JP2018530592A - 代謝性ミオパチーの治療に使用するためのsglt−2阻害剤 - Google Patents
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Abstract
Description
疾患の長い期間の後、2型糖尿病の大半の患者は、最終的に経口療法が効かなくなり、毎日の注射および複数回の毎日のグルコース測定が必要なインスリン依存性になる。
療法に従来使用されている経口抗糖尿病薬(例えば、第一または第二選択、ならびに/あるいは単剤または(初期もしくは追加)併用療法など)としては、以下に限定されないが、メトホルミン、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、グリニドおよびα−グルコシダーゼ阻害剤が挙げられる。
2型糖尿病の患者における治療不全の高い発生率が、長期の高血糖に関連する合併症または慢性損傷(例えば、糖尿病性腎症、網膜症もしくはニューロパチー、または心血管系合併症などの微小血管および大血管合併症を含む)の率が高い主な原因である。
したがって、血糖管理に関して、疾患修飾特性に関しておよび心血管系罹患率および死亡率の低下に関して良好な有効性を有する一方で同時に改善された安全性プロフィールを示す方法、薬剤および医薬組成物に対する未だに対処されていない医学的ニーズがある。
したがって、特に代謝性ミオパチーの患者の運動に対する耐性および関連するクオリティオブライフを改善することための未だに対処されていない医学的ニーズがある。
本発明のさらなる目的は、対象における健康状態のマーカーを改善するための医薬組成物および方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、特に、代謝性ミオパチーの患者の運動に対する耐性および関連するクオリティオブライフを改善するための医薬組成物および方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、本明細書の上記および下記の説明によって、さらに実施例によって当業者に明らかになる。
一態様において、代謝性ミオパチーは、糖原貯蔵症(GSD)、脂肪酸酸化異常症(FAOD)またはミトコンドリアミオパチーである。
一態様において、SGLT2阻害剤は、本明細書の上記および下記で定義されるとおりに投与される。
一態様において、対象は、2型真性糖尿病を有する患者である。
一態様において、患者は、2型真性糖尿病を有する患者である。
一態様において、SGLT−2阻害剤は、エンパグリフロジン(化合物(I.9))である。
− 1型真性糖尿病、2型真性糖尿病、耐糖能障害(IGT)、空腹時高血糖(impaired fasting blood glucose, IFG)、高血糖、食後高血糖、体重過剰、肥満、メタボリックシンドロームおよび妊娠糖尿病から成る群から選択される代謝障害を予防する、その進行の速度を遅くする、それを遅延させるまたは治療すること;あるいは
− 血糖管理を改善することおよび/または空腹時の血漿グルコース、食後の血漿グルコースおよび/またはグリコヘモグロビンHbA1cを低下させること;あるいは
− 耐糖能障害(IGT)、空腹時高血糖(IFG)、インスリン抵抗性からおよび/またはメタボリックシンドロームからの2型真性糖尿病への進行を予防する、その速度を遅くする、遅延させるまたは逆行させること;あるいは
− 白内障ならびに微小血管および大血管疾患、例えば、腎症、網膜症、ニューロパチー、組織虚血、糖尿病性足病変、動脈硬化、心筋梗塞、急性冠症候群、不安定狭心症、安定狭心症、脳卒中、末梢動脈閉塞性疾患、心筋症、心不全、心リズム障害(heart rhythm disorder)ならびに血管再狭窄などの真性糖尿病の合併症から成る群から選択される状態または障害を予防するか、その進行の速度を遅くするか、遅延させるか、または治療すること;あるいは
− 体重および/もしくは体脂肪を低下させること、または体重および/もしくは体脂肪の増加を防ぐこと、または体重および/もしくは体脂肪の低下を促進すること;あるいは
− 膵臓ベータ細胞の変性および/または膵臓ベータ細胞の機能の低下を予防すること、その速度を遅くすること、遅延させることまたは治療することならびに/あるいは膵臓ベータ細胞の機能を改善することおよび/または取り戻すことならびに/あるいは膵臓インスリン分泌の機能を取り戻すこと;あるいは
− 異所性脂肪の異常な蓄積に起因する疾患または状態を予防するか、その速度を遅くするか、遅延させるか、または治療すること;あるいは
− インスリン感受性を維持することおよび/もしくは改善することならびに/あるいは高インスリン血症および/もしくはインスリン抵抗性を治療することまたは予防すること;
− 移植後新規発症糖尿病(NODAT)および/もしくは移植後メタボリックシンドローム(PTMS)を予防するか、その進行の速度を遅くするか、遅延させるか、または治療すること;
− 微小血管および大血管疾患およびイベント、移植片拒絶、感染、および死亡を含むNODATならびに/またはPTMSに関連する合併症を予防するか、遅延させるか、または低減すること;
− 高尿酸血症および高尿酸血症に関連する状態を治療すること;
− 腎結石を治療するかまたは予防すること;
− 低ナトリウム血症を治療すること。
一態様において、本発明は、対象によるカロリー制限もしくは断続的な絶食を回避する利点を提供する。
本発明は、本明細書に記載されている方法のいずれか1つにおいて薬剤として使用するためのSGLT2阻害剤、例えば、エンパグリフロジン、またはSGLT2阻害剤、例えば、エンパグリフロジンを含む医薬組成物をさらに提供する。
本発明のさらなる態様は、本明細書の上記および下記の説明によっておよび例によって当業者に明らかになる。
本発明による医薬組成物の「活性成分」という用語は、本発明によるSGLT2阻害剤を意味する。「活性成分」は、本明細書では「活性物質」と言及される場合もある。
ヒト患者の「ボディマスインデックス」または「BMI」という用語は、BMIがkg/m2の単位を有するようにメートル単位の身長の2乗で割ったキログラム単位の体重と定義される。
「体重過剰」という用語は、個人が25kg/m2以上30kg/m2未満のBMIを有する状態と定義される。「体重過剰」および「過体重」という用語は、同義に使用される。
「内臓肥満」という用語は、男性で1.0以上および女性で0.8以上のウエストヒップ比が測定される状態と定義される。これは、インスリン抵抗性および前糖尿病の発症のリスクを定義する。
「正常血糖」という用語は、対象が70mg/dL(3.89mmol/L)超100mg/dL(5.6mmol/L)未満の正常な範囲内の空腹時血糖濃度を有する状態と定義される。「空腹時」という語は、医学用語として通常の意味を有する。
「高血糖」という用語は、対象が正常な範囲を超えた100mg/dL超(5.6mmol/L)の空腹時血糖濃度を有する状態と定義される。「空腹時」という語は、医学用語として通常の意味を有する。
「低血糖」という用語は、対象が正常な範囲より低い血糖濃度、特に70mg/dL(3.89mmol/L)未満を有する状態と定義される。
「食後高血糖」という用語は、対象が200mg/dL(11.11mmol/L)より高い食後2時間の血糖または血清グルコース濃度を有する状態と定義される。
「耐糖能障害」または「IGT」という用語は、対象が140mg/dl(7.78mmol/L)超200mg/dL(11.11mmol/L)未満の食後2時間の血糖または血清グルコース濃度を有する状態と定義される。異常な耐糖性、すなわち、食後2時間の血糖または血清グルコース濃度は、絶食後に75gのグルコースを摂取した2時間後の血漿1dL当たりのmg単位のグルコースの血糖レベルとして測定することができる。「正常な耐糖性」を有する対象は、140mg/dl(7.78mmol/L)未満の食後2時間の血糖または血清グルコース濃度を有する。
「インスリン感受性促進(insulin-sensitizing)」、「インスリン抵抗性改善」または「インスリン抵抗性低下」という用語は、同義であり、区別なく使用される。
HOMA−IR=[空腹時血清インスリン(μU/mL)]×[空腹時の血漿グルコース(mmol/L)/22.5]
通例、インスリン抵抗性を評価するために日常の臨床実務に他のパラメータが使用される。例えば、トリグリセリドレベルの増加はインスリン抵抗性の存在と高い相関を示すため、好ましくは患者のトリグリセリド濃度が使用される。
膵臓ベータ細胞の機能を調査するための方法は、インスリン感受性、高インスリン血症またはインスリン抵抗性に関する上記の方法と同様であり、ベータ細胞機能の改善は、例えば、ベータ細胞機能に対するHOMA指数(Matthews et al., Diabetologia 1985, 28: 412-19)、インスリンに対する未変化のプロインスリンの比率(Forst et al., Diabetes 2003, 52(Suppl.1): A459)、経口グルコース負荷試験もしくは食事負荷試験後のインスリン/C−ペプチド分泌を求めることによって、あるいは高血糖クランプ調査および/または頻回採血静脈内グルコース負荷試験後の最小モデル化(Stumvoll et al., Eur J Clin Invest 2001, 31: 380-81)を利用することによって測定することができる。
「後期2型真性糖尿病」という用語は、続発性薬物不全(secondary drug failure)、インスリン療法の適応症ならびに微小血管および大血管合併症、例えば、糖尿病性腎症、もしくは冠動脈心疾患(CHD)への進行がある患者を含む。
本発明の範囲における「不十分な血糖管理」または「不完全な血糖管理」という用語は、患者が6.5%超、特に7.0%を超える、さらにより好ましくは7.5%を超える、とりわけ8%を超えるHbA1c値を示す状態を意味する。
1.男性で>40インチもしくは102cm、および女性で>35インチもしくは94cmのウエスト周囲と定義されるか;または日本民族または日本人患者に関して男性で≧85cmおよび女性で≧90cmのウエスト周囲と定義される、腹部肥満;
2.トリグリセリド:≧150mg/dL
3.HDL−コレステロール 男性で<40mg/dL
4.血圧≧130/85mmHg(SBP≧130またはDBP≧85)
5.空腹時血糖≧100mg/dL
一般的に使用される定義によると、収縮期血圧(SBP)が140mmHgの値を上回り、拡張期血圧(DBP)が90mmHgの値を上回る場合に、高血圧と診断される。患者が明らかな糖尿病に苦しむ場合、現在、収縮期血圧を130mmHg未満のレベルに低下させ、拡張期血圧を80mmHg未満に低下させることが推奨されている。
「妊娠糖尿病」(妊娠の糖尿病)という用語は、妊娠中に発症し、通常、出産直後に再びなくなる糖尿病の形態を指す。妊娠糖尿病は、妊娠の24〜28週目の間に行われるスクリーニング検査によって診断される。それは、通常、50gのグルコース溶液の投与の1時間後に血糖レベルが測定される簡単な検査である。この1時間のレベルが140mg/dlを超えた場合、妊娠糖尿病が疑われる。最終確定は、例えば、75gのグルコースを用いた標準的なグルコース負荷試験によって得られる。
本発明の範囲における「SGLT2阻害剤」という用語は、化合物、特にグルコピラノシル誘導体、すなわち、グルコピラノシル部分を有する化合物に関し、これは、ナトリウム・グルコース輸送体2(SGLT2)、特にヒトSGLT2に対して阻害効果を示す。IC50として測定されるhSGLT2に対する阻害効果は、好ましくは1000nM未満、さらにより好ましくは100nM未満、最も好ましくは50nM未満である。hSGLT2に対する阻害効果は、文献において、特に参照によってその全体が本明細書に組み込まれる出願第WO2005/092877号または同第WO2007/093610号(23/24ページ)に記載されている既知の方法によって求めることができる。「SGLT2阻害剤」という用語は、それぞれの結晶形態を含む任意のその薬学的に許容される塩、その水和物および溶媒和物も含む。
「予防的に処置する」、「防止的に処置する」および「予防する」という用語は同義に使用され、本明細書の上記で言及した状態を発症するリスクのある患者を処置することにより、上記のリスクを低減することを含む。
一態様において、本発明は、例えば、カロリー制限もしくは断続的な絶食に取って代わるもしくはそれを模倣することによってカロリー制限または断続的な絶食なく健康上の利益を対象にもたらすためのSGLT−2阻害剤の使用を提供する。一態様において、健康上の利益は、対象の寿命予測値の増加である。
一態様において、SGLT2阻害剤は、本明細書の上記および下記で定義されるとおりに投与される。
一態様において、対象は、2型真性糖尿病を有する患者である。
一態様において、SGLT−2阻害剤は、エンパグリフロジン(化合物(I.9))である。
本発明は、例えば、カロリー制限もしくは断続的な絶食につながるカロリー制限プロトコルを回避する利点を提供すると同時に、依然としてそのようなプロトコルを対象に適用することから得られる健康上の利益をもたらす。
血中のケトン体の上昇も誘発するカロリー制限もしくは断続的な絶食は、そのようなカロリー制限もしくは断続的な絶食を利用する対象の寿命予測値の増加を含む健康上の利益を示す。
本発明の状況におけるその他の利益としては、脳エネルギー産生を増大させることによる発作の予防およびてんかんの治療を挙げることができる。
代謝性ミオパチー
代謝性ミオパチーの患者は、多種多様の欠陥により、筋肉におけるエネルギー産生の根本的な欠陥を有する。これらとしては、脂質、グリコーゲン、グルコース、アデニンヌクレオチド、およびミトコンドリア代謝の欠陥が挙げられる。
a)グリコーゲン代謝:グリコーゲンは、筋肉における炭水化物貯蔵の主形態である。集中的および断続的な筋収縮にエネルギーが必要とされるとき、グリコーゲンがグルコースに分解され(糖原病)、解糖に供給され、ピルビン酸を産生し、ピルビン酸がミトコンドリアに入り、クレブス回路に供給され、ミトコンドリア呼吸鎖によりATPを産生する。解糖におけるグリコーゲンの合成または分解のいずれかのいかなる障害も糖原貯蔵症の原因になるおそれがある。
b)脂質代謝:長鎖脂肪酸は、持続的な運動または絶食の間の骨格筋に対する主要なエネルギー源である。クレブス回路に供給するためのアセチル−CoAへのベータ酸化のための脂肪酸のミトコンドリア膜の通過には、アシル・カルニチントランスロカーゼおよびカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT)Iが介在する運搬のためにカルニチンとの結合が必要とされる。
c)ミトコンドリア機能:ミトコンドリアに入ると、グリコーゲンおよびグルコース経路(ピルビン酸)由来の基質、ならびに脂肪酸およびベータ酸化由来の基質はアセチル補酵素Aに変えられ、これがクレブス回路に供給される。この重要な回路において、中間体分子、NADHおよびFADH2の産生は、電子をミトコンドリア呼吸鎖に送達して、ATPおよびH2Oを産生することになる。
グリコーゲン異化(グリコーゲン分解および解糖)、脂肪酸酸化、クレブス回路、またはミトコンドリア呼吸鎖および酸化的リン酸化などのこれらのいかなる経路の欠陥も、特に運動時の高いエネルギー要求のために、主として筋肉に影響を及ぼす場合が多いヒトの障害の原因となる可能性がある。
一態様において、本発明による代謝性ミオパチーは、糖原貯蔵症(GSD)、脂肪酸酸化異常症(FAOD)またはミトコンドリアミオパチーである。
グリコーゲンは短時間の運動中の主要なエネルギー源である一方で、遊離脂肪酸は長時間の運動中の最も重要な燃料の供給源である。したがって、激しい短時間の運動中の筋痙攣は糖原貯蔵症の特徴である(例えば、マッカードル病)。これらの状態は、グリコーゲン合成(糖原病)またはそのグルコースへの分解(解糖)を乱すさまざまな酵素の欠陥に起因する。GSDは、例えば、以下のグリコーゲン代謝の11の障害(I〜XIとした)のうちの1つである:
・GSD I − グルコース−6−ホスファターゼ欠乏症;フォン・ギールケ病
・GSD IB/IC; グルコース−6−ホスファターゼトランスポーター
・GSD II − 酸性マルターゼ欠乏症(AMD);ポンペ病。
・GSD IIB;ライソゾーム関連膜タンパク質2;ダノン病
・GSD III − 脱分枝酵素欠乏症;コリ・フォーブス病。
・GSD IV − 分枝酵素欠乏症;アンダーソン病。
・GSD V − 筋ホスホリラーゼ欠乏症;マッカードル病。
・GSD VI − 肝ホスホリラーゼ欠乏症;ハース病
・GSD VII − ホスホフルクトキナーゼ欠乏症;垂井病。
・GSD VIII − ホスホリラーゼbキナーゼ欠乏症。
・IX型GSD − ホスホグリセリン酸キナーゼ欠乏症。
・GSD X − ホスホグリセリン酸ムターゼ欠乏症。
・GSDXI − 乳酸デヒドロゲナーゼ欠乏症。
・GSD XII − アルドラーゼA欠乏症。
したがって、一態様において、本発明は、上記の糖原貯蔵症(GSD)のいずれか1つを治療するか、またはその進行を遅延させるか、もしくはその速度を遅くする方法であって、患者にSGLT−2阻害剤、例えば、エンパグリフロジンを投与することを含む方法を提供する。
脂質代謝の障害からもたらされるミオパチーとしては、以下のものが挙げられる:
・カルニチン欠損症候群
・脂肪酸運搬体欠損
・ベータ酸化酵素の欠損
最も一般的な脂質代謝障害としては、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII欠乏症(CPTII)、三機能タンパク質欠乏症(TFP)および極長鎖アシル−CoAデシドロゲナーゼ(deshydrogenase)欠乏症(VLCAD)が挙げられる。
CPTII遺伝子内の変異が原因のおよそ60のさまざまな疾患が、横紋筋融解およびミオグロビン尿を誘発することが報告されている。
したがって、一態様において、本発明は、上記の脂質代謝障害のいずれか1つを治療するか、またはその進行を遅延させるか、もしくはその速度を遅くする方法であって、患者にSGLT−2阻害剤、例えば、エンパグリフロジンを投与することを含む方法を提供する。
これらのミオパチーは、ミトコンドリア呼吸鎖の遺伝性異常が原因となる種々のグループの多系統疾患を含み、極めて多くの臨床的表現型をもたらす。ミトコンドリア病の患者を冒す最も一般的な症状の1つは、一続きの階段を上るのと同様の軽い活動でも早くに疲労するため運動不耐である。短い休息後、患者は、通常活動を再開できるが、症状は再発する。ミトコンドリア病の患者は、激しい活動により筋肉の主観的な重さまたは痛みを訴えることが多いが、糖原貯蔵症の患者とは対照的に、一般にこわばり、筋痙攣または呼吸の整復現象は示さない。
したがって、一態様において、本発明は、上記のミトコンドリアミオパチーのいずれか1つを治療するか、またはその進行を遅延させるか、もしくはその速度を遅くする方法であって、患者にSGLT−2阻害剤、例えば、エンパグリフロジンを投与することを含む方法を提供する。
一態様において、SGLT2阻害剤の投与は、例えば、器官、特に筋肉へのエネルギーおよび酸素供給を改善して収縮および運動に対する耐久性を改善することによって、代謝性ミオパチーの患者のクオリティオブライフを改善することができる。
本発明による態様、特に医薬組成物、方法および使用は、本明細書の上記および下記で定義されるSGLT2阻害剤を指す。
SGLT2阻害剤は、式(I)のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体であって、
式(I)の化合物およびその合成方法は、例えば、以下の特許出願:WO2005/092877に記載されている。
式(I)の上記のグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体では、置換基の以下の定義が好ましい。
R1は、クロロを表すのが好ましい。
R2は、Hを表すのが好ましい。
R3は、(S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシを表すのが好ましい。
式(I)の好ましいグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体は、エンパグリフロジン:
とも言及される化合物(I.9)である。
以下に本発明による医薬組成物に適した賦形剤および担体について、さらに詳細に記載する。
本発明による医薬組成物は、錠剤、カプセルまたはフィルムコーティング錠に含まれてもよい。
一実施形態において、本発明による医薬組成物を含む錠剤は、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤を含む。そのような滑沢剤は、上記錠剤中に0.25〜2%の濃度で存在してもよい。
一実施形態において、本発明による医薬組成物を含む錠剤は、コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤を含む。そのような流動促進剤は、上記錠剤中に0.25〜2%の濃度で存在してもよい。
錠剤、カプセルまたはフィルムコーティング錠などの本発明による剤形は、当業者に周知の方法によって調製されてもよい。
錠剤を製造する適切な方法としては、粉末の形態の医薬組成物の圧縮、すなわち直接圧縮、または必要に応じて付加的な賦形剤を含む顆粒の形態の医薬組成物の圧縮が挙げられる。
本発明による医薬組成物の顆粒は、当業者に周知の方法によって調製されてもよい。賦形剤とともに活性成分を造粒するための好ましい方法としては、湿式造粒、例えば、高せん断湿式造粒および流動層湿式造粒、ローラー圧縮とも呼ばれる乾式造粒が挙げられる。
さらに、本発明による方法および/または使用は、1つ、2つ以上の以下の状態を示す患者に有利にも適用することができる:
(a)空腹時血糖または血清グルコース濃度が100mg/dL超、特に125mg/dL超;
(b)食後の血漿グルコースが140mg/dL以上;
(c)HbA1c値が6.5%以上、特に7.0%以上、とりわけ7.5%以上、さらに一層詳細には8.0%以上。
さらに、本発明による医薬組成物は、インスリン依存の患者、すなわち、インスリンまたはインスリンの誘導体またはインスリンの代替物あるいはインスリンまたはその誘導体もしくは代替物を含む製剤により治療されるか、またはそうでなければ治療されるであろう、またはそれによる治療を必要とする患者の治療に特に適している。こうした患者としては、2型糖尿病の患者および1型糖尿病の患者が挙げられる。
本発明の別の好適な実施形態によると、食事および運動の補助として2型真性糖尿病の患者、特に成人患者における血糖管理を改善するための方法が提供される。
本発明による医薬組成物を使用することによって、特に抗糖尿病薬による治療、例えば、最大推奨または耐容量のメトホルミンによる経口単剤療法にもかかわらず血糖管理が不十分な患者でも血糖管理の改善を達成することができることがわかった。メトホルミンに関する最大推奨量は、例えば、1日当たり2000mgまたは1日に3回の850mgまたはそのあらゆる等量である。
(a)食事および運動単独では血糖管理が不十分;
(b)メトホルミンによる経口単剤療法、特に最大耐容量のメトホルミンでの経口単剤療法にもかかわらず血糖管理が不十分;
(c)別の抗糖尿病剤による経口単剤療法、特に最大耐容量の他の抗糖尿病剤での経口単剤療法にもかかわらず血糖管理が不十分。
本発明によるSGLT2阻害剤の投与による血糖レベルの低下は、インスリン非依存的である。したがって、本発明による医薬組成物は、1つ以上の以下の状態を有すると診断されている患者の治療に特に適している
− インスリン抵抗性、
− 高インスリン血症、
− 前糖尿病、
− 2型真性糖尿病、特に後期2型真性糖尿病を有する、
− 1型真性糖尿病。
(a)肥満(クラスI、IIおよび/またはIII肥満を含む)、内臓肥満および/または腹部肥満、
(b)トリグリセリド血中レベル≧150mg/dL、
(c)HDL−コレステロール血中レベル 女性患者で<40mg/dLおよび男性患者で<50mg/dL、
(d)収縮期血圧≧130mmHgおよび拡張期血圧≧85mmHg、
(e)空腹時血糖レベル≧100mg/dL。
(a)高齢、特に50歳超、
(b)男性の性別;
(c)体重過剰、肥満(クラスI、IIおよび/またはIII肥満を含む)、内臓肥満および/または腹部肥満、
(d)移植前の糖尿病、
(e)免疫抑制療法。
さらに、本発明による医薬組成物は、1つ以上の以下の状態を有すると診断されている患者の治療に特に適している:
(a)低ナトリウム血症、特に慢性低ナトリウム血症;
(b)水中毒;
(c)水貯留;
(d)135mmol/L未満の血漿ナトリウム濃度。
患者は、糖尿病または非糖尿病哺乳動物、特にヒトであってもよい。
さらに、本発明による医薬組成物は、1つ以上の以下の状態を有すると診断されている患者の治療に特に適している:
(a)高い血清尿酸レベル、特に6.0mg/dL(357μmol/L)超;
(b)通風性関節炎、特に再発性の通風性関節炎の病歴;
(c)腎結石、特に再発性腎結石;
(d)腎結石形成の傾向が高い。
さらに、本発明による医薬組成物の投与は、低血糖のリスクをもたらさないか、またはリスクが低いことがわかった。したがって、本発明による治療または予防はまた、低血糖のリスクの増加を示すか、またはそれを有する患者に有利にも可能である。
本発明による医薬組成物は、本明細書の上記および下記に記載される疾患および/または状態の長期間の治療または予防、特に2型真性糖尿病の患者における長期間の血糖管理に特に適している。
「長期間」という用語は、本明細書の上記および下記で使用される場合、12週より長い、好ましくは25週より長い、さらにより好ましくは1年より長い期間内の患者の治療または患者への投与を示す。
高尿酸血症または高尿酸血症に関連する状態の治療に対して、本発明によるSGLT2阻害剤は、医薬組成物または剤形に、患者の血漿グルコースホメオスタシスを乱すことなく、特に低血糖を誘発することなく高尿酸血症を治療するのに十分である十分な量で含まれる。
腎結石の治療または予防に対して、本発明によるSGLT2阻害剤は、医薬組成物または剤形に、患者の血漿グルコースホメオスタシスを乱すことなく、特に低血糖を誘発することなく腎結石を治療または予防するのに十分である十分な量で含まれる。
低ナトリウム血症および関連する状態の治療に対して、本発明によるSGLT2阻害剤は、医薬組成物または剤形に、患者の血漿グルコースホメオスタシスを乱すことなく、特に低血糖を誘発することなく低ナトリウム血症または関連する状態を治療するのに十分である十分な量で含まれる。
本発明の範囲内において、医薬組成物は、好ましくは経口投与される。その他の投与形態も可能であり、本明細書の後に記載される。好ましくは、SGLT2阻害剤を含む1つ以上の剤形は、経口用であるか、または通常の周知の剤形である。
一般に、本発明による医薬組成物および方法におけるSGLT2阻害剤の量は、好ましくは、上記のSGLT2阻害剤を使用する単剤療法に通常、推奨される量である。
個別または複数の剤形、好ましくはパーツのキットとして存在する医薬組成物は、患者の個々の治療的ニーズに柔軟に適合するための併用療法に有用である。
第1の実施形態によると、好ましいパーツのキットは、SGLT2阻害剤および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む剤形を収容する容器を含む。
本発明の別の態様は、本発明による個々の剤形として存在する医薬組成物および個々の剤形が組み合わせて、もしくは交互に投与されることの指示書を含むラベルまたは添付文書を含む製品である。
第1の実施形態によると、製品は、(a)本発明によるSGLT2阻害剤を含む医薬組成物および(b)薬剤が投与されることの指示書を含むラベルまたは添付文書を含む。
本発明による医薬組成物の所望の用量は、1日に1回または適切な間隔で投与される分割された用量として、例えば、1日当たり2回、3回以上の用量として都合よく提供することができる。
本医薬組成物は、錠剤、顆粒、細粒、散剤、カプセル剤、カプレット剤、軟カプセル剤、丸剤、経口液剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、チュアブル錠、トローチ剤、発泡錠、滴薬、懸濁剤、速溶錠、経口迅速分散錠などの形態に製剤化されてもよい。
本医薬組成物および剤形は、好ましくは製剤の他の成分と適合し、その受け手に有害でないという意味で「許容され」なければならない1つ以上の薬学的に許容される担体を含む。薬学的に許容される担体の例は、当業者に知られている。
本発明による医薬組成物および方法は、本明細書の上記に記載される疾患および状態の治療および予防に有利な効果を示す。有利な効果は、例えば、効力、有効成分含量、投薬頻度、薬力学的特性、薬物動態的特性、少ない有害作用、利便性、コンプライアンスなどに対して認められるものでもよい。
活性成分または薬学的に許容されるその塩は、水和物などの溶媒和物またはアルコール付加物の形態で存在してもよい。
本発明の範囲内の任意の上記の医薬組成物および方法は、当該技術分野において知られている動物モデルによって試験されてもよい。以下では、本発明による医薬組成物および方法の薬理学的に関連性のある特性を評価するのに適したインビボ実験が記載される。
本発明による医薬組成物および方法は、db/dbマウス、ob/obマウス、Zucker Fatty(fa/fa)ラットまたはZucker Diabetic Fatty(ZDF)ラットのような遺伝学的に高インスリン血症または糖尿病の動物において試験されてもよい。さらに、これらは、ストレプトゾトシンにより予め治療されたHanWistarまたはSprague Dawleyラットのような実験的に誘発された糖尿病の動物において試験されてもよい。
本発明による治療のインスリンからの改善された非依存状態は、本明細書の上記に記載されている動物モデルの経口グルコース負荷試験における1回の投薬後に示される得る。血漿インスリンの経時推移は、一晩絶食させた動物におけるグルコースチャレンジ後に追跡される。
経口投与用の固体医薬組成物および剤形の以下の例は、例の内容に本発明を制限することなく、本発明をさらに完全に説明するのに役立つ。経口投与用の組成物および剤形の別の例は、WO2010/092126に記載されている。「活性物質」という用語は、本発明によるエンパグリフロジン、とりわけ、WO2006/117359およびWO2011/039107に記載されているその結晶形態を表す。
SGLT−2阻害剤、例えば、エンパグリフロジンを動物モデルにおいて評価する。SGLT−2阻害剤を動物に投与し、筋肉性能および運動耐性を評価する。休息時および運動中の血中乳酸も測定する。
Claims (6)
- 患者の代謝性ミオパチーを、治療するか、その進行を遅延させるか、またはその速度を遅くする方法であって、前記患者にSGLT−2阻害剤を投与することを含む、前記方法。
- 前記代謝性ミオパチーが、グリコーゲンまたは脂質代謝障害による代謝性ミオパチーである、請求項1に記載の方法。
- 前記代謝性ミオパチーが、糖原貯蔵症(GSD)、脂肪酸酸化異常症(FAOD)またはミトコンドリアミオパチーである、請求項1に記載の方法。
- 前記患者が、2型真性糖尿病を有する患者である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
- 前記SGLT−2阻害剤が、エンパグリフロジンである、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
- 前記SGLT−2阻害剤が、器官、とりわけ筋肉におけるエネルギー産生を増加させるために前記患者が摂取した特定の食事に加えて前記患者へ投与される、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
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