以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。また、以下の説明において参照する図面において、各構成部材の大きさや厚みは説明の便宜上のものであり、必ずしも実際の寸法や比率を示すものではない。
図1は、本発明の一実施形態に係るクライオポンプシステム1000の全体構成を模式的に示す図である。クライオポンプシステム1000は、真空装置300の真空排気をするために使用される。真空装置300は真空環境で物体に処理をする真空処理装置であり、例えばイオン注入装置やスパッタリング装置等の半導体製造工程で用いられる装置である。
クライオポンプシステム1000は、複数台のクライオポンプ10を含む。これらのクライオポンプ10は、真空装置300の1つまたは複数の真空チャンバ(図示せず)に取り付けられて、真空チャンバ内部の真空度を所望のプロセスに要求されるレベルにまで高めるために使用される。クライオポンプ10はクライオポンプコントローラ(以下ではCPコントローラとも称する)100が決定した制御量に従って運転される。例えば10−5Pa乃至10−8Pa程度の高い真空度が真空チャンバに実現される。図示の例ではクライオポンプシステム1000に11台のクライオポンプ10が含まれる。複数のクライオポンプ10はいずれも同一の排気性能をもつクライオポンプであってもよいし、異なる排気性能をもつクライオポンプであってもよい。
クライオポンプシステム1000は、CPコントローラ100を備える。CPコントローラ100は、クライオポンプ10及び圧縮機ユニット102、104を制御する。CPコントローラ100は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、入出力インターフェース、メモリ等を備える。また、CPコントローラ100は、真空装置300を制御するためのホストコントローラ(図示せず)とも通信可能に構成されている。真空装置300のホストコントローラはクライオポンプシステム1000を含む真空装置300の各構成要素を統括する上位のコントローラであるとも言える。
CPコントローラ100は、クライオポンプ10及び圧縮機ユニット102、104とは別体に構成されている。CPコントローラ100は、クライオポンプ10及び圧縮機ユニット102、104と互いに通信可能に接続されている。クライオポンプ10はそれぞれ、CPコントローラ100と通信する入出力を処理するためのIOモジュール50(図4参照)を備える。CPコントローラ100と各IOモジュール50とが制御通信線で接続される。図1ではクライオポンプ10とCPコントローラ100との制御通信線、及び圧縮機ユニット102、104とCPコントローラ100との制御通信線を破線で示す。なおCPコントローラ100は、いずれかのクライオポンプ10または圧縮機ユニット102、104と一体に構成されていてもよい。
CPコントローラ100は、単一のコントローラで構成されていてもよいし、各々が同一のまたは異なる機能を奏する複数のコントローラを含んでもよい。例えば、CPコントローラ100は、各圧縮機ユニットに設けられ、各圧縮機ユニットの制御量を決定する圧縮機コントローラと、クライオポンプシステムを統括するクライオポンプコントローラと、を備えてもよい。
クライオポンプシステム1000は、第1圧縮機ユニット102及び第2圧縮機ユニット104を少なくとも含む複数の圧縮機ユニットを備える。圧縮機ユニットはクライオポンプ10を含む閉じた流体回路に作動ガスを循環させるために設けられている。圧縮機ユニットはクライオポンプ10から作動ガスを回収し圧縮して再度クライオポンプ10へと送出する。圧縮機ユニットは真空装置300から離れて、または真空装置300の近傍に設置されている。圧縮機ユニットは圧縮機コントローラ168(図4参照)が決定した制御量に従って運転される。あるいはCPコントローラ100が決定した制御量に従って運転される。
以下では代表例として2台の圧縮機ユニット102、104をもつクライオポンプシステム1000を説明するが、本発明はこれに限られない。これら圧縮機ユニット102、104と同様にして3台以上の圧縮機ユニットが複数のクライオポンプ10に並列に接続されているクライオポンプシステム1000を構成してもよい。なお図1に示すクライオポンプシステム1000はクライオポンプ10及び圧縮機ユニット102、104をそれぞれ複数備えているが、クライオポンプ10または圧縮機ユニット102、104を1台としてもよい。
複数のクライオポンプ10と複数の圧縮機ユニット102、104とは作動ガス配管系106によって接続される。配管系106は、複数のクライオポンプ10と複数の圧縮機ユニット102、104とを互いに並列に接続し、複数のクライオポンプ10と複数の圧縮機ユニット102、104との間で作動ガスを流通させるよう構成されている。配管系106によって、1台のクライオポンプ10に複数の圧縮機ユニットの各々が並列に接続され、1台の圧縮機ユニットに複数のクライオポンプ10の各々が並列に接続されている。
配管系106は、内部配管108と外部配管110とを含んで構成される。内部配管108は真空装置300の内部に形成されており、内部供給ライン112及び内部戻りライン114を含む。外部配管110は真空装置300の外部に設置されており、外部供給ライン120及び外部戻りライン122を含む。外部配管110は真空装置300と複数の圧縮機ユニット102、104とを接続する。
内部供給ライン112は各クライオポンプ10の気体供給口42に接続され(図2参照)、内部戻りライン114は各クライオポンプ10の気体排出口44に接続される(図2参照)。また、内部供給ライン112は真空装置300の気体供給ポート116で外部配管110の外部供給ライン120の一端に接続され、内部戻りライン114は真空装置300の気体排出ポート118で外部配管110の外部戻りライン122の一端に接続される。
外部供給ライン120の他端は第1マニホールド124に接続され、外部戻りライン122の他端は第2マニホールド126に接続されている。第1マニホールド124には、第1圧縮機ユニット102の第1吐出配管128及び第2圧縮機ユニット104の第2吐出配管130の一端が接続されている。第1吐出配管128及び第2吐出配管130の他端はそれぞれ、対応する各圧縮機ユニット102、104の吐出ポート148に接続されている(図3参照)。第2マニホールド126には、第1圧縮機ユニット102の第1吸入配管132及び第2圧縮機ユニット104の第2吸入配管134の一端が接続されている。第1吸入配管132及び第2吸入配管134の他端はそれぞれ、対応する各圧縮機ユニット102、104の吸入ポート146に接続されている(図3参照)。
このようにして、複数の圧縮機ユニット102、104の各々から送出される作動ガスを集約して複数のクライオポンプ10に供給するための共通の供給ラインが内部供給ライン112及び外部供給ライン120により構成されている。また、複数のクライオポンプ10から排出される作動ガスを集約して複数の圧縮機ユニット102、104へと戻すための共通の戻りラインが内部戻りライン114及び外部戻りライン122により構成されている。また、複数の圧縮機ユニットの各々は、各圧縮機ユニットに付随する個別配管を通じて共通ラインに接続されている。個別配管と共通ラインとの接続部には個別配管を合流させるためのマニホールドが設けられている。第1マニホールド124が供給側で個別配管を合流させ、第2マニホールド126が回収側で個別配管を合流させている。
クライオポンプシステム1000が使用される場所(例えば半導体製造工場)における各種装置のレイアウトによっては、上述の共通ラインは(図示とは異なり)相当の長さとなることもある。作動ガスを共通ラインに集約することにより、複数の圧縮機の各々を別個に真空装置に接続する場合よりもトータルの配管長を短くすることができる。また、作動ガスの供給対象(例えばクライオポンプシステム1000においては個々のクライオポンプ10)ごとに複数の圧縮機が接続される配管構成をとるので、冗長性もある。複数の圧縮機を個々の対象(例えばクライオポンプ)に並列に配置し運転することで、複数の圧縮機への負荷が分担されている。
図2は、本発明の一実施形態に係るクライオポンプ10を模式的に示す断面図である。クライオポンプ10は、第1の冷却温度レベルに冷却される第1のクライオパネルと、第1の冷却温度レベルよりも低温の第2の冷却温度レベルに冷却される第2のクライオパネルと、を備える。第1のクライオパネルには、第1の冷却温度レベルにおいて蒸気圧が低い気体が凝縮により捕捉されて排気される。例えば基準蒸気圧(例えば10−8Pa)よりも蒸気圧が低い気体が排気される。第2のクライオパネルには、第2の冷却温度レベルにおいて蒸気圧が低い気体が凝縮により捕捉されて排気される。第2のクライオパネルには、蒸気圧が高いために第2の温度レベルにおいても凝縮しない非凝縮性気体を捕捉するために表面に吸着領域が形成される。吸着領域は例えばパネル表面に吸着剤を設けることにより形成される。非凝縮性気体は、第2の温度レベルに冷却された吸着領域に吸着されて排気される。
図2に示されるクライオポンプ10は、冷凍機12とパネル構造体14と熱シールド16とを備える。冷凍機12は、作動ガスを吸入して内部で膨張させて吐出する熱サイクルによって寒冷を発生する。パネル構造体14は複数のクライオパネルを含み、これらのパネルは冷凍機12により冷却される。パネル表面には気体を凝縮または吸着により捕捉して排気するための極低温面が形成される。クライオパネルの表面(例えば裏面)には通常、気体を吸着するための活性炭などの吸着剤が設けられる。熱シールド16は、パネル構造体14を周囲の輻射熱から保護するために設けられている。
クライオポンプ10は、いわゆる縦型のクライオポンプである。縦型のクライオポンプとは、熱シールド16の軸方向に沿って冷凍機12が挿入されて配置されているクライオポンプである。なお、本発明はいわゆる横型のクライオポンプにも同様に適用することができる。横型のクライオポンプとは、熱シールド16の軸方向に交差する方向(通常は直交方向)に冷凍機の第2段の冷却ステージが挿入され配置されているクライオポンプである。なお、図1には横型のクライオポンプ10が模式的に示されている。
冷凍機12は、ギフォード・マクマホン式冷凍機(いわゆるGM冷凍機)である。また冷凍機12は2段式の冷凍機であり、第1段シリンダ18、第2段シリンダ20、第1冷却ステージ22、第2冷却ステージ24、及び冷凍機モータ26を有する。第1段シリンダ18と第2段シリンダ20とは直列に接続されており、互いに連結される第1段ディスプレーサ及び第2段ディスプレーサ(図示せず)がそれぞれ内蔵されている。第1段ディスプレーサ及び第2段ディスプレーサの内部には蓄冷材が組み込まれている。なお、冷凍機12は2段GM冷凍機以外の冷凍機であってもよく、例えば単段GM冷凍機を用いてもよいし、パルスチューブ冷凍機やソルベイ冷凍機を用いてもよい。
冷凍機12は、作動ガスの吸入と吐出を周期的に繰り返すために作動ガスの流路を周期的に切り替える流路切替機構を含む。流路切替機構は例えばバルブ部とバルブ部を駆動する駆動部とを含む。バルブ部は例えばロータリーバルブであり、駆動部はロータリーバルブを回転させるためのモータである。モータは、例えばACモータまたはDCモータであってもよい。また流路切替機構はリニアモータにより駆動される直動式の機構であってもよい。
第1段シリンダ18の一端に冷凍機モータ26が設けられている。冷凍機モータ26は、第1段シリンダ18の端部に形成されているモータ用ハウジング27の内部に設けられている。冷凍機モータ26は、第1段ディスプレーサ及び第2段ディスプレーサのそれぞれが第1段シリンダ18及び第2段シリンダ20の内部を往復動可能とするように第1段ディスプレーサ及び第2段ディスプレーサに接続される。また、冷凍機モータ26は、モータ用ハウジング27の内部に設けられている可動バルブ(図示せず)を正逆回転可能とするように当該バルブに接続される。
第1冷却ステージ22は、第1段シリンダ18の第2段シリンダ20側の端部すなわち第1段シリンダ18と第2段シリンダ20との連結部に設けられている。また、第2冷却ステージ24は第2段シリンダ20の末端に設けられている。第1冷却ステージ22及び第2冷却ステージ24はそれぞれ第1段シリンダ18及び第2段シリンダ20に例えばろう付けで固定される。
モータ用ハウジング27の外側に設けられている気体供給口42及び気体排出口44を通じて冷凍機12は圧縮機ユニット102または104に接続される。クライオポンプ10と圧縮機ユニット102、104との接続関係については図1を参照して説明したとおりである。
冷凍機12は、圧縮機ユニット102、104から供給される高圧の作動ガス(例えばヘリウム等)を内部で膨張させて第1冷却ステージ22及び第2冷却ステージ24に寒冷を発生させる。圧縮機ユニット102、104は、冷凍機12で膨張した作動ガスを回収し再び加圧して冷凍機12に供給する。
具体的には、まず圧縮機ユニット102、104から冷凍機12に高圧の作動ガスが供給される。このとき、冷凍機モータ26は、気体供給口42と冷凍機12の内部空間とを連通する状態にモータ用ハウジング27内部の可動バルブを駆動する。冷凍機12の内部空間が高圧の作動ガスで満たされると、冷凍機モータ26により可動バルブが切り替えられて冷凍機12の内部空間が気体排出口44に連通される。これにより作動ガスは膨張して圧縮機ユニット102、104へと回収される。可動バルブの動作に同期して、第1段ディスプレーサ及び第2段ディスプレーサのそれぞれが第1段シリンダ18及び第2段シリンダ20の内部を往復動する。このような熱サイクルを繰り返すことで冷凍機12は第1冷却ステージ22及び第2冷却ステージ24に寒冷を発生させる。
第2冷却ステージ24は第1冷却ステージ22よりも低温に冷却される。第2冷却ステージ24は例えば10K乃至20K程度に冷却され、第1冷却ステージ22は例えば80K乃至100K程度に冷却される。第1冷却ステージ22には第1冷却ステージ22の温度を測定するための第1温度センサ23が取り付けられており、第2冷却ステージ24には第2冷却ステージ24の温度を測定するための第2温度センサ25が取り付けられている。
冷凍機12の第1冷却ステージ22には熱シールド16が熱的に接続された状態で固定され、冷凍機12の第2冷却ステージ24にはパネル構造体14が熱的に接続された状態で固定されている。このため、熱シールド16は第1冷却ステージ22と同程度の温度に冷却され、パネル構造体14は第2冷却ステージ24と同程度の温度に冷却される。熱シールド16は一端に開口部31を有する円筒状の形状に形成されている。開口部31は熱シールド16の筒状側面の端部内面により画定される。
一方、熱シールド16の開口部31とは反対側つまりポンプ底部側の他端には閉塞部28が形成されている。閉塞部28は、熱シールド16の円筒状側面のポンプ底部側の端部において径方向内側に向けて延びるフランジ部により形成される。図2に示されるクライオポンプ10は縦型のクライオポンプであるので、このフランジ部が冷凍機12の第1冷却ステージ22に取り付けられている。これにより、熱シールド16内部に円柱状の内部空間30が形成される。冷凍機12は熱シールド16の中心軸に沿って内部空間30に突出しており、第2冷却ステージ24は内部空間30に挿入された状態となっている。
なお、横型のクライオポンプの場合には、閉塞部28は通常完全に閉塞されている。冷凍機12は、熱シールド16の側面に形成されている冷凍機取付用の開口部から熱シールド16の中心軸に直交する方向に沿って内部空間30に突出して配置される。冷凍機12の第1冷却ステージ22は熱シールド16の冷凍機取付用開口部に取り付けられ、冷凍機12の第2冷却ステージ24は内部空間30に配置される。第2冷却ステージ24にはパネル構造体14が取り付けられる。よって、パネル構造体14は熱シールド16の内部空間30に配置される。パネル構造体14は、適当な形状のパネル取付部材を介して第2冷却ステージ24に取り付けられてもよい。
また熱シールド16の開口部31にはバッフル32が設けられている。バッフル32は、パネル構造体14とは熱シールド16の中心軸方向に間隔をおいて設けられている。バッフル32は、熱シールド16の開口部31側の端部に取り付けられており、熱シールド16と同程度の温度に冷却される。バッフル32は、真空チャンバ80側から見たときに例えば同心円状に形成されていてもよいし、あるいは格子状等他の形状に形成されていてもよい。なお、バッフル32と真空チャンバ80との間にはゲートバルブ(図示せず)が設けられている。このゲートバルブは例えばクライオポンプ10を再生するときに閉とされ、クライオポンプ10により真空チャンバ80を排気するときに開とされる。真空チャンバ80は例えば図1に示す真空装置300に設けられている。
熱シールド16、バッフル32、パネル構造体14、及び冷凍機12の第1冷却ステージ22及び第2冷却ステージ24は、ポンプケース34の内部に収容されている。ポンプケース34は径の異なる2つの円筒を直列に接続して形成されている。ポンプケース34の大径の円筒側端部は開放され、真空チャンバ80との接続用のフランジ部36が径方向外側へと延びて形成されている。またポンプケース34の小径の円筒側端部は冷凍機12のモータ用ハウジング27に固定されている。クライオポンプ10はポンプケース34のフランジ部36を介して真空チャンバ80の排気用開口に気密に固定され、真空チャンバ80の内部空間と一体の気密空間が形成される。ポンプケース34及び熱シールド16はともに円筒状に形成されており、同軸に配設されている。ポンプケース34の内径が熱シールド16の外径を若干上回っているので、熱シールド16はポンプケース34の内面との間に若干の間隔をもって配置される。
クライオポンプ10の作動に際しては、まずその作動前に他の適当な粗引きポンプを用いて真空チャンバ80内部を1Pa〜10Pa程度にまで粗引きする。その後クライオポンプ10を作動させる。冷凍機12の駆動により第1冷却ステージ22及び第2冷却ステージ24が冷却され、これらに熱的に接続されている熱シールド16、バッフル32、パネル構造体14も冷却される。
冷却されたバッフル32は、真空チャンバ80からクライオポンプ10内部へ向かって飛来する気体分子を冷却し、その冷却温度で蒸気圧が充分に低くなる気体(例えば水分など)を表面に凝縮させて排気する。バッフル32の冷却温度では蒸気圧が充分に低くならない気体はバッフル32を通過して熱シールド16内部へと進入する。進入した気体分子のうちパネル構造体14の冷却温度で蒸気圧が充分に低くなる気体(例えばアルゴンなど)は、パネル構造体14の表面に凝縮されて排気される。その冷却温度でも蒸気圧が充分に低くならない気体(例えば水素など)は、パネル構造体14の表面に接着され冷却されている吸着剤により吸着されて排気される。このようにしてクライオポンプ10は真空チャンバ80内部の真空度を所望のレベルに到達させることができる。
図3は、本発明の一実施形態に係る第1圧縮機ユニット102を模式的に示す図である。本実施例においては第2圧縮機ユニット104も第1圧縮機ユニット102と同様の構成をもつ。圧縮機ユニット102は、気体を昇圧する圧縮機本体140、外部から供給された低圧気体を圧縮機本体140へと供給するための低圧配管142、及び、圧縮機本体140により圧縮された高圧気体を外部に送出するための高圧配管144を含んで構成される。
図1に示すように、低圧気体は第1吸入配管132を通じて第1圧縮機ユニット102に供給される。第1圧縮機ユニット102は吸入ポート146にてクライオポンプ10からの戻りガスを受け入れ、低圧配管142へと作動ガスは送られる。吸入ポート146は、低圧配管142の末端において第1圧縮機ユニット102の圧縮機筐体138に設けられている。低圧配管142は吸入ポート146と圧縮機本体140の吸入口とを接続する。
低圧配管142は中途に、戻りガスに含まれる脈動を除去するための容積としてのストレージタンク150を備える。ストレージタンク150は吸入ポート146と、後述するバイパス機構152への分岐との間に設けられている。ストレージタンク150で脈動が除去された作動ガスは、低圧配管142を通じて圧縮機本体140に供給される。ストレージタンク150の内部には、気体から不要な微粒子等を取り除くためのフィルタが設けられていてもよい。ストレージタンク150と吸入ポート146との間には、外部から作動ガスを補充するための受入ポート及び配管が接続されていてもよい。
圧縮機本体140は、例えばスクロール方式或いはロータリ式のポンプであり、吸入されたガスを昇圧する機能を奏するものである。圧縮機本体140には圧縮機モータ172が設けられ、圧縮機本体140は圧縮機モータ172によって駆動される。圧縮機本体140は、昇圧された作動ガスを高圧配管144に送り出す。圧縮機本体140はオイルを用いて冷却を行う構成とされており、オイルを循環させるオイル冷却配管が圧縮機本体140に付随して設けられている。このため、昇圧された作動ガスはこのオイルが若干混入した状態で高圧配管144に送り出される。
よって、高圧配管144にはその中途にオイルセパレータ154が設けられている。オイルセパレータ154にて作動ガスから分離されたオイルは低圧配管142へと戻され、低圧配管142を通じて圧縮機本体140に戻されてもよい。オイルセパレータ154には過度の高圧を解放するためのリリーフ弁が設けられていてもよい。
圧縮機本体140とオイルセパレータ154とを接続する高圧配管144の中途に、圧縮機本体140から送出された高圧作動ガスを冷却するための熱交換器が設けられていてもよい(図示せず)。熱交換器は例えば冷却水により作動ガスを冷却する。またこの冷却水は圧縮機本体140を冷却するオイルを冷却するためにも利用されてもよい。高圧配管144において熱交換器の上流及び下流の少なくとも一方に作動ガスの温度を測定する温度センサが設けられていてもよい。
オイルセパレータ154を経由した作動ガスは、高圧配管144を通じてアドソーバ156に送られる。アドソーバ156は、例えばストレージタンク150内のフィルタやオイルセパレータ154等の流路上の汚染物質除去手段により取り切れていない汚染成分を作動ガスから取り除くために設けられている。アドソーバ156は、例えば気化しているオイル成分を吸着により除去する。
吐出ポート148が高圧配管144の末端において第1圧縮機ユニット102の圧縮機筐体138に設けられている。すなわち高圧配管144は圧縮機本体140と吐出ポート148とを接続し、その中途にオイルセパレータ154及びアドソーバ156が設けられている。アドソーバ156を経由した作動ガスは吐出ポート148を通じてクライオポンプ10へと送出される。
第1圧縮機ユニット102は、低圧配管142と高圧配管144とをつなぐバイパス配管158を有するバイパス機構152を備える。図示の実施例では、バイパス配管158は、ストレージタンク150と圧縮機本体140との間において低圧配管142から分岐している。また、バイパス配管158は、オイルセパレータ154とアドソーバ156との間において高圧配管144から分岐している。
バイパス機構152は、クライオポンプ10へと送出されずに高圧配管144から低圧配管142へと迂回する作動ガス流量を制御するための制御弁を備える。図示の実施例においては、バイパス配管158の中途に第1制御弁(均圧弁ともいう)160及び第2制御弁(リリーフ弁ともいう)162が並列に設けられている。均圧弁160は、例えば常開型のソレノイドバルブである。よって、第1圧縮機ユニット102の運転が停止されると(すなわち第1圧縮機ユニット102への給電が停止されると)、均圧弁160が開放され低圧配管142と高圧配管144の圧力が等しくなる。リリーフ弁162は、例えば常閉型のソレノイドバルブである。本実施例においてはリリーフ弁162が第1圧縮機ユニット102の運転中にバイパス配管158の流量制御弁として使用される。
第1圧縮機ユニット102は、クライオポンプ10からの戻りガスの圧力を測定するための第1圧力センサ164と、クライオポンプ10への送出ガスの圧力を測定するための第2圧力センサ166と、を備える。第1圧縮機ユニット102の動作中は送出ガスのほうが戻りガスよりも高圧であるから、以下では第1圧力センサ164及び第2圧力センサ166をそれぞれ、低圧センサ及び高圧センサと呼ぶこともある。
第1圧力センサ164は低圧配管142の圧力を測定し、第2圧力センサ166は高圧配管144の圧力を測定するよう設けられている。第1圧力センサ164は例えばストレージタンク150に設置されており、ストレージタンク150において脈動が除去された戻りガスの圧力を測定する。第1圧力センサ164は低圧配管142の任意の位置に設けられていてもよい。第2圧力センサ166はオイルセパレータ154とアドソーバ156との間に設けられている。第2圧力センサ166は高圧配管144の任意の位置に設けられていてもよい。
なお、第1圧力センサ164及び第2圧力センサ166は、第1圧縮機ユニット102の外部に設けられていてもよく、例えば第1吸入配管132及び第1吐出配管128に設けられていてもよい。また、バイパス機構152も第1圧縮機ユニット102の外部に設けられていてもよく、例えば第1吸入配管132と第1吐出配管128とをバイパス配管158が接続していてもよい。
図3に示される圧縮機構造部136は、圧縮機本体140、低圧配管142、高圧配管144、吸入ポート146、吐出ポート148、ストレージタンク150、バイパス機構152、オイルセパレータ154、アドソーバ156、バイパス配管158、均圧弁160、リリーフ弁162、第1圧力センサ164、第2圧力センサ166、圧縮機モータ172を含む。これら構成要素は、圧縮機筐体138に収められている。
図4は、本実施形態に係るクライオポンプシステム1000に関する制御ブロック図である。図4は、本発明の一実施形態に関連するクライオポンプシステム1000の主要部分を示している。複数のクライオポンプ10のうち1つについて内部の詳細を示し、他のクライオポンプ10については同様であるので図示を省略する。同様に、第1圧縮機ユニット102について詳細を示し、第2圧縮機ユニット104はそれと同様であるので内部の図示を省略する。
CPコントローラ100は上述のように、各クライオポンプ10のIOモジュール50に通信可能に接続されている。IOモジュール50は、冷凍機インバータ52及び信号処理部54を含む。冷凍機インバータ52は外部電源例えば商用電源から供給される規定の電圧及び周波数の電力を調整し冷凍機モータ26に供給する。冷凍機モータ26に供給されるべき電圧及び周波数はCPコントローラ100により制御される。
CPコントローラ100はセンサ出力信号に基づいて指令制御量を決定する。信号処理部54は、CPコントローラ100から送信された指令制御量を冷凍機インバータ52へと中継する。例えば、信号処理部54はCPコントローラ100からの指令信号を冷凍機インバータ52で処理可能な信号に変換して冷凍機インバータ52に送信する。指令信号は冷凍機モータ26の運転周波数を表す信号を含む。また、信号処理部54は、クライオポンプ10の各種センサの出力をCPコントローラ100へと中継する。例えば、信号処理部54はセンサ出力信号をCPコントローラ100で処理可能な信号に変換してCPコントローラ100に送信する。
IOモジュール50の信号処理部54には、第1温度センサ23及び第2温度センサ25を含む各種センサが接続されている。上述のように第1温度センサ23は冷凍機12の第1冷却ステージ22の温度を測定し、第2温度センサ25は冷凍機12の第2冷却ステージ24の温度を測定する。第1温度センサ23及び第2温度センサ25はそれぞれ、第1冷却ステージ22及び第2冷却ステージ24の温度を周期的に測定し、測定温度を示す信号を出力する。第1温度センサ23及び第2温度センサ25の測定値は、所定時間おきにCPコントローラ100へと入力され、CPコントローラ100の所定の記憶領域に格納保持される。
CPコントローラ100は、クライオパネルの温度に基づいて冷凍機12を制御する。CPコントローラ100は、クライオパネルの実温度が目標温度に追従するように冷凍機12に指令信号を与える。例えば、CPコントローラ100は、第1段のクライオパネルの目標温度と第1温度センサ23の測定温度との偏差を最小化するようにフィードバック制御により冷凍機インバータ指令信号を生成する。冷凍機インバータ指令信号は、CPコントローラ100からIOモジュール50を介して冷凍機インバータ52に与えられる。冷凍機インバータ52は、冷凍機インバータ指令信号に従って冷凍機モータ26の運転周波数を制御する。冷凍機モータ26の運転周波数に応じて冷凍機モータ26の回転数すなわち冷凍機12の熱サイクルの周波数が定まる。第1段のクライオパネルの目標温度は例えば、真空チャンバ80で行われるプロセスに応じて仕様として定められる。この場合、冷凍機12の第2冷却ステージ24及びパネル構造体14は、冷凍機12の仕様及び外部からの熱負荷によって定まる温度に冷却される。
第1温度センサ23の測定温度が目標温度よりも高温である場合には、CPコントローラ100は、冷凍機モータ26の運転周波数を増加するようIOモジュール50に冷凍機インバータ指令信号を出力する。モータ運転周波数の増加に連動して冷凍機12における熱サイクルの周波数も増加され、冷凍機12の第1冷却ステージ22は目標温度に向けて冷却される。逆に第1温度センサ23の測定温度が目標温度よりも低温である場合には、冷凍機モータ26の運転周波数は減少されて冷凍機12の第1冷却ステージ22は目標温度に向けて昇温される。
通常は、第1冷却ステージ22の目標温度は一定値に設定される。よって、CPコントローラ100は、クライオポンプ10への熱負荷が増加したときに冷凍機モータ26の運転周波数を増加するように冷凍機インバータ指令信号を出力し、クライオポンプ10への熱負荷が減少したときに冷凍機モータ26の運転周波数を減少するように冷凍機インバータ指令信号を出力する。なお、目標温度は適宜変動させてもよく、例えば、目標とする雰囲気圧力を排気対象容積に実現するようにクライオパネルの目標温度を逐次設定するようにしてもよい。またCPコントローラ100は、第2段のクライオパネルの実温度を目標温度に一致させるように冷凍機モータ26の運転周波数を制御してもよい。
典型的なクライオポンプにおいては、熱サイクルの周波数は常に一定とされている。常温からポンプ動作温度への急冷却を可能とするように比較的大きい周波数で運転するよう設定され、外部からの熱負荷が小さい場合にはヒータにより加熱することでクライオパネルの温度を調整する。よって、消費電力が大きくなる。これに対して本実施形態においては、クライオポンプ10への熱負荷に応じて熱サイクル周波数を制御するため、省エネルギー性に優れるクライオポンプを実現することができる。また、ヒータを必ずしも設ける必要がなくなることも消費電力の低減に寄与する。
CPコントローラ100は、圧縮機コントローラ168に通信可能に接続されている。本発明の一実施形態に係るクライオポンプシステム1000の制御部は、CPコントローラ100及び圧縮機コントローラ168を含む複数のコントローラで構成されている。他の一実施例においては、クライオポンプシステム1000の制御部は単一のCPコントローラ100によって構成されていてもよく、圧縮機ユニット102、104には圧縮機コントローラ168に代えてIOモジュールを設けてもよい。この場合IOモジュールはCPコントローラ100と圧縮機ユニット102、104の各構成要素との間で制御信号を中継する。また、圧縮機コントローラ168が、CPコントローラ100の一部を構成してもよい。
圧縮機コントローラ168は、CPコントローラ100からの制御信号に基づいて、またはCPコントローラ100から独立して、第1圧縮機ユニット102を制御する。一実施例においては、圧縮機コントローラ168は、CPコントローラ100から各種の設定値を表す信号を受信し、その設定値を使用して第1圧縮機ユニット102を制御する。圧縮機コントローラ168はセンサ出力信号に基づいて指令制御量を決定する。圧縮機コントローラ168は、CPコントローラ100と同様に、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、入出力インターフェース、メモリ等を備える。
また、圧縮機コントローラ168は、第1圧縮機ユニット102の運転状態を表す信号をCPコントローラ100に送信する。運転状態を表す信号は例えば、第1圧力センサ164及び第2圧力センサ166の測定圧力、リリーフ弁162の開度または制御電流、圧縮機モータ172の運転周波数などを含む。
第1圧縮機ユニット102は、圧縮機インバータ170及び圧縮機モータ172を含む。圧縮機モータ172は、圧縮機本体140を動作させ運転周波数が可変であるモータであり、圧縮機本体140に設けられている。冷凍機モータ26と同様に圧縮機モータ172として各種のモータを採用することができる。圧縮機コントローラ168は、圧縮機インバータ指令信号を生成し、圧縮機インバータ170に出力する。圧縮機インバータ170は、圧縮機インバータ指令信号に従って圧縮機モータ172の運転周波数を制御する。圧縮機モータ172の運転周波数に応じて圧縮機モータ53の回転数が制御される。圧縮機インバータ170は、圧縮機インバータ指令信号に従って、外部電源例えば商用電源から供給される規定の電圧及び周波数の電力を調整し圧縮機モータ172に供給する。圧縮機モータ172に供給されるべき電圧及び周波数は、圧縮機インバータ指令信号により決定される。
圧縮機コントローラ168には、第1圧力センサ164及び第2圧力センサ166を含む各種センサが接続されている。上述のように第1圧力センサ164は圧縮機本体140吸入側の圧力を周期的に測定し、第2圧力センサ166は圧縮機本体140の吐出側の圧力を周期的に測定する。第1圧力センサ164及び第2圧力センサ166の測定値は、所定時間おきに圧縮機コントローラ168へと入力され、圧縮機コントローラ168の所定の記憶領域に格納保持される。
圧縮機コントローラ168には、上述のリリーフ弁162が接続されている。リリーフ弁162を駆動するためのリリーフ弁ドライバ174がリリーフ弁162に付随して設けられており、リリーフ弁ドライバ174が圧縮機コントローラ168に接続されている。圧縮機コントローラ168は、リリーフ弁指令信号を生成し、リリーフ弁ドライバ174に出力する。リリーフ弁指令信号はリリーフ弁162の開度を決定するものであり、リリーフ弁ドライバ174は、リリーフ弁162をその開度に制御する。このようにリリーフ弁162は、リリーフ弁指令信号に従ってバイパス配管158の流量を制御するようバイパス配管158に設けられている。リリーフ弁ドライバ174は、圧縮機コントローラ168に組み込まれていてもよい。
圧縮機コントローラ168は、圧縮機ユニット102の出入口間の差圧(以下では圧縮機差圧ということもある)を目標差圧に維持するように圧縮機本体140を制御する。例えば、圧縮機コントローラ168は、圧縮機ユニット102の出入口間の差圧を一定値とするようにフィードバック制御を実行する。一実施例においては、圧縮機コントローラ168は、第1圧力センサ164及び第2圧力センサ166の測定値から圧縮機差圧を求める。圧縮機コントローラ168は、圧縮機差圧を目標値に一致させるように圧縮機モータ172の運転周波数を決定する。圧縮機コントローラ168は、その運転周波数を実現するよう圧縮機インバータ170を制御する。なお差圧の目標値は、差圧一定制御の実行中に変更されてもよい。
このような差圧一定制御により、更なる消費電力の低減が実現される。クライオポンプ10及び冷凍機12への熱負荷が小さい場合には、上述のクライオパネル温調制御により冷凍機12での熱サイクル周波数は小さくなる。そうすると、冷凍機12で必要となる作動ガス量は小さくなる。そのとき、必要量を超過するガス量が圧縮機ユニット102から送られ得る。よって、圧縮機ユニット102の出入口間差圧は拡大しようとする。しかし、本実施形態では圧縮機差圧を一定にするように圧縮機モータ172の運転周波数が制御される。この場合、差圧を目標値へと縮小するよう圧縮機モータ172の運転周波数は小さくなる。したがって、典型的なクライオポンプのように常に一定の運転周波数で圧縮機を運転する場合に比べて、消費電力を低減することができる。
一方、クライオポンプ10への熱負荷が大きくなったときには、圧縮機差圧を一定にするよう圧縮機モータ172の運転周波数が増加される。このため、冷凍機12に供給されるガス量を十分に確保することができるので、熱負荷の増加に起因するクライオパネル温度の目標温度からの乖離を最小限に抑えることができる。
特に、作動ガス吸気のために高圧側にバルブを開くタイミングが複数の冷凍機12で重なり又はごく接近したときには、必要なガスの総量が大きくなる。例えば圧縮機を単に一定の吐出流量で運転する場合や、圧縮機の吐出圧が不十分である場合には、先にバルブを開いて吸気する冷凍機よりも後にバルブを開く冷凍機のほうが、供給されるガス量が小さくなる。複数の冷凍機12間での供給ガス量の違いは、冷凍機12間での冷凍能力のばらつきを生じさせる。こうした場合に比べて、差圧制御を実行することにより、冷凍機12への作動ガス流量を十分に確保することができる。差圧制御は省エネルギー性に寄与するだけではなく、複数の冷凍機12間の冷凍能力のばらつきを抑えることもできる。
図5は、本発明の一実施形態に係る圧縮機ユニット運転制御の制御フローを説明するための図である。図5に示される制御処理は、クライオポンプ10の運転中に所定の周期で圧縮機コントローラ168により繰り返し実行される。この処理は、各圧縮機ユニット102、104それぞれの圧縮機コントローラ168において他の圧縮機ユニット102、104から独立して実行される。図5においては圧縮機コントローラ168における演算処理を示す部分を破線で区画し、圧縮機ユニット102、104のハードウェアの動作を示す部分を一点鎖線で区画している。
圧縮機コントローラ168は、制御量演算部176を備える。制御量演算部176は、例えば、少なくとも差圧一定制御のための指令制御量を演算するよう構成されている。この実施例では、演算された指令制御量が、圧縮機モータ172の運転周波数とリリーフ弁162の開度とに配分されて差圧一定制御が実行される。他の一実施例においては、圧縮機モータ172の運転周波数及びリリーフ弁162の開度の一方のみを指令制御量として差圧一定制御が実行されてもよい。制御量演算部176は、後述するように、差圧一定制御、吐出圧制御、及び吸入圧制御の少なくともいずれかのための指令制御量を演算するよう構成されていてもよい。
図5に示されるように、圧縮機コントローラ168には目標差圧ΔP0が予め設定され入力されている。目標差圧は例えばCPコントローラ100において設定され、圧縮機コントローラ168に与えられる。第1圧力センサ164により吸入側の測定圧PLが測定され、第2圧力センサ166により吐出側の測定圧PHが測定され、各センサから圧縮機コントローラ168に与えられる。第1圧力センサ164の測定圧PLのほうが第2圧力センサ166の測定圧PHよりも通常は低圧である。
圧縮機コントローラ168は、吐出側測定圧PHから吸入側測定圧PLを減じて測定差圧ΔPを求め、さらに設定差圧ΔP0から測定差圧ΔPを減じて差圧偏差eを求める偏差演算部178を備える。圧縮機コントローラ168の制御量演算部176は、例えばPD演算またはPID演算を含む所定の制御量演算処理により差圧偏差eから指令制御量Dを算出する。
なお、図示されるように圧縮機コントローラ168は、偏差演算部178を制御量演算部176とは別に備えてもよいし、制御量演算部176が偏差演算部178を備えてもよい。また、制御量演算部176の後段に、指令制御量Dを所定時間積算して出力配分処理部180に与えるための積分演算部が設けられていてもよい。
圧縮機コントローラ168は、第1指令出力値D1と第2指令出力値D2とに指令制御量Dを配分する出力配分処理部180を備える。出力配分処理部180は、指令制御量Dの値の大きさに応じて、第1指令出力値D1と第2指令出力値D2を決定する。出力配分処理部180は、出力配分テーブル181を参照し、これに従って指令制御量Dから第1指令出力値D1と第2指令出力値D2を決定する。出力配分テーブル181は予め用意され、出力配分処理部180または圧縮機コントローラ168に保存されている。
指令制御量Dは、圧縮機ユニットの目標流量に相当するパラメータである。指令制御量Dは、目標差圧ΔP0などの目標圧力を実現するために圧縮機ユニットが送出すべき作動ガス流量を表す。なお、指令制御量Dは、圧縮機ユニットの目標流量そのものを直接表す必要はない。指令制御量Dは、関数またはテーブルによって圧縮機ユニットの目標流量に関連付けられたパラメータ、または、圧縮機ユニットの目標流量に相関する任意のパラメータであってもよい。
第1指令出力値D1は、圧縮機モータ172の運転周波数指令値に相当するパラメータである。第1指令出力値D1は、関数またはテーブルによって運転周波数指令値に関連付けられたパラメータ、または、運転周波数指令値に相関する任意のパラメータであってもよい。第2指令出力値D2は、リリーフ弁162の開度指令値に相当するパラメータである。第2指令出力値D2は、関数またはテーブルによって開度指令値に関連付けられたパラメータ、または、開度指令値に相関する任意のパラメータであってもよい。
圧縮機コントローラ168は、圧縮機インバータ指令信号Eを第1出力指令値D1から生成するインバータ指令部182と、リリーフ弁指令信号Rを第2出力指令値D2から生成するリリーフ弁指令部184と、を備える。圧縮機インバータ指令信号Eは、圧縮機インバータ170に与えられ、その指令に従って圧縮機本体140すなわち圧縮機モータ172の運転周波数が制御される。圧縮機インバータ指令信号Eは、例えば運転周波数指令値を表す電圧信号又はその他の電気信号である。また、リリーフ弁指令信号Rは、リリーフ弁ドライバ174に与えられ、その指令に従ってリリーフ弁162の開度が制御される。リリーフ弁指令信号Rは、リリーフ弁162の開度指令値を表す電気信号であり、例えばソレノイドコイルを駆動するためのパルス出力信号である。
このようにして、圧縮機コントローラ168は、圧縮機ユニット102、104からクライオポンプ10(すなわち冷凍機12)に作動ガスが目標流量で供給されるようにリリーフ弁指令信号Rおよび圧縮機インバータ指令信号Eを決定する。圧縮機コントローラ168は、決定されたリリーフ弁指令信号Rに基づきリリーフ弁162の開度を制御する。圧縮機コントローラ168は、リリーフ弁指令信号Rをリリーフ弁ドライバ174に出力し、それにより、リリーフ弁指令信号Rに従ってリリーフ弁162が開かれる。また圧縮機コントローラ168は、決定された圧縮機インバータ指令信号Eに基づき圧縮機本体140の運転周波数を制御する。圧縮機コントローラ168は、圧縮機インバータ指令信号Eを圧縮機インバータ170に出力し、それにより、圧縮機インバータ指令信号Eに従って圧縮機モータ172の運転周波数が制御される。
圧縮機本体140及びリリーフ弁162の動作状態、及び関連する配管やタンク等の特性によって作動ガスであるヘリウムの圧力が決まる。こうして決まったヘリウム圧力が第1圧力センサ164及び第2圧力センサ166により測定される。
上述のように、各圧縮機ユニット102、104においては各々の圧縮機コントローラ168によって独立に差圧一定制御が実行される。圧縮機コントローラ168は、差圧偏差eを最小化する(好ましくはゼロにする)ようフィードバック制御を実行する。
ただし、図5に示す偏差eは差圧の偏差には限られない。一実施例においては、圧縮機コントローラ168は、吐出側測定圧PHと設定圧との偏差から指令制御量を演算する吐出圧制御を実行してもよい。この場合、設定圧は、圧縮機の吐出側圧力の上限値であってもよい。圧縮機コントローラ168は、吐出側測定圧PHがこの上限値を上回ったときに吐出側測定圧PHとの偏差から指令制御量を演算してもよい。上限値は例えばクライオポンプ10の排気能力を保証する圧縮機の最高吐出圧に基づき適宜経験的または実験的に設定してもよい。
このようにすれば、吐出圧の過度の上昇を抑え、安全性をより高めることが可能となる。よって、吐出圧制御は、圧縮機ユニットのための保護制御の一例である。
また、一実施例においては、圧縮機コントローラ168は、吸入側測定圧PLと設定圧との偏差から指令制御量を演算する吸入圧制御を実行してもよい。この場合、設定圧は、圧縮機の吸入側圧力の下限値であってもよい。圧縮機コントローラ168は、吸入側測定圧PLがこの下限値を下回ったときに吸入側測定圧PLとの偏差から指令制御量を演算してもよい。下限値は例えばクライオポンプ10の排気能力を保証する圧縮機の最低吸入圧に基づき適宜経験的または実験的に設定してもよい。
このようにすれば、吸入圧の低下に伴う作動ガス流量の低下に起因する圧縮機本体の過度の温度上昇を抑えることが可能となる。また、作動ガスの配管系から気体のリークが生じている場合に運転を直ちに停止させることなく、過度の圧低下を防ぎつつ運転をある程度の期間継続することも可能であるかもしれない。よって、吸入圧制御は、圧縮機ユニットのための保護制御の一例である。
図6は、本発明の一実施形態に係る出力配分テーブル181を模式的に例示する図である。縦軸は第1出力指令値D1(実線)および第2出力指令値D2(破線)を表し、横軸は指令制御量Dを表す。第1出力指令値D1は実線で示され、第2出力指令値D2は破線で示されている。上述のように、第1出力指令値D1および第2出力指令値D2はそれぞれ運転周波数指令値および開度指令値に相当または相関し、指令制御量Dは圧縮機ユニットの目標流量に相当または相関する。よって、出力配分テーブル181は、圧縮機モータ172の運転周波数指令値と圧縮機ユニットの目標流量との関係、およびリリーフ弁162の開度指令値と圧縮機ユニットの目標流量との関係を表している。
第1出力指令値D1の取りうる値の範囲が、第1区間および第2区間に予め限定されている。第1区間は、下限値D1Lから第1値D11までの範囲であり、第2区間は、第2値D12から上限値D1Uまでの範囲である。第1出力指令値D1は運転周波数指令値に相関するから、図示される下限値D1L、第1値D11、第2値D12、上限値D1Uはそれぞれ、運転周波数の下限値、第1値、第2値、上限値に対応する。
よって、出力配分テーブル181によって、運転周波数の取りうる値の範囲は、下限値から第1値までの第1運転周波数区間、および、第2値から上限値までの第2運転周波数区間に予め限定されている。運転周波数の下限値はゼロより大きく、例えば20Hzから40Hz、または25Hzから35Hzの間にあり、例えば30Hzであってもよい。運転周波数の上限値は、例えば70Hzから90Hz、または75Hzから85Hzの間にあり、例えば78Hzであってもよい。運転周波数の上限値および下限値は、例えば、圧縮機の仕様として予め定められる。
第1値D11から第2値D12までの区間は使用されない。この区間に対応する運転周波数の第1値から第2値までの不使用周波数区間が圧縮機構造部136の少なくとも一部分(例えば、低圧配管142、高圧配管144、バイパス配管158などの配管)についての少なくとも1つの固有振動数ω0を含むように定められている。運転周波数の第1値および第2値は下限値と上限値の間にあり、第2値は第1値より大きい。固有振動数ω0は設計者の経験的知見、実験またはシミュレーションにより既知である。第1値は固有振動数ω0より小さい値に定められ、第2値は固有振動数ω0より大きい値に定められる。
出力配分テーブル181は、指令制御量Dの第1値d1、第2値d2、第3値d3、第4値d4を、第1出力指令値D1の下限値D1L、第1値D11、第2値D12、上限値D1Uに対応付けている。このように指定された指令制御量Dと第1出力指令値D1の組(つまり、(d1,D1L)、(d2,D11)、(d3,D12)、(d4,D1U))どうしの間は直線補間により指令制御量Dと第1出力指令値D1の関係が定められている。
図6に示されるように、指令制御量Dが最小値d0から第1値d1の間にある場合、第1出力指令値D1は下限値D1Lを取る。指令制御量Dが第1値d1から第2値d2の間にある場合、第1出力指令値D1は下限値D1Lと第1値D11の間にあり、第1出力指令値D1は指令制御量Dと直線的または比例的な関係にある。指令制御量Dが第2値d2から第3値d3の間にある場合、第1出力指令値D1は第2値D12を取る。指令制御量Dが第3値d3から第4値d4の間にある場合、第1出力指令値D1は第2値D12と上限値D1Uの間にあり、第1出力指令値D1は指令制御量Dと直線的または比例的な関係にある。
このような指令制御量Dと第1出力指令値D1との関係により、出力配分テーブル181は、圧縮機本体140の下限吐出流量、第1吐出流量、第2吐出流量、および上限吐出流量を、運転周波数の下限値、第1値、第2値、上限値に対応付けている。圧縮機ユニットの目標流量が下限吐出流量より小さい場合、運転周波数は下限値に固定される。目標流量が下限吐出流量から第1吐出流量へと増えていくとき、運転周波数は下限値から第1値へと直線的に増えていく。目標流量が第1吐出流量に達すると、運転周波数は第1値から第2値へと切り替わり、不連続的に増加する。目標流量が第1吐出流量から第2吐出流量へと増えていくとき、運転周波数は第2値に固定される。目標流量が第2吐出流量から上限値へと増えていくとき、運転周波数は第2値から上限値へと直線的に増えていく。目標流量が減るときは、これとは逆の様相で運転周波数が変化する。
また、出力配分テーブル181は、指令制御量Dの最小値d0、第1値d1、第2値d2、第3値d3、第4値d4を、第2出力指令値D2の最大値D22、最小値D20、中間値D21、最小値D20、最小値D20に対応付けている。第2出力指令値D2の最大値D22はリリーフ弁162の最大開度に対応してもよい。第2出力指令値D2の最小値D20はリリーフ弁162の閉鎖に対応してもよい。第2出力指令値D2の中間値D21は、リリーフ弁162のある中間的な開度に対応してもよい。指令制御量Dと第2出力指令値D2の組どうしの間は直線補間により指令制御量Dと第2出力指令値D2の関係が定められている。
図6に示されるように、指令制御量Dが最小値d0から第1値d1の間にある場合、第2出力指令値D2は最大値D22と最小値D20の間にあり、第2出力指令値D2は指令制御量Dと直線的または比例的な関係にある。指令制御量Dが第1値d1から第2値d2の間にある場合、第2出力指令値D2は最小値D20を取る。指令制御量Dが第2値d2から第3値d3の間にある場合、第2出力指令値D2は中間値D21と最小値D20の間にあり、第2出力指令値D2は指令制御量Dと直線的または比例的な関係にある。指令制御量Dが第3値d3から第4値d4の間にある場合、第2出力指令値D2は最小値D20を取る。
このような指令制御量Dと第2出力指令値D2との関係により、出力配分テーブル181は、圧縮機本体140の吐出流量をリリーフ弁162の開度(すなわちバイパス配管158の流量)に対応付けている。圧縮機ユニットの目標流量がゼロのときリリーフ弁162は最大開度とされ、そこから目標流量が下限吐出流量へと増えていくとき、リリーフ弁162の開度は徐々に小さくなっていく。目標流量が下限吐出流量から第1吐出流量へと増えていくとき、リリーフ弁162は閉鎖される。目標流量が第1吐出流量に達すると、リリーフ弁162が中間的な開度で開かれる。目標流量が第1吐出流量から第2吐出流量へと増えていくとき、リリーフ弁162の開度は徐々に小さくなっていく。目標流量が第2吐出流量から上限値へと増えていくとき、リリーフ弁162は閉鎖される。目標流量が減るときは、これとは逆の様相で開度が変化する。
このような出力配分テーブル181を参照することによって、圧縮機コントローラ168は、目標流量が第1吐出流量と第2吐出流量の間にある場合、運転周波数が第2値を取るようにインバータ指令信号Eを決定する。それとともに、圧縮機コントローラ168は、そのインバータ指令信号に従って得られる圧縮機本体140の吐出流量から目標流量を差し引いた差分流量にバイパス配管158の流量が一致するようにリリーフ弁指令信号Rを決定する。
実施形態に係る圧縮機ユニットによると、圧縮機構造部136の固有振動数ω0を含むように運転周波数の不使用区間が定められているので、圧縮機本体140の動作による圧縮機構造部136の共振は生じがたい。また、運転周波数が第2値を取るようにインバータ指令信号Eが決定されるので、目標流量に余剰流量(上記の差分流量に相当する)を付加した合計流量で作動ガスが圧縮機本体140から高圧配管144に吐出される。その余剰流量にバイパス配管158の流量が相当するようにリリーフ弁指令信号Rが決定されるので、余剰流量は高圧配管144から低圧配管142に作動ガスが回収される。こうして、圧縮機ユニット102、104は目標流量で作動ガスを冷凍機12に供給することができる。構造的な設計変更を要することなく、極低温冷凍機のためのインバータ駆動の圧縮機ユニットに生じうる共振を防止または緩和するとともに必要な吐出流量を確保することができる。
なお、目標流量が第1吐出流量と第2吐出流量の間にある場合、運転周波数を第2値に固定することに代えて、運転周波数が第2運転周波数区間に設定されるようにインバータ指令信号Eを決定してもよい。この場合、運転周波数は第2値より大きい値を取るから、圧縮機本体140の吐出流量が増える。リリーフ弁162の開度を大きくしバイパス配管158の流量を増すことによって、余剰流量を相殺することが可能である。ただし、運転周波数が小さいほうが消費電力を低減できるので、上述のように運転周波数を第2値とすることが好ましい。
また、出力配分テーブル181を参照することによって、圧縮機コントローラ168は、目標流量が下限吐出流量と第1吐出流量の間にある場合、運転周波数が第1運転周波数区間に設定されるようにインバータ指令信号Eを決定する。それとともに、圧縮機コントローラ168は、リリーフ弁162が閉鎖されるようにリリーフ弁指令信号Rを決定する。この場合、圧縮機インバータ170のみによって圧縮機ユニットの吐出流量が制御される。リリーフ弁162は吐出流量制御に使用されない。
圧縮機コントローラ168は、目標流量が第2吐出流量と上限吐出流量の間にある場合、運転周波数が第2運転周波数区間に設定されるようにインバータ指令信号Eを決定する。それとともに、圧縮機コントローラ168は、リリーフ弁162が閉鎖されるようにリリーフ弁指令信号Rを決定する。この場合、圧縮機インバータ170のみによって圧縮機ユニットの吐出流量が制御される。リリーフ弁162は吐出流量制御に使用されない。
圧縮機コントローラ168は、目標流量がゼロと下限吐出流量の間にある場合、運転周波数が下限値を取るようにインバータ指令信号Eを決定する。それとともに、圧縮機コントローラ168は、上述の差分流量にバイパス配管158の流量が一致するようにリリーフ弁指令信号Rを決定する。この場合、リリーフ弁162のみによって圧縮機ユニットの吐出流量が制御される。
圧縮機コントローラは、運転周波数が第1値から第2値に切り替わるとき、リリーフ弁指令信号Rおよび/またはインバータ指令信号Eに平滑化処理を施してもよい。平滑化処理は、例えばローパスフィルタや移動平均などの時間的平滑化、その他の任意の公知の平滑化処理を採用することができる。このようにすれば、リリーフ弁指令信号Rおよび/またはインバータ指令信号Eの不連続的な変化によるヘリウムガス流量への悪影響を防止または緩和することができる。
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
ある実施形態においては、CPコントローラ100が、圧縮機ユニット102、104を制御してもよい。CPコントローラ100が、圧縮機コントローラ168を備えてもよい。CPコントローラ100が、圧縮機インバータ170を備えてもよい。CPコントローラ100が、リリーフ弁ドライバ174、制御量演算部176、偏差演算部178、出力配分処理部180、出力配分テーブル181、インバータ指令部182、及びリリーフ弁指令部184のうち少なくとも1つを備えてもよい。