JP2018199203A - ロボットおよび歯車装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】歯車装置の長寿命化を図ることができるロボットおよび歯車装置を提供すること。【解決手段】内歯歯車と、前記内歯歯車に部分的に噛み合う可撓性の外歯歯車と、前記外歯歯車の内周面に接触し、前記内歯歯車と前記外歯歯車との噛み合い位置を周方向に移動させる波動発生器と、前記内歯歯車と前記外歯歯車との間および前記外歯歯車と前記波動発生器との間のうちの少なくとも一方である潤滑対象部に配置されている潤滑剤と、を有し、前記潤滑剤は、基油と、増ちょう剤と、有機モリブデン化合物と、を含み、かつ、離油度が4質量%以上13.8質量%以下の範囲内にあることを特徴とする歯車装置。【選択図】図2

Description

本発明は、ロボットおよび歯車装置に関するものである。
少なくとも1つのアームを含んで構成されたロボットアームを備えるロボットでは、例えば、ロボットアームの関節部をモーターにより駆動するが、一般に、そのモーターからの駆動力の回転を減速機(歯車装置)により減速することが行われている。
このような減速機として、例えば、特許文献1に記載されているような減速機が知られている。特許文献1に記載の減速機は、サーキュラ・スプライン、フレクスプライン、ウェーブ・ジェネレータから構成されている。この減速機では、サーキュラ・スプラインを固定し、ウェーブ・ジェネレータを回すとフレクスプラインは弾性変形し、サーキュラ・スプラインとのかみ合い位置が順次移動して行く。ここで、ウェーブ・ジェネレータが1回転したときフレクスプラインは、サーキュラ・スプラインより歯数が2枚少ないのでその分だけ、ウェーブ・ジェネレータの回転方向とは逆の方向に移動する。そして、一般には、その動きを出力として取り出す。
また、特許文献1に記載の減速機は、脂肪族炭化水素油とポリメタクリレートを併用した基油と、増ちょう剤と、を含むグリースをウェーブ・ジェネレータとフレクスプラインの間の潤滑に用いる。特許文献1には、このグリースに、二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑剤を添加することが開示されている。
特開平3−179094号公報
しかし、特許文献1に記載の減速機は、グリースの潤滑性能が十分でなく、例えばロボットに用いた場合に、可撓性歯車の破損が早期に生じやすいという課題がある。
ここで、潤滑剤の潤滑性能を高める手段の1つとして、潤滑剤に有機モリブデン化合物を添加することが挙げられる。しかし、一般に、有機モリブデン化合物の粒径は約10μm程度と大きいため、単に有機モリブデン化合物を用いると、有機モリブデン化合物が増ちょう剤から基油がしみ出すことを阻害し、潤滑剤の潤滑性能を十分に高めることが難しい。
本発明の目的は、歯車装置の長寿命化を図ることができるロボットおよび歯車装置を提供することにある。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例または形態として実現することが可能である。
本適用例のロボットは、第1部材と、
前記第1部材に対して回動可能に設けられている第2部材と、
前記第1部材および前記第2部材の一方側から他方側へ駆動力を伝達する歯車装置と、を備え、
前記歯車装置は、
内歯歯車と、
前記内歯歯車に部分的に噛み合う可撓性の外歯歯車と、
前記外歯歯車の内周面に接触し、前記内歯歯車と前記外歯歯車との噛み合い位置を周方向に移動させる波動発生器と、
前記内歯歯車と前記外歯歯車との間および前記外歯歯車と前記波動発生器との間のうちの少なくとも一方に配置されている潤滑剤と、を有し、
前記内歯歯車、前記外歯歯車および前記波動発生器のうちの一つが前記第1部材に対して接続され、他の一つが前記第2部材に対して接続され、
前記潤滑剤は、基油と、増ちょう剤と、有機モリブデン化合物と、を含み、かつ、離油度が4質量%以上13.8質量%以下の範囲内にあることを特徴とする。
このようなロボットによれば、潤滑対象部である内歯歯車と外歯歯車との間、および潤滑対象部である外歯歯車と波動発生器との間のうちの、少なくとも一方に配置されている潤滑剤が有機モリブデン化合物を含んでいるため、潤滑対象部(特に内歯歯車と外歯歯車との噛み合い部)における摩擦を効果的に低減することができる。その上で、当該潤滑剤の離油度が4質量%以上13.8質量%以下の範囲内にあることにより、当該潤滑剤が有機モリブデン化合物を含んでいても、増ちょう剤からの基油のしみ出しが阻害され難くなり、潤滑対象部(特に外歯歯車と波動発生器との接触部)へ安定的に基油を供給することができる。このように、当該潤滑剤が有機モリブデン化合物による優れた摩擦低減効果を発揮させつつ、増ちょう剤からの基油のしみ出しによって潤滑対象部へ安定的に基油を供給することができ、その結果、歯車装置の長寿命化を図ることができる。
本適用例のロボットでは、前記潤滑剤のちょう度は、325以上365以下の範囲内にあることが好ましい。
これにより、潤滑対象部に潤滑剤を留めやすくすることができる。また、潤滑剤の離油度を前述した範囲内とすることが容易になるという利点もある。
本適用例のロボットでは、前記潤滑剤の滴点は、248℃以上270℃以下の範囲内にあることが好ましい。
これにより、潤滑剤のちょう度を最適化しつつ、潤滑剤の耐熱性を優れたものとすることができる。
本適用例のロボットでは、前記増ちょう剤は、リチウム複合石けんを含むことが好ましい。
これにより、潤滑剤の滴点を高くすることができ、潤滑剤の耐熱性を優れたものとすることができる。
本適用例のロボットでは、前記内歯歯車はクロムモリブデン鋼を材料としていることが好ましい。
これにより、内歯歯車は良好な疲労強度を得ることができ、長寿命化の図れた歯車装置を実現することができる。
本適用例のロボットでは、前記外歯歯車はニッケルクロムモリブデン鋼を材料としていることが好ましい。
これにより、可撓性歯車の歯の摩耗を低減することができ、更に長寿命化の図れた歯車装置を実現することができる。
本適用例の歯車装置は、内歯歯車と、
前記内歯歯車に部分的に噛み合う可撓性の外歯歯車と、
前記外歯歯車の内周面に接触し、前記内歯歯車と前記外歯歯車との噛み合い位置を周方向に移動させる波動発生器と、
前記内歯歯車と前記外歯歯車との間および前記外歯歯車と前記波動発生器との間のうちの少なくとも一方に配置されている潤滑剤と、を有し、
前記潤滑剤は、基油と、増ちょう剤と、有機モリブデン化合物と、を含み、かつ、離油度が4質量%以上13.8質量%以下の範囲内にあることを特徴とする。
このような歯車装置によれば、潤滑対象部である内歯歯車と外歯歯車との間、および潤滑対象部である外歯歯車と波動発生器との間のうちの、少なくとも一方に配置されている潤滑剤が有機モリブデン化合物を含んでいるため、潤滑対象部(特に内歯歯車と外歯歯車との噛み合い部)における摩擦を効果的に低減することができる。その上で、当該潤滑剤の離油度が4質量%以上13.8質量%以下の範囲内にあることにより、当該潤滑剤が有機モリブデン化合物を含んでいても、増ちょう剤からの基油のしみ出しが阻害され難くなり、潤滑対象部(特に外歯歯車と波動発生器との接触部)へ安定的に基油を供給することができる。このように、当該潤滑剤が有機モリブデン化合物による優れた摩擦低減効果を発揮させつつ、増ちょう剤からのしみ出しによって潤滑対象部へ安定的に基油を供給することができ、その結果、歯車装置の長寿命化を図ることができる。
本適用例の歯車装置は、内歯歯車と、
前記内歯歯車に内接噛合しつつ揺動回転する外歯歯車と、
前記内歯歯車と前記外歯歯車との間に配置されている潤滑剤と、を有し、
前記潤滑剤は、基油と、増ちょう剤と、有機モリブデン化合物と、を含み、かつ、離油度が4質量%以上13.8質量%以下の範囲内にあることを特徴とする。
このような歯車装置によれば、内歯歯車と外歯歯車との間である潤滑対象部に配置されている潤滑剤が有機モリブデン化合物を含んでいるため、潤滑対象部における摩擦を効果的に低減することができる。その上で、当該潤滑剤の離油度が4質量%以上13.8質量%以下の範囲内にあることにより、当該潤滑剤が有機モリブデン化合物を含んでいても、増ちょう剤からの基油のしみ出しが阻害され難くなり、潤滑対象部へ安定的に基油を供給することができる。このように、当該潤滑剤が有機モリブデン化合物による優れた摩擦低減効果を発揮させつつ、増ちょう剤からのしみ出しによって潤滑対象部へ安定的に基油を供給することができ、その結果、歯車装置の長寿命化を図ることができる。
本発明の実施形態に係るロボットの概略構成を示す側面図である。 本発明の第1実施形態に係る歯車装置を示す縦断面図である。 図2に示す歯車装置の正面図である。 本発明の第2実施形態に係る歯車装置を示す縦断面図である。 本発明の第3実施形態に係る歯車装置を示す分解斜視図である。 図5に示す歯車装置の縦断面図である。 潤滑剤の離油度と歯車装置の寿命との関係を示すグラフである。 実施例1に係る潤滑剤に含まれる有機モリブデン化合物の状態を示す拡大写真である。 比較例3に係る潤滑剤に含まれる有機モリブデン化合物の状態を示す拡大写真である。
以下、本発明のロボットおよび歯車装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
1.ロボット
まず、本発明のロボットの実施形態について簡単に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るロボットの概略構成を示す側面図である。なお、以下では、説明の便宜上、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、図1中の基台側を「基端側」、その反対側(エンドエフェクター側)を「先端側」と言う。また、図1の上下方向を「鉛直方向」とし、左右方向を「水平方向」とする。
図1に示すロボット100は、例えば、精密機器やこれを構成する部品(対象物)の給材、除材、搬送および組立等の作業に用いられるロボットである。このロボット100は、図1に示すように、基台110と、第1アーム120と、第2アーム130と、作業ヘッド140と、エンドエフェクター150と、配線引き回し部160と、を有している。以下、ロボット100の各部を順次簡単に説明する。
基台110は、例えば、図示しない床面にボルト等によって固定されている。基台110の内部には、ロボット100を統括制御する制御装置190が設置されている。また、基台110には、基台110に対して鉛直方向に沿う第1軸J1(回動軸)まわりに回動可能に第1アーム120が連結している。
ここで、基台110内には、第1アーム120を回動させる駆動力を発生させるサーボモーター等の第1モーターであるモーター170と、モーター170の駆動力の回転を減速する第1減速機である歯車装置10と、を有する駆動源が設置されている。歯車装置10の入力軸は、モーター170の回転軸に連結され、歯車装置10の出力軸は、第1アーム120に連結されている。そのため、モーター170が駆動し、その駆動力が歯車装置10を介して第1アーム120に伝達されると、第1アーム120が基台110に対して第1軸J1まわりに水平面内で回動する。
第1アーム120の先端部には、第1アーム120に対して鉛直方向に沿う第2軸J2(回動軸)まわりに回動可能に第2アーム130が連結している。第2アーム130内には、図示しないが、第2アーム130を回動させる駆動力を発生させる第2モーターと、第2モーターの駆動力の回転を減速する第2減速機とを有する駆動源が設置されている。そして、第2モーターの駆動力が第2減速機を介して第2アーム130に伝達されることにより、第2アーム130が第1アーム120に対して第2軸J2まわりに水平面内で回動する。
第2アーム130の先端部には、作業ヘッド140が配置されている。作業ヘッド140は、第2アーム130の先端部に同軸的に配置されたスプラインナットおよびボールネジナット(ともに図示せず)に挿通されたスプラインシャフト141を有している。スプラインシャフト141は、第2アーム130に対して、その軸J3まわりに回転可能であり、かつ、上下方向に移動(昇降)可能となっている。
第2アーム130内には、図示しないが、回転モーターおよび昇降モーターが配置されている。回転モーターの駆動力は、図示しない駆動力伝達機構によってスプラインナットに伝達され、スプラインナットが正逆回転すると、スプラインシャフト141が鉛直方向に沿う軸J3まわりに正逆回転する。
一方、昇降モーターの駆動力は、図示しない駆動力伝達機構によってボールネジナットに伝達され、ボールネジナットが正逆回転すると、スプラインシャフト141が上下に移動する。
スプラインシャフト141の先端部(下端部)には、エンドエフェクター150が連結されている。エンドエフェクター150としては、特に限定されず、例えば、被搬送物を把持するもの、被加工物を加工するもの等が挙げられる。
第2アーム130内に配置された各電子部品(例えば、第2モーター、回転モーター、昇降モーター等)に接続される複数の配線は、第2アーム130と基台110とを連結する管状の配線引き回し部160内を通って基台110内まで引き回されている。さらに、かかる複数の配線は、基台110内でまとめられることによって、モーター170および図示しないエンコーダーに接続される配線とともに、基台110内に設置された制御装置190まで引き回される。
以上のように、ロボット100は、第1部材である基台110と、基台110に対して回動可能に設けられている第2部材である第1アーム120と、基台110および第1アーム120の一方側から他方側へ駆動力を伝達する歯車装置10と、を備える。
なお、第1アーム120および第2アーム130をまとめて「第2部材」と捉えてもよい。また、「第2部材」が、第1アーム120および第2アーム130に加え、さらに、作業ヘッド140およびエンドエフェクター150を含んでいてもよい。
また、本実施形態では、第1減速機が歯車装置10で構成されているが、第2減速機が歯車装置10で構成されていてもよく、また、第1減速機および第2減速機の双方が歯車装置10で構成されていてもよい。第2減速機が歯車装置10で構成されている場合、第1アーム120を「第1部材」と捉え、第2アーム130を「第2部材」と捉えればよい。また、歯車装置10に代えて、後述する歯車装置10Bまたは200を用いてもよい。
また、本実施形態では、モーター170および歯車装置10は基台110に設けられているが、モーター170および歯車装置10は第1アーム120に設けられていてもよい。この場合、歯車装置10の出力軸を基台110に連結すればよい。
2.歯車装置
以下、本発明の歯車装置の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図2は、本発明の第1実施形態に係る歯車装置を示す縦断面図である。図3は、図2に示す歯車装置の正面図である。なお、各図では、説明の便宜上、必要に応じて各部の寸法を適宜誇張して図示しており、また、各部間の寸法比は実際の寸法比とは必ずしも一致しない。
図2に示す歯車装置10は、波動歯車装置であり、例えば減速機として用いられる。この歯車装置10は、歯車装置本体1と、歯車装置本体1を収納しているケース5と、を有し、これらが一体化されている。ここで、歯車装置10のケース5内には、潤滑剤Gが配置されている。以下、歯車装置10の各部を説明する。なお、ケース5は、必要に応じて設ければよく、省略してもよい。
(歯車装置本体)
歯車装置本体1は、内歯歯車である剛性歯車2と、剛性歯車2の内側に配置されているカップ型の外歯歯車である可撓性歯車3と、可撓性歯車3の内側に配置されている波動発生器4と、を有している。
本実施形態では、剛性歯車2が前述したロボット100の基台110(第1部材)にケース5を介して固定(接続)され、可撓性歯車3が前述したロボット100の第1アーム120(第2部材)に接続され、波動発生器4が前述したロボット100の基台110に配置されているモーター170の回転軸に接続されている。
モーター170の回転軸が回転する(すなわち駆動力が発生する)と、波動発生器4はモーター170の回転軸と同じ回転速度で回転する。そして、剛性歯車2および可撓性歯車3は、互いに歯数が異なるため、互いの噛み合い位置が周方向に移動しながら軸線aまわりに相対的に回転する。本実施形態では剛性歯車2の歯数の方が可撓性歯車3の歯数より多いため、モーター170の回転軸の回転速度よりも低い回転速度で可撓性歯車3を回転させることができる。すなわち、波動発生器4を入力軸側、可撓性歯車3を出力軸側とする減速機を実現することができる。
なお、ケース5の形態によっては、可撓性歯車3を基台110に固定(接続)し、剛性歯車2を第1アーム120に接続しても、歯車装置10を減速機として用いることができる。また、可撓性歯車3にモーター170の回転軸を接続しても、歯車装置10を減速機として用いることができ、この場合、波動発生器4を基台110に固定(接続)し、剛性歯車2を第1アーム120に接続すればよい。また、歯車装置10を増速機として用いる場合(モーター170の回転軸の回転速度よりも高い回転速度で可撓性歯車3を回転させる場合)、前述した入力側と出力側との関係を反対にすればよい。
図2および図3に示すように、剛性歯車2は、径方向に実質的に撓まない剛体で構成された歯車であって、内歯23を有するリング状の内歯歯車である。本実施形態では、剛性歯車2は平歯車である。すなわち、内歯23は、軸線aに対して平行な歯スジを有する。なお、内歯23の歯スジは、軸線aに対して傾斜していてもよい。すなわち、剛性歯車2は、はすば歯車またはやまば歯車であってもよい。
図2および図3に示すように、可撓性歯車3は、剛性歯車2の内側に挿通されている。この可撓性歯車3は、径方向に撓み変形可能な可撓性を有する歯車であって、剛性歯車2の内歯23に噛み合う外歯33(歯)を有する外歯歯車である。また、可撓性歯車3の歯数は、剛性歯車2の歯数よりも少ない。このように可撓性歯車3および剛性歯車2の歯数が互いに異なることにより、減速機を実現することができる。
本実施形態では、可撓性歯車3は、軸線a方向での一端(図2中右側の端部)が開口した開口部36を有するカップ状をなし、その開口部36から他端に向かって外歯33が形成されている。ここで、可撓性歯車3は、軸線aまわりの筒状(より具体的には円筒状)の胴部31(筒部)と、胴部31の軸線a方向での他端部に接続されている底部32と、を有する。これにより、胴部31の底部32に比べ開口部36の端部を径方向に撓み易くなるので、剛性歯車2に対する可撓性歯車3の良好な撓み噛み合いを実現することができる。さらに、軸62(例えば出力軸)が接続されている底部32の剛性を高めることができる。このようなことから歯車装置10は、バックラッシュが非常に小さく、反転を繰り返す用途に適していて、また同時噛み合い歯数の比率が大きいために1枚の歯にかかる力が小さくなり高トルク容量を得ることもできる。そのような過酷な用途に使うことが可能であるため、潤滑剤には高い潤滑性能が求められている。
図2および図3に示すように、波動発生器4は、可撓性歯車3の内側に配置され、軸線aまわりに回転可能である。そして、波動発生器4は、可撓性歯車3の開口部36の横断面を長軸Laおよび短軸Lbとする楕円形または長円形に変形させて、外歯33を剛性歯車2の内歯23に噛み合わせる。ここで、可撓性歯車3および剛性歯車2は、同一の軸線aまわりに回転可能に互いに内外で噛み合わされることとなる。
本実施形態では、波動発生器4は、カム41と、カム41の外周に装着されている軸受42と、を有している。カム41は、軸線aまわりに回転する軸部411と、軸部411の一端部から外側に突出しているカム部412と、を有している。
軸部411には、軸61(例えば入力軸)が接続されている。カム部412の外周面は、軸線aに沿った方向から見たときに、楕円形または長円形をなしている。軸受42は、可撓性の内輪421および外輪423と、これらの間に配置されている複数のボール422と、を有している。ここで、内輪421は、カム41のカム部412の外周面に嵌め込まれ、カム部412の外周面に沿って楕円形または長円形に弾性変形している。それに伴って、外輪423も楕円形または長円形に弾性変形している。また、内輪421の外周面および外輪423の内周面は、それぞれ、複数のボール422を周方向に沿って案内させつつ転動させる軌道面を有している。また、複数のボール422は、互いの周方向での間隔を一定に保つように図示しない保持器により保持されている。なお、軸受42内には、図示しないグリースが配置されている。このグリースは、後述する潤滑剤Gと同じであっても異なっていてもよい。
このような波動発生器4は、カム41の軸線aまわりの回転に伴って、カム部412の向きが変わり、それに伴って、外輪423の外周面も変形し、剛性歯車2および可撓性歯車3の互いの噛み合い位置を周方向に移動させる。
また、剛性歯車2、可撓性歯車3および波動発生器4は、それぞれ、金属材料で構成されていることが好ましく、特に、機械的特性および加工性に優れ、かつ、比較的安価であることから、鉄系材料を用いることが好ましい。かかる鉄系材料としては、特に限定されないが、例えば、鋳鉄、ニッケルクロムモリブデン鋼、クロムモリブデン鋼(SCM)、マルエージング鋼および析出硬化型ステンレス鋼のうちのいずれか1つであることが好ましい。特に剛性歯車2にクロムモリブデン鋼(例えばSCM435)を用いると、例えば球状黒鉛鋳鉄(ダクタイル鋳鉄)と比べて低い硬度であっても良好な疲労強度を有しているので、歯車装置10の長寿命化を図ることができる。さらに可撓性歯車3にはニッケルクロムモリブデン鋼(例えばSNCM439)を用いると、クロムモリブデン鋼を用いた剛性歯車2よりも硬度を高くすることができるので、可撓性歯車3の歯の摩耗を低減することができ、歯車装置10の長寿命化を更に図ることができる。なお、剛性歯車2および波動発生器4は、それぞれ、実質的な剛体であるため、セラミックス材料等で構成することも可能であるが、可撓性歯車3との強度のバランスから、金属材料を用いることが好ましい。これらの部材の強度差が大きすぎると、強度の低い側の部材が極端に摩耗しやすくなり、その結果、歯車装置10の寿命が短くなってしまう。
(ケース)
図2に示すケース5は、軸受13を介して軸61(例えば入力軸)を支持している略板状の蓋体11と、軸受14を介して軸62(例えば出力軸)を支持しているカップ状の本体12と、を有する。ここで、蓋体11と本体12とは連結(固定)されて空間を構成しており、その空間には、前述した歯車装置本体1が収納されている。また、蓋体11および本体12の少なくとも一方には、前述した歯車装置本体1の剛性歯車2が例えばネジ止め等により固定されている。
蓋体11の内壁面111は、可撓性歯車3の開口部36を覆うように軸線aに垂直な方向に拡がる形状をなしている。また、本体12の内壁面121は、可撓性歯車3の外周面および底面に沿った形状をなしている。このようなケース5は、前述したロボット100の基台110に固定されている。ここで、蓋体11は、基台110と別体であって、例えばネジ止め等により基台110に固定されていてもよいし、基台110と一体であってもよい。また、ケース5(蓋体11、本体12)の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、金属材料、セラミックス材料等が挙げられる。
(潤滑剤)
潤滑剤Gは、グリース(半固体状潤滑剤)であり、潤滑対象部である剛性歯車2と可撓性歯車3との間(噛み合い部)、および潤滑対象部である可撓性歯車3と波動発生器4との間(接触部・摺動部)のうちの少なくとも一方(以下、単に「潤滑対象部」ともいう)に配置されている。これにより、当該潤滑対象部の摩擦を低減することができる。
この潤滑剤Gは、基油および増ちょう剤を含んでいる。基油としては、例えば、パラフィン系、ナフテン系等の鉱油(精製鉱物油)、ポリオレフィン、エステル、シリコーン等の合成油が挙げられ、これらのうちの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、増ちょう剤としては、例えば、カルシウム石けん、カルシウム複合石けん、ナトリウム石けん、アルミニウム石けん、リチウム石けん、リチウム複合石けん等の石けん系、また、ポリウレア、ナトリウムテレフタメート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、有機ベントナイト、シリカゲル等の非石けん系等が挙げられ、これらのうちの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。このように、基油および増ちょう剤を組成として含んでいる潤滑剤G(グリース)は、増ちょう剤が形成する3次元構造体が複雑に絡み合って基油を保持しており、その保持した基油を少しずつしみ出させることで潤滑作用を発揮する。
ここで、潤滑剤G中における基油の含有量が75質量%以上85質量%以下であり、かつ、潤滑剤G中における増ちょう剤の含有量が10質量%以上20質量%以下であることが好ましい。これにより、潤滑剤Gの潤滑性能を高めることができる。
また、潤滑剤Gは、有機モリブデン化合物を含んでいる。有機モリブデン化合物は、固体潤滑剤または極圧剤として機能する。これにより、潤滑対象部における摩擦を効果的に低減することができ、潤滑対象部が極圧潤滑状態となっても、焼き付きやスカッフィングを効果的に防止することができる。特に、有機モリブデン化合物は、二硫化モリブデンと同等の極圧性および耐摩耗性を発揮し、しかも、二硫化モリブデンに比べて酸化安定性に優れる。そのため、潤滑剤Gの長寿命化を図ることができる。
ここで、有機モリブデン化合物は、粒子状態で潤滑剤Gに添加されるが、歯車装置10で使用されると分解反応することで潤滑対象部に被膜を形成して摩擦係数を下げる効果がある。このため有機モリブデン化合物は、極めて小さいバックラッシュで噛み合う剛性歯車2と可撓性歯車3との噛み合い部や、可撓性歯車3と波動発生器4との間の極めて小さい隙間の潤滑に適している。これに対し、二硫化モリブデンの場合は、潤滑対象部における摩擦を低減するためには、潤滑対象部に付着しても粒子状態を維持していなければならず、剛性歯車2と可撓性歯車3との噛み合い部や、可撓性歯車3と波動発生器4との接触部における潤滑に適しているとは言えない。
また、潤滑剤G中における有機モリブデン化合物の含有量は、例えば、1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。これにより、有機モリブデン化合物の極圧剤としての性能が発揮されやすくなり、潤滑剤Gの特性向上が顕著となる。なお、極圧剤または固体潤滑剤として、有機モリブデン化合物の他に、ジアルキルジチオリン酸亜鉛等の他の極圧剤を併用してもよい。
ここで、有機モリブデン化合物の平均粒径は、一般に、10μm程度と比較的大きい。そのため、単に潤滑剤Gに有機モリブデン化合物を添加すると、有機モリブデン化合物の粒子の影響により、潤滑剤Gの増ちょう剤からの基油のしみ出しが阻害されて少なくなり、潤滑対象部の潤滑不足を招く場合がある。例えば、可撓性歯車3と波動発生器4との接触部は、その隙間が小さいためにグリース全体が供給されることは難しく、増ちょう剤からしみ出た基油が供給されることが重要であるので、潤滑不足を招きやすい。
そこで、潤滑剤Gの離油度は、4質量%以上13.8質量%以下の範囲内にある。これにより、潤滑剤Gの増ちょう剤からの基油のしみ出しが阻害され難くなり、潤滑対象部(特に可撓性歯車3と波動発生器4との接触部)へ安定的に基油を供給することができる。このように、当該潤滑剤Gが有機モリブデン化合物による優れた摩擦低減効果を発揮させつつ増ちょう剤からの基油のしみ出しによって潤滑対象部へ安定的に基油を供給することができ、その結果、歯車装置10の長寿命化を図ることができる。なお、「離油度」とは、増ちょう剤からの基油をしみ出させる能力を示す指標であり、JIS K2220に規定されている測定方法に準拠して測定される。
ここで、前述したような潤滑剤Gの離油度による効果を高める観点から、潤滑剤Gに添加する有機モリブデン化合物(固体潤滑剤または極圧剤)の平均粒径は、1μm以上10μm以下の範囲内にあることが好ましい。
また、潤滑剤Gの離油度は、4質量%以上13.8質量%以下の範囲内にあればよいが、6質量%以上11質量%以下の範囲内にあることが好ましく、6質量%以上10質量%以下の範囲内にあることがより好ましい(図7参照)。これにより、歯車装置10の寿命をより長くすることができる。
ここで、離油度は、ちょう度が大きくなる(すなわち軟らかくなる)ほど、大きくなる傾向を示し、ちょう度に対してある程度の相関関係を有する。したがって、例えば、基油および増ちょう剤の配合比に応じてちょう度を調整することで、所望の離油度の潤滑剤Gを得ることができる。
また、潤滑剤Gのちょう度は、325以上365以下の範囲内にあることが好ましく、330以上360以下の範囲内にあることがより好ましく、335以上355以下の範囲内にあることがさらに好ましい。これにより、潤滑対象部に潤滑剤Gを留めやすくすることができる。また、潤滑剤Gの離油度を前述した範囲内とすることが容易となるという利点もある。これに対し、潤滑剤Gのちょう度が小さすぎると、前述した離油度の範囲となる基油および増ちょう剤の選定が難しく、また、潤滑剤Gの流動性が不十分となり、剛性歯車2と可撓性歯車3との噛み合い部に十分に潤滑剤Gを供給することが難しくなる。一方、潤滑剤Gのちょう度が大きすぎると、潤滑剤Gの流動性が高くなり過ぎて、歯車装置10の外部(例えば、ケース5内の不本意な位置またはケース5の外部)へ潤滑剤Gが漏れやすくなるため、剛性歯車2と可撓性歯車3との噛み合い部への潤滑剤Gの供給が不安定となり、かえって、当該噛み合い部における潤滑不良を生じやすくなる。なお、「ちょう度」は、グリースの硬さを表す指標であり、JIS K2220に規定されている測定方法に準拠して測定される。
また、潤滑剤Gの滴点は、248℃以上270℃以下の範囲内にあることが好ましい。これにより、潤滑剤Gのちょう度を最適化しつつ、潤滑剤Gの耐熱性を優れたものとすることができる。なお、「滴点」とは、グリース構造が破壊され、半固体から液状に変わる時の温度をいい、JIS K2220に規定されている測定方法に準拠して測定される。
ここで、潤滑剤Gに用いる増ちょう剤は、前述した増ちょう剤の中でも、リチウム複合石けんを用いることが好ましい。すなわち、潤滑剤Gに用いる増ちょう剤は、リチウム複合石けんを含むことが好ましい。これにより、潤滑剤Gの滴点を高くすることができ、潤滑剤Gの耐熱性を優れたものとすることができる。なお、リチウム複合石けんを増ちょう剤として用いる場合、リチウム複合石けんを単独で増ちょう剤として用いてもよいし、他の増ちょう剤とリチウム複合石けんを混合して用いてもよい。他の増ちょう剤とリチウム複合石けんを混合して用いる場合、全増ちょう剤中におけるリチウム複合石けんの含有量が70質量%以上であることが好ましい。
また、潤滑剤Gは、前述した基油、増ちょう剤および極圧剤(有機モリブデン化合物)の他に、酸化防止剤、防錆剤等の添加剤、また、黒鉛、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の固体潤滑剤等を含んでいてもよい。
以上のように、歯車装置10は、内歯歯車である剛性歯車2と、剛性歯車2に部分的に噛み合う可撓性の外歯歯車である可撓性歯車3と、可撓性歯車3の内周面に接触し、剛性歯車2と可撓性歯車3との噛み合い位置を周方向に移動させる波動発生器4と、剛性歯車2と可撓性歯車3との間および可撓性歯車3と波動発生器4との間のうちの少なくとも一方(潤滑対象部)に配置されている潤滑剤Gと、を有する。ここで、剛性歯車2、可撓性歯車3および波動発生器4のうちの2つの部材(本実施形態では剛性歯車2および可撓性歯車3)のうちの一つの部材(本実施形態では剛性歯車2)が基台110(第1部材)に対して接続され、他の一つの部材(本実施形態では可撓性歯車3)が第1アーム120(第2部材)に対して接続されている。特に、潤滑剤Gは、基油と、増ちょう剤と、有機モリブデン化合物と、を含み、かつ、離油度が4質量%以上13.8質量%以下の範囲内にある。
このような歯車装置10によれば、潤滑対象部に配置されている潤滑剤Gが有機モリブデン化合物を含んでいるため、潤滑対象部(特に剛性歯車2と可撓性歯車3との噛み合い部)における摩擦を効果的に低減することができる。その上で、当該潤滑剤Gの離油度が4質量%以上13.8質量%以下の範囲内にあることにより、潤滑剤Gの増ちょう剤からの基油のしみ出しが阻害され難くなり、潤滑対象部(特に可撓性歯車3と波動発生器4との接触部)へ安定的に基油を供給することができる。このように、当該潤滑剤Gが有機モリブデン化合物による優れた摩擦低減効果を発揮させつつ増ちょう剤からの基油のしみ出しによって潤滑対象部へ安定的に基油を供給することができ、その結果、歯車装置10の長寿命化を図ることができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係る歯車装置を示す縦断面図である。
本実施形態は、外歯歯車の構成およびそれに伴うケースの構成が異なる以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図4において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
図4に示す歯車装置10Bは、歯車装置本体1Bと、歯車装置本体1Bを収納しているケース5Bと、を有する。なお、ケース5Bは、省略してもよい。
歯車装置10Bは、剛性歯車2の内側に配置されているハット型(縁つき帽子型)の外歯歯車である可撓性歯車3Bを有している。この可撓性歯車3Bは、筒状の胴部31の一端部に接続され軸線aとは反対側に突出しているフランジ部32B(接続部)を有する。フランジ部32Bには、図示しない出力軸が取り付けられている。
ケース5Bは、軸受13を介して軸61(例えば入力軸)を支持している略板状の蓋体11Bと、前述した可撓性歯車3Bのフランジ部32Bに取り付けられているクロスローラーベアリング18と、を有する。
ここで、蓋体11Bは、剛性歯車2の一方(図4中右側)の側面に対して例えばネジ止め等により固定されている。また、クロスローラーベアリング18は、内輪15と、外輪16と、これらの間に配置されている複数のコロ17と、を有する。そして、内輪15は、可撓性歯車3の胴部31の外周に沿って設けられ、剛性歯車2の他方(図4中左側)の側面に例えばネジ止め等により固定されている。一方、外輪16は、前述した可撓性歯車3Bのフランジ部32Bの胴部31側の面に例えばネジ止め等により固定されている。
また、蓋体11Bの内壁面111Bは、可撓性歯車3Bの開口部36を覆うように軸線aに垂直な方向に拡がる形状をなしている。また、クロスローラーベアリング18の内輪15の内壁面151は、可撓性歯車3Bの胴部31の外周面に沿った形状をなしている。
以上のような歯車装置10Bは、剛性歯車2と可撓性歯車3Bとの間および可撓性歯車3Bと波動発生器4との間のうちの少なくとも一方(潤滑対象部)に配置されている潤滑剤Gを有する。ここで、剛性歯車2、可撓性歯車3Bおよび波動発生器4のうちの一つの部材が基台110(第1部材)に対して接続され、他の一つの部材が第1アーム120(第2部材)に対して接続されている。特に、潤滑剤Gは、前述した第1実施形態で述べたように、有機モリブデン化合物を含み、かつ、離油度が4質量%以上13.8質量%以下の範囲内にある。
以上説明したような第2実施形態によっても、歯車装置10Bの長寿命化を図ることができる。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図5は、本発明の第3実施形態に係る歯車装置を示す分解斜視図である。図6は、図5に示す歯車装置の縦断面図である。
なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。
図5および図6に示す歯車装置200は、円柱状の外形を有する本体部202を備えている。本体部202の軸線方向での一方側には、第1回転軸203が設けられ、一方、本体部202の軸線方向での他方側には、第2回転軸204が設けられている。第1回転軸203および第2回転軸204は、互いに同一の中心軸205を中心として回動する。ここで、中心軸205は、本体部202の軸線と同一線上に配置されている。本体部202を固定した状態で第1回転軸203を回動させると、その回動が後述するような本体部202内の機構によって減速されて第2回転軸204から出力される。つまり、第1回転軸203が高速回転する入力軸であり、第2回転軸204が低速回転する出力軸となる。
図5に示すように、歯車装置200は、空洞部206cを有する円筒形のリングギア206を備えている。リングギア206の内周には、複数のギア歯206aが形成されている。また、リングギア206の内側には、リングギア206の内周よりも少し小さい外周を有する第1公転ギア207および第2公転ギア208が設置されている。第1公転ギア207の外周には、ギア歯206aの歯数よりも少ない数の複数のギア歯207aが配置され、第2公転ギア208の外周には、ギア歯207aの歯数と同じ数の複数のギア歯208aが配置されている。そして、ギア歯207aおよびギア歯208aがギア歯206aと噛み合っている。ここで、内歯歯車であるリングギア206と外歯歯車である第1公転ギア207および第2公転ギア208との噛み合い部には、前述した第1実施形態の潤滑剤Gと同様の潤滑剤Gが配置されている。
第1公転ギア207の中央には、軸孔207bが設けられ、同様に、第2公転ギア208の中央には、軸孔208bが設けられている。軸孔207bには、第1ベアリング209が設置され、同様に、軸孔208bには、第2ベアリング210が設置されている。
第1回転軸203には、中心軸205に対して互いに反対側に同量偏心している円形カムである第1偏心カム211および第2偏心カム212が設置されている。そして、第1偏心カム211が第1ベアリング209の内輪に設置され、同様に、第2偏心カム212が第2ベアリング210の内輪に設置されている。これにより、ギア歯207aがギア歯206aと噛み合う部分と、ギア歯208aがギア歯206aと噛み合う部分との間に、中心軸205が位置している。
第1公転ギア207には、第1公転ギア207の中央を中心とする同心円上の4か所に第1貫通孔207cが設けられている。同様に、第2公転ギア208には、第2公転ギア208の中央を中心とする同心円上の4か所に第2貫通孔208cが設けられている。各第1貫通孔207cおよび各第2貫通孔208cには、それぞれ、第1公転ギア207の自転の動きを取り出すための貫通ピン213が挿入されている。各第1貫通孔207cの内周壁には、弾性を有する略円筒形の第1弾性部214が圧入により嵌めこまれている。同様に、各第2貫通孔208cの内周壁には、弾性を有する略円筒形の第2弾性部215が圧入により嵌めこまれている。ここで、貫通ピン213は、第1弾性部214および第2弾性部215の内側を貫通している。
各貫通ピン213は、本体部202の第1回転軸203側において、円板状の下蓋板216に取り付けられ、第2回転軸204側において、ナット217によって円板状の上蓋板218に固定されている。下蓋板216および上蓋板218は、中心軸205の軸方向に沿って並んでおり、リングギア206に対して回動可能となるように隙間をもってリングギア206を挟んでいる。
下蓋板216の中央には、第1回転軸203が挿入されている中心孔216aが形成されている。そして、第1回転軸203の第1偏心カム211および第2偏心カム212側の一端部が下蓋板216から本体部202内へ突出し、第1回転軸203の他端部が下蓋板216から本体部202外に突出している。上蓋板218の中央には、第2回転軸204が固定されている。そして、上蓋板218の回転に伴って、上蓋板218の回転トルクが第2回転軸204に伝達される。
以上のように、歯車装置200は、内歯歯車であるリングギア206と、リングギア206に内接噛合しつつ揺動回転する外歯歯車である第1公転ギア207および第2公転ギア208と、リングギア206と第1公転ギア207および第2公転ギア208との間(潤滑対象部)に配置されている潤滑剤Gと、を有する。そして、潤滑剤Gは、基油と、増ちょう剤と、有機モリブデン化合物と、を含み、かつ、離油度が4質量%以上13.8質量%以下の範囲内にある。これにより、歯車装置200の長寿命化を図ることができる。
以上、本発明のロボットおよび歯車装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
前述した実施形態では、ロボットが備える基台が「第1部材」、第1アームが「第2部材」であり、第1部材から第2部材へ駆動力を伝達する歯車装置について説明したが、本発明は、これに限定されず、第n(nは1以上の整数)アームが「第1部材」、第(n+1)アームが「第2部材」であり、第nアームおよび第(n+1)アームの一方から他方へ駆動力を伝達する歯車装置についても適用可能である。また、第2部材から第1部材へ駆動力を伝達する歯車装置についても適用可能である。
また、前述した実施形態では、ロボット水平多関節ロボットについて説明したが、本発明のロボットは、これに限定されず、例えば、ロボットの関節数は任意であり、また、垂直多関節ロボットにも適用可能である。
また、前述した実施形態では、歯車装置をロボットに組み込む場合を例に説明したが、本発明の歯車装置は、互いに回動する第1部材および第2部材の一方側から他方側へ駆動力を伝達する構成を有する各種機器に組み込んで用いることができる。
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
1.歯車装置(減速機)の製造
(実施例1)
図2に示すような構成の歯車装置を製造した。
ここで、製造した歯車装置は、内歯歯車の外径φ70、内歯歯車の内径および外歯歯車の外径(かみ合い基準円直径)φ53、減速比80であった。また、内歯歯車の構成材料としてクロムモリブデン鋼(SCM435)、外歯歯車の構成材料としてニッケルクロムモリブデン鋼(SNCM439)を用いた。
また、潤滑剤として、基油(鉱油):80質量%、増ちょう剤としてのリチウム(Li)複合石けん:15質量%、極圧剤としての有機モリブデン化合物(有機Mo):4質量%、2,6−ジ−ターシャリ−ブチル−4−クレゾール:1質量%を含み、ちょう度325、離油度4質量%、滴点270℃のグリースを用いた。
(実施例2〜5、比較例1〜4)
潤滑剤の増ちょう度、離油度、滴点および増ちょう剤の種類を表1に示すようにしたこと以外は、前述した実施例1と同様にして歯車装置を製造した。
ここで、実施例2〜5および比較例1、2で用いた潤滑剤は、それぞれ、実施例1で用いた潤滑剤と構成成分の種類が同じであるが、基油(鉱油)と増ちょう剤との配合比が異なる。また、比較例3、4で用いた潤滑剤は、それぞれ、増ちょう剤としてリチウム(Li)石けんを用い、構成成分の配合比を適宜調整した。
Figure 2018199203
2.評価
前述した1.で得られた各歯車装置について、入力軸回転数(入力軸回転速度):3000rpm、平均負荷トルク70Nmにて連続運転を行い、歯車装置が破損するまでの入力軸の総回転数を測定した。また、その結果を寿命として表1に併せて示す。
表1から明らかなように、各実施例は、各比較例に比べて、寿命が格段に長くなっていることがわかる。
図7は、潤滑剤の離油度と歯車装置の寿命との関係を示すグラフである。構成成分の種類が同一の実施例2〜5および比較例1、2について、離油度と寿命との関係を見てみると、図7に示すように、離油度が4〜13.8質量%の範囲内にあるとき、歯車装置の寿命が格段に長くなることがわかる。
図8は、実施例1に係る潤滑剤に含まれる有機モリブデン化合物の状態を示す拡大写真である。図9は、比較例3に係る潤滑剤に含まれる有機モリブデン化合物の状態を示す拡大写真である。実施例1と比較例3とを比較したとき、図8、9に示すように有機モリブデン化合物の粒径が同じであっても、表1の結果から、実施例1は、比較例3に比べて寿命が格段に長いことがわかる。
1…歯車装置本体、1B…歯車装置本体、2…剛性歯車(内歯歯車)、3…可撓性歯車(外歯歯車)、3B…可撓性歯車(外歯歯車)、4…波動発生器、5…ケース、5B…ケース、10…歯車装置、10B…歯車装置、11…蓋体、11B…蓋体、12…本体、13…軸受、14…軸受、15…内輪、16…外輪、17…コロ、18…クロスローラーベアリング、23…内歯、31…胴部、32…底部、32B…フランジ部、33…外歯、36…開口部、41…カム、42…軸受、61…軸、62…軸、100…ロボット、110…基台、111…内壁面、111B…内壁面、120…第1アーム、121…内壁面、130…第2アーム、140…作業ヘッド、141…スプラインシャフト、150…エンドエフェクター、151…内壁面、160…配線引き回し部、170…モーター、190…制御装置、200…歯車装置、202…本体部、203…第1回転軸、204…第2回転軸、205…中心軸、206…リングギア、206a…ギア歯、206c…空洞部、207…第1公転ギア、207a…ギア歯、207b…軸孔、207c…第1貫通孔、208…第2公転ギア、208a…ギア歯、208b…軸孔、208c…第2貫通孔、209…第1ベアリング、210…第2ベアリング、211…第1偏心カム、212…第2偏心カム、213…貫通ピン、214…第1弾性部、215…第2弾性部、216…下蓋板、216a…中心孔、217…ナット、218…上蓋板、411…軸部、412…カム部、421…内輪、422…ボール、423…外輪、G…潤滑剤、J1…第1軸、J2…第2軸、J3…軸、La…長軸、Lb…短軸、a…軸線

Claims (8)

  1. 第1部材と、
    前記第1部材に対して回動可能に設けられている第2部材と、
    前記第1部材および前記第2部材の一方側から他方側へ駆動力を伝達する歯車装置と、を備え、
    前記歯車装置は、
    内歯歯車と、
    前記内歯歯車に部分的に噛み合う可撓性の外歯歯車と、
    前記外歯歯車の内周面に接触し、前記内歯歯車と前記外歯歯車との噛み合い位置を周方向に移動させる波動発生器と、
    前記内歯歯車と前記外歯歯車との間および前記外歯歯車と前記波動発生器との間のうちの少なくとも一方に配置されている潤滑剤と、を有し、
    前記内歯歯車、前記外歯歯車および前記波動発生器のうちの一つが前記第1部材に対して接続され、他の一つが前記第2部材に対して接続され、
    前記潤滑剤は、基油と、増ちょう剤と、有機モリブデン化合物と、を含み、かつ、離油度が4質量%以上13.8質量%以下の範囲内にあることを特徴とするロボット。
  2. 前記潤滑剤のちょう度は、325以上365以下の範囲内にある請求項1に記載のロボット。
  3. 前記潤滑剤の滴点は、248℃以上270℃以下の範囲内にある請求項1または2に記載のロボット。
  4. 前記増ちょう剤は、リチウム複合石けんを含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載のロボット。
  5. 前記内歯歯車はクロムモリブデン鋼を材料としている請求項1ないし4のいずれか1項に記載のロボット。
  6. 前記外歯歯車はニッケルクロムモリブデン鋼を材料としている請求項5に記載のロボット。
  7. 内歯歯車と、
    前記内歯歯車に部分的に噛み合う可撓性の外歯歯車と、
    前記外歯歯車の内周面に接触し、前記内歯歯車と前記外歯歯車との噛み合い位置を周方向に移動させる波動発生器と、
    前記内歯歯車と前記外歯歯車との間および前記外歯歯車と前記波動発生器との間のうちの少なくとも一方に配置されている潤滑剤と、を有し、
    前記潤滑剤は、基油と、増ちょう剤と、有機モリブデン化合物と、を含み、かつ、離油度が4質量%以上13.8質量%以下の範囲内にあることを特徴とする歯車装置。
  8. 内歯歯車と、
    前記内歯歯車に内接噛合しつつ揺動回転する外歯歯車と、
    前記内歯歯車と前記外歯歯車との間に配置されている潤滑剤と、を有し、
    前記潤滑剤は、基油と、増ちょう剤と、有機モリブデン化合物と、を含み、かつ、離油度が4質量%以上13.8質量%以下の範囲内にあることを特徴とする歯車装置。
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