JP2018204114A - 破断分離型コネクティングロッド用成型部品及び破断分離型コネクティングロッド、並びにこれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】破断分離性が良好で且つ破面の嵌合性が良好な破断分離型コネクティングロッド及びこれに用いる成型部品を提供する。【解決手段】本発明は、質量%で、C:0.1〜0.70%、Si:0%超、1.5%以下、Mn:0.01〜2.0%、P:0%超、0.2%以下、S:0%超、0.2%以下、Cr:0.01〜2.0%をそれぞれ含有し、残部は鉄及び不可避的不純物であって、金属組織のうち、焼戻しマルテンサイトが占める面積率が80%以上であり、旧オーステナイト粒度番号が6.0以下である破断分離型コネクティングロッド用成型部品である。【選択図】図6
Description
本発明は、破断分離型コネクティングロッド用成型部品及び該成型部品から得られる破断分離型コネクティングロッドに関する。
自動車エンジン等の内燃機関には、ピストンとクランクシャフトとの間を連結し、ピストンの往復運動をクランクシャフトに伝えて回転運動に変換する部品としてコネクティングロッドが用いられている。このコネクティングロッドは、コネクティングロッド本体とコネクティングロッドキャップから構成され、これらがクランクシャフトを挟むようにして、クランクシャフトに取り付けられる。
従来、コネクティングロット本体とコネクティングロッドキャップは別々に製造されるのが一般的であった。しかしながら、このような方法で製造されたコネクティングロッドでは、コネクティングロッド本体とコネクティングロッドキャップの嵌合性を高めるために、嵌合面を切削などによって精密加工する必要があり、また嵌合面がずれないようにするため、ノックピン加工を施すのが一般的である。こうした製造方法では、材料の歩留まりが低下したり、製造が煩雑となるといった問題があった。
そこで、コネクティングロッド本体とコネクティングロッドキャップを熱間鍛造によって一体的に成型し、クランクシャフトを挿入するための貫通孔やボルトを挿入するための穴等を加工した後、貫通孔部分が2つの略半円になるように、冷間加工によってコネクティングロッド本体とコネクティングロッドキャップに破断分離する方法が採用されている。このようにして得られたロッド本体とキャップは、クランクシャフトを挟んで、ロッド本体とキャップの破面同士を嵌合し、ボルトで締結して組み立てられ、コネクティングロッドとされる。こうした方法では、嵌合面となる破面を切削などによって精密加工することも、ノックピン加工を施す必要もなくなる。このようにして製造されるコネクティングロッドを、以下では破断分離型コネクティングロッドと呼ぶ。
例えば、特許文献1では、所定の組成の素材鋼をコンロッド形状に成型し、誘導電流を用いて920℃、10秒程度加熱し、焼戻しを施すことによって、軽量化及び疲労強度が向上された高強度コンロッドを製造できることが開示されている。
また、上記のような破断分離型コネクティングロッドには、良好な破断分離性が要求される。破断分離性は、例えば破断分離前後の貫通孔の寸法変化などによって評価され、寸法変化が小さい程、破断分離性が良好であると評価される。こうした特性を満足させるためには、鋼材の化学成分を調整することが一般的であるが、鋼材コストや生産コストの増加を招く。例えば、特許文献2には、コネクティングロッドの製造に際し、オーステナイト領域となる温度範囲で熱間鍛造を行えば、化学成分組成の制御によらず、成型の後にそのままの状態で焼入れを実施できることが開示されている。特許文献1によれば、製造工程を簡略化して製造コストを低減した、破断分離性を高めたコネクティングロッドを製造できると記載されている。
破断分離型コネクティングロッドは、ロッド本体とキャップが別々に製造される場合に比べれば、破面の嵌合性は良好になったが、更なる嵌合性の向上も要求されている。しかし、一般的に破断分離性の向上と、破面の嵌合性の向上を両立することは難しく、この二つを両立した技術は未だ提案されていなかった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は破断分離性が良好で且つ破面の嵌合性が良好な破断分離型コネクティングロッド及びこれに用いる成型部品を提供することにある。
上記課題を達成した本発明は、
質量%で、
C :0.1〜0.70%、
Si:0%超、1.5%以下、
Mn:0.01〜2.0%、
P :0%超、0.2%以下、
S :0%超、0.2%以下、
Cr:0.01〜2.0%をそれぞれ含有し、残部は鉄及び不可避的不純物であって、 金属組織のうち、焼戻しマルテンサイトが占める面積率が80%以上であり、
旧オーステナイト粒度番号が6.0以下である破断分離型コネクティングロッド用成型部品である。本発明は、該成型部品から得られた破断分離型コネクティングロッドも包含する。
質量%で、
C :0.1〜0.70%、
Si:0%超、1.5%以下、
Mn:0.01〜2.0%、
P :0%超、0.2%以下、
S :0%超、0.2%以下、
Cr:0.01〜2.0%をそれぞれ含有し、残部は鉄及び不可避的不純物であって、 金属組織のうち、焼戻しマルテンサイトが占める面積率が80%以上であり、
旧オーステナイト粒度番号が6.0以下である破断分離型コネクティングロッド用成型部品である。本発明は、該成型部品から得られた破断分離型コネクティングロッドも包含する。
本発明は更に、上記した破断分離型コネクティングロッド用成型部品の製造方法も包含し、該製造方法とは具体的に、
質量%で、
C :0.1〜0.70%、
Si:0%超、1.5%以下、
Mn:0.01〜2.0%、
P :0%超、0.2%以下、
S :0%超、0.2%以下、
Cr:0.01〜2.0%をそれぞれ含有し、残部は鉄及び不可避的不純物である鋼を、
熱間鍛造の後に再加熱し、焼入れ温度1100〜1300℃で焼入れを行い、
次いで焼戻しを行うことを特徴とする。本発明は、上記した成型部品の製造方法により破断分離型コネクティングロッド用成型部品を得、該成型部品を破断分離する破断分離型コネクティングロッドの製造方法も包含する。
質量%で、
C :0.1〜0.70%、
Si:0%超、1.5%以下、
Mn:0.01〜2.0%、
P :0%超、0.2%以下、
S :0%超、0.2%以下、
Cr:0.01〜2.0%をそれぞれ含有し、残部は鉄及び不可避的不純物である鋼を、
熱間鍛造の後に再加熱し、焼入れ温度1100〜1300℃で焼入れを行い、
次いで焼戻しを行うことを特徴とする。本発明は、上記した成型部品の製造方法により破断分離型コネクティングロッド用成型部品を得、該成型部品を破断分離する破断分離型コネクティングロッドの製造方法も包含する。
本発明の成型部品によれば、金属組織のうち、焼戻しマルテンサイトの割合を所定以上とし、且つ旧オーステナイト結晶粒度を所定以下としているため、破断分離性に優れ且つ破断分離後の嵌合性に優れている。
本発明者らが検討したところ、コネクティングロッドの破断分離時に組織の大部分を焼戻しマルテンサイトとして粒界脆化割れを起こさせると共に旧オーステナイト粒度を大きくすることで、破断分離性を維持した上で、破面のうねりが大きくなり嵌合性を向上できることが明らかとなった。
本発明の破断分離型コネクティングロッド用成型部品(以下、単に「成型部品」と呼ぶ)は、旧オーステナイト粒度番号が6.0以下である。旧オーステナイト粒の粒度番号が小さくなるほど、すなわち旧オーステナイト粒の粒径が大きくなるほど、粒界脆化割れを起こした際の破面のうねりが大きくなり、その結果破面の嵌合性が良好になる。また該粒度番号が小さくなると、焼入れ性が向上するため、焼戻しマルテンサイトの脆性が促進され破断分離性も向上する。破断分離性は、例えば、実施例で後述する通り破断分離前後の孔径の寸法変化(以下、分離時の歪みと呼ぶ)によって評価できる。粒度番号は、好ましくは5.5以下であり、更に好ましくは5.0以下である。粒度番号の下限は特に限定されないが、例えば0である。
また、本発明の成型部品では、焼戻しマルテンサイトの割合が面積率で80%以上である。このようにすることによって、コネクティングロッドの破断分離時に粒界脆化割れを起こさせることができる。焼戻しマルテンサイトの割合は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、上限は100%であっても良い。
次に、本発明の成型部品の化学組成について説明する。本明細書において、化学組成はいずれも質量%を意味する。
C:0.1〜0.70%
Cは、強度の確保と共に破断分離時の歪を小さくするのに必要な元素である。また、C量が少なければ、マルテンサイト変態開始温度が上昇し、鋼材の焼きが入りにくくなる。
こうした観点から、C量は0.1%以上とする必要がある。好ましい下限は0.2%以上であり、より好ましい下限は0.3%以上である。しかしながら、C量が過剰になると、被削性が劣化する。こうした観点から、C量は0.70%以下とする必要がある。好ましい上限は0.60%以下であり、より好ましい上限は0.55%以下である。
Cは、強度の確保と共に破断分離時の歪を小さくするのに必要な元素である。また、C量が少なければ、マルテンサイト変態開始温度が上昇し、鋼材の焼きが入りにくくなる。
こうした観点から、C量は0.1%以上とする必要がある。好ましい下限は0.2%以上であり、より好ましい下限は0.3%以上である。しかしながら、C量が過剰になると、被削性が劣化する。こうした観点から、C量は0.70%以下とする必要がある。好ましい上限は0.60%以下であり、より好ましい上限は0.55%以下である。
Si:0%超、1.5%以下
Siは、鋼溶製時の脱酸元素として有用であると共に、焼入れ性を増して強度を高めることで、耐力や疲労強度を向上させるのに有効な元素である。また、破断分離時に、真円度変化等で評価される変形を抑制し、破面の嵌合性を向上させるのにも有効である。これらの効果は、Si量が増加すればするほど大きくなり、これらの効果を十分発揮させるには、Si量は0.15%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.20%以上である。しかしながら、Si量が過剰になると、必要以上に硬さが増加して被削性が劣化するため、1.5%以下とする必要がある。好ましい上限は1.0%以下であり、より好ましい上限は0.5%以下である。
Siは、鋼溶製時の脱酸元素として有用であると共に、焼入れ性を増して強度を高めることで、耐力や疲労強度を向上させるのに有効な元素である。また、破断分離時に、真円度変化等で評価される変形を抑制し、破面の嵌合性を向上させるのにも有効である。これらの効果は、Si量が増加すればするほど大きくなり、これらの効果を十分発揮させるには、Si量は0.15%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.20%以上である。しかしながら、Si量が過剰になると、必要以上に硬さが増加して被削性が劣化するため、1.5%以下とする必要がある。好ましい上限は1.0%以下であり、より好ましい上限は0.5%以下である。
Mn:0.01〜2.0%
Mnは、鋼材の焼入れ性を向上させることで安定した鋼材の強度を確保することができる元素である。こうした効果を発揮させるためには、Mnは0.01%以上含有させる必要がある。Mn量は、好ましくは0.05%以上であり、より好ましくは0.1%以上である。しかしながら、Mn量が過剰になると、Mnがオーステナイト安定化元素であるため、調質後に残留オーステナイトが生成し、強度が却って低下する。こうした観点から、Mn量は2.0%以下とする必要がある。好ましい上限は1.5%以下であり、より好ましい上限は1.0%以下である。
Mnは、鋼材の焼入れ性を向上させることで安定した鋼材の強度を確保することができる元素である。こうした効果を発揮させるためには、Mnは0.01%以上含有させる必要がある。Mn量は、好ましくは0.05%以上であり、より好ましくは0.1%以上である。しかしながら、Mn量が過剰になると、Mnがオーステナイト安定化元素であるため、調質後に残留オーステナイトが生成し、強度が却って低下する。こうした観点から、Mn量は2.0%以下とする必要がある。好ましい上限は1.5%以下であり、より好ましい上限は1.0%以下である。
P:0%超、0.2%以下
Pは、破断分離時における鋼材の変形を抑制し、破面の嵌合性を向上させるのに有効な成分である。こうした効果は、その含有量が増加するにつれて増大する。その効果をより有効に発揮させるためには、Pは0.03%以上積極的に含有させてもよい。P量は、より好ましくは0.05%以上である。しかしながら、過剰なPは、連続鋳造時の鋳造欠陥を誘発する場合がある。こうした観点から、P量は0.2%以下とする必要がある。P量の好ましい上限は0.15%以下であり、より好ましい上限は0.08%以下である。
Pは、破断分離時における鋼材の変形を抑制し、破面の嵌合性を向上させるのに有効な成分である。こうした効果は、その含有量が増加するにつれて増大する。その効果をより有効に発揮させるためには、Pは0.03%以上積極的に含有させてもよい。P量は、より好ましくは0.05%以上である。しかしながら、過剰なPは、連続鋳造時の鋳造欠陥を誘発する場合がある。こうした観点から、P量は0.2%以下とする必要がある。P量の好ましい上限は0.15%以下であり、より好ましい上限は0.08%以下である。
S:0%超、0.2%以下
Sは、Mnと反応してMnSを生成し、鋼材の被削性を改善するのに有効な元素である。また前記MnSが、製造過程における圧延等で細長く伸びた形状になると、これが破断分離時の破面進展を阻害し、嵌合性を高める効果を発揮する。こうした効果は、その含有量が増加するにつれて増大する。その効果を有効に発揮させるために、Sを0.01%以上積極的に含有させてもよい。S量は、より好ましくは0.03%以上である。しかしながら、過剰なSは、前記MnSを過剰に生成し、熱間鍛造割れや疲労強度低下の原因となるので、S量は0.2%以下とする必要がある。S量の好ましい上限は0.15%以下であり、より好ましい上限は0.12%以下である。
Sは、Mnと反応してMnSを生成し、鋼材の被削性を改善するのに有効な元素である。また前記MnSが、製造過程における圧延等で細長く伸びた形状になると、これが破断分離時の破面進展を阻害し、嵌合性を高める効果を発揮する。こうした効果は、その含有量が増加するにつれて増大する。その効果を有効に発揮させるために、Sを0.01%以上積極的に含有させてもよい。S量は、より好ましくは0.03%以上である。しかしながら、過剰なSは、前記MnSを過剰に生成し、熱間鍛造割れや疲労強度低下の原因となるので、S量は0.2%以下とする必要がある。S量の好ましい上限は0.15%以下であり、より好ましい上限は0.12%以下である。
Cr:0.01〜2.0%
Crは、鋼材の焼入れ性を向上させることで安定した鋼材の強度を得ることができる元素である。こうした効果を発揮させるためには、Crを0.01%以上含有させる必要がある。Cr量は、好ましくは、0.1%以上であり、より好ましくは0.3%以上である。しかしながら、Cr量が過剰になると、Crは低温焼戻し脆化を抑制するため、良好な破断分離性が得られない。こうした観点から、Cr量は2.0%以下とする必要がある。
好ましい上限は1.5%以下であり、より好ましい上限は1.1%以下である。
Crは、鋼材の焼入れ性を向上させることで安定した鋼材の強度を得ることができる元素である。こうした効果を発揮させるためには、Crを0.01%以上含有させる必要がある。Cr量は、好ましくは、0.1%以上であり、より好ましくは0.3%以上である。しかしながら、Cr量が過剰になると、Crは低温焼戻し脆化を抑制するため、良好な破断分離性が得られない。こうした観点から、Cr量は2.0%以下とする必要がある。
好ましい上限は1.5%以下であり、より好ましい上限は1.1%以下である。
本発明の成型部品の基本成分は上記の通りであり、残部は実質的に鉄である。但し、原材料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる不可避的不純物が鋼中に含まれることは当然に許容され、本発明の作用を阻害しない範囲で他の成分を含んでも良い。
本発明の成型部品を得るためには、鋼を溶製し、鋳造、分塊圧延、熱間圧延し、得られた圧延材を鍛造するという通常の製造方法を経た後に、再加熱し、所定温度で焼入れし、更に焼戻しを行う必要がある。
前述の特許文献2のように、調質型の鍛造部材で一般的に行われているような、鍛造直後に再加熱を行わずに焼入れを行う方法では、旧オーステナイト結晶粒は鍛圧による加工歪により細粒化されており、結晶粒を粗大化できない。本発明は再加熱し、焼入れ温度を1100〜1300℃とする必要がある。焼入れ温度は、結晶粒を粗大化させるため温度が高い方が良く、1100℃以上とすることで、成型部品の旧オーステナイト結晶粒度を6.0以下とできる。焼入れ温度は、好ましくは1150℃以上である。一方、焼入れ温度が高すぎると、バーニング、すなわち溶融が生じるため1300℃以下とする。なお、鋼材を加熱する差異は、鋼材全体を均一な温度に制御する目的で、焼入れ温度にて1〜3時間程度保持する均熱処理を行うことが好ましい。焼入れは、水焼入れであっても良いし、油焼入れであっても良い。
焼入れ後は、焼戻しを行う。焼戻しを行わないと、焼戻しマルテンサイトを確保できないため、コネクティングロッドの破断分離時に粒界脆化割れが生じず、破面の嵌合性が悪化する。焼戻しは低温脆化温度で行えば、さらに粒界脆化割れが促進され、好ましい。焼戻し温度の下限は200℃以上が好ましく、より好ましくは250℃以上である。焼戻し温度の上限は、450℃以下が好ましく、より好ましくは400℃以下である。焼戻し時間は特に限定されないが、例えば2〜5時間程度である。
なお、熱間圧延の条件は特に限定されないが、例えば開始温度を1000〜1100℃程度、終了温度を850〜950℃程度とすれば良い。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
下記表1に示す化学組成の鋼種A〜Dを、通常の溶製方法に従って溶製し、鋳造、分塊した後、開始温度1050℃、終了温度900℃にて熱間圧延を行い、直径50mmの棒鋼を得た。得られた棒鋼を長手方向に対して垂直に切断し、長さ90mmの棒鋼とした。
この棒鋼を1200℃まで加熱してから熱間鍛造により、該棒鋼の長さ方向に対して垂直方向に圧縮を加え、縦100mm、横70mm、厚さ25mmの板状に加工し、放冷した。
なお、下記表1に示す鋼種Dは、C量が多い比較鋼であり、DIN(Deutsche Industrie Normen:ドイツ工業規格)のC70S6に相当する鋼である。
この棒鋼を1200℃まで加熱してから熱間鍛造により、該棒鋼の長さ方向に対して垂直方向に圧縮を加え、縦100mm、横70mm、厚さ25mmの板状に加工し、放冷した。
なお、下記表1に示す鋼種Dは、C量が多い比較鋼であり、DIN(Deutsche Industrie Normen:ドイツ工業規格)のC70S6に相当する鋼である。
熱間鍛造後の各板状部材に対して、表2に示す焼入れ温度まで加熱し、その温度で2時間均熱処理を施した後、常温の水で焼入れを行い、さらに表2に示す焼戻し温度で3時間焼戻し処理し、調質部材を製造した。なお、表2中、焼戻し温度「0」とは、焼戻しを行っていないことを意味する。
このようにして得られた調質部材に対し、下記の(1)〜(3)の方法によって組織、破断分離時の分離歪み、及び嵌合性をそれぞれ評価した。
(1)組織の評価方法
前記の調質部材の長手方向、すなわち上記した縦方向の中央部且つ厚さ方向の中央部であって、幅方向、すなわち上記した横方向の全長に対して1/4部を満たす部位が観察できるように、縦方向に垂直な断面から試験片を採取した。試験片の採取位置を図1に示す。この試験片の表面を鏡面研磨した後、組織観察用はナイタールで腐食させ、旧オーステナイト粒度測定用は塩酸+ピクリン酸系の腐食液で腐食させて、それぞれの試験片を用意した。そして、光学顕微鏡を用い、1視野の写真サイズを9cm×7cmとして400倍で撮影し、得られた写真から金属組織の判定と、JIS G0551に従った旧オーステナイト粒度測定を行った。下記表2では、光学顕微鏡にて観察されるマルテンサイトの組織分率を示しており、製造工程にて焼戻しを行った例の組織を焼戻しマルテンサイトと判断し、製造工程にて焼戻しを行わなかった組織を焼入マルテンサイトと判断した。
前記の調質部材の長手方向、すなわち上記した縦方向の中央部且つ厚さ方向の中央部であって、幅方向、すなわち上記した横方向の全長に対して1/4部を満たす部位が観察できるように、縦方向に垂直な断面から試験片を採取した。試験片の採取位置を図1に示す。この試験片の表面を鏡面研磨した後、組織観察用はナイタールで腐食させ、旧オーステナイト粒度測定用は塩酸+ピクリン酸系の腐食液で腐食させて、それぞれの試験片を用意した。そして、光学顕微鏡を用い、1視野の写真サイズを9cm×7cmとして400倍で撮影し、得られた写真から金属組織の判定と、JIS G0551に従った旧オーステナイト粒度測定を行った。下記表2では、光学顕微鏡にて観察されるマルテンサイトの組織分率を示しており、製造工程にて焼戻しを行った例の組織を焼戻しマルテンサイトと判断し、製造工程にて焼戻しを行わなかった組織を焼入マルテンサイトと判断した。
(2)分離歪みの評価方法
前記で得られた各調質部材を切削し、図2に示す試験片に加工した。図2(a)は破断分離試験に用いる試験片の概略上面図であり、図2(b)は前記試験片の概略側面図である。試験片は、65mm×65mm×厚さ22mmの板状で、中央には直径:43mmの円筒状の孔が抜き取られている。中央の孔の端部2箇所には、曲率R:0.2mm、深さ:1.0mm、開口角60°のノッチaが設けられている。また、試験片には圧延方向cに沿って、直径:8.3mmのボルト孔bが2箇所に設けられている。
図3は、破断分離試験の方法を説明するための装置概略図である。図3に示すように、試験片6の中央の孔にホルダー3a、3bを通して、1600tプレス試験機にセットし、プレス速度:270mm/秒で試験片の破断分離を行なった。尚、図3中、2は支持台である。試験片の破断分離は、プレス1で行なった。試験片6の破断速度は、くさび4および5のくさび角が30°であるので、約150mm/秒と計算される。
そして図4に示すように、破断分離前後、即ち試験前後の孔径差(L2−L1)を寸法変化として測定し、この寸法変化が155μm以下のものを破断分離性に優れると評価した。尚、寸法変化155μm以下の基準は、DINのC70S6のものと同等である。
前記で得られた各調質部材を切削し、図2に示す試験片に加工した。図2(a)は破断分離試験に用いる試験片の概略上面図であり、図2(b)は前記試験片の概略側面図である。試験片は、65mm×65mm×厚さ22mmの板状で、中央には直径:43mmの円筒状の孔が抜き取られている。中央の孔の端部2箇所には、曲率R:0.2mm、深さ:1.0mm、開口角60°のノッチaが設けられている。また、試験片には圧延方向cに沿って、直径:8.3mmのボルト孔bが2箇所に設けられている。
図3は、破断分離試験の方法を説明するための装置概略図である。図3に示すように、試験片6の中央の孔にホルダー3a、3bを通して、1600tプレス試験機にセットし、プレス速度:270mm/秒で試験片の破断分離を行なった。尚、図3中、2は支持台である。試験片の破断分離は、プレス1で行なった。試験片6の破断速度は、くさび4および5のくさび角が30°であるので、約150mm/秒と計算される。
そして図4に示すように、破断分離前後、即ち試験前後の孔径差(L2−L1)を寸法変化として測定し、この寸法変化が155μm以下のものを破断分離性に優れると評価した。尚、寸法変化155μm以下の基準は、DINのC70S6のものと同等である。
(3)嵌合性の評価方法
嵌合性は、破断分離後の破面の形状により評価を行なった。破面の形状については、図5に示す通り、粗さ測定器にて、破面の側面7とボルト孔8の端9の中央ライン10のノッチaの底11を起点、該中央ライン10の破面終端12を終点として、破断分割後の試験片の中央の孔の径方向に探針を操作し、破面上のうねり形状を評価した。
このうねり形状は、JIS B 0601:2001に基づき、最大高さうねりWzを求めて評価した。最大高さうねりWzの評価条件は、基準長さ:2.5mm、区間数:3、カットオフ値λf:25.0mm、カットオフ値λc:0.25mm、フィルタ種別:Gaussianとした。
上記測定を、破断分離後のキャップ側の試験片における二つの破面について、各破面のボルト穴を挟んだ両側の二つの測定部で行い、合計4か所の平均値をうねりWzの値とした。そして、うねりWzが280μm以上のときに、合格と評価した。この合格基準は、DINのC70S6のものと同等である。
嵌合性は、破断分離後の破面の形状により評価を行なった。破面の形状については、図5に示す通り、粗さ測定器にて、破面の側面7とボルト孔8の端9の中央ライン10のノッチaの底11を起点、該中央ライン10の破面終端12を終点として、破断分割後の試験片の中央の孔の径方向に探針を操作し、破面上のうねり形状を評価した。
このうねり形状は、JIS B 0601:2001に基づき、最大高さうねりWzを求めて評価した。最大高さうねりWzの評価条件は、基準長さ:2.5mm、区間数:3、カットオフ値λf:25.0mm、カットオフ値λc:0.25mm、フィルタ種別:Gaussianとした。
上記測定を、破断分離後のキャップ側の試験片における二つの破面について、各破面のボルト穴を挟んだ両側の二つの測定部で行い、合計4か所の平均値をうねりWzの値とした。そして、うねりWzが280μm以上のときに、合格と評価した。この合格基準は、DINのC70S6のものと同等である。
結果を表2に示す。
本発明の要件を満たすNo.10〜12、21〜23、25〜27、33〜35、37〜39では、破断分離時の寸法変化が小さく、良好な破断分離性を示すとともに、うねりが大きく、破面の嵌合性に優れていた。
一方、No.1、5、13、16、28は焼入れ温度が低い上に、焼戻しを行っていないため、旧オーステナイト粒径が微細になるとともに、焼入れマルテンサイト組織であるため、うねりが小さかった。
No.2〜4、6〜8、14、15、17〜19、29〜31は、焼入れ温度が低いため、旧オーステナイト粒径が微細になり、うねりが小さかった。
No.9、20、24、32、36は、焼入れ温度は適切であったが、焼戻しを行っていないため、焼入れマルテンサイト組織であり、うねりが小さかった。
No.2〜4、6〜8、14、15、17〜19、29〜31は、焼入れ温度が低いため、旧オーステナイト粒径が微細になり、うねりが小さかった。
No.9、20、24、32、36は、焼入れ温度は適切であったが、焼戻しを行っていないため、焼入れマルテンサイト組織であり、うねりが小さかった。
また、上記表2に示した結果を図6にグラフで示す。本発明によれば、従来両立が難しいとされていた破断分離性と破面の嵌合性を両立することができたことが図6より明らかである。
1 プレス
2 支持台
3a、3b ホルダー
4、5 くさび
6 試験片
2 支持台
3a、3b ホルダー
4、5 くさび
6 試験片
Claims (4)
- 前記質量%で、
C :0.1〜0.70%、
Si:0%超、1.5%以下、
Mn:0.01〜2.0%、
P :0%超、0.2%以下、
S :0%超、0.2%以下、
Cr:0.01〜2.0%をそれぞれ含有し、残部は鉄及び不可避的不純物であって、 金属組織のうち、焼戻しマルテンサイトが占める面積率が80%以上であり、
旧オーステナイト粒度番号が6.0以下である請求項1に記載の破断分離型コネクティングロッド用成型部品。 - 請求項1に記載の成型部品から得られた破断分離型コネクティングロッド。
- 請求項1に記載の破断分離型コネクティングロッド用成型部品の製造方法であって、
質量%で、
C :0.1〜0.70%、
Si:0%超、1.5%以下、
Mn:0.01〜2.0%、
P :0%超、0.2%以下、
S :0%超、0.2%以下、
Cr:0.01〜2.0%をそれぞれ含有し、残部は鉄及び不可避的不純物である鋼を、
熱間鍛造の後に再加熱し、焼入れ温度1100〜1300℃で焼入れを行い、
次いで焼戻しを行う破断分離型コネクティングロッド用成型部品の製造方法。 - 請求項3に記載の製造方法により破断分離型コネクティングロッド用成型部品を得、該成型部品を破断分離する破断分離型コネクティングロッドの製造方法。
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