JP2018119029A - 撥水液、撥水性物品及びその製造方法 - Google Patents

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濱口 滋生
Shigeo Hamaguchi
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Abstract

【課題】本発明は、熱処理温度が150℃より低温であっても、良好な滑水性と耐候性を有する撥水性被膜を形成することが出来る、フルオロカーボンユニットの数が2〜7のフルオロアルキルシラン系化合物を含む撥水液、該撥水液を用いて得られる撥水性物品及びその製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】少なくとも、一般式[1]で表されるフルオロアルキルシラン系化合物、一般式[2]で表されるケイ素化合物、有機溶媒、水、及び、酸を含み、該フルオロアルキルシラン系化合物と該ケイ素化合物の質量比が1:0.25〜1:0.7である、撥水性被膜を形成するための撥水液。【選択図】なし

Description

本発明は、各種基材に撥水性被膜を形成するために用いる撥水液、該撥水液を用いて得られる撥水性物品及びその製造方法に関する。
撥水性を有する撥水ガラスは、雨天時、雨滴をはじくため、室内から室外への良好な視界が保たれる。このため、撥水ガラスは、建築、車両、船舶、航空機など種々の分野にて、使用されている。特に、水滴が滑りやすい滑水性の優れた撥水ガラスは、雨滴除去性が良好なため、雨天運転時の安全性が格段に向上する。このため、実使用に耐えうる耐久性を有する滑水性の優れた撥水ガラスが望まれている。また、滑水性の優れた撥水性材料は、着氷、着雪を低減させる効果も有しているため、豪雪地域の電線や屋外アンテナ向けの撥水性物品としても期待されている。
近年、フルオロアルキルシラン系化合物において、フルオロカーボンユニットの数(CFとCFの総数)が大きなもの、例えば、フルオロカーボンユニットの数が8以上のフルオロアルキルシラン系化合物(以降、「長鎖のフルオロアルキルシラン系化合物」と記載する場合がある)については、その合成プロセスで副生成物として排出されるPFOA(perfluorooctanoic acid)に対する環境への負荷の懸念が明らかとなったため、2003年4月にEPA(米国環境保護庁)がPFOAに対する科学的調査を強化する旨を発表以来、長鎖のフルオロアルキルシラン系化合物は入手困難な状況となった。
一方、フルオロアルキルシラン系化合物におけるフルオロカーボンユニット数と、撥水性及び滑水性には関係性があり、フルオロカーボンユニット数が少なくなるにつれ、化合物の剛直性が低くなり、基材表面に綺麗に配列し難くなる傾向にある。特にフルオロカーボンユニットの数が7以下の場合は、その傾向が強くなり、結果、撥水性及び滑水性が低下してしまう傾向がある。
そのため、フルオロカーボンユニットの数が7以下のフルオロアルキルシラン系化合物を用いても、長鎖のフルオロアルキルシラン系化合物と同様の撥水性及び滑水性を備えつつ、耐久性を有する撥水膜及び該撥水膜を形成出来る処理剤が強く求められている。
特許文献1には、フルオロカーボンユニットの数が6のフルオロアルキルシラン系化合物である(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)トリエトキシシランを用いた、耐候性に優れる撥水性被膜について記載されている。
特許文献2には、フルオロカーボンユニットの数が6のフルオロアルキルシラン系化合物である(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)トリエトキシシランと、テトラメトキシシラン等とを重縮合して形成した有機―無機透明ハイブリッド被膜は、前進接触角と後退接触角の差(ヒステリシス)が小さく、滑水性が良好なことが記載されている。
特許文献3には、フルオロカーボンユニットの6のフルオロアルキルシラン系化合物である(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)トリエトキシシラン〔CF(CFCHCHSi(OCHCH〕と、ジメチルジメトキシシランを用いた、撥水性被膜について記載されている。
特開2014−043552号公報 特開2013−213181号公報 US2016/0215169 A1
特許文献3に記載の撥水性被膜は、撥水液をガラス基板上に塗布した後、熱処理温度(ガラスの到達した最高温度)150℃という高温での加熱工程を行っている。しかし、自動車のウインドシールドガラスやフロントドアガラスに用いられている合わせガラス基板上に、上記と同様の加熱工程で撥水処理を施す場合、樹脂製の中間膜が高温のため発泡するといった問題が生じてしまった。さらには、熱処理温度が150℃という高温の場合、電気炉を高温にするための消費電力が大きくなってしまい、また、電気炉の周辺で作業する者らの安全性の確保の点で問題が生じてしまった。
以上の観点から、熱処理温度を低温化することによって、合わせガラス基板上への撥水処理が可能となり、消費電力のコストダウンにも繋がると発明者らは考えた。しかし、単純に熱処理温度を低温にしたところ、得られる撥水性被膜の滑水性や耐候性が不十分となってしまうことが分かってきた(後述の比較例参照)。そのため、熱処理温度が150℃より低温であっても、滑水性と耐候性を両立する撥水性被膜が強く求められている。
そこで、本発明は、熱処理温度が150℃より低温であっても、良好な滑水性と耐候性を両立する撥水性被膜を形成することが出来る、フルオロカーボンユニットの数が7以下のフルオロアルキルシラン系化合物を含む撥水液、該撥水液を用いて得られる撥水性物品及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み、種々検討した結果、特定のケイ素化合物を、フルオロカーボンユニットの数が2〜7の特定のフルオロアルキルシラン系化合物、有機溶媒、水、酸触媒とともに撥水液に含有させ、各原料を特定の混合比率とすることで、熱処理温度が150℃より低温であっても、滑水性と耐候性が良好な撥水性被膜を形成することが出来ることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の発明を含む。
[発明1]
少なくとも、
下記一般式[1]で表されるフルオロアルキルシラン系化合物、
下記一般式[2]で表されるケイ素化合物、
有機溶媒、水、及び、酸
を含み、該フルオロアルキルシラン系化合物と該ケイ素化合物の質量比が1:0.25〜1:0.7である、撥水性被膜を形成するための撥水液。
(式[1]中、mは、2〜7の整数であり、nは、1〜5の整数である。また、Xはそれぞれ独立してアルコキシ基、クロロ基、イソシアネート基又はヒドロキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基であり、pは1〜3の整数である。)

SiY [2]
(式[2]中、Rは、それぞれ独立して炭素数が1〜20の炭化水素基である。また、Yは、それぞれ独立してアルコキシ基、クロロ基、イソシアネート基又はヒドロキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基である。なお、Rは、分岐状の炭化水素基や環状の炭化水素基であっても良い。)
[発明2]
前記一般式[2]で表されるケイ素化合物において、Rが、それぞれ独立して炭素数が1〜5の炭化水素基であり、Yが、それぞれ独立してアルコキシ基であることを特徴とする、発明1に記載の撥水液。
[発明3]
前記一般式[2]で表されるケイ素化合物において、Rが、それぞれ独立して炭素数が1〜3の炭化水素基であり、Yが、それぞれ独立してメトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基であることを特徴とする、発明1に記載の撥水液。
[発明4]
前記一般式[1]で表されるフルオロアルキルシラン系化合物と、前記一般式[2]で表されるケイ素化合物の質量比が、1:0.25〜1:0.6の質量比であることを特徴とする、発明1乃至3のいずれか1項に記載の撥水液。
[発明5]
前記酸が、有機スルホン酸であることを特徴とする、発明1乃至4のいずれか1項に記載の撥水液。
[発明6]
前記一般式[1]で表されるフルオロアルキルシラン系化合物において、mが2〜7の整数であり、nが1〜3の整数であり、Xがそれぞれ独立してアルコキシ基であり、pが3であることを特徴とする、発明1乃至5のいずれか1項に記載の撥水液。
[発明7]
前記一般式[1]で表されるフルオロアルキルシラン系化合物において、mが4〜6の整数であり、nが1〜3の整数であり、Xがそれぞれ独立してアルコキシ基であり、pが3であることを特徴とする、発明1乃至5のいずれか1項に記載の撥水液。
[発明8]
少なくとも、
下記一般式[1−A]で表されるフルオロアルキルシラン系化合物、
下記一般式[2−A]で表されるケイ素化合物、
有機溶媒、水、及び、有機スルホン酸
を含み、該フルオロアルキルシラン系化合物と該ケイ素化合物の質量比が1:0.25〜1:0.6である、撥水性被膜を形成するための撥水液。
(式[1−A]中、mは、4〜6の整数であり、nは、1〜3の整数である。また、Xはそれぞれ独立してアルコキシ基である。)

SiY [2−A]
(式[2−A]中、Rは、それぞれ独立して炭素数が1〜3の炭化水素基である。また、Yは、それぞれ独立してメトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基である。なお、Rは、分岐状の炭化水素基や環状の炭化水素基であっても良い。)
[発明9]
前記有機スルホン酸のモル数が、前記一般式[1−A]で表されるフルオロアルキルシラン系化合物のモル数と前記一般式[2−A]で表されるケイ素化合物のモル数の合計の0.1〜13倍であり、
前記水のモル数が、前記一般式[1−A]で表されるフルオロアルキルシラン系化合物のモル数と前記一般式[2−A]で表されるケイ素化合物のモル数の合計の0.1〜130倍であることを特徴とする、発明8に記載の撥水液。
[発明10]
前記一般式[1−A]で表されるフルオロアルキルシラン系化合物と、前記一般式[2−A]で表されるケイ素化合物との部分加水分解重縮合物を含むことを特徴とする、撥水性被膜。
[発明11]
基材と、該基材上に撥水性被膜を有する撥水性物品の製造方法であって、該撥水性被膜が、発明1乃至9のいずれか1項に記載の撥水液を該基材の表面上に塗布することにより形成されることを特徴とする、撥水性物品の製造方法。
[発明12]
前記撥水液を基材の表面上に塗布した後、30〜100℃で1〜60分間加熱することを特徴とする、発明11に記載の撥水性物品の製造方法。
[発明13]
前記撥水液を基材の表面上に塗布した後、35〜90℃で3〜30分間加熱することを特徴とする、発明11に記載の撥水性物品の製造方法。
[発明14]
前記撥水液を基材の表面上に塗布する方法が、手塗り法であることを特徴とする、発明11乃至13のいずれか1項に記載の撥水性物品の製造方法。
[発明15]
撥水性被膜の膜厚が、10nm未満1nm以上であることを特徴とする、発明11乃至14のいずれか1項に記載の撥水性物品の製造方法。
[発明16]
前記基材がガラスであることを特徴とする、発明11乃至15のいずれか1項に記載の撥水性物品の製造方法。
本発明によると、熱処理温度が150℃より低温であっても、フルオロカーボンユニットの数が2〜7のフルオロアルキルシラン系化合物を含む撥水液を用いて、良好な滑水性と耐候性が両立する撥水性被膜を形成することが出来る。
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
<フルオロアルキルシラン系化合物>
本発明の撥水液においては、下記一般式[1]で表されるフルオロアルキルシラン系化合物が用いられる。
ここで、mは2〜7の整数であり、nは1〜5の整数である。また、Xはそれぞれ独立してアルコキシ基、クロロ基、イソシアネート基又はヒドロキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基であり、pは1〜3の整数である。なお、mは、フルオロカーボンユニットの数(CFとCFの総数)となる。
フルオロカーボンユニットの数(CFとCFの総数)mが増加すると、得られる撥水性被膜の耐候性は改善する。しかしながら、 前記背景の通り、mの数が大きなフルオロアルキルシラン系化合物は入手が困難になっている。一方、mの数が小さいフルオロアルキルシラン系化合物では、フルオロアルキルシラン鎖が短いため、撥水性被膜の撥水性・耐候性が不十分となりやすい。そこで、mは2〜7の整数とした。
前記一般式[1]で表されるフルオロアルキルシラン系化合物としては、例えば、CF3(CF25CH2CH2Si(OCH33、CF3(CF25CH2CH2Si(OC253、CF3(CF25CH2CH2SiCH3(OCH32、CF3(CF25CH2CH2Si(CH32OCH3、CF3(CF23CH2CH2Si(OCH33、CF3(CF23CH2CH2SiCH3(OCH32、CF3(CF23CH2CH2Si(CH32OCH3、CF3(CF25CH2CH2SiCl3、CF3(CF25CH2CH2SiCH3Cl2、CF3(CF25CH2CH2Si(CH32Cl、CF3(CF23CH2CH2SiCl3、CF3(CF23CH2CH2SiCH3Cl2、CF3(CF23CH2CH2Si(CH32Cl等が使用できる。入手容易性と、得られる撥水性物品における撥水性被膜の耐久性の観点から、前記一般式[1]のmが4〜6の整数、及び/又は、nが1〜3の整数であるフルオロアルキルシラン系化合物が好ましい。
また、前記一般式[1]において、Xとしては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、イソシアネート基又はヒドロキシル基を用いることができる。ただし、これらの官能基の反応性が高すぎると、撥水液調合時の取扱いが難しくなるだけでなく、撥水液のポットライフが短くなる場合がある。一方、反応性が低すぎると、反応が十分進行しなくなり、生成するシラノール基の量が十分でなくなるため、基材と得られる撥水性被膜の結合が十分でなくなり、撥水性被膜の耐候性が低くなる場合がある。取扱いの容易さ、撥水液のポットライフ、得られる撥水性被膜の耐候性を考慮すると、Xとしてはアルコキシ基が好ましく、中でもメトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。さらに、基材と反応可能な官能基Xの数は、1分子あたり1〜3個であるが、Xの数が多いほど、基材と得られる撥水性被膜の結合が十分になり耐久性がよくなるので3個が好ましい。
撥水液を塗布する基材がガラス基材の場合、前記一般式[1]で表されるフルオロアルキルシラン系化合物は、片側末端に、ガラス基材表面のシラノール基と反応可能な官能基Xを有している。このような官能基を両側末端に有するフルオロアルキルシラン系化合物を撥水液が含む場合、撥水液をガラス基材に塗布・乾燥後、該フルオロアルキルシラン系化合物が余剰分となり易く、この余剰分はガラス基材に強固に固着し、乾燥後の余剰分の除去が困難となる傾向がある。そのため、片側末端のみにシラノール基と反応可能な官能基を有するフルオロアルキルシラン系化合物が好適に用いられる。
また、前記フルオロアルキルシラン系化合物の添加量は、撥水液の総量に対し、通常0.1〜20質量%であり、1.0〜10質量%が好ましく、2.0〜5.0質量%がより好ましく、2.5〜3.5質量%が特に好ましい。0.1質量%未満では、初期撥水性(接触角)、耐候性が著しく低下する。また、20質量%を超えると撥水液調合時の取り扱い性や撥水液のポットライフが悪くなるほか、撥水液が高コストとなる。
<ケイ素化合物>
本発明の撥水液に使用されるケイ素化合物としては、下記一般式[2]で示されるケイ素化合物が用いられる。
SiY [2]
(式[2]中、Rは、それぞれ独立して炭素数が1〜20の炭化水素基である。また、Yは、それぞれ独立してアルコキシ基、クロロ基、イソシアネート基又はヒドロキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基である。なお、Rは、分岐状の炭化水素基や環状の炭化水素基であっても良い。)
基材上に、前記フルオロアルキルシラン系化合物が緻密に並んだ撥水性被膜が形成されている場合、該撥水性被膜の最表面であるフルオロカーボン基は、運動性(柔軟性)が小さく、水滴を転がす(押し流す)力は小さいと考えられる。そこで、撥水性被膜の滑水性を向上させる方法として、フルオロカーボン基の距離を隔たせることで、フルオロカーボン基の運動性を向上させ、水滴を転がす力を大きくするという方法が考えられる。
前記ケイ素化合物は、前記撥水液を用いて撥水性被膜が形成されるときに、前記フルオロアルキルシラン系化合物の分子間にスペーサーとして入り込ませ、該フルオロアルキルシラン系化合物のフルオロカーボン基の距離を隔たせることにより、該フルオロカーボン基の運動性を向上させるための成分である。該フルオロカーボン基の運動性の向上により、形成された撥水性被膜の滑水性は、前記ケイ素化合物を用いなかった場合よりも向上する。
前記フルオロアルキルシラン系化合物の分子間を隔たせるスペーサーとして、不活性基(R)を2つ有する前記ケイ素化合物以外に、不活性基を有さないテトラアルコキシシラン(TMOSなど)や、不活性基を1つ有するアルキルトリアルコキシシラン(MTESなど)も考えうるが、これらを用いて、手塗り法により撥水性被膜を形成した場合、SiO層が不均一に形成され、外観良好な均一な撥水性被膜を形成する事が難しく、ヘイズの大きな白濁した膜となるため、好ましくない場合がある。
また、不活性基を3つ有するトリアルキルアルコキシシラン(トリメチルエトキシシランなど)を用いた場合では、スペーサーとガラスの密着性が不十分となり、耐候性が不十分になりやすい。
前記一般式[2]で示されるケイ素化合物としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジイソシアネートシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ジ‐n‐ブチルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
本発明の撥水液に使用されるケイ素化合物は、前記一般式[2]において、Rが、それぞれ独立して炭素数が1〜5の炭化水素基であり、Yが、それぞれ独立してアルコキシ基であることが好ましい。その具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ジ‐n‐ブチルジメトキシシラン等が挙げられる。
本発明の撥水液に使用されるケイ素化合物は、前記一般記式[2]において、Rが、それぞれ独立して炭素数が1〜3の炭化水素基であり、Yが、それぞれ独立してメトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基であることが好ましい。その具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
<各材料の量比>
本発明の撥水液においては、前記フルオロアルキルシラン系化合物と前記ケイ素化合物の質量比が1:0.25〜1:0.7であり、該質量比の下限としては1:0.25、1:0.3、1:0.35とすることができ、該質量比の上限としては、1:0.7、1:0.6、1:0.5、1:0.45とすることが出来る。該質量比が1:0.25未満の場合は、前記ケイ素化合物の割合が少なくなり、滑水性が低下しやすくなる。一方、1:0.7超の場合は、前記フルオロアルキルシラン系化合物の割合が少なくなり、耐候性が低下しやすくなる。
<有機溶媒>
本発明の撥水液に用いる有機溶媒には、フルオロアルキルシラン系化合物、酸触媒を溶解させる有機溶媒を用いることができ、該有機溶媒として、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ヘキサン、トルエン、ベンゼン、キシレン等の炭化水素溶媒類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類やそれらの混合物を用いることが好ましい。また、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、パーフルオロエーテル、ハイドロフルオロエーテルなどのフッ素系溶剤を用いることもできる。中でも、イソプロピルアルコール等の低級アルコールは、フルオロアルキルシラン系化合物、酸触媒の溶解性が高く、さらに、撥水液の塗布性(塗り伸ばしやすさ)や乾燥時間(作業時間)が適度になるので特に好ましい。
また、前記有機溶媒の添加量は、撥水液の総量に対し、80〜99質量%とすることが好ましく、90〜99質量%がより好ましい。80質量%未満では、基材への撥水液の付着量が多くなりすぎ、撥水液の塗布性(塗り伸ばし易さ)が悪くなる。また、99質量%を超えると基材への撥水液の付着量が少なくなり、撥水性や滑水性を十分には得にくい。
<水>
本発明の撥水液に用いる水は、該フルオロアルキルシラン系化合物と前記ケイ素化合物とを少なくとも部分的に加水分解、重縮合反応を生じさせるための成分である。前記水の添加量は、前記フルオロアルキルシラン系化合物のモル数と前記ケイ素化合物のモル数の合計の0.1〜130倍のモル数とすることが好ましく、3〜30倍がより好ましい。0.1倍未満では、撥水液中で加水分解、重縮合反応が進行しにくく、基材に十分量の前記フルオロアルキルシラン系化合物や前記ケイ素化合物が接着しにくいため、撥水性や滑水性を十分には得にくい。また、130倍を超えると、撥水液中で加水分解、重縮合反応が進行しすぎて、ポットライフが短くなりやすい。また、撥水液中の含有水分量を調整するために、撥水液に脱水剤を添加し、所定時間脱水処理を行っても良い。脱水剤としては、シリカゲル、合成ゼオライト、活性アルミナ等を用いることが出来るが、これに限定するものではない。
また、前記水の添加量は、撥水液の総量に対し、通常0.1〜10.0質量%であり、1.0〜5.0質量%が好ましく、2.0〜3.0質量%がより好ましい。0.1質量%未満では、撥水性が著しく低下する。また、10.0質量%を超えると撥水液のポットライフが短くなりやすい。
<酸>
本発明の撥水液に用いる酸は、前記フルオロアルキルシラン系化合物及び前記ケイ素化合物の重縮合反応を促進するための成分であり、無機酸、有機酸のいずれも用いることができる。酸の中では、有機スルホン酸が、撥水性被膜の耐候性を良好にしやすいため好ましい。
撥水液に用いる有機スルホン酸としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、2−プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、2−ブタンスルホン酸、ノナフルオロ−1−ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタン−1−スルホン酸、2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸、2−ヒドロキシブタン−1−スルホン酸、2−ヒドロキシペンタンスルホン酸、1−カルボキシエタンスルホン酸、1,3−プロパンジスルホン酸、アリールスルホン酸、2−スルホ酢酸、2−又は3−スルホプロピオン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、スルホサリチル酸、ベンズアルデヒドスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、フェノール−2,4−ジスルホン酸などが挙げられる。中でもメタンスルホン酸、エタンスルホン酸やp−トルエンスルホン酸は容易に入手でき、さらに安全性(揮発しにくい)や取り扱い(吸湿しにくい)の観点から特に好ましい。
また、前記酸の添加量は、前記フルオロアルキルシラン系化合物のモル数と前記ケイ素化合物のモル数の合計の0.1〜13倍のモル数とすることが好ましく、0.1〜7倍のモル数がさらに好ましい。0.1倍未満では、撥水液中で重縮合反応が進行しにくく、基材に十分量の前記フルオロアルキルシラン系化合物や前記ケイ素化合物が接着しにくいため、撥水性や滑水性を十分には得にくい。また、13倍を超えると、撥水液中で重縮合反応が進行しすぎて、ポットライフが短くなりやすい。
また、前記酸の添加量は、撥水液の総量に対し、通常0.1〜5.0質量%であり、0.5〜3.0質量%が好ましく、0.8〜1.0質量%がより好ましい。0.1質量%未満では、撥水性が著しく低下する。また、5.0質量%を超えると撥水液のポットライフが短くなりやすい。
<撥水液の調製方法>
次に本発明の撥水液の好ましい調製方法について説明する。
撥水液は、一般式[1]で表される前記フルオロアルキルシラン系化合物、一般式[2]で表されるケイ素化合物、有機溶媒の混合物に、水及び酸を添加、混合し、該フルオロアルキルシラン系化合物や該ケイ素化合物を重縮合することにより得られる。ここで、該フルオロアルキルシラン系化合物、該ケイ素化合物、有機溶媒を先に混合するのは、該フルオロアルキルシラン系化合物と該ケイ素化合物を撥水液中に均質に混合させるためである。しかしながら、上記の原料を同時に混合しても良い。
<撥水性物品の製造方法>
次に、得られた撥水液を使用して、撥水性物品を製造する方法について説明する。
上記で得られた撥水液を基材表面に塗布する塗布方法としては、手塗り法、ノズルフローコート法、ディッピング法、スプレー法、リバースコート法、フレキソ法、印刷法、フローコート法、スピンコート法、ロールコート法、それらの併用等各種塗布方法が適宜採用され得る。これらの塗布方法の中では、手塗り法が、塗着効率が高く塗布ロスが少ない点、塗布設備の導入費用を削減できる点、透明性に優れ、キズが目立ちにくい、nmオーダーの膜厚の被膜を形成できる点などから好ましい。なお、本発明で「手塗り法」とは、塗布液を部材に給液した後、該部材を基材に接触させる手段、及び、塗布液を基材に給液した後、部材で該塗布液を引き延ばす手段から選ばれる少なくとも一つの手段で基材上に塗布液を塗布する技術手段のことを指す。塗布液を給液される部材、又は塗布液を引き延ばす部材としては、布、紙、不織布、ガーゼ、スポンジ、フェルトなどが挙げられる。塗布液を給液された部材を基材に接触させる手段、又は部材で塗布液を引き延ばす手段は、人の手によるもの、ロボットや機械などによるものなどがある。
本発明の撥水性物品の製造方法は、塗布後に50〜350℃で1〜60分間加熱を行うことが好ましいが、その加熱温度よりも高い耐熱温度を有するものであれば、撥水液が塗布される基材は特に限定されるものではない。例えば、車両用窓ガラス、建築物用窓ガラスに通常使用されているフロート板ガラス、又はロールアウト法で製造されたソーダ石灰ガラス等無機質の透明性がある板ガラスを使用できる。これら板ガラスを用いて形成される鏡等の反射性基材、擦りガラス、模様が刻まれたガラス等の半透明から不透明のガラス基材を使用することができる。また、合わせガラスや化学強化ガラスを使用することもできる。
前記ガラス基材の他にタイル、瓦、衛生陶器、食器等に使用されるセラミックス材料よりなる基材、ガラス窓等の枠体、調理器、メス、注射針等の医療器具、流し、自動車のボディ等に使用されるステンレス鋼、アルミニウム、鉄鋼等の金属材料、プラスチック製の基材、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、その他のプラスチック基材を使用することがある。
また、基材と撥水性被膜との接着強度を向上させる処理を基材表面に予め行うこともできる。前記の処理としては、各種研磨液による研磨・洗浄・乾燥、酸性溶液または塩基性溶液による表面改質処理、プライマー処理、プラズマ照射、コロナ放電、高圧水銀灯照射等により、基材表面に活性基を発生させることが挙げられる。特に、プライマー処理は、例えば基材上に官能基を4個有するケイ素化合物が添加された溶液を基材に塗布し、該ケイ素化合物と基材とを結合させるとともに、該ケイ素化合物由来のシラノール基(活性基)を形成させて行うことができ、撥水液を塗布する表面のシラノール基の数を増やすことができるため好ましい。
次に撥水液を基材に塗布した後の処理について説明する。基材に撥水液を塗布後、熱処理温度(ガラスの到達する最高温度)30〜100℃で1〜60分間加熱させることが好ましい。熱処理温度の下限としては、30、35、40、50、60、70℃とすることができ、上限としては、100、90、85、80、75℃とすることができる。加熱時間の下限としては、1、3、5分間とすることができ、上限としては、60、30、20、15分間とすることができる。前記フルオロアルキルシラン系化合物のXに由来するシラノール基と、基材表面に存在する水酸基等の結合性基とを、加熱処理を行わなかった場合よりもより強く結合させることにより、該基材表面に優れた耐久性、特に耐候性を有する固形の被膜(撥水層)を形成することができる。加熱は、常圧下、加圧下、減圧下、不活性雰囲気下で行っても良い。
最後に、余剰分が乾固物となって基材上に残留するので、この余剰分を有機溶剤で湿らした紙タオルや布および/または乾いた紙タオルや布で払拭することにより撥水性被膜が形成された物品が得られる。
実施例により本発明を具体的に説明する。本実施例および比較例で得られた撥水性物品は、以下に示す方法により品質評価を行った。本実施例および比較例で作製した撥水性物品は、ガラス基板の片側の全面に撥水性被膜を形成した構成である。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[撥水性物品の初期接触角;撥水性]
撥水性物品の撥水層表面に、純水約2μlを置いたときの水滴とサンプル表面とのなす角を接触角計で測定した。尚、接触角計には協和界面科学製DM−501型を用い、大気中(約25℃)で測定した。初期接触角において、接触角が105°以上を合格(表中で○と表記)、105°未満を性能不足とし、不合格(表中で×と表記)とした。
[撥水性物品の転落角;滑水性]
サンプルを水平に保持した状態で、サンプル表面上に約50μlの純水を滴下した後、サンプルを徐々に傾けていき、水滴が移動し始めた時点の傾斜角度を転落角(°)とした。尚、転落角は協和界面科学製DM−501型を用いて大気中(約25℃)で測定した。転落角が小さいほど滑水性が良好であるといえ、転落角の初期性能が、15°以下を合格(表中で○と表記)、16°以上を性能不足とし、不合格(表中で×と表記)とした。
[撥水性物品の耐候性]
メタルハライドランプのUV光を以下の条件でサンプルの撥水膜面に対して2時間照射した後の接触角(°)を測定して評価した。ここでは試験後の水滴の接触角が90°以上を合格(表中で○と表記)、90°未満のものを不合格とし、表中で×と表記した。
・ ランプ:アイグラフィックス製M015−L312
・ ランプ強度:1.5kW
・ 照度:下記照度計における測定値が92mW/cm
・ 照度計:紫外線強度計(岩崎電気製、UVP365−03)
(受光波長域;300〜400nm)
[実施例1]
(塗布液の調製)
フルオロカーボンユニットの数が6のフルオロアルキルトリアルコキシシランである(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)トリエトキシシラン〔CF(CFCHCHSi(OCHCH〕(C6FAS):1.0g、ケイ素化合物であるジメチルジメトキシシラン(DMDMS):0.4g、イソプロピルアルコール:32gを混合し、約5分間攪拌した。次いで、メタンスルホン酸:0.30g、水:0.91gを添加し、室温で2時間攪拌して、フルオロアルキルシラン:ジメチルジメトキシシラン=1:0.4(wt%)、固形分濃度(フルオロアルキルシランとジメチルジメトキシシランの濃度の合計):4.0wt%の塗布液を得た。なお、メタンスルホン酸の添加量は、フルオロアルキルシラン系化合物のモル数と、ジメチルジメトキシシランのモル数の合計の0.75倍のモル数のメタンスルホン酸を添加した。また、水の添加量も同様に、フルオロアルキルシラン系化合物のモル数と、ジメチルジメトキシシランのモル数の合計の12倍のモル数の水を添加した。
(基材の準備)
10cm角で厚さ3.0mmのフロートガラス板の表面を酸化セリウムで十分に研磨した後、精製水で洗浄後、乾燥させて基材を準備した。
(撥水性物品の作製)
調製した塗布液;1.0mlをガラス基板上に滴下し、手塗り法により綿布(商品名;ベンコット)でガラス全面に十分引き伸ばした後、5分程度風乾した。その後、ガラスを電気炉に入れ10分間熱処理した。このとき、ガラスの到達した最高温度(熱処理温度)は80℃であった。熱処理温度は、電気炉内の温度計によって測定した。最後に、目視で白くまだらに残留している余剰な撥水成分をイソプロピルアルコールで湿らした紙タオルで拭き上げて、目視観察で問題の無い透明なサンプルを得た。
上記の評価方法に記載した要領で評価したところ、表1に示すとおり、転落角:○(14°)であり、良好な滑水性を示した。さらに、接触角:○(108°)、耐候性:○(95°)であり、良好な撥水性と耐候性を示した。
[実施例2〜5、比較例1〜6]
表1に示すとおり、フルオロアルキルシラン系化合物とジメチルジメトキシシランの質量比、熱処理温度を変え、それ以外は実施例1と同様に実施した。
各実施例及び各比較例について、撥水液中のフルオロアルキルシラン系化合物とジメチルジメトキシシランの質量比を表1に示す。また、各実施例及び各比較例で得られた撥水性物品に関し、外観の観察結果、転落角、初期の水接触角、耐候性の測定結果も下記の表1に示す。すべてのサンプルにおいて、外観良好なサンプルが得られ、撥水膜の膜厚は10nm未満であった。
なお、表1中のC6FASは〔CF(CFCHCHSi(OCHCH〕のことを、DMDMSはジメチルジメトキシシランのことを示す。
表1より明らかなように、実施例1〜5では、撥水液は、一般式[1]で表されるフルオロアルキルシラン系化合物、一般式[2]で表されるケイ素化合物、有機溶媒、水、及び、酸を含み、該フルオロアルキルシラン系化合物と該ケイ素化合物の質量比が1:0.2〜1:0.7の撥水液であり、該撥水液を用いて製造した撥水性物品は、滑水性及び耐候性が良好であった。さらに、該撥水性物品の外観、初期の接触角も良好であった。
フルオロアルキルシラン系化合物とジメチルジメトキシシランの質量比が1:0.5(wt%)の撥水液を使用した実施例2は、撥水性被膜のケイ素化合物濃度が実施例1よりも高く、実施例1より優れた滑水性を示した。
フルオロアルキルシラン系化合物とジメチルジメトキシシランの質量比が1:0.3(wt%)の撥水液を使用した実施例3は、実施例1よりも撥水性被膜のフッ素濃度が高く、実施例1より優れた耐候性を示した。
[比較例1〜2]
フルオロアルキルシラン系化合物とジメチルジメトキシシランの質量比を1:0、1:0.1(wt%)とした以外は実施例1と同様にして撥水物品を作製した。上記の評価方法に記載した要領で評価したところ、優れた耐候性を示したが、ケイ素化合物が無い又は少ないため、滑水性が不十分であった。
[比較例3〜5]
フルオロアルキルシラン系化合物とジメチルジメトキシシランの質量比を1:0.75、1:1、1:5(wt%)とした以外は実施例1と同様にして撥水物品を作製したが、撥水性被膜のフッ素濃度が低いことから、耐候性が不十分であった。
[比較例6]
フルオロアルキルシラン系化合物とジメチルジメトキシシランの質量比を0:1(wt%)とした以外は実施例1と同様にして撥水物品を作製したが、フルオロアルキルシラン系化合物を含まず、耐候性や撥水性が不十分であった。
撥水性を有する撥水ガラスは、雨天時、雨滴をはじくため、室内から室外への良好な視界が保たれる。このため、撥水ガラスは、建築、車両、船舶、航空機など種々の分野にて、使用されている。特に、水滴が滑りやすい滑水性の優れた撥水ガラスは、雨滴除去性が良好なため、自動車のウインドシールドガラスとして用いた場合、雨天運転時の安全性が格段に向上する。このため、実使用に耐えうる耐久性を有する滑水性の優れた撥水ガラスが望まれている。また、滑水性の優れた撥水性材料は、着氷、着雪を低減させる効果も有しているため、豪雪地域の電線や屋外アンテナ向けの撥水性物品としても期待されている。
車両用の窓ガラスは、フロントウインドウやバックウインドウに取り付けられているワイパーブレードとの摩耗や、サイドドアガラスに取り付けられている水切りモールとの昇降時の摩耗に耐えうる必要がある。また、建築用の窓ガラスは、タオルなどを用いた清掃による払拭に耐えうる必要がある。
本発明の撥水性物品は、熱処理温度が150℃より低温であっても、良好な滑水性と耐候性を両立しており、車両用の窓ガラスや建築用の窓ガラスとして用いることが出来る。

Claims (16)

  1. 少なくとも、
    下記一般式[1]で表されるフルオロアルキルシラン系化合物、
    下記一般式[2]で表されるケイ素化合物、
    有機溶媒、水、及び、酸
    を含み、該フルオロアルキルシラン系化合物と該ケイ素化合物の質量比が1:0.25〜1:0.7である、撥水性被膜を形成するための撥水液。
    (式[1]中、mは、2〜7の整数であり、nは、1〜5の整数である。また、Xはそれぞれ独立してアルコキシ基、クロロ基、イソシアネート基又はヒドロキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基であり、pは1〜3の整数である。)

    SiY [2]
    (式[2]中、Rは、それぞれ独立して炭素数が1〜20の炭化水素基である。また、Yは、それぞれ独立してアルコキシ基、クロロ基、イソシアネート基又はヒドロキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基である。なお、Rは、分岐状の炭化水素基や環状の炭化水素基であっても良い。)
  2. 前記一般式[2]で表されるケイ素化合物において、Rが、それぞれ独立して炭素数が1〜5の炭化水素基であり、Yが、それぞれ独立してアルコキシ基であることを特徴とする、請求項1に記載の撥水液。
  3. 前記一般式[2]で表されるケイ素化合物において、Rが、それぞれ独立して炭素数が1〜3の炭化水素基であり、Yが、それぞれ独立してメトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基であることを特徴とする、請求項1に記載の撥水液。
  4. 前記一般式[1]で表されるフルオロアルキルシラン系化合物と、前記一般式[2]で表されるケイ素化合物の質量比が、1:0.25〜1:0.6の質量比であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撥水液。
  5. 前記酸が、有機スルホン酸であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撥水液。
  6. 前記一般式[1]で表されるフルオロアルキルシラン系化合物において、mが2〜7の整数であり、nが1〜3の整数であり、Xがそれぞれ独立してアルコキシ基であり、pが3であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の撥水液。
  7. 前記一般式[1]で表されるフルオロアルキルシラン系化合物において、mが4〜6の整数であり、nが1〜3の整数であり、Xがそれぞれ独立してアルコキシ基であり、pが3であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の撥水液。
  8. 少なくとも、
    下記一般式[1−A]で表されるフルオロアルキルシラン系化合物、
    下記一般式[2−A]で表されるケイ素化合物、
    有機溶媒、水、及び、有機スルホン酸
    を含み、該フルオロアルキルシラン系化合物と該ケイ素化合物の質量比が1:0.25〜1:0.6である、撥水性被膜を形成するための撥水液。
    (式[1−A]中、mは、4〜6の整数であり、nは、1〜3の整数である。また、Xはそれぞれ独立してアルコキシ基である。)

    SiY [2−A]
    (式[2−A]中、Rは、それぞれ独立して炭素数が1〜3の炭化水素基である。また、Yは、それぞれ独立してメトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基である。なお、Rは、分岐状の炭化水素基や環状の炭化水素基であっても良い。)
  9. 前記有機スルホン酸のモル数が、前記一般式[1−A]で表されるフルオロアルキルシラン系化合物のモル数と前記一般式[2−A]で表されるケイ素化合物のモル数の合計の0.1〜13倍であり、
    前記水のモル数が、前記一般式[1−A]で表されるフルオロアルキルシラン系化合物のモル数と前記一般式[2−A]で表されるケイ素化合物のモル数の合計の0.1〜130倍であることを特徴とする、請求項8に記載の撥水液。
  10. 前記一般式[1−A]で表されるフルオロアルキルシラン系化合物と、前記一般式[2−A]で表されるケイ素化合物との部分加水分解重縮合物を含むことを特徴とする、撥水性被膜。
  11. 基材と、該基材上に撥水性被膜を有する撥水性物品の製造方法であって、該撥水性被膜が、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の撥水液を該基材の表面上に塗布することにより形成されることを特徴とする、撥水性物品の製造方法。
  12. 前記撥水液を基材の表面上に塗布した後、30〜100℃で1〜60分間加熱することを特徴とする、請求項11に記載の撥水性物品の製造方法。
  13. 前記撥水液を基材の表面上に塗布した後、35〜90℃で3〜30分間加熱することを特徴とする、請求項11に記載の撥水性物品の製造方法。
  14. 前記撥水液を基材の表面上に塗布する方法が、手塗り法であることを特徴とする、請求項11乃至13のいずれか1項に記載の撥水性物品の製造方法。
  15. 撥水性被膜の膜厚が、10nm未満1nm以上であることを特徴とする、請求項11乃至14のいずれか1項に記載の撥水性物品の製造方法。
  16. 前記基材がガラスであることを特徴とする、請求項11乃至15のいずれか1項に記載の撥水性物品の製造方法。
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