果汁含有炭酸アルコール飲料は、アルコール飲料中に果汁、炭酸を含有させることによって果汁の甘味、酸味及び香り、炭酸の刺激を付与して、アルコール飲料のおいしさを向上させている。果汁含有炭酸アルコール飲料としては、例えば、グレープフルーツ、レモン、ライム、オレンジなどの柑橘類の果汁を含有させた商品や、梅、林檎、葡萄、苺などの果汁を含有させた商品が多く市販されている。例えば、酎ハイは、元々、甲類焼酎をレモン及び炭酸水で希釈して、飲みやすくした炭酸アルコール飲料である。また、様々な果汁を炭酸水及びアルコールで割った炭酸アルコール飲料が数多く商品化されている。
果汁含有炭酸アルコール飲料は、果実由来の甘味及び酸味、味のふくらみ等を楽しむことができる。果汁は糖質、クエン酸、アミノ酸等の成分によって味に厚み、ボディ感を付与し、炭酸の苦味を軽減する効果を有し、美味しさの向上に有益である。
その一方、果汁含有炭酸アルコール飲料は甘味が後を引くように残り、香味にべたつき感が生じることがある。また、柑橘類果実の果汁は、炭酸アルコール飲料に配合された場合、酸素や熱などによって劣化し、苦味、渋味が目立つようになる。
近年では、飲料に対する消費者の嗜好が、飲用後の爽快感、清涼感に向けられるようになり、甘味が後を引かないという、キレ(スッキリ感)に優れた飲料が人気を集めている。例えば、特許文献1には、果汁感はあっても香味のべたつき感のない果汁含有アルコール飲料とすることのできる香味改善用組成物及びこれを含む果汁含有アルコール飲料が記載されている。しかしながら、添加物を含有させて果汁の香味をマスキングする手段では、スッキリ感が向上する程度は不十分である。
また、近年では、消費者の健康指向が高まり、カロリーをできるだけ低下させた果汁含有炭酸アルコール飲料が要求されている。例えば、特許文献2には、高甘味度甘味料と柑橘類果汁とを含む、糖類ゼロタイプのアルコール飲料が記載されている。ここでいう糖類は、単糖類又は二糖類であって、糖アルコールでないものを意味する。
このアルコール飲料では、低カロリー化のために、糖類の代わりにカロリーが低い高甘味度甘味料を使用する。高甘味度甘味料は味質が糖類と異なり、後味に苦み、エグミを感じさせるものもある。高甘味度甘味料の不快な後味を抑制するために、特定量のマルチトールが使用されている。
特許文献3には、低カロリー化を目的として高甘味度甘味料を用いたアルコール飲料が記載されている。高甘味度甘味料はpH3.0以下の環境下において安定性に劣るものがある。そこで、特許文献3では、アルコール飲料をpH3.0以上に維持することで高甘味度甘味料の呈味性を維持し、pH3.0以上の環境下でも酸味を不足させないために、クエン酸及びリンゴ酸が併用されている。
しかしながら、特許文献2及び3では、アルコール飲料の甘味物質として低カロリー甘味料が使用されているが、糖質の低減が行われておらず、カロリーを低下させる程度が未だ不十分である。糖質とは、食物繊維ではない炭水化物をいう。
炭酸アルコール飲料の低カロリー化を十分に達成するためには、可能な限り糖質を低減する必要がある。可能な限り糖質を低減した飲料の一例として、糖質ゼロ飲料がある。「糖質ゼロ」との表示は、日本の健康増進法に基づく栄養表示基準の規定によれば、飲料に含まれる糖質の量が、飲料100mlあたり0.5g未満のものに対して表示することができる。
しかしながら、果汁含有炭酸アルコール飲料から単に糖質の含有量を低下させた場合は、甘味、酸味及び香りのバランスが崩れ、厚み・ボディ感や味わいが不足し、苦味が目立ちやすい。かといって、炭酸アルコール飲料に果汁を使用しない場合は、美味しさが低下する。
本発明でいう炭酸アルコール飲料とは、炭酸ガスを含有するアルコール飲料をいう。炭酸ガスは、ガスボリュームが1.5〜3.6になる範囲の量で用いるのが好ましい。炭酸ガスのガスボリュームが1.5 未満であると、炭酸飲料らしい爽快感に乏しく、また、3.6を超えると、苦味が強くなり、飲料の美味しさが低下する。炭酸ガスボリュームは、好ましくは、3.0〜3.6である。
アルコール飲料とは、アルコールを含有する飲料をいう。アルコールの含有量は、1〜12v/v%、好ましくは1〜10v/v%、最も好ましくは1〜9v/v%である。本発明のアルコール飲料に用いるアルコールは、果実成分含有原料酒以外のものであれば、特に限定されない。果実成分含有原料酒を使用すると、得られる飲料のスッキリ感が低下し易くなる。
アルコールの具体例には、原料用アルコール、スピリッツ類(ウォッカ、ジン、ラム、等)、リキュール類、ウイスキー、焼酎(甲類、乙類、甲乙混和)等、清酒、ビール等の醸造酒が挙げられる。これらは単独で又は複数を組み合わせていても良い。
甘味物質とは、飲料に甘味を付与することができる物質をいう。例えば、高甘味度甘味料、糖類及び糖アルコールは甘味物質に該当する。ここでいう高甘味度甘味料とは、厚生労働大臣が指定した「指定添加物」と長年使用されてきた天然添加物として品目が決められている「既存添加物」に「甘味料」と分類されている物質をいう。「指定添加物」及び「既存添加物」に含まれる物質は日本食品添加物協会のホームページに記載されている。
甘味料の具体例としては、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、キシリトール、グリチルリチン酸二ナトリウム、サッカリン、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、スクラロース、ネオテーム、アラビノース、カンゾウ抽出物、キシロース、ステビア、タウマチン、ラカンカ抽出物、ラムノース及びリボースが挙げられる。
糖類の具体例としては、果糖ぶどう糖液糖、砂糖、麦芽糖及び乳糖が挙げられる。
糖アルコールの具体例としては、還元麦芽糖水飴、エリスリトール、キシリトール及びマルチトールが挙げられる。
甘味物質としては、一種類の物質が用いられてもよく、複数の種類の物質が用いられてもよい。好ましくは、甘味物質は、アセスルファムカリウム、スクラロース、果糖ぶどう糖液糖等である。
酸味物質とは、飲料に酸味を付与することができる物質をいう。一般に、酸味物質は酸味料、及び人体に無害な酸又はその塩である。ここでいう酸味料とは、上記「指定添加物」及び「既存添加物」に「酸味料」と分類されている物質をいう。
酸味料の具体例としては、アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL−酒石酸、L−酒石酸、DL−酒石酸ナトリウム、L−酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL−リンゴ酸、DL−リンゴ酸ナトリウム及びリン酸が挙げられる。これらは、カリウム塩やナトリウム塩といった塩の形態で用いることも可能であるし、緩衝液の形態で用いることも可能である。
酸味物質としては、一種類の物質が用いられてもよく、複数の種類の物質が用いられてもよい。好ましくは、酸味物質は、クエン酸等である。
フルーツフレーバーは食用果実の香りを再現した香料である。フルーツフレーバーは飲料の清涼感及びスッキリ感を増強させて、飲みやすくするために含有させる。フルーツフレーバーの種類としては、爽やか、すっきりした香りのものであれば、特に限定されない。例えば、リンゴ、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ、シークァーサー、シトラス、ブドウ、及びチェリー等のフレーバーが挙げられる。
フルーツフレーバーとしては、一種類のフレーバーが用いられてもよく、複数の種類のフレーバーが用いられてもよい。好ましくは、フルーツフレーバーは、レモンフレーバー、梅フレーバー、シークァーサーフレーバー及びグレープフルーツフレーバーである。
本発明の炭酸アルコール飲料は果汁も果実由来成分含有原料酒も含有しない。そのため、甘味が後を引かなくなり、香味にべたつき感がなく、また、果実由来成分の劣化による苦味、渋味の増大が防止される。その結果、飲用後の清涼感、スッキリ感が増強される。
尚、フルーツフレーバーが果実を原料にして製造された物質である場合は、本発明の炭酸アルコール飲料に含有させてよい。香料であれば、飲用後に甘味が後を引いたり、香味がべたつく等の問題が生じない。
本発明の炭酸アルコール飲料は砂糖を1.00とした甘味度が1/100ml以下である。砂糖を1.00とした甘味度(以下、単に「甘味度」ということがある。)とは、砂糖の甘さを1.00とした場合の、甘味の強さを官能検査により評価したものである。砂糖を1.00とした甘味度は甘味料の甘味度及び甘味料の使用量から算出する。甘味料の甘味度はアセスルファムカリウムであれば200、スクラロースであれば600である。本値は精糖工業会発行「甘味料の総覧」(1990年5月発行)及び株式会社光琳発行「高甘味度甘味料スクラロースのすべて」(2003年5月発行)に記載されている値を採用する。本発明の炭酸アルコール飲料の甘味度は、好ましくは、0.05/100ml〜1/100ml、より好ましくは0.1/100ml〜0.5/100mlである。
本発明の炭酸アルコール飲料はクエン酸換算した酸度が0.1g/100ml以下である。クエン酸換算した酸度は、国税庁所定分析法にて定められた酸度の測定方法に基づいて算出する。クエン酸換算した酸度は、好ましくは、0.04g/100ml〜0.08g/100mlである。
砂糖を1.00とした甘味度及びクエン酸換算した酸度を上記範囲に調節することにより、甘味と酸味のバランスがよくなり、炭酸アルコール飲料の美味しさが向上する。
本発明の炭酸アルコール飲料は糖質が0.5g/100ml未満である。糖質を低減することで、肥満、糖尿病等の糖質の摂取に起因した健康に対する悪影響が生じ難くなる。また、糖質ゼロになることで、炭酸アルコール飲料のスッキリ感や後切れの良さなどが実現できる。
本発明の炭酸アルコール飲料では、更に必要に応じて、色素、香料、ビタミン類、アミノ酸、水溶性食物繊維、安定化剤、乳化剤等、炭酸アルコール飲料の分野で通常用いられている原料や食品添加物を用いてもよい。色素の具体例としては、カラメル等が挙げられる。
本発明の炭酸アルコール飲料の製造方法は、一例として次に説明するとおり、炭酸アルコール飲料を製造する際に通常行われる工程を包含する。飲用水、甘味物質、酸味物質、フルーツフレーバー、食品添加物、アルコールを所定量、均一に混合する。次いで、得られた混合液を冷却し、カーボネーションを行う。その後、容器に充填・密封することにより目的とする炭酸アルコール飲料を製造することができる。カーボネーション後に膜ろ過フィルターを用いてろ過してもよい。また、濃厚な状態で中間液を作成した後に、炭酸水を添加して炭酸アルコール飲料を調製してもよい。
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例
甘味物質として、アセスルファムカリウム(甘味度200)、スクラロース(甘味度600)を準備した。酸味物質としてクエン酸及びクエン酸三ナトリウムを準備した。フルーツフレーバーとしてレモンフレーバーを準備した。アルコールとして原料用アルコールを準備した。
上記甘味物質、酸味物質、レモンフレーバー、原料用アルコール、カラメル色素及び飲用水を適量配合し、次いで、カーボネーションを行うことにより、甘味度及び酸度が表1に示すとおりに調整された炭酸アルコール飲料A〜Lを得た。炭酸アルコール飲料A〜Lには、それぞれ、使用した甘味物質の種類に対応したものがある。炭酸アルコール飲料中、アルコール濃度は8v/v%であり、炭酸ガスのガスボリュームは3.3である。
製造した炭酸アルコール飲料の糖質(g/100ml)を表2に示す。
得られた炭酸アルコール飲料を官能試験に供した。炭酸アルコール飲料の官能試験は次のようにして行った。
炭酸アルコール飲料専門パネル3人が各飲料を試飲し、甘味、酸味及び香りのバランスに着目した美味しさについて、高いものを5、低いものを1として、5段階評価した。評価点は、3人の平均値を採用した。結果を表3及び図1に示す。
後味のスッキリ感は、全ての飲料が優れていた。