(000113) 本発明は、疎水性の熱硬化性又は熱可塑性ポリマーを修飾して、それらに、潤滑性、透過性、伝導性、及び耐摩耗性などの品質を付与する工程を含む。そのような疎水性ポリマーは、通常、それほど顕著な程度には水を吸収せず、また通常、その機械的強度、不透過性、及び絶縁能力のために有用である。本発明の工程により修飾可能な一般的でかつ市販されている疎水性ポリマーの例示的なリストには、以下のものが含まれる:アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリル、セルロイド、セルロースアセテート、エチレン−ビニルアセテート(EVA)、エチレンビニルアルコール(EVAL)、商標登録されたアクリル/PVCアロイであるKydex、液晶ポリマー(LCP)、ポリアセタール(POM又はアセタール)、ポリアクリレート(アクリル)、ポリアクリロニトリル(PAN又はアクリロニトリル)、ポリアミド(PA又はナイロン)、ポリアミド−イミド(PAI)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK又はケトン)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリケトン(PK)、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホン(PES)−例えば、ポリスルホン、ポリエチレンクロリネート(PEC)、ポリイミド(PI)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリスチレン(PS)、ポリスルホン(PSU)、ポリビニルアセテート(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、スペクトラロン、スチレン−アクリロニトリル(SAN)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、及びポリウレタン(PU)。他のあまり一般的でなくかつ市販されていない(すなわち、特注の)ポリマーを使用することもできる。本明細書に記載されているように、多種多様なポリウレタンを、ハードセグメント、ソフトセグメント、及び鎖伸長剤の組成を変えて使用することができる。
(000114) 本発明の一態様は、いくつかの修飾可能な熱硬化性又は熱可塑性の疎水性ポリマーの特徴:ポリマー内での規則性ドメイン及び非規則性(非晶質)ドメインの存在を利用する。例えば、ポリウレタンなどのいくつかの疎水性の熱硬化性又は熱可塑性ポリマーは相分離し、ハードセグメントの第1のドメイン及びソフトセグメントの第2のドメインを含有し、2つのドメインは、モノマーの相互透過性に関して異なる溶解性特性を示す。ポリウレタンにおいて、ハードセグメントは主として規則性ドメイン内に配置され、ソフトセグメントは主として非規則性(非晶質)ドメイン内に配置される。(出発ポリマーは、当然、本発明の範囲を逸脱することなく、3以上のドメインを含有することができる。)相分離ポリマーの2つのドメイン間のこの特性の違いによって、本発明の工程は、材料のバルクにわたって、又は材料の一部のみにわたって、例えば、特定の領域中で、又は勾配中で伸長することができる新しい特性をポリマーに付与することが可能になる。例えば、非潤滑性ポリマーを潤滑性にすることができ;そのままでは非伝導性のポリマーを伝導性にすることができ;かつそのままでは非透過性のポリマーを透過性にすることができる。更に、工程を反復して行ない、2以上の新しい特性を出発ポリマーに導入することができる。
(000115) いくつかの実施形態において、ポリマー中での相分離は、例えば、溶媒及び/又はモノマーによるポリマー内の1以上の分離相の示差膨潤を可能にし、その後、それを用いて、新しい特性を付与する。本発明によれば、例えば、イオン性モノマーを付加し、重合させることによって、そのままでは潤滑性でない材料に潤滑さを導入することができる。一実施形態において、高い機械的強度と潤滑性の表面とを有するポリマー材料を、イオン化可能なビニルモノマーに由来するそのままでは潤滑性でない疎水性ポリマー及び親水性ポリマーから作製ことができる。そのままでは疎水性の材料を固相と液(水)相の両方を有する二相材料に変換することによって、本発明は、医療、商業、及び工業用途で使用するための、潤滑性で、高強度の材料に対する当技術分野における必要性に対処する。
(000116) 図1A〜Dは、ハードセグメント10(白い長方形として示されている)とソフトセグメント12(線として示されている)のネットワークを含む熱可塑性ポリウレタン系ポリマーに関する工程を示す。図1Bにおいて、ソフトセグメント12は、開始剤及び架橋剤(図示せず)とともに、ビニル系モノマー14(丸として示されている)及び任意の溶媒で膨潤するが、ハードセグメント材料はほとんど影響されない。この膨潤工程は、ポリマーの溶解ではなく;ハードセグメントは、ソフトセグメントがモノマー及び任意の溶媒を吸収するとき、材料を結び付ける物理的な架橋として作用する。モノマーの重合及び架橋の後、第2のネットワーク16(図1C及び1Dで太線として示されている)が、第1のネットワークの存在下で形成され、第1のポリマーの柔軟な非晶質ドメイン内に第2のポリマー(すなわち、重合モノマー)が主として隔離されたIPNが生成される。ある程度の分子内転位及び更なる相分離があるにもかかわらず、ハードセグメントは、大部分、規則性かつ結晶性のままであり、材料に構造及び強度を提供する。
(000117) このIPNによって提供される新しい特性は、導入された重合モノマーの特性及び何らかの任意の重合後処理によって決まる。そのような新しい特性の例としては、潤滑さ、伝導性、硬さ、吸収性、透過性、光反応性、及び熱反応性が挙げられる。例えば、図1Dに示されるように、緩衝水溶液中での任意の膨潤の後、図1CのIPNの第2のネットワークはイオン化されたもの18となり、IPNは、水膨潤性及び潤滑性になる。従って、親水性(すなわち、吸水性)を、そのままでは疎水性の材料に導入することができる。ポリウレタン又はABSなどの疎水性ポリマー材料に、それが水を吸収するように、ポリアクリル酸及び/又はポリ(メタクリル酸スルホプロピル)などの様々なイオン性ポリマーを浸透させることができる。
(000118) 吸収性に加えて、様々なレベルの透過性(水、イオン、及び/又は溶質の輸送)を、そのままでは非透過性の材料に導入することができる。例えば、上記のように、ポリウレタン又はABSなどの疎水性ポリマー材料に、それが水を吸収するように、ポリアクリル酸及び/又はポリ(メタクリル酸スルホプロピル)などのイオン性ポリマーを浸透させることができる。材料のバルクのこの水和は、溶質及びイオンの輸送を可能にする。溶質及びイオンの輸送並びに水に対する透過性は、IPNの水和相の相連続性によって可能になる。これは、薬物送達、分離工程、プロトン交換膜、及び触媒工程を含む様々な用途において有用である。透過性を利用して、液体が材料にわたって又は材料を通って流れるときに、溶質を捕捉、濾過、又はキレート化することもできる。更に、この透過性があるので、本発明の材料は、持続的又は反復的荷重の後に流体を再吸収するその能力のために、その成分疎水性ポリマーと比べて、クリープ抵抗性及び疲労抵抗性を増大させることができる。
(000119) 伝導性を、他の非伝導性の材料に導入することができる。例えば、ハイブリッド材料の少なくとも一部が電流に対して伝導性となるように、ポリウレタンなどの絶縁ポリマー材料に、伝導性ポリマー(多価電解質)を浸透させることができる。
(000120) 本発明は、第2のポリマーの化学基の改変、及び別のポリマー、分子、又は生体分子に対する第2のポリマー中の連結点の使用も含む。また、ドメインのいずれかに、抗酸化剤、イオン、イオノマー、造影剤、粒子、金属、顔料、染料、生体分子、ポリマー、タンパク質、及び/又は治療剤などの、任意の数の材料をドープすることができる。
(000121) 例えば、アクリルオキシ、メタクリルオキシ−アクリルアミド−、アリルエーテル、又はビニル官能基が、ポリウレタンプレポリマーの一端又は両端に取り込まれている場合、第1のポリマーを第2のポリマーと更に架橋又は共重合させ、その後、開始剤の存在下でUV又は温度によって硬化させることができる。例えば、ポリウレタンジメタクリレート又はポリウレタンビスアクリルアミドは、溶媒(例えば、ジメチルアセトアミド)の存在下で硬化させ、その後、溶媒を蒸発させることによって、第1のネットワーク中で使用することができる。IPNへの化学的架橋(単なる物理的架橋ではない)の付加は、連続的な動的荷重によって生じるクリープ又は疲労に対するあるレベルの機械的安定性を付加する。
(000122) 更に、多腕(多官能性)ポリオール又はイソシアネートを用いて、ポリウレタン中で架橋を生成させることができる。この場合、(半相互透過性ポリマーネットワークではなく)完全相互透過性ポリマーネットワークが生成される。結果は、ポリウレタンの高い強度及び靱性、並びにポリ(アクリル酸)の潤滑性表面及び二相性バルク挙動を有する複合材料である。或いは、限定されないが、ガンマ線又は電子ビーム放射線を含む、他の架橋方法を使用することができる。これらの特色は、人工関節表面などのベアリング用途のために、又は血管系もしくは皮膚などの身体の他の領域におけるより生体適合性で、血栓抵抗性の長期インプラントとして特に重要である。水で膨潤させることにより、身体の標的領域への局所的送達のための治療剤又は治療薬などの溶質の吸収も可能になる。
(000123) 本発明の別の実施形態において、第1のポリマーを第2のポリマーに結合させることができる。例えば、ポリウレタンを、ビニル末端基を介して結合させることができる。末端基と重合中のモノマーとの間の反応性比によって、様々な鎖立体形状を生じさせることができる。例えば、モノマーとそれ自体との反応性が、末端基とモノマーよりもはるかに大きい場合、第1のポリマーが鎖に付加される前に、第2のポリマーがほぼ完全に形成される。他方、モノマーと末端基の反応性が類似している場合、ランダムグラフト型の共重合が起こる。モノマー及び末端基は、例えば、The Polymer Handbookに公表されている相対的反応性比の表を用いることによって、その反応性比に基づいて選択することができる。これらの結果は、ハイブリッドコポリマー/相互透過性ポリマーネットワークである。
(000124) 任意の数又は組合せのエチレン系不飽和モノマー又はマクロモノマー(すなわち、反応性二重結合/ビニル基を有する)を、単独で又は様々な溶媒と組み合わせて使用することができ、かつそのようなモノマーの少なくとも2%がイオン化可能である限り、すなわち、カルボン酸及び/又はスルホン酸官能基を含有する限り、ポリマーの相のうちの1つ又は複数に選択的に導入することができる。他のモノマーとしては、ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、NIPAAm、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、ヒドロキシエチルアクリレート/メタクリレート、及びスルホン酸基を含有する任意のビニル系モノマー(例えば、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、3−スルホプロピルアクリレート(もしくはメタクリレート)、2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸ナトリウム塩98%、又はスルホン酸が共役している任意のモノマー(アリルエーテル、アクリレート/メタクリレート、ビニル基、もしくはアクリルアミド)が挙げられるが、これらに限定されない。モノマーとしては、アリルエーテル、アクリレート/メタクリレート、ビニル基、又はアクリルアミドに共役したカルボン酸基を含有する任意のモノマーを挙げることもできる。更に、モノマーを、カルボキシル酸とスルホン酸の両方を含有するモノマーなどの組合せで用いて、カルボキシレート/スルホネートコポリマーを生成させることができる。これらのモノマー及びモノマー組合せから得られるポリマー上のペンダント官能基を後続の化学反応に供して、他の官能基を最終的なポリマーに与えることができる。
(000125) 一実施形態において、予備形成された熱可塑性ポリマーを、モノマーに対して約0.1%v/vの架橋剤(例えば、トリエチレングリコールジメタクリレート又はN,Nメチレンビスアクリルアミド)及びモノマーに対して約0.1%v/vの光開始剤(例えば、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン)とともに、アクリル酸(又はアクリル酸の溶液(1%〜100%)もしくは他のビニルモノマー溶液)に浸漬させることができる。アクリル酸溶液は、水、塩緩衝液、又は有機溶媒、例えば、ジメチルアセトアミド、アセトン、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、トルエン、ジクロロメタン、プロパノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、又はテトラヒドロフランに基づくことができる。ポリマーは、ポリマー中のソフトセグメントの溶媒和のために、モノマーによって膨潤させることができる。膨潤したポリマー中のモノマー含有量は、わずか約1%から最大約90%までの範囲であることができる。
(000126) その後、モノマーにより膨潤したポリマーを取り出し、ガラス、石英、又は透明なポリマーでできた型に入れ、その後、UV光(又は高温)に曝露させて、モノマーの重合及び架橋を開始させることができる。或いは、型を使用する代わりに、空気又は不活性雰囲気(例えば、窒素もしくはアルゴン)に完全に又は部分的に曝露させながら、或いは油(例えば、パラフィン、鉱油、又はシリコーン油)などの別の液体の存在下で、モノマーにより膨潤したポリマーを重合させることができる。医療用途のために、重合工程を、型なしでインビボで実施することができる可能性がある。
(000127) 使用される開始剤によって、UV光、IR、もしくは可視光、化学物質、電荷、又は高温への曝露は、疎水性ポリマー内でのイオン化可能モノマーの重合及び架橋をもたらす。一例として、酸性モノマー(例えば、アクリル酸)を重合させると、予備形成された熱可塑性の疎水性マトリックス内でイオン性ポリマーが形成され、相互透過性ポリマーネットワーク(「IPN」)が形成される。溶媒は、熱及び対流によるか、又は溶媒抽出によって抽出することができる。溶媒抽出は、異なる溶媒(例えば、水)を用いて、溶媒をポリマーから抽出することを含むのに対し、熱又は対流は、溶媒の蒸発に依存する。イオン性ポリマーのpKa(例えば、PAAのpKa=4.7)によって、酸性pHがイオン性ポリマーをよりプロトン化させる一方、より塩基性のpHは、それをよりイオン化させる。
(000128) 中性pHのリン酸緩衝食塩水(又は他の緩衝塩溶液)などの水溶液中でのIPNの膨潤は、ポリ(アクリル酸)のイオン化と、水及び塩による更なる膨潤とをもたらす。結果として生じる膨潤したIPNは、親水性の荷電ポリ(アクリル酸)によって付与される潤滑性表面と、熱可塑性物質によって付与される高い靱性及び機械的強度とを有する。ポリウレタン系IPNの場合、IPNは、ポリウレタン中の結晶性ハードセグメントが第1のネットワーク中の物理的架橋として作用する構造を有する一方、化学的架橋は第2のネットワーク中に存在する。
(000129) 材料を、ガンマ線又は電子ビーム放射線を用いた合成の後に架橋することもできる。一実施例において、ポリウレタン/ポリアクリル酸を合成し、その後、例えば、5、10、15、20、又は25kGyの線量のガンマ線照射によって架橋することができる。この場合、ポリアクリル酸の重合は、架橋剤の非存在下で行なわれ、ポリマーブレンド(物理的IPN)の形成後、材料は、ガンマ線に曝露される。これは、ポリウレタンの滅菌と架橋という二重の目的を有する。ガンマ線照射を用いたポリ(アクリル酸)ヒドロゲルの架橋がポリマーの架橋に対して線量依存性を示すことは当技術分野で公知である。この工程は、第1のネットワークポリマーと第2のネットワークポリマーの他の組合せ、例えば、ポリウレタンとポリメチルメタクリレート、ABSとポリアクリル酸などに適用することもできる。
(000130) 上で特定した熱硬化性及び熱可塑性の出発疎水性ポリマーに加えて、そのようなポリマーに対する修飾物及びそのようなポリマーの誘導体、例えば、スルホン化ポリウレタンを使用することができる。ポリウレタンの場合、ポリウレタンポリマーは、市販の材料、市販の材料の修飾物、又は新しい材料であることができる。任意の数の化学的性質及び化学量論を用いて、ポリウレタンポリマーを生成させることができる。ハードセグメントについては、使用されるイソシアネートは、1,5ナフタレンジイソシアネート(NDI)、イソホロンイソシアネート(IPDI)、3,3−ビトルエンジイソシアネート(TODI)、メチレンビス(p−シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、シクロヘキシルジイソソアネート(CHDI)、2,6トルエンジイソシアネートもしくは2,4トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチルジイソシアネート、又はメチレンビス(p−フェニルイソシアネート)である。ソフトセグメントについては、使用される化学物質としては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリ(テトラメチレンオキシド)(PTMO)、ヒドロキシ末端ブタジエン、ヒドロキシブチル末端ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエチレンアジペート、ポリカプロラクトン、ポリテトラメチレンアジペート、ヒドロキシル末端ポリイソブチレン、ポリヘキサメチレンカルボネートグリコール、ポリ(1,6ヘキシル1,2−エチルカルボネート、及び水素化ポリブタジエンが挙げられる。イソシアネートと反応する末端基が使用される場合、任意の数の両端二官能性(telechelic)ポリマーをソフトセグメント中で使用することができる。例えば、ヒドロキシルもしくはアミン末端ポリ(ビニルピロリドン)、ジメチルアクリルアミド、カルボキシレート、もしくはスルホン化ポリマー、両端二官能性炭化水素鎖(ヒドロキシル及び/もしくはアミン末端基を有する)、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、又はこれらを互いに、もしくは上述の他のソフトセグメント(例えば、PDMS)と組み合わせたものを使用することができる。イオン性鎖伸長剤が材料の2%より多くを占めない限り、ジヒドロキシエチルプロピオン酸(DMPA)(又はその誘導体)などのイオン性ソフトセグメント(又は鎖伸長剤)を用いて、水分散性ポリウレタンを作製することができる。
(000131) 鎖伸長剤としては、例えば、1,4ブタンジオール、エチレンジアミン、4,4’メチレンビス(2−クロロアニリン)(MOCA)、エチレングリコール、及びヘキサンジオールが挙げられる。任意の他の適合性のある鎖伸長剤を単独で又は組み合わせて使用することができる。イソシアネート反応性末端基(例えば、ヒドロキシル又はアミン)を含有する架橋性鎖伸長剤を使用することができ、ビニル系官能基(例えば、ビニル、メタクリレート、アクリレート、アリルエーテル、又はアクリルアミド)を、いくつかの又は全ての鎖伸長剤の代わりに使用することができる。例としては、1,4ジヒドロキシブテン及びグリセロールメタクリレートが挙げられる。或いは、架橋は、イソシアネートとの反応のために3以上のヒドロキシル基を含有するグリセロールなどのポリオールの使用を通じて達成することができる。
(000132) いくつかの実施形態において、第2のネットワーク中の親水性モノマーの少なくとも2%は、イオン化可能でかつ陰イオン性(負に荷電可能)である。1つのそのような実施形態において、ポリ(アクリル酸)(PAA)ヒドロゲルは、アクリル酸モノマーの水性溶液から形成される、第2のポリマーネットワークとして使用される。他のイオン化可能モノマーとしては、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホプロピルメタクリレート(もしくはスルホプロピルアクリレート)、ビニルスルホン酸などの負に荷電したカルボン酸基もしくはスルホン酸基を含有するもの、又はヒアルロン酸、ヘパリン硫酸(heparin sulfate)、及びコンドロイチン硫酸のビニル共役型、及びこれらの誘導体、又は組合せを含むものが挙げられる。第2のネットワークモノマーは、正に荷電しているか又は陽イオン性でもあり得る。これらの他のモノマーはまた、水もしくは有機溶媒のいずれかの中で1%〜99%の範囲であるか、又は純粋(100%)であることができる。第2のネットワークを形成するために使用されるモノマーの一実施形態は、以下の特徴によって記載することができる:(1)それは、ポリウレタンを膨潤させることができる、(2)重合させることができる、及び(3)イオン化可能である。
(000133) 他の実施形態は、イオン性ポリマーに加えて、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、メチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、又はこれらの誘導体などの、非イオン性であり得るコモノマーを使用する。これらは、メチルメタクリレートなどのあまり親水性でない種又は他のより疎水性のモノマーもしくはマクロモノマーと共重合させることができる。これらはまた、単独で重合させることができるか、又は前述の親水性モノマー及び/もしくはイオン化可能モノマーと共重合させることができる。
(000134) これらのモノマーに基づく架橋した線状ポリマー鎖(すなわち、マクロ分子)に加えて、タンパク質及びポリペプチド(例えば、コラーゲン、ヒアルロン酸、又はキトサン)などの生体マクロ分子(線状又は架橋された)も、第2のネットワーク中で使用することができる。第2の材料の選択は標的用途によって決まり、例えば、整形外科的用途において、ヒアルロン酸は、それが関節軟骨の主要成分であるという理由で有用である。更に、生物学的分子は、それらを材料成分として有用にする、固有の生体適合性又は治療上の(例えば、創傷治癒及び/もしくは抗菌)特性などの特定の利益を保有することができる。
(000135) 任意のタイプの適合性架橋剤を用いて、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート(もしくはジアクリレート)、トリエチレングリコールジメタクリレート(もしくはジアクリレート)、テトラエチレングリコールジメタクリレート(もしくはジアクリレート)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、又はポリエチレングリコールジアクリレート、メチレンビスアクリルアミド、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、これらの誘導体、又は組合せなどの、前述の第1のネットワークのいずれかの存在下で第2のネットワークを架橋することができる。前駆体溶液/材料とのその溶解性に応じて、任意の数の光開始剤を使用することもできる。これらには、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン及び2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノンが含まれるが、これらに限定されない。更に、他の開始剤、例えば、過酸化ベンゾイル、2−オキソグルタル酸、アゾビスイソブチロニトリル、又は過硫酸カリウム(もしくは過硫酸ナトリウム)を使用することができる。例えば、過酸化ベンゾイルは、温度開始型重合に有用であり、一方、アゾビスイソブチロニトリル及び過硫酸ナトリウムは、ラジカル開始剤として有用である。
(000136) 別の実施形態において、溶媒は、そのままではポリマーを混合(又は可溶化)しないモノマーをポリマーの1つ又は複数の相に送達する「トロイの木馬」として使用することができる。溶媒は、ポリマー及びモノマーの具体的な質及び相に基づいて慎重に選択されなければならない。例えば、酢酸は、多くのポリウレタンを膨潤させることができるが、溶解させることはない。従って、酢酸は、そのままではポリウレタンに入り込まないアクリルアミド溶液などの他のモノマーをポリウレタンのバルク中に運ぶために使用することができる。これは、アクリルアミドがポリウレタンの1つの相の内部で選択的に重合することを可能にする。その後、酢酸を洗い流して、1以上の新しい特性を持つポリウレタンを残すことができる。使用することができる他の溶媒としては、ジクロロメタン、メタノール、プロパノール、ブタノール、(又は任意のアルキルアルコール)、アセトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。ポリマーの相に対する溶解度を考慮して、1つの様々な膨潤度を有する溶媒を選択することができる。膨潤させるべき材料の溶媒及び成分の溶解度は、The Polymer Handbookなどのポリマーの教科書から得ることができるか、又は実験的に測定することができる。
(000137) 本発明を用いて、ポリマー材料上にバルク相互透過性コーティングを形成することができる。このコーティングは、下層にあるポリマーマトリックスと密接に交絡し、材料が表面に移植又は連結される従来の表面コーティングとは対照的である。バルク相互透過性コーティングの1つの例において、熱可塑性ポリマーは1つ又は複数の側面上にコーティングされるか、又は光開始剤及び架橋剤の存在下でアクリル酸などのイオン化可能モノマー中に浸漬される。その後、熱可塑性物質を型の中に入れ、その後、所定の時間、開始剤(例えば、紫外線又は熱)に曝露させる。型は、モノマーの局部的に特異的な硬化を促進するために完全に又は部分的に透明にする及び/又はマスキングすることができる。その後、修飾された材料を緩衝生理食塩溶液中に浸漬して、イオン性ポリマーを中和し、表面を潤滑性かつ親水性にする。その後、修飾されたプラスチックは、熱、溶媒、及び/又は圧力の適用によって更に再成型することができ、その後、所望の寸法に成形することができる。その後、修飾されたプラスチックを、未修飾のプラスチック表面に熱又は溶媒(例えば、アセトン)を適用し、この表面を対象となる表面と接触させることによって、金属、ガラス、プラスチック、又は他の材料などの様々な表面に結合させることができる。
(000138) 本発明の用途の中には、船舶、潜水服又は水着、他の小型船舶又は水上の物体、パイプにおける抗力及び/又はバイオフィルム形成及び/又はフジツボ形成を減少させるための親水性、潤滑性の外装又はコーティングの生成がある。更に、本発明は、エンジン、ピストン、又は他の機械もしくは機械部品などの用途のためのベアリング及び可動部品を作製する方法として使用することができる。本発明は、人工関節システム又は身体の他の領域における長期インプラント、例えば、血管系もしくは尿路系のためのステント及びカテーテル、又は皮膚用のインプラント、パッチ、もしくは包帯において使用することもできる。
(000139) 図2及び3は、出発ホモポリマー内で組成勾配を生成させるためにどのように本発明を使用することができるかを示す。図2において、IPNが一方の側面22で形成され、濃度が減少して(例えば、実質的にホモポリマーのみ)別の側面24に伸長して、勾配が材料20中で厚さ方向に沿って形成されている。図3において、外側表面32が最高濃度のIPNとなり、中心又はコア34が最低濃度のIPNを有して、IPN濃度勾配が材料30内で放射状となっている。円筒又は球体の場合、IPNを形状のコアに配置し、疎水性ポリマーを形状の外面に配置して、逆の勾配を作ることもできる。これは、勾配組成を介して疎水性絶縁材料内にカプセル化された伝導性半IPNワイヤーを生成させるのに有用である。
(000140) 図4Aは、本発明に係る熱可塑性勾配IPNを製作する方法を示す。熱可塑性材料40の一方の側面は、光開始剤(図示せず)及び架橋剤(図示せず)とともにモノマー溶液42を吸収し、その後、モノマーは、熱可塑性物質内で(例えば、紫外線44によって)重合及び架橋させられて、勾配IPN46を形成する。pHを中性に増大させること47及び周囲の流体中に塩を導入すること48は、第2のポリマーネットワークのイオン化をもたらす。或いは、非イオン性モノマーを(コポリマーを形成するために)部分的に基礎として使用することができる。非イオン性ポリマーは、緩衝溶液によってイオン化されないが、それでもなお親水性表面を生成させる。いずれのタイプのモノマー系も水又は有機溶媒のいずれかと併用することができる。
(000141) 一実施形態において、ポリウレタン(「PU」)が一方の側面でのみAA中で膨潤する場合、又はTPのバルクからのモノマーの拡散が終了しないように膨潤時間が制限される場合、TP/PAA IPNを勾配中に生成させることができる。これは、整形外科用関節置換材料のための骨軟骨グラフトの生成において特に有用である。例えば、軟骨置換材料の場合、材料の一方の側面は潤滑性かつ水膨潤性になるが、他方は固体(純粋な熱可塑性物質)のままである。その間は、TP/PAAのIPNとTPとの間の移行部であり、PAA含有量は一方の表面から他方へと減少する。或いは、TP中へのAAの拡散がバルク中へのモノマーの浸透の時期を選ぶことによって正確に制御される場合、TP/PAAのIPN外面とPUのみの「コア」とを有するバルク材を作製することができる。この立体形状から生じる示差膨潤は、材料の機械的挙動及び疲労挙動の促進を助けることができる残留応力(膨潤面での圧縮、非膨潤面での引張)をもたらすことができる。厚さ勾配を有する材料の場合、熱可塑性物質のみの材料の土台は、装置を解剖学的な領域又は対象に錨着、接着、又は縫合するために使用することができる。この土台は、小さい領域に限定されるか、又は大きいものであることができ(例えば、スカート)、単一の成分又は複数の成分(例えば、ストラップ)として外側に向かって伸長することができる。処理中又は膨潤後に熱可塑性物質内で構築された内部応力は、温度誘発性アニーリングによって低下させることができる。例えば、60〜120℃の温度を、様々な時間(30分〜数時間)、ポリマーをアニーリングするために使用することができ、熱を、オーブン中で、熱面によるか、放射によるか、又はヒートガンによって適用することができる。熱可塑性物質は、例えば、ガンマ線又は電子ビーム放射線を用いて後で架橋することができる。
(000142) 図4Bは、所望の組成を生成させるために勾配IPNの特性がどのように変化することができるかを示す。図4Cは、疎水性ポリマー及びイオン性ポリマーの濃度勾配が勾配IPNの(2つの表面の間の)厚さにわたってどのように変化することができるかを示す。組成勾配は、IPNが、一方の側面では水和されていて、かつより柔軟であり、他方ではあまり水和されておらず(又は全く水和されておらず)、かつ剛性である特性勾配を生じさせる。
(000143) 図5に示すように、本発明のIPN及び半IPNから作製される物品は、積層構造で形成させることもできる。一実施例において、IPN構造50は、ポリカーボネートウレタンなどの第2の熱可塑性物質(TP2)の上に形成される、ポリエーテルウレタンなどの第1の熱可塑性物質(TP1)に相互透過しているポリ(アクリル酸)などの親水性ポリマー(P)から構成される。TP1とTP2は両方とも、それ自体、様々な硬さ及び特性の多数の層から構成されることができる。更に、3以上の多数の熱可塑性物質層を使用することができ、熱可塑性物質のうちの1つ又は複数を架橋することができる。最終的に、非熱可塑性要素をこの構築物中に組み込むことができる。
(000144) 本発明の勾配又は均一IPN及び半IPNから形成される物品は、所望の通りに成形することができる。図6は、勾配IPN物品の成形を示す。この工程は、均一IPN又は半IPNを成形するために使用することもできる。
(000145) 図6に示すように、熱61を用いて、勾配IPNの熱可塑性側面50においてポリマー中の物理的架橋(例えば、ポリウレタン中のハードセグメント)を再アニーリングし、屈曲(例えば、型又は鋳型の上での)及び冷却の後に様々な所望の湾曲を生じさせることができる。図6は、勾配IPNの熱可塑性側面での凸面62と凹面64の両方の湾曲を示す。当然、他の形状を所望の通りに形成させることができる。熱可塑性物質の使用は、例えば、射出成形、反応性射出成形、圧縮成形、又はその代わりに浸漬流延による、所望の形状への装置の成形を促進する。その後、成形された装置を、後続のネットワーク浸透及び重合工程に供して、新しいIPN材料を生じさせることができる。
(000146) 本発明に係るIPN及び半IPN物品の成形は、インサイチュで、例えば、ヒトの身体内で形成させることができる。例えば、図7A〜Bは、熱可塑性勾配IPN70が大腿骨頭72の湾曲を包み込むのを可能にするように、熱可塑性勾配IPN70を加熱すること71を示す。図7C〜Dは、熱可塑性勾配IPN73が股関節ソケット75の湾曲に適合するのを可能にするように、熱74を熱可塑性勾配IPN73に適用することを示す。
(000147) 本発明に従って作製された、成形された又は成形されていないIPN及び半IPN物品は、他の表面に付着させることができる。図8A〜Dは、熱可塑性勾配IPN物品80を結合界面83において表面82に付着させるために、溶媒、セメント、又はのりなどの結合剤81をどのように使用することができるかを示す。溶媒の添加によって、例えば、材料が局所的に溶解し、表面との接触及び溶媒の乾燥の後、熱可塑性物質が表面に接着する。この方法を用いて、限定されないが、船舶の船体表面を含む、様々な物体の本発明の「パネル」を生成させることができる。「コーティング」は、材料を容器の外形又は容器の一部に真空形成させることによって適用することができる。類似のアプローチを用いて、勾配IPNを関節内の骨表面に付着させることができる。
(000148) 例えば、本発明の方法によって形成される本発明の組成物は、種々の状況において使用することができる。1つの特定の使用は、骨軟骨グラフト中の人工軟骨としてのものである。本発明は、天然軟骨の分子構造、並びに更に、弾性係数、破壊強度、及び潤滑性表面を模倣する相互透過性ポリマーネットワークに基づく骨温存関節形成装置を提供する。天然軟骨のこれらの構造面及び機能面のうちの少なくともいくつかを模倣して、本発明の半IPN及びIPNは、新規の骨温存「バイオミメティックリサーフェシング」関節形成手順の基礎を形成する。軟骨のみを置換するように設計されるので、そのような装置は、潤滑性関節表面及び骨統合可能な骨界面を特色とする、1組の可撓性の埋込み可能な装置として製作される。
(000149) 原理上、装置は、身体内の任意の関節表面のために作製することができる。例えば、脛骨プラトーを覆う装置は、類似の骨調製及びポリマーサイジング工程を必要とする。股関節内の大腿骨頭を覆う装置については、キャップ形状の装置が大腿骨頭の外形に緊密に適合する。寛骨臼を裏打ちする装置については、半球状のカップ形状の装置が関節唇を越えて延伸し、ソケット中の所定の位置に嵌入し、嵌合面に大腿骨頭を提供することができる。このようにして、患者の股関節の両側を修復して、キャップ・オン・キャップ型の関節接合を生成させることができる。しかしながら、表面の一方のみが損傷している場合、一方の側面のみをキャッピングして、キャップ・オン・軟骨型の関節接合を生成させることができる。更に、本発明の材料を用いて、代替のベアリング表面としての役割を果たす別の関節置換又はリサーフェシング装置(通常、金属から構成される)の関節接合表面をキャッピング又は裏打ちすることができる。
(000150) 本発明を肩関節(同じく、ボール・アンド・ソケット関節)に対して用いてキャップ形状の装置を生成させるために、股関節の工程と同様の工程を使用する。例えば、浅いカップは、関節窩の内面を裏打ちするように生成させることができる。更に、手、指、肘、足首、足、及び椎間板椎間の他の関節用の装置も、この「キャッピング」概念を用いて生成させることができる。遠位大腿骨における一実施形態において、遠位大腿骨装置体積は、前十字靭帯及び後十字靭帯を温存しながら、骨の外形に従う。
(000151) 本発明に従って形成される人工軟骨の一実施形態において、75Dのショア硬度で予備形成されたポリエーテルウレタン装置が射出成形される。この装置を、その後、55Dの乾燥ショア硬度に調合されたポリエーテルウレタン(例えば、ジメチルアセトアミド中の25%Elasthane(商標)55D)を含有するビタミンE含有溶液中で溶液流延する。その後、流延層を対流式オーブン中で乾燥させて、溶媒を除去することができる。その後、装置を、アクリル酸、光開始剤、及び架橋剤の溶液中に24時間浸漬させ、その後、ガラス性の型の上に置き、紫外線に曝露させることができる。その後、得られた装置をリン酸緩衝食塩水中に含浸させ、その中で洗浄することができる。この工程を用いて、関節形成用途のための凸面装置又は凹面装置のいずれかを生成させる。射出成形された予備形成物は、その側面の1つに、従来の整形外科用骨セメントで骨に固定することができるようにする複数の空間(空孔又は特徴)を有する。
(000152) 装置の別の実施形態において、一方の側面に表面特徴を有して予備形成されたポリカーボネートウレタンを製作し、続いて、ポリエーテルウレタンの溶液中でその側面のうちの1つの浸漬流延を行ない、その後、上記の工程と同様の工程を行なった。更に別の実施形態において、ショア硬度55Dのポリエーテルウレタン予備形成物(例えば、Elasthane(商標)55D)を射出成形し、続いて、上記のようにモノマー溶液中で浸漬を行なう。第2のポリマーネットワークの硬化後、装置を、一方の側面において、ショア硬度75Dのポリカーボネートウレタンで浸漬流延する。これらの実施形態のいずれかにおいて、更なる表面特徴を、限定されないが、機械加工(旋盤及びエンドミル)、溶液流延、溶剤溶着、超音波溶着、又は熱溶着を含む、いくつかの手段によって装置の骨界面側に追加することができる。
(000153) 多孔性ポリカーボネートウレタンIPN及び半IPN構造を本発明に従って作製することができる。限定されないが、Bionate(登録商標)55D、Bionate(登録商標)65D、及びBionate(登録商標)75Dを含む、ポリカーボネートウレタンの粒子(サイズ範囲:250〜1500μm)は、熱(220〜250℃)、圧力(0.001〜100MPa)、及び/又は10〜30分間の溶媒を用いて、型中で焼結させることができる。構造は、50〜2000μmの最終的な空孔サイズ、15〜70%の多孔率、及び10MPaを超える圧縮強度を有する。最終的な構造は、医学的及び獣医学的用途のための組織内方成長/統合を促進する多孔率を有する。この構築物は、単独で、又は本発明に記載の潤滑性ポリマーのいずれかから作られた重層ベアリング表面とともに使用することができる。以下に記載するように、軟骨が損傷している場合には、この材料を身体の関節内の軟骨置換プラグとして使用することができた。
(000154) 例えば、本発明の方法に従って作製される本発明の組成物は、完全に又は部分的に合成された骨軟骨グラフトとして使用することができる。骨軟骨グラフトは、多孔性骨又は合成多孔性骨様構造に錨着させ得る潤滑性軟骨様合成ベアリング層からなる。ベアリング層は、2つの領域:潤滑性の表面層及び剛性の骨錨着層を有する。一実施形態において、ベアリング層の上部の潤滑性領域は、2つのポリマーから構成される相互透過性ポリマーネットワークからなる。第1のポリマーは、限定されないが、ポリエーテルウレタン、ポリカーボネートウレタン、シリコーンポリエーテルウレタン、及びシリコーンポリカーボネートウレタンを含む、高い機械的強度を有する疎水性熱可塑性物質、又は尿素結合が取り込まれているこれらの材料、又は尿素結合が取り込まれているこれらの材料(例えば、ポリウレタン尿素)であってもよい。第2のポリマーは、限定されないが、アクリル酸及び/又はスルホプロピルメタクリレートを含む、イオン化可能ビニルモノマーに由来する親水性ポリマーであってもよい。ベアリング層の下部領域(骨錨着層)は、超音波溶着振動、超音波エネルギー、レーザーエネルギー、熱、RFエネルギー、及び電気エネルギーで流動を引き起こすことができる剛性の再吸収不可能な熱可塑性物質であってもよい。骨錨着層は、ベアリング層を骨又は骨様多孔性構造に錨着させるために使用される。多孔性骨を使用する場合、それは、ヒト又は動物由来の海綿骨であることができる。合成された骨様材料を使用する場合、それは、多孔性リン酸カルシウム(及び/又は限定されないが、多孔性炭酸アパタイト、β−リン酸三カルシウム、もしくはヒドロキシアパタイトを含む他の材料)、又は限定されないが、ポリカーボネートウレタン、ポリエーテルウレタン、PLA、PLLA、PLAGA、及び/もしくはPEEKを含む上記のような多孔性の再吸収可能な又は再吸収不可能な熱可塑性物質からなることができる。ベアリング層を、骨錨着材料を融解させ、骨又は骨様構造の空孔又は空間内に流入させるエネルギーと組み合わせた加圧を介して多孔性骨又は骨様構造に錨着させ、その後、エネルギー源を除去すると、材料は再固化する。エネルギー源としては、振動、超音波エネルギー、レーザーエネルギー、熱、RFエネルギー、及び電気エネルギーを挙げることができるが、これらに限定されない。
(000155) 以下の図は、哺乳動物(動物又はヒト)の身体内の損傷を受けた関節を部分的に又は完全にリサーフェシングする装置としての本発明の様々な実施形態を示す。これらの装置は、圧入、ねじ(再吸収可能もしくは再吸収不可能のいずれかの、金属もしくはプラスチック)、縫合糸(再吸収可能もしくは再吸収不可能なもの)、のり、粘着剤、光硬化性粘着剤(例えば、ポリウレタン、もしくは樹脂ベースのもの)、又はセメント(例えば、ポリメチルメタクリレートもしくはリン酸カルシウムもしくは歯科用セメント)などの任意の数の手段を介して骨に固定することができる。
(000156) 図9A〜Dは、本発明のIPN又は半IPNから形成された骨軟骨グラフトインプラントを股関節又は肩関節などの関節内で軟骨を置換又は強化するためにどのように使用することができるかを示す。図9Aに示すように、人工軟骨90は、キャップ部分91及び任意のカラー92を有するソックスとして形成される。人工器官90を、図9Bに示すように反転させ、上腕骨又は大腿骨の頭部94に滑り込ませ得る。図10A〜Bに示す代替の実施形態において、人工器官90は、靭帯96又は他の解剖学的構造を収容する開口部95を含むことができる。
(000157) インプラント及び他の物品は、本発明に係る種々の複雑な形状で作製することができる。図11A〜Eは、単独で、又は膝関節内で軟骨を置換もしくは強化するために必要な任意の組み合わせで使用し得る本発明のIPN又は半IPNから形成された骨軟骨グラフトを示す。図11Aは、複数の大腿顆(或いはただ1つの顆)に係合するように構成された骨軟骨グラフト110を示す。図11Bは、脛骨プラトー113の一方又は両方の面に係合するように構成された骨軟骨グラフト111及び112を示す。図11Cは、膝蓋骨114に係合するように構成され、膝蓋大腿溝115に係合するように構成された骨軟骨グラフト119と関節連結した骨軟骨グラフト118を示す。図11Dは、外側半月及び内側半月を係合するように構成された骨軟骨グラフト116及び117を示す。図11Eは、これらの人工器官のいくつかを膝関節内の所定の位置にどのようにしてアセンブルし得るかを示す。
(000158) 骨軟骨グラフトは、指、手、足首、肘、足、又は脊椎などの、他の関節内でも使用することができる。例えば、図12A〜Bは、本発明のIPN又は半IPNから形成され、指関節における使用のために成形された骨軟骨グラフト121及び122を示す。図13A〜Bは、肩関節唇又は股関節唇の置換又はリサーフェシングにおいて使用するための本発明のIPN又は半IPNから形成された人工関節唇131を示す。図14は、滑液包骨軟骨グラフト141、関節唇骨軟骨グラフト142、関節窩骨軟骨グラフト143、及び上腕頭骨軟骨グラフト144としての本発明のIPN又は半IPNの使用を示す。図15は、椎間板椎間のリサーフェシングのための人工器官151及び152としての本発明のIPN又は半IPNの使用を示す。
(000159) 本発明のIPN及び半IPNの組成物は、関節面の部分的リサーフェシングのための人工軟骨プラグとして形成させることができる。図16Aは、本発明の勾配IPN組成物から形成された人工軟骨プラグ160を示す。プラグ160は、物品の熱可塑性側に形成され、骨の穴又は開口部に挿入されるように構成されたステム部分161を有する。プラグの頭部162は、上記のように、潤滑性IPN又は半IPNであるように形成される。図16Bは、多孔性表面が頭部162の下側163及びステム161の土台164に形成されているバリエーションを示す。図16C〜Dの実施形態において、多孔性表面は、土台164の中心部分165にのみ形成される。全ての実施形態において、ステム161を骨の穴又は開口部に圧入させ、人工軟骨として働くように、潤滑性IPN表面を露出させることができる。
(000160) 図17は、ステム171に、骨へのプラグの固定のためのねじを形成する螺旋状のねじ山173が提供されている人工軟骨プラグ170の実施形態を示す。頭部172の上部表面は、上記のように、潤滑性IPN又は半IPNである。
(000161) 図18は、固定のための骨の穴への圧入挿入用の3つのステム181を有する人工軟骨プラグ180の実施形態を示す。プラグ頭部182の上部表面は、上記のように、潤滑性IPN又は半IPNである。
(000162) 図19は、露出した頭部部分192がステム191と実質的に同じ直径である人工軟骨プラグ190の実施形態を示す。ステム191は、固定のために骨の穴に圧入させることができる。プラグ頭部192の上部表面は、上記のように、潤滑性IPN又は半IPNである。
(000163) 図20は、露出した頭部部分202がステム201よりも狭く、ステム201が土台203に向かって広くなる人工軟骨プラグ200の実施形態を示す。ステム201は、固定のために骨の穴に圧入させることができる。プラグ頭部202の上部表面は、上記のように、潤滑性IPN又は半IPNである。
(000164) 図21は、ステム211が固定を助けるための円周状のねじ山を有する人工軟骨プラグ210の実施形態を示す。ステム211は、固定のために骨の穴に圧入させることができる。プラグ頭部212の上部表面は、上記のように、潤滑性IPN又は半IPNである。
(000165) 図22は、ステム221に粗い多孔性表面を付加する図19の実施形態と同様の実施形態を示す。プラグ頭部222の上部表面は、上記のように、潤滑性IPN又は半IPNである。
(000166) 図23は、ねじ又はステムなどの追加の固定なしで、骨を物理的に把持するように形成された骨軟骨グラフト230の実施形態を示す。この実施形態において、人工器官の潤滑性IPN又は半IPN部分は、装置の凹面231にある。装置の反対の凸面232は、人工器官230が付着させられる骨の形状に一致するように成形される。表面232は、骨の内方成長を促進するように多孔性である。この場合の多孔性材料は、本発明に記載のポロゲン法から製作することができ、このポロゲンは、塩化ナトリウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、糖、及びこれらの誘導体又は組合せである。或いは、多孔性は、熱又は溶媒を用いて、ポリマービーズ(例えば、ポリエーテルウレタン又はポリカーボネートウレタン)を一緒に焼結させることに由来することができる。
(000167) 骨への固定のために、ねじ穴を骨軟骨グラフトに提供することができる。図24において、人工器官240に、ねじ242のための2つの穴241が提供されている。人工器官240の骨と接触する凹側244は、(上記のように)骨の内方成長を促進するように多孔性であり、骨の物理的把持に適した形状を有する。人工器官の外凸面243は、上記のように、潤滑性IPN又は半IPNである。
(000168) 図25において、骨軟骨グラフト250に、ねじ253の頭部を収容するためのねじ穴251及びくぼみ252が提供されている。人工器官250の骨と接触する凹側254は、(上記のように)骨の内方成長を促進するように多孔性であり、骨の物理的把持に適した形状を有する。人工器官の外凸面255は、上記のように、潤滑性IPN又は半IPNである。
(000169) 図26は、骨の穴へ挿入のためのステム261を有する骨軟骨グラフト260の実施形態を示す。人工器官260の骨と接触する凹側262は、(上記のように)骨の内方成長を促進するように多孔性であり、骨の物理的把持に適した形状を有する。人工器官の外凸面263は、上記のように、潤滑性IPN又は半IPNである。
(000170) 図27A〜Bは、両側が潤滑性のインプラントを作製するために使用される本発明の組成物の実施形態を示す。図27Aにおいて、インプラント270は、椎間板を置換するようにサイジングされ、構成される。インプラント270は、その上側及び下側に(例えば、上記のように形成された)潤滑性IPN表面又は半IPN表面271及び272を有する。図27Bは、楔形の横断面を有する膝スペーサー273を示す。人工椎間板270と同様に、スペーサー273も、その上側及び下側に潤滑性IPN表面又は半IPN表面274及び275を有する。
(000171) 上記の骨軟骨グラフト及び他のインプラントの多くは、単一の骨表面に張り付けられる。図28及び29は、互いに対して移動する、例えば、関節内の、2つの骨又は他の解剖学的要素の表面に付着している整形外科領域のインプラントを示す。図28において、インプラント280は、骨の内方成長を促進するために(上記のように)多孔性となるように形成された上部骨接触領域及び下部骨接触領域281及び282を有する。インプラント280の内部は、流体で満たされた包283である。内部に面するベアリング表面284及び285は、(上記のように)潤滑性IPN表面又は半IPN表面である。インプラント280は、例えば、介在スペーサーとして並びに関節の滑液包及び軟骨の置換物として使用することができる。図29のインプラント290は、図28のインプラントと類似しているが、関節を規定する骨の対応する穴に挿入及び固定するための上部ステム及び下部ステム291及び292を付加している。
(000172) 図30A〜Bは、本発明の骨軟骨グラフト及び他のインプラントの骨の中への経時的な統合を示す。図30Aにおいて、上記のように形成された骨軟骨グラフトインプラント300が骨301上に配置されている。インプラント300は、上記のように任意に多孔性である、潤滑性IPN又は半IPNの表面302と、熱硬化性又は熱可塑性の疎水性ポリマーのみから形成された骨界面表面303とを有する。表面302と表面303の間は、IPN又は半IPNと疎水性ポリマーと間の勾配又は移行域304である。時間経過とともに、骨組織は、図30Bに示すように、骨301から骨接触面303の中へと及び骨接触面303を通って成長する。
(000173) 図31A〜Cは、本発明に従って軟骨の関節表面を修復するための骨軟骨インプラントの3つの可能な立体形状を示す。図31Aにおいて、インプラント310は、上記のように、熱硬化性又は熱可塑性の疎水性ポリマーから形成された骨接触表面312に移行する潤滑性IPN又は半IPN表面311を有するキャップとして形成される。埋め込まれた場合、インプラント310は、骨313の外側表面を覆う。
(000174) 図31B及び31Cは、インプラント314が、上記のように、熱硬化性又は熱可塑性の疎水性ポリマーから形成された骨接触表面316に移行する潤滑性IPN表面又は半IPN表面315を有するパッチ又はプラグとして(それぞれ)形成されている立体形状を示す。埋め込まれた場合、インプラント314は、骨313の準備された開口部317内で適合する。
(000175) 本発明は、非医学的用途を有する。例えば、図32は、船舶の船体をリサーフェシングするための本発明の潤滑性IPN又は半IPN組成物の使用を示す。(上記のような)熱可塑性勾配IPNのパネル320を船体322の表面に付着させて、抗力及びバイオフィルム形成を低下させている。或いは、IPN材料を、いくつかの実施形態において、液体として船体に塗装し、硬化又は固化させることができる。勾配IPNは、その表面で負に電荷しているか又は非荷電であることができ、1つ又は複数のタイプのモノマー種から作製することができる。様々なUV保護剤及び抗酸化剤又は他の添加剤をこれらの材料に組み込んで、その性能を改善することもできる。
(000176) 図33は、回転及び転移部品330の表面331並びに静止部品332の表面333などの、互いに対して移動する機械部品の相互接続表面を修飾するための(上記のような)潤滑性の熱可塑性又は熱硬化性IPNの使用を示す。図34は、パイプ342の内部表面340の流体抗力を低下させるための(上記のような)潤滑性の熱可塑性又は熱硬化性IPNの使用を示す。
(000177) 本発明の材料は、電気化学的伝導性を必要とする用途において有用性を有する。IPN及び半IPNの伝導性は、材料の水和マトリックスを通るイオンの流れに基づく。ポリエーテルウレタンの薄膜を、アクリル酸と水の混合物の4つの異なる組成物(水中の15、30、50、及び70%のアクリル酸)で膨潤させた。その後、各々の膨潤した膜をUV光中で硬化させて半IPNを形成させた。その後、膜をPBS中で中和した。材料の電気抵抗は、オーム計を用いて測定した。抵抗を測定するために、IPN膜をペーパータオルで軽く叩いて余分なPBSを除去し、オーム計プローブを60〜70mmの膜幅で膜にクリップで留めた。初期抵抗値及び定常状態抵抗値を記録した。更に、未修飾のポリエーテルウレタン膜及び液体のPBSの抵抗を測定した。PBSの抵抗は、プローブ間の近似距離を60mmにして、オーム計プローブをPBS浴に直接入れることによって測定した。抵抗測定を以下の表に示す。
(000178) 結果は、半IPNの抵抗が純粋なPBS流体のみよりも低い(しかし、それと同じ桁内である)ことを示している。オーム計の限度は、40,000オームであった。絶縁体(ポリウレタンを含む)についての典型的な値は、1014〜1016オームであり;従って、PEUのみの抵抗値は、使用されたメーターの範囲外であった。PEU/PAA半IPNの透過性は、Maroudasらによって、Permeability of articular cartilage.Nature,1968.219(5160):p.1260−1に記載されている装置と同様の装置を用いて測定した。透過性は、ダルシーの法則(Q=KAΔp/L)に従って計算され、式中、Qは流速[mm3/秒]、Aはプラグの断面積[mm2]、Δpは適用される圧力勾配[MPa](加圧液体)、Lはヒドロゲルの厚さである。70%のアクリル酸から調製されるPEU/PAA半IPNの透過性は、K=1.45×10-17m4/N*秒であることが分かった。天然の軟骨については、文献値は、1.5×10-16〜2×10-15m4/N*秒の範囲である。従って、PEU/PAAは、軟骨よりも10〜100倍透過性が低く、それにより、天然の軟骨と比べて、長期の圧縮荷重下での脱水の傾向が低くなる場合がある。IPNの透過性は、膨潤溶液中のAAの濃度を変化させることによって調整することができ;AA含有量が高いほど、透過性は高い。対照的に、未修飾のPEU材料だけでは、溶質に対して事実上透過性がなく;それは、若干の水分(約1%)を保持するが、実際には、それは、溶質透過性マトリックスとして作用しない。
(000179) 上記の組成物、物品、及び方法に対する他のバリエーション及び修飾としては、以下のものが挙げられる。
(000180) 第1のポリマーは、市販されているか又はオーダーメイドであり、いくつかの方法(例えば、押出、射出成形、圧縮成形、反応射出成形(RIM)、又は溶液流延)によって作製されるポリマーであることができる。第1のポリマーは、架橋しないか、又は様々な手段によって架橋することができる。どちらのポリマーも、例えば、ガンマ線又は電子ビーム放射線によって架橋することができる。
(000181) 全体が少なくとも2質量%のイオン化可能な化学基を含有する限り、任意の数又は組合せのエチレン性不飽和モノマー又はマクロモノマー(例えば、反応性二重結合を含有する)を、第2の又は後続のネットワークの基礎として使用することができる。これらは、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、アリルエーテル基、又はアクリルアミド基を含有するものを含むが、これらに限定されない。任意の数のペンダント官能基を、限定されないが、カルボン酸、スルホン酸、アセテート、アルコール、エーテル、フェノール、芳香族基、又は炭素鎖を含む、これらのエチレン性不飽和基に共役させることができる。
(000182) ポリウレタン系ポリマーは、(限定されないが)以下のものであることができる:ポリエーテルウレタン、ポリカーボネートウレタン、ポリウレタン尿素、シリコーンポリエーテルウレタン、又はシリコーンポリカーボネートウレタン。他のハードセグメント、ソフトセグメント、及び鎖伸長剤を有する他のポリウレタンが可能である。
(000183) 他のポリマーは、シリコーン(ポリジメチルシロキサン)又はポリエチレンのホモポリマー又はコポリマーなどの、第1のネットワーク中で使用することができる。
(000184) ポリウレタン系ポリマーを第1のポリマーとして使用する場合、ポリウレタン系ポリマーの物理的架橋及び化学的橋架の程度は、物理的架橋のみ(熱可塑性物質)から広範な化学的橋架の間で変化させることができる。化学的橋架の場合、架橋可能なポリウレタンは、単独で、又は熱可塑性物質(架橋されていない)ポリウレタンとの混合物として使用することができる。
(000185) 重合の条件(すなわち、周囲酸素、UV強度、UV波長、露光時間、温度)を変化させてもよい。
(000186) 組成勾配の配向及び峻度は、モノマー中での浸漬の時間及び/又は方法などの様々な手段、並びに外部静水陽圧又は外部静水陰圧の適用によって変化させることができる。
(000187) 熱可塑性物質は、発泡又は塩溶脱などの様々な技術によって多孔性にすることができる。モノマー(例えば、AA)による多孔性ポリマー(例えば、PU)の膨潤と、それに続く、AAの重合の後、多孔性IPNが形成される。
(000188) 熱可塑性物質の更なる層を、表面に新しい熱可塑性物質を硬化又は乾燥させることによって、IPN側又は熱可塑性物質側のみのいずれかで、材料に付加することができる。層は、全て同じ材料であることができるか、又は異なる材料(例えば、ABS+ポリウレタン、ポリエーテルウレタン+ポリカーボネートウレタンなど)であることができる。
(000189) 限定されないが、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、エタノール、メタノール、アセトン、水、ジクロロメタン、プロパノール、メタノール、又はこれらの組合せを含む、いくつかの異なる溶媒を、ポリウレタン、第2のネットワーク、又は両方の合成において使用することができる。
(000190) 光開始剤(例えば、フェノン含有化合物及びIrgacure(登録商標)製品)、熱開始剤、又は化学開始剤などの任意の数の開始剤を使用することができる。熱開始剤の例としては、アゾ化合物、過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル)、過硫酸塩(例えば、過硫酸カリウムもしくは過硫酸アンモニウム)、これらの誘導体、又は組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
(000191) 架橋の同一性及び密度(例えば、モノマーに対して0.0001モル%〜25モル%の架橋剤)、開始剤濃度(例えば、モノマーに対して0.0001モル%〜10モル%)、前駆体ポリマーの分子量、ポリマーの相対的質量パーセント、光の波長(UVから可視の範囲)、光の強度(0.01mW/cm2〜1W/cm2)、温度、pH、及び膨潤液のイオン強度、並びに水和のレベルの変化。
(000192) 第2のネットワーク材料は、架橋薬剤の非存在下で合成することができる。
(000193) これらの材料の水含有量は、2%〜99%の範囲であることができる。
(000194) IPNの異なる成分を、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレングリコール)−アクリレート、ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、他のビニル基含有スルホン酸、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(ジメタクリルアミド)、及びこれらの組合せ又は誘導体などの、イオン化可能モノマーと組み合わせて組み込むことができる。例えば、アクリル酸及びビニルスルホン酸又は2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のコポリマーを第2のネットワーク用に生成させて、ポリウレタンの第1のネットワーク及びポリ(アクリル酸−コ−アクリルアミド−メチル−プロパンスルホン酸)コポリマーの第2のネットワークを形成させることができる。それらが少なくとも2質量%のイオン化可能モノマーを含有し、第1のポリマーが入り込む(膨潤する)ことができる限り、任意のモノマー又はモノマーの組み合わせを好適な溶媒と併用することができる。
(000195) IPNは、化学的にか又は物理的にかのいずれかで、そのバルク又はその表面に、抗酸化剤(例えば、ビタミンC、ビタミンE、Irganox(登録商標)、もしくはサントホワイト粉末)及び/又は抗微生物剤(例えば、抗生物質)などの特定の添加剤を組み込んでいることができる。これらは、例えば、メタクリレート、アクリレート、アクリルアミド、ビニル、又はアリルエーテルなどの任意のビニル基含有モノマーによる抗酸化剤のエステル化によって、材料に化学的に結合させることができる。
(000196) その各々が架橋されているか又は架橋されていない、2を超えるネットワーク(例えば、3つ又はそれより多く)を形成させることもできる。
(000197) ポリウレタンそれ自体を、いくつかの方法で、例えば、水素化ナトリウムの存在下での1,3プロパンスルホンの反応によるウレタン基でのスルホン化によるか、又は過剰のイソシアネート基との反応によるウレタン基でのアロファネート結合の形成によって修飾することができる。例えば、過剰のイソシアナトエチルメタクリレートを、トルエン中のポリウレタンとジラウリン酸ジブチルスズの存在下で2.5時間反応させて、メタクリルオキシ共役ポリウレタン表面を生じさせることができる。その後、メタクリルオキシ基を用いて、フリーラジカル重合によって、他のメタクリルオキシ(又は他のビニル基)を含有するモノマー又はマクロモノマーを後から連結することができる。そのような修飾は、IPNの第2のネットワークの形成の前又は後に実行することができる。
(000198)
実施例1
一実施例において、ポリカーボネートウレタン(Bionate55D)を、モノマーに対して0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び0.1%v/vのトリエチレングリコールジメタクリレートを含有する水中の70%アクリル酸に一晩浸漬させた。ポリカーボネートウレタンを溶液から取り出し、2つのガラススライドの間に置き、UV光(2mW/cm2)に15分間曝露させた。得られた半IPNを取り出し、リン酸緩衝食塩水中で洗浄し、膨潤させた。材料は膨潤し、数時間以内に潤滑性になった。他の実施例において、セグメント化ポリウレタン尿素、並びにシリコーンポリエーテルウレタン及びシリコーンポリカーボネートウレタンをアクリル酸溶液中に入れ、同じ様式で重合させ、洗浄して、潤滑性IPNを得た。
(000199)
実施例2
別の実施例において、ポリエーテルウレタン(Elasthane(商標)55D)を、モノマーに対して0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び0.1%v/vのトリエチレングリコールジメタクリレートを含有する水中の70%アクリル酸に一晩浸漬させた。ポリエーテルウレタンを溶液から取り出し、2つのガラススライドの間に置き、その後、UV光(2mW/cm2)に15分間曝露させた。得られた半IPNを取り出し、その後、リン酸緩衝食塩水中で洗浄し、膨潤させた。材料は膨潤し、数時間以内に潤滑性になった。他の実施例において、ポリカーボネートウレタン、セグメント化ポリウレタン尿素、並びにシリコーンポリエーテルウレタン及びシリコーンポリカーボネートウレタンをアクリル酸溶液中に入れ、同じ様式で重合させ、洗浄して、潤滑性IPNを得た。
(000200)
実施例3
別の実施例において、シリコーンポリエーテルウレタン及びシリコーンポリカーボネートウレタンを、モノマーに対して0.1%v/の2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び0.1%v/vのトリエチレングリコールジメタクリレートを添加した100%アクリル酸溶液中に別々に一晩入れた。重合及び架橋の後、半IPNは膨潤し、潤滑性になった。ポリウレタン中へのシリコーン(ポリジメチルシロキサン)の添加は、材料に対する追加のレベルの生体安定性、並びに潜在的に有用な表面の化学的性質及び特性を付加する。
(000201)
実施例4
別の実施例において、メタクリルオキシ官能基化ポリカーボネートウレタンをUV光に曝露させて、ポリカーボネートウレタンを架橋し、その後、モノマーに対して0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び0.1%v/vのトリエチレングリコールジメタクリレートを含有する70%アクリル酸中で一晩膨潤させた。材料を溶液から取り出し、2つのガラススライドの間に置き、その後、UV光(2mW/cm2)に15分間曝露させて、ポリカーボネートウレタン及びポリ(アクリル酸)の完全相互透過性ポリマーネットワークを得た。その後、IPNを水性塩溶液中で洗浄して、ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応のモノマーを除去した。
(000202)
実施例5
別の実施例において、メタクリルオキシ官能基化ポリエーテルウレタンをUV光に(0.1%の2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び0.1%のトリエチレングリコールジメタクリレートの存在下で)曝露させて、ポリエーテルウレタンを架橋し、その後、前述の光開始剤及び架橋剤を含む70%のアクリル酸中で膨潤させ、その後、UV開始架橋を行なって、ポリエーテルウレタン及びポリ(アクリル酸)の完全相互透過性ポリマーネットワークを得た。その後、IPNを水性塩溶液中で洗浄して、ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応のモノマーを除去した。
(000203)
実施例6
別の実施例において、メタクリルオキシ官能基化ポリカーボネートウレタンの25%DMAC溶液を0.1%の前述の光開始剤とともにUV光に曝露させて、ポリカーボネートウレタンを架橋した。加熱した(60℃)対流式オーブン中で溶媒を除去した後、更なるポリカーボネートウレタン層を架橋ポリカーボネートウレタンの一方の側面に流延して、積層構造を得、その後、架橋した側面のみを、0.1%の2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び0.1%のトリエチレングリコールジメタクリレートを含む70%のアクリル酸中で膨潤させ、その後、UV開始架橋を行なって、ポリカーボネートウレタン及びポリ(アクリル酸)の完全相互透過性ポリマーネットワークを得た。その後、IPNを水性塩溶液中で洗浄して、ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応のモノマーを除去した。
(000204)
実施例7
別の実施例において、メタクリルオキシ官能基化ポリカーボネートウレタンの25%DMAC溶液を0.1%の前述の光開始剤とともにUV光に曝露させて、ポリエーテルウレタンを架橋した。加熱した(60℃)対流式オーブン中で溶媒を除去した後、更なるポリエーテルウレタン層を架橋ポリカーボネートウレタンの一方の側面に流延して、積層構造を得、その後、架橋した側面のみを、0.1%の2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び0.1%のトリエチレングリコールジメタクリレートを含む70%のアクリル酸中で膨潤させ、その後、UV開始架橋を行なって、ポリエーテルウレタン及びポリ(アクリル酸)の完全相互透過性ポリマーネットワークを得た。その後、IPNを水性塩溶液中で洗浄して、ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応のモノマーを除去した。
(000205)
実施例8
別の組の実施例において、メタクルオキシ(methacroxy)官能基化ポリエーテルウレタンの層を射出成形ポリエーテルウレタンの層に流延し、別途に、別の層を射出成形ポリカーボネートウレタンの層に流延した。各々をUV光に曝露させて、積層構造を得た。架橋した側面のみを、0.1%の2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び0.1%のトリエチレングリコールジメタクリレートを含む70%のアクリル酸中で膨潤させ、その後、UV開始架橋を行なって、完全相互透過性ポリマーネットワークを得た。その後、IPNを水性塩溶液中で洗浄して、ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応のモノマーを除去した。
(000206)
実施例9
一実施例において、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)を、モノマーに対して0.1%のv/v 2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び0.1%のv/vトリエチレングリコールジメタクリレートを含む水中で100%のアクリル酸に15分間曝露させた。表面曝露は、モノマー溶液をABSの表面に30分間液滴流延することによって遂行した。その後、ABSを2つのガラススライドの間に置き、その後、UV光(2mW/cm2)に15分間曝露させた。得られたABS/PAA勾配IPNを取り出し、その後、リン酸緩衝食塩水中で洗浄し、膨潤させた。IPNを水性塩溶液中で洗浄して、ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応のモノマーを除去した。材料は膨潤し、数時間以内に潤滑性になった。
(000207)
実施例10
熱可塑性勾配IPNを再成形するために、熱を加えた。ABS/PAA勾配IPNを熱線銃を用いて加熱し、その後、円筒状ポリプロピレンチューブに押し付けた。材料を室温に冷却した後に、アセトンをABS/PAAとポリプロピレンの間に射出した。手で圧力をかけ、試料を乾燥させた後、結果は、ポリプロピレンチューブに包み込まれ、それに結合した熱可塑性勾配IPNであった。
(000208)
実施例11
別の実施例において、ABSとポリカーボネートウレタンの間にアセトンを射出し、手で圧力をかけることによって、熱可塑性勾配ABS/PAAのIPNをポリカーボネートウレタンに付着させて、ポリカルボウレタンに結合した熱可塑性勾配IPNを得た。
(000209)
実施例12
別の実施例において、熱線銃を用いてポリウレタン側面に熱を加え、材料の湾曲を手で反転させ、かつ水中でIPNを冷却することによって、湾曲したポリカーボネートウレタンIPNを再び真っ直ぐにした。
(000210)
実施例13
別の実施例において、ポリエーテルウレタン溶液(例えば、ジメチルアセトアミド(「DMAC」)中20%)を積層構造でポリカーボネートウレタン上に流延し、加熱した(60℃)対流式オーブン中で乾燥させ、その後、ポリエーテルウレタン表面のみを、モノマーに対して0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び0.1%v/vのトリエチレングリコールジメタクリレートを含有する水中の70%のアクリル酸に15分間曝露させた。表面曝露は、前述のモノマー溶液中に含浸させた布を敷いた上に積層材ポリエーテルウレタン側面を下して置くことによって遂行した。材料を布マットから取り出し、2つのガラススライドの間に置き、その後、UV光(2mW/cm2)に15分間曝露させた。得られた勾配半IPNを取り出し、リン酸緩衝食塩水中で洗浄し、膨潤させた。材料は膨潤し、数時間以内に潤滑性になった。他の実施例において、ポリエーテルウレタン、セグメント化ポリウレタン尿素、シリコーンポリエーテルウレタン、及びシリコーンポリカーボネートウレタンを同じ方法で扱って、潤滑性半IPNを得た。
(000211)
実施例14
別の実施例において、50質量%塩化ナトリウムを含有するポリカーボネートウレタン(DMAC中20%)の層を、予備作製したポリエーテルウレタンポリカーボネートウレタン上に溶液流延し、対流下で80℃で乾燥させた。塩を水中で洗い流して、積層ポリウレタン上に多孔性側面を得た。他の材料は、塩化ナトリウム濃度を10%〜80%の間で変化させて作製した。
(000212)
実施例15
別の実施例において、20%のリン酸三カルシウムを含有するポリカーボネートウレタン(DMAC中20%)の層を、予備作製されたポリエーテルウレタン−ポリカーボネートウレタン上に溶液流延し、対流下で80℃で乾燥させた。リン酸三カルシウムは、骨誘導剤としてポリウレタン内に包埋されたままにした。他の材料は、リン酸三カルシウム濃度を0.001%〜20%の間で変化させて作製した。
(000213)
実施例16
別の実施例において、ポリウレタン尿素(例えば、ジメチルアセトアミド中20%)を積層構造でポリカーボネートウレタン上に流延し、その後、ポリウレタン尿素表面のみを、モノマーに対して0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び0.1%v/vのトリエチレングリコールジメタクリレートを含有する水中の70%のアクリル酸中で15分間曝露させた。表面曝露は、前述のモノマー溶液中に含浸させた布を敷いた上に積層材ポリウレタン尿素側面を下にして置くことによって遂行した。ポリカーボネートウレタンを布マットから取り出し、2つのガラススライドの間に置き、その後、UV光(2mW/cm2)に15分間曝露させた。得られた勾配半IPNを取り出し、その後、リン酸緩衝食塩水中で洗浄し、膨潤させた。材料は膨潤し、数時間以内に潤滑性になった。材料をPBS中で洗浄して、ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応モノマーを除去した。
(000214)
実施例17
別の実施例において、溶液(ジメチルアセトアミド中25%)中の熱可塑性ポリエーテルウレタンと混合したメタクリルオキシ官能基化ポリエーテルウレタンをUV光に曝露させて、ポリカーボネートウレタンを架橋した。その後、更なるポリエーテルウレタンの層を架橋ポリエーテルウレタンの一方の側面に流延して、積層構造を得、その後、架橋した側面のみを、前述の光開始剤及び架橋剤を含む70%のアクリル酸中で膨潤させ、その後、UV開始架橋を行なって、ポリエーテルウレタン及びポリ(アクリル酸)の完全相互透過性ポリマーネットワークを得た。その後、IPNを水性塩溶液中で洗浄して、ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応のモノマーを除去した。
(000215)
実施例18
一実施例において、平坦なシートを、ジメチルアセトアミド(DMAC)中での熱可塑性ポリウレタンの溶液流延によって生成させた。ポリエーテルウレタン(Elasthane(商標))、ポリカーボネートウレタン(Bionate)、ポリエーテルウレタン尿素(Biospan)、シリコーンポリカーボネートウレタン(Carbosil)、及びシリコーンポリエーテルウレタン(Pursil)のポリウレタン溶液は、製造者により、約25%の固体濃度のジメチルアセトアミド(DMAC)中で合成された。
(000216)
実施例19
球体形状は、ガラス球体及びシリコーン球体を(DMAC中の)ポリウレタン溶液中で浸漬コーティングすることによって成型された。ポリカーボネートウレタン(DMAC中20%)を球状のガラス型(49.5mmの外径)に浸漬コーティングし、別途に、シリコーン球体に浸漬コーティングした。溶媒は、対流式オーブン中で80℃で乾燥させることによって除去した。この工程をもう2回繰り返して、合計3つのコーティングを生成させた。その後、この球体をポリエーテルウレタン(DMAC中20%)中で浸漬コーティングし、その後、対流下で80℃で乾燥させた。この工程ももう2回繰り返した。得られたキャップ形状の積層ポリウレタンを型から取り出し、その外側を0.1%の2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン及び0.1%のトリエチレングリコールジメタクリレートを含む水中の70%のアクリル酸溶液に1.5時間浸漬させた。キャップを反転させ、球状のガラス型の上に戻し、UV光(2mW/cm2)に15分間曝露させた。次に、キャップを型から取り出し、リン酸緩衝食塩水中に入れた。結果は、1つの潤滑性表面と1つの純粋な熱可塑性表面を有する球形の勾配IPNであった。他の温度及び他の溶媒、並びに他の型材料及びポリマー成分を用いて、この工程を実行することもできる。
(000217)
実施例20
別の実施例において、ポリエーテルウレタンを0.1%の2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び0.1%のメチレンビスアクリルアミドを含む70%のアクリル酸中で膨潤させた。材料の一方の側面を軽く叩いて乾燥させ、その後、空気に曝露させ、UV光で処理した。その後、得られた勾配半IPNを水性塩溶液中で洗浄して、ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応のモノマーを除去した。他の実験において、材料を硬化時に窒素又はアルゴンに曝露させた。
(000218)
実施例21
別の実施例において、ポリエーテルウレタン(Elasthane(商標)55D)を射出成形し、その後、0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び0.1%w/wのメチレンビスアクリルアミドを含む70%のアクリル酸中で膨潤させ、その後、UV開始架橋を行なって、ポリエーテルウレタン及びポリ(アクリル酸)の完全相互透過性ポリマーネットワークを得た。その後、IPNを水性塩溶液中で洗浄して、ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応のモノマーを除去した。
(000219)
実施例22
別の実施例において、ポリエーテルウレタン(Elasthane(商標)75D)を射出成形し、ポリエーテルウレタン溶液(25%DMAC中のElasthane(商標)55D)中で一方の側面に浸漬流延(溶液流延)させ、対流式オーブン中で乾燥させて、DMAC溶媒を除去した。乾燥させた材料を、0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び0.1%w/wのメチレンビスアクリルアミドを含む70%のアクリル酸中で膨潤させ、その後、UV開始架橋を行なって、ポリエーテルウレタン及びポリ(アクリル酸)の完全相互透過性ポリマーネットワークを得た。その後、IPNを水性塩溶液中で洗浄して、ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応のモノマーを除去した。
(000220)
実施例23
別の実施例において、ポリカーボネートウレタン(Bionate75D)を射出成形し、ポリエーテルウレタン溶液(25%DMAC中のElasthane(商標)55D)中で一方の側面に浸漬流延(溶液流延)させ、対流式オーブン中で乾燥させて、DMAC溶媒を除去した。乾燥させた材料を、0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び0.1%w/wのメチレンビスアクリルアミドを含む70%のアクリル酸中で膨潤させ、その後、UV開始架橋を行なって、ポリエーテルウレタン及びポリ(アクリル酸)の完全相互透過性ポリマーネットワークを得た。その後、IPNを水性塩溶液中で洗浄して、ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応のモノマーを除去した。
(000221)
実施例24
別の実施例において、ポリエーテルウレタン(Elasthane(商標)75D)を射出成形し、その後、メタクリルオキシ官能基化ポリエーテルウレタン溶液(25%DMAC中のElasthane(商標)55D)中で前述の光開始剤とともに浸漬流延(溶液流延)し、その後、UV光に曝露させて、メタクリルオキシ官能基化ポリエーテルウレタンを架橋した。その後、材料を対流式オーブン中で乾燥させて、DMAC溶媒を除去した。その後、乾燥させた材料を0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び0.1%w/wのメチレンビスアクリルアミドを含む70%のアクリル酸中で膨潤させ、その後、UV開始架橋を行なって、ポリエーテルウレタン及びポリ(アクリル酸)の完全相互透過性ポリマーネットワークを得た。その後、IPNを水性塩溶液中で洗浄して、ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応のモノマーを除去した。
(000222)
実施例25
別の実施例において、ポリカーボネートウレタン(Bionate75D)を射出成形し、その後、メタクリルオキシ官能基化ポリエーテルウレタン溶液(25%DMAC中でElasthane(商標)55D)中で浸漬流延(溶液流延)し、その後、UV光に曝露させて、メタクリルオキシ官能基化ポリエーテルウレタンを架橋した。その後、材料を対流式オーブン中で乾燥させて、DMAC溶媒を除去した。その後、乾燥させた材料を、0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び0.1%v/vのトリエチレングリコールジメタクリレートを含む70%のアクリル酸中で膨潤させ、その後、UV開始架橋を行なって、ポリエーテルウレタン及びポリ(アクリル酸)の完全相互透過性ポリマーネットワークを得た。その後、IPNを水性塩溶液中で洗浄して、ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応のモノマーを除去した。
(000223)
実施例26
別の実施例において、ポリエーテルウレタン(Elasthane(商標)55D)溶液を流延し、その後、0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び0.1%w/wのメチレンビスアクリルアミドを含む酢酸中の35%のスルホプロピルメタクリレート中で膨潤させ、その後、UV開始架橋を行なって、ポリエーテルウレタン及びポリ(アクリル酸)の完全相互透過性ポリマーネットワークを得た。その後、半IPNを水で洗浄して、酢酸を除去し、その後、塩水溶液中で洗浄して、ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応のモノマーを除去した。
(000224)
実施例27
別の実施例において、ポリエーテルウレタン(Elasthane(商標)55D)溶液を流延し、その後、0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び0.1%w/wのメチレンビスアクリルアミドを含む水中の35%のスルホプロピルメタクリレート及び35%のアクリル酸中で膨潤させ、その後、UV開始架橋を行なって、ポリエーテルウレタン及びポリ(アクリル酸)の完全相互透過性ポリマーネットワークを得た。その後、半IPNを水性塩溶液中で洗浄して、ポリ(アクリル酸)/ポリ(スルホプロピルメタクリレート)コポリマーを中和し、平衡膨潤を達成し、未反応のモノマーを除去した。
(000225)
実施例28
別の実施例において、長方形のPMMA(プレキシグラス)の試料を、0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び0.1%w/wのメチレンビスアクリルアミドを含む水中の100%のアクリル酸中で短時間膨潤させ、その後、UV開始架橋を行なって、PMMA及びポリ(アクリル酸)の完全相互透過性ポリマーネットワークを得た。その後、IPNを水性塩溶液中で洗浄して、ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応のモノマーを除去した。
(000226)
実施例29
別の実施例において、長方形のポリジメチルスルホキシド(PDMS、Sylgard(登録商標)184)の試料を製造者の仕様書に従って調製し、その後、テトラヒドロフラン中の35%のアクリル酸溶液中で0.1%v/vの2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び0.1%v/vのトリエチレングリコールジメタクリレートとともに短時間膨潤させ、その後、UV開始架橋を行なって、PDMS及びポリ(アクリル酸)の完全相互透過性ポリマーネットワークを得た。IPNを水性塩溶液中で洗浄して、ポリ(アクリル酸)を中和し、平衡膨潤を達成し、未反応のモノマーを除去した。
(000227)
実施例30
図35は、水和した関節形成装置の横断面であり、この関節形成装置が、事実上、一方の側で天然の軟骨の構造、弾性係数、破壊強度、及び潤滑表面を模倣し、他方の側で骨梁の剛性、強度、及び多孔性を模倣する合成型の骨軟骨グラフトであることを示す。この装置は、剛性で、多孔性で、かつ骨様の固定表面へとスムーズに移行する、潤滑性で、軟骨様のポリマーを特色とする複合勾配材料からなる。勾配は、柔軟で滑りやすい軟骨が表面から深部へと厚さ方向に沿って次第により硬くかつより骨様になる、天然の関節に固有の組成勾配を模倣するように設計された。実際、この「バイオミメティック」勾配は、下層にある骨に対して生理的な応力分配を生じさせ、一方でまた、装置と骨の剛性をそれらの接触点で効果的に一致させることによって、骨界面での微細動作を最小限に抑えるはずである。好適な材料は、例えば、以下に記載されており、その開示は、参照により本明細書中に組み込まれる:米国特許出願第61/079,060号明細書(2008年7月8日出願);米国特許出願第61/095,273号明細書(2008年9月8日出願);及び米国特許出願第12/148,534(2008年4月17日出願)。
(000228)
実施例31
図36は、本発明の材料が非常に親水性であることを示す接触角解析を示す。一滴の水を表面に置く場合、その滴が取る形状は表面の組成によって決まる。親水性表面は、水を引き付けてより平坦な滴を生成させるが、疎水性表面は、水を弾いてより丸い滴を生成させる。表面の親水性の程度は、接触角と呼ばれる、表面と水滴との間で生成される角度を測定することによって推測される。通常、より親水性の表面は、水との約0〜45°の接触角を有するが、より疎水性の表面は、水との45°よりも大きい接触角を有する。
(000229) 本発明によって作製された荷電ヒドロゲルIPNと水との間の接触角を決定した。簡潔に述べると、1枚のElasthane(商標)55D(ポリエーテルウレタン)を、開始剤及び架橋剤を含むアクリル酸中に含浸させ、半IPN(PEU/PAA半IPN)を形成させるために硬化させた。硬化後、荷電したPEU/PAA半IPNをリン酸緩衝食塩水中で水和させた。材料を溶液から取り出し、表面を短時間軽く叩いて、残りの液体を除去した。一滴の水を材料の表面に置き、ゴニオメーターを用いて接触角を読み取った。結果は、約8°の接触角を示した。比較のために、溶液流延したポリウレタン及び射出成形したポリウレタンの出発材料で得られた読取りは、それぞれ、約72°及び69°の接触角を有していた。この結果は、本発明に係るポリウレタン中へのポリ(アクリル酸)ネットワークの取込みが表面親水性を劇的に増大させることを示す。
(000230)
実施例32
荷電ヒドロゲルIPNとポリウレタンの構造の相違は、透過電子顕微鏡法(TEM)によって示される。TEMは、材料の高拡大画像を生成させる。TEMを、本発明のポリエーテルウレタン/ポリ(アクリル)酸の半IPN(PEU/PAA半IPN)の試料及び未修飾のポリエーテルウレタンの試料に対して行なった。簡潔に述べると、1枚のElasthane(商標)55D(ポリエーテルウレタン)を、開始剤及び架橋剤を含むアクリル酸中に含浸させ、硬化させた。それを標準的な手順によって四酸化オスミウムで染色して、TEM解析を行なった。図37Aは、PEUの34,000倍の拡大図を示し、一方、図37Bは、PEU/PAA半IPNを示す。非晶性(ソフト)ドメイン及び規則性(ハード)ドメインに対応する明るい領域及び暗い領域のサイズは、未修飾のPEUと比べて、PEU/PAA半IPNのTEM画像中で増加した。PEU試料と比較したPEU/PAA試料中でのより大きいドメインサイズに基づくと、PAAは、PEUソフトセグメント内に隔離されているようであり、相分離の程度は、未修飾のPEUと比較して、PEU/PAA試料中でより高い。
(000231)
実施例33
図38は、図37と同じPEU/PAA半IPN材料のTEMを12,400倍の倍率で示す。模式図は、ハードセグメントが相互透過性ポリマーネットワークのソフトセグメントからどのように相分離するのかを示す。
(000232)
実施例34
図39は、整形外科用インプラントの例示的な関節界面表面を含むPEU/PAAのIPNの静的機械特性を示す。材料の初期引張ヤング係数、破断時ひずみ、及び破断時応力を決定するために、単軸引張試験を実施した。イヌの骨の標本を、ASTM D638に従って、0.3%/秒のひずみ速度で試験した。関節界面材料の材料についての平均真応力−真ひずみ曲線を図40に示す。曲線の線形部分において、(真応力、真ひずみ曲線から得られる)弾性係数はE=15.3MPaであり、これは、天然の軟骨について報告されている引張特性に非常に近い。最終的な真応力は、εult=143%の真ひずみで、約σult=52MPaであることが分かった(軟骨は、約65%のひずみで破損することに留意する)。張力下のひずみ硬化は、80%以上の真ひずみについて観察された。ポアソン比(平衡)は、イヌの骨の頸領域の側方収縮を測定することによって推定され、v=0.32でひずみ範囲に沿って一定であることが分かった。従って、体積弾性率は、方程式K=E/3(1−2v)から算出され、18.3MPaであることが分かった。ASTM D695による非拘束圧縮プラグ試験から、PEU/PAA半IPNが優れた圧縮特性を有し、15.6MPaの圧縮剛性係数(真応力−ひずみに基づく、引張係数と同じ)、及び50MPaを上回る破損強度を有することが明らかにされる。
(000233)
実施例35
図40は、毎分40℃で加熱速度の示差走査熱量測定(DSC)によって評価したPEU及びPEU/PAA半IPN試料の熱曲線を示す。図41は、2つの異なる加熱速度でDSCによって評価したPEU及びPEU/PAA半IPN試料の熱転移を比較したものである。ガラス転移温度Tg、結晶化温度、及び融解温度Tmを含む、熱転移温度を決定した。そのTg未満では、ポリマーの熱容量はより低く、ポリマーはより硬いか又はよりガラス質である。Tgより上では、ポリマーの熱容量は増加し、ポリマーはより可撓性になる。いくつかのポリマーについては、この温度より上は、結晶化温度であり、分子のドメインの少なくとも一部は、より組織化され、本質的に結晶性になる。より高い温度では、結晶性部分が完全に融解する融解温度となる。この手順を、変調示差走査熱量計及び冷凍冷却システム(RCS90)とともにTA機器Q200 DSCシステムを用いて、ASTM D3418−03試験方法に従って行なった。簡潔に述べると、1枚のElasthane(商標)55D(ポリエーテルウレタン)を、開始剤及び架橋剤を含むアクリル酸中に含浸させ、その後、硬化させた。少量(2〜6mg)のPEU/PAA半IPN試料を第1のアルミニウム皿に入れた。蓋を皿の上部に置き、汎用圧着プレスで圧着して、試料を皿と蓋の間に挟んだ。熱を第1の皿に加え、別途に、参照皿に加えて、各々に対する電流フローを変化させ、2つの材料の温度を同じに保った。試験中の材料の熱流量を温度に対してグラフ化した。曲線の傾きは熱転移温度を示す(図40)。いくつかの試験を、異なる加熱速度(毎分10℃及び40℃)を用いて実施した。異なる加熱速度で試験を行なうことによって、図41に見られるように、異なる分解能が熱転移について得られる。Tgが材料の以前の熱履歴に左右され得るので、材料を2つの熱サイクルに供する。
第1の熱サイクルは、ポリマーがその試験状態で達する条件を標準化するために使用され、第2の試験サイクルは、転移温度を生成させるために使用される。加熱速度を毎分10℃で保持したとき、PEU/PAA半IPNとPEUの両方についてのガラス転移温度Tgは、21℃付近であった。結晶化温度及び融解温度は、PEUと比較して、PEU/PAAでより低かった。毎分40℃の加熱速度では、結晶化温度は、PEUの93℃と比較して、PEU/PAAについて90℃であった。加熱速度を毎分10℃に下げたとき、観察される結晶化温度は、PEUの92℃と比較して、PEU/PAAについて79℃であった。最後に、毎分40℃の加熱速度では、Tm温度は、PEUの178℃と比較して、PEU/PAAについて164℃であった。加熱速度を毎分10℃に下げたとき、観察されるTm温度は、PEU/PAAについては154℃、PEUについては176℃及び186℃であった。PEUのいくつかの分析において、2つのTmが観察されたが(176℃及び186℃)、それは、ポリマー中に異なるセグメントがあることに起因する可能性がある。Tmの変化は、少なくとも一部は、PAAの追加によってポリマー体積の増加が生じ、ポリマーの体積当たりのハードセグメントがより少なくなることに起因する。
(000234)
実施例36
本発明のPEU/PAA半IPNのそれ自体に対する摩擦係数μを、ビルトイン型トルクセルを用いた摩耗試験においてリアルタイムで測定し、0.015〜0.06の範囲であることが分かったが、これは、図42に示すように、軟骨・オン・軟骨のμ値と類似している。(軟骨と比較した)そのより低い透過性のために、本発明のPEU/PAA半IPNは、より長い間、より高い接触圧力で、より低い摩擦係数を保持することができる。図42は、2.4MPaの連続的(静的)接触圧力下での関節界面材料(グラフ中で「PEU/PAA・オン・PEU/PAA」と表記されている)の摩耗試験における有効摩擦係数を示す。天然の軟骨の値に関する文献報告及びUHMWPE・オン・CoCrに関する実験データ/文献報告もプロットに提示されている(Mow,2005;Wright 1982)。予期した通り、摩擦係数は、荷重を1Hzのサイクルで適用したとき、時間経過とともに変化しないことが分かった;同様の結果が軟骨について報告されている。材料中の低い摩擦係数は、(a)ハイドロプレーニング作用、(b)材料の固体相と流体相の間での荷重の共有、(c)水が材料の表面に存続するときの薄膜の潤滑性の観点から説明することができる。静止荷重下でのμのわずかな増加は、圧力下での材料のわずかな部分脱水によって説明することができる。それに比べて、天然の軟骨は、静止荷重下でその水の大半を失い、従って、その摩擦係数は、速やかにかつより高いレベルまで増加する。荷重の除去及びその後の再水和は、天然の軟骨の初期の摩擦係数を回復させる。
(000235)
実施例37
摩擦係数は、物体の横移動に耐える力を示す数である。それは、摩擦力と垂直抗力との無単位比として表わされる。ポリエーテルウレタン/ポリアクリル酸(PEU/PAA)半IPNについての動摩擦係数を金属で試験した。この動摩擦係数を時間の関数として示す。簡潔に述べると、1片のElasthane(商標)55D(ポリエーテルウレタン)を、開始剤及び架橋剤を含むアクリル酸中に含浸させ、硬化させて、本発明の水膨潤性半IPNを形成させた。直径8.8mm及び厚さ1mmのプラグを切断し、PBS中で膨潤させ、その後、2.0MPaの接触応力で3/16インチのステンレス鋼ディスクに対して1Hzの周期で回転させながら、PBS中に沈めた。力荷重セルとトルク荷重セルの両方を装備した、ASTM F732標準に従って作製されたカスタムメイドの摩耗試験装置を用いて、動摩擦係数を摩耗試験実験においてリアルタイムで測定した。材料の動摩擦係数は、36時間にわたって0.005〜0.015の間で変化した。
(000236)
実施例38
本発明のPEU/PAA半IPNの摩耗実験を、ピン・オン・ディスク立体形状を用いて、ASTM F732に従って行なった。結果を図44、45、及び45に示す。関節界面材料から形成されたディスク及びピンを2,500,000サイクルまで試験した。業界基準材料との比較の根拠として、CoCrピン・オン・UHMWPE(超高分子量ポリエチレン上のコバルトクロム)ディスク立体形状も、1,000,000サイクルの間、試験した。
(000237) 本発明のPEU/PAA半IPNの試験において、ピンは、直径8.8mm、厚さ2.5mmであった。ディスクは、直径88mm、厚さ2.5mmであった。ピンを、空気圧により適用される繰返し荷重下で、24mmの半径及び1.33Hzの速度で、ディスク上で回転させた。圧力調節器を用いて、所望の力が加えられるように大気圧を調整した。荷重は、荷重セル(Sensotec Honeywell,CA)を用いて、ディスク下で直接測定した。ディスク及びピンは、それらの間で発生した摩擦によって生じるトルクを、データ取得カード(National Instruments,TX)を装備したコンピュータに接続されたトルクセル(Transducer Techniques,CA)によって測定することができるよう、機械的に隔離された。ピン及びディスクは、PBSで満たされたチャンバーに収容された。温度は、熱電対−抵抗器−ファンシステムを用いて制御され、37℃で一定に保たれた。方程式μ=T/r*F(式中、Tは、測定されたトルク、rは、回転半径(=24mm)、Fは、ピンに加えられた力の合計である)を用いて、摩擦係数を持続的にモニタリングした。摩擦係数は、0.016で、接触圧力(試験範囲0.1〜3.5MPa)とは独立であり、かつ大きな静的接触荷重下で0.021へとわずかに増加したが、流体の回復後、もとの値に戻ることが分かった。100万サイクル毎に重量法を用いて、摩耗を測定し:ディスク及びピンは、3日間真空乾燥させた後、別々に秤量した。摩耗試験溶液(PBS)を回収して、目視検査し;目視可能な摩耗粒子の形跡は、試験のどの工程でも認められなかった。摩耗粒子を捕捉するために、摩耗試験PBS溶液を2.5μmのポアフィルターを用いて真空濾過し、脱イオン水で洗い流して、残存するPBSの塩を除去し、その後、真空及び乾燥剤下で一晩乾燥させた。対照として、同様の試験を、UHMWPE(Orthoplastics,UK)上のCoCrピン(Fort Wayne Metals,IN)を用いて実施した。OD=7mmの3つの研磨した(Ra<1.6μm)CoCrフラットピンを、3.4MPaの静的接触荷重下でかつ37℃の隔離された環境で1.2Hzで回転させて、厚さ2.5mm及びOD=88mm(回転半径=24mm)の研磨したUHMWPEディスクに対して、同じ機器で試験した。
(000238) 試験後に本発明のPEU/PAA半IPNから形成されたディスクの観察(図44A)から、ピン・オン・ディスク関節連結表面に沿った肉眼で認知可能な摩耗トラックは示されなかった。(図44Bは、摩耗トラックの位置の近接図である。破線は、経路を示すために追加されており;放射状の矢印はディスクの中心から始まる。)それと比べて、図44Cに示すように、CoCrピンに対する2.0Mサイクルの摩耗後のUHMWPEディスクは、126μmの深さの目視可能なトラックを有する。
(000239) 0.01mgの分解能を有する秤(Mettler Toledo,OH)を用いた摩耗試験溶液濾過液の秤量により、PEU/PAA半IPNの体積摩耗速度が約0.6mg/106サイクル又は0.63mm3/106サイクル又は0.63mm3/150×103mであることが示された。しかしながら、この値は、本方法の分解能に近い。PEU/PAA半IPNから構成される本発明の関節界面材料の摩耗試験からの摩耗試験溶液の模式図が図45Aに示されており、この図は、PBS溶液中に粒子が存在しないことを示している。図45Aと、CoCr・オン・UHMWPE摩耗試験時に生成された実質的な摩耗破片を示す図45B及び45Cに示されるUHMWPEディスクの摩耗試験溶液の模式図とを比較されたい。
(000240) 結果の精度を高めるために、ほこり、水分、及び静電気などの外部要因を排除することに注意が払われたが、摩耗値は、利用可能な方法の統計的検出限界及び実際の検出限界に十分に近い。これらの結果は、本発明に係るPEU/PAA半IPNが−天然の軟骨と同じく−主に水から構成され、その表面が水の膜で持続的に潤滑化されるので、固体マトリックス間の接触は、あるとしても、ほとんどないという仮説と一致する。
(000241) 摩耗粒子測定をCoCr・オン・UHMWPE実験についても行ない、この実験により、UHMWPEディスク上に目視可能な摩耗トラック(図44B)が生成されただけでなく、実質的な肉眼的摩耗破片(図45B及びC)も生成された。UHMWPEディスクを秤量し、質量差から64mg/106サイクル又は69mm3/150×103mの平均摩耗速度が得られた(図46)。この研究は、本発明の関節界面材料(「PEU/PAA・オン・PEU/PAA」と表記されている)は、関節全置換術で広く使用されるCoCr−UHMWPEの従来の組み合わせよりも摩耗に対して少なくともあと100倍以上耐性があることを示している。
(000242)
実施例39
図47は、様々な水性溶媒及び有機溶媒中のPEU/PAA及びPEUの膨潤挙動を示す。簡潔に述べると、1枚のElasthane(商標)55D(ポリエーテルウレタン)を開始剤及び架橋剤を有するアクリル酸中に含浸させ、硬化させて、半IPNを形成させた。IPN又はElasthane(商標)55Dの小片を得て、秤量した。試料を、図に示す溶媒を含む溶液中に20時間含浸させた。(試料は膨潤したが、溶解しなかった)。試料を溶媒から取り出し、短時間軽く叩いて乾燥させ、その後、再び秤量した。膨潤に起因する質量の変化を%差として表す。Elasthane(商標)55Dは単独で水を取り込まないが、本発明のIPNは水で容易に膨張して、潤滑性の水和したIPNを形成する。更に、他の溶媒を用いて、出発ポリマーを膨潤させ、本発明のIPNを生成させることができる。ポリウレタンの場合、様々な溶媒が材料を膨潤させる能力は、溶媒の特性(例えば、その極性、酸性度、及び分子量)、並びに溶媒中のポリマー成分(例えば、ハードセグメント及びソフトセグメント)の相対的溶解度に左右される。
(000243)
実施例40
水及び酢酸中のアクリル酸によるポリエーテルウレタンの膨潤を試験した。脱イオン水(図48A)中及び酢酸(図48B)中に10、30、50、及び70%のアクリル酸モノマーを含む膨潤溶液を調製した。Elasthane(商標)(登録商標)55D(ポリエーテルウレタン)の小片を得、測定した。Elasthane(商標)の試料を各溶液中に入れた。試料を溶媒から取り出し、表面を短時間軽く叩いて乾燥させ、その後、再び測定した。膨潤に起因する変化を、平衡膨潤後の標本の最終的な長さ(Lf)をもとの長さ(Lo)で除したものから1を引いたものとして表わし;このようにして、初期状態(y=0)と比べた長さのわずかな増加を時間に対してプロットする。Elasthane(商標)55Dの膨潤を、水又は酢酸のいずれかを溶媒として用いて観察した。より多くの量のアクリル酸を膨潤溶液中で使用したときに、より多くの膨潤が観察された。Elasthane(商標)試料の膨潤に対するアクリル酸の濃度依存性は、水を溶媒として使用するか、又は酢酸を溶媒として使用するかによって異なることに留意する。
(000244)
実施例41
図49は、硬化後のPEU/PAA半IPN中に存在するポリ(アクリル酸)の量が、様々な膨潤溶液中のアクリル酸モノマーの出発濃度の関数としてプロットされることを示す。
(000245) 脱イオン水中及び酢酸中に10、30、50、及び70%のアクリル酸モノマーを含む膨潤溶液を調製した。Elasthane(商標)55D(ポリエーテルウレタン)の小片を得、秤量した。試料を、架橋剤及び開始剤とともに、各々の水/アクリル酸溶液又は酢酸/アクリル酸溶液中に入れた。試料を硬化させ、水又は酢酸のいずれか中のアクリル酸中で膨潤させ、溶液から取り出し、乾燥させ、その後、再び秤量した。半IPNを形成するElasthane(商標)55D中へのアクリル酸の取込みは、水又は酢酸のいずれかを溶媒として用いて観察された。より高濃度のアクリル酸が膨潤溶液中に存在するときに、より多くのアクリル酸の取込みが観察された。
(000246)
実施例42
半IPNを本質的には図49に記載されているように調製し、IPNのポリアクリル酸含有量を決定した。乾燥した材料を秤量し、平衡に達するまで食塩水中で膨潤させ、再び秤量した。半IPNの質量の変化は、ポリアクリル酸の各々の濃度について、膨潤した材料の質量/乾燥材料の質量の比(Ws/Wd)として表わされる。ポリマー中のポリアクリル酸の量の増加は、水膨潤性半IPN中への食塩水の取込みの増加と相関する。これらの実験における半IPNをpH7.4に中和した後、これらの実験において、半IPNの乾燥質量は、食塩水膨潤溶液中に存在する塩を含んでいたが、それは、一価陽イオン(主に23g/モルのMWを有するナトリウム)が、材料中のカルボキシレート基に対する対イオンであるためである。
(000247)
実施例43
図51〜54は、クリープ及び応力弛緩/圧縮試験の結果を示す。試験は、開始剤及び架橋剤を含むアクリル酸中に含浸させ、硬化させたElasthane(商標)55D(ポリエーテルウレタン)から形成されたPEU/PAA半IPNに対して行なった。
(000248) 図51は、周期的圧縮試験の結果を示す。PEU/PAA半IPNの挙動を動的圧縮条件下で試験し、永久クリープ及びクリープ回復を決定した。永久クリープは、定荷重下の材料の時間依存的変形である。クリープ回復は、荷重が除去された後の加えられた変形の減少率を測るものである。圧縮試験の実験設定は、ASTM標準D695、硬質プラスチックの圧縮特性の標準試験方法(Standard Test Method for Compressive Properties of Rigid Plastics)に準拠し、試料を、歩行周期で見られる生理的で周期的な圧縮荷重を模倣するように設計された正弦波荷重スキームに供した。
(000249) PEU/PAA半IPNの試料を取り出して、その厚さ方向で測定し、60,000サイクル超の間、1Hzの周波数で、0〜3MPaの圧縮応力のサイクルに供し、その厚さ方向で再び測定し、PBS中で再平衡化(弛緩)させてクリープからの回復を可能にし、厚さ方向で再び測定した。図51Aは、1つの図で重ね合わせた(1番目、1000番目、10,000番目、20,000番目、40,000番目、及び60,000番目のサイクルで)1秒長のサイクルの試験に供した代表的な試料に対する厚さ測定の結果を示す。図51Bは、材料の厚さが全ての試験サイクルにわたってどのように変化するのかを示す。サイクルの間、荷重を除去した後に測定される材料の厚さは、最初のサイクルでの2.160mmの初期値から、60,000番目のサイクルまでに、約2.000mmにまで低下した。しかしながら、PBS中での再平衡化(弛緩)及び最後のサイクルでのクリープ回復後に、材料は、2.135mmの厚さに戻り、永久クリープに起因する厚さの全損失はわずか1.1%であった。
(000250) 図52は、多段階応力弛緩試験によって決定されるPEU/PAA半IPNの平衡圧縮挙動を示し、この試験では、所与の変位を適用し、その後、材料を弛緩(平衡化)させる。特に、これらの試験条件下では、図52の最後のデータポイントによって示されるように、材料は、荷重の除去後、その平衡値に完全に回復し、完全なクリープ回復を示す。2.20MPaの応力(4番目のデータポイント)は、有限要素モデルによって予測される股関節装置における最大の機能的応力(股関節を介する体重の3倍の全荷重)よりも15%高い。
(000251) 静的クリープ試験も行なった(データは示さない)。クリープは、定荷重下の材料の時間依存的変形である。静的圧縮下で試験されるPEU/PAA半IPNの挙動を、ASTM D2290−01「プラスチックの引張、圧縮、及び曲げクリープ並びにクリープ破断の標準試験方法(Standard Test Methods for Tensile,Compressive,and Flexural Creep and Creep−Rupture of Plastics」に準拠して試験した。9.525mmの初期直径及び1.115mmの厚さのPEU/PAA半IPNのプラグを、初期応力4MPa下で流体PBS浴中に入れた。応力を、約20,000秒間(14.29%の全ひずみまで)加えた後、荷重を解除し、材料をPBS中で弛緩(再平衡化)させた。プラグの最終的な厚さは1.109mmであった。40,000サイクルを超えた後に最終的に回復しないクリープは2.7%であった。
(000252) 図53は、ASTM D395に準拠した圧縮永久ひずみ試験の結果を示す。この試験において、9.525mmの初期直径及び2.13mmの厚さのPEU/PAAのプラグを、PBSを満たした流体浴中で、室温で23時間、15%の定圧縮ひずみに供した。材料をPBS中で弛緩及び再平衡化させた後、プラグの最終的な厚さは2.08mmであった。これは、9.5%の圧縮永久ひずみ値を与える。比較の根拠として、PEU(Elasthane(商標)55D)のみは、同じ条件(22時間、室温)下で、約45%の圧縮永久ひずみ値を示す。従って、PEU/PAA半IPN中の多価電解質の存在は、負に荷電した多価電解質の親水性及び高膨潤能に起因する水によるマトリックスの再水和を介して、PEU材料が永久クリープに抵抗する手段を提供する。
(000253)
実施例44
図54は、本発明に従って作製した材料のいくつかのリストを示す。第1列は、使用した疎水性ポリマーを示す。修飾が第2列に示すように疎水性ポリマーに対して行なわれる場合、修飾用の材料を材料とともに流延するか、又は修飾が架橋官能基である場合、修飾を付加し、材料を調製及び架橋し、その後、反応した架橋とともに使用した。調製した疎水性ポリマーを膨潤させるために、モノマー、コモノマー(もしあれば)、架橋剤、及び開始剤を、図に示すように、示された溶媒中に添加した。各々の疎水性ポリマー試料を最大2日間膨潤させ、溶液から取り出し、示された方法を標準的な手順に従って用いて硬化させた。材料をPBS中で洗浄し、膨潤させた。使用される略語は以下の通りである:MBAA=メチレンビスアクリルアミド、HMPP=2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、TEGDMA=トリエチレングリコールジメタクリレート、及びH2O=水。
(000254) 本発明の別の態様は、骨内方成長をもたらし得る骨界面部材と、水膨潤性IPN又は半IPNとを有する整形外科用インプラントを提供する。骨相界面部材(例えば、骨と接触させて配置される硬質又は大部分硬質のセラミック、金属、又はポリマー部材)への水膨潤性IPN又は半IPNの付加は、例えば、受容される整形外科用インプラントに関する現在の知識及び外科的専門技術を利用することによって特定の利点を提供し、一方で、そのようなインプラントの欠点のいくつかを克服することができる。
(000255) 本発明の別の態様は、装置の他の構成要素を包囲もしくは一部包囲し得るか、又はそれと接続し得る合成「関節包」を提供する。関節包は、インプラントの内蔵型流体貯留槽として機能することができる。特に、股関節インプラント(例えば、大腿骨又は寛骨臼コンポーネント)では、合成「関節包」は、大腿骨、寛骨臼、及び/又は関節唇コンポーネントを包囲し、かつ大腿骨コンポーネントと寛骨臼コンポーネントの間に潤滑油を提供することができる。
(000256) 本発明の別の態様は、身体の関節に対して支持、潤滑、及び/又は間隔を提供する他のコンポーネントを提供する。例えば、寛骨臼リムもしくは肩関節を形成する「関節唇」もしくは環状コンポーネント、又は脛骨プラトーの外面を形成する半月板コンポーネントの付加は、天然の関節唇及び半月板が機能する方法と類似したインプラントの寛骨臼/大腿骨コンポーネント、上腕頭/関節窩、又は大腿骨/脛骨コンポーネント間の緩衝材として作用することができる。
(000257) 本発明の一態様は、(例えば、付着区域に沿って)骨界面部材に融合している水和、剛性、及び/又は組成勾配ポリマーアロイ(IPN又は半IPN)を含む整形外科用インプラントである。図55A〜B及び図56は、それらが接合する前(図55A〜B)及び接合した後(図56)の勾配ポリマーアロイ及び多孔性金属を示す。図55A〜Bは、勾配ポリマー及び多孔性金属の分解図を、水和相401(ベアリング表面412を有する)、移行相402、非水和相403(付着区域414を有する)を含む勾配ポリマーアロイの3つの相、及び多孔性金属骨界面部材409とともに示す。本明細書に、又は2011年8月26日に出願された同時係属出願の米国特許出願第13/219,348号明細書に記載されている任意のポリマーを含む、任意の勾配ポリマーを使用することができる。
(000258) 一実施形態において、半IPN又はIPNは、PMMA(ポリメチルメタクリレート)でできた第2の勾配を含む組成勾配ポリマーアロイ(IPN又は半IPN)を含むことができる。PMMAは、勾配IPN又は半IPNの一部から付着区域への第2の勾配を形成することができる。特定の実施例において、勾配ポリマーアロイは、ポリウレタン及びポリ(アクリル酸)を含むことができ、第2の勾配は、PMMAであり得る。この実施形態において、メタクリル酸メチル(MMA)モノマーを、ポリウレタン側、又はポリウレタン及びポリ(アクリル酸)を含む勾配IPNもしくはセミIPNの区域に拡散させ、その後、重合させて、PMMA及びポリウレタンのIPN又は半IPNを付着区域内で形成させることができる。これにより、2011年8月26日に出願された同時係属出願の米国特許出願第13/219,348号明細書に係るPMMA骨セメントに対する親和性及び付着性を有する付着区域が生じる。それゆえ、PMMA含有付着区域を有するこの勾配IPNは、金属、ポリマー(例えば、PMMA骨セメント)、又はセラミックを含む骨界面部材に接着させることができる。
(000259) 図56は、骨界面部材と接続した図55の勾配ポリマー金属アロイ(水和相401(ベアリング表面412を有する)、移行相402、非水和相403、多孔性金属と相互嵌合している付着区域414由来の非水和ポリマーを含む界面区域407、及び骨界面部材409由来の多孔性金属を含む金属装置)を示す。勾配ポリマーアロイは、多孔性金属と機械的に相互嵌合して、強くて滑らかな界面領域を生成させる。
(000260) 骨界面部材は、任意の材料であり得るが、好ましくは、整形外科学において有用であり、かつ生体適合性である材料、例えば、金属、セラミック、又はポリマーである。骨界面部材は、任意の金属、例えば、アルミニウム、コバルト、モリブデン、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、もしくはこれらの組合せもしくはアロイ、及び/又は生体医療用インプラントにおいて使用される任意の他の金属であり得る。骨界面部材は、十分に強く、かつ生体適合性である任意のポリマー、例えば、PEEK、ポリウレタン、又はUHMWPEであり得る。簡単にするために、骨界面部材を金属と称するが、ポリマー勾配アロイを骨に接続する任意の材料を使用することができることが理解されるべきである。金属は、実質的に固体であるか、多孔性であるか、エッチングされているか、コーティングされているか、又は金属の骨への付着及び/もしくは勾配ポリマーアロイの金属への付着を助けるために別の形で処理されていてもよく、或いはこれらの特徴又は処理の組合せを有していてもよい。多孔性金属としては、多孔性「トラベキュラー」金属、多孔性金属フォーム、焼結金属ビーズ(例えば、多孔性構造を形成するもの)、プラズマ溶射された多孔性金属、及び/又は化学的にエッチングされた多孔性金属が挙げられるが、これらに限定されない。金属の一部は、固体であっても、多孔性であっても、粗くても、エッチングされていても、骨伝導性材料(例えば、リン酸カルシウムもしくはヒドロキシアパタイト)でコーティングされていても、又は別の形で処理されていてもよく、別の部分は、固体でなくても、多孔性でなくても、エッチングされていなくても、コーティングされていなくても、又は別の形で処理されていなくてもよい。一実施例において、金属は、骨接触表面において多孔性である。別の実施例において、金属は、ポリマーアロイが面する側において多孔性である。別の実施例において、金属は、骨接触表面とポリマーアロイが面する側の両方において多孔性である。水和勾配ポリマーアロイは、アロイの一方の側が親水性で、かつ水和しており、他方の側が非水和でかつ疎水性であるような、親水性ポリマーと疎水性ポリマーの組合せであり得る。後者の側は、金属骨接続構築物と機械的に相互嵌合させるか又は化学的に結合させることができる。多孔性金属を使用する場合、多孔性は、勾配ポリマーアロイへの付着又は骨への付着を可能にするか又はそれを助ける任意のものであってもよい。金属の多孔性は、海綿骨の多孔性と同様のものであってもよい。
(000261) 勾配ポリマーアロイを金属に何らかの形で付着、接続、又は結合させることができる。
(000262) 一実施例において、勾配ポリマーアロイを、ポリマー裏当て材の融点を越えて加熱される多孔性金属標本と接触して配置した。2つの材料を、例えば、1メートルトンの荷重下で一緒に圧縮し、その後、冷却させておいた。結果は、多孔性金属に融合した勾配ポリマーアロイであった。使用した多孔性金属の例は、アルミニウム及びチタンであった。
(000263) 勾配ポリマーアロイと組み合わせた多孔性金属又はポリマーの使用は、装置の金属又はポリマー性骨面側への骨の内方成長を可能にし、水和表面から強い骨へと段階的に移行する強いが潤滑な関節置換を生成させる。重複するポリマー/金属及び金属/骨領域を図57及び58に示す。図57は、多孔性金属又はポリマー反対表面(骨界面部材)を示すが、この表面は、非多孔性であってもよい。図57A〜C及び図58A〜Dは、骨に付着しかつ骨とともに内方成長しているキャップ530(図57A)及びカップ523(図58A)の形状の整形外科用インプラントを示す。インプラントは、関節表面と相互接続するベアリング表面526、528を提供する水和ポリマー部分501、512を有する。水和ポリマー部分、勾配ポリマーアロイ、及び多孔性金属は、503’と501’(512’と517’)の間の領域で相互嵌合されて503(518)、ポリマー/金属重複領域502、518を生成させる。インプラントは、相互嵌合したポリマー金属インプラント530、523を骨に付着させる骨付着区域522(524)を有する多孔性金属部分501、517も有する。インプラント530、523が、骨504、514の近くに配置される場合、インプラントは、骨に新しい人工関節表面を形成する。手術後、骨は、多孔性金属側に成長して、もとの骨表面界面504’と(骨内方成長の境界にある)新しい界面504”との間に、インプラントを骨に強く錨着させることができる金属−骨統合領域506、520を生成させる。相互嵌合した金属−骨領域は、2つの材料間の急な界面よりも良好に応力を分配し、強い錨着をもたらす。界面区域508の拡大図は、骨514が金属インプラント517に接続し、これが更に、軟骨置換ポリマー512に接続している図57Dに示されている。図58Dは、図58Cに示された領域、骨と金属の間の重複又は相互嵌合520、ポリマー512と金属518の間の重複又は相互嵌合518、及び強くて、滑らかな関節置換を生成させる強い金属から潤滑な表面532への移行部のより接近した図を示す。
(000264) 図59Aは、関節の両側が本開示に係る整形外科用インプラントと置換されている一般的人工関節の2つの側面を示す。凹状の骨の***614は、凹状関節コンポーネント612を受容する骨表面617を有する。凸状の骨の***613は、凸状関節コンポーネント611を受容する骨表面616を有する。凹状関節コンポーネント612は、関節界面615において凸状の関節コンポーネント611と嵌合する。関節内に配置された直後の、すなわち、骨内方成長が起こる前の、凹状関節コンポーネント612の横断面618は、図59Bに示されている。骨の近くに、骨界面部材としての役割を果たす多孔性金属622の層、次に、ポリマー−金属界面領域621、ポリマーの非水和側620、そして、関節表面に面して、ポリマーの水和側619がある。
(000265) 一実施例において、勾配ポリマーアロイを、非多孔性の滑らかな接触表面と、多孔性で、粗く、かつ/又はリン酸カルシウムもしくはヒドロキシアパタイトなどの骨伝導性材料でコーティングされている骨への付着のために構成された反対表面(骨接触表面)を有する金属接合コンポーネントに物理的にスナップ適合させることができる。この場合、勾配ポリマーアロイコンポーネントは、既存の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)寛骨臼カップが金属裏当てコンポーネントに適合させられる方法と同じように使用することができる。
(000266) 別の実施例において、勾配ポリマーアロイを、非多孔性の滑らかな接触表面(付着表面)及び骨への錨着向けの反対表面(骨接触表面)を有する嵌合ポリマーコンポーネントに物理的にスナップ適合させることができる。反対表面は、多孔性であっても、非多孔性であってもよい。反対表面は、リン酸カルシウム又はヒドロキシアパタイトなどの骨伝導性材料でコーティングされていてもよい。勾配ポリマーアロイの骨への錨着は:1)多孔性反対表面(骨接触表面)への骨内方成長、2)固体反対表面の表面全体又は表面の一部を短時間融解させ、材料を骨孔に流入させ、材料を固化させて、グラウト状錨着を形成させること、3)接着剤、セメント(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA))、エポキシ、のり、又はグラウトを使用又は適用して、反対表面を骨に(例えば、化学的に)結合させるか、又は機械的に保持することのうちの1つ又は複数を含む、任意の好適な手段によって達成することができる。
(000267) 別の実施例において、勾配ポリマーアロイを、金属部分又はインプラントに化学的に結合させることができる。金属のどちらか(又は両方)の側は、滑らかでも、多孔性でも、粗くてもよい。任意の数又は種類の化学結合を生成させることができる。一実施形態において、ウレタン結合を、ポリマー前駆体中の末端イソシアネートと金属表面上の反応性−OH基との反応を介して、ポリウレタン系勾配ポリマーアロイとトライボケミカルに修飾された金属表面との間で形成させる。金属表面をオキシドでトライボケミカルに修飾することができ、これを、その後、ヒドロキシル基へと更に修飾することができ、これを更に遊離イソシアネート基と化学的に反応させて、イソシアネート化学結合を形成させることができる(Myungら、米国特許出願第2008/0241214号明細書参照)。勾配ポリマーアロイを、接着剤、セメント(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA))、エポキシ、のり、又はグラウトを使用又は適用して骨界面部材と接続させることもできる。
(000268) 金属表面に結合した勾配ポリマーは、任意の厚さを有することができる。勾配ポリマーは、金属表面にわたって薄いコーティング又は層を形成することができる。コーティング又は層は、最も厚い領域において30mm未満、25mm未満、20mm未満、15mm未満、又は10mm未満であり得る。1つの特定の実施例において、金属表面のコーティングは、最も厚い領域において5mm未満である。
(000269) 勾配ポリマーアロイは、ポリウレタン系であってもよく、このアロイのポリウレタン側を、ポリウレタンの一部を融解させ、それを金属の孔に流入させ、その後、金属及びポリウレタンを冷却することによって、多孔性金属と物理的に融合させてもよい。勾配ポリマーのポリウレタン側は、強靱かつ疎水性であることができるので、極度のかつ反復的な機械的ストレスに強い抵抗性のある界面を多孔性金属にしっかりと錨着させることができる。
(000270) インプラント又は装置は、勾配材料と多孔性金属を別々に製造した後に作製してもよく、その後、材料と金属を融合させる。それらは、金属を加熱し、材料と金属を並置し、材料と金属を一緒に圧縮し、その後、金属を冷却することによって融合させてもよい。このようにして、勾配ポリマーの疎水性側を多孔性金属の孔に「溶け込ませる」。或いは、勾配ポリマーの前駆体を注入して(製造前の)多孔性金属表面で直接成形し、次いで、ポリマーを後処理して、金属に融合している勾配ポリマーを生じさせることができる。
(000271) 本開示の別の態様において、合成関節包を埋め込むことができる。合成関節包は、一方又は両方のインプラントコンポーネントを包囲することができる(又は近くに存在することはできるが、包囲することはできない)。包コンポーネント(複数可)は、流体が、少なくとも一部は、包によって生成される容積又は空間の内外に移動することができないように、流体を収容するように閉鎖又は密封することができる。
(000272) 図60〜61は、本開示の一態様に係る股関節内のキャップ・オン・カップ、合成関節包、及び勾配ポリマーの関節唇インプラントの配置を示す。図60は、大腿骨頭631にわたる凸状の関節コンポーネントキャップ632と、所定の位置に合成関節包又は合成関節唇コンポーネントを含まない寛骨臼633に面した凹状関節コンポーネントカップ634とによる全軟骨置換を示す簡略化したバージョンである。コンポーネント(例えば、キャップ及びカップ)は、金属コンポーネントを含まない勾配ポリマーアロイから作られている。
(000273) 図61は、図60に示されるコンポーネントを有する勾配ポリマーアロイコンポーネント、並びに上の横断面636a及び下の横断面636bに示される包コンポーネント635、上の横断面635a及び下の横断面635bに示される関節唇コンポーネントによる股関節の被包に基づき、かつ潤滑液637を含む、全軟骨置換装置を示す。この実施形態において、包635は、上記のキャップ632及びカップ634を含む関節全体を封入する。包635は、骨、関節インプラント、又は両方と接触して、その関節エンクロージャーを形成することができる。
(000274) 関節包は、勾配ポリマー及び多孔性金属組合せインプラントの一部であることができるか、又は多孔性金属コンポーネントを含まない勾配ポリマーを有するインプラント中に存在することができる。合成関節唇コンポーネントは、合成関節包コンポーネントの有無にかかわらず、大腿骨及び寛骨臼コンポーネントと組み合わせて使用することもできる。肩関節内の上腕頭及び関節窩についても同じことが言える。
(000275) 包の構造及び形状は、通常関節に安定性をもたらす、天然の関節包の全て又は一部に類似していてもよい。一実施例において、合成関節包は、勾配ポリマーベアリング表面(複数可)のための潤滑液としての役割を果たし得るリン酸緩衝食塩水又は生理食塩水溶液を含む。合成包は、1以上のベアリングコンポーネントの付着した部分として製造されてもよく、又は別々の部分であってもよい。それは、手術前又は手術中のいずれかに別の関節コンポーネント(複数可)とアセンブルさせてもよい。別の実施例において、包を、潤滑ポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、又はナトリウムポリアクリレート)などの潤滑油で満たしてもよい。
(000276) 合成包の付加は、脱臼からの保護、摩耗屑の収容、宿主細胞又は骨もしくはセメント粒子からの関節界面の保護、及び/又は間置式スペーサー装置によく似た、1工程で埋め込むことができる一体型装置の生成などの利点を提供することができる。
(000277) ポリマーキャプ・オン・カップ表面を有する全軟骨置換金属装置を関節内に配置することができる。図62は、股関節内に配置された軟骨置換装置を示す。大腿骨コンポーネント650は、大腿骨頭631上の所定の位置にある。それは、多孔性金属裏当て643を含む。寛骨臼コンポーネント645は寛骨臼644に隣接している。コンポーネント表面642、645は嵌合して、関節界面を提供している。一方又は両方のコンポーネント表面645、642は、ポリマーであってもよい。図62は、多孔性金属裏当て646、643も示す。
(000278) 本開示に係るインプラントは、関節領域内への挿入の前にアセンブルされてもよく、又は2以上の部分は、関節内にある間、手術中にアセンブルされてもよい。図63は、関節内に別々に挿入することができる金属インプラント及び勾配ポリマーライナーを示す。金属カップ804を最初に関節内に配置してもよく、その後、勾配ポリマーライナー802を配置してもよい。ポリマーライナー802は、任意の様式で金属カップ804に付着又は接着させることができる。それは、化学結合又は物理的手段によって保持することができる。図63は、材料を保持するか又は流動させて、ライナーの金属部分への付着を助ける溝806を示す。金属又はポリマーライナーは、タブなどの、形状を変化させて付着を助ける特色を有していてもよい。金属カップ及びライナーは、接着剤、セメント(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA))、エポキシ、のり、又はグラウトを用いて付着させることができる。図63は、ライナーを金属に緊締する任意のリングを示す。リングは、ライナーを金属にインターロックするか又は螺合させることができる。一実施例において、ライナーを除去し、金属部分を除去することなく新しいライナーと置換することができる。
(000279) 大腿骨装置については、勾配IPN「キャップ」は、金属大腿骨キャップの上部に適合するように設計することができる。モジュール配置は、凸状関節表面と凹状関節表面の間の適合に関してより広範囲のサイズ互換性及び許容性を可能にすることができる。更に、それは、異なる病変に対して様々なカップ構造を可能にすることができる。例えば、それは、弱い骨の場合に更に固定するためのねじ穴を有する金属カップ/裏当てを可能にする。それは、異形成カップ及びフィン付きカップも可能にする。モジュール配置は、手術中に決定され得る患者の必要性及び外科医の選好に適合する柔軟性を与える。モジュール性は、機構によって可能となり得る。モジュール性は、テーパー、変形タブ、及び「ねじ込み式」機構などのロック機構によって可能となり得る。通常、現在上市されているモジュールシステムを用いて、ライナー(ポリ、セラミック、金属)は、最終工程として金属カップにアセンブルされる。これにより、外科医が最終的な埋め込みの前に最後の試験を実施することが可能になる。それはまた、万が一、外科医が手術時にそれを必要とみなした場合、更なる安定性のためのリップライナーを使用する選択肢を外科医に与える。これらの機構はいずれも、非モジュール性(例えば、予めアセンブルされた)装置とともに使用することもできる。モジュール性は、様々な理由で、人工関節内のベアリング材料を骨界面部材を害することなく、単に置換する選択肢も提供する。
(000280) 本発明の別の態様は、インプラントの形状を変化させる方法及びインプラントを提供する。金属、特に、多孔性金属は、負荷応力下で変形する(例えば、屈曲する、捲縮する、拡張する、折り重なる、延伸する、撚回する)か、又は別の形で形状を変化させる何らかの能力を有していてもよい。形状変化は一過性であってもよい。金属は、金属網に沿って1以上の支柱又は領域を屈曲させることによって変形することができる。
(000281) 一実施例において、インプラントは、180度を超える骨領域を覆うことができる。例えば、大腿骨キャップ用の股関節インプラントは、図62に示すように、180度を超えて包囲することができる。多孔性金属及びそれが付着するポリマーの変形性は、キャップ全体が変形する(例えば、開くか、延伸するか、又はその空間立体形状又は空間立体構造を別の形で変化させる)のを可能にして、それが球形の大腿骨頭の上に配置されることを可能にする。ツールを用いて、例えば、大腿骨頭又は大腿骨頸表面のより多くに接触するように、装置を異なる形状又は好ましい形状に戻すことができる。優れた形状記憶特性を有する金属は、この特定の実施形態において有用である。
(000282) 多孔性金属表面と可撓性の又は変形可能なポリマーとを有するインプラントは、形状を変化させることができる。形状を変化させることができる任意の金属を使用することができる。関節置換において有用な生体適合性表面を提供する任意のポリマーをインプラント中で使用することができる。表面上のポリマーは、滑りやすい、柔らかい、及び/又は滑らかな表面を生成させることができる。ポリマーは、潤滑性ポリマーであることができる。一実施例において、インプラントポリマーは、本明細書に記載の勾配ポリマーアロイである。
(000283) 本発明の一態様は、整形外科用インプラントを関節内に挿入する方法を含む。
(000284) インプラントの形状を任意の理由で変化させることができる。形状の変化は、インプラントにより小さいサイズを提供し、インプラント挿入(例えば、関節鏡視下手術又は低侵襲手術)を助けることができる。形状又はサイズの変化は、インプラントが関節領域に適合するのを可能にすることができる。例えば、インプラントが大腿骨頭に適合するのを可能にするように、形状を変化させることができる。インプラントが関節の形状の少なくとも一部に一致するように、インプラントの形状を変化させることができる。例えば、関節の一部は、不規則な表面を有することができ、インプラント形状は、表面の形状に隣接又は適合するように変化させることができる。
(000285) 図64は、形状を変化させる、例えば、関節内への挿入を助けることができる整形外科用インプラントの別の実施形態を示す。図64は、金属部分812がポリマー818に付着しているインプラント(キャップ)810を示す。ポリマー818は、関節置換に有用な任意の可撓性の又は変形可能な生体適合性ポリマーであることができる。一実施例において、それは、本明細書に記載の勾配ポリマーである。金属部分又は背面812は、2以上の不連続セグメント(又は箔)814を有する。インプラントが形状を変化させるのを可能にするセグメントとセグメントの間に、分離又はギャップ816の線があってもよい。分離の線は、開口部(カラー)から数度の位置から赤道をはるかに越えた位置まで縦方向に走っていてもよい。線は、装置が一過性に放射状方向に(鉤爪又は花の花弁のように)「開く」のを可能にすることができる。個々のセグメントをポリマーに堆積又は付着させることができる。金属をポリマーに沈着させ、その後、部分を(例えば、レーザーエッチングによって)除去して、セグメントを残すことができる。別の実施形態において、部分又はセグメントは、(二枚貝の貝殻のように)北極点で蝶着しているか、接続しているか、又は別の形で付着していてもよく、インプラントが大腿骨頭上に押し下げられている間に広がるときに開いてもよい。これらの部分又はセグメントは、インプラント及び大腿骨頭を包囲するように押し下げられた後、閉じてもよい。金属は、十分に可撓性でかつ弾性があるが、一過性の変形の後、瞬時にもとの位置に戻るほど十分に硬質であることができる。別の実施形態において、金属セグメント又は部分は、ほとんど不連続性であるが、可撓性の接続要素によって多少の連続性を保持する。これらの要素は、例えば、曲線、ジグザグ、又はばねであってもよい。
(000286) 図65は、大腿骨頭上への配置のために構成された、図64に示されているものと同様の、整形外科用キャップインプラントの金属部分を示す。簡単にするために、ポリマー部分は示していない。インプラント822は、大腿骨頭824に適合しなければならない。特に、カラー832、及びカラー832の近くのインプラントの領域は、大きい大腿骨頭824を通り越して、その後、大腿骨頭のより小さい端部834及び大腿骨頸826に置かれる必要がある。インプラントのセグメント828間の分離の線830は、可撓性金属とともに、インプラントが挿入のために拡張するのを可能にする。金属は、挿入後に好ましい形状を取るのに十分な弾性があることができるか、又は処理(例えば、熱)もしくはツールの適用後に好ましい形状を取ることができる。
(000287) 図65は、形状を変化させることができる整形外科用インプラントの別の実施形態を示す。ギャップ840によって分離された金属のセグメント836は、可撓性ポリマー846に包埋されているか、又は別の形でそれと付着もしくは接続している。これらのセグメント(又は要素)は、実質的に固体で、多孔性であってもよい。金属要素は、不連続な様式で整列されてもよい。ギャップは、特定のサイズ及び配向で戦略的に配置されてもよく、又はそれらは、ランダムに配置されてもよい。装置全体は、全体として収縮し、それに応じて、各々の個々の構造にかかる応力を最小化することができる。勾配ポリマーは、個々の金属コンポーネントが互いに対して動く間に(例えば、その空間立体構造又は空間立体形状を変化させるために)延伸又は変形させることができる。正確な動作は、ポリマーをどのように変形させるかということ、金属セグメントの配向及び構造に依存し得る。金属を含まないギャップ(又は空間)は、戦略的に配置されてもよい。ギャップは、金属のための所定の場所及び方向が拡張又は崩壊するように選択することができる。ギャップ及び金属組成は、様々な目的で異なり得る。(例えば、手、熱、関節表面での配置によって)延伸されるなどの刺激に応じて、ポリマーは延伸し、新しい形状に順応する。関節内に配置された後、ポリマーは、そのもとの又は好ましい形状及びサイズに戻ってもよい。図65は、インプラントが球状の大腿骨頭上に押し下げられ、開口部で延伸されたときに、金属セグメントが互いに放射状に分離して、この頭部の赤道面を通過し得ることを示す。この図は長方形のセグメントを示しているが、本発明は、限定されないが、丸い(円板)形、正方形、三角形、又は面の数がn個の任意の多面体を含む、他の形状のセグメントから構成されることができる。そのようなセグメント間のサイズ及び間隔は、様々であることができる。
(000288) 図67は、ポリマー部材に付着しているか又は包埋されている複数のセグメント872を有するセグメント化された金属裏当てを有する寛骨臼コンポーネント870を示す。セグメントは、インプラントが崩壊するか、拡張するか、又は別の形でその形状を変化させるのを可能にするように、セグメント間のスロット又はギャップ874に関して不連続である。図中のギャップは、ポリマーがどのように延伸し得るかをを示すために誇張されている。インプラントは、金属セグメント間のギャップのために、金属コンポーネントそれ自体に対して過度の応力又は緊張を加えることなく、収縮及び屈曲することができる。金属セグメントは、連続的であってもよく、又は穴、空孔、もしくはスロットを有していてもよい。インプラント又は金属は、身体内又は関節内に配置されている間、一過性に屈曲することができる。金属は、骨に付着する骨接触表面を提供することができる。金属は、骨内方成長を可能にすることができる。
(000289) 一態様において、インプラントを身体の関節内に挿入する方法は、ポリマー−金属インプラントを関節空間内に挿入し、インプラントの形状を第1の形状から第2の形状に変化させて、関節を形成する骨の少なくとも一部の形状に適合させることを含むことができる。この方法は、インプラントを第1の形状に戻すことを含むことができる。この方法は、もとの形状から第1の形状に変化させる工程の前に、インプラントを変形させることも含むことができる。これは、例えば、インプラントを関節内に(例えば、関節鏡視下手術又は低侵襲手術によって)配置するために有用であり得る。股関節の大腿骨頭に配置されるように構成されたインプラントについて、変形させることは、インプラントの少なくとも一部を拡張して、大腿骨頭に適合させることを含むことができる。
(000290) 本発明の様々な実施形態は、手、足、(手及び足の)指、足首、椎間板(頸部、胸部、腰部、又は仙骨)、椎間板椎間、股関節、膝関節、肩関節、並びに顎関節を含むが、これらに限定されない、身体内の任意の関節に適用可能である。装置は、肩鎖関節、足首関節、関節丘、肘関節、指関節、関節窩、股関節、椎間板、椎間板椎間関節、関節唇、半月板、中手骨関節、中足骨関節、膝蓋骨、脛骨プラトー、足指関節、顎関節、又は手首関節に関して使用することができる。
(000291) 本明細書に記載の装置、特徴、材料、又は方法はいずれも、任意の他の装置、特色、材料、又は方法と組み合わせることができる。
(000292) 図68は、本開示の一態様に係る勾配ポリマー金属アロイキャップ・オン・カップインプラントを有する全股関節軟骨及び関節置換システムを示す。関節並びに関節唇及び包コンポーネントの両側が置換されている。このシステムは、大腿骨インプラント650及び寛骨臼コンポーネント652を含むことができる。関節の両側のポリマーのベアリング表面は、嵌合して、滑らかで、潤滑性の人工関節界面を提供するように構成されている。潤滑性IPNポリマー642及び潤滑性IPNポリマー645は、それぞれ、多孔性金属裏当てを有する金属骨界面部材646、643に付着し、これが更に、大腿骨631及び寛骨臼644に付着している。全置換システムは、潤滑油649を含み得る上の横断面647a及び下の横断面647bに示される人工関節唇コンポーネントを更に含むことができる。このシステムは、上の横断面648a及び下の横断面648b包コンポーネントに示される人工包も含むことができる。関節唇又は包コンポーネントは、関節に対して支持、安定性、及び/又は潤滑さを提供する滑らかな表面を有する任意の強い材料でできていてもよい。関節唇又は包コンポーネントは、本明細書に記載又は言及されているIPN又は半IPNのいずれかから作られていてもよい。
(000293) 図69は、図68に記載のものと同様の寛骨臼インプラントを有する及び一体型関節唇/大腿骨装置を有する股関節全軟骨置換システムの別の実施形態を示す。大腿骨置換インプラント662は、大腿骨接触部分650と連続的でかつ寛骨臼リムに向かって近位に伸長している上の横断面648a及び下の横断面658bに示される大腿骨接触部分及び関節唇置換部分とを含む。このシステムは、寛骨臼コンポーネントを含むことができる。大腿骨及び寛骨臼側のポリマーのベアリング表面は、嵌合して、滑らかで、潤滑な人工関節界面を提供するように構成されている。装置は、多孔性金属裏当てを有する金属骨界面部材646、643に付着していてもよく、これが更に、大腿骨631及び寛骨臼644に付着している。特色660は、インプラントが骨に付着するのを助けることができる。特色は、錐体状構造物、くぼみ、溝、くい、支柱、ピン、及びピラミッド状構造物などの、インプラントを関節内に配置するか又は付着させるのを助ける任意の構造であってもよい。インプラントは、1つの特色を有していてもよく、又は多くの(2つ〜5つ、最大10、最大100、最大1000、又はそれより多くの)特色を有していてもよい。特色(複数可)は、インプラント(例えば、金属インプラント)を骨に付着させるのを助ける金属又は他の骨界面部材の骨接触表面に存在していてもよい。特色(複数可)は、IPN又は半IPNの付着区域に付着する骨界面部材の表面又は区域に存在していてもよい。関節唇インプラント又は関節唇インプラントの部分は、任意の手段(例えば、ねじ、骨アンカー、縫合、及び/又は溶接ポリマーリベット)を介して骨に固定することができる。上の654a及び下の654bのカラー部分も横断面で示されている。カラーは、支持を提供するか又は別の形で関節唇部分を所望の位置に維持することができる。カラーは、関節唇部分を締めることができる。関節唇部分の末端は、同じく(又は代わりに)寛骨臼部分と連続的であってもよい(この眺めでは示されていない)。
(000294) 本明細書に記載のインプラントはいずれも、大きい又は小さい軟骨欠損を矯正するように構成されることができる。
(000295) 図70A〜Bは、大きい軟骨欠損と小さい軟骨欠損の両方を矯正するために使用される金属裏地の勾配ポリマーアロイを示す。膝は、前十字靱帯及び後十字靱帯858のための空間を有する大腿骨関節丘コンポーネント852を有する遠位大腿骨851を有する。図70は、脛骨インプラント854及び半月板インプラント855を有する脛骨プラトー852も示す。図70は、膝蓋骨インプラント862を有する膝蓋骨860も示す。この実施形態において、インプラントは、上記のようなポリマー及び金属コンポーネントでできているが、パッチの形状をしている。任意のサイズのパッチ状インプラントは、修復の必要な膝関節の任意の部分に配置することができる。
(000296) 図71A〜Cは、水和表面870と骨付着表面868を有する金属部分とを有する勾配ポリマー金属アロイから作られたキャップ、パッチ、及びプラグをどのように使用し得るかということを示す。図71A〜Cは、軟骨欠損を、本発明を用いて、どのようにして、骨866の表面全体を置換するキャップ864、大きいが部分的な領域を置換するパッチ872、又は関節表面の軟骨における小さい、限局的な欠損を置換するプラグ878によって対処することができるかということを示す。凹状の又は平坦な構造も可能である。例えば、股関節窩などの凹状関節を修復するためには、凹状「カップ」が使用されるであろう。
(000297) 本発明の別の態様は、IPN及び半IPNのバリエーションを提供する。基本的な実施形態は、ポリウレタン、ポリ電解質ポリマー、水、及び塩の組合せである。一実施形態は、ポリエーテルウレタン、ポリ(アクリル酸)のナトリウム塩、水、及び他の塩の組合せを含む。これらのコンポーネント間の比は、ポリウレタンの組成、アクリル酸モノマーの初期濃度、及び使用される架橋剤の量と種類の両方によって異なる。
(000298) 1つの因子は、使用されるポリウレタンのデュロメーターであり、これは、通常、約80A〜75Dの範囲であるが、これらよりもそれぞれ柔らかい又は硬いこともあり得る。デュロメーターは、通常、ポリウレタン中のハードセグメント種対ソフトセグメント種の比によって決定される。使用される典型的なハードセグメント種は、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)であり、使用される典型的なソフトセグメント種は、ポリ(テトラメチレンオキシド)(PTMO)である。使用されるポリウレタン中のMDI:PTMOの比は、ソフトセグメント構成成分の優位からハードセグメント構成成分の優位まで幅があり得る。正確な比は、ポリウレタンの物理的特性と機械的特性の両方並びに様々なモノマー及び/又は溶媒によって膨潤されるその能力に直接関連する。本発明において、55Dと75Dの間の中間のデュロメーター(すなわち、65D)を有するポリウレタンは、材料の平衡膨潤及び機械的特性に関して特に優れた結果をもたらした。本明細書に記載の80A、55D、65D、及び75Dポリウレタンによって提示されるものの範囲に沿う特性をもたらすと考えられる、61D、63D、又は67Dなどの、ポリウレタンデュロメーターの他のバリエーションを使用することができる。
(000299) 本発明において、様々なデュロメーターのポリウレタンを、光開始剤とともに、水中の様々な溶液濃度のアクリル酸モノマーに膨潤させる。その後、ポリ(アクリル酸)ネットワークを、既存のポリウレタンの存在下で、アクリル酸モノマーの光開始型フリーラジカル重合及び架橋によって形成させ、2つの材料の相互透過性ポリマーネットワークを形成させる。その後、ポリウレタン内のポリ(アクリル酸)を緩衝溶液中でpH7.4に中和し、イオン化し、それにより、ポリアクリル酸ナトリウムに変換する。この変換はポリウレタンマトリックス内で起こるので、結果は、ポリウレタンとポリアクリル酸ナトリウムと水と塩の間で新しい平衡組成が達成されるまでの更なる水及び塩(陽イオン及び陰イオン)によるIPNの膨潤である。
(000300) 本発明の第2の要素は、その厚さを横断して水和の勾配を形成するこの材料の組成のバリエーションである。この勾配は、モノマーの重合前に所与の平面でポリウレタンマトリックスを透過して、ポリ電解質を形成することができるモノマーの量を制御することによって形成される。結果は、他方と比べて一方の側において水で示差膨潤された材料である。ポリウレタンとポリ電解質の比も同様に、90%もの高さから0%に至るまでの範囲で、一方の側から他方へと様々に異なる。
(000301) この材料の基本構造は、ヒアリン軟骨に見られる基本構造を模倣しており、ヒアリン軟骨では、組織化されたコラーゲンによって形成された強靱な構造マトリックスが、水を吸収する負荷電プロテオグリカンによって相互透過されている。イオン(すなわち、ナトリウム陽イオン)は、プロテオグリカン分子上の荷電部分とともに重要な対イオンの役割を果たす。ヒアリン軟骨にその独特な耐荷重特性及び低摩擦特性を与えるのは、プロテオグリカンとイオンと水と周囲のコラーゲンマトリックスとの相互作用である。本発明は、これらの重要な組成構造間の相互作用を模倣し、ポリウレタン(組織化ドメインと非晶質ドメインの両方を含む)、負荷電ポリアクリル酸ナトリウム、イオン、及び水を含む構造マトリックスを提供する材料である。本明細書に記載されているように、ポリウレタンとポリ電解質のこの組合せに関するバリエーションは、ポリウレタン(例えば、ポリエーテルウレタン、ポリカーボネートウレタン、ポリウレタン尿素、又はこれらのシリコーン系誘導体)、ポリ電解質(例えば、カルボン酸及び/又はスルホン酸官能基のうちの少なくとも1つを含む任意のホモポリマー又はコポリマー系)、並びに架橋剤又は開始剤(例えば、光活性化型のもの、化学的なもの、又は熱によるもの)の種類に関して異なることができる。本開示の目的のために、ポリ電解質は、正味の負電荷を担持するポリマー又はポリマーネットワークと定義される。ポリ電解質ネットワークは、中性(非荷電又はイオン化可能)モノマー、及び/又は更には、コポリマーネットワークを効果的に形成する荷電又はイオン化可能モノマーと共重合された正荷電モノマーを有していてもよい。例えば、アクリル酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、及びアクリルアミドを、互いに対して様々な比率で共重合させ、それでもなお正味の負電荷を有するポリマーネットワークを生じさせることができる。これらの要素のいずれかの濃度又は内容は、本発明の本質を逸脱することなく、様々に異なることができる。例えば、米国特許出願公開第2008/0269370号明細書、米国特許出願公開第2009/0088846 A1号明細書、及び/又は本明細書に記載されているモノマー又はモノマーの組合せのいずれか(例えば、ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、NIPAAm、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、ヒドロキシエチルアクリレート/メタクリレート、及びスルホン酸基を含有する任意のビニル系モノマー(例えば、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、3−スルホプロピルアクリレート(もしくはメタクリレート)、2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸ナトリウム塩、又はスルホン酸が共役している任意のモノマー(アリルエーテル、アクリレート/メタクリレート、ビニル基、又はアクリルアミド)を使用することができる。モノマーとしては、アリルエーテル、アクリレート/メタクリレート、ビニル基、又はアクリルアミドに共役したカルボン酸基を含む任意のモノマーを挙げることもできる。更に、モノマーを組合せで用いて(例えば、カルボキシル酸とスルホン酸の両方を含むモノマー)、カルボキシレート/スルホネートコポリマーを生成させることができる。これらのモノマー及びモノマー組合せから得られるポリマー上のペンダント官能基を後続の化学反応に供して、最終的なポリマーに他の官能基を生じさせることができる。他のイオン化可能モノマーとしては、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホプロピルメタクリレート(もしくはアクリレート)、ビニルスルホン酸、又はビニル共役型のヒアルロン酸、ヘパリン硫酸(heparin sulfate)、及びコンドロイチン硫酸、並びにこれらの誘導体、又は組合せなどの、負荷電カルボン酸又はスルホン酸基を含むモノマーが挙げられる。
(000302) スルホン酸官能基を、既に形成されているIPN又は半IPN(勾配IPN又は半IPNを含む)に組み込むことができる。一般的な原則は、IPN中のポリ(アクリル酸)上に存在するカルボン酸基をスルホン酸含有官能基と置換することである。これは、スルホン酸をIPNに取り入れる代替的な方法であるが、より直接的な方法は、第2のネットワークの形成段階でスルホン酸含有モノマーを重合又は共重合させることである。最終的な結果は同じである(疎水性(例えば、ポリウレタン)の第1のネットワークと、第2のネットワーク中のカルボン酸基及びスルホン酸基を含むコポリマーとを含むIPN)。これは、第2のネットワーク中のスルホン酸の収率(パーセンテージ)を増大させる可能性があるいくつかの場合において利点を有する場合があり、また、第2のネットワーク内でのスルホン化の勾配の形成も可能にすることができる。
(000303) 任意の工程を用いて、スルホン酸基を第2のネットワークに組み込むことができる。スルホン酸基をポリウレタン/ポリ(アクリル酸)IPNの第2のネットワークに組み込むための1つの工程は、以下の通りである。200mLの5mM 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)溶液に、1gのポリウレタン及びポリ(アクリル酸)のIPNのスラブを加え、溶液のpHを5.5に滴定する。1時間含浸させた後、1gのタウリン(アミノエタンスルホン酸)をこの溶液に添加し、37℃で6時間インキュベートする。反応後、IPNを繰り返し洗浄して、触媒及び残留タウリンを除去する。例えば、1−シクロヘキシル−3−[2−モルホリノエチル]カルボジイミドなどの、他の水溶性カルボジイミドを触媒としてこの反応でEDCの代わりに使用することができる。また、他のスルホン酸含有化学物質を用いて、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の形成をもたらすものを含む、第2のネットワーク上のスルホン酸官能基を達成することができる。第2のネットワークへのスルホン酸付加の最終的な量を、時間、温度、反応物のモル比、並びに触媒の濃度及び内容によって変化させて、第2のネットワークの極めて低いパーセンテージ(例えば、0.01%のスルホン化)から極めて高いパーセンテージ(50%以上)までの範囲を達成することができる。この工程を用いて生成されるIPNの例としては、ポリウレタン/ポリ(アクリル酸−コ−アクリルアミドエタンスルホン酸)及びポリウレタン/ポリ(アクリル酸−コ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)の半IPNが挙げられる。スルホン酸を含有する第2のネットワークを含むIPN、勾配IPN、及び半IPNも、上記の工程を用いて生成させることができる。
(000304) これらの材料を浸漬及び膨潤させる溶液(例えば、水性緩衝液)も、本発明の本質を逸脱することなく異なり得る。
(000305) 図72A〜Fは、本開示の一態様に係るIPN又は半IPNの構造を示す平衡膨潤の模式図である。図72A及び72Cは、第1の「構造」ネットワーク及びイオン化可能ネットワークをそれぞれ模式図の形で示す。前者は、イオン化可能ではなく、水溶液中で負電荷を帯びず、従って、水、塩、又は他のイオン(例えば、水素又は水酸化物)の存在に応答して、それほど大きくは膨潤しないので、この実施例において、構造ネットワークとして記載されている。図72Bは、構造ネットワーク及びイオン化可能ネットワークのIPN(又は半IPN)を模式図の形で示す。図72D〜Fは、緩衝食塩水又は体液などの水溶液への浸漬後の構造ネットワーク、IPN(又は半IPN)、及びイオン化可能ネットワークを示す。(平衡膨潤に至る)浸漬工程は、下向きの矢印で表されている。ポリウレタンなどの構造ネットワークは、水で処理した後、その形状828を保持する。ポリ(アクリル酸)などのイオン化可能ネットワークは、そのような条件下で中和された(負荷電)形態を取る。負電荷を帯びる(又はイオン化される)ようになるのは、ポリ(アクリル酸)中のカルボン酸官能基である。
(000306) 他の実施形態において、スルホン酸官能基は、単独で又はカルボン酸基との組合せで存在し、負荷電(イオン化)状態を呈することができる。イオン化可能ネットワークは、固定(負)電荷(838)を帯び、正の対イオン(すなわち、ナトリウム)及び水、並びに水に続く他のイオンの誘引によって膨潤する(836を826と比較されたい)。これらの2つのネットワーク要素を相互透過性ポリマーネットワーク配置で組み合わせたとき(図72B、E)、イオン化可能ネットワーク824、832の膨潤は、構造ネットワーク822、830による抵抗を受け、新しい平衡膨潤点を有する材料を生じさせる。従って、IPN又は半IPNは、構造ネットワークが存在することによって、イオン化可能ネットワーク単独で膨潤するよりも少ない程度に膨潤する。更に、イオン化可能ネットワークが存在するために、IPN又は半IPNは固定電荷(834)も含む。水和したネットワークにおける固定電荷の存在は、システム中に高度の極性を生成させ、かつナトリウム対イオン、及び膨潤挙動の基礎となる相当な量の水をシステムに誘引するので重要である場合がある。天然の軟骨(半月板軟骨又は関節唇軟骨を含む)が固定電荷を含むこと、並びにその膨潤、摩擦、及び機械的特性が全て、そのマトリックス内での固定電荷の存在に大きく左右されることが周知である。天然の軟骨及び半月板内の固定電荷は、コラーゲンマトリックスに相互透過性するグリコサミノグリカンマクロ分子上に存在するカルボン酸官能基とスルホン酸官能基の組合せにも由来する。本発明は、(ネイティブな組織中のコラーゲンと同じように挙動する)ポリウレタンのような強靱な構造マトリックスを、固定電荷を含み、かつ対イオン及び水を誘引する(カルボン酸基及び/又はスルホン酸基を含む)合成ポリ電解質のイオン化可能ネットワークと組み合わせることによって、天然の軟骨及び半月板/関節唇組織によって示される構造−機能関係を模倣する。本発明において、2つのポリマー系の平衡膨潤は、通常、約3%の水から最大80%の水、より一般的には、約25%〜約80%の範囲に及び、従来のポリマー及びホモポリマーヒドロゲルで達成することが難しい、水含有量、剛性、摩擦係数、透過性、破損ひずみ、及び引裂強度などの特性の同時の組合せを達成する。
(000307) 図73は、本開示に記載のポリウレタン−ポリ電解質システムの模式図を示す。ポリ電解質ポリマー846(負電荷848を有する)は、ポリウレタン842の非晶質相を通過し、この非晶質相は、次に、ハードセグメント844の規則的相に結び付いている。
(000308) 図74A〜Bは、本開示に記載の勾配ポリウレタン−ポリ電解質システムの模式図を示す。この材料は、組成物の一方の側面850から他方の側面852への剛性、水和、及び材料の勾配を示す。ポリ電解質ポリマー860(負電荷854を有する)は、ポリウレタン856の非晶質相を通過し、この非晶質相は、次に、ハードセグメント858の規則的相に結び付いている。材料の一方の側面852では、ポリウレタンのみが存在するのに対し、この材料の反対側面850では、ポリ電解質の相対量が増大して、最大値を達成する。従って、側面852は、より剛性があり(従って、より優れた骨又は骨付着要素界面を提供し)、側面850は、より潤滑である(従って、より優れた関節ベアリング表面を提供する)。
(000309) 図75及び76は、ポリエーテルウレタン(Elasthane(登録商標))ポリマーをポリ(アクリル酸)、水、及び塩と組み合わせることによって生成される様々なポリウレタン−ポリ電解質システムを示す。図76は、図75に示すデータのグラフ表示を示す。ここで使用される術語は、ポリウレタンの種類、ポリウレタンのデュロメーター、及び重合前に使用されるアクリル酸モノマーのパーセンテージを指す。例えば、「E80A30%」は、デュロメーター80AのElasthane(登録商標)ポリウレタンが、水中の30%アクリル酸に膨潤したことを意味する。この場合のY軸は、そのもとの体積と比べてポリウレタンが受けた平衡膨潤における体積拡大パーセントを表している。ポリウレタンの拡大は、水、中性状態と帯電状態(PAA−)の両方のポリ(アクリル酸)(PAA)、PAAに対するナトリウム(Na+)イオン、ポリウレタン(PU)、水(H2O)、及び塩を含む、様々な種のこのシステムへの付加によって生じる。これらの組合せはいずれも、本明細書に記載の本発明を実施するのに好適であろう。
(000310) 図77及び78は、ポリエーテルウレタン(Elasthane(登録商標))ポリマーをポリ(アクリル酸)、水、及び塩と組み合わせることによって生成される数多くのポリウレタン−ポリ電解質システムを示す。図78は、図77に示すデータのグラフ表示を示す。ここで使用される術語は、ポリウレタンの種類、ポリウレタンのデュロメーター、及び重合前に使用されるアクリル酸モノマーのパーセンテージを指す。例えば、「E80A30%」は、デュロメーター80AのElasthane(登録商標)ポリウレタンが、水中の30%アクリル酸に膨潤したことを意味する。このプロットにおいて、Y軸は、水、中性状態と帯電状態(PAA−)の両方のポリ(アクリル酸)(PAA)、PAAに対するナトリウム(Na+)イオン、ポリウレタン(PU)、水(H2O)、及び塩を含む、このシステム中の主な要素の各々の寄与をパーセントで表している。これらの組合せはいずれも、本明細書に記載の本発明を実施するのに好適であろう。一実施例において、物質の組成物は、生理的pH(7.4)で37で0.9%水性塩溶液中で分析したとき、約4%〜約90%w/wのポリウレタン、約1%〜約40%w/wのポリアクリル酸の電解質、及び約3%〜約80%の水を有することができる。組成物は、約0.3%〜約13%のポリアクリル酸のナトリウム対イオンを更に含むことができる。一実施例において、組成物中のポリウレタンの濃度は、約8%〜約55%であり得る。別の実施例において、ポリアクリル酸の電解質の組成物中の濃度は、約9%〜約22%であり得る。別の実施例において、組成物中での水の濃度は、約25%〜約80%であり得る。組成物は、約0.3%〜約13%のポリアクリル酸のナトリウム対イオンを更に含むことができる。
(000311) 図79は、本開示の一態様に係るIPN及び半IPN材料及び機械的特性を示す。図79は、天然の軟骨、並びに現在、整形外科的用途で使用されている市販のポリマー、すなわち、UHMWPE、ポリウレタン単体、及びヒドロゲルホモポリマーネットワークについて記載されている特性の範囲と比較した、水和状態で本開示に係るIPN又は半IPNによって示される特性の範囲を比較したものである。白丸は、特定の材料の材料特性を示す。
(000312) 摩擦(摩擦係数(COF))に関して、水和したIPN又は半IPNは、天然のヒアリン軟骨について文献中で公表されている値の範囲と重複している。対照的に、UHMWPEのCOF値はより高く、ポリウレタン単体のCOF値は更により高く、どちらも、軟骨について知られている範囲と重複しない。
(000313) 剛性(係数)に関して、水和したIPN又は半IPNは、天然のヒアリン軟骨(「軟骨」)について明らかにされている値及び半月板の値と重複する広範囲の値を達成するように合成することができる。対照的に、UHMWPEの剛性は、ヒアリン軟骨又は半月板のいずれかについて知られている範囲値を大きく上回る。従来のホモポリマーヒドロゲル(「GELS」)の剛性は、ヒアリン軟骨の剛性とある程度重複することが知られているが、その上限範囲に限定されており、一般的に言えば、半月板の剛性値を達成することができない。
(000314) 水(H2O)含有量に関して、水和したIPN又は半IPNは、ヒアリン軟骨と重複する広範囲の値を得ることができるが、より高い値及びより低い値も同様に達成することができる。対照的に、UHMWPEは、水を皆無かそれに近くしか吸収しない。
(000315) 透過性(透水率)に関して、水和したIPN又は半IPNは、半月板とヒアリン軟骨の両方と重複する値を達成することができる。一般的に言えば、ヒアリン軟骨の透過性が低ければ低いほど、組織は健康であり、逆の場合も同じである。従って、水和したIPN及び半IPNは、ヒアリン軟骨の透過性値をその「健康な」範囲で獲得することができる。
(000316) 引裂強度に関して、水和したIPN又は半IPNは、ヒアリン軟骨の値について知られている値と重複するか又はそれを超える値を達成することができる。これは、ヒアリン軟骨について知られている値を下回る引裂強度値を有する傾向がある、大部分のホモポリマーヒドロゲルネットワークとは対照的である。
(000317) 破損ひずみ(破損引張ひずみ)に関して、本発明に係る水和したIPN又は半IPNは、ヒアリン軟骨又は大部分のホモポリマーヒドロゲルネットワークのいずれかの値を超える値を達成することができる。これは、使用される第1のネットワーク材料の固有の拡張性の結果であることができ、この材料は、水で膨潤するにもかかわらずひずむその能力を保持することができる。
(000318) 他の修正は当業者に明らかである。本発明に関する更なる詳細に関して、関連技術の当業者のレベルの範囲内にあるような材料及び製造技術を利用することができる。一般的に又は論理的に利用される追加の行為の観点から、本発明の方法に基づく態様に関しても同じことが言えるであろう。また、記載されている発明のバリエーションのどの任意の特徴も、独立に又は本明細書に記載の特徴のうちの任意の1つもしくは複数と組み合わせて記載及び特許請求され得ると考えられる。同様に、単数の物品への言及は、同一物品が複数存在する可能性を含む。より具体的には、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、「該」、及び「その(the)」は、文脈上、そうでないと明らかに示されていない限り、複数の指示対象を含む。特許請求の範囲は、任意の要素を除外するように書かれ得ることに更に留意されたい。従って、この記述は、クレーム要素の列挙、又は「否定的な」限定の使用に関連して、「だけ」、「のみ」などのような排他的用語の使用のための先行詞としての役割を果たすことが意図される。本明細書で別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって共通に理解されているのと同じ意味を有する。本発明の広さは、本明細書によってではなく、むしろ利用されるクレーム用語の単純な意味によってのみ限定されるべきである。
(000318) 他の修正は当業者に明らかである。本発明に関する更なる詳細に関して、関連技術の当業者のレベルの範囲内にあるような材料及び製造技術を利用することができる。一般的に又は論理的に利用される追加の行為の観点から、本発明の方法に基づく態様に関しても同じことが言えるであろう。また、記載されている発明のバリエーションのどの任意の特徴も、独立に又は本明細書に記載の特徴のうちの任意の1つもしくは複数と組み合わせて記載及び特許請求され得ると考えられる。同様に、単数の物品への言及は、同一物品が複数存在する可能性を含む。より具体的には、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、「該」、及び「その(the)」は、文脈上、そうでないと明らかに示されていない限り、複数の指示対象を含む。特許請求の範囲は、任意の要素を除外するように書かれ得ることに更に留意されたい。従って、この記述は、クレーム要素の列挙、又は「否定的な」限定の使用に関連して、「だけ」、「のみ」などのような排他的用語の使用のための先行詞としての役割を果たすことが意図される。本明細書で別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって共通に理解されているのと同じ意味を有する。本発明の広さは、本明細書によってではなく、むしろ利用されるクレーム用語の単純な意味によってのみ限定されるべきである。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕ベアリング表面及び付着区域を含むポリマーベアリング部材;並びに
前記ポリマーベアリング部材の前記付着区域に付着し、かつ金属及び前記金属中の空間を含む骨界面部材:
を含む整形外科用インプラントであって、骨界面部材を骨表面に適合させるように第1の形状から第2の形状へと変形可能である、整形外科用インプラント。
〔2〕前記空間が前記金属中に空孔を含む、前記〔1〕に記載の整形外科用インプラント。
〔3〕前記空間が前記金属中にスロットを含む、前記〔1〕に記載の整形外科用インプラント。
〔4〕前記骨界面部材が、付着表面に付着し、かつ互いに分離されている複数の金属部材を含む、前記〔1〕に記載の整形外科用インプラント。
〔5〕前記付着区域が、錐体状構造物、くぼみ、溝、くい、支柱、ピン、及びピラミッド状構造物からなる群から選択される特徴を含む、前記〔1〕に記載の整形外科用インプラント。
〔6〕前記骨界面部材が前記ポリマーベアリング部材に物理的に付着している、前記〔1〕に記載の整形外科用インプラント。
〔7〕前記ポリマーベアリング部材と前記骨界面部材との間の化学結合を更に含む、前記〔1〕に記載の整形外科用インプラント。
〔8〕前記付着区域の前記骨界面部材への付着が接着剤によって生成される、前記〔1〕に記載の整形外科用インプラント。
〔9〕前記ポリマーベアリング部材が水膨潤性IPN又は半IPNを含む、前記〔1〕に記載の整形外科用インプラント。
〔10〕前記水膨潤性IPN又は半IPN部材が、疎水性の熱硬化性又は熱可塑性ポリマーの第1のネットワークとイオン性ポリマーの第2のネットワークとを含む、前記〔1〕に記載の整形外科用インプラント。
〔11〕金属部分と、付着区域及びベアリング表面を有する可撓性ポリマーとを含み、前記金属部分が前記付着区域に付着している、整形外科用インプラントを関節に挿入する方法であって:
第1の形状の前記インプラントを前記関節に挿入すること;及び
前記インプラントを前記第1の形状から第2の形状に変化させて、前記関節を形成する骨の少なくとも一部の形状に適合させること
を含む、方法。
〔12〕第1の変化させる工程の後に、前記インプラントを前記第2の形状から前記第1の形状に戻すことを更に含む、前記〔11〕に記載の方法。
〔13〕前記変化させる工程の前に、前記インプラントをもとの形状から前記第1の形状へと変形させることを更に含む、前記〔11〕に記載の方法。
〔14〕前記関節が股関節であり、前記インプラントが、大腿骨頭への配置のために構成されており、かつ変形させることが、前記大腿骨頭に適合するように、前記インプラントの一部を拡張することを含む、前記〔1〕に記載の方法。