以下、実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は実施の形態における電線コネクタと基板コネクタとが嵌合した状態を示す斜視図、図2は実施の形態における電線コネクタと基板コネクタとが嵌合する前の状態を示す斜視図、図3は実施の形態における電線コネクタと基板コネクタとが嵌合した状態を示す三面図、図4は実施の形態における電線コネクタと基板コネクタとが嵌合する前の状態を示す三面図である。なお、図3及び4において、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は後面図であって基板コネクタの後方から観た図である。
図において、1は本実施の形態における一方のコネクタである第1コネクタとしての電線コネクタであり、複数の電線91を備えるケーブルの終端に接続されるものである。また、101は本実施の形態における他方のコネクタである第2コネクタとしての基板コネクタであり図示されない基板としての回路基板に実装されるものである。
図に示される例において、前記基板コネクタ101は、いわゆるライトアングルタイプのコネクタであり、回路基板に対して横向きの状態で、下側の面(図3(b)及び4(b)における右側の面)が回路基板の表面に対向するようにして実装される。そのため、挿入凹部113は回路基板に対して平行に延在する。なお、前記基板コネクタ101は、ライトアングルタイプに限定されるものではなく、いわゆるストレートタイプのコネクタであってもよい。ストレートタイプの場合、前記基板コネクタ101は、回路基板に対して立設された状態で、すなわち、上を向いて開口した状態で実装され、前記挿入凹部113は、回路基板に対して垂直な方向に延在する。ここでは、説明の都合上、基板コネクタ101がライトアングルタイプのコネクタである場合についてのみ説明する。
なお、本実施の形態において、電線コネクタ1及び基板コネクタ101の各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、電線コネクタ1及び基板コネクタ101が図に示される姿勢である場合に適切であるが、電線コネクタ1及び基板コネクタ101の姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
前記基板コネクタ101は、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に形成され、前記電線コネクタ1と嵌合する第2ハウジングとしてのハウジング111と、該ハウジング111に装填された金属製の第2端子としての基板側端子151と、前記ハウジング111を回路基板に固定する補助金具としての金属製のネイル181とを備える。
前記ハウジング111は、全体的に、電線コネクタ1との嵌合方向に対して直交する方向であって前記基板側端子151の配列方向、すなわち、基板コネクタ101の幅方向に延在する概略直方体の箱状の部材である。そして、前記ハウジング111は、略矩(く)形の背板部115と、該背板部115の上端縁から嵌合方向に延在する側板としての第1板部112と、前記背板部115の下端縁から嵌合方向に延在する他方の側板としての第2板部116と、前記背板部115の両側端縁から嵌合方向に延在する一対の側壁部117とを含んでいる。前記挿入凹部113は、周囲5面を前記背板部115、第1板部112、第2板部116及び側壁部117によって画定され、前方に向いて開口した略直方体状の空間となっている。なお、前記第1板部112と第2板部116とは互いに対向し、一対の側壁部117同士は互いに対向している。
そして、各基板側端子151は、前記背板部115に形成された貫通孔(こう)に嵌(はめ)込まれることによって、前記背板部115に取付けられている。各基板側端子151の先端近傍は、背板部115から前方に向けて延出して挿入凹部113内に露出し、前記電線コネクタ1の第1端子としての電線側端子と接触する部分となっている。また、各基板側端子151の後端近傍は、背板部115の下端縁から後方に向けて延出し、回路基板の表面に形成された端子接続パッドにはんだ付等によって電気的に接続されるソルダーテール部152となっている。前記端子接続パッドは、例えば、回路基板が有する導電トレースに導通されている。図に示される例において、基板側端子151は、合計10本がピッチ約2.0〔mm〕で、基板コネクタ101の幅方向に並んで1列に配列されているが、基板側端子151の本数、ピッチ、列数等は任意に変更することができる。
また、両側の側壁部117にはネイル181が取付けられている。該ネイル181の下端は、回路基板の表面に形成された固定用パッドにはんだ付等によって、固定される。
前記第1板部112には、第2コネクタロック部としての基板側ロック部135がハウジング111の幅方向に間隔を空けて並ぶように一体的に形成されている。該基板側ロック部135は、図に示されるように、第1板部112の上面であるほぼ平坦(たん)な外面112aから外方に向いて突出するような形状を備える。そして、前記基板側ロック部135は、第2中央ロック部としての基板側中央ロック部135bと、該基板側中央ロック部135bの左右両側に形成された一対の第2端部ロック部としての基板側端部ロック部135aとを含んでいる。左右の基板側端部ロック部135a同士は、できる限り広い間隔を空けて、離間していることが望ましい。
なお、図に示される例において、一対の基板側端部ロック部135aの間に形成された基板側中央ロック部135bは単数であるが、該基板側中央ロック部135bは2つ以上であってもよい。すなわち、基板側ロック部135は、3つ以上であれば、いくつであってもよい。ここでは、説明の都合上、基板側ロック部135の数が3つである場合についてのみ説明する。
また、前記第2板部116における基板側ロック部135と対応する部位には、電線コネクタ1のハウジング11とスライド嵌合するスライド嵌合部118が形成されることが望ましい。該スライド嵌合部118は、図に示される例においては、第2板部116の内面から上方に向けて突出して基板コネクタ101の前後方向に延在する凸条の嵌合キーのように形成されているが、この場合、電線コネクタ1のハウジング11の図示されない第2板部の外面には、前記スライド嵌合部118と嵌合する凹条のキー溝が形成される。また、前記スライド嵌合部118は、第2板部116の内面から下方に向けて凹入して基板コネクタ101の前後方向に延在する凹条のキー溝のような形状に形成されていてもよい。この場合、電線コネクタ1のハウジング11の第2板部の外面には、前記スライド嵌合部118と嵌合する凸条の嵌合キーが形成される。
なお、前記スライド嵌合部118は、基板側ロック部135と対応する部位であれば第2板部116におけるどの部位に形成されていてもよいが、図に示される例のように、基板側中央ロック部135bと対応する部位であることが望ましい。
さらに、前記第1板部112の内面には、任意の箇所に電線コネクタ1のハウジング11の極性用凸部22とスライド嵌合する極性用凹部122が形成されることが望ましい。該極性用凹部122は、図に示される例においては、第1板部112の内面から上方に向けて凹入して基板コネクタ101の前後方向に延在する凹条のキー溝のような凹部が左右に2つずつ、合計4つ形成されているが、極性用凹部122の数、形成される部位等は任意に変更することができる。
前記電線コネクタ1は、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に形成され、前記基板コネクタ101と嵌合する第1ハウジングとしてのハウジング11と、該ハウジング11に装填された金属製の第1端子としての図示されない電線側端子とを備える。
前記ハウジング11は、基板コネクタ101との嵌合方向に対して直交する方向であって電線91の配列方向、すなわち、電線コネクタ1の幅方向に延在する概略直方体の箱状の部材である。そして、前記ハウジング11は、略矩形の背板部15と、該背板部15の上端縁から嵌合方向に延在する側板としての第1板部12と、前記背板部15の下端縁から嵌合方向に延在する他方の側板としての図示されない第2板部と、前記背板部15の両側端縁から嵌合方向に延在する一対の側壁部17とを含んでいる。なお、前記第1板部12と第2板部とは互いに対向し、一対の側壁部17同士は互いに対向している。
また、前記ハウジング11は、背板部15に一端が開口して電線コネクタ1の前後方向に延在する複数の端子収容凹部13を含んでいる。各端子収容凹部13内には、電線91の前端に接続されて固定された図示されない電線側端子が、収容されて保持されている。そして、各電線91は、端子収容凹部13の開口から、ハウジング11の後方に延出した状態となっている。図に示される例において、電線側端子及び電線91は、合計10本がピッチ約2.0〔mm〕で、電線コネクタ1の幅方向に並んで1列に配列されているが、電線側端子及び電線91の本数、ピッチ、列数等は任意に変更することができる。
前記第1板部12には、ロック用腕部としての可動アーム31が一体的に形成されている。該可動アーム31は、図に示されるように、略矩形の平板状の本体部31aを備え、連結部32を介して、第1板部12の上面であるほぼ平坦な外面12aの外方に位置する。そして、電線コネクタ1のハウジング11と基板コネクタ101のハウジング111とが嵌合すると、該ハウジング111の第1板部112の外面112aの少なくとも一部を前記可動アーム31が覆うようになっている。前記連結部32は、可動アーム31の本体部31aの前端と後端との間に接続された弾性的に変形可能な部材であり、これにより、前記可動アーム31は、連結部32に接続された箇所を中心として、第1板部12に対して揺動可能となっている。
また、前記可動アーム31の前端部分には、第1コネクタロック部としての電線側ロック部35がハウジング11の幅方向に間隔を空けて並ぶように一体的に形成されている。なお、前記電線側ロック部35は、後述されるように、第1中央ロック部としての電線側中央ロック部35bと、該電線側中央ロック部35bの左右両側に形成された一対の第1端部ロック部としての電線側端部ロック部35aとを含んでいる。
そして、電線側中央ロック部35b及び電線側端部ロック部35aは、基板側ロック部135の基板側中央ロック部135b及び基板側端部ロック部135aと係合する部材であり、基板側中央ロック部135b及び基板側端部ロック部135aと対応する位置に、基板側中央ロック部135b及び基板側端部ロック部135aと対応する数だけ形成されている。つまり、電線側中央ロック部35bは単数であるが、該電線側中央ロック部35bは2つ以上であってもよい。すなわち、電線側ロック部35は、3つ以上であれば、いくつであってもよい。ここでは、説明の都合上、電線側ロック部35の数が3つである場合についてのみ説明する。
なお、図に示される例において、一対の電線側端部ロック部35aは、可動アーム31の本体部31aの前端部分の左右両端から、幅方向外方に突出するように形成されている。
本実施の形態において、前記可動アーム31の本体部31aの後端近傍部分は、オペレータがその手指等によって操作する操作部37となっている。基板コネクタ101の基板側ロック部135と電線コネクタ1の電線側ロック部35とから成るロック機構は、いわゆるポジティブロックであり、ロックする際には、オペレータは基板側ロック部135も電線側ロック部35も操作する必要がないが、ロックを解除する際には、オペレータは、その手指等によって可動アーム31の操作部37を操作して電線側ロック部35を変位させる必要がある。具体的には、オペレータが操作部37を押下げると、可動アーム31が揺動してその前端部分に形成された電線側ロック部35が上昇し、これにより、基板側ロック部135と電線側ロック部35との係合状態が解除され、ロックが解除される。
さらに、前記第1板部12の外面12aには、任意の箇所に基板コネクタ101のハウジング111の極性用凹部122とスライド嵌合する極性用凸部22が形成されることが望ましい。該極性用凸部22は、図に示される例においては、第1板部12の外面12aから上方に向けて突出して電線コネクタ1の前後方向に延在する凸条の嵌合キーのような凸部が左右に2つずつ、合計4つ形成されているが、極性用凸部22の数、形成される部位等は任意に変更することができる。
次に、前記電線側ロック部35及び基板側ロック部135の構成についてより詳細に説明する。
図5は実施の形態における電線コネクタの電線側ロック部と基板コネクタの基板側ロック部との位置関係を示す要部上面図、図6は実施の形態における電線コネクタの電線側ロック部と基板コネクタの基板側ロック部との位置関係を示す要部斜視図、図7は実施の形態における電線コネクタの可動アームの内側を示す斜視図である。なお、図5及び6において、(a)は電線コネクタと基板コネクタとが嵌合する前の状態を示す図、(b)は電線コネクタと基板コネクタとが嵌合した状態を示す図であり、図7において、(a)は前方斜め下から観た図、(b)は後方斜め下から観た図である。
図7に示されるように、可動アーム31の本体部31aの内側、すなわち、第1板部12の外面12aと対向する側には、幅方向の中心部において外方(上方)に向けて凹入する凹部33が形成されている。該凹部33は本体部31aの前端部分には形成されておらず、これにより、該前端部分の内側は、凹部33よりも内方(下方)に向けて、すなわち、第1板部12の外面12aに向けて相対的に突出する電線側中央ロック部35bとなっている。
前記凹部33の深さは、前記電線側中央ロック部35bと基板コネクタ101の基板側中央ロック部135bとが係合した状態において、該基板側中央ロック部135bを収容することができる寸法であればよく、任意に設定することができるが、前記可動アーム31を貫通しない程度に設定されることが望ましい。これにより、前記可動アーム31の本体部31aは、開口が形成されていない平板状の部材となり、開口が形成された部材と比較し、高い強度を保持することができる。
なお、図に示される例において、電線側中央ロック部35b及び一対の電線側端部ロック部35aの内側の面は、ほぼ面一の平坦面35dとなっている。また、電線側中央ロック部35b及び一対の電線側端部ロック部35aの前端には、前記平坦面35dの前端に接続された傾斜面35cが形成されている。さらに、電線側中央ロック部35b及び一対の電線側端部ロック部35aの後端には、前記平坦面35dに対して直交し、外方(上方)に向けて、かつ、幅方向に延在する平面である係止面35eが形成されている。なお、電線側中央ロック部35b及び一対の電線側端部ロック部35aの傾斜面35c同士、及び、係止面35e同士は、互いに面一であることが望ましい。
図6に示されるように、基板側ロック部135における基板側中央ロック部135b及び一対の基板側端部ロック部135aの外側の面は、ほぼ面一の平坦面135dとなっている。また、基板側中央ロック部135b及び一対の基板側端部ロック部135aの前端には、前記平坦面135dの前端に接続された傾斜面135cが形成されている。さらに、基板側中央ロック部135b及び一対の基板側端部ロック部135aの後端には、前記平坦面135dに対して直交し、内方(下方)に向けて、かつ、幅方向に延在する平面である係止面135eが形成されている。なお、基板側中央ロック部135b及び一対の基板側端部ロック部135aの傾斜面135c同士、及び、係止面135e同士は、互いに面一であることが望ましい。
そして、電線コネクタ1と基板コネクタ101とが嵌合して電線側ロック部35と基板側ロック部135とがロック状態になると、すなわち、ロックが完了すると、図5(b)及び6(b)に示されるように、電線側中央ロック部35bと基板側中央ロック部135bとが係合するとともに、左右両側の電線側端部ロック部35aと左右両側の基板側端部ロック部135aとが係合する。具体的には、電線側中央ロック部35bの係止面35eと基板側中央ロック部135bの係止面135eとが互いに対向して電線側中央ロック部35bと基板側中央ロック部135bとが互いに係止され、左右両側の電線側端部ロック部35aの係止面35eと基板側端部ロック部135aの係止面135eとが互いに対向して電線側端部ロック部35aと基板側端部ロック部135aとが互いに係止される。
次に、前記電線コネクタ1を基板コネクタ101に嵌合する動作について説明する。
図8は実施の形態における電線コネクタの電線側ロック部と基板コネクタの基板側ロック部との位置関係の変化を示す第1の図、図9は実施の形態における電線コネクタの電線側ロック部と基板コネクタの基板側ロック部との位置関係の変化を示す第2の図、図10は実施の形態における電線コネクタの電線側ロック部と基板コネクタの基板側ロック部との位置関係の変化を示す第3の図、図11は実施の形態における電線コネクタが基板コネクタに対して幅方向に傾斜した姿勢で嵌合される場合の位置関係を示す図である。なお、図8〜10において、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は側断面図であって(a)におけるA−A矢視断面図であり、図11において、(a)は上面図、(b)は要部拡大上面図である。
電線コネクタ1を回路基板に実装された基板コネクタ101に嵌合する嵌合作業を開始する際には、電線コネクタ1の姿勢をオペレータが手指等によって制御して、図2に示されるように、電線コネクタ1のハウジング11の前面が基板コネクタ101のハウジング111の前面に向合うように位置させる。なお、極性用凸部22が形成された第1板部12が基板コネクタ101における極性用凹部122が形成された第1板部112と同一方向を向くように、電線コネクタ1の姿勢が制御される。
すなわち、電線コネクタ1が基板コネクタ101に嵌合される前の状態では、電線側ロック部35と基板側ロック部135との位置関係は、図8に示されるようになっている。
続いて、オペレータは、電線コネクタ1を回路基板と平行に移動させ、電線コネクタ1のハウジング11を基板コネクタ101のハウジング111の挿入凹部113内に挿入する。そして、電線コネクタ1のハウジング11の先端が前記挿入凹部113内に進入し始めると、図9に示されるように、電線コネクタ1の電線側ロック部35が基板コネクタ101の基板側ロック部135に当接して該基板側ロック部135上に乗上げる。これにより、可動アーム31の前端近傍が上昇させられ、連結部32が弾性的に変形して可動アーム31が揺動する。
なお、電線側ロック部35の前端には傾斜面35cが形成され、基板側ロック部135の前端には傾斜面135cが形成されているので、電線コネクタ1の進行に伴い、電線側ロック部35はスムーズに基板側ロック部135上に乗上げることができる。
続いて、オペレータは、電線コネクタ1を更に移動させて、該電線コネクタ1のハウジング11を前記挿入凹部113内の奥にまで挿入すると、電線コネクタ1と基板コネクタ101との嵌合が完了し、各電線側端子が対応する基板側端子151と接触して導通する。また、電線コネクタ1と基板コネクタ101との嵌合が完了すると、図10に示されるように、基板側ロック部135上に乗上げていた電線側ロック部35は、基板側ロック部135を通過する。すると、連結部32が弾性的に復元するので、可動アーム31の前端近傍が下降させられ、電線側ロック部35は落下して基板側ロック部135と係合する。
この場合、具体的には、電線側中央ロック部35bの係止面35eと基板側中央ロック部135bの係止面135eとが互いに対向して電線側中央ロック部35bと基板側中央ロック部135bとが互いに係止され、左右両側の電線側端部ロック部35aの係止面35eと基板側端部ロック部135aの係止面135eとが互いに対向して電線側端部ロック部35aと基板側端部ロック部135aとが互いに係止される。したがって、電線側ロック部35と基板側ロック部135とは、確実にロックされた状態となり、電線コネクタ1と基板コネクタ101との嵌合が不必要に解除されることがない。
なお、嵌合を解除して電線コネクタ1を基板コネクタ101から取外す必要があるときには、オペレータが手指等によって操作部37を押下げると、可動アーム31が揺動してその前端部分に形成された電線側ロック部35が上昇する。これにより、基板側ロック部135と電線側ロック部35との係合状態が解除されてロックが解除されるので、オペレータは、電線コネクタ1を嵌合する際と反対の方向に移動させることによって、電線コネクタ1を基板コネクタ101から取外すことができる。
ところで、電線コネクタ1を基板コネクタ101に嵌合させる嵌合作業においては、誤って、電線コネクタ1のハウジング11が幅方向に傾斜した姿勢で基板コネクタ101のハウジング111の挿入凹部113内に挿入されてしまうことがあり得る。
図11に示される例では、電線コネクタ1のハウジング11は、その幅方向の中心線が、基板コネクタ101のハウジング111の幅方向の中心線に対して傾斜した姿勢で前記ハウジング111の挿入凹部113内に挿入されている。この例では、電線コネクタ1のハウジング11の左端近傍が挿入凹部113内深くまで挿入されているのに対し、前記ハウジング11の右端近傍は挿入凹部113内に浅くしか挿入されていない。そのため、前記ハウジング11の左端近傍に位置する電線側端子が対応する基板側端子151と接触していても、前記ハウジング11の右端近傍に位置する電線側端子は対応する基板側端子151と接触していない可能性がある。
この場合、図11(b)に明確に示されているように、左端の電線側端部ロック部35aが対応する基板側端部ロック部135aの上を通過しているのに対し、電線側中央ロック部35b及び右端の電線側端部ロック部35aは、対応する基板側中央ロック部135b及び基板側端部ロック部135aの上に位置している。そのため、可動アーム31の前端近傍は下降することがなく、その結果、電線側中央ロック部35b及び右端の電線側端部ロック部35aが対応する基板側中央ロック部135b及び基板側端部ロック部135aと係合していないだけでなく、左端の電線側端部ロック部35aも対応する基板側端部ロック部135aと係合していない。そうであるから、電線側ロック部35と基板側ロック部135とが係合することによって生じるクリック音や、オペレータの手指等に伝わるであろうクリック感は、未だ発生していない。
したがって、図11に示されるように、電線コネクタ1のハウジング11が幅方向に傾斜した姿勢で基板コネクタ101のハウジング111の挿入凹部113内に挿入された場合に、オペレータは、ロックが完了したと誤認してしまうことがない。しかも、右端の電線側端部ロック部35aが対応する基板側端部ロック部135aの上を通過していないことは目視可能であるから、オペレータは、ロックが完了していないことを、目視によっても確認することができる。
なお、仮に、図11に示される例において、電線側中央ロック部35b及び基板側中央ロック部135bが存在しない場合を想定してみると、右端の電線側端部ロック部35aが対応する基板側端部ロック部135aの上に位置していても、左端の電線側端部ロック部35aが対応する基板側端部ロック部135aの上を通過しているので、可動アーム31が捩れるようになって、その前端近傍の左端だけが下降し、左端の電線側端部ロック部35aだけが対応する基板側端部ロック部135aと係合するような状態を想像することも可能である。
しかし、本実施の形態においては、可動アーム31の幅方向の中心部に電線側中央ロック部35bが存在し、基板コネクタ101のハウジング111における第1板部112の幅方向の中心部に基板側中央ロック部135bが存在するので、可動アーム31の幅方向の中心部が下から基板側中央ロック部135bによって支持された状態となり、左端の電線側端部ロック部35aだけが対応する基板側端部ロック部135aの上を通過しても、可動アーム31が捩れてその前端近傍の左端だけが下降してしまうことがない。したがって、左端の電線側端部ロック部35aだけが対応する基板側端部ロック部135aと係合するような状態が発生することを確実に防止することができる。
このように、本実施の形態において、コネクタは、ハウジング11、及び、ハウジング11に装填された図示されない電線側端子を含む電線コネクタ1と、電線コネクタ1のハウジング11と嵌合するハウジング111、及び、ハウジング111に装填され、電線側端子と接触する基板側端子151を含む基板コネクタ101とを備える。そして、図1〜4等に示されるように、基板コネクタ101のハウジング111は、嵌合方向に延在する第1板部112と、第1板部112の外面112aから突出する基板側ロック部135であって、ハウジング111の幅方向に間隔を空けて並ぶように形成された少なくとも3つの基板側ロック部135とを含んでいる。また、電線コネクタ1のハウジング11は、嵌合方向に延在する第1板部12と、第1板部12に形成された可動アーム31であって、電線コネクタ1のハウジング11と基板コネクタ101のハウジング111とが嵌合するとハウジング111の第1板部112の外面112aの少なくとも一部を覆う可動アーム31と、ハウジング11の幅方向に間隔を空けて並ぶように可動アーム31に形成された少なくとも3つの電線側ロック部35であって、電線コネクタ1のハウジング11と基板コネクタ101のハウジング111とが嵌合すると基板側ロック部135のそれぞれと係合する少なくとも3つの電線側ロック部35とを含んでいる。
これにより、図11にも示されるように、電線コネクタ1のハウジング11が基板コネクタ101のハウジング111に対して幅方向に傾斜した姿勢となっているときには、いずれの電線側ロック部35も対応する基板側ロック部135と係合することがなく、電線側ロック部35と基板側ロック部135とは互いにロック状態となることがない。したがって、オペレータはロック完了を誤認することがない。
しかも、ハウジング11の幅方向に間隔を空けて並ぶように形成された少なくとも3つの電線側ロック部35と、ハウジング111の幅方向に間隔を空けて並ぶように形成された少なくとも3つの基板側ロック部135とが係合するので、図1、3、5等に示されるように、電線コネクタ1のハウジング11と基板コネクタ101のハウジング111とが正規の姿勢で嵌合してロックが完了した場合には、電線コネクタ1のハウジング11と基板コネクタ101のハウジング111との嵌合を解除する方向の外力であって、電線コネクタ1のハウジング11を基板コネクタ101のハウジング111に対して幅方向に傾斜させるような外力が加えられたときであっても、電線側ロック部35と基板側ロック部135との係合が解除されることがない。したがって、電線コネクタ1のハウジング11と基板コネクタ101のハウジング111との嵌合が解除されることがなく、電線コネクタ1が基板コネクタ101から外れてしまうことがない。
また、図6〜8等に示されるように、基板側ロック部135は、いずれも、平坦面135dと、平坦面135dの前端に接続された傾斜面135cと、平坦面135dの後端に接続された係止面135eとを含み、同様の側面形状を有し、嵌合方向に関して同じ位置に形成され、電線側ロック部35は、いずれも、平坦面35dと、平坦面35dの前端に接続された傾斜面35cと、平坦面35dの後端に接続された係止面35eとを含み、同様の側面形状を有し、嵌合方向に関して同じ位置に形成される。
したがって、電線コネクタ1のハウジング11を基板コネクタ101のハウジング111に対して嵌合方向に進行させる際に、電線側ロック部35が基板側ロック部135から大きな抵抗を受けることがなく、すべての電線側ロック部35と基板側ロック部135とがスムーズに係合する。また、電線コネクタ1のハウジング11と基板コネクタ101のハウジング111との嵌合を解除する方向の外力が加えられても、電線側ロック部35と基板側ロック部135との係合が解除されることがない。そうであるから、電線コネクタ1のハウジング11と基板コネクタ101のハウジング111との嵌合が解除されることがなく、電線コネクタ1が基板コネクタ101から外れてしまうことがない。
さらに、図1〜8等に示されるように、基板側ロック部135は、少なくとも1つの基板側中央ロック部135bと、両端に形成された一対の基板側端部ロック部135aとを含み、電線側ロック部35は、少なくとも1つの電線側中央ロック部35bと、両端に形成された一対の電線側端部ロック部35aとを含んでいる。
したがって、両端に形成された基板側端部ロック部135a同士の間隔、及び、電線側端部ロック部35a同士の間隔が広いので、電線コネクタ1のハウジング11と基板コネクタ101のハウジング111とが正規の姿勢で嵌合してロックが完了した場合には、電線コネクタ1のハウジング11と基板コネクタ101のハウジング111との嵌合を解除する方向の外力であって、電線コネクタ1のハウジング11を基板コネクタ101のハウジング111に対して幅方向に傾斜させるような外力が加えられたときであっても、電線側端部ロック部35aと基板側端部ロック部135aとの係合が解除されることがない。そうであるから、電線コネクタ1のハウジング11と基板コネクタ101のハウジング111との嵌合が解除されることがなく、電線コネクタ1が基板コネクタ101から外れてしまうことがない。
さらに、図7等に示されるように、可動アーム31は、開口のない平板状の本体部31aを含み、電線側端部ロック部35aは、本体部31aの前端部分の左右両端から突出し、電線側中央ロック部35bは、本体部31aの内側の面であって、電線コネクタ1のハウジング11と基板コネクタ101のハウジング111とが嵌合するとハウジング111の第1板部112の外面112aの少なくとも一部と対向する面に形成されている。
このように、本体部31aが開口のない平板状の部材であるので、可動アーム31の強度が高く変形することがない。したがって、可動アーム31が捩れるようになって、本体部31aの前端部分の左右いずれか一方の電線側端部ロック部35aのみが下降して基板側端部ロック部135aと係合してしまうことがない。また、電線コネクタ1のハウジング11と基板コネクタ101のハウジング111との嵌合を解除する方向の外力が加えられても、電線側ロック部35と基板側ロック部135との係合が解除されることがない。そうであるから、電線コネクタ1のハウジング11と基板コネクタ101のハウジング111との嵌合が解除されることがなく、電線コネクタ1が基板コネクタ101から外れてしまうことがない。
さらに、図1、4等に示されるように、電線コネクタ1のハウジング11と基板コネクタ101のハウジング111とが嵌合すると、電線側端部ロック部35aと基板側端部ロック部135aとは、可動アーム31の外方から観て目視可能な状態で係合し、電線側中央ロック部35bと基板側中央ロック部135bとは、可動アーム31の外方から観て目視不能な状態で係合する。
このように、電線側端部ロック部35aと基板側端部ロック部135aとの係合状態が、可動アーム31の外方から観て目視可能であるので、オペレータは、ロックが完了しているか否かを目視によって確認することができる。したがって、オペレータはロック完了を誤認することがない。
さらに、基板コネクタ101のハウジング111は、第1板部112と対向する第2板部116と、第2板部116における基板側ロック部135と対応する部位に形成されたスライド嵌合部118であって、凸条の嵌合キー又は凹条のキー溝であるスライド嵌合部118とを含み、電線コネクタ1のハウジング11は、スライド嵌合部118と嵌合する凹条のキー溝又は凸条の嵌合キーを含んでいる。
これにより、電線コネクタ1のハウジング11が基板コネクタ101のハウジング111と嵌合する際に、電線コネクタ1のハウジング11が基板コネクタ101のハウジング111に対して幅方向に傾斜した姿勢となることを効果的に防止することができる。
なお、本明細書の開示は、好適で例示的な実施の形態に関する特徴を述べたものである。ここに添付された特許請求の範囲内及びその趣旨内における種々の他の実施の形態、修正及び変形は、当業者であれば、本明細書の開示を総覧することにより、当然に考え付くことである。