JP2019038870A - 水性導電性分散液、バイオセンサおよびバイオセンサの製造方法 - Google Patents

水性導電性分散液、バイオセンサおよびバイオセンサの製造方法 Download PDF

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小久保奈津子
natsuko Kokubo
直人 荻原
Naoto Ogiwara
直人 荻原
啓輔 倉内
Keisuke Kurauchi
啓輔 倉内
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Abstract

【課題】 本発明は、より効率的に生体適合性のある電極を作製でき、測定対象(例えば、グルコース)の濃度を高感度でかつ長期間安定して測定するために非特異吸着を抑制した電極およびそれを用いたバイオセンサを提供することを目的とする。
【解決手段】 導電性材料(A)と、ブロック重合体(B)と、水性液状媒体(D)とを含む水性導電性分散体であって、前記ブロック重合体(B)が、水/1−オクタノール分配係数(LogP)の平均値が0以上2以下であるアクリル系モノマーから形成されるアクリル系ポリマーブロック(B1)と、ポリエチレンオキサイドブロック(B2)とを有し、前記ブロック重合体(B)に含まれる、ポリエチレンオキサイドブロックの質量/[アクリル系ポリマーブロックとポリエチレンオキサイドブロックとの合計の質量]が0.01〜0.3である、水性導電性分散体。
【選択図】 図1

Description

本発明は、水性導電性分散体、詳しくは生体適合性に優れ、特にバイオセンサ等に利用される電極の形成に好適な水性導電性分散体、およびそれを用いたバイオセンサに関する。
近年いろいろな分野において、センサによる化学物質の計測や検出が行われている。様々な形式のセンサの中で、分子識別機能を利用したバイオセンサは、物質選択性が非常に優れているため、医療・生化学分野にも広く応用されている。
例えば、糖尿病治療の分野においては、バイオセンサによる血糖値測定が行われてきている。糖尿病は、近年急速に増えた疾患であり、安全かつ簡便に連続的もしくは継続的に血糖値を測定することが重要である。従来用いられているバイオセンサでは、血液をサンプリングして血糖値を測定する方法が採用されている。近年では、血液以外の涙や粘液、汗、唾液等の体液中のグルコース濃度を測定する方法も提案され、フレキシブルあるいはウェラブルなバイオセンサとして報告されている。
グルコース濃度を測定するためのバイオセンサは、酵素の反応特異性を利用して、種々の生理活性物質を特異的に検出する酵素電極を使用している。このような酵素電極は、電気化学的手法あるいは光学的手法により試料の分析を行えるように構成されたものが汎用されている。電気化学的手法により試料の分析を行うための酵素電極は、通常、金電極、白金電極、カーボン電極等の電極表面上に酵素や電子受容体が固定化されている。
この酵素電極には、酸化還元酵素としてフラビンアデニンジヌクレオチド(以下、FADと略す)との複合タンパク質であるグルコースオキシダーゼを用い、電子受容体として例えばフェロセンを用いている。電子受容体をメディエータとして用いる反応系により、微量なグルコース濃度でも測定が可能である。また基板上の電極系を安価なカーボンを用いることにより、安価なバイオセンサを作製することができる。
このバイオセンサを血中等のグルコース濃度の計測に使用する場合、酵素電極表面へのタンパク質や血液細胞等の非特異吸着によりグルコースと酵素の反応が阻害され、感度の低下が生じる。さらにこれを、例えば皮下留置型のように生体内において長期間使用することは不可能である。
そこで、酵素電極の表面あるいは内部に生体適合性のある2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)含有ポリマーを被覆または介在することで、非特異吸着を抑制する方法が開示されている(特許文献1、2)。
また、電子受容体部位が結合したMPCポリマーを用いて電極を作製することで、非特異吸着を抑制する方法が開示されている(特許文献3)。
特開平04−283653号公報 WO2010/090271 特開平10−139832号公報
しかしながら、特許文献1〜3に開示されるような方法で酵素電極に生体適合性を付与したとしても、非特異吸着を完全には抑えることができない。感度向上および長期間安定な測定をするためには、タンパク質等の非特異吸着をより抑えた生体適合性ポリマーが望まれている。
また、生体適合性のある材料とカーボン電極等の電極とが別々に作製されているため、センサの作製が煩雑である。センサをより効率的に作製できることが望まれている。
本発明は、より効率的に生体適合性のある電極を作製でき、測定対象(例えば、グルコース)の濃度を高感度でかつ長期間安定して測定するために非特異吸着を抑制した電極およびそれを用いたバイオセンサを提供することを目的とする。
本発明者らは前記の課題を解決するため、鋭意検討した結果、親水性であるポリエチレンオキサイド鎖(以下、PEG鎖ともいう)を主鎖に組み込んだブロック重合体(B)が、導電性材料を水性液状媒体中に分散安定化させる機能をもつことを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(7)に関する。
(1) 導電性材料(A)と、ブロック重合体(B)と、水性液状媒体(D)とを含む水性導電性分散体であって、
前記ブロック重合体(B)が、水/1−オクタノール分配係数(LogP)の平均値が0以上2以下であるアクリル系モノマーから形成されるアクリル系ポリマーブロック(B1)と、ポリエチレンオキサイドブロック(B2)とを有し、
前記ブロック重合体(B)に含まれる、ポリエチレンオキサイドブロックの質量/[アクリル系ポリマーブロックとポリエチレンオキサイドブロックとの合計の質量]が0.01〜0.3である、
水性導電性分散体。
(2) 導電性材料(A)が炭素材料である、(1)記載の水性導電性分散体。
(3) 前記ブロック重合体(B)が、下記式(IA)、(IB)又は(IC)のいずれかの構造を介して結合されていることを特徴とする、(1)または(2)記載の水性導電性分散体。
(4) 前記ブロック重合体(B)に含まれるアクリル系ポリマーブロックとポリエチレンオキサイドブロックとが、下記式(IA)の構造で結合してなる、(1)〜(3)いずれか1項に記載の水性導電性分散体。

(5) 水分散性樹脂粒子(C)をさらに含む、(1)〜(4)いずれか1項に記載の水性導電性分散体。
(6) ベース基材と、該ベース基材上に配置され、測定対象液と直接接触するための電極とを有するバイオセンサであって、
前記電極が、(1)〜(5)いずれか1項に記載の水性導電性分散体より形成されたバイオセンサ。
(7) ベース基材と、該ベース基材上に配置され、測定対象液と直接接触するため電極とを有するバイオセンサの製造方法であって、
ベース基材の所定の位置に、(1)〜(5)いずれか1項に記載の水性導電性分散体を塗工し、水性液状媒体(D)を除去し、前記電極を形成する、
バイオセンサの製造方法。
本発明によれば、導電性材料の分散性・保存安定性に優れた水性導電性分散体と、それを用いた生体適合性を有する電極を含むバイオセンサ、およびその製造方法を提供できる。
すなわち、親水性に富み生体適合性のあるブロック重合体の利用により、分散性・保存安定性に優れる水性導電性分散体を提供でき、前記水性導電性分散体を用いて、より効率的に生体適合性のある電極を作製できるようになった。この電極は、導電性材料と生体適合性のあるビニル系重合体を含むため、生体適合性のある材料で電極を被覆あるいは介在させなくとも電極そのものがタンパク質の非特異吸着を十分に抑制できる。その結果、測定対象(例えば、グルコース)の濃度を高感度かつ長期間安定して測定できるバイオセンサを提供することができるようになる。
図1は、本発明のバイオセンサの模式的断面図を表す。 図2は、本発明の別の態様のバイオセンサの模式的断面図を表す。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明の水性導電性分散体、それを用いた電極およびバイオセンサについて説明する。
<導電性材料(A)>
導電性材料(A)は電極での電子伝導性を高めるために含有される。ここでは主に導電性炭素材料、金属材料を挙げるが、これに限るものではない。
本発明に用いる導電性炭素材料としては、特に限定されるものではないが、グラファイト、カーボンブラック、導電性炭素繊維(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー)、グラフェン系炭素材料(グラフェン、グラフェンナノプレートレット)、多孔質炭素、活性炭、ナノポーラスカーボン、フラーレン等を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。
カーボンブラックとしては、気体もしくは液体の原料を反応炉中で連続的に熱分解し製造するファーネスブラック、特にエチレン重油を原料としたケッチェンブラック、原料ガスを燃焼させて、その炎をチャンネル鋼底面にあて急冷し析出させたチャンネルブラック、ガスを原料とし燃焼と熱分解を周期的に繰り返すことにより得られるサーマルブラック、特にアセチレンガスを原料とするアセチレンブラックなどの各種のものを単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。また、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、中空カーボン等も使用できる。
カーボンブラックの酸化処理は、カーボンブラックを空気中で高温処理したり、硝酸や二酸化窒素、オゾン等で二次的に処理したりすることより、例えばフェノール基、キノン基、カルボキシル基、カルボニル基の様な酸素含有極性官能基をカーボン表面に直接導入(共有結合)する処理であり、カーボンブラックの分散性を向上させるために一般的に行われている。
用いるカーボンブラックの比表面積は、値が大きいほど、カーボンブラック粒子どうしの接触点が増えるため、電極の内部抵抗を下げるのに有利となる。具体的には、窒素の吸着量から求められる比表面積(BET)で、20m/g以上、1500m/g以下、好ましくは50m/g以上、1500m/g以下、更に好ましくは100m/g以上、1500m/g以下のものを使用することが望ましい。
市販のカーボンブラックとしては、例えば、トーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500等(東海カーボン社製、ファーネスブラック)、プリンテックスL等(デグサ社製、ファーネスブラック)、Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA等、Conductex SC ULTRA、Conductex 975 ULTRA等、PUER BLACK100、115、205等(コロンビヤン社製、ファーネスブラック)、#2350、#2400B、#2600B、#3050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B等(三菱化学社製、ファーネスブラック)、MONARCH1400、1300、900、VulcanXC−72R、BlackPearls2000等(キャボット社製、ファーネスブラック)、Ensaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、SuperP−Li(TIMCAL社製)、ケッチェンブラックEC−300J、EC−600JD(ライオン社製)、デンカブラック、デンカブラックHS−100、FX−35(電気化学工業社製、アセチレンブラック)等、グラファイトとしては、例えば人造黒鉛や燐片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛などの天然黒鉛が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
導電性炭素繊維としては石油由来の原料から焼成して得られるものが良いが、植物由来の原料からも焼成して得られるものも用いることができる。例えば石油由来の原料で製造される昭和電工社製のVGCFなどを挙げることができる。
カーボンブラック以外の炭素材料としては、グラフェン系炭素材料、多孔質炭素、及びナノポーラスカーボンの使用が比表面積等や導電性の面から好ましい。
グラフェン系炭素材料としては、炭素原子が同一平面上に六角形に配置し、グラファイトを構成する単原子層であるグラフェンが、単層若しくは、多層構造を有している炭素材料であれば良い。単層及び多層グラフェンは、グラファイトを機械的、化学的に剥がしたり、炭化水素系ガスからCVD法でなどにより合成されるが、合成コストや取り扱いを考慮すると、単層グラフェンよりも十数〜数十層積層された多層グラフェンが好ましい場合がある。
市販のグラフェン系炭素材料としては、例えば、xGnP−C−750、xGnP−M−5等のXGSciences社製グラフェンナノプレートレット等が挙げられる。
カーボンナノチューブは、グラフェンシートが環を巻いたナノスケールのチューブ状の構造を有しており、グラフェンシートの積層数によって、単層、多層に区別される。カーボンナノチューブは、原料や合成方法によって繊維径や長さ、結晶性、集合状態を制御することで、材料の比表面積、導電性等の諸物性を制御することが可能となる。グラフェン系炭素材料と同様、合成コストや取り扱いを考慮すると、単層カーボンナノチューブよりも多層カーボンナノチューブの方が好ましい場合がある。
市販のカーボンナノチューブとしては、VGCF、VGCF−H、VGCF−X等の昭和電工社製カーボンナノチューブ、名城ナノカーボン社製カーボンナノチューブ等が挙げられる。
多孔質炭素は、一般的に酢酸マグネシウムなどの鋳型材料と炭素原料を混合して焼成後、鋳型材料を除去することで得られる。鋳型材料の種類、粒径、規則性等を制御することで得られる多孔質炭素の物性を制御することが出来る。
市販の多孔質炭素としては、クノーベルMHグレード、クノーベルP(2)010グレード、クノーベルP(3)010グレード、クノーベルP(4)050、クノーベルMJ(4)030グレード、クノーベルMJ(4)010グレード、クノーベルMJ(4)150グレード等の東洋炭素社製の多孔質炭素等が挙げられる。
ナノポーラスカーボンは、表面にメソポーラス構造を有し粒径20〜50nm程度の球状粒子である。メソポーラス構造に由来する高い表面積、細孔容積により優れた吸着能を有している。
市販のナノポーラスカーボンとしては、Easy−N社製ナノポーラスカーボンが挙げられる。
グラファイトとしては、微粉末状の天然黒鉛および人造黒鉛を特に限定されず用いることができる。天然黒鉛としては、天然の鉱床から出土する薄片状の鱗片状黒鉛や塊状(鱗状)黒鉛、低結晶性の土状黒鉛に加え、鱗片状黒鉛を球状に整形した球状黒鉛、鱗片状黒鉛を硫酸等により化学処理した膨張黒鉛、膨張黒鉛を高温で熱処理して膨張化させた後、微細化した膨張化黒鉛などが挙げられる。人造黒鉛としては、メゾフェーズピッチや粉末コークスを高温で熱処理し黒鉛化したもの、黒鉛電極を粉砕したもの、熱硬化性樹脂ビーズを熱処理し黒鉛化した真球状のもの等が挙げられる。
市販のグラファイトとしては、例えば、J−CPB、CGB−10、SP−10(日本黒鉛社製)などの鱗片状黒鉛、HOP(日本黒鉛社製)、SRP−7(伊藤黒鉛社製)などの鱗状黒鉛、CP2000M、3000M(伊藤黒鉛社製)などの土状黒鉛、9532400A、9950200(伊藤黒鉛社製)などの膨張黒鉛、EC1500、EC1000 、EC500 、EC300 、EC100、EC50(伊藤黒鉛工業社製)等の膨張化黒鉛、SGO−10、SGP−5(SECカーボン社製)等の人造黒鉛が挙げられる。
本発明に用いる金属材料(金属粉末)は特に限定されず、例えば、電気抵抗率が20×10-6Ω・cm以下の金属材料を用いることができる。
上記金属材料としては、具体的には、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記金属粉末のうち、より低い体積抵抗率の電極等を形成することができる理由から、球状の銀粒子および/または銅粒子を用いるのがより好ましい。なお、銅粒子は、耐酸化性を改善する観点から、有機化合物、無機化合物、無機酸化物、銅以外の金属等で表面を改質または被覆した銅粒子を用いるのが好ましい。
本発明においては、上記金属粉末は、不定形、凝集状、鱗片状、微結晶状、球状、フレーク状等のものを特に限定なく用いることができるが、印刷性(特に、スクリーン印刷性)が良好となる理由から、平均粒子径が0.5〜10μmの金属粉末を用いるのが好ましい。
上記銀粒子の市販品の具体例としては、AG2−1C(球状銀粉、平均粒子径:1.0μm、DOWAエレクトロニクス社製)、AG4−8F(球状銀粉、平均粒子径:2.2μm、DOWAエレクトロニクス社製)、AG3−11F(球状銀粉、平均粒子径:1.4μm、DOWAエレクトロニクス社製)、AgC−102(フレーク状銀粉、平均粒子径:1.5μm、福田金属箔粉工業社製)、AgC−103(フレーク状銀粉、平均粒子径:1.5μm、福田金属箔粉工業社製)、AgC−A(フレーク状銀粉、平均粒子径:6.5μm、福田金属箔粉工業社製)、AgC−B(フレーク状銀粉、平均粒子径:3.5μm、福田金属箔粉工業社製)、Ag−XF301(フレーク状銀粉、平均粒子径:4.0μm、福田金属箔粉工業社製)、SA−0201(フレーク状銀粉、平均粒子径:2.4μm、METALOR社製)、AA−3462(フレーク状銀粉、平均粒子径:4.3μm、METALOR社製)等が挙げられる。
本発明の水性導電性分散体は、分散体の全質量中に導電性材料(A)を、質量比で0.1質量%以上95質量%以下、より好ましくは1質量%以上90質量%以下を含有させたものであることが好ましい。
<ブロック重合体(B)>
本発明において用いられるブロック重合体(B)は、水/1−オクタノール分配係数(LogP)の平均値が0以上2以下であるアクリル系モノマーから形成されるアクリル系ポリマーブロック(B1)とポリエチレンオキサイドブロック(B2)とを有すことで、タンパク質等の吸着性が制御される。アクリル系ポリマーブロック(B1)とポリエチレンオキサイドブロック(B2)とは共有結合で結合されている。
なお、アクリル系ポリマーブロック(B1)は、「アクリル系ポリマー部分」、「アクリル系ポリマーブロック(B1)」、「アクリル系ポリマー部分(B1)」と、
ポリエチレンオキサイドブロック(B2)は、「ポリエチレンオキサイド部分」、「ポリエチレンオキサイドブロック(B2)」、「ポリエチレンオキサイド部分(B2)」と、それぞれ記すことがある。また、前記のとおり、ポリエチレンオキサイドを「PEG」(又は「PEO」)と略すことがある。
また、アクリル系ポリマー部分は、アクリル系モノマーの重合体ブロックであり、このブロック部分は、アクリル系モノマーのホモポリマーでも、アクリル系モノマーのコポリマーでもどちらでも良い。コポリマーの場合、交互共重合、ランダム共重合、又はブロック共重合のいずれの形式でも良い。
ブロック重合体(B)は、前記導電性材料(A)を後述する水性液状媒体(D)中へ分散し易くし、分散状態を安定に保つ機能を担う。
アクリル系ポリマーブロック(B1)とポリエチレンオキサイドブロック(B2)のブロック重合体(B)は、下記式(IA)、(IB)又は(IC)のいずれかの構造(結合構造)を介して結合されていることが好ましい。その合成方法については、後述するが、特に限定されない。なお、ブロック重合体(B)は、下記式(IA)〜(IC)のいずれか一以上の結合構造を含むことが好ましいが、これら以外の結合構造を一部に含んでいてもよい。下記式(IA)の構造を介して結合してなる重合体であることがより好ましい。
上記の式(IA)で示される結合構造を有するブロック重合体(B)の合成方法の一例を挙げる。
例えば、ラジカル重合開始剤として4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(例えば、和光純薬工業株式会社の市販品「V−501」等)を用いてアクリル系ポリマーを合成すると、末端にカルボキシル基を有するアクリル樹脂が得られる。これに、ポリエチレンオキサイドブロック(B2)を構成する原料としてポリエチレングリコールを加え、エステル化反応をさせることで、アクリル系ポリマーブロック(B1)と、ポリエチレンオキサイドブロック(B2)とが上記式(IA)で結合してなるブロック重合体を得ることができる。
あるいは、上記の式(IA)で示される結合構造を有するブロック重合体(B)は、アクリル系ポリマーを合成する際のラジカル重合開始剤として、下記式(II)で示される、ポリエチレンオキサイドブロック(B2)とアゾ基を含む構造単位を有する高分子アゾ重合開始剤を用いて好ましく合成することができる。式中、m及びnは、それぞれ独立に1以上の整数である。高分子アゾ重合開始剤は、高分子セグメントとアゾ基(−N=N−)が繰り返し結合した構造を有しており、本実施形態では、高分子セグメントとしてポリエチレンオキサイドブロック(B2)を含む高分子アゾ開始剤を用いることで、容易にブロック重合体(B)を合成できる。
高分子アゾ重合開始剤を用いる場合、該開始剤中に含まれるアゾ基のモル数に対する、アクリル系モノマーの全モル数の比率を適宜変更することによって、ブロック重合体の質量平均分子量の調整ができる。
高分子アゾ重合開始剤の質量平均分子量は、5,000〜10万程度であることが好ましく、1万〜5万程度であることがより好ましい。また、該開始剤のポリエチレンオキサイドブロック(B2)の分子量は、800〜1万程度であることが好ましく、1,000〜8,000程度であることがより好ましい。
また、好ましくはmは15〜200、より好ましくはmは20〜100であり、好ましくはnは3〜50、より好ましくはnは4〜30である。
前記高分子アゾ重合開始剤は、ポリエチレンオキサイドブロック(B2)を有しているため、水、アルコール、及び有機溶剤に可溶であり、溶液重合、乳化重合、又は分散重合によりブロック重合体の合成が可能である。また、分子鎖骨格中に重合開始部分(ラジカル発生部分:―N=N−)を有しているため、別途重合開始剤を使用する必要がなく、さらには末端反応性マクロモノマーに比べてラジカルの反応性、及び安定性が高いという特徴を有している。
前記高分子アゾ重合開始剤は、・C(CH3)CN−(CH22−COO−(CH2CH2O)m−CO−(CH22−C(CH3)CN・にて示されるようなラジカルを生じ、後述するアクリル系モノマーを重合させる。そして、アクリル系モノマーから形成されるアクリル系ポリマーブロック(B1)と前記ラジカル由来の部分とが結合した主鎖を形成し、ブロック重合体を形成する。ポリエチレンオキサイドブロック(B2)は、ラジカルの一部に由来する。
高分子アゾ重合開始剤の具体例としては、和光純薬製の高分子アゾ開始剤VPE0201(上記式(II)の(CH2CH2O)の部分の分子量が約2000、nが6程度)などが例示される。
高分子アゾ重合開始剤の他に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ開始剤や、過酸化ベンゾイルのような有機過酸化物開始剤を併用することができる。これらの開始剤を併用することにより、開始効率を高め、効率よくアクリル系ポリマーブロック(B1)にPEGを組み込むことができ、残留モノマーを減らすことができる。
ブロック重合体(B)の合成時には、用途に応じてラウリルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、リモネン等の連鎖移動剤を使用して、分子量や末端構造を制御しても良い。
次に、アクリル系ポリマーブロック(B1)と、ポリエチレンオキサイドブロック(B2)とが上記式(IB)の構造を介して結合してなるブロック重合体(B)の合成方法について説明する。
例えば、アクリル系ポリマーブロック(B1)とポリエチレンオキサイドブロック(B2)とが、上記式(IB)の構造を介して結合してなるブロック重合体(B)は、アクリル系モノマーを、ヒドロキシ基を有するアゾ重合開始剤を用いて重合し、末端にヒドロキシ基を有するアクリル系ポリマーブロックを得る工程、及び前記アクリル系ポリマーブロック(B1)およびポリエチレングリコールと、2官能のイソシアネート化合物とをウレタン化反応させる工程を含む方法により製造することができる。
例えば、ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロパンアミド](例えば、和光純薬工業株式会社の市販品「VA−086」等)を用いてアクリル系ポリマーを合成すると、末端にヒドロキシル基を有するアクリル樹脂が得られる。これに、ポリエチレンオキサイドブロック(B2)を構成する原料としてポリエチレングリコールを加え、2官能イソシアネート化合物を用いてウレタン化反応させることで、アクリル系ポリマーブロック(B1)と、ポリエチレンオキサイドブロック(B2)とが結合してなるブロック重合体(B)を得ることができる。
ウレタン化反応の際用いられる2官能イソシアネート化合物としては、例えば、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネート等を挙げることができる。
さらに、アクリル系ポリマーブロック(B1)と、ポリエチレンオキサイドブロック(B2)とが上記式(IC)の構造を介して結合してなるブロック重合体(B)の合成方法について説明する。
例えば、アクリル系ポリマーブロック(B1)とポリエチレンオキサイドブロック(B2)とが、上記式(IC)の構造により結合してなるブロック重合体は、アクリル系モノマーを、カルボキシル基を有するアゾ重合開始剤を用いて重合し、カルボキシル基を有するアクリル系ポリマーブロック(B1)を得る工程、及び前記アクリル系ポリマーブロック(B1)にポリエチレングリコールをエステル化反応させる工程を含む方法により製造することができる。
例えば、ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]4水和物(例えば、和光純薬工業株式会社の市販品「VA−057」等)を用いてアクリル系ポリマーを合成すると、末端にカルボキシル基を有するアクリル樹脂が得られる。これに、ポリエチレンオキサイドブロック(B2)を構成する原料としてポリエチレングリコールを加え、エステル化反応をさせることで、アクリル系ポリマーブロック(B1)と、ポリエチレンオキサイドブロック(B2)とが結合してなるブロック重合体(B)を得ることができる。
なお、式(IB)〜(IC)のいずれかの構造を介して結合してなるブロック重合体(B)を得る際に、上記のような高分子ではないアゾ重合開始剤を用いる場合も、高分子アゾ重合開始剤を用いる際に併用し得るものとして記載した「他の開始剤」も適宜併用することができる。また、連鎖移動剤も適宜使用できる。
<アクリル系ポリマーブロック(B1)>
本発明においてアクリル系ポリマーブロック(B1)とは、アクリロイル基およびまたはメタクリロイル基を少なくとも一つ有する(メタ)アクリル系モノマーを全モノマーの内10%以上含むブロック構造部分を指す。アクリル系ポリマーブロック(B1)は、水/1−オクタノール分配係数(LogP)の平均値が0以上2以下であるモノマーから構成されることで、得られるポリマーのタンパク質や組織片との過度な相互作用を抑えることができ、優れたブロッキング性能を得ることができる。
LogPは、化学物質の性質を表す数値の一つであり、添加量に依存しない一定の値である。対象とする物質が、水と1−オクタノールの混合液において、水相とオクタノール相が接した系中で平衡状態にある場合を対象として、各相の濃度をその常用対数で示したものである。LogPが大きくなると、比較的に疎水性が増大する傾向があり、LogPが小さくなると、比較的に親水性が増大する傾向がある。
LogPの測定は、一般にJIS日本工業規格Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、LogPは実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。LogPの計算に用いる方法やソフトウェアについては公知のものを用いることができるが、本発明ではCambridgeSoft社のシステム:ChemdrawPro11.0に組み込まれたプログラムを用い、LogPを求めている。
水/1−オクタノール分配係数(LogP)が0以上2以下であるモノマーとしては、特に限定はされないが、例えば、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチルアクリレート等のアルキルエステル(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリルメトキシメチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシメチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]エチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有モノマー;
(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、ブタジエン、イソプレンなどのビニル基含有モノマー;
N−ビニルピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム、1−ビニルイミダゾール、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−カルボキシエチル、あるいはエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの繰り返し付加した末端にカルボキシル基を有するアルキレンオキサイド付加系コハク酸(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有モノマー;
などが挙げられる。
これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。これらの化合物のうち、特にn−ブチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレートが経済性や操作性の点から好ましく、また(メタ)アクリル酸をアクリル系ポリマーブロック(B1)に組み込んでおけば、導電性材料(A)の分散時に(メタ)アクリル酸由来のカルボキシル基をジメチルアミノエタノール等で中和して使用することで、電荷反発部位として機能し、導電性材料(A)の分散性、安定性の向上に寄与する。
本発明では、使用するアクリル系モノマーのLogPが0〜2の範囲であれば、ホモポリマー部分の原料として使用することができる。また、使用する(メタ)アクリル系モノマーのLogPが0〜2の範囲外であっても、その他の(メタ)アクリル系モノマーを含めたLogPの質量平均値が0〜2の範囲であれば、コポリマー部分の原料として使用することができる。
LogPが0〜2の範囲外のモノマーの中で、例えば、アルキル基の炭素数が5〜22のアクリレート、アルキル基の炭素数が4〜22のメタクリレート、スチレンなどのビニル基含有モノマー、マレイン酸等のカルボキシル基含有モノマー、4−ヒドロキシスチレン、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有モノマー、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどの側鎖にポリエチレンオキサイド部分を持つモノマーなどが挙げられる。
これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。これらの化合物のうち、特にスチレンなどの芳香族含有モノマー、炭素数が5〜22のアクリレート、アルキル基の炭素数が4〜22のメタクリレートが好ましい。これらモノマーをアクリル系ポリマーブロック(B1)に組み込んでおけば、ブロック重合体(B)の導電性材料(A)への吸着力を効果的に制御でき、分散性、安定性をより向上できる。
ブロック重合体(B)を構成する親水性に富むポリエチレンオキサイドブロック(B2)と疎水性に富むアクリル系ポリマーブロック(B1)のバランスにより、体液中の測定対象成分の吸着を効果的に制御し得る。ブロック重合体(B)は、PEG部分に対し、アクリル系ポリマー部分を多く含むものであることが好ましく、ポリエチレンオキサイドブロック(B2)の質量/[アクリル系ポリマーブロック(B1)とポリエチレンオキサイドブロック(B2)との合計の質量]は、0.01〜0.3であり、0.1〜0.25であることが好ましい。即ち、1〜30質量%であることが好ましく、10〜25質量%であることがより好ましい。
PEG部分(B2)の質量/[アクリル系ポリマー部分(B1)とPEG部分(B2)との合計の質量]は、合成に使用したモノマーの質量から計算することができる。
また、PEG部分を有する高分子アゾ重合開始剤を用いた場合は、PEG部分(B2)の質量を計算する際、厳密には、アゾ重合開始剤中のPEGの質量のみを計算して求めるべきであるが、本発明においては、PEG部分(B2)を有する高分子アゾ重合開始剤の質量をそのまま適応することにする。また、アクリル系ポリマー部分(B1)の質量は、重合に供したアクリル系モノマーの合計量である。
すなわち、アクリル系モノマー90質量部、PEG部分(B2)を有する高分子アゾ重合開始剤10質量部を用いて合成した場合、PEG部分(B2)の質量/[アクリル系ポリマー部分(B1)とPEG部分(B2)との合計の質量]は0.1となる。
<分子量>
ブロック重合体(B)の質量平均分子量は、1000〜10000000であることが好ましい。分子量が1000以上であることにより、導電性材料(A)の分散性・保存安定性を確保できる。また10000000以下であることにより、樹脂の溶剤溶解性が向上し、また得られる水性導電性分散液が適正な粘度になることから、塗工適性が向上する。
<質量平均分子量(Mw)の測定方法>
質量平均分子量Mwの測定は昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「GPC−101」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーである。本発明における測定は、カラムに「KF−805L」(昭和電工社製:GPCカラム:8mmID×300mmサイズ)を直列に2本接続して用い、試料濃度1wt%、流量1.0ml/min、圧力3.8MPa、カラム温度40℃の条件で行い、質量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。データ解析はメーカー内蔵ソフトを使用して検量線および分子量、ピーク面積を算出し、保持時間15〜30分の範囲を分析対象として質量平均分子量を求めた。
ブロック重合体(B)は、導電性材料(A)100質量部に対して、質量比で0.1質量部以上500質量部以下、より好ましくは1質量部以上400質量部以下であることが好ましい。導電性材料(A)の分散性、保存安定性、および生体適合性の点から、ブロック重合体(B)は、0.1質量部以上であることが好ましい。また、導電性向上の点からブロック重合体(B)は500質量部以下であることが好ましい。
また本発明は、必要に応じてブロック重合体(B)と組み合わせて、市販の水溶性樹脂型分散剤を併用してもよい。市販の水溶性樹脂型分散剤としては、例えば、Disperbyk−180、183、184、185、187、190、191、192、193、194、198、199、2010、2012、2015、2090、2091、2095、2096等(ビックケミー社製)、SOLSPERSE20000、27000、40000、41090、44000、46000、47000、64000、65000、66000等(日本ルーブリゾール社製)、フローレンG−700AMP、G−700DMEA、WK−13E、GW−1500、GW−1640等(共栄社化学社製)、Borchi(R)Gen1350、0851、1253、SN95、WNS等(松尾産業社製)、TEGODispers650、651、652、655、660C、715W、740W、750W、752W、755W、760W等(巴工業社製)、ポリビニルピロリドンPVP−K30、K85、K90等(ISPジャパン社製)、エスレックBL−1、BL−2、BL−5、BL−10、BL−1H、BL−2H、BL−S、BM−S、BM−1、BM−2、BM−5、BH−A、BX−1、BX−3、BX−5等(積水化学工業社製)、カルボキシメチルセルロースCMC1105、1110、1130、1140、1170、1190、1205、1210、1240、1250等(ダイセル化学工業社製)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
<水分散性樹脂粒子(C)>
水分散性樹脂粒子(C)は、後述する液状水性分散剤(D)中では粒子状であるが、加熱乾燥することにより水性液状媒体(D)を除去すると、樹脂粒子同士が融着し、膜を形成する。即ち、水分散性樹脂粒子(C)は、膜を形成する際、導電性材料(A)の粒子を結着させるバインダーとしての機能を主に担う。また、加熱乾燥した後の電極膜の耐水性、耐擦過性などを向上させることができるため、水性導電性分散液に水分散性樹脂粒子(C)を含有することが好ましい。
用いる水分散性樹脂粒子(C)としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、スチレン−ブタジエンゴムやフッ素ゴム等の合成ゴム、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、及びテトラフルオロエチレン等のフッ素原子を含む高分子化合物が挙げられる。又、これらの樹脂の変性物、混合物、又は共重合体でも良く、後述する水性液状媒体(D)に分散し得るものである。これら水分散性樹脂粒子(C)は、1種または複数を組み合わせて使用することも出来る。
水分散性樹脂粒子(C)が後述する水性液状媒体(D)に分散している状態の分散体は、以下のようにして得ることができる。
例えば、樹脂の原料である単量体を水性液状媒体(D)中で重合したり(乳化重合、懸濁重合等)、
樹脂の原料である単量体を溶解し得る有機溶剤中で重合した後(溶液重合)、有機溶剤を水性液状媒体(D)に置換したり、
樹脂の原料である単量体を溶解し得る有機溶剤と水性液状媒体(D)との混合液中で重合し、樹脂を水性液状媒体(D)に析出させた後、有機溶剤を除去したり、
等、種々の方法で得ることができる。
重合する際や重合後、水分散性樹脂粒子(C)を水性液状媒体(D)中に安定して分散させるために適宜乳化剤を使用することができる。
水分散性樹脂粒子(C)は、導電性材料(A)100質量部に対して、質量比で0.1質量部以上500質量部以下、より好ましくは5質量部以上400質量部以下であることが好ましい。導電性材料(A)を結着し耐水性、耐擦過性に優れる電極を形成するという点から、水分散性樹脂粒子(C)は0.1質量部以上であることが好ましい。また、導電性向上の点から水分散性樹脂粒子(C)は500質量部以下であることが好ましい。
<水性液状媒体(D)>
本発明に使用する水性液状媒体としては水を使用することが好ましいが、必要に応じて、例えば、ベース基材への塗工性向上のために、水と相溶する少量の液状媒体を使用しても良い。
水と相溶する液状媒体としては、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類等が挙げられ、水と相溶する範囲で使用しても良い。
<分散機・混合機>
本発明の水性導電性分散体は、導電性材料(A)とブロック重合体(B)と水性液状媒体(D)とを含む。水性液状媒体(D)に導電性材料(A)とブロック重合体(B)とを分散する際には、顔料分散等に通常用いられている分散機、混合機が使用できる。
例えば、ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類;エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社「フィルミックス」等のホモジナイザー類;ペイントシェーカー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、若しくは奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機;または、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、分散機としては、分散機からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーター及びベッセルがセラミック製又は樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーター及びベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズ、または、ジルコニアビーズ、若しくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。また、ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。
本発明の水性導電性分散体が水分散性樹脂粒子(C)を含む場合、水性液状媒体(D)に導電性材料(A)とブロック重合体(B)とを予め分散した後、水分散性樹脂粒子(C)の水性分散体を加えることもできるし、水性液状媒体(D)に水分散性樹脂粒子(C)が分散している分散体に、導電性材料(A)とブロック重合体(B)を加え、分散することもできる。
本発明の水性導電性分散体は、さらに酸化還元酵素や電子受容体を含んでいても良い。
<酸化還元酵素>
酸化還元酵素は、検出しようとする成分によって適宜選択される。
例えば、
検出対象成分がアルコールである場合には、酵素としてアルコールオキシダーゼやアルコールデヒドロゲナーゼを用い、
検出対象成分がグルコースである場合には、酵素としてβ−D−グルコースオキシダーゼやグルコースデヒドロゲナーゼを用い、
検出対象成分がコレステロールである場合には、酵素としてコレステロールオキシダーゼやコレステロールデヒドロゲナーゼを用い、
検出対象成分がホスファチジルコリンである場合には、酵素としてホスホリパーゼ及びコリンオキシダーゼを用い、
検出対象成分が尿素である場合には、酵素としてウレアーゼを用い、
検出対象成分が尿酸である場合には、酵素としてウリカーゼを用い、
検出対象成分が乳酸である場合には、酵素として乳酸デヒドロゲナーゼを用い、
検出対象成分が蓚酸である場合には、酵素として蓚酸デカルボキシラーゼを用い、
検出対象成分がピルビン酸である場合には、酵素としてピルビン酸オキシダーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼを用い、
検出対象成分がアスコルビン酸である場合には、酵素としてアスコルビン酸オキシダーゼを用い、
検出対象成分が乳酸である場合には、酵素として乳酸オキシダーゼを用い、
検出対象成分がキサンチンである場合には、酵素としてキサンチンオキシダーゼを用い、
検出対象成分がフルクトースである場合には、酵素としてフルクトースデヒドロゲナーゼを用い、
検出対象成分がクレアチンである場合には、酵素としてクレアチンホスホキナーゼ、クレアチンキナーゼを用い、
検出対象成分がグリセロールである場合には、酵素としてグリセロールオキシダーゼを用い、
検出対象成分がアシル-コエンザイムAである場合には、酵素としてアシル-コエンザイムAオキシダーゼを用い、
検出対象成分がチラミンである場合には、酵素としてチラミンオキシダーゼを用い、
検出対象成分がアミノ酸である場合には、酵素としてアミノ酸オキシダーゼを用い、
検出対象成分がグリコレートである場合には、酵素としてグリコレートオキシダーゼを用い、
検出対象成分がビリルビンである場合には、酵素としてビリルビンオキシダーゼを用い、
検出対象成分がガラクトースである場合には、酵素としてガラクトースオキシダーゼを用い、
検出対象成分がピリドキサールである場合には、酵素としてピリドキサール−4−オキシダーゼを用い、
検出対象成分がソルボースである場合には、酵素としてソルボースオキシダーゼを用い、
検出対象成分がグロノラクトースである場合には、酵素としてグロノラクトースオキシダーゼを用い、
検出対象成分がトリメチルアミンである場合には、酵素としてフラビン含有モノオキシダーゼを用いる。
<電子受容体>
電子受容体は、酵素等の生体触媒の反応に応じて酸化又は還元される低分子の酸化還元物質であり、生体触媒とカーボン基材間の電子移動を媒介する。したがって、電子受容体は、酵素等の生体触媒と電子を授受することができるとともに、カーボン基材とも電子を授受することができる物質である限り何れも使用することができる。
本発明で用いられる電子受容体の具体例としては、一重結合と二重結合が交互に並んだπ共役系化合物であることが好ましい。例えば、特に限定されるものではないが、5-メチルフェナジニウムメチルスルファート(フェナジンメトスルファート:PMS)、5-エチルフェナジニウムメチルスルファート(フェナジンエトスルファート:PES)等、のフェナジン系化合物、フェノチアジン系化合物、フェリシアン化カリウム等のフェリシアン化物、フェロセンやジメチルフェロセン、フェロセンカルボン酸等のフェロセン系化合物、ナフトキノン、アントラキノン、ハイロドキノン、ピロロキノリンキノン等のキノン系化合物、シトクロム系化合物、ベンジルビオロゲンやメチルビオロゲン等のビオロゲン系化合物、ジクロロフェノールインドフェノール等のインドフェノール系化合物等が挙げられる。
<バイオセンサ>
本発明のバイオセンサは、ベース基材と、該ベース基材上に配置され、測定対象液と直接接触するため電極とを有し、前記電極が前述の水性導電性分散体から形成されたものである。
図1のバイオセンサの断面模式図は、本発明の実施形態の一例である。
符号1はポリエステルやPET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂で作られた絶縁性のベース基板であり、この上に下地リード電極2が形成されている。リード電極2上には、本発明の水性導電性分散体を用いて形成した電極3、4が設けられ、この一方の電極3は作用極として用いられ、他方の電極4は対極となる。作用極3上には電子受容体、酵素を含む反応層5が設けられている。符号6は、電極3,4間を絶縁する絶縁層である。血液等試料の流路8を形成するためにカバー基板7が設けられている。例えば流路8に血液試料を導入することにより、血液中の被検物質の濃度を電気化学的に分析する。
<電極の作製方法>
電極3、4は、ベース基板1および下地リード電極2上に、本発明の水性導電性分散液を塗工し、水性液状媒体(D)を除去することにより、作製できる。
前記分散液を塗工する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スプレー、ディップコーター、スピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷等の一般的な方法を適用できる。
本発明のバイオセンサは、電極それ自体が生体適合性を発現するため、生体適合性のある材料で電極を被覆あるいは介在させなくとも、タンパク質や細胞の吸着抑制、血小板の粘着や活性化を十分に抑制できる。すなわち、より効率的に生体適合性のある電極を作製でき、グルコース濃度の高感度な測定および長期間安定な測定を可能にする。
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における、「部」および「%」は、「質量部」および「質量%」をそれぞれ表す。
[製造例1]
<ブロック重合体(B)の調製>
温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器、滴下管を備えた反応容器に、窒素気流下、有機溶媒としてメチルエチルケトン(以下、MEKと略す)150質量部を仕込み、撹拌下80℃で30分加熱した。滴下管にモノマーとしてメトキシエチルアクリレートを80質量部、2‐エチルヘキシルアクリレートを20質量部、重合開始剤としてVPE0201(和光純薬工業社製:マクロアゾ開始剤)を25質量部、溶媒としてMEKを10質量部仕込み、2時間かけて滴下した。滴下終了後6時間熟成した。その後、室温に冷却し反応を停止した。その後、ダイヤフラムポンプでMEKを除去し、ブロック重合体(B−1)を得た。得られた重合体のMwは57400であった。
[製造例2〜7][比較製造例1、2]
表1に示す配合組成で、製造例1と同様の方法でブロック重合体(B)を合成した。
[比較製造例3]
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、1−ブタノール98.0 部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱して、2−エチルヘキシルメタクリレート20部、スチレン50部、アクリル酸30部、および2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)2.0部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で3時間反応させた後、固形分測定によって転化率が98%超えたことを確認後、室温まで冷却し反応を停止した。その後、ダイヤフラムポンプで1−ブタノールを除去し、比較用の共重合体(BH−3)が得られ、その質量平均分子量は52300だった。
表中の記号は以下の通り。
MEA:メトキシエチルアクリレート、LogP=0.48
BA:ブチルアクリレート、LogP=1.88
MMA:メチルメタクリレート、LogP=1.11
AA:アクリル酸、LogP=0.38
BMA:ブチルメタクリレート、LogP=2.23
St:スチレン、LogP=2.70
2EHA: 2−エチルヘキシルアクリレート、LogP=3.53
LMA:ラウリルメタクリレート、LogP=6.64
ISTA:イソステアリルアクリレート、LogP=7.47
VPE0201:和光純薬工業社製マクロアゾ開始剤
AIBN:2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)
<水性導電性分散体の調整>
[実施例1]
下記の組成の混合物をディスパーで分散し、水性導電性分散体(S−1)を得た。
ケッチェンブラック(KB) EC−300J(ライオン社製) 2.5部
黒鉛 SGO−10(SECカーボン社製) 7.5部
純水 85.5部
製造例1のブロック重合体(B−1) 3.0部
水分散性樹脂粒子W−168の水性分散体(固形分50%)(トーヨーケム社製)
1.5 部
[実施例2〜10]、[比較例1〜6]
導電性材料(A)とブロック重合体(B)とその他成分の種類を表2に記載したように変更する以外は、水性導電性分散体(S−1)と同様にして、水性導電性分散体(S−2〜10)と比較用水性導電性分散体(SH−1)〜(SH−6)を得た。
<水性導電性分散体の分散性評価>
実施例1〜10の水性導電性分散液(S−1)〜(S−10)と、比較例1〜6の水性導電性分散液(SH−1)〜(SH−6)を作製した直後の分散液を目視で確認し、下記の基準で判定した。
〇:均一に導電性材料(A)が分散されている。
△:均一に導電性材料(A)が分散されているが、水性導電性分散液の粘度が著しく高いまたはゲル化している。
×:導電性材料(A)の分離や沈降が確認される。
<水性導電性分散体の保存安定性評価>
実施例1〜10の水性導電性分散液(S−1)〜(S−10)と、比較例1〜6の水性導電性分散液(SH−1)〜(SH−6)を作製し、室温で1日放置した後に分散液を目視で確認し、下記の基準で判定した。
〇:作製直後と変化がない
△:作製直後と流動性に顕著な差がみられるが、導電性材料(A)の分離や沈降等は見られない
×:導電性材料(A)の分離や沈降が確認される
以上の基準に従い、水性導電性分散体の分散性・保存安定性の評価結果を表2に示す。


表中の記号は以下の通り。
DMAE:ジメチルアミノエタノール
CMC:カルボキシメチルセルロース
EC−300J:KB(ライオン社製)
SGO−10:黒鉛(SECカーボン社製)
<バイオセンサ用電極膜の作製>
実施例1〜10の水性導電性分散液(S−1)〜(S−10)と、比較例1〜6の水性導電性分散液(SH−1)〜(SH−6)を、PET(ポリエチレンテレフタレート)基材上に乾燥後の目付け量が2mg/cmとなるように塗布し、大気雰囲気中80℃、10分間乾燥し、バイオセンサ用電極膜をそれぞれ作製した。
<塗工性評価>
作製したバイオセンサ用電極膜の塗工性評価を、下記に示す方法によって評価した。バイオセンサ用電極膜を、ビデオマイクロスコープVHX−900(キーエンス社製)にて500倍で観察し、塗工ムラ(ムラ:カソード層の濃淡により評価)およびピンホール(カソード層が塗布されていない欠陥の有無により評価)について、下記の基準で判定した。
(ムラ)
○:電極の濃淡が確認されない(良好)。
△:電極の濃淡が1〜3箇所あるが極めて微小領域である(実用上問題なし)。
×:電極の濃淡が4箇所以上確認される、または濃淡の縞の長さが5mm以上のもの1個以上(不良)。
(ピンホ−ル)
○:ピンホールが1つも確認されない(良好)。
△:ピンホールが1〜3個あるが極めて微小である(実用上問題なし)。
×:ピンホールが4箇所以上確認される、または直径1mm以上のピンホールが1個以上(極めて不良)。
<血小板粘着性評価>
上記バイオセンサ用電極膜を15mmφに打ち抜き、24ウェルプレートにシリコーンリングで固定し、リン酸緩衝生理食塩水(以下、PBSという。)を各ウェルにそれぞれ1ml添加して、一晩表面を平衡化する。平衡化後、各ウェル内のPBSを吸引除去し、ヒト血小板多血漿を各ウェルにそれぞれ0.7ml加えて37℃で3時間培養する。
培養後、各ウェルから電極膜片を取り出し、PBSで3回リンスし、2.5%グルタルアルデヒド溶液にて1時間固定化を行う。固定化後、電極膜片をエタノール水溶液で脱水して、凍結乾燥後、金蒸着をする。これを走査型顕微鏡で観察し、血小板の粘着性を評価した。ここでは、下記の4段階の評価基準に基づいて評価した。
◎:バイオセンサ用電極膜24枚のすべてに血小板の粘着が全くみられない。
〇:バイオセンサ用電極膜24枚のうち一部に血小板の粘着がみられる。
△:バイオセンサ用電極膜24枚のうち多くに血小板の粘着が多くみられるが、フィブリンネットの形成は確認できない。
×:バイオセンサ用電極膜24枚のうち多くに血小板の粘着とともにフィブリンネットの形成も確認できる。
<抗血栓性評価>
上記血小板粘着性評価の場合と同様にして、24ウェルプレート内にてバイオセンサ用電極膜にPBSを添加し、一晩表面を平衡化する。平衡化後、各ウェル内のPBSを吸引除去し、下記カルシウム再添加血を各ウェルに0.7mlずつ分注し、1時間培養する。
培養後、各ウェルから電極膜片を取り出し、PBSでリンスして、目視にて血栓塊の剥がれやすさを確認することで、全血接触の評価を行った。ここでは、下記の3段階の評価基準に基づいて評価した。
◎:バイオセンサ用電極膜24枚のすべてに血栓塊の付着が全くみられない。
〇:バイオセンサ用電極膜24枚のうち一部に少量の血栓塊の付着がみられる。
×:バイオセンサ用電極膜24枚のうち多くに多量の血栓塊の付着がみられる。

カルシウム再添加血:ヒト鮮血クエン酸血10mlに対して、塩化カルシウム水溶液(1mol/l)を178μl実験直前に添加したもの。
<タンパク質吸着性評価>
上記バイオセンサ用電極膜を15mmφに打ち抜き(試験片)、24ウェルプレートにシリコーンリングで固定し、PBS(リン酸緩衝液)で10000倍に希釈したHRP−IgG(Horseradishperoxidase-ImmunoglobulinG)溶液1mlを、上記試験片上の加え、試験片の片面(上面)だけが、前記タンパク質溶液に接するよう試験片を浸漬した。室温で1時間インキュベートした後、上記試験片を別の空ウェルに移し、PBS−T(0.1%Tween20)を用いて4回洗浄した。
洗浄後、上記試料片の入ったウェル内に染色液としてTMBZ(3,3',5,5'-Tetramethylbenzidine)溶液を各々1ml分注し、室温で10分間インキュベートした。次いで、StopSolution(タカラバイオ製WashandStopSolutionforELISAwithoutSulfuric Acid)1mlを各ウェルに分注後、試験片を取り除き、各ウェル内の溶液の吸光度を測定した。測定機器は、MITHRAS2LD943-M2Mマイクロプレートリーダーを使用し、450nm(副波長650nm)の吸光度を測定した。
別途、対照として、PETフィルムを用いて同様の処理および測定を行い、その吸光度を基準値とし、下記の4段階の評価基準に基づいて評価した。
◎:0.2≧試験片の場合の吸光度/PETフィルムの場合の吸光度
○:0.5≧試験片の場合の吸光度/PETフィルムの場合の吸光度>0.2
△:1≧試験片の場合の吸光度/PETフィルムの場合の吸光度>0.5
×:試験片の場合の吸光度/PETフィルムの場合の吸光度>1
以上の基準に従い、バイオセンサ用電極の塗工性評価、タンパク質吸着性評価の結果を表3に示す。
表3の結果を見て分かる通り、実施例1〜10の水性導電性分散液からなる電極は、電極表面にムラやピンホールがなく、平滑性の高い均一な電極膜が形成され、かつ血小板、血栓、タンパク質吸着性も低いことが示された。これに対し、比較例1〜6の水性導電性分散液からなる電極は、均一な電極膜が形成されないものがあり、タンパク質の吸着量も多かった。
<グルコースセンサとしての出力特性>
[グルコース分析用生体センサの作製1]
ポリエステル樹脂基板1上にスクリーン印刷技術により下地リード電極2を印刷後、加熱乾燥した。リード電極2上に、実施例1の水性導電性分散液(S−1)を純水で10倍に希釈したものを7.0μL滴下し、大気雰囲気中80℃、10分間乾燥することにより作用極3、対極4を作製した。予め作用極3、対極4の位置に直径400μmの開口部をリソグラフィーにより設けておいた絶縁膜6を、基板1上に重ね、加熱圧着した。
ここに、フェロセン2部、イソプロピルアルコール98部からなる混合液0.05μLを作用極3上の開口部内に均一に滴下、乾燥し、この上にグルコースオキシダーゼ(GOD:1500unit/mLinPBS)溶液を滴下し、これを乾燥させて、グルコース分析用生体センサを作製した。
同様の方法で、実施例1の水性導電性分散液(S−1)を実施例2〜10では水性導電性分散液(S−2)〜(S−10)に、比較例1〜6では水性導電性分散液(SH−1)〜(SH−6)にそれぞれ変更して作用極3、対極4を作製し、それぞれグルコース分析用生体センサを作製した。
[試料液1の作製]
リン酸緩衝液(PBS)に、グルコースを溶解し、グルコース濃度が50、100、200、250、300mg/dlとなるように溶液を調整した。合わせて、グルコース濃度が0mg/dlの溶液も準備した。
[試料液2の作製]
リン酸緩衝液(PBS)にアルブミン(4.5g/dl)とγ−グロブリン(1.6g/dl)を溶かし、タンパク質溶液を作製した。その溶液20mlに1.25g/dlのグルコース溶液を5ml添加し、グルコース濃度が250mg/dlとなるように調整した。
同様に、グルコース濃度が50、100、200、300mg/dlとなるように溶液を調整した。合わせて、グルコース濃度が0mg/dlの溶液も準備した。
<グルコースセンサとしての応答感度>
[試料液1の酸化電流の測定]
各実施例、各比較例のグルコース分析用センサをそれぞれ複数(試料液1、2のグルコース濃度の種類に応じた数)用意し、各グルコース分析用センサの酵素反応層5および対極4の両電極を覆うように、各濃度のグルコース溶液を滴下し、対極4を基準にして作用極3に、フェロセンの酸化還元電位である+350mVの定電圧を印加し、30秒後の酸化電流を測定した。
[試料液2の酸化電流の測定]
試料液2についても試料液1の場合と同様に、グルコース濃度が0、50、100、200、250、300mg/dlの場合の酸化電流を測定した。
[評価]
試料液1の酸化電流値を基準に、グルコース濃度が同一の試料液2の酸化電流値を比較し、以下の基準で評価した。
◎:全濃度領域で、試料液2の酸化電流値は試料液1の酸化電流値の50%以上を保持している。
○:100mg/dl以上の濃度領域では試料液2の酸化電流値は試料液1の酸化電流値の±50%以上を保持しているが、100mg/dl未満の濃度領域では試料液2の酸化電流値は試料液1の酸化電流値の50%未満である。
△:200mg/dl以上の濃度領域では試料液2の酸化電流値は試料液1の酸化電流値の50%以上を保持しているが、200mg/dl未満の濃度領域では試料液2の酸化電流値は試料液1の酸化電流値の50%未満である。
×:300mg/dlの濃度では試料液2の酸化電流値は試料液1の酸化電流値の50%以上を保持しているが、250mg/dl以下の濃度領域では試料液2の酸化電流値は試料液1の酸化電流値の50%未満である。
<グルコースセンサとしての安定性>
グルコース濃度が250mg/dlの試料液2を酵素反応層5および対極4の両電極を覆うように滴下し、すぐに対極4を基準にして作用極3にフェロセンの酸化還元電位である+350mVの定電圧を印加し、30秒後の酸化電流を測定した。これを初期の電流値とした。
次にグルコース濃度が250mg/dlの試料液2を酵素反応層5および対極4の両電極を覆うように滴下したものを、1日室温で放置した。なお、電極上の試料液が乾燥しないように適宜試料液を滴下した。1日経過後、対極4を基準にして作用極3にフェロセンの酸化還元電位である+350mVの定電圧を印加し、30秒後の酸化電流を測定した。これを一日経過後の電流値とした。
下記の3段階の評価基準に基づいて評価した。
◎:初期値の90%以上の値を保持している
○:初期値の50%以上の値を保持している
×:初期値の50%未満の値を保持している
以上の基準に従い、グルコースセンサとしての出力特性を評価した結果を表4に示す。

表4の結果を見て分かる通り、実施例1〜10の水性導電性分散液からなる電極を用いたグルコースセンサでは、タンパク質溶液中でも広範囲の濃度領域で高感度な出力特性を示し、かつ一日経過後の感度も保持していた。これより、安定的に高感度測定が可能であることが示された。
これに対し、比較例1〜6の水性導電性分散液からなる電極を用いたグルコースセンサでは、タンパク質溶液中では得られる酸化電流値が低く、特にグルコース濃度が低い領域では出力値が増加しなかった。さらに一日経過後の感度も落ちていた。
以上の結果から、本発明の水性導電性分散液からなる電極を使用したグルコースセンサは、タンパク質の吸着が抑えられたため、安定的に高感度な分析を行うことができた。また、生体適合性のある材料で電極を被覆あるいは介在させなくとも電極そのものがタンパク質の吸着を抑制できるので、より効率的にグルコースセンサを作製できた。
本発明の水性導電性分散液は、導電性材料の分散性・保存安定性に優れ、生体適合性に優れたバイオセンサ用電極に適用できる。このバイオセンサに試料液を添加することにより、基質濃度を測定することができる。そして、タンパク質や赤血球などの固形成分の吸着による応答への影響がなくなり、長期間安定した高感度な分析が可能となる。さらに、生体適合性のある材料で電極を被覆あるいは介在させなくとも電極そのものがタンパク質の吸着を抑制できるので、より効率的にバイオセンサを作製できる。
1:基材
2:下地リード電極
3:作用電極
4:対電極
5:電子受容体、酵素を含む反応層
6:絶縁層
7:カバー基板
8:流路

Claims (7)

  1. 導電性材料(A)と、ブロック重合体(B)と、水性液状媒体(D)とを含む水性導電性分散体であって、
    前記ブロック重合体(B)が、水/1−オクタノール分配係数(LogP)の平均値が0以上2以下であるアクリル系モノマーから形成されるアクリル系ポリマーブロック(B1)と、ポリエチレンオキサイドブロック(B2)とを有し、
    前記ブロック重合体(B)に含まれる、ポリエチレンオキサイドブロックの質量/[アクリル系ポリマーブロックとポリエチレンオキサイドブロックとの合計の質量]が0.01〜0.3である、
    水性導電性分散体。
  2. 導電性材料(A)が炭素材料である、請求項1記載の水性導電性分散体。
  3. 前記ブロック重合体(B)が、下記式(IA)、(IB)又は(IC)のいずれかの構造を介して結合されていることを特徴とする、請求項1または2記載の水性導電性分散体。

  4. 前記ブロック重合体(B)に含まれるアクリル系ポリマーブロックとポリエチレンオキサイドブロックとが、下記式(IA)の構造で結合してなる、請求項1〜3いずれか1項に記載の水性導電性分散体。

  5. 水分散性樹脂粒子(C)をさらに含む、請求項1〜4いずれか1項に記載の水性導電性分散体。
  6. ベース基材と、該ベース基材上に配置され、測定対象液と直接接触するための電極とを有するバイオセンサであって、
    前記電極が、請求項1〜5いずれか1項に記載の水性導電性分散体より形成されたバイオセンサ。
  7. ベース基材と、該ベース基材上に配置され、測定対象液と直接接触するため電極とを有するバイオセンサの製造方法であって、
    ベース基材の所定の位置に、請求項1〜5いずれか1項に記載の水性導電性分散体を塗工し、水性液状媒体(D)を除去し、前記電極を形成する、
    バイオセンサの製造方法。
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