以下、本発明の実施形態の空気調和機について図を参照して説明する。
図1は、本実施形態の空気調和機の冷凍サイクル系統図である。
図1に示すように、空気調和機1は、室外機10と、室内機20A、20Bとを備え、それらはガス配管2および液配管3により互いに接続されている。本実施形態では、室外機10と室内機20A〜20Cとを1対2で接続しているが、室外機10の容量制限以内であれば、室内機の台数に制限はない。また、室外機10が複数台接続するモジュール接続の室外機であっても良い。また、アルファベットの添え字に関しては、基本的には個々の構成であるという意味で用いているが、各構成を代表的に取り扱う場合においては、省略する場合がある。
室外機10は、圧縮機11と、四方弁12と、室外熱交換器13と、室外膨張弁14とを備え、それぞれが冷媒配管により接続されている。さらに、室外機10は、制御基板15を備える。
圧縮機11は、低温低圧ガスの冷媒を、高温高圧ガスに圧縮し吐出する。四方弁12を切り替えることで、冷媒の流れが変化し、冷房運転と暖房運転が切り替わる。室外熱交換器13は、屋外の空気と冷媒との間で熱交換を行う。室外膨張弁14は、冷媒を減圧して低温にする。制御基板15は、各種データの演算を行うマイコン、各種データを記憶する記憶部(例えばROM)、および後述の目標蒸発温度を補正するための図示せぬプッシュスイッチを有する。また、マイコンは、図示せぬリモートコントローラにおける設定、および、各センサにより検知された値に基づき、空気調和機1の運転制御を行う。制御基板15(図示せぬプッシュスイッチ)は、目標温度設定手段に相当する。
室内機20は、室内熱交換器21と、室内膨張弁22と、冷媒サーミスタ23と、内気サーミスタ24とを備える。
室内熱交換器21は、冷媒と内気との間で熱交換を行う。室内膨張弁22は、冷媒を減圧する。冷媒サーミスタ23は室内熱交換器21入口付近の冷媒温度を検知する。内気サーミスタ24は、室内機20に吸い込まれる空気の温度を検知する。
次に、空気調和機1の冷凍サイクルの動作について説明する。
空気調和機1における冷房運転について説明する。図1における矢印は、空気調和機1の冷房運転における冷媒の流れを示している。冷房運転において、四方弁12は、実線で示すように、圧縮機11の吐出側と室外熱交換器13とを連通させ、圧縮機11の吸入側とガス配管2とを連通させる。
圧縮機11から吐出される高温高圧のガス冷媒は、四方弁12を通過し、室外熱交換器13側に流れる。室外熱交換器13に流入したガス冷媒は、図示せぬ室外ファンにより供給される外気と熱交換して凝縮され、液冷媒となる。この液冷媒は、全開状態の室外膨張弁14、および液配管3を通過して、各室内機20に流入する。室内機20に流入した液冷媒は、室内膨張弁22により減圧されて、低温低圧のガス液混合冷媒となる。この低温低圧の冷媒は、室内熱交換器21に流入して、図示せぬ室内ファン21により供給される室内空気と熱交換されて蒸発し、ガス冷媒となる。この際、室内空気は、冷媒の蒸発潜熱により冷却され、冷風が部屋内に送られる。その後、各室内機20から流れ出たガス冷媒は、合流して、ガス配管2を通って、室外ユニット10に戻される。
室外機10に戻ったガス冷媒は、四方弁12を通過し、圧縮機11に吸入され、再度圧縮機11で圧縮されることにより、一連の冷凍サイクルが形成される。
温度サーミスタ24は、室内機20に吸込まれる空気の吸込空気温度を検知している。冷媒サーミスタ23は、室内熱交換器21の入口の冷媒温度を検知している。すなわち、冷媒サーミスタ23は、冷媒の蒸発温度を検知している。そして、冷房能力と圧縮機11の周波数と冷媒の蒸発温度との関係は、冷房能力を上げるには圧縮機11の周波数を増加させて冷媒蒸発温度を下げ、冷房能力を下げるには圧縮機11の周波数を減少させて冷媒の蒸発温度を上げるという関係がある。このため、圧縮機11の周波数を制御することにより、冷媒の目標蒸発温度を制御することができる。
また、図1のように室内機20が複数ある場合は、冷媒配管施工により室内機20毎に冷媒の蒸発温度が異なる場合があるため、冷房運転中である室内機20の蒸発温度の平均値を制御目標(目標蒸発温度)としても良いし、冷房能力および潜熱を確実に処理するには、室内機20の中で一番高い蒸発温度を制御目標(目標蒸発温度)としても良く、高顕熱処理制御するには室内機20の中で一番低い蒸発温度を制御目標(目標蒸発温度)としても良い。なお、冷媒サーミスタ23は、室内熱交換器21の入口の冷媒温度を検知しているが、室内熱交換器21の中間部分の温度を計測しても良い。
図2は、空気物性に基づく、空気温度(乾球温度:DB(Dry Bulb)))と相対湿度毎の露点温度(℃)の関係を示す図である。
図2では、相対湿度100%、70%、60%、50%における空気温度と露点温度との関係を示している。相対湿度が100%の場合は、空気温度が露点温度と同じとなり、相対湿度が下がるほど露点温度の線は下がる。ここで、同一相対湿度で見た場合、線はある程度直線性をもち、空気温度が大きくなると露点温度も大きくなる傾向をもつ。また、高顕熱処理制御する場合には、冷媒の蒸発温度が露点温度より高い場合は潜熱を処理することが無いため、この直線を利用して冷媒の目標蒸発温度を決定しても良い。
図3は、本実施形態において冷房運転時に用いられる吸込空気温度(℃)と目標蒸発温度(℃)の関係を示す図である。
図3の基準線L1は、冷房運転時に用いられる吸込空気温度と目標蒸発温度との関係を示しており、当該関係は制御基板15の記憶部に記憶されている。すなわち、温度サーミスタ24により検知される吸込空気温度と基準線L1とに基づいて、室内熱交換器21の目標蒸発温度が設定される。よって、目標蒸発温度の設定には吸込み空気の湿度は用いられない。その結果、室内機20に湿度センサを設ける必要がなく、容易に目標蒸発温度を設定することができる。また、線L2は、吸込空気温度と目標蒸発温度とが等しい場合の吸込空気温度と目標蒸発温度との関係を示している。
基準線L1は、図2の空気温度と露点温度との関係と同様に、空気温度が大きくなると目標蒸発温度が大きくなる傾向を有する。このため、吸込み空気の湿度を取るための潜熱処理が行われる頻度を低減させることができる。また、図3に示すように、空気物性(吸込空気温度と目標蒸発温度との関係)を直線状に近似することにより、都度空気物性計算をする必要がなく、制御基板15のマイコンにかかる計算負荷を小さくできる。
更に、この基準線L1が、例えば相対湿度50%の近似線の場合、吸込空気温度の変化に関わらず相対湿度が50%より低ければ空気調和機1で潜熱処理することはない。このため、50%より高くなると始めて潜熱処理し始めるため、制御基板15は、相対湿度を50%以下に抑えるような動きをする。その結果、夏場の湿度が高い時期にも快適性を確保することが可能となる。更に、この目標蒸発温度には、吹き出し空気温度が高くなりすぎて快適性を損なわないように上限値(例えば18℃)を設けても良い。同様に吹き出し温度が低すぎないように下限値(例えば8℃)を設定しても良い。
図4は、本実施形態における目標蒸発温度の補正を示す図である。工場出荷時に初期設定された目標蒸発温度(基準線L1)に対し、オフィスビルで潜熱負荷がほとんどない、あるいは潜熱処理用の空調機(例えばデシカント式除湿機)が併設されている場合などには、初期設定に対し一律+ΔT高く補正する。すなわち、冷房運転時に用いる吸込空気温度と目標蒸発温度との関係が基準線L1から補正線L3に変更される。これにより、空気調和機1は、余分な潜熱を処理する頻度が少なくなり、省エネ運転することができる。
一方、梅雨時期の外気侵入が多い場所では潜熱処理の必要もあるため、初期設定値に一律−ΔT低く補正する。すなわち、冷房運転時に用いる吸込空気温度と目標蒸発温度との関係が基準線L1から補正線L4に変更される。この補正は、室外機10の制御基板15に設けられた図示せぬプッシュスイッチから設定しても良く、各種リモコンなどで設定しても良い。これにより、室内機20が設置された空間負荷に見合う制御に容易に調整できる。
上記における補正は、温度差で補正したが、図2の特性相対湿度に近ければ、初期値(基準線L1)および各補正線を目標相対湿度としても良い。例えば、初期値である基準線L1が相対湿度50%の近似線の場合、高く補正した場合の補正線L3を相対湿度60%の目標相対湿度とし、低く補正した場合の補正線L4を相対湿度40%の目標相対湿度としても良い。但し、この目標相対湿度は、室内の相対湿度が目標値より低い場合は室内を加湿することはできないので、目標値まで湿度を上げることはできない。目標相対湿度以下に室内の相対湿度を下げるという意味である。なお、相対湿度の変更は、制御基板15に設けられた図示せぬプッシュスイッチから変更しても良く、各種リモコンなどで変更しても良い。
図5は、冷房運転における高顕熱処理制御のフローチャートを示す。図5の制御処理に関するプログラムは、制御基板15のROMに記憶されて、冷房運転が開始されると制御基板15のマイコンに読み出されて実行される。
まず、複数の室内機20が同時に運転している場合、各冷媒サーミスタ23から検知した冷媒温度に基づき、各室内機20のうち冷媒の蒸発温度が最も低い室内機20を識別し、冷媒の蒸発温度が最も低い室内機20に吸込まれる空気の吸込空気温度を取得する(S1)。次に、取得した吸込空気温度と、基準線L1あるいは補正されている場合は補正線とに基づき、目標蒸発温度を計算する(S2)。
最低蒸発温度が、計算した目標蒸発温度より低いか否かを判断し(S3)、低い場合には(S3:YES)、圧縮機11の周波数を下げて(S4)、ステップS1に戻る。これにより、室内機20において潜熱を処理する可能性を低減させることができる。
一方、最低蒸発温度が、計算した目標蒸発温度と同等または計算した目標蒸発温度より高い場合には(S3:NO)、最低蒸発温度が、計算した目標蒸発温度より高いか否かを判断する(S5)。最低蒸発温度が、計算した目標蒸発温度より高い場合は(S5:YES)、圧縮機11の周波数を上げて(S6)、ステップS1に戻る。これにより、冷房能力が不足する可能性を低減させることができる。また、最低蒸発温度が、計算した目標蒸発温度より高くない場合は(S5:NO)、すなわち最低蒸発温度が、計算した目標蒸発温度と同等の場合は、ステップS1に戻る。
これらを繰り返して室内機最低蒸発温度が目標蒸発温度になるように調整する。ここで、周波数制御についてはフローに記載するようなONOFF制御はあくまで概念であり、目標蒸発温度近傍に不感帯を儲け、頻繁に周波数が変化するのを抑えたり、実際目標に対する偏差や変化速度をみてPID(Proportional Integral Derivative)制御のように調整してもよい。
なお、本発明は、上述した実施例に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。
例えば、図5のステップS1において、各室内機20のうち冷媒の蒸発温度が最も低い室内機20を識別し、冷媒の蒸発温度が最も低い室内機20に吸込まれる空気の吸込空気温度を取得し、取得した吸込み空気温度に基づき目標蒸発温度を計算した。しかし、潜熱を確実に処理する場合には、室内機20のうち冷媒の蒸発温度が最も高い室内機20を識別し、冷媒の蒸発温度が最も高い室内機20に吸込まれる空気の吸込空気温度を取得し、目標蒸発温度の計算を行っても良い。また、運転中の室内機20に吸込まれる空気の吸込空気温度の平均値を算出し、目標蒸発温度の計算を行っても良い。