JP2018115310A - 賦形粘着シート積層体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
近年、スマートフォンやタブレット端末などのタッチパネル方式の画像表示装置の表面保護パネルは、強化ガラスと共にアクリル樹脂板やポリカーボネート板などのプラスチック材が用いられており、該表面保護パネルの視認開口面部以外の周縁部は、黒色印刷されている。
また、タッチパネルでは、ガラスセンサーと共にプラスチックフィルムセンサーを用いたり、タッチパネル機能が表面保護パネルと一体化されたタッチオンレンズ(TOL)なる部材が用いられたり、タッチパネル機能が画像表示パネルに一体化されたオンセルやインセルなる部材が用いられたりしている。
ところで、携帯電話やモバイル端末を中心とする画像表示装置の分野では、薄肉化、高精密化に加えて、デザインの多様化が進んでおり、表面保護パネルの周縁部には、枠状に黒色の隠蔽部を印刷するのが従来は一般的であったが、デザインの多様化に伴い、この枠状の隠蔽部を、黒色以外の色で形成することが行われ始めている。黒色以外の色で隠蔽部を形成する場合、隠蔽性が低いため、黒色に比べて隠蔽部、すなわち印刷部の高さが高くなる傾向にある。そのため、このような印刷部を備えた構成部材を貼り合わせるための粘着シートには、大きな印刷段差に追従して隅々まで充填することが求められている。
そこで従来から、印刷段差を埋めるための方法が種々提案されている。
しかし、通常の離形シートが粘着シートの両側に積層してなる粘着シート積層体を使用して、前記方法を実際に実施してみた結果、被着体表面の凹凸部と符合する凹凸形状を精度高く粘着シート表面に形成することが難しいという課題が明らかになってきた。
粘着材層と、当該粘着材層の一面に剥離可能に積層してなる被覆部Iとを備え粘着シート積層体を加熱し、加熱された粘着シート積層体を成形すると共に冷却して賦形粘着シート積層体を製造する製造方法であって、
粘着シート積層体を加熱して、被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MS)が1.0×106〜2.0×109Paである状態で成形を開始し、被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MF)が5.0×107〜1.0×1010Paである状態で成形を終了することを特徴とする新たな賦形粘着シート積層体の製造方法を提案する。
さらに、加熱された粘着シート積層体を成形する際に、冷却した金型を用いて成形すれば、成形と同時に冷却を行い同時に終了することができるから、前記の製造方法を連続的に行うことができる。
本実施形態の一例に係る賦形粘着シート積層体の製造方法(「本製造方法」と称する)は、後述する粘着シート積層体を加熱し(加熱工程)、加熱された粘着シート積層体を成形すると共に冷却する(成形・冷却工程)工程を備えた製造方法である。
本製造方法における出発部材としての粘着シート積層体は、粘着材層と、当該粘着材層の一面に剥離可能に積層してなる被覆部Iとを備えていればよく、他の部材を備えていてもよい。例えば図1に示すように、粘着材層と、当該粘着材層の表裏一側に剥離可能に積層してなる被覆部Iと、当該粘着材層の表裏他側に剥離可能に積層してなる被覆部IIとを備えた粘着シート積層体を例示することができる。但し、被覆部IIを備えるか否かは任意であり、被覆部IIを積層しない構成としてもよい。
なお、粘着シート積層体の詳細については、後述する。
本製造方法では、前記粘着シート積層体を加熱して、被覆部Iの貯蔵弾性率E’(M)が1.0×106〜2.0×109Paである状態とするのが好ましい。
被覆部Iの貯蔵弾性率E’(M)が前記範囲であれば、被覆部Iが成形に適した程度に変形させることが可能となり、且つ粘着材層の表面に所望の凹凸形状を精度良く賦形することができるようになる。
かかる観点から、粘着シート積層体を加熱して、被覆部Iの貯蔵弾性率E’(M)が1.0×106〜2.0×109Paである状態とするのが好ましく、中でも5.0×106Pa以上或いは1.0×109Pa以下、その中でも1.0×107Pa以上或いは5.0×108Pa以下である状態とするのがさらに好ましい。
被覆部Iの貯蔵弾性率E’(M)を前記範囲に調整すれば、上述のような効果を得ることができるのに加えて、粘着材層の貯蔵弾性率G’(S)が1.0×104Pa未満であれば、十分な成形性を粘着材層に付与することができる。
かかる観点から、粘着シート積層体を加熱して、被覆部Iの貯蔵弾性率E’(M)が前記範囲の状態であって、且つ、粘着材層の貯蔵弾性率G’(S)が1.0×104Pa未満である状態、中でも5.0×101Pa以上或いは5.0×103Pa以下である状態、その中でも1.0×102Pa以上或いは1.0×103Pa以下である状態とするのが好ましい。
粘着材層の損失正接tanδの値が1.0以上であれば、成形可能な程度に柔軟性を有することになるから好ましい。
かかる観点から、粘着シート積層体を加熱して、粘着材層の損失正接tanδの値が1.0以上となるようにするのが特に好ましく、その中でも1.5以上或いは20以下、さらにその中でも3.0以上或いは10以下となるようにするのがさらに好ましい。但し、上限についてはこの限りではない。
被覆部Iの表面温度が70℃以上であれば、粘着材層が十分に軟化し、且つ、被覆部Iを十分に変形可能とすることができ、180℃以下であれば、熱収縮によるシワの発生や、熱による粘着材層の分解等の弊害を抑制できることから、好ましい。
かかる観点から、前記粘着シート積層体を加熱して、被覆部Iの表面温度が70〜180℃となるようにするのが好ましく、中でも75℃以上或いは150℃以下、その中でも80℃以上或いは120℃以下となるようにするのがより一層好ましい。
本工程では、前記のように加熱された粘着シート積層体を成形して、粘着シート積層体を成形すると共に冷却する。すなわち、粘着材層及び被覆部Iが積層されて一体となった状態の粘着シート積層体をそのまま成形する。よって、金型によって被覆部Iが成形され、当該被覆部Iを介して粘着材層も同時に成形されることになる。
金型の冷却手段は、通常行われている冷却手段を採用することができる。例えば、水冷や圧縮エアーによる冷却手段を挙げることができる。
ここで、「成形を開始する」とは、例えば金型を用いた成形の場合であれば、金型を閉じる、すなわち粘着シート積層体を金型で押圧を開始することを意味する。
かかる観点から、被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MS)が1.0×106〜2.0×109Paである状態で粘着シート積層体の成形を開始するのが好ましく、中でも5.0×106Pa以上或いは1.0×109Pa以下の状態、その中でも1.0×107Pa以上或いは5.0×108Pa以下である状態で成形を開始するのがより一層好ましい。
被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MS)が前記範囲である状態で成形を開始すれば上述のような効果を得ることができるのに加えて、粘着材層の貯蔵弾性率G’(SS)が1.0×104Pa未満の状態で成形を開始すれば、粘着材層がより十分な成形性を有する状態で成形することができる。
かかる観点から、被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MS)が前記範囲の状態であって、且つ、粘着材層の貯蔵弾性率G’(SS)が1.0×104Pa未満である状態、中でも当該G’(SS)が5.0×101Pa以上或いは5.0×103Pa以下であるのがさらに好ましく、その中でも1.0×102Pa以上或いは1.0×103Pa以下である状態で成形を開始するのがさらにより一層好ましい。
当該被覆部Iの表面温度が70℃以上であれば、粘着材層が十分に軟化し、且つ、被覆部Iを十分に変形可能とすることができ、180℃以下であれば、熱収縮によるシワの発生や、熱による粘着材層の分解等の弊害を抑制できることから好ましい。
よって、被覆部Iの表面温度が70〜180℃である状態で成形を開始するのが好ましく、中でも75℃以上或いは150℃以下、その中でも80℃以上或いは120℃以下となるようにするのがより一層好ましい。
ここで、「成形を終了する」とは、粘着シート積層体に対して成形圧力を加えるのを終了することを意味し、金型成形であれば、金型を開くことを意味する。
かかる観点から、前記被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MF)が5.0×107〜1.0×1010Paである状態で成形を終了するのが好ましく、中でも1.0×108Pa以上或いは8.0×109Pa以下である状態、その中でも1.0×109Pa以上或いは5.0×109Pa以下である状態で成形を終了するのがより一層好ましい。
前記被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MF)が前記範囲である状態で成形を終了すれば上述のような効果を得ることができるのに加えて、粘着材層の貯蔵弾性率G’(SS)が1.0×104Pa以上の状態で成形を終了すれば、成形された粘着材層が形状を維持することができる。
かかる観点から、前記被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MF)が前記範囲にある状態で、且つ粘着材層の貯蔵弾性率G’(SF)が1.0×104Pa以上である状態で成形を終了するのが好ましく、中でも、粘着材層の貯蔵弾性率G’(SF)が5.0×104Pa以上或いは5.0×107Pa以下である状態、その中でも1.0×104Pa以上或いは1.0×107Pa以下の状態で成形を終了するのがさらに好ましい。
被覆部Iの表面温度が50℃未満で、被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MS)が5.0×107〜1.0×1010Paの範囲であれば、成形終了後に成形体を取り出す際に変形したり、被覆部Iの熱収縮に伴う反りの発生することを抑制できることから好ましい。
かかる観点から、被覆部Iの表面温度が50℃未満になった状態、中でも0℃以上或いは45℃以下になった状態、その中でも10℃以上或いは40℃以下になった状態で成形を終了するのが好ましい。
(1)・・E’(MF)/E’(MS)≧1.3
ここで、前記被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MS)と前記成形終了時の被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MF)とが前記関係式(1)を満たせば、成形開始時には成形可能な程度に軟らかく、且つ成形終了後には成形した形状を維持できる程度に硬さを有することから好ましい。
かかる観点から、E’(MF)/E’(MS)≧1.3であるのが好ましく、中でも100≧E’(MF)/E’(MS)或いはE’(MF)/E’(MS)≧3.0であるのがさらに好ましく、その中でも50≧E’(MF)/E’(MS)或いはE’(MF)/E’(MS)≧5.0であるのが特に好ましい。但し、E’(MF)/E’(MS)の上限はこれに限定されるものではない。
(2)・・E’(MF)/G’(SF)≦1.0×107
ここで、前記成形終了時の被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MF)と、前記成形終了時の粘着材層の貯蔵弾性率G’(SF)とが前記関係式(2)を満たせば、成形された粘着材層が形状を維持することができる。
かかる観点から、E’(MF)/G’(SF)≦1.0×107であるのが好ましく、中でも1.0≦E’(MF)/G’(SF)或いはE’(MF)/G’(SF)≦5.0×106、その中でも1.0×101≦E’(MF)/G’(SF)或いはE’(MF)/G’(SF)≦1.0×106であるのがさらに好ましい。
金型の表面温度が50℃以下であれば、短時間で粘着シート積層体の形状を固定することができ、得られる成形体が精度良く、且つ成形後の冷却過程における熱収縮に伴う反りを抑制できる観点から好ましい。
よって、金型の表面温度は、0〜50℃であるのが好ましく、中でも10℃以上或いは40℃以下、その中でも15℃以上或いは30℃以下であるのがさらに好ましい。
前記成形・冷却工程で得られた賦形粘着シート積層体は、そのまま巻き取ってもよいし、また、熱処理してもよいし、また、所定の大きさ及び形状に裁断してもよい。
裁断する際には、例えばトムソン刃やロータリー刃等を用いて裁断する方法を挙げることができる。
例えば粘着シート積層体を加熱ユニット例えばヒーターに搬送して、当該加熱ユニットでは、所定時間搬送を停止して加熱するか或いは搬送しながら加熱するかした後、加熱された粘着シート積層体を成形ユニット例えば成形金型に搬送して、該成形ユニットでは、例えば冷却された金型でプレスして成形と同時に冷却を行い、さらに必要に応じて次のユニットに搬送するようにして、連続的に賦形粘着シート積層体を製造することができる。
次に、本製造方法で使用する粘着シート積層体の好適な一例(「本粘着シート積層体」と称する)について説明する。
本粘着シート積層体の粘着材層は、被覆部I及び被覆部IIを剥離すると、両面粘着シートとして機能し得るものであって、加熱すると柔軟化乃至溶融するホットメルト性を備えたものであればよい。
加熱成形開始温度における損失正接tanδ(SA)が1.0以上であることによって、粘着材層表面に凹凸形状を成形することが容易となる。
また、粘着材層の加熱成形終了温度における損失正接tanδ(SB)が1.0未満であれば、常態においてシート形状を保持することができるため、被着体表面の凹凸部と符合する凹凸形状を精度高く粘着材層表面に形成した状態を保持することができる。
ここで、損失正接tanδは、損失弾性率G’’と貯蔵弾性率G’との比(G’’/G’)を意味する。
一般に高分子材料は粘性的性質と弾性的性質を兼ね備えており、損失正接tanδが1.0以上、更にその値が大きくなるほど粘性的性質が強くなる。一方、損失正接tanδが1.0未満、更にその値が小さくなるほど弾性的性質が強くなる。このため、粘着材層の異なる温度における損失正接tanδを制御することにより、成形性と形状保持性を兼備することが可能となる。
他方、粘着材層の加熱成形終了温度における損失正接tanδ(SB)は1.0未満であるのが好ましく、中でも0.01以上或いは0.9以下、その中でも0.1以上或いは0.8以下であるのが好ましい。
粘着材層の加熱成形開始温度における貯蔵弾性率G’(SA)が1.0×104Pa未満であれば、十分な成形性が得られるため好ましく、他方、粘着材層の加熱成形終了温度における貯蔵弾性率G’(SB)が1.0×104Pa以上であれば、成形後の形状安定性の観点で好ましい。
また、かかる観点から、粘着材層の加熱成形終了温度における貯蔵弾性率G’(SB)は1.0×104Pa以上であるのが好ましく、中でも2.0×104Pa以上或いは1.0×107Pa以下であるのがさらに好ましく、その中でも5.0×104Pa以上或いは1.0×106Pa以下であるのがさらに好ましい。
粘着材層の損失正接tanδが1.0となる温度が50〜150℃であれば、本粘着シート積層体を50〜150℃に加熱しておくことで金型成形することができる。
粘着材層のベース樹脂のガラス転移温度(Tg)が前記範囲であれば、粘着材層に粘着性を付与することができ、さらに、粘着材層の損失正接tanδが1.0となる温度を50〜150℃に調整することが可能である。
例えば、1)(メタ)アクリル酸エステル系重合体(共重合体を含む意で、以下「アクリル酸エステル系(共)重合体」と称する。)をベース樹脂として用い、これに架橋モノマー、必要に応じて架橋開始剤や反応触媒などを配合して、架橋反応させて形成した粘着シートや、
2)ブタジエン又はイソプレン系共重合体をベース樹脂として用い、これに架橋モノマー、必要に応じて架橋開始剤や反応触媒などを配合して、架橋反応させて形成した粘着シートや、
3)シリコーン系重合体をベース樹脂と用い、これに架橋モノマー、必要に応じて架橋開始剤や反応触媒などを配合して、架橋反応させて形成した粘着シートや、
4)ポリウレタン系重合体をベース樹脂として用いたポリウレタン系粘着シートなどを挙げることができる。
電気的特性、低屈折率などの性能が求められる場合は、前記2)のブタジエン又はイソプレン系共重合体をベース樹脂とするものが好ましい。
耐熱性、広い温度域におけるゴム弾性などの性能が求められる場合は、前記3)のシリコーン系共重合体をベース樹脂とするものが好ましい。
再剥離性等の性能が求められる場合は、前記4)のポリウレタン系重合体をベース樹脂とするものが好ましい。
この場合、未架橋状態すなわち光重合される前の状態で、前記の粘弾性特性を満足することが必要である。かかる観点から、粘着材層のゲル分率は40%以下であるのが好ましい。
かかる観点から、粘着材層のゲル分率は40%以下であるのが好ましく、中でも20%以下、その中でも10%以下であるのが特に好ましい。なお、粘着材層のゲル分率の下限は限定されず、0%でもよい。
なお、前記の粘着材層のゲル分率は、ベース樹脂として(メタ)アクリル系共重合体(a)と、架橋剤(b)と、光重合開始剤(c)とを含有する樹脂組成物を用いる場合に限らず、粘着材層として他の樹脂組成物を用いる場合についても同様である。
(メタ)アクリル系共重合体(a)は、これを重合するために用いられるアクリルモノマーやメタクリルモノマーの種類、組成比率、さらには重合条件等によって、ガラス転移温度(Tg)等の特性を適宜調整することが可能である。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体を形成するために用いる(メタ)アクリレート、即ち、アルキルアクリレート又はアルキルメタクリレート成分としては、アルキル基がn−オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、n−ブチル、イソブチル、メチル、エチル、イソプロピルのうちのいずれか1つであるアルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートの1種又はこれらから選ばれた2種以上の混合物であるのが好ましい。
中でも好ましくは、イソ−オクチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレートの1種又はこれらから選ばれた2種以上の混合物か、或いは、イソ−オクチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等から少なくとも1種類以上と、アクリル酸とを共重合させたものを挙げることができる。
粘着材層の好ましいベースポリマーの一例として、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体からなる(メタ)アクリル系共重合体(A1)を挙げることができる。
よって、粘着材層のベースポリマーとしてアクリル系共重合体(A1)を使用すれば、未架橋状態であっても、室温(20℃)において粘着性を示し、且つ、50〜100℃、より好ましくは60℃以上或いは90℃以下の温度に加熱すると軟化乃至流動化する性質を備えることができる。
この際、幹成分を構成する共重合体成分のガラス転移温度とは、アクリル系共重合体(A1)の幹成分を組成するモノマー成分のみを共重合して得られるポリマーのガラス転移温度を指す。具体的には、当該共重合体各成分のホモポリマーから得られるポリマーのガラス転移温度と構成比率から、Foxの計算式によって算出される値を意味する。
なお、Foxの計算式とは、以下の式により求められる計算値であり、ポリマーハンドブック〔Polymer HandBook,J.Brandrup,Interscience,1989〕に記載されている値を用いて求めることができる。
1/(273+Tg)=Σ(Wi/(273+Tgi))
[式中、Wiはモノマーiの重量分率、TgiはモノマーiのホモポリマーのTg(℃)を示す。]
但し、当該共重合体成分のガラス転移温度が同じ温度であったとしても、分子量を調整することにより粘弾性を調整することができる。例えば共重合体成分の分子量を小さくすることにより、より柔軟化させることができる。
また、前記アクリルモノマーやメタクリルモノマーと共重合可能な、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メタクリロニトニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルキルビニルモノマー等の各種ビニルモノマーも適宜用いることができる。
アクリル系共重合体(A1)の幹成分が、疎水性モノマーのみから構成されると、湿熱白化する傾向が認められるため、親水性モノマーも幹成分に導入して湿熱白化を防止するのが好ましい。
また、疎水性のビニルモノマーとしては酢酸ビニル、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アルキルビニルモノマーなどを挙げることができる。
マクロモノマーとは、末端の重合性官能基と高分子量骨格成分とを有する高分子単量体である。
具体的には、マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)は、粘着材層2の加熱溶融温度(ホットメルト温度)に影響するため、マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)は30℃〜120℃であるのが好ましく、中でも40℃以上或いは110℃以下、その中でも50℃以上或いは100℃以下であるのがさらに好ましい。
このようなガラス転移温度(Tg)であれば、分子量を調整することにより、優れた加工性や保管安定性を保持できると共に、80℃付近でホットメルトするように調整することができる。
マクロモノマーのガラス転移温度とは、当該マクロモノマー自体のガラス転移温度をさし、示差走査熱量計(DSC)で測定することができる。
かかる観点から、マクロモノマーは、アクリル系共重合体(A1)中に5質量%〜30質量%の割合で含有することが好ましく、中でも6質量%以上或いは25質量%以下、その中でも8質量%以上或いは20質量%以下であるのが好ましい。
また、マクロモノマーの数平均分子量は500以上8000未満であることが好ましく、中でも800以上或いは7500未満、その中でも1000以上或いは7000未満であるのが好ましい。
マクロモノマーは、一般に製造されているもの(例えば、東亜合成社製マクロモノマーなど)を適宜使用することができる。
前記マクロモノマーの高分子量骨格成分としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3,5,5−トリメチルシクロヘキサンアクリレート、p−クミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N、N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルニトリル、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマーや、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アルキルビニルモノマー、酢酸ビニル、アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル等の各種ビニルモノマーが挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
架橋剤(b)は、アクリル酸エステル重合体を架橋する際に用いる架橋モノマーを使用することができる。例えば(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、アジリジン基、ビニル基、アミノ基、イミノ基、アミド基から選ばれる少なくとも1種の架橋性官能基を有する架橋剤を挙げることができ、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、前記架橋性官能基は、脱保護可能な保護基で保護されていてもよい。
湿熱白化を防止する観点からは、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体、例えばグラフト共重合体の幹成分として、疎水性のアクリレートモノマーと、親水性のアクリレートモノマーとを含有するのが好ましく、さらには、架橋剤として、水酸基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステルを用いるのが好ましい。
また、密着性や耐湿熱性、耐熱性等の効果を調整するために、架橋剤と反応する、単官能又は多官能の(メタ)アクリル酸エステルを、更に加えてもよい。
アクリル酸エステル重合体を架橋する際には、架橋開始剤(過酸化開始剤、光重合開始剤)や反応触媒(三級アミン系化合物、四級アンモニウム系化合物、ラウリル酸スズ化合物など)を適宜添加すると効果的である。
光重合開始剤(c)は、ラジカル発生機構によって大きく2つに分類され、光重合性開始剤自身の単結合を開裂分解してラジカルを発生させることができる開裂型光重合開始剤と、光励起した開始剤と系中の水素供与体とが励起錯体を形成し、水素供与体の水素を転移させることができる水素引抜型光重合開始剤と、に大別される。
これらのうちの開裂型光重合開始剤は、光照射によってラジカルを発生する際に分解して別の化合物となり、一度励起されると反応開始剤としての機能をもたなくなる。このため、可視光線域に吸収波長をもつ光重合開始剤として該分子内開裂型を用いると、水素引抜型を用いる場合に比べて、光線照射によって粘着シートを架橋した後、光線反応性の光重合性開始剤が本粘着剤組成物中に未反応残渣として残り、粘着シートの予期せぬ経時変化や架橋の促進を招く可能性が低いため好ましい。また、光重合性開始剤特有の着色についても、反応分解物となることで、可視光線域の吸収がなくなり、消色するものを適宜選択することができるため好ましい。
他方、水素引抜型の光重合開始剤は、紫外線などの活性エネルギー線照射によるラジカル発生反応時に、開裂型光重合開始剤のような分解物を生じないので、反応終了後に揮発成分となりにくく、被着体へのダメージを低減させることができる。
さらに、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体からなるアクリル系共重合体との相性からは、光重合開始剤として2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどを用いるのが好ましい。
光重合開始剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
粘着材層は、単層のほか、二層、三層などの複数層でもよい。
また、粘着材層は、芯層として基材層(粘着性を有さない層)を有し、該基材層の両側に、粘着材からなる層が積層してなる構成であってもよい。このような構成の場合、芯層としての基材層は粘着シート積層体が加熱成形可能となるような材質や特性を有することが好ましい。また、基材層を除いた粘着材層が、損失正接tanδ(SA)、損失正接tanδ(SB)、貯蔵弾性率G’(SA)及び貯蔵弾性率G’(SB)について前記特性を備えているのが好ましい。
したがって、粘着材層の厚さは20μm〜500μmであるのが好ましく、中でも30μm以上或いは300μm以下、その中でも50μm以上或いは200μm以下であるのがさらに好ましい。
本粘着シート積層体は、図1に示すように、粘着材層の表裏一側、例えば表面に凹凸を賦形する側に剥離可能に積層してなる被覆部Iを備えている。
加熱成形開始温度における貯蔵弾性率E’(MA)が1.0×106〜2.0×109Paであれば、前記粘着剤組成物が可塑化乃至流動する温度領域において、被覆部Iも凹凸形状を十分追随して変形可能であるばかりか、成形時に被覆部Iによって押圧される粘着材層の表面に所望の凹凸形状を精度高く、例えば角部が丸くならないように成形することができる。
被覆部Iの加熱成形終了温度における貯蔵弾性率E’(MB)が5.0×107〜1.0×1010Paであれば、常態において形状保持性を維持することができるから、取り扱いが容易であり、例えば剥離し易いばかりか、硬過ぎないから、粘着材層に不要な意図しない凹凸をつけることを抑制することができる。
かかる観点から、被覆部Iの加熱成形終了温度における貯蔵弾性率E’(MB)は5.0×107〜1.0×1010Paであるのが好ましく、中でも1.0×108Pa以上或いは8.0×109Pa以下、その中でも1.0×109Pa以上或いは5.0×109Pa以下であるのがさらに好ましい。
(1)・・E’(MB)/E’(MA)≧3.0
かかる観点から、E’(MB)/E’(MA)≧3.0であるのが好ましく、中でも30≧E’(MB)/E’(MA)或いはE’(MB)/E’(MA)≧3.0であるのがさらに好ましく、その中でも10≧E’(MB)/E’(MA)或いはE’(MB)/E’(MA)≧5.0であるのが特に好ましい。
(2)・・E’(MA)/G’(SA)≦1.0×107
かかる観点から、E’(MA)/G’(SA)は1.0〜1.0×107であるのが好ましく、中でも1.0×101以上或いは5.0×106以下、その中でも5.0×101以上或いは1.0×106以下であるのが特に好ましい。
剥離力F(C)が0.2N/cm以下であれば、粘着材層から前記被覆部Iを容易に剥離することができる。
かかる観点から、当該剥離力F(C)は0.2N/cm以下であるのが好ましく、中でも0.01N/cm以上或いは0.15N/cm以下であるのがさらに好ましく、その中でも0.02N/cm以上或いは0.1N/cm以下であるのがさらに好ましい。
粘着シート積層体を100℃で5分間加熱後30℃まで冷却させて、30℃雰囲気下で測定して得られる剥離力F(D)が、前記剥離力F(C)と同程度であれば、粘着シート積層体を加熱成形しても、剥離力F(D)が変化しないから、粘着材層から前記被覆部Iを容易に剥離することができる。
かかる観点から、当該剥離力F(D)は0.2N/cm以下であるのが好ましく、中でも0.01N/cm以上或いは0.15N/cm以下であるのがさらに好ましく、その中でも0.02N/cm以上或いは0.1N/cm以下であるのがさらに好ましい。
粘着シート積層体を100℃で5分間加熱後30℃まで冷却させて、30℃雰囲気下で測定して得られる剥離力F(D)と、通常状態での剥離力F(C)と差の絶対値が0.1N/cm以下であれば、粘着シート積層体を加熱成形しても、剥離力F(D)が変化しないから、粘着材層から前記被覆部Iを容易に剥離することができる。
かかる観点から、剥離力F(C)と剥離力F(D)の差の絶対値は0.1N/cm以下であるのが好ましく、中でも0.08N/cm以下、その中でも0.05N/cm以下であるのがさらに好ましい。
前記共重合ポリエステルの具体例としては、例えばジカルボン酸としてのイソフタル酸や、ジオールとしてのシクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール等を任意に共重合した、共重合ポリエチレンテレフタレートを挙げることができる。
前記ポリオレフィンの具体例としてはα−オレフィン単独重合体が挙げられ、例えばプロピレン単独重合体や4−メチルペンテン−1の単独重合体を挙げることができる。
前記ポリオレフィン共重合体の具体例としては、例えばエチレン、プロピレン、その他のα−オレフィンやビニルモノマー等の共重合体を挙げることができる。
ここで、前記離形層を構成する変性オレフィンとしては、不飽和カルボン酸又はその無水物、あるいはシラン系カップリング剤で変性されたポリオレフィンを主成分とする樹脂を挙げることができる。
上述のように、本粘着シート積層体は、粘着材層の表裏一側に剥離可能に被覆部Iを積層し、該被覆部Iとは反対側すなわち粘着材層の表裏他側に剥離可能に被覆部IIを積層してなる構成とすることができる。このように、粘着材層の表裏他側に剥離可能に被覆部IIを積層することで、ハンドリング性を高めることができる。
被覆部IIが被覆部Iと同じ積層構成及び材料であれば、本粘着シート積層体を加熱した際などに反りが発生するのを防止することができる。
さらに被覆部IIは、前記被覆部Iと異なる積層構成及び材料であってもよい。
被覆部IIには、例えば通常使用されている離形フィルム(「剥離フィルム」とも称されている)を使用することもできる。具体的には、加熱成形開始温度における貯蔵弾性率E’(MC)が2.0×109〜1.0×1011Paであるような材料が挙げられ、例えば2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどを用いることができる。
本粘着シート積層体の製造方法の一例としては、例えば、粘着剤組成物を被覆部I又はIIの2枚で挟み、ラミネータを用いて粘着材層を形成する方法を挙げることができる。また、その他の方法として、被覆部I又はIIに粘着剤組成物を塗布して粘着材層を形成する方法を挙げることができる。但し、かかる製造方法に限定するものではない。
粘着剤組成物を塗布する方法としては、例えばリバースロールコート、グラビアコート、バーコート、ドクターブレードコート等、従来公知の塗工方式を挙げることができる。
次に、本製造方法で製造することができる賦形粘着シート積層体の好適な一例としての賦形粘着シート積層体1(「本賦形粘着シート積層体1」と称する)について説明する。
粘着材層2は、表裏一側表面2Aに凹部又は凸部又は凹凸部(「粘着シート表面凹凸部2B」と称する)を備え、且つ、表裏他側表面2Cは平坦面であり、
被覆部Iは、前記粘着シート2の表裏一側表面2Aに密着しており、表裏一側表面3Aに凹部又は凸部又は凹凸部(「被覆部表面凹凸部3B」と称する)を備え、且つ、シート裏面3Cに前記粘着シート表面凹凸部2Bと符合する、言い換えれば嵌合する凹凸をなす凸部又は凹部又は凸凹部(「保護シート裏面凸凹部3D」と称する)を備え、
被覆部IIは、前記粘着シート2の表裏他側表面2Cに沿って平坦面からなる構成を備えたものとすることができる。
このように製造することにより、粘着材層2の粘着シート表面凹凸部2B、被覆部Iの保護シート表面凹凸部3B及び保護シート裏面凸凹部3Dは、同一箇所にそれぞれ対応して凹凸をなすものとすることができる。
すなわち、前記粘着材層2における粘着シート表面凹凸部2Bは、前記被着体の貼り合わせ面(「貼合面」とも称する)における凹部又は凸部又は凹凸部(「被着体表面凹凸部」と称する)と符合するように、好ましくは同一輪郭形状に形成することができる。よって、被着体としての画像表示装置構成部材における被着体表面凹凸部に対して、本賦形粘着シート積層体1における粘着シート表面凹凸部2Bを嵌め合わせることができる。
そして、被着体としての画像表示装置構成部材とは、これら画像表示装置を構成する部材であり、例えば表面保護パネル、タッチパネル、画像表示パネルなどを挙げることができ、本賦形粘着シート積層体1は、例えば、表面保護パネル、タッチパネル及び画像表示パネルから選択されるいずれか2つの被着体を貼合するために用いることができる。例えば、表面保護パネルとタッチパネルとを、或いは、タッチパネルと画像表示パネルとを貼合するために用いることができる。ただし、被着体をこれらに限定するものではない。
本賦形粘着シート積層体1の利用用途の一例について説明する。
近年、携帯電話やスマートフォン、タブレット端末などが汎用化されるに従い、使用者が誤って落下させる等によって画像表示部を破損する事例は多い。特に画像表示装置がタッチパネル方式である場合は、破損によって表示が見づらくなるばかりでなく、物理的障害や水の浸入等によってタッチパネル操作自体が不能となったり、故障の原因となったりする。そこで、画像表示部のみを交換するリペアすなわち修理が行われる場合がある。
画像表示装置のリペアにおいて、新たな画像表示部を装填する際にも粘着シートは使用される。通常、リペアは修理作業者による手作業として行われる場合が多く、修理作業者の熟練が必要である。すなわち、熟練者でないと、粘着シートを介して画像表示部を装填する際に、内部に空気が入ってしまったり、粘着材が食み出したりしてしまう。
これに対し、本賦形粘着シート積層体1を用いれば、予め精度の高い段差形状等を付与することができるため、例えば画像表示装置の機種に応じた段差形状を予め粘着材層に付与しておくことにより、リペア作業が大幅に簡便化され、修理作業者の熟練を要しなくても実施することが可能となる。このように、本発明の粘着シート積層体は、画像表示装置のリペア用として有用に用いることができる。
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
先ずは、実施例・比較例で得たサンプルの各種物性値の測定方法及び評価方法について説明する。
被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MS)及びE’(MF)は、長さ50mm、幅4mmに切り出し、動的粘弾性装置(アイティー計測制御株式会社 DVA−200)を用いてチャック間距離は25mm、1%の歪みをかけて測定した。測定温度範囲は−50℃〜150℃、周波数は1Hz、昇温速度は3℃/minの条件で測定した。
実施例及び比較例の各成形開始時温度における貯蔵弾性率の値をE’(MS)、各成形終了時温度における貯蔵弾性率の値をE’(MF)とした。
また、何れの実施例及び比較例についても、成形終了時温度は30℃であったため、何れの実施例及び比較例についても、当該E’(MF)は30℃における貯蔵弾性率E’(MB)と同じである。
実施例及び比較例で得られた粘着材層を重ねて1mmの厚さに積層させ、レオメータ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製 MARSII)を用いて測定した。測定温度範囲は−50℃〜150℃、周波数は1Hz、昇温速度は3℃/minの条件で測定した。
得られたデータにおいて、100℃における貯蔵弾性率の値をG’(SA)、損失弾性率の値をG’’(SA)、30℃における貯蔵弾性率の値をG’(SB)、損失弾性率の値をG’’(SB)として、各温度条件下におけるG’’/G’の値をそれぞれの粘着材層の損失正接tanδ(SA,SB)とした。
得られたデータにおいて、実施例及び比較例の各成形開始時温度における貯蔵弾性率の値をG’(SS)、損失弾性率の値をG’’(SS)とし、各成形終了時温度における貯蔵弾性率の値をG’(SF)、損失弾性率の値をG’’(SF)とし、さらに各温度条件下におけるG’’/G’の値をそれぞれの粘着材層の損失正接tanδ(SS,SF)とした。
粘着材層のゲル分率については、実施例及び比較例で得られた粘着材層をそれぞれ約0.05g分採取し、予め質量(X)を測定したSUSメッシュ(#200)で袋状に包み、袋の口を折って閉じて、この包みの質量(Y)を測定した後、100mlの酢酸エチルに浸漬させ23℃で24時間暗所保管した後、包みを取り出して70℃で4.5時間加熱し付着している酢酸エチルを蒸発させ、乾燥した包みの質量(Z)を測定し、求めた質量を下記式に代入して求めた。
ゲル分率[%]=[(Z−X)/(Y−X)]×100
実施例及び比較例で得られた、凹凸を賦形した賦形粘着シート積層体の被覆部Iを剥離し、印刷段差に相当する凹部とディスプレイ面に相当する凸部との高さを、それぞれ走査型白色干渉顕微鏡を用いて非接触方式で計測した。
金型の深さ100μmに対する成形体の凸部(凹部とのエッジ部)の高さhを計測し、下記計算式より導かれる転写率が50%以上のものを○、50%未満のものを×としてそれぞれ評価した。
転写率(%)=h(成形体高さ)/100(金型深さ)×100
実施例及び比較例で作製した粘着シート積層体を長さ150mm、幅50mmに切り出し、被覆部Iと粘着材層との界面について、試験速度300mm/minで180°剥離試験を行った。
30℃環境下での剥離力をF(C)、100℃で5分間加熱後、30℃まで自然冷却させた後における剥離力をF(D)として得られた値をそれぞれ被覆部Iの剥離力とした。
実施例及び比較例における粘着シート積層体の被覆部Iとして、二軸延伸イソフタル酸共重合PETフィルム(厚さ:75μm)の片面にシリコーン系化合物からなる離型層(厚さ:2μm)を積層してなるフィルムを用いた。各々の貯蔵弾性率の値は表1に示した。
(両面粘着シートの作製)
(メタ)アクリル系共重合体(a)として、数平均分子量2400のポリメタクリル酸メチルマクロモノマー(Tg:105℃)15質量部(18mol%)とブチルアクリレート(Tg:−55℃)81質量部(75mol%)とアクリル酸(Tg:106℃)4質量部(7mol%)とがランダム共重合してなるアクリル系共重合体(a−1)(重量平均分子量23万)1kgと、架橋剤(b)として、グリセリンジメタクリレート(日油社製、製品名:GMR)(b−1)90gと、光重合開始剤(c)として、2,4,6−トリメチルベンゾフェノンと4−メチルベンゾフェノンの混合物(Lanberti社製、製品名:エザキュアTZT)(c−1)15gを均一混合し、粘着材層に用いる樹脂組成物1を作製した。得られた樹脂組成物のガラス転移温度は−5℃であった。
成形用の金型は、上下一方の金型が、図6に示すように、長さ270mm、幅170mm、厚さ40mmの凸金型であり、上下他方の金型は、長さ270mm、幅170mm、厚さ40mmのアルミ平板であった。前記凸金型の成形面には、図6に示すように、縦187mm、横125mm、高さ1mmの凸部を中央に設け、さらにその凸部の成形面内に、深さが25μm、50μm、75μm、100μmの4つの平面視長方形状(縦89mm、横58mm)の成形凹部を設けた。
また、前記成形終了時の粘着材層の貯蔵弾性率G’(SF)に対する前記成形終了時の被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MF)の比率E’(MF)/G’(SF)は4.6×104であった。
また、成形開始時における粘着材層の損失正接tanδ(SS)は4.8であり、成形終了時における粘着材層の損失正接tanδ(SF)は0.6であった。
実施例1で用いた粘着シート積層体1を、400℃に予熱したIRヒーターを用いて、粘着シート積層体2の被覆部Iの表面が110℃になるまで加熱し成形した。すなわち、被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MS)が1.3×108Paであり、粘着材層の貯蔵弾性率G’(SS)が9.6×101Paである状態で、金型表面温度を30℃に冷却した成形用金型を用いて、型締圧8MPaの条件で5秒間プレス成形を行い、被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MF)が2.8×109Paであり、粘着材層の貯蔵弾性率G’(SF)が6.1×104Paである状態で金型を開き、表面に凹凸賦形してなる賦形粘着シート積層体2を作製した。
実施例1で用いた粘着シート積層体1を、400℃に予熱したIRヒーターを用いて、粘着シート積層体3の被覆部Iの表面が90℃になるまで加熱し成形した。すなわち、被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MS)が3.5×108Paであり、粘着材層の貯蔵弾性率G’(SS)が8.9×102Paである状態で、金型表面温度を30℃に冷却した成形用金型を用いて、型締圧8MPaの条件で5秒間プレス成形を行い、被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MF)が2.8×109Paであり、粘着材層の貯蔵弾性率G’(SF)が6.1×104Paである状態で金型を開き、表面に凹凸賦形してなる賦形粘着シート積層体3を作製した。
また、前記成形終了時の粘着材層の貯蔵弾性率G’(SF)に対する前記成形終了時の被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MF)の比率E’(MF)/G’(SF)は4.6×104であった。
また、成形開始時における粘着材層の損失正接tanδ(SS)は2.7であり、成形終了時における粘着材層の損失正接tanδ(SF)は0.6であった。
実施例1で用いた粘着シート積層体1を、400℃に予熱したIRヒーターを用いて、粘着シート積層体4の被覆部Iの表面が70℃になるまで加熱し成形した。すなわち、被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MS)が1.9×109Paであり、粘着材層の貯蔵弾性率G’(SS)が6.4×103Paである状態で、金型表面温度を25℃に冷却した成形用金型を用いて、型締圧8MPaの条件で5秒間プレス成形を行い、被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MF)が2.8×109Paであり、粘着材層の貯蔵弾性率G’(SF)が6.1×104Paである状態で金型を開き、表面に凹凸賦形してなる賦形粘着シート積層体4を作製した。
また、前記成形終了時の粘着材層の貯蔵弾性率G’(SF)に対する前記成形終了時の被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MF)の比率E’(MF)/G’(SF)は4.6×104であった。
また、成形開始時における粘着材層の損失正接tanδ(SS)は1.4であり、成形終了時における粘着材層の損失正接tanδ(SF)は0.6であった。
実施例1で用いた粘着シート積層体1を、400℃に予熱したIRヒーターを用いて、粘着シート積層体5の被覆部Iの表面が60℃になるまで加熱し成形した。すなわち、被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MS)が2.4×109Paであり、粘着材層の貯蔵弾性率G’(SS)が1.3×104Paである状態で、金型表面温度を25℃に冷却した成形用金型を用いて、型締圧8MPaの条件で5秒間プレス成形を行い、被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MF)が2.8×109Paであり、粘着材層の貯蔵弾性率G’(SF)が6.1×104Paである状態で金型を開き、表面に凹凸賦形してなる賦形粘着シート積層体5を作製した。
また、前記成形終了時の粘着材層の貯蔵弾性率G’(SF)に対する前記成形終了時の被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MF)の比率E’(MF)/G’(SF)は4.6×104であった。
また、成形開始時における粘着材層の損失正接tanδ(SS)は1.1であり、成形終了時における粘着材層の損失正接tanδ(SF)は0.6であった。
また、前記成形終了時の粘着材層の貯蔵弾性率G’(SF)に対する前記成形終了時の被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MF)の比率E’(MF)/G’(SF)は9.7×103であった。
また、成形開始時における粘着材層の損失正接tanδ(SS)は0.6であり、成形終了時における粘着材層の損失正接tanδ(SF)は0.6であった。
一方、比較例1が示すように、成形開始時における被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MS)が2.0×109Paより大きい場合、熱成形をしても粘着材層に十分な凹凸を賦形することができなかった。
以上のことから、成形開始時における被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MS)が1.0×106〜2.0×109Paであり、且つ、成形終了時における被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MF)が5.0×107〜1.0×1010Paとなるように調整して成形を行うことで、良好に凹凸賦形された賦形粘着シートを得ることができることが分かった。
Claims (11)
- 粘着材層と、当該粘着材層の一面に剥離可能に積層してなる被覆部Iとを備え、当該粘着材の一面には凹部又は凸部又は凹凸部(「粘着材層表面凹凸部」と称する)が賦形されてなる構成を備えた賦形粘着シート積層体の製造方法において、
粘着材層と、当該粘着材層の一面に剥離可能に積層してなる被覆部Iとを備え粘着シート積層体を加熱し、加熱された粘着シート積層体を成形すると共に冷却して賦形粘着シート積層体を製造する製造方法であって、
粘着シート積層体を加熱して、被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MS)が1.0×106〜2.0×109Paである状態で成形を開始し、被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MF)が5.0×107〜1.0×1010Paである状態で成形を終了することを特徴とする賦形粘着シート積層体の製造方法。 - 粘着材層と、当該粘着材層の一面に剥離可能に積層してなる被覆部Iとを備えた粘着シート積層体を加熱し、加熱された粘着シート積層体を、冷却した金型を用いて成形することを特徴とする請求項1に記載の賦形粘着シート積層体の製造方法。
- 前記成形開始時の被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MS)と前記成形終了時の被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MF)とが以下の関係式(1)を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の賦形粘着シート積層体の製造方法。
(1)・・E’(MF)/E’(MS)≧1.3 - 粘着シート積層体を加熱して、被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MS)が1.0×106〜2.0×109Paであり、且つ、粘着材層の貯蔵弾性率G’(SS)が1.0×104Pa未満である状態で成形を開始し、
被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MF)が5.0×107〜1.0×1010Paであり、且つ粘着材層の貯蔵弾性率G’(SF)が1.0×104Pa以上である状態で成形を終了することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の賦形粘着シート積層体の製造方法。 - 前記成形終了時の被覆部Iの貯蔵弾性率E’(MF)と、前記成形終了時の粘着材層の貯蔵弾性率G’(SF)とが以下の関係式(2)を満たすことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の賦形粘着シート積層体の製造方法。
(2)E’(MF)/G’(SF)≦1.0×107 - 前記被覆部Iは、被覆基材層と離形層とを備えており、
当該被覆基材層が、無延伸ポリエステル、延伸ポリエステル、共重合ポリエステル、無延伸ポリオレフィン、延伸ポリオレフィンおよび共重合ポリオレフィンからなる群から選択される1種の樹脂又は2種以上の樹脂を主成分とする層を有することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の賦形粘着シート積層体の製造方法。 - 前記粘着材層は、(メタ)アクリル系共重合体(a)、架橋剤(b)及び光重合開始剤(c)を含有する樹脂組成物から形成されるものであることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の賦形粘着シート積層体の製造方法。
- 前記賦形粘着シート積層体において、前記粘着材層は、表裏一側表面に凹部又は凸部又は凹凸部(「粘着材層表面凹凸部」と称する)を備え、且つ、
前記被覆部Iは、前記粘着材層の表裏一側表面に密着し、表裏一側表面に凹部又は凸部又は凹凸部(「被覆部表面凹凸部」と称する)を備え、且つ、前記表裏一側とは反対側の表裏他側表面に前記被覆部表面凹凸部に対応して凹凸をなした凸部又は凹部又は凸凹部(「被覆部裏面凸凹部」と称する)を備えていることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の賦形粘着シート積層体の製造方法。 - 前記粘着材層は、2つの被着体を貼り合わせるための両面粘着シートであり、
前記粘着材層表面凹凸部は、前記何れかの被着体の被着面における凹部又は凸部又は凹凸部(「被着体表面凹凸部」と称する)と符合するものであることを特徴とする請求項8に記載の賦形粘着シート積層体の製造方法。 - 前記何れかの被着体は、表面保護パネル、タッチパネル及び画像表示パネルからなる群から選択される何れかであることを特徴とする請求項9に記載の賦形粘着シート積層体の製造方法。
- 粘着シート積層体を加熱し、プレス成形、真空成形、圧空成形又はロール成形によって前記粘着シートの少なくとも片面に凹凸形状を賦形することを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の賦形粘着シート積層体の製造方法。
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