JP2019052931A - 時計用部品、時計用ムーブメントおよび時計 - Google Patents

時計用部品、時計用ムーブメントおよび時計 Download PDF

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Abstract

【課題】シリコン製の基体のチッピングを抑制でき、重量増加も抑制できる時計用部品を提供すること。【解決手段】ガンギ歯車部(時計用部品の一例)は、軸部材が挿通される挿通部を有するシリコン製の基体と、基体の表面のうち、少なくとも軸部材と当接する当接部に形成された被膜と、を有し、被膜は、フッ素原子を有する金属アルコキシドを含む。【選択図】図6

Description

本発明は、時計用部品、時計用ムーブメントおよび時計に関する。
機械式時計には、歯車等に代表される数多くの時計用部品が搭載されている。歯車等の時計用部品は、外周に複数の歯部が形成された回転部材の中心に設けられた貫通孔(保持部)に、軸部材が挿入され固定(保持)されてなる。従来、時計用部品は金属材料を機械加工することにより形成されているが、近年では、時計用部品の材料としてシリコンを含む基材が用いられるようになっている。シリコンを基材とする時計用部品は、金属を基材とする部品と比べて軽いことから、時計用部品の慣性力を小さくすることができるので、エネルギーの伝達効率の向上が見込まれる。また、シリコンはフォトリソグラフィーやエッチング技術を用いて形成する形状の自由度が高いため、シリコンを基材とすることで時計用部品の加工精度を向上できるという利点もある。
特許文献1に、シリコンを基材とする回転部材(三番歯車)を有する時計用部品(三番車)が開示されている。シリコンは金属と比べて脆性破壊し易いため、回転部材の貫通孔に軸部材(三番かな)を嵌合させる際に回転部材に加わる応力が大きいと、回転部材が破損する場合がある。そこで、特許文献1に記載の時計用部品では、回転部材と軸部材とが嵌合することで生じる応力を緩和するため、回転部材の貫通孔の内周面にニッケルなどの金属からなる応力緩和層を設け、軸部材の外周面と接触させる構造としている。
特開2012−167808号公報
しかしながら、特許文献1に記載の時計用部品では、金属膜で応力緩和層を構成するため、ある程度の厚さが必要となり、その分、時計用部品の重量も増加する。このため、シリコンで基材を構成しても、時計用部品の慣性力の低減効果が低下する。
また、回転部材の構造を工夫し、軸部材を嵌合させる際に、回転部材において軸部材に当接する部分を変形させることで応力を緩和することも考えられるが、軸部材を挿通したときに、軸部材との当接部に欠けや割れ(以下、これらを「チッピング」と称する)が生じるおそれがあった。
本発明の目的は、シリコン製の基体のチッピングを抑制でき、重量増加も抑制できる時計用部品、時計用ムーブメントおよび時計を提供することにある。
本発明の時計用部品は、軸部材が挿通される挿通部を有するシリコン製の基体と、前記基体の表面のうち、少なくとも前記軸部材と当接する当接部に形成された被膜と、を有し、前記被膜は、フッ素原子を有する金属アルコキシドを含むことを特徴とする。
本発明によれば、被膜がフッ素原子を有する金属アルコキシドを含むことにより、軸部材を挿通させた際に、軸部材との当接部における摩擦を低減することができる。これにより、基体の表面に被膜を有しない場合に比べ、軸部材との当接部におけるチッピング等の破損を抑制することができる。
また、ニッケル等の金属で応力緩和層を形成する場合に比べて、被膜の厚さ寸法も小さくでき、時計用部品を軽量化できて時計用部品の慣性力を低減できる。
本発明の時計用部品において、前記被膜は、前記金属アルコキシドが重合した重合物を含むことが好ましい。
本発明によれば、金属アルコキシドが重合した重合物を含む被膜を用いているので、重合物を含まない場合に比べて被膜の強度が高まり易い。これにより、被膜の剥離が抑制され、チッピングの抑制効果がより発現される。
本発明の時計用部品において、前記金属アルコキシドは、長鎖高分子基を有することが好ましい。
本発明によれば、被膜中で長鎖高分子基が絡み合った状態となり易いため、被膜の密度が高まり易い。これにより、被膜の剥離がより抑制され、チッピングの抑制効果がより発現される。
本発明の時計用部品において、前記長鎖高分子基が、フルオロアルキル基、パーフルオロアルキル基、及びパーフルオロアルキレンエーテル基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の時計用部品において、被膜が長鎖高分子基としてフッ素原子を有しない長鎖高分子基を含む場合に比べ、被膜の表面自由エネルギーを小さくすることができる。これにより、軸部材との当接部における摩擦低減効果がより発現される。その結果、チッピングの抑制効果がより発現される。
本発明の時計用部品において、前記基体の表面に酸化ケイ素層が形成され、前記酸化ケイ素層の表面に前記被膜が形成されていることが好ましい。
本発明によれば、金属アルコキシドに由来する金属が酸素原子を介して酸化ケイ素層と結合し易くなる。これにより、高密度で密着性に優れた被膜が形成され易くなり、その結果、チッピングの抑制効果がより発現される。
本発明の時計用部品において、前記金属アルコキシドがシランカップリング剤であることが好ましい。
本発明によれば、シランカップリング剤に由来するケイ素が酸素原子を介して基材(酸化ケイ素層を有する場合は酸化ケイ素層)と結合し易くなる。これにより、高密度で密着性に優れた被膜が形成され易くなり、その結果、チッピングの抑制効果がより発現される。
本発明の時計用部品は、ガンギ歯車部であることが好ましい。
本発明によれば、ガンギ歯車部に軸部材を挿通させた際に、軸部材との当接部における摩擦を低減することができる。これにより、軸部材との当接部におけるチッピングを抑制することができる。
また、ガンギ歯車部のアンクルの爪と噛み合う歯部にも前記被膜を形成すれば、ガンギ車とアンクルとの摺動部分における摩擦が低減されるため、エネルギー伝達効率を向上させることができる。したがって、本発明のガンギ歯車部を、時計用ムーブメントに搭載することにより、テンプの振り角が向上する。これにより、前記時計用ムーブメントを備える時計を腕に装着して利用している時の時刻精度である携帯精度も向上する。また、エネルギー伝達効率が向上すれば、ゼンマイのトルクを低減できるので、時計用ムーブメントつまり時計を長時間駆動させることができる。
本発明の時計用部品は、前記ガンギ歯車部が、複数の歯部を有するリム部と、前記リム部から前記軸部材に向かう方向に延在する第1保持部と、前記第1保持部と交差する方向に延在する第1部分及び前記第1部分に接続され前記第1部分から前記軸部材に向かう方向に延在する第2部分を有する第2保持部と、を備えることが好ましい。
本発明によれば、ガンギ歯車部に軸部材(例えばガンギカナ部)を挿通させた際に、挿通部に位置する第1保持部および第2保持部の各当接部と、軸部材との間の摩擦を低減することができる。これにより、第1保持部および第2保持部の各当接部におけるチッピングをより抑制することができる。
本発明の時計用ムーブメントは、上記時計用部品と、前記軸部材と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、時計用部品に軸部材を挿通させた際に、時計用部品と軸部材との当接部におけるチッピングを抑制できる時計用ムーブメントが実現される。
また、本発明によれば、時計用部品の他の時計用部品と噛み合う歯部に前記被膜を形成すれば、時計用部品同士の摺動面における摩擦が低減されるため、エネルギー伝達効率が向上した時計用ムーブメントが実現される。
本発明の時計は、上記時計用ムーブメントと、前記時計用ムーブメントで駆動される指針と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、時計用部品に軸部材を挿通させた際に、時計用部品と軸部材との当接部におけるチッピングを抑制できる時計が実現される。
本発明の第1実施形態に係る機械式時計の正面図。 本発明の第1実施形態に係る機械式時計のムーブメントの表側の平面図。 本発明の第1実施形態に係る脱進機の平面図。 本発明の第1実施形態に係るガンギ車を表面側から見た斜視図。 図3のA−A線に沿うガンギ車の断面図。 本発明の第1実施形態に係る時計用部品としてのガンギ歯車部の平面図。 本発明の第1実施形態に係る軸部材の斜視図。 本発明の第1実施形態に係る基体および被膜を示す拡大断面図。 本発明の第2実施形態に係る時計用部品としてのガンギ歯車部の平面図。 実施例および比較例の試験片における摩擦係数を示すグラフ。
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照して説明する。なお、第1実施形態では、本発明の時計の一例として機械式時計1を取り上げる。そして、本発明の時計用部品の一例として、ガンギ歯車部110を例にあげて説明する。以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材について実際とは異なる尺度で示している場合がある。
[機械式時計]
はじめに、第1実施形態に係る時計としての機械式時計1について説明する。
図1は、機械式時計1の正面図である。
機械式時計1は、円筒状の外装ケース2を備え、外装ケース2の内周側に、円盤状の文字板3が配置されている。外装ケース2の二つの開口のうち、表面側の開口は、カバーガラスで塞がれており、裏面側の開口は裏蓋で塞がれている。
また、機械式時計1は、外装ケース2内に収容された時計用ムーブメントとしてのムーブメント10(図2参照)と、時刻情報を表示する時針4A、分針4B、秒針4Cと、ゼンマイによる持続時間を指示するパワーリザーブ針5とを備えている。
各指針(時針4A、分針4B、秒針4C)およびパワーリザーブ針5は、ムーブメント10の指針軸に取り付けられ、ムーブメント10により駆動される。
文字板3には、カレンダー小窓3Aが設けられており、カレンダー小窓3Aから、日車6が視認可能となっている。
外装ケース2の側面には、リューズ7が設けられている。リューズ7は、機械式時計1の中心に向かって押し込まれた通常の位置(0段位置)から2段引くことができる。
リューズ7を0段位置で回転すると、後述するように、ゼンマイを巻き上げることができる。ゼンマイの巻上げに連動して、パワーリザーブ針5が移動する。本実施形態の機械式時計1は、ゼンマイをフルに巻き上げた場合に、約40時間の持続時間を確保できる。
リューズ7を1段位置に引いて回転すると、日車6を移動して日付を合わせることができる。リューズ7を2段位置に引くと秒針4Cが停止し、2段位置でリューズ7を回転すると、時針4A、分針4Bが移動して時刻を合わせることができる。
[ムーブメント]
図2は、機械式時計1のムーブメント10の表側の平面図である。なお、図2における紙面の手前側つまり地板11の裏蓋側を表側といい、奥側つまり地板11のカバーガラス側を裏側という。
ムーブメント10は、地板11と、一番受け12と、テンプ受け13とを備えている。地板11の裏側には、文字板3(図1参照)が配されている。なお、ムーブメント10の表側に組み込まれる輪列を表輪列と称し、ムーブメント10の裏側に組み込まれる輪列を裏輪列と称する。
地板11と一番受け12との間には、ゼンマイが収納された香箱車(一番車)21と、二番車(図示略)と、三番車23と、四番車24と、ガンギ車(五番車)100とが配置されている。また、地板11とテンプ受け13との間には、アンクル140、テンプ27等が配置されている。なお、ガンギ車100およびアンクル140は脱進機80を構成し、テンプ27は調速機70を構成する。
[手巻き機構]
手巻き機構30は、一番受け12に回転自在に軸支された、巻真31と、つづみ車32と、きち車33と、丸穴車40と、第1中間車51と、第2中間車52とを備え、リューズ7の回転操作による回転を、角穴車60に伝達し、角穴車60および香箱真(図示略)を回転させてゼンマイを巻き上げるものである。なお、丸穴車40は、きち車33に噛み合う第1丸穴車41と、第1丸穴車41と一体に回転して第1中間車51に噛み合う第2丸穴車42とで構成されている。
[ガンギ車]
次に、ガンギ車100の構成について、図3〜図8を用いて説明する。図3は、脱進機80の平面図である。図4は、ガンギ車100を表面側(地板11側)から見た斜視図である。図5は、図3のA−A線に沿うガンギ車100の断面図である。図6は、時計用部品としてのガンギ歯車部110の平面図である。図7は、軸部材120の斜視図である。図8は、ガンギ歯車部110を構成する基体110Dおよび被膜110Eを示す拡大断面図である。
以下の説明では、ガンギ歯車部110および軸部材120の軸線O1に沿う長手方向を単に軸方向という。ガンギ歯車部110の表面110Aおよび裏面110Bは、軸線O1(軸部材120の中心を軸方向に沿って通る線)と直交している。ガンギ歯車部110の表面110Aおよび裏面110Bに平行な面内で軸線O1を通る方向を径方向という。ガンギ歯車部110および軸部材120の軸線O1回りに周回する方向を周方向という。
図3に示すように、脱進機80は、ガンギ車100と、アンクル140とを備えている。図4に示すように、ガンギ車100は、時計用部品としてのガンギ歯車部110と、ガンギ歯車部110の挿通部110C(図5参照)に挿通された軸部材120と、軸部材120にガンギ歯車部110を固定する固定リング130と、を備えている。
[ガンギ歯車部]
図6に示すように、ガンギ歯車部110は、中央部に軸部材120が挿通される挿通部110Cを有する。
ガンギ歯車部110は、図8にも示すように、シリコン製の基体110Dと、基体110Dの表面のうち、少なくとも軸部材120と当接する当接部に形成された被膜110Eと、を有する。本実施形態に係るガンギ歯車部110は、シリコン製の基体110Dの表面全体に被膜110Eが形成されている。
基体110Dとは、ガンギ歯車部110を構成する部材であって、被膜110Eが形成されていない状態のガンギ歯車部をいう。
基体110Dおよび被膜110Eの詳細は後述する。
ガンギ歯車部110は、図4,5に示すように、表面110Aおよび裏面110Bが平坦面とされるとともに、全体に亘って均一な厚みとされた板状のものである。
ガンギ歯車部110は、複数の歯部112を有するリム部111と、軸部材120を保持する保持部115と、を有する。リム部111は、ガンギ歯車部110の外縁の環状部分である。歯部112は、リム部111の外周から外側に向けて突設されており、特殊な鉤型状に形成されている。図3に示すように、複数の歯部112の先端に、アンクル140の爪石144A,144Bが接触するようになっている。
保持部115は、リム部111に対して軸部材120側に配置されている。本実施形態では、ガンギ歯車部110は7つの保持部115を有している。保持部115は、環状のリム部111の周方向における7箇所に、360°/7の等ピッチで配置されている。なお、保持部115の数は、3つから7つの範囲でもよいし7つ以上でもよく、特に限定されない。
保持部115は、リム部111から延在する第1保持部113と、第1保持部113から分岐して設けられた第2保持部114と、を有する。第1保持部113、第2保持部114(第1部分114A、第2部分114B)、およびリム部111は、同一の材料(シリコン)で一体に形成されている。
本実施形態では、ガンギ歯車部110の中央部において、保持部115(第1保持部113および第2保持部114)で囲まれた領域は、軸部材120が挿通される挿通部110Cを構成する。換言すれば、保持部115(第1保持部113および第2保持部114)により、ガンギ歯車部110の中央部に、軸部材120を挿通させる挿通部110Cが構成されている。
第1保持部113は、図6に示すように、リム部111から軸部材120に向かう方向に延在し、軸部材120に向かうにしたがって幅寸法が小さくなるように形成されている。第1保持部113の軸部材120側の先端は、軸部材120に当接する当接部113Aとされている。この当接部113Aは、平面円弧状に形成されている。第1保持部113は、当接部113Aが軸部材120の溝125に嵌合することで、軸部材120に対するガンギ歯車部110の回転を抑止する機能を有する。第1保持部113の当接部113Aは、第2保持部114の第2部分114Bの先端よりも軸部材120の中心軸に位置している(図6参照)。
第2保持部114は、第1部分114Aと第2部分114Bとを有している。第2保持部114は、軸部材120をガンギ歯車部110の中心に固定するとともに、軸部材120に対するガンギ歯車部110の傾きや抜けを抑止する機能を有する。
第1部分114Aは、第1保持部113に接続され、第1保持部113から分岐して形成されており、第1保持部113の延在方向と交差する方向に延在する。第2保持部114は、複数の第1部分114Aを有する。複数の第1部分114Aは、互いに略平行に配置されている。第2部分114Bは、複数の第1部分114Aに接続され、軸部材120に向かう方向に延在する。第2部分114Bの幅寸法はほぼ一定であり、軸部材120側の先端は、軸部材120に当接する当接部114Cとされている。当接部114Cは、平面円弧状に形成されている。複数の第1部分114Aは、第2部分114Bに対して、第2部分114Bの延在方向に加えられる応力を緩和する機能を有する。
第2部分114Bは、軸部材120の嵌合面127Bに嵌合している(図5参照)。第2部分114Bの先端(当接部114C)と接する内接円を、内接円114Dとする(図6参照)。第2部分114Bが軸部材120の嵌合面127Bに嵌合していない状態(ガンギ歯車部110の挿通部110Cに軸部材120が挿通されていない状態)、すなわち、第2保持部114に応力が加えられていない状態における内接円114Dの径をD1とする。内接円114Dの径D1を、第2保持部114の内径ともいう。第1保持部113は、内接円114Dよりも内側まで延在している。
ガンギ歯車部110を軸部材120から見ると、第1保持部113と第2部分114Bとはそれぞれ放射状に径方向の外側に向かって延在する。ガンギ歯車部110の表面110Aに平行な面内において、第1保持部113の延在方向と第2部分114Bの延在方向とは、それぞれ径方向に沿った方向であるが、互いに平行ではない。第1部分114Aの延在方向は、ガンギ歯車部110の表面110Aに平行な面内において、第1保持部113の延在方向および第2部分114Bの延在方向と交差する方向である。
第1保持部113と第2部分114Bとの間に梁状に形成された複数の第1部分114Aは、複数の第1部分114Aで構成される面(ガンギ歯車部110の表面110Aおよび裏面110B)内において、その延在方向に撓みにくいが、その延在方向と交差する方向(径方向)には撓みやすい。また、複数の第1部分114Aで構成される面と交差する軸方向には撓みにくい。
複数の第1部分114Aが撓んで第2部分114Bの延在方向の外側に変形すると、第2保持部114の内径、すなわち、第2部分114Bの当接部114Cと接する内接円114D(図6参照)の径が径D1よりも大きくなる。そのため、軸部材120をガンギ歯車部110の挿通部110Cに挿通する際には、軸部材120の外径に対応して複数の第1部分114Aが撓み、軸部材120に対して第2部分114Bの延在方向に変形することにより、容易に第2部分114Bを軸部材120の嵌合面127Bに嵌合させることができる。
また、ガンギ車100に外力が加えられた際には、第1部分114Aは第2部分114Bの延在方向に変形し易いので、ガンギ歯車部110の中心に軸部材120を保持することができる。また、複数の第1部分114Aが撓むことで、ガンギ車100に加えられた外力を緩和できるので、ガンギ歯車部110の破損を抑えることができる。一方、軸方向、すなわち軸部材120がガンギ歯車部110から抜ける方向には変形しにくいので、ガンギ歯車部110と軸部材120とを確実に固定でき、軸部材120に対するガンギ歯車部110の傾きや抜けを抑止することができる。
ガンギ歯車部110の複数の歯部112は、アンクル140に噛合するようになっている。アンクル140は、アンクル体142Dと、軸であるアンクル真142Fと、を備えている。アンクル体142Dは、アンクル腕143A,143Bと、アンクル竿143Cとの3つのアンクルビーム143によってT字状に形成され、アンクル真142Fによって回転可能に構成されている。なお、アンクル真142Fは、その両端が地板11(図2参照)および図示しないアンクル受に対してそれぞれ回転可能に支持されている。
3つのアンクルビーム143のうち、2つのアンクルビーム143(アンクル腕143A,143B)の先端には爪石144A,144Bが設けられ、残り1つのアンクルビーム143(アンクル竿143C)の先端には剣先145が取り付けられている。また、アンクルビーム143(アンクル竿143C)の先端は、平面視略U字状に形成され、その内側の空間がアンクルハコ146とされている。爪石144A,144Bは、四角柱状に形成されたルビーであり、接着材等によりアンクルビーム143に接着固定されている。
このように構成されたアンクル140がアンクル真142Fを中心に回転した際に、爪石144Aまたは爪石144Bが、ガンギ車100の歯部112の先端に接触するようになっている。また、この際、アンクルビーム143(アンクル竿143C)が、図示しないドテピンに接触し、これによってアンクル140は、同方向にそれ以上回転しないようになっている。その結果、ガンギ車100の回転も一時的に停止する。
図3に示すように、軸部材120の軸方向から見た平面視において、軸部材120は、ガンギ歯車部110の中央部に配置されている。図5に示すように、軸部材120は、ガンギ歯車部110の保持部115で囲まれた挿通部110Cにガンギ歯車部110の裏面110B側から挿通され、ガンギ歯車部110の表面110A側から嵌め込まれた固定リング130によって固定されている。
軸部材120は、保持部115と嵌合する嵌合面127Bを有する。ガンギ歯車部110の保持部115(第2保持部114の第2部分114B)は、挿通部110Cで軸部材120の嵌合面127Bに嵌合しており、これにより、軸部材120はガンギ歯車部110の平面中心位置に固定されている。
図4、図5および図7に示すように、軸部材120は、ほぞ部121A,121Bと、ガンギカナ部122と、第1挿入部123と、第2挿入部127と、を有している。
ほぞ部121A,121Bは、軸部材120の軸方向の両端部に配置されている。ほぞ部121A,121Bのうち、ガンギ歯車部110の裏面110B側に位置するほぞ部121Aは、図示しない輪列受に回転可能に支持され、ガンギ歯車部110の表面110A側に位置するほぞ部121Bは地板11に回転可能に支持されている。
ガンギカナ部122は、ガンギ歯車部110の裏面110B側に配置されている。ガンギカナ部122は、上述した四番車24(図2参照)の歯車部に噛合される。ガンギカナ部122が四番車24に噛合されることで、四番車24の回転力が軸部材120に伝達され、ガンギ車100が回転するようになっている。
第1挿入部123は、ほぞ部121A,121Bよりも大径に形成され、第2挿入部127は第1挿入部123よりも大径に形成されている。第1挿入部123および第2挿入部127は、ガンギ歯車部110の挿通部110Cに裏面110B側から挿通されている。
軸部材120は、剛性や耐熱性に優れ切削加工や研削加工などの加工性が高い金属材料で形成されていることが好ましく、中でも炭素鋼で形成されているものがより好ましい。また、軸部材120の材料は、タンタル(Ta)またはタングステン(W)であってもよい。
固定リング130は、開口部を有する環状の部材であり、円形の平面形状を有しており、固定リング130の開口部内に軸部材120が挿通されている。換言すれば、固定リング130は、ほぞ部121B側から軸部材120の第2挿入部127に嵌め込まれている。
固定リング130は、軸部材120の軸方向において、ガンギ歯車部110を間に挟んでガンギカナ部122とは反対側のほぞ部121B側に配置されている。固定リング130の開口部の内径は、軸部材120の第2挿入部127の外径よりも僅かに小さく設計されている。したがって、固定リング130を軸部材120に嵌め込む(すなわち、固定リング130の開口部内に軸部材120を挿通する)ことにより、固定リング130が軸部材120に固定される。これにより、ガンギ歯車部110は、軸部材120と固定リング130とで挟持されて固定される。したがって、固定リング130は、ガンギ歯車部110を軸部材120に固定する固定部材として機能する。
ガンギカナ部122は、複数の歯124を有している。複数の歯124は、軸部材120の軸方向に沿って延在し、径方向の外側に突出するように形成されている。なお、本実施形態では、歯124の軸方向の中間部は、軽量化のために切削されている。複数の歯124のほぞ部121B側は、ガンギ歯車部110の保持部115(第2部分114B)の裏面に接し、ガンギ歯車部110が軸部材120の軸方向に移動しないように固定している。周方向における複数の歯124同士の間には、軸方向に沿って溝125が形成されている。溝125は、ガンギカナ部122から第2挿入部127まで軸方向に沿って延在している(図5参照)。
本実施形態では、ガンギカナ部122は、四番車24に噛み合う7つの歯124を有している。歯124は、ガンギカナ部122の周方向における7箇所に、360°/7の等ピッチで配置されている。溝125は、ガンギカナ部122の周方向における7箇所に360°/7の等ピッチで配置されている。なお、本実施形態では、歯124および溝125の数は7つであるが、これらの数は特に限定されない。
第2挿入部127は、周方向において溝125により分断されている。したがって、第2挿入部127のテーパ面127Aおよび嵌合面127Bは、軸部材120のほぞ部121B側の周方向における7箇所に、360°/7の等ピッチで配置されている。また、テーパ面127Aおよび嵌合面127Bと歯124とは、軸部材120の周方向における同じ位置に設けられている。
図5に示すガンギ車100の断面は、図3のA−A線に沿う断面である。すなわち、図5の左側が軸部材120の第2挿入部127とガンギカナ部122の歯124とを通る断面であり、右側が軸部材120の溝125を通る断面である。
図7に示すように、溝125は、ガンギカナ部122から第2挿入部127に亘って、軸方向に沿って直線状に設けられている。溝125は、径方向においてガンギカナ部122の歯124、テーパ面127Aおよび嵌合面127Bよりも内側に窪むように形成されている(図5参照)。溝125は、第1保持部113の当接部113Aと嵌合することで、軸部材120に対するガンギ歯車部110の回転を抑止する機能を有する。
また、溝125が第2挿入部127からガンギカナ部122に亘って設けられているので、軸部材120をガンギ歯車部110にほぞ部121B側から挿通させる際に、周方向における第1保持部113の位置と溝125の位置とを合わせれば、第1保持部113が溝125に嵌合した状態で、軸部材120を挿通させることができる(図5参照)。
次に、本実施形態に係るガンギ歯車部110の構成について詳細に説明する。
本実施形態に係るガンギ歯車部110は、図8に示すように、基体110D(被膜が形成されていない状態のガンギ歯車部)と、基体110Dの表面全体に形成された被膜110Eと、を有する。なお、図8は、第1保持部113の当接部113Aおよび第2部分114Bの当接部114Cを拡大したものであり、基体110Dに対する被膜110Eの厚さ寸法の比率は、図示し易いように変更しており、実際の比率とは異なる。
(基体)
基体110Dはシリコン製の基体である。
シリコン製とは、主成分(基体全体に対して80質量%以上、好ましくは90質量%以上)がシリコンであることをいう。シリコンの種類は特に限定されず、加工性の観点から適切なものを選択することができる。シリコンとしては、単結晶シリコン、多結晶シリコンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
シリコン製の基体110Dは、例えばフォトリソグラフィー技術やエッチング技術により製造でき、加工精度に優れたものとすることができる。
(被膜)
被膜110Eは、フッ素原子を有する金属アルコキシド(以下、「フッ素含有金属アルコキシド」とも称する)を含む。
フッ素含有金属アルコキシドとは、金属アルコキシドのうち、分子構造内にフッ素原子を有する金属アルコキシドをいう。
(フッ素含有金属アルコキシド)
フッ素含有金属アルコキシドに含まれる金属としては、例えば、Ti、Li、Si、Na、K、Mg、Ca、St、Ba、Al、In、Ge、Bi、Fe、Cu、Y、Zr、Ta等が挙げられる。中でも、フッ素含有金属アルコキシドは、金属として、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、またはジルコニウム(Zr)を含むフッ素含有金属アルコキシドであることが好ましく、ケイ素を含むフッ素含有金属アルコキシドであることがより好ましい。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本実施形態において、被膜110Eに含まれるフッ素含有金属アルコキシドは、長鎖高分子基を有することが好ましい。
これにより、被膜110E中で長鎖高分子基が絡み合った状態となり易いため、被膜110Eの密度が高まり易い。その結果、被膜110Eの剥離がより抑制され、チッピングの抑制効果がより発現される。
ここで、「長鎖」とは、高分子鎖の主鎖を構成する炭素原子の数が3個以上30個以下のものをいう。
被膜110E中では、上記炭素原子の数が異なる長鎖をもつ複数種のフッ素含有金属アルコキシドが混在した状態で存在している。
高分子鎖の主鎖を構成する原子数は、好ましくは5個以上28個以下、より好ましくは7個以上26個以下、さらに好ましくは9個以上24個以下である。
また、長鎖高分子基の分子量は、好ましくは310以上1500以下、より好ましくは410以上1400以下、さらに好ましくは500以上1300以下である。
長鎖高分子基は、フルオロアルキル基、パーフルオロアルキル基、及びパーフルオロアルキレンエーテル基からなる群から選ばれる少なくとも1種(以下、「特定のフッ素含有基」とも称する)であることが好ましい。
パーフルオロアルキレンエーテル基とは、式:−C2n−O−(nは1以上の整数)または式:−(C2m−O)−(mは1以上の整数、pは1以上の整数)で表される基をいう。
長鎖高分子基は、1種以上で構成されていても、2種以上で構成されていてもよい。また、長鎖高分子基は、特定のフッ素含有基とともに、特定のフッ素含有基以外の基(例えば、フッ素原子を有しないアルキル基、フッ素原子を有しないアルキレン基)を含んで構成されていてもよい。
これにより、被膜110Eが、フッ素原子を有しない長鎖高分子基を含む場合に比べ、被膜110Eの表面自由エネルギーを小さくすることができる。その結果、軸部材との当接部における摩擦が低減され、チッピングの抑制効果がより発現される。
なお、被膜110Eは、上記長鎖高分子基を1種単独で含んでも2種以上含んでもよい。
本実施形態において、フッ素含有金属アルコキシドは、フッ素原子を有するシランカップリング剤(以下、「フッ素含有シランカップリング剤」とも称する)であることが好ましい。
これにより、シランカップリング剤に由来するケイ素が酸素原子を介して基材(酸化ケイ素層を有する場合は酸化ケイ素層)と結合し易くなる。これにより、高密度で密着性に優れた被膜110Eが形成され易くなり、その結果、チッピングの抑制効果がより発現される。
フッ素含有シランカップリング剤としては、アルコキシシラン等のフッ素含有有機ケイ素化合物であることが好ましい。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
フッ素含有有機ケイ素化合物としては、例えば、CF(CF17Si(OCH、CF−CHCH−Si(OCH、CF(CF−CHCH−Si(OCH、CF(CF−CHCH−Si(OCH、CF(CF−CHCH−Si(OC、CF(CF−CHCH−Si(OCH、CF(CF11−CHCH−Si(OC、CF(CF−CHCH−Si(CH)(OCH、CF(CF−CHCH−Si(CH)(OCH、CF(CF−CHCH−Si(CH)(OC、CF(CFSi(OCH、CF(CFSi(OCH、CF(CFSi(OCH、CF(CFSi(OCH、CF(CF10Si(OCH、CF(CF12Si(OCH、CF(CF14Si(OCH、CF(CF16Si(OCH、CF(CF18Si(OCH、CF(CFSi(OC、CF(CFSi(OC、CF(CFSi(OCH、CF(CFSi(OCH、CF(CFSi(OC、CF(CFSi(OC、CF(CFSi(OCH、CF(CFSi(OCH、CF(CFSi(OC、CF(CFSi(OC、CF(CFSi(CH)(OCH、CF(CFSi(CH)(OCH、CF(CFSi(C)(OC、およびCF(CFSi(C)(OCなどが挙げられる。
フッ素含有有機ケイ素化合物としては、アミノ基を含有する化合物も好適である。
例えば、C19CONH(CHSi(OC、C19CONH(CH)NH(CH)Si(OC、C19CONH(CHCONH(CH)Si(OC、C17SONH(CHCONH(CH)Si(OC、CO(CF(CF)CFO)−CF(CF)−CONH(CH)Si(OC、およびCO(CF(CF)CFO)m’−CF(CF)−CONH(CH)Si(OCH[ここで、m’は1以上の整数(m’の上限値は好ましくは5以下)]などが挙げられる。
また、フッ素含有有機ケイ素化合物としては、以下のような化合物も好適である。
例えば、Rf'(CHSi(OCH(例えば、CF(CF−CHCH−Si(CH)(OCH、CF(CF−CHCH−Si(CH)(OCHなど)、Rf'CONH(CHSi(OC、Rf'CONH(CHNH(CHSi(OC、Rf'SON(CH)(CHCONH(CHSi(OC、Rf'(CHOCO(CHS(CHSi(OCH、Rf'(CHOCONH(CHSi(OC、Rf'COO−Cy(OH)−(CHSi(OCH、Rf'(CHNH(CHSi(OCH、およびRf'(CHNH(CHNH(CHSi(OCHCHOCH、CFO(CFO)−CHCH−Si(OC、CFO(CO)−CHCH−Si(OCH、CFO(CO)(CFO)−CHCH−Si(OCH、CFO(CO)−CHCH−Si(OCH、CFO(CO)−CHCH−Si(OCH、CFO(CO)−CHCH−Si(CH)(OC、CFO(CO)−CHCH−Si(C)(OCHなどが挙げられる。上述の各式において、Cyはシクロヘキサン残基であり、Rf’は、炭素数4以上16以下のフルオロアルキル基である。
フッ素含有シランカップリング剤は市販品を用いてもよい。例えばフッ素含有シランカップリング剤の市販品としては、TSL8233(GE東芝シリコーン社製)、TSL8257(GE東芝シリコーン社製)、オプツールDSX(商標、ダイキン工業社製)、KY−130(商標、信越化学工業社製)、KP−801(信越化学工業社製)、KY−185(信越化学工業社製)などが挙げられる。
本実施形態において、被膜110Eは、フッ素含有金属アルコキシドが重合した重合物(以下、「フッ素含有金属アルコキシドの重合物」とも称する)を含むことが好ましく、フッ素含有金属アルコキシドの重合物からなることがより好ましい。
重合物とは、フッ素含有金属アルコキシドの重合反応(例えば加水分解を伴う重合反応)により形成されたものであればよい。すなわち、本明細書でいう重合物とは、フッ素含有金属アルコキシドに由来して形成された重合物を含む概念である。例えば、重合物が「フッ素含有ケイ素アルコキシドの重合物」である場合、フッ素含有ケイ素アルコキシドに由来するシロキサン結合を有するものであれば、本明細書でいう重合物に含まれる。
本実施形態において、被膜110Eに含まれるフッ素含有金属アルコキシドがフッ素含有金属アルコキシドの重合物であることにより、被膜110Eの強度が高まり易い。これにより、被膜110Eの剥離が抑制され、チッピングの抑制効果がより発現される。
本実施形態に係る時計用部品において、上記被膜110Eの平均厚さは薄いことが好ましく例えば20nm以下、好ましくは10nm以下である。なお、下限値は、好ましくは1nm以上である。
被膜の平均厚さとは反射率分光膜厚計(大塚電子株式会社製:FE−3000)を用いて測定した値をいい、ガンギ歯車部の表面および裏面の任意の10か所の膜厚を測定し、その平均値を被膜110Eの平均厚さとする。
本実施形態に係る時計用部品は、基体の表面に酸化ケイ素層が形成されていることが好ましい。すなわち、上記基体は、基体の表面に酸化ケイ素層が形成され、前記酸化ケイ素層の表面に前記被膜110Eが形成されていることが好ましい。
これにより、金属アルコキシドに由来する金属が酸素原子を介して酸化ケイ素層と結合し易くなる。その結果、高密度で密着性に優れた被膜110Eが形成され易くなり、チッピングの抑制効果がより発現される。
酸化ケイ素層の厚さは、例えば、ナノオーダーから数ミクロン(例えば3μm)がよく、高密度で密着性に優れた被膜110Eを得る観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは100nm以上、さらに好ましくは1000nm以上である。なお、上限値は、製造適性の観点から、好ましくは3000nm以下、より好ましくは2500nm以下である。
本実施形態に係るガンギ歯車部110において、摩擦係数は、シリコン製の基体のチッピングを抑制する観点から、小さいほど好ましい。具体的に摩擦係数は、好ましくは0.15以下、より好ましくは0.1以下、さらに好ましくは0.05以下である。
本明細書でいう摩擦係数とは、以下の方法で測定した値とする。
まず、ガンギ歯車部と同様の構成の平板状の試験片(5cm×5cm、厚さ0.625mm)を準備する。この試験片の上にAl製のセラミックボール(直径4.7625mm)を荷重10gf(1.02×10−3N)で押し当てた状態で試験片を移動速度0.1mm/sec、移動距離5mmで左右に往復9回動かしたときの抵抗値を測定する。得られた抵抗値の2回目から8回目の平均値から摩擦係数を算出する。なお、摩擦係数は、摩擦摩耗試験機(新東科学社製:HS2000)を用いて測定することができる。
[作用]
本実施形態によれば、ガンギ歯車部110に軸部材120を挿通させた際に、軸部材120との当接部113A、114Cにおける摩擦を低減することができる。これにより、軸部材120との当接部113A、114Cにおけるチッピングを抑制することができる。
また、被膜110Eをフッ素含有金属アルコキシドの重合物を含んで構成したので、ニッケル等の金属で応力緩和層を形成する場合に比べて、被膜110Eの厚さ寸法も小さくでき、ガンギ歯車部110を軽量化できてガンギ車100の慣性力を低減できる。
さらに、ガンギ歯車部110の全面に被膜110Eを形成したので、アンクル140の爪石144A,144Bとの摺接面の摩擦も低減できる。このため、ガンギ歯車部110のエネルギー伝達効率を向上させることができる。
したがって、本実施形態に係るガンギ歯車部110を、ムーブメント10に搭載することにより、テンプ27の振り角が向上し、これにより、機械式時計1の携帯精度を向上できる。また、エネルギー伝達効率が向上すれば、ゼンマイのトルクを低減することができる。その結果、ムーブメント10つまり機械式時計1を長時間駆動させることができる。
以下、本発明の時計用部品の製造方法の一例について説明する。
[時計用部品の製造方法]
本実施形態に係る時計用部品(例えばガンギ歯車部110)の製造方法は、例えば、シリコン製の基体を準備する工程(以下、「準備工程」とも称する)と、基体の表面のうち、少なくとも軸部材と当接する当接部に、被膜形成用組成物を付与する工程(以下、「組成物付与工程」とも称する)と、基体の表面に付与された被膜形成用組成物を乾燥させる工程(以下、「乾燥工程」とも称する)とを有する。
以上の工程を経て、本実施形態に係る時計用部品が得られる。すなわち、シリコン製の基体のチッピングを抑制でき、重量増加も抑制できる時計用部品が得られる。
以下、被膜形成用組成物を、単に「組成物」とも称することがある。
(準備工程)
準備工程は、シリコン製の基体を準備する工程である。準備工程は便宜上の工程である。すなわち、シリコン製の基体(被膜が形成されていない状態の基体)は製造したものであってもよいし、入手したものであってもよい。なお、シリコン製の基体は、金属製の基体に比べ、加工精度に優れ、かつ軽いものとなる。
(組成物付与工程)
組成物付与工程は、基体の表面のうち、少なくとも軸部材と当接する当接部に、被膜形成用組成物を付与する工程である。
組成物は、少なくとも、フッ素含有金属アルコキシドと、溶媒とを含み、これらを混合することにより調製することができる。
なお、フッ素含有金属アルコキシドは前述のフッ素含有金属アルコキシドと同義であり、好ましい範囲も同様である。フッ素含有金属アルコキシドは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
組成物中のフッ素含有金属アルコキシドの含有量は、均質な被膜を得る観点から、組成物の全質量に対し、固形分換算で、好ましくは0.01質量%以上0.50質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上0.20質量%以下、さらに好ましくは0.07質量%以上0.10質量%以下である。
溶媒としては特に限定されないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトニトリル等のニトリル類;酢酸エチル、酢酸n−プロピル等のエステル類;これらの溶媒にフッ素原子を含有させた溶媒(フッ素系溶媒)などが挙げられる。中でも、フッ素含有金属アルコキシドの溶解性を向上させる観点から、フッ素系溶媒が好ましい。
組成物を付与する方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法などの公知の塗布方法が挙げられる。中でも、均質な被膜を得る観点から、浸漬法が好ましい。
組成物の付与回数は、1回でもよいし複数回でもよいが、1回であることが好ましい。
例えば組成物を付与する方法が浸漬法である場合、組成物中に、少なくとも軸部材と当接する当接部を浸漬させる回数は1回であることが好ましく、その1回の浸漬時間は、好ましくは30秒以上である。
組成物中に浸漬した上記当接部を引上げる際の速度(引上げ速度)は、被膜の厚さを調整する観点から、好ましくは2mm/sec以上100mm/sec以下である。
これにより、所望の厚さ(好ましくは10nm以下)の被膜が得られやすくなる。
なお、組成物は、フッ素含有金属アルコキシドおよび溶媒以外のその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、例えば、重合開始剤、触媒などが挙げられる。
(乾燥工程)
乾燥工程は、基体の表面に付与された組成物を乾燥させる工程である。
乾燥方法としては特に限定されないが、例えば、加熱乾燥、減圧乾燥、自然乾燥などが挙げられる。中でも、加熱乾燥が好ましい。
例えば乾燥方法が加熱乾燥である場合、加熱温度は、好ましくは50℃以上200℃以下、より好ましくは70℃以上150℃以下、さらに好ましくは100℃以上120℃以下である。
加熱温度が50℃以上であると、組成物中のフッ素含有金属アルコキシドの重合反応が促進され易い。
加熱温度が200℃以下であると、得られる被膜の剥離が抑制され易い。
したがって、加熱温度が50℃以上200℃以下であると、金属アルコキシドの重合物を含む被膜(好ましくは金属アルコキシドの重合物からなる被膜)が形成され易くなる。
(酸化ケイ素層を形成する工程(SiO層形成工程))
本実施形態に係る時計用部品の製造方法は、組成物付与工程を実施する前に、基体の表面に酸化ケイ素層を形成する工程(以下、「SiO層形成工程」とも称する)を実施することが好ましい。すなわち、本実施形態に係る時計用部品の製造方法は、準備工程と、SiO層形成工程と、組成物付与工程と、乾燥工程とをこの順で有することが好ましい。
これにより、金属アルコキシドに由来する金属が酸素原子を介して酸化ケイ素層と結合し易くなる。その結果、高密度で密着性に優れた被膜が形成され易くなる。
SiO層形成方法としては特に限定されないが、例えば、熱酸化法、CVD法(プラズマCVD法等)、PVD法(スパッタリング法等)、ウェット酸化などが挙げられる。中でも、水蒸気を用いた熱酸化法が好ましい。
SiO層形成方法が水蒸気を用いた熱酸化法である場合、例えば熱酸化炉中に基体を投入し、酸素を含む水蒸気雰囲気下で一定時間保持することにより、基体の表面にSiO層を形成することができる。
この場合の熱酸化処理の温度(つまり熱酸化炉の温度)は、好ましくは800℃以上1300℃以下、より好ましくは900℃以上1200℃以下、さらに好ましくは1000℃以上1100℃以下である。
熱酸化温度を上記範囲とし、時間を適宜調整することにより、所望の厚さのSiO層が形成され易くなる。
(表面処理する工程(表面処理工程))
本実施形態に係る時計用部品の製造方法は、組成物付与工程を実施する前に、基体を表面処理する工程(以下、「表面処理工程」とも称する)を実施することが好ましい。すなわち、本実施形態に係る時計用部品の製造方法は、準備工程と、表面処理工程と、組成物付与工程と、乾燥工程とをこの順で有するか、または、準備工程と、表面処理工程と、SiO層形成工程と、組成物付与工程と、乾燥工程とをこの順で有することが好ましい。
表面処理方法としては特に限定されないが、例えば、プラズマ処理、オゾン処理、紫外線照射処理が挙げられる。これらの表面処理により、基材(酸化ケイ素層を有する場合は酸化ケイ素層)上に、O−H基が形成され易くなり、形成される被膜との密着性をより高めることができる。その結果、基材(酸化ケイ素層を有する場合は酸化ケイ素層)上に、高密度で密着性に優れた被膜がより形成され易くなる。
中でも、表面処理方法としてはプラズマ処理が好ましい。
表面処理方法がプラズマ処理である場合、プラズマ処理は大気圧下で行ってもよいし、減圧下で行ってもよい。プラズマ処理に用いるガスとしては特に限定されず、例えば、酸素、窒素、アルゴン、これらの混合ガスを用いることができる。中でも、酸素を含むガスを用いることが好ましい。プラズマ放電は、直流放電であっても交流放電であってもよい。
プラズマ処理条件は、例えば、プラズマ処理中の圧力が1Pa以上1000Pa以下、電源の周波数が50kHz以上50MHz以下、電力が100W以上1000W以下、処理時間が1分以上30分以下、処理中の基板温度が25℃以上250℃以下であることがよい。
以上の工程を経て、本実施形態に係る時計用部品が得られる。
なお、本実施形態に係る時計用部品の製造方法は、上記以外の工程を有してもよい。
<第2実施形態>
第2実施形態に係る機械式時計について説明する。なお、前述した第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
第2実施形態に係る機械式時計は、時計用部品として、図9に示すガンギ歯車部210を用いたこと以外は第1実施形態に係る機械式時計1の構成と同様である。
図9は、本発明の第2実施形態に係る時計用部品としてのガンギ歯車部210の平面図である。
ガンギ歯車部210は、軸部材が挿通される挿通部210Cを有するシリコン製の基体と、基体の表面のうち、少なくとも軸部材と当接する当接部に形成された被膜(図示略)と、を有する。
ガンギ歯車部210は、一方の面である表面210Aと、一方の面と反対側の面である裏面と、が平坦面とされるとともに、全面に亘って均一な厚みとされた板状のものである。ガンギ歯車部210は、張出部212と、弾性部213と、開口部213Aおよび213Bと、リム部211と、を有している。
張出部212は、ガンギ歯車部210の中央部に配置され、挿通部210Cに向かって内側に湾曲して張り出すように複数形成されている。第2実施形態では、ガンギ歯車部210は、3つの張出部212を有している。
弾性部213は、張出部212とリム部211とを連結する部位であり、スポーク状に複数形成されている。各弾性部213は、隣り合う張出部212の間から、リム部211の内周縁に向かって2つに枝分かれした円弧状の形状で放射状に延在している。開口部213Aは、張出部212と弾性部213とリム部111とで囲まれるように形成された貫通孔である。開口部213Bは、弾性部213とリム部211とで囲まれるように形成された貫通孔である。
張出部212とリム部211との間に弾性部213が配置されているので、弾性部213の弾性により、張出部212に加わる応力が緩和されるとともに、張出部212で軸部材を保持する適切な保持力が得られる。
リム部211は、ガンギ歯車部210の周囲に配置されている。リム部211の外周面には、特殊な鉤型状に形成された複数の歯部214が径方向の外側に向けて突設されている。ガンギ歯車部210の複数の歯部214は、アンクル140(図3参照)に噛み合うようになっている。
挿通部210Cは、複数の張出部212で囲まれるように形成された貫通孔である。軸部材は、挿通部210C内に挿通され、3つの張出部212の内側の頂部と接するように配置され、ガンギ歯車部210の中心部に、例えば、第1実施形態に係る固定リング130を用いて固定される。
第2実施形態に係るガンギ歯車部210は、第1実施形態に係る軸部材120を挿通部210Cに挿通させてガンギ車を構成してもよいし、ガンギ歯車部210の形状に合わせて適宜設計した軸部材を挿通部210Cに挿通させてガンギ車を構成してもよい。また、軸部材を固定する固定部材(固定リング)も適宜設計したものを用いることができる。
[作用]
第1実施形態と同様の効果が得られる。
すなわち、第2実施形態に係るガンギ歯車部210によれば、ガンギ歯車部210に軸部材120を挿通させた際に、軸部材120との当接部(張出部212)におけるチッピングを抑制することができる。また、ガンギ歯車部210の全体に被膜を形成することで、アンクル140との摺接面の摩擦を低減でき、ガンギ歯車部210のエネルギー伝達効率を向上させることができる。さらに、ガンギ歯車部210を、ムーブメント10に搭載することにより、テンプ27の振り角が向上し、これにより、携帯精度が向上し、かつ、ゼンマイのトルクを低減することができる。その結果、ムーブメント10つまり機械式時計1を長時間駆動させることができる。
<他の実施形態>
本発明は第1実施形態および第2実施形態の構成に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
上記実施形態では、時計用部品として、ガンギ歯車部110、210を例示したがこれに限定されない。上記実施形態の時計用部品は、例えば、香箱車、二番車、三番車、四番車、アンクル140、またはテンプ27を構成する部品に適用することができる。また、これらの時計用部品は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて、ムーブメント10に搭載してもよいし、時計に搭載してもよい。
また、上記実施形態では、基体(被膜が形成されていない状態の基体)の表面全体に被膜が形成されている場合について説明したが、被膜は、少なくとも軸部材との当接部に形成されていればよい。
また、本発明の時計用部品は、他の部品との当接部や摺動部など、時計用部品に負荷がかかる箇所に油を付与して用いてもよい。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
<実施例1>
シリコン製の基体(5cm×5cm、厚さ0.625mm)を準備した。
次いで、この基体を熱酸化炉に投入して、酸素雰囲気中で温度1050℃、11時間保持し、基体表面に、熱酸化膜としての酸化ケイ素(SiO)層を形成した。その後、SiO層が形成された基体をプラズマ装置に投入し、酸素流量500ml/分、圧力100Pa、電力500W、処理時間10分間の条件で、基体をプラズマ処理した。
次いで、フッ素含有有機ケイ素化合物(信越化学工業社製:KY185(固形分濃度20質量%))を、フッ素系溶剤(3M社製:Novec7200)を用いて、固形分濃度が0.1質量%になるように希釈し、被膜形成用組成物(以下「組成物A」と称する)を調製した。
次いで、プラズマ処理後の基体を、組成物A中に30秒間浸漬させ、その後、基体を10mm/秒の速度で組成物A中から引き上げた。引き上げた基体をオーブンに投入して、大気雰囲気中で温度120℃、10分間保持し、基体を乾燥させた。これにより、基体の表面全体に、フッ素含有有機ケイ素化合物を含む被膜が形成された基体を得た。これをガンギ歯車部の試験片とした。
<実施例2>
実施例1の試験片の表面に油(シチズン社製:CTZ−AO−P3)を塗布したこと以外は実施例1と同様にして実施例2の試験片を得た。
<比較例1>
実施例1と同様のシリコン製の基体(5cm×5cm、厚さ0.625mm)を準備し、これを比較例1の試験片とした。
<比較例2>
比較例1の試験片の表面に油(シチズン社製:CTZ−AO−P3)を塗布し、これを比較例2の試験片とした。
[評価]
(摩擦試験)
実施例1〜実施例2および比較例1〜比較例2の試験片を用いて既述の方法で摩擦係数を測定した。
結果を図10に示す。図10は、実施例および比較例の試験片における摩擦係数を示すグラフである。
図10に示すように、実施例1〜実施例2は、比較例1〜比較例2に比べ、摩擦係数が低減していることがわかる。特に、実施例1では表面に油を塗布していないが、表面に油を塗布している比較例2よりも摩擦係数が低減していることがわかる。
以上の結果から、シリコン製の基体の表面にフッ素含有金属アルコキシドを含む被膜が形成されたガンギ歯車部を用いることにより、軸部材をガンギ歯車部の挿通部に挿通する際の、当接部における摩擦が低減され、その結果、前記当接部におけるチッピングも抑制されると考えられる。
また、実施例1〜実施例2の試験片は、表面に「フッ素含有有機ケイ素化合物(フッ素含有金属アルコキシドの一例)を含む被膜」が形成されているため、例えば表面に「ニッケル等の金属を含む被膜」が形成されている試験片に比べて、軽量化されている。したがって、シリコン製の基体の表面にフッ素含有金属アルコキシドを含む被膜が形成されたガンギ歯車部を用いることにより、ガンギ車の慣性力を低減できると考えられる。
1…機械式時計、2…外装ケース、3…文字板、3A…カレンダー小窓、4A…時針、4B…分針、4C…秒針、5…パワーリザーブ針、6…日車、7…リューズ、10…ムーブメント、11…地板、12…一番受け、13…テンプ受け、21…香箱車、23…三番車、24…四番車、27…テンプ、30…手巻き機構、31…巻真、32…つづみ車、33…きち車、40…丸穴車、41…第1丸穴車、42…第2丸穴車、51…第1中間車、52…第2中間車、60…角穴車、70…調速機、80…脱進機、100…ガンギ車、110…ガンギ歯車部、110A…表面、110B…裏面、110C…挿通部、110D…基体、110E…被膜、111…リム部、112…歯部、113…第1保持部、113A…当接部、114…第2保持部、114A…第1部分、114B…第2部分、114C…当接部、114D…内接円、115…保持部、120…軸部材、121A、121B…ほぞ部、122…ガンギカナ部、123…第1挿入部、124…歯、125…溝、127…第2挿入部、127A…テーパ面、127B…嵌合面、130…固定リング、140…アンクル、142D…アンクル体、142F…アンクル真、143…アンクルビーム、143A、143B…アンクル腕、143C…アンクル竿、144A、144B…爪石、145…剣先、146…アンクルハコ、210…ガンギ歯車部、210A…表面、210C…挿通部、211…リム部、212…張出部、213…弾性部、213A…開口部、213B…開口部、214…歯部。

Claims (10)

  1. 軸部材が挿通される挿通部を有するシリコン製の基体と、
    前記基体の表面のうち、少なくとも前記軸部材と当接する当接部に形成された被膜と、を有し、
    前記被膜は、フッ素原子を有する金属アルコキシドを含むことを特徴とする時計用部品。
  2. 請求項1に記載の時計用部品において、
    前記被膜は、前記金属アルコキシドが重合した重合物を含むことを特徴とする時計用部品。
  3. 請求項1または請求項2に記載の時計用部品において、
    前記金属アルコキシドは、長鎖高分子基を有することを特徴とする時計用部品。
  4. 請求項3に記載の時計用部品において、
    前記長鎖高分子基が、フルオロアルキル基、パーフルオロアルキル基、及びパーフルオロアルキレンエーテル基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする時計用部品。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の時計用部品において、
    前記基体の表面に酸化ケイ素層が形成され、
    前記酸化ケイ素層の表面に前記被膜が形成されていることを特徴とする時計用部品。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の時計用部品において、
    前記金属アルコキシドがシランカップリング剤であることを特徴とする時計用部品。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の時計用部品が、ガンギ歯車部であることを特徴とする時計用部品。
  8. 請求項7に記載の時計用部品において、
    前記ガンギ歯車部が、複数の歯部を有するリム部と、
    前記リム部から前記軸部材に向かう方向に延在する第1保持部と、
    前記第1保持部と交差する方向に延在する第1部分及び前記第1部分に接続され前記第1部分から前記軸部材に向かう方向に延在する第2部分を有する第2保持部と、を備えることを特徴とする時計用部品。
  9. 請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の時計用部品と、前記軸部材と、を備えることを特徴とする時計用ムーブメント。
  10. 請求項9に記載の時計用ムーブメントと、前記時計用ムーブメントで駆動される指針と、を備えることを特徴とする時計。
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