となった。膜厚は30nm以上となると高電圧化が顕著になるため、20nmいかで用いることが好ましい結果となった。EQEも10nm時に最大で7.8%(配光分布はランバーシアン仮定)と蛍光材料としては非常に高い効率を示した。発光の配光分布を評価したところ、ランバーシアンファクターは1.15であった。配光補正したEQEは9.0%と極めて高いEQEを示した。
[実施例2]
Poly(DDA)TFSIを正孔注入層(膜厚x=0nm、5nm、10nm)として使用した有機EL素子を作製し、評価した。結果を図6に示す。
膜厚が5nm、10nmの時に正孔注入層なしのものよりも低電圧となった。また、10nmのときに外部量子効率で4.5%と高い値を示した。
なお、正孔注入層の膜厚を20nm、30nm、40nm、50nmとした場合、発光は得られなかった。
[実施例3]
Poly(DDA)PFSIを電子注入層(膜厚x=0nm、5nm、10nm、20nm)として使用した有機EL素子を作製し、評価した。結果を図7に示す。
5nmのときに良好な電子注入特性を示した。EQEは4.8%を達成した。
[実施例4]、[比較例1]
Poly(DDA)X(X=Cl-、TFSI-、PFSI-)(10nm)を電子注入層として用いた有機EL素子を作製し、評価した。結果を図8に示す。
比較例である市販のClアニオンのものよりも、実施例であるTFSIアニオンのものの方が低電圧であり、かつ、高い外部量子効率を示した。
[実施例5]
Poly(DDA)TFSIを正孔注入層及び電子注入層として使用した有機EL素子を作製し、評価した。
素子構成は下記のとおりである。
ITO(130nm)/Poly(DDA)TFSI(10nm)/TFB(20nm)/F8BT(10nm、40nm、60nm、又は80nm)/Poly(DDA)TFSI(10nm)/Al(100nm)
結果を図9に示す。F8BTの膜厚が60nmの素子で最大のEQEが5.1%程度と高い値を示した。
[実施例6]
下記の素子構成を有する有機EL素子の大気安定性試験を行った。
ITO(130nm)/PEDOT:PSS(30nm)/TFB(20nm)/F8BT(80nm)/Poly(DDA)TFSI(10nm)又はLiq(1nm)/Al(100nm)
Alより下層までは塗布で成膜した後、Alを蒸着し、すぐに封止したもの、及び、大気下(25℃、相対湿度30%)に1時間又は24時間おいた後に封止したものを用意した。
発光画像の様子を図10に示す。電子注入材料にLiqを用いた素子では、大気放置24時間で顕著な発光面のシュリンクとダークスポットの発生が見られたが、Poly(DDA)TFSIを使用した素子では、発光画像の変化は見られなかった。このことは、Poly(DDA)TFSIが非常に大気安定性に優れた電子注入材料であることを示している。

Claims (4)

  1. 下記式(1)で表されるイオン性化合物キャリア注入材料を含むことを特徴とする有機EL素子。
    (式(1)中、R1及びRはそれぞれ独立にアルキル基を表し、R3及びR4はそれぞれ独立にフッ素原子を含むアルキル基を表し、nは1以上の整数を表す。)
  2. 前記イオン性化合物キャリア注入材料が陰極に隣接して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
  3. 前記イオン性化合物キャリア注入材料が陽極に隣接して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
  4. 前記イオン性化合物キャリア注入材料が陽極及び陰極の間に配置され、かつ、該陽極及び陰極の両方に隣接して配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機EL素子。
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