JP2019038961A - 手動変速機用潤滑油組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】手動変速機油に求められる耐焼付き性および耐摩耗性等の特性を満足しながら、省燃費性を高めた手動変速機用潤滑油組成物を提供する。【解決手段】(A)APIグループII基油、グループIII基油、グループIV基油、若しくはグループV基油、又はそれらの混合基油であって、100℃における動粘度が3.0〜5.0mm2/sである潤滑油基油と、(B)カルシウム系清浄剤を、組成物全量基準でカルシウム量として0.05〜0.10質量%と、(C)マグネシウム系清浄剤を、組成物全量基準でマグネシウム量として0.03〜0.07質量%とを含有し、25℃における動粘度が65mm2/s以下であり、粘度指数が150以上であり、下記式(1)を満たす、手動変速機用潤滑油組成物。1.0≦ Ca/Mg ≦2.0 (1)(式中、Caは組成物中のカルシウム含有量、Mgは組成物中のマグネシウム含有量である。)【選択図】なし

Description

本発明は手動変速機用潤滑油組成物に関し、詳しくは省エネルギー性に優れた、例えば自動車等の車両に搭載される手動変速機用の潤滑油組成物に関する。
変速機等の駆動系における省エネルギー化手段のひとつとして、潤滑油の低粘度化が挙げられる。例えば変速機は歯車軸受機構を有しており、変速機に使用される潤滑油を低粘度化することにより、潤滑油の粘性抵抗に起因する攪拌抵抗および引きずりトルクが低減されて動力の伝達効率が向上し、その結果省燃費性の向上が可能になると考えられる。
しかしながら、これら歯車装置に使用される潤滑油を低粘度化すると、潤滑面において油膜厚さを維持することが難しくなるため、耐焼付き性(耐荷重能)や耐摩耗性が低下する傾向にある。
特開2016−176015号公報 特開2010−195894号公報
本発明は、手動変速機油に求められる耐焼付き性および耐摩耗性等の特性を満足しながら、省燃費性を高めた手動変速機用潤滑油組成物を提供することを課題とする。
本発明の一の実施形態は、(A)APIグループII基油、グループIII基油、グループIV基油、若しくはグループV基油、又はそれらの混合基油であって、100℃における動粘度が3.0〜5.0mm/sである潤滑油基油と、(B)カルシウム系清浄剤を、組成物全量基準でカルシウム量として0.05〜0.10質量%と、(C)マグネシウム系清浄剤を、組成物全量基準でマグネシウム量として0.03〜0.07質量%と
を含有し、組成物の25℃における動粘度が65mm/s以下であり、組成物の粘度指数が150以上であり、下記式(1)を満たすことを特徴とする、手動変速機用潤滑油組成物である。
1.0≦ Ca/Mg ≦2.0 (1)
(式(1)中、Caは組成物中のカルシウム含有量(単位:質量%)であり、Mgは組成物中のマグネシウム含有量(単位:質量%)である。)
本発明によれば、手動変速機油に求められる耐焼付き性および耐摩耗性等の特性を満足しながら、省燃費性を高めた手動変速機用潤滑油組成物を提供することができる。
以下、本発明について詳述する。本明細書においては、特に断らない限り、数値A及びBについて「A〜B」という表記は「A以上B以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Bのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Aにも適用されるものとする。また「又は」及び「若しくは」の語は、特に断りのない限り論理和を意味するものとする。
<(A)潤滑油基油>
本発明の手動変速機用潤滑油組成物(以下において「手動変速機油」若しくは「潤滑油組成物」又は単に「組成物」ということがある。)における潤滑油基油としては、API分類のグループII基油、グループIII基油、グループIV基油、若しくはグループV基油、又はそれらの混合基油であって、100℃における動粘度が3.0〜5.0mm/sである潤滑油基油を特に制限なく用いることができる。APIグループII基油は、硫黄分が0.03質量%以下、飽和分が90質量%以上、且つ粘度指数が80以上120未満の鉱油系基油である。APIグループIII基油は、硫黄分が0.03質量%以上、飽和分が90質量%以上、且つ粘度指数が120以上の鉱油系基油である。APIグループIV基油はポリα−オレフィン基油である。APIグループV基油はエステル系基油である。
鉱油系基油としては、原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理などの1種もしくは2種以上の精製手段を適宜組み合わせて適用して得られる、パラフィン系またはナフテン系などの鉱油系基油を挙げることができる。APIグループII基油及びグループIII基油は通常、水素化分解プロセスを経て製造される。また、ワックス異性化基油や、GTL WAX(ガストゥリキッド ワックス)を異性化する手法で製造される基油等も使用可能である。
APIグループIV基油としては、例えばエチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、およびこれらの水素化物等を挙げることができる。
APIグループV基油としては、例えばモノエステル(例えばブチルステアレート、オクチルラウレート);ジエステル(例えばジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセパケート等);ポリエステル(例えばトリメリット酸エステル等);ポリオールエステル(例えばトリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)等を挙げることができる。
潤滑油基油は、1種の基油からなってもよく、2種以上の基油を含む混合基油であってもよい。2種以上の基油を含む混合基油においては、それらの基油のAPI分類は同一であってもよく、相互に異なっていてもよい。ただしAPIグループV基油の含有量は、潤滑油基油全量基準で好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜15質量%であり、一の実施形態において0〜10質量%であり得る。エステル系基油の含有量が上記上限値以下であることにより、潤滑油組成物の酸化安定性を高めることが可能になる。
潤滑油基油の100℃における動粘度は3.0〜5.0mm/sであり、好ましくは3.1〜5.0mm/sである。当該100℃における動粘度は一の実施形態において4.1〜5.0mm/s、他の一の実施形態において4.1〜4.6mm/sであり得る。潤滑油基油の100℃における動粘度が上記上限値以下であることにより、省燃費性を高めることが可能になる。潤滑油基油の100℃における動粘度が上記下限値以上であることにより、耐摩耗性および疲労寿命を向上させることが可能になる。なお本明細書において、「100℃における動粘度」とは、ASTM D−445に規定される100℃での動粘度を意味する。
潤滑油基油の40℃における動粘度は、好ましくは40mm/s以下、より好ましくは35mm/s以下、さらに好ましくは30mm/s以下である。一方、当該40℃における動粘度は、好ましくは10mm/s以上であり、一の実施形態において18mm/s以上であり得る。潤滑油基油の40℃における動粘度が40mm/sを超える場合には、十分な省燃費性が得られないおそれがあり、10mm/s未満の場合には潤滑箇所での油膜形成が不十分になり潤滑性に劣るおそれがある。なお本明細書において「40℃における動粘度」とは、ASTM D−445に規定される40℃での動粘度を意味する。
潤滑油基油の粘度指数は、好ましくは100以上、より好ましくは105以上であり、一の実施形態において110以上であってもよく、120以上であってもよく、125以上であってもよい。潤滑油基油の粘度指数が100未満であると、潤滑油組成物の粘度−温度特性および熱・酸化安定性が悪化するだけでなく、摩擦係数が上昇する傾向にあり、また、摩耗防止性が低下する傾向にある。なお、本明細書において粘度指数とは、JIS K 2283−1993に準拠して測定された粘度指数を意味する。
潤滑油基油中の硫黄分の含有量は、酸化安定性の観点から好ましくは0.03質量%(300質量ppm)以下、より好ましくは50質量ppm以下、特に好ましくは10質量ppm以下であり、1質量ppm以下であってもよい。
<(B)カルシウム系清浄剤、及び(C)マグネシウム系清浄剤>
(B)カルシウム系清浄剤(以下において単に「(B)成分」ということがある。)としては、カルシウムスルホネート、カルシウムフェネート、カルシウムサリシレート等の公知のカルシウム系清浄剤を用いることができ、これらの中でもカルシウムスルホネート及び/又はカルシウムサリシレートを好ましく用いることができる。
(C)マグネシウム系清浄剤(以下において単に「(C)成分」ということがある。)としては、マグネシウムスルホネート、マグネシウムフェネート、マグネシウムサリシレート等の公知のマグネシウム系清浄剤を用いることができ、これらの中でもマグネシウムスルホネートを好ましく用いることができる。
カルシウム又はマグネシウムスルホネート清浄剤としては、アルキル芳香族化合物をスルホン化することによって得られるアルキル芳香族スルホン酸のカルシウム塩もしくはマグネシウム塩、またはその塩基性塩もしくは過塩基性塩を好ましく例示できる。アルキル芳香族化合物の重量平均分子量は好ましくは400〜1500である。
アルキル芳香族スルホン酸としては、例えば、いわゆる石油スルホン酸や合成スルホン酸が挙げられる。ここでいう石油スルホン酸としては、鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルホン化したものや、ホワイトオイル製造時に副生する、いわゆるマホガニー酸等が挙げられる。また、合成スルホン酸の一例としては、洗剤の原料となるアルキルベンゼン製造プラントにおける副生成物を回収すること、もしくは、ベンゼンをポリオレフィンでアルキル化することにより得られる、直鎖状または分枝状のアルキル基を有するアルキルベンゼンをスルホン化したものを挙げることができる。合成スルホン酸の他の一例としては、ジノニルナフタレン等のアルキルナフタレンをスルホン化したものを挙げることができる。また、これらアルキル芳香族化合物をスルホン化する際のスルホン化剤としては、特に制限はなく、例えば発煙硫酸や無水硫酸を用いることができる。
カルシウム又はマグネシウムフェネート清浄剤としては、以下の一般式(1)で示される構造を有する化合物のカルシウム塩またはマグネシウム塩の過塩基性塩を好ましく例示できる。
Figure 2019038961
一般式(1)中、Rは炭素数6〜21の直鎖もしくは分岐鎖、飽和もしくは不飽和のアルキル基又はアルケニル基を表し、aは重合度であって1〜10の整数を表し、Aはスルフィド(−S−)基またはメチレン(−CH−)基を表し、bは1〜3の整数を表す。なおRは2種以上の異なる基の組み合わせであってもよい。
一般式(1)におけるRの炭素数は、好ましくは6〜18、より好ましくは9〜15である。Rの炭素数が6未満では基油に対する溶解性が劣るおそれがあり、一方、Rの炭素数が18を超える場合は製造が難しく、また耐熱性が劣るおそれがある。
一般式(1)における重合度aは、好ましくは1〜3である。重合度aがこの範囲内であることにより、耐熱性を高めることができる。
カルシウム又はマグネシウムサリシレート清浄剤としては、カルシウム若しくはマグネシウムサリシレートまたはその塩基性塩もしくは過塩基性塩を好ましく例示できる。ここでいうカルシウム若しくはマグネシウムサリシレートとしては、以下の一般式(2)で表される化合物を好ましく例示できる。
Figure 2019038961
一般式(2)中、Rはそれぞれ独立に炭素数14〜30のアルキル基またはアルケニル基を表し、cは1又は2を表し、好ましくは1である。なおs=2である場合、Rは異なる基の組み合わせであってもよい。
カルシウム又はマグネシウムサリシレート清浄剤の好ましい一形態としては、上記一般式(2)においてs=1であるカルシウム若しくはマグネシウムサリシレートまたはその塩基性塩もしくは過塩基性塩を挙げることができる。
カルシウム又はマグネシウムサリシレートの製造方法は特に制限されるものではなく、公知のモノアルキルサリシレートの製造方法等を用いることができる。例えば、フェノールを出発原料として、オレフィンを用いてアルキレーションし、次いで炭酸ガス等でカルボキシレーションして得たモノアルキルサリチル酸、あるいは、サリチル酸を出発原料として、当量の上記オレフィンを用いてアルキレーションして得られたモノアルキルサリチル酸等に、カルシウム又はマグネシウムの酸化物や水酸化物等の金属塩基を反応させること、又は、これらのモノアルキルサリチル酸等を一旦ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩としてからカルシウム塩またはマグネシウム塩と金属交換させること等により、カルシウム又はマグネシウムサリシレートを得ることができる。
過塩基化されたカルシウム若しくはマグネシウムスルホネート、フェネート、又はサリシレートを得る方法は特に限定されるものではないが、例えば、炭酸ガスの存在下でカルシウムスルホネート、フェネート、又はサリシレートを水酸化カルシウム等のカルシウム塩基と反応させることにより、過塩基化カルシウムスルホネート、フェネート、又はサリシレートを得ることができる。また例えば、炭酸ガスの存在下でマグネシウムスルホネート、フェネート、又はサリシレートを水酸化マグネシウム等のマグネシウム塩基と反応させることにより、過塩基化マグネシウムスルホネート、フェネート、又はサリシレートを得ることができる。
(B)成分は少なくとも1種の過塩基化カルシウム系清浄剤を含むことが好ましく、(C)成分は少なくとも1種の過塩基化マグネシウム系清浄剤を含むことが好ましい。過塩基化カルシウム系清浄剤および過塩基化マグネシウム系清浄剤の塩基価は好ましくは100〜500mgKOH/g、より好ましくは150〜500mgKOH/gである。
潤滑油組成物中の(B)成分の含有量は、潤滑油組成物全量基準でカルシウム量として0.05〜0.10質量%であり、好ましくは0.050〜0.095質量%、より好ましくは0.053〜0.090質量%である。当該含有量は一の実施形態において0.070〜0.090質量%、他の一の実施形態において0.070〜0.080質量%であり得る。(B)成分の含有量が上記下限値以上であることにより、黄銅系シンクロナイザーリングの摩擦係数を高めること、及び黄銅系シンクロナイザーリングのスティックトルクを低減することが可能になる。また(B)成分の含有量が上記上限値以下であることにより、黄銅系シンクロナイザーリングのスティックトルクを低減することが可能になる。
潤滑油組成物中の(C)成分の含有量は、潤滑油組成物全量基準でマグネシウム量として0.03〜0.07質量%であり、好ましくは0.035〜0.070質量%、より好ましくは0.040〜0.069質量%である。当該含有量は一の実施形態において0.045〜0.069質量%、他の一の実施形態において0.045〜0.055質量%であり得る。(C)成分の含有量が上記下限値以上であることにより、黄銅系シンクロナイザーリングの摩擦係数を高めること、及び黄銅系シンクロナイザーリングのスティックトルクを低減することが可能になる。また(C)成分の含有量が上記上限値以下であることにより、黄銅系シンクロナイザーリングのスティックトルクを低減することが可能になる。
潤滑油組成物中のカルシウム含有量およびマグネシウム含有量は、下記式(1)を満たすことが必要である。
1.0≦ Ca/Mg ≦2.0 (1)
(式(1)中、Caは組成物中のカルシウム含有量(単位:質量%)であり、Mgは組成物中のマグネシウム含有量(単位:質量%)である。)
式(1)の値が上記範囲内であることにより、黄銅系シンクロナイザーリングの摩擦係数を高めること、及び黄銅系シンクロナイザーリングのスティックトルクを低減することが可能になる。
<コハク酸イミド系無灰分散剤>
一の好ましい実施形態において、潤滑油組成物はコハク酸イミド系無灰分散剤をさらに含み得る。コハク酸イミド系無灰分散剤は、ホウ素化コハク酸イミド系無灰分散剤を含んでもよく、非ホウ素化コハク酸イミド系無灰分散剤を含んでもよく、それらの組み合わせを含んでもよい。なおホウ素化コハク酸イミド系無灰分散剤は、後述する(D)ホウ素含有添加剤の含有量に寄与する。
コハク酸イミド系無灰分散剤としては、例えば、アルキル基もしくはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミドまたはその誘導体を用いることができる。アルキル基もしくはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミドとしては、下記一般式(3)または(4)で表される化合物を例示できる。
Figure 2019038961
一般式(3)中、Rは炭素数40〜400のアルキル基またはアルケニル基を示し、dは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。Rの炭素数は好ましくは60以上であり、また好ましくは350以下である。
一般式(4)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を示し、異なる基の組み合わせであってもよい。R及びRは特に好ましくはポリブテニル基である。また、eは0〜4、好ましくは1〜3の整数を示す。R及びRの炭素数は好ましくは60以上であり、また好ましくは350以下である。
一般式(3)及び(4)におけるR〜Rの炭素数が上記下限値以上であることにより、潤滑油基油に対する良好な溶解性を得ることができる。一方、R〜Rの炭素数が上記上限値以下であることにより、潤滑油組成物の低温流動性を高めることができる。
一般式(3)及び(4)におけるアルキル基またはアルケニル基(R〜R)は直鎖状でも分枝状でもよく、好ましくは、例えば、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィンのオリゴマーや、エチレンとプロピレンとのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基や分枝状アルケニル基を挙げることができる。なかでも慣用的にポリイソブチレンと呼ばれるイソブテンのオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基またはアルケニル基や、ポリブテニル基が最も好ましい。
一般式(3)及び(4)におけるアルキル基またはアルケニル基(R〜R)の好適な数平均分子量は800〜3500である。
アルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミドには、ポリアミン鎖の一方の末端のみに無水コハク酸が付加した、一般式(3)で表される、いわゆるモノタイプのコハク酸イミドと、ポリアミン鎖の両末端に無水コハク酸が付加した、一般式(4)で表される、いわゆるビスタイプのコハク酸イミドとが包含される。潤滑油組成物には、モノタイプのコハク酸イミド及びビスタイプのコハク酸イミドのいずれが含まれていてもよく、それらの両方が混合物として含まれていてもよい。
アルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミドの製法は、特に制限されるものではなく、例えば、炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を有する化合物を無水マレイン酸と100〜200℃で反応させて得たアルキルコハク酸又はアルケニルコハク酸を、ポリアミンと反応させることにより得ることができる。ここで、ポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミンを例示できる。
コハク酸イミドの誘導体としては、例えば、(i)上述のコハク酸イミドに、脂肪酸等の炭素数1〜30のモノカルボン酸、炭素数2〜30のポリカルボン酸(例えばシュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等。)、これらの無水物もしくはエステル化合物、炭素数2〜6のアルキレンオキサイド、又はヒドロキシ(ポリ)オキシアルキレンカーボネートを作用させたことにより、残存するアミノ基および/またはイミノ基の一部又は全部が中和またはアミド化されている、含酸素有機化合物による変性化合物;(ii)上述のコハク酸イミドにホウ酸を作用させることにより、残存するアミノ基および/またはイミノ基の一部又は全部が中和またはアミド化されている、ホウ素変性化合物(ホウ素化コハク酸イミド);(iii)上述のコハク酸イミドにリン酸を作用させることにより、残存するアミノ基および/またはイミノ基の一部又は全部が中和またはアミド化されている、リン酸変性化合物;(iv)上述のコハク酸イミドに硫黄化合物を作用させることにより得られる、硫黄変性化合物;及び、(v)上述のコハク酸イミドに含酸素有機化合物による変性、ホウ素変性、リン酸変性、硫黄変性から選ばれた2種以上の変性を組み合わせて施すことにより得られる変性化合物が挙げられる。これら(i)〜(v)の誘導体の中でも、アルケニルコハク酸イミドのホウ素変性化合物、特にビスタイプのアルケニルコハク酸イミドのホウ素変性化合物を用いることにより、潤滑油組成物の耐熱性を更に向上させることができる。
コハク酸イミド系無灰分散剤の重量平均分子量は好ましくは1000〜20000である。
潤滑油組成物がコハク酸イミド系無灰分散剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、窒素分として好ましくは20〜200質量ppm、より好ましくは25〜150質量ppmである。コハク酸イミド系無灰分散剤の含有量が上記下限値以上であることにより、潤滑油組成物の耐コーキング性(耐熱性)を十分に向上させることができる。またコハク酸イミド系無灰分散剤の含有量が上記上限値以下であることにより、省燃費性を高く維持することができる。
<(D)ホウ素含有添加剤>
一の好ましい実施形態において、潤滑油組成物は、(D)ホウ素含有添加剤(以下において単に「(D)成分」ということがある。)を、組成物全量基準でホウ素量として40〜200質量ppm含有する。
(D)成分の好ましい例としては、次の(D1)及び(D2)を挙げることができる。
(D1)ホウ素化コハク酸イミド系無灰分散剤(以下において「(D1)成分」ということがある。);及び
(D2)ホウ酸エステル化合物(以下において「(D2)成分」ということがある。)。
潤滑油組成物は(D)成分として、(D1)成分を含んでもよく、(D2)成分を含んでもよく、(D1)成分及び(D2)成分の両方を含んでもよい。ただし、潤滑油組成物は少なくとも(D1)成分を含むことが好ましい。
(D1)ホウ素化コハク酸イミド系無灰分散剤の詳細については既に述べた通りである。
(D2)ホウ酸エステル化合物としては、下記一般式(5)で表される1種以上のホウ酸エステル化合物を用いることができる。
Figure 2019038961
(一般式(5)中、Rは炭素数1〜30のヒドロカルビル基であり、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜30のヒドロカルビル基である。)
ヒドロカルビル基としては、アルキル基(環構造を有していてもよい)、アルケニル基(二重結合の位置は任意であり、環構造を有していてもよい。)、アリール基、アルキルアリール基、アルケニルアリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基等を例示できる。
アルキル基としては、直鎖又は分岐鎖の各種アルキル基が挙げられる。環構造を有するアルキル基としては例えばアルキルシクロアルキル基やシクロアルキルアルキル基等が挙げられる。シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5以上7以下のシクロアルキル基を挙げることができる。またシクロアルキル環上の置換位置は任意である。
アルケニル基としては、直鎖又は分岐鎖の各種アルケニル基が挙げられる。環構造を有するアルケニル基としては例えばアルキルシクロアルケニル基、アルケニルシクロアルキル基、シクロアルケニルアルキル基、シクロアルケニルアルケニル基等が挙げられる。シクロアルキル基については上記同様である。シクロアルケニル基としては、例えば、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基等の炭素数5以上7以下のシクロアルケニル基を挙げることができる。またシクロアルケニル環及びシクロアルキル環上の置換位置は任意である。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。アリール基はヒドロカルビル置換基を有していてもよい。また上記アルキルアリール基、アルケニルアリール基、アリールアルキル基、及びアリールアルケニル基において、アリール基への置換位置は任意である。
上記一般式(5)における炭素数1以上30以下のヒドロカルビル基は、好ましくはアルキル又はアルケニル基であり、より好ましくはアルキル基である。上記炭素数は好ましくは3以上、より好ましくは5以上であり、一の実施形態において6以上である。また好ましくは24以下、より好ましくは12以下であり、一の実施形態において8以下である。ヒドロカルビル基の炭素数が上記下限値以上であることにより、溶解性を高め、シンクロナイザーリングの摩擦係数を高めることが可能になる。またヒドロカルビル基の炭素数が上記上限値を超えると、シンクロナイザーリングの摩擦係数が低下する傾向にある。
上記一般式(5)において、R及びRの少なくとも一方が水素原子であることが好ましく、R及びRの両方が水素原子であることがより好ましい。このような形態の(D2)成分を用いることにより、境界潤滑域での潤滑膜の強度を高め、耐焼き付き性および耐摩耗性を向上させることが可能になる。
(D2)成分の好ましい一例としては、上記一般式(5)においてRが炭素数3〜12のアルキル又はアルケニル基であり、R及びRが水素原子であるホウ酸エステル化合物を挙げることができる。
潤滑油組成物中の(D)成分の含有量(潤滑油組成物が複数のホウ素含有添加剤を含む場合にはそれらの合計の含有量。)は、潤滑油組成物全量基準で、ホウ素量(ホウ素原子換算量)として40〜200質量ppmであり、好ましくは50質量ppm以上である。当該含有量は一の実施形態において100質量ppm以上、また一の実施形態において150質量ppm以下であり得る。(D)成分の含有量が上記下限値以上であることにより、耐焼き付き性、疲労寿命、及び黄銅系シンクロナイザーリングの摩擦係数を向上させることが可能になる。また(D)成分の含有量が上記上限値以下であることにより、疲労寿命を向上させることが可能になる。
潤滑油組成物中のカルシウム含有量、マグネシウム含有量、及びホウ素含有量は、下記式(2)を満たすことが好ましい。
0.5≦(Ca/Mg)×CB×10−2 (2)
(式(2)中、Caは組成物中のカルシウム含有量(単位:質量%)であり、Mgは組成物中のマグネシウム含有量(単位:質量%)であり、CBは組成物中のホウ素含有量(単位:質量ppm)である。)
式(2)の値が0.5以上であることにより、耐焼き付き性、疲労寿命、及び黄銅系シンクロナイザーリングの摩擦係数を向上させることが可能になる。また黄銅系シンクロナイザーリングのスティックトルクを低減することが可能になる。
<(E)チアジアゾール系金属不活性化剤>
一の好ましい実施形態において、潤滑油組成物は、チアジアゾール系金属不活性化剤(以下において「(E)成分」ということがある。)を、潤滑油組成物全量基準で0.005〜0.50質量%含有する。(E)成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(E)成分の好ましい例としては、下記一般式(6)で表される1,3,4−チアジアゾール化合物、下記一般式(7)で表される1,2,4−チアジアゾール化合物、及び下記一般式(8)で表される1,2,3−チアジアゾール化合物を挙げることができる。
Figure 2019038961
Figure 2019038961
Figure 2019038961
(一般式(6)〜(8)中、R及びR10は同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に水素又は炭素数1〜20のヒドロカルビル基を表し;f及びgは同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に0〜8の整数を表す。)
潤滑油組成物中の(E)成分の含有量は、潤滑油組成物全量基準で0.005〜0.50質量%である。(E)成分の含有量は、後述する潤滑油組成物中の全硫黄分が組成物全量基準で1400〜3000質量ppmとなる量であることが好ましい。潤滑油組成物中の全硫黄分を上記範囲内とする観点からは、潤滑油組成物中の(E)成分の含有量は、潤滑油組成物全量基準で好ましくは0.008〜0.40質量%であり、より好ましくは0.01〜0.30質量%である。当該含有量は一の実施形態において0.05〜0.30質量%、他の一の実施形態において0.05〜0.20質量%であり得る。(E)成分の含有量が0.005質量%以上であることにより、耐焼き付き性(耐荷重能)を高めることが可能になる。また(E)成分の含有量が0.50質量%以下であることにより、疲労寿命、黄銅系シンクロナイザーリングの摩擦係数、及び酸化安定性を向上させることが可能になる。
<潤滑油組成物中の硫黄含有量>
潤滑油組成物中の硫黄含有量は、潤滑油組成物全量基準で好ましくは1400〜3000質量ppmであり、より好ましくは1500〜3000質量ppmであり、さらに好ましくは1550〜2900質量ppmである。当該含有量は一の実施形態において1700〜2900質量ppm、他の一の実施形態において1700〜2400質量ppmであり得る。潤滑油組成物中の硫黄含有量が上記下限値以上であることにより、耐焼き付き性および疲労寿命を向上させることが可能になる。また潤滑油組成物中の硫黄含有量が上記上限値以下であることにより、耐摩耗性、疲労寿命、黄銅系シンクロナイザーリングの摩擦係数、及び酸化安定性を高めることが可能になる。
((F)硫黄含有極圧剤)
潤滑油組成物中の硫黄含有量が上記範囲内となるように、潤滑油組成物は、上記(E)成分に加えて、1種以上の硫黄含有極圧剤(以下において「(F)成分」ということがある。)を含むことが好ましい。(E)成分以外の硫黄含有極圧剤としては、硫化油脂、硫化脂肪酸、硫化エステル、硫化オレフィン、ジヒドロカルビル(ポリ)サルファイド、アルキルチオカルバモイル化合物、チオカーバメート化合物、チオテルペン化合物、ジアルキルチオジプロピオネート化合物、硫化鉱油、ジチオカルバミン酸亜鉛化合物、ジチオカルバミン酸モリブデン化合物、ジチオリン酸亜鉛化合物、ジチオリン酸モリブデン化合物等の公知の硫黄含有極圧剤またはリン−硫黄含有極圧剤を用いることができる。硫黄含有添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
硫化油脂は、硫黄や硫黄含有化合物と油脂(ラード油、鯨油、植物油、魚油等)とを反応させて得られる生成物である。硫化油脂中の硫黄含有量は特に制限はないが、通常5〜30重量%である。
硫化脂肪酸としては、不飽和脂肪酸を任意の方法で硫化することにより得られる生成物を用いることができ、具体的には硫化オレイン酸などを例示できる。
硫化エステルとしては、不飽和脂肪酸エステル(例えば、不飽和脂肪酸(オレイン酸、リノール酸、又は上記の動植物油脂から抽出された脂肪酸など)と各種アルコールとを反応させて得られる生成物。)を任意の方法で硫化することにより得られる生成物を用いることができ、具体的には硫化オレイン酸メチル、硫化米ぬか脂肪酸オクチル等を例示できる。
硫化オレフィンとしては、下記一般式(9)で表される化合物を例示できる。この化合物は、炭素数2〜15のオレフィンまたはその二〜四量体を、硫黄、塩化硫黄等の硫化剤と反応させることによって得ることができる。該オレフィンとしては、プロピレン、イソブテン、ジイソブテン等を好ましく用いることができる。
Figure 2019038961
(一般式(9)中、R11は炭素数2〜15のアルケニル基を表し、R12は炭素数2〜15のアルキル基又はアルケニル基を表し、hは1〜8の整数を示す。)
ジヒドロカルビル(ポリ)サルファイドは、下記一般式(10)で表される化合物である。ここで、R13及びR14がアルキル基の場合、硫化アルキルと称されることがある。
Figure 2019038961
(一般式(10)中、R13及びR14は同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基(直鎖でも分岐鎖でもよく、環状構造を有していてもよい。)、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基、又は炭素数7〜20のアリールアルキル基を表し、iは1〜8の整数を表す。)
アルキルチオカルバモイル化合物としては、下記一般式(11)で表される化合物を例示できる。
Figure 2019038961
(一般式(11)中、R15〜R18は同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基を表し、jは1〜8の整数を表す。)
アルキルチオカーバメート化合物としては、下記一般式(12)で示される化合物を例示できる。
Figure 2019038961
(一般式(12)中、R19〜R22は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基を示し、R23は炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
チオテルペン化合物としては、例えば、五硫化リンとピネンの反応物を挙げることができる。
ジアルキルチオジプロピオネート化合物としては、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等を挙げることができる。
硫化鉱油は、鉱油に単体硫黄を溶解させることにより得られる物質である。硫化鉱油に用いられる鉱油としては特に制限されないが、具体的には、原油に常圧蒸留及び減圧蒸留を施して得られる潤滑油留分に対して、公知の精製処理を適宜組み合わせて施すことにより精製されたパラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油などが挙げられる。また、単体硫黄としては、塊状、粉末状、溶融液体状等いずれの形態のものを用いてもよい。硫化鉱油中の硫黄含有量は特に制限されるものではないが、硫化鉱油全量を基準として通常0.05〜1.0重量%である。
ジチオカルバミン酸亜鉛化合物としては下記一般式(13)で表される化合物を用いることができ、ジチオカルバミン酸モリブデン化合物としては下記一般式(14)で表される化合物を用いることができる。
Figure 2019038961
(一般式(13)中、R24〜R27は同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に炭素数1以上のヒドロカルビル基を表す。)
Figure 2019038961
(一般式(14)中、R28〜R31は同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に炭素数1以上のヒドロカルビル基を表し、X〜Xはそれぞれ独立に酸素原子又は硫黄原子を表す。)
ジチオリン酸亜鉛化合物としては、下記一般式(15)で表される化合物を用いることができる。
Figure 2019038961
(一般式(15)中、R32〜R35は同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に炭素数3〜18のヒドロカルビル基を表す。)
ジチオリン酸モリブデン化合物としては、下記一般式(16)で表される化合物を用いることができる。
Figure 2019038961
(一般式(16)中、R36〜R39は同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に炭素数1以上のヒドロカルビル基を表し、X〜Xはそれぞれ独立に酸素原子又は硫黄原子を表す。)
<潤滑油組成物中のリン含有量>
潤滑油組成物中のリン含有量は、潤滑油組成物全量基準で好ましくは500〜1000質量ppmであり、より好ましくは550〜950質量ppmである。当該含有量は一の実施形態において600〜950質量ppm、他の一の実施形態において600〜800質量ppmであり得る。潤滑油組成物中のリン含有量が上記下限値以上であることにより、耐摩耗性および疲労寿命を向上させることが可能になる。また潤滑油組成物中のリン含有量が上記上限値以下であることにより、耐焼き付き性および疲労寿命を高めることが可能になる。
((G)リン含有摩耗防止剤)
潤滑油組成物中のリン含有量が上記範囲内となるように、潤滑油組成物は、1種以上のリン含有摩耗防止剤(以下において「(G)成分」ということがある。)を含むことが好ましい。リン含有摩耗防止剤としては例えば、上記リン−硫黄含有極圧剤のほか、下記一般式(17)で表される化合物、下記一般式(18)で表される化合物、並びにそれらの金属塩およびアンモニウム塩等のリン含有摩耗防止剤を挙げることができる。リン含有添加剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
Figure 2019038961
(一般式(17)中、X、X10、及びX11は、それぞれ独立に酸素原子または硫黄原子を表し;R40は炭素数1〜30の炭化水素基を表し;R41及びR42はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表し;R40、R41、及びR42は同一でも相互に異なっていてもよい。)
Figure 2019038961
(一般式(18)中、X12、X13、X14、及びX15は、それぞれ独立に酸素原子または硫黄原子を表し;R43は炭素数1〜30の炭化水素基を表し;R44及びR45はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表し;R43、R44、及びR45は同一でも相互に異なっていてもよい。)
一般式(17)及び(18)における炭素数1〜30の炭化水素基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキル置換シクロアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基、及びアリールアルキル基等を挙げることができる。炭化水素基は好ましくは、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜24のアリール基であり、一の実施形態において炭素数3〜18、さらに好ましくは炭素数4〜12のアルキル基、アリール基、又はアルキルアリール基である。
一般式(17)又は(18)で表されるリン化合物と金属塩を形成する金属の例としては、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、銅、鉄、鉛、ニッケル、銀、マンガン等の重金属等が挙げられる。これらの中ではカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、もしくは亜鉛、又はそれらの組み合わせが好ましい。
一般式(17)又は(18)で表されるリン化合物とアンモニウム塩を形成する含窒素化合物の例としては、アンモニア、モノアミン、ジアミン、ポリアミン、及びアルカノールアミンを挙げることができる。より具体的には、下記一般式(19)で表される含窒素化合物;メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、及びブチレンジアミン等のアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミン;及びこれらの組み合わせ、等を挙げることができる。
Figure 2019038961
(一般式(19)中、R46〜R48はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のヒドロカルビル基、又は水酸基を有する炭素数1〜8のヒドロカルビル基を表し;R46〜R48のうち少なくとも1つは炭素数1〜8のヒドロカルビル基、又は水酸基を有する炭素数1〜8のヒドロカルビル基である。)
リン含有添加剤としては、上記した化合物の中でも、亜リン酸エステル化合物を好ましく用いることができ、中でも炭素数3〜18(好ましくは4〜12)のアルキル基、アリール基、又はアルキルアリール基を有するハイドロジェンホスファイトが特に好ましい。例えば、ジフェニルハイドロジェンホスファイト、トリフェニルホスファイト、ジブチルハイドロジェンホスファイト、及びジラウリルハイドロジェンホスファイトから選ばれる1種以上のハイドロジェンホスファイトを好ましく用いることができる。
潤滑油組成物中の硫黄含有量、リン含有量、及びホウ素含有量は、下記式(3)を満たすことが好ましい。
0.4≦[CB/(CP×CS)]×10≦1.6 (3)
(式(3)中、CBは組成物中のホウ素含有量(単位:質量ppm)であり、CPは組成物中のリン含有量(単位:質量ppm)であり、CSは組成物中の硫黄含有量(単位:質量ppm)である。)
上記式(3)の値が0.4以上であることにより、耐焼き付き性、耐摩耗性、疲労寿命、黄銅系シンクロナイザーリングの摩擦係数、及び酸化安定性を向上させることが可能になる。また上記式(3)の値が1.6以下であることにより、耐焼き付き性、耐摩耗性、疲労寿命、及び黄銅系シンクロナイザーリングの摩擦係数を向上させることが可能になる。
<潤滑油組成物の粘度特性>
潤滑油組成物の25℃における動粘度は65mm/s以下である。また、好ましくは37mm/s以上、より好ましくは40mm/s以上であり、一の実施形態において50mm/s以上であり得る。潤滑油組成物の25℃における動粘度が65mm/s以下であることにより、省燃費性を高めることが可能になる。また潤滑油組成物の25℃における動粘度が上記下限値以上であることにより、耐焼き付き性および疲労寿命を高めることが可能になる。
潤滑油組成物の粘度指数は150以上である。潤滑油組成物の粘度指数の上限値は特に制限されるものではないが、通常300以下であり、一の実施形態において200以下であり得る。潤滑油組成物の粘度指数が150以上であることにより、省燃費性を高めることが可能になる。
<(H)粘度指数向上剤>
一の好ましい実施形態において、潤滑油組成物は、25℃における動粘度および粘度指数が上記範囲内になるように、粘度指数向上剤(以下において「(H)成分」ということがある。)をさらに含み得る。(H)成分としては、公知の粘度指数向上剤を特に制限なく用いることができる。例えば、ポリメタクリレート、エチレン−α−オレフィン共重合体及びその水素化物、α−オレフィンと重合性不飽和結合を有するエステル単量体との共重合体、ポリイソブチレン及びその水素化物、スチレン−ジエン共重合体の水素化物、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体、並びに、ポリアルキルスチレン等を挙げることができる。これらの中でもポリメタクリレート、若しくは、エチレン−α−オレフィン共重合体若しくはその水素化物、又はそれらの組み合わせを好ましく用いることができる。これらの粘度指数向上剤は分散型であってもよく、非分散型であってもよい。
粘度指数向上剤の重量平均分子量および含有量は、潤滑油組成物の25℃における動粘度および粘度指数が上記範囲内になるように選択される。粘度指数向上剤の重量平均分子量が大きいほど必要な含有量は少なくなり、重量平均分子量が小さいほど必要な含有量は多くなるが、一の実施形態において粘度指数向上剤の重量平均分子量は例えば5,000〜40,000好ましくは5,000〜30,000、その含有量は組成物全量基準で例えば3.0〜20.0質量%、好ましくは4.0〜15.0質量%であり得る。
<(I)酸化防止剤>
一の好ましい実施形態において、潤滑油組成物は酸化防止剤(以下において「(I)成分」ということがある。)をさらに含み得る。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤等の公知の酸化防止剤を特に制限なく用いることができる。例としては、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル化−α−ナフチルアミンなどのアミン系酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)などのフェノール系酸化防止剤などを挙げることができる。潤滑油組成物中の酸化防止剤の含有量は、潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.1〜5.0質量%であり、より好ましくは0.2質量%以上、またより好ましくは2.0質量%以下である。
<(J)摩擦調整剤>
一の好ましい実施形態において、潤滑油組成物は上記(F)成分及び(G)成分以外の摩擦調整剤(以下において「(J)成分」ということがある。)をさらに含み得る。(J)成分を含む形態の潤滑油組成物によれば、静摩擦係数の低減により、シンクロナイザーリングのシンクロコーンからの滑り出しが良好になる。さらに、浮動歯車とスリーブの回転数を一致させた後に浮動歯車のスプラインの歯にスリーブの歯を押し込む際の抵抗が低減されるので、変速フィーリングが改善される。(J)成分としては、上記(F)成分及び(G)成分以外のモリブデン系摩擦調整剤、並びに無灰摩擦調整剤から選ばれる1種以上の摩擦調整剤を用いることができる。摩擦調整剤の含有量は、潤滑油組成物全量基準で好ましくは0.01〜2.0質量%であり、より好ましくは0.5質量%以上、またより好ましくは1.0質量%以下である。
(F)成分及び(G)成分以外のモリブデン系摩擦調整剤としては、例えば、モリブデン化合物(例えば、二酸化モリブデン、三酸化モリブデン等の酸化モリブデン、オルトモリブデン酸、パラモリブデン酸、(ポリ)硫化モリブデン酸等のモリブデン酸、これらモリブデン酸の金属塩、アンモニウム塩等のモリブデン酸塩、二硫化モリブデン、三硫化モリブデン、五硫化モリブデン、ポリ硫化モリブデン等の硫化モリブデン、硫化モリブデン酸、硫化モリブデン酸の金属塩またはアミン塩、塩化モリブデン等のハロゲン化モリブデン等。)と、硫黄含有有機化合物(例えば、アルキル(チオ)キサンテート、チアジアゾール、メルカプトチアジアゾール、チオカーボネート、テトラハイドロカルビルチウラムジスルフィド、ビス(ジ(チオ)ハイドロカルビルジチオホスホネート)ジスルフィド、有機(ポリ)サルファイド、硫化エステル等。)又はその他の有機化合物との錯体等;および、上記硫化モリブデン、硫化モリブデン酸等の硫黄含有モリブデン化合物とアルケニルコハク酸イミドとの錯体等の、硫黄を含有する有機モリブデン化合物を挙げることができる。なお有機モリブデン化合物は、単核モリブデン化合物であってもよく、二核モリブデン化合物や三核モリブデン化合物等の多核モリブデン化合物であってもよい。
また、(F)成分及び(G)成分以外のモリブデン系摩擦調整剤として、構成元素として硫黄を含まない有機モリブデン化合物を用いることもできる。構成元素として硫黄を含まない有機モリブデン化合物としては、具体的には、モリブデン−アミン錯体、モリブデン−コハク酸イミド錯体、有機酸のモリブデン塩、アルコールのモリブデン塩などが挙げられ、中でも、モリブデン−アミン錯体、有機酸のモリブデン塩およびアルコールのモリブデン塩が好ましい。
潤滑油組成物が(J)成分として(F)成分及び(G)成分以外のモリブデン系摩擦調整剤を含有する場合、その含有量は潤滑油組成物全量基準で0.01〜2.0質量%であることが好ましい。
無灰摩擦調整剤としては、公知の油性剤系摩擦調整剤を特に制限なく用いることができる。無灰摩擦調整剤としては、例えば、分子中に酸素原子、窒素原子、硫黄原子から選ばれる1種以上のヘテロ元素を含有する、炭素数6〜50の化合物が挙げられる。さらに具体的には、炭素数6〜30のアルキル基またはアルケニル基、好ましくは炭素数6〜30の直鎖アルキル基、直鎖アルケニル基、分岐アルキル基、または分岐アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、アミン化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル、ウレア系化合物、ヒドラジド系化合物等の無灰摩擦調整剤を好ましく用いることができる。
潤滑油組成物が(J)成分として無灰摩擦調整剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、また好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。
<その他の添加剤>
一の実施形態において、潤滑油組成物は、流動点降下剤、(E)成分以外の腐食防止剤、防錆剤、(E)成分以外の金属不活性化剤、抗乳化剤、消泡剤、及び着色剤から選ばれる1種以上の添加剤をさらに含み得る。
流動点降下剤としては、使用する潤滑油基油の性状に応じて、例えばポリメタクリレート系ポリマー等の公知の流動点降下剤を特に制限なく使用可能である。潤滑油組成物が流動点降下剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、通常0.1重量%以上20.0重量%以下である。
(E)成分以外の腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、及びイミダゾール系化合物等の公知の腐食防止剤を用いることができる。潤滑油組成物が(E)成分以外の腐食防止剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.005〜5質量%である。
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、及び多価アルコールエステル等の公知の防錆剤を特に制限なく使用可能である。潤滑油組成物がこれらの防錆剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、通常0.1重量%以上2.0重量%以下である。
(E)成分以外の金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、並びにβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等の公知の金属不活性化剤を用いることができる。潤滑油組成物がこれらの金属不活性化剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、通常0.05重量%以上1.0重量%以下である。
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等の公知の抗乳化剤を特に制限なく使用可能である。潤滑油組成物がこれらの抗乳化剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、通常0.1重量%以上1.0重量%以下である。
消泡剤としては、例えば、シリコーン、フルオロシリコーン、及びフルオロアルキルエーテル等の公知の消泡剤を用いることができる。潤滑油組成物がこれらの消泡剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、通常0.001質量%以上0.01質量%以下である。
着色剤としては、例えばアゾ化合物等の公知の着色剤を特に制限なく使用可能である。
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1〜24及び比較例1〜5>
表1〜5に示されるように、本発明の潤滑油組成物(実施例1〜24)、及び比較用の潤滑油組成物(比較例1〜5)をそれぞれ調製した。表中、基油について「mass%」は基油全量基準での質量%を意味し、他の成分について「mass%」は組成物全量基準での質量%を意味し、「mass ppm」は組成物全量基準での質量ppmを意味する。成分の詳細は次の通りである。
((A)潤滑油基油)
A−1:水素化精製鉱油(Group II、動粘度(40℃):12.65mm/s、動粘度(100℃):3.1mm/s、粘度指数:104、硫黄分:1質量ppm未満)
A−2:水素化精製鉱油(Group III、動粘度(40℃):36.11mm/s、動粘度(100℃):6.398mm/s、粘度指数:129、硫黄分:1質量ppm未満)
A−3:水素化精製鉱油(Group III、動粘度(40℃):18.42mm/s、動粘度(100℃):4.2mm/s、粘度指数:133、硫黄分:1質量ppm未満)
A−4:ポリα−オレフィン(Group IV、動粘度(40℃):19mm/s、動粘度(100℃):4.1mm/s、粘度指数:126、流動点:−66℃、引火点:220℃)
A−5:モノエステル基油(Group V、オレイン酸2−エチルヘキシル、動粘度(40℃):8.4mm/s、動粘度(100℃):2.7mm/s、粘度指数:174)
A−6:ワックス異性化基油(Group III、動粘度(40℃):9.095mm/s、動粘度(100℃):2.603mm/s、粘度指数:122)
((B)カルシウム系清浄剤)
B−1:カルシウムスルホネート、塩基価300mgKOH/g、Ca:11.95質量%
B−2:カルシウムスルホネート、塩基価17mgKOH/g、Ca:2.35質量%
B−3:カルシウムサリシレート、塩基価192mgKOH/g、Ca:6.8質量%
(C)マグネシウム系清浄剤:マグネシウムスルホネート、塩基価400mgKOH/g、Mg:9.1質量%、S:1.7質量%
((D)ホウ素含有添加剤)
D−1:ホウ素化コハク酸イミド無灰分散剤、B:2.0質量%、N:2.7質量%
D−2:ホウ酸エステル化合物(一般式(5)においてRが炭素数3〜12のアルキル又はアルケニル基であり、R及びRが水素原子であるホウ酸エステル化合物)、B:2.83質量%
D−1’:非ホウ素化コハク酸イミド無灰分散剤、N:2.7質量%
(E)チアジアゾール化合物:一般式(6)〜(8)で表される、ヒドロカルビルジチオ基を有するチアジアゾール化合物、S:36質量%
(F)硫黄含有極圧剤:硫化エステル、S:39.20質量%
(G)リン含有摩耗防止剤:ジフェニルハイドロジェンホスファイト、P:13.2質量%
((H)粘度指数向上剤)
H−1:エチレン−α−オレフィン共重合体系粘度指数向上剤、重量平均分子量Mw:9,000
H−2:ポリメタクリレート系粘度指数向上剤、重量平均分子量Mw:20,000
(I)酸化防止剤:ジフェニルアミン
(J)摩擦調整剤:オレイルアミド
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(高速四球試験)
潤滑油組成物のそれぞれについて、JPI−5S−40−93に準拠した高速四球試験により、潤滑油組成物の耐荷重能(耐焼き付き性)および耐摩耗性を評価した。
(1)回転数1800rpmで最終非焼付荷重(LNSL)を測定した。
(2)回転数1800rpm、荷重392N、油温80℃で30分運転した後の摩耗痕径を測定した。
結果を表1〜5に示している。
(FZGギヤ試験)
潤滑油組成物のそれぞれについて、FZG試験機を用い、FVA 2/IV規格に準拠して下記の条件で運転を行い、歯車にピッチングが発生するまでのギヤの疲労寿命を評価した。
ギヤ:Cギヤ
荷重ステージ数:12
油温:120℃
回転数:650rpm
(シンクロナイザーリング単体試験)
潤滑油組成物のそれぞれについて、シンクロナイザーリング単体摩擦試験装置(神鋼造機製)を用いて、黄銅製シンクロナイザーリングが示す動摩擦係数およびスティックトルクを測定した。
シンクロナイザーリング単体試験機は、同軸上に設けられたシンクロナイザーリングとギヤコーンとを有し、シンクロナイザーリングは軸方向に可動に保持されており、ギヤコーンは回転駆動可能に保持されている。
動摩擦係数の測定手順は次の通りである。潤滑油(油温80℃)中、所定の回転数(300rpm)で回転している鋼製ギヤコーン(慣性質量0.2kg・m)に、黄銅製シンクロナイザーリング(コーン角度6.3°、有効半径27mm)を所定の荷重(500N)で押し付ける。1.0秒間押し付けた後2.0秒間引き離すことを1サイクルとし、500サイクル目における1.0秒間の摩擦トルクの平均値から動摩擦係数を算出した。
スティックトルクの測定手順は次の通りである。まず、動摩擦係数の上記測定手順と同様にして、初期速度300rpmで自由回転するギヤコーンにシンクロナイザーリングを押し付けることにより回転を停止させる。回転が停止したとき、シンクロナイザーリングはギヤコーンに貼り付いている状態である。次いで、シンクロナイザーリングに荷重を加えていない状態で、ギヤコーンを所定の回転数(300rpm)で回転させ、シンクロナイザーリングが相手部材から剥がれた時のトルク(スティックトルク)を測定する。測定値は10回の測定の最大値を採った。
結果を表1〜5に示している。本試験で測定された動摩擦係数が大きいほど、シンクロナイザーリングの同期性能が良好であることを意味する。また本試験で測定されたスティックトルクが小さいほど、シンクロナイザーリングの引き剥がし性が良好であることを意味する。
(ISOT酸化安定性試験)
潤滑油組成物のそれぞれについて、JIS K2514に準拠したISOT試験により酸化安定性を評価した。油温135℃で96時間試験を行い、試験後の酸価の増加(mgKOH/g)を測定した。結果を表1〜5に示している。
(評価結果)
実施例1〜24の潤滑油組成物は、耐焼き付き性(耐荷重能)、耐摩耗性、疲労寿命、シンクロナイザーリングの摩擦係数及びスティックトルク、並びに酸化安定性において良好な結果を示した。
(A)潤滑油基油の100℃における動粘度および組成物の25℃における動粘度が下限値未満であった比較例1の潤滑油組成物は、耐焼き付き性および疲労寿命において劣っていた。
(B)成分の含有量が過少であり、式(1)及び式(2)の値が下限値未満であった比較例2の潤滑油組成物は、シンクロナイザーリングの摩擦係数およびスティックトルクにおいて劣っていた。
(B)成分の含有量が過大であり、式(1)の値が上限値を超過した比較例3の潤滑油組成物は、シンクロナイザーリングのスティックトルクにおいて劣っていた。
(C)成分の含有量が過少であり、式(1)の値が上限値を超過した比較例4の潤滑油組成物は、シンクロナイザーリングの摩擦係数及びスティックトルクにおいて劣っていた。
(C)成分の含有量が過大であり、式(1)の値が下限値未満であった比較例5の潤滑油組成物は、シンクロナイザーリングのスティックトルクにおいて劣っていた。

Claims (8)

  1. (A)APIグループII基油、グループIII基油、グループIV基油、若しくはグループV基油、又はそれらの混合基油であって、100℃における動粘度が3.0〜5.0mm/sである潤滑油基油と、
    (B)カルシウム系清浄剤を、組成物全量基準でカルシウム量として0.05〜0.10質量%と、
    (C)マグネシウム系清浄剤を、組成物全量基準でマグネシウム量として0.03〜0.07質量%と
    を含有し、
    組成物の25℃における動粘度が65mm/s以下であり、
    組成物の粘度指数が150以上であり、
    下記式(1)を満たすことを特徴とする、手動変速機用潤滑油組成物。
    1.0≦ Ca/Mg ≦2.0 (1)
    (式(1)中、Caは組成物中のカルシウム含有量(単位:質量%)であり、Mgは組成物中のマグネシウム含有量(単位:質量%)である。)
  2. (D)ホウ素含有添加剤を、組成物全量基準でホウ素量として40〜200質量ppm含有し、
    下記式(2)を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の手動変速機用潤滑油組成物。
    0.5≦(Ca/Mg)×CB×10−2 (2)
    (式(2)中、Caは組成物中のカルシウム含有量(単位:質量%)であり、Mgは組成物中のマグネシウム含有量(単位:質量%)であり、CBは組成物中のホウ素含有量(単位:質量ppm)である。)
  3. (D1)ホウ素化コハク酸イミド系無灰分散剤、若しくは(D2)ホウ酸エステル化合物、又はそれらの組み合わせを含有する、請求項2に記載の手動変速機用潤滑油組成物。
  4. 非ホウ素化コハク酸イミド系無灰分散剤をさらに含むか、又は含有せず、
    前記(D1)成分と、前記非ホウ素化コハク酸イミド系無灰分散剤との合計の含有量が、組成物全量基準で窒素分として20〜200質量ppmである、
    請求項3に記載の手動変速機用潤滑油組成物。
  5. (E)チアジアゾール系金属不活性化剤を、組成物全量基準で0.005〜0.50質量%含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の手動変速機用潤滑油組成物。
  6. 組成物中の硫黄含有量が、組成物全量基準で1400〜3000質量ppmであり、
    組成物中のリン含有量が、組成物全量基準で500〜1000質量ppmであり、
    下記式(3)を満たすことを特徴とする、請求項5に記載の手動変速機用潤滑油組成物。
    0.4≦[CB/(CP×CS)]×10≦1.6 (3)
    (式(3)中、CBは組成物中のホウ素含有量(単位:質量ppm)であり、CPは組成物中のリン含有量(単位:質量ppm)であり、CSは組成物中の硫黄含有量(単位:質量ppm)である。)
  7. (F)前記(E)成分以外の硫黄含有極圧剤を含有する、請求項6に記載の手動変速機用潤滑油組成物。
  8. (G)リン含有摩耗防止剤を含有する、請求項6又は7に記載の手動変速機用潤滑油組成物。
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